説明

RFIDカード、RFIDカード用リーダ、RFIDシステム

【課題】RFIDカード用リーダのカード挿入部にRFIDカードをその前後あるいは裏表を逆にして挿入してもリーダが当該カードにおける情報を正しく読み取れるようにし、同時にカードの高容量化も実現できる技術を提供する。
【解決手段】アンテナ一体形成型のICチップ(コイルオンチップ、COCチップ)を偶数個使用し、これらのチップをカード面内の中心軸を基準にして対称に配置したRFIDカードとする。これを読み取るためのリーダにおいては、そのカード挿入部にRFIDカードを挿入したときに当該カードにおける偶数個のICチップとそれぞれ対応位置するように、偶数個のアンテナを対称に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信により非接触でICチップの情報を読み取り可能(読み書き可能の場合を含む。以下、同様)とするRFID(Radio Frequency Identification)技術を利用したRFIDカード、RFIDカード用リーダ(RFIDカード用リーダライタを含む)、RFIDシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDカードは、カード基材上に、情報を記録するICチップと、このICチップに接続される無線通信用のアンテナとを設けた構成で、外部との無線通信により前記ICチップにおける情報の読み書きを可能としたものである。
【0003】
この種のカードには、情報を記録する微小なICチップにアンテナコイルを外付けで接続してインレットと呼ばれるモジュールを形成し、このインレットをカード基材上に搭載したもの(例えば特許文献1参照)と、ICチップ上に渦巻き状のアンテナを一体形成し、このアンテナ一体形成型のICチップ(コイルオンチップ(登録商標)と称せられる。例えば特許文献2参照)をカード基材上に搭載したものとがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−228795号公報
【特許文献2】特開2004−281838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インレット型のRFIDカードの場合、微小なICチップの端子とアンテナとの接続は技術的困難を伴なう上に、カード使用時に必要以上の曲げ応力が加わった際に接続点が断線する恐れがあることから、応力負荷の大きいカード中心線上にはICチップを配置することができず、そのカード上の搭載位置は、カード面の中心線上から外れた例えば長手方向の片側に寄った位置というように、ほぼ一意的に決定される。その結果、リーダまたはリーダライタ(本願においては両者を含めて単に「リーダ」という。)のカード挿入部にカードをその一端側から挿入したときとその反対側(他端側)から挿入したとき(場合によっては表向きにして挿入したときと裏向きにして挿入したとき)とでは、リーダ側のアンテナに対するカード側のアンテナの位置関係が異なることとなる。このため、カードには必然的に正しい挿入方向というものが決まってしまい、リーダに対してカードを誤った方向に挿入した場合はカード側の情報を読み取ることができなくなる。また、上記のようなカード上の搭載位置の制限に加えてカード面積の制約もあって、インレット型のRFIDカードではICチップの搭載個数を増やしにくいことから、いわゆるカード容量も自ずと限られていた。
【0006】
カードを正しい向きに挿入させるための手段としては、カードに挿入方向を印字したり、カード自身に切り欠きを設けたりするなど、視認性や触覚性により挿入方向を識別する技術はあるが、挿入前の方向確認に手間を要したり、挿入方向を誤った場合はリーダ側の排出による入れ直しを行なう必要があった。また、誤った挿入状態でリーダとの電気的な接続を行なった場合はカード自身やリーダを破損させる恐れもあり、システムの種類によって様々な問題点があった。
【0007】
なお、アンテナ一体形成型のICチップ、いわゆるコイルオンチップ(COCチップともいう。)は、チップ上にアンテナが一体形成されているため実装面積が外付けコイル方式のインレットと比べるとはるかに小さく、上述した曲げ応力による断線等を考慮する必要も殆どないから、そのカードへの搭載個数を多くすることによってカードの高容量化を図るのは比較的容易である。その場合、上述したカードの挿入方向との関係で、複数のコイルオンチップをカード上にどのように配置するかが問題となる。また、カード上の所定位置に複数のICチップを配置することとした場合に、それらのICチップの情報をどのようにして正しく読み取れるようにするかといった点も問題になる。
