説明

RNAの生物学的分析

本発明は、被検体の尿における腎臓RNAマーカーを測定することに関連する、腎臓の病理学的な状態を特徴付ける方法、作用物質を特徴付ける方法、作用物質の腎臓への予防的および治療的な特徴を評価する方法、および被検体の腎臓における医薬作用物質の作用のモニター方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、2005年1月28日付けで出願された米国特許本出願番号11/046,301、および、2004年6月30日付けで出願された米国特許仮出願番号60/584,461の利益を主張し、これらは参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、被検体の尿における腎臓RNAマーカーを測定することに関連する、腎臓の病理学的な状態を特徴付ける方法、作用物質を特徴付ける方法、作用物質の腎臓への保護的および治療的な特徴を評価する方法、および、被検体の腎臓における薬剤の医薬作用物質のモニター方法に関する。
【背景技術】
【0003】
製薬分野において、医薬作用物質の毒物学的な潜在性を最小化する多大な努力がなされている。毒物曝露に関連する危険のなかでも、体細胞に障害または死を引き起こす可能性が挙げられ、それにより、生体の器官へのダメージが生じる可能性がある。
【0004】
MandelおよびMetais(1948)は、ヒト血漿中の細胞外核酸の発見を報告した。
【0005】
Lo,K.W.等(1999)およびKopreski,M.等(1999)は双方とも、癌患者の血漿中での腫瘍由来のRNAの検出を報告している。
【0006】
Chen,X.Q.等(2000)は、乳癌患者の血清中の検出マーカーとしてのテロメラーゼRNAの使用を提唱している。
【0007】
Poon,L.L.等(2000)は、母体血漿中の胎児RNAの存在を報告している。
【0008】
米国特許第6,329,179号は、癌または前癌の状態の検出、モニターまたは評価のための、血液の血漿または血清分画中に循環していることが見出された腫瘍由来または腫瘍関連の細胞外RNAの使用を開示している。
【0009】
米国特許第6,156,504号は、新生物に関連する突然変異を含む、ヒトまたは動物における良性、前癌または悪性新生物の存在、進行または臨床状態を、血漿または血清分画中の新生物の突然変異核酸の検出による検出、同定またはモニターすることを開示している。
【0010】
米国特許第6,020,124号は、生体液中での突然変異遺伝子および腫瘍遺伝子に関する可溶性DNAの検出を開示している。
【0011】
RNAは不安定と考えられているため、研究者は、ヒト血漿中のRNAを分解から保護する可能性のあるメカニズムを研究してきた。Hasselmann,D.O.等(2001)は、インビトロでのモデルにおいて、黒色腫細胞によって放出されたアポトーシス小体中のmRNAは、ヒト血清中でインキュベートすると、分解から保護されたことを報告している。
【0012】
Ng,E.K.O.等(2002)は、相当部分の血漿mRNAは粒子に結合していることを報告している。
【0013】
同一出願人による米国特許出願番号10/745823は、細胞中のメッセンジャーRNA放出を高める物質の能力を測定することによる、物質の細胞にダメージを与える可能性を評価する方法を開示している。
【0014】
物質が、腎臓において組織および細胞のダメージを引き起こすかどうかを決定するのに利用可能な従来の方法は、尿の物理的および化学的特徴(例えば、色、透明性、臭気、量、重量オスモル濃度、比重、pH、ならびに沈渣、タンパク質、グルコース、ビリルビン、血液、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩および酵素の存在)を測定すること、腎機能試験を行うこと、血中尿素窒素を測定すること、および血清クレアチンを測定することを含む。しかしながら、早期発見のためにこのような指標を使用するための能力は、酵素放出の速さや検出感度などの多数の因子に依存する。従って、従来の毒性検出方法に比べてより高い特異性と感度を有する毒性のさらなる早期の生物学的指標またはバイオマーカーを見出すことへの関心が高まっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
