説明

R波検出装置及びR波計測システム

【課題】簡易な構成で、R波を精度良く検出することができるようにする。
【解決手段】差動増幅器18によって、被検出者に取り付けられた複数の電極16からの出力に基づいて、心電信号を生成し、増幅器22によって、予め設定されたゲインに応じて、生成された心電信号を増幅する。コンパレータ32によって、増幅された心電信号において、閾値電圧と比較して、R波を検出し、送信器30によって、R波を検出したことを示す信号を送信する。また、オートゲインコントロール部36によって、R波の検出間隔を測定し、測定されたR波の検出間隔に基づいて、増幅器22におけるゲインを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R波検出装置及びR波計測システムに係り、特に、心電信号からR波を検出するR波検出装置及びR波計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、心電図出力から、R点の位置を計算すると共に、隣接するR波間の間隔であるRR間隔の時系列を求めて記憶装置に記憶させる心機能診断装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、心電図測定装置で心電図を測定して、R波間隔変動測定回路でR−R間隔変動を測定し、メモリ又は外部記憶装置に記憶する自律神経機能検査装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−120135号公報
【特許文献2】特開2003−233890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2では、R波の検出精度を向上させるために、ゲイン調整を行うことは記載されていない。一般的には、心電信号に基づいて、R波の検出精度を向上させるようにゲイン調整を行うことになるが、心電信号を記録する構成が必要となる、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、簡易な構成で、R波を精度良く検出することができるR波検出装置及びR波計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明に係るR波検出装置は、被検出者に取り付けられた複数の電極からの出力に基づいて、心電信号を生成する心電信号生成手段と、予め設定されたゲインに応じて、前記生成された心電信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段によって増幅された心電信号において、閾値電圧と比較して、R波を検出するR波検出手段と、前記R波検出手段によってR波が検出されたときに、R波を検出したことを示す信号を無線送信する送信手段と、前記R波検出手段によるR波の検出間隔を測定し、測定された前記R波の検出間隔に基づいて、前記増幅手段における前記ゲインを調整するゲイン調整手段と、を含んで構成されている。
【0008】
本発明に係るR波検出装置によれば、心電信号生成手段によって、被検出者に取り付けられた複数の電極からの出力に基づいて、心電信号を生成し、増幅手段によって、予め設定されたゲインに応じて、生成された心電信号を増幅する。
【0009】
そして、R波検出手段によって、増幅手段によって増幅された心電信号において、閾値電圧と比較して、R波を検出し、送信手段によって、R波検出手段によってR波が検出されたときに、R波を検出したことを示す信号を無線送信する。
【0010】
また、ゲイン調整手段によって、R波検出手段によるR波の検出間隔を測定し、測定されたR波の検出間隔に基づいて、増幅手段におけるゲインを調整する。
【0011】
このように、測定されたR波の検出間隔に基づいてゲインを調整することにより、簡易な構成で、R波を精度良く検出することができる。
【0012】
本発明に係るゲイン調整手段は、測定されたR波の検出間隔が、所定間隔以下となる最小のゲインとなるように、増幅手段におけるゲインを調整するようにすることができる。
【0013】
本発明に係るR波検出装置は、R波検出手段によってR波が検出される度に、送信手段に電源を供給して電源供給を停止させるように制御する電源制御手段を更に含むことができる。これによって、装置の省電力化を図ることができる。
【0014】
本発明に係るゲイン調整手段は、ゲイン調整指示が入力されたときに、R波検出手段によるR波の検出間隔を測定し、増幅手段における前記ゲインを調整するようにすることができる。
【0015】