【0008】
本発明は、上記のような問題に対処するもので、外部のRFIDカード用リーダのカード挿入部にRFIDカードをその前後あるいは裏表を逆にして挿入してもリーダが当該カードにおける情報を正しく読み取れるようにし、同時にカードの高容量化も実現できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ICチップ表面上に通信用のアンテナが一体形成されたコイルオンチップは、カード内部にアンテナを形成する必要がなく、外部からの物理的な圧力にも強いため、応力負荷が大きいカード中心線(カード面内の中心線)上への配置が可能である。このコイルオンチップの特徴を生かすことで、カード中心線上も含めた位置に複数チップの搭載が可能となる。これにより、RFIDカードを従来技術より大容量化することができ、さらに複数のチップを対称配置してチップの制御順序とカードの挿入方向を関連付けることでカードの挿入方向を不問とすることができる。本発明は、このような観点から、下記のように構成したものである。
【0010】
すなわち、本発明に係るカードは、矩形状のカード基材と、情報を記録するICチップと、このICチップに接続される無線通信用のアンテナとを具備し、外部の所定のリーダのカード挿入部にカード長手方向に挿入された状態で、当該リーダとの無線通信により前記ICチップにおける情報が読み取り可能とされたRFIDカードであって、前記ICチップ上に前記アンテナが一体形成されており、このアンテナ一体形成型のICチップが前記カード基材上に複数個設けられていて、カード面内の短手方向に延びる中心軸(短手方向中心軸)を基準にして軸対称となる位置で、かつ、カード挿入方向となるカード面内の長手方向に延びる中心軸(長手方向中心軸)を基準にして軸対称となる位置および/または当該長手方向中心軸上に、対称配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係るリーダは、前記RFIDカードが挿入されるカード挿入部を有し、このカード挿入部に挿入されたRFIDカードにおけるICチップに対して無線通信によりその情報を読み取るRFIDカード用リーダであって、前記カード挿入部にRFIDカードを挿入したときに当該カードにおける複数のICチップとそれぞれ対応位置するように配置されて当該対応位置するICチップとの間で情報の送受信が可能とされた複数のアンテナと、これらの複数のアンテナを介して前記複数のICチップにおける情報の読み取りを行なう制御部とを有することを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明に係るシステムは、前記RFIDカードと前記RFIDカード用リーダとを具備したRFIDシステムであって、前記RFIDカードが前記RFIDカード用リーダのカード挿入部に挿入されたときに、当該リーダにおける制御部が、前記複数のアンテナのうちの特定のアンテナを介してこれに対応位置するICチップ(コイルオンチップ)のチップコードを読み取り、その読み取ったチップコードからRFIDカードの挿入状態を判別して、その判別結果に基づいて予め定められた順番で前記複数のICチップにおける情報を順次読み取ることを特徴とするものである。
【0013】
この場合において、RFIDカード用リーダにおける複数のアンテナと制御部との間には、当該制御部からの信号に基づいて当該複数のアンテナと制御部との接続状態を切り換えるアンテナ切換回路を設けることができる。そして、RFIDカードがRFIDカード用リーダのカード挿入部に挿入されたときに、当該リーダにおける制御部が、前記複数のアンテナのうちの特定のアンテナを介してこれに対応位置するICチップのチップコードを読み取り、その読み取ったチップコードからRFIDカードの挿入状態を判別して、その判別結果に基づきアンテナ切換回路を介して予め定められた順番で前記複数のアンテナとの接続状態を切り換えて前記複数のICチップにおける情報を順次読み取る構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るRFIDカードによれば、矩形状のカード基材上に設けられたアンテナ一体形成型の複数のICチップが、カード面内の短手方向に延びる中心軸(短手方向中心軸)を基準にして軸対称となる位置で、かつ、カード挿入方向となるカード面内の長手方向に延びる中心軸(長手方向中心軸)を基準にして軸対称となる位置および/または当該長手方向中心軸上に対称配置されているので、このカードをその前後あるいは裏表を逆にして外部のRFIDカード用リーダのカード挿入部に挿入しても、リーダ側からみる限り、複数のICチップひいてはアンテナのそれぞれの位置が入れ替わるだけで、各チップと一体のアンテナの存在する位置は変化しないこととなる。したがって、リーダのカード挿入部に挿入したときにカード側のアンテナが所定位置にない場合に生じるような読み取り不良が起こらず、当該リーダとの無線通信によりカード上の各ICチップにおける情報が読み取り可能となる。
