説明

PVCの常温脱塩素処理産物から燃料ガスの発生方法

【課題】有害ガスの発生が無く、かつ、 200℃程度の廃熱で、簡単にPVCなどの廃棄物から水素やメタンなどの燃料ガスを発生できる手法を提供する。
【解決手段】PVC(ポリ塩化ビニール)廃棄物にCaOなどの酸化物を添加して粉砕処理し、PVC中の塩素をCaOによって固定化し、その後、その産物を200℃程度で加熱することによる、有害ガスの発生も無く、水素やメタンガスの燃料ガスを発生させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PVCの常温脱塩素処理産物から低温加熱により水素やメタンなどの燃料ガスを発生させることに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水素などのガス発生法には加熱法、触媒法、電気分解法などがある。いずれも優れた方法であるが、装置と操作に一定の工夫が必要であり、必ずしも容易ではない。原料には種々の材料が用いられるが、本発明に対抗するとすればPVCがあり、これから水素やメタンガスなどを発生させるにはその分解温度以上での加熱が必要になる。しかし、この加熱法では有害な塩化水素ガスが発生し、これを除去する必要があるし、温度は最低でも250℃以上必要である。
【0003】
また、PVCをCaOなどと混合し、常温で粉砕(メカノケミカル処理)すると、PVCは脱塩素されることが知られている(例えば、特許文献1)が、この先行文献はメカノケミカル処理後に水洗濾過し、固体残渣と水溶性塩化物を再利用するものあり、水洗工程や分離工程が煩雑であるという問題点がある。
【0004】
【特許文献1】特開平11−124463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、本発明は、有害ガスの発生が無く、かつ、 200℃程度の廃熱で、簡単にPVCなどの廃棄物から水素やメタンなどの燃料ガスを発生できる手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、PVC(ポリ塩化ビニール)を酸化物と混合し、常温で粉砕(メカノケミカル処理)しPVCを脱塩素化し、しかる後に、その産物を250℃以下の温度に加熱することを特徴とするPVCの常温脱塩素処理産物からの燃料ガスの発生方法得られる。
【0007】
また、本発明によれば、前記酸化物が、CaOであることを特徴とするPVCの常温脱塩素処理産物からの燃料ガスの発生方法が得られる。
【0008】
また、本発明によれば、前記PVCが、廃棄ポリ塩化ビニール成形品のものであることを特徴とするPVCの常温脱塩素処理産物からの燃料ガスの発生方法が得られる。
【発明の効果】
【0009】
PVCとCaOを混合して室温で粉砕すると、メカノケミカル反応が起こり、炭化水素とCaOHClが生成する。これで、PVC中の塩素(Cl)はCaOHClとして固定され安定になる。一方、PVCからClを取り去った残りの炭化水素は、結合状態が緩くなり、容易に熱分解する。ここで、通常のPVCの熱分解温度は最低でも250℃であるが、上記の脱塩素後の炭化水素では200℃程度でも容易に熱分解し、水素やメタンガスを発生する。従って、本発明により、有害ガスの発生も無く、水素やメタンなどの可燃性ガスが発生が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明者の知見に依れば、PVC廃棄物にCaOを添加して粉砕処理し、PVC中の塩素をCaOによって固定化し、その後、その産物を200℃程度で加熱するだけで、有害ガスの発生も無く、簡単に水素やメタンガスを発生できる。これらのガスは発電用エネルギーであり、簡単にコジェネレーションシステムが構築できる。図1には、粉砕と加熱操作のフローを示す。
【実施例1】
【0011】
CaOを脱塩素材として使用した場合(加熱過程でのキャリアガス:Heガス)まず、PVCとCaOの混合物を遊星ミルにより粉砕する。このときのCaOの添加割合は、少なくてもPVC中のCl全量を固定するに必要な量とする。勿論、CaO添加率が多いほど脱塩素率が上がるが、混合物量を一定とする場合はPVC量は少なくなる。また、粉砕処理時間が長いほど脱塩素率は向上するが、最適値があり、それを考慮し、ここでは1〜4時間処理する実験とした。室温で粉砕操作にもかかわらずPVC−CaO間での固相反応が生じ、生成物はCaOHCl(塩化物)と有機物(PVCから塩素が除去されたもの)となる。この混合物を200℃程度に加熱しても、CaOHClは分解しないので、塩素ガス発生はない。一方、有機物(PVC)から塩素が除去されたもの)は塩素がないし、結合もダメージを受けており、容易にH2ガスなどが生成しやすい状態になっている。
【0012】
加熱操作においては、廃熱を利用することを考えると、温度は250℃以下であり、雰囲気の制御は重要である。発生するガスの分析ではキャリアガスとしてHeガスを用い、一定流量で実験した。なお、実用化する場合は、真空または窒素ガス雰囲気が望ましい。
【0013】
CaOを脱塩素材として用いた場合の粉砕処理の有無によるガス発生状況をHeガスをキャリアガスとしての分析結果を表1にしめした。
【表1】

【実施例2】
【0014】
実施例1ではCaO(脱塩素材)について説明したが。CaOの代わりにLa2O3などでも同様の効果が得られる。La2O3を脱塩素材として用いた場合の粉砕処理の有無によるガス発生状況を表2に示した。キャリアガスはHeガスである。
【表2】

【0015】
表1および2から明らかに、本発明の方法によれば、燃料として有用なEthyleneガス、Ethaneガス、Propyleneガス、Propaneガスが得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の粉砕と加熱操作のフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVC(ポリ塩化ビニール)を酸化物と混合し、常温で粉砕(メカノケミカル処理)しPVCを脱塩素化し、しかる後に、その産物を250℃以下の温度に加熱することを特徴とするPVCの常温脱塩素処理産物からの燃料ガスの発生方法。
【請求項2】
前記酸化物が、CaOであることを特徴とする請求項1に記載のPVCの常温脱塩素処理産物からの燃料ガスの発生方法。
【請求項3】
前記PVCが、廃棄ポリ塩化ビニール成形品のものであることを特徴とする請求項1または2に記載のPVCの常温脱塩素処理産物からの燃料ガスの発生方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−246681(P2007−246681A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71995(P2006−71995)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】