説明

PTMP型ネットワークにおける通信システム

【課題】スループット性能が向上したPTMP型ネットワークにおける通信システムを提供する。
【解決手段】本実施の形態は、ハブ装置を複数の加入者装置で共有しあい、かつハブ装置と加入者装置との間の送信制御を行なうPTMP型ネットワークにおけるハブ装置において、前記ハブ装置と前記複数台の加入者装置との間のCA(衝突回避)フレームの送信を行なう上り制御チャネルと、データフレームの送信を行なうデータチャネルとは異なる帯域が割り当てられる。そして、上り制御チャネルにおけるCA手続は、前記データチャネルのデータ占有状態に基づいて、前記データチャネルの伝送制御とは独立して行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、PTMP型ネットワークにおける通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ADSLやFTTHなどを用いた高速インターネットサービスが、先進国を中心に急速に普及してきた。今後は人口密度の少ない過疎地や発展途上国などへの展開、すなわちデジタルデバイド解消のためのアクセスネットワークの整備が課題となってくる。こうした地域で、短期間で経済性良くアクセス環境を整備する一つの方策として、マイクロ波帯などの無線伝送媒体の利用が考えられる。この実現には、半径数十キロメートルにも及ぶ広域で、伝送媒体を効率良く共有しあう新たなアクセス制御方式の開発が必要である。
【0003】
HFC(hybrid fiber and coaxial)や加入者無線アクセス(FWA; fixed wireless access)など、広帯域な伝送媒体を1台のハブ装置(以下、SCH; signal conversion
hubと略)を介して複数台の加入者装置(以下、CPE; customer premises equipment)で共有しあうPTMP(point-to-multipoint)型アクセスネットワークでは、長距離伝送にともなう伝送遅延時間の増大を考慮しつつ、資源共有化による伝送効率の向上を
図る必要がある。こうした視点に立って、例えばHFCにおけるDOCSIS(data-over-cable service interface specifications)(非特許文献1、2)式や、衛星通信におけるDAMA(demand assignment multiple access)(非特許文献3)方式などが提案され、また無線アクセス(WiMAX)として標準化されたIEEE 802.16(非特許文献4)においても、DOCSISが採用されている。
【0004】
これらの方式では、2〜4msec程度の予約周期の中で送信手続きを行い、コネクションを確立してから通信を行う予約型アクセス制御方式(以下、予約方式と略)を採用することが多く、最初のコネクション確立に時間がかかることや、大量のバースト転送要求に対応し難いなどの問題がある。
【0005】
これに対して、イーサネット(登録商標)(非特許文献5)や無線LAN(IEEE802.11x)(非特許文献6)で多用されているCSMA系の競合型アクセス制御方式(以下、競合方式と略)は、予約方式のような欠点はないものの、その多くは“フレーム送出完了前に衝突検出”という方式上の制約から、最大ネットワーク長が制限され、またスループット特性はネットワーク長や物理伝送速度に強く依存する。このため、半二重方式のギガビットイーサでは、スループット特性の劣化を覚悟の上、短いフレームにはキャリアエクステンションと呼ぶダミーデータを付加(例:最短フレーム64バイトに448バイトを付加)して、最大100mのネットワーク長を実現している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】”Data-over-Cable Service Interface Specifications、 Cable Modem Termination System Network Side Interface Specification、” SP-CMTS-NSII01-960702、 MCNS holdings、 L.P.、 July 1996.
【非特許文献2】”Data-over-Cable Service Interface Specifications、 Cable Modem to Customer Premise Equipment Interface Specification、” SP-CMCI101-960702、 MCNS Holdings、 L.P.、 July 1996.
【非特許文献3】H. Peyravi、 ”Medium Access Control Protocols Performance in Satellite Communications、” IEEE Communications Magazine、 pp.62-71、 March 1999.
【非特許文献4】IEEE Std 802.16-2004、 ”IEEE Standard for Local and metropolitan area networks Part16: Air Interface for Fixed Broadband Wireless Access Systems、” Oct. 2004.
【非特許文献5】IEEE Std 802.3-2002、 ”Carrier sense multiple access with collision detection (CSMA/CD) access method and physical layer specifications、” 2002.
【非特許文献6】IEEE Std 802.11、 ”Information technology - Telecommunications and information exchange between systems - Local and metropolitan area networks - Specific requirements - Part11 : Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) specifications、” 1999.
【非特許文献7】小林浩、小澤和義、嘉村幸一郎、森谷修、”PTMP 型アクセスネットワークにおけるSynchronous CSMA/CD、” 信学論(B)、Vol.85-B、No.4、pp.471-479、2002.
【非特許文献8】森谷修、小林浩、”PTMP 型アクセスネットワークにおけるSynchronous CSMA with Multiple CA による衝突確率の低減、”情処学論、Vol.44、No.3、pp.932-941、2003.
【非特許文献9】森谷修、小林浩、”PTMP 型アクセスネットワークにおけるSynchronous CSMA/MCA 方式の衝突回避スロットの可変化、”情処学論、Vol.44、No.8、pp.2208-2217、2003.
【非特許文献10】森谷修、小林浩、森靖、高橋武宏、”PTMP 型アクセスネットワークにおけるSynchronous CSMA/v-MCA 方式へのフレーム先行送信制御の適用、”情処学論、Vol.48、No.4、pp.1758-1766、2007.
【非特許文献11】森靖、小林浩、上野洋一郎、森谷修、”サービス利用状況を反映した動的変動トラフィックのモデル化とシミュレーション環境の整備、”信学技報NS2006-11、pp.67-71、2006.
