説明

PTH受容体のような受容体のための偏ったリガンド

Gタンパク質共役受容体(副甲状腺ホルモン受容体など)のGタンパク質経路よりもβ−アレスチン経路を選択的に調節するための組成物および方法が開示される。本明細書において示される(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)は、Gタンパク質の結合についてのインバースアゴニストとして作用するが、一方でβ−アレスチン依存性のERK1/2の活性化を刺激する。さらに、完全なPTH1RアゴニストであるPTH(1−34)およびβ−アレスチン選択的なアゴニストである(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)は、初代骨芽細胞における転写活性化の異なるプロフィールを誘発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年4月2日に出願された、表題「Method of Promoting Bone Formation」の米国仮出願第60/907,439号の利益を主張する。この出願は、その教示の全てに関して、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
この研究は、NIH/NIDDK R01 DK64353、Arthritis Foundation Investigator Award、R01 64353、R01 HL16037−33−37、およびK12HD043446により一部援助されたものである。アメリカ合衆国政府は、本明細書において開示される発明においてある程度の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
(I 背景)
7回膜貫通受容体(7TMR)の生物学における新たなパラダイムは、Gタンパク質およびβ−アレスチンの両方が独立して受容体シグナルを伝達し得ること、ならびに偏ったリガンドがこれらの異なる経路を選択的に活性化し得ることである。β−アレスチンを活性化し得るがGタンパク質のシグナル伝達は活性化し得ない、I型副甲状腺ホルモン(PTH)/PTH関連タンパク質受容体(PTH1R)に対する、PTH−βarrなどの本明細書において示されるβ−アレスチンに偏ったリガンドは、両方のメカニズムを活性化させるPTH(1−34)がそうであるように、マウスにおける同化的な骨形成を誘発する。PTH(1−34)により引き起こされる骨ミネラル密度(bone mineral density)の増大は、PTH−βarrに対するそれが除去されているβ−アレスチン2nullマウスにおいては弱まっている。β−アレスチン2依存性の経路は、骨梁(trabecular bone)の形成に主に寄与し、測定すると、骨吸収(のマーカー)を刺激しない。現在用いられている抗吸収療法は、骨折のリスクの低減に役立つ。しかし、これらの療法は、骨梁の構造の再生には十分ではない。したがって、骨芽細胞介在性の骨形成を標的とする同化的作用物質を同定するための取り組みが必要である。本方法および本組成物は、一部には、骨形成、骨梁形成を促進する方法を提供し、この方法は、例えば骨粗しょう症の治療において用いることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(II 概要)
PTH1Rなどの7回膜貫通受容体の、Gタンパク質に対するものとは異なる、β−アレスチン経路の調節に関する方法および組成物が開示される。
【0005】
本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する、添付の図面は、いくつかの実施形態を図解し、記載と共に、開示される組成物および方法を図解するものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)(PTH−βarr)は、初代骨芽細胞(POB)におけるcAMPの蓄積についてのインバースアゴニストである。PTH(1−34)およびPTH−βarrに応じた、内因性のPTH受容体のcAMPの刺激を、β−アレスチン2−/−マウスおよびWT C57BL/6マウスから単離したPOBにおいて測定した。細胞は、100nMのPTH(1−34)(PTH)または1μMのPTH−βarrで処理した。WTおよびβ−アレスチン2−/−のマウスから単離したPOBにおいて、PTHはcAMPの強い増大を刺激する。PTH−βarrは、そのインバースアゴニスト活性と一致して、WTのPOBにおいてcAMPを刺激することができず、β−アレスチン2−/−のPOBにおける基底cAMPレベルを低減させる。cAMPの値は、ホルスコリン誘発性のレベルに標準化した。データは、4回の独立した実験から得られた平均±SEMに対応する。(***:未刺激のWTのPOBと比較してp<0.001、+++:未刺激のβ−アレスチン2−/−のPOBと比較してP<0.001、++:P<0.01)。
【図2】図2は、PTH−βarrは、β−アレスチン介在性のERK1/2の活性化を刺激する。PTH−βarr刺激性のERK1/2の活性化を、β−アレスチン2−/−マウスおよびWT C57BL/6マウスから単離されたPOBにおいて評価した。POBは、100nMのPTH(1−34)(PTH)または1μMのPTH−βarrで5分間処理した。PTHまたはPTH−βarrで処理したWTのobsは、ERK1/2 MAPキナーゼを強く活性化した。WTのobsにおけるERK1/2の活性化に対するPTH−barrの刺激の効果は、β−アレスチン2−/−のobsにおいては見られなかった。示されている値は、未刺激の対照に対する、ERK1/2のリン酸化の倍増である。データは、4回の独立した実験から得られた平均±SEMに相当する。(**:未刺激のWTのPOBと比較してp<0.01、++:未刺激のβ−アレスチン2−/−のPOBと比較してP<0.01)。
【図3】図3は、PTH−βarrは、腰椎の骨ミネラル密度を増大させる。4週間および8週間後の、骨ミネラル密度に対する、媒体、PTH(1−34)(PTH)、またはPTH−βarrの毎日の投与の効果を、(a)WTマウスの腰椎、(b)β−アレスチン2−/−の腰椎、(c)WTマウスの大腿骨骨幹部、および(d)β−アレスチン2−/−マウスの大腿骨骨幹部において測定した。これらの結果は、PTH−βarrの同化的効果が、大腿骨において見られる皮質骨とは対照的に、WT動物の、腰椎に代表される骨梁において存在していたことを示す。PTH−βarrで処理したWTマウスにおいて見られる骨ミネラル密度の増大は、β−アレスチン2−/−マウスにおいては見られず、このことは、観察されたPTH−βarrの同化的効果がβ−アレスチン依存性のものであることを示している。データは、少なくとも7回の独立したマウスでの測定の平均±SEMに相当する。(:媒体で処理した対照と比較してP<0.05、**:p<0.01)。
【図4】図4は、β−アレスチン2依存性のシグナル伝達は、骨梁の増大に寄与するが、皮質骨の増大には寄与しない。腰椎の定量的マイクロCTを用いて、媒体、PTH(1−34)(PTH)、またはPTH−barrの、処理の8週間後のWTマウスおよびβ−アレスチン2−/−マウスにおける(a)骨梁(Tb)密度(BV/TV)、(b)Tbの厚さ、および(c)Tbの数に対する効果を決定した。PTHおよびPTH−βarrはWT処理動物においてtbの密度、tbの厚さ、およびtbの数を増大させた。PTH−βarrの効果は、β−アレスチン2−/−動物においては見られず、このことは、同化的な骨形成のb−アレスチン介在性のメカニズムと一致していた。データは、少なくとも7回の独立したマウスでの測定の平均±SEMに相当する。(***:媒体で処理したWTマウスと比較してP<0.001、**:p<0.01、:P<0.05、++:媒体で処理したβ−アレスチン2−/−マウスと比較してP<0.01、+:P<0.05)。
【図5】図5は、PTH−βarrは、血清オステオカルシンを増大させ、尿デオキシピリジノリン(DPD)の排出に対する効果を有さない。(a)骨形成の生化学マーカーである血清オステオカルシンを、媒体、PTH(1−34)(PTH)、またはPTH−βarrで処理した4週間後にWTマウスおよびβ−アレスチン2−/−マウスにおいて測定した。これらの結果は、PTHおよびPTH−βarrが、WTの処理マウスにおけるプラセボと比較して、血清オステオカルシンレベルを顕著に増大させることを示す。プラセボと比較して、PTH−βarrで処理したβ−アレスチン2−/−マウスにおいて、血清オステオカルシンに増大はなかった。これらの結果は、図3および図4に示される骨梁形成の増大と一致し、骨に対するPTH−βarrの同化的効果がβ−アレスチン依存性であることと一致するものである。(b)骨分解および骨吸収のマーカーである24時間の尿DPDもまた、媒体、PTH、またはPTH−βarrで処理した4週間後にWTマウスおよびβ−アレスチン2−/−マウスにおいて測定した。これらの結果は、PTH−βarrが、プラセボと比較して、WTマウスまたはβ−アレスチン2−/−マウスにおける骨吸収に対して顕著な効果を有さないことを示す。PTHで処理したβ−アレスチン2−/−マウスにおける尿DPDの排出の増大は、骨吸収が主にGタンパク質依存性のメカニズムを介して仲介され得ることを示す。データは、少なくとも7回の独立したマウスでの測定の平均±SEMに相当する。(***:媒体で処理したWTマウスと比較してP<0.001、:P<0.05、+++:媒体で処理したβ−アレスチン2−/−マウスと比較してP<0.001、++:P<0.01)。
【図6】図6は、異なるβ−アレスチン依存性経路およびGタンパク質依存性経路が、骨調節タンパク質のPTH受容体刺激性の遺伝子発現に寄与する。骨調節タンパク質のPTH受容体刺激性の転写に対する、β−アレスチン介在性のシグナル伝達の寄与を決定するために、媒体、PTH(1−34)(PTH)、またはPTH−βarrで処理したWTマウスおよびβ−アレスチン2−/−マウスの頭蓋冠からRNAを単離した。遺伝子発現を定量的RT−PCRによって分析した。(a)骨形成と一致して、PTHおよびPTH−βarrはWTの頭蓋冠におけるオステオカルシンの発現を増大させた。β−アレスチン2−/−マウスにおいて、PTHはオステオカルシンの発現の顕著な増大を誘発し、このことは、Gタンパク質介在性の骨形成と一致するものである。β−アレスチン2−/−マウスにおいて、PTH−βarrはオステオカルシンの発現を低減させ、このことは、PTH−βarrがβ−アレスチン依存性のメカニズムを介してオステオカルシンの発現を誘発し、一方でさらに内因性PTHのGタンパク質のシグナル伝達を阻害することを裏付けるものである。(b)および(c)。PTH−βarrは、破骨細胞の動員のRANKL調節因子またはOPG調節因子の発現に作用しない。データは、6回の独立した実験から得られた平均±SEMに相当する。(***:媒体で処理したWTマウスと比較してP<0.001、**:P<0.01、:P<0.05、+++:媒体で処理したβ−アレスチン2−/−マウスと比較してP<0.001、+:P<0.05)。
【図7】図7は、1型PTH/PTHrp受容体の概略図である。予想されるアミノ酸配列を、膜貫通ドメインの予想される位置と共に示す。大きなN末端を図面の一番上に示す。三角形は、23個のアミノ酸からなるシグナル配列の切断部位を示す。黒い丸は、N結合グリコシル化部位に相当する。
【図8】図8は、骨芽細胞と破骨細胞との間の関係の概略図である。骨芽細胞が活性化されると、RANKLおよびOPGが生産および分泌される。RANKLは前破骨細胞を活性化させ、骨芽細胞に変化させる。OPGはRANKLを阻害する。オステオカルシンは、骨芽細胞が活性化されていることの指標であり、DPDは、破骨細胞の活性が活性化されていることを示すマーカーである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(IV 詳細な説明)
本化合物、本組成物、本品目、本装置、および/または本方法が開示および記載される前には、これらは、別段の規定がない限り、特定の合成方法もしくは特定の組換えバイオテクノロジー法には限定されないか、または、別段の規定がない限り特定の試薬には限定されず、当然のことながら、それ自体変化し得ることを理解されたい。また、本明細書において用いられる用語は特定の実施形態を記載することのみを目的としたものであり、限定されることを意図したものではないことも理解されたい。
【0008】
本明細書において示される(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)は、Gタンパク質の結合についてのインバースアゴニストとして作用するが、一方でβ−アレスチン依存性のERK1/2の活性化を刺激する。さらに、完全なPTH1RアゴニストであるPTH(1−34)およびβ−アレスチン選択的なアゴニストである(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)は、初代骨芽細胞における転写活性化の異なるプロフィールを誘発する。さらに、インビボでは、(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)での処理は野生型における骨梁密度を増大させるが、β−アレスチン2−/−マウスにおいては増大させず、このことは、β−アレスチンシグナル伝達経路の活性化が、同化的応答を生じさせるために十分であることを示している。また、インビボでは、(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)は、破骨細胞の数、RANKLリガンド、または骨吸収を増大させることなく、骨芽細胞の数、オステオカルシンおよびOPGの合成を顕著に増大させる。
【0009】
A.Gタンパク質共役型受容体
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、哺乳動物ゲノムにおける細胞表面受容体の最大のおよび最も多様なスーパーファミリーを構成する。機能的GPCRをコードする約800の異なる遺伝子が、ヒトゲノムの1%超を構成している(Lander、2001年;Venter、2001年)。選択的スプライシングにより、1000から2000の個別の受容体タンパク質が発現し得ると推定されている。このような進化的な多様性により、神経伝達物質およびペプチドホルモンから臭気物質および光子までの、細胞外刺激の極めて広大なアレイを検出する受容体が生じる。神経伝達におけるGPCRの機能は、生理学的ホメオスタシスおよび再生の神経内分泌制御を指示し、血行動態および中間代謝を調節し、かつ、複数の細胞型の成長、増殖、分化、および死に影響する。臨床使用されている全ての薬剤の半分超は、GPCRを標的とすると推定され、内因性GPCRリガンドを模倣して受容体へのリガンドの接近を遮断するか、またはリガンドの生産を調節するために作用する(Flower、1999年)。
【0010】
配列類似性、水治療法のプロット、ならびに大量の生化学的データおよび突然変異原性のデータは、全てのGPCRが共通の7回膜貫通ドメイン構造を有しているという結論を裏付けるものである。膜貫通ドメインは、最も高い程度の配列保存を共有しているが、細胞内および細胞外ドメインは、サイズおよび複雑性において広範な多様性を示す。受容体の細胞外領域および膜貫通領域はリガンドの結合に関与するが、細胞内ドメインは、シグナル伝達および受容体機能のフィードバック調節に重要である。N−グリコシル化の1つまたは複数の部位はN末端内に存在するか、または、頻度は低いが、細胞外ループ内に存在する。ほとんどのGPCRは共通して、正常なタンパク質のフォールディングに必須なe1とe2との間のジスルフィド架橋に由来する2つのCys残基、およびパルミトイル化部位として役立つC末端ドメインにおける別のCys残基を有している。この脂質修飾により、推定上の第4の細胞内ループが形成される。
【0011】
GPCRをそれらのリガンドまたは配列類似性に基づいて分類するいくつかの分類系が考案されている。広く用いられているKolakowskiのAからFの分類系(Kolakowski、1994年)は、例えば、GPCRを6つのファミリーに分け、そのうちの3つ(ファミリーA、B、およびC)は既知のヒト受容体の大部分を含む。この系において、ファミリーAは、ロドプシン関連受容体を構成し、生体アミンおよび他の小さな非ペプチドリガンド、ケモカイン、オピオイドおよび他の小ペプチド、プロテアーゼ応答性受容体、ならびに糖タンパク質ホルモンの受容体を含む、飛びぬけて最大の群である。2番目に大きな群であるファミリーBのGPCRは、グルカゴン、カルシトニン、および副甲状腺ホルモンなどの高分子量ペプチドホルモンに結合する受容体を含む。最も小さい群であるファミリーCは、代謝型グルタミン酸受容体、GABA受容体、およびカルシウム感知受容体を含む。
【0012】
多くの種から得られたゲノムワイドのデータが利用可能になっているため、GPCRの系統発生をより詳細に形にすることが可能になっている。多くのGPCRの染色体位置および配列のフィンガープリントの分析により、FredrikssonらはGRAFS分類系を提案し、この系において、受容体は5つのファミリー、すなわちグルタミン酸、ロドプシン、Adhesion、Frizzled/Taste2、およびセクレチンに分類される(Fredriksson、2003年)。GRAFSファミリーにおけるGPCRは、共通の祖先から生じ、遺伝子複製およびエキソンシャッフリングを介して進化した。GRAFS系は、ヘテロ三量体Gタンパク質を介してシグナル伝達するとは通常は考えられないFrizzled受容体と、味覚受容体のTAS2群との間の提示された関連などの、いくつかの驚くべき関係を含む。このような系統発生上の関連は、「Gタンパク質共役型受容体」という用語が、多様なシグナル伝達メカニズムを用いる7回膜貫通受容体のスーパーファミリーに対しては部分的な誤称であり得ることを示唆する。
【0013】
全てのGPCRは、ヘテロ三量体Gタンパク質に対するリガンド応答性グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として機能する。受容体の細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインに「第1メッセンジャー」ホルモンが結合すると、立体構造の変化が引き起こされ、それが細胞内受容体ドメインを介して伝達され、受容体とその同族Gタンパク質との間の結合が促進される。受容体は、Gαサブユニット上でのGTPからGDPへの交換を触媒することによるGタンパク質の活性化、およびGβγサブユニットヘテロ二量体からのGTP結合型Gαサブユニットの解離を刺激する。解離すると、遊離したGα−GTPおよびGβγサブユニットは、アデニル酸シクラーゼ、ホスホリパーゼのCβアイソフォーム、およびイオンチャネルなどの、酵素エフェクターの活性を調節し、小分子の「第2メッセンジャー」を生じさせる。第2メッセンジャーは、次に、中間代謝に関与する主要な酵素を調節するプロテインキナーゼの活性を制御する。シグナル伝達は、Gαサブユニットの固有のGTPase活性がGタンパク質を不活性なヘテロ三量体の状態に戻すまで継続する。
【0014】
1.GPCRタンパク質−タンパク質相互作用およびGPCRシグナル伝達
GPCRシグナル伝達の従来のパラダイムは、受容体の活性化に対する迅速な細胞の応答のほとんどを説明するのに十分であるが、他のタンパク質−タンパク質相互作用は、本明細書に記載されるようなGPCR活性の多様性を説明するものである。(Freedman、1996年;Hall、2002年;Brady、2002年;Maudsley、2005年;Luttrell、2005年;Luttrell、2006年;Milligan、2001年;Angers、2002年;Sexton、2001年;Foord、1999年、El Far、2002年;Bockaert、2003年)。これらのタンパク質−タンパク質相互作用には、GPCR二量体の形成、GPCRと受容体活性修飾タンパク質(RAMP)との相互作用、ならびに、受容体の細胞内ループおよびC末端へのPDZドメイン含有足場タンパク質および非PDZドメイン足場タンパク質の結合が含まれる。これらの相互作用は、GPCRの薬理および輸送を変化させ、受容体を特定の細胞内ドメインに局在化させ、シグナル伝達を決定前の経路に限定し、かつ効率的な活性化のために下流のエフェクターを準備する。細胞膜の面内における受容体、Gタンパク質、およびエフェクターのランダムな衝突の結果生じるよりもむしろ、GPCRのシグナル伝達は、多タンパク質の「シグナルソーム」に高度に事前組織化される。
【0015】
本明細書において論じられるように、GPCRから生じる2つの広範なシグナル伝達の枝は、β−アレスチン枝およびGタンパク質枝である。Gタンパク質枝よりもβ−アレスチン枝を選択的に活性化させる組成物および方法、ならびにβ−アレスチン枝よりもGタンパク質枝を選択的に活性化させる組成物および方法が開示される。本明細書において示されるこの選択的な活性化は、特定の生物学的活性をもたらし、疾患状態および疾患の治療に関連するものである。
【0016】
2.β−アレスチンは、GPCRシグナル伝達のための、アゴニスト調節性足場Bとして機能する。
【0017】
アレスチンは、同種のGPCRの脱感作および隔離のプロセスにおいて中心的な役割を担う4つのGPCR結合タンパク質のファミリーである(Luttrell、2005年;Ferguson、2001年)。2つのアレスチンアイソフォームである視覚アレスチン(アレスチン1;Shinohara、1987年;Yamaki、1987年)および錐体アレスチン(Murakami、1993年;Craft、1994年)は、網膜においてほぼ排他的に発現し、主に光受容体の機能を調節するために存在する。非視覚アレスチンであるβ−アレスチン1(アレスチン2;Lohse、1990年)およびβ−アレスチン2(アレスチン3;Attramandal、1992年)は、ゲノム内の他の600個以上のGPCRのほとんどの活性を調節する。アレスチンは、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ(GRK)によってC末端のSer/Thr残基のクラスター上でリン酸化されているGPCRを強固におよび特異的に結合し(Lefkowitz、1993年a)、さらなるGタンパク質の活性化を立体的に妨げる。そして当然のことながら、現在の臨床使用における全ての薬剤の半分超はGPCRを標的とすると推定され、内因性GPCRリガンドを模倣して受容体へのリガンドの接近を遮断するか、またはリガンドの生産を調節するために作用する。
【0018】
アレスチンの結合はまた、GPCRのエンドサイトーシスまたは隔離も制御する。ほとんどのGPCRはアゴニスト誘発性の隔離を受け、ほとんどの場合、そのプロセスはクラスリン被覆ピットを介したダイナミン依存性のエンドサイトーシスを伴う(Zhang、1996年)。視覚アレスチンを除く2つのβ−アレスチンは、C末端調節ドメインにおいて、クラスリンおよびAP−2複合体のβ2アダプチンサブユニットにそれぞれ関連し、クラスリン被覆ピットにおける受容体のクラスタリングをもたらす、LIEF/LモチーフおよびRxRモチーフを含む(Krupnick、1997年;Laporte、1999年)。内在化すると、GPCR−アレスチン複合体は、初期エンドソームに標的化され、そこで前記複合体は、再感作と細胞膜への再利用とのいずれかのために分類されるか、または分解に標的化される。受容体−β−アレスチン相互作用の持続期間は、内在化受容体の運命の主要な決定要因であり、エンドサイトーシスの際にβ−アレスチンから解離する受容体は迅速に再利用される傾向があるが、安定な受容体−β−アレスチン複合体に由来する受容体はゆっくりと再利用されるか、またはリソソームに標的化され分解される(Oakley、1999年)。
【0019】
触媒性のGPCR−Gタンパク質相互作用とは異なり、β−アレスチンは安定な二分子複合体におけるGPCRを結合し、ここでそれらは、エンドサイトーシス機構に受容体を物理的に結合しているアダプターとして機能する。アレスチン結合型受容体は、従来のGPCR−Gタンパク質の「三重複合体」(Gurevich、1999年;Holst、2001年)に類似している、高いアゴニスト親和性の状態にあり、前記三重複合体は、それにより、何人かの著者が受容体−アレスチン複合体のことを「選択的三重複合体」であると記載することになるものである(Gurevich、1999年)。この複合体がそれ自体GPCRシグナル伝達物質であるということは発見であり、この発見により、β−アレスチンがGPCR隔離の状況においてのみではなく細胞のシグナル伝達系への活性GPCRの結合においてもアダプターとして作用するという仮定が導かれている(Luttrell、2005年a;Luttrell、2005年b;Miller、2001年;Perry、2002年a;Luttrell、2002年a;Shenoy、2003年;Shenoy、2005年a;Shenoy、2005年b;Shenoy、2005年c8)。触媒活性を有する多くのタンパク質が、β−アレスチンを結合し、アゴニストに占有されたGPCRへのβ−アレスチン依存性の動員を受けることが示されている。これらには、Srcファミリーのチロシンキナーゼ(Luttrell、1999年a;DeFea、2000年a;Barlic、2000年)、細胞外シグナル調節キナーゼ1および2(ERK1/2)とc−JunのN末端キナーゼ3のマイトジェン応答性タンパク質(MAP)キナーゼとのカスケードの構成要素(McDonald、2000年;DeFea、2000年b;Luttrell、2001年;Tohgo、2002年;Tohgo、2003年;Wel、2003年;Caunt、2006年;Gesty−Palmer、2006年;Jafri、2006年)、E3ユビキチンリガーゼであるMdm2(Shenoy、2001年)、ならびにcAMPホスホジエステラーゼであるPDE4D3/5(Perry、2002年b)がある。
【0020】
いくつかのシグナル伝達タンパク質、例えばERK1/2が、β−アレスチンアイソフォームの両方に明らかに結合する一方で、他のもの、例えばJNK3は選択的に結合し、アイソフォーム選択的なシグナル伝達の可能性を生じさせることに注意されたい。
【0021】
1.アゴニストが結合したGPCRは2つのシグナル経路を活性化させる
