説明

RFIDタグとRFIDタグ通信装置における通信制御方式

【課題】複数台のRFIDタグ通信装置の通信による相互干渉を抑えるため送信電力を最小にする制御を行い、安定した通信を行う。
【解決手段】RFIDタグ通信装置の通信範囲に固定的にRFIDタグを配置し、識別対象のRFIDタグが通信範囲にない場合は固定的に配置したRFIDタグが通信可能な最小の送信電力でRFIDタグ通信装置を動作させることで他のRFIDタグ通信装置への干渉を最小にする。識別対象のRFIDタグがRFIDタグ通信装置の通信範囲に移動した場合には、固定的に配置しているRFIDタグの通信成功確率が落ちるため、RFIDタグ通信装置の送信出力を上げる制御を行う。識別対象のRFIDタグがRFIDタグ通信装置の通信範囲外に移動して固定的に配置しているRFIDタグの通信成功確率が上がった場合は、RFIDタグ通信装置の送信出力を下げる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線を用いて識別用通信を行うRFIDタグとRFIDタグ通信装置に関するものであり、RFIDタグ通信装置が複数台で動作する場合においてRFIDタグ通信装置同士の干渉波が問題となる分野に適用する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグ通信装置が通信範囲内のRFIDタグとの間で通信を行う場合においての構成を図5に示す。
【0003】
RFIDタグ通信装置510が照射する制御信号をRFIDタグ520が受信して、RFIDタグ520が応答信号をRFIDタグ通信装置510へ返すことにより通信を行っている。
【0004】
また、RFIDタグ520がパッシブ型の場合はRFIDタグ通信装置510が照射する送信信号を動作電力として応答信号を返す。
【0005】
RFIDタグ通信装置が単体で動作する場合は、RFIDタグ通信装置の送信出力レベルを高めに設定することにより識別対象のRFIDタグとの間で安定して通信が行える。
【0006】
RFIDタグ通信装置が複数台で動作する場合においての構成を図6に示す。
【0007】
RFIDタグ通信装置610の通信範囲内にあるRFIDタグ620とRFIDタグ通信装置610が通信を行っており、別のRFIDタグ通信装置611の通信範囲内にあるRFIDタグ621とRFIDタグ通信装置611が同様に通信を行っている。
【0008】
RFIDタグ通信装置611から照射される送信信号の周波数が同一または近接している場合に、RFIDタグ通信装置611の送信信号とRFIDタグ621の応答信号はRFIDタグ通信装置610とRFIDタグ620の通信への干渉波となって通信に影響を与える。
【0009】
また、同様にRFIDタグ通信装置610とRFIDタグ620との間の通信信号は、RFIDタグ通信装置611とRFIDタグ621の通信に対して干渉波となって影響を与える。
【0010】
複数台のRFIDタグ通信装置が正常な通信を行うためには、互いに干渉しないような異なる周波数を使用して通信を行うか、複数のRFIDタグ通信装置が互いに干渉しない出力レベルに調整して通信を行っている。
【0011】
なお、ゲート型のRFIDタグの読取装置において、固定設置するRFIDタグの読取可否、読取成功回数を元に入退場者の人数を管理する技術が先に提案されている。
【0012】
【特許文献1】特開2006−72672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の構成では、RFIDタグ通信装置が利用できる周波数が限られているため、RFIDタグ通信装置を使用する台数が増えた場合に近接した周波数または同一の周波数を使用する必要がある。
【0014】
このとき、RFIDタグ通信装置同士の送信信号が互いに干渉波となることから、通信を行うRFIDタグ通信装置を限定して、特定のRFIDタグ通信装置以外の送信信号を停止させて通信を妨げないようにするか、もしくはRFIDタグ通信装置の送信信号の出力レベルをなるべく低い値に調整して相互干渉を抑えるようにする必要がある。しかし、RFIDタグ通信装置の台数が多くなった場合には、それぞれの相互干渉を考慮して個々にレベル調整することは難しい。
【0015】
本発明の解決すべき技術課題は、従来技術のもつ問題点を解消するためにRFIDタグ通信装置が複数台あっても安定した通信が行えるようにRFIDタグ通信装置の送信信号のレベル制御方式を改善することで複数のRFIDタグ通信装置同士の相互干渉を最小にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決する手段として、RFIDタグ通信装置が送信電力の出力レベルが調整できる機能を持つものとする。