本発明に係るR波計測システムは、上記のR波検出装置と、前記R波検出装置によって送信された前記信号を無線受信する受信手段、前記受信手段によって前記信号を受信した間隔を、R波検出間隔として計測する計測手段、及び前記計測されたR波検出間隔を、記憶手段に記憶させる記憶制御手段を含むR波計測装置と、を含んで構成されている。
【0016】
本発明に係るR波計測システムによれば、R波検出装置によって、R波を検出したことを示す信号を送信する。そして、R波計測装置の受信手段によって、R波検出装置によって送信された信号を無線受信し、計測手段によって、受信手段によって信号を受信した間隔を、R波検出間隔として計測し、そして、記憶制御手段によって、計測されたR波検出間隔を、記憶手段に記憶させる。
【0017】
このように、R波を検出したことを示す信号を無線により送受信して、R波検出間隔を計測することにより、簡易な構成で、R波の検出間隔を精度良く計測することができる。
【0018】
上記の計測手段は、信号の立ち下がりを検出することにより、信号を受信した間隔を計測するようにすることができる。これによって、R波の検出間隔をより精度良く計測することができる。
【0019】
上記のR波計測装置は、計測されたR波検出間隔に対して情報処理を行って、処理結果を出力装置に出力させる情報処理手段を更に含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のR波検出装置及びR波計測システムによれば、測定されたR波の検出間隔に基づいてゲインを調整することにより、簡易な構成で、R波を精度良く検出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るR波間隔計測システムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るR波検出器の構成を示すブロック図である。
【図3】(A)心電波形を示すグラフ、及び(B)R波成分を示すグラフである。
【図4】R波を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るR波間隔計測装置の構成を示すブロック図である。
【図6】R波間隔の時系列データを示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るR波検出器におけるゲイン調整処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】増幅ゲインが調整される様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るR波間隔計測システム10は、被検出者から心電信号を計測すると共にR波を検出して信号を無線送信するR波検出器12と、R波検出器12から送信された信号に基づいて、R波間隔を計測するR波間隔計測装置14とを備えている。
【0024】
また、R波検出器12には、被検出者の体表の胸部付近に取り付けられる複数の電極16が接続されている。電極16として、例えば3つの電極がR波検出器12に接続されており、それぞれ、+、−、GND用の電極である。
【0025】
図2に示すように、R波検出器12は、複数の電極16からの出力を差動増幅して、心電信号を生成する差動増幅器18と、ノイズ除去のために、生成された心電信号の低周波成分を通過させるローパスフィルタ20と、ローパスフィルタ20からの出力を増幅させる増幅器22と、増幅器22からの出力に基づいて、R波を検出するマイコン24と、各部に電源を供給する電源部26と、R波が検出されたときのみ送信器30に電源を供給するように制御する電源制御部28と、R波が検出されたことを示す信号を無線送信する送信器30とを備えている。なお、差動増幅器18が、心電信号生成手段の一例である。
【0026】
差動増幅器18は、図3(A)に示すような心電信号を生成して出力する。
【0027】
増幅器22は、ゲイン調整用電子可変抵抗を備えており、マイコン24からの制御に応じて、増幅ゲインが調整される。
【0028】
マイコン24を、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、マイコン24は、増幅器22から出力された、増幅された心電信号に対して、設定された閾値電圧と比較して、図4に示すようなR波を検出するコンパレータ32と、コンパレータ32の出力に対して、所定の周波数成分のみを通過させるバンドパスフィルタ34と、バンドパスフィルタ34の出力に基づいて、増幅器22の増幅ゲインを調整するオートゲインコントロール部36とを備えている。なお、コンパレータ32が、R波検出手段の一例である。
【0029】