【非特許文献12】http://www.creativyst.com/cgi-bin/M/Glos/st/ Get-Term.pl?fsGetTerm=Out of Band (2001).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の無線LAN(IEEE802.X)では、具体的には、下記の問題があった。
【0008】
(1)端末の責任でキャリア検知(CS)やCA手続きを行なう
CSMA/CA方式は、対等分散を前提とするアクセス制御方式であるため、CSやCAごとにDIFSやSIFS、 back-off-timeなどのペイロードの送信に使えない時間が大量に存在するため、20%〜30%程度の最大スループットしか得られない。
【0009】
(2)隠れ端末問題
隠れ端末問題やさらし端末問題回避のため、ペイロードの送信に先立って、RTS/CTSフレームを送信し合い相手先との通信性を確認する方式を適用せざるをえず、その分、スループットの劣化を感受せざるを得ない。
【0010】
(3)PTMP型トラフィックへの不適合性
アクセスポイント(AP)からの下り方向(AP→CPE)アクセスと、多数のCPEからの上りアクセスとが対等の立場でアクセスし競合しあうため、インターネットやサーバから送られてきた大量の下りトラフィックの送信機会が抑制され、対サービス有効スループットの劣化を招く。
【0011】
(4)過負荷時耐性の欠如
CAスロットが1つしか用意されないため、(1)、(2)の不合理さとも相まって、NWに規格化負荷トラフィックρが0.3を超える負荷が加わると、急激にスループット特性が劣化して輻輳状態に陥り易くなり、また一旦輻輳状態に陥ると、この状態から抜け出れ難くなるなど、システムの安定性に欠ける。
【0012】
(5)ネットワーク特性の物理諸元依存性
現行の無線LANの物理諸元(最大NW長:100m、物理伝送速度:100Mbps)では問題とならないが、アクセス制御ごとにRTTによる資源浪費時間が介在するため、現行の諸元を超える拡張は難しい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本実施形態によれば、ハブ装置を複数の加入者装置で共有しあい、かつハブ装置と加入者装置との間の送信制御を行なうPTMP型ネットワークにおけるハブ装置において、前記ハブ装置と前記複数台の加入者装置との間のCA(衝突回避)フレームの送信を行なう上り制御チャネルと、データフレームの送信を行なうデータチャネルとは異なる帯域が割り当てられる。上り制御チャネルにおけるCA手続は、前記データチャネルのデータ占有状態に基づいて、前記データチャネルの伝送制御とは独立して行なわれる。 また、本実施形態によれば、ハブ装置を複数の加入者装置で共有しあい、かつハブ装置と加入者装置との間の送信制御を行なうPTMP型ネットワークにおける加入者装置において、前記ハブ装置と前記複数台の加入者装置との間のCA(衝突回避)フレームの送信を行なう上り制御チャネルと、データフレームの送信を行なうデータチャネルとは異なる帯域が割り当てられる。そして、ハブ装置からのCAフレーム送信許可信号を受信した場合に、CAフレームを送信する。そして、上り制御チャネルにおけるCA手続は、前記データチャネルのデータ占有状態に基づいて、前記データチャネルの伝送制御とは独立して行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、S-CSMA/v-MCA方式を説明するための図である。
【図2】図2(a)-(c)は、ネットワークの帯域をほぼ100%消費するような高負荷状態(ρ=1〜2)を想定して、BWCAとBWMACとの帯域配分比を設定した3つのケースについて、SCHでのチャネル占有の様子を示した図である。
【図3】本実施の形態のCA手続きに対するフロー制御を説明するための図である。
【図4】本実施の形態のFull-flying S-CSMA/v-MCA方式の動作を説明するための図である。
【図5】図5は、本実施の形態に係るPTMP型アクセスネットワークの構成を示す図である。
【図6】図6は、本実施の形態に係るPTMP型アクセスネットワークのSCHの構成を示す図である。
【図7】図7は、本実施の形態に係るPTMP型アクセスネットワークのCPEの構成を示す図である。
【図8】図8は、SCHの状態遷移を示す図である。
【図9】図9は、CPEの状態遷移を示す図である。
【図10】図10は、SCHの動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、SCHの動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、CPEの動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】図13(a)、(b)は、帯域配分比の妥当性を評価するための図である。
【図14】図14(a)、(b)は、フロー制御の有効性を説明するための図である。
【図15】図15は、CAスロット個数の変化を説明するための図である。
【図16】図16(a)、(b)は、従来のNF方式、F方式と、本実施の形態のFF方式との特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態のfull-flying Synchronous CSMA/v-MCA (carrier sense multiple access with variable multiple collision avoidanace)方式は、PTMP 型ネットワークの特徴を活かし、上り伝送媒体上のキャリア消滅時刻を目掛けて衝突回避(以下、CA と略)手続き用のCA フレームやペイロード送信用のMAC フレームすべてを先行(フライング)送信させることにより、伝送媒体の利用効率を限りなく高めようとするものである。なお、本実施の形態における「先行(フライング)」とは、自転車競技などで用いられている助走発振に近い意味合いで、陸上競技などでのいわゆるフライング(premature start)を意味するものではない。その結果、競合方式の特徴である低遅延特性を維持しながら、数十キロメートルに及ぶネットワーク長や物理伝送速度の影響を受けることなく、予約方式並みの高いスループット特性を実現することができる。
【0016】
以下、本実施の形態のベースとなったsynchronous CSMA/v-MCA方式(非特許文献7乃至10)などの概要と方式開発に当たっての課題を整理した後、本実施の形態の詳細を理論性能限界やシミュレーションによる性能評価を示しながら説明する。
【0017】
[Flying S-CSMA/v-MCA方式]
・PTMP型ネットワークとSynchronous CSMA/v-MCA方式
1台のSCHと複数台のCPEとで上り(CPE→SCH)と下り(SCH→CPE)とに分離した伝送媒体を共有しあうPTMP型ネットワークは、対等分散型制御を基本とするイーサネットなどのLANにはない特徴を備えている。すなわち、対等分散型のアクセス方式ではキャリア検知や衝突検出を個々のCPEが自らの責任において行うが、PTMP型ではCPEに代わってSCHが上り伝送媒体上のキャリア検知や衝突検出を行い、さらにMACフレームなどの送信タイミングを精度よく制御することができる。
【0018】
図1は、この特徴を利用したS-CSMA/v-MCA方式を説明するための図である。同方式においては、
(1)SCHへの上りフレームの到着を所定のタイミングにビット同期させ、かつSCHでの受信信号レベルを等しくさせる、
(2)SCHは、前回のCA手続きでのアクセス状態をもとに次回のCA手続きで用意すべきCAスロット(CAフレームの受信用タイムスロット)の個数を決定し、CAフレームの送信許可を下りSI(status indication)信号を介して広告する、
(3)送信すべきMACフレームを持つCPEは、広告された複数個のCAスロットの中から1つをランダムに選択しCAフレームを送信する、
(4)SCHはCA手続きに成功したCPEに対して、順に、上り信号(キャリア)がなくなったことを確認してからSI信号を送りMACフレームの送信を指示する、
(5)すべてのMACフレームの送信が完了したら、SCHは(2)に戻り次回のCA手続きを始める、
(6)CA手続きに失敗したCPEは、CAスロットを単位とする2乗バックオフ処理(非特許文献5)を行なった後、再度CA手続きを試みる、
