説明

PVパネル診断装置、診断方法及び診断プログラム

【課題】太陽光発電システム中の劣化パネルを、確実に見つけだすことのできるPVパネル診断技術を提供する。
【解決手段】複数枚のPVパネル1が直列に接続されたストリングスSが、複数並列に接続されたPVパネル回路について、インピーダンス調整回路6にインピーダンスを調節させる調節部111と、インピーダンスの変化に対応して、PVパネル回路において計測された電圧若しくは電流を、計測値として記憶する計測値記憶部311と、調節部111によるインピーダンスの変化に応じた計測値により、電圧若しくは電流の変化量を判定する変化量判定部221と、変化量の程度とあらかじめ設定されたしきい値との比較に基づいて、劣化したPVパネル1若しくは劣化したPVパネル1を含むストリングスSを判定する劣化判定部222と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、たとえば、太陽電池パネル(PVパネル)を複数枚直列、並列若しくは直並列に接続した発電システムにおけるPVパネルの劣化等の診断を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネル(以下、PVパネルと呼ぶ)を用いた太陽光発電は、COの発生が少ない発電方式として注目されている。しかしながら、一般的なPVパネル1枚当たりの出力は、数百W以下と小さい。このため、PVパネルを用いた実用的な発電システムは、通常、複数枚のPVパネルを直列または並列に接続している。
【0003】
そして、このような発電システムは、PVパネルをPCS(Power Conditioning System)と呼ばれる装置に接続することにより、所望の電力が得られるように構成している。このPCSは、基本的には、直交変換のためのインバータ機能を有している。また、PCSは、出力電力が最大となる動作点(MPP:Maximum power point)を追従する機能(MPPТ:Maximum power point Tracker)も有している。
【0004】
さらに、大規模な発電システムにおいては、PVパネルを複数枚直列に接続したストリングスを構成し、このストリングスを複数並列に接続している。これらのストリングスを、1つのPCSに接続することにより、大きな電力が得られる発電システムが形成できることになる。
【0005】
ところで、PVパネルは、使用年数が増えるとともに、出力低下や故障が発生する。しかし、PVパネルの品質のバラツキ、設置位置の相違等により、PVパネルごとの出力低下の度合いや故障の発生時期は異なる。
【0006】
一方、複数枚のPVパネルで構成された発電システムでは、1、2枚のPVパネルが故障したり出力低下を起こしただけでも、全体の出力が大きく低下する場合がある。
【0007】
例えば、PVパネル18枚の直列回路で構成されるストリングスを考える。このストリングス中で、2枚の劣化パネル(正常パネルの84%の出力低下)が存在したとする。すると、各パネル(正常パネル16枚+劣化パネル2枚)の出力を、単純にすべて合計した場合の低下率は、97%になる。ところが、実際の発電システムにおける出力は、88%まで大きく低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−170835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のことから、システム中の劣化パネルを見つけだすことは、全体の出力を維持する上で、非常に大切である。たとえば、各PVパネルの動作電圧を測定し、他のPVパネルに比べて、動作電圧、すなわち出力が大きく低下しているPVパネルを劣化パネルとして特定することはできる。
【0010】
一方、PCSによるMPPТ動作時には、劣化パネルの動作電圧の低下を補って、出力が最適となるように制御されている。このため、他の正常なPVパネルと比較して、あまり出力の低下は見られないが、そのPVパネルのせいで、他の正常なPVパネルの出力が低下させられている場合がある。
【0011】
このような劣化パネル(以下、潜在的劣化パネルと呼ぶ)は、システムとしてMPPТ動作をしている場合、他の正常パネルと比較して、出力低下が数%以下に過ぎないため、単なる動作時の電圧の計測のみでは、劣化パネルとして正しく特定し難い。つまり、これまで提案されているPVパネルの診断技術では、直列・並列回路中の劣化パネルを的確に見つけだすことができなかった。
【0012】
本発明の実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、太陽光発電システム中の劣化パネルを、確実に見つけだすことのできるPVパネル診断技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような目的を達成するため、実施形態のPVパネル診断装置は、以下のような技術的特徴を有している。
(1) 複数枚のPVパネルが直列に接続されたストリングスを少なくとも一つ含むPVパネル回路について、インピーダンスを調節する調節部
(2) 前記調節部によるインピーダンスの変化に対応して、前記各PVパネル回路において計測された電圧若しくは電流を、計測値として記憶する計測値記憶部
(3) 前記調節部によるインピーダンスの変化に応じた計測値若しくはその変化量と、所定のしきい値との比較に基づいて、劣化したPVパネル若しくは劣化したPVパネルを含むストリングスを特定する特定部
【0014】
なお、他の態様として、上記の各部の機能をコンピュータ又は電子回路により実行する方法及びコンピュータに実行させるプログラムとして捉えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態が適用される発電システムの概略構成図である。
【図2】第1の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】正常パネルと劣化パネルD1、D2のI−V特性を示す図である。
【図4】ストリングスのI−V特性を示す図である。
【図5】正常パネルで構成されたストリングスと、劣化パネルを含むストリングスの出力を比較した図である。
【図6】MPP動作時の各PVパネルの動作電圧を示す図である。
【図7】ストリングスを流れる電流を変化させた場合の各PVパネルの動作電圧と、ストリングス出力の回復予測値を示す図である。
【図8】第1の実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態が適用される発電システムの概略構成図である。