GPCRへのアゴニストの結合は、2つのアンタゴニストプロセスを同時に開始させ、すなわち、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化によりGタンパク質依存性のシグナル生成が生じ、受容体の脱感作により受容体−Gタンパク質の結合が弱まり、経時的なシグナル強度が徐々に弱まる(Freedman、1996年;Luttrell、2005年a)。β−アレスチンの結合は受容体とGタンパク質とを切り離すため、Gタンパク質依存性およびβ−アレスチン依存性のシグナルの伝達は、少なくとも個別の受容体のレベルでは相互排他的である。
【0022】
本明細書において、多タンパク質のシグナルソーム複合体のβ−アレスチン依存性の形成により、受容体が脱感作されエンドサイトーシス経路に入ると開始されるGPCRシグナル伝達の異なる第2の経路が開始されることが開示される。実際、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化から生じるERK1/2活性化の経過と、アンジオテンシンAT1a、リゾホスファチジン酸(LPA)、I型副甲状腺ホルモン(PHT)、およびβ2アドレナリン受容体(β2−AR)に対するERK1/2活性化複合体のβ−アレスチン依存性の形成から生じるERK1/2活性化の経過とを比較すると、β−アレスチン依存性のERK1/2活性化の開始は、Gタンパク質のシグナル伝達が徐々に弱まることと同時であり、受容体が内在化すると持続することが示される(Luttrell、2001年;Ahn、2004年;Azzi、2003年;Gesty−Palmer、2005年;Shenoy、2006年)。
【0023】
2.GPCRはERK1/2活性を調節するためにいくつかのメカニズムを用いる。
【0024】
GPCRがERK1/2 MAPキナーゼカスケードを活性化させる能力は、それらによる細胞の増殖、分化、および走化性移動の調節の中心である(van Biesen、1996年;Gutkind、1998年;Luttrell、1999年b;Luttrell、2002年b)。MAPキナーゼは、連続的にリン酸化し下流の構成要素を活性化させる3つのキナーゼでそれぞれ構成されている、一連の並列的なキナーゼカスケードを介して調節される。ERK1/2カスケードにおいて、例えば、近接したキナーゼであるcRaf−1およびB−Rafは、MEK1およびMEK2をリン酸化および活性化させる。MEK1およびMEK2は、二機能性のスレオニン/チロシンキナーゼであり、これらは次に、ERK1/2のリン酸化および活性化を行う(Pearson、2001年)。現在では、複数のシグナルがGPCR刺激性のERK1/2の活性化に寄与することが明らかになっている。これらには、従来の第2のメッセンジャー依存性経路、例えば、小さなGタンパク質であるPap1の、Gタンパク質依存性、アデニリルシクラーゼ依存性、ならびにPKA依存性およびEPAC依存性の活性化(Vossler、1997年;Grewal、2000年)と、c−Raf1のプロテインキナーゼC依存性の活性化(Hawes、1995年)と、焦点接着キナーゼであるPyk2のカルシウムおよび細胞接着依存性の活性化(Lev、1995年;Dikic、1996年)とが含まれる。GPCRはまた、EGF(Daub、1997年;Prenzel、1999年)および血小板由来成長因子(PDGF)受容体(Heeneman、2000年;Linseman、1995年)などの受容体チロシンキナーゼを「転写活性化」することにより、Ras依存性のERK1/2の活性化を引き起こし得る。さらに、プロテアーゼ応答性受容体であるPAR2、AT1AR、β2AR、PTH1R、およびニューロキニンNK−1、ならびにバソプレッシンV2受容体を含む、いくつかのGPCRは、受容体結合型β−アレスチンをリガンド調節性足場として用いることによりERK1/2を活性化することが示されている(DeFea、2000年b;Luttrell、2000年;Tohgo、2002年;Tohgo、2003年;Wei、2003年;Caunt、2006年;Gesty−Palmer、2006年;Jafri、2006年)。両方のβ−アレスチンアイソフォームは、ERK1/2カスケードの構成要素キナーゼと複合体を形成し、前記アイソフォームと配列相同性を有していないS.cervisiaeの足場タンパク質であるSTE5p(Elion、2001年)に機能的に類似した態様でリガンド調節性足場として作用すると考えられている。この多様性を考慮すると、ほとんどの細胞型においてGPCRがERK1/2を活性化するために2つ以上のメカニズムを用い得ること、または1つもしくは複数の主要なメカニズムが受容体および細胞型によって変化することは当然のことである。おそらく、驚くべきことは、ERK1/2の機能が活性化のメカニズムによって決定され、いくつかのシグナルが核移行を促進し、他のシグナルが細胞質によるERK1/2の保持を促進することであると考えられる。
【0025】
C.副甲状腺ホルモン
PTH(副甲状腺ホルモン)は、カルシウムおよびリン酸塩のホメオスタシスの主要な調節因子であるが、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)は重要な発達上の役割を有する。両ペプチドは、同一の受容体であるPTH/PTHrP受容体、すなわち1型副甲状腺ホルモン受容体を介してシグナル伝達を行う。それは、骨芽細胞介在性の骨形成を直接的に刺激すること、ならびに破骨細胞の分化および機能を促進するRANKLなどの可溶性因子の生産を上方調節することにより骨吸収を間接的に刺激することが知られている。その結果、骨代謝に対するPTH投与の正味の効果は、これらの2つの反対のプロセスの相対的な活性化によって決定される。連続的に暴露させると、骨吸収は新たな骨形成を上回り、その結果、骨軟化症が生じるが、断続的に暴露させると、正味の骨形成が刺激される。骨芽細胞−破骨細胞の結びつきにより強いられる制限にも関わらず、PTHアゴニストペプチドであるPTH(1−34)の断続的な投与は、重篤な骨粗しょう症の治療のための現在の同化的療法の基礎を形成するものである。
【0026】
PTHは、84個のアミノ酸からなる循環ホルモンである。それは副甲状腺で生産され、主に骨および腎臓に作用して細胞外カルシウムレベルを正常範囲内に維持する。PTHは、まず低い細胞外カルシウムに応じて副甲状腺の主細胞から分泌されるが、細胞外リン酸塩の上昇にも応じて分泌される。PTHは、腺により生産され、その後血流を介して移動してその標的組織で作用するという点で、真性ホルモンである。PTHおよびPTHrPのN末端の34個のアミノ酸は、PTH/PTHrP受容体の効率的な活性化に十分である。腎臓においては、PTHは、遠位尿細管におけるカルシウムの再吸収を増大させることにより、カルシウムの排出を低減させる。PTHはさらに、近位尿細管の刷子縁膜に双方とも局在化する、2つの異なるリン酸ナトリウム共輸送体であるNPT−2aおよびNPT−2cの発現レベルに主に作用することにより、リン酸塩の再吸収を阻害する。骨においては、PTHの効果は等しく複雑であり、基質から血液内へのカルシウムおよびリン酸塩の正味の放出をもたらす。(Gensure RC、Gardella TJ、Jueppner H. Parathyroid hormone and parathyroid hormone−related peptide, and their receptors、Biochem Biophys Res Commun. 328巻:666〜678頁、2005年を参照されたい)。
【0027】
PTH1Rリガンドの例示的な配列を配列番号2〜3に示す。
【0028】
1.副甲状腺ホルモン類似体
副甲状腺ホルモンについての構造−活性の関係が、様々なペプチド断片および/または修飾副甲状腺断片類似体を用いて広く研究されている(Potts、2005年)。β−アレスチン依存性のシグナル伝達の現象は、この研究の大部分が実施されたときには認められていなかったため、ほとんどのPTH由来ペプチドは、Gタンパク質依存性のcAMP生成またはGq/11依存性のホスファチジルイノシトールの生産についてのアゴニストまたはアンタゴニストであるとしか特徴付けられていなかった。
【0029】
少なくとも2つのPTH断片、すなわちhPTH(1−34)および(Leu27)シクロGlu22−Lys26hPTH(1−31)NH2が、骨粗しょう症の治療のために開発されている。これらのうちの1つである組換え(r)hPTH(1−34)は、重篤な骨粗しょう症の治療についてFDAの認可を受けており、Forteoという商品名で市販されている。(Leu27)シクロGlu22−Lys26hPTH(1−31)NH2は、Ostabolin−Cという商品名で、第II相臨床試験におけるものである。さらに、天然のホルモンであるhPTH(1−84)も臨床試験を完了している(Whitfield、2006年)。全ての3つのこれらのペプチドは、骨の成長を刺激し、エストロゲンの欠乏により弱められる骨の微細構造を強化し、かつさらなる骨折を低減させるが、hPTH(1−34)およびhPTH(1−84)は、本明細書において論じられるようなβ−アレスチンに偏った特定のリガンドではないが、(Leu27)シクロGlu22−Lys26hPTH(1−31)NH2は、それが偏ったリガンドであるかを明らかにするための試験が行われていない。
【0030】
Gタンパク質シグナル伝達またはβ−アレスチンシグナル伝達の選択的な関連の特性に関する偏ったアゴニズム(偏ったリガンド)に関して、副甲状腺ホルモン類似体(D−Trp12、Tyr34)PTH(7−34)は、PTH1受容体−Gタンパク質の結合についてインバースアゴニストとして作用し、一方で、アレスチン依存性の隔離を促進する(Gardella、1996年;Sneddon、2004年)。Trp−PTHrP(1−36)は、β−アレスチンの動員または脱感作を誘発することなくGタンパク質結合およびcAMPの生産を促進する、反対の活性プロフィールを有する(Bisello、2002年)。β−アレスチン選択的な偏ったアゴニストである(D−Trp12、Tyr34)PTH(7−34)は、インビトロでβ−アレスチン依存性のERK1/2の活性化を誘発するが、PTH1R介在性のcAMP生産のインバースアゴニスト(阻害剤)として機能することが示されている(Gesty−Palmer、2006年)。
【0031】
D.1型副甲状腺ホルモン受容体(PTH1R)
PTHおよびPTHrPは、クラスBのGタンパク質共役型受容体である、共通の受容体であるPTH/PTHrP受容体を介して作用する(図7)。このファミリーの受容体には、セクレチン、血管作動性腸管ペプチド、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、成長ホルモン放出ホルモン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド、胃抑制ペプチド、カルシトニン、およびわずかな他のペプチドホルモンに対する受容体が含まれる。
【0032】
インビトロでPTHを結合する第二の受容体であるPTH2受容体は、PTH/PTHrP受容体に最も近く関連するものである(51%のアミノ酸同一性)。PTHはヒトPTH2受容体でアゴニストとして作用するが、ラットまたは魚のこの受容体のホモログではアゴニズムをほとんど示さないかまたは全く示さない。PTHrPは、既知のPTH2受容体のいずれにおいてもアゴニズムを示さない。ラットPTH2受容体によるPTHへの応答の欠如、および視床下部へのこの受容体の主要な局在化は、カルシウムのホメオスタシスの調節とは異なる生理学的役割を示唆するものである。実際、さらなる研究により、この受容体への天然のリガンドであると考えられる、PTHおよびPTHrPに構造的に関連する、39個のアミノ酸からなるペプチドであるTIP39が発見された。TIP39およびPTH2受容体についての仮定される生物学的活性には、痛覚が含まれ、また、下垂体ホルモンの分泌の調節も含まれる可能性がある。(Gensure RC、Gardella TJ、Juppner H. Parathyroid hormone and parathyroid hormone−related peptide, and their receptors. Biochem Biophys Res Commun. 328巻:666〜678頁、2005年を参照されたい)。
【0033】
PTH活性は、腎臓および骨において高度に発現する7回膜貫通受容体(7TMR)であるI型PTH/PTH関連ペプチド受容体(PTH1R)を介して仲介される。PTH1R受容体によって活性化される細胞内シグナル伝達経路には、Gタンパク質介在性のアデニル酸シクラーゼ−cAMP−PKAシグナル伝達経路およびGq/11介在性のPLCβ−イノシトール1,4,5−トリスリン酸(IP)−PKCシグナル伝達経路が含まれる。さらに、PTHは、細胞特異的なおよびGタンパク質依存性の態様で、PKAおよびPKCの両方を介して、Raf−MEK−ERKのMAPキナーゼ(MAPK)カスケードを活性化させる。
【0034】
本明細書において、Gタンパク質シグナル伝達に対する負の調節効果をもたらすことに加え、Src、Ras、raf、ERK1/2、JNK3、およびMAPKキナーゼ4(MKK4)、ならびにJNK3などのアクセサリーエフェクター分子との足場形成複合体の形成を介したシグナル伝達物質としても作用する、β−アレスチンが開示される。PTH1RのPTH刺激は、細胞膜へのβ−アレスチン1およびβ−アレスチン2の両方の移行、β−アレスチンとの受容体の関連、受容体/β−アレスチン複合体の内在化、およびERK1/2の活性化を促進する。本明細書において、GPCRのβ−アレスチン活性化経路をGタンパク質経路よりも活性化させる組成物が開示される。
【0035】
E.GPCR関連疾患
1.骨障害
骨障害は、本明細書において論じられるβ−アレスチンに偏ったリガンドを用いて治療することができる。例えば、加齢に起因する骨粗しょう症(老人性骨粗しょう症)、性腺機能低下症(女性における更年期後の、または男性におけるアンドロゲン低下による)、内因性または外因性の副腎皮質ホルモン過剰(臨床上のプレドニゾン投与)が全て、偏ったリガンドを用いて治療され得る。
【0036】
骨折修復(外傷性骨折)または移植片の固定(骨移植)は、本明細書において開示される偏ったリガンドを用いて治療または増強することができる。例えば、本明細書に開示される偏ったリガンドを、骨折を有する対象、または、移植片が骨に固定するように置かれている、移植片を有する対象に投与することにより、偏ったリガンドを投与しない場合または対照よりも、対象の骨折はより早く治癒し得、移植片はより早く固定し得る。
【0037】
骨粗しょう症は、重要な臨床上の健康への脅威である。アメリカ合衆国においては、約1000万人がこの疾患を有していると推定され、約3400万人以上が、骨量が少なく、そのため骨粗しょう症を発現するリスクが増している状態である。
【0038】
骨粗しょう症は主に、骨芽細胞介在性の骨形成と破骨細胞介在性の骨吸収との間の正味の不均衡により生じる。この不均衡により、骨量が低下し、微細構造が破壊され、それにより、骨が脆弱化して骨折しやすくなり、かつ罹患および死亡が増大する。関連する医療費は毎年180億ドルを超えている。
【0039】
しかし、骨に対するPTHの作用は複雑である。PTHは骨に対する同化的効果および異化的効果の両方を有することが知られている。骨の再構築におけるPTH介在性シグナルの重要性を裏付けるデータにもかかわらず、これらの効果についての基本メカニズムはほとんど知られていない。
【0040】
2.GPCR関連疾患および偏ったリガンド
開示される偏ったリガンドで治療することが可能なGPCR関連疾患には、肺および心血管の疾患、アレルギー/アレルギー性疾患、免疫疾患、精神障害、心理障害、皮膚疾患、神経疾患、自律神経疾患、炎症性疾患、内分泌または代謝疾患(例えば糖尿病および肥満)、泌尿生殖器障害、ならびに眼の疾患(例えば緑内障)が含まれる。
【0041】
a)Gタンパク質選択的な偏ったアゴニスト
Gタンパク質を活性化させるが対照ほどにはβ−アレスチンを動員しない薬剤は、脱感作を用いることなくGPCR活性を維持することが望ましい状況において有利であり得る。例には、気管支ぜんそく(気管支拡張を促進するための、長時間作用型のβ2−アドレナリン受容体アゴニスト)、アレルギー性鼻炎(鼻づまりの再発を生じさせずに鼻づまりを緩和するα1−アドレナリン受容体アゴニスト)が含まれる。心原性ショックまたは敗血性ショックの治療における短期間の非経口使用のための変力薬、例えば、タキフィラキシーを生じさせないα−アドレナリン受容体アゴニストは、現在の作用物質よりも優れている可能性がある。
【0042】
3.PTH1Rは2つの異なるシグナル伝達経路を有する
Gタンパク質依存性およびβ−アレスチン依存性のシグナル伝達は、2つの異なる、かつ薬理学的に分離したメカニズムである。PTH1Rを刺激すると、一方はGタンパク質依存性経路であり他方はβ−アレスチン依存性である2つの時間的に異なるメカニズムによってERK1/2 MAPキナーゼが活性化すること、およびPTH1Rシグナル伝達のこれらの2つのメカニズム(Gタンパク質対β−アレスチン)が、受容体のGタンパク質共役型立体構造とβ−アレスチン共役型立体構造との間を区別するPTH類似体の使用を介して選択的に刺激され得ることが示されている。
【0043】
β−アレスチン2は、マウスモデルにおいて、骨の再構築および断続的なPTH(1−34)の投与の同化的効果に影響することが示されている。Ferrariらにより、PTH(1−34)を断続的に投与すると、β−アレスチン2−/−マウスにおいて骨のミネラル含有量および骨梁の体積が増大しなかったことが報告された。この効果は、Gタンパク質共役型シグナル伝達の従来のβ−アレスチンの脱感作の低下、cAMPの増大および維持に起因するものであった。本明細書において、骨形成を誘発するβ−アレスチン経路に偏ったリガンドおよびこれらの偏ったリガンドの使用方法が開示される。
【0044】
F.リガンド
1.アゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニスト、偏ったリガンド、偏ったアゴニスト
a)GPCR機能の三重複合体モデル
GPCRは、ヘテロ三量体Gタンパク質に対するリガンド応答性のグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として機能することにより、細胞内でシグナルを伝達する。Gタンパク質の活性化は、細胞内膜貫通ループおよびカルボキシル末端に伝達される、膜貫通7らせん受容体核の三次構造におけるホルモン誘導性の変化を介して開始される。これらの立体構造の変化は、受容体が細胞内Gタンパク質と相互作用し、ヘテロ三量体Gタンパク質のアルファサブユニット上のGDPのGTPへの変化を触媒する能力を変化させる。GTP結合型アルファサブユニットは、その同族な下流のエフェクター、例えばアデニル酸シクラーゼまたはホスホリパーゼCを刺激し、細胞外刺激の存在についての情報を細胞内環境に伝える。
【0045】
多くのGPCRを伴うこれまでの研究により、受容体が、Gタンパク質を活性化させる能力に違いのある2つの立体構造(活性:R、不活性:R)の間で自然に平衡しているという仮説が確認されている(Samamaら、1993年)。天然の状態では、受容体は、膜貫通らせんの束内における細胞内相互作用によって主にR立体構造に維持されており、すなわち、自然な平衡は不活性なR状態に大きく傾いている。アゴニストの結合または選択的な突然変異生成は、これらの制約を軽減し、Gタンパク質の結合を可能にするR立体構造に受容体が「緩む」ことを可能にする。これらの現象を説明するために開発された、拡張された三重複合体モデルにより、リガンドの固有の有効性が、RとRとの間の平衡を変化させるその能力を反映していることが提示されている(Lefkowitzら、1993年)。
【0046】
b)多状態モデルに対する3つの状態
三重複合体モデルは、アゴニズム、アンタゴニズム、部分的アゴニズム、およびインバースアゴニズムの特性を十分に説明し得るが、このモデルは、機能的受容体の2つの状態のみの存在にしか適応しないという点で依然として限定されている。2状態モデルにおいて、すなわち単一のR立体構造のみが存在している場合には、受容体のアゴニスト薬理は、測定されている応答に関わらず同一でなくてはならない。しかし、アゴニストの相対的有効性の矛盾した逆転が、5HT2c受容体(Bergら、1998年)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)受容体(Spenglerら、1993年)、ドーパミンD2受容体(Mellerら、1992年)、およびニューロキニンNK−1受容体(Saganら、1999年)を含む、2つ以上の刺激−応答エレメントを活性化させるいくつかのGPCRについて記載されている。異なる刺激経路の活性化は、メカニズムのシグナル型の強さを介して、すなわち、高度に有効なアゴニストが2つの経路を活性化させ得る一方で弱いアゴニストはより感受性の高い経路のみを活性化させ得ることを介して生じ得るが、同一の受容体に作用する異なるアゴニストの相対的有効性の逆転は、2状態モデルに基づいては説明することができない。
【0047】
GPCRがリガンド特異的な活性化状態を示すという実証により、同一の受容体の2つ以上の活性状態が存在し得ることが提示された。これらの3状態または多状態モデルにおいて、アゴニストは、結合に関与する細胞内ドメインの領域を異なるGタンパク質プールに差異的に晒すことにより、受容体の異なる「活性な」立体構造を誘発すると予想される。実際、α−アドレナリン受容体の多Gタンパク質共役型状態は、様々なグアニンヌクレオチド類似体を用いて区別することができる(Seifertら、1999年)。同様に、いくつかの受容体突然変異が、受容体により通常活性化されるシグナル伝達経路のうちの1つのシグナル伝達経路に制限される構成的活性を生じさせることが記載されている(Perezら、1996年)。これらの突然変異はおそらく、受容体の立体構造の異性化を、特定のGタンパク質結合立体構造を促進する特定のサブセットに制限する。突然変異受容体の挙動は、その野生型の対応物に対して先験的に推定することはできないが、これらのデータは、異なるアゴニストリガンドを結合する際に生じ得るような、Gタンパク質結合ドメインの外側の受容体構造におけるわずかな変化が、Gタンパク質の選択性を変化させ得ることを明らかに示している(Kenakin、2002年)。
【0048】
生物物理学的な証拠もまた、異なるGPCRリガンドが受容体の微細立体構造の異なる集団を誘発するという概念を裏付けるものである(Ghanouniら、2001年)。Cys265で蛍光標識されたβ2アドレナリン受容体の蛍光寿命分光分析は、受容体の立体構造における連続的な変動を反映する、プローブについての環境のガウス分布を明らかにしている。アゴニストまたはアンタゴニストを加えると、リガンドは受容体の立体構造の分布を変化させ、これは立体構造の特定のサブセットの安定化を反映している。さらに、異なるアゴニストは、受容体の立体構造の異なるアレイを選択し、これは、リガンド選択的な活性状態の誘発と一致している。
【0049】
複数の活性受容体の立体構造の存在は、アゴニストが受容体活性化の程度だけでなく「質」も変化させ得ることに説得力を持たせるものである。受容体上の細胞質ループの異なる領域が異なるGタンパク質を活性化することは知られている(Wadeら、1999年)。したがって、受容体の異なる三次立体構造を生じさせるアゴニストが、これらの異なるGタンパク質活性化配列を晒して、差異的な、または「偏った」Gタンパク質の活性化を生じさせ得ることは予想可能である。このGPCR活性化の多状態モデルは、「受容体シグナル伝達のアゴニスト特異的な輸送」とも呼ばれるシグナル伝達選択的なアゴニズムの概念についての理論的基礎をもたらすものである(Kenakin、1995年b;Kenakin、1995年c)。
【0050】
したがって、GPCRは、Gタンパク質経路およびβアレスチン経路などの様々な経路を介して、下流のシグナル伝達を活性化させない状態と下流のシグナル伝達を活性化させる状態との間で自然に平衡している。さらに、複数のシグナル伝達経路が存在するため、変化すると下流のシグナル伝達事象を生じさせ得る、2つ以上の平衡が存在する。Maudsley, S.、Martin, B. およびLuttrell, L.M. Perspectives in Pharmacology: The origins of diversity and specificity in G protein−coupled receptor signaling. J. Pharm. Exp. Therapeutics. 314巻:485〜494頁、2005年を参照されたい。
【0051】
立体構造状態に関する定義は以下の通りである。アゴニストは、GPCRなどの受容体に結合し、リガンド結合していない(結合していない)状態と比較してシグナル伝達活性の増大を促進する1つまたは複数の受容体立体構造を安定化させるリガンドである。リガンドは、インビボでの受容体活性を調節する1つまたは複数の天然に存在する化合物の結合に関与する、全てまたは一部の受容体構造と相互作用する。この用語には、リガンド結合ポケットの外側の受容体領域とは相互作用するがリガンドに対する受容体の応答を変化させるような様式で受容体構造を変化させる化合物である、アロステリック調節因子は含まれない。
【0052】
アンタゴニストは、1つまたは複数の活性状態と不活性状態との間の受容体の自然な平衡に測定可能に作用することなく、GPCRなどの受容体に結合するリガンドである。それは、リガンド結合していない状態と比較して、受容体立体構造の自然な平衡に対して測定可能な効果を有さない。アンタゴニストは結合について競合し、「活性化」リガンドの効力を低下させるため、その存在は、立体構造の平衡を変化させるリガンドが同時に存在する場合にのみ検出することができる。ニュートラルアンタゴニストは、「インバースアゴニスト」の効力を、アゴニストの効力と同様になるように低減させる。
【0053】
インバースアゴニストは、GPCRに結合し、受容体の不活性な立体構造を安定化させて、リガンド結合していない状態と比較して、受容体の基底シグナル伝達活性を低減させるリガンドである。基底活性が低い条件下では、インバースアゴニストは、シグナル伝達の有効性の従来の測定を用いてアンタゴニストから区別することができない。
【0054】
偏ったリガンドは、受容体の考えられる下流のシグナル伝達活性の一部に対して、アゴニスト、アンタゴニスト、またはインバースアゴニストとして作用するあらゆるリガンドである。
【0055】
