説明

RFIDシステム診断装置および診断方法

【課題】RFIDシステム全体の自動診断を実現すると共に、更に送信/受信電力レベルの精度の高い診断を可能とするRFIDシステム診断装置および診断方法を提供する。
【解決手段】システム診断装置10は、タグ動作電力を測定するためのコマンドの送信をRW20に指示する。タグ動作電力を測定するためのコマンドの送信を指示されたRW20内の送受信制御部25は、同軸ケーブル30に接続されたアンテナ40から所定の強さの電波を放射してタグ動作電力を測定する。基準タグ45がこの電波を受信できた場合には、応答をアンテナ40、RW20の送受信制御部25を経てシステム診断装置10に送信する。システム診断装置10の応答確認・判定部は、これを受信・判定し、コマンドで指示したタグ動作電力を基準タグ45が最小の電力で受信したことを確認して記録手段(図示せず)に診断電力値として記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現地に設置した後のRFID(Radio Frequency Identification )システム全体(RW(Reader/Writer:以降、単に RW と記す)、同軸ケーブル、及びアンテナ)の正常/異常を診断するRFIDシステム診断装置および診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、RFIDシステムの動作確認としては、タグの読取り距離、読取り内容の確認等があるが、確認のポイントは、RWから同軸ケーブルとアンテナを経由して送信される送信電力の妥当性と受信機能の妥当性の確認である。
【0003】
そして、この送信電力の妥当性確認、および、受信機能の妥当性を確認するには、当然アンテナ及び同軸ケーブルを含めた試験/診断が必要であるが、従来システムではRW単体における内部折返し等の自動試験/診断機能を持つものがあるものの、同軸ケーブルさらにアンテナ迄を含めた自動試験/診断機能を持ったものはなかった。
【0004】
このため従来では、実際に運用で使用しているシステムを使って、人手により、タグを翳して読み取りができるかを確認していた。
図10は従来のRFIDシステムの動作確認を説明するための概念図である。図10において従来のRFIDシステムは、上位装置511、RW512、同軸ケーブル513およびアンテナ514で構成し、あらかじ用意されたテストタグ515を移動させてタグの読取り距離、タグ内に記録された情報が読み取れるかどうかを試験する。これをさらに説明すると、タグの読取り距離、タグ内に記録された情報が読み取れるかどうかを試験する場合には、上位装置511を当該試験のために手動で操作して、アンテナ514からどれくらい離れたテストタグ515が読み取れるかを試験する。その場合、上位装置511側で操作する人員とは異なる人員がアンテナ514とテストタグ515との距離を隔てながら試験を実施し、タグ515内に記録された情報、例えばIDコードなど、が読み取れるかを確認する。そして移動方向を変えながら可能な範囲で調整、および操作して試験を実施する。なお上記において上位装置511は、通常、パソコンまたはサーバでもって構成され、RW 512の上位にあって、RW 512に対して指令を与えてタグから情報を読み取り又はタグに情報を記憶させるもので当業者には周知のものである。またRW 512はリーダライタ(Reader/Writer)で、RW 512とアンテナ514とが同軸ケーブル513で接続されるもので、これも当業者に周知である。なお上位装置511とRW512との間の接続線については敢えて図示を省略している。
【0005】
以上、従来のRFIDシステムにおける試験/診断には、以下のような問題があった。
(1)事前試験/診断を実施しない場合(事前確認せず運用開始)
(1−1)タグの読み取り率が若干悪化した程度では気が付かない場合が多く、タグの読み取り抜け等による被害が拡大してしまう。
(1−2)気が付いても故障個所の判定に手間取る。例えば、原因がシステム、又は環境要因にあるのか、更には読み取り対象に問題があるのか直ぐには判定できない。
【0006】
(2)事前試験/診断を実施する場合(従来の運用システムを使用)
(2−1)マニュアル試験であることから作業が煩わしい。例えば、試験/診断を実施するために、通常、数人による応答確認作業が必要となってしまう。
(2−2)確認に使用するテスト用タグの暫定登録・認識が必要であり、また周辺タグの誤読み除去などの作業も発生して作業が複雑化してしまう。
【0007】
(2−3)試験で検出できる故障内容について、下記のとおり精度が低かった。すなわち、
システムの故障モードとしては、RW故障の他、同軸ケーブル又はアンテナの特性変動、劣化等により、電力が弱くなる等のケースが多いと考えられるが、これらは厳密な試験を行わないと検出することが不可能であった。
【0008】
例えば、RW出力を最大として、タグをアンテナ近くに配置した試験では、少々の電力劣化故障ではこれを検出するのが不可能であった。
逆にRWを最大電力、タグをアンテナ最遠端に配置した試験は有効ではあるが、電波が強い状態であることから、電波干渉(反射等)、誤読み(関係無いタグも読む)などの問題を招いてしまい試験精度を欠いていた。
【0009】
そのような状況下にあって例えば下記特許文献1に開示された通信装置では、アンテナ上にアンテナ検査用ICタグを具備し、リーダライタからアンテナ検査用ICタグに対して受付けコマンドを送信し、アンテナ検査用ICタグが該受付けコマンドを受信したら当該アンテナ検査用ICタグのIDコードをリーダライタに送信し、リーダライタがアンテナ検査用ICタグのIDコードを受信した場合にアンテナは正常であると判断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−42452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に示された通信装置にあっては、アンテナ上に検査用ICタグを具備させ、リーダライタからアンテナ上に設けられた検査用ICタグに対して受付けコマンドを送信し、検査用ICタグが当該受付けコマンドを受信して当該検査用ICタグのIDコードをリーダライタに返信できずにリーダライタが当該IDコードを読み取れなかった場合にはアンテナが異常であると判断するため、RWの送受信部及びケーブルを含むアンテナまでのRFIDシステム系列全体における異常がどこで発生しているか、また電力劣化故障が起きている場合にその電力劣化故障を正確に診断することができないという課題があった。
【0012】