【図10】第3の実施形態が適用される発電システムの概略構成図である。
【図11】第3の実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】第4の実施形態が適用される発電システムの概略構成図である。
【図13】第4の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
【図14】スルー回路を付加したDC−DCコンバーターを示す図である。
【図15】第4の実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】昇圧型DC−DCコンバーターを示す図である。
【図17】昇圧型DC−DCコンバーターにダイオードを並列に付加したものを示す図である。
【図18】降圧型DC−DCコンバーターを示す図である。
【図19】図13の態様においてダイオードを省略した例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[A.第1の実施形態]
[1.構成]
[発電システムの構成]
本実施形態が適用される発電システムの構成を、図1の概略構成図を参照して説明する。すなわち、本発電システムは、ストリングスS、電圧モニター2、電流測定端子3、コントローラー4、PCS12、インピーダンス調節回路6、サーバ装置21を有している。以下、これらの構成を詳述する。
【0017】
[ストリングス]
ストリングスSは、上記のように、複数のPVパネル1を直列に接続したPVパネル回路である。PVパネル1は、太陽光により電力を出力するパネルであり、現在又は将来において利用可能なあらゆる太陽電池パネルを含む。一つのストリングスSにおけるPVパネル1の数は、自由である。
【0018】
[電圧モニター]
電圧モニター2は、各PVパネル1の回路に並列に接続され、各PVパネル1の動作電圧を計測値として検出する計測部である。
【0019】
[電流測定端子]
電流測定端子3は、ストリングスSの直列回路を流れる電流値を計測値として検出する計測部である。この電流測定端子3としては、CT(変流器)を利用することが考えられる。ただし、回路に直列に抵抗を挿入し、その両端の電圧を測定することにより、電流値を演算により求めてもよい。後述するPCS12、インピーダンス調節回路6から、電流値を得ることも可能である。
【0020】
[コントローラー]
コントローラー4は、電流測定端子3に接続され、電流測定端子3の計測値の受信を行う処理部である。また、コントローラー4は、電圧モニター2からの計測値の受信及び電圧モニター2の制御を行う。電圧モニター2の制御と電圧モニター2から送られる計測値の送受信は、図中の符号11で示したパワーラインを利用することができる。電圧モニター2とコントローラー4との間は、パワーライン11を利用した通信以外に、データ送受信線を別途設けてもよいし、無線LANによりデータを送受信可能に構成してもよい。
【0021】
[PCS]
PCS12は、パワーライン11に接続された電力制御装置である。このPCS12は、インバータ部、MPP制御部を含む。インバータ部は、PVパネル1の直流を交流に変換する処理部である。MPP制御部は、上記のように、MPPТを行う処理部である。
【0022】
[インピータンス調節回路]
インピーダンス調節回路6は、パワーライン11に接続され、電流若しくは電圧を変化させることにより、ストリングスSのインピーダンスを調節する回路である。
【0023】
[サーバ装置]
サーバ装置21は、ネットワークケーブル22を介して、コントローラー4、インピーダンス調節回路6に接続されることにより、情報の送受信が可能なコンピュータである。本発電システムの情報は、サーバ装置21を介して、上位の監視装置等において利用可能となる。
【0024】
[診断装置の構成]
上記のような発電システムを診断するPVパネル診断装置(以下、単に診断装置と記載する)の構成を、図2を参照して説明する。この診断装置100は、コントローラー4と、図示しないケーブルを介して接続され、情報の送受信が可能に設けられている。診断装置100は、インピーダンス制御部110、診断処理部200、記憶部300、入力部400及び出力部500等を有している。インピーダンス制御部110は、インピーダンス調節回路6を制御する処理部である。このインピーダンス制御部110は、インピーダンス調節回路6に、インピーダンスを調節させる調節部110を有している。診断処理部200は、各種の計測値に基づいて、PVパネル1、ストリングスSの診断を行う処理部である。この診断処理部200は、計測値受付部210、算出部211、計測値比較部212、異常判定部213、変化指示部220、変化量判定部221、特定部222、回復予測値算出部223、表示制御部231等を有している。
【0025】
計測値受付部210は、コントローラー4から、計測値を受け付ける処理部である。計測値受付部210が受け付けた計測値は、後述する記憶部300が記憶する。
【0026】
算出部211は、計測値に基づいて、各種の演算を行う処理部である。たとえば、算出部211は、PVパネル電圧、ストリングス電流に基づいて、PVパネル出力、ストリングス出力を求める。また、算出部211は、PVパネル電圧に基づいて、ストリングス電圧を求める。なお、算出部211は、後述するしきい値を求めることもできる。
【0027】
コントローラー4が算出部211を備え、算出結果を計測値受付部210を受け付ける態様であってもよい。なお、本実施形態においては、上記のような算出結果も、計測値に含まれるものとする。算出結果である計測値も、後述する記憶部300が記憶する。
【0028】
計測値比較部212は、PVパネル1、ストリングスSの出力を、基準となる正常値と比較する処理部である。この正常値は、あらかじめ設定しておくこともできるし、日照条件等が変化することを考慮して、多数決原理に基づいて正常なPVパネル1、ストリングスSを判定して、その計測値を正常値として用いることもできる。異常判定部213は、計測値比較部212による比較結果に基づいて、PVパネル1、ストリングスSの異常を判定する処理部である。
【0029】
変化指示部220は、インピーダンス調節部110に、PVパネル回路の負荷インピーダンスを変化させるように指示する処理部である。本実施形態の変化指示部220は、ストリングスSの電流の変化を指示する。
【0030】