【0017】
図2にRFIDタグ通信装置の通信範囲内の固定位置にRFIDタグを配置し、識別対象のRFIDタグが移動したことを検出する場合の構成を示す。
【0018】
RFIDタグ通信装置210は、希望する通信範囲211の境界位置に配置したRFIDタグ220,221,222に対して応答確認を行い、その通信の成功率が規定値以上となっている状態で送信出力レベルを低下させることにより最小の送信出力レベルを求めて設定する。
【0019】
その後、RFIDタグ通信装置210は、識別対象である単数もしくは複数のRFIDタグで通信範囲211に移動したものを検出するための問合せを定期的に行う。
【0020】
このとき、RFIDタグ通信装置210は、RFIDタグ220,221,222に対してもIDを指定して応答確認を定期的に行う。
【0021】
識別対象であるRFIDタグ223が通信範囲211に移動していない場合は、RFIDタグ220,221,222の応答確認ができる最小送信電力で通信を行っている状態である。
【0022】
図3に図2の状態からRFIDタグ通信装置の通信範囲内に識別対象のRFIDタグが移動した状態を示す。
【0023】
図3の(a)のように、識別対象である複数のRFIDタグ323が通信範囲311に移動した場合は、RFIDタグ320,321,322との通信が行えるだけの送信電力が照射できていない場合がある。
【0024】
さらに識別対象である複数のRFIDタグ323の中でも送信電力が照射できていないために通信が行えない場合がある。
【0025】
RFIDタグ通信装置310は、RFIDタグ320,321,322との通信の成功率が低下することを検出すると出力レベルを上げた制御を行って送信電力を照射する。
【0026】
図3の(b)のように、RFIDタグ通信装置310が送信出力レベルを上げてRFIDタグ320,321,322との通信を行いつつ、識別対象である複数のRFIDタグ323の通信を行う。このとき、希望する通信範囲311の境界にあるRFIDタグ320,321,322との間で通信可能な送信レベルで照射することから、通信範囲311の中にある識別対象である複数のRFIDタグ323との通信を行うためには十分な送信レベルで通信可能と考えられる。
【0027】
図4に図3の状態からRFIDタグ通信装置の通信範囲外に識別対象のRFIDタグが移動した状態を示す。
【0028】
図4の(a)のように、識別対象である複数のRFIDタグ423が通信範囲外へ移動した場合は、RFIDタグ420,421,422との通信に必要な送信電力以上が照射されているため、希望する通信範囲411よりも拡大した通信範囲412となっている。
【0029】
RFIDタグ通信装置410は、最小送信電力以上の送信レベルで照射しているにもかかわらず、RFIDタグ420,421,422との応答確認しかできない状態であることを検出すると、図2の状態の最小送信電力まで送信レベルを下げる制御を行う。
【0030】
図4の(b)のように、識別対象である複数のRFIDタグ423が通信範囲外へ移動した後はRFIDタグ通信装置410が送信出力レベルを下げてRFIDタグ420,421,422の応答確認ができる最小送信電力で通信を行う。
【0031】
このように通信範囲の境界位置に設置したRFIDタグとの通信の成功率によってRFIDタグ通信装置の送信レベルを制御することにより、複数台でRFIDタグ通信装置を動作させた場合に問題となっていたRFIDタグ通信装置の通信時の相互干渉を最小にできる。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、RFIDタグ通信装置の通信範囲にタグが識別対象のタグが存在しない場合と存在する場合において、特別な検出器を追加することなく送信出力のレベル制御を行うことができるため、他のRFIDタグ通信装置への干渉を抑える効果がある。
【0033】
また、複数台数のRFIDタグ通信装置について個々に希望する通信範囲に最適な送信レベルを容易に設定する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図7に物流用ゲートにRFIDタグ通信装置のアンテナを上面、左側面、右側面の3箇所に配置してRFIDタグを貼り付けた物品が物流ゲートを通過することを検出して物品の入出庫を管理する場合の構成を示す。