【0015】
また、本発明に係るRFIDカード用リーダによれば、そのカード挿入部に上記のようにしてRFIDカードを挿入したときに当該リーダに設けられた複数のアンテナがRFIDカードにおける複数のICチップとそれぞれ対応位置して当該カードにおける各ICチップとの間で情報の送受信が可能となるので、これらの複数のアンテナを介して当該リーダにおける制御部が前記複数のICチップにおける情報を読み取ることができる。
【0016】
さらに、本発明に係るRFIDシステムによれば、前記RFIDカードが前記RFIDカード用リーダのカード挿入部に挿入されたときに、当該リーダにおける制御部が、前記複数のアンテナのうちの特定のアンテナを介してこれに対応位置するICチップ(コイルオンチップ)のチップコードを読み取り、その読み取ったチップコードからRFIDカードの挿入状態を判別して、その判別結果に基づいて予め定められた順番で前記複数のICチップにおける情報を順次読み取るので、RFIDカードをその前後あるいは裏表を逆にしてRFIDカード用リーダのカード挿入部に挿入しても、いずれの場合も複数のICチップにおける情報を所定の順番で正しく読み取ることが可能となる。
【0017】
以上のように、本発明によれば、RFIDカードをその前後あるいは裏表を逆にしてRFIDカード用リーダのカード挿入部に挿入しても、いずれの場合も複数のICチップにおける情報を所定の順番で正しく読み取ることできるので、RFIDシステムを使用するユーザがカードの挿入方向を意識する必要がなくなる。同時にシステム設計は挿入方向の間違いによるカード排出やエラー表明を行なう処理が不要となり、誤挿入によるカード破損やリーダ破損の心配も不要となる。したがって、例えば視覚障害者が使用するようなシステムにおいても、視覚障害者が健常者の助力を必要とせずに安心して当該システムを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用されるRFIDカードの一例を示す平面図である。
【図2】本発明で用いられるアンテナ一体形成型のICチップ(コイルオンチップ、COCチップ)を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の実施例1に係るRFIDシステムを説明するために使用した説明図である。
【図4】本発明の実施例1に係るRFIDシステムにおける制御動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例1に係るRFIDシステムにおいて、RFIDカード用リーダのカード挿入部にRFIDカードを挿入したときに、当該リーダの制御部(マイコン)が各アンテナを所定の順番でアクセスすることにより形成されるメモリ空間を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係るRFIDシステムを説明するために使用した説明図である。
【図7】本発明の実施例2に係るRFIDシステムにおける制御動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例2に係るRFIDシステムにおいて、RFIDカード用リーダのカード挿入部にRFIDカードを挿入したときに、当該リーダの制御部(マイコン)が各アンテナを所定の順番でアクセスすることにより形成されるメモリ空間を示す図である。
【図9】本発明の実施例3に係るRFIDシステムを説明するために使用した説明図である。
【図10】本発明の実施例3に係るRFIDシステムにおける制御動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例3に係るRFIDシステムにおいて、RFIDカード用リーダのカード挿入部にRFIDカードを挿入したときに、当該リーダの制御部(マイコン)が各アンテナを所定の順番でアクセスすることにより形成されるメモリ空間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に本発明が適用されるRFIDカードの一例を示す。このRFIDカード1は、プラスチック等からなる矩形状のカード基材2上に偶数個(図示例では6個)のICチップCを設けた構成である。各ICチップCは、図2に示すようにチップ表面に渦巻き状のアンテナコイル3を一体形成したアンテナ一体形成型のICチップ(コイルオンチップ、COCチップ)であって、これらのチップCには、自他を識別するためのチップコードなど、所定の情報が予め記録されている。なお、図2において符号3aおよび3bで示した部分はアンテナ3とその下に配置されているチップ本体との接続点である。