本発明は、上記した課題を解決するために、RFIDシステム全体の自動診断を実現すると共に、更に送信/受信電力レベルの精度の高い診断を可能とするRFIDシステム診断装置および診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、RFIDシステム全体の自動診断を実現すると共に、更に送信/受信電力レベルの精度の高い診断を可能とするもので、以下に本発明の態様を列挙する。
本発明の一態様は、一定の読み取り電力で応答する基準タグをアンテナに内蔵または、該アンテナの外部に近接配置したRFIDシステムの診断装置であって、該診断装置は、
前記基準タグに対しデータの送受信を行うリーダライタのアンテナポートに接続されたアンテナに内蔵または、該アンテナの外部に近接配置された前記基準タグの動作電力を測定するタグ動作電力測定手段と、
前記基準タグへの前記リーダライタ内の送受信部及びアンテナポートを含むケーブルまでの系列全体を診断する診断手段と、を備え、
前記タグ動作電力測定手段は、
前記タグ動作電力を測定するためのコマンドを発行するタグ動作電力測定部と、
該タグ動作電力測定部の指示で前記リーダライタがタグ読み取り電力を最小値から段階的に増加させながら、その都度前記基準タグからの応答確認を行い、前記基準タグからの応答を確認できた時点の電力値を前記基準タグの診断電力値としてタグ識別情報と共に管理テーブルに記録する診断電力値記録部を含み、
前記診断手段は、
前記診断電力値記録部により前記管理テーブルに記録された前記診断電力値を使用して前記基準タグに対する読み取りを行うコマンドを発行する読取コマンド発行部と、
前記読取コマンド発行部より発行される前記読み取りコマンドに対する前記基準タグからの応答及び前記タグ識別情報を確認する診断応答確認部を含む、ことを特徴とする。
【0014】
また本発明の別の態様は、前記タグ識別情報とは異なる第2の基準タグを前記アンテナ内または、該アンテナの外部に、予め検証された利得が悪化する角度又は位置に実装し、該第2の基準タグに対してタグ動作電力の測定を行うと共に前記第2の基準タグからの応答を確認できた時点の電力値を診断電力値として記録を行う第2のタグ動作電力測定手段と、
前記タグ動作電力測定手段による前記基準タグに対する前記最小の電力値に基づく診断に続き、前記第2のタグ動作電力測定手段により前記第2の基準タグに対して記録された前記診断電力値による診断を行う第2の診断手段と、をさらに備え、
該第2の診断手段によって前記リーダライタからの電力値を増幅させたモードでも診断することを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の別の態様は、前記第2の基準タグは、利得の低い又は動作電力の大きいタグであることを特徴とする。
また本発明の別の一態様は、一定の読み取り電力で応答する基準タグをアンテナに内蔵または、該アンテナの外部に近接配置したRFIDシステムの診断方法において、
前記基準タグに対しデータの送受信を行うリーダライタのアンテナポートに接続されたアンテナに内蔵または、該アンテナの外部に近接配置された前記基準タグの動作電力を測定する工程は、
前記タグ動作電力を測定するコマンドを発行する工程と、
該タグ動作電力測定部の指示で該リーダライタがタグ読み取り電力を最小値から段階的に増加させながら、その都度前記基準タグからの応答確認を行い、前記基準タグからの応答を確認できた時点の電力値を当該アンテナポートに接続されたアンテナに内蔵または外部に近接配置された前記基準タグの診断電力値としてタグ識別情報と共に管理テーブルに記録する工程と、を含み、
前記タグ動作電力を測定する工程の終了後であって運用時に実施する、前記アンテナ動作に係る前記基準タグへの前記リーダライタ内の送受信部及びアンテナポートを含むケーブルまでの系列全体を診断する診断工程は、
前記システム管理制御部からの診断指示に従い、前記管理テーブルに記録された診断電力値を使用して診断処理部から前記基準タグに対する読み取りを行うコマンドを発行する工程と、
発行された前記読み取りコマンドに対する前記基準タグからの応答及び前記タグ識別情報を確認する工程と、を含み、
前記診断工程を実行することで、当該アンテナ動作に係る前記基準タグへの前記リーダライタ内の送受信部及びアンテナポートを含むケーブルまでの系列全体について、予め測定された最小の動作電力値による自動診断を行うことを特徴とする。
【0016】
また本発明の別の態様は、前記アンテナポートが前記リーダライタに複数存在する場合は、前記動作電力測定工程と前記診断工程を前記アンテナポート系列毎に繰り返し行う工程をさらに含み、前記アンテナ動作に係る前記基準タグへの前記リーダライタ内の送受信部及びアンテナポートを含むケーブルまでの系列全体の診断を全アンテナについて行うことを特徴とする。
【0017】
また本発明の別の態様は、前記タグ識別情報とは異なる第2の基準タグを前記アンテナ内または、該アンテナの外部に、予め検証された利得が悪化する角度又は位置に実装し、該第2の基準タグに対してタグ動作電力の測定を行うと共に前記第2の基準タグからの応答を確認できた時点の電力値を診断電力値として記録する工程と、
前記基準タグに対する前記最小の電力値に基づく診断に続き、前記第2の基準タグに対して記録された前記診断電力値による診断を行う工程と、を含み、
前記第2の基準タグに対する診断を行うことで前記リーダライタからの電力値を増幅させたモードでも診断することを特徴とする。
【0018】
さらに本発明の別の態様は、前記第2の基準タグは、利得の低い又は動作電力の大きいタグであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、現地へのシステムを設置時や、その後の保守時、通常の運用開始前などでの自動診断テストが容易に実施可能であるため、人手による検査用タグの翳し等が不要になる。
【0020】
また本発明によれば、各システム(例えば、各RWの各ポート系列)毎に事前に測定した厳密な電力値での動作確認が可能である。すなわち、
(イ)RWの送受信部およびアンテナケーブル、アンテナの全系を含めたその系列固有の電力値にて診断するため、故障初期状態で電力が若干低下する様な中間故障状態等を含む精度の高い診断が可能となる。
(ロ)タグ最小動作電力での試験判定のため、周辺タグの誤認識が無い。
(ハ)タグ最小動作電力の他、大きめな電力での試験も可能となり電力増幅機能の診断も可能となる。