変化量判定部221は、ストリングスSの負荷インピーダンスを変化させた場合において、各PVパネル1の計測値の変化量を判定する処理部である。本実施形態の変化量判定部221は、PVパネル1の電圧の変化量を判定する。特定部222は、変化量判定部221による判定結果に基づいて、劣化パネル若しくは劣化パネルを含むストリングスSを特定する処理部である。なお、特定部222は、変化量ではなく、計測値に基づいて、劣化パネル若しくは劣化パネルを含むストリングスSを特定することもできる。
【0031】
回復予測値算出部223は、劣化パネルを交換した場合に、回復すると予測されるPVパネル回路の出力値である回復予測値を算出する処理部である。本実施形態の回復予測値算出部223は、ストリングスSの出力値の回復予測値を算出する。
【0032】
表示制御部231は、計測値、劣化パネル、回復予測値等、上記の各部の処理結果を、後述する出力部500に表示させる処理部である。
【0033】
記憶部300は、計測値記憶部311、調整値記憶部312、設定記憶部313等を有している。計測値記憶部311は、PVパネル電圧、ストリングス電流、PVパネル出力、ストリングス電圧、ストリングス出力等の計測値を記憶する記憶部である。
【0034】
この計測値としては、計測値受付部210が受け付けた情報、算出部211が算出した情報若しくは後述する入力部400から入力された情報を用いる。各情報の記憶領域は、各情報の記憶部として捉えることもできる。
【0035】
調整値記憶部312は、変化指示部220によるインピーダンス変化指示の基準となる調整値を記憶する記憶部である。たとえば、本実施形態においては、PVパネル1の動作電流の変更値等が含まれる。
【0036】
設定記憶部313は、演算式、パラメータ、判断のしきい値等、診断処理部200の処理に必要な各種の設定に関する情報を記憶した記憶部である。この情報には、劣化判定のための電圧、電流、出力電力値、正常時の電圧、電流、出力電力値、MPP動作点、製品仕様等が含まれる。これらの情報は、入力部400を用いて、ユーザが入力する。コントローラー4若しくはPCS12から入力することも可能である。
【0037】
記憶部300としては、たとえば、メモリ、ハードディスク、光ディスク等の現在もしくは将来において利用可能なあらゆる記憶媒体を使用できる。すでに情報が記憶された記憶媒体を、読み取り装置に装着することにより、記憶内容を各種の処理に利用可能となる態様でもよい。
【0038】
さらに、記憶部300には、一時的な記憶領域として使用されるレジスタ、メモリ等も含まれる。したがって、上記の各部の処理のために一時的に記憶される記憶領域であっても、記憶部300として捉えることができる。キュー、スタック等も、記憶部300を利用して実現可能である。
【0039】
入力部400は、診断処理部200の処理に必要な情報の入力、処理の選択や指示を入力する構成部である。この入力部400としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル(表示装置に構成されたものを含む)、スイッチ等が考えられる。また、入力部400は、操作用の端末として構成されたもの、操作盤に構成されたものも含まれる。但し、現在又は将来において利用可能なあらゆる入力装置を含む。
【0040】
出力部500は、診断処理部200による各種の処理結果等を、オペレータが認識可能となるように出力する構成部である。この出力部200としては、たとえば、表示装置、プリンタ、メータ、ランプ、スピーカ、ブザー等が考えられる。また、出力部500は、表示用の端末として構成されたもの、操作盤に構成されたものも含まれる。但し、現在又は将来において利用可能なあらゆる出力装置を含む。
【0041】
なお、診断装置100の全部若しくは一部は、コンピュータを所定のプログラムで制御することによって実現できる。この場合のプログラムは、コンピュータのハードウェアを物理的に活用することで、上記のような各部の処理を実現するものである。
【0042】
上記の各部の処理を実行する方法、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体も、実施形態の一態様である。
【0043】
また、ハードウェアで処理する範囲、プログラムを含むソフトウェアで処理する範囲をどのように設定するかは、特定の態様には限定されない。たとえば、上記の各部のいずれかを、それぞれの処理を実現する回路として構成することも可能である。
【0044】
サーバ装置21に、上記の記憶部300、診断処理部200、入力部400、出力部500のいずれかの機能を持たせることもできる。
【0045】
[2.作用]
[劣化パネルの特定方法]
まず、本実施形態により、PVパネル回路のインピーダンスを積極的に変化させて、電圧・電流を測定することによって、潜在的劣化パネルを容易に見つけだす方法を説明する。
【0046】
まず、一例として、18枚のPVパネル1が直列に接続された回路であるストリングスSを考える。このストリングスS中の18枚のPVパネル1中に、劣化パターンが異なる2種類の劣化パネルD1、D2が、それぞれ2枚ずつ、合計4枚存在しているとする。
【0047】
この場合の正常パネルと劣化パネルD1、劣化パネルD2のI−V特性を、図3に示す。図3には、各PVパネル1のMPP動作点も示されている。MPP動作点における各劣化パネルD1、D2の出力低下は、正常パネルに対して、それぞれ84%、89%である。
【0048】
さらに、上記の正常パネル及び劣化パネルD1、D2を含むストリングスSのI−V特性を、図4に示す。ストリングスSのMPP動作点は、図中に示されている。このストリングスSのMPP動作点は、各PVパネルのMPP動作点からは、外れた動作点となっている。
【0049】
ここで特筆すべきことは、以下の事項である。まず、1つのストリングスSにおいて、すべてのPVパネル1の仕様上の出力を合計した値、すなわち、1つのストリングスSが全て正常パネルで構成されているとした値を、100%の基準値として考える。
【0050】
1つのストリングスS中に、図3に示したような劣化パネルD1、D2が、18枚中に4枚存在するとする。このストリングスS中のすべてのPVパネル1が、それぞれのMPP動作点で動作したと考える。すると、このときのストリングスSの出力は、基準値に対して97%となる。しかし、実際の動作では、図5に示すように、ストリングスSの出力は88%まで低下する。
【0051】
次に、MPP動作時の各PVパネルの動作電圧の測定結果を、図6に示す。この測定結果からは、劣化パネルD1、D2ともに、正常パネルの90%以上の出力が出ている。したがって、どちらの劣化パネルD1、D2も、劣化の程度はそれほど大きくないと考えることができる。
【0052】
