RNA治療用ペプチドリボ核酸縮合体粒子のための化合物及び方法
直径1000nm未満の縮合粒子を含む化合物であって、ここでその粒子が1又はそれ以上の二本鎖リボ核酸(dsKNA)及び1又はそれ以上のペプチドを含む。この化合物、組成物、及び方法は、RNA干渉による遺伝子発現の調節に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA干渉の分野及びRNA治療送達の分野全般に関する。より詳細には、本発明はペプチドリボ核酸縮合体粒子の化合物及び組成物、並びにそれらの薬物への使用及び治療法としての送達への使用に関する。本発明は、哺乳動物内での遺伝子発現の遺伝子特異的抑制のためのRNA干渉における、ペプチドリボ核酸縮合化合物の使用方法全般に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)とは、短鎖干渉RNA(siRNA)と呼ばれる二本鎖RNA(dsRNA)が媒介する、配列特異的な転写後ジーンサイレンシングの方法のことである。Fireら,Nature,Vol.391,p.806, 1998、及びHamiltonら,Science,Vol.286,p.950−951, 1999、を参照のこと。RNAiは種々の動植物に共有されており、進化の過程で保存されてきた異質遺伝子の発現に対する細胞の防御メカニズムであると考えられている。Fireら,Trends Genet.,Vol.15,p.358, 1999、を参照のこと。
【0003】
従って、RNAiは、小さなノンコーディングRNAを用いて遺伝子の発現をサイレンシングする、普遍的内在性メカニズムである。Dykxhoorn,D.M. and J. Lieberman,Annu. Rev. Biomed. Eng.,Vol.8,p.377−402, 2006、を参照のこと。RNAiは、細胞死、分化、及び発生に関与する重要な遺伝子を制御することができる。RNAiはさらに、トランスポゾン及びウィルスによってコードされた侵入遺伝要素からゲノムを保護することもできる。siRNAは細胞内に導入されると内在性のRNAiメカニズムと結びつき、高い特異性をもって相補的配列を含むmRNAの発現を阻害する。いかなる疾患原因遺伝子、及び細胞種又は組織も潜在的に標的となり得る。この技術は、遺伝子機能解析並びに創薬ターゲットの探索及び確認に急速に利用されてきている。siRNAをインビボで細胞へ導入することには依然として重大な障害が伴うが、RNAiの利用は治療の分野においても非常に有望である。
【0004】
RNAiのメカニズムは、また完全には解明されていないが、標的となるmRNAの開裂を介するものである。RNAi応答には、RNA誘導性サイレンシング化合物(RISC)として知られるエンドヌクレアーゼ化合物が関与しており、この複合体がsiRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な一本鎖RNAの開裂を媒介する。標的RNAの開裂は、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央部で生じる(Elbashirら,Genes Dev.,Vol.15,p.188, 2001)。
【0005】
RNAiを行う一つの方法は、siRNAを細胞内へ導入するか、又は細胞内で発現させることである。もう一つの方法は、ダイサーと呼ばれる内在性のリボヌクレアーゼIII酵素を利用することである。ダイサーの一つの活性は、長鎖dsRNAをsiRNAへ変換することである。Hamiltonら,Science,Vol.286,p.950−951, 1999、及びBersteinら,Nature,Vol.409,p.363, 2001、を参照のこと。ダイサーから誘導されたsiRNAは通常、全体の長さが約21から23ヌクレオチドであり、約19塩基対の二本鎖部分を有する。Hamiltonら,Science,Vol.286,p.950−951, 1999、及びElbashirら,Genes Dev.,Vol.15,p.188, 2001、を参照のこと。実質的に、長鎖dsRNAはsiRNAの前駆体として細胞内に導入することができる。
【0006】
いろいろな治療の中でとりわけRNAi治療、アンチセンス治療、及び遺伝子治療の開発により、活性な核酸剤を細胞内へ導入するための有効な方法に対する需要が生じてきた。一般的に、核酸は細胞又は血漿内で非常に短い時間しか安定ではない。しかし、核酸剤は、細胞送達するのに十分に小さい粒子となり得る縮合化合物へと凝集するか又は結合することで安定化させることができる。
【0007】
最終的には治療法としての細胞間送達のために活性核酸剤を含有する小粒子を含む化合物、及びそのような化合物を作製する方法が求められている。特に、細胞へ二本鎖RNAを送達してRNAi応答を発生させるための化合物及び方法が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、RNA干渉及びその他の治療方法に使用するための様々なペプチド−リボ核酸化合物及び組成物の範囲を提供することにより、本技術分野におけるこれらの及びその他の障害を克服する。詳細には、本発明は、RNA干渉を通して標的遺伝子の発現を阻害する活性を有する、1又はそれ以上のペプチドと1又はそれ以上のリボ核酸剤とが縮合した安定な小粒子を含む化合物、並びに該化合物の製造方法を提供する。本概要は、図面の説明、本発明の詳細な説明、並びに添付の実施例、請求項、及び図面と合わせて、開示された本発明を包含する。
【0009】
ある局面では、本発明は、RNA干渉及びその他の治療方法に使用するための様々なペプチド−RNA化合物及び組成物を提供し、その化合物にはRNAiを通して標的遺伝子の発現を阻害する活性を有する、RNAとペプチドが縮合した安定な小粒子を含有する化合物を含む。本発明の化合物は、一般に合成ペプチドと核酸の様々な混合物又は縮合体として提供される。
【0010】
他の局面では、本発明の縮合化合物及び組成物は、ペプチド−RNA化合物から成る安定小粒子を含む。ある態様では、これらの化合物及び粒子は架橋することによってさらに安定化することができる。他の態様では、本発明の化合物及び組成物は送達促進のためにポリエチレングリコールなどのステルス剤(stealthing agent)又は表面改質剤を含む。
【0011】
さらなる局面では、本発明の化合物は1又はそれ以上のリボ核酸と1又はそれ以上のペプチド成分との縮合化合物を含む。ペプチド成分は、リボ核酸と結合して非共有結合によるペプチド−リボ核酸縮合化合物を形成するのに十分な正の電荷を保持することができる。
【0012】
ある局面では、本発明の縮合化合物は均一粒子を形成することができる。ある態様では、ペプチド−核酸化合物球状粒子の直径は、平均が1000ナノメートル(nm)未満の狭い分布をとることができる。
【0013】
本発明のペプチド−核酸縮合化合物は、独自の多成分製剤を提供することができる。ある態様では、インビボでの治療のために、化合物は細胞への送達のための担体若しくは運搬体、又は様々な送達マトリックスといった薬物送達のためのその他の薬剤と組み合わせることができる。
【0014】
ある態様において、化合物は、少なくとも一つのリボ核酸剤を水性溶液へ溶解し、それから少なくとも一つのペプチド成分をその水性溶液へ添加して粒径1000nm未満の粒子を縮合し、その後粒子の質量を増加させる第二のペプチド成分又は第三以降のペプチド成分をその水性溶液に添加することにより、1又はそれ以上のリボ核酸及び1又はそれ以上のペプチドから提供される。
【0015】
さらなる態様において、化合物は、第一のペプチド成分を水性溶液に溶解し、そしてリボ核酸剤をその水性溶液へ添加して粒径1000nm未満の粒子を縮合し、その後粒子の質量を増加させる第二のペプチド成分又は第三以降のペプチド成分をその水性溶液に添加することにより、1又はそれ以上のリボ核酸剤及び1又はそれ以上のペプチド成分から提供される。
【0016】
本発明の一つの局面では、ペプチド成分はその核酸への相対的親和性に基づいて選択される。ペプチド成分は、該ペプチド成分の核酸への結合度を変化できるように選択することができる。
【0017】
ある局面では、リボ核酸−ペプチド縮合化合物は可逆的に結合させることができる。リボ核酸と一定量の正に帯電したリボ核酸結合性ペプチドから成る化合物は、細胞外生体環境において十分に安定となることができ、細胞内エンドソームとの接触によってリボ核酸を放出する。この放出によってRNAi応答を誘起することができる。
【0018】
さらなる局面では、ペプチド−リボ核酸化合物を安定化させる構造と方法が提供され、その構造及び方法には化合物内でのリボ核酸結合性ペプチドの架橋が含まれる。ペプチド−リボ核酸化合物を生命体内部での分解から保護する方法としては、化合物内でペプチドの少なくとも一部を架橋することが含まれる。
【0019】
本発明はさらに、この化合物の、薬物としての使用、並びに動物及びヒトのRNAi治療に用いるための薬物の製造において提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、RNA干渉及びその他の治療方法に使用するための様々なペプチド−RNA化合物及び組成物を提供する。さらに詳細には、本発明は、RNAiを通して標的遺伝子の発現を阻害する活性を有する、RNAとペプチドとが縮合した安定な小粒子を含有する化合物を含む。
【0021】
本発明の化合物は、一般的に合成ペプチドと核酸の混合物又は縮合体として提供される。広範囲にわたる様々なペプチドを使用して化合物を形成することができる。ペプチドの質量は通常、約120kDa未満、又は約60kDa未満、又は約30kDa未満である。化合物のペプチドは粘膜透過修飾因子又は粘膜透過促進因子であってよい。
【0022】
縮合化合物は、ペプチド−RNA複合体の安定な小粒子を含む。これらの化合物及び粒子は、様々な試薬で架橋することによりさらに安定化することができる。ある態様において、本発明の化合物及び組成物は、送達促進のためにポリエチレングリコールなどのステルス剤(stealthing agent)又は表面改質剤を含む。
【0023】
本発明の化合物には、1又はそれ以上のリボ核酸及び1又はそれ以上のペプチド成分を含む縮合複合体が含まれる。ペプチド成分は、リボ核酸と結合して非共有結合によるペプチド−リボ核酸縮合化合物を形成するのに十分な正の電荷を持つことができる。リボ核酸及びインビボでの条件下でリボ核酸を安定化させるのに有効な量のリボ核酸結合性ペプチドから構成される安定なリボ核酸複合体が提供される。ペプチド−核酸化合物の成分の結合は一部イオン間力によるものであり、ファンデルワールス力又は水素結合など様々なその他の相互作用も伴う場合がある。
【0024】
本発明のペプチド−核酸縮合化合物は均一な粒子を含むことができる。ペプチド−核酸化合物の球状粒子の直径は、平均が1000ナノメートル(nm)未満の狭い分布をとることができる。球状粒子の直径は、1000ナノメートル未満であってよく、約0.5乃至約400ナノメートル、約10乃至約300ナノメートル、及び約40乃至約100ナノメートルであってもよい。安定粒子のゼータ電位の大きさは、約20ミリボルト超又は約30ミリボルト超であってよい。
【0025】
本明細書で用いる“均一”という用語は化合物の粒子の大部分が狭い粒径分布を持つことを意味する。均一粒子の化合物において複数の粒径分布が生じていてもよい。一つの狭い粒径分布は、粒子径測定器の対時間相関係数の生データに基づく粒径分布グラフ中の一つのピークに相当する。均一な化合物は、少なくとも粒子の30%を一つの狭い粒径分布内に有することが好ましい。
【0026】
本発明のペプチド−核酸縮合化合物は、独自の多成分製剤を提供することができ、生体内治療のために、細胞への送達のための担体若しくは運搬体、又は様々な送達マトリックスといった薬物送達のためのその他の薬剤と組み合わせることができる。
【0027】
本発明の化合物及び組成物は、薬理学的に許容される媒体内に分散させ、マトリックスと会合させ、又は細胞若しくは対象へ送達するための担体若しくは運搬体と会合させることができる。本発明の化合物又は粒子の分散体を含む溶液は、治療法としての送達のために提供することができる。
【0028】
ペプチド成分
本発明の化合物に好適なペプチド成分は合成したものでもよく、又は自然若しくはその他の供給源に由来するものでもよい。
【0029】
ペプチド成分は、2から約1000個のアミノ酸の長さ、2から約600個のアミノ酸の長さ、2から約60個のアミノ酸の長さ、5から約30個のアミノ酸の長さ、及び5から約25個のアミノ酸の長さを含んでもよい。
【0030】
ペプチド成分は複数の正の電荷を含んでよい。例えば、ペプチド成分は1から約100個、5から約30個、及び9から約15個の正電荷を含んでよい。ペプチド成分の正電荷は正に帯電したリシン又はアルギニンの残基によって提供することができる。
【0031】
広範囲にわたる様々なペプチドを使用することで、ペプチド−核酸化合物を形成することができる。ペプチド成分の質量は通常、約120kDa未満、又は約60kDa未満、又は約30kDa未満である。ペプチド成分のペプチドは、任意にポリアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はこれらの組み合わせなどのポリマと抱合体を形成するか又は誘導体化されてもよい。例えば、本発明の化合物のペプチド成分はポリエチレングリコール(PEG)と共有結合により誘導体化されてよい。
【0032】
ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドの機能性ドメインは、siNAを細胞内へ送達する能力において有用である。このような機能性ドメインには、膜付着領域、膜融合領域、及びヌクレオチド結合領域が含まれる。膜付着は、典型的ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドが細胞膜と結合する能力を表す。膜融合性は、細胞膜から脱離して細胞質内に進入する能力を表す。ペプチドの膜付着ドメイン及び膜融合ドメインは機構的に密接なつながりがあり(すなわち、ペプチドが細胞内へ入る能力)、従って実験的に区別することは難しいであろう。最後に、ヌクレオチド結合性は、ペプチドがヌクレオチドと結合する能力を表す。
【0033】
化合物のペプチドは、粘膜などの障壁間の化合物の送達を促進することが知られている構造的特徴を含んでよい。送達を促進する特徴の例としては様々なタンパク質導入ドメインが挙げられる。ペプチド成分は粘膜透過修飾因子であってよい。
【0034】
本発明のポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドのタンパク質導入ドメインの例としては、
1.TATタンパク質導入ドメイン(PTD)(配列番号1)KRRQRRR;
2.ペネトラチンPTD(配列番号2)RQIKIWFQNRRMKWKK;
3.VP22 PTD(配列番号3)DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVD;
4.カポジFGFシグナル配列(配列番号4)AAVALLPAVLLALLAP;及び(配列番号5)AAVLLPVLLPVLLAAP;
5.ヒトβ3インテグリンシグナル配列(配列番号6)VTVLALGALAGVGVG;
6.gp41融合配列(配列番号7)GALFLGWLGAAGSTMGA;
7.カイマンクロコディルス(caiman crocodylus)のIg(v)軽鎖(配列番号8)MGLGLHLLVLAAALQGA;
8.hCT誘導性ペプチド(配列番号9)LGTYTQDFNKFHTFPQTAIGVGAP;
9.トランスポータン(配列番号10)GWTLNSAGYLLKINLKALAALAKKIL;
10.ロリゴマー(loligomer)(配列番号11)TPPKKKRKVEDPKKKK;
11.アルギニンペプチド(配列番号12)RRRRRRR;並びに
12.両親媒性モデルペプチド(配列番号13)KLALKLALKALKAALKLA;
が挙げられる。
【0035】
本発明のポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドのウィルス融合ペプチド膜融合ドメインの例としては、
1.インフルエンザHA2(配列番号14)GLFGAIAGFIENGWEG;
2.センダイF1(配列番号15)FFGAVIGTIALGVATA;
3.呼吸器多核体ウィルスF1(配列番号16)FLGFLLGVGSAIASGV;
4.HIV gp41(配列番号17)GVFVLGFLGFLATAGS;及び
5.エボラGP2(配列番号18)GAAIGLAWIPYFGPAA;
が挙げられる
【0036】
ある態様では、本発明の方法及び組成物の範囲内で、ポリペプチド−siNA複合体の形成を促進し、及び/若しくはsiNAの送達を促進するDNA結合性ドメイン又はモチーフが組み込まれたポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドが提供される。ここで言うDNA結合性ドメインの典型例としては、以下の表1に示すDNA結合性調節タンパク質及びその他のタンパク質に見られる、様々な「ジンクフィンガー」領域が挙げられる(Simpsonら,J. Biol. Chem.,278:28011−28018, 2003、参照)。
【0037】
【表1】
【0038】
表1において、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、DrosBtd、DrosSp、CeT22C8.5、及びY4pB1A.4の配列は、本明細書ではそれぞれ配列番号19、20、21、22、23、24、25、及び26と定められる。
【0039】
表1は、C−x(2,4)−C−x(12)−H−x(3)−H(配列番号27)のモチーフパターンにより特徴付けられる二本鎖DNA結合性保存ジンクフィンガーモチーフを示しており、それ自体を用いて本発明にかかるさらなるポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを選択して設計することができる。
【0040】
本発明のポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを構築するのに有用なDNA結合性ドメインの他の選択肢としては、例えばHIV Tatタンパク質配列の一部分が挙げられる。
【0041】
本発明のある態様においては、前述の構造要素、ドメイン、又はモチーフのいずれかをsiNAの対象細胞への送達の促進を媒介する単一のポリペプチドへ組み入れることによって、ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを構築することができる。例えば、TATポリペプチドのタンパク質導入ドメインは、HA2と呼ばれるインフルエンザウィルスの赤血球凝集素タンパク質のN末端側の20個のアミノ酸領域と融合してポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを作り出すことができる。
【0042】
本発明の化合物は、1又はそれ以上のペプチド成分を含むことができる。ペプチド成分は、リボ核酸と結合して非共有結合によるペプチド−リボ核酸縮合化合物を形成するのに十分な正の電荷を保持することができる。ペプチド−核酸複合体の成分の結合は一部イオン間力によるが、ファンデルワールス力、水素結合、又は疎水性相互作用などのその他の様々な相互作用も伴う場合がある。複合体は水性相互作用又は高溶媒濃度領域を保持していてもよい。
【0043】
リボ核酸及び生体内条件下でリボ核酸を安定化させるのに有効な量のリボ核酸結合性ペプチドを含む安定なペプチド−リボ核酸複合体が得られる。
【0044】
本発明の化合物に有用なペプチドのいくつかの例を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
本発明の化合物に有用なペプチドのさらなる例は以下の実施例中で示す。
【0047】
縮合化合物とその調製
本発明は、直径が約1000nm未満、約0.5nmから約400nm、約10nmから約300nm、及び約40nmから約100nmである粒子から構成されてよいペプチド−リボ核酸縮合化合物を提供する。
【0048】
化合物のペプチド成分は、粒子質量の5乃至95%又は45乃至95%であってよい。
【0049】
本発明のある態様においては、ペプチド−核酸化合物は1又はそれ以上のリボ核酸剤と1又はそれ以上のペプチド成分から提供され、該リボ核酸剤と該ペプチド成分を水溶液中で縮合することによって直径1000nm未満の粒子を形成する。
【0050】
一般に本発明の化合物は、1又はそれ以上のペプチドと1又はそれ以上の核酸から形成されたペプチド−核酸縮合体を含む。この縮合体は、一つには核酸に対するペプチドの窒素対リン比(N/P比)で特徴付けられる。
【0051】
本発明の化合物は直径1000nm未満の縮合体粒子から成ってよく、ここで各粒子は少なくとも10個の二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子及び少なくとも10個のペプチドを含む。本明細書で用いられる「少なくとも10個のペプチド」とは、部分モル量が10ペプチド分子であることを意味し、ペプチド分子の構造は同じであっても異なっていてもよい。従って、「少なくとも10個のペプチド」とは、単一のペプチド構造の部分モル量、又は2若しくは3個以上の異なるペプチド構造の部分モル量であってもよい。
【0052】
一般に、本明細書で用いられる「ペプチド」、「核酸」、並びに「dsRNA」及び「siRNA」などの用語は、本発明の化合物を形成するのに十分な量にあるこれらの分子を意味する。すなわち、一般に、このような用語は個々の分子ではなく部分モル量を表す。「ペプチド」とは、例えばアボガドロ数個のペプチド分子など、1又は2個以上のペプチド分子のことである。「二つのペプチドをリボ核酸剤に付加する」とは、個々の部分モル量にある構造の異なる二種類のペプチドの混合物をリボ核酸剤に添加混合することを意味する。
【0053】
複合体又は縮合体中の核酸(NA)に結合したペプチドの量は、窒素リン比(N/P比)とも呼ばれる、単一分子ペア形成についてのペプチド:NA電荷比を用いることにより結合した核酸の量から得ることができる。縮合後に溶液中に残存する遊離ペプチドの量は、物質収支から得られる。従って、本明細書において、電荷比N/Pとは、初期縮合溶液中における単一ペプチド成分の単一核酸剤に対する初期電荷比N/Pを意味する。
【0054】
一般に、溶液中の核酸剤濃度はその溶解度によってのみ制限される。溶液中のペプチド成分の濃度は、所望のN/P比が得られるよう調節される。
【0055】
ある態様において、溶液のペプチド成分濃度は全体のN/P比が約1となるように調節される。N/P比が約1の時、イオン電荷という面でペプチド成分も核酸剤も過剰ではない。
【0056】
ある態様において、溶液の各ペプチド成分濃度は、N/P比が約0.2から約50、約0.5から約20、約0.5から約7、又は約0.5から約2.5となるように調節される。
【0057】
溶液のpHは通常約11未満、約9未満、及び約8未満である。溶液の成分の混合は、任意に、ボルテックス撹拌行ってもよい。
【0058】
ある態様において、縮合化合物は核酸剤をペプチド成分を含有する溶液へ添加することによって調製される。
【0059】
ある態様において、溶液は無機塩又は有機塩を含んでよい。例えば、水溶液は約1M以下、約0.5M以下、及び約0.25M以下の濃度の塩化ナトリウムを含んでよい。
【0060】
任意に、特定のサイズ分布を有するペプチド−核酸縮合化合物は溶液から単離することができる。ある態様においては、ペプチド−核酸縮合化合物を含有する溶液をろ過することで様々なサイズの粒子が単離される。
【0061】
他の態様において、ペプチド−核酸縮合化合物を含有する溶液を透析にかけることによって過剰な又は結合しなかったペプチド成分が除去される。
【0062】
ある態様において、単離されたペプチド−核酸粒子は凍結乾燥される。
【0063】
本発明のある態様において、ペプチド−核酸化合物は、少なくとも1種類のリボ核酸剤を水溶液中に溶解し、それから少なくとも1種類のペプチド成分をその水溶液中へ添加して1000nm未満の粒径を有する粒子を縮合させ、その後第二のペプチド成分又は第三以降のペプチド成分をその水溶液中へ添加して粒子質量を増加させることにより、1又はそれ以上のリボ核酸剤と1又はそれ以上のペプチド成分から提供される。
【0064】
本発明のある態様において、ペプチド−核酸化合物は、第一のペプチド成分を水溶液中に溶解し、それからリボ核酸剤をその水溶液中へ添加して1000nm未満の粒径を有する粒子を縮合させ、その後第二のペプチド成分又は第三以降のペプチド成分をその水溶液中へ添加して粒子質量を増加させることにより、1又はそれ以上のリボ核酸剤と1又はそれ以上のペプチド成分から提供される。
【0065】
本発明の一つの局面において、ペプチド−核酸化合物は、ペプチド成分を核酸への相対親和性に基づいて選択することによって提供される。例えば、ペプチドによる核酸結合性色素SYBR−goldの置換を測定することにより、様々なペプチドの核酸に対する相対結合性の分析が行われる。化合物の核酸に対するペプチド成分の相対親和性を特徴付けることにより、ペプチド成分の核酸への結合度を変化できるようにペプチド成分を選択することができる。
【0066】
ペプチド成分の核酸への結合度を変化させることにより、最初に結合性の強いペプチド成分によって縮合体粒子が形成され、続いて結合性の弱いペプチド成分が粒子を形成するか、若しくはその逆が可能となり、又は縮合化合物に結合強度の異なる成分を複数回に分けて添加することが可能となる。
【0067】
ある態様において、核酸剤と縮合する第一のペプチド成分が、第二以降のペプチド成分よりもその核酸剤に対して強い結合親和性を持つことが好ましい。これらの態様において、溶液の第一のペプチド成分の濃度は、N/P比が約0.2から約7、約0.2から約2.5、又は約0.2から約1となるよう調節される。これらの態様において、後に続くペプチド成分の濃度は、N/P比が約0.2から約50、約0.5から約20、約0.5から約7、又は約0.5から約2.5となるよう調節される。
【0068】
可逆的に結合したリボ核酸−ペプチド縮合化合物は、リボ核酸、並びに細胞外生体環境下で十分に安定であって、細胞内エンドソームと接触することでリボ核酸を放出することができるリボ核酸−ペプチド縮合体を形成する量にある正に帯電したリボ核酸結合性ペプチドを含む。
【0069】
ペプチドがリボ核酸を結合させるのに有効な量の正に帯電した残基を含む、ペプチド−核酸縮合体の集団が提供される。このリボ核酸−ペプチド縮合体は細胞外生体環境下で十分に安定であり、RNAi応答を発生させるのに有効な方法で細胞内にリボ核酸を放出することができる。
【0070】
本発明のある局面において、試薬を用いてペプチド−RNA縮合体が架橋される。例えば、グルタルアルデヒドなどのジアルデヒド基を導入することでペプチド又は粒子表面のアミノ基を架橋し、ペプチド−RNA縮合体の安定性を高めることができる。架橋剤の他の例としては、ホルムアルデヒド、アクロレイン、及びジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)が挙げられる。架橋された縮合化合物は、血清中のエンドヌクレアーゼによる代謝に対する耐性が向上していることであろう。
【0071】
ある態様において、核酸剤と縮合する第一のペプチド成分は、第二以降のペプチド成分を添加する前に架橋される。任意に、第一のペプチド成分の縮合体は、第二以降のペプチド成分を添加した後に架橋されてもよい。ある態様において、第一のペプチド成分の縮合体は、第二以降のペプチド成分の添加前及び添加後に架橋される。
【0072】
ペプチド−リボ核酸化合物を安定化する方法には、化合物内においてリボ核酸結合性ペプチドを、例えばグルタルアルデヒド架橋剤で架橋することが含まれる。ペプチド−リボ核酸化合物を生命体内部における分解から保護する方法としては、化合物内でペプチドの少なくとも一部を、例えばグルタルアルデヒド架橋剤で架橋することが含まれる。
【0073】
本発明のペプチド−リボ核酸化合物は、界面活性剤、中性脂質、又はポリエチレンオキシドなどの表面改質剤を添加することによっても安定化することができる。例えば、ポリエチレングリコールは縮合化合物の溶液に添加されるとその複合粒の粒子へ付着することができる。例えば、非イオン性であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体を添加して化合物の粒子を安定化させることもできる。
【0074】
本開示には、動物及びヒトのRNAi治療に用いるための薬物の製造における本発明の化合物の使用が包含される。
【0075】
核酸剤