ことを骨子としている。
【0019】
(1)項について、図1記載の下り伝播遅延時間Tdi、上り伝播遅延時間Tui及び送信タイミングの調整時間Δtiは、CA手続きとは別の制御ウィンドウ(例えば、周期5msec)を用いて、SCHが順番にCPEを指定してレスポン信号を返させ、SCHと当該CPE間の往復伝播遅延時間や信号レベルを計測することによって得られるもので、アクセスの同期化のベースとなる。これにより、同じCAスロットに複数のCAフレームが送信されたときに、それらの先頭から衝突状態に突入させて確実に衝突を検出する、あるいはCA手続きに成功したCPEが送信するMACフレームが他の信号と衝突しないよう送信タイミングを調整することが可能になる。これは、イーサネットなどでは不可避だったネットワーク長やフレーム長に関わる制約を撤廃し得ることを意味するもので、詳細は非特許文献7を参照されたい。
【0020】
(2)から(6)項はCA手続きに関するもので、SI信号にはCAスロットの個数と、CAフレームやMACフレームの送信を指示する制御情報などが、またCAフレームには衝突検出用のランダムデータや誤り検査符号、MACフレーム長などが記述されている。SCHは受信したCAフレームのビット誤りを検査し、誤りがなければ衝突は起きなかった、すなわちCA手続きに成功したものとして、当該CPEに対して順にSI信号を用いてMACフレームの送信を指示する。
【0021】
無線LANで用いられているCSMA/CA方式では、端末主導でCA手続きを行い、また1回のCA手続きでMACフレームの送信に至れるのは一つだけである。これに対して、S-CSMA/v-MCA方式では、SCHが非特許文献9に記したアルゴリズムにて、負荷(新規生成とバックオフ処理後の再送)トラフィックに応じてCAスロット個数を可変制御することによって、アクセスの分散化、すなわちCA手続きにおける衝突発生確率を低減している。その結果、低負荷状態ではCAスロット個数が少なくCA手続き時間が短くなるため低遅延時間特性を示し、逆に高負荷状態では多数のCAスロットが用意されCA手続きの成功確率が高くなるため高スループット特性を示す。
【0022】
しかしながら、同方式では、CA手続きやMACフレームの送信指示ごとに、最大ネットワーク長に依存する最大往復伝播遅延時間(RTT;round trip time)が介在する。このため、ネットワーク長が長くなるほど、あるいは物理伝送速度が速くなるほど、2つのRTTの介在(時間的浪費)によるスループット特性の劣化が顕著になる。同方式の性能を高めるには、送信タイミングの前倒しなどの課題解決が必要なことも指摘されていた(非特許文献9)。
【0023】
[Flying S-CSMA/v-MCA 方式]
Flying S-CSMA/v-MCA方式は、上記(4)項の代わりに、
(4-1)SCHは、CA手続きの際にCPEに申告させたMACフレーム長やRTTなどをもとに、上りフレームがSCHに到着し終わる時刻(以下、キャリア消滅時刻と呼ぶ)を予測し、
(4-2)同時刻を目掛けてフレームを先行送信するようCPEに指示する、
ことを骨子とする。
【0024】
これは、キャリア消滅時刻に合せてCAフレームと送信順序が2番目以降のMACフレーム(以下、2ndMAC)を先行送信させることによって、高負荷になるほどRTTの影響が少なくなることを意味する。シミュレーションによる評価の結果、長ネットワーク領域においてスループットの劇的な改善(ネットワーク長40kmにて、S-CSMA/v-MCA方式の最大スループット0.36に対して0.73)が示された。しかしながら、2.5kmでの最大スループット0.80に対して40kmでは10%弱劣化するなど、ネットワーク長が長くなるほど少しではあるが劣化することも確認された(非特許文献10)。
【0025】
さらなる性能向上を目指すには、CA手続き後の最初のMACフレーム(以下、1st MAC)も先行送信できなければならない。このためには、(5)項の改善、すなわち、“すべてのMACフレームの送信が完了してから、次回のCA手続きを始める”のではなく、“MACフレームの送信が完了する前に、次回のCA手続きを開始できる”ようにする必要がある。これは、アクセス制御とペイロードの送信が同じ帯域を使用する所謂in-band signaling(以下、IBSと略)方式に起因した問題である。
【0026】
かつてのアナログ電話網ではIBS方式が採用されていたが、デジタル電話網(ISDNなど)ではout-of band signaling(以下、OBSと略)方式が導入され、多彩な呼制御やサービスの提供が可能になった。この知見をもとに本システムにOBS方式を導入すれば、
アクセス制御とMACフレームの送信を各々独立に進行できるようになり、(5)項の改善によるスループット特性の改善はもとより、遅延時間特性の改善、ひいてはネットワーク長や物理伝送速度に非依存な理想的な性能が得られるものと考えられる。これはまた、通
信品質制御の導入など、システムの拡張性を高める上でも有効なことは、デジタル電話網の例から明らかである。
【0027】
しかしながら、OBS方式の導入にともなって、例えばMACフレームの送信状態を無視してCA手続きを続ければ、ネットワークの負荷状態によっては、CA手続きに成功したものの送信待ちになったMACフレームが滞積し、遅延特性が急激に劣化する恐れがある。CA手続きに対して何らかのフロー制御を施す必要がある。本実施の形態に係るOBS方式やフロー制御などを組み込んだfull-flying S-CSMA/v-MCA方式によって、これらの課題が解決されることについて説明する。
【0028】
以下、本実施の形態に係るfull-flying S-CSMA/v-MCA方式について説明する。
【0029】
なお、本実施の形態は、無線ネットワークに限定されるものではなく、無線と有線伝送媒体とを組み合わせたネットワーク、或いは有線伝送媒体のみから構成されるネットワークにも広く適用可能である。
【0030】
[Full-flying S-CSMA/v-MCA方式]
・方式の概要
Full-flying S-CSMA/v-MCA方式は、上述の骨子
(5)項の代わりに、
(5-1)CA手続きのためのCAフレームの送信指示と、CA手続き後のMACフレームの送信指示とを独立させ、
(5-2)高負荷状態において、CAチャネル(CAフレーム伝送用の上り回線、上り制御チャネル)とMACチャネル(MACフレーム伝送用の上り回線、データチャネル)の伝送容量の比が適正になるように配分し、さらに
(5-3)CA手続きに成功したものの送信できずに待機させられるMACフレームが滞積していくときは、CA手続きの開始を一時的に遅らせる、
ことを骨子とする。
【0031】
(5-1)項は、OBS方式の導入によって、CA手続きに成功したすべてのCPEがMACフレームの送信を終えるのを待たずに、次のCA手続きを開始させ、またCA手続きの開始や終了に依存することなく、MACフレームの送信を進められることを意味する。
【0032】
(5-2)項は、上位層がペイロードを次々に生成する高負荷状態(例えば、正規化負荷トラフィックρ=1〜2程度)において、CAスロット個数に見合った伝送容量をMACチャネルに配分することによって、ネットワークの帯域利用効率をできる限り高めようとするものである。ここで、正規化負荷トラフィックとは、負荷トラフィックを物理伝送速度(CAチャネルとMACチャネルの合計)で正規化したものである。
【0033】
(5-3)項は、例えば長いMACフレームが集中したとき、送信待ちのMACフレームが一時的に滞積し、遅延時間が急増することがあるが、こうしたときにCA手続きの開始を遅らせ、MACフレームのさらなる滞積を抑制するフロー制御として機能する。
【0034】
なお、OBS方式は、周波数分割などによりチャネルを物理的に分離するphysical OBS方式と、物理的には同じ帯域を共用しながら時分割などにより論理的にチャネルを分離するphysical IBS/logical OBS方式とに大別できる(非特許文献12)。両者の実装方法は大きく異なるが、CA手続きとMACフレーム送信指示を独立に進められるのであれば、性能的には大差はない。
【0035】
まず実装方法を限定せずに一般解としての適正な伝送容量の配分比と、これより導出される理論性能限界を求め、次いで対象モデルを限定して帯域配分とチャネル占有の物理的な意味合い、さらにCA手続きに対するフロー制御の適用法について考察する。
【0036】