腎臓特異的アンドロゲン調節タンパク質(KAP)は、腎臓の近位尿細管の上皮細胞に発現される。Toole等(1979);MeseguerおよびCatterall(1987)。近位尿細管の上皮細胞で発現された膜タンパク質、腎障害分子−1(KIM−1)は、虚血性障害後にアップレギュレートされ、同様に、腎毒性物質、S−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)−L−システイン(TFEC)、葉酸およびシスプラチンでの処理後もアップレギュレートされる。Ichimura等(1998);Ichimura等(2004)。ヘパリン結合性上皮増殖因子(HB−EGF)の発現は、虚血性障害の後に、および腎毒性物質の塩化第二水銀での処理の後に腎臓で誘導される。Homma等(1995)。線維芽細胞増殖因子1(FGF−1)およびケラチノサイト増殖因子(FGF−7)、タンパク質の線維芽細胞増殖因子ファミリーの種類、ならびにFGF−7受容体、FGFR2IIIbは、TFECでの処理の後に腎臓で誘導される。Ichimura等(1995);Ichimura等(1996)。水チャンネルタンパク質のアクアポリン1、2および3は、腎臓で高度に発現される。Agre等(1993);Fushimi等(1993);および、Ishibashi等(1994)。タム−ホースフォール糖タンパク質は、腎上皮細胞で発現され、腎臓のヘンレのループの太い上行脚、および遠位尿細管に局在している。Sikri等(1981);およびZhu,X.等(2002)。初期の増殖応答遺伝子、Egr−1、癌原遺伝子、c−fos、およびストレス応答遺伝子、Hsp70の発現は、腎臓の虚血性障害の後に活性化される。Ouellette等(1990);BardellaおよびComolli(1994)。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、一つには、被検体の腎臓の病理学的な状態を特徴付ける方法に関し、本方法は、哺乳動物の被検体(好ましくはヒト被検体)からの尿サンプルを採取すること、および前記尿サンプル中の腎臓RNAマーカーの量を測定することを含む。好ましい実施形態において、前記方法は、前記尿サンプルが、腎臓の病理学的な状態を有さないコントロール被検体で測定される量より少なくとも2倍高い量の前記腎臓RNAマーカーを含む場合、前記被検体を、腎臓の病理学的な状態を有すると特徴付けることをさらに含む。
【0017】
本発明のさらなる形態は、作用物質を特徴付ける方法を提供し、本方法は、非ヒト哺乳動物の被検体を作用物質で処理すること、および前記被検体の尿に放出された腎臓RNAマーカーの量への前記物質の作用を測定することを含む。好ましい実施形態において、前記腎臓RNAマーカーは、KAP、KIM−1、HB−EGF、FGF−1、FGF−7、FGFR2IIIb、アクアポリン1、アクアポリン2、アクアポリン3、タム−ホースフォール糖タンパク質、Egr−1、c−fos、およびHsp70から選択される。
【0018】
本発明のさらなる形態は、作用物質の腎臓への保護的な特徴を評価する方法に関し、本方法は、非ヒト哺乳動物の被検体を第一の作用物質で処理すること(ここにおいて、前記第一の作用物質は、前記被検体の尿に放出される腎臓RNAマーカーの量を高めることを特徴とする)、前記被検体を第二の作用物質で処理すること、および前記第一の作用物質によって引き起こされた前記被検体の尿に放出された前記腎臓RNAマーカーの量を減少させることにおける、前記第二の作用物質の作用を測定すること、を含む。
【0019】
本発明のその他の形態は、被検体の腎臓における医薬作用物質の作用のモニター方法を提供し、本方法は、ヒト被検体を医薬作用物質で処理すること、および前記被検体の尿に放出された腎臓RNAマーカーの量への前記作用物質の作用を測定することを含む。
【0020】
本発明の全ての方法の好ましい実施形態において、前記腎臓RNAマーカーは、KAP、KIM−1、HB−EGF、FGF−1、FGF−7、FGFR2IIIb、アクアポリン1、アクアポリン2、アクアポリン3、タム−ホースフォール糖タンパク質、Egr−1、c−fos、およびHsp70から選択される。
【0021】
定義
本明細書で用いられる用語は、当業界におけるそれらの通常の意味を有する。
しかしながら、本発明をさらに明確にするために、便宜上、本明細書(実施例および添付の特許請求の範囲を含む)で用いられる特定の用語および語句の意味を以下に示す。
【0022】
「作用物質」は、作用をもたらすための化学的、生物学的または物理的な手段を意味する。作用物質は、化学物質または生化学物質、生物学的な病原体または物理的摂動のうち1種または2種もしくはそれ以上の組み合わせであり得る。
【0023】
「ヌクレオチド配列」および「ポリヌクレオチド」は、DNAまたはRNAを意味し、一本鎖または二本鎖の形態のいずれでもよい。用語「相補的ヌクレオチド配列」は、グアニジンヌクレオチド(G)とシチジンヌクレオチド(C)との対形成、アデノシンヌクレオチド(A)とチミジンヌクレオチド(T)との対形成(ただ、RNAの場合Tがウリジンヌクレオチド(U)で置換されているためUがAと結合する)により他方のヌクレオチド配列にアニールする(結合する)ヌクレオチド配列を意味する。