また、劣化パネルD1と劣化パネルD2とを比較しても、劣化は同じ程度と考えることができる。なお、数値を厳密に比較すると、劣化パネルD2の方が、劣化パネルD1よりも、出力低下は大きいといえる。
【0053】
ここで、ストリングスSに接続されたインピーダンス調節回路6により、ストリングスSごとの電流を変化させると、ストリングスSの動作点が変化する。すると、これに対応して各PVパネル1の動作点も変化する。
【0054】
たとえば、ストリングスSを流れる電流を増やすと、正常パネルの動作電圧はほとんど変化しない。しかし、一部の劣化パネルの動作電圧は、急激に低下する。
【0055】
このような変化の様子を、図7に示す。この図7によると、MPP動作時の電流が、4.06Aから4.20Aへと、3.5%程度増加するだけで、劣化パネルD1の動作電圧は大きく低下している。
【0056】
一方、同様に電流が増加しても、正常パネルと劣化パネルD2の電圧は、ほとんど変化していない。このことにより、正常パネルと劣化パネルD2の出力は、電流とともに増加することが分かる。つまり、劣化パネルD1にひっぱられて、正常パネルと劣化パネルD2の出力が低下させられていたことが分かる。
【0057】
以上のことから、ストリングスSの全体の出力を変化させているのは、劣化パネルD1であることが分かる。このような劣化パネルD1を、潜在的劣化パネルと呼ぶことにする。
【0058】
[劣化パネルの交換の要否判定方法]
次に、上記のような劣化パネルが存在した場合に、これを交換するか否かの判定方法を説明する。まず、ストリングスSの電流を変化させていくと、各PVパネルのそれぞれのMPP点を通過することになる。そこで、その時の各PVパネルの出力を記録し、演算処理を行うことで、劣化パネルを交換した場合の出力回復値を予測することができる。
【0059】
つまり、図7における劣化パネルD1、D2の動作電流が、それぞれ正常パネルになったと想定して、ストリングスSの出力を算出する。これにより、劣化パネルD1のみ、劣化パネルD2のみ、劣化パネルD1及びD2の双方を交換した場合の出力回復値を求めることができる。
【0060】
ここで、図7において「劣化パネルを交換した時の回復予測値(kW)」は、このような方法で求めた値である。図7では、劣化パネルD1のみを交換した時の回復予測値(2.76kW)は、すべての劣化パネルを交換したときの予測値(2.8kW)にほぼ近い値となっている。
【0061】
一方、劣化パネルD2のみを交換した時の回復予測値(2.49kW)は、現状の出力(2.46kW)とほぼ同じである。このため、劣化パネルD2のみを交換しても、十分な回復が期待できないことが分かる。
【0062】
[実施形態の診断処理]
以上のような原理に基づく本実施形態の診断処理を説明する。なお、以下の説明では、通常の計測処理で判定される劣化パネルを「劣化パネル」、本実施形態の診断処理で特定される劣化パネルを「潜在的劣化パネル」、「劣化パネル」のうち、「潜在的劣化パネル」以外のものを、「通常の劣化パネル」とする。
[通常の計測処理]
まず、通常のMPP動作における計測処理を説明する。すなわち、PVパネル1による発電時において、PCS12が、MPP動作を実施する。計測値受付部210が受け付けた計測値を、計測値記憶部311が記憶する。算出部211が算出した計測値も、計測値記憶部311が記憶する。
【0063】
この条件下で、計測値比較部212は、PVパネル電圧、ストリングス電流について、あらかじめ設定記憶部313に記憶されたしきい値と比較する。なおここでいうしきい値は、多数決原理に基づき測定値から決定された正常なパネル電圧を基準として、あらかじめ設定記憶部313に記憶された演算により作成されたしきい値でもよい。異常判定部213は、PVパネル電圧、ストリングス電流に、しきい値を超える低下があった場合に、劣化したPVパネル1若しくは劣化したPVパネル1が含まれているストリングスSと判定する。
【0064】
ただし、上記のように、変化が僅かな場合などがあるため、このような通常の計測処理によっては、必ずしも潜在的劣化パネルを特定することはできない。そこで、本実施形態においては、以下のような診断処理を行う。
【0065】
[診断処理]
次に、本実施形態による診断処理を、図8のフローチャートを参照して説明する。この診断処理は、発電システムの起動時に行うこともできるし、定期的に行うこともできる。また、上記のように、異常が判定された場合に、診断処理を実行することもできる。
【0066】
まず、変化指示部220は、調節部111に、あらかじめ調整値記憶部312に記憶された調整値に基づいて、ストリングスSの電流を変化させるように指示する(ステップ10)。これにより、調節部111は、インピーダンス調節回路6に、ストリングスSの電流を変更させるので、インピーダンスが変化する。
【0067】
計測値受付部210は、インピーダンスの変化に応じたPVパネル電圧、ストリングス電流を、コントローラー4から受け付ける(ステップ11)。なお、PVパネル出力は、算出部211により算出することができる。これらのPVパネル電圧、ストリングス電流は、計測値として計測値記憶部311が記憶する。
【0068】
変化量判定部221は、各PVパネル1の電圧の変化量を判定する(ステップ12)。そして、特定部222は、あらかじめ設定記憶部313に記憶されたしきい値に基づき、電圧が低下しているPVパネル1を特定する(ステップ13)。なお、ここでいうしきい値は、多数決原理に基づき測定値から決定された正常なパネル電圧を基準として、あらかじめ設定記憶部313に記憶された演算により作成されたしきい値でもよい。また、特定部222は、変化量ではなく、計測値をしきい値と比較して、電圧が低下しているPVパネル1を特定してもよい。劣化があった場合の電圧の低下は、上記のように著しいため、この判定は、異常判定部213による判定に比べて簡易な処理で済む。
【0069】
特定部222が、著しく電圧が低下したPVパネル1を特定した場合(ステップ14 YES)、そのPVパネル1が潜在的劣化パネルとなる。特定部222が、著しく電圧が低下したPVパネル1を特定できない場合には(ステップ14 NO)、診断処理を終了する。
【0070】
さらに、回復予測値算出部223は、計測値記憶部311が記憶した各PVパネル出力、あるいは、設定記憶部313に記憶された正常時のPVパネル出力に基づいて、ストリングスSの回復予測値を算出する(ステップ15)。
【0071】
回復予測値算出部223は、通常の劣化パネル、潜在的劣化パネル、両者を含むすべての劣化パネルを交換した場合について、回復予測値を算出する。