偏ったアゴニストは、GPCRなどの受容体に結合し、受容体の考えられる活性な立体構造のサブセットを安定化させて、リガンド結合していない状態と比較して、完全な応答プロフィールの一部のみを生じさせる、偏ったリガンドである。異なる受容体の立体構造を反映する複数の活性状態の概念において具体化されているように、偏ったアゴニストは、測定されるシグナル伝達出力に依存して、異なるアゴニスト、アンタゴニスト、またはインバースアゴニストの特性を示す。
【0056】
偏ったリガンドは、アゴニスト、アンタゴニスト、またはインバースアゴニストとしてのその特徴付けが、測定されるシグナル伝達出力に依存して異なることを意味する、真の「有効性の逆転」を生じさせる。例えば、1型PTH受容体の偏ったアゴニストである(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)は、cAMPの生産の活性化に関してはインバースアゴニストとして挙動する(リガンド結合していない状態と比較して基底活性を低下させる)が、アレスチン依存性の受容体内在化またはシグナル伝達の活性化に関してはアゴニストとして挙動する(リガンド結合していない状態と比較して、受容体の内在化およびERK1/2の活性を増大させる)。
【0057】
G.定義
明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形態には、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数形の指示対照が含まれる。したがって、例えば、「1つの薬学的担体」という記載には、2つ以上のそのような担体の混合およびそれに類似したものが含まれる。
【0058】
本明細書においては対照が用いられている。特定の実施形態において、対照は、アゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニスト、または偏ったリガンドなどの参照リガンドであり得る。参照リガンドとは、GPCRなどの特定の受容体に対する既知の活性プロフィールを有するあらゆるリガンドを意味する。特定の実施形態において、対照とは、あらゆる比較的状態を言い、例えば、活性化状態に対する、不活性化状態である対照状態である。例えば、対照は、cAMPの生産またはERK1/2のリン酸化の特定のアッセイにおいて未刺激のものであり得る。あるいは、対照は、β−アレスチンの発現が下方調節されている条件下におけるERK1/2リン酸化アッセイの実施などの、シグナル伝達経路における下流のエレメントが遺伝的に欠失している条件下において実施される比較であり得る。対照は当技術分野においてよく理解されており、特段の記載がない場合、対照は、それが用いられる状況によって理解され得るものである。
【0059】
同化的な骨形成は、骨量の正味の増大を生じさせる、骨吸収を上回る新たな骨形成の速度の増大である骨形成である。それは、骨形成を刺激しないが破壊の速度を遅くする、骨量の増大の純粋な抗吸収アプローチから区別されるという点で、同化的である。
【0060】
本明細書において、範囲は、「おおよその」1つの特定の値から、および/または「おおよその」別の特定の値までとして表され得る。このような範囲が表される場合、別の実施形態には、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までが含まれる。同様に、値が先行詞「約」を用いて近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。それぞれの範囲の終点が、他の終点と関連して、また他の終点から独立して、重要であることがさらに理解されよう。また、本明細書には多くの値が開示されていること、およびそれぞれの値が本明細書において、その値自体に加えて「おおよその」特定の値としても開示されていることが理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。また、当業者に適切に理解されるように、値がその値「未満または等しい」と開示されている場合、「その値を超えるかまたは等しい」およびその値の間の可能性のある範囲もまた開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「10未満のまたは等しい」および「10を超えるかまたは等しい」も開示されている。また、本出願を通して、データが多くの異なる形式で示されており、このデータが終点および開始点ならびにデータポイントのあらゆる組み合わせについての範囲に相当することも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント15が開示されている場合、10および15を超える、10および15を超えるかまたは等しい、10および15未満の、10および15未満のまたは等しい、ならびに10および15に等しいが、10から15と同様に開示されていると考えられる。
【0061】
組成物または品目における特定のエレメントまたは構成要素の重量部についての、明細書および最終的な特許請求の範囲における記載は、重量部を表記する組成物または品目におけるそのエレメントまたは構成要素と、あらゆる他のエレメントまたは構成要素との間の重量の関係を示す。したがって、2重量部の構成要素Xと5重量部の構成要素Yとを含む化合物において、XおよびYは、2:5の重量比で存在しており、追加の構成要素が組成物に含まれているかに関わらずこのような比率で存在している。
【0062】
別段の記載がない限り、構成要素の重量パーセントは、その構成要素が含まれる製剤または組成物の総重量に基づくものである。
【0063】
この明細書および以下の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義される多くの用語が記載される。
【0064】
「任意選択の」または「任意選択により」は、その次に記載されている事象または状況が生じても生じなくてもよく、その記載が、前記事象または状況が生じる場合および生じない場合を含むことを意味する。
【0065】
この出願を通して、様々な文献が参照されている。これらの文献の全体の開示は、この出願が関連する技術の背景をより完全に記載するために、参照することにより、本明細書によってこの出願に組み込まれる。開示される参考文献はまた、参照の理由となる文において論じられている、参考文献に含まれる材料について、参照することにより本明細書に個別にかつ特異的に組み込まれる。
【0066】
H.組成物
開示する組成物を調製するために使用した構成要素、および本明細書で開示する方法内で使用した組成物自体を開示する。これらおよび他の物質を本明細書で開示し、これらの物質の組合せ、部分集合、相互作用、群などを開示するとき、かつ一方で、これらの化合物のそれぞれの様々な個別的および全体的組合せおよび順列の、具体的な言及が明確に開示されない可能性があるとき、それぞれは本明細書で具体的に企図され記載されることは理解されよう。例えば、特定の偏ったリガンドを開示し論じ、かつ偏ったリガンドを含めた幾つかの分子に施すことができる幾つかの修飾を論じる場合、具体的に企図されるのは、それに反することが具体的に示されない限り、偏ったリガンドのそれぞれおよび個々の組合せおよび順列ならびに可能である修飾である。したがって、1クラスの分子A、B、およびCを開示し、かつ1クラスの分子D、E、およびFならびに組合せ分子の一例、A−Dを開示する場合、ひいてはそれぞれが個別に列挙されない場合でさえ、それぞれは個別的および全体的に組合せを意味すると企図され、A−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E、およびC−Fが開示されると考えられる。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せも開示される。したがって、例えば、A−E、B−F、およびC−Eの部分集合が開示されると考えることが可能である。この概念は、開示する組成物を作製および使用する方法中の工程だけには限られないが、それらを含めた、本出願の全ての態様に適用する。したがって、実施することができる様々な追加的工程が存在する場合、これらの追加的工程のそれぞれは、開示する方法の任意の特異的実施形態または実施形態の組合せで実施することができることは理解されよう。
【0067】
1.配列類似性
本明細書で論じるように、用語相同性および同一性の使用は、類似性と同じことを意味することは理解されよう。したがって、例えば、語句相同性の使用を2つの非天然配列間で使用する場合、これは必ずしもをこれら2配列間の進化的関係を示さず、そうではなくてそれらの核酸配列間の類似性または関連性に着目していることは理解されよう。2つの進化的関係がある分子間の相同性を決定するための方法の多くは、配列類似性を測定する目的で、それらは進化的関係があるかまたはそうではないかとは無関係に、任意の2つ以上の核酸またはタンパク質に通常適用される。
【0068】
一般に、本明細書で開示する遺伝子およびタンパク質の、任意の既知の変異体および誘導体、または生じる可能性がある変異体および誘導体を定義するための1つの方法は、特定の既知の配列との相同性の観点で、変異体および誘導体を定義することによる方法であることは理解されよう。本明細書で開示する特定の配列のこの同一性は、本明細書の他の箇所でも論じる。一般に、本明細書で開示する遺伝子およびタンパク質の変異体は、言及する配列または天然配列と、少なくとも約70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセントの相同性を典型的に有する。当業者は、2つのタンパク質または遺伝子などの核酸の相同性の決定の仕方を容易に理解する。例えば、相同性がその最高レベルであるように2つの配列にアラインメントをとらせた後に、相同性を計算することができる。
【0069】
相同性を計算する別の方法は公開アルゴリズムによって実施することができる。比較用の配列の最適アラインメントは、Smith and Waterman Adv.Appl.Math.2:482(1981年)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch、J.MoL Biol.48:443(1970年)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988年)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575Science Dr.、Madison、WI中)のコンピュータによる実行によって、または綿密な調査によって実施することができる。
【0070】
例えば核酸アラインメントと関係がある最小限の物質に関する参照によって本明細書に組み込む、Zuker、M.Science244:48〜52頁、1989年、Jaegerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:7706〜7710頁、1989年、Jaegerら、Methods Enzyme.183:281〜306頁、1989年中に開示されたアルゴリズムによって、同じ型の相同性を核酸に関して得ることができる。任意のこれらの方法を典型的に使用することができること、および特定の幾つかの場合、これらの様々な方法の結果は異なる可能性があるが、当業者は、これらの方法の少なくとも1つで同一性が見られる場合、配列は言及する同一性を有し、かつ本明細書で開示されると言えることを理解していることは理解されよう。
【0071】
例えば、本明細書で使用するように、別の配列と特定の相同率を有するとして列挙する配列は、前に記載した任意の1つまたは複数の計算法によって計算した列挙済みの相同性を有する配列を指す。例えば、Zukerの計算法を使用して、第一の配列が第二の配列と80パーセントの相同性を有すると計算した場合、任意の他の計算法により計算して、第一の配列が第二の配列と80パーセントの相同性を有していない場合でさえ、第一の配列は本明細書で定義するように、第二の配列と80パーセントの相同性を有する。別の例として、Zukerの計算法とPearsonおよびLipmanの計算法の両方を使用して、第一の配列が第二の配列と80パーセントの相同性を有すると計算した場合、SmithおよびWatermanの計算法、NeedlemanおよびWunschの計算法、Jaegerの計算法、または任意の他の計算法により計算して、第一の配列が第二の配列と80パーセントの相同性を有していない場合でさえ、第一の配列は本明細書で定義するように、第二の配列と80パーセントの相同性を有する。さらに別の例として、それぞれの計算法を使用して、第一の配列が第二の配列と80パーセントの相同性を有すると計算した場合、第一の配列は本明細書で定義するように、第二の配列と80パーセントの相同性を有する(ただし、実際、異なる計算法は異なる計算上の相同率をもたらすことが多いはずである)。
【0072】
2.ハイブリダイゼーション/選択的ハイブリダイゼーション
用語ハイブリダイゼーションは、プライマーまたはプローブおよび遺伝子などの、少なくとも2つの核酸分子間の配列誘導型相互作用を典型的には意味する。配列誘導型相互作用は、ヌクレオチド特異的に2つのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体またはヌクレオチド誘導体の間で起こる相互作用を意味する。例えば、GとCの相互作用またはAとTの相互作用は配列誘導型相互作用である。典型的には配列誘導型相互作用は、ヌクレオチドのWatson−Crick面またはHoogsteen面で起こる。2つの核酸のハイブリダイゼーションは、当業者に知られている幾つかの条件およびパラメータによって影響を受ける。例えば、反応の塩濃度、pH、および温度はいずれも、2つの核酸分子がハイブリダイズするかどうかに影響を与える。
【0073】
2つの核酸分子間の選択的ハイブリダイゼーションに関するパラメータは、当業者によく知られている。例えば、幾つかの実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件はストリンジェントハイブリダイゼーション条件として定義することができる。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション工程と洗浄工程の片方または両方の温度と塩濃度の両方によって制御される。例えば、選択的ハイブリダイゼーションを得るためのハイブリダイゼーションの条件は、Tm(半数の分子がそれらのハイブリダイゼーションパートナーから解離する融解温度)より約12〜25℃低い温度での高イオン強度溶液(6×SSCまたは6×SSPE)中でのハイブリダイゼーション、次に洗浄温度がTmより約5℃〜20℃低いように選択した温度と塩濃度の組合せでの洗浄を含み得る。温度および塩条件は、その中でフィルタに固定した参照DNAのサンプルを対象とする標識核酸とハイブリダイズさせ、次いで異なるストリンジェンシーの条件下で洗浄する予備実験において、実験によって容易に決定される。ハイブリダイゼーション温度は典型的には、DNA−RNAおよびRNA−RNAハイブリダイゼーションに関してより高い。これらの条件を前に記載したように使用して、または当技術分野で知られているように使用して、ストリンジェンシーを得ることができる(核酸のハイブリダイゼーションと少なくとも関係がある物質に関する参照によって本明細書に組み込む、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、1989年;Kunkelら、Methods Enzymol.1987年:154:367、1987年)。DNA:DNAハイブリダイゼーションに関する好ましいストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、約68℃(水溶液中)、6×SSCまたは6×SSPE中、次に68℃での洗浄であり得る。ハイブリダイゼーションおよび洗浄のストリンジェンシーは、望ましい場合、望ましい相補性の度合いが低下するとき、およびさらに、変動性を検索する任意の領域のG−CまたはA−Tの豊富度に応じて、然るべく低減させることが可能である。同様に、いずれも当技術分野で知られているように、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のストリンジェンシーは、望ましい場合、望ましい相同性が増大するとき、およびさらに、高い相同性が望ましい任意の領域のG−CまたはA−Tの豊富度に応じて、然るべく増大させることが可能である。
【0074】
選択的ハイブリダイゼーションを定義するための別の方法は、他の核酸と結合した核酸の1つの量(割合)に着目することによる方法である。例えば、幾つかの実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセントの制限核酸が非制限核酸と結合するときである可能性がある。典型的には、非制限プライマーは例えば、10または100または1000倍過剰である。この型のアッセイは、制限プライマーと非制限プライマーの両方が、例えばそれらのkの10倍または100倍または1000倍未満である、または核酸分子の1つのみが10倍または100倍または1000倍である、または核酸分子の片方もしくは両方がそれらのkを超える条件下で実施することができる。
【0075】
選択的ハイブリダイゼーションを定義するための別の方法は、望ましい酵素による操作を促進するためにハイブリダイゼーションが必要とされる条件下で、酵素による操作を受けるプライマーの割合に着目することによる方法である。例えば、幾つかの実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセントのプライマーが、酵素による操作を促進する条件下で酵素により操作されるときである可能性があり、例えば酵素による操作がDNAの延長である場合、したがって選択的ハイブリダイゼーション条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセントのプライマー分子が延長されるときである可能性がある。好ましい条件は、操作を実施する酵素に適しているとして、製造者によって示される条件または当技術分野で示される条件も含む。
【0076】
相同性と同様に、2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションのレベルを決定するために本明細書で開示する、様々な方法が存在することは理解されよう。これらの方法および条件は2つの核酸分子間の異なる割合のハイブリダイゼーションをもたらす可能性はあるが、他に示さない限り、これらの方法のいずれかのパラメータの適合が十分であり得ることは理解されよう。例えば80%のハイブリダイゼーションが必要とされ、かつハイブリダイゼーションがこれらの方法のいずれか1つにおいて必要とされるパラメータ内で起こる限り、それは本明細書に開示されると考えられる。
【0077】
組成物または方法が、集合的または単独のいずれかで、ハイブリダイゼーションを決定するためのこれらの基準のいずれか1つを満たす場合、それは本明細書に開示する組成物または方法であることを、当業者が理解していることは理解されよう。
【0078】
3.核酸
例えばPTHおよび本明細書に開示する任意の他のタンパク質またはペプチドを例えばコードする核酸、ならびに様々な機能核酸を含む核酸系である、本明細書に開示する様々な分子が存在する。開示する核酸は、例えばヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド置換体で構成される。これらおよび他の分子の非制限的な例は本明細書で論じる。例えばベクターが細胞中で発現されるとき、発現されるmRNAは典型的にはA、C、G、およびUで構成され得ることは理解されよう。同様に、例えばアンチセンス分子を、例えば外因性送達によって細胞または細胞環境に導入する場合、アンチセンス分子は、細胞環境中でアンチセンス分子の分解を低減するヌクレオチド類似体で構成されることが有利であることは理解されよう。
【0079】
a)ヌクレオチドおよび関連分子
ヌクレオチドは、塩基部分、糖部分およびリン酸塩部分を含有する分子である。ヌクレオチドは、それらのリン酸塩部分および糖部分によって1つに連結させ、ヌクレオシド間連結を生成することが可能である。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン−9−イル(A)、シトシン−1−イル(C)、グアニン−9−イル(G)、ウラシル−1−イル(U)、およびチミン−1−イル(T)であってよい。ヌクレオチドの糖部分は、リボースまたはデオキシリボースである。ヌクレオチドのリン酸塩部分は5価リン酸である。ヌクレオチドの非制限的な例は、3’−AMP(3’−アデノシン一リン酸)または5’−GMP(5’−グアノシン一リン酸)であり得る。
【0080】
ヌクレオチド類似体は、塩基、糖、またはリン酸塩部分のいずれかに対する幾つかの型の修飾を含有するヌクレオチドである。ヌクレオチドに対する修飾は当技術分野でよく知られており、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、および2−アミノアデニン、ならびに糖またはリン酸塩部分における修飾を含み得る。
【0081】
ヌクレオチド置換体は、ペプチド核酸(PNA)などの、ヌクレオチドと同様の機能性を有するがリン酸塩部分を含有しない分子である。ヌクレオチド置換体は、Watson−CrickまたはHoogsteen形式で核酸を認識し得るが、リン酸塩部分以外の部分を介して1つに連結する分子である。ヌクレオチド置換体は、適切な標的核酸と相互作用するとき、二重らせん型構造に適合することができる。
【0082】
他の型の分子(コンジュゲート)とヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を連結させて、例えば細胞内への取り込みを高めることも可能である。コンジュゲートは、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体と化学的に連結させることが可能である。このようなコンジュゲートには、コレステロール部分などの脂質部分があるが、これらだけには限られない(Letsingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1989年、86、6553〜6556頁)。
【0083】
Watson−Crick相互作用は、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド置換体のWatson−Crick面との少なくとも1つの相互作用である。ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド置換体のWatson−Crick面は、プリン系ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド置換体のC2、N1、およびC6位置、およびピリミジン系ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド置換体のC2、N3、C4位置を含む。
【0084】
Hoogsteen相互作用は、二本鎖DNAの主溝中の露出した、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のHoogsteen面で起こる相互作用である。Hoogsteen面は、プリンヌクレオチドのN7位置およびC6位置の反応基(NH2またはO)を含む。
【0085】
b)配列
例えばPTH1Rおよび本明細書に開示しGenbankで開示される任意の他のタンパク質と関係がある、様々な配列が存在し、これらの配列および他の配列は、それらの全容およびその中に含有される個々の部分列に関して参照によって本明細書に組み込む。
【0086】
様々な配列を本明細書で与え、これらの配列および他の配列は、Genbank中、www.pubmed.gov.で見ることができる。当業者は、配列の不一致および差異の解明の仕方、および特定の配列、他の関連配列と関係がある組成物および方法の調節の仕方を理解している。本明細書に開示し当技術分野で知られている情報を考慮に入れて、プライマーおよび/またはプローブを任意の配列用に設計することができる。
【0087】
c)プライマーおよびプローブ
本明細書に開示する遺伝子と相互作用することができる、プライマーおよびプローブを含めた組成物を開示する。特定の実施形態では、プライマーを使用してDNA増幅反応をサポートする。典型的には、配列特異的にプライマーを延長させることが可能であり得る。配列特異的なプライマーの延長は、プライマーがハイブリダイズするかまたは他の場合は結合する核酸分子の配列および/または組成が、プライマーの延長によって生成する産物の組成または配列を誘導するかまたはそれに影響を与える任意の方法を含む。配列特異的なプライマーの延長は、したがって、PCR、DNA塩基配列決定、DNA延長、DNA重合、RNA転写、または逆転写を含むが、これらだけには限られない。配列特異的にプライマーを増幅する技法および条件が好ましい。特定の実施形態では、PCRまたは直接的塩基配列決定などのDNA増幅反応にプライマーを使用する。特定の実施形態では、非酵素的技法を使用してプライマーを延長することもでき、この場合例えば、プライマーを延長するために使用するヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、それらが化学反応して配列特異的にプライマーを延長するように修飾されることは理解されよう。典型的には、開示するプライマーは核酸または核酸の領域とハイブリダイズし、あるいはそれらは、核酸の相補配列または核酸の領域の相補配列とハイブリダイズする。
【0088】
d)機能核酸
機能核酸は、標的分子との結合または特異的反応の触媒などの、特異的機能を有する核酸分子である。機能核酸分子は以下のカテゴリーに分けることができるが、それらが限定的であることは意味しない。例えば機能核酸には、アンチセンス分子、アプタマー、リボザイム、三重らせん形成分子、および外側ガイド配列がある。機能核酸分子は、標的分子によって処理される特異的活性の影響因子、阻害剤、調節物質、および刺激剤として作用することができ、あるいは機能核酸分子は、任意の他の分子と無関係にde novo活性を有することができる。
【0089】