コンパレータ32は、増幅器22から出力された、増幅された心電信号について、閾値電圧以上となったときにハイレベルの信号を出力し、バンドパスフィルタ34は、コンパレータ32の出力から、低周波成分と高周波成分とを除去することにより、図3(B)に示すような、R波の検出を示すハイレベル信号(R波成分の信号)を、電源制御部28、送信器30、及びオートゲインコントロール部36に出力する。
【0030】
オートゲインコントロール部36は、図示しないゲイン調整用ボタンが押下されて、ゲイン調整指示が入力されたときに、バンドパスフィルタ34の出力から、R波の検出間隔を計測し、例えば2分最適法により、R波の検出間隔が、所定間隔以下となる最小のゲインとなるように、増幅器22の増幅ゲインを調整する。
【0031】
健常な成人男性が生きていられる心拍数の範囲が約40〜200/毎分であり、その場合におけるR波の検出間隔の範囲は0.3〜1.5秒となるため、この範囲の上限値から大きく外れない値、例えば、1.6〜1.8秒を、上記の所定間隔として設定すればよい。
【0032】
なお、増幅ゲインの調整後、R波の検出間隔が、上記範囲の下限値である0.3秒未満である場合には、電極16の装着位置が正しくない可能性が高いため、電極位置・接続の再確認を促すように、R波検出器12に設けられたLEDランプ(図示省略)を点灯させるようにしてもよい。更に、後述するようにコンパレータの閾値電圧を調整するようにしてもよい。
【0033】
電源制御部28は、マイコン24からR波の検出を示すハイレベル信号が入力されている間だけ、送信器30に電源部26からの電源を供給し、ハイレベル信号の入力が終了すると、電源供給を停止させる。電源制御部28は、例えば、マイコン24からの信号に応じて、電源部26と送信器30との間の接続をオンオフするスイッチによって構成される。
【0034】
送信器30は、電源制御部28から電源が供給されて起動されると、マイコン24から入力された、R波の検出を示すハイレベル信号を無線送信する。なお、送信器30には、起動による遅延が生じるが、遅延する時間が、ハイレベル信号が続く時間より小さいため、R波の検出を示すハイレベル信号に応じて起動された送信器30は、当該ハイレベル信号を無線送信することができる。
【0035】
図5に示すように、R波間隔計測装置14は、R波検出器12から送信された信号を無線受信する受信器40と、ノイズ除去のために、所定の周波数成分のみを通過させるフィルタ42と、フィルタ42から出力された信号に対して、設定された閾値電圧と比較して、R波が検出されたことを示すハイレベル信号を検出するコンパレータ44と、コンパレータ44からの出力に基づいて、R波の検出間隔を計測して記憶するマイコン46とを備えている。
【0036】
マイコン46を、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、マイコン46は、コンパレータ44からの出力に基づいて、検出されたハイレベル信号の立ち下がりを検出して、タイマ50をスタートさせる立ち下がり検出部48と、時間を計測するタイマ50と、タイマ50の計測時間に基づいて、R波の検出間隔を計測して、記憶部54に記憶させる間隔計測部52と、例えばメモリカードで構成される記憶部54とを備えている。なお、間隔計測部52は、計測手段及び記憶制御手段の一例である。
【0037】
立ち下がり検出部48は、検出されたハイレベル信号の立ち下がりを検出する度に、タイマ50をスタートさせる。
【0038】
間隔計測部52は、立ち下がり検出部48によってハイレベル信号の立ち下がりが検出される度に、1つ前に検出されたハイレベル信号の立ち下がりと現時点で検出されたハイレベル信号の立ち下がりとの間隔を、タイマ50によって計測された時間を用いて計測する。
【0039】
本実施の形態では、ハイレベル信号の立ち下がりを検出して、R波の検出間隔を計測するため、R波検出器12における送信器30の起動の遅れに影響を受けることなく、R波の検出間隔を計測することができる。
【0040】
記憶部54には、図6に示すようなR波の検出間隔の時系列データが記憶される。
【0041】
次に、第1の実施の形態に係るR波間隔計測システム10の作用について説明する。
【0042】
まず、被検出者の胸部付近に、複数の電極16が取り付けられ、R波検出器12の電源スイッチがオンされると、R波検出器12が起動される。
【0043】
R波検出器12では、差動増幅器18によって、心電信号が生成され、ローパスフィルタ20及び増幅器22を介して、心電信号がマイコン24に出力される。
【0044】
マイコン24では、入力された心電信号に基づいて、R波を検出する度に、R波を検出したことを示すハイレベル信号を、電源制御部28及び送信器30に出力する。
【0045】