(I)適正な伝送容量の配分比
CA手続きごとにSCHが用意するCAスロットの個数をn、この中の一つをランダムに選択してCA手続きを行おうとするCPEの台数(同時アクセス数)をkとすると、CAフレームを受信しなかったCAスロットの平均個数AN、CAフレームを一つだけ受信(CA手続き成功)したCAスロットの平均個数AS、2つ以上のCAフレームを受信(CA手続き失敗)したCAスロットの平均個数ACは、それぞれ
【数1】

【0037】
で表わされる。
【0038】
ここで、CA手続きを待っていた複数のCPEが一斉にCA手続きに進むと、n=1では必ずCAフレーム同士の衝突が発生し手続きに失敗する。これを回避するため、本実施の形態では、n>=2に設定している。なお、無線LANのCSMA/CA方式はn=1に相当するが、キャリアセンスを行ってアイドル状態と認識しても、さらにランダムな時間待機してからフレームを送信することによって衝突発生を回避している。
【0039】
kが多くなるほどANは減少し、逆にACは増加するが、ASはkとnに依存するピーク値を持つ。この平均ピーク値ASmaxは、
【数2】

【0040】
で表され、kがnより1つ少ないか同数となったときにピーク値を持つ。さらにそのとき、CAスロット当たりの平均CA手続き成功確率PSもピーク値
【数3】

【0041】
を持つ。これは、kがnより1つ少ないか同数となったときにPSは最大になる、すなわち予想されるkと同じ個数のCAスロットを設ければ、少なくとも平均36.8%以上のCPEがCA手続きに成功することを意味する(非特許文献8、9)。
【0042】
また、CAスロット1個あたりの長さ(≒CAフレーム長)をFLCA、MACフレームの平均長をFLMACとすると、n個のCAスロットの収容に必要なCAチャネルの伝送容量CPCAは、同チャネルの占有時間TPCAと伝送帯域BWCAとの積
【数4】

【0043】
で表される。一方、CA手続きで成功が期待されるMACフレームすべてを送信するのに必要なMACチャネルの伝送容量CPMACは、同占有時間TPMACと伝送帯域BWMACとの積
【数5】

【0044】
で表される。したがって、(5-2)項で述べた適正な伝送容量配分比^mは、
【数6】

【0045】
で表すことができる。
【0046】
このとき、得られる最大スループット^φmaxは、
【数7】

【0047】
となる。同式はFLMACとFLCAおよびPSmaxとによって決まる^mだけで表されていることから、^φmaxはネットワーク長や物理伝送速度に依存しないことが分かる。
【0048】
ちなみに、後述の表1に示すように、FLCA=64bits、FLMAC=2838 bits(短フレーム数と長フレーム数の比8:2のときの平均MACフレーム長)とし、またCA手続きが繰返し実行されることから、無限個のCAスロットがランダムにアクセスされると見なしてPSmax = 0:368とすると、^m = 0:0613を得る。このときの^φmaxは、(9)式から0.942となるが、これは本実施の形態の方式の理論性能限界を表す。
【0049】
(II)対象モデルの限定
以後の議論を分かりやすくするため、対象とするモデルを次のように限定する。すなわち、OFDM変調などを用いてCAチャネルとMACチャネルとを周波数分割するphysical OBS 方式を採用し、かつTPCA ≒ TPMACとする実装モデルを考える。したがって、本実装モデルでは、(8)式の適正な伝送容量配分比^mは、BWCAとBWMACとの帯域配分比
【数8】

【0050】
で表される。
【0051】
図2は、ネットワークの帯域をほぼ100%消費するような高負荷状態(ρ=1〜2)を想定して、
(a)TPCA>TPMAC
(b)TPCA<TPMAC
(c)TPCA≒TPMAC
となるようにBWCAとBWMACとの帯域配分比を設定した3つのケースについて、SCHでのチャネル占有の様子を示したものである。また、図中のTRTTは、SCHが送信を指示してから該フレームがSCHに到着するまでの往復伝播遅延時間を表し、SCHとCPEでの処理時間や送信タイミングの調整時間などもこの中に含まれる。
【0052】
同図(a)は、適正な配分比に対してBWCAを過小に設定し、TPCA>TPMACとしたケースである。q回目のCA手続きに成功したすべてのMACフレームを送り終わっても、(q+1)回目のCA手続きが終了しておらず、(q+1)回目のCA手続きの終了後に(q+1)回目のMACフレームの送信が開始される。これは、MACチャネルが100%利用されていない、すなわちネットワークの帯域配分が適切でないことを意味している。
【0053】
逆に、同図(b)は、BWCAを過大に設定し、TPCA<TPMACとしたケースである。q回目のCA手続きに成功した全MACフレームの送信にかかる時間に対して、(q+1)回目のCA手続きにかかる時間が短いため、q回目のCA手続きに成功したすべてのMACフレームの送信が完了する前に、(q+1)回目や(q+2)回目のCA手続きが次々に始まる。このために生じるTPMACとTPCAとの時間差ΔTPqは、
Δ TPq = TPMACq - TPCAq (11)
で表される。ただし、TPMACq≦ TPCAqのとき、Δ TPq=0である。
【0054】
つまり、CA手続きに成功したものの送信できずに待機させられるMACフレームが次々に滞積していく。この状態が持続すると、ネットワークの余剰能力を失い、2乗バックオフ処理によるアクセスの分散化の意味がなくなる、すなわち、競合型アクセス方式の基本動作原理が損なわれることになる。
【0055】
これらに対して、同図(c)のBWCAを適切に設定し平均TPMACとTPCAとがほぼ等しくなるケースでは、q回目のCA手続きに成功したすべてのMACフレームの送信にかかる時間と、(q+1)回目のCA手続きにかかる時間がほぼ等しくなる。CA手続き間およびMACフレーム送信間に無駄な時間的空白が存在せず、またネットワークの余剰能力を失うこともない。このため、急激な遅延時間の増加を招くことはなく、また各チャネルの利用効率は最も高くなる。すなわち、実装モデルでは、TPCAとTPMACとがほぼ等しくなるようBWCAとBWMACの配分比^mを設定すればよいことがわかる。
【0056】
(III)CA手続きに対するフロー制御
前項に基づいて^mを適切に設定しても、トラフィックが時々刻々変動する実環境では、一時的に遅延時間が急増することは否めない。CA手続きに対するフロー制御は、こうした事態に陥ることを回避しようとするもので、図3に示すようにTPMAC>TPCAの状態が持続するときは、(11)式の時間差ΔTP分だけCA手続きの開始を遅らせれば、遅延時間の滞積が抑制される。
【0057】
しかしながら、フロー制御の起動はCA手続きを間引くことになるため、スループットの低下を招く。また、CA手続き間隔の揺らぎにともなって、遅延時間も揺らぐことになる。後者については、MACフレームの滞積によるものが支配的で、無視し得る量である。一方、前者は、瞬間的にTPMAC>TPCAとなることがあっても、前後のCA手続きがTPMAC≪TPCAであれば、フロー制御を起動させないことによって、低負荷状態でのスループットの若干の低下を抑えられるが(後述のシミュレーションでは、ρ=0:3付近にて1%程度。)、高負荷状態では別の対策が必要になる。すなわち、遅延時間の抑制とスループットの向上という相反する性能指標をバランス良く満たすことが課題となる。後述するフロー制御抑制係数の導入が、一つの解決策を与えよう。
【0058】
なお、以上の議論では、ρ=1〜2や短長フレーム数比8:2、PSmax=0:368など、いくつかの仮定を設けていたが、実環境ではこれらを満たすことは稀である。したがって、^mやΔTPなどは方式の具体化に当たっての目安(設計基準)を与えるものと捉えるべきで、上記係数を含むいくつかの係数を導入して後述する考察を加えることとする。
【0059】
[方式の具体化と有効性評価]
・方式の具体化
図4は、上記実装モデルの具体化例とその動作メカニズムを表したものである。なお、同図では煩雑さを避けるため、SI信号の送信間隔を後述の表1より広げてある。具体的な動作は以下の通りである。
【0060】
1)SCHがq回目のCA手続き(CAスロット数n)の開始を宣言するSI信号を、(q-1)回目のCAスロット終了予定時刻よりTRTT前に送信(広告)すると、同信号はTdi後にCPEiに到着する。
【0061】