【0072】
表示制御部231は、回復予測値と、実測の出力値とを、出力部500に比較表示させる(ステップ16)。なお、表示制御部231は、計測値、通常の劣化パネル、インピーダンスの変化に伴う電圧の変化、潜在的劣化パネル等を、出力部500に表示させてもよい(図7参照)。
【0073】
この場合、通常の劣化パネル、潜在的劣化パネルを、識別できるような表示(たとえば、色、大きさ、太さ、字体、明るさ、点滅等の強調表示)を行なってもよい。操作盤における該当PVパネル1のランプを点灯させる等の単純な態様でもよい。スピーカーやブザーにより音声で出力することも可能である。
【0074】
[3.効果]
本実施形態によれば、各ストリングスSのインピーダンスを積極的に変化させて電圧を測定すると、劣化パネルの動作電圧が大きく低下する。このため、MPP動作時だけの測定では特定が困難な潜在的劣化パネルを容易に見つけだすことができる。
【0075】
しかも、潜在的劣化パネルの動作電圧は、正常パネルに比べて大きく低下するため、測定器、モニター、判定処理等の精度をあまり高くする必要もなくなり、コスト低下を実現することができる。
【0076】
さらに、劣化パネルを交換した場合のシステムの回復値を予測することができる。このため、どのパネルを交換すれば、全体の出力がどこまで回復するかを知ることが可能となる。したがって、パネル交換の適格な指針が得られる。
【0077】
[B.第2の実施形態]
本実施形態は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態における診断対象となる電力システムは、図9に示すように、複数のストリングスSが並列に接続されている。また、本実施形態においては、ストリングスSごとに、ダイオード15が付加されている。このダイオード15は、ストリングスS間に電流が流入することを防止するための逆流防止ダイオードである。
【0078】
また、各ストリングスSにおけるコントローラー4は、中継機8を介して、ゲートウェイ9に接続されている。このゲートウェイ9は、下位の各コントローラー4の制御、下位および上位(サーバ装置21等)とのデータの送受信、PCS12とのデータ通信等を行う装置である。
【0079】
本実施形態においても、上記の実施形態と同様に、各ストリングスSのインピーダンスを変化させることにより、上記の実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、ストリングスSごとにインピーダンス調節回路6(DC−DCコンバーター)を付けたことで、並列接続されたストリングスSの電圧不整合による出力低下を抑えることができる。したがって、発電システム全体の出力低下を抑制できる。
【0080】
[C.第3の実施形態]
[構成]
本実施形態は、基本的には、上記の第2の実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態では、図10に示すように、各PVパネル1ごとの電圧モニター2は設置されておらず、コントローラー4によりストリングスSの電流とストリングスS全体の電圧のみを測定している。つまり、本実施形態においては、上記の第1の実施形態で示したストリングス電流及びストリングス電圧を計測値として用いる。
【0081】
[作用]
このような本実施形態における診断処理の手順を、図11のフローチャートを参照して以下に説明する。すなわち、変化指示部220は、インピーダンス調節部110に、あらかじめ調整値記憶部312に記憶された調整値に基づいて、各ストリングスSの電流を変化させるように指示する(ステップ20)。これにより、インピーダンス調節部110の調節部111が、各ストリングスSの電流を変更するので、インピーダンスが変化する。
【0082】
計測値受付部210は、インピーダンスの変化に応じたストリングス電流、ストリングス電圧を、コントローラー4から受け付ける(ステップ21)。なお、ストリングス出力は、算出部211により算出することができる。これらのストリングス電流、ストリングス電圧は、計測値として計測値記憶部311が記憶する。
【0083】
変化量判定部221は、各ストリングス電流の変化量を判定する(ステップ22)。そして、特定部222は、あらかじめ設定記憶部313に記憶されたしきい値を超えて、電流が低下しているストリングスSを判定する(ステップ23)。なお、ここでいうしきい値は、多数決原理に基づき測定値から決定された正常なストリングス電流を基準値として、あらかじめ設定記憶部313に記憶された演算により作成したしきい値でもよい。また、特定部222は、変化量ではなく、計測値をしきい値と比較して、電流が低下しているストリングスSを特定してもよい。
【0084】
特定部222が、著しく電流が低下したストリングスS(劣化ストリングス)が存在すると特定した場合(ステップ24 YES)、そのストリングスSが潜在的劣化パネルを含むストリングスSとなる。特定部222が、著しく電流が低下したストリングスSが存在しないと特定した場合には(ステップ24 NO)、診断処理を終了する。
【0085】
さらに、回復予測値算出部223は、計測値記憶部311が記憶したストリングス出力、あるいは、設定記憶部313に記憶された正常時のストリングス出力に基づいて、ストリングスSの回復予測値を算出する(ステップ25)。つまり、潜在的劣化パネルを含むストリングスSを、正常なストリングスSに交換した場合の回復予測値を算出する。
【0086】
表示制御部231は、回復予測値と、実測の出力値とを、出力部500に比較表示させる(ステップ26)。これにより、ユーザは、ストリングスSを交換すべきか否かを判断できる。なお、表示制御部231は、計測値、インピーダンスの変化に伴う電圧の変化、潜在的劣化パネルを含むストリングスS等を、出力部500に表示させてもよい(図7参照)。
【0087】
この場合、潜在的劣化パネルを含むストリングスSを、識別できるような表示(たとえば、色、大きさ、太さ、字体、明るさ、点滅等の強調表示)を行なってもよい。操作盤における該当ストリングスSのランプを点灯させる等の単純な態様でもよい。スピーカーやブザーにより音声で出力することも可能である。
【0088】
[効果]
本実施形態によれば、MPP動作時だけの測定では特定が困難な潜在的劣化パネルを含むストリングスSまでを、容易に特定することができる。さらに、どのストリングスSを交換すれば、どれだけの効果が期待できるかを知ることが可能となる。これにより、ストリングスSの交換の適格な指針を得ることができる。
【0089】