【0024】
「病理学的な状態」は、生物学的に異常な状態を意味し、例えば、器官、組織型または細胞型の異常な状態が挙げられる。この用語は、原因を問わず異常であることを意味し、例えば、生理学的な異常、遺伝学的な異常、または病原性物質、物理的な障害もしくは生体異物によって引き起こされる毒性によって引き起こされる病気が挙げられる。
【0025】
「RNAマーカー」は、細胞のDNA遺伝情報から転写された特定の配列を有するRNAポリヌクレオチド、またはそれらのフラグメントを意味する。RNAマーカーという用語は、細胞で、例えば対応するDNA配列からコピーされた後5’キャッピング、RNAスプライシングおよび3’ポリアデニル化によってプロセシングされたmRNAポリヌクレオチド、またはそのフラグメントを含む。「RNAマーカー」が、器官、組織型または細胞型の名称の後にくる場合(例えば「腎臓RNAマーカー」)、この用語は、その器官、組織型または細胞型でRNAマーカーが転写されることを意味する。本発明の目的で、このような用語の使用は、好ましくは、指定された器官、組織型または細胞型においてのみ転写されるRNAマーカーを意味する。しかしながら、この用語はまた、本発明に係る対象となる特定の器官、組織型または細胞型を同定するのに用いることができるRNAマーカーも含む。例えば、尿中の腎臓RNAマーカーを測定することによって腎臓の病理学的な状態を特徴付けることを含む本発明の方法において、特定のRNAマーカーが、例えば第二の器官または組織におけるあらゆる発現が、その第二の器官または組織の病状の結果として尿中で検出される可能性が低いのであれば、もっぱら腎臓でのみで発現されるものでなくてもよい。
【0026】
略語:
本明細書で用いられる略語は、当業界におけるそれらの通常の意味を有する。しかしながら、本発明をさらに明確にするため、便宜上、いくつかの略語の意味を以下に示す:「℃」は、セ氏度を意味し;「cDNA」は、相補的DNAを意味し;「CT」は、増幅のサイクル数を意味し;「dL」は、デシリットルを意味する、「DNA」は、デオキシリボ核酸を意味し;「EDTA」は、エチレンジアミンテトラ酢酸を意味し;「g」は、グラムを意味し;「kg」は、キログラムを意味し;「NaOH」は、水酸化ナトリウムを意味し;「mRNA」は、メッセンジャーRNAを意味し;「mg」は、ミリグラムを意味し;「mL」は、ミリリットルを意味し;「ng」は、ナノグラムを意味し;「PCR」は、ポリメラーゼ連鎖反応を意味し;「PBS」は、リン酸緩衝生理食塩水を意味し;「RNA」は、リボ核酸を意味し;「RPM」は、毎分回転数を意味し;および、「RT−PCR」は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
【0027】
図1は、ラットKIM−1およびKAPを増幅し、検出するのに用いることができるPCRプライマーおよびPCRプローブの配列を示す。
【0028】
発明の詳細な説明
正常な細胞の代謝回転中、哺乳動物細胞は、血漿中で検出可能なRNAを放出する。本発明は、一つには腎細胞によるRNAの放出が、化学物質によって引き起こされる細胞傷害によって激化するという発見に基づいており、この作用は、哺乳動物の尿中で検出することができ、腎障害の有用な指標である。本発明の一形態は、遺伝子転写の組織型に特異的なおよび細胞型に特異的な性質(すなわち、特定の組織型または細胞型に関して、いくつかの遺伝子は転写可能だが、それ以外の遺伝子は転写されない可能性がある)、および特定の遺伝子転写物の、組織型および細胞型に特異的なスプライシング配列を利用する。特定の組織型または細胞型に特有であるRNAは、特定の器官、組織型または細胞型に関する生物学的、生理学的または毒物学的な障害のバイオマーカーとして使用することができる。
【0029】
本発明は、潜在的毒性の作用物質の試験方法、治療作用物質の同定方法、治療作用物質の有効性の試験方法、および腎臓の病理学的な状態を特徴付ける方法を提供し、これらの方法は細胞傷害または細胞死の指標として腎細胞による尿へのRNAの放出に基づく。当業者既知の、またはこの開示に基づいて明白となるRNA検出技術は、本発明の実施において有用である。
【0030】
一実施形態は、作用物質の腎毒性を早期発見するためのインビボでの非侵襲的方法を提供する。このような方法によれば、被検体の尿を試験して、特定の腎臓RNAマーカーのRNAレベルを決定することができる。作用物質の毒性は、被検体の尿で測定して、細胞によるRNA放出を引き起こすそれらの能力に基づいて評価される。このような方法は、例えば試験動物を用いて、試験作用物質の腎毒性を評価するためのインビボアッセイとして有用となる。また、本方法を臨床的に用いて、起こり得る腎毒性を早期に警戒するために、薬物処理後に患者を非侵襲的にモニターしてもよい。