機能核酸分子は、DNA、RNA、ポリペプチド、または炭水化物鎖などの任意の高分子と相互作用することができる。したがって、機能核酸は、PTH1RのmRNAまたはPTH1RのゲノムDNAと相互作用することができ、あるいは機能核酸は、ポリペプチドPTH1Rと相互作用することができる。しばしば機能核酸を設計して、標的分子と機能核酸分子の間の配列相同性に基づいて他の核酸と相互作用させる。他の状況では、機能核酸分子と標的分子の間の特異的認識は、機能核酸分子と標的分子の間の配列相同性に基づかず、そうではなくて特異的認識が起こるのを可能にする三次構造の形成に基づく。
【0090】
アンチセンス分子を設計して、標準的または非標準的な塩基対形成のいずれかによって、標的核酸分子と相互作用させる。アンチセンス分子と標的分子の相互作用を設計して、例えばRNAseH介在性RNA−DNAハイブリッド分解によって、標的分子の破壊を促進する。代替的に、アンチセンス分子を設計して、転写または複製などの、通常標的分子上で生じ得るプロセシング機能を妨害する。アンチセンス分子は、標的分子の配列に基づいて設計することができる。標的分子の最もアクセス可能な領域を発見することによってアンチセンス効率を最適化するための、多数の方法が存在する。例示的な方法は、DMSおよびDEPCを使用するin vitroでの選択実験およびDNA修飾試験であり得る。アンチセンス分子は10−6、10−8、10−10、または10−12以下の解離定数(k)で標的分子と結合することが好ましい。アンチセンス分子の設計および使用に役立つ方法および技法の代表的なサンプルは、米国特許第5,135,917号、同第5,294,533号、同第5,627,158号、同第5,641,754号、同第5,691,317号、同第5,780,607号、同第5,786,138号、同第5,849,903号、同第5,856,103号、同第5,919,772号、同第5,955,590号、同第5,990,088号、同第5,994,320号、同第5,998,602号、同第6,005,095号、同第6,007,995号、同第6,013,522号、同第6,017,898号、同第6,018,042号、同第6,025,198号、同第6,033,910号、同第6,040,296号、同第6,046,004号、同第6,046,319号、および同第6,057,437号の以下の非制限的一覧において見ることができる。
【0091】
アプタマーは、好ましくは特異的に、標的分子と相互作用する分子である。典型的にはアプタマーは、ステム−ループまたはG−カルテットなどの明確な二次および三次構造にフォールディングした、15〜50塩基長の範囲の小さな核酸である。アプタマーは、ATP(米国特許第5,631,146号)およびテオフィリン(米国特許第5,580,737号)などの小分子、ならびに逆転写酵素(米国特許第5,786,462号)およびトロンビン(米国特許第5,543,293号)などの巨大分子と結合することができる。アプタマーは、10−12M未満のkで標的分子と非常に強く結合することができる。アプタマーは、10−6、10−8、10−10、または10−12未満のkで標的分子と結合することが好ましい。アプタマーは、非常に高度の特異性で標的分子と結合することができる。例えば、標的分子と他の分子の間の10000倍を超える結合親和性の違いを有し分子上の1箇所のみで異なる、アプタマーが単離されている(米国特許第5,543,293号)。アプタマーは、バックグラウンド結合分子に関するkdSより、少なくとも10、100、1000、10,000、または100,000倍低い標的分子に関するkを有することが好ましい。例えばポリペプチドに関する比較を行うとき、バックグラウンド分子は異なるポリペプチドであることが好ましい。例えば、PTH1Rアプタマーの特異性を決定するとき、バックグラウンドタンパク質は血清アルブミンである可能性がある。様々な異なる標的分子と結合させるためのアプタマーの作製および使用の仕方の代表的な例は、米国特許第5,476,766号、同第5,503,978号、同第5,631,146号、同第5,731,424号、同第5,780,228号、同第5,792,613号、同第5,795,721号、同第5,846,713号、同第5,858,660号、同第5,861,254号、同第5,864,026号、同第5,869,641号、同第5,958,691号、同第6,001,988号、同第6,011,020号、同第6,013,443号、同第6,020,130号、同第6,028,186号、同第6,030,776号、および同第6,051,698号の以下の非制限的一覧において見ることができる。
【0092】
リボザイムは、分子内または分子間のいずれかで、化学反応を触媒することができる核酸分子である。したがってリボザイムは触媒核酸である。リボザイムは分子間反応を触媒することが好ましい。ハンマーヘッドリボザイム(例えば、以下の米国特許第5,334,711号、同第5,436,330号、同第5,616,466号、同第5,633,133号、同第5,646,020号、同第5,652,094号、同第5,712,384号、同第5,770,715号、同第5,856,463号、同第5,861,288号、同第5,891,683号、同第5,891,684号、同第5,985,621号、同第5,989,908号、同第5,998,193号、同第5,998,203号、Ludwig and SproatによるWO9858058、Ludwig and SproatによるWO9858057、およびLudwig and SproatによるWO9718312があるが、これらだけには限られない)、ヘアピンリボザイム(例えば、以下の米国特許第5,631,115号、同第5,646,031号、同第5,683,902号、同第5,712,384号、同第5,856,188号、同第5,866,701号、同第5,869,339号、および同第6,022,962号があるが、これらだけには限られない)、およびテトラヒメナリボザイム(例えば、以下の米国特許第5,595,873号および同第5,652,107号があるが、これらだけには限られない)などの、天然系中で見られるリボザイムに基づいてヌクレアーゼまたは核酸ポリメラーゼ型反応を触媒する、幾つかの異なる型のリボザイムが存在する。天然系中には見られないが、遺伝子工学処理されてde novo特異的反応を触媒する、幾つかのリボザイムも存在する(例えば、以下の米国特許第5,580,967号、同第5,688,670号、同第5,807,718号、および同第5,910,408号があるが、これらだけには限られない)。好ましいリボザイムはRNAまたはDNA基質を切断し、およびより好ましくはRNA基質を切断する。リボザイムは典型的には、標的基質の認識および結合、ならびにその後の切断によって核酸基質を切断する。この認識は、大抵は標準的または非標準的な塩基対の相互作用に基づくことが多い。この性質によってリボザイムは核酸の標的特異的切断に関する特に優れた候補となる、何故なら、標的基質の認識は標的基質の配列に基づくからである。様々な異なる反応を触媒するリボザイムの作製および使用の仕方の代表的な例は、米国特許第5,646,042号、同第5,693,535号、同第5,731,295号、同第5,811,300号、同第5,837,855号、同第5,869,253号、同第5,877,021号、同第5,877,022号、同第5,972,699号、同第5,972,704号、同第5,989,906号、および同第6,017,756号の以下の非制限的一覧において見ることができる。
【0093】
三重らせん形成機能核酸分子は、二本鎖または一本鎖核酸のいずれかと相互作用することができる分子である。三重らせん分子が標的領域と相互作用するとき、Watson−CrickとHoogsteenの両方の塩基対形成に応じて1つの複合体を形成するDNAの3本の鎖がその中に存在する、三重らせんと呼ばれる構造が形成される。三重らせん分子が好ましい、何故ならそれらは、高い親和性および特異性で標的領域と結合することができるからである。三重らせん形成分子は、10−6、10−8、10−10、または10−12未満のkで標的分子と結合することが好ましい。様々な異なる標的分子と結合する三重らせん形成分子の作製および使用の仕方の代表的な例は、米国特許第5,176,996号、同第5,645,985号、同第5,650,316号、同第5,683,874号、同第5,693,773号、同第5,834,185号、同第5,869,246号、同第5,874,566号、および同第5,962,426号の以下の非制限的一覧において見ることができる。
【0094】
外側ガイド配列(EGS)は複合体を形成する標的核酸分子と結合する分子であり、かつこの複合体は、標的分子を切断するRNasePによって認識される。EGSを設計して、選択したRNA分子を特異的に標的化することができる。RNasePは、細胞内でトランスファーRNA(tRNA)をプロセシングする際に役立つ。標的RNA:EGS複合体形成を引き起こして天然tRNA基質を模倣するEGSを使用することによって、細菌のRNasePを動員してほぼ任意のRNA配列を切断することができる(Yale、and Forster and AltmanによるWO92/03566、Science238:407〜409頁(1990年))。
【0095】
同様に、真核生物のRNAのEGS/RNAseP対象切断を利用して、真核細胞内の望ましい標的を切断することができる(Yuanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:8006〜8010頁(1992年);YaleによるWO93/22434;YaleによるWO95/24489;Yuan and Altman、EMBO J14:159〜168頁(1995年)、およびCarraraら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)92:2627〜2631頁(1995年))。様々な異なる標的分子の切断を容易にするためのEGS分子の作製および使用の仕方の代表的な例は、米国特許第5,168,053号、同第5,624,824号、同第5,683,873号、同第5,728,521号、同第5,869,248号、および同第5,877,162号の以下の非制限的一覧において見ることができる。
【0096】
4.核酸送達
対象の細胞中への外因性DNAの投与および取り込み(すなわち、遺伝子導入またはトランスフェクション)を含む前に記載した方法において、当業者によって十分理解され得るように、開示する核酸は裸のDNAまたはRNAの形であってよく、あるいは核酸を細胞に送達するために核酸はベクター中に存在してよく、それによって抗体コードDNA断片はプロモーターの転写制御下にある。ベクターは、アデノウイルスベクター(Quantum Biotechnologies、Inc.Laval、Quebec、Canada)などの市販の調製物であってよい。細胞への核酸またはベクターの送達は、様々な機構による送達であってよい。一例として、送達は、LIPOFECTIN、LIPOFECTAMINE(GIBCO−BRL、Inc.、Gaithersburg、MD)、SUPERFECT(Qiagen、Inc、Hilden、Germany)およびTRANSFECTAM(Promega Biotec、Inc.、Madison、WI)、および当技術分野で標準的な手順に従い開発された他のリポソームなどの市販のリポソーム調製物を使用した、リポソームによる送達であってよい。さらに、開示する核酸またはベクターは、そのための技術がGenetronics、Inc.(San Diego、CA)から入手可能であるエレクトロポレーションによって、およびSONOPORATION機器(ImaRx Pharmaceutical Corp.、Tucson、AZ)によってin vivoにおいて送達することができる。
【0097】
一例として、ベクター送達は、組換え体レトロウイルスゲノムをパッケージすることができるレトロウイルスベクター系などの、ウイルス系による送達であってよい(例えば、Pastanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:4486、1988;Millerら、Mol.Cell.Biol.6:2895、1986を参照)。したがって組換え体レトロウイルスを使用して感染させ、それによって広義で中和的な抗体(またはその活性断片)をコードする核酸を感染細胞に送達することが可能である。哺乳動物細胞中に改変型核酸を導入する正確な方法は、当然ながら、レトロウイルスベクターの使用に限られない。アデノウイルスベクター(Mitaniら、Hum.Gene Ther、5:941〜948頁、1994年)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(Goodmanら、Blood84:1492〜1500頁、1994年)、レンチウイルスベクター(Naidiniら、Science272:263〜267頁、1996年)、偽型レトロウイルスベクター(Agrawalら、Exper.Hematol.24:738〜747頁、1996年)の使用を含めた、他の技法がこの手順に関して広く利用可能である。リポソーム送達および受容体介在性および他のエンドサイトーシス機構などの、物理的導入技法も使用することができる(例えば、Schwartzenbergerら、Blood87:472〜478頁、1996年を参照)。この開示する組成物および方法は、これらまたは他の一般に使用される遺伝子導入法のいずれかと併せて使用することができる。
【0098】
一例として、アデノウイルスベクター中の抗体コード核酸を対象の細胞に送達する場合、ヒトへのアデノウイルスの投与に関する用量は、注射当たり約10〜10プラーク形成単位(pfu)の範囲であってよいが、注射当たり1012pfuほど高くてよい(Crystal、Hum、Gene Ther.8:985〜1001頁、1997年;Alvarez and Curiel、Hum.Gene Ther.8:597〜613頁、1997年)。対象は単回投与を受けることができ、または追加的な注射が必要とされる場合、無期限および/または治療の有効性が確定するまで、それらは6ヶ月間隔(または当業者によって決定される他の適切な時間間隔)で繰り返すことができる。
【0099】
使用する場合、核酸またはベクターの非経口投与は、一般に注射によって特徴付けられる。注射剤は従来の形で、液体溶液または懸濁液のいずれか、注射前に液体に懸濁した懸濁液の溶液に適した固体系として、または乳濁液として調製することができる。非経口投与に関してより最近改定された手法は、一定用量が維持されるような徐放または持続放出系の使用を含む。例えば、参照によって本明細書に組み込む、米国特許第3,610,795号を参照。適切な製剤および治療用化合物の投与の様々な経路の追加的な考察に関しては、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)ed.A.R.Gennaro、Mack Publishing Company、Easton、PA 1995を参照。
【0100】
5.発現系
細胞に送達される核酸は、発現制御系を典型的には含有する。例えば、ウイルスおよびレトロウイルス系中に挿入される遺伝子は、所望の遺伝子産物の発現の制御を手助けするための、プロモーター、および/またはエンハンサーを通常含有する。プロモーターは一般に、転写開始部位に対して比較的固定された位置に存在するとき機能する、DNAの1つまたは複数の配列である。プロモーターはRNAポリメラーゼと転写因子の基本的相互作用に必要とされるコアエレメントを含有し、かつ上流エレメントおよび応答エレメントを含有することができる。
【0101】
a)ウイルスプロモーターおよびエンハンサー
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写を制御する好ましいプロモーターは、様々な供給源、例えば、ポリオーマ、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはサイトメガロウイルスなどのウイルスのゲノムから、または異種哺乳動物プロモーター、例えばベータアクチンプロモーターから得ることができる。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点も含有するSV40制限断片として都合よく得られる(Fiersら、Nature、273:113(1978年))。ヒトサイトメガロウイルスの即時型初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として都合よく得られる(Greenway、P.Jら、Gene18:355〜360頁(1982年))。当然ながら、宿主細胞または関連種由来のプロモーターも、本明細書において有用である。
【0102】
エンハンサーは一般に、転写開始部位から不定距離で機能するDNAの配列を指し、かつ転写単位に対して5’(Laimins、Lら、Proc.Natl.Acad.Sci.78:993(1981年))または3’(Lusky、M.Lら、Mol.Cell Bio.3:1108(1983年))のいずれかであってよい。さらに、エンハンサーはイントロン内(Banerji、J.Lら、Cell33:729(1983年))、およびコード配列自体中(Osborne、T.Fら、Mol.Cell Bio、4:1293(1984年))に存在する可能性がある。それらは通常10bp長と300bp長の間であり、かつそれらはシスで機能する。エンハンサーは、近隣プロモーターからの転写を増大させるために機能する。エンハンサーはしばしば、転写の調節を仲介する応答エレメントも含有する。プロモーターも、転写の調節を仲介する応答エレメントを含有することができる。エンハンサーはしばしば、遺伝子の発現の調節を決定する。哺乳動物遺伝子(グロブリン、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテインおよびインシュリン)由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている一方で、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが一般的な発現用に使用され得る。好ましい例は、複製起点(bp100〜270)の側面上のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の側面上のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーである。
【0103】
プロモーターおよび/またはエンハンサーは、それらの機能を誘発する光または特異的化学事象のいずれかによって、特異的に活性化させることが可能である。系はテトラサイクリンおよびデキサメタゾンなどの試薬によって調節することができる。ガンマ線照射などの照射、またはアルキル化化学療法剤への曝露によって、ウイルスベクター遺伝子の発現を高めるための幾つかの方法も存在する。
【0104】
特定の実施形態では、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域を、構成的プロモーターおよび/またはエンハンサーとして作用させて、転写される転写単位の領域の発現を最大にすることが可能である。特定のコンストラクトでは、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域は、それらが特定の時間で特定の型の細胞中でのみ発現される場合でさえ、全ての真核細胞型で活性がある。この型の好ましいプロモーターはCMVプロモーター(650塩基)である。他の好ましいプロモーターは、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(完全長プロモーター)、およびレトロウイルスベクターLTFである。
【0105】
あらゆる特異的な調節エレメントをクローニングして、メラノーマ細胞などの特定の細胞型中で選択的に発現される発現ベクターを構築するために、使用することができることが示されている。グリア起源の細胞中で遺伝子を選択的に発現させるために、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーターが使用されてきている。
【0106】
真核宿主細胞(酵母菌、真菌、昆虫、植物、動物、ヒトまたは有核細胞)中で使用される発現ベクターは、mRNA発現に作用し得る転写の停止に必要な配列も含有することができる。これらの領域は、組織因子タンパク質をコードするmRNAの非翻訳部分中のポリアデニル化セグメントとして転写される。3’非翻訳領域は転写停止部位も含む。転写単位は、ポリアデニル化領域をさらに含有することが好ましい。この領域の1つの利点は、転写単位がmRNAのようにプロセシングされ輸送され得る可能性をそれが増大させることである。発現コンストラクトにおけるポリアデニル化シグナルの同定および使用は十分確立している。相同的ポリアデニル化シグナルがトランス遺伝子コンストラクト中で使用されることが好ましい。特定の転写単位では、ポリアデニル化領域はSV40初期ポリアデニル化シグナルに由来し、かつ約400塩基からなる。転写単位が他の標準的な配列を単独または前述の配列と組合せて含有し、コンストラクトの発現形、または安定性を改善することも好ましい。
【0107】
b)マーカー
ウイルスベクターは、マーカー産物をコードする核酸配列を含むことができる。このマーカー産物を使用して、遺伝子が細胞に送達され、かつ送達された後に発現されているかどうかを決定する。好ましいマーカー遺伝子は、β−ガラクトシダーゼ、および緑色蛍光タンパク質をコードする大腸菌lacZ遺伝子である。
【0108】
幾つかの実施形態では、マーカーは選択可能なマーカーであってよい。哺乳動物細胞に適した選択可能なマーカーの例は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似体G418、ヒドロマイシン、およびピューロマイシンである。このような選択可能なマーカーが哺乳動物宿主細胞中に首尾よく移動されるとき、選択圧下に置かれた場合において、形質転換された哺乳動物宿主細胞は生存することができる。選択レジメの2つの広く使用されている異なるカテゴリーが存在する。第一のカテゴリーは、細胞の代謝および補充培地と無関係に増殖する能力を欠く突然変異細胞系の使用に基づく。2つの例は、CHO DHFR細胞およびマウスLTK細胞である。これらの細胞は、チミジンまたはヒポキサンチンなどの栄養素の添加無しで増殖する能力を欠いている。これらの細胞は、完全なヌクレオチド合成経路に必要な特定の遺伝子を欠いているので、失われたヌクレオチドが補充培地に提供されない限り、これらの細胞は生存することができない。培地の補充に対する代替は、完全なDHFRまたはTK遺伝子をそれぞれの遺伝子を欠く細胞に導入し、それによってそれらの増殖要件を改変することである。DHFRまたはTK遺伝子で形質転換しなかった個々の細胞は、非補充培地中で生存することができないであろう。
【0109】
第二のカテゴリーは、任意の細胞型で使用され突然変異細胞系の使用を必要としない選択スキームを指す優性選択である。これらのスキームは、宿主細胞の増殖を停止させるための薬剤を典型的に使用する。新規な遺伝子を有する細胞は薬剤耐性を伝達するタンパク質を発現する可能性があり、かつ淘汰を生存する可能性がある。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン(Southern P.and Berg、P.、J.Molec.Appl.Genet.1:327(1982年))、ミコフェノール酸(Mulligan、R.C.and Berg、P.Science209:1422(1980年))またはヒグロマイシン、(Sugden、Bら、Mol.Cell.Biol.5:410〜413頁(1985年))を使用する。この3つの例は、真核制御下で細菌遺伝子を利用して、適切な薬剤G418またはネオマイシン(ゲネチシン)、xgpt(ミコフェノール酸)またはヒグロマイシンに対する耐性をそれぞれ伝達する。他にはネオマイシン類似体G418およびピュラマイシンがある。
【0110】
6.ペプチド
a)タンパク質変異体
本明細書で論じるように、知られており本明細書で企図するPTH1Rタンパク質の多数の変異体が存在する。知られている機能的PTH1R菌株変異体以外に、開示する方法および組成物中でも機能するPTH1Rタンパク質の誘導体が存在する。タンパク質変異体および誘導体は当業者に十分理解されており、アミノ酸配列の修飾を含む可能性がある。例えば、アミノ酸配列の修飾は、3つのクラス:置換、挿入または欠失変異体の1つまたは複数に典型的には分類される。挿入は、アミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに1つまたは多数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。挿入は通常、アミノまたはカルボキシル末端融合、例えば約1〜4個の残基の挿入より小規模な挿入であり得る。実施例中に記載した誘導体などの、免疫原性融合タンパク質誘導体は、in vitroでの架橋または融合体をコードするDNAで形質転換した組換え体細胞培養による、標的配列に免疫原性を与えるほど十分大きなポリペプチドの融合によって作製する。欠失は、タンパク質配列からの1つまたは複数のアミノ酸残基の除去によって特徴付けられる。典型的には、約2〜6個を超えない残基が、タンパク質分子内の任意の1つの部位で欠失する。これらの変異体は通常、タンパク質をコードするDNA中のヌクレオチドを部位特異的突然変異誘発し、それによって変異体をコードするDNAを生成し、およびその後組換え体細胞培養においてDNAを発現させることによって調製される。知られている配列を有するDNA中の所定部位に置換型突然変異を施すための技法、例えばM13プライマー突然変異誘発およびPCR突然変異誘発はよく知られている。アミノ酸置換は典型的には一種の残基の置換であるが、一度に数ヵ所の異なる位置で生じる可能性があり、挿入は通常約1〜10個のアミノ酸残基であり、かつ欠失は約1〜30残基の範囲であり得る。欠失または挿入は隣接ペアに施されること、すなわち2残基の欠失または2残基の挿入が好ましい。置換、欠失、挿入またはこれらの任意の組合せを組合せて、最終的なコンストラクトにたどり着くことができる。突然変異はリーディングフレーム外の配列に施してはならず、二次mRNA構造を生成する可能性がある相補的領域は作製しないことが好ましい。置換型変異体は、その中で少なくとも1つの残基が除去され異なる残基がその位置に挿入されている変異体である。このような置換は一般に以下の表1および2に従って施され、保存的置換と呼ぶ。
【0111】
【表1−1】