(ニ)接続構成の誤り(現地調整時の同軸ケーブルに対し、長い、短い、種類が異なる等)の検出も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式の構成概要を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第1実施例の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第1実施例における基準タグの動作電力測定の手順を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第1実施例における診断の手順を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第2実施例の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第2実施例における基準タグの動作電力測定の手順を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第2実施例における診断の手順を説明する図である。
【図8】本発明RFIDシステム診断方式の第2実施例における2番目の基準タグの第1構成例を示す図である。
【図9】本発明RFIDシステム診断方式の第2実施例における2番目の基準タグの第2構成例を示す図である。
【図10】従来のRFIDシステムの動作確認を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式の構成概要を説明するための図である。図1において本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式は、システム診断装置10をキーにして実施される。まずタグ動作電力を測定するためのコマンドをRW20に指示する。タグ動作電力を測定するためのコマンドの送信を指示されたRW20内の送受信制御部25は、同軸ケーブル30に接続されたアンテナ40から所定の強さの電波を放射してタグ動作電力を測定する。基準タグ45がこの電波を受信できた場合には、その応答をアンテナ40に送信し、さらにこの応答をアンテナ40が受信したら、受信した応答をRW20の送受信制御部25に渡す。RW20の送受信制御部25は、渡された応答をシステム診断装置10に送信する。システム診断装置10の応答確認・判定部は、これを受信・判定し、システム診断装置10がコマンドで指示したタグ動作電力を基準タグ45が最小の電力で受信したことを確認してシステム診断装置10の記録手段(図示せず)にタグが動作した最小の電力としての診断電力値を記録する。
【0023】
RW20の送受信制御部25は、基準タグ45が電波を受信できるように、タグ動作電力を段階的に、たとえば0.5dBステップで段階的に上げて電波を送信するようにRW20に指示する。このためシステム診断装置10の応答確認・判定部は、応答が確認できた送信電力を最小の電力で基準タグ45が受信したとしてシステム診断装置10の記録手段(図示せず)にタグが動作したときの診断電力値を記録することができる。このようにしてタグ動作電力を測定するコマンドによる診断電力値の測定を行う。その結果、以降の運用時における診断では、システム診断装置10から診断指示と記録した診断電力値をRW20に与え、RW20は当該診断電力値を使用して基準タグに対して読み取りコマンドを送信し、基準タグからの応答(タグ識別情報を含む)を確認して運用時における当該RWの送受信部、アンテナポートに接続された同軸ケーブルを含むアンテナまでの系列全体について良否を速やかに判定することができる。
【実施例1】
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第1実施例の構成を示す機能ブロック図である。図2に示す第1実施例は、図1に示したのと同様に、システム診断装置100、RW200、異なる長さを有する同軸ケーブル301〜304,321〜324、および、基準タグを搭載するアンテナ1-a〜1-d,2-a〜2-d(401,403,405,407,409,411,413,415)より構成される。そしてシステム診断装置100は、システム管理制御部101およびシステム診断処理部105から構成されている。そのうちシステム診断処理部105は、システム診断装置100の中枢をなすもので、タグ動作電力測定部110、接続アンテナ管理テーブル(以降、管理テーブルと称する)120、および、診断処理部130から構成されている。
【0025】
そしてタグ動作電力測定部110は、読取コマンド発行部111および応答確認・判定部112を備えており、システム管理制御部101から発せられる動作電力測定指示にしたがって、読取コマンド発行部111がタグ認識コマンドをRW200に送出してタグ動作電力測定を指示する。また応答確認・判定部112は、RW200から応答を受信し、基準タグ(例えばアンテナ1-a(401)の基準タグ402)が応答したときの電力値を含む応答内容を受信して管理テーブル120に記録する。管理テーブル120は、RW及びアンテナポート番号からなるアンテナ接続情報を展開しており、展開したアンテナ接続情報毎に応答があった基準タグのタグ識別情報(例えばタグIDやEPCコード(electronic product code)など)と動作電力の値を記録する。図示例では、RW200が2つのタグRW制御部を持つ例を示していることから、タグRW制御部-1(210)およびタグRW制御部-2(220)で両者を区分けし、さらに、各タグRW制御部が4つのアンテナポートPa ,Pb ,Pc ,Pd を持つことから各アンテナポートに番号を付し、その番号によりテーブル内を区分けしている。また診断処理部130は、システム管理制御部101から発せられる診断指示にしたがって、読取コマンド発行部131がタグ認識コマンドと、管理テーブル120に展開されて記録された最小の電力値をRW200に送出して診断を指示する。また応答確認・判定部132は、基準タグが記録された最小の電力値で動作するかをRW200からの応答により判定し、判定OKを確認してあとに上位装置(図示せず)に備えられる通常運用制御部に制御を移管する。上位装置(図示せず)に備えられる通常運用制御部に制御が移管されたあとは、システム診断処理部105を介することなく(図示せず)通常のようにRW200に対してタグに対する処理を指示することとなる。
【0026】
またRW200は、それぞれ4つのアンテナポートPa ,Pb ,Pc ,Pd を有する2つのタグRW制御部210,220で構成されている。なおここに示したアンテナポートの数は任意であり、これに限定されるものではない。そしてタグRW制御部-1(210)は、タグアクセス制御部211、送受信制御部+送信電力制御部215、および、アンテナ切替部217から構成されている。タグRW制御部-2(220)の構成は、タグRW制御部-1(210)の構成と同じであるため、その説明を省略する。タグアクセス制御部211は、システム診断処理部105から送出される各種コマンドに基づいてタグに対するアクセスを実施するための制御を行う。送受信制御部+送信電力制御部215は、タグへのリード/ライトを所定の送信電力(この中には上述したタグ動作電力を段階的に上げることを含む)で行うよう制御する。またアンテナ切替部217は、アンテナポートPa ,Pb ,Pc ,Pd の切替えを実行し、所定のアンテナに所望の電力を供給してタグに対するリード/ライトを実行する。