なお、潜在的劣化パネルを含むストリングスSを特定した後で、そのストリングスSを構成する各PVパネル1について、上記の電圧モニター2を接続して、計測値から劣化パネルを特定してもよい。その他の手段で劣化パネルを特定することも可能である。
【0090】
[D.第4の実施形態]
[構成]
本実施形態は、基本的には、第2の実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態においては、図12及び図13に示すように、インピーダンス調節回路7が、DC−DCコンバーターである。
【0091】
DC−DCコンバーターは、所定の変換効率で、直流電圧を変換する回路である。このDC−DCコンバーターは、コンバーターを動作させずに、入力をそのままバイパスして出力するスルー回路を有している。
【0092】
たとえば、図14に示すように、DC−DCコンバーター25は、コンバーター部25aと、スルー回路26を有している。スルー回路26には、入力と出力を直接短絡するリレー回路や半導体SW等のスイッチ26aを有している。なお、コンバーター部25を介した動作モードをコンバーター動作モード、スルー回路26を介したモードをスルーモードとする。そして、インピーダンス制御部110は、このモードの切り替えを指示することにより、スイッチ26aを切り替える切替制御部112を有している。
【0093】
また、図13に示すように、本実施形態の診断処理部200は、最適動作電圧算出部240、動作電圧比較部241、電圧低下判定部242、出力低下割合算出部243、変換効率比較部244、モード決定部245等を有している。
【0094】
最適動作電圧算出部240は、スルーモードでのMPP動作時におけるPVパネル電圧、ストリングス電流に基づいて、各ストリングスSの最適動作電圧を算出する処理部である。
【0095】
動作電圧比較部241は、各ストリングスSにおける最適動作電圧と実際の動作電圧とを比較する処理部である。電圧低下判定部242は、最適動作電圧と実際の動作電圧との比較結果に基づいて、各ストリングスSにおける出力低下があったかどうかを判定する処理部である。出力低下割合算出部243は、各ストリングスSにおける出力低下の割合を算出する処理部である。
【0096】
変換効率比較部244は、あらかじめ設定記憶部313に記憶されたDC−DCコンバーターの変換効率と、出力低下割合とを比較する処理部である。モード決定部245は、変換効率と出力低下割合との比較の結果に基づいて、各ストリングスSにおけるDC−DCコンバーターの動作モードを決定する処理部である。
【0097】
[作用]
以上のような本実施形態の作用を、図15のフローチャートを参照して説明する。まず、通常のMPP動作における計測処理については、上記の実施形態で説明した通りである。なお、この計測処理においては、スルーモードで動作させる。
【0098】
そして、診断処理においては、変化指示部220が、調節部111に、インピーダンス調節回路7による各ストリングスSごとのインピーダンスの変更を指示する(ステップ30)。すると、切替制御部112が、コンバーター動作モードへの切り替えを指示し、DC−DCコンバーター25によるインピーダンスの変化が行われる。その後の潜在的劣化パネルの判定は、上記の実施形態で説明した通りである(ステップ31〜34)。
【0099】
通常の計測処理において劣化パネルが判定された場合、また、上記の診断処理により潜在的劣化パネルが判定された場合、直ちにPVパネル1の交換を行ってもよい。しかし、PVパネル1の交換には、手間と費用がかかる。このため、なるべくPVパネル1の劣化が進んだところで交換を行うことが多い。このため、劣化パネルをそのまま維持した状態で運転を続けることになる可能性がある。
【0100】
このような状態で運転を続ける時の基本動作を、ステップ35以降で説明する。すなわち、最適動作電圧算出部240は、通常の計測処理において得られた計測値から、各ストリングスSの最適動作電圧を求める(ステップ35)。実際には、各ストリングスSにおいて、MPP動作時にPCS12から得られる最適動作電圧の平均を求める。実際の動作電圧は、正常である場合、スルーモードで動作させた場合のストリングスSの最適動作電圧のほぼ平均になるためである。
【0101】
動作電圧比較部241は、各ストリングスSにおいて、実際に計測される動作電圧と最適動作電圧とを比較する(ステップ36)。電圧低下判定部242は、設定記憶部313に設定されたしきい値から外れて、動作電圧の低下があったかどうかを判定する(ステップ37)。
【0102】
動作電圧の低下がない場合(ステップ38 NO)、当該ストリングスSは、スルーモードによる動作のままとなる(ステップ38)。動作電圧の低下があった場合(ステップ38 YES)、出力低下割合算出部243は、当該ストリングスSの出力低下の割合を算出する(ステップ39)。
【0103】
変換効率比較部244は、出力低下割合と、DC−DCコンバーターの変換効率とを比較する(ステップ40)。モード決定部244は、前記比較の結果に基づいて、動作モードを決定する(ステップ41)。つまり、出力低下割合が変換効率を下回った場合(ステップ42 YES)、モード決定部244はコンバーター動作モードとする(ステップ43)。出力低下割合が変換効率以上の場合(ステップ42 NO)、モード決定部244はスルーモードとする(ステップ43)。
【0104】
以上のような処理を、各ストリングスSについて行うことにより、最終的にコンバーター動作モードとするストリングスSを決定する。通常、劣化パネルを含まないストリングスSはスルーモードで動作し、劣化パネルを含むストリングスSのみがコンバーター動作モードで動作することになる。
【0105】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、各ストリングスSにDC−DCコンバーター25を付けることで、劣化パネルを含むストリングSとの最適動作電圧の電圧不整合による出力低下を抑制することが可能となる。
【0106】
また、劣化パネルを原因とするストリングスSの電圧低下割合に応じて、動作モードを決定する。このため、必要なストリングスSのみコンバーター動作モードとすることができる。したがって、DC−DCコンバーター25の効率に起因する出力低下を極力低減することができる。
【0107】
つまり、DC−DCコンバーター25を通すことで、DC−DCコンバーター25の効率に起因する出力低下が発生し、劣化パネルの割合が小さいときには、逆に損失が大きくなるという事態を防止できる。
【0108】