【0031】
さらなる実施形態において、本発明は、試験作用物質の腎臓への保護的または治療的な特徴を評価するための非侵襲的な方法を提供する。このような方法によれば、例えば腎臓RNAマーカーの放出を高めることが既知である作用物質で処理された腎細胞によって放出された腎臓RNAマーカーの量の減少は、その試験作用物質が、腎臓に対する望ましい保護的または治療効果を有することを示すことの指標となる。
【0032】
本発明の方法の実施において、尿は、被検体から、滅菌収集チューブまたはバイアルに収集される。好ましくは、全ての収集器具および容器は、外来のRNAをまったく含まない。次に、この尿は、好ましくは急速凍結され、80℃で保存される。
【0033】
一般的に、本発明の方法を実施するためのRNAの検出は、複数の工程段階を伴う:(1)RNAの抽出;(2)増幅(これは、RNAからそのcDNAへの逆転写を含む場合がある);および(3)検出。いかなる特定の理論またはメカニズムにも拘束されるものではないが、細胞外RNAは、タンパク質−RNA、リポタンパク質−RNA複合体、脂質−RNA、またはDNA−RNA複合体として細胞外に存在し、さらに、このような複合体化は、RNAの増幅およびRNAレベルの検出に干渉する可能性があると考えられる。従って、この理論に従って、増幅および検出の前に、RNAが結合した複合体からRNAを解離するための抽出工程を用いることが好ましい。
【0034】
本発明の実施において、当業者既知の多数の核酸抽出方法のいずれかを用いることができる。公開されている方法の多くは、細胞内RNAの抽出を目的としているが、これらは、文献に記載されている通りに用いてもよいし、または本発明の開示に基づいて当業者には明白となる改変を施して用いてもよい。例えば、細胞外RNAは、Boom等(1990)またはCheung等(1994)に記載されている方法のように、シリカ粒子、ガラスビーズまたは珪藻類を用いて抽出してもよい。
【0035】
本発明のインビトロでの方法のために細胞増殖培地からRNAを抽出する典型的な方法において、当技術分野でよく知られた方法(例えば、遠心分離またはろ過)によって細胞から分離した培地を、カオトロピック物質のようなRNA安定剤(例えば、米国特許第5,234,809号に記載されているようなグアニジニウム(イソ)チオシアネート)で処理する。次に、RNAを固体結合剤(例えばシリカ粒子)に結合させる。次に、RNA−固相をろ過によって液相から分離することができる。次に、RNAは、用いてシリカ粒子から溶出してもよいし、RNAは、10mMのトリス−HCl、1mMのEDTAからなる緩衝液(pH8.0)を用いて溶出してもよい。
【0036】
典型的な尿からの抽出方法において、尿約0.1mL〜約1.0mLを、以下で説明されているように製造された水性シリカ懸濁液40マイクロリットル、および以下に記載されているように製造された溶解緩衝液約900マイクロリットルと混合し、室温で約10分間混合する。次に、この混合物を12,000×gで1分間遠心分離し、上清を除去する。次に、得られたシリカ−RNAペレットを、以下に記載されているように製造された洗浄緩衝液約450マイクロリットル、続いて70%(vol/vol)エタノール約1mlで2回洗浄する。最後に、このペレットをアセトン1mLで洗浄し、約56℃で約10分間乾燥させる。次に、このシリカペレットをジエチルプロカーボネートで処理した水約20〜50マイクロリットルに56℃で約10分間懸濁し、続いて約12,000×重力で約3分間遠心分離することによって、シリカペレットからRNAを溶出する。あるいは、Boom等(1991)に記載されている方法に従って、RNAは、10mMトリス−HCl、1mMのEDTA(pH8.0)およびRNアーゼ阻害剤(例えばRNAsin(R),プロメガ(Promega),マディソン,ウィスコンシン州)からなり、プロテイナーゼ(例えばプロテイナーゼK)を含む、または含まない緩衝液を用いて溶出してもよい。得られたRNAを含む上清を、増幅および検出のために回収する。
【0037】
上述の水性シリカ懸濁液は、二酸化ケイ素(シグマ−アルドリッチ社(Sigma−Aldrich Corp.),セントルイス,ミズーリ州)60グラムを脱塩滅菌再蒸留水500mLに懸濁することによって製造してもよい。次に、この懸濁液を室温で約24時間静置する。上清を除去し、粒子を、体積500ミリリットルに等しくなるように添加した脱塩滅菌再蒸留水に懸濁した。この懸濁液を静置したら、上清約440ミリリットルを除去し、懸濁液のpHを、塩酸を用いて約pH2に調節する。
【0038】
上述の溶解緩衝液は、グアニジンチオシアネート120グラムを、0.1Mトリス塩酸塩(トリス−HCl)(pH6.4)100mL、および0.2MのEDTA22ミリリットルに溶解させ、NaOHとトリトン(Triton)X−100(シグマ−アルドリッチ社)2.6グラムで、pH8.0に調節することによって製造される。