電源制御部28にハイレベル信号が入力されると、電源部26からの電源を送信器30に供給して、送信器30を起動し、起動された送信器30は、入力されたハイレベル信号を無線送信する。ハイレベル信号が終了すると、電源制御部28は、送信器30への電源供給を停止させる。
【0046】
R波間隔計測装置14では、受信器40によって、R波検出器12から送信された信号を無線受信し、フィルタ42及びコンパレータ44によって、R波を検出したことを示すハイレベル信号を検出して、マイコン46に出力する。
【0047】
マイコン46では、入力されたハイレベル信号の立ち下がりを検出して、R波検出間隔を計測し、記憶部54に記憶させる。
【0048】
上記のように、被検出者のR波の検出間隔が計測されて、R波の検出間隔の時系列データが、R波間隔計測装置14の記憶部54に記憶される。
【0049】
そして、記憶部54からR波の検出間隔の時系列データが読み出されて、例えば、心拍数の導出根拠に用いられたり、心拍不全や不整脈、自律神経機能の低下(糖尿病、加齢)、睡眠時無呼吸症の診断に用いられたり、クモ膜下出血の予後・再発予測に用いられたりする。あるいは、睡眠時又は自由行動時に長期計測されたR波の検出間隔を記憶部54に記憶し、記憶部54に記憶されたデータが医者に渡され、又はインターネットで自動送信される。自律神経系の異常を伴う糖尿病や無呼吸症を、自覚症状が出る前に早期発見するために利用することができる。
【0050】
また、R波検出器12において、ゲイン調整用ボタンが押下されると、ゲイン調整指示が入力され、マイコン24において、図7に示す、ゲイン調整処理ルーチンが実行される。
【0051】
まず、ステップ100において、増幅器22の増幅ゲインを初期値に設定する。例えば、図8(A)に示すように、増幅ゲインを10段階で調整できる場合に、増幅ゲインを、中点であるレベル5に設定するように調整する。
【0052】
そして、ステップ102において、バンドパスフィルタ34からの出力に基づいて、R波の検出間隔を測定し、ステップ104において、上記ステップ102で測定されたR波の検出間隔が、所定間隔より長い否かを判定する。R波の検出間隔が、所定間隔以下である場合には、正常にR波を検出できているか、あるいは他の波やノイズを検出している可能性があると判断し、ステップ106において、増幅器22の増幅ゲインを下げるように調整する。例えば、図8(B)に示すように、現在の増幅ゲインと、下限の増幅ゲインとの範囲における中点に対応するレベル(例えば、レベル3)に下げるように、増幅ゲインを調整する。
【0053】
そして、ステップ108において、ステップ106において、ゲイン調整の繰り返しを終了する条件を満たすか否かを判定する。ゲイン調整の繰り返しを終了する条件を満たさない場合には、上記ステップ102へ戻る。
【0054】
上記ステップ104で、R波の検出間隔が、所定間隔より長い場合には、正常にR波を検出できていない可能性があると判断し、ステップ110において、増幅器22の増幅ゲインを上げるように調整して、上記ステップ108へ移行する。例えば、図8(C)に示すように、現在の増幅ゲインと、上限の増幅ゲインとの範囲における中点に対応するレベル(例えば、レべル4)に上げるように、増幅ゲインを調整する。
【0055】
また、上記ステップ108において、ゲイン調整の繰り返しを終了する条件を満たした場合、例えば、図8(D)に示すように、調整後の増幅ゲインと上限又は下限との範囲における中点が、当該調整後の増幅ゲイン(範囲の端点)である場合には、ステップ112へ移行し、当該調整後の増幅ゲインを、最終的な増幅ゲインとして決定して、増幅器22の増幅ゲインを調整し、ゲイン調整処理ルーチンを終了する。
【0056】
以上説明したように、第1の実施の形態に係るR波間隔計測システムによれば、R波検出装置において、測定されたR波の検出間隔に基づいてゲインを調整することにより、心電信号を記録することなく、簡易な構成で、ゲイン調整を行うことができ、R波を精度良く検出することができる。また、年齢差などの個人差に応じて、ゲイン調整を行うことができるため、個人差があっても、R波を精度良く検出することができる。
【0057】
また、R波発生タイングのみ無線送信し、それ以外の期間は、消費電力が比較的大きい送信器への電源供給を停止させるため、装置の省電力化を図ることができる。
【0058】
また、R波検出器とR波間隔計測装置との間でR波を検出したことを示す信号を無線で送受信して、R波間隔計測装置でR波検出間隔を計測することにより、簡易な構成で、R波の検出間隔を精度良く計測することができる。また、R波間隔計測装置において受信した信号の立ち下がりを検出して、R波の検出間隔を計測するため、R波の検出間隔をより精度良く計測することができる。
【0059】