本発明に有用な核酸剤は、一本鎖核酸、二本鎖核酸、修飾若しくは分解耐性核酸、RNA、DNA−RNAキメラ、アンチセンス核酸、又はリボザイムであってよい。
【0076】
これに関連して、本発明は、RNA干渉によって遺伝子発現を調節するための化合物、組成物、及び方法を提供する。本発明の化合物又は組成物はリボ核酸剤をRNAi応答を生じさせることが可能な細胞へ放出することができる。本発明の化合物又は組成物は、細胞内エンドソームとの接触によってリボ核酸剤を細胞へ放出することができる。リボ核酸剤の細胞内放出によって細胞内における遺伝子発現を阻害することができる。
【0077】
本発明に有用なリボ核酸剤は様々な遺伝子を標的とすることができる。例えば、本発明のsiRNA剤は、TNF−α遺伝子の領域と相補的な配列を有することができる。本発明のある態様において、この化合物及び組成物は腫瘍壊死因子α(TNF−α)の発現を制御するのに有用である。TNF−αは、例えば肺疾患において発生する炎症プロセスと関連し得るため、抗炎症効果を生じ得る。本発明の組成物を送達することによってTNF−αをブロックすることは、リウマチ性関節炎の兆候及び/又は症状の治療又は予防に有用であろう。
【0078】
本発明は、RNA干渉によってTNF−αの発現及び活性を調節するための化合物、組成物、及び方法を提供する。
【0079】
TNF−αの発現及び/又は活性は、例えばsiRNA分子であるInm−4を細胞へ送達することによって調節することができる。Inm−4は、ヒトTNF−α遺伝子と相同的な配列を持つ21ヌクレオチドの二本鎖siRNA分子である。Inm−4は、センス鎖上に3’−dTdTのオーバーハングを、アンチセンス鎖上に3’−dAdTオーバーハングを有する。Inm−4の一次構造は以下の通りである。
センス鎖(配列番号44)
5’−CCGUCAGCCGAUUUGCUAUdTdT
アンチセンス鎖(配列番号45)
5’−AUAGCAAAUCGGCUGACGGdTdT
【0080】
TNF−αの発現及び/又は活性は、例えばsiRNA分子であるLC20を細胞へ送達することによって調節することができる。LC20は、ヒトTNF−α遺伝子と相同的な配列を持つ21ヌクレオチドの二本鎖siRNA分子である。LC20が標的とするのは、ヒトTNF−αの3’−UTR領域である。LC20は19塩基対を持ち、センス鎖上に3’−dTdTのオーバーハングを、アンチセンス鎖上に3’−dAdTオーバーハングを有する。ナトリウム塩型の分子量は14,298である。LC20の一次構造は以下の通りである。
センス鎖(配列番号46)
(5’)−GGGUCGGAACCCAAGCUUAdTdT
アンチセンス鎖(配列番号47)
(5’)−UAAGCUUGGGUUCCGACCCdTdA
【0081】
本発明のsiRNAは、ウィルス遺伝子の領域と相補的な配列を有することができる。例えば、本発明のある組成物及び方法は、インフルエンザのウィルスゲノムの発現を制御するのに有用である。
【0082】
これに関連して、本発明は、RNA干渉によってインフルエンザの発現及び感染活性を調節するための組成物及び方法を提供する。インフルエンザの発現及び/又は活性は、例えばインフルエンザのRNAポリメラーゼサブユニットの領域と相補的な配列を有する短鎖干渉RNA分子を細胞へ送達することによって調節することができる。例としてインフルエンザのRNAポリメラーゼサブユニットと相同的な配列を有する二本鎖siRNA分子を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
本発明のsiRNAは、インフルエンザのRNAポリメラーゼサブユニットの領域と相補的な配列を有することができる。
【0085】
本発明は、インフルエンザのmRNAを標的とするsiNAを投与するための組成物及び方法を提供し、これらの組成物と方法によってインフルエンザRNAは効果的に下方制御され、それによってインフルエンザ感染が低減、予防、又は寛解される。
【0086】
RNA干渉治療
ある態様において、本発明は、短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子又はその前駆体などのRNAi誘導性化合物を有効量含有する組成物を対象へ投与することによって該対象内の標的転写物の発現を阻害するための化合物、組成物、及び方法を提供する。RNAiは、短鎖干渉RNA(siRNA)を用いてメッセンジャーRNA(mRNA)を標的とし、翻訳を減弱する。本発明で用いられるsiRNAは、例えばsiRNAへのプロセッシングを受ける長鎖dsRNAなど、ダイサーによるプロセッシングを受ける前駆体であってよい。本発明は、標的転写物の発現又は標的転写物によってコードされたペプチド若しくはタンパク質の活性に関連する疾患又は状態を治療又は予防する方法を提供する。
【0087】
RNAiに基づく治療法を用いて、ウィルス又は微生物の成長又は機能を停止したり、疾患経路内の内在性遺伝子産物の機能を停止したりすることによって、広範囲にわたる様々な疾患を治療することができる。
【0088】
ある態様において、本発明は、短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子及びその前駆体などのRNAi誘導性化合物を送達するための新規な組成物及び方法を提供する。詳細には、本発明は、対象の細胞、組織、及び/又は器官の1又はそれ以上の転写物を標的とするRNAi誘導性化合物を含有する組成物を提供する。
【0089】
siRNAは、約19ヌクレオチドの長さの相補的領域を有する二本鎖RNAであってよい。siRNAは任意に一つ又は二つの一本鎖オーバーハング又はループを含んでいてもよい。
【0090】
shRNAは自己相補的領域を有する一本鎖RNAであってよい。この一本鎖RNAはステムとループを有するヘアピン構造を形成することができ、任意に、このRNAの5’末端及び/又は3’末端において1又は2箇所以上の非対形成部分を有してよい。
【0091】
活性治療剤は、インビボでのヌクレアーゼ分解に対する耐性が高められ、及び/又は細胞取り込みが改善された化学修飾siNAであって、RNAi活性が保持されたものであってよい。
【0092】
本発明のsiRNA剤は、標的遺伝子のある領域に相補的な配列を有してよい。本発明のsiRNAは29塩基対から50塩基対を有してよく、例えば標的遺伝子のある領域に相補的な配列を有するdsRNAである。あるいは、二本鎖核酸はdsDNAであってもよい。
【0093】
ある態様において、活性剤は、遺伝子産物の発現を調節可能な短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA、又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)であってよい。
【0094】
選択された疾患状態と関連する原因因子又は寄与因子として発現が異常に増加することが知れらている大多数の遺伝子のいずれをも含む、対象の特定の疾患状態に関連する1又はそれ以上の異なる遺伝子の発現を標的とする類似の方法及び組成物が提供される。
【0095】
本発明のRNAi誘導性化合物は、疾患状態に対するその他の公知の治療と合わせて投与してもよい。
【0096】
ある態様において、本発明は、送達促進化合物と混合、化合物化、又は抱合された形の短鎖干渉核酸、短鎖干渉RNA、二本鎖RNA、マイクロRNA、又は短鎖ヘアピンRNAなどの低分子核酸分子を含有する組成物を特徴とする。
【0097】
本明細書で用いる「短鎖干渉核酸」、「siNA」、「短鎖干渉RNA」、「siRNA」、「短鎖干渉核酸分子」、「短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子」、及び「化学修飾短鎖干渉核酸分子」の各用語は、例えば配列特異的にRNA干渉(RNAi)又はジーンサイレンシングを媒介することによって、遺伝子発現又はウィルス複製を阻害又は下方制御可能ないずれの核酸分子も意味する。
【0098】
ある態様において、siNAは、アンチセンス領域が、発現を下方制御する標的リボ核酸分子内のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列又はその一部を含み、センス領域が、標的リボ核酸の配列又はその一部に対応する(すなわち実質的に同一の配列である)ヌクレオチド配列を含む、自己相補的なセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチド分子である。
【0099】
「siNA」は、例えば短鎖二本鎖核酸であるsiRNA、又は任意に、長鎖のその前駆体等の低分子干渉核酸を意味する。本発明の範囲内で有用なsiNAの長さは、ある態様においては約20乃至50bpの長さで最適化される。しかし、siRNAを含む有用なsiNAの長さには特に制限はない。例えばsiNAはまず、標的細胞内に存在して、標的細胞への送達と同時に又はその後にジーンサイレンシングを引き起こす最終的な形又はプロセッシングを受けた形のsiNAとは十分に異なる前駆体の形で細胞へ導入することができる。siNAの前駆体は、例えば送達と同時に又はその後にプロセッシング、分解、変性、又は開裂に付される前駆体配列要素を含むことで、細胞内でジーンサイレンシングを媒介する活性を有するsiNAを生成することができる。ある態様において、有用なsiNAの前駆体の長さは例えば約100乃至200塩基対、50乃至100塩基対、又は約50塩基対未満であって、これによって標的細胞内において活性なプロセッシングを受けたsiNAが生成される。他の態様においては、有用なsiNA又はsiNA前駆体の長さは、約10から49塩基対、15から35塩基対、又は約21から30塩基対となる。
【0100】
本発明のある態様においては、ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを使用して、大きなsiNAの核酸前駆体を含む従来のsiNAよりも大きな核酸分子の送達を促進する。例えば、本発明の方法及び組成物を、所望のsiNAの「前駆体」である大きな核酸の送達を促進するために用いることができ、ここで前駆体のアミノ酸が標的細胞への送達の前、間、若しくは後に開裂又はプロセッシングに付されて標的細胞内での遺伝子発現を調節する活性siNAを形成することができる。
【0101】
例えば、siNA前駆体ポリヌクレオチドとしては、自己相補的なセンス領域及びアンチセンス領域を含む2又は3個以上のループ構造並びにステムを有する環状一本鎖ポリヌクレオチドを選択することができ、ここでアンチセンス領域は、標的核酸分子内のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列又はその一部を含み、センス領域は、標的核酸の配列又はその一部に対応するヌクレオチド配列を含み、そしてこの環状ポリヌクレオチドがインビボ又はインビトロでプロセッシングを受けることでRNAiを媒介可能な活性siNA分子を生成することができる。
【0102】
本発明のsiNA分子、特に前駆体でない形のものは、30塩基対未満であってよく、約17乃至19bp、19乃至21bp、又は21乃至23bpであってもよい。
【0103】
siRNAは哺乳類系で選択的なジーンサイレンシングを媒介することができる。短鎖ループ及び19乃至27塩基対のステムを有するヘアピンRNAも、その二本鎖ステムの配列と相同的な遺伝子の発現を選択的にサイレンシングする。哺乳類細胞は短鎖ヘアピンRNAを、siRNAへ変換して選択的ジーンサイレンシングを媒介することができる。
【0104】
RISCは、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖と相補的な配列を有する一本鎖RNAの開裂を媒介する。標的RNAの開裂は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖と相補的な領域内で発生する。21ヌクレオチドのsiRNA二重鎖は、通常2ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを含む場合に最も活性が高い。
【0105】
2−ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを有する21−merのsiRNA二重鎖の3’末端オーバーハングセグメントをデオキシリボヌクレオチドで置換しても、RNAi活性への悪影響が生じない場合がある。siRNAの各末端において4ヌクレオチドまではデオキシリボヌクレオチドによる置換が許容され得るが、完全にデオキシリボヌクレオチドで置換するとRNAi活性が喪失する場合がある。
【0106】
別の選択肢として、siNAは、単一の又は複数のsiNAをコードし、その発現を標的細胞内で該siNAを発現させるポリヌクレオチドベクタによって発現された単一の又は複数の転写産物として送達することができる。このような態様においては、標的細胞内で発現されるsiRNAの最終転写産物の二本鎖部分の長さは、例えば15乃至49bp、15乃至35bp、又は約21乃至30bpであってよい。
【0107】
本発明のある態様において、二本鎖が対合しているsiNAの二本鎖領域は、バルジ部分、ミスマッチ部分、又はその両方を含んでよい。二本鎖が対合しているsiNAの二本鎖部分は、完全に対合したヌクレオチドセグメントに限定されず、例えばミスマッチ(対応するヌクレオチドが相補的でない)、バルジ(一方の鎖上の対応する相補的ヌクレオチドが欠失)、又はオーバーハングによって対合していない部分を含んでよい。非対合部分は、siNA形成に干渉しない程度含まれていてよい。ある態様において、「バルジ」は1つ又は2つの非対合ヌクレオチドを含んでよく、二本鎖が対合しているsiNAの二本鎖領域は、約1個乃至7個又は約1個乃至5個のバルジを含んでよい。さらに、siNAの二本鎖領域に含まれる「ミスマッチ」部分は、1個乃至7個又は1個乃至5個存在してよい。ミスマッチで最も多いのは、ヌクレオチドの一つがグアニンで他方がウラシルの場合である。このようなミスマッチは、例えばセンスRNAをコードする対応するDNA内のCからT、GからA、又はそれらの組み合わせという変異に起因するであろうが、他の要因も考えられる。
【0108】
本発明のsiNAの末端構造は、siNAが標的遺伝子の発現を阻害する活性を保持する限りにおいて、平滑末端又は粘着末端(オーバーハング)であってよい。粘着末端(オーバーハング)構造は3’末端オーバーハングに限定されず、ジーンサイレンシングを誘起する活性が保持される限りにおいて、5’末端オーバーハング構造も含まれる。さらに、オーバーハング部のヌクレオチド数は2又は3に限定されず、ジーンサイレンシングを誘起する活性が保持される限りにおいて、ヌクレオチド数はいくつであってもよい。例えば、オーバーハング部は1乃至約8のヌクレオチド又は2乃至4のヌクレオチドを含んでよい。
【0109】
粘着末端(オーバーハング)構造を有するsiNAの長さは、対合する二本鎖部分及び各末端のオーバーハング部分の長さとして表すことができる。例えば、2bpの3’末端アンチセンスオーバーハングを有する25/27−merのsiNA二本鎖は、25−merのセンス鎖及び27−merのアンチセンス鎖を持ち、この場合、対合部の長さは25bpである。
【0110】
いずれのオーバーハング配列も標的遺伝子に対する特異性は低くてよく、標的遺伝子配列に対して相補的(アンチセンス鎖)でなくても同一(センス鎖)でなくてもよい。siNAはジーンサイレンシング活性を保持する限りにおいて、そのオーバーハング部中に、例えばtRNA、rRNA、ウィルスRNAなどの自然RNA分子又は人工RNA分子等の低分子量構造を含んでよい。
【0111】
siNAの末端構造は、二本鎖核酸の一方の末端部が、例えばリンカRNA等のリンカ核酸によって繋がっているステム−ループ構造であってよい。二本鎖領域(ステム−ループ部分)の長さは、例えば15乃至49bp、15乃至35bp、又は約21乃至30bpであってよい。別の選択肢として、標的細胞内で発現されるsiNAの最終転写産物である二本鎖領域の長さは、例えば約15乃至49bp、15乃至35p、又は約21乃至30bpであってよい。
【0112】
siNAは、標的核酸分子内のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列又はその一部分を有する一本鎖ポリヌクレオチドを含むことができ、ここで一本鎖ポリヌクレオチドは、5’リン酸(例えば、Martinezら,Cell. 110: 563−574, 2002; Schwarzら,Molecular Cell 10: 537−568, 2002、を参照)又は5’,3’−リン酸ジエステルなどの末端リン酸を含んでよい。
【0113】
本明細書で用いるsiNA分子という用語は、天然のRNA又はDNAのみを含む分子に限定されず、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドも包含する。ある態様において、本発明の短鎖干渉核酸分子は2’−ヒドロキシ基(2’−OH)を含むヌクレオチドが欠失している。ある態様において、短鎖干渉核酸はRNAiを媒介するのに2’ −ヒドロキシ基を有するヌクレオチドは存在する必要がなく、従って本発明の短鎖干渉核酸分子は、任意にリボヌクレオチド(例:2’−OH基を持つヌクレオチド)をまったく含まなくてもよい。しかし、RNAiを媒介するためにsiNA分子内にリボヌクレオチドが存在する必要がないsiNA分子は、2’−OH基を有する1又は2個以上のヌクレオチドを含む、接合した一つ若しくは複数のリンカ、又はその他の接合若しくは会合した基、部分、若しくは鎖を有してよい。siNA分子は、ヌクレオチド部位の少なくとも約5、10、20、30、40、又は50%にリボヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0114】
本明細書で用いるsiNAという用語は、配列特異的RNAiを媒介することができる核酸分子を包含し、中でも特に例を挙げると、短鎖干渉RNA(siRNA)分子、二本鎖RNA(dsRNA)分子、マイクロRNA分子、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子、短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子、短鎖干渉核酸分子、短鎖干渉修飾オリゴヌクレオチド分子、化学修飾siRNA分子、及び転写後ジーンサイレンシングRNA(ptgsRNA)分子等がある。
【0115】
ある態様では、siNA分子は個別のセンス及びアンチセンス配列若しくは領域を含み、ここでセンス領域及びアンチセンス領域はヌクレオチド若しくは非ヌクレオチドリンカ分子によって共有結合されているか、又はイオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、及び/若しくはスタッキング相互作用により非共有的に結合されている。
【0116】
「アンチセンスRNA」とは、標的遺伝子mRNAと相補的な配列を有するRNA鎖であって、標的遺伝子mRNAと結合することによってRNAiを誘起することができるRNA鎖をいう。
【0117】
「センスRNA」とは、アンチセンスRNAと相補的な配列を有するRNA鎖であって、その相補的アンチセンスRNAとアニールしてsiRNAを形成するRNA鎖をいう。
【0118】
本明細書で用いる「RNAi構築物(RNAi construct)」又は「RNAi前駆体」という用語は、低分子干渉RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、及びインビボで開裂してsiRNAを形成することができるその他のRNA種等のRNAi誘導性化合物を意味する。本明細書におけるRNAi前駆体は、細胞中でdsRNA若しくはヘアピンRNAを形成する転写物、及び/又はsiRNAをインビボで生成することができる転写物を生じさせることが可能な発現ベクタ(RNAi発現ベクタとも言う)も含む。
【0119】
siHybrid分子は、siRNAと同様の機能を有する二本鎖核酸である。二本鎖RNA分子と違い、siHybridはRNA鎖及びDNA鎖から構成される。RNA鎖が標的mRNAと結合するアンチセンス鎖であることが好ましい。DNA鎖とRNA鎖のハイブリダイゼーションによって生じたsiHybridは、ハイブリダイズした相補的部分、及び好ましくは少なくとも一つの3’末端オーバーハングを有する。
【0120】
本発明の範囲内で使用するsiNAは、二つの別々のオリゴヌクレオチドから構築することができ、ここでこのうち一方はセンス鎖でもう一方はアンチセンス鎖であって、この場合、アンチセンス鎖とセンス鎖は自己相補的(すなわち、各鎖が他方の鎖のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含む;アンチセンス鎖及びセンス鎖が二重又は二本鎖構造を形成しており、この場合、例えばその二本鎖領域が約19塩基対である。)である。アンチセンス鎖は標的核酸分子のヌクレオチド配列又はその一部分と相補的なヌクレオチド配列を含むことができ、センス鎖は標的核酸配列又はその一部分に対応するヌクレオチド配列を含むことができる。別の選択肢として、siNAは単一のオリゴヌクレオチドから構築することもでき、この場合、siNAの自己相補的なセンス領域とアンチセンス領域は核酸系又は非核酸系のリンカによって結合される。
【0121】
ある態様では、細胞内送達のためのsiNAは、自己相補的センス及びアンチセンス領域を有し、二本鎖、非対称二本鎖、ヘアピン、又は非対称ヘアピン二次構造を有するポリヌクレオチドであってよく、ここでアンチセンス領域は個々の標的核酸分子内のヌクレオチド配列又はその一部分と相補的なヌクレオチド配列を含み、センス領域は標的核酸配列又はその一部分に対応するヌクレオチド配列を含む。
【0122】
siNAに施すことが可能な化学修飾の例としては、ヌクレオチド間のホスホロチオエート結合、2’−デオキシリボヌクレオチド、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、「非環式」ヌクレオチド、5−C−メチルヌクレオチド、並びに末端グリセリル及び/又は逆位デオキシ脱塩基残基(inverted deoxyabasis residue)の取り込みが挙げられる。
【0123】
siNA分子のアンチセンス領域は、そのアンチセンス領域の3’末端にヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を有することができる。アンチセンス領域は、そのアンチセンス領域の5’末端に約1乃至約5個のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を有することができる。siNA分子の3’末端ヌクレオチドオーバーハングは、核酸の糖、塩基、若しくはバックボーンが化学修飾されたリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含むことができる。3’末端ヌクレオチドオーバーハングは、1又は2個以上のユニバーサル塩基リボヌクレオチドを含むことができる。3’末端ヌクレオチドオーバーハングは、1又は2個以上の非環式ヌクレオチドを含むことができる。
【0124】
例えば、化学修飾siNAは1、2、3、4、5、6、7、8個若しくは9個以上のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を一方の鎖に有することができ、又は1乃至8個若しくは9個以上のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を各鎖に有することができる。ヌクレオチド間ホスホロチオエート結合は、siNA二本鎖の一方又は両方のオリゴヌクレオチド鎖に存在することができ、例えばセンス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方に存在することができる。
【0125】
siNA分子は、センス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方の3’末端、5’末端、又は3’末端と5’末端の両方に、1又は2個以上のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含むことができる。例えば、典型的なsiNA分子は、1、2、3、4、5個、又は6個以上の連続するヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を、センス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方の5’末端に有することができる。
【0126】
ある態様では、siNA分子は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又は11個以上のヌクレオチド間ピリミジンホスホロチオエート結合を、センス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方に有する。
【0127】
ある態様では、siNA分子は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又は11個以上のヌクレオチド間プリンホスホロチオエート結合を、センス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方に有する。
【0128】
siNA分子は環状核酸分子を含むことができ、この場合、siNAの長さは例えば約38、40、45、50、55、60、65、又は70ヌクレオチド等の約38乃至約70ヌクレオチドであって、例えば約18、19、20、21、22、又は23塩基対等の約18乃至23塩基対を有し、この場合、この環状オリゴヌクレオチドは約19塩基対及び2つのループを持つダンベル型構造を形成する。
【0129】
環状siNA分子は、二つのループモチーフを含むことができ、この場合、siNA分子の一方又は両方のループ部は生分解性である。例えば、環状siNA分子のループ部はインビボで変形されて、約2個のヌクレオチドを含む3’末端ヌクレオチドオーバーハング等の3’末端オーバーハングを有する二本鎖siNA分子を生成することができる。
【0130】
siNA分子の修飾ヌクレオチドは、アンチセンス鎖、センス鎖、又はその両方にあってよい。例えば、修飾ヌクレオチドはノーザンコンフォメーション(例:ノーザン擬回転周期(northern pseudorotation cycle)、例えばSaenger著、「Principles of Nucleic Acid Structure」、Springer− Verlag編集、1984年を参照)を持つことができる。ノーザン立体配置を持つヌクレオチドの例としては、架橋型核酸(locked nucleic acid;LNA)ヌクレオチド(例:2’−O,4’−C−メチレン−(D−リボフラノシル)ヌクレオチド)、2’−メトキシエトキシ(MOE)ヌクレオチド、2’−メチルチオエチル、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−クロロヌクレオチド、2’−アジドヌクレオチド、及び2’−O−メチルヌクレオチドが挙げられる。
【0131】
化学修飾ヌクレオチドは、RNAiを媒介する能力を維持しながら同時にヌクレアーゼ分解に対する耐性を持つことができる。
【0132】
二本鎖siNA分子のセンス鎖は、逆位デオキシ脱塩基部位(inverted deoxyabasis moiety)などの末端キャップ部位を3’末端、5’末端、又は3’末端と5’末端の両方に有してもよい。
【0133】
抱合体の例としては、2003年4月30日に出願されたVargeeseら、米国特許出願番号10/427160に記載の抱合体及びリガンドが挙げられ、図面を含むこの出願の全文は参照することで本明細書に組み入れられる。
【0134】
本発明のある態様では、抱合体は、生分解性リンカによって化学修飾siNA分子と共有結合することができる。例えば、抱合体分子は化学修飾siNA分子のセンス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方の3’末端に結合することができる。
【0135】
ある態様では、抱合体分子は化学修飾siNA分子のセンス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方の5’末端に結合する。ある態様では、抱合体分子は、化学修飾siNA分子のセンス鎖、アンチセンス鎖、若しくはその両方の3’末端及び5’末端の両方、又はこれらのいずれかの組み合わせに結合する。
【0136】
ある態様では、抱合体分子は、細胞等の生体系への化学修飾siNA分子の送達を促進する分子を含む。
【0137】