【0020】
そして、このRFIDカード1においては、上記偶数個のアンテナ一体形成型のICチップCが、カード面内の中心軸を基準にして対称となる所定の位置P1〜P6にそれぞれ配置されている。すなわち、図1に示したように、カード面内の短手方向に延びる中心軸(短手方向中心軸)Xを基準にして軸対称となる位置P1〜P6で、かつ、カード挿入方向となるカード面内の長手方向に延びる中心軸(長手方向中心軸)Yを基準にして軸対称となる位置P1とP3、P4とP6、および当該長手方向中心軸Y上の2つの位置P2とP5に、それぞれ配置されている。
【0021】
なお、図1および図2に示したRFIDカードおよびICチップの実際のサイズは下記の通りであるが、これらはあくまでも一例に過ぎず、本発明がこれらのものに限定されないことは言うまでもない。
・RFIDカードの短手方向の寸法Ll=54mm、
・同カードの長手方向の寸法L2=85mm、
・同カードの長手方向において最も外側の対称位置に配置されるICチップからこれに対応する長手方向のカード端までの距離L3=17.5mm、
・同カードの短手方向において最も外側の対称位置に配置されるICチップからこれに対応する短手方向のカード端までの距離L4=11mm
【0022】
次に、上記のようなRFIDカードを使用したシステムの例として、RFIDカードにおけるICチップの搭載個数が6個である場合(実施例1)と、4個である場合(実施例2)と、2個である場合(実施例3)のそれぞれについて具体的に説明する。なお、ICチップの搭載個数が8個以上の場合については説明を省略するが、原理的には以下の方法に準じた方法でICチップにおける情報を読み取ることが可能である。
【実施例1】
【0023】
(ICチップが6個の場合) 図3に示すように、本例では、アンテナ一体形成型のICチップを6個搭載した上述の図1に示したものと同様のRFIDカード1と、このカード1上の各ICチップC1〜C6における情報を読み取るためのRFIDカード用リーダ10とを使用する。
【0024】
この場合の6個のICチップC1〜C6については、図1に示したRFIDカードにおける6つの対称位置P1〜P6、すなわちカード面内の短手方向中心軸Xを基準にして軸対称となる位置で、かつカード面内の長手方向中心軸Yを基準にして軸対称となる位置および当該長手方向中心軸Y上の2つの位置に、それぞれ配置する。図3に、このカードをそのカード面の上方側から見た場合において、その長手方向の向きが正方向(同図において矢印で示したカード挿入方向を正方向とする)であるときと逆方向であるとき、およびカードの表と裏とを逆にしたときの各ICチップC1〜C6の位置をそれぞれ示す。
【0025】
一方、本例で使用されるRFIDカード用リーダ10は、RFIDカード1が挿入されるカード挿入部11と、RFIDカード1における6個のICチップC1〜C6との間で情報の送受信が可能とされた6個のアンテナA1〜A6と、これらの6個のアンテナA1〜A6を介して前記6個のICチップC1〜C6における情報を読み取る制御部(後述するマイコン12)と、この制御部と6個のアンテナA1〜A6との間に配置されて制御部からの信号により当該制御部と6個のアンテナA1〜A6との接続状態を切り換えるアンテナ切換回路13とを有する。
【0026】
上記6個のアンテナA1〜A6は、カード挿入部11にRFIDカード1を挿入したときに当該カードにおける6個のICチップC1〜C6とそれぞれ対応位置する(ここでは物理的に重なった状態となる)ように対称に配置されている。そして、カード挿入部11にRFIDカード1を挿入した状態で、互いに対応位置することとなったカード1側の各ICチップC1〜C6におけるアンテナ3(図2参照)とリーダ側のアンテナA1〜A6との間で、情報の送受信が可能とされている。
【0027】