【0039】
上述の洗浄緩衝液は、グアニジンチオシアネート120グラムを、0.1Mトリス−HCl(pH6.4)100ミリリットルに溶解させることによって製造される。
【0040】
RNAを抽出するその他の方法を用いてもよく、例えば、これらに限定されないが、例えばChirgwin等(1979)に記載されているような、塩化セシウム濃度勾配による遠心分離、および例えばFournie等(1986)で一般的に記載されているような、ゼラチンを用いた血漿または血清からの細胞外RNAの共沈殿が挙げられる。その他のRNA抽出方法は、本発明の開示に基づいて当業者には明らかとなる。
【0041】
尿からの好ましいRNA抽出方法としては、RNイージー(RNeasyTM)キット(カタログ番号74124,キアゲン社(Qiagen Inc.),バレンシア,カリフォルニア州)、またはQIAアンプ(QIAamp)ウイルスRNAキット(キアゲン社)の使用が挙げられる。
【0042】
増幅および検出の前に、痕跡DNAを除去することによってRNAをさらに精製することが望ましい場合がある。さらなる精製は、Rashtchian,A.(1994)に記載されている方法に従って、DNアーゼを用いて達成してもよい。
【0043】
上述のようにして抽出され、必要に応じて精製されたRNAは、所望の腎臓RNAマーカーに関する核酸増幅アッセイを用いて増幅してもよい。本発明の実施において、任意の腎臓RNAマーカーが使用可能である。好ましい腎臓RNAマーカーとしては、腎臓特異的アンドロゲン制御タンパク質(KAP)(例えば、Toole等(1979)、ならびにMeseguerおよびCatterall(1987)に記載されているもの)、腎障害分子−1(KIM−1)(例えば、Ichimura等(1998)およびIchimura等(2004)に記載されているもの)、ヘパリン結合性上皮増殖因子(HB−EGF)(例えば、Homma等(1995)に記載されているもの)、線維芽細胞増殖因子1(FGF−1)、ケラチノサイト増殖因子(FGF−7)、FGF−7受容体、およびFGFR2IIIb(例えば、Ichimura等(1995)、およびIchimura等(1996)に記載されているもの)、水チャンネルタンパク質、アクアポリン1、2および3(例えば、Agre等(1993)、Fushimi等(1993)およびIshibashi等(1994)に記載されているもの)、タム−ホースフォール糖タンパク質(例えば、Sikri等(1981)、およびZhu,X.等(2002)に記載されているもの)、Egr−1およびc−fos(例えば、Ouellette等(1990);BardellaおよびComolli(1994)に記載されているもの)、およびストレス応答遺伝子、Hsp70(例えば、Bardella、およびComolli(1994)に記載されているもの)が挙げられる。
【0044】
本発明の実施において、少数のRNA分子の検出が可能な任意の核酸増幅アッセイが使用可能である。適用可能なアッセイとしては、これらに限定されないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、リガーゼ連鎖反応(例えば、Abravaya,K.等(1995)を参照)、分岐状DNAシグナル増幅(例えば、Jrdea,M.S.等(1993)を参照)、等温の核酸配列に基づく増幅(NASBA)(例えば、Kievits,T.等(1991)を参照)、およびその他の自律性配列複製分析が挙げられる。
【0045】
本発明に係るRNA増幅のための好ましい実施形態は、RT−PCRの使用によるものである。RT−PCRを用いたRNAの増幅方法は当業者周知であり、文献で十分に記載されている(例えば、Ausubel等(1994)、およびInnis等(1990)を参照)。
【0046】
当業者であれば本発明の開示に基づいて明白と思われるが、増幅に使用しようとするプライマー、および例えばRT−PCRによる増幅産物を検出するためのプローブの選択は、本発明の方法によって評価される細胞型に依存することになる。本発明のインビトロでの方法にとって、このような評価は、1種またはそれ以上の細胞型を含む細胞培養の使用を伴う。インビボでの本方法にとって、このような評価は、被検体の体内の多数の異なる細胞型が必要となる場合がある。
【0047】
従って、プローブおよびプライマー群は、このような細胞の1種またはそれ以上の転写された遺伝子を標的とすべきであり、それらの転写を用いて上記細胞を同定することが可能になる。好ましくは、このようなプローブおよびプライマーは、ある特定の細胞型に特有のRNAを標的とするものとなる。また、このような遺伝子は、細胞の状態または細胞に影響を与える状態に関係なく、比較的高レベルで転写されていることが好ましく、連続して転写されていることも好ましい。