ある態様では、化学修飾siNA分子と結合する抱合体分子は、ポリエチレングリコール、ヒト血清アルブミン、又は細胞取り込みを媒介できる細胞受容体のリガンドである。本発明で意図する、化学修飾siNA分子と結合可能な抱合体分子の具体例は、Vargeeseら、米国特許公開公報US2003/0130186及び米国特許公開公報US2004/0110296に記載されており、これらの各文献の全文は参照することで本明細書に組み入れられる。
【0138】
siNAは、siNAのセンス領域とsiNAのアンチセンス領域を連結する、ヌクレオチド、非ヌクレオチド、又はヌクレオチドと非ヌクレオチドとが混在するリンカを含むことができる。ある態様では、ヌクレオチドリンカの長さは3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドであってよい。ある態様では、ヌクレオチドリンカは核酸アプタマであってよい。本明細書で用いる「アプタマ」又は「核酸アプタマ」という用語は、標的分子に特異的に結合する核酸分子を包含しており、この場合、核酸分子は、自然環境下で標的分子によって認識される配列を含んでいる。別の選択肢として、アプタマは、標的分子が核酸と自然には結合しない場合において、標的分子と結合する核酸分子であってよい。
【0139】
例えば、アプタマを用いてタンパク質のリガンド結合ドメインと結合させ、それによって天然のリガンドとタンパク質との相互作用を防ぐことができる。例えば、Goldら,Annu. Rev. Biochem. 64: 763, 1995; Brody及びGold,J. Biotechnol. 74: 5, 2000; Sun,Curr. Opin. Mol. Ther. 2: 100, 2000; Kusser,J. Biotechnol. 74: 27, 2000; Hermann及びPatel,Science 287: 820, 2000; 及びJayasena,Clinical Chemistry 45: 1628, 1999、を参照のこと。
【0140】
非ヌクレオチドリンカは、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、又はその他のポリマ化合物(例:2乃至100のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール等)であってよい。具体例としては、Seela及びKaiser,Nucleic Acids Res. 18: 6353, 1990、及びNucleic Acids Res. 15: 3113, 1987; Cload及びSchepartz,J. Am. Chem. Soc. 113: 6324, 1991; Richardson及びSchepartz,J. Am. Chem. Soc. 113: 5109, 1991; Maら,Nucleic Acids Res. 21: 2585, 1993: 及びBiochemistry 32: 1751, 1993; Durandら,Nucleic Acids Res. 18: 6353, 1990; McCurdyら,Nucleosides&Nucleotides 10: 287, 1991; Jschkeら,Tetrahedron Lett. 34: 301, 1993; Onoら,Biochemistry 30: 9914, 1991; Arnoldら、国際公開公報WO89/02439、Usmanら、国際公開公報WO95/06731、Dudyczら、国際公開公報WO95/11910、並びにFerentz及びVerdine,J. Am. Chem. Soc. 113: 4000, 1991、に記載のものが挙げられる。
【0141】
「非ヌクレオチドリンカ」とは、糖及び/又はリン酸エステル置換基を含む1又は2個以上のヌクレオチド単位の代わりに核酸鎖に取り込まれることができ、残った塩基に酵素活性を示させる基又は化合物のことを言う。この基又は化合物は、例えば糖のC1の位置にアデノシン、グアニン、シトシン、ウラシル、又はチミン等の一般的に認知されたヌクレオチド塩基を含まない点において、脱塩基型となり得る。
【0142】
ある態様では、修飾siNA分子はリン酸エステル主鎖の修飾部を有することができ、修飾には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、モルホリノ、アミデートカルバメート、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、及び/若しくはアルキルシリルの1又はそれ以上の修飾が含まれる。オリゴヌクレオチド主鎖の修飾の例は、Hunziker及びLeumann著、「Nucleic Acid Analogues: Synthesis and Properties, in Modern Synthetic Methods」、VCH、p.331−417、1995年、及びMesmaekerら著、「Novel Backbone Replacements for Oligonucleotides, in Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、ACS、p.24−39、1994年、に記載されている。
【0143】
化学的修飾が可能なsiNA分子は、(a)siNA分子の二つの相補鎖を合成する工程、及び(b)二本鎖siNA分子を得るのに適した条件下でこの二つの相補鎖をアニールする工程によって合成することができる。ある態様では、siNA分子の相補的な部分は、固相オリゴヌクレオチド合成又は固相タンデムオリゴヌクレオチド合成によって合成される。
【0144】
オリゴヌクレオチド(例:特定の修飾オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのリボヌクレオチドを含まない部分)は、例えばCaruthersら,Methods in Enzymology 211: 3−19, 1992; Thompsonら、国際公開公報WO99/54459、Wincottら,Nucleic Acids Res. 23: 2677−2684, 1995; Wincottら,Methods Mol. Bio. 74: 59, 1997; Brennanら,Biotechnol. Bioeng. 61: 33−45, 1998; 及びBrennan、米国特許公報第6001311号に記載の本技術分野で公知のプロトコルを用いて合成される。本発明の特定のsiNA分子を含むRNAの合成は、例えばUsmanら,J. Am. Chem. Soc. 109: 7845, 1987; Scaringeら,Nucleic Acids Res. 18: 5433, 1990; Wincottら, Nucleic Acids Res. 23: 2677−2684, 1995; 及びWincottら, Methods Mol. Bio. 74: 59, 1997、に記載の一般的手順に従う。
【0145】
本明細書で用いる「非対称ヘアピン」とは、アンチセンス領域と、ヌクレオチド又は非ヌクレオチドを含むことができるループ部と、アンチセンス領域と塩基対を作ってループ付き二重鎖を形成するのに十分な相補的ヌクレオチドを有する限りにおいてアンチセンス領域よりも少ないヌクレオチドを含むセンス領域と、を含む直鎖siNA分子である。
【0146】
本明細書で用いる「非対称二重鎖」とは、センス領域及びアンチセンス領域を含む別々の二本の鎖を有するsiNA分子であり、この場合、センス領域は、アンチセンス領域と塩基対を作って二重鎖を形成するのに十分な相補的ヌクレオチドを有する限りにおいてアンチセンス領域よりも少ないヌクレオチドを含む。
【0147】
本明細書で用いる「遺伝子発現を調節する」とは、標的遺伝子の発現を上方制御又は下方制御することであり、細胞内に存在するmRNAのレベル、mRNAの翻訳、又は標的遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはタンパク質サブユニットの合成の上方制御又は下方制御を含む場合がある。
【0148】
本明細書で用いる、「阻害する」、「下方制御する」、又は「発現を低下させる」という用語は、遺伝子の発現、RNA分子又は1又はそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットをコードする同等のRNA分子のレベル、又は標的遺伝子によってコードされる1又はそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットのレベル若しくは活性が、本発明の核酸分子(例:siNA)の非存在下で観察される値よりも低下することを意味する。
【0149】
本明細書で用いる「ジーンサイレンシング」とは、細胞内における遺伝子発現を部分的に又は完全に阻害することであり、「遺伝子ノックダウン」と言うこともある。ジーンサイレンシングの程度は本技術分野で公知の方法によって定量することができ、方法のうちのいくつかは国際公開公報WO99/32619にまとめられている。
【0150】
本明細書で用いる「リボ核酸」及び「RNA」という用語は、少なくとも一つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。リボヌクレオチドはベータ−D−リボフラノース部位の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドである。これらの用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA、組み換えによって作製したRNA、並びに1若しくは2個以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、修飾、及び/又は変性によって修飾及び変性された天然のRNAとは異なるRNAを含む。RNAの変性は、siNAの末端部又は内部等において、例えばRNAの1又は2個以上のヌクレオチドに対する非ヌクレオチド材料の付加を含む場合がある。
【0151】
RNA分子中のヌクレオチドには、天然ではないヌクレオチド又は化学合成されたヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチド等の非標準的なヌクレオチドが含まれる。このような変性されたRNAは類似体と呼ばれる場合がある。
【0152】
「高度保存配列領域」とは、標的遺伝子の1又はそれ以上の領域のヌクレオチド配列が、一つの世代から別の世代へ、又は一つの生体系から別の生体系へかけて実質的に変化しないことを意味する。
【0153】
「センス領域」とは、siNA分子のアンチセンス領域に対して相補性を有するそのsiNA分子のヌクレオチド配列を意味する。さらに、siNA分子のセンス領域は、標的核酸配列と相同性を有する核酸配列を含むことができる。
【0154】
「アンチセンス領域」とは、標的核酸配列に対して相補性を有するsiNA分子のヌクレオチド配列を意味する。さらに、siNA分子のアンチセンス領域は、そのsiNA分子のセンス領域に対して相補性を有する核酸配列を含むことができる。
【0155】
「標的核酸」とは、発現又は活性が調節されるいずれの核酸配列も意味する。標的核酸はDNA又はRNAであり得る。
【0156】
「相補性」とは、核酸が別の核酸配列と、従来のワトソン−クリック結合様式又はその他の従来のものとは異なる結合様式によって水素結合を形成できることを意味する。
【0157】
本明細書で用いる「生分解性リンカ」とは、例えば生物的に活性な分子とsiNA分子又はsiNA分子のセンス鎖とアンチセンス鎖を連結させるような、一つの分子をもう一つの分子と連結させるための生分解性リンカとして設計された核酸又は非核酸リンカ分子を意味する。生分解性リンカは、特定の組織又は細胞種への送達等の特定の目的のためにその安定性を調節することができるように設計されている。核酸系の生分解性リンカ分子の安定性は、例えばリボヌクレオチドと、デオキシリボヌクレオチドと、2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−アミノ、2’−O−アミノ、2’−C−アリル、2’−O−アリル、及びその他の2’位修飾ヌクレオチド又は塩基修飾ヌクレオチド等の化学修飾ヌクレオチドとの組み合わせによって、様々に調節することができる。生分解性核酸リンカ分子は、例えば長さが約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20ヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドのような二量体、三量体、四量体、若しくはさらに長い核酸分子であってよく、又は例えばホスホロアミデート若しくはホスホジエステル結合等のリン含有結合を有する一つのヌクレオチドを含んでもよい。生分解性核酸リンカ分子は、核酸のバックボーン、核酸の糖、又は核酸の塩基の修飾を含んでいてもよい。
【0158】
本明細書で述べる2’位修飾ヌクレオチドと関連して、「アミノ」とは2’−NH2又は2’−O−NH2を意味し、修飾されていてもされていなくてもよい。このような修飾された基は、例えばEcksteinら、米国特許公報第5672695号及びMatulic−Adamicら、米国特許公報第6248878号に記載されている。
【0159】
投与
本発明の範囲内で使用するための核酸分子を送達する方法の中には、例えばAkhtarら,Trends Cell Bio. 2: 139, 1992; Akhtar編、「Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics」、1995年、Maurerら,Mol. Membr. Biol. 16: 129−140, 1999; Hofland及びHuang,Handb. Exp. Pharmacol. 137: 165−192, 1999; 及びLeeら,ACS Symp. Ser. 752: 184−192, 2000、に記載されているものもある。Sullivanら、国際公開公報WO94/02595には、酵素核酸分子の送達の一般的方法がさらに記載されている。これらのプロトコルは本発明の範囲内で意図される実質的にいかなる核酸分子の補助的な又は補完的な送達に対しても利用することができる。
【0160】
核酸分子及びペプチドは、当業者に公知の様々な方法によって細胞へ投与することができ、その方法にはsiNA及びペプチドのみを含む製剤又は薬理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、アジュバンド、乳化剤、バッファ、安定剤、保存剤等の一つ若しくはそれ以上の追加成分をさらに含む製剤内における投与が含まれるが、これに限定されない。特定の態様において、siNA及び/又はペプチドは、リポソーム内に被包されたり、イオントフォレーシスで投与されたり、又はハイドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、生体接着性マイクロスフェア、若しくはタンパク質性ベクタ等の他の運搬体へ取り込まれたりすることができる(O’Hare及びNormand、国際公開公報WO00/53722参照)。別の選択肢として、核酸/ペプチド/運搬体の組み合わせを、直接注射又は輸液ポンプの使用によって局所的に送達することもできる。本発明の核酸分子の直接注射は、皮下注射、筋肉内注射、若しくは皮内注射を問わず、標準的な針とシリンジによる方法、又は、Conryら,Clin. Cancer Res. 5: 2330−2337, 1999、及びBarryら、国際公開公報WO99/31262に記載されるような無針技術を用いて行うことができる。
【0161】
本発明の組成物は、実質的に医薬品として使用することができる。医薬品は、患者の疾患状態若しくはその他の有害な状態の発生又は重症度化を予防若しくは調節したり、又はこれらを治療(一つ若しくはそれ以上の症状を、検出若しくは測定可能な程度で軽減)する。
【0162】
従って、追加的態様の範囲内において、本発明は、通常ペプチドと組み合わされた、複合体化し、若しくは抱合体形成した形であって、任意に希釈剤、安定剤、バッファ等の薬理学的に許容される担体と共に製剤されていてもよい1若しくは2種類以上のsiNAである、1若しくは2種類以上のポリ核酸の存在又は投与を特徴とする医薬組成物及び方法を提供する。
【0163】
本発明は、対象の特定の疾患状態又はその他の有害な状態と関連する遺伝子の発現を調節する短鎖干渉核酸(siNA)分子を提供することにより、更なる課題及び利点を満足するものである。通常siNAは、対象の疾患状態又は有害な状態と関連する原因因子又は寄与因子として、高レベルに発現された遺伝子を標的とすることになる。この点で、siNAは、1又はそれ以上の関連する疾患症状の再発が予防される、又はその重症度が軽減若しくは減少するレベルまで遺伝子の発現を効果的に下方制御するであろう。別の選択肢として、疾患又は他の有害な状態の結果又は続きとして標的遺伝子の発現が必ずしも高まらない様々な個別の疾患モデルに対しても、それでも標的遺伝子の下方制御は遺伝子の発現を低下させる(すなわち、標的遺伝子の選択されたmRNA及び/又はタンパク質産物のレベルを下げる)ことによって治療効果を示すであろう。別の選択肢として、本発明のsiNAは、一つの遺伝子の発現の低下を目的とすることによって、その標的遺伝子の産物又は活性によって発現が負の制御を受ける「下流」の遺伝子の上方制御を行うことができる。
【0164】
本発明のこのsiNAは、例えば経皮投与又は局所注射など、いかなる形でも投与することができる。動物を対象として、選択された疾患状態と関連する原因因子又は寄与因子として発現が異常に増加することが公知である大多数の遺伝子のいずれをも含む、その選択された疾患状態と関連する1又はそれ以上の異なる遺伝子の発現を標的とする類似の方法及び組成物が提供される。
【0165】
本発明の負に帯電したポリヌクレオチド(例:RNA又はDNA)は、医薬組成物を形成する安定剤やバッファ等を含んだ又は含まない状態で、いかなる標準的な方法によっても患者に投与することができる。リポソームによる送達メカニズムの使用を所望する場合は、リポソームを形成する標準的なプロトコルに従うことができる。本発明の組成物は、経口投与のために錠剤、カプセル、又はエリキシール剤として、直腸内投与のために坐薬として、注射投与のために無菌溶液又は懸濁液として、及び本技術分野で公知のその他の組成物として製剤し、使用することもできる。
【0166】
本発明はさらに、本明細書で述べる組成物の薬理学的に許容される製剤も含む。このような製剤は、例えば塩酸、臭素酸、酢酸、及びベンゼンスルホン酸の塩といった酸付加塩等の上述の化合物の塩を含む。
【0167】
siNAは、例えば薬物の直腸内投与のために坐薬の形で投与することもできる。このような組成物は、薬物を、常温で固体だが直腸内温度では液体となるため直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。そのような物質としては、ココアバター及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0168】
核酸分子は、当業者に公知の様々な方法によって細胞へ投与することができ、その方法にはリポソーム内への封入、イオントフォレーシスによるもの、生分解性ポリマ、ハイドロゲル、シクロデキストリン(例えば、Gonzalezら,Bioconjugate Chem. 10: 1068−1074, 1999、並びにWangら、国際公開公報WO03/47518及び国際公開公報WO03/46185参照)、乳酸−グリコール酸共重合ポリマ(PLGA)及びPLCAマイクロスフェア(例えば、米国特許公報第6447796号、米国特許公開公報US2002/130430参照)、生分解性ナノカプセル、並びに生体接着性マイクロスフェア等のその他の運搬体への取り込みによるもの、又はタンパク質ベクタによるもの(O’Hare及びNormand、国際公開公報WO00/53722参照)が含まれるが、これらに限定されない。別の選択肢として、核酸/運搬体の組み合わせは、直接注射又は輸液ポンプの使用によって局所的に送達される。本発明の核酸分子の直接注射は、皮下注射、筋肉内注射、若しくは皮内注射を問わず、標準的な針とシリンジによる方法、又は、Conryら,Clin. Cancer Res. 5: 2330−2337, 1999、及びBarryら、国際公開公報WO99/31262に記載のような無針技術を用いて行うことができる。本発明の分子は医薬品として使用することができる。医薬品は、対象の疾患状態について、その発生を予防若しくは調節したり、又はこれらを治療(一つの症状を、好ましくはすべての症状をある程度軽減)したりする。
【0169】
本発明のカチオン性ペプチドのいずれか一つを選択又はいくつかを組み合わせることにより、本発明の方法及び組成物の範囲内においてsiNAの細胞内送達を誘導又は促進するのに有効なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド試薬を得ることができる。
【0170】
医薬組成物
本発明は、本明細書で述べる化合物の薬理学的に許容される製剤又は組成物も含む。このような製剤には、例えば塩酸、臭素酸、酢酸、及びベンゼンスルホン酸の塩といった酸付加塩等の上述の化合物の有機塩及び無機塩が含まれる。
【0171】
水性懸濁液は、水性懸濁液を製造するのに適した賦形剤との混合物の形で活性物質を含む。そのような賦形剤は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、メチルセルロース、ヒドロプロピル−メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガム、及びアカシアガム等の懸濁剤であり、分散剤又は湿潤剤は例えばレシチン等の天然のホスファチド、例えばポリオキシエチレンステアレート等のアルキレンオキサイドと脂肪酸との縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール等のエチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート等のエチレンオキサイドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、又は例えばポリエチレンソルビタンモノオレエート等のエチレンオキサイドと脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物であってよい。水性懸濁液は、例えばp−ヒドロキシ安息香酸のエチル若しくはn−プロピルエステル等の1又はそれ以上の保存剤、1又はそれ以上の着色剤、1又はそれ以上の香味料、及びスクロース若しくはサッカリン等の1又はそれ以上の甘味料をさらに含んでよい。
【0172】
油性懸濁液は、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはココナッツ油等の植物性油、又は液状パラフィン等の鉱油中に活性成分を懸濁させることで調製することができる。油性懸濁液は、例えば蜜蝋、固形パラフィン、又はセチルアルコール等の増粘剤を含んでもよい。飲みやすい経口製剤を提供するために甘味料及び香味料を加えてもよい。このような組成物は、アスコルビン酸等の抗酸化剤を加えることで保存することができる。
【0173】
水の添加によって水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末及び顆粒により、活性成分は、分散剤又は湿潤剤と、懸濁剤と、1又はそれ以上の保存料との混合物として提供される。例えば甘味料、香味料、及び着色料等の追加的な賦形剤も存在してよい。
【0174】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形をとることもできる。油相は、植物油、鉱油、又はこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤としては、例えばアカシアガム又はトラガントガム等の天然ガム、例えば大豆、レシチン等の天然ホスファチド、及び例えばソルビタンモノオレエート等の脂肪酸と無水ヘキシトールとから誘導されるエステル又は部分エステル、並びに例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の前述の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物であってよい。また、エマルジョンは甘味料及び香味料を含んでいてもよい。
【0175】
医薬組成物は水性又は油性の無菌注射用懸濁液の形をとることができる。この懸濁液は、適切な分散剤若しくは湿潤剤、及び/又は懸濁剤を用いて調製することができる。無菌注射用製剤は、例えば1,3−ブタノール溶液等非経口的に許容される無害な希釈剤若しくは溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。
【0176】
医薬組成物用の許容可能な担体、運搬体、及び溶媒としては、水、リンゲル液、及び等張性の塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、無菌固定油は、担体、運搬体、溶媒、又は懸濁媒体として従来から使用されている。上記目的のためには、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含むいかなる無刺激性の固定油も使用することができる。さらに、オレイン酸等の脂肪酸も注射液の調製に有用である。
【0177】
本明細書で引用するあらゆる刊行物、参考文献、特許、及び特許出願の全文献は、参照することで具体的に本明細書に組み入れられる。
【0178】
本発明を特定の態様について説明し、例示の目的で多くの詳細事項を述べてきたが、本発明が追加的な態様を含み、本明細書で述べた詳細事項が本発明の範囲から逸脱しない範囲で大きく変形され得ることは、当業者には明らかであろう。本発明は、そのような追加的な態様、変更、及び同等な内容を含む。
【0179】
本発明の説明及び請求項においてここで使用する「1の(a)」、「1の(an)」、「その(the)」、及びこれらに類似の言葉は、単数形及び複数形の両方を含むものとして解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という言葉は、例えば「含むがこれらに限定されない」という意味のように、目的語を制限しない言葉として解釈されるべきである。本明細書における数値の範囲の列挙は、その範囲内の数値が明示的に列挙されていてもいなくても、本明細書において個々の数値が列挙されているかのごとく、その範囲内に入る個々の各数値を意味することを意図したものである。本明細書で取り上げた具体的数値は典型例であって本発明を制限するものではないことが理解されるであろう。
【0180】
本明細書で示された例及び用いられた典型的な用語は単に例示目的のためのものであって、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0181】
調製例1
水中でのPN0826:siRNA化合物。
化合物は以下のようにして調製した。RNaseを含有しない82.12μlの水、続いて10μlのG1498(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加した。この溶液をボルテックス撹拌により混合した。最後に7.88μlのPN0826(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を加え、ボルテックス撹拌により混合した。
【0182】
調製例2
PN0826、F−108、及び水。
化合物は以下のようにして調製した。まずRNaseを含有しない82.12μlの水を、続いて10μlのG1498(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。次に7.88μlのPN0826(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を加えてボルテックス撹拌により混合した。最後に、5μlのプルロニックF108(20mg/ml、0.2μMろ過済み)を添加してピペットで混合した。
【0183】
調製例3
Cy5−Inm4、PN0183、及び一晩。
化合物は以下のようにして調製した。まず119.40μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて15.60μlのペプチドPN0183(2mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を4℃で一晩保存した。最後に15μlのCy5−Inm4(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。