上記制御部は、CPUやメモリを備えたマイクロコンピュータ(マイコン)12によって構成されている(以下の実施例の場合も同様)。そして、RFIDカード1がカード挿入部11に挿入されたときに、その挿入方向の如何にかかわらず、リーダ側の6個のアンテナA1〜A6のうちの特定のアンテナ(本例ではアンテナA1)を介してこれに対応位置するICチップのチップコードを読み取り、その読み取ったチップコードからRFIDカード1の挿入状態を判別して、その判別結果に基づきアンテナ切換回路13を介して予め定められた順番で6個のアンテナA1〜A6との接続状態を切り換えて各ICチップC1〜C6における情報を順次読み取り得るようになっている。次に、この読み取り動作について説明する。なお、以下の説明ではRFIDカード上のICチップを単にチップともいう。
【0028】
本例の場合、ユーザの使用上で起こり得るRFIDカード1の挿入状態としては、〔正方向・おもて〕、〔正方向・うら〕、〔逆方向・おもて〕、〔逆方向・うら〕の4つの状態が存在する。個々の挿入状態においてリーダ側のアンテナA1〜A6とカード側のチップ(言い換えればアンテナ3)が物理的に重なった状態になる組み合わせは、上記した図3および下記の表1に示した通りである。
【0029】
【表1】

【0030】
図4に示すように、まずアンテナA1に重なったチップのコードを読み取り、その読み取ったコードからカード1の挿入状態を判別する。そして、この判別結果に基づき、マイコン12がチップC1→C2→C3→C4→C5→C6の順番でアクセスできるようにアンテナ切換回路13を介してアンテナA1〜A6との接続状態を切り換えて、これらに所定の順番(図4参照)でアクセスしてメモリ空間を形成する。具体的には例えば、アンテナA1によって読み取られたチップコードがチップC1のものである場合には、図4に示すようにマイコン10はカード挿入方向を〔正方向・おもて〕であると判断し、アンテナA1→A2→A3→A4→A5→A6の順にアンテナを切り換えてチップC1→C2→C3→C4→C5→C6の順番でこれらの情報を読み取ったうえでメモリ空間に格納する。このようにすることで、カードの挿入状態が何れの場合であってもユーザから見えるカード容量は常にチップC1〜C6の合算値で、かつチップC1〜C6が連続でつながった図5に示すようなメモリ空間M1として扱えるようになる。
【実施例2】
【0031】
(ICチップが4個の場合) 図6に示すように、本例では、アンテナ一体形成型のICチップを4個搭載したRFIDカード21と、このカード21上の各ICチップC1、C3、C4、C6における情報を読み取るためのRFIDカード用リーダ30とを使用する。
【0032】
この場合の4個のICチップC1、C3、C4、C6については、カード面内の短手方向中心軸Xを基準にして軸対称となる位置で、かつカード面内の長手方向中心軸Yを基準にして軸対称となる位置に、それぞれ配置する。
【0033】
本例で使用されるRFIDカード用リーダ30は、RFIDカード21が挿入されるカード挿入部31と、RFIDカード21における4個のICチップC1、C3、C4、C6との間で情報の送受信が可能とされた4個のアンテナA1、A3、A4、A6と、これらの4個のアンテナA1、A3、A4、A6を介して前記4個のICチップC1、C3、C4、C6における情報を読み取るマイコン(制御部)32と、このマイコン32と4個のアンテナA1、A3、A4、A6との間に配置されてマイコン32からの信号により当該マイコン32と4個のアンテナA1、A3、A4、A6との接続状態を切り換えるアンテナ切換回路33とを有する。
【0034】
このうちの4個のアンテナA1、A3、A4、A6は、カード挿入部31にRFIDカード21を挿入したときに当該カードにおける4個のICチップC1、C3、C4、C6とそれぞれ対応位置する(実施例1の場合と同様、物理的に重なった状態となる)ように対称に配置されている。そして、カード挿入部31にRFIDカード21を挿入した状態で、互いに対応位置することとなったカード側の各ICチップC1、C3、C4、C6におけるアンテナ(図示せず)とリーダ側のアンテナA1、A3、A4、A6との間で、情報の送受信が可能とされている。
【0035】
また、本例におけるマイコン32は、RFIDカード21がカード挿入部31に挿入されたときに、その挿入方向の如何にかかわらず、リーダ側の4個のアンテナA1、A3、A4、A6のうちの特定のアンテナ(実施例1と同様、アンテナA1)を介してこれに対応位置するICチップのチップコードを読み取り、その読み取ったチップコードからRFIDカード21の挿入状態を判別して、その判別結果に基づきアンテナ切換回路33を介して予め定められた順番で4個のアンテナA1、A3、A4、A6との接続状態を切り換えて各ICチップC1、C3、C4、C6における情報を順次読み取り得るようになっている。この場合の読み取り動作は下記の通りである。
【0036】