【0027】
各アンテナポートPa ,Pb ,Pc ,Pd とアンテナ1-a〜1-d,2-a〜2-d(401,403,405,407,409,411,413,415)とを結ぶ同軸ケーブル301〜304,321〜324は、アンテナの設置位置がそれぞれ異なることから、そのケーブル長は一様なものとならない。そのためケーブル長による減衰量もそれぞれ異なる。その結果、各アンテナに対してRW200から供給する送信電力は一律同じものとはならない。図示例では、アンテナポートPa(201)に接続されたアンテナ1-a(401)における基準タグ402について同軸ケーブル301の長さを考慮した系列全体の診断を行う様子を破線で示し、その他のアンテナポートに接続されたアンテナにおける基準タグについて同軸ケーブルの長さを考慮した系列全体の診断を行う様子については示していないが、上述したのと同じなので説明を省略する。
【0028】
このように本発明のRFIDシステム診断方式は、RWの送受信部、異なる長さを有するケーブルを含むアンテナポート、アンテナまでの系列全体について、あらかじめ測定した最小の読み取り電力値で実運用時の診断を実施してより精度の高い自動診断を可能とするものである。また上記においてシステム診断装置を具体的にどの装置に実装するかについては明示していないが、一般論としてはリーダライタRWの上位に位置する上位装置(図示せず)内に実装するのが普通である。しかしこれのみに限定されず、システム診断装置の中枢をなすシステム診断処理部をリーダライタRW内に実装し、上位装置(図示せず)内にはシステム診断装置のシステム管理制御部を有たせるように構成しても良い。なお上位装置は、従来技術で説明したように通常、パソコンまたはサーバでもって構成され、RFIDシステムに関与する当業者には周知であるのでその説明を省略する。
【0029】
また図3は、本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第1実施例における基準タグの動作電力測定の手順を説明する図である。なお図示例ではステップを“S”と略記する。図3においてタグ動作電力測定処理は、通常、システム設置時及び保守時(故障時のハード交換後)において実行され、システム管理制御部101よりタグ動作電力測定指示がなされる。それに伴い全アンテナ接続情報(RW及びアンテナポート番号からなる)をシステム診断処理部105内の管理テーブル120(図2参照)に展開する(ステップS11)。なお全アンテナ接続情報の管理テーブル120への展開は、本ステップにおける処理で実行せずにあらかじめ別の手段により行われるようにしても良い。次いで管理テーブル120のポインタをクリアし(ステップS12)、管理テーブル120の先頭に設定する。そして送信電力カウンタ(図示せず)を初期値に設定する(ステップS13)。この設定により送信電力カウンタは最小となる。次いでRW200に送信電力設定コマンドを発行する(ステップS14)。そして電力設定が正常に完了したかを判定する(ステップS15)。ここで電力設定が正常に完了しなかった場合には、電力設定異常を通知する(ステップS16)。しかし電力設定が正常に完了した場合には、RW200にタグ認識させるためのコマンドを発行する(ステップS17)。ここでコマンドパラメータとして、管理テーブル120のポインタの指す接続情報(RW及びアンテナポート番号)を付加する。そしてRW200からコマンド完了応答を受信する(ステップS18)。
【0030】
次に、タグ(基準タグ)を検出できたかを判定する(ステップS19)。ここでタグを検出できなかった場合には、電力上限か否かを判定する(ステップS20)。電力上限を調べるのは、電波法に規定される既定の最大値を超えないかを確認するためで、規格上の限界値(UHF-RFIDの場合、最大30dBm)を超えるかを判定する。電力上限でなければ送信電力カウンタをインクリメントし、電力を0.5dB分だけ増加するよう制御して(ステップS21)、ステップS14〜ステップS19の処理を再度実行する。一方、ステップS20の処理で電力上限であると判定された場合には、タグ検出不可であることを通知する(ステップS22)。
【0031】
上記ステップS19において、タグを検出できた場合には、ステップS23に進み、複数タグを検出したかを判定する。これは一つのタグだけが正常に読めたことを確認するために行われる。ここで複数タグを検出した場合には、タグ複数検出による異常を通知する(ステップS24)。一方、一つのみのタグを検出した場合には、ステップS25に進み、上記と同様にRW200にタグ認識のためのコマンドの発行と検出確認を3回実施する。そして3回連続して検出できたかを判定する(ステップS26)。これは検出の安定度を確認するために3回程度繰り返して読み取り確認を行うもので、回数は3回に限らずそれ以上実施することが望ましい。ステップS26で3回連続してOKを確認できなかった場合(本実施例では3回連続でOKとしているがこれに限定されない。任意に決定できるようにしても良い)には、ステップS20に進み、上述したのと同様、電力上限か否かを判定する。電力上限でなければ送信電力カウンタをインクリメントし、電力を0.5dB分だけ増加するよう制御して(ステップS21)、ステップS14〜ステップS26の処理を再度実行する。一方、ステップS20の処理で電力上限であると判定された場合には、タグ検出が不可であることを通知する(ステップS22)。
【0032】
上記ステップS26において、3回連続でOKを確認できれば、検出タグIDを管理テーブル120に記録する(ステップS27)。そして送信電力値を管理テーブル120に記録する(ステップS28)。記録する場合、安定度を考慮して、0.5dB程度のマージンを付加して記録することも可能である(但し、付加しても電力上限以下であることが不可欠)。次いで全アンテナについて測定が完了したかを判定する(ステップS29)。全アンテナについて完了していなければ、ステップS30に進み、管理テーブル120のポインタを1つ進め、ステップS13に戻り、ステップS13以降の処理を全アンテナが完了するまで実行する。またステップS29で全アンテナについて完了していればステップS31に進み、正常完了を通知する。
【0033】
また図4は、本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第1実施例における診断の手順を説明する図である。なお図示例ではステップを“S”と略記する。図4における診断は、図3において説明したタグ動作電力測定後に実施されるもので、保守時や通常運用の開始前などにシステム管理制御部101から診断指示がなされることで診断が開始される。そして図4における診断には、アンテナポートを指定せずに全アンテナポートを診断する場合と、アンテナポートを指定する場合と、がある。ここでは、まずアンテナポートを指定せずに全アンテナポートを診断する場合を先に説明し、その後でアンテナポートを指定する場合を説明する。