【0035】
図7の(a)のように物流ゲートに物品が通過していない場合では、物流ゲートの右側面に設置したアンテナ712が左側面に配置したRFIDタグ722に対して応答確認を行う。
【0036】
同様に上面に設置したアンテナ713が床面に配置したRFIDタグ721に対して応答確認を行い、左側面に設置したアンテナ714が右側面に配置したRFIDタグ720に対して応答確認を行う。
【0037】
この時のRFIDタグ通信装置711が送信する電力レベルは、物流ゲート内に配置した各RFIDタグ720,721,722と通信が行える最小電力レベルでに対して応答確認を行っている。
【0038】
図7の(b)のように物流ゲートに物品が通過する場合は、物流ゲートの右側面に設置したアンテナ712が左側面に配置したRFIDタグ722に対して応答確認を行うが応答の成功回数が少ないかまたは応答がない。
【0039】
また、同様に上面に設置したアンテナ713が床面に配置したRFIDタグ721に対して応答確認を行い、左側面に設置したアンテナ714が右側面に配置したRFIDタグ720に対して応答確認を行うがこのときも応答の成功回数が少ないかまたは応答がない。
【0040】
このことにより、RFIDタグ通信装置711は、送信出力レベルを上げて物流ゲート内の識別対象となるRFIDタグがないか応答確認を行う。
【0041】
物流ゲートに設置したアンテナ712,713,724によって物品に貼られたRFIDタグ723,724,725の識別のための通信が行われる。
【0042】
物流ゲート内の物品に張られたRFIDタグの識別が行われ、物品が物流ゲートから移動された場合には、図7の(a)の状態に戻る。
【0043】
RFIDタグ通信装置711は、物流ゲートの右側面に設置したアンテナ712が左側面に配置したRFIDタグ722に対して応答確認が正常に行える。同様に上面に設置したアンテナ713が床面に配置したRFIDタグ721に対して応答確認を行えるようになり、左側面に設置したアンテナ714が右側面に配置したRFIDタグ720に対して応答確認が行えるようになる。
【0044】
このことにより、RFIDタグ通信装置711は、送信出力レベルを下げて物流ゲート内のRFIDタグ720,721,722に対して最小電力レベルに戻して応答確認を行う。
【0045】
以後、物流ゲートに次の識別対象のRFIDタグの貼られた物品が通過するたびに送信出力レベルの制御と応答確認を繰返す。
【0046】
以上の構成により、物流ゲートに設置するRFIDタグ通信装置が最小限の電力レベルで動作するので、物流ゲートが複数設置され場合に相互干渉が抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
複数台の移動体識別用無線設備を用いたシステム。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態に係るRFIDタグ通信装置の構成図である。
【図2】図1について識別対象のRFIDタグが通信範囲内に移動する前の状態を説明する図である。
【図3】図1について識別対象のRFIDタグが通信範囲内に移動してきた状態を説明する図であり、(a)図は、RFIDタグ通信装置の送信レベル制御前の状態を説明する図、(b)図は、RFIDタグ通信装置の送信レベル制御後の状態を説明する図である。
【図4】図1について識別対象のRFIDタグが通信範囲外に移動した状態を説明する図であり、(a)図は、RFIDタグ通信装置の送信レベル制御前の状態を説明する図、(b)図は、RFIDタグ通信装置の送信レベル制御後の状態を説明する図である。
【図5】従来の移動体識別用無線装置が単体で動作する場合を説明する図である。
【図6】従来の移動体識別用無線装置が複数台で動作する場合を説明する図である。
【図7】RFIDタグを貼り付けた物品が物流ゲートを通過する際にRFIDタグの読取りを行って入出庫管理を行うシステムを説明する図であり、(a)図は、RFIDタグを貼り付けた物品が物流ゲートを通過する前の状態の図、(b)図は、RFIDタグを貼り付けた物品が物流ゲートを通過している状態の図である。
【符号の説明】
【0049】