ユーザの使用上で起こり得るRFIDカード21の挿入状態としては、実施例1の場合と同様に〔正方向・おもて〕、〔正方向・うら〕、〔逆方向・おもて〕、〔逆方向・うら〕の4つの状態が存在する(図6参照)。個々の挿入状態においてアンテナA1、A3、A4、A6とチップC1、C3、C4、C6とが物理的に重なった状態になる組み合わせは表3に示したようになる。
【0037】
【表2】

【0038】
図7に示すように、本例の場合もまず第一にアンテナA1に重なったチップのコードを読み取り、カードの挿入状態を判別する。そして、この判別結果に基づき、マイコン32が本例ではC1、C3、C4、C6の順番でアクセスできるようにアンテナ切換回路32によりアンテナA1、A3、A4、A6との接続状態を切り換えて、これらに所定の順番(図7参照)でアクセスしてメモリ空間を形成する。具体的には例えば、アンテナA1によって読み取られたチップコードがチップC4のものである場合には、マイコン32は図7に示すようにカード挿入方向を〔逆方向・うら〕であると判断し、アンテナA4→A6→A1→A3の順にアンテナを切り換えてチップC1→C3→C4→C6の順番でこれらの情報を読み取ったうえでメモリ空間に格納する。このようにすることで、カードの挿入状態が何れの場合であってもユーザから見えるカード容量は常にチップC1、C3、C4、C6の合算値で、かつチップC1、C3、C4、C6が連続でつながった図8に示すようなメモリ空間M2として扱えるようになる。
【実施例3】
【0039】
(ICチップが2個の場合) 図9に示すように、本例では、アンテナ一体形成型のICチップを2個搭載したRFIDカード41と、このカード41上の各ICチップC2、C5における情報を読み取るためのRFIDカード用リーダ50とを使用する。
【0040】
この場合の2個のICチップC2、C5については、カード面内の短手方向中心軸Xを基準にして軸対称となる位置で、かつカード面内の長手方向中心軸Y上の2つの位置に、対称に配置する。
【0041】
本例で使用されるRFIDカード用リーダ50は、RFIDカード41が挿入されるカード挿入部51と、RFIDカード41における2個のICチップC2、C5との間で情報の送受信が可能とされた2個のアンテナA2、A5と、これらの2個のアンテナA2、A5を介して前記2個のICチップC2、C5における情報を読み取るマイコン(制御部)52と、このマイコン52と2個のアンテナA2、A5との間に配置されてマイコン52からの信号により当該マイコン52と2個のアンテナA2、A5との接続状態を切り換えるアンテナ切換回路53とを有する。
【0042】
このうちの2個のアンテナA2、A5は、カード挿入部51にRFIDカード41を挿入したときに当該カード41における2個のICチップC2、C5とそれぞれ対応位置する(実施例1、2の場合と同様、物理的に重なった状態となる)ように対称に配置されている。そして、カード挿入部51にRFIDカード41を挿入した状態で、互いに対応位置することとなったカード側の各ICチップC2、C5におけるアンテナ(図示せず)とリーダ側50のアンテナA2、A5との間で、情報の送受信が可能とされている。
【0043】
また、本例におけるマイコン52は、RFIDカード41がカード挿入部51に挿入されたときに、その挿入方向の如何にかかわらず、リーダ50側の2個のアンテナA2、A5のうちの特定のアンテナ(本例ではアンテナA2)を介してこれに対応位置するICチップのチップコードを読み取り、その読み取ったチップコードからRFIDカード41の挿入状態を判別して、その判別結果に基づきアンテナ切換回路53を介して予め定められた順番で2個のアンテナA2、A5との接続状態を切り換えて各ICチップC2、C5における情報を順次読み取り得るようになっている。この場合の読み取り動作は下記の通りである。
【0044】
ユーザの使用上で起こり得るカードの挿入状態としては、実施例1、2の場合と同様に〔正方向・おもて〕、〔正方向・うら〕、〔逆方向・おもて〕、〔逆方向・うら〕の4つの状態が存在する(図9参照)。個々の挿入状態においてアンテナA2、A5とチップC2、C5が物理的に重なった状態になる組み合わせは表3に示したようになる。
【0045】
【表3】

【0046】