【0112】
【表1−2】

【0113】
【表2】

機能または免疫学的同一性の実質的変化は、表2中の置換より保存性が低い置換を選択することによって、すなわち(a)例えばシートまたはらせん立体構造としての、置換の領域中のポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性または(c)側鎖の大部分の維持に対するそれらの影響がより著しく異なる残基を選択することによって施される。タンパク質の性質の最大の変化を生み出すと一般に予想される置換は、その中で(a)親水性残基、例えばセリルまたはトレオニルが、疎水性残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニルと(あるいはそれによって)置換される、(b)システインまたはプロリンが、任意の他の残基と(あるいはそれによって)置換される、(c)電気的に陽性の側鎖を有する残基、例えばリシル、アルギニル、またはヒスチジルが、電気的に陰性の残基、例えばグルタミルまたはアスパルチルと(あるいはそれによって)置換される、または(d)多量の側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、側鎖を有さない残基、この場合例えばグリシンと(あるいはそれによって)置換される、(e)硫酸化および/またはグリコシル化の部位の数を増大させることによる置換であり得る。
【0114】
例えば、1つのアミノ酸残基と生物学的および/または化学的に類似した他のアミノ酸残基の交換は、保存的置換として当業者に知られている。例えば、保存的置換は、1つの疎水性残基と他の残基、または1つの極性残基と他の残基の交換であり得る。置換は、例えばGly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの組合せを含む。それぞれの明確に開示する配列のこのような保存的置換された変形は、本明細書で提供するモザイクポリペプチド内に含まれる。
【0115】
置換または欠失突然変異誘発を利用して、N−グリコシル化(Asn−X−Thr/Ser)またはO−グリコシル化(SerまたはThr)の部位を挿入することができる。システインまたは他の不安定な残基の欠失も望ましい可能性がある。考えられるタンパク質分解部位、例えばArgの欠失または置換は、例えば塩基性残基の1つの欠失によって、またはグルタミニルまたはヒスチジル残基による1つの塩基の置換によって実施される。
【0116】
特定の翻訳後誘導体化は、発現されるポリペプチドに対する組換え体宿主細胞の作用の結果である。グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、対応するグルタミルおよびアスパリル残基に翻訳後脱アミド化されることが多い。あるいは、これらの残基は弱酸性条件下でアミド化される。他の翻訳後修飾には、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のo−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton、Proteins:Structure and Molecular Properties、W.H.Freeman & Co.、San Francisco79〜86ページ[1983年])、N末端アミンのアセチル化および、幾つかの場合、C末端カルボキシルのアミド化がある。
【0117】
本明細書で開示するタンパク質の変異体および誘導体を定義するための1つの方法は、特定の既知の配列との相同性/同一性の観点で、変異体および誘導体を定義することによる方法であることは理解されよう。例えば、配列番号1はPTH1Rの特定の配列を示す。具体的に開示するのは、言及する配列と少なくとも約70%または75%または80%または85%または90%または95%の相同性を有する、本明細書で開示するこれらのタンパク質および他のタンパク質の変異体である。当業者は、2つのタンパク質の相同性の決定の仕方を容易に理解する。例えば、相同性がその最高レベルであるように2つの配列にアラインメントをとらせた後に、相同性を計算することができる。
【0118】
相同性を計算する別の方法は公開アルゴリズムによって実施することができる。比較用の配列の最適アラインメントは、Smith and Waterman Adv.Appl.Math.2:482(1981年)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch、J.MoL Biol.48:443(1970年)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988年)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575Science Dr.、Madison、WI中)のコンピュータによる実行によって、または綿密な調査によって実施することができる。
【0119】
例えば核酸アラインメントと関係がある最小限の物質に関する参照によって本明細書に組み込む、Zuker、M.Science244:48〜52頁、1989年、Jaegerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:7706〜7710頁、1989年、Jaegerら、Methods Enzyme.183:281〜306頁、1989年中に開示されたアルゴリズムによって、同じ型の相同性を核酸に関して得ることができる。
【0120】
変異が保存的突然変異である特定の配列と少なくとも70%の相同性を有する実施形態など、保存的突然変異と相同性の記載を任意の組合せで1つに組合せることができることは理解されよう。
【0121】
開示する組成物中に取り込ませることが可能である、多数のアミノ酸およびペプチド類似体が存在することは理解されよう。例えば、多数のDアミノ酸、または表1および表2中に示すアミノ酸と異なる機能的置換を有するアミノ酸が存在する。天然に存在するペプチドの正反対の立体異性体、およびペプチド類似体の立体異性体を開示する。これらのアミノ酸は、tRNA分子に選択したアミノ酸を与えること、および例えばアンバーコドンを利用して遺伝子コンストラクトを工学処理して、部位特異的にペプチド鎖中に類似体アミノ酸を挿入することによって、ポリペプチド鎖中に容易に取り込ませることが可能である(Thorsonら、Methods in Molec.Biol.77:43〜73頁(1991年)、Zoller、Current Opinion in Biotechnology、3:348〜354頁(1992年);Ibba、Biotechnology & Genetic Engineering Reviews13:197〜216頁(1995年)、Cahillら、TIBS、14(10):400〜403(1989年);Benner、TIB Tech、12:158〜163頁(1994年);Ibba and Hennecke、Bio/technology、12:678〜682頁(1994年)、これらはいずれもアミノ酸類似体と関係がある物質に関して少なくとも参照によって本明細書に組み込む)。
【0122】
ペプチドと似ているが、天然ペプチド結合によって結合しない分子を生成することができる。例えば、アミノ酸またはアミノ酸類似体に関する結合は、CHNH−−、−−CHS−−、−−CH−−CH−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−および−−CHHSO−−を含むことができる(これらおよび他は、Spatola、A.F.in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids、Peptides、and Proteins、B.Weinstein、eds.、Marcel Dekker、New York、267頁(1983年);Spatola、A.F.、Vega Data(1983年3月)、Vol.1、Issue3、Peptide Backbone Modifications(一般評論);Morley、Trends Pharm Sci(1980年)463〜468頁;Hudson、Dら、Int J Pept Prot Res14:177〜185頁(1979年)(−−CHNH−−、CHCH−−);Spatolaら、Life Sci38:1243〜1249頁(1986年)(−−CHH−−S);Hann J.Chem.Soc Perkin Trans.I307〜314頁(1982年)(−−CH−−CH−−、シスおよびトランス);Almquistら、J.Med.Chem.23:1392〜1398頁(1980年)(−−COCH−−);Jennings−Whiteら、Tetrahedron Lett23:2533(1982年)(−−COCH−−);Szelkeら、European Appln、EP45665CA(1982年):97:39405(1982年)(−−CH(OH)CH−−);Holladayら、Tetrahedron.Lett24:4401〜4404頁(1983年)(−−C(OH)CH−−);およびHruby Life Sci31:189〜199頁(1982年)(−−CH−−S−−)中で見ることができ、これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込む)。特に好ましい非ペプチド結合は−−CHNH−−である。例えばb−アラニン、g−アミノ酪酸などの、ペプチド類似体は、結合原子間に2つ以上の原子を有することができることは理解されよう。
【0123】
アミノ酸類似体および類似体およびペプチド類似体は、より経済的な生成、増大した化学安定性、改善された薬理学的性質(半減期、吸収、効能、有効性など)、改変された特異性(例えば、広域の生物活性)、低減した抗原性、およびその他などの、改善された性質または望ましい性質を有することが多い。
【0124】
D−アミノ酸を使用してより安定したペプチドを生成することができる、何故ならDアミノ酸は、ペプチダーゼなどによって認識されないからである。同じ型のDアミノ酸(例えば、L−リシンの代わりにD−リシン)とコンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸の系統的置換を使用して、より安定したペプチドを生成することができる。システイン残基を使用して、2つ以上のペプチドを1つに環化または結合させることが可能である。これはペプチドを特定の立体構造に制約するのに有用である可能性がある。(Rizo and Gierasch Ann.Rev、Biochem.61:387(1992年)、参照によって本明細書に組み込む)。
【0125】
7.抗体
(1)一般的抗体
用語「抗体」は本明細書において広義に使用し、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を含む。完全な免疫グロブリン分子に加えて、これらの免疫グロブリン分子の断片またはポリマー、およびヒトまたはヒト化型の免疫グロブリン分子またはその断片も、本明細書で論じるようにPTH1RがGタンパク質経路よりβ−アレスチン経路を活性化するように、PTH1Rと相互作用するそれらの能力に関してそれらが選択される限り、用語「抗体」に含まれる。抗体は本明細書に記載するin vitroアッセイを使用して、または類似の方法によって、それらの望ましい活性に関して試験することができ、その後それらのin vivo治療および/または予防活性を、知られている臨床試験法に従い試験する。
【0126】
本明細書で使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に相同な集団の抗体から得られる抗体を指す、すなわち、その集団内の個々の抗体は、抗体分子の小さな部分集合中に存在し得るおそらく天然の突然変異以外は同一である。本明細書のモノクローナル抗体は、その中で重鎖および/または軽鎖の部分が、特定種に由来するかあるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、一方(1つまたは複数の)の鎖の残り部分が、別種に由来するかあるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、およびこのような抗体の断片を、それらが所望のアンタゴニスト活性を示す限り、具体的には含む(米国特許第4,816,567号およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855頁(1984年)を参照)。
【0127】
開示するモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を産生する任意の手順を使用して作製することができる。例えば、開示するモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein、Nature、256:495(1975年)によって記載されたハイブリドーマ法などの、ハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物を典型的には免疫剤で免疫処置して、免疫剤と特異的に結合し得る抗体を産生するかまたは産生することができるリンパ球を誘発する。あるいは、例えば本明細書に記載するようにPTH1Rなどの7tmrsを含有する細胞を使用して、リンパ球をin vitroで免疫処置することができる。
【0128】
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号(Cabillyら)中に記載された方法などの、組換えDNA法によって作製することもできる。従来の手順を使用して(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、開示するモノクローナル抗体をコードするDNAを容易に単離および塩基配列決定することができる。例えば、Burtonらへの米国特許第5,804,440号およびBarbasらへの米国特許第6,096,441号中に記載されたように、ファージディスプレイ技法を使用して、抗体または活性抗体断片のライブラリーを作製およびスクリーニングすることもできる。
【0129】
in vitro法は一価抗体を調製するのにも適している。抗体断片、特にFab断片を生成するための抗体の消化は、当技術分野で知られる通常の技法を使用して実施することができる。例えば、パパインを使用して消化を実施することができる。パパインによる消化の例は、1994年12月22日に公開されたWO94/29348および米国特許第4,342,566号中に記載されている。抗体のパパインによる消化は、それぞれが1つの抗原結合部位を有するFab断片と呼ばれる2つの同一抗原結合断片、および残留Fc断片を典型的に生成する。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有しさらに抗原と架橋することができる断片が生じる。
【0130】
断片は、他の配列と結合していても結合していなくても、非修飾抗体または抗体断片と比較して、抗体または抗体断片の活性が著しく改変または低下しないという条件で、特定領域または特異的アミノ酸残基の挿入、欠失、置換、または他の選択的修飾も含むことができる。ジスルフィド結合を形成することができるアミノ酸の除去/付加などの、これらの修飾は幾つかの追加的な性質をもたらして、その生物学的寿命を増大すること、その分泌特性を改変することなどができる。いずれの場合も、抗体または抗体断片は、その同族抗原との特異的結合などの、生物活性の性質を有していなければならない。抗体または抗体断片の機能または活性領域は、タンパク質の特異的領域の突然変異誘発、次に発現、および発現したポリペプチドの試験によって同定することができる。このような方法は当業者には容易に明らかであり、抗体または抗体断片をコードする核酸の部位特異的突然変異誘発を含むことができる。(Zoller、M.J.Cure Opin.Biotechnol.3:348〜354頁、1992年)。
【0131】
本明細書で使用する用語「1つの抗体」または「複数の抗体」は、ヒト抗体および/またはヒト化抗体を指すこともできる。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、またはウサギ由来の抗体)はヒト中では本来抗原であり、したがってヒトに投与すると望ましくない免疫応答をもたらす可能性がある。したがって、方法中でのヒトまたはヒト化抗体の使用は、ヒトに投与する抗体が望ましくない免疫応答を引き起こし得る可能性を減らすのに役立つ。
【0132】
(2)ヒト抗体
開示するヒト抗体は、任意の技法を使用して調製することができる。ヒトモノクローナル抗体産生のための技法の例には、Coleら(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁、1985年)によって記載された技法、およびBoernerら(J Immunol、147(1):86〜95頁、1991年)によって記載された技法がある。ヒト抗体(およびその断片)は、ファージディスプレイライブラリーを使用して産生することもできる(Hoogenboomら、J.Mol.Biol.、227:381、1991年;Marksら、J.Mol.Biol.、222:581、1991年)。
【0133】
開示するヒト抗体は、トランスジェニック動物から得ることもできる。例えば、免疫処置に応答して、完全なレパートリーのヒト抗体を産生することができるトランスジェニック、突然変異マウスが記載されている(例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551〜255頁(1993年);Jakobovitsら、Nature、362:255〜258頁(1993年);Bruggermannら、Year in Immunol.、7:33(1993年)を参照)。具体的には、これらのキメラおよび生殖細胞系突然変異マウス中の抗体重鎖接合領域(J(H))遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらし、このような生殖細胞系突然変異マウスへのヒト生殖細胞系抗体遺伝子アレイの首尾よい導入は、抗原攻撃時のヒト抗体の産生をもたらす。本明細書に記載するようにEnv−CD4−コレセプター複合体を使用して、所望の活性を有する抗体を選択する。
【0134】
(3)ヒト化抗体
抗体ヒト化技法は一般に、組換えDNA技法を使用して、抗体分子の1つまたは複数のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作することを含む。したがって、ヒト化型の非ヒト抗体(またはその断片)は、ヒト(レシピエント)抗体のフレームワークに組み込まれた非ヒト(ドナー)抗体由来の抗原結合部位の一部分を含有する、キメラ抗体または抗体鎖(またはその断片、Fv、Fab、Fab’など、または抗体の他の抗原結合部分)である。
【0135】
ヒト化抗体を作製するために、レシピエント(ヒト)抗体分子の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)由来の残基を、所望の抗原結合特性(例えば、標的抗原に対する確かなレベルの特異性および親和性)を有することが知られているドナー(非ヒト)抗体分子の1つまたは複数のCDR由来の残基と交換する。幾つかの場合、ヒト抗体のFvフレームワーク(FR)残基を、対応する非ヒト残基と交換する。ヒト化抗体は、レシピエント抗体または導入CDRまたはフレームワーク配列のいずれにおいても見られない残基も含有する可能性がある。一般にヒト化抗体は、非ヒトである供給源由来の抗体に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。実際、ヒト化抗体は典型的には、その中で幾つかのCDR残基およびおそらく幾つかのFR残基が、げっ歯類抗体中の類似部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。ヒト化抗体は一般に、抗体定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト抗体の少なくとも一部分を含有する(Jonesら、Nature、321:522〜525頁(1986年)、Reichmannら、Nature、332:323〜327頁(1988年)、およびPresta、Curr.Opin.Struct.Biol.、2:593〜596頁(1992年))。
【0136】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野でよく知られている。例えば、ヒト化抗体は、げっ歯類のCDRまたはCDR配列とヒト抗体の対応する配列を置換することによって、Winterおよび同僚の方法に従って(Jonesら、Nature、321:522〜525頁(1986年)、Reichmannら、Nature、332:323〜327頁(1988年)、Verhoeyenら、Science、239:1534〜1536頁(1988年))作製することができる。ヒト化抗体を産生するために使用することができる方法は、米国特許第4,816,567号(Cabillyら)、米国特許第5,565,332号(Hoogenboomら)、米国特許第5,721,367号(Kayら)、米国特許第5,837,243号(Deoら)、米国特許第5,939,598号(Kucherlapatiら)、米国特許第6,130,364号(Jakobovitsら)、および米国特許第6,180,377号(Morganら)中にも記載されている。
【0137】
(4)抗体の投与
抗体の投与は、本明細書で開示するように行うことができる。抗体送達のための核酸手法も存在する。広義で中和性の抗PTH1R抗体および抗体断片を、患者または対象の独自の細胞が核酸を取り込み、コードされた抗体または抗体断片を産生および分泌するように、抗体または抗体断片をコードする核酸調製物(例えば、DNAまたはRNA)として患者または対象に投与することも可能である。核酸の送達は、例えば本明細書で開示するような任意の手段による送達であってよい。
【0138】
8.医薬担体/医薬品の送達
前に記載したように、組成物は薬剤として許容される担体でin vivoにおいて投与することもできる。「薬剤として許容される」によって、生物学的または他に望ましくないわけではない物質を意味する、すなわちその物質は、任意の望ましくない生物学的影響の発生、またはそれが含有されている医薬組成物の任意の他の構成要素との有害的な相互作用無しで、核酸またはベクターと共に対象に投与することができる。当業者によく知られているように、活性成分の任意の分解を最小にするため、および対象中の任意の悪い副作用を最小にするために、担体は本来選択され得る。
【0139】
組成物は、経口、非経口(例えば、静脈内)、筋肉内注射によって、腹腔内注射によって、経皮、体外、局所鼻腔内投与または吸入による投与を含めて局所などに投与することができる。本明細書で使用する「局所鼻腔内投与」は、鼻孔の一方または両方を介した鼻および鼻腔への組成物の送達を意味し、スプレー作用もしくは液滴作用による送達、または核酸またはベクターのエアロゾル化による送達を含むことができる。吸入による組成物の投与は、スプレー作用もしくは液滴作用による送達による鼻または口を介した投与であってよい。送達は挿管による呼吸系(例えば肺)の任意の領域への直接的な送達であってもよい。必要とされる組成物の正確な量は、対象の種類、年齢、体重および一般的状態、治療するアレルギー障害の重度、使用する個々の核酸またはベクター、その投与形態などに応じて、対象毎に変わり得る。したがって、それぞれの組成物に関する正確な量を特定することはできない。しかしながら、適切な量は、本明細書の教示を考慮し、ごく日常的な実験を使用して、当業者によって決定することができる。
【0140】
組成物の非経口投与は、使用する場合、一般に注射によって特徴付けられる。注射剤は従来の形で、液体溶液または懸濁液のいずれか、注射前に液体に懸濁した懸濁液の溶液に適した固体系として、または乳濁液として調製することができる。非経口投与に関してより最近改定された手法は、一定用量が維持されるような徐放または持続放出系の使用を含む。例えば、参照によって本明細書に組み込む、米国特許第3,610,795号を参照。
【0141】
物質は(例えば、ミクロ粒子、リポソーム、または細胞に取り込まれた)溶液、懸濁液中に存在してよい。これらは、抗体、受容体、または受容体リガンドを介して特定の細胞型を標的化することが可能である。以下の参照文献は、特異的タンパク質を腫瘍組織に標的化するための、この技術の使用の例である(Senterら、Bioconjugate Chem.、2:447〜451頁、(1991年);Bagshawe、K.D.、Br.J.Cancer、60:275〜281頁、(1989年);Bagshaweら、Br.J.Cancer、58:700〜703頁、(1988年);Senterら、Bioconjugate Chem.、4:3〜9頁、(1993年);Battelliら、Cancer Immunol.Immunother.、35:421〜425頁、(1992年);Pietersz and McKenzie、Immunolog.Reviews、129:57〜80頁、(1992年);およびRofflerら、Biochem.Pharmacol、42:2062〜2065頁、(1991年))。「ステルス」および他の抗体結合リポソームなどの媒体(結腸癌への脂質介在性薬剤標的化含む)、細胞特異的リガンドを介したDNAの受容体介在性標的化、リンパ球対象腫瘍標的化、およびin vivoでのネズミグリオーマ細胞の非常に特異的な治療用レトロウイルス標的化。以下の参照文献は、特異的タンパク質を腫瘍組織に標的化するための、この技術の使用の例である(Hughesら、Cancer Research、49:6214〜6220頁、(1989年);およびLitzinger and Huang、Biochimica et Biophysica Acta、1104:179〜187頁、(1992年))。一般に受容体は、構成的またはリガンド誘導型のいずれかのエンドサイトーシスの経路と関係がある。これらの受容体はクラスリン被覆ピットに群がり、クラスリン被覆小胞を介して細胞に入り、酸性エンドソームを通過し、その中で受容体が選別され、および次いで細胞表面にリサイクルされるか、細胞内に保存された状態になるか、またはリソソームで分解されるかのいずれかである。内在化経路は、栄養摂取、活性化タンパク質の除去、高分子のクリアランス、ウイルスおよび毒素の日和見侵入、リガンドの解離および分解、および受容体レベルの調節などの様々な機能を果たす。多くの受容体は、細胞型、受容体濃度、リガンドの型、リガンド価、およびリガンド濃度に応じて、2つ以上の細胞内経路をたどる。分子および細胞の受容体介在性エンドサイトーシス機構は総説されている(Brown and Greene、DNA and Cell Biology10:6、399〜409頁(1991年))。
【0142】
a)薬剤として許容される担体
抗体を含む組成物は、薬剤として許容される担体と組合せて治療上使用することができる。
【0143】
適切な担体およびそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19号)ed.A.R.Gennaro、Mack Publishing Company、Easton、PA1995年中に記載されている。典型的には、適切な量の薬剤として許容される塩を製剤中に使用して製剤を等張にする。薬剤として許容される担体の例には、生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液があるが、これらだけには限られない。溶液のpHは、好ましくは約5〜約8、およびより好ましくは約7〜約7.5である。さらなる担体には、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリクスなどの徐放性調製物があり、これらのマトリクスは、造形品、例えばフィルム、リポソームまたはミクロ粒子の形である。例えば投与の経路および投与する組成物の濃度に応じて、特定の担体がより好ましい可能性があることは、当業者には明らかであろう。
【0144】
医薬担体は当業者に知られている。これらは、最も典型的には、滅菌水、生理食塩水、生理的pHの緩衝溶液などの溶液を含めた、ヒトへの薬剤の投与に関する標準的な担体であり得る。組成物は筋肉内または皮下に投与することができる。他の化合物は、当業者によって使用される標準的な手順に従い投与され得る。
【0145】
医薬組成物は、選択した分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、バッファー、防腐剤、表面活性剤などを含むことができる。医薬組成物は、例えば抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などの、1つまたは複数の活性成分も含むことができる。
【0146】
医薬組成物は、局部または全身治療が望ましいか、および治療する領域に応じて、幾つかの方法で投与することができる。投与は、局所(眼、経膣、直腸、鼻腔含む)、経口、吸入、または非経口、例えば静脈内点滴、皮下、腹腔内または筋肉内注射による投与であってよい。開示する抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、または経皮投与することができる。
【0147】
非経口投与用の調製物には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳濁液がある。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝培地を含めて、水、アルコール/水溶液、乳濁液または懸濁液がある。非経口賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、リンガーのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー、または固定油がある。静脈内賦形剤には、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンガーのデキストロースに基づく補充剤)などがある。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどの、防腐剤および他の添加剤が存在してもよい。
【0148】
局所投与用の製剤は、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体および粉末を含むことができる。従来の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤などが必要であるかまたは望ましい可能性がある。
【0149】
経口投与用の組成物には、粉末または顆粒、水または非水性培地中の懸濁液または溶液、カプセル、サシェ、または錠剤がある。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい可能性がある。
【0150】
組成物の幾つかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸、およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、およびフマル酸などの有機酸との反応によって、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、およびモノ−、ジ−、トリアルキルおよびアリールアミンおよび置換エタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される、薬剤として許容される酸または塩基付加塩としておそらく投与することができる。
【0151】
b)治療的使用
組成物を投与するのに有効な用量およびスケジュールは経験的に決定することができ、かつこのような決定を行なうことは当技術分野の技術内にある。組成物の投与に関する用量範囲は、障害の症状に作用する所望の効果を生み出すほど十分広い範囲である。用量は、例えば望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの、悪い副作用を引き起こすほど多量であってはならない。一般に、用量は患者の年齢、状態、性別および疾患の程度、投与の経路、他の薬剤がレジメン中に含まれるかどうかの有無によって変わり、かつ当業者によって決定され得る。用量は任意の禁忌の場合、それぞれの医師によって調節することができる。用量は変わる可能性があり、かつ1または7日間、毎日1回または複数回の用量投与で施すことができる。所与のクラスの医薬品の適切な用量に関する文献中で、ガイダンスを見つけることができる。例えば、抗体の適切な用量を選択する際のガイダンスは、抗体の治療的使用に関する文献、例えばHandbook of Monoclonal Antibodies、Ferroneら、eds.、Noges Publications、Park Ridge、N.J.、(1985年)ch.22および303〜357頁;Smithら、Antibodies in Human Diagnosis and Therapy、Haberら、eds.、Raven Press、New York(1977年)365〜389頁中で見つけることができる。単独で使用する抗体の典型的な毎日の用量は、前に述べた要因に応じて、1日当たり約1μg/kg〜100mgまで/体重1kg以上の範囲であってよい。
【0152】
開示する組成物および方法は、例えば様々なGPCR関連疾患用の新しい薬剤候補を単離および試験するためのツールとして使用することもできる。
【0153】
9.開示する組成物/コンビナトリアルケミストリーを用いたスクリーニングによって同定した組成物
a)コンビナトリアルケミストリー
開示する組成物を任意のコンビナトリアル技法の標的として使用して、望ましい形式で開示する組成物と相互作用する分子または高分子状分子を同定することができる。本明細書で開示する核酸、ペプチド、および関連分子は、コンビナトリアル手法の標的として使用することができる。配列番号1で開示する組成物またはその一部分をコンビナトリアルまたはスクリーニングプロトコルにおける標的として使用する、コンビナトリアル技法またはスクリーニング技法によって同定される組成物も開示する。
【0154】
コンビナトリアル技法またはスクリーニング法において開示する組成物を使用すると、標的分子の機能の阻害または刺激などの特定の望ましい性質を有する、高分子状分子などの分子が同定され得ることは理解されよう。PTH1Rなどの開示する組成物を使用したときに同定および単離した分子も開示する。したがって、PTH1Rなどの開示する組成物に関するコンビナトリアルまたはスクリーニング手法を使用して生成した産物も、本明細書に開示されると考えられる。
【0155】
例えば、PTH1RとPTHの間の相互作用を阻害する分子を同定するための開示する方法は、高スループット手段を使用して実施することができることは理解されよう。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を使用して推定阻害剤を同定して、相互作用迅速に同定することができる。これら技法の根本的な理論は、2つの分子が空間で隣接している、すなわちバックグラウンドを超えるレベルで相互作用するとき、1つのシグナルが生成する、または1つのシグナルが消える可能性があるということである。したがって、例えば推定阻害剤の添加を含む、様々な実験を実施することができる。阻害剤が2つのシグナル伝達分子間の相互作用と競合する場合、使用するシグナルの型に応じて、シグナルは空間内で互いから除去され、これはシグナルの低下または増大を引き起こし得る。このシグナルの低下または増大は、推定阻害剤の存在または不在と相関関係がある可能性がある。任意のシグナル伝達手段を使用することができる。例えば、第一の分子と第二の分子を推定阻害剤の存在下で一緒に接触させることであって、第一の分子または第二の分子が蛍光ドナーを含み、第一の分子または第二の分子、典型的にはドナーを含まない分子が蛍光アクセプターを含むこと、ならびに、推定阻害剤の存在下および推定阻害剤の不在下で蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することであって、その不在下でのFRET測定値と比較した推定阻害剤の存在下でのFRETの低下が、推定阻害剤が2分子間の結合を阻害することを示すことを含む、任意の2つの開示する分子間の相互作用の阻害剤を同定する方法を開示する。この型の方法は細胞系を用いて実施することもできる。
【0156】
コンビナトリアルケミストリーは、典型的には反復プロセスで、小分子または他の高分子のいずれかと結合することができる小分子または高分子を単離するための全ての方法だけには限られないが、これらを含む。タンパク質、オリゴヌクレオチド、および糖類は高分子の例である。例えば、所与の機能、触媒またはリガンド結合性を有するオリゴヌクレオチド分子を、「in vitro遺伝学」と呼ばれている遺伝学(Szostak、TIBS19:89、1992年)で、ランダムなオリゴヌクレオチドの複合混合物から単離することができる。ランダムおよび明確な配列を有する大量の分子を合成し、その複合混合物、例えば100μgの100ヌクレオチドRNA中に約1015個の個々の配列を数回の選択および濃縮プロセスに施す。カラムにおけるリガンドと結合した分子の親和性クロマトグラフィーとPCR増幅の反復サイクルによって、Ellington and Szostak(1990年)は、1010個のRNA分子中の1個が、小分子色素と結合するようにフォールディングしたと推定した。このようなリガンド結合挙動を有するDNA分子も単離されている(Ellington and Szostak、1992年;Bockら、1992年)。当業者に知られている有機小分子、タンパク質、抗体および他の高分子に関して、同様の目的を果たすための技法が存在する。有機小分子ライブラリー、オリゴヌクレオチド、または抗体のいずれかに基づく所望の活性に関する一連の分子のスクリーニングは、コンビナトリアルケミストリーと広義に呼ばれる。コンビナトリアル技法は、分子間の結合相互作用の定義、および、高分子が核酸であるときアプタマーと呼ばれることが多い、特異的結合活性を有する分子の単離に特に適している。
【0157】
de novo活性または修飾活性のいずれかを有するタンパク質を単離するための、幾つかの方法が存在する。例えば、特異的標的と相互作用する多数のペプチドを単離するために、ファージディスプレイライブラリーが使用されている(例えば、少なくともファージディスプレイと関係があるそれらの物質およびコンビナトリアルケミストリーと関係がある方法に関して、参照によって本明細書に組み込む、米国特許第6,031,071号、同第5,824,520号、同第5,596,079号、および同第5,565,332号を参照)。
【0158】
所与の機能を有するタンパク質を単離するのに好ましい方法は、Roberts and Szostak(Roberts R.W.and Szostak J.W.Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94(23)12997〜302頁(1997年)によって記載される。このコンビナトリアルケミストリー法は、タンパク質の機能性と核酸の遺伝性を結びつける。ピューロマイシン分子がRNA分子の3’末端と共有結合した、RNA分子を作製する。この修飾RNA分子のin vitro翻訳は、RNAによってコードされ翻訳される正確なタンパク質をもたらす。さらに、ピューロマイシン、延長することができないペプチジル受容体の結合のために、増大するペプチド鎖はRNAと結合したピューロマイシンと結合する。したがって、タンパク質分子は、それをコードする遺伝物質と結合する。現在、通常のin vitro選択手順を行なって機能ペプチドを単離することができる。ペプチド機能に関する選択手順が終了した後、伝統的な核酸操作手順を実施して、選択した機能ペプチドをコードする核酸を増幅させる。遺伝物質の増幅後、新たなRNAが3’末端においてピューロマイシンと共に転写され、新たなペプチドが翻訳され、選択の別の機能ラウンドが実施される。したがって、タンパク質選択は、核酸選択技法と同様に反復式に実施することができる。翻訳されるペプチドは、ピューロマイシンと結合したRNAの配列によって制御される。この配列は最適な翻訳(すなわち、停止コドン無しなど)のために工学処理したランダムな配列由来の任意の配列であってよく、あるいはこの配列は、知られているペプチドの改善または改変された機能を検索するために、知られているRNA分子の縮重配列であってよい。核酸増幅およびin vitro翻訳に関する条件は当業者によく知られており、Roberts and Szostak(Roberts R.W.and Szostak Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94(23)12997〜302頁(1997年))中と同様に実施することが好ましい。
【0159】
ペプチドを単離するために設計したコンビナトリアル法の別の好ましい方法は、Cohenら(Cohen B.Aら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA95(24):14272〜7頁(1998年))中に記載される。この方法は2ハイブリッド技術を利用し、それを改変する。酵母2ハイブリッド系は、タンパク質:タンパク質相互作用の検出および分析に有用である。酵母Sacclraromyces cerevisiaeにおいて最初に記載された2ハイブリッド系は、対象とするタンパク質に特異的な新たな調節分子を同定するための強力な分子遺伝学的技法である(Fields and Song、Nature340:245〜6頁(1989年))。Cohenらは、選択した分子と結合する合成または工学処理ペプチド配列間の新規な相互作用を同定することができるように、この技術を改変した。この型の技術の利点は、選択を細胞内環境で行うことである。この方法は、酸性活性化ドメインと結合したペプチド分子のライブラリーを利用する。選択したペプチド、例えばPTH1Rの細胞外部分は、Gal4などの転写活性化タンパク質のDNA結合ドメインと結合する。この型の系で2ハイブリッド技法を実施することによって、PTH1Rの細胞外部分と結合する分子を同定することができる。
【0160】
様々なコンビナトリアルライブラリーと組合せて、当業者によく知られている方法を使用して、所望の標的と結合または相互作用する小分子または高分子を、単離および特徴付けることができる。これらの化合物の相対的な結合親和性を比較することができ、当業者によく知られている競合的結合試験を使用して最適な化合物を同定することができる。
【0161】
コンビナトリアルライブラリーを作製し、コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングして所望の標的と結合する分子を単離するための技法は、当業者によく知られている。代表的な技法および方法は、米国特許
【0162】
【表3】