【0048】
プローブおよびプライマーの製造および使用方法は当技術分野でよく知られており、例えば、Sambrook等(1989)、Ausubel等(1994)およびInnis等(1990)に記載されている。PCRプライマー対は、例えば、その目的(例えばプライマー)を対象としたコンピュータープログラムを用いることによって、既知の配列から誘導することができる(バージョン0.5,1991,ホワイトヘッド・バイオ医療研究所(Whitehead Institute for Biomedical Research),ケンブリッジ,マサチューセッツ州)。
【0049】
プライマーとしての使用するためのオリゴヌクレオチドは、このような目的のための当技術分野で既知のソフトウェアを用いて選択される。例えば、オリゴ(Oligo(R))バージョン6ソフトウェア(モレキュラー・バイオロジー・インサイト社(Molecular Biology Insights,Inc.),カスケード,コロラド州,www.oligo.net)は、それぞれ100ヌクレオチド以下のPCRプライマー対の選択に有用であり、さらに、インプットされた32キロベース以下のポリヌクレオチド配列からの、5,000ヌクレオチド以下のオリゴヌクレオチドおよびそれより大きいポリヌクレオチドの解析にも有用である。同様のプライマー選択プログラムに、拡張機能に関する追加の特徴が含まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス大学ゲノムセンター(Genome Center at University of Texas),サウスウエスト・メディカルセンター(South West Medical Center),ダラス,テキサス州から一般公開されている, ftp://ftp.genome.ou.edu/pub/programs/primou src.tar)は、メガベースの配列から特定のプライマーを選択することができ、従って、プライマーをゲノム規模で設計するのに有用である。プライマー3(Primer3)、バージョン0.9、プライマー選択プログラム(ホワイトヘッド研究所(Whitehead Institute)/MITゲノム研究センター(MIT Center for Genome Research),ケンブリッジ,マサチューセッツ州, http://www-genome.wi.mit.edu/genome software/other/primer3.htmlから一般公開されている)では、使用者が「ミスプライミングライブラリー」をインプットすることが可能になり、この場合、プライマー結合部位として回避すべき配列は、使用者指定である。プライマー3は、特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である。(後者の2種のプライマー選択プログラムに関するソースコードはまた、それらのそれぞれのソースから得てもよいし、使用者の具体的な要求を満たすようにさらに改変してもよい)。PrimeGenプログラム(英国ヒトゲノム・マッピングプロジェクト・リソースセンター(UK Human Genome Mapping Project Resource Centre,ケンブリッジ,英国)から一般公開されている,http://www.hgmp.mrc.ac.uk/Registered/Option/primegen.html)は、複数の配列アライメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、並べられた核酸配列の最も保存された領域、または最も保存されていない領域のいずれかにハイブリダイゼーションするプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、特有のオリゴヌクレオチド、および保存されたオリゴヌクレオチドの両方、ならびにポリヌクレオチドフラグメントの同定に有用である。その他のオリゴヌクレオチド選択方法は、本発明の記載に基づけば当業者には明白であろう。
【0050】
上述のようにして抽出および/または増幅したRNAは、検出方法を用いて検出することができる。RNA検出方法は当業者によく知られており、例えば、Sambrook等(1989)、Ausubel等(1994)およびInnis等(1990)に記載されている。
【0051】
好ましい検出システムは、統合型のサーマルサイクラー、蛍光を誘起する光源および検出器を用いた、PCRサイクル中のRNAのリアルタイム検出を用いるものである。このような検出を行うための典型的な機器は、ABIプリズム(ABI PRISM(R))7700配列検出システム(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems),フォスターシティー,カリフォルニア州)である。