【0184】
調製例4
Cy5−Inm4、PN0183、F127、及び一晩。
化合物は以下のようにして調製した。まず119.40μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて15.60μlのペプチドPN0183(2mg/ml、RNaseを含有しない水中)及び7.5μlのプルロニックF127(20mg/ml、0.2μMろ過済み)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を4℃で一晩保存した。最後に15μlのCy5−Inm4(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。
【0185】
調製例5
G1498、PN0183、希釈用水、及びペプチドから添加。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。
【0186】
調製例6
G1498、PN0183、希釈用バッファ、及びペプチドから添加。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。
【0187】
調製例7
G1498、PN0183、ペプチドから添加、及びボルテックス撹拌なし。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加してピペッティングにより混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ピペッティングにより混合した。
【0188】
調製例8
G1498、PN0183、ペプチドから添加、そして希釈による濃度低下。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。最後にこの溶液を10倍に希釈して濃度を下げた。
【0189】
調製例9
G1498、PN0183、及びsiRNAから添加。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。
【0190】
調製例10
G1498、PN0183、ペプチドから添加、そして30分間放置。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10M Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を氷上で30分間平衡化した。
【0191】
調製例11
G1498、PN0183、ペプチドから添加、そして60分間放置。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を氷上で60分間平衡化した。
【0192】
調製例12
G1498、PN0183、ペプチドから添加、そして24時間放置。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を氷上で24時間平衡化した。
【0193】
調製例13
Inm4、PN0183、PN0939、及びsiRNAを投与直前に添加。
化合物は以下のようにして調製した。まず259.1μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて15.60μlのPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)及び10.30μlのPN0939(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。最後に15.00μlのInm4(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。ボルテックス撹拌により混合した。
【0194】
調製例14
Inm4、siRNA、PN0183、PN0939の順番、及びピペッティングによる混合。
化合物は以下のようにして調製した。まず172.00μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて10μlのInm4(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加した。ピペッティングにより混合した。その後11.20μlのPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。ピペッティングにより混合した。最後に6.80μlのPN0939(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。再度ピペッティングにより混合した。この溶液を氷上で1時間平衡化した。
【0195】
調製例15
Inm4、siRNA、PN0183、PN0939の順番、及びボルテックス混合。
化合物は以下のようにして調製した。まず2289.50μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて24.00μlのInm4(20mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。その後53.60μlのPN0183(10mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。ボルテックス撹拌により混合した。最後に32.90μlのPN0939(20mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。ピペッティングにより混合した。この溶液を氷上で1時間平衡化した。
【0196】
調製例16
Inm4、siRNA、PN0183、PN0939の順番、及びpH7.4。
化合物は以下のようにして調製した。まず376.19μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH7.4)を、続いて5μlのInm4(20mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。その後15.39μlのPN0183(7.26mg/ml、RNaseを含有しない水中)を添加した。ボルテックス撹拌により混合した。最後に3.42μlのPN0939を添加した。ピペッティングにより混合した。
【0197】
調製例17
G1498、PN0183、及びtert−ブタノール。
化合物は以下のようにして調製した。まず72.93μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。その後10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。再度ボルテックス撹拌により混合した。最後に12.90μlのtert−ブタノールを添加し、ピペッティングにより混合した。
【0198】
調製例18
G1498、PN0183、及びエタノール。
化合物は以下のようにして調製した。まず73.33μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。その後10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。再度ボルテックス撹拌により混合した。最後に12.50μlのエタノールを添加し、ピペッティングにより混合した。
【0199】
調製例19
Lac−Z、PN0183、PN0939。
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)及び1.98μlのPN0939(1mg/ml)を121.40μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。
【0200】
Lac−Zの構造は以下の通りである。
センス鎖:CN2938。(配列番号64)
5’−r(CUACACAAAUCAGCGAUUU)dTdT−3’
アンチセンス鎖:CN2939。(配列番号65)
5’−r(AAAUCGCUGAUUUGUGUAG)dTdC−3’
【0201】
調製例20
Lac−Z、PN0183、PN0938。
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)及び0.97μlのPN0938(1mg/ml)を一緒に122.41μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。
【0202】
調製例21
Lac−Z、PN0183、PN0939、及び架橋。
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)及び1.98μlのPN0939(1mg/ml)を119.80μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。次に1.60μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加してピペッティングにより混合した。この溶液を室温で1時間平衡化した。
【0203】
調製例22
Lac−Z、PN0183、架橋、及びPN0939。
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)を119.80μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、続いて1.60μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加した。ピペッティングにより混合した。この溶液を室温で1時間平衡化した。最後に1.98μlのPN0939(1mg/ml)を添加した。ピペッティングにより混合した。
【0204】
調製例23
Lac−Z、PN0183、架橋、PN0939、及び架橋
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)を119.80μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、続いて0.8μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加した。ピペッティングにより混合した。この溶液を室温で1時間平衡化した。続いて1.98μlのPN0939(1mg/ml)及び0.8μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加した。ピペッティングにより混合した。
【0205】
調製例24
Lac−Z、PN0183、架橋、透析、及びPN0939
化合物は以下のようにして調製した。まず158.6μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH7.4)、103.45μlのLac−Z siRNA(20μM)、及び33.53μlのPN0183(1mg/ml)を加えることでLac−Z siRNAとPN0183の混合物を作成した。ボルテックス撹拌によって混合した。次に4.4μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加した。ピペッティングにより混合した。この溶液を室温で2時間平衡化した。続いてこの溶液を4℃で一晩透析にかけた。43.5μlの架橋された混合物を331.5μlのOPTI−MEM中へ希釈した。4.96μlのPN0939(0.1mg/ml)を57.54μlのOPTI−MEM中へ希釈した。この二つの希釈溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。
【0206】
調製例25
Lac−Z、PN0183、PN0826、及びPEG3350
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)及び1.6μlのPN0183(0.1mg/ml)を120μlのOPTI−MEM培地中へ添加し、ボルテックス撹拌により混合した。3.96μlのPN0826(0.1mg/ml)及び2.50μlのPEG3350(10mg/ml)を118.54μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。
【0207】
実施例1
ゴールドダイ置換分析(Gold Dye Displacement Assay)によるペプチド−siRNA親和性
高速スクリーニングによる様々なペプチドのsiRNAに対する相対結合性を、核酸結合性色素SYBR−goldの置換を間接的に測定することによって評価した。ペプチドとSYBR−goldが同時にsiRNAとの競争結合を起こすように、siRNA、ペプチド、及びSYBR−goldの緩衝混合物を測定プレート内で2つの系に重複して調製した。siRNAの濃度は10μg/mLに固定し、それを0.05乃至10のペプチド:siRNA電荷比に対応する濃度範囲の各ペプチドの力価と組み合わせた。SYBR−gold色素はsiRNAと結合した時にのみ蛍光を発するため、siRNAと結合するペプチドは色素の結合を阻害し、結果として蛍光発光が減少する。従って、蛍光発光量はペプチドのsiRNAとの結合と逆相関を示した。Kd及びBmaxの両方の値を算出した。高いKd値は、ペプチドとsiRNAとの結合親和性が高いことを示すものであった。
【0208】
10,000倍濃度の核酸結合性SYBR−gold色素ストック液は、Invitrogen社(カリフォルニア州、カールズバッド)より入手し、−20℃で保存した。このストック液は、室温と平衡状態にしてからHyclone社のヌクレアーゼを含有しない水で100倍希釈した。これを測定プレート上で10倍希釈し、分析用の最終濃度である10倍濃度とした。これは、50μg/mLまでの濃度においてsiRNA二重鎖と正比例にある結合が得られる最適濃度であった。SYBR−goldとG1498siRNAとの正比例にある結合度を示す検量線作成に用いた数値を表4に示す。
【0209】
【表4】
【0210】
サンプルは384ウェルの分析プレート上で直接混合した。まず、マルチチャネルピペットを用い、ピペットチップをウェルの底に接触させることで溶液が完全に排出されるようにして、5μLのSYBR−gold色素を各ウェルへ分注した。次に、22.5μLの2×ペプチド溶液をシングルチャネルピペットで添加した。最後に、22.5μLの2×siRNA溶液をマルチチャネルピペットで添加した。プレートを直ちに箔でカバーし、軽くたたいて混合しウェルの側壁についた液滴を落とした。
【0211】
蛍光強度は、Molecular Devices社(カリフォルニア州、サニーベール)のSpectraMax蛍光プレートリーダーで測定した。プレートの設定条件に含まれたのは、励起波長を495nm及び発光波長を537nmとし、測定前の振とう及びウェル一つあたり1回の測定であった。プレートはsiRNAの添加後30分以内に測定した。
【0212】
ペプチド結合性のためのスキャッチャードプロット
スキャッチャードプロットはペプチドの結合性(結合[ペプチド]/遊離[ペプチド])vs結合[ペプチド]のプロットである。このプロットの直線回帰の傾きは、−1/Kdであり、Bmaxはy切片である。遊離のペプチドと結合ペプチドの濃度を直接測定することはできないので、siRNAの間接測定値を用いて算出した。遊離siRNAは、測定された蛍光強度から検量線を用いて定量した。結合siRNAは、既知の初期siRNA濃度(10μg/mL)からの物質収支により、検量線から定量した。
【0213】
結合ペプチドは、(siRNA:ペプチド)結合モル比が単一分子対の(siRNA:ペプチド)電荷比に等しいと仮定して、結合siRNAから算出した。この結合ペプチド算出量から、物質収支により遊離ペプチドを算出した。
【0214】
粒子サイズとゼータ電位
粒子サイズとゼータ電位は、ゼータ電位測定用透明使い捨てセルDTS1060Cを用い、25℃でMalvern Zetasizer Nano ZS(Malvern社、イギリス、ウスターシャー)により測定した。粒子サイズ用の分散剤は粘度1.0200cPのPBS又は粘度0.8872CPの水を用いた。ゼータ電位用の分散剤は粘度0.8872CPの水を用いた。分散剤粘度をサンプル粘度として使用した。ゼータ電位と粒子サイズの両方を測定する場合は、ゼータ電位測定用透明使い捨てセルを用いた。粒子サイズのみを測定する場合は、サイズ測定用低容量使い捨てキュベットを用いた。
【0215】
実施例2
様々な核酸濃度及びN/P比における縮合体粒子サイズ
様々なG1498濃度とN/P比におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図1に示す。特定のN/P比における各一組の3本の棒グラフにおいて、G1498濃度は一番左の棒グラフが100μg/ml、真ん中が50μg/ml、一番右が10μg/mlであった。N/P比0.2及び0.5では、G1498濃度が10μg/mlの時の粒子が非常に小さかったため、その濃度の棒グラフは図示されていない。
【0216】
P/N比が約1.4より小さい場合は、すべてのsiRNA濃度において粒子サイズは約200nmよりも小さかった。P/N比が約1.4か又はそれより大きい場合も、最も高い濃度(100μg/ml)を除くすべてのRNA濃度において縮合体粒子サイズは約200nmよりも小さいままであった。
【0217】
実施例3
様々な核酸濃度及びN/P比における縮合体粒子サイズ
様々な混合後の時間及び窒素/リン比(N/P比)で得られたsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図2乃至図5に示す。図2乃至図5の各図の特定のN/P比における各一組の2本の棒グラフにおいて、左の棒グラフがボルテックス撹拌ありの場合、右の棒グラフがボルテックス撹拌なしの場合であった。
【0218】
図2の粒子径は混合後直ちに測定されたものであり、図3、図4、及び図5の粒子径は、それぞれ混合後30分、60分、及び24時間で測定された。
【0219】
実施例4
縮合体粒子サイズに対するpHの影響
N/P比1.4及びG1498濃度100μg/mlで得られた、様々なpH値に対するsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図6に示す。
【0220】
pHが約12より低い場合、縮合体粒子サイズは減少し、pHの低下に伴って減少し続ける。約11より低いpHでは、粒子サイズは約500nmより小さかった。
【0221】
強度は、後方散乱光子 (back scattered photon)(後方散乱モード (Back scattered mode))の測定値である。粒子サイズは、拡散自己相関アルゴリズムを使って計算したサイズである。
【0222】
実施例5
縮合体粒子サイズに対する塩濃度の影響
様々な塩化ナトリウム濃度で得られたsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図7に示す。
【0223】
約0.5までの塩化ナトリウム濃度では、粒子径は約100nmから約275nmへ増加する。塩化ナトリウム濃度が約0.5を超えると、縮合体粒子サイズは上下に変動する。
【0224】
実施例6
縮合体粒子サイズに対するRNA及びペプチドの添加順の影響
様々なN/P比及び混合順におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図8に示す。N/P比が0.5以下の場合、粒子サイズは添加順による大きな影響は受けない。N/P比が0.5を超える場合は、siRNAが先に溶液中へ導入され、そのsiRNA溶液にペプチドが添加された場合に粒子サイズは概して小さかった。
【0225】
実施例7
縮合体粒子の形態
ペプチド−RNA縮合化合物の粒子形態は、透過電子顕微鏡(TEM)イメージングによって測定した。以下のプロトコルを用いた。
グリッド上に15μLのサンプルを滴下して10分放置;
半分の強度のカルノフスキー液に浸漬;
カコジル塩バッファに浸漬;
TEM造影剤:3%酢酸ウラニル(UA);
3回水に浸漬、UAに浸漬、湿らせたフィルター紙で余分な液体を除去、乾燥;
混合物1:(オリジナルのカルノフスキー混合物);
16%パラホルムアルデヒド溶液:20mL;
50%グルタルアルデヒド EM級:8mL;
0.2Mリン酸ナトリウムバッファ:25mL;
蒸留水:25mL。
最終混合物は78mLで、0.08Mバッファ中に5%グルタルアルデヒドと4%ホルムアルデヒドを含む。
この混合物のモル浸透圧濃度は2000mOSMを超えていた。
カコジル酸ナトリウムバッファ0.1M;
カコジル酸ナトリウム:4.28gm;
塩化カルシウム:25.0gm;
0.2N塩酸:2.5ml;
蒸留水で200mlに希釈、pHは7.4。
【0226】
グロー放電なしで上記のプロトコルを用いた時の、siRNA G1498(濃度100μ/ml)とペプチドPN183(N/P比1.4)との縮合化合物の粒子のTEM写真を図9に示す。この写真から、サイズが均一で形態が球状の粒子であることがわかる。粒子サイズは100nmより小さく、典型的には約50乃至60nmであった。
【0227】
グロー放電ありで上記のプロトコルを用いた時の、siRNA G1498(濃度100μ/ml)とペプチドPN183(N/P比1.4)との縮合化合物の粒子のTEM写真を図10に示す。この写真から、サイズが均一で形態が球状の粒子であることがわかる。粒子サイズは100nmより小さく、典型的には約30乃至60nmであった。
【0228】
実施例8
ペプチド−RNA縮合化合物の粒子サイズの特徴
いくつかのペプチド−RNA縮合化合物の粒子サイズ特性を表5にまとめて示す。
【0229】
【表5】
【0230】
例えば、N/P比0.5における化合物G1498/PN183は、全強度の98.7%を占めるピークを示し、ピーク径が73.3nm、ピーク幅が32.9nm、Z−平均粒子径が63.8であった。
【0231】
実施例9
ペプチド−RNA縮合体を用いてLPS刺激されたマウスの肺内でのTFN−αのインビボノックダウンアッセイ
siRNAのノックダウン活性を、細胞にペプチド−siRNA縮合化合物をトランスフェクトすることによって測定した。ランダムsiRNA配列をネガティブコントロールとして用いた。
【0232】
siRNA Inm−4及びペプチドPN183及びPN939との縮合化合物を含む組成物の鼻孔内投与による、モデルマウス内でのLPS誘導性TFN−α発現(pg/ml)のノックダウンアッセイの結果を図11に示す。
【0233】
図11において、一番左の棒グラフがバッファコントロールであり、次がInm−4/PN183/PN939縮合体のデータ、その右がグルタルアルデヒド(G)で架橋したInm−4/PN183/PN939化合物のデータである。プラセボ(Placebo)はsiRNAを含有しておらず、Qnegは不活性siRNAを含有している。
【0234】
図11のデータを表6に示す。
【0235】
【表6】
【0236】
投与は鼻腔内から行った。投与後4時間及び24時間で、動物を0.625ng(50μl)のLPSで誘起した。LPS導入後2時間で肺を採取した。TNFαのELISAアッセイ及びBCA全タンパク質アッセイを行った。実験に用いた物質及び方法は以下の通りであった。
動物:正常マウス
投与量:0.5mg/kg
容量:50μL
反復実験数:n=3
全グループ数:10
コントロール:媒体、Qneg
siRNA:Inm4
投与:Inm4濃度0.5mg/kgで製剤を調製した。各製剤の全容量は200μlであった。各マウス(n=3)に50μlずつ投与した。
siRNAの調製:既存の20mg/mlのInm−4siRNAストック液を Hepes/バッファにより5mg/mlに希釈した。Qnegは、既存の3.29mg/mlのストック液を使用した。
ペプチド:ペプチドはバッファ(10mM Hepes/5%デキストロース)により適切な濃度に希釈した。
賦形剤調製:グルタルアルデヒド(0.05%W/V)を使用した。0.2μmで滅菌ろ過した。
製剤調製:1.5mlBio−pur Eppendorfチューブに各成分を加えた。
(A)まず、少量の他の成分を受ける容量のバッファを加えた。
(B)以下に示す順序で全成分を加えた。siRNA、ペプチド1、ペプチド2、必要に応じて添加剤、バッファ。
(C)グルタルアルデヒド架橋を行う製剤については、1時間経ってから投与した。
【0237】
代表的な製剤を表7に示す。
【0238】
【表7】
【0239】
代表的製剤の詳細を表8及び表9に示す。
【0240】
【表8】
【0241】
【表9】
【0242】
実施例10
ラット膠肉腫線維芽細胞(9L/LacZ)におけるLac−z発現のインビトロノックダウンアッセイ
lac−z siRNAとペプチドPN183並びに様々な第二のペプチドとの縮合化合物によるラット膠肉腫線維芽細胞である9L/LacZ内でのlac−z発現のインビトロノックダウンアッセイの結果を図12に示す。
【0243】
図12において、一番左の棒グラフがHiPerFect(商標)(Qiagen社、カリフォルニア州、バレンシア)を用いた比較データであり、それに続くのが本発明の様々な化合物のデータによるものである。PN183のN/P比は0.75であり、第二のペプチドのN/P比0.3であった。図12のデータを表10に示す。
【0244】
【表10】
【0245】
実験に用いた物質及び方法は以下の通りであった。
細胞:9L/LacZ
投与量:100nM、全トランスフェクション用量100μlに基づく
容量:製剤容量25μL
反復実験数:n=3
全グループ数:20
コントロール:Qneg w/Alexis546
siRNA:LacZ
Lac−Z又はQneg:54μlのsiRNA+17.28μlのPN0183+1278μlのOPTI−MEM
ペプチドはOPTI−MEM培地で適切な濃度に希釈した。
賦形剤はすべて0.2μmで滅菌ろ過した。
製剤:
(A)siRNAとPN0183を一緒にOPTI−MEMで希釈して粒子を形成させた。ボルテックス撹拌した。
(B)送達媒体をOPTI−MEMで希釈した。ボルテックス撹拌で送達媒体を混合した。
(C)各製剤について、96ウェルに希釈した送達媒体をまず添加し、続いてsiRNA/PN0183製剤を添加した。ピペッティングにより混合した。トランスフェクトする前に30分間放置した。トランスフェクション:各製剤は5つのウェルに十分な125μlであった。各ウェル(n=3)には25μl注入した。
【0246】
代表的な製剤の詳細を表11に示す。
【0247】
【表11】
【0248】
代表的製剤の詳細を表12に示す。
【0249】
【表12】
【0250】
実施例11
ラット膠肉腫線維芽細胞(9L/LacZ)におけるLac−z発現のインビトロノックダウンアッセイ
様々な縮合化合物によるラット膠肉腫線維芽細胞である9L/LacZ内でのlac−z発現のインビトロノックダウンアッセイの結果を表13に示す。
【0251】
【表13】
【0252】
実験に用いた材料と方法は以下の通りであった。
細胞:9L/LacZ
投与量:100nM、全トランスフェクション用量100μlに基づく
容量:製剤容量25μL
反復実験数:n=3
全グループ数:20
コントロール:Qneg w/Alexis546
siRNA:LacZ
トランスフェクション:各製剤は5つのウェルに十分な125μlであった。各ウェル(n=3)には25μl注入した。
ペプチド調製:ペプチドはOPTI−MEM培地で適切な濃度に希釈した。
賦形剤調製:賦形剤はすべて0.2μmで滅菌ろ過した。
製剤調製:
(A)PN0183なしの製剤については、送達媒体をまず添加してからsiRNAを添加し、ピペッティングにより混合した。
(B)PN0183ありの製剤については、siRNAとPN0183の複合体をまず作製した。96ウェルプレートに、送達媒体をまず添加し、それからsiRNA/PN0183複合体を添加し、ピペッティングにより混合した。
(C)架橋を行う製剤については、siRNAとPN0183の複合体をまず作製し、それから透析(4℃、一晩)を行うか、又は行わなかった。続いて翌朝に他の送達媒体をまず添加し、そしてsiRNA/PN0183複合体を添加、それからピペッティングにより混合した。
【0253】
代表的な製剤を表14に示す。
【0254】
【表14】
【0255】
代表的製剤の詳細を表15、16、及び17に示す。
【0256】
【表15】
【0257】
【表16】
【0258】
【表17】
【0259】
実施例12
ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド
典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73は、以下に示すヒトのヒストン2B(H2B)タンパク質のアミノ酸配列から誘導された。H2Bタンパク質中の下線部13乃至48番目までの残基部分がPN73を誘導するために使用された断片部を示す。H2Bの12乃至48番目までのアミノ酸で表される場合もある。PN73の一次構造も以下に示す。