【0034】
全アンテナポートの診断処理は、まずアンテナ管理テーブル120のポインタをクリアし(ステップS41)、アンテナ管理テーブル120の先頭に設定する。次にアンテナ管理テーブル120内のポインタの指す電力値でRW200に電力設定コマンドを発行する(ステップS42)。ここで電力設定が正常に完了するかを判定する(ステップS43)。この電力設定が正常に完了しなかった場合には、電力設定異常を通知する(ステップS44)。しかし電力設定が正常に完了した場合には、アンテナ管理テーブル120内のポインタの指すアンテナ接続情報でRW200にタグ認識させるためのコマンドを発行する(ステップS45)。
【0035】
そしてRW200からコマンド完了応答を受信する(ステップS46)。次いでタグを検出できたかを判定する(ステップS47)。タグを検出できなかった場合には、ステップS48に進み、診断異常を通知する。またタグを検出できた場合には、ステップS49に進み、タグIDが一致するかを判定する。ここでは、アンテナ管理テーブル120内のポインタンの指すタグIDであるかを確認するために実行するものである。すなわちタグIDが一致しない場合には、上記と同様、ステップS48に進み、診断異常を通知する。またタグIDが一致する場合(基準タグIDの読取が成功したことを意味し、記録されている最小電力での診断が完了)には、ステップS50に進み、全アンテナ診断処理か否かを判定する。
【0036】
ステップS50で全アンテナ診断処理であれば、ステップS51に進み、ステップS51において全アンテナ完了かを判定する。ここで全アンテナ完了でなければ、ステップS52に進み、アンテナ管理テーブル120のポインタを1つ進めた後にステップS42に戻る。一方、全アンテナ完了であれば、ステップS53に進み、診断正常完了を通知する。
【0037】
またステップS50で全アンテナ診断処理でなければ、ステップS51をスキップしてステップS53に進み、診断正常完了を通知する。
以上で全アンテナポートの診断処理を説明したので、次にアンテナポートを指定する場合について説明する。指定アンテナポートの診断処理では、ステップS55において、アンテナ管理テーブル120のポインタの指定するアンテナポート番号を設定する処理が加わる。そしてその後は、ステップS42に進み、ステップS42以降の処理は上述した全アンテナポートの診断処理の説明と同じであるため、以後の説明を割愛する。
【実施例2】
【0038】
図5は、本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第2実施例の構成を示す機能ブロック図である。図5に示す第2実施例は、システム診断装置100、RW200、異なる長さを有する同軸ケーブル301〜304,321〜324、および、基準タグ1及び基準タグ2の2つ基準タグを搭載するアンテナ1-a〜1-d,2-a〜2-d(421,424,427,430,433,436,439,442)より構成される。アンテナ1-a〜1-d,2-a〜2-d(421,424,427,430,433,436,439,442)が基準タグ1及び基準タグ2の2つ基準タグを搭載する点を除けば図2に示した第1実施例と同様である。したがって図示の番号も基本的に図2に示した第1実施例と同じであるため、第1実施例と同じ構成のものについてはその説明を省略し、同じ構成でないものについて詳細に説明する。
【0039】
図5に示すシステム診断装置100では、接続アンテナ管理テーブル120の構成が第1実施例とそれと一部異なるので、これについて説明する。図5に示す接続アンテナ管理テーブル120は、RW及びアンテナポート番号からなるアンテナ接続情報を展開しており、展開したアンテナ接続情報毎に応答があった基準タグ1及び基準タグ2のタグ識別情報(例えばタグIDやEPCコード(electronic product code)など)と動作電力の値を記録する。図示例でタグ1用は、図2と同じであるが、タグ2用が新たな構成であり、アンテナ1-a〜1-d,2-a〜2-d(421,424,427,430,433,436,439,442)が基準タグ1及び基準タグ2の2つ基準タグを搭載していることに対応させている。ただタグ1用に展開される項目とタグ2用に展開される項目は同じで、タグ1に対するタグ動作電力測定および診断に続き、タグ2に対するタグ動作電力測定および診断を実施して展開項目にデータを記録する。
【0040】
また上述したように、アンテナ1-a〜1-d,2-a〜2-d(421,424,427,430,433,436,439,442)はそれぞれ基準タグ1及び基準タグ2の2つ基準タグを搭載しており、基準タグ1に対するタグ動作電力測定および診断は上述した第1実施例と同じであるが、その後で、基準タグ2に対するタグ動作電力測定および診断を実施している。これは後述するようにリーダライタからの電力値を増幅させたモードでも診断できるようにするためであり、これにより、リーダライタの動作モード(電力増加機能)についても、より詳しい診断が行えるようにしている。
【0041】
いずれにしても本発明のRFIDシステム診断方式は、上述したように、RW内の送受信部、異なる長さを有するケーブルを含むアンテナポート、アンテナまでの系列全体について、あらかじめ測定した最小の読み取り電力で実運用時の診断を実施し、さらにリーダライタからの電力値を増幅させたモードでも実運用時に診断できるようにしてより精度の高い自動診断を可能とするものである。また上記においてシステム診断装置を具体的にどの装置に実装するかについては上述した実施例1の説明と同様であるから、ここでの再度の説明を省略する。
【0042】
図6は、本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第2実施例における基準タグの動作電力測定の手順を説明する図である。なお図示例ではステップを“S”と略記する。図6においてタグ動作電力測定処理は、通常、システム設置時及び保守時(故障時のハード交換後)において実行され、システム管理制御部101よりタグ動作電力測定指示がなされる。それに伴い全アンテナ接続情報(RW及びアンテナポート番号からなる)をシステム診断処理部105内の管理テーブル120(図5参照)に展開する(ステップS61)。なお全アンテナ接続情報の管理テーブル120への展開は、本ステップにおける処理で実行せずにあらかじめ別の手段により行われるようにしても良い。次いで管理テーブル120のポインタをクリアし(ステップS62)、管理テーブル120の先頭に設定する。そして送信電力カウンタ(図示せず)を初期値に設定する(ステップS63)。この設定により送信電力カウンタは最小となる。次いでRW200に送信電力設定コマンドを発行する(ステップS64)。そして電力設定が正常に完了したかを判定する(ステップS65)。ここで電力設定が正常に完了しなかった場合には、電力設定異常を通知する(ステップS66)。しかし電力設定が正常に完了した場合には、RW200にタグ認識させるためのコマンドを発行する(ステップS67)。ここでコマンドパラメータとして、アンテナ管理テーブル120のポインタの指す接続情報(RW及びアンテナポート番号)を付加する。そしてRW200からコマンド完了応答を受信する(ステップS68)。