図10に示すように、まずアンテナA2に重なったチップのコードを読み取り、カード41の挿入状態を判別する。そして、この判別結果に基づき、マイコン52が本例ではC2、C5の順番でアクセスできるようにアンテナ切換回路53によりアンテナA2、A5との接続状態を切り換えて、これらに所定の順番(図10参照)でアクセスしてメモリ空間を形成する。具体的には例えば、アンテナA2によって読み取られたチップコードがチップC2のものである場合には、マイコン52は図10に示すようにカード挿入方向を〔正方向・おもて〕であると判断し、アンテナA2→A5の順にアンテナを切り換えてチップC2→C5の順番でこれらの情報を読み取ったうえでメモリ空間に格納する。このようにすることで、カードの挿入状態が何れの場合であってもユーザから見えるカード容量は常にチップC2、C5の合算値で、かつチップC2、C5が連続でつながった図11に示すようなメモリ空間M3として扱えるようになる。
【符号の説明】
【0047】
1、21、41 RFIDカード
2 カード基材
3 ICチップにおけるアンテナ
10、30、50 RFIDカード用リーダ
11、31、51 カード挿入部
12、31、52 制御部(マイコン)
13、33、53 アンテナ切換回路
A1、A2、A3、A4、A5、A6 RFIDカード用リーダにおけるアンテナ
C、C1、C2、C3、C4、C5、C6 アンテナ一体形成型のICチップ
X 短手方向中心軸
Y 長手方向中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のカード基材と、情報を記録するICチップと、このICチップに接続される無線通信用のアンテナとを具備し、外部の所定のリーダのカード挿入部にカード長手方向に挿入された状態で、当該リーダとの無線通信により前記ICチップにおける情報が読み取り可能とされたRFIDカードであって、
前記ICチップ上に前記アンテナが一体形成されており、
このアンテナ一体形成型のICチップが前記カード基材上に複数個設けられていて、カード面内の短手方向に延びる中心軸(短手方向中心軸)を基準にして軸対象となる位置で、かつ、カード挿入方向となるカード面内の長手方向に延びる中心軸(長手方向中心軸)を基準にして軸対称となる位置および/または当該長手方向中心軸上に、対称配置されていることを特徴とするRFIDカード。
【請求項2】
請求項1に記載したRFIDカードが挿入されるカード挿入部を有し、このカード挿入部に挿入されたRFIDカードにおけるICチップに対して無線通信によりその情報を読み取るRFIDカード用リーダであって、
前記カード挿入部にRFIDカードを挿入したときに当該カードにおける複数のICチップとそれぞれ対応位置するように配置されて当該対応位置するICチップとの間で情報の送受信が可能とされた複数のアンテナと、
これらの複数のアンテナを介して前記複数のICチップにおける情報の読み取りを行なう制御部とを有することを特徴とするRFIDカード用リーダ。
【請求項3】
請求項1に記載したRFIDカードと、請求項2に記載したRFIDカード用リーダとを具備したRFIDシステムであって、
前記RFIDカードが前記RFIDカード用リーダのカード挿入部に挿入されたときに、当該リーダにおける制御部が、前記複数のアンテナのうちの特定のアンテナを介してこれに対応位置する前記ICチップのチップコードを読み取り、その読み取ったチップコードからRFIDカードの挿入状態を判別して、その判別結果に基づいて予め定められた順番で前記複数のICチップにおける情報を順次読み取ることを特徴とするRFIDシステム。
【請求項4】
請求項1に記載したRFIDカードと、請求項2に記載したRFIDカード用リーダとを具備したRFIDシステムであって、
前記RFIDカード用リーダにおける複数のアンテナと制御部との間には、当該制御部からの信号に基づいて当該複数のアンテナと制御部との接続状態を切り換えるアンテナ切換回路が設けられており、
前記RFIDカードが前記RFIDカード用リーダのカード挿入部に挿入されたときに、当該リーダにおける制御部が、前記複数のアンテナのうちの特定のアンテナを介してこれに対応位置する前記ICチップのチップコードを読み取り、その読み取ったチップコードからRFIDカードの挿入状態を判別して、その判別結果に基づきアンテナ切換回路を介して予め定められた順番で前記複数のアンテナとの接続状態を切り換えて前記複数のICチップにおける情報を順次読み取ることを特徴とするRFIDシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−225025(P2010−225025A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73444(P2009−73444)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(591009093)マクセル精器株式会社 (30)
【Fターム(参考)】