2)送信すべきMACフレームを持つCPEiが、n個のCAスロットの中の1つをランダムに選択し、所定の送信タイミングΔti=TRTT-(Tdi+Tui)後にCAフレームをCAチャネル上に送信すると、Tui後に、選択したCAスロット位置(図4の例では、1番目のスロット)に到着する。他のCPEについても同様である。
【0062】
3)SCHでは、受信したCAフレームのビット誤りを検査し、CA手続きの成否を判定する。
【0063】
4)SCHはSI信号を使って、アクセス結果をビットマップ情報(図4の例では、“1001”)としてCPEに広告する。ただし、MACチャネル上にキャリアが残存しているときは、同キャリアの消滅予測時刻よりTRTT前まで広告を延期する。
【0064】
5)これを受信したCPEiは、CA手続きに成功したことを知り、Δti後にMACフレームの送信を開始する。
【0065】
6)SCHは、CPEiからCAフレームで通知されたMACフレーム長をもとに、MACチャネル上のキャリア消滅時刻を予測し、同時刻よりTRTT前に、更新したビットマップ情報(図4の例では、“0001”)を広告する。以後、CA手続きに成功したすべてのMACフレームの送信が完了するまで、5)〜6)項の動作を繰り返す。
【0066】
7)一方、ビットマップ情報で“0”となっているスロット位置(図4の例では、3番目のスロット)にCAフレームを送信したCPEjとCPEkは、CA手続きに失敗したことを知り、バックオフ処理に移行して次回以降のCA手続きに備える。
【0067】
8)1)〜7)項の動作は繰返し実行されるが、CA手続きに対するフロー制御が施されるときは、ΔTPq分遅らせて、(q+2)回目のCA手続きの開始を宣言する。
【0068】
1)項〜3)項と4)項〜6)項は、CA手続きとMACフレームの送信指示との独立した進行を、さらに8)項はフロー制御を具体化したものである。また、CAフレームの先行送信は1)項、1st MACは4)項、そして2nd MAC以降の送信は6)項により実行される。
【0069】
図5は、本実施の形態に係るPTMP型アクセスネットワークの構成を示す図である。
【0070】
同図に示すように、実施の形態に係るPTMP型アクセスネットワークでは、ユーザのコンピュータ1(1−1〜1−6)は、ルータ2(2−1〜2−3)を介してCPE3(3−1〜3−3)に接続されている。各CPE3(3−1〜3−3)は、無線ネットワークを介して基地局であるSCH4に接続されており、インターネット/ルータ5に接続される。
【0071】
図6は、本実施の形態に係るPTMP型アクセスネットワークのSCHの構成を示す図である。
【0072】
同図において、外部インターフェイス11は、インターネット/ルータ5とのデータのやりとりを行なうためのインターフェイスである。IPパケット送信バッファ12は、インターネット/ルータ5から外部インターフェイス11を介して入力され、CPE3に送信されるIPパケットを一時的に格納するバッファである。MACフレーム生成器13は、IPパケット送信バッファ12から出力されるIPパケットにMACフレームを生成して付加し、送信タイミング制御回路18からの送信タイミング制御信号にしたがって、変調器14に出力する。変調器14は、SI信号生成器17にて生成されたSI信号やMACフレーム生成器13にて生成されたMACフレームをキャリア/クロック発生器19からのキャリア/クロックで送信タイミング制御回路18からの送信タイミング制御信号にしたがって変調し、周波変換器15に出力する。周波数変換器15は、変調器14から出力された変調信号をキャリア/クロック発生器19からのキャリア/クロックでアップコンバートし、送信電力増幅器16に出力する。送信電力増幅器16は、周波数変換器15からのアップコンバートされた変調信号の電力を増幅し、分岐器20を介してアンテナ21に出力する。これにより、SCH4からCPE3に無線ネットワークを介して信号(データ)が送信される。
【0073】
CPE3から送信され、アンテナ21にて受信されたCAフレーム、MACフレームなどのフレームは、分岐器20を介して受信増幅器22に入力される。受信増幅器22は、受信したフレームを増幅し周波数変換器23に出力する。周波数変換器23は、受信増幅器22から出力されたフレームをキャリア/クロック発生器19からのキャリア/クロックでダウンコンバートし、復調器24に出力する。復調器24は、周波数変換器23からのダウンコンバートされたフレームをキャリア/クロック発生器19からのキャリア/クロックにしたがって復調し、フレーム種別判別器25に出力する。フレーム種別判別器25は、復調器24からのダウンコンバートされたフレームの種別の判別を行なう。CAフレーム分析器26は、フレーム種別判別器25にて判別されたCAフレームを分析し、その分析の結果に基づいて、SI信号生成器17にSI信号の生成指示を出力する。SI信号生成器17は、CAフレーム分析器26からのSI信号の生成指示及び送信タイミング制御回路18からの送信タイミング制御信号にしたがって、SI信号を変調器14に出力する。MACフレーム分解器27は、フレーム種別判別器25にて判別されたMACフレームを分解し、IPパケットをIPパケット受信バッファ28に出力する。IPパケット受信バッファ28は、外部インターフェイス11を介してインターネット/ルータ5に送信されるMACフレーム分解器27からのIPパケットを一時的に格納する。
【0074】
図7は、本実施の形態に係るPTMP型アクセスネットワークのCPEの構成を示す図である。
【0075】
同図において、外部インターフェイス31は、ユーザのコンピュータ1とのデータのやりとりを行なうためのインターフェイスである。IPパケット送信バッファ32は、コンピュータ1から外部インターフェイス31を介して入力され、SCH4に送信されるIPパケットを一時的に格納するバッファである。MACフレーム生成器33は、IPパケット送信バッファ32から出力されるIPパケットにMACフレームを生成して付加し、送信タイミング制御回路38からの送信タイミング制御信号にしたがって、変調器34に出力する。変調器34は、CAフレーム生成器37にて生成されたCAフレームやMACフレーム生成器33にて生成されたMACフレームをキャリア/クロック同期再生器39からのキャリア/クロックで送信タイミング制御回路38からの送信タイミング制御信号にしたがって変調し、周波変換器35に出力する。周波数変換器35は、変調器34から出力された変調信号をキャリア/クロック同期再生器39からのキャリア/クロックでアップコンバートし、送信電力増幅器36に出力する。送信電力増幅器36は、周波数変換器35からのアップコンバートされた変調信号の電力を増幅し、分岐器20を介してアンテナ41に出力する。これにより、CPE3からSCH4に無線ネットワークを介して信号(データ)が送信される。
【0076】
SCH4から送信され、アンテナ41にて受信されたCAフレーム、MACフレームなどのフレームは、分岐器40を介して受信増幅器42に入力される。受信増幅器42は、受信したフレームを増幅し周波数変換器43及びキャリア/クロック同期再生器39に出力する。周波数変換器43は、受信増幅器42から出力されたフレームをキャリア/クロック同期再生器39からのキャリア/クロックでダウンコンバートし、復調器44に出力する。復調器44は、周波数変換器43からのダウンコンバートされたフレームをキャリア/クロック同期再生器19からのキャリア/クロックにしたがって復調し、フレーム種別判別器45に出力する。フレーム種別判別器45は、復調器44からのダウンコンバートされたフレームの種別の判別を行なう。SI信号分析器46は、フレーム種別判別器25にて判別されたSI信号を分析し、その分析の結果に基づいて、CAフレーム生成器37にCAフレームの生成指示を出力する。CAフレーム生成器37は、SI信号分析器46からのCAフレームの生成指示及び送信タイミング制御回路38からの送信タイミング制御信号にしたがって、CAフレームを変調器34に出力する。MACフレーム分解器47は、フレーム種別判別器45にて判別されたMACフレームを分解し、IPパケットをIPパケット受信バッファ48に出力する。IPパケット受信バッファ48は、外部インターフェイス31を介してコンピュータ1に送信されるMACフレーム分解器47からのIPパケットを一時的に格納する。
【0077】
図8は、SCHの状態遷移を示す図である。
【0078】