H2B(ヒストン2B)アミノ酸配列(配列番号66)
MPEPAKSAPAPKKGSKKAVTKAQKKDSKKRKRSRKESYSVYVYKVLKVHPDTGISSKAMGIMNSFVNDIFERIAGEASRLAHYNKRSTITSREIQTAVRLLLPGELAKHAVSEGTKAVTKYTSSK
PN73(13−48)(配列番号42)
NH2−KGSKKAVTKAQKKDGKKRKRSRKESYSVYVYKVLKQ−アミド
【0260】
典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73残基の置換及び欠失によって作製したいくつかのポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド変異体の構造を表18に示す。
【0261】
【表18】
【0262】
表19に示すのは、典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73及びその切断型誘導体の構造である。以下に示すPN360及びPN361のアミノ酸配列は、PN73の対応するアミノ酸配列にアラインメントしてある。
【0263】
【表19】
【0264】
PN360はPN73とN末端は共通だがPN73のC末端が欠失しており、PN361はPN73とC末端が共通だがPN73のN末端が欠失している。PN766はPN73のC末端側15のアミノ酸に相当する。PN73、PN360、PN361、及びPN766はFITC(フルオレセイン−5−イソチオシアネート)(すなわち、−GK[イプシロン]G−アミド)によるC末端標識はされていない。表19にはさらに11のPN73切断型を示し、これらはPN768を除いてペプチドのN末端から順に残基を3つずつ欠失させて作成した。これらのペプチドはすべて、このペプチドを含む細胞を蛍光顕微鏡で検出し、そして/又はフローサイトメトリで分離できるように、FITC(フルオレセイン−5−イソチオシアネート)(すなわち、−GK[イプシロン]G−アミド)によるC末端標識が施されている。PN766及びPN708は同じアミノ酸配列を持つが、PN708がC末端FITC標識されている点で異なっている。
【0265】
実施例13
siRNAの細胞取り込みと標的遺伝子ノックダウンのためのインビトロでの実験方法及び手順
本実施例では、実施例12の表18及び表19に挙げた典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドによる、siRNAの細胞取り込み及びsiRNAによる標的遺伝子ノックダウン活性を促進する有効性を評価するために使用される方法と手順を示す。細胞の生存率も評価した。各実験における細胞の培養条件及びプロトコルは以下に詳細に説明する。
【0266】
細胞培養
初代ヒト単球:
健康な提供者からのヒトの新鮮血サンプルをGolden West Biologicals社より購入した。単球の単離のために、血液サンプルは入手後直ちにPBSにより1:1の比率で希釈した。まず全血から末梢血液単核細胞(PBMC)をFicoll(Amersham社)勾配法により単離した。さらにMiltenyiCD14ポジティブ選別キット及び提供されたプロトコル(Miltenyi Biotec社)を用いて単球をPBMCから分離した。単球試料の純度を評価するために、細胞を抗CD14抗体(BD Biosciences社)とインキュベートし、その後フローサイトメトリで分離した。単球試料の純度は95%超であった。
【0267】
0.1乃至1.0ng/mlのリポ多糖、LPS(Sigma社、ミズーリ州、セントルイス)を細胞培養液に添加して腫瘍壊死因子−±(TNF−±)の生成を刺激することにより、ヒト単球の活性化を行った。細胞はLPSと共に3時間インキュベートした後に回収し、Quantigeneアッセイ(Genospectra社、カリフォルニア州、フリーモント)を用いて製造元の説明書に従ってmRNAレベルを測定した。
【0268】
マウス尾線維芽細胞:マウス尾線維芽細胞(MTF)はC57BL/6Jマウスの尾から得た。尾を切り離し、70%エタノールに浸漬した後剃刀の刃で切って小片とした。この小片をPBSで3回洗浄した後、0.5mg/mLのコラゲナーゼ、100ユニット/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンと共に37℃で振とう器中でインキュベーションして組織を破壊した。次に尾の小片を完全培地(20%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、100ユニット/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシン含有ダルベッコ改変必須培地)中で細胞が樹立するまで培養した。細胞は、上で概説したように、37℃、5%CO2下で、完全培地中で培養した。
【0269】
細胞生存率(MTTアッセイ法)
細胞生存率は、MTTアッセイ法(MTT−100、MatTekキット)を用いて評価した。このキットは、テトラゾリウム塩の取り込みとホルマザン色素への変換を測定するものである。解凍した濃縮MTT2mLをMTT希釈剤8mLと混合することで脂質を用いて解凍して希釈したMTTの濃縮物を投与終了時の1時間前に調製した。各細胞培養インサートをCa2+及びMg2+含有PBSで2回洗浄し、それから各ウェルに100μLの混合MTT溶液を含む新品の96ウェル輸送用プレートへ移した。この96ウェル輸送用プレートを次に37℃、5%CO2下で3時間インキュベートした。3時間のインキュベーションの後MTT溶液を除去し、各ウェルに250μLのMTT抽出溶液を含む第二の96ウェル供給用トレイへ培養物を移した。各培養ウェルの表面へ150μLのMTT抽出溶液を追加添加し、このサンプルを暗所に室温で最小2時間、最大24時間放置した。その後ピペットチップをインサート膜に突き刺して、ウェルの上部と下部の溶液を混合させた。この混合抽出溶液200μLを抽出ブランク(ネガティブコントロール)と共にマイクロリーダー測定のための96ウェルプレートへ移した。プレートリーダーにより、650nmでバックグラウンド除去を行い、570nmでサンプルの光学濃度(OD)を測定した。細胞生存率はパーセントで表され、処理インサートに対して読み取ったODをPBS処理インサートに対して読み取ったODで割り、それを100倍して計算した。本分析の目的のために、PBSは細胞生存率に影響せず、従って100%の細胞生存率を表していると仮定した。
【0270】
siRNA調製
オリゴヌクレオチドの合成は、5’−O−ジメチルトリチル−2’−O−t−ブチルジメチルシリル−3’−O−スクシニルリボヌクレオシドで誘導体化された長鎖アルキルアミン処理多孔質ガラス上、又は場合によっては5’−O−ジメチルトリチル−2’−デオキシ−3’−O−スクシニルチミジンの支持体上での標準2−シアノエチルホスホラミダイト法(1)によって行った。オリゴヌクレオチドはすべて、ABI3400DNA/RNA合成装置(Applied Biosystems社、カリフォルニア州、フォスターシティ)を用いて0.2又は1μmolのオーダーで合成し、濃NH4OHを用いて固体担体から切断し、NH4OH:エタノール3:1混合液を用いて55℃で脱保護した。保護基2’−TBDMSの脱保護は、塩基が脱された保護RNAをN−メチルピロリジノン/トリエチルアミン/トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(NMP/TEA/3HF;体積比で6:3:4)の溶液(1μmolあたり600μL)と共に65℃で2.5時間インキュベートすることで達成した。対応する構成要素である、A、U、C及びGの5’−ジメトキシトリチル−N−(tac)−2’−O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]ホスホラミダイト(Proligo社、コロラド州、ボールダー)、並びに修飾ホスホラミダイトである5’−DMTr−5−メチル−U−TOM−CEホスホラミダイト、5’−DMTr−2’−OMe−Ac−C−CEホスホラミダイト、5’−DMTr−2’−OMe−G−CEホスホラミダイト、5’−DMTr−2’−OMe−U−CEホスホラミダイト、5’−DMTr−2’−OMe−A−CEホスホラミダイト(Glen Research社、バージニア州、スターリング)は供給業者から直接購入した。トリエチルアミン三フッ化水素酸塩、N−メチルピロリジノン、及び濃水酸化アンモニウムはAldrich社(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)から購入した。すべてのHPLC分析及び精製は、Xterra(商標)C18カラムを用いてWaters2690HPLCシステムにより行った。その他の試薬はすべてGlen Research Inc.社から購入した。オリゴヌクレオチドは、RP−HPLCで測定したところ純度97%超まで精製されていた。マウス注射用siRNAは、Qiagen社(カリフォルニア州、バレンシア)からインビボグレードのものを購入し、アニーリング後HPLCで精製した。一本鎖siRNAの量は、λ=260nmにおけるナトリウム塩の形での消衰係数の計算値35.0μg/ODに基づき、分光測定により求めた。二本の鎖がアニールされる時は、約10%の淡色効果が観測された。従って、二本鎖型の定量には消衰係数を10%低下させた。siRNAの内毒素レベルは通常0.0024EU/mg以下であった。
【0271】
ペプチド合成
ペプチドは固相Fmoc法により、Rainin社シンフォニー(Symphony)合成装置を用いてCLEARアミド樹脂上に合成した。5当量のHCTU及びFmocアミノ酸を用い、過剰のN−メチルモルフォリンと共に40分間カップリングを行った。このペプチド樹脂を20%ピペリジンのDMF溶液で10分間2回の処理を行い、Fmocを除去した。全ペプチドの反応が完了した時点で、Fmoc基をピペリジンで除去し、DMFで十分に洗浄を行った。ペプチド樹脂のN末端に、3.0当量の3−マレイミドプロピオン酸及びHCTUを6当量のN−メチルモルフォリンの存在下でカップリングすることにより、マレイミド変性ペプチドを調製した。カップリングの進み具合はカイザーテストでモニターした。2.5%の水と2.5のトリイソプロピルシランを含有するTFA10mLを添加し、続いて室温で2時間ゆるやかに撹拌することによりペプチドを樹脂から開裂させた。得られた粗ペプチドはエーテルで倍散し、続いてろ過により回収した。粗生成物をMillipore水に溶解し、凍結乾燥により乾固した。粗ペプチドを0.05%のTFAを含有する水15mLと酢酸3mLへ投入し、5mLの注入ループを通して流速5mL/分でZorbax RX−C8逆相カラム(内径22mm×250mm、粒子径5μm)にローディングした。精製は、溶媒Aを0.05%TFA含有水とし、溶媒Bを0.05%TFA含有アセトニトリルとした場合、0.1%B/分の直線AB勾配を流すことで達成した。精製ペプチドはHPLC及びESMSによって分析した。
【0272】
フローサイトメトリ
蛍光活性セルソーティング(Fluorescence activated cell sorting)(FACS)分析は、Beckman社のCoulter FC500セルアナライザー(カリフォルニア州、フラートン)で行った。装置は、用いた蛍光プローブ(siRNAにはFAM又はCy5、CD14にはFITC及びPE)に合わせて調節した。細胞生存率及び細胞毒性の指標として、ヨウ化プロピジウム(Fluka社、セントルイス)及びアネキシンV(R&D Systems社、ミネアポリス)を用いた。工程順のプロトコルを簡単に以下に示す。
(a)siRNA/ペプチド複合体に曝露後、細胞を少なくとも3時間インキュベートした。
(b)200μlのPBSで細胞を洗浄する。
(c)15μlのTEによって細胞を脱離し、37℃で温置する。
(d)30μlのFACS溶液(0.5%BSA及び0.1%アジ化ナトリウム含有PBS)が入った5つのウェル中で細胞を再懸濁する。
(e)5つのウェルの溶液を一つのチューブにまとめる。
(f)5μlのPI(ヨウ化プロピジウム)各チューブへ加える。
(g)蛍光活性セルソーティング(Fluorescence activated cell sorting)(FACS)により、製造元の説明書に従って細胞を分析する。
【0273】
siRNA取り込みの分析については、細胞をPBSで洗浄し、トリプシンで処理し(付着細胞のみ)、続いてフローサイトメトリで分析した。上述のBAで表されるsiRNAの取り込みも、細胞内のCy5又はFITCの蛍光強度によって測定し、そしてヨウ化プロピジウム又はアネキシンV−PEの添加によって細胞生存率を評価した。細胞取り込みを蛍光標識siRNAの膜への挿入と区別するため、トリパンブルーを用いて細胞膜表面の蛍光を消光した。
【0274】
実施例14
典型的ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドの欠失解析
初代マウス尾線維芽細胞(MTF)の細胞取り込みアッセイをインビトロで行い、完全長型と切断型のポリペプチドPN73の細胞内への進入効率を調べた。培養液中のFITC標識ペプチドを受けとった細胞数はフローサイトメトリで測定した。ペプチドの細胞取り込み率は培養液中の全細胞数に対する割合で表した。さらに、細胞内のFITC標識ペプチド量は平均蛍光強度(MFI)を用いて評価した。MFIは細胞内のFITC標識ペプチド量と正の相関関係があり、相対的に高いMFI値は高い細胞内FITC標識ペプチド量と相関している。ペプチドは0.63μM、2.5μM、及び10μMの濃度で評価し、PN768は2μM、10μM、及び50μMでテストした。
【0275】
完全長型と切断型のポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73を、トランスフェクションの前日に細胞に曝露した。FITC標識ペプチドはOpti−MEM(登録商標)培地(Invitrogen社)中で室温で約5分間希釈してから細胞へ添加した。細胞は3時間かけてトランスフェクトして、PBSで洗浄し、トリプシンで処理後、フローサイトメトリで分析した。細胞生存率を上述のようにして測定した。細胞取り込みを膜挿入と区別するため、トリパンブルーを用いて細胞膜表面の蛍光を消光した。
【0276】
この細胞取り込み分析において、完全長型FITC標識PN73ペプチド(PN690)は、テストしたすべての濃度において(10μMの結果を表20中「ペプチド細胞取り込み率(%)」の列に示す)ほぼ100%の細胞取り込みを達成した。残りの切断型PN73は、50μMの濃度が必要であったPN768を除いて、10μMの濃度においてPN690と同等の細胞取り込み率(カッコ内の数値)を達成し、これはPN73のN末端残基はペプチドが細胞内へ進入する能力にとって必要ではないことを示唆している。ペプチドの細胞取り込みには、PN768として示すPN73の5塩基分のC末端残基で十分である。切断型PN73は、0.63μMにおいてペプチドの長さに比例して細胞取り込み活性の低下を示した。すなわち、0.63μMの濃度でテストされたペプチドを全体的に見ると、PN73ペプチドの長さが減少するとその細胞取り込み活性も低下し、従って、ペプチドの細胞取り込み活性は投与量に依存することが示唆された。
【0277】
表20に細胞取り込みと標的遺伝子ノックダウン(KD)のデータをまとめた。
【0278】
【表20】
【0279】
表20より、欠失したPN73のN末端部(PN361参照)がsiRNA細胞取り込み活性を50%低下させ、またC末端を除くことで(PN360参照)siRNA細胞取り込み活性が低下したことが分かる。これらのデータは、典型的ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73のC末端領域が、ペプチドのヌクレオチド細胞取り込み活性に寄与していることを示している。
【0280】
本発明のsiRNA/ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド化合物による標的遺伝子発現の有効なノックダウンを実証した。具体的には、siRNA/ペプチド化合物によるヒト腫瘍壊死因子α(hTNF−α)遺伝子の発現を調節する能力を評価した。hTNF−α遺伝子は、ヒトやその他の哺乳類の対象中で過剰発現すると関節リウマチ(RA)の発症と進行を媒介することが示唆されているため、これを標的とすることは重要である。
【0281】
ヒト単球をモデルシステムとして用いて、siRNA/ペプチド複合体のhTNF−α遺伝子発現に対する影響を測定した。QnegはランダムsiRNA配列を表し、ネガティブコントロールとした。観察されたQnegによるノックダウン活性を100%(遺伝子発現レベル100%)の基準とし、以下の各siRNA、A19S21、21/21、及びLC20のノックダウン活性はこのネガティブコントロールに対する相対パーセントで表した。A19S21、21/21、及びLC20はhTNF−αmRNAを標的とするsiRNAである。典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドであるPN643(完全長型PN73からC末端標識を取り除いたもの)、PN690(C末端FITC標識付き完全長型PN73)、並びに欠失系PN660,PN735、PN654及びPN708からのPN73の切断型を上で挙げたsiRNAと複合体化させ、各siRNAがヒト単球中hTNF−α遺伝子の発現レベルを低下させる能力に対するこれらポリペプチドの影響を調べた。典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73の完全長型及び切断型のノックダウン活性を上の表20にまとめる。「KD」の列の「+」は、ペプチド/siRNA化合物がQnegのネガティブコントロールsiRNAに対して80%のノックダウン活性(Qnegネガティブコントロールと比較してmRNAレベルが20%低下)を有していたことを意味する。「+/−」は、ペプチド/siRNA化合物がQnegのネガティブコントロールsiRNAに対して約90%のノックダウン活性(Qnegネガティブコントロールと比較してmRNAレベルが10%低下)を有していたことを意味する。最後に「−」は、ペプチド/siRNA化合物がQnegネガティブコントロールと比較して有意なノックダウン活性を有していなかったことを意味する。
【0282】
健康なヒトの血液をGolden West Biologicals社(カリフォルニア州)から購入し、Ficoll−Pague Plus(Amersham社)の勾配を用いて末梢血液単核細胞(PBMC)を血液から分離した。次にMiltenyi Biotech社の磁気マイクロビーズを用い、ヒト単球をPBMC分画から分離した。単離したヒト単球は、4mMのグルタミン、10%FBS、1×非必須アミノ酸、及び1×ペニシリン−ストレプトマイシンを添加したIMDM中に再懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0283】
96ウェル平底プレートを使い、OptiMEM培地(Invitrogen社)中にヒト単球を100K/ウェル/100μlで播種した。典型的ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを、20nMのsiRNAとモル比1:5にてOptiMEM培地中室温で5分間混合した。このインキュベーションの最後にFBSをこの混合物へ添加し(終濃度3%)、この混合物50μlを細胞へ添加した。細胞は37℃で3時間温置した。温置の後、細胞をV底プレートへ移し、1500rpmで5分間かけてペレット化した。細胞を増殖培地(グルタミン、非必須アミノ酸、及びペニシリン−ストレプトマイシンを含むIMDM)中へ再懸濁した。一晩のインキュベーションの後、単球に1ng/mlのLPS(Sigma社)を適用して3時間刺激し、TNF−α発現レベルを増加させた。LPSの導入後、mRNA定量のために細胞を上述のように回収し、上清はタンパク質定量が必要な場合は保存した。
【0284】
mRNAの測定は、Genospectra社(カリフォルニア州)の分岐DNA技術を用いて製造者の仕様に従って行った。細胞中のmRNAレベルを定量するために、ハウスキーピング遺伝子(cypB)及び標的遺伝子(TNF−α)のmRNAの両方を測定し、TNF−αの読み取りをcypBに対して標準化して相対発光単位を得た。
【0285】
全体として、PN643(FITC標識なし完全長型PN73)及びPN690(FITC標識完全長型PN73)は、「KD」列の「+」(結果を表20に示す)が示すように、テストしたすべてのsiRNAにおいて、同等のsiRNAノックダウン活性を有していた。さらに、PN660は、テストしたすべてのsiRNAにおいてPN643及びPN690と同等のsiRNAノックダウン活性を有しており、このことはPN73の最もN末端側の9残基を除いても、siRNAが媒介する標的TNF−αmRNAのノックダウン活性に影響がないことを示唆している。PN654は、A19S21及び21/21の両siRNAに対して中程度のノックダウン活性を示したが、LC20siRNAに対してはノックダウン活性を示さなかった(ノックダウン活性は、ノックダウン活性の列中に「±」として示されている)。しかし、PN708又はPN735と複合体化されたsiRNAは、いずれのsiRNAについても観測可能なノックダウン活性を示さなかった。
【0286】
実施例15
ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN708
上述のように、細胞取り込み分析は、ペプチドと化合物化されたCy5抱合siRNAを受け入れる細胞の数を測定する。siRNAの細胞取り込みはフローサイトメトリ(詳細は実施例2を参照)で評価した。取り込み率は、Cy5抱合siRNAを含有する細胞の数を培養液中のトランスフェクトされた細胞及びされていない細胞を合わせた全細胞数で割って計算したパーセントで表した。平均蛍光強度(MFI)はフローサイトメトリで測定し、これにより細胞内のCy5抱合siRNAを定量した。MFI値は細胞内のCy5抱合siRNAの量と正の相関関係があり、従って高いMFI値は細胞内のCy5抱合siRNAの数が多いことを示す。
【0287】
この例では、PN643(完全長型PN73からC末端標識を取り除いたもの)、PN690(C末端FITC標識を有する完全長型PN73)、及びPN708(15塩基長、PN73のN末端残基21個を欠失して誘導)は5μM、10μM、20μM、及び40μMでテストした。PN643及びPN690は2.5μMでもテストし、PN690はさらに1.25μMでもテストした。PN643及びPN708の両方は80μMでもテストした。
【0288】
表21に示すように、FITC標識なしのPN73(PN643)ペプチドは10μMの濃度でほぼ100%のsiRNAの取り込みを達成した。しかし、PN73をFITCで標識すると(PN690)、最大細胞取り込み活性は約70%まで低下した。PN708は、siRNAの細胞取り込み活性が投与量に依存して増加することを示した。PN708は、80μMでsiRNAの細胞取り込み活性の最大である95%を達成した。完全長型PN73ペプチドでは、ペプチド濃度の上昇に伴って細胞生存率が減少した。対照的に、PN708ペプチドとインキュベートした細胞は、すべてのテスト濃度のペプチド存在下において90%超の生存率を維持した。この例では、切断型ペプチドPN708は、完全長型PN73(PN690)と比較して細胞内へ送達されたCy5−siRNAの量を約2倍に増加させた。
【0289】
【表21】
【0290】
ポリペプチドPN708は、siRNAが媒介する標的遺伝子発現低下への影響によってその特性を評価した。PN708ペプチドのC末端FITC標識を除いてから、siRNAと複合体化した時のその標的遺伝子発現低下を促進する能力を評価した。FITC標識が存在しない場合の切断型の典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドは、PN766とした(実施例12の表19参照)。siRNA/ペプチド複合体によるヒト腫瘍壊死因子α(hTNF−α)遺伝子発現の調節能を評価した(プロトコルの詳細は実施例3参照)。この例では、ランダムsiRNA配列であるQnegをネガティブコントロールとし、LC20及びLC17のsiRNAを用いてヒト単球中のhTNF−αmRNAを標的とした。テストしたsiRNAのペプチドに対するモル比は1:5、1:10、1:25、1:50、1:75、及び1:100であった。LC20、LC17共に20nMの濃度で使用した。
【0291】
ノックダウンの結果は、LC20/PN766及びLC17/PN766の両方のsiRNA/ペプチド複合体共に、1:5、1:10、及び1:25においてhTNF−αmRNAのレベルがsiRNAネガティブコントロールQnegの約70乃至80%まで低下した(すなわち、ネガティブコントロールQnegに比べてmRNAのレベルが20乃至30%低下)。siRNA/ペプチド比が1:50、1:75、及び1:100の場合は、コントロールQnegと比較してhTNF−αmRNAのレベルに有意の影響はなかった。PN766ペプチド存在下においてヒト単球に細胞毒性は見られなかった。
【0292】
実施例16
ペプチド媒介によるsiRNAの細胞取り込み活性
siRNAの細胞取り込み分析及びMFI測定を、実施例2及び3で既述のように行った。データを表22にまとめた。各ペプチドは、0.63μM、1.25μM、2.5μM、及び5μMの濃度でテストした。
【0293】
【表22】
【0294】
実施例17
ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド
表23に示すポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを、マウス尾線維芽細胞(MTF)中へのsiRNA送達能についてスクリーニングした。
【0295】
【表23】
【0296】
siRNAと化合物化された表23に挙げたポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドのsiRNA細胞取り込み活性。各ポリペプチドのsiRNA細胞取り込み活性データ、平均蛍光強度(MFI)測定値、及び細胞生存率データを表24にまとめた。「処理」の列にグレーでハイライトしたものがsiRNA細胞取り込み率75%以上を達成したポリペプチドである。これらのハイライトした各siRNA/ペプチド複合体の具体的なsiRNA細胞取り込み率も、「siRNA細胞取り込み率(%)」の列中にグレーでハイライトされている。
【0297】
LC20はヒト腫瘍壊死因子α(hTNF−α)mRNAを標的とするsiRNAとして使用されるオリゴであり、以下のリボヌクレオチド配列で表される。
(配列番号96)
UAGGGUCGGAACCCAAGCUUA
【0298】
細胞によるsiRNAの取り込みはフローサイトメトリ(詳細は実施例2参照)によって評価した。取り込み率は、Cy5抱合siRNAを含有する細胞の数を培養液中のトランスフェクトされた細胞及びされていない細胞を合わせた全細胞数で割って計算したパーセントで表した。平均蛍光強度(MFI)はフローサイトメトリで測定し、これにより細胞内のCy5抱合siRNAを定量した。MFI値は細胞内のCy5抱合siRNAの量と正の相関関係があり、従って高いMFI値は細胞内のCy5抱合siRNAの数が多いことを示す。
【0299】
データによると、PN680、PN681、PN709、PN760、PN759、及びPN682が、siRNAと複合体化されると細胞内へsiRNAを送達する。表23に示したポリペプチドのスクリーニングの結果を表24に示す。
【0300】
【表24】
【0301】
表24の「siRNA細胞取り込み率(%)」の列に示すように、「未処理」ネガティブコントロールはsiRNAの細胞取り込みが見られず、一方ポジティブコントロールのペプチドは95%のsiRNA細胞取り込み活性を達成した。ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドのPN680、PN681、PN709、PN760、PN759、又はPN682と複合体化したsiRNAのCy5抱合LC20は、75%を超えるかそれ以上のsiRNA細胞取り込み活性を達成した。ポリペプチドPN694及びPN714は、それぞれ54%及び43%という中程度のsiRNA細胞取り込み活性を示した。ポリペプチドPN665及びPN734は、有意のsiRNA細胞取り込み活性を示さなかった(5%未満)。
【0302】