【0043】
次に、タグ(1番目の基準タグ)を検出できたかを判定する(ステップS69)。ここでタグを検出できなかった場合には、電力上限か否かを判定する(ステップS70)。電力上限を調べるのは、電波法に規定される既定の最大値を超えないかを確認するためで、規格上の限界値(UHF-RFIDの場合、最大30dBm)を超えるかを判定する。電力上限でなければ送信電力カウンタをインクリメントし、電力を0.5dB分だけ増加するよう制御して(ステップS71)、ステップS64〜ステップS69の処理を再度実行する。一方、ステップS70の処理で電力上限であると判定された場合には、タグ検出不可であることを通知する(ステップS72)。
【0044】
上記ステップS69において、タグを検出できた場合には、ステップS73に進み、複数タグを検出したかを判定する。これは一つのタグだけが正常に読めたことを確認するために行われる。ここで複数タグを検出した場合には、タグ複数検出による異常を通知する(ステップS74)。一方、複数タグを検出しなかった場合には、ステップS75に進み、上記と同様にRW200にタグ認識のためのコマンドの発行と検出確認を3回実施する。そして3回連続してOKを確認できたかを判定する(ステップS76)。これは検出の安定度を確認するために3回程度繰り返して読み取り確認を行うもので、回数は3回に限らずそれ以上実施することが望ましい。ステップS76で3回連続してOKを確認できなかった場合には、ステップS70に進み、上述したのと同様、電力上限か否かを判定する。電力上限でなければ送信電力カウンタをインクリメントし、電力を0.5dB分だけ増加するよう制御して(ステップS71)、ステップS64〜ステップS76の処理を再度実行する。一方、ステップS70の処理で電力上限であると判定された場合には、タグ検出が不可であることを通知する(ステップS72)。
【0045】
上記ステップS76において、3回連続でOKを確認できれば、検出タグIDを管理テーブル120のタグ1の欄に記録する(ステップS77)。そして送信電力値を管理テーブル120のタグ1の欄に記録する(ステップS78)。記録する場合、安定度を考慮して、0.5dB程度のマージンを付加して記録することも可能である(但し、付加しても電力上限以下であることが不可欠)。
【0046】
その後で送信電力カウンタをインクリメントし、電力を0.5dB分だけ増加するよう制御する(ステップS79)。ここから2番目の基準タグ(例えばアンテナ1-a(421)の基準タグ423)についての認識処理を開始する。次いでRW200にタグ認識のためのコマンドを発行する(ステップS80)。そしてRW200から応答を受信する(ステップS81)。ステップS82ではタグの応答が有るかを判定する。タグ応答が無い場合には、ステップS83に進み、電力上限かを判定する。電力上限であると判定されれば、上記と同様、ステップS72に進み、タグ検出不可を通知する。一方、電力上限ではないと判定されれば、ステップS84に進み、送信電力カウンタをインクリメントし、さらに電力を0.5dB分だけ増加するよう制御して、ステップS80〜ステップS82の処理を再度実行する。
【0047】
上記ステップS82において、タグの応答有りを検出した場合には、ステップS85に進み、複数タグの応答有りを検出したかを判定する。ここでは同時に1番目の基準タグの応答も検出されるが、1番目の基準タグについてのIDは既に判明しているのでそれを対象から除外し、且つそれを除外しても複数のタグが読めた場合には異常として処理するものである。ステップS85で複数タグの応答有りを検出した場合には、上記と同様、タグ複数検出による異常を通知する(ステップS74)。一方、複数タグの応答有りを検出しなかった場合には、ステップS86に進み、上記と同様にRW200にタグ認識のためのコマンドの発行と検出確認を3回実施する。そして3回連続してOKを確認できたかを判定する(ステップS87)。これは検出の安定度を確認するために3回程度繰り返して読み取り確認を行うもので、回数は3回に限らずそれ以上実施することが望ましい。ステップS87で3回連続してOKを確認できなかった場合には、ステップS83に進み、上述したのと同様、電力上限か否かを判定する。電力上限でなければ送信電力カウンタをインクリメントし、さらに電力を0.5dB分だけ増加するよう制御して(ステップS84)、ステップS80〜ステップS87の処理を再度実行する。一方、ステップS83の処理で電力上限であると判定された場合には、上記と同様、タグ検出が不可であることを通知する(ステップS72)。
【0048】
上記ステップS87において、3回連続でOKを確認できれば、検出タグIDを管理テーブル120のタグ2の欄に記録する(ステップS88)。そして送信電力値を管理テーブル120のタグ2の欄に記録する(ステップS89)。記録する場合、安定度を考慮して、0.5dB程度のマージンを付加して記録することも可能である(但し、付加しても電力上限以下であることが不可欠)。
【0049】
次いで全アンテナについて測定が完了したかを判定する(ステップS90)。全アンテナについて完了していなければ、ステップS91に進み、アンテナ管理テーブル120のポインタを1つ進め、ステップS63に戻り、ステップS63以降の処理を全アンテナが完了するまで実行する。またステップS90で全アンテナについて完了していればステップS92に進み、正常完了を通知する。
【0050】
図7は、本発明の実施形態に係るRFIDシステム診断方式を具現するための第2実施例における診断の手順を説明する図である。なお図示例ではステップを“S”と略記する。図7における診断は、図6において説明したタグ動作電力測定後に実施されるもので、保守時や通常運用の開始前などにシステム管理制御部101から診断指示がなされることで診断が開始される。そして図7における診断には、アンテナポートを指定せずに全アンテナポートを診断する場合と、アンテナポートを指定する場合と、がある。ここでは、まずアンテナポートを指定せずに全アンテナポートを診断する場合を先に説明し、その後でアンテナポートを指定する場合を説明する。
【0051】