同図に示すように、初期状態J1にあるSCHは、上りMACフレーム消滅時刻から送信タイミングを計算し、この計算された送信タイミングで送信許可をSI信号を介してCPEに送信し、状態J2に遷移する。状態J2では、RTTの間、CPEからのCAフレームの受信を待ち、RTTの間にCAフレームを受信しない場合には、状態J1に戻る。
【0079】
一方、SCHがCAフレームを受信した場合には状態J3に遷移し、CA送信許可の送信待ちの状態J3になる。状態J3では、下りSiタイミング待ち或いはフロー制御の状態である。
【0080】
送信タイミング(Siタイミング)に達すると、CA送信許可を各CPEに送信しMACフレーム受信待ちの状態J4に遷移する。また、CA送信許可が所定時間でない場合には、状態J2に戻る。
【0081】
状態J4は、MACフレームの受信待ちの状態である、所定時間MACフレームを受信できない場合には、状態J3に戻り、MACフレームをいずれかのCPEから受信した場合には、状態J5に遷移する。
【0082】
状態J5は、MACフレームの受信の終了待ちの状態であり、MACフレームの受信を終了し、かつ次のCPEがある場合には状態J3に遷移し、MACフレームの受信を終了し、かつ次のCPEがない場合には、状態J1に遷移する。
【0083】
図9は、CPEの状態遷移を示す図である。
【0084】
同図に示すように、初期状態J11にあるCPEは、送信MACフレームがある場合には、状態J12に遷移する。状態J12はCA送信許可の受信待ちの状態であり、CA送信許可を受信すると状態J13に遷移する。一方、RTTを経過してもCA送信許可を受信しない場合には初期状態J11に遷移する。
【0085】
状態J13では、送信タイミング調整時間Δt後、SCHにCAフレームを送信し、状態J14に遷移する。状態J14は、MACフレーム送信許可の受信待ちの状態であり、MACフレーム送信の許可がでた場合には状態J16に遷移する。一方、MACフレーム送信の許可ができない場合には、状態J13に遷移する。さらに、MACフレーム送信許可が失敗、すなわち、MACフレーム送信が衝突した場合には、状態J15に遷移する。
【0086】
状態J15は、送信バックオフ待ちの状態であり、送信バックオフ処理後、状態J12に遷移する。状態J16はMACフレーム送信終了待ちの状態であり、MACフレームの送信終了待ちの状態の後、MACフレーム送信中の状態J17に遷移し、MACフレームの送信終了後、初期状態J11に遷移する。
【0087】
図10及び図11は、SCHの動作を説明するためのフローチャートである。
【0088】
まず、SCHは、MAC受信消滅時刻t1の値があるか否かの判断を行なう(S1)。S1において、t1の値がないと判断された場合には、t1=0として(S2)、S3の処理に移る。また、S1において、t1の値があると判断された場合にもS3の処理に移る。
【0089】
S3においては、現在時刻tがt>t1であるか否かの判断が行なわれる(S3)。S3において、現在時刻tがt>t1であると判断された場合には、後述するS11においてCAチャネルとMACチャネルとの伝送容量(帯域配分)が変更されている場合には、変更された伝送容量を各CPEに広告する(S4)。なお、S4における伝送容量の通知は、S19のMAC送信許可の前に行なわれも良い。次に、CA送信許可を送信し(S5)、タイマT_rtt=RTT時間にセットし(S6)、CAフレームを受信したか否かの判断が行なわれる(S7)。
【0090】
S7において、CAフレームを受信していないと判断された場合には、タイマT_rttを経過時間だけ減算し(S8)、タイマT_rtt≦0であるか否かの判断が行なわれる(S9)。タイマT_rtt≦0ではないと判断された場合には、S7の処理に戻る。タイマT_rtt≦0であると判断された場合には、動作終了するか否かの判断が行なわれ(S10)、動作を終了しないと判断された場合には、S1の処理に戻り、動作を終了すると判断された場合には、動作を終了する。
【0091】
一方、S7において、CAフレームを受信したと判断された場合には、各スロット毎のアクセス状態から帯域負荷を計算し、計算された帯域負荷が予め定められた負荷に達した場合には伝送容量(帯域配分)を変更する(S11)。次に、アクセスが成功したCPEがあるか否かの判断が行なわれ(S12)、アクセスが成功したCPEがないと判断された場合には、S5の処理に戻る。一方、アクセスが成功したCPEがあると判断された場合には、フロー制御計算(MACの滞積状態の確認)を行ない(S13)、その滞積状態に基づいてフロー制御が必要か否かの判断が行なわれる(S14)。
【0092】
S14において、フロー制御が必要であると判断された場合には、待機時間を計算し(S15)、待機時間タイマを起動し(S16)、待機時間が終了したか否かの判断が行なわれる(S17)。
【0093】
なお、図11及び図12では、SCHにおいてフロー制御S15〜S17を実行する場合について示したが、CPEにおいてフロー制御を実行しても良い。この場合には、SCHにおいて、S13におけるフロー制御計算を実行し、S14においてフロー制御が必要か否かの判断を行ない、フロー制御が必要であると判断された場合には、フロー制御が必要であることを各CPEに通知する。各CPEは、SCHからフロー制御が必要であることが広告された場合には、S15〜S17のフロー制御を実行する。
【0094】
S17において待機時間が終了したと判断された場合及びS14においてフロー制御が必要ではないと判断された場合には、CPEの選択が行なわれる(S18)。
【0095】
次に、選択されたCPEに対してMAC送信許可を送信し(S19)、タイマTmac=T_MACiと設定し(S20)、タイマTmacの減算を開始し(S21)、Tmac>0であるか否かの判断が行なわれる(S22)。Tmac>0ではないと判断された場合には、残りのMAC送信待ちCPEがあるか否かの判断が行なわれ(S23)、残りのMAC送信待ちCPEがあると判断された場合には、S18の処理に戻る。
【0096】
一方、残りのMAC送信待ちCPEがないと判断された場合には、MAC受信消滅時刻t1を計算し(S24)、t1−現在時刻t−T_rtt≦0であるか否かの判断が行なわれる(S25)。S25において、t1−現在時刻t−T_rtt≦0ではないと判断された場合には、S24に戻り、t1−現在時刻t−T_rtt≦0で有ると判断された場合には、S1の処理に戻る。
【0097】
図12は、CPEの動作を説明するためのフローチャートである。
【0098】
まず、CPEは、送信MACフレームがあるか否かの判断を行なう(S31)。S31において、送信MACフレームが存在しないと判断された場合は、通信終了か否かの判断を行ない(S32)、通信処理を終了と判断された場合には処理を終了する。一方通信終了ではないと判断された場合には、S31の処理に戻る。
【0099】
S31において、送信MACフレームがあると判断された場合には、次に、CA送信許可をSCHから受信したか否かの判断が行なわれる(S33)。CA送信許可を受信したと判断された場合には、SCHから伝送容量(帯域配分)の変更が広告されている場合には、広告された伝送容量に基づいてCAチャネル及びMACチャネルの伝送ビットレートを変更し(S34)、送信タイミングの調整時間Δtiを待ち(S35)、CAフレームを送信する(S36)。
【0100】
次に、MACフレーム送信許可を受信したか否かの判断が行なわれ(S37)、受信したと判断された場合には、MACフレームが送信可能か否かの判断が行なわれる(S38)。MACフレームが送信可能ではないと判断された場合には、バックオフ処理が行なわれ(S39)、S33の処理に戻る。
【0101】
一方、S38において、MACフレームが送信可能であると判断された場合には、自己の送信許可であるか否かが判断され(S40)、自己の送信許可ではないと判断された場合にはS37の処理に戻り、自己の送信許可であると判断された場合には、Δtiだけ待ち(S41)、MACフレームの送信が行なわれ(S42)、S31の処理に戻る。
【0102】
なお、本実施の形態においては、フロー制御に加えて帯域容量を変更する手段を有する動作について説明したが、帯域容量を変更する手段がないシステムであっても良い。この場合であっても、フロー制御によりスループットの向上が図られることになる。具体的には、図10に示したSCHのフローチャートのS4及びS11、図12に示したS34における処理が省略されても良い。
【0103】