【0052】
RNAを検出するための別の方法は、本発明の説明に基づけば当業者には明白となる。このような方法としては、例えばゲル電気泳動、続いて サザンブロット分析(例えば、Nguyen,T.D.(1989)を参照)、ELISA検出方法(例えば、Landgraf,A.等(1991)、Coutlee,F.等(1989)、およびBobo,L.等(1990)を参照)、および電気化学発光検出を用いた方法(例えば、Blackburn,G.F.(1991)、およびDiCesare,J.等(1993)を参照)が挙げられる。電気泳動による検出方法は、2種またはそれ以上のRNA群のバンドの比較を含んでいてもよい。一方のRNA群から得られた1つのゲルのオートラジオグラフに存在するバンドと、他方のオートラジオグラフに存在しないバンドとは、一方の群にある特定のRNAの存在と、他方の群にないRNAの存在とに相当するため、差異的に発現される可能性が高い遺伝子を示す(例えば、Williams,J.G.(1990)、Welsh,J.等(1990)、Woodward,S.R.(1992)、Nadeau,J.H.(1992)、Liang,P.等(1992)、Welsh,J.等(1992)、およびLiang,P.等(1993)を参照)。
【0053】
最後に、本発明に係る検出方法は、アレイまたはマイクロアレイの使用を含んでいてもよい。アレイおよびマイクロアレイは、基質上に合成された別個のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド群であり、基質としては、例えば、紙、ナイロンまたはその他のタイプのメンブレン、フィルター、チップ、スライドガラス、またはその他のあらゆる適切な固体支持体が挙げられる。好ましい実施形態において、アレイおよびマイクロアレイは、米国特許第5,837,832号、PCT国際公開WO95/11995、Lockhart等(1996)およびSchena,M.等(1996)に記載されている方法に従って製造および使用が可能である。その他の実施形態において、このようなアレイは、米国特許第5,807,522号に記載されている方法によって生産される。
【0054】
本明細書で引用された全ての特許、出願および遺伝子登録番号(関連情報を含む)、刊行物および文書、例えばパンフレットまたは技術報告の開示は、参照によりそれらの全体を本明細書に明示的に組み入れる。
【0055】
当業者であれば、本発明の記載(実施例、図面、配列表および添付の請求項を含む)を用いて、本発明を最大限利用することができると考えられる。以下の実施例は、単に本発明の実施の説明と解釈すべきであり、どのような形でも開示されていない部分をまったく限定するものではない。
【0056】
実施例1
0日目と1日目に、4匹の雄スプラーグ−ドーリーラット(チャールス・リバー・ラボラトリーズ(Charles River Laboratories),ウィルミントン,マサチューセッツ州)から排泄された尿を、午前中1回、および夕方1回、回収した。RNA非含有のアルミニウム箔で覆って各ラットを保定しながらラットの腹部と胸部を手で刺激することによって排尿を行った。各期間における全てのラットの尿をプールし、急速凍結し、80℃で保存した。2日目の初めに、各ラットに、シスプラチンを、用量10mg/kgで腹腔内注射で投与した。2日目と3日目に、排出された尿を、再び、午前中1回、および夕方1回、回収し、プールし、急速凍結した。4日目に、排出された尿を午前中に回収し、プールし、急速凍結した。次に、ラットを安楽死させ、腎臓を剖検で回収した。腎臓組織を10%中性緩衝ホルマリン中で固定し、組織病理のために、トリミング、脱水、パラフィンへの包埋、切片作成、スライドガラス上へのマウント、およびヘマトキシリンとエオシン染色液での染色によって処理した。全ての動物が、尿細管上皮細胞において軽度の壊死を示し、この壊死は、個々の細胞壊死が、尿細管上皮細胞の再生領域に関連することを特徴としていた。
【0057】
RNイージーTMミニキット(キアゲン社,バレンシア,カリフォルニア州)を製造元の説明書に従って用いて、各期間の尿の一部(650μl)をRNA抽出に用いた。RNAマーカーのKIM−1およびKAPの存在に関して、RT−PCRを用いて尿を分析した。
【0058】
KIM−1については、フォワードプライマーとして5’−AAACTCCATCATATACTCCTGCAGACT−3’、リバースプライマーとして5’−ATTCTTACAGTGTGATTATTCCAGGCCTCCTCTGAG−3’、プローブとして5’−TTCTCTGCGGCTTCCTCAAA−3’を用いた。
【0059】