ポリペプチドはさらにそのsiRNAを細胞中へトランスフェクトする能力を、平均蛍光強度(MFI)を分析することによって評価した。細胞取り込み分析がCy5抱合siRNAを含む細胞のパーセントを定量したのに対し、MFI測定では細胞内へ進入したCy5抱合siRNAの相対平均量を定量した。表24の「Cy5抱合siRNAのMFI」の列に示すように、ポジティブコントロールペプチドPN643によるCy5抱合siRNAの送達では、約7単位のMFIが達成された。予想通り、「未処理」のネガティブコントロールでは測定可能なMFIを示さなかった。ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN665に対してはMFIの測定は行わなかった。PN743、PN694、及びPN714のMFI測定値はポジティブコントロールよりも著しく低かった。ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN680、PN709、及びPN682のMFI測定値はPN643のポジティブコントロールと同等であり、一方PN681のMFIはポジティブコントロールの2倍であった。PN760及びPN759のMFI測定値は、ポジティブコントロールと比べてそれぞれ約13倍及び6倍高かった。
【0303】
以下のプロトコルを用いて、表23に挙げたポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドをテストした。完全培地中でトランスフェクションを行う前日に、マウス尾線維芽細胞(MTF)を24ウェルプレートの各ウェルに約80,000個ずつ播種した。ポジティブコントロールを除く各送達ペプチドを、0.5μMのCy5抱合siRNAの存在下で、0.63μM、2.5μM、10μM、及び40μMの濃度でテストした。siRNA/ペプチド複合体については、Cy5抱合siRNAとペプチドを別々にOpti−MEM(登録商標)培地(Invitrogen社)により、最終濃度の2倍まで希釈した。等容量のsiRNAとペプチドを混合し、室温で5分間複合体化させた。このsiRNA/ペプチド複合体をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄済みの細胞へ添加した。細胞は37℃、5%CO2下で3時間トランスフェクトさせた。細胞をPBSで洗浄し、トリプシンで処理後フローサイトメトリで分析した。siRNAの細胞取り込み量は細胞内のCy5の蛍光強度により測定した。細胞生存率は、ヨウ化プロピジウム取り込み又はアネキシンV−PE(BD Biosciences社)染色法を用いて測定した。標識siRNA(又は蛍光標識ペプチド)の細胞による取り込みを膜挿入と区別するため、トリパンブルーを用いて細胞膜表面の蛍光を消光した。トリパンブルー(Sigma社)を最終濃度0.04%となるように細胞に添加して再度フローサイトメトリにかけ、蛍光が細胞膜に集中していることを示唆する蛍光強度の変化が見られるかどうかを調べた。
【0304】
実施例18
ポリペプチドを有するsiRNAのノックダウン活性
ヒト腫瘍壊死因子α(hTNF−α)遺伝子の発現を調節するsiRNA/ペプチド化合物の能力を評価した。
【0305】
ヒト単球をモデルシステムとして用い、siRNA/ペプチド化合物のhTNF−α遺伝子発現に対する影響を測定した。QnegはランダムsiRNA配列を表し、ネガティブコントロールとして機能した。観察されたQnegによるノックダウン活性を100%(遺伝子発現レベル100%)の基準とし、以下の各siRNA、A19S21 MD8、21/21 MD8、及びLC20のノックダウン活性はこのネガティブコントロールに対する相対パーセントで表した。A19S21 MD8、21/21 MD8、及びLC20はhTNF−αmRNAを標的とするsiRNAである。
【0306】
ポリペプチドPN602は前述の実施例において使用されたポジティブコントロールをアセチル化したものであり、この例においては、siRNAのヒト単球への有効な送達及びsiRNAの媒介によるhTNF−αmRNAレベルの許容ノックダウン活性の両方についてのポジティブコントロールとして使用した。
【0307】
データが示すのは、ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN680がsiRNAを細胞内へ送達し、siRNA媒介による有効なジーンサイレンシングを可能とすることである。PN602、PN680、及びPN681のノックダウン活性を表25に示す。「+」のマークは、ペプチド/siRNA複合体がQnegのネガティブコントロールsiRNAに対して80%のノックダウン活性(Qnegネガティブコントロールと比較してmRNAレベルが20%低下)を有していたことを意味する。「+/−」は、ペプチド/siRNA複合体がQnegのネガティブコントロールsiRNAに対して約90%のノックダウン活性(Qnegネガティブコントロールと比較してmRNAレベルが10%低下)を有していたことを意味する。最後に「−」は、ペプチド/siRNA化合物がQnegネガティブコントロールと比較して有意なノックダウン活性を有していなかったことを意味する。
【0308】
【表25】
【0309】
表25の結果は、ポジティブコントロールであるポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN602と1:5及び1:10の比率で複合体化された三種類のsiRNAはすべて、同じポリペプチドと複合体化されたQnegネガティブコントロールと比較してhTNF−α遺伝子発現のレベルを中程度に低下させたことを示している。しかし、ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN681と1:5及び1:10の比率で複合体化された同じsiRNAは、QnegネガティブコントロールであるsiRNA/PN681複合体と比べてほとんど乃至全くノックダウン活性を示さなかった。対照的に、hTNF−αに特異的なsiRNAのいずれかと1:5の比率で複合体化されたポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN680は、Qneg/PN680コントロール複合体と比べて有意なhTNF−αmRNAのノックダウン活性を示した。さらに、1:10の比率のLC20/PN680複合体も、Qneg/PN680コントロール複合体と比べて有意なノックダウン活性を示した。
【0310】
健康なヒトの血液をGolden West Biologicals社(カリフォルニア州)から購入し、Ficoll−Pague Plus(Amersham社)の勾配を用いて末梢血液単核細胞(PBMC)を血液から分離した。次にMiltenyi Biotech社の磁気マイクロビーズを用い、ヒト単球をPBMC分画から分離した。単離したヒト単球は、4mMのグルタミン、10%FBS、1×非必須アミノ酸、及び1×ペニシリン−ストレプトマイシン(添加したIMDM中に再懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0311】
96ウェル平底プレートを使い、OptiMEM培地(Invitrogen社)中にヒト単球を100000個/ウェル/100μlで播種した。ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを、20nMのsiRNAとモル比1:5又は1:10にてOptiMEM培地中室温で5分間混合した。このインキュベーションの最後にFBSをこの混合物へ添加し(終濃度3%)、この混合物50μlを細胞へ添加した。細胞は37℃で3時間温置した。温置の後、細胞をV底プレートへ移し、1500rpmで5分間かけてペレット化した。細胞を増殖培地(グルタミン、非必須アミノ酸、及びペニシリン−ストレプトマイシンを含むIMDM)中へ再懸濁した。一晩のインキュベーションの後、単球に1ng/mlのLPS(Sigma社)を適用して3時間刺激し、TNF−α発現レベルを増加させた。LPSの導入後、mRNA定量のために細胞を上述のように回収し、上清はタンパク質定量が必要な場合は保存した。
【0312】
mRNAの測定は、Genospectra社(カリフォルニア州)の分岐DNA技術を用いて製造元の説明書に従って行った。細胞中のmRNAレベルを定量するために、ハウスキーピング遺伝子(cypB)及び標的遺伝子(TNF−α)mRNAの両方を測定し、TNF−αの読み取りをcypBに対して標準化して相対発光単位を得た。
【図面の簡単な説明】
【0313】
【図1】様々なsiRNA G1498濃度及び窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における3本の棒グラフにおいて、G1498濃度は左から100μg/ml、50μg/ml、及び10μg/mlであった。N/P比0.2及び0.5において、G1498濃度が10μg/mlの時の粒子は非常に小さかった。
【図2】様々な窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はボルテックス撹拌あり、右はボルテックス撹拌なしであった。データは混合後直ちに取得した。
【図3】様々な窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はボルテックス撹拌あり、右はボルテックス撹拌なしであった。データは混合後30分経過後に取得した。
【図4】様々な窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はボルテックス撹拌あり、右はボルテックス撹拌なしであった。データは混合後60分経過後に取得した。
【図5】様々な窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はボルテックス撹拌あり、右はボルテックス撹拌なしであった。データは混合後24時間経過後に取得した。
【図6】siRNA G1498濃度100μg/mlにおける、様々なpH値に対するG1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。
【図7】塩化ナトリウム濃度を増加させた時の、siRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。
【図8】様々なN/P比及び成分添加の順番における、siRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はsiRNAを先に加えて得られたもの、右はペプチドを先に加えて得られたものであった。
【図9】siRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子の透過電子顕微鏡写真である。長さの指標記号は200nmを表す。
【図10】siRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子の透過電子顕微鏡写真である。長さの指標記号は200nmを表す。
【図11】siRNA Inm−4とペプチドPN183及びPN939との縮合体粒子を含む組成物の鼻腔内投与による、モデルマウスにおけるLPS刺激によるTFN−α発現(pg/ml)のノックダウンアッセイの結果を示す図である。一番左の棒グラフが緩衝液による対照実験、次がInm−4/PN183/PN939縮合体のデータ、その右がグルタルアルデヒド(G)で架橋したInm−4/PN183/PN939縮合体のデータである。プラセボはsiRNAを含んでおらず、Qnegは不活性siRNAを含む。
【図12】Lac−z siRNAとペプチドPN183及び異なる第二のペプチドとの縮合体を用いた、ラット膠肉腫線維芽細胞9L/LacZにおけるlac−z発現のインビトロノックダウンアッセイの結果を示す図である。一番左の棒グラフがHiPerFect(商標)(Qiagen社、カリフォルニア州、バレンシア)を用いた比較データであり、それに続くのが本発明の様々な化合物によるデータである。N/P比は、PN183が0.75、第二のペプチドが0.3であった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA干渉の分野及びRNA治療送達の分野全般に関する。より詳細には、本発明はペプチドリボ核酸縮合体粒子の化合物及び組成物、並びにそれらの薬物への使用及び治療法としての送達への使用に関する。本発明は、哺乳動物内での遺伝子発現の遺伝子特異的抑制のためのRNA干渉における、ペプチドリボ核酸縮合化合物の使用方法全般に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)とは、短鎖干渉RNA(siRNA)と呼ばれる二本鎖RNA(dsRNA)が媒介する、配列特異的な転写後ジーンサイレンシングの方法のことである。Fireら,Nature,Vol.391,p.806, 1998、及びHamiltonら,Science,Vol.286,p.950−951, 1999、を参照のこと。RNAiは種々の動植物に共有されており、進化の過程で保存されてきた異質遺伝子の発現に対する細胞の防御メカニズムであると考えられている。Fireら,Trends Genet.,Vol.15,p.358, 1999、を参照のこと。
【0003】
従って、RNAiは、小さなノンコーディングRNAを用いて遺伝子の発現をサイレンシングする、普遍的内在性メカニズムである。Dykxhoorn,D.M. and J. Lieberman,Annu. Rev. Biomed. Eng.,Vol.8,p.377−402, 2006、を参照のこと。RNAiは、細胞死、分化、及び発生に関与する重要な遺伝子を制御することができる。RNAiはさらに、トランスポゾン及びウィルスによってコードされた侵入遺伝要素からゲノムを保護することもできる。siRNAは細胞内に導入されると内在性のRNAiメカニズムと結びつき、高い特異性をもって相補的配列を含むmRNAの発現を阻害する。いかなる疾患原因遺伝子、及び細胞種又は組織も潜在的に標的となり得る。この技術は、遺伝子機能解析並びに創薬ターゲットの探索及び確認に急速に利用されてきている。siRNAをインビボで細胞へ導入することには依然として重大な障害が伴うが、RNAiの利用は治療の分野においても非常に有望である。
【0004】
RNAiのメカニズムは、また完全には解明されていないが、標的となるmRNAの開裂を介するものである。RNAi応答には、RNA誘導性サイレンシング化合物(RISC)として知られるエンドヌクレアーゼ化合物が関与しており、この複合体がsiRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な一本鎖RNAの開裂を媒介する。標的RNAの開裂は、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央部で生じる(Elbashirら,Genes Dev.,Vol.15,p.188, 2001)。
【0005】
RNAiを行う一つの方法は、siRNAを細胞内へ導入するか、又は細胞内で発現させることである。もう一つの方法は、ダイサーと呼ばれる内在性のリボヌクレアーゼIII酵素を利用することである。ダイサーの一つの活性は、長鎖dsRNAをsiRNAへ変換することである。Hamiltonら,Science,Vol.286,p.950−951, 1999、及びBersteinら,Nature,Vol.409,p.363, 2001、を参照のこと。ダイサーから誘導されたsiRNAは通常、全体の長さが約21から23ヌクレオチドであり、約19塩基対の二本鎖部分を有する。Hamiltonら,Science,Vol.286,p.950−951, 1999、及びElbashirら,Genes Dev.,Vol.15,p.188, 2001、を参照のこと。実質的に、長鎖dsRNAはsiRNAの前駆体として細胞内に導入することができる。
【0006】
いろいろな治療の中でとりわけRNAi治療、アンチセンス治療、及び遺伝子治療の開発により、活性な核酸剤を細胞内へ導入するための有効な方法に対する需要が生じてきた。一般的に、核酸は細胞又は血漿内で非常に短い時間しか安定ではない。しかし、核酸剤は、細胞送達するのに十分に小さい粒子となり得る縮合化合物へと凝集するか又は結合することで安定化させることができる。
【0007】
最終的には治療法としての細胞間送達のために活性核酸剤を含有する小粒子を含む化合物、及びそのような化合物を作製する方法が求められている。特に、細胞へ二本鎖RNAを送達してRNAi応答を発生させるための化合物及び方法が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、RNA干渉及びその他の治療方法に使用するための様々なペプチド−リボ核酸化合物及び組成物の範囲を提供することにより、本技術分野におけるこれらの及びその他の障害を克服する。詳細には、本発明は、RNA干渉を通して標的遺伝子の発現を阻害する活性を有する、1又はそれ以上のペプチドと1又はそれ以上のリボ核酸剤とが縮合した安定な小粒子を含む化合物、並びに該化合物の製造方法を提供する。本概要は、図面の説明、本発明の詳細な説明、並びに添付の実施例、請求項、及び図面と合わせて、開示された本発明を包含する。
【0009】
ある局面では、本発明は、RNA干渉及びその他の治療方法に使用するための様々なペプチド−RNA化合物及び組成物を提供し、その化合物にはRNAiを通して標的遺伝子の発現を阻害する活性を有する、RNAとペプチドが縮合した安定な小粒子を含有する化合物を含む。本発明の化合物は、一般に合成ペプチドと核酸の様々な混合物又は縮合体として提供される。
【0010】
他の局面では、本発明の縮合化合物及び組成物は、ペプチド−RNA化合物から成る安定小粒子を含む。ある態様では、これらの化合物及び粒子は架橋することによってさらに安定化することができる。他の態様では、本発明の化合物及び組成物は送達促進のためにポリエチレングリコールなどのステルス剤(stealthing agent)又は表面改質剤を含む。
【0011】
さらなる局面では、本発明の化合物は1又はそれ以上のリボ核酸と1又はそれ以上のペプチド成分との縮合化合物を含む。ペプチド成分は、リボ核酸と結合して非共有結合によるペプチド−リボ核酸縮合化合物を形成するのに十分な正の電荷を保持することができる。
【0012】
ある局面では、本発明の縮合化合物は均一粒子を形成することができる。ある態様では、ペプチド−核酸化合物球状粒子の直径は、平均が1000ナノメートル(nm)未満の狭い分布をとることができる。
【0013】
本発明のペプチド−核酸縮合化合物は、独自の多成分製剤を提供することができる。ある態様では、インビボでの治療のために、化合物は細胞への送達のための担体若しくは運搬体、又は様々な送達マトリックスといった薬物送達のためのその他の薬剤と組み合わせることができる。
【0014】
ある態様において、化合物は、少なくとも一つのリボ核酸剤を水性溶液へ溶解し、それから少なくとも一つのペプチド成分をその水性溶液へ添加して粒径1000nm未満の粒子を縮合し、その後粒子の質量を増加させる第二のペプチド成分又は第三以降のペプチド成分をその水性溶液に添加することにより、1又はそれ以上のリボ核酸及び1又はそれ以上のペプチドから提供される。
【0015】
さらなる態様において、化合物は、第一のペプチド成分を水性溶液に溶解し、そしてリボ核酸剤をその水性溶液へ添加して粒径1000nm未満の粒子を縮合し、その後粒子の質量を増加させる第二のペプチド成分又は第三以降のペプチド成分をその水性溶液に添加することにより、1又はそれ以上のリボ核酸剤及び1又はそれ以上のペプチド成分から提供される。
【0016】
本発明の一つの局面では、ペプチド成分はその核酸への相対的親和性に基づいて選択される。ペプチド成分は、該ペプチド成分の核酸への結合度を変化できるように選択することができる。
【0017】
ある局面では、リボ核酸−ペプチド縮合化合物は可逆的に結合させることができる。リボ核酸と一定量の正に帯電したリボ核酸結合性ペプチドから成る化合物は、細胞外生体環境において十分に安定となることができ、細胞内エンドソームとの接触によってリボ核酸を放出する。この放出によってRNAi応答を誘起することができる。
【0018】
さらなる局面では、ペプチド−リボ核酸化合物を安定化させる構造と方法が提供され、その構造及び方法には化合物内でのリボ核酸結合性ペプチドの架橋が含まれる。ペプチド−リボ核酸化合物を生命体内部での分解から保護する方法としては、化合物内でペプチドの少なくとも一部を架橋することが含まれる。
【0019】
本発明はさらに、この化合物の、薬物としての使用、並びに動物及びヒトのRNAi治療に用いるための薬物の製造において提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、RNA干渉及びその他の治療方法に使用するための様々なペプチド−RNA化合物及び組成物を提供する。さらに詳細には、本発明は、RNAiを通して標的遺伝子の発現を阻害する活性を有する、RNAとペプチドとが縮合した安定な小粒子を含有する化合物を含む。
【0021】
本発明の化合物は、一般的に合成ペプチドと核酸の混合物又は縮合体として提供される。広範囲にわたる様々なペプチドを使用して化合物を形成することができる。ペプチドの質量は通常、約120kDa未満、又は約60kDa未満、又は約30kDa未満である。化合物のペプチドは粘膜透過修飾因子又は粘膜透過促進因子であってよい。
【0022】
縮合化合物は、ペプチド−RNA複合体の安定な小粒子を含む。これらの化合物及び粒子は、様々な試薬で架橋することによりさらに安定化することができる。ある態様において、本発明の化合物及び組成物は、送達促進のためにポリエチレングリコールなどのステルス剤(stealthing agent)又は表面改質剤を含む。
【0023】
本発明の化合物には、1又はそれ以上のリボ核酸及び1又はそれ以上のペプチド成分を含む縮合複合体が含まれる。ペプチド成分は、リボ核酸と結合して非共有結合によるペプチド−リボ核酸縮合化合物を形成するのに十分な正の電荷を持つことができる。リボ核酸及びインビボでの条件下でリボ核酸を安定化させるのに有効な量のリボ核酸結合性ペプチドから構成される安定なリボ核酸複合体が提供される。ペプチド−核酸化合物の成分の結合は一部イオン間力によるものであり、ファンデルワールス力又は水素結合など様々なその他の相互作用も伴う場合がある。
【0024】
本発明のペプチド−核酸縮合化合物は均一な粒子を含むことができる。ペプチド−核酸化合物の球状粒子の直径は、平均が1000ナノメートル(nm)未満の狭い分布をとることができる。球状粒子の直径は、1000ナノメートル未満であってよく、約0.5乃至約400ナノメートル、約10乃至約300ナノメートル、及び約40乃至約100ナノメートルであってもよい。安定粒子のゼータ電位の大きさは、約20ミリボルト超又は約30ミリボルト超であってよい。
【0025】
本明細書で用いる“均一”という用語は化合物の粒子の大部分が狭い粒径分布を持つことを意味する。均一粒子の化合物において複数の粒径分布が生じていてもよい。一つの狭い粒径分布は、粒子径測定器の対時間相関係数の生データに基づく粒径分布グラフ中の一つのピークに相当する。均一な化合物は、少なくとも粒子の30%を一つの狭い粒径分布内に有することが好ましい。
【0026】
本発明のペプチド−核酸縮合化合物は、独自の多成分製剤を提供することができ、生体内治療のために、細胞への送達のための担体若しくは運搬体、又は様々な送達マトリックスといった薬物送達のためのその他の薬剤と組み合わせることができる。
【0027】
本発明の化合物及び組成物は、薬理学的に許容される媒体内に分散させ、マトリックスと会合させ、又は細胞若しくは対象へ送達するための担体若しくは運搬体と会合させることができる。本発明の化合物又は粒子の分散体を含む溶液は、治療法としての送達のために提供することができる。
【0028】
ペプチド成分
本発明の化合物に好適なペプチド成分は合成したものでもよく、又は自然若しくはその他の供給源に由来するものでもよい。
【0029】
ペプチド成分は、2から約1000個のアミノ酸の長さ、2から約600個のアミノ酸の長さ、2から約60個のアミノ酸の長さ、5から約30個のアミノ酸の長さ、及び5から約25個のアミノ酸の長さを含んでもよい。
【0030】
ペプチド成分は複数の正の電荷を含んでよい。例えば、ペプチド成分は1から約100個、5から約30個、及び9から約15個の正電荷を含んでよい。ペプチド成分の正電荷は正に帯電したリシン又はアルギニンの残基によって提供することができる。
【0031】
広範囲にわたる様々なペプチドを使用することで、ペプチド−核酸化合物を形成することができる。ペプチド成分の質量は通常、約120kDa未満、又は約60kDa未満、又は約30kDa未満である。ペプチド成分のペプチドは、任意にポリアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はこれらの組み合わせなどのポリマと抱合体を形成するか又は誘導体化されてもよい。例えば、本発明の化合物のペプチド成分はポリエチレングリコール(PEG)と共有結合により誘導体化されてよい。
【0032】
ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドの機能性ドメインは、siNAを細胞内へ送達する能力において有用である。このような機能性ドメインには、膜付着領域、膜融合領域、及びヌクレオチド結合領域が含まれる。膜付着は、典型的ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドが細胞膜と結合する能力を表す。膜融合性は、細胞膜から脱離して細胞質内に進入する能力を表す。ペプチドの膜付着ドメイン及び膜融合ドメインは機構的に密接なつながりがあり(すなわち、ペプチドが細胞内へ入る能力)、従って実験的に区別することは難しいであろう。最後に、ヌクレオチド結合性は、ペプチドがヌクレオチドと結合する能力を表す。
【0033】
化合物のペプチドは、粘膜などの障壁間の化合物の送達を促進することが知られている構造的特徴を含んでよい。送達を促進する特徴の例としては様々なタンパク質導入ドメインが挙げられる。ペプチド成分は粘膜透過修飾因子であってよい。
【0034】
本発明のポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドのタンパク質導入ドメインの例としては、
1.TATタンパク質導入ドメイン(PTD)(配列番号1)KRRQRRR;
2.ペネトラチンPTD(配列番号2)RQIKIWFQNRRMKWKK;
3.VP22 PTD(配列番号3)DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVD;
4.カポジFGFシグナル配列(配列番号4)AAVALLPAVLLALLAP;及び(配列番号5)AAVLLPVLLPVLLAAP;
5.ヒトβ3インテグリンシグナル配列(配列番号6)VTVLALGALAGVGVG;
6.gp41融合配列(配列番号7)GALFLGWLGAAGSTMGA;
7.カイマンクロコディルス(caiman crocodylus)のIg(v)軽鎖(配列番号8)MGLGLHLLVLAAALQGA;
8.hCT誘導性ペプチド(配列番号9)LGTYTQDFNKFHTFPQTAIGVGAP;
9.トランスポータン(配列番号10)GWTLNSAGYLLKINLKALAALAKKIL;
10.ロリゴマー(loligomer)(配列番号11)TPPKKKRKVEDPKKKK;
11.アルギニンペプチド(配列番号12)RRRRRRR;並びに
12.両親媒性モデルペプチド(配列番号13)KLALKLALKALKAALKLA;
が挙げられる。
【0035】
本発明のポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドのウィルス融合ペプチド膜融合ドメインの例としては、
1.インフルエンザHA2(配列番号14)GLFGAIAGFIENGWEG;
2.センダイF1(配列番号15)FFGAVIGTIALGVATA;
3.呼吸器多核体ウィルスF1(配列番号16)FLGFLLGVGSAIASGV;
4.HIV gp41(配列番号17)GVFVLGFLGFLATAGS;及び
5.エボラGP2(配列番号18)GAAIGLAWIPYFGPAA;
が挙げられる
【0036】
ある態様では、本発明の方法及び組成物の範囲内で、ポリペプチド−siNA複合体の形成を促進し、及び/若しくはsiNAの送達を促進するDNA結合性ドメイン又はモチーフが組み込まれたポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドが提供される。ここで言うDNA結合性ドメインの典型例としては、以下の表1に示すDNA結合性調節タンパク質及びその他のタンパク質に見られる、様々な「ジンクフィンガー」領域が挙げられる(Simpsonら,J. Biol. Chem.,278:28011−28018, 2003、参照)。