・シミュレーションによる特性評価
アクセス制御方式の優劣は、スループットと遅延時間を目的関数とし、負荷トラフィックやネットワーク長、平均フレーム長などを変数として評価することが一般的である。これと同じ視点に立って、提案方式の有効性を評価するために、表1に示す本システムが対象領域とするネットワーク環境条件(上り物理伝送速度の対象領域を5〜20Mbpsとしているが、トラフィックが多い下り方向の帯域を広く(例えば、上りの4倍)し、またセクタアンテナを用いて限られた無線帯域を繰り返し使用(例えば、15セクタ、3周波数繰り返し)すれば、ギガビット級のアクセスネットワークを構成できる。)にてシミュレーションを行った。表中のn=32は、前述したCAスロット個数の可変制御における上限個数の適正値とされるもので、詳細は文献9、10を参照されたい。
【表1】

【0104】
シミュレーションでは、コンピュータ上に1 bit time(MACチャネル上での1ビットあたりの伝送時間に換算した単位)をシステムクロックとする1台のSCHと最大5000台まで同時動作可能なCPEを構築し、上述の図4および1)〜8)項の動作をSI信号の送信間隔(256bit-times)を単位に状態遷移するよう実装した。また、筆者らのキャンパスでの実測に基づいたトラフィックモデルの一つである短長MACフレーム数比8:2にて、上位層からIPパケットがポアソン到着し、同パケットのMACフレーム送信が完了するまで新たなパケットは到着しないものとした(非特許文献11)。
【0105】
ある印加(新規生成)トラフィック条件にてシミュレーションを開始してから、負荷トラフィックが定常状態になるまで約2:5×107bit-times(物理伝送速度が10Mbpsであれば約2.5秒)を要するため、3×107から5:5×107bit-timesまでの間を観測ウィンドウ期間(Δw)とし、その間の平均値を求めた。さらに、印加トラフィックによるシミュレーション結果の偏りを防ぐため、初期値を変えて5回シミュレーションを行って計5個の平均値を求め、その平均値を観測データとして採用した。ちなみに、以下のシミュレーション結果において、ρ=1付近での5個のスループット平均値の標準偏差は、平均値の2%以下であった。また、Δwの間に送信に成功したMACフレームの新規生成から送信完了までに要した時間と、Δwの間に再送に失敗し廃棄されたMACフレームの新規生成から廃棄までに要した時間の和を、Δwの間に送信に成功したMACフレーム数で除したものを遅延時間とした。スループットと同様にして求めたρ=1付近での5個の遅延時間平均値の標準偏差も、平均値の2%以下であった。
【0106】
シミュレーションプログラムは、ρ≪1、ρ=1、最大スループット、短長MACフレーム数比0:10など、いくつかの特異点での理論計算値との照合や、シミュレーション結果と実装した動作との対応付けなどを通して、動作の正当性を検証した。
【0107】
なお、以下の記述では、先行送信を適用しないSCSMA/v-MCA方式をNF方式、CAフレームと2ndMAC以降の先行送信を行うflying S-CSMA/v-MCA方式をF方式、さらに1st MACも先行送信の対象とするfull-flying S-CSMA/v-MCA方式をFF方式と
略することとする。
【0108】
(I)帯域配分比^mの妥当性
(10)式で示した^mの妥当性を評価するため、^mにCA帯域拡大係数βを乗じて、表1の基準値(32スロット固定)にてシミュレーションを行った。ここに、β>1はBWCAをβ倍に広げTPCAを短縮する、すなわち図2(b)のTPCA<TPMACに陥り、MACフレームが滞積しやすくなることを意味する。
【0109】
図13は、βによる特性の変化を示したものである。なお、同図の理論限界値はρ<1のときは(BWMAC×ρ)=(BWMAC+BWCA)、ρ>=1のときはBWMAC=(BWMAC+BWCA)として算出したものである。
【0110】
(a)スループット特性
同図(a)のスループット特性では、βを大きくするほど、より過負荷領域(ρ>2)まで90%近いスループットを発揮することが分かる。この90%近い最大スループットは、(9)式から求めた理論性能限界^φmax=0:942に迫るもので、FF方式が高い潜在能力を持つことが確認される。
【0111】
(b)遅延特性
同図(b)の遅延特性では、βが大きいほど、ρ=1付近から急激に遅延時間が増えているが、これはMACフレームの滞積によるもので、2乗バックオフ処理が意味をなさないことが分かる。逆に、βが1に近づくにつれて、高いスループットが得られなくなるものの、遅延時間の増加が緩やかになることが分かる。
【0112】
また、上例では短長MACフレーム数比を8:2としたが、10:0と0:10についても、(10)式により^mを求めシミュレーションを行ったところ、ほぼ同じ傾向が認められた。これらから、TPCAとTPMACとがほぼ等しくなるようBWCAとBWMACの配分比を設定することは、有意なものと考えられる。
【0113】
(II)フロー制御の有効性
CA手続きに対するフロー制御の有効性を評価するため、前述の(11)式にフロー制御抑制係数γを付加した
ΔTPq=TPMACq-γ×TPCAq (12)
を用いて、β=1:7を例に、(I)と同じ条件でシミュレーションを行った。ただし、TPMACq≦TPCAqのとき、ΔTPq=0である。ここに、γ=∞はフロー制御を行わないことを、γ=1は(11)式に基づいてフロー制御を施すことを意味する。なお、フロー制御は2回以上連続してTPMAC>TPCAとなったときに適用することとした。
【0114】
図14はγによる特性の変化を示したもので、γを大きくするほど良好なスループット特性が得られるものの、フロー制御が起動し難くなるため、ρ=1〜5付近でMACフレームの滞積による遅延時間が急増することが分かる。逆にγを1に近づけるほどスルー
プットは抑制されるが、遅延時間の急激な増加も抑えられ、フロー制御が着実に機能していることが分かる。なお、γ=1:3では、4<ρの過負荷状態になると遅延時間の急増が抑制される現象が見られる。これは、1<ρ<4ではMACフレームの滞積による遅延時間が支配的なのに対して、4<ρではCA手続き失敗による再送や廃棄による遅延時間が支配的になるためである。
【0115】
以上から、β=1:7のとき、γ=1:2付近に遅延時間の抑制とスループットの向上とがほど良くバランスした適正値が存在することが分かる。
【0116】
(III)従来方式との特性比較
従来方式のNF方式やF方式では、ネットワーク長が長いほど、また物理伝送速度が速いほどスループット特性は劣化するが、FF方式ではこれらの影響を受けない理想的な特性の実現が期待される。これを確認するべく、これら3方式(いずれもCAスロット個数は可変)について、表1の基準値を中心に適用領域内での特性比較を行った。
【0117】
なお、CAスロットの可変制御では、前回のCA手続きでのアクセス状況やCA手続きの時間間隔をもとに、次回のCA手続きで用意すべきCAスロット個数nを決定する。この中で用いられる予測上限危険率αは、同時アクセス数の過少推定によるnの不足を避けるための係数である。CA手続きの間にMACフレームの送信を挟むNF方式やF方式は、CA手続きの間隔が大きく変動し、nの過不足を生じやすいため、文献9、10と同じα=8を採用し、変動幅が少ないFF方式はα=1とした(非特許文献9参照)。
【0118】
また(I)と(II)の評価結果をもとにβ=1:7、γ=1:2とした。
【0119】
図15は、ρに対するnの変化の様子を示したもので、NF方式とF方式はρ=1付近ですでに10個以上のCAスロットが用意されること、一方、FF方式はρ=2付近までnの増加が抑えられていることが分かる。これはαの違いを反映したものであるが、その根本はIBS方式とOBS方式との方式上の違いによる。
【0120】
図16は、前出の例と同じ短長MACフレーム数比にて、ネットワーク長(2.5、10、40km)と物理伝送速度(5、10、20Mbps)とを組み合わせたいくつかのケースについて、特性比較を行なった例である。また、同図においては、802.11a無線LANの特性も記載している。
【0121】
(a)スループット特性
同図(a)のスループット特性において、FF方式についての5ケースの折れ線グラフが重なり合い、ネットワーク長や物理伝送速度に依存することなく、ほぼ同じ特性を示すことが確認される。そしてFF方式は、F方式(2.5〜40km、10Mbps)に対して12〜21%、NF方式(10〜40km、10Mbps)に対して38〜142%高いスループットが得られることが分かる。