だけには限られないが、これらの中で見つけることができる。
【0163】
コンビナトリアルライブラリーは、幾つかの異なる合成技法を使用して広範囲の分子から作製することができる。例えば、縮合2,4−ピリミジンジオン(米国特許第6,025,371号)、ジヒドロベンゾピラン(米国特許第6,017,768号および同第5,821,130号)、アミドアルコール(米国特許第5,976,894号)、ヒドロキシ−アミノ酸アミド(米国特許第5,972,719号)、炭水化物(米国特許第5,965,719号)、1,4−ベンゾジアゼピン−2,5−ジオン(米国特許第5,962,337号)、環状化合物(米国特許第5,958,792号)、ビアリールアミノ酸アミド(米国特許第5,948,696号)、チオフェン(米国特許第5,942,387号)、三環系テトラヒドロキノリン(米国特許第5,925,527号)、ベンゾフラン(米国特許第5,919,955号)、イソキノリン(米国特許第5,916,899号)、ヒダントインおよびチオヒダントイン(米国特許第5,859,190号)、インドール(米国特許第5,856,496号)、イミダゾール−ピリド−インドールおよびイミダゾール−ピリド−ベンゾチオフェン(米国特許第5,856,107号)、置換2−メチレン−2,3−ジヒドロチアゾール(米国特許第5,847,150号)、キノリン(米国特許第5,840,500号)、PNA(米国特許第5,831,014号)を含有する、タグ(米国特許第5,721,099号)、ポリケチド(米国特許第5,712,146号)、モルホリノ−サブユニット(米国特許第5,698,685号および同第5,506,337号)、スルファミド(米国特許第5,618,825号)、およびベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)を含有するライブラリー。
【0164】
本明細書で使用するコンビナトリアル法およびライブラリーは、従来のスクリーニング法およびライブラリー、ならびに反復プロセスで使用する方法およびライブラリーを含んでいた。
【0165】
b)コンピュータ支援の薬剤設計
開示する組成物を任意の分子モデリング技法の標的として使用して、開示する組成物の構造を同定すること、または開示する組成物と所望の方法で相互作用する小分子などの、潜在的または実分子を同定することのいずれかが可能である。
【0166】
開示する組成物をモデリング技法において使用すると、標的分子の機能の阻害または刺激などの特定の望ましい性質を有する、高分子状分子などの分子が同定され得ることは理解されよう。PTH1Rなどの開示する組成物を使用したときに同定および単離した分子も開示する。したがって、PTH1Rなどの開示する組成物に関する分子モデリング手法を使用して生成した産物も、本明細書に開示されると考えられる。
【0167】
したがって、選択した分子と結合する分子を単離するための1つの方法は、合理的設計による方法である。これは構造情報およびコンピュータモデリングによって実施される。コンピュータモデリング技術は、選択した分子の三次元原子構造の可視化、およびその分子と相互作用し得る新たな化合物の合理的設計を可能にする。三次元構築は典型的に、選択した分子のX線結晶構造解析またはNMRイメージングからのデータに依存する。分子動力学は力場のデータを必要とする。コンピュータグラフィクスシステムは、どのようにして新たな化合物が標的分子と結合するかを予想することができ、かつ結合特異性を完全にするための化合物および標的分子の構造の実験操作を可能にする。一方または両方にわずかな変化を施すとき分子−化合物の相互作用はどのようなものかの予想は、分子設計プログラムとユーザーの間の、ユーザーフレンドリーな、メニュー形式のインターフェイスと通常結びついた、分子力学用ソフトウェアおよびコンピュータ集約型コンピュータを必要とする。
【0168】
分子モデリングシステムの例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム、Polygen Corporation、Waltham、MAである。CHARMmは、エネルギー最小化および分子動力学機能を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリングおよび分析を実行する。QUANTAは、分子の互いの相互作用的構築、修飾、可視化、および挙動の分析を可能にする。
【0169】
Rotivinenら、1988年 Acta Pharmaceutica Fennica97、159〜166頁;Ripka、New Scientist54〜57頁(1988年6月16日);McKinaly and Rossmann、1989年、Annu.Rev.Pharmacol.Toxiciol.29、111〜122頁;Perry and Davies、OSAR:Quantitative Structure−Activity Relationships in Drug Design189〜193頁(Alan R.Liss、Inc.1989年);Lewis and Dean、1989年Proc.R.Soc.Lond.236、125〜140頁および141〜162頁;および、核酸構成要素のモデル酵素に関して、Askewら、1989 J Am.Chem.Soc.111、1082〜1090頁などの、幾つかの論説は、特異的タンパク質と相互作用する薬剤のコンピュータモデリングを論評する。化学物質をスクリーニングしグラフによって示す他のコンピュータプログラムは、BioDesign、Inc.、Pasadena、CA.、Allelix、Inc、Mississauga、Ontario、Canada、およびHypercube、Inc.、Cambridge、Ontarioなどの企業から入手可能である。これらは主に特定のタンパク質に特異的な薬剤への適用のために設計されているが、それらはDNAまたはRNAの特異的領域と特異的に相互作用する分子の設計に、その領域を同定した後に適合させることが可能である。
【0170】
結合を改変する可能性がある化合物の設計および作製に関して前に記載したが、天然産物または合成化学物質、およびタンパク質を含めた生物活性物質を含む既知の化合物のライブラリーを、基質結合または酵素活性を改変する化合物に関してスクリーニングすることもできる。
【0171】
10.キット
本明細書で開示する方法を実施する際に使用することができる試薬が含まれるキットを、本明細書で開示する。これらのキットは、本明細書で論じるかあるいは開示する方法を実施する際に必要または有用であると理解され得る、任意の試薬または試薬の組合せを含むことができる。例えば、これらのキットは、方法の特定の実施形態で論じる増幅反応を実施するためのプライマー、ならびに意図するプライマーを使用するのに必要とされるバッファーおよび酵素を含み得る。
【0172】
I.作製方法
本明細書において開示される組成物、および開示される方法を実施するために必要な組成物は、別段の記載がない限り、特定の試薬または化合物が当業者に知られている、あらゆる方法を用いて作製することができる。
【0173】
1.核酸合成
例えば、プライマーとして用いるためのオリゴヌクレオチドなどの核酸は、標準的な化学合成法を用いて作製することができるか、または酵素法もしくはあらゆる他の既知の方法を用いて生産することができる。このような方法は、標準的な酵素消化およびその後のヌクレオチド断片の単離(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.、1989年)5、6章を参照されたい)から、例えばMilligenまたはBeckman System 1Plus DNA合成装置(例えば、Milligen−Biosearch、Burlington、MAのモデル8700自動合成機、またはABIモデル380B)を用いたシアノエチルホスホラミダイト法による純粋合成法まで、様々であり得る。オリゴヌクレオチドの作製に有用な合成法はまた、Ikutaら、Ann. Rev. Biochem.53巻:323〜356頁(1984年)(ホスホトリエステルおよび亜リン酸トリエステル法)およびNarangら、Methods Enzymol.、65巻:610〜620頁(1980年)(ホスホトリエステル法)によっても記載されている。タンパク質の核酸分子は、Nielsenら、Bioconjug. Chem.5巻:3〜7頁(1994年)に記載されたものなどの既知の方法を用いて作製することができる。
【0174】
2.ペプチド合成
配列番号3などの開示されるタンパク質を生産する1つの方法は、タンパク質化学技術によって2つ以上のペプチドまたはポリペプチドを共に結合することである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(tert−ブチルオキシカルボノイル)化学を用いて、現在利用可能な実験設備を用いて化学的に合成することができる。(Applied Biosystems,Inc.、Foster City、CA)。当業者には、開示されたタンパク質に対応するペプチドまたはポリペプチドを、例えば標準的な化学反応によって合成することができることが容易に理解され得る。例えば、ペプチドまたはポリペプチドを合成し、かつその合成樹脂から切断しないようにすることができるが、一方で、ペプチドまたはタンパク質の他の断片を合成し、その後樹脂から切断して、それにより他の断片上では機能的に遮断されている末端基を暴露させることができる。ペプチド縮合反応によって、これらの2つの断片を、それぞれ、それらのカルボキシル末端およびアミノ末端でのペプチド結合を介して共有結合させ、抗体またはその断片を形成させることができる(Grant GA(1992年)Synthetic Peptides: A User Guide. W. H. Freeman and Co., N. Y.(1992年)、Bodansky MおよびTrost B.編(1993年)Principles of Peptide Synthesis. Springer−Verlag Inc., NY(少なくともペプチド合成に関連する材料について、参照することにより本明細書に組み込まれる)。あるいは、ペプチドまたはポリペプチドは、本明細書において記載されるように、インビボにおいて独立して合成される。単離されると、これらの独立したペプチドまたはポリペプチドは、類似のペプチド縮合反応を介して結合して、ペプチドまたはそれらの断片を形成し得る。
【0175】
例えば、クローニングされたペプチドまたは合成ペプチドのセグメントの酵素的ライゲーションにより、比較的短いペプチド断片が結合して、より大きなペプチド断片、ポリペプチド、または全タンパク質ドメインを生じさせることが可能になる(Abrahmsen Lら、Biochemistry、30巻:4151頁(1991年))。あるいは、合成ペプチドの天然の化学的ライゲーションを用いて、短いペプチド断片から大きなペプチドまたはポリペプチドを合成的に構築することができる。この方法は、2工程の化学反応からなる(Dawsonら、Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation. Science、266巻、776〜779頁(1994年))。第1の工程は、保護されていない合成ペプチドであるチオエステルと、アミノ末端のCys残基を含む別の保護されていないペプチドセグメントとの化学選択的反応であり、最初の共有結合生成物としてチオエステル共役型中間体をもたらすものである。反応条件の変化を伴わずに、この中間体は、自然の、迅速な細胞内反応を受け、ライゲーション部位での天然のペプチド結合を形成する(Baggiolini Mら(1992年)FEBS Lett.307巻:97〜101頁;Clark−Lewis Iら、J. Biol. Chem.、269巻:16075頁(1994年);Clark−Lewis Iら、Biochemistry、30巻:3128頁(1991年);Rajarathnam Kら、Biochemistry、33巻:6623〜30頁(1994年))。
【0176】
あるいは、保護されていないペプチドセグメントは、化学的ライゲーションの結果生じたペプチドセグメントの間で形成される結合が非天然の(非ペプチド)結合である場合、化学的に結合される(Schnolzer, Mら、Science、256巻:221頁(1992年))。この技術は、タンパク質ドメインの類似体、および完全な生物学的活性を有する大量の比較的純粋なタンパク質を合成するために用いられている(deLisle Milton RCら、Techniques in Protein Chemistry IV. Academic Press, New York、257〜267頁(1992年))。
【0177】
3.組成物を作製するためのプロセスクレーム
組成物を作製するためのプロセスおよび組成物をもたらす中間体を作製するためのプロセスが開示される。合成化学法および標準的な分子生物学法などの、これらの組成物を作製するために用いられ得る様々な方法が存在する。これらのおよび他の開示される組成物を作製する方法が特に開示されることが理解される。
【0178】
あらゆる開示された核酸で細胞を形質転換するプロセスによって生産される細胞が開示される。あらゆる天然に存在しない開示された核酸で細胞を形質転換するプロセスによって生産される細胞が開示される。
【0179】
あらゆる開示された核酸を発現させるプロセスによって生産される、あらゆる開示されたペプチドが開示される。あらゆる開示された核酸を発現させるプロセスによって生産される、あらゆる天然に存在しない開示されたペプチドが開示される。あらゆる天然に存在しない開示された核酸を発現させるプロセスによって生産される、あらゆる開示されたペプチドが開示される。
【0180】
本明細書において開示されるあらゆる核酸分子で動物内の細胞をトランスフェクトするプロセスによって生産される動物が開示される。本明細書において開示されるあらゆる核酸分子で動物内の細胞をトランスフェクトするプロセスによって生産される動物が開示され、ここで、動物は哺乳動物である。また、本明細書において開示されるあらゆる核酸分子で動物内の細胞をトランスフェクトするプロセスによって生産される動物が開示され、ここで、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、または霊長類動物である。
【0181】
また、本明細書において開示されるあらゆる細胞を動物に加えるプロセスによって生産される動物が開示される。
【0182】
J.方法
同化的な骨成長を促進する方法が開示される。本方法は、Gタンパク質介在性のシグナル伝達に依存しないβ−アレスチン介在性のシグナル伝達を刺激し得るPTH1受容体に対する偏ったアゴニストを、それを必要とする患者に投与することを含む。偏ったアゴニストは、骨成長の促進をもたらすために十分な量で投与される。
【0183】
治療は、これまでに、PTH(1−34)およびPTH(1−84)などのアゴニストを含む、PTH1受容体の刺激を介した同化的な骨成長を生じさせることを示した。本明細書において開示される偏ったアゴニストとは対照的に、先行技術のアゴニストはPTH1受容体を結合し、アデニル酸シクラーゼのGタンパク質介在性の活性化およびイノシトール−1,4,5−トリスリン酸(IP)の生産を刺激する(Dunlayら、Am. J. Physiol. Renal Physiol.285巻(2号):F223〜231頁(1990年);Guoら、Endocrinology 136巻(9号):3884〜3891頁(1995年))。
【0184】
本発明における使用に適したPTH1受容体に対する偏ったアゴニストは、骨梁構造の生成を含む、同化的な骨形成をもたらすシグナル伝達特性を有する。本明細書において開示される偏ったアゴニストは、[D−Trp(12)、Tyr(34)]bPTH(7−34)アミド(PTH−IA)であり、PTH1受容体のインバースアゴニストである(Goldmanら、Endocrinolgy、123巻(5号):2597〜2599頁(1988年);USP4,968,669;Bachem)。
【0185】
PTH−IAの薬理学的作用は、インビトロで、Gタンパク質介在性のメカニズムを介してではなく、β−アレスチンによって仲介されることが示されている(Gesty−Palmerら、J. Biol. Chem.281巻:10856頁(2006年))。マウスにおける同化的な骨形成に対する、インビボでのPTH−IAの投与の効果もまた研究されており、結果は、PTH−IAが、Gタンパク質非依存性で、β−アレスチン依存性のメカニズムを介して骨梁形成を刺激し得ることを示している。(以下の実施例を参照されたい。)さらに、PTH−1Aは、PTH1受容体刺激性の骨吸収からPTH1受容体の刺激の同化的効果を切り離すと考えられる。利用可能なデータにより、PTH刺激性の骨吸収はGタンパク質依存性のプロセスであり得ることが示唆される。β−アレスチン介在性の骨形成を特異的に刺激する、PTH−IAなどの、本明細書において開示される偏ったアゴニストは、代謝的骨疾患の治療のために生物学的特異性および安全性のプロフィールを顕著に向上させると期待され得る。
【0186】
また、PTH−IAの誘導体、および、さらに、PTH1受容体の他の偏ったアゴニストをまた、骨成長を促進する本方法において用いることができることが開示される。例としては、ヒトPTH(7−34)、[Leu(11)−D−Trp(12)]hPTHrP(7−34)−アミド、[D−Trp(12)]bPTH(7−34)−アミド、および[Bpa(2)、Ile(5)、Trp(230、Tyr(36)]PTHrP−(1−36)−アミドが挙げられる。また、他の適切な偏ったアゴニスト(例えば、PTH1受容体のインバースアゴニストである他のPTH類似体)を同定する方法も開示される。適切なβ−アレスチンに偏ったリガンドを同定する方法には、β−アレスチンの動員および刺激の有効性を評価するための、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づいた、および生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)に基づいたアッセイが含まれる。他の方法には、受容体/β−アレスチン共免疫沈降、受容体/β−アレスチン架橋、受容体/β−アレスチン生体分子断片化相補性、受容体/β−アレスチン移行画像化、受容体内在化、受容体リン酸化、およびマイトジェン応答性タンパク質(MAP)キナーゼのβ−アレスチン関連リン酸化が含まれる。
【0187】
また、適切な担体を用いて製剤される、偏ったアゴニストを含む組成物も開示される。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、(1985年)に記載されているような、当技術分野において知られている製剤技術を用いることができる。組成物は、例えば、溶液(例えば滅菌溶液)または懸濁液として存在し得る。組成物は、用量単位形態(例えば、錠剤またはカプセルとして)として存在し得る。製剤の性質は、例えばアゴニストおよび投与形態に応じて変化し得る。
【0188】
代表的な送達レジメンには、限定はしないが、経口、非経口(皮下、経皮、筋肉内、および静脈内を含む)、直腸、口腔(舌下を含む)、経真皮、および鼻腔内が含まれる。現在FDAによって認可されているPTH(1−34)ペプチドのように、本発明の偏ったアゴニストは注射(例えば皮下注射(http://pi.lilly.com/us/forteo−pi.pdfを参照されたい))によって投与することができるが、適切に製剤された偏ったアゴニストの鼻腔内投与も好ましい場合がある。
【0189】
通常、偏ったアゴニストなどの組成物またはその塩は、1日当たり約0.01から10μg/体重kgの量で投与することができ、好ましくは、1日当たり約0.05から約2.5μg/体重kgで投与することができる。70kgのヒトの女性では、PTH−IAの毎日の用量は、例えば、約3.5μg/kgから約175μg/kgであり得、好ましくは約5μg/kgから約150μg/kgであり得る。用量は、所望の結果を達成するための必要に応じて、単回投与により、多回適用により、または制御放出を介して送達され得る。
【0190】
最適な投与レジメンは、当業者が容易に決定することができ、偏ったアゴニスト、患者、および所望の効果で変化し得る。
【0191】
開示される偏ったアゴニストは、骨量の損失に特徴を有する様々な哺乳動物の状態の予防および治療において用いることができる。例えば、偏ったアゴニストは、骨粗しょう症および骨減少症の予防および治療処置に用いることができる。偏ったアゴニストはまた、副甲状腺機能高進症およびそれに関連する骨疾患の治療処置にも用いることができ、かつ、軟骨異形成症および高カルシウム血症を形成する。本明細書において開示される方法は、ヒトならびにヒト以外の動物(例えばウマおよびウシ)の治療において用いることができる。
【0192】
Gesty−Palmerら、J. Biol. Chem. 281巻(16号):10856頁(2006年)、ならびにUSP7,169,567、USP7,153,951、USP7,150,974、USP7,022,851、USP4,968,669、および米国出願公開第20060229240号(限定はしないが、これらの特許文献における製剤/投与の詳細および治療的適用の開示を含む)も参照されたい。
【0193】
1.偏ったリガンドをスクリーニングする方法。
【0194】
GPCRの活性化を決定するために用いることができる様々なアッセイが存在する。例えば、2つの経路を活性化についてアッセイすることができる。
【0195】
Gタンパク質の活性は、リガンド(または候補リガンド)の存在下および不存在下で、カルシウム、cAMP、ジアシルグリセロール、またはイノシトール三リン酸のレベルを決定することによりアッセイすることができる。Gタンパク質の活性はまた、リガンド(または候補リガンド)の存在下および不存在下で、例えば、ホスファチジルイノシトールの代謝回転、GTP−γ−Sのロード、アデニル酸シクラーゼの活性、GTPの加水分解などを決定することによりアッセイすることができる。(例えば、Kostenis, Curr. Pharm. Res. 12巻(14号):1703〜1715頁(2006年)を参照されたい)。
【0196】
β−アレスチンの活性化については、リガンド(または候補リガンド)の存在下および不存在下で、GPCRへのβ−アレスチンの動員またはGPCRの内在化をアッセイすることができる。有利には、リガンド(または候補リガンド)の存在下および不存在下でのβ−アレスチン機能を、共鳴エネルギー移動、生体分子蛍光、酵素相補性、視覚的移行、共免疫沈降、細胞画分化、またはβ−アレスチンと天然に存在する結合パートナーとの相互作用を用いて測定する。(例えば、Violinら、Trends Pharmacol. Sci. 28巻(8号):416〜427頁(2007年);Carterら、J. Pharm. Exp. Ther. 2巻:839〜848頁(2005年)を参照されたい。)
GRK活性は、β−アレスチン機能の代用として用いることができ、リガンド(または候補リガンド)に応じてGPCRによって仲介されるβ−アレスチン機能は、したがって、受容体の内在化またはリン酸化の変化によっても明らかであるように、GRK活性における変化に反映され得る。
【0197】
GPCRに作用する、偏ったリガンドまたは候補リガンドなどの所与のリガンドに対するGタンパク質の活性およびβ−アレスチンの機能についての相対的な有効性を、真核細胞(例えば、哺乳動物細胞(例えばヒト細胞)、昆虫細胞、トリ細胞、または両生類細胞、有利には哺乳動物細胞)におけるアッセイによって決定することができる。適切なアッセイは、原核細胞において、再構築された膜において、およびインビトロで精製タンパク質を用いても実施することができる。このようなアッセイの例には、限定はしないが、GRXによる精製受容体のインビトロでのリン酸化、細胞または組織から得られた精製膜へのGTP−γ−Sのロード、およびリガンド(または候補リガンド)を添加した際の精製受容体への精製β−アレスチンのインビトロでの結合(反応にGRXが存在するかまたはしない状態で)が含まれる。(例えば、Pitcherら、Science、257巻:1264〜1267頁(1992年);Zamahら、J. Biol. Chem.277巻:31249〜31256頁(2002年);Benovicら、Proc. Natl. Acad. Sci.84巻:8879〜8882頁(1987年)を参照されたい)。
【0198】
特定の実施形態において、Gタンパク質の活性化についてのアッセイおよびβ−アレスチンについてのアッセイを行うことができ、その後、例えば、Gタンパク質およびβ−アレスチンの活性化の相対的活性を比較することができる。これにより、偏ったリガンドのタイプを決定することができる。この状況は、様々な活性倍増の比較を用いて、活性倍増として比較することができる。例えば、対照と比較して、リガンドは、Gタンパク質経路に関して.5倍の活性を有し得、β−アレスチン経路に関して1.5倍の活性を有し得る。そして、このリガンドは、Gタンパク質経路と比較して、3倍のβ−アレスチンに偏ったリガンドを有すると分類され得る。この実施例から、対照と比較した、個別の経路についての相対的な活性が得られること、および偏ったリガンドを特徴付けるために2つ以上の経路の活性が比較され得ることが明らかである。リガンドが、少なくとも(ref2)であるかまたはそれ未満であるかまたはそれに等しい、および、それ未満であるかまたはそれに等しい、それを超えるかまたはそれに等しいことが理解される。
【0199】
PTH受容体などのGPCRの偏ったリガンドを同定する方法が開示される。このような方法は、i)GPCR介在性のGタンパク質活性に対する試験化合物の効果を決定する工程、およびii)GPCR介在性のβ−アレスチン機能に対する試験化合物の効果を決定する工程を含み得、ここで、GPCR介在性のGタンパク質活性およびGPCR介在性のβ−アレスチン機能の両方に対する参照アゴニストと比較して、GPCR介在性のGタンパク質活性に対してよりもGPCR介在性のβ−アレスチン機能に対して大きな正の効果を有する試験化合物は、偏ったリガンドである。このような方法は、生理学的プロセスを調節する(例えば刺激する(増強する)または阻害する)ために用いられ得る候補治療物質を同定するために用いることができる。
【0200】
例えば、候補治療物質は、i)生理学的プロセスに関連する、GPCRにより仲介されるGタンパク質活性に対する試験化合物の効果を決定する工程、およびii)GPCRにより仲介されるβ−アレスチン機能に対する試験化合物の効果を決定する工程により同定することができ、ここで、GPCRにより仲介されるGタンパク質活性およびβ−アレスチン機能の両方に対する参照アゴニストと比較して、GPCRにより仲介されるGタンパク質活性に対するよりもβ−アレスチン機能に対して大きな正の効果を有する試験化合物は、そのような候補治療物質である。本発明のこの態様には、心血管疾患/障害(高血圧、心不全、冠動脈疾患、肺高血圧、末梢血管疾患、または不整脈を含む)、ならびに肺疾患/障害(ぜんそく、慢性閉塞性気道疾患、および肺線維症など)、眼の疾患/障害(緑内障など)、血液疾患/障害(血栓溶解障害を含む)、内分泌または代謝疾患/障害(例えば、糖尿病および肥満)、神経または心理疾患/障害(パーキンソン病またはアルツハイマーを含む)、ならびに以下に記載されるものを含む他の疾患/障害の治療における使用に適した作用物質を同定する方法が含まれる。
【0201】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づいたアッセイを用いて、β−アレスチン/Gタンパク質経路の活性化を評価することができる。β−アレスチン/Gタンパク質経路の活性化は、リガンドに応じた受容体へのβ−アレスチンの動員の速度として測定することができ、ここで、受容体/β−アレスチン相互作用は、FRETまたは生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)によって測定される。例えば、定量化可能な速度でアゴニストを加えた後に、βAR−mCFPおよびβ−アレスチン−mYFPをFRETに供す。このFRETの速度の増大は、β−アレスチンの機能を調節する、リガンド刺激性のGRK活性の評価基準であり、したがって、リガンドのβ−アレスチン/GRKの有効性を定量化するものである。この方法は、β−アレスチン/GRKに偏ったリガンドについての迅速なスクリーニングをもたらし得る、アゴニストおよびアンタゴニストをハイスループットスクリーニングするための蛍光プレートリーダーとの使用に適用し得る。β−アレスチン/GRK機能は、7TMRの全様式、例えば1型PTH受容体について測定することができる。
【0202】
β−アレスチンの機能を測定するために用いることができる他のアッセイには、受容体/β−アレスチン共免疫沈降、受容体/β−アレスチン架橋、受容体/β−アレスチンBRET、受容体/β−アレスチン生体分子断片化相補性、受容体/β−アレスチン移行画像化、受容体内在化、受容体リン酸化、およびβ−アレスチン関連リン酸化ERKが含まれる(Violinら、Trends Pharmacol. Sci.28巻(8号):416〜422頁(2007年))。上述したように、Gタンパク質介在性のシグナル伝達の機能を測定するために用いることができるアプローチには、アデニル酸シクラーゼおよび/または環状AMPの蓄積についてのアッセイ(ICUE(DiPilatoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101巻:16513頁(2004年))、ラジオイムノアッセイ、ELISA、GTPaseアッセイ、GTPガンマSローディングアッセイ、細胞内カルシウム蓄積アッセイ、ホスホチジルイノシトール加水分解アッセイ、ジアシルグリセロール生産アッセイ(例えば、液体クロマトグラフィー、FRETに基づいたDAGRアッセイ(Violinら、J. Biol. Chem. 161巻:899頁(2003年))、受容体−Gタンパク質のFRETアッセイ、受容体の立体構造の変化の測定、受容体/Gタンパク質共免疫沈降、ERKの活性化、ホスホリパーゼDの活性化、イオンチャネルの活性化(電気生理学的方法を含む)、および環状GMPの変化が含まれる。(例えば、Thomsenら、Curr. Opin. Biotech.16巻:655〜665頁(2005年)を参照されたい。)