また、R波検出器は、簡易な構成であり、小型化を図ることができるため、低拘束(低ストレス)状態で、被検出者の心電信号のR波を検出することができる。
【0060】
また、R波検出器は、低消費電力であるため、長時間、連続してR波を検出することができる。
【0061】
なお、上記の実施の形態では、オートゲインコントロール部において、増幅器のゲイン調整のみを行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、更に、コンパレータの閾値電圧を調整するようにしてもよい。例えば、R波検出器のコンパレータの閾値電圧を初期値に設定してから、増幅器のゲイン調整を行い、増幅器のゲイン調整後、R波を正常に検出できるように、コンパレータの閾値電圧も更に調整するようにしてもよい。
【0062】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態に係るR波間隔計測システムは、第1の実施の形態と同様の構成となっているため、同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
第2の実施の形態では、複数の電極が、R波検出器と一体となって設けられている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0064】
第2の実施の形態に係るR波間隔計測システムでは、R波検出器12が、被検出者の胸部付近に取り付けられるようになっており、R波検出器12の筐体の取り付け面に、複数の電極16が、一体となって設けられている。
【0065】
また、R波検出器12の筐体には、取り付け方向を表わす矢印マーク(例えば、上下方向を示す矢印マーク)が形成されており、矢印マークに従ってR波検出器12が、被検出者の胸部付近に取り付けられると、複数の電極16が正しい配置で、被検出者の胸部付近に取り付けられるようになっている。
【0066】
なお、第2の実施の形態に係るR波間隔計測システムの他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
このように、複数の電極をR波検出器と一体に設けることにより、体表への電極の取り付けが容易となり、使い易さが向上する。また、複数の電極をR波検出器と一体に設けることにより、電極配置が小さくなるが、ゲイン調整により、正常にR波を検出することができる。
【0068】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態に係るR波間隔計測システムは、第1の実施の形態と同様の構成となっているため、同一符号を付して説明を省略する。
【0069】
第3の実施の形態では、R波間隔計測装置において、計測結果を表示している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0070】
第3の実施の形態に係るR波間隔計測システムでは、R波間隔計測装置14において、例えば液晶ディスプレイで構成される表示部が設けられている。R波間隔計測装置14では、間隔計測部52で計測されたR波間隔の時系列データに基づいて、R波間隔の時系列データを示すグラフを生成し、グラフを示す画面を、表示部にリアルタイムで表示させる。
【0071】
例えば、寝室で寝ている赤ちゃんに、R波検出器12を装着し、R波間隔計測装置14により、心拍数の変化をリアルタイムでモニタする。
【0072】
なお、上記の実施の形態では、計測結果を表示する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、R波間隔計測装置において、異常検出処理を行い、異常検出時には、スピーカからの音やランプの光により、異常検出を報知するようにしてもよい。
【0073】
また、睡眠時無呼吸症の疑いがある患者にR波検出器を取り付け、R波間隔計測装置において、無呼吸状態に対応する心拍異常を検出する処理を行い、寝ている間に当該心拍以上が検出されたら、R波間隔計測装置に接続したスピーカから大音量でアラートを出力するように構成してもよい。これによって、目を覚まさせ、血中酸素飽和度の異常低下を防ぐことができる。また同様に、乳幼児にR波検出器を取り付けて、乳幼児突然死症候群を検出し、アラートを出力するように構成してもよい。
【0074】
また、上記の第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、2分最適法により、ゲイン調整を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他のアルゴリズムにより、測定されたR波の検出間隔が、所定間隔以下となるように、ゲイン調整を行うようにしてもよい。