【0122】
(b)遅延特性
同図(b)の遅延特性についても、FF方式はρ=2〜4付近でMACフレームの滞積による遅延時間の増加がやや見受けられるものの、5ケースがほぼ同じ特性を示している。そして、例えばρ=0:6付近(10km、10Mbps)で、F方式やNF方式の遅延時間はそれぞれ1.5msec、2.0msecであるが、FF方式は0.9msecと半分前後まで減少しており、良好な遅延時間特性を示すことが分かる。
【0123】
以上から、FF方式は低遅延特性を維持しながら、ネットワーク長や物理伝送速度に非依存な高いスループット特性を発揮することが確認される。
【0124】
なお、FF方式のρ=3付近での最大スループットは理論性能限界^φとは6%程度の乖離であるが、ρ=1付近では約20%の乖離が見られる。この乖離は、αやβ、γの精査によって、いくばくかの改善が可能かと思われるが、2乗バックオフ処理によってネットワークの余剰能力を確保し、大量のバースト転送要求に柔軟に応じようとすることが原因と考えられる。
【0125】
本実施形態によれば、上りチャネル上のキャリア消滅時刻を目掛けてCAフレームやMACフレームすべてを先行送信させ、上り伝送媒体の利用効率を限りなく高めようとするfullflyingS-CSMA/v-MCA方式を開発した。方式実現に当たってのポイントの一つは、柔軟なアクセス制御が可能なOBS方式の導入により、CA手続きとMACフレームの送信指示を独立に進行できるようにしたことである。しかしながら、高負荷状態ではCA手続きに成功したもののMACフレームを送信できずに待機させられるCPEが滞積し、遅延時間が急増する問題が発生した。CAチャネルとMACチャネルの帯域配分比^mを適正に設定し、さらにCA手続きに対してフロー制御を施すことによって、この問題が解決できることを示した。
【0126】
理論計算とシミュレーションにより特性を評価した結果、競合方式の特徴である低遅延特性を維持しながら、数十キロメートルに及ぶネットワーク長や物理伝送速度に依存することなく、90%近い最大スループットを発揮することを確認した。
【0127】
^mはネットワーク上を流れる短長MACフレーム数比に依存する。SCHにてこれを逐一把握し、OFDM変調や拡散変調などと組み合わせて^mを適応的に制御すれば、ネットワークをより適正な状態に保つことができよう。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
17…SI信号生成器、18…送信タイミング制御回路、25、45…フレーム種別判別器、26…CAフレーム分析器、27、47…MACフレーム分解器、37…CAフレーム生成器、38…送信タイミング制御回路、46…SI信号分析器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ装置を複数の加入者装置で共有しあい、かつハブ装置と加入者装置との間の送信制御を行なうPTMP型ネットワークにおけるハブ装置において、
前記ハブ装置と前記複数台の加入者装置との間のCA(衝突回避)フレームの送信を行なう上り制御チャネルと、データフレームの送信を行なうデータチャネルとは異なる帯域が割り当てられ、
前記上り制御チャネルにおけるCA手続は、前記データチャネルのデータ占有状態に基づいて、前記データチャネルの伝送制御とは独立して行なう手段を具備することを特徴とするハブ装置。
【請求項2】
前記上り制御チャネル及び前記データチャネルを含むチャネルの負荷が、予め定められた負荷に達した場合に、前記上り制御チャネル及び前記データチャネルの伝送容量を変更する手段をさらに具備することを特徴とする請求項1記載のハブ装置。
【請求項3】
前記上り制御チャネル及び前記データチャネルの伝送容量を変更する手段は、前記上り制御チャネル及び前記データチャネルの予め定められた伝送容量の比に変更することを特徴とする請求項2記載のハブ装置。
【請求項4】
前記伝送容量の比は、少なくともCAスロット1個あたりの長さ及びデータフレームの平均長に基づいて決定されることを特徴とする請求項3記載のハブ装置。
【請求項5】
前記伝送容量の比は、上り制御チャネルの占有時間とデータチャネルの占有時間とが等しくなるように決定されることを特徴とする請求項3記載のハブ装置。
【請求項6】
データチャネルの占有時間が上り制御チャネルの占有時間よりも大きい状態が所定時間以上続いた場合、前記データチャネルの占有時間と前記上り制御チャネルの占有時間との時間差分だけCA手続に入るのを遅らせる手段をさらに具備することを特徴とする請求項1記載のハブ装置。
【請求項7】
前記伝送容量の変更は、CAスロットの数を変更することにより行なわれる請求項2記載のハブ装置。
【請求項8】
ハブ装置を複数の加入者装置で共有しあい、かつハブ装置と加入者装置との間の送信制御を行なうPTMP型ネットワークにおけるハブ装置における通信方法において、
前記ハブ装置と前記複数台の加入者装置との間のCA(衝突回避)フレームの送信を行なう上り制御チャネルと、データフレームの送信を行なうデータチャネルとは異なる帯域を割り当て、
前記上り制御チャネルにおけるCA手続を、前記データチャネルのデータ占有状態に基づいて、前記データチャネルの伝送制御とは独立して行なうことを特徴とする通信方法。
【請求項9】
ハブ装置を複数の加入者装置で共有しあい、かつハブ装置と加入者装置との間の送信制御を行なうPTMP型ネットワークにおける加入者装置において、
前記ハブ装置と前記複数台の加入者装置との間のCA(衝突回避)フレームの送信を行なう上り制御チャネルと、データフレームの送信を行なうデータチャネルとは異なる帯域が割り当てられ、
前記ハブ装置からのCAフレーム送信許可信号を受信した場合に、CAフレームを送信する手段を具備し、
前記上り制御チャネルにおけるCA手続は、前記データチャネルのデータ占有状態に基づいて、前記データチャネルの伝送制御とは独立して行なわれることを特徴とする加入者装置。
【請求項10】
前記ハブ装置から、フロー制御が必要であると通知された場合に、前記データチャネルの占有時間と前記上り制御チャネルの占有時間との時間差分だけCA手続に入るのを遅らせる手段をさらに具備することを特徴とする請求項9記載の加入者装置。
【請求項11】
ハブ装置を複数の加入者装置で共有しあい、かつハブ装置と加入者装置との間の送信制御を行なうPTMP型ネットワークにおける加入者装置における通信方法おいて、
前記ハブ装置と前記複数台の加入者装置との間のCA(衝突回避)フレームの送信を行なう上り制御チャネルと、データフレームの送信を行なうデータチャネルとに異なる帯域を割り当て、
前記ハブ装置からのCAフレーム送信許可信号を受信した場合に、CAフレームを送信することを具備し、
前記上り制御チャネルにおけるCA手続は、前記データチャネルのデータ占有状態に基づいて、前記データチャネルの伝送制御とは独立して行なわれることを特徴とする通信方法。
【請求項12】
前記ハブ装置から、フロー制御が必要であると通知された場合に、前記上り制御チャネルの占有時間と前記データチャネルの占有時間との時間差分だけCA手続に入るのを遅らせるせることをさらに具備する請求項11記載の通信方法。
【請求項13】
ハブ装置を複数の加入者装置で共有しあい、かつハブ装置と加入者装置との間の送信制御を行なうPTMP型ネットワークにおける通信システムにおいて、
前記ハブ装置と前記複数台の加入者装置との間のCA(衝突回避)フレームの送信を行なう上り制御チャネルと、データフレームの送信を行なうデータチャネルとは異なる帯域が割り当てられ、
前記ハブ装置は、
前記上り制御チャネルにおけるCA手続を、前記データチャネルのデータ占有状態に基づいて、前記データチャネルの伝送制御とは独立して行なう手段を具備し、
前記加入者装置は、
前記ハブ装置からのCAフレーム送信許可信号を受信した場合に、CAフレームを送信する手段を具備する通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−34042(P2012−34042A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169659(P2010−169659)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】