KAPについては、フォワードプライマーとして5’−GTGCTGACTGTGGCTTTCC−3’、リバースプライマーとして5’−TCAAAGATTGAATCCTGTAGTTCTTCATTGAT−3’、プローブとして5’−CCAGTTTGGACATAGATTC−3’を用いた。ABIプリズム(R)7700配列検出システム(アプライド・バイオシステム)で、RT−PCRを行った。
【0060】
以下の表1と2に、実施例1の結果を示す。
【表1】

【0061】
実施例1は、被検体の尿における腎臓RNAマーカーを測定することに関連する本発明の方法を説明する。
【0062】
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【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ラットKIM−1およびKAPを増幅し、検出するのに用いることができるPCRプライマーおよびPCRプローブの配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の被検体からの尿サンプルを採取すること、および該尿サンプル中の腎臓RNAマーカーの量を測定することを含む、被検体の腎臓の病理学的な状態を特徴付ける方法。
【請求項2】
尿サンプルが、腎臓の病理学的な状態を有さないコントロール被検体で測定される量より少なくとも2倍高い量の腎臓RNAマーカーを含む場合、該被検体を、腎臓の病理学的な状態を有すると特徴付けることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腎臓RNAマーカーは、KAP、KIM−1、HB−EGF、FGF−1、FGF−7、FGFR2IIIb、アクアポリン1、アクアポリン2、アクアポリン3、タム−ホースフォール糖タンパク質、Egr−1、c−fos、およびHsp70から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
被検体は、ヒトである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
非ヒト哺乳動物の被検体を作用物質で処理すること;および
該被検体の尿に放出された腎臓RNAマーカーの量への該作用物質の作用を測定すること、
を含む、作用物質を特徴付ける方法。
【請求項6】
腎臓RNAマーカーは、KAP、KIM−1、HB−EGF、FGF−1、FGF−7、FGFR2IIIb、アクアポリン1、アクアポリン2、アクアポリン3、タム−ホースフォール糖タンパク質、Egr−1、c−fos、およびHsp70から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非ヒト哺乳動物の被検体を第一の作用物質で処理すること、ここにおいて、該第一の作用物質は、該被検体の尿に放出される腎臓RNAマーカーの量を高めることを特徴とする;
被検体を第二の作用物質で処理すること;および
該第二の作用物質の、該第一の作用物質によって引き起こされた該被検体の尿に放出された該腎臓RNAマーカーの量を減少させることへの作用を測定すること、
を含む、作用物質の腎臓への保護的または治療的な特徴を評価する方法。
【請求項8】
腎臓RNAマーカーは、KAP、KIM−1、HB−EGF、FGF−1、FGF−7、FGFR2IIIb、アクアポリン1、アクアポリン2、アクアポリン3、タム−ホースフォール糖タンパク質、Egr−1、c−fos、およびHsp70から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ヒト被検体を医薬作用物質で処理すること;および
該被検体の尿に放出された腎臓RNAマーカーの量への該医薬作用物質の作用を測定すること、
を含む、被検体の腎臓における医薬作用物質の作用のモニター方法。
【請求項10】
腎臓RNAマーカーは、KAP、KIM−1、HB−EGF、FGF−1、FGF−7、FGFR2IIIb、アクアポリン1、アクアポリン2、アクアポリン3、タム−ホースフォール糖タンパク質、Egr−1、c−fos、およびHsp70から選択される、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−504047(P2008−504047A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518728(P2007−518728)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002001
【国際公開番号】WO2006/003493
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】