【0037】
【表1】
【0038】
表1において、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、DrosBtd、DrosSp、CeT22C8.5、及びY4pB1A.4の配列は、本明細書ではそれぞれ配列番号19、20、21、22、23、24、25、及び26と定められる。
【0039】
表1は、C−x(2,4)−C−x(12)−H−x(3)−H(配列番号27)のモチーフパターンにより特徴付けられる二本鎖DNA結合性保存ジンクフィンガーモチーフを示しており、それ自体を用いて本発明にかかるさらなるポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを選択して設計することができる。
【0040】
本発明のポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを構築するのに有用なDNA結合性ドメインの他の選択肢としては、例えばHIV Tatタンパク質配列の一部分が挙げられる。
【0041】
本発明のある態様においては、前述の構造要素、ドメイン、又はモチーフのいずれかをsiNAの対象細胞への送達の促進を媒介する単一のポリペプチドへ組み入れることによって、ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを構築することができる。例えば、TATポリペプチドのタンパク質導入ドメインは、HA2と呼ばれるインフルエンザウィルスの赤血球凝集素タンパク質のN末端側の20個のアミノ酸領域と融合してポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを作り出すことができる。
【0042】
本発明の化合物は、1又はそれ以上のペプチド成分を含むことができる。ペプチド成分は、リボ核酸と結合して非共有結合によるペプチド−リボ核酸縮合化合物を形成するのに十分な正の電荷を保持することができる。ペプチド−核酸複合体の成分の結合は一部イオン間力によるが、ファンデルワールス力、水素結合、又は疎水性相互作用などのその他の様々な相互作用も伴う場合がある。複合体は水性相互作用又は高溶媒濃度領域を保持していてもよい。
【0043】
リボ核酸及び生体内条件下でリボ核酸を安定化させるのに有効な量のリボ核酸結合性ペプチドを含む安定なペプチド−リボ核酸複合体が得られる。
【0044】
本発明の化合物に有用なペプチドのいくつかの例を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
本発明の化合物に有用なペプチドのさらなる例は以下の実施例中で示す。
【0047】
縮合化合物とその調製
本発明は、直径が約1000nm未満、約0.5nmから約400nm、約10nmから約300nm、及び約40nmから約100nmである粒子から構成されてよいペプチド−リボ核酸縮合化合物を提供する。
【0048】
化合物のペプチド成分は、粒子質量の5乃至95%又は45乃至95%であってよい。
【0049】
本発明のある態様においては、ペプチド−核酸化合物は1又はそれ以上のリボ核酸剤と1又はそれ以上のペプチド成分から提供され、該リボ核酸剤と該ペプチド成分を水溶液中で縮合することによって直径1000nm未満の粒子を形成する。
【0050】
一般に本発明の化合物は、1又はそれ以上のペプチドと1又はそれ以上の核酸から形成されたペプチド−核酸縮合体を含む。この縮合体は、一つには核酸に対するペプチドの窒素対リン比(N/P比)で特徴付けられる。
【0051】
本発明の化合物は直径1000nm未満の縮合体粒子から成ってよく、ここで各粒子は少なくとも10個の二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子及び少なくとも10個のペプチドを含む。本明細書で用いられる「少なくとも10個のペプチド」とは、部分モル量が10ペプチド分子であることを意味し、ペプチド分子の構造は同じであっても異なっていてもよい。従って、「少なくとも10個のペプチド」とは、単一のペプチド構造の部分モル量、又は2若しくは3個以上の異なるペプチド構造の部分モル量であってもよい。
【0052】
一般に、本明細書で用いられる「ペプチド」、「核酸」、並びに「dsRNA」及び「siRNA」などの用語は、本発明の化合物を形成するのに十分な量にあるこれらの分子を意味する。すなわち、一般に、このような用語は個々の分子ではなく部分モル量を表す。「ペプチド」とは、例えばアボガドロ数個のペプチド分子など、1又は2個以上のペプチド分子のことである。「二つのペプチドをリボ核酸剤に付加する」とは、個々の部分モル量にある構造の異なる二種類のペプチドの混合物をリボ核酸剤に添加混合することを意味する。
【0053】
複合体又は縮合体中の核酸(NA)に結合したペプチドの量は、窒素リン比(N/P比)とも呼ばれる、単一分子ペア形成についてのペプチド:NA電荷比を用いることにより結合した核酸の量から得ることができる。縮合後に溶液中に残存する遊離ペプチドの量は、物質収支から得られる。従って、本明細書において、電荷比N/Pとは、初期縮合溶液中における単一ペプチド成分の単一核酸剤に対する初期電荷比N/Pを意味する。
【0054】
一般に、溶液中の核酸剤濃度はその溶解度によってのみ制限される。溶液中のペプチド成分の濃度は、所望のN/P比が得られるよう調節される。
【0055】
ある態様において、溶液のペプチド成分濃度は全体のN/P比が約1となるように調節される。N/P比が約1の時、イオン電荷という面でペプチド成分も核酸剤も過剰ではない。
【0056】
ある態様において、溶液の各ペプチド成分濃度は、N/P比が約0.2から約50、約0.5から約20、約0.5から約7、又は約0.5から約2.5となるように調節される。
【0057】
溶液のpHは通常約11未満、約9未満、及び約8未満である。溶液の成分の混合は、任意に、ボルテックス撹拌行ってもよい。
【0058】
ある態様において、縮合化合物は核酸剤をペプチド成分を含有する溶液へ添加することによって調製される。
【0059】
ある態様において、溶液は無機塩又は有機塩を含んでよい。例えば、水溶液は約1M以下、約0.5M以下、及び約0.25M以下の濃度の塩化ナトリウムを含んでよい。
【0060】
任意に、特定のサイズ分布を有するペプチド−核酸縮合化合物は溶液から単離することができる。ある態様においては、ペプチド−核酸縮合化合物を含有する溶液をろ過することで様々なサイズの粒子が単離される。
【0061】
他の態様において、ペプチド−核酸縮合化合物を含有する溶液を透析にかけることによって過剰な又は結合しなかったペプチド成分が除去される。
【0062】
ある態様において、単離されたペプチド−核酸粒子は凍結乾燥される。
【0063】
本発明のある態様において、ペプチド−核酸化合物は、少なくとも1種類のリボ核酸剤を水溶液中に溶解し、それから少なくとも1種類のペプチド成分をその水溶液中へ添加して1000nm未満の粒径を有する粒子を縮合させ、その後第二のペプチド成分又は第三以降のペプチド成分をその水溶液中へ添加して粒子質量を増加させることにより、1又はそれ以上のリボ核酸剤と1又はそれ以上のペプチド成分から提供される。
【0064】
本発明のある態様において、ペプチド−核酸化合物は、第一のペプチド成分を水溶液中に溶解し、それからリボ核酸剤をその水溶液中へ添加して1000nm未満の粒径を有する粒子を縮合させ、その後第二のペプチド成分又は第三以降のペプチド成分をその水溶液中へ添加して粒子質量を増加させることにより、1又はそれ以上のリボ核酸剤と1又はそれ以上のペプチド成分から提供される。
【0065】
本発明の一つの局面において、ペプチド−核酸化合物は、ペプチド成分を核酸への相対親和性に基づいて選択することによって提供される。例えば、ペプチドによる核酸結合性色素SYBR−goldの置換を測定することにより、様々なペプチドの核酸に対する相対結合性の分析が行われる。化合物の核酸に対するペプチド成分の相対親和性を特徴付けることにより、ペプチド成分の核酸への結合度を変化できるようにペプチド成分を選択することができる。
【0066】
ペプチド成分の核酸への結合度を変化させることにより、最初に結合性の強いペプチド成分によって縮合体粒子が形成され、続いて結合性の弱いペプチド成分が粒子を形成するか、若しくはその逆が可能となり、又は縮合化合物に結合強度の異なる成分を複数回に分けて添加することが可能となる。
【0067】
ある態様において、核酸剤と縮合する第一のペプチド成分が、第二以降のペプチド成分よりもその核酸剤に対して強い結合親和性を持つことが好ましい。これらの態様において、溶液の第一のペプチド成分の濃度は、N/P比が約0.2から約7、約0.2から約2.5、又は約0.2から約1となるよう調節される。これらの態様において、後に続くペプチド成分の濃度は、N/P比が約0.2から約50、約0.5から約20、約0.5から約7、又は約0.5から約2.5となるよう調節される。
【0068】
可逆的に結合したリボ核酸−ペプチド縮合化合物は、リボ核酸、並びに細胞外生体環境下で十分に安定であって、細胞内エンドソームと接触することでリボ核酸を放出することができるリボ核酸−ペプチド縮合体を形成する量にある正に帯電したリボ核酸結合性ペプチドを含む。
【0069】
ペプチドがリボ核酸を結合させるのに有効な量の正に帯電した残基を含む、ペプチド−核酸縮合体の集団が提供される。このリボ核酸−ペプチド縮合体は細胞外生体環境下で十分に安定であり、RNAi応答を発生させるのに有効な方法で細胞内にリボ核酸を放出することができる。
【0070】
本発明のある局面において、試薬を用いてペプチド−RNA縮合体が架橋される。例えば、グルタルアルデヒドなどのジアルデヒド基を導入することでペプチド又は粒子表面のアミノ基を架橋し、ペプチド−RNA縮合体の安定性を高めることができる。架橋剤の他の例としては、ホルムアルデヒド、アクロレイン、及びジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)が挙げられる。架橋された縮合化合物は、血清中のエンドヌクレアーゼによる代謝に対する耐性が向上していることであろう。
【0071】
ある態様において、核酸剤と縮合する第一のペプチド成分は、第二以降のペプチド成分を添加する前に架橋される。任意に、第一のペプチド成分の縮合体は、第二以降のペプチド成分を添加した後に架橋されてもよい。ある態様において、第一のペプチド成分の縮合体は、第二以降のペプチド成分の添加前及び添加後に架橋される。
【0072】
ペプチド−リボ核酸化合物を安定化する方法には、化合物内においてリボ核酸結合性ペプチドを、例えばグルタルアルデヒド架橋剤で架橋することが含まれる。ペプチド−リボ核酸化合物を生命体内部における分解から保護する方法としては、化合物内でペプチドの少なくとも一部を、例えばグルタルアルデヒド架橋剤で架橋することが含まれる。
【0073】
本発明のペプチド−リボ核酸化合物は、界面活性剤、中性脂質、又はポリエチレンオキシドなどの表面改質剤を添加することによっても安定化することができる。例えば、ポリエチレングリコールは縮合化合物の溶液に添加されるとその複合粒の粒子へ付着することができる。例えば、非イオン性であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体を添加して化合物の粒子を安定化させることもできる。
【0074】
本開示には、動物及びヒトのRNAi治療に用いるための薬物の製造における本発明の化合物の使用が包含される。
【0075】
核酸剤
本発明に有用な核酸剤は、一本鎖核酸、二本鎖核酸、修飾若しくは分解耐性核酸、RNA、DNA−RNAキメラ、アンチセンス核酸、又はリボザイムであってよい。
【0076】
これに関連して、本発明は、RNA干渉によって遺伝子発現を調節するための化合物、組成物、及び方法を提供する。本発明の化合物又は組成物はリボ核酸剤をRNAi応答を生じさせることが可能な細胞へ放出することができる。本発明の化合物又は組成物は、細胞内エンドソームとの接触によってリボ核酸剤を細胞へ放出することができる。リボ核酸剤の細胞内放出によって細胞内における遺伝子発現を阻害することができる。
【0077】
本発明に有用なリボ核酸剤は様々な遺伝子を標的とすることができる。例えば、本発明のsiRNA剤は、TNF−α遺伝子の領域と相補的な配列を有することができる。本発明のある態様において、この化合物及び組成物は腫瘍壊死因子α(TNF−α)の発現を制御するのに有用である。TNF−αは、例えば肺疾患において発生する炎症プロセスと関連し得るため、抗炎症効果を生じ得る。本発明の組成物を送達することによってTNF−αをブロックすることは、リウマチ性関節炎の兆候及び/又は症状の治療又は予防に有用であろう。
【0078】
本発明は、RNA干渉によってTNF−αの発現及び活性を調節するための化合物、組成物、及び方法を提供する。
【0079】
TNF−αの発現及び/又は活性は、例えばsiRNA分子であるInm−4を細胞へ送達することによって調節することができる。Inm−4は、ヒトTNF−α遺伝子と相同的な配列を持つ21ヌクレオチドの二本鎖siRNA分子である。Inm−4は、センス鎖上に3’−dTdTのオーバーハングを、アンチセンス鎖上に3’−dAdTオーバーハングを有する。Inm−4の一次構造は以下の通りである。
センス鎖(配列番号44)
5’−CCGUCAGCCGAUUUGCUAUdTdT
アンチセンス鎖(配列番号45)
5’−AUAGCAAAUCGGCUGACGGdTdT
【0080】
TNF−αの発現及び/又は活性は、例えばsiRNA分子であるLC20を細胞へ送達することによって調節することができる。LC20は、ヒトTNF−α遺伝子と相同的な配列を持つ21ヌクレオチドの二本鎖siRNA分子である。LC20が標的とするのは、ヒトTNF−αの3’−UTR領域である。LC20は19塩基対を持ち、センス鎖上に3’−dTdTのオーバーハングを、アンチセンス鎖上に3’−dAdTオーバーハングを有する。ナトリウム塩型の分子量は14,298である。LC20の一次構造は以下の通りである。
センス鎖(配列番号46)
(5’)−GGGUCGGAACCCAAGCUUAdTdT
アンチセンス鎖(配列番号47)
(5’)−UAAGCUUGGGUUCCGACCCdTdA
【0081】
本発明のsiRNAは、ウィルス遺伝子の領域と相補的な配列を有することができる。例えば、本発明のある組成物及び方法は、インフルエンザのウィルスゲノムの発現を制御するのに有用である。
【0082】
これに関連して、本発明は、RNA干渉によってインフルエンザの発現及び感染活性を調節するための組成物及び方法を提供する。インフルエンザの発現及び/又は活性は、例えばインフルエンザのRNAポリメラーゼサブユニットの領域と相補的な配列を有する短鎖干渉RNA分子を細胞へ送達することによって調節することができる。例としてインフルエンザのRNAポリメラーゼサブユニットと相同的な配列を有する二本鎖siRNA分子を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
本発明のsiRNAは、インフルエンザのRNAポリメラーゼサブユニットの領域と相補的な配列を有することができる。
【0085】
本発明は、インフルエンザのmRNAを標的とするsiNAを投与するための組成物及び方法を提供し、これらの組成物と方法によってインフルエンザRNAは効果的に下方制御され、それによってインフルエンザ感染が低減、予防、又は寛解される。
【0086】
RNA干渉治療
ある態様において、本発明は、短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子又はその前駆体などのRNAi誘導性化合物を有効量含有する組成物を対象へ投与することによって該対象内の標的転写物の発現を阻害するための化合物、組成物、及び方法を提供する。RNAiは、短鎖干渉RNA(siRNA)を用いてメッセンジャーRNA(mRNA)を標的とし、翻訳を減弱する。本発明で用いられるsiRNAは、例えばsiRNAへのプロセッシングを受ける長鎖dsRNAなど、ダイサーによるプロセッシングを受ける前駆体であってよい。本発明は、標的転写物の発現又は標的転写物によってコードされたペプチド若しくはタンパク質の活性に関連する疾患又は状態を治療又は予防する方法を提供する。
【0087】
RNAiに基づく治療法を用いて、ウィルス又は微生物の成長又は機能を停止したり、疾患経路内の内在性遺伝子産物の機能を停止したりすることによって、広範囲にわたる様々な疾患を治療することができる。
【0088】
ある態様において、本発明は、短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子及びその前駆体などのRNAi誘導性化合物を送達するための新規な組成物及び方法を提供する。詳細には、本発明は、対象の細胞、組織、及び/又は器官の1又はそれ以上の転写物を標的とするRNAi誘導性化合物を含有する組成物を提供する。
【0089】
siRNAは、約19ヌクレオチドの長さの相補的領域を有する二本鎖RNAであってよい。siRNAは任意に一つ又は二つの一本鎖オーバーハング又はループを含んでいてもよい。
【0090】
shRNAは自己相補的領域を有する一本鎖RNAであってよい。この一本鎖RNAはステムとループを有するヘアピン構造を形成することができ、任意に、このRNAの5’末端及び/又は3’末端において1又は2箇所以上の非対形成部分を有してよい。
【0091】
活性治療剤は、インビボでのヌクレアーゼ分解に対する耐性が高められ、及び/又は細胞取り込みが改善された化学修飾siNAであって、RNAi活性が保持されたものであってよい。
【0092】
本発明のsiRNA剤は、標的遺伝子のある領域に相補的な配列を有してよい。本発明のsiRNAは29塩基対から50塩基対を有してよく、例えば標的遺伝子のある領域に相補的な配列を有するdsRNAである。あるいは、二本鎖核酸はdsDNAであってもよい。
【0093】
ある態様において、活性剤は、遺伝子産物の発現を調節可能な短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA、又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)であってよい。
【0094】
選択された疾患状態と関連する原因因子又は寄与因子として発現が異常に増加することが知れらている大多数の遺伝子のいずれをも含む、対象の特定の疾患状態に関連する1又はそれ以上の異なる遺伝子の発現を標的とする類似の方法及び組成物が提供される。
【0095】
本発明のRNAi誘導性化合物は、疾患状態に対するその他の公知の治療と合わせて投与してもよい。
【0096】
ある態様において、本発明は、送達促進化合物と混合、化合物化、又は抱合された形の短鎖干渉核酸、短鎖干渉RNA、二本鎖RNA、マイクロRNA、又は短鎖ヘアピンRNAなどの低分子核酸分子を含有する組成物を特徴とする。
【0097】
本明細書で用いる「短鎖干渉核酸」、「siNA」、「短鎖干渉RNA」、「siRNA」、「短鎖干渉核酸分子」、「短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子」、及び「化学修飾短鎖干渉核酸分子」の各用語は、例えば配列特異的にRNA干渉(RNAi)又はジーンサイレンシングを媒介することによって、遺伝子発現又はウィルス複製を阻害又は下方制御可能ないずれの核酸分子も意味する。
【0098】
ある態様において、siNAは、アンチセンス領域が、発現を下方制御する標的リボ核酸分子内のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列又はその一部を含み、センス領域が、標的リボ核酸の配列又はその一部に対応する(すなわち実質的に同一の配列である)ヌクレオチド配列を含む、自己相補的なセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチド分子である。
【0099】
「siNA」は、例えば短鎖二本鎖核酸であるsiRNA、又は任意に、長鎖のその前駆体等の低分子干渉核酸を意味する。本発明の範囲内で有用なsiNAの長さは、ある態様においては約20乃至50bpの長さで最適化される。しかし、siRNAを含む有用なsiNAの長さには特に制限はない。例えばsiNAはまず、標的細胞内に存在して、標的細胞への送達と同時に又はその後にジーンサイレンシングを引き起こす最終的な形又はプロセッシングを受けた形のsiNAとは十分に異なる前駆体の形で細胞へ導入することができる。siNAの前駆体は、例えば送達と同時に又はその後にプロセッシング、分解、変性、又は開裂に付される前駆体配列要素を含むことで、細胞内でジーンサイレンシングを媒介する活性を有するsiNAを生成することができる。ある態様において、有用なsiNAの前駆体の長さは例えば約100乃至200塩基対、50乃至100塩基対、又は約50塩基対未満であって、これによって標的細胞内において活性なプロセッシングを受けたsiNAが生成される。他の態様においては、有用なsiNA又はsiNA前駆体の長さは、約10から49塩基対、15から35塩基対、又は約21から30塩基対となる。
【0100】
本発明のある態様においては、ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを使用して、大きなsiNAの核酸前駆体を含む従来のsiNAよりも大きな核酸分子の送達を促進する。例えば、本発明の方法及び組成物を、所望のsiNAの「前駆体」である大きな核酸の送達を促進するために用いることができ、ここで前駆体のアミノ酸が標的細胞への送達の前、間、若しくは後に開裂又はプロセッシングに付されて標的細胞内での遺伝子発現を調節する活性siNAを形成することができる。
【0101】
例えば、siNA前駆体ポリヌクレオチドとしては、自己相補的なセンス領域及びアンチセンス領域を含む2又は3個以上のループ構造並びにステムを有する環状一本鎖ポリヌクレオチドを選択することができ、ここでアンチセンス領域は、標的核酸分子内のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列又はその一部を含み、センス領域は、標的核酸の配列又はその一部に対応するヌクレオチド配列を含み、そしてこの環状ポリヌクレオチドがインビボ又はインビトロでプロセッシングを受けることでRNAiを媒介可能な活性siNA分子を生成することができる。
【0102】
本発明のsiNA分子、特に前駆体でない形のものは、30塩基対未満であってよく、約17乃至19bp、19乃至21bp、又は21乃至23bpであってもよい。
【0103】
siRNAは哺乳類系で選択的なジーンサイレンシングを媒介することができる。短鎖ループ及び19乃至27塩基対のステムを有するヘアピンRNAも、その二本鎖ステムの配列と相同的な遺伝子の発現を選択的にサイレンシングする。哺乳類細胞は短鎖ヘアピンRNAを、siRNAへ変換して選択的ジーンサイレンシングを媒介することができる。
【0104】
RISCは、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖と相補的な配列を有する一本鎖RNAの開裂を媒介する。標的RNAの開裂は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖と相補的な領域内で発生する。21ヌクレオチドのsiRNA二重鎖は、通常2ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを含む場合に最も活性が高い。
【0105】
2−ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを有する21−merのsiRNA二重鎖の3’末端オーバーハングセグメントをデオキシリボヌクレオチドで置換しても、RNAi活性への悪影響が生じない場合がある。siRNAの各末端において4ヌクレオチドまではデオキシリボヌクレオチドによる置換が許容され得るが、完全にデオキシリボヌクレオチドで置換するとRNAi活性が喪失する場合がある。
【0106】
別の選択肢として、siNAは、単一の又は複数のsiNAをコードし、その発現を標的細胞内で該siNAを発現させるポリヌクレオチドベクタによって発現された単一の又は複数の転写産物として送達することができる。このような態様においては、標的細胞内で発現されるsiRNAの最終転写産物の二本鎖部分の長さは、例えば15乃至49bp、15乃至35bp、又は約21乃至30bpであってよい。
【0107】
本発明のある態様において、二本鎖が対合しているsiNAの二本鎖領域は、バルジ部分、ミスマッチ部分、又はその両方を含んでよい。二本鎖が対合しているsiNAの二本鎖部分は、完全に対合したヌクレオチドセグメントに限定されず、例えばミスマッチ(対応するヌクレオチドが相補的でない)、バルジ(一方の鎖上の対応する相補的ヌクレオチドが欠失)、又はオーバーハングによって対合していない部分を含んでよい。非対合部分は、siNA形成に干渉しない程度含まれていてよい。ある態様において、「バルジ」は1つ又は2つの非対合ヌクレオチドを含んでよく、二本鎖が対合しているsiNAの二本鎖領域は、約1個乃至7個又は約1個乃至5個のバルジを含んでよい。さらに、siNAの二本鎖領域に含まれる「ミスマッチ」部分は、1個乃至7個又は1個乃至5個存在してよい。ミスマッチで最も多いのは、ヌクレオチドの一つがグアニンで他方がウラシルの場合である。このようなミスマッチは、例えばセンスRNAをコードする対応するDNA内のCからT、GからA、又はそれらの組み合わせという変異に起因するであろうが、他の要因も考えられる。
【0108】
本発明のsiNAの末端構造は、siNAが標的遺伝子の発現を阻害する活性を保持する限りにおいて、平滑末端又は粘着末端(オーバーハング)であってよい。粘着末端(オーバーハング)構造は3’末端オーバーハングに限定されず、ジーンサイレンシングを誘起する活性が保持される限りにおいて、5’末端オーバーハング構造も含まれる。さらに、オーバーハング部のヌクレオチド数は2又は3に限定されず、ジーンサイレンシングを誘起する活性が保持される限りにおいて、ヌクレオチド数はいくつであってもよい。例えば、オーバーハング部は1乃至約8のヌクレオチド又は2乃至4のヌクレオチドを含んでよい。
【0109】
粘着末端(オーバーハング)構造を有するsiNAの長さは、対合する二本鎖部分及び各末端のオーバーハング部分の長さとして表すことができる。例えば、2bpの3’末端アンチセンスオーバーハングを有する25/27−merのsiNA二本鎖は、25−merのセンス鎖及び27−merのアンチセンス鎖を持ち、この場合、対合部の長さは25bpである。
【0110】
いずれのオーバーハング配列も標的遺伝子に対する特異性は低くてよく、標的遺伝子配列に対して相補的(アンチセンス鎖)でなくても同一(センス鎖)でなくてもよい。siNAはジーンサイレンシング活性を保持する限りにおいて、そのオーバーハング部中に、例えばtRNA、rRNA、ウィルスRNAなどの自然RNA分子又は人工RNA分子等の低分子量構造を含んでよい。
【0111】
siNAの末端構造は、二本鎖核酸の一方の末端部が、例えばリンカRNA等のリンカ核酸によって繋がっているステム−ループ構造であってよい。二本鎖領域(ステム−ループ部分)の長さは、例えば15乃至49bp、15乃至35bp、又は約21乃至30bpであってよい。別の選択肢として、標的細胞内で発現されるsiNAの最終転写産物である二本鎖領域の長さは、例えば約15乃至49bp、15乃至35p、又は約21乃至30bpであってよい。
【0112】
siNAは、標的核酸分子内のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列又はその一部分を有する一本鎖ポリヌクレオチドを含むことができ、ここで一本鎖ポリヌクレオチドは、5’リン酸(例えば、Martinezら,Cell. 110: 563−574, 2002; Schwarzら,Molecular Cell 10: 537−568, 2002、を参照)又は5’,3’−リン酸ジエステルなどの末端リン酸を含んでよい。
【0113】