さらに、本実施形態は、DC−DCコンバーター25を用い、入力側の電圧および電流をモニターし、インピーダンス調整を行うことで、入力側でMPPT動作させている。つまり、DC−DCコンバーター25の出力側の制御を行わない。
【0109】
このように、出力側の制御を行わなくても、後段のPCS12に組み込まれた効率制御部によるMPPTにより、システム全体の電圧が、スルーモード動作のストリングスSの最適動作電圧に適正化される。このため、DC−DCコンバーター25の出力側の電圧も、その電圧に合わせられることになる。このような方式にすることで、DC−DCコンバーター25の回路を簡単にすることができ、安価で高効率の装置構成とすることができる。
【0110】
[E.他の実施形態]
本実施形態は、上記のような態様には限定されない。
(1)上記の実施形態において、回復予測値に応じた交換判定を行う態様も構成可能である。たとえば、診断処理部200に、予測値比較部、交換判定部を設ける。予測値比較部は、ストリングスSの電流を変化させた場合における各PVパネル1の出力に基づいて、回復予測値と現状のストリングスSの出力を比較する処理部である。交換判定部は、予測値比較部における比較結果に基づいて、交換の要否を判定する処理部である。
【0111】
交換判定部は、潜在的劣化パネルを交換した場合の回復予測値が、実測値を上回り、全ての劣化パネルを交換した場合の回復予測値と近似(所定のしきい値の範囲内)している場合、潜在的劣化パネルの交換が必要と判定する。交換判定部は、潜在的劣化パネルを交換した場合の回復予測値が、実測値を下回る場合には、交換が不要と判定する。判定結果は、表示制御部によって出力部に表示される。これにより、ユーザは、交換の要否を容易に判断することができる。表示の態様は、上記の劣化パネル等の識別表示と同様に、交換が必要なPVパネル1、ストリングスSに応じて、種々の態様が適用可能である。
【0112】
(2)上記の実施形態におけるDC−DCコンバーターは、種々ものを適用できる。たとえば、図16に示すように、一般的な昇圧用DC−DCコンバーター25Uを適用することを考える。この場合、昇圧用半導体SW27を、連続的にOFFにすることで、入力と出力を短絡して、スルーモードとすることができる。なお、図中、28はインダクタンス、29はダイオード、30はコンデンサである。
【0113】
また、図17は、図16に示した昇圧用DC−DCコンバーター25Uにおいて、順方向の電圧降下の小さいダイオード32を並列に付加したものである。この場合、入力と出力を短絡するために、昇圧用半導体SW27を連続的にOFFにした時の損失を小さくしたものである。
【0114】
そして、図18に示すように、一般的な、降圧用DC−DCコンバーター25Dを適用することを考える。この場合、降圧用半導体SW27を、連続的ONにすることで、入力と出力を短絡することができる。
【0115】
なお、上記のように、本実施形態では、DC−DCコンバーターの効率に起因する出力低下を極力低減するために、スルーモードで動作させることを基本とする。図16で示したダイオード29は、高速動作用なので、順方向電圧が高くなるため、このダイオード29をそのままスルーモードで使用すると損失が大きくなる。この欠点を改良したものが図18である。順方向電圧の低いダイオードを並列に接続することで損失を減らすことができる。
【0116】
さらに、図19は、図12の実施形態から、ダイオード15を削除した態様を示した概略構成図である。たとえば、図16、図17の回路では、DC−DCコンバーター25内にダイオード29が接続されている。そして、スルーモードにおいても、ダイオード29が機能する。このため、かかるDC−DCコンバーター25を使用する場合には、15のダイオードを省略することができる。
【0117】
(3)インピーダンス制御装置によるインピーダンスの調節は、電流を変化させるのではなく、電圧を変化させてもよい。電圧を変化させることにより、動作電流が著しく低下する場合、特定部222は、当該ストリングスSが劣化パネルを含むと特定することができる。
【0118】
(4)診断処理部、記憶部等は、コントローラー、中継機、PCS内のCPU、ゲートウェイ、その他、共通のコンピュータにおいて実現してもよいし、通信ネットワークで接続された複数のコンピュータによって実現してもよい。さらに、インピーダンス制御装置をコントローラーと一体に構成することもできる。
【0119】
(5)変化量判定部、特定部を省略することも可能である。たとえば、調節部によるインピーダンスの変更に対応して、記憶部が、PVパネル回路において計測された電圧若しくは電流を、計測値として記憶する。そして、表示制御部が、インピーダンス変更前の計測値と変更後の計測値とを、比較して表示させる。これにより、ユーザは、変化の著しいPVパネル、ストリングスについて、劣化を判断することが可能となる。
【0120】
(6)実施形態に用いられる情報の具体的な内容、値は自由であり、特定の内容、数値には限定されない。実施形態において、しきい値に対する大小判断、一致不一致の判断等において、以上、以下として値を含めるように判断するか、より大きい、上回る、より小さい、下回るとして値を含めないように判断するかも自由である。
【0121】
(7)本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
1…PVパネル
2…電圧モニター
3…電流測定端子
4…コントローラー
6、7…インピーダンス調節回路
9…ゲートウェイ
11…パワーライン
12…PCS
15…ダイオード
21…サーバ装置
22…ネットワークケーブル
25…DC−DCコンバーター
25a…コンバーター部
25U…昇圧用DC−DCコンバーター
25D…降圧用DC−DCコンバーター
26…スルー回路
26a…スイッチ
28…インダクタンス
29、32…ダイオード
30…コンデンサ
100…診断装置
110…インピーダンス制御部
111…調節部
112…切替制御部
200…診断処理部
210…計測値受付部
211…算出部
212…計測値比較部
213…異常判定部
220…変化指示部
221…変化量判定部
222…特定部
223…回復予測値算出部
231…表示制御部
240…最適動作電圧算出部
241…動作電圧比較部
242…電圧低下判定部
243…出力低下割合算出部
244…変換効率比較部
245…モード決定部
300…記憶部
311…計測値記憶部
312…調整値記憶部
313…設定記憶部
400…入力部
500…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のPVパネルが直列に接続されたストリングスを少なくとも一つ含むPVパネル回路について、インピーダンスを調節する調節部と、