全アンテナポートの診断処理は、まずアンテナ管理テーブル120のポインタをクリアし(ステップS101)、アンテナ管理テーブル120の先頭に設定する。次にアンテナ管理テーブル120内のポインタの指すタグ1用の電力値でRW200に電力設定コマンドを発行する(ステップS102)。ここにおいて図示例の1番目の基準タグ(例えばアンテナ1-a(421)の基準タグ422)による診断を開始する。次いで電力設定が正常に完了するかを判定する(ステップS103)。この電力設定が正常に完了しなかった場合には、電力設定異常を通知する(ステップS104)。しかし電力設定が正常に完了した場合には、アンテナ管理テーブル120内のポインタの指すアンテナ接続情報でRW200にタグ認識させるためのコマンドを発行する(ステップS105)。
【0052】
そしてRW200からコマンド完了応答を受信する(ステップS106)。次いでタグを検出できたかを判定する(ステップS107)。タグを検出できなかった場合には、ステップS108に進み、診断異常を通知する。またタグを検出できた場合には、タグ1用IDと一致するかを判定する(ステップS109)。ここでは、アンテナ管理テーブル120内のポインタの指すタグ1用IDと一致するかを確認するために実行するものである。すなわちタグ1用IDと一致しない場合には、上記と同様、ステップS108に進み、診断異常を通知する。またタグ1用IDと一致する(1番目の基準タグIDの読取成功、すなわち最小電力による診断完了)場合には、アンテナ管理テーブル120内のポインタの指すタグ2用の電力値でRW200に電力設定コマンドを発行する(ステップS110)。ここにおいて2番目の基準タグ(例えばアンテナ1-a(421)の基準タグ423)による診断を開始する。次に電力設定が正常に完了するかを判定する(ステップS111)。この電力設定が正常に完了しなかった場合には、上記と同様、電力設定異常を通知する(ステップS104)。しかし電力設定が正常に完了した場合には、アンテナ管理テーブル120内のポインタの指すアンテナ接続情報でRW200にタグ認識させるためのコマンドを発行する(ステップS112)。そしてRW200からコマンド完了応答を受信する(ステップS113)。このとき1番目の基準タグのIDも一緒に通知されるが、1番目の基準タグのIDは既に判明しているため、このIDについては対象から除外する。
【0053】
次いでタグを検出できたかを判定する(ステップS114)。タグを検出できなかった場合には、ステップS108に進み、上記と同様、診断異常を通知する。またタグを検出できた場合には、タグ2用IDと一致するかを判定する(ステップS115)。タグ2用IDと一致しない場合には、上記と同様、ステップS108に進み、診断異常を通知する。またタグ2用IDと一致する(2番目の基準タグIDの読取成功、すなわち最小電力による診断完了)場合には、全アンテナ診断処理かを判定する(ステップS116)。ステップS116で全アンテナ診断処理であれば、ステップS117に進み、ステップS117において全アンテナ完了かを判定する。ここで全アンテナ完了でなければ、ステップS118に進み、アンテナ管理テーブル120のポインタを1つ進めた後にステップS102に戻る。一方、全アンテナ完了であれば、ステップS119に進み、診断正常完了を通知する。
【0054】
またステップS116で全アンテナ診断処理でなければ、ステップS117をスキップしてステップS119に進み、診断正常完了を通知する。
以上で全アンテナポートの診断処理を説明したので、次にアンテナポートを指定する場合について説明する。指定アンテナポートの診断処理では、ステップS120において、アンテナ管理テーブル120のポインタの指定するアンテナポート番号を設定する処理が加わる。そしてその後は、ステップS102に進み、ステップS102以降の処理は上述した全アンテナポートの診断処理の説明と同じであるため、以後の説明を割愛する。
【0055】
図8は、本発明RFIDシステム診断方式の第2実施例における2番目の基準タグの第1構成例を示す図である。図8においては直線偏波アンテナを使用し、当該直線偏波アンテナにおいて、1番目の基準タグ801は、アンテナケース内のアンテナエレメント803の上部のアンテナカバー側に、直線偏波アンテナの偏波方向に合わせるように貼り付ける。そして、2番目の基準タグ802は、直線偏波アンテナの偏波方向に対してその実装の位置及び角度を変えて、わざと条件の悪い状態、例えば直線偏波アンテナの偏波方向に対して2番目の基準タグ802を45度傾けた位置に実装することにより利得を3dB程度減衰させる。したがい、当該2番目の基準タグ802の動作電力を測定する場合には上述の1番目の基準タグ801よりも動作電力を大きくせざるを得ないようにする。
【0056】
このようにしたうえで、上記した第2実施例における動作電力測定およびそれに続く診断を実施し、すなわち前述の最小の電力で1番目の基準タグ801への測定/診断に続き、2番目の基準タグ802への測定/診断を実施することでリーダライタRWからの電力値を増幅させたモードで診断できるようにしたため、リーダライタRWの動作モード(電力増加機能)についても、より詳しい診断を行うことが可能となる。
【0057】
図9は、本発明RFIDシステム診断方式の第2実施例における2番目の基準タグの第2構成例を示す図である。図9においては図8と同様に直線偏波アンテナ901を使用し、当該直線偏波アンテナ901の偏波方向において、タグLSI(2番目基準タグ)902を配置し、配置したタグLSI(2番目基準タグ)902からアンテナ901に接続する部分に所望の減衰量のアッテネータ903を挿入することにより利得を低下(動作電力を大きく)させるようにしたものである。なお図9では1番目基準タグの図示を省略している。
【0058】
図9においては動作電力の大きい(利得の低い)タグLSI(2番目基準タグ)を選定する他、当該タグLSIからアンテナに接続する部分に所望のアッテネータ(減衰器)を入れてさらに減衰させることができるため、より大きな幅の増幅機能を測定したい場合や試験精度を向上させたい場合などにおいて本構成例を用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 システム診断装置
20 リーダライタ(Reader / Writer)
25 送受信制御部
30 同軸ケーブル
40 アンテナ
45 基準タグ
100 システム診断装置
101 システム管理制御部
105 システム診断処理部
110 タグ動作電力測定部
111 読取コマンド発行部
112 応答確認・判定部
120 接続アンテナ管理テーブル
130 診断処理部
131 読取コマンド発行部
132 応答確認・判定部
200 RW(リーダライタ)
201,221 アンテナポートPa
202,222 アンテナポートPb