アッセイ、すなわち、cAMPの生産などの選択されたあらゆるアッセイによって、リガンドのあらゆるセットを順位付けることができる。例えば、PTH1RからのcAMPの活性化について100個の組成物または化合物を試験し、その組成物または化合物を、対照と比較してcAMP経路を活性化させるそれらの能力に基づいて、1から100までランク付けすることができる。このプロセスは、例えばアレスチンの動員などの1つまたは複数の異なるアッセイについて反復することができ、これにより、異なるランク付けがされる。この方法において、所与の化合物または組成物が様々なアッセイにおいて機能する能力に相当する、その化合物または組成物についてのプロフィールを得ることができる。
【0203】
特定の実施形態において、分子は、β−アレスチンアゴニストであるがGタンパク質の活性化についてのアンタゴニストまたはインバースアゴニストではないものが選択され、このことは、cAMPの形成および/または膜を介したカルシウム流出のアッセイを低減させるが、ERK1/2の活性化および/または受容体へのβ−アレスチンの動員を増大させることを意味している。
【0204】
特定の実施形態において、受容体が23位でヒスチジンおよびアルギニンの突然変異を有するようになる、天然に存在する突然変異である、突然変異PTH1R受容体であるH23RPTHRが用いられるが、それは、この受容体が基底レベルで部分的に活性化されており、インバースアゴニストが見られ得るからである。
【0205】
骨密度および骨量を測定することができる。骨の単位体積当たりのカルシウムヒドロキシアパタイトの量の定量的測定は、二重エネルギーX線吸収法(DEXA)によって行うことができる。DEXAは、2つの異なるエネルギーのX線を用いて、典型的には腰椎、臀部、または上腕のX線を撮る方法である。これらの2つの異なるX線の組織透過を比較し、その比率により、3次元領域にわたる骨ミネラルの2次元投影が得られる。骨密度もまた、高解像度のCTスキャンによって決定することができ、このスキャンはまた、骨の体積ならびに骨梁の数および厚さ、または皮質骨の外周および厚さなどの微細構造情報も提供するものである。
【0206】
骨梁は、海面骨の髄腔を占める骨板の多孔質のネットワークからなり、最少重量で、体重を支える強度をもたらすものである。皮質骨は、体重を支える四肢に強度をもたらす、骨の密度の高い外層である。骨粗しょう症では、骨梁の損失があり、その結果、骨梁が減少し薄くなり、圧縮強度および弾力性が低減し、かつ、中でも腰椎、骨盤、および大腿骨頚の、骨折の傾向が増す。骨の微細構造、例えば、骨の体積、骨梁の数、骨梁の厚さ、皮質骨の外周、および皮質骨の厚さを、高解像度のCTスキャンで測定することができる。
【0207】
骨の形成および代謝回転は、血液および尿の試料において骨芽細胞による骨形成および破骨細胞による骨分解のマーカーを測定することにより、臨床的状況において推定することができる。骨形成の速度は、オステオカルシン、骨のアルカリホスファターゼ、プロコラーゲン1のC末端およびN末端のプロペプチドなどの、骨芽細胞活性のマーカーをアッセイすることにより測定される。骨分解の速度は、デオキシピリドリン架橋(DPD)、コラーゲン1のC末端およびN末端のテロペプチドなどの、破骨細胞活性のマーカーを測定することにより評価される。これらの測定値は、治療に対する応答の代替マーカーとして臨床的に用いられることが多い。
【0208】
7回膜貫通受容体を偏ったリガンドと接触させる工程を含む、7回膜貫通受容体を調節する方法が開示される。
【0209】
また、偏ったリガンドが7回膜貫通受容体のβ−アレスチン経路を選択的に活性化し得る方法も開示される。
【0210】
また、7回膜貫通受容体が副甲状腺ホルモン(PTH)/PTH関連タンパク質受容体(PTH1Rの効果)を含む方法も開示される。
【0211】
また、副甲状腺ホルモン(PTH)/PTH関連タンパク質受容体(PTH1R)がI型受容体である方法も開示される。
【0212】
また、PTH1Rの活性化によりOPGの増大およびRANKLの低減が生じる方法も開示される。
【0213】
また、PTH1Rの活性化がDPD生産の増大を生じさせない方法も開示される。
【0214】
また、7回膜貫通受容体のβ−アレスチン経路が7回膜貫通受容体のGタンパク質経路よりも活性化される方法も開示される。
【0215】
また、偏ったリガンドが同化的な骨形成を誘発する方法も開示される。
【0216】
また、偏ったリガンドが生物の骨ミネラル密度を増大させる方法も開示される。
【0217】
また、偏ったリガンドが骨梁形成を増大させる方法も開示される。
【0218】
また、偏ったリガンドが、対照と比較して骨芽細胞の活性を増大させるが、一方で、ほぼ同時に、破骨細胞の活性は増大させない方法も開示される。
【0219】
また、偏ったリガンドが骨芽細胞および破骨細胞の活性を結びつけない方法も開示される。
【0220】
また、偏ったリガンドが、破骨細胞形成の増大のマーカーの産生を増大させることなく、骨芽細胞による骨形成のマーカーを増大させる方法も開示される。
【0221】
また、偏ったリガンドが対照と比較して破骨細胞の動員を増大させない方法も開示される。
【0222】
また、偏ったリガンドが対照と比較して破骨細胞の分化を増大させない方法も開示される。
【0223】
偏ったリガンドが(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)を含む方法も開示される。
【0224】
また、偏ったリガンドがPTHと比較して、ERK1/2の活性化を増大させるが、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化を増大させない方法も開示される。
【0225】
また、偏ったリガンドがPTHと比較して、MAPキナーゼの活性化を増大させるが、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化を増大させない方法も開示される。
【0226】
また、7回膜貫通受容体の調節を必要とする対象を同定する工程をさらに含む方法も開示される。
【0227】
また、対象が骨障害を有する方法も開示される。
【0228】
また、骨障害が骨粗しょう症である方法も開示される。
【0229】
また、7回膜貫通受容体の調節が、偏ったリガンドの調節を示すマーカーについて対象の生体流体を分析する工程によってモニターされる方法も開示される。
【0230】
また、生体流体が尿である方法も開示される。
【0231】
また、生体流体が血清である方法も開示される。
【0232】
また、マーカーがオステオカルシンである方法も開示される。
【0233】
また、マーカーが対照と比較して増大する方法も開示される。
【0234】
また、マーカーがデオキシピリジノリン(DPD)である方法も開示される
また、マーカーが、偏っていないリガンドを用いた活性化を含む対照と比較して増大していない方法も開示される。
【0235】
また、偏っていないリガンドがPTHを含む方法も開示される。
【0236】
組成物の活性を分析する方法であって、a)組成物をGPCRと接触させる工程、b)GPCRの第1のシグナル変換経路の活性化を決定し、第1の活性化の結果を生じさせる工程、c)GPCRの第2のシグナル変換経路の活性化を決定し、第2の活性化の結果を生じさせる工程を含み、第1の活性化の結果および第2の活性化の結果が、組成物の活性プロフィールを生成する方法が開示される。
【0237】
また、GPCRがPTH1Rである方法も開示される。
【0238】
また、第1のシグナル変換経路がGタンパク質経路である方法も開示される。
【0239】
また、第1のシグナル変換経路の活性化を決定する工程がcAMPの活性化をアッセイすることを含む方法も開示される。
【0240】
また、第2のシグナル変換経路がβ−アレスチン経路である方法も開示される。
【0241】
また、第2のシグナル変換経路の活性化を決定する工程がβ−アレスチンの動員をアッセイすることを含む方法も開示される。
【0242】
また、第2のシグナル変換経路の活性化を決定する工程がERK1/2の活性化をアッセイすることを含む方法も開示される。
【0243】
また、d)GPCRを対照と接触させる工程、e)GPCRの第1のシグナル変換経路の活性化を決定し、第1の活性化の対照の結果を生じさせる工程、f)GPCRの第2のシグナル変換経路の活性化を決定し、第2の活性化の対照の結果を生じさせる工程をさらに含み、第1の活性化の対照の結果および第2の活性化の対照の結果が、組成物の活性プロフィールを生成する方法も開示される。
【0244】
また、第1の活性化の結果と第1の活性化の対照の結果とを比較する工程をさらに含む方法も開示される
また、第2の活性化の結果と第2の活性化の対照の結果とを比較する工程をさらに含む方法も開示される
また、所望の活性化プロフィールに基づいて組成物を選択する工程をさらに含む方法も開示される。
【0245】
また、所望の活性化プロフィールがβ−アレスチン経路の活性化およびGタンパク質経路の活性化の低減を含む方法も開示される。
【0246】
また、対象が開示された組成物で治療される方法も開示される。また、対象が、本明細書において開示される1つまたは複数の障害について治療を必要とすると診断され、かつ/または治療プロセスの前もしくはその一部として障害について試験される方法も開示される。
【実施例】
【0247】
以下の実施例は、本明細書において特許請求される化合物、組成物、物品、装置、および/または方法がいかにして実施および評価されるかについての完全な開示および記載を当業者に提供するために提示されるものであり、そして純粋に例示的であることを意図したものであり、開示を限定することを意図したものではない。数(例えば、量、温度など)に関する正確性を確実にするよう努めているが、ある程度の誤差および偏差が説明される。別段の指示がない限り、部分は重量部であり、温度は℃であるかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧であるかまたはそれに近いものである。
【0248】
(実施例1)
a)結果
(1)(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)(PTH−βarr)は、骨芽細胞における、Gタンパク質のシグナル伝達に依存しない、β−アレスチン介在性のERK1/2の活性化を刺激する。
【0249】
PTH−βarrが天然の条件下で偏った応答を示すかどうかを試験するために、マウス初代骨芽細胞(POB)における、内因性PTH1RのPTH(1−34)およびPTH−βarrによる刺激に応じたcAMPの蓄積(図1a)を試験した。WTおよびβ−アレスチン2−/−のC57BL/6マウスから単離したコンフルエントなPOB培養物において、β−アレスチン2−/−のPOBにおける基底cAMPレベルは、WTのPOBと比較して顕著に高かった。β−アレスチン2−/−細胞における基底cAMPの増大は、PTH1Rおよび/または他のGタンパク質共役型7TMRのβ−アレスチン介在性の脱感作の低下に起因すると考えられる。
【0250】
WTおよびβ−アレスチン2−/−の細胞の両方を100nMのPTH(1−34)で5分間処理すると、cAMPが強く増大した。5分間では、WTおよびβ−アレスチン2−/−のPOBの間で、生成されたcAMPに顕著な差はなかった。インバースアゴニストの活性と一致して、WTのPOBを1μMのPTH−βarrで処理するとcAMPは増大しなかったが、β−アレスチン2−/−のPOBの処理は、上昇した基底cAMPレベルを顕著に低減した(図1A)。POB培養物をPTH(1−34)またはPTH−βarrで刺激すると、Gq/11 PIの加水分解を活性化しなかった(データは示していない)。
【0251】
PTH(1−34)およびPTH−βarrで刺激されたERK1/2 MAPキナーゼの活性化を、100nMのPTH(1−34)または1μMのPTH−βarrで5分間処理した後に、WTおよびβ−アレスチン2−/−のPOBで評価した(図1b)。WTのPOBにおいて、両方の作用物質はERK1/2のリン酸化を基底に対して約3倍増大させた。β−アレスチン2−/−のPOBはWTのPOBと同程度にPTH(1−34)に応答し、このことは、完全なアゴニストペプチドが、β−アレスチン2の不存在下で古典的なGタンパク質依存性経路を介してERK1/2を活性化し得ることを示している。対照的に、PTH−βarrはβ−アレスチン2−/−のPOBにおいてERK1/2を活性化することができず(図1B)、このことは、WTのPOBにおけるPTH−βarrによるERK1/2の活性化がβ−アレスチン介在性であり、Gタンパク質のシグナル伝達に依存していないことを示している。
【0252】
(2)β−アレスチン経路の断続的な活性化は、インビボで骨密度を増大させる。
【0253】
β−アレスチン2−/−マウスは、繁殖能力を有し、甚だしい表現型上の異常を有さない。さらに、骨格の形態またはサイズにおいて、6匹のWTマウスと比較して、β−アレスチン2−/−マウスのx線分析によって検出される甚だしい変化はなかった(データは示していない)。骨に対するPTHの同化的効果の調節に対する、β−アレスチン介在性のシグナル伝達の寄与を試験するために、9週齢のWTマウスおよびβ−アレスチン2−/−マウスを、PTH(1−34)(40mg/kg/日)、β−アレスチンに偏ったアゴニストであるPTH−βarr(40mg/kg/日)(通常のmg/kg/日である)、または媒体を断続的に(すなわち1日1回)IP注射することにより処置した。骨ミネラル密度(BMD)の測定を、ベースラインで、および4から8週間にわたり連続的に得た(図2)。ベースラインでは、9週齢のβ−アレスチン2−/−マウスは、9週齢のWTマウスと比較して、顕著に低い腰椎BMDを有していた(WT 0.0678g/cm2±0.0008、β−アレスチン2−/−0.0648g/cm2±0.0009、p=0.012)。WTマウスまたはβ−アレスチン2−/−マウスの間で、全身のBMDまたは大腿骨のBMDに顕著な差はなかった。予想された通り、4週目および8週目に、PTH(1−34)で処置したWTマウスは、媒体で処置したマウスと比較して、腰椎および大腿骨のBMDにおいて顕著な増大を示した(図2AおよびC)。初期の報告と一致して、BMDにおけるこれらの増大は、PTH(1−34)で処置したβ−アレスチン2−/−マウスにおいては見られなかった(図2BおよびD)。PTH−βarr(40mg/kg/日)、β−アレスチンに偏ったアゴニスト、およびGタンパク質のシグナル伝達の阻害剤で処置したWTマウスもまた、腰椎においてBMDの顕著な増大を示した(図2A)。PTH−βarrでの処置は、WT動物における大腿骨のBMDには顕著に影響しなかった(図2C)。β−アレスチン2−/−マウスにPTH−βarrを投与すると、腰椎および大腿骨のBMDの両方が低減した(図2D)。ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化とは関係なく、PTH−βarrはWTにおいてPTH1Rシグナルのサブセットを生じさせるがβ−アレスチン−/−細胞において生じさせないため、これらのデータは、β−アレスチンへのPTH1R受容体の「結合」により伝達される骨代謝におけるPTH−βarr誘発性の変化と一致する。PTH−βarrで処置したβ−アレスチン2−/−マウスにおけるBMDの低減は、Gタンパク質介在性のシグナル伝達の阻害およびβ−アレスチン2介在性のシグナル伝達の不存在に起因すると考えられる。これらの結果をまとめると、骨梁におけるPTH1Rで刺激された同化的効果が、個別のβ−アレスチン介在性の構成要素およびGタンパク質介在性の構成要素を有していることが示される。
【0254】
(3)骨梁の量および微細構造に対するPTH1Rで刺激されたβ−アレスチン介在性シグナル伝達の寄与。
【0255】
腰椎の定量的なマイクロCT(qCT)測定を、媒体、PTH(1−34)、またはPTH−βarrで処置した8週間後に、WTおよびβ−アレスチン2−/−のマウスから得た。媒体で処置したWTマウスとβ−アレスチン2−/−マウスとの間で、全体的な骨梁密度(BV/TV)に顕著な差はなかった(図3A)。しかし、骨梁の微細構造に関しては、媒体で処置した8週間後、β−アレスチン2−/−マウスはWTマウスと比較して骨梁の厚さが顕著に大きく(図3B)、WTマウスと比較して骨梁(trabecular)の数が顕著に少なかった(図3c)。偽処置した動物における骨梁の構造におけるこれらの差は、1)β−アレスチン介在性のシグナル伝達の低下、および2)β−アレスチンの脱感作の低下によるGタンパク質のシグナル伝達の増大という、2つの潜在的に寄与するプロセスを反映している。
【0256】
腰椎のマイクロqCT分析により、8週間にわたりPTH(1−34)を毎日投与して処置したWTマウスが、媒体で処置した動物と比較して、顕著に増大した腰椎の骨梁密度を有することが示された(図3A)。とりわけ、PTH(1−34)は、骨梁の厚さ(図3B)および骨梁の数(図3B)の顕著な増大を誘発した。8週間後、Gタンパク質介在性のシグナル伝達を阻害するがβ−アレスチン介在性のシグナル伝達を活性化させる偏ったアゴニストであるPTH−βarrは、媒体で処置した動物と比較して、WTマウスにおいて腰椎の骨梁密度の顕著な増大を誘発した(図3A)。さらに、PTH−βarrはまた、WTマウスにおいて、骨梁の厚さ(図3B)および骨梁の数(図3C)の顕著な増大を誘発した。
【0257】
骨梁形成に対するPTH−βarrの同化的効果がβ−アレスチン介在性のシグナル伝達メカニズムの活性化を必要とするかどうかを試験するために、β−アレスチン2−/−マウスをまた、PTH(1−34)およびPTH−βarrで処置した。PTH(1−34)で処置したβ−アレスチン2−/−マウスは、媒体で処置したβ−アレスチン2−/−マウスと比較して、骨梁密度の正味の増大を示した。しかし、PTH(1−34)で処置したβ−アレスチン2−/−マウスにおける骨梁密度のパーセントの増大(17%)は、WT処置マウスにおけるもの(38%)よりも少なかった(図3A)。PTH(1−34)で処置したβ−アレスチン2−/−マウスは、媒体で処置したβ−アレスチン2−/−マウスと比較して、骨梁の厚さが顕著に増大したが(図3B)、骨梁の数は顕著に増大しなかった(図3C)。PTH(1−34)は、Gタンパク質/cAMP依存性およびβ−アレスチン依存性のシグナルの両方を誘発することが知られている。したがって、β−アレスチン2−/−マウスの骨梁の微細構造に対するPTH(1−34)での刺激の効果は、PTH(1−34)で刺激されたおよび/または過剰なGタンパク質シグナル伝達の低下に起因し得る。
【0258】
WT動物におけるPTH−βarrの同化的効果は、PTH−βarrで処置したβ−アレスチン2−/−マウスにおいては消失した。媒体で処置したβ−アレスチン2−/−マウスと比較して、PTH−βarrで処置したマウスは、骨梁の体積(図3A)および骨梁の厚さ(図3B)の顕著な減少を示した。PTH βarrで処置したWTマウスにおいて見られる骨梁の数の増大もまた、β−アレスチン2−/−マウスにおいては見られなかった(図3c)。β−アレスチン2−/−マウスにおける同化的効果の不存在は、PTH−βarrの効果がβ−アレスチン依存性であることを示している。さらに、骨梁密度および骨梁の厚さの減少は、ノックアウト動物におけるβ−アレスチン依存性のシグナル伝達の低下と、PTH−βarrによる内因性のPTHで刺激されたGタンパク質依存性のシグナル伝達事象の阻害との両方によって説明することができる。
【0259】
最後に、皮質骨に対するPTH(1−34)およびPTH−βarrの効果を、大腿骨中央の骨幹部のqCTで試験した(図3DおよびE)。媒体で処置した動物を8週間後に比較すると、WTマウスとβ−アレスチン2−/−マウスとの間で骨膜の外周において差は示されなかった。しかし、β−アレスチン2−/−マウスは、媒体で処置したWTマウスよりも大きな骨幹中央部の皮質骨の厚さを有していた。PTH(1−34)の8週間後、WTマウスは大腿骨の骨膜の外周の増大および皮質骨の厚さの増大を示した。偏ったアゴニストであるPTH−βarrは、WTマウスにおけるこれらの皮質骨の指数に影響を有さなかった。β−アレスチン2−/−マウスにおいては、PTH(1−34)は、骨膜の外周または皮質骨の厚さに対して顕著な効果を有さなかったが、PTH−βarrは、骨膜の外周および皮質骨の厚さを顕著に減少させた。WTまたはβ−アレスチン−/−の骨内膜性の骨表面に対するPTH(1−34)またはPTH−βarrの顕著な効果はなかった(データは示していない)。
【0260】
(4)β−アレスチン2介在性のシグナル伝達により誘発される組織形態計測指数の変化
動的な組織形態計測データは、骨梁の形態のqCTと一致した。8週間後、媒体で処置したβ−アレスチン2−/−マウスは、媒体で処置したWTよりも大きな骨芽細胞表面を有していたが(図4A)、破骨細胞表面および類骨表面は、これらの2つの群において顕著には異ならなかった(図4BおよびC)。β−アレスチン介在性のシグナル伝達の選択的活性化により生じる同化的な骨形成と一致して、腰椎切片の定量的な組織形態計測分析は、PTH(1−34)またはPTH−βarrで処置したWTマウスが、媒体で処置したそれらの対応物と比較して、増大した骨芽細胞表面(図4A)および類骨(図4C)を有していたことを示す。予想された通り、PTH(1−34)で処置した動物において、破骨細胞表面が増大した。興味深いことに、PTH−βarrでの処置は、破骨細胞の動員に影響を有さなかった。PTH−βarrはWTマウスにおいて骨芽細胞活性を増大させるが、PTH(1−34)はβ−アレスチン2の不存在下における破骨細胞形成を促進し、PTH−barrはそうではないという所見は、β−アレスチン依存性のシグナル伝達が骨芽細胞による骨形成を刺激するために十分であり得るが、骨芽細胞−破骨細胞の結びつきがGタンパク質活性化を必要とするということを示す。
【0261】
(5)骨代謝の血清マーカーおよび尿マーカーに対するβ−アレスチン介在性のシグナル伝達の効果。
【0262】
WTおよびβ−アレスチン2−/−のマウスにおけるPTH(1−34)およびPTH−βarrの投与の、代謝的効果に寄与する細胞メカニズムを明らかにするため、骨の代謝回転の血清マーカーおよび尿マーカーを評価した。骨形成の生化学的マーカーである基底血清オステオカルシンは、WTとβ−アレスチン2−/−との間で顕著には異ならなかった(WT、184.0±9.038;β−アレスチン2−/−、210.6±11.36;p=0.068)。オステオカルシンは、媒体で処置したマウスと比較して、PTH(1−34)またはPTH−βarrのいずれかで処置したWTマウスにおいて顕著に増大した(図5A)。血清オステオカルシンはまた、媒体と比較して、PTH(1−34)で処置したβ−アレスチン2−/−マウスにおいて増大した。しかし、PTH−βarrで処置したβ−アレスチン2−/−マウスにおいては血清オステオカルシンに顕著な変化はなく、これによりさらに、骨に対するPTH−βarrの同化的効果はβ−アレスチン依存性であるという考えが支持される。
【0263】
骨分解および骨吸収のマーカーである、24時間の尿デオキシピリジノリン(DPD)も測定した。媒体で処置したβ−アレスチン2−/−マウスは、媒体で処置したWT対応物よりも顕著に高い尿DPDを有しており、このことは、b−アレスチン2の不存在下での優れたベースラインの破骨細胞活性と一致する。尿DPDは、媒体で処置した動物と比較して、PTH(1−34)で処置したWTおよびβ−アレスチン2−/−のマウスの両方において顕著に増大した(図5B)。しかし、PTH−βarrは、媒体と比較して、WTまたはβ−アレスチン2−/−のマウスにおいて、骨吸収の尿DPDマーカーに対して顕著な効果を有していなかった。WTと比較した、PTH(1−34)で処置したβ−アレスチン2−/−マウスにおける尿DPDの排出の増大は、骨芽細胞−破骨細胞の結びつきが主に、β−アレスチン2の不存在下において脱阻害されるGタンパク質依存性のメカニズムを介して仲介されるという仮説をさらに支持するものである。
【0264】
(6)異なるβ−アレスチン依存性およびGタンパク質依存性の経路が、骨調節タンパク質遺伝子のPTH受容体に刺激された発現に寄与する。
【0265】
骨調節タンパク質のPTH1Rに刺激された転写に対するβ−アレスチン介在性のシグナル伝達の寄与を決定するために、頭蓋冠のRNAを、PTH(1−34)、PTH−βarr、または媒体で処置したWTおよびβ−アレスチン2−/−のマウスから単離した。オステオカルシンの遺伝子発現、ならびに、破骨細胞による骨吸収をそれぞれ活性化および阻害する、核因子κBリガンドの受容体活性化因子(RANKL)およびオステオプロテグリン(OPG)の遺伝子発現を、定量的RTPCRによって分析した(図6A〜C)。
【0266】
媒体で処置した動物において、オステオカルシンのmRNAの発現は、WTマウスと比較して、β−アレスチン2−/−マウスにおいて高く、このことは、WTと比較してβ−アレスチン2−/−マウスにおいてOb/Bsが顕著に高いことを示す組織形態計測の結果と一致するものであった。骨形成で予想されたように、PTH(1−34)およびPTH−βarrの両方が、WTの処置動物において、媒体で処置したそれらの対応物と比較して、オステオカルシンのmRNAの発現の増大を誘発した(図6A)。PTH処置はまた、β−アレスチン2−/−マウスにおいてオステオカルシンの発現を顕著に増大させたが、PTH−βarrは、オステオカルシンの発現の減少を誘発した。
【0267】
破骨細胞活性の調節因子に関しては、RANKLおよびOPGのmRNAの発現が、WTマウスと比較して、媒体で処置したβ−アレスチン2−/−マウスにおいて高かった。RANKLのmRNAの存在度の増大は、WTと比較して、媒体で処置したβ−アレスチン2−/−マウスにおいて観察された顕著に高い尿DPDと一致するものであった。PTH(1−34)のみが、WTの処置動物において、媒体で処置したそれらの対応物と比較して、RANKLおよびOPGのインビボでの発現の増大を誘発した(図6A)。PTHでの処置もPTH−βarrでの処置も、β−アレスチン2−/−マウスにおいてRANKLまたはOPGの発現に対して顕著な効果を有さなかった。
【0268】
(実施例2)
骨に対するPTH1RのPTH(1−34)での刺激の同化的効果はまた、古典的なGタンパク質−cAMPシグナル伝達により仲介され、また、β−アレスチンにより仲介される、Gタンパク質の動員に依存しない異なるメカニズムが示された。さらに、PTH1R刺激の骨吸収効果は、主にGタンパク質依存性のメカニズムであり、β−アレスチン依存性ではないと考えられる。
【0269】
ERK1/2への、Gタンパク質非依存性/β−アレスチン依存性の7TMRシグナル伝達を選択に刺激することが可能なリガンドはまた、合成アンジオテンシンアゴニストペプチドである[Sar、Ile、Ile]SIIを用いたAT1Aアンジオテンシン受容体系において記載されている。さらに、β−アドレナリン受容体に対するカルベジロールおよびインバースアゴニストICI118551、ならびにVバソプレッシン受容体に対するSR121463Bなどのアンタゴニストとして元々分類されているリガンドもまた、足場の組み立ておよびβ−アレスチン介在性のMAPK活性化を促進することが示されている。これらの所見は、β−アレスチンの動員が7TMRのGタンパク質の活性化に限られているわけではないことを示している。ここで示されるデータは、PTH−βarrが、骨芽細胞において、Gタンパク質依存性のシグナル伝達を阻害し得るがアレスチン依存性のシグナル伝達のERK1/2リン酸化を活性化させる、PTH1Rに対する偏ったアゴニズムを示している。
【0270】
しかしながら、β−アレスチン介在性シグナル伝達を優先的に活性化するが、同時にGタンパク質の動員を阻害するPTH1Rリガンドを使用して、古典的なGタンパク質シグナル伝達メカニズムが、PTHへのβ−アレスチン−/−マウスの骨格の応答の全体的に十分な原因となってはいないことを実証した。それどころか、β−アレスチンは、PTH1R刺激に対する骨の同化反応に固有に寄与する、Gタンパク質刺激に依存しない、異なるシグナル伝達メカニズムを開始する。したがって、β−アレスチン−/−マウスで報告された、骨同化における弱化した応答は、実際には、過剰なGタンパク質シグナル伝達ではなく、このβ−アレスチン介在性シグナル伝達事象の喪失に起因し得る。
【0271】
PTH1Rに刺激されたGタンパク質介在性のメカニズムおよびGタンパク質非依存性/β−アレスチン介在性メカニズムは、骨代謝の異なる構成要素に異なって寄与し得る。β−アレスチン介在性シグナル伝達事象は、骨梁における同化的骨形成(特に、骨梁の数および厚さの増大)に主として関するが、PTH1R刺激の骨吸収効果には寄与しないことが示される。
【0272】
Gタンパク質活性化に依存せずに、β−アレスチン介在性シグナル伝達を選択的に活性化する能力を有する、PTH1Rに対する偏ったアゴニストであるPTH−βarrが本明細書で開示され、これは、独特な生理学的プロフィールを有する。さらに、化合物は、Gタンパク質介在性経路を優先的に活性化するが、同時にβ−アレスチン依存性シグナル伝達経路に拮抗するPTH−barrとは反対の方向に偏り得る。
【0273】
【数1】