前記調節部によるインピーダンスの変化に対応して、前記PVパネル回路において計測された電圧若しくは電流を、計測値として記憶する計測値記憶部と、
前記調節部によるインピーダンスの変化に応じた計測値若しくはその変化量と、所定のしきい値との比較に基づいて、劣化したPVパネル若しくは劣化したPVパネルを含むストリングスを特定する特定部と、
を有することを特徴とするPVパネル診断装置。
【請求項2】
前記しきい値は、あらかじめ設定されたしきい値、若しくは多数決原理に基づき測定値から決定された値を基準として算出されたしきい値を含むことを特徴とする請求項1記載のPVパネル診断装置。
【請求項3】
表示装置に接続され、
前記調節部によるインピーダンスの変化に対応して、前記PVパネル回路において計測された電圧若しくは電流を、前記表示装置に表示させる表示制御部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のPVパネル診断装置。
【請求項4】
前記調節部は、各ストリングスごとのインピーダンスを調節することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のPVパネル診断装置。
【請求項5】
前記計測値は、各PVパネルの動作電圧若しくは動作電流を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のPVパネル診断装置。
【請求項6】
前記計測値は、複数並列に接続された各ストリングスの動作電圧若しくは動作電流を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のPVパネル診断装置。
【請求項7】
前記記憶部に記憶された計測値に基づいて、
劣化したPVパネルを、正常なPVパネルに交換した場合に、回復すると予測される出力値を算出する回復予測値算出部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のPVパネル診断装置。
【請求項8】
前記調節部は、インピーダンス調節回路に接続され、
前記インピーダンス調節回路は、DC−DCコンバーターであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のPVパネル診断装置。
【請求項9】
前記DC−DCコンバーターは、スルー回路を有することを特徴とする請求項8記載のPVパネル診断装置。
【請求項10】
前記計測値に基づいて、インピーダンスの変化前から変化後のストリングスの出力低下割合を算出する出力低下割合算出部と、
前記DC−DCコンバーターの変換効率と前記出力低下割合とに基づいて、DC−DCコンバーターを動作させるコンバーター動作モードか、DC−DCコンバーターを動作させないスルーモードとするかを決定するモード決定部と、
を有することを特徴とする請求項9記載のPVパネル診断装置。
【請求項11】
コンピュータ又は電子回路が、
複数枚のPVパネルが直列に接続されたストリングスを少なくとも一つ含むPVパネル回路について、インピーダンスを調節する調節処理と、
前記調節処理によるインピーダンスの変化に対応して、前記PVパネル回路において計測された電圧若しくは電流を、計測値として記憶する計測値記憶処理と、
前記調節処理によるインピーダンスの変化に応じた計測値若しくはその変化量と、所定のしきい値との比較に基づいて、劣化したPVパネル若しくは劣化したPVパネルを含むストリングスを特定する特定処理と、
を実行することを特徴とするPVパネル診断方法。
【請求項12】
前記コンピュータ又は電子回路が、
前記記憶処理により記憶された計測値に基づいて、劣化したPVパネルを、正常なPVパネルに交換した場合に、回復すると予測される出力値を算出する回復予測値算出処理を実行することを特徴とする請求項11記載のPVパネル診断方法。
【請求項13】
前記調節処理は、スルー回路を有するDC−DCコンバーターにより実行され、
前記コンピュータ又は電子回路が、
前記計測値に基づいて、インピーダンス変化前から変化後のストリングスの出力低下割合を算出する出力低下割合算出処理と、
前記DC−DCコンバーターの変換効率と前記出力低下割合とに基づいて、DC−DCコンバーターを動作させるコンバーター動作モードか、DC−DCコンバーターを動作させないスルーモードとするかを決定するモード決定処理と、
を実行することを特徴とする請求項11又は請求項12記載のPVパネル診断方法。
【請求項14】
コンピュータに、
複数枚のPVパネルが直列に接続されたストリングスを少なくとも一つ含むPVパネル回路について、インピーダンスを調節する調節処理と、
前記調節処理によるインピーダンスの変化に対応して、前記PVパネル回路において計測された電圧若しくは電流を、計測値として記憶する計測値記憶処理と、
前記調節処理によるインピーダンスの変化に応じた計測値若しくはその変化量と、所定のしきい値との比較に基づいて、劣化したPVパネル若しくは劣化したPVパネルを含むストリングスを特定する特定処理と、
を実行させることを特徴とするPVパネル診断プログラム。
【請求項15】
前記コンピュータに、
前記記憶処理により記憶された計測値に基づいて、劣化したPVパネルを、正常なPVパネルに交換した場合に、回復すると予測される出力値を算出する回復予測値算出処理を実行させることを特徴とする請求項14記載のPVパネル診断プログラム。
【請求項16】
前記調節処理は、スルー回路を有するDC−DCコンバーターを制御することにより実行され、
前記コンピュータに、
前記計測値に基づいて、インピーダンス変化前から変化後のストリングスの出力低下割合を算出する出力低下割合算出処理と、
前記DC−DCコンバーターの変換効率と前記出力低下割合とに基づいて、DC−DCコンバーターを動作させるコンバーター動作モードか、DC−DCコンバーターを動作させないスルーモードとするかを決定するモード決定処理と、
を実行させることを特徴とする請求項14又は請求項15記載のPVパネル診断プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−80731(P2013−80731A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218463(P2011−218463)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】