203,223 アンテナポートPc
204,224 アンテナポートPd
210 タグRW制御部-1
211 タグアクセス制御部
215 送受信制御部+送信電力制御部
217 アンテナ切替部
220 タグRW制御部-2
301〜304、321〜324 同軸ケーブル
401,421 アンテナ1-a
402, 404, 406, 408 基準タグ
403,424 アンテナ1-b
405,427 アンテナ1-c
407,430 アンテナ1-d
409,433 アンテナ2-a
410, 412, 414, 416 基準タグ
411,436 アンテナ2-b
413,439 アンテナ2-c
415,442 アンテナ2-d
422,425,428,432 基準タグ1
423,426,429,432 基準タグ2
434,437,440,443 基準タグ1
435,438,441,444 基準タグ2
801 1番目の基準タグ
802 2番目の基準タグ
803 アンテナエレメント
901 アンテナ
902 タグLSI
903 アッテネータ(減衰器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の読み取り電力で応答する基準タグをアンテナに内蔵または、該アンテナの外部に近接配置したRFIDシステムの診断装置であって、該診断装置は、
前記基準タグに対しデータの送受信を行うリーダライタのアンテナポートに接続されたアンテナに内蔵または、該アンテナの外部に近接配置された前記基準タグの動作電力を測定するタグ動作電力測定手段と、
前記基準タグへの前記リーダライタ内の送受信部及びアンテナポートを含むケーブルまでの系列全体を診断する診断手段と、を備え、
前記タグ動作電力測定手段は、
前記タグ動作電力を測定するためのコマンドを発行するタグ動作電力測定部と、
該タグ動作電力測定部の指示で前記リーダライタがタグ読み取り電力を最小値から段階的に増加させながら、その都度前記基準タグからの応答確認を行い、前記基準タグからの応答を確認できた時点の電力値を前記基準タグの診断電力値としてタグ識別情報と共に管理テーブルに記録する診断電力値記録部を含み、
前記診断手段は、
前記診断電力値記録部により前記管理テーブルに記録された前記診断電力値を使用して前記基準タグに対する読み取りを行うコマンドを発行する読取コマンド発行部と、
前記読取コマンド発行部より発行される前記読み取りコマンドに対する前記基準タグからの応答及び前記タグ識別情報を確認する診断応答確認部を含む、
ことを特徴とするRFIDシステム診断装置。
【請求項2】
前記基準タグの識別情報とは異なる第2の基準タグを前記アンテナ内または、該アンテナの外部に、予め検証された利得が悪化する角度又は位置に実装し、該第2の基準タグに対してタグ動作電力の測定を行うと共に前記第2の基準タグからの応答を確認できた時点の電力値を診断電力値として記録を行う第2のタグ動作電力測定手段と、
前記タグ動作電力測定手段による前記基準タグに対する前記最小の電力値に基づく診断に続き、前記第2のタグ動作電力測定手段により前記第2の基準タグに対して記録された前記診断電力値による診断を行う第2の診断手段と、をさらに備え、
該第2の診断手段によって前記リーダライタからの電力値を増幅させたモードでも診断することを特徴とする請求項1に記載のRFIDシステム診断装置。
【請求項3】
前記第2の基準タグは、利得の低い又は動作電力の大きいタグであることを特徴とする請求項2に記載のRFIDシステム診断装置。
【請求項4】
一定の読み取り電力で応答する基準タグをアンテナに内蔵または、該アンテナの外部に近接配置したRFIDシステムの診断方法において、
前記基準タグに対しデータの送受信を行うリーダライタのアンテナポートに接続されたアンテナに内蔵または、該アンテナの外部に近接配置された前記基準タグの動作電力を測定する工程は、
前記タグ動作電力を測定するコマンドを発行する工程と、
該タグ動作電力測定部の指示で該リーダライタがタグ読み取り電力を最小値から段階的に増加させながら、その都度前記基準タグからの応答確認を行い、前記基準タグからの応答を確認できた時点の電力値を当該アンテナポートに接続されたアンテナに内蔵または外部に近接配置された前記基準タグの診断電力値としてタグ識別情報と共に管理テーブルに記録する工程と、を含み、
前記タグ動作電力を測定する工程の終了後であって運用時に実施する、前記アンテナ動作に係る前記基準タグへの前記リーダライタ内の送受信部及びアンテナポートを含むケーブルまでの系列全体を診断する診断工程は、
前記システム管理制御部からの診断指示に従い、前記管理テーブルに記録された診断電力値を使用して診断処理部から前記基準タグに対する読み取りを行うコマンドを発行する工程と、
発行された前記読み取りコマンドに対する前記基準タグからの応答及び前記タグ識別情報を確認する工程と、を含み、
前記診断工程を実行することで、当該アンテナ動作に係る前記基準タグへの前記リーダライタ内の送受信部及びアンテナポートを含むケーブルまでの系列全体について、予め測定された最小の動作電力値による自動診断を行うRFIDシステム診断方法。
【請求項5】
前記アンテナポートが前記リーダライタに複数存在する場合は、前記動作電力測定工程と前記診断工程を前記アンテナポート系列毎に繰り返し行う工程をさらに含み、前記アンテナ動作に係る前記基準タグへの前記リーダライタ内の送受信部及びアンテナポートを含むケーブルまでの系列全体の診断を全アンテナについて行うことを特徴とする請求項4に記載のRFIDシステム診断方法。
【請求項6】
前記タグ識別情報とは異なる第2の基準タグを前記アンテナ内または、該アンテナの外部に、予め検証された利得が悪化する角度又は位置に実装し、該第2の基準タグに対してタグ動作電力の測定を行うと共に前記第2の基準タグからの応答を確認できた時点の電力値を診断電力値として記録する工程と、
前記基準タグに対する前記最小の電力値に基づく診断に続き、前記第2の基準タグに対して記録された前記診断電力値による診断を行う工程と、を含み、
前記第2の基準タグに対する診断を行うことで前記リーダライタからの電力値を増幅させたモードでも診断することを特徴とする請求項4に記載のRFIDシステム診断方法。
【請求項7】
前記第2の基準タグは、利得の低い又は動作電力の大きいタグであることを特徴とする請求項6に記載のRFIDシステム診断方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−138373(P2011−138373A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298638(P2009−298638)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】