110…RFIDタグ通信装置、111…通信範囲、120…RFIDタグ(固定配置1)、121…RFIDタグ(固定配置2)、122…RFIDタグ(固定配置n)、210…RFIDタグ通信装置、211…通信範囲、220…RFIDタグ(固定配置1)、221…RFIDタグ(固定配置2)、222…RFIDタグ(固定配置n)、223…RFIDタグ(識別対象)、310…RFIDタグ通信装置、311…通常の通信範囲、312…識別対象のRFIDタグが移動したために変化した通信範囲、320…RFIDタグ(固定配置1)、321…RFIDタグ(固定配置2)、322…RFIDタグ(固定配置n)、323…RFIDタグ(識別対象)、410…RFIDタグ通信装置、411…通常の通信範囲、412…送信レベルを上げたために拡大した通信範囲、420…RFIDタグ(固定配置1)、421…RFIDタグ(固定配置2)、422…RFIDタグ(固定配置n)、510…RFIDタグ通信装置、520…RFIDタグ、610…RFIDタグ通信装置A、611…通信範囲、612…RFIDタグ通信装置B、613…通信範囲、620…RFIDタグA、621…RFIDタグB、710…物流ゲート、711…RFIDタグ通信装置、712…アンテナ(右側面)、713…アンテナ(上面)、714…アンテナ(左側面)、720…RFIDタグ(右側面)、721…RFIDタグ(床面)、722…RFIDタグ(左側面)、723…RFIDタグA、724…RFIDタグB、725…RFIDタグC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグ通信装置の通信可能範囲の境界位置に単数または複数のRFIDタグを設置することにより、
この境界位置に設置したRFIDタグと通信を行い、通信の成功率が規定値以下にならないように送信電力を低く調整して、
あるいは、この境界位置に設置したRFIDタグと通信を行い、受信信号対雑音のレベル比を求めた値が規定値以下にならないように送信電力を低く調整して、
通信可能範囲に必要な最小送信電力値を容易に求められるように改善したことを特徴とするRFIDタグ通信装置。
【請求項2】
請求項1の構成において、RFIDタグ通信装置の識別対象のRFIDタグが通信可能範囲内に移動することを検出する場合に、境界位置に設置したRFIDタグの通信が正常に行えなくなることを検出して送信電力を増加する制御を行うことにより、識別対象のRFIDタグと安定した通信を行うこと、
その後、識別対象のRFIDタグがRFIDタグ通信装置の通信可能範囲外に移動することを検出する場合に、境界位置に設置したRFIDタグ通信と通信が行えており、かつ識別対象のRFIDタグとの通信ができなくなることを検出することで、請求項1で求める最小送信電力に戻す制御を行うこと、
このことにより、識別対象のRFIDタグと通信を行う時以外は、送信電力を最小限に抑えることができ、近隣に設置した別のRFIDタグ通信装置の通信へ与える干渉波の影響を改善することを特徴とするRFIDタグ通信装置。
【請求項3】
識別対象のRFIDタグがRFIDタグ通信装置の通信範囲内で移動する経路が予め決まっている場合において、
通過経路の近くに単数または複数のRFIDタグを設置することで、
識別対象のRFIDタグと通信を行う前に、通過経路の近くに設置したRFIDタグと通信を行って受信信号レベルが最大となるようにRFIDタグ通信装置の復調部へ入力するローカル信号の遅延値を制御することにより、
識別対象のRFIDタグが通信可能範囲内の通過経路を移動する間に行われる通信状態を改善することを特徴とするRFIDタグ通信装置。
【請求項4】
RFIDタグ通信装置の通信可能範囲の境界位置にRFIDタグを複数配置する場合において、識別対象のRFIDタグが通信可能範囲内を移動する時に境界位置に設置したRFIDタグの通信の成功率が低下する情報を元に識別対象のRFIDタグが通信可能範囲内の移動した経路を特別なセンサが追加することなく検知することを特徴とするRFIDタグ通信装置。
【請求項5】
請求項4の構成において、RFIDタグの通信を妨げる物体が通信可能範囲内を移動する時に境界位置に設置したRFIDタグの通信の成功率が低下する情報を元に通信可能範囲内の移動した経路を特別なセンサが追加することなく検地することを特徴とするRFIDタグ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−301004(P2008−301004A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142767(P2007−142767)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】