【0274】
【数2】

【0275】
【数3】

【0276】
【数4】

【0277】
【数5】

【0278】
【数6】

【0279】
【数7】

【0280】
【数8】

M.配列
【0281】
【化1】

【0282】
【化2】

【0283】
【化3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
7回膜貫通受容体を偏ったリガンドと接触させる工程を含む、7回膜貫通受容体を調節する方法であって、該7回膜貫通受容体が、副甲状腺ホルモン(PTH)/PTH関連タンパク質受容体(PTH1R)を含む、方法。
【請求項2】
前記偏ったリガンドが、前記PTH1Rのβ−アレスチン経路を選択的に活性化し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記副甲状腺ホルモン(PTH)/PTH関連タンパク質受容体(PTH1R)がI型受容体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PTH1Rの活性化により、OPGの増大およびRANKLの減少が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PTH1Rのβ−アレスチン経路が、該PTH1RのGタンパク質経路よりも活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記偏ったリガンドが、同化的な骨形成を誘発する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記偏ったリガンドが、生物における骨ミネラル密度を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記偏ったリガンドが、骨梁の形成を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記偏ったリガンドが、対照と比較して骨芽細胞の活性を増大させるが、一方で、ほぼ同時に、破骨細胞の活性は増大させない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記偏ったリガンドが、破骨細胞形成の増大のマーカーの産生を増大させることなく、骨芽細胞による骨形成のマーカーを増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記偏ったリガンドが、対照と比較して破骨細胞の動員を増大させない、請求項13に記載の方法。
【請求項12】
前記偏ったリガンドが、対照と比較して破骨細胞の分化を増大させない、請求項13に記載の方法。
【請求項13】
前記偏ったリガンドが、(D−Trp12、Tyr34)−PTH(7−34)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記偏ったリガンドが、PTHと比較して、ERK1/2の活性化を増大させるが、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化を増大させない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
PTH1Rの調節を必要とする対象を同定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が骨障害を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項17】
前記骨障害が骨粗しょう症である、請求項20に記載の方法。
【請求項18】
前記PTH1Rの調節が、偏ったリガンドの調節を示すマーカーについて前記対象の生体流体を分析する工程によってモニターされる、請求項19に記載の方法。
【請求項19】
前記生体流体が尿である、請求項19に記載の方法。
【請求項20】
前記生体流体が血清である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マーカーがオステオカルシンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記マーカーが対照と比較して増大している、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記マーカーがデオキシピリジノリン(DPD)である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記マーカーが、偏っていないリガンドを用いた活性化を含む対照と比較して増大していない、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記偏っていないリガンドがPTHを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
組成物の活性を分析する方法であって、a)該組成物をPTH1Rと接触させる工程、b)該PTH1Rの第1のシグナル変換経路の活性化を決定し、第1の活性化の結果を生じさせる工程、c)該PTH1Rの第2のシグナル変換経路の活性化を決定し、第2の活性化の結果を生じさせる工程を含み、該第1の活性化の結果および該第2の活性化の結果が、該組成物の活性プロフィールを生成する、方法。
【請求項27】
前記第1のシグナル変換経路がGタンパク質経路である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のシグナル変換経路の活性化を決定する工程が、cAMPの活性化をアッセイすることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記第2のシグナル変換経路がβ−アレスチン経路である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記第2のシグナル変換経路の活性化を決定する工程が、β−アレスチンの動員をアッセイすることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記第2のシグナル変換経路の活性化を決定する工程が、ERK1/2の活性化をアッセイすることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
d)前記PTH1Rと前記対照とを接触させる工程、e)該PTH1Rの第1のシグナル変換経路の活性化を決定し、第1の活性化の対照の結果を生じさせる工程、f)該PTH1Rの第2のシグナル変換経路の活性化を決定し、第2の活性化の対照の結果を生じさせる工程をさらに含み、該第1の活性化の対照の結果および該第2の活性化の対照の結果が、該組成物の活性プロフィールを生成する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の活性化の結果と前記第1の活性化の対照の結果とを比較する工程をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の活性化の結果と前記第2の活性化の対照の結果とを比較する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
所望の活性化プロフィールに基づいて組成物を選択する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記所望の活性化プロフィールが、β−アレスチン経路の活性化および前記Gタンパク質経路の活性化の低減を含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−523585(P2010−523585A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502267(P2010−502267)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/059143
【国際公開番号】WO2008/122041
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509011835)エムユーエスシー ファウンデーション フォー リサーチ ディベロップメント (4)
【出願人】(509274980)デューク ユニバーシティー アンド デューク ユニバーシティー ヘルス システムズ (1)
【Fターム(参考)】