【0075】
また、R波検出器において、R波検出のしきい値を調整し、電極配置を変更することにより、R波以外の成分を抽出して、無線送信するようにしてもよい。これにより、例えば、P−P波間隔、T−T波間隔、P−R波間隔、R−T波間隔、Q−S波間隔等を計測するようにしてもよい。
【0076】
また、被検出者に取り付けられる電極として、例えば、容量性結合方式(衣服等を介して無接触で心電計測)のセンサを使用してもよい。この場合、マイコンのプログラムフィルタの一部を改変し、機能追加して構成すればよい。オートゲインコントロールにより、R波を精度よく検出することができる。
【0077】
また、R波検出器とR波間隔計測装置とを一体化した一体型装置として構成し、例えば、ホルター心電計のように構成してもよい。この場合、容量性結合方式のセンサを用いることにより、ストレッチャー/ベッド一体型R−R間隔計測装置も実現することができる。
【0078】
また、R波間隔計測装置において、受信器にネットワーク機能を付加し、インターネット上のサーバに、計測されたデータをアップロードするようにしてもよい。例えば、遠隔医療や遠隔監視に適用することができる。例えば、遠隔地に居住する独居老人に心拍異常があったら家族と警備会社に通報するように構成することができる。また、例えばNICUの赤ちゃん20人分のR−R間隔データをサーバで一括集中管理するように構成してもよい。この場合、クラウドコンピューティング技術を利用して、解析処理やデータ保存処理を、サーバで行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 R波間隔計測システム
12 R波検出器
14 R波間隔計測装置
16 電極
18 差動増幅器
22 増幅器
24 マイコン
26 電源部
28 電源制御部
30 送信器
36 オートゲインコントロール部
40 受信器
46 マイコン
48 立ち下がり検出部
52 間隔計測部
54 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出者に取り付けられた複数の電極からの出力に基づいて、心電信号を生成する心電信号生成手段と、
予め設定されたゲインに応じて、前記生成された心電信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段によって増幅された心電信号において、閾値電圧と比較して、R波を検出するR波検出手段と、
前記R波検出手段によってR波が検出されたときに、R波を検出したことを示す信号を無線送信する送信手段と、
前記R波検出手段によるR波の検出間隔を測定し、測定された前記R波の検出間隔に基づいて、前記増幅手段における前記ゲインを調整するゲイン調整手段と、
を含むR波検出装置。
【請求項2】
前記ゲイン調整手段は、前記測定されたR波の検出間隔が、所定間隔以下となる最小のゲインとなるように、前記増幅手段における前記ゲインを調整する請求項1記載のR波検出装置。
【請求項3】
前記R波検出手段によってR波が検出される度に、前記送信手段に電源を供給して電源供給を停止させるように制御する電源制御手段を更に含む請求項1又は2記載のR波検出装置。
【請求項4】
前記ゲイン調整手段は、ゲイン調整指示が入力されたときに、前記R波検出手段によるR波の検出間隔を測定し、前記増幅手段における前記ゲインを調整する請求項1〜請求項3の何れか1項記載のR波検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項記載のR波検出装置と、
前記R波検出装置によって送信された前記信号を無線受信する受信手段、
前記受信手段によって前記信号を受信した間隔を、R波検出間隔として計測する計測手段、及び
前記計測されたR波検出間隔を、記憶手段に記憶させる記憶制御手段を含むR波計測装置と
を含むR波計測システム。
【請求項6】
前記計測手段は、前記信号の立ち下がりを検出することにより、前記信号を受信した間隔を計測する請求項5記載のR波計測システム。
【請求項7】
前記R波計測装置は、前記計測されたR波検出間隔に対して情報処理を行って、処理結果を出力装置に出力させる情報処理手段を更に含む請求項5又は6記載のR波計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−255051(P2011−255051A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133443(P2010−133443)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】