本明細書で用いるsiNA分子という用語は、天然のRNA又はDNAのみを含む分子に限定されず、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドも包含する。ある態様において、本発明の短鎖干渉核酸分子は2’−ヒドロキシ基(2’−OH)を含むヌクレオチドが欠失している。ある態様において、短鎖干渉核酸はRNAiを媒介するのに2’ −ヒドロキシ基を有するヌクレオチドは存在する必要がなく、従って本発明の短鎖干渉核酸分子は、任意にリボヌクレオチド(例:2’−OH基を持つヌクレオチド)をまったく含まなくてもよい。しかし、RNAiを媒介するためにsiNA分子内にリボヌクレオチドが存在する必要がないsiNA分子は、2’−OH基を有する1又は2個以上のヌクレオチドを含む、接合した一つ若しくは複数のリンカ、又はその他の接合若しくは会合した基、部分、若しくは鎖を有してよい。siNA分子は、ヌクレオチド部位の少なくとも約5、10、20、30、40、又は50%にリボヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0114】
本明細書で用いるsiNAという用語は、配列特異的RNAiを媒介することができる核酸分子を包含し、中でも特に例を挙げると、短鎖干渉RNA(siRNA)分子、二本鎖RNA(dsRNA)分子、マイクロRNA分子、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子、短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子、短鎖干渉核酸分子、短鎖干渉修飾オリゴヌクレオチド分子、化学修飾siRNA分子、及び転写後ジーンサイレンシングRNA(ptgsRNA)分子等がある。
【0115】
ある態様では、siNA分子は個別のセンス及びアンチセンス配列若しくは領域を含み、ここでセンス領域及びアンチセンス領域はヌクレオチド若しくは非ヌクレオチドリンカ分子によって共有結合されているか、又はイオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、及び/若しくはスタッキング相互作用により非共有的に結合されている。
【0116】
「アンチセンスRNA」とは、標的遺伝子mRNAと相補的な配列を有するRNA鎖であって、標的遺伝子mRNAと結合することによってRNAiを誘起することができるRNA鎖をいう。
【0117】
「センスRNA」とは、アンチセンスRNAと相補的な配列を有するRNA鎖であって、その相補的アンチセンスRNAとアニールしてsiRNAを形成するRNA鎖をいう。
【0118】
本明細書で用いる「RNAi構築物(RNAi construct)」又は「RNAi前駆体」という用語は、低分子干渉RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、及びインビボで開裂してsiRNAを形成することができるその他のRNA種等のRNAi誘導性化合物を意味する。本明細書におけるRNAi前駆体は、細胞中でdsRNA若しくはヘアピンRNAを形成する転写物、及び/又はsiRNAをインビボで生成することができる転写物を生じさせることが可能な発現ベクタ(RNAi発現ベクタとも言う)も含む。
【0119】
siHybrid分子は、siRNAと同様の機能を有する二本鎖核酸である。二本鎖RNA分子と違い、siHybridはRNA鎖及びDNA鎖から構成される。RNA鎖が標的mRNAと結合するアンチセンス鎖であることが好ましい。DNA鎖とRNA鎖のハイブリダイゼーションによって生じたsiHybridは、ハイブリダイズした相補的部分、及び好ましくは少なくとも一つの3’末端オーバーハングを有する。
【0120】
本発明の範囲内で使用するsiNAは、二つの別々のオリゴヌクレオチドから構築することができ、ここでこのうち一方はセンス鎖でもう一方はアンチセンス鎖であって、この場合、アンチセンス鎖とセンス鎖は自己相補的(すなわち、各鎖が他方の鎖のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含む;アンチセンス鎖及びセンス鎖が二重又は二本鎖構造を形成しており、この場合、例えばその二本鎖領域が約19塩基対である。)である。アンチセンス鎖は標的核酸分子のヌクレオチド配列又はその一部分と相補的なヌクレオチド配列を含むことができ、センス鎖は標的核酸配列又はその一部分に対応するヌクレオチド配列を含むことができる。別の選択肢として、siNAは単一のオリゴヌクレオチドから構築することもでき、この場合、siNAの自己相補的なセンス領域とアンチセンス領域は核酸系又は非核酸系のリンカによって結合される。
【0121】
ある態様では、細胞内送達のためのsiNAは、自己相補的センス及びアンチセンス領域を有し、二本鎖、非対称二本鎖、ヘアピン、又は非対称ヘアピン二次構造を有するポリヌクレオチドであってよく、ここでアンチセンス領域は個々の標的核酸分子内のヌクレオチド配列又はその一部分と相補的なヌクレオチド配列を含み、センス領域は標的核酸配列又はその一部分に対応するヌクレオチド配列を含む。
【0122】
siNAに施すことが可能な化学修飾の例としては、ヌクレオチド間のホスホロチオエート結合、2’−デオキシリボヌクレオチド、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、「非環式」ヌクレオチド、5−C−メチルヌクレオチド、並びに末端グリセリル及び/又は逆位デオキシ脱塩基残基(inverted deoxyabasis residue)の取り込みが挙げられる。
【0123】
siNA分子のアンチセンス領域は、そのアンチセンス領域の3’末端にヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を有することができる。アンチセンス領域は、そのアンチセンス領域の5’末端に約1乃至約5個のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を有することができる。siNA分子の3’末端ヌクレオチドオーバーハングは、核酸の糖、塩基、若しくはバックボーンが化学修飾されたリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含むことができる。3’末端ヌクレオチドオーバーハングは、1又は2個以上のユニバーサル塩基リボヌクレオチドを含むことができる。3’末端ヌクレオチドオーバーハングは、1又は2個以上の非環式ヌクレオチドを含むことができる。
【0124】
例えば、化学修飾siNAは1、2、3、4、5、6、7、8個若しくは9個以上のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を一方の鎖に有することができ、又は1乃至8個若しくは9個以上のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を各鎖に有することができる。ヌクレオチド間ホスホロチオエート結合は、siNA二本鎖の一方又は両方のオリゴヌクレオチド鎖に存在することができ、例えばセンス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方に存在することができる。
【0125】
siNA分子は、センス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方の3’末端、5’末端、又は3’末端と5’末端の両方に、1又は2個以上のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含むことができる。例えば、典型的なsiNA分子は、1、2、3、4、5個、又は6個以上の連続するヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を、センス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方の5’末端に有することができる。
【0126】
ある態様では、siNA分子は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又は11個以上のヌクレオチド間ピリミジンホスホロチオエート結合を、センス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方に有する。
【0127】
ある態様では、siNA分子は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又は11個以上のヌクレオチド間プリンホスホロチオエート結合を、センス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方に有する。
【0128】
siNA分子は環状核酸分子を含むことができ、この場合、siNAの長さは例えば約38、40、45、50、55、60、65、又は70ヌクレオチド等の約38乃至約70ヌクレオチドであって、例えば約18、19、20、21、22、又は23塩基対等の約18乃至23塩基対を有し、この場合、この環状オリゴヌクレオチドは約19塩基対及び2つのループを持つダンベル型構造を形成する。
【0129】
環状siNA分子は、二つのループモチーフを含むことができ、この場合、siNA分子の一方又は両方のループ部は生分解性である。例えば、環状siNA分子のループ部はインビボで変形されて、約2個のヌクレオチドを含む3’末端ヌクレオチドオーバーハング等の3’末端オーバーハングを有する二本鎖siNA分子を生成することができる。
【0130】
siNA分子の修飾ヌクレオチドは、アンチセンス鎖、センス鎖、又はその両方にあってよい。例えば、修飾ヌクレオチドはノーザンコンフォメーション(例:ノーザン擬回転周期(northern pseudorotation cycle)、例えばSaenger著、「Principles of Nucleic Acid Structure」、Springer− Verlag編集、1984年を参照)を持つことができる。ノーザン立体配置を持つヌクレオチドの例としては、架橋型核酸(locked nucleic acid;LNA)ヌクレオチド(例:2’−O,4’−C−メチレン−(D−リボフラノシル)ヌクレオチド)、2’−メトキシエトキシ(MOE)ヌクレオチド、2’−メチルチオエチル、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−クロロヌクレオチド、2’−アジドヌクレオチド、及び2’−O−メチルヌクレオチドが挙げられる。
【0131】
化学修飾ヌクレオチドは、RNAiを媒介する能力を維持しながら同時にヌクレアーゼ分解に対する耐性を持つことができる。
【0132】
二本鎖siNA分子のセンス鎖は、逆位デオキシ脱塩基部位(inverted deoxyabasis moiety)などの末端キャップ部位を3’末端、5’末端、又は3’末端と5’末端の両方に有してもよい。
【0133】
抱合体の例としては、2003年4月30日に出願されたVargeeseら、米国特許出願番号10/427160に記載の抱合体及びリガンドが挙げられ、図面を含むこの出願の全文は参照することで本明細書に組み入れられる。
【0134】
本発明のある態様では、抱合体は、生分解性リンカによって化学修飾siNA分子と共有結合することができる。例えば、抱合体分子は化学修飾siNA分子のセンス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方の3’末端に結合することができる。
【0135】
ある態様では、抱合体分子は化学修飾siNA分子のセンス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方の5’末端に結合する。ある態様では、抱合体分子は、化学修飾siNA分子のセンス鎖、アンチセンス鎖、若しくはその両方の3’末端及び5’末端の両方、又はこれらのいずれかの組み合わせに結合する。
【0136】
ある態様では、抱合体分子は、細胞等の生体系への化学修飾siNA分子の送達を促進する分子を含む。
【0137】
ある態様では、化学修飾siNA分子と結合する抱合体分子は、ポリエチレングリコール、ヒト血清アルブミン、又は細胞取り込みを媒介できる細胞受容体のリガンドである。本発明で意図する、化学修飾siNA分子と結合可能な抱合体分子の具体例は、Vargeeseら、米国特許公開公報US2003/0130186及び米国特許公開公報US2004/0110296に記載されており、これらの各文献の全文は参照することで本明細書に組み入れられる。
【0138】
siNAは、siNAのセンス領域とsiNAのアンチセンス領域を連結する、ヌクレオチド、非ヌクレオチド、又はヌクレオチドと非ヌクレオチドとが混在するリンカを含むことができる。ある態様では、ヌクレオチドリンカの長さは3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドであってよい。ある態様では、ヌクレオチドリンカは核酸アプタマであってよい。本明細書で用いる「アプタマ」又は「核酸アプタマ」という用語は、標的分子に特異的に結合する核酸分子を包含しており、この場合、核酸分子は、自然環境下で標的分子によって認識される配列を含んでいる。別の選択肢として、アプタマは、標的分子が核酸と自然には結合しない場合において、標的分子と結合する核酸分子であってよい。
【0139】
例えば、アプタマを用いてタンパク質のリガンド結合ドメインと結合させ、それによって天然のリガンドとタンパク質との相互作用を防ぐことができる。例えば、Goldら,Annu. Rev. Biochem. 64: 763, 1995; Brody及びGold,J. Biotechnol. 74: 5, 2000; Sun,Curr. Opin. Mol. Ther. 2: 100, 2000; Kusser,J. Biotechnol. 74: 27, 2000; Hermann及びPatel,Science 287: 820, 2000; 及びJayasena,Clinical Chemistry 45: 1628, 1999、を参照のこと。
【0140】
非ヌクレオチドリンカは、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、又はその他のポリマ化合物(例:2乃至100のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール等)であってよい。具体例としては、Seela及びKaiser,Nucleic Acids Res. 18: 6353, 1990、及びNucleic Acids Res. 15: 3113, 1987; Cload及びSchepartz,J. Am. Chem. Soc. 113: 6324, 1991; Richardson及びSchepartz,J. Am. Chem. Soc. 113: 5109, 1991; Maら,Nucleic Acids Res. 21: 2585, 1993: 及びBiochemistry 32: 1751, 1993; Durandら,Nucleic Acids Res. 18: 6353, 1990; McCurdyら,Nucleosides&Nucleotides 10: 287, 1991; Jschkeら,Tetrahedron Lett. 34: 301, 1993; Onoら,Biochemistry 30: 9914, 1991; Arnoldら、国際公開公報WO89/02439、Usmanら、国際公開公報WO95/06731、Dudyczら、国際公開公報WO95/11910、並びにFerentz及びVerdine,J. Am. Chem. Soc. 113: 4000, 1991、に記載のものが挙げられる。
【0141】
「非ヌクレオチドリンカ」とは、糖及び/又はリン酸エステル置換基を含む1又は2個以上のヌクレオチド単位の代わりに核酸鎖に取り込まれることができ、残った塩基に酵素活性を示させる基又は化合物のことを言う。この基又は化合物は、例えば糖のC1の位置にアデノシン、グアニン、シトシン、ウラシル、又はチミン等の一般的に認知されたヌクレオチド塩基を含まない点において、脱塩基型となり得る。
【0142】
ある態様では、修飾siNA分子はリン酸エステル主鎖の修飾部を有することができ、修飾には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、モルホリノ、アミデートカルバメート、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、及び/若しくはアルキルシリルの1又はそれ以上の修飾が含まれる。オリゴヌクレオチド主鎖の修飾の例は、Hunziker及びLeumann著、「Nucleic Acid Analogues: Synthesis and Properties, in Modern Synthetic Methods」、VCH、p.331−417、1995年、及びMesmaekerら著、「Novel Backbone Replacements for Oligonucleotides, in Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、ACS、p.24−39、1994年、に記載されている。
【0143】
化学的修飾が可能なsiNA分子は、(a)siNA分子の二つの相補鎖を合成する工程、及び(b)二本鎖siNA分子を得るのに適した条件下でこの二つの相補鎖をアニールする工程によって合成することができる。ある態様では、siNA分子の相補的な部分は、固相オリゴヌクレオチド合成又は固相タンデムオリゴヌクレオチド合成によって合成される。
【0144】
オリゴヌクレオチド(例:特定の修飾オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのリボヌクレオチドを含まない部分)は、例えばCaruthersら,Methods in Enzymology 211: 3−19, 1992; Thompsonら、国際公開公報WO99/54459、Wincottら,Nucleic Acids Res. 23: 2677−2684, 1995; Wincottら,Methods Mol. Bio. 74: 59, 1997; Brennanら,Biotechnol. Bioeng. 61: 33−45, 1998; 及びBrennan、米国特許公報第6001311号に記載の本技術分野で公知のプロトコルを用いて合成される。本発明の特定のsiNA分子を含むRNAの合成は、例えばUsmanら,J. Am. Chem. Soc. 109: 7845, 1987; Scaringeら,Nucleic Acids Res. 18: 5433, 1990; Wincottら, Nucleic Acids Res. 23: 2677−2684, 1995; 及びWincottら, Methods Mol. Bio. 74: 59, 1997、に記載の一般的手順に従う。
【0145】
本明細書で用いる「非対称ヘアピン」とは、アンチセンス領域と、ヌクレオチド又は非ヌクレオチドを含むことができるループ部と、アンチセンス領域と塩基対を作ってループ付き二重鎖を形成するのに十分な相補的ヌクレオチドを有する限りにおいてアンチセンス領域よりも少ないヌクレオチドを含むセンス領域と、を含む直鎖siNA分子である。
【0146】
本明細書で用いる「非対称二重鎖」とは、センス領域及びアンチセンス領域を含む別々の二本の鎖を有するsiNA分子であり、この場合、センス領域は、アンチセンス領域と塩基対を作って二重鎖を形成するのに十分な相補的ヌクレオチドを有する限りにおいてアンチセンス領域よりも少ないヌクレオチドを含む。
【0147】
本明細書で用いる「遺伝子発現を調節する」とは、標的遺伝子の発現を上方制御又は下方制御することであり、細胞内に存在するmRNAのレベル、mRNAの翻訳、又は標的遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはタンパク質サブユニットの合成の上方制御又は下方制御を含む場合がある。
【0148】
本明細書で用いる、「阻害する」、「下方制御する」、又は「発現を低下させる」という用語は、遺伝子の発現、RNA分子又は1又はそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットをコードする同等のRNA分子のレベル、又は標的遺伝子によってコードされる1又はそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットのレベル若しくは活性が、本発明の核酸分子(例:siNA)の非存在下で観察される値よりも低下することを意味する。
【0149】
本明細書で用いる「ジーンサイレンシング」とは、細胞内における遺伝子発現を部分的に又は完全に阻害することであり、「遺伝子ノックダウン」と言うこともある。ジーンサイレンシングの程度は本技術分野で公知の方法によって定量することができ、方法のうちのいくつかは国際公開公報WO99/32619にまとめられている。
【0150】
本明細書で用いる「リボ核酸」及び「RNA」という用語は、少なくとも一つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。リボヌクレオチドはベータ−D−リボフラノース部位の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドである。これらの用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA、組み換えによって作製したRNA、並びに1若しくは2個以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、修飾、及び/又は変性によって修飾及び変性された天然のRNAとは異なるRNAを含む。RNAの変性は、siNAの末端部又は内部等において、例えばRNAの1又は2個以上のヌクレオチドに対する非ヌクレオチド材料の付加を含む場合がある。
【0151】
RNA分子中のヌクレオチドには、天然ではないヌクレオチド又は化学合成されたヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチド等の非標準的なヌクレオチドが含まれる。このような変性されたRNAは類似体と呼ばれる場合がある。
【0152】
「高度保存配列領域」とは、標的遺伝子の1又はそれ以上の領域のヌクレオチド配列が、一つの世代から別の世代へ、又は一つの生体系から別の生体系へかけて実質的に変化しないことを意味する。
【0153】
「センス領域」とは、siNA分子のアンチセンス領域に対して相補性を有するそのsiNA分子のヌクレオチド配列を意味する。さらに、siNA分子のセンス領域は、標的核酸配列と相同性を有する核酸配列を含むことができる。
【0154】
「アンチセンス領域」とは、標的核酸配列に対して相補性を有するsiNA分子のヌクレオチド配列を意味する。さらに、siNA分子のアンチセンス領域は、そのsiNA分子のセンス領域に対して相補性を有する核酸配列を含むことができる。
【0155】
「標的核酸」とは、発現又は活性が調節されるいずれの核酸配列も意味する。標的核酸はDNA又はRNAであり得る。
【0156】
「相補性」とは、核酸が別の核酸配列と、従来のワトソン−クリック結合様式又はその他の従来のものとは異なる結合様式によって水素結合を形成できることを意味する。
【0157】
本明細書で用いる「生分解性リンカ」とは、例えば生物的に活性な分子とsiNA分子又はsiNA分子のセンス鎖とアンチセンス鎖を連結させるような、一つの分子をもう一つの分子と連結させるための生分解性リンカとして設計された核酸又は非核酸リンカ分子を意味する。生分解性リンカは、特定の組織又は細胞種への送達等の特定の目的のためにその安定性を調節することができるように設計されている。核酸系の生分解性リンカ分子の安定性は、例えばリボヌクレオチドと、デオキシリボヌクレオチドと、2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−アミノ、2’−O−アミノ、2’−C−アリル、2’−O−アリル、及びその他の2’位修飾ヌクレオチド又は塩基修飾ヌクレオチド等の化学修飾ヌクレオチドとの組み合わせによって、様々に調節することができる。生分解性核酸リンカ分子は、例えば長さが約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20ヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドのような二量体、三量体、四量体、若しくはさらに長い核酸分子であってよく、又は例えばホスホロアミデート若しくはホスホジエステル結合等のリン含有結合を有する一つのヌクレオチドを含んでもよい。生分解性核酸リンカ分子は、核酸のバックボーン、核酸の糖、又は核酸の塩基の修飾を含んでいてもよい。
【0158】
本明細書で述べる2’位修飾ヌクレオチドと関連して、「アミノ」とは2’−NH2又は2’−O−NH2を意味し、修飾されていてもされていなくてもよい。このような修飾された基は、例えばEcksteinら、米国特許公報第5672695号及びMatulic−Adamicら、米国特許公報第6248878号に記載されている。
【0159】
投与
本発明の範囲内で使用するための核酸分子を送達する方法の中には、例えばAkhtarら,Trends Cell Bio. 2: 139, 1992; Akhtar編、「Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics」、1995年、Maurerら,Mol. Membr. Biol. 16: 129−140, 1999; Hofland及びHuang,Handb. Exp. Pharmacol. 137: 165−192, 1999; 及びLeeら,ACS Symp. Ser. 752: 184−192, 2000、に記載されているものもある。Sullivanら、国際公開公報WO94/02595には、酵素核酸分子の送達の一般的方法がさらに記載されている。これらのプロトコルは本発明の範囲内で意図される実質的にいかなる核酸分子の補助的な又は補完的な送達に対しても利用することができる。
【0160】
核酸分子及びペプチドは、当業者に公知の様々な方法によって細胞へ投与することができ、その方法にはsiNA及びペプチドのみを含む製剤又は薬理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、アジュバンド、乳化剤、バッファ、安定剤、保存剤等の一つ若しくはそれ以上の追加成分をさらに含む製剤内における投与が含まれるが、これに限定されない。特定の態様において、siNA及び/又はペプチドは、リポソーム内に被包されたり、イオントフォレーシスで投与されたり、又はハイドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、生体接着性マイクロスフェア、若しくはタンパク質性ベクタ等の他の運搬体へ取り込まれたりすることができる(O’Hare及びNormand、国際公開公報WO00/53722参照)。別の選択肢として、核酸/ペプチド/運搬体の組み合わせを、直接注射又は輸液ポンプの使用によって局所的に送達することもできる。本発明の核酸分子の直接注射は、皮下注射、筋肉内注射、若しくは皮内注射を問わず、標準的な針とシリンジによる方法、又は、Conryら,Clin. Cancer Res. 5: 2330−2337, 1999、及びBarryら、国際公開公報WO99/31262に記載されるような無針技術を用いて行うことができる。
【0161】
本発明の組成物は、実質的に医薬品として使用することができる。医薬品は、患者の疾患状態若しくはその他の有害な状態の発生又は重症度化を予防若しくは調節したり、又はこれらを治療(一つ若しくはそれ以上の症状を、検出若しくは測定可能な程度で軽減)する。
【0162】
従って、追加的態様の範囲内において、本発明は、通常ペプチドと組み合わされた、複合体化し、若しくは抱合体形成した形であって、任意に希釈剤、安定剤、バッファ等の薬理学的に許容される担体と共に製剤されていてもよい1若しくは2種類以上のsiNAである、1若しくは2種類以上のポリ核酸の存在又は投与を特徴とする医薬組成物及び方法を提供する。
【0163】
本発明は、対象の特定の疾患状態又はその他の有害な状態と関連する遺伝子の発現を調節する短鎖干渉核酸(siNA)分子を提供することにより、更なる課題及び利点を満足するものである。通常siNAは、対象の疾患状態又は有害な状態と関連する原因因子又は寄与因子として、高レベルに発現された遺伝子を標的とすることになる。この点で、siNAは、1又はそれ以上の関連する疾患症状の再発が予防される、又はその重症度が軽減若しくは減少するレベルまで遺伝子の発現を効果的に下方制御するであろう。別の選択肢として、疾患又は他の有害な状態の結果又は続きとして標的遺伝子の発現が必ずしも高まらない様々な個別の疾患モデルに対しても、それでも標的遺伝子の下方制御は遺伝子の発現を低下させる(すなわち、標的遺伝子の選択されたmRNA及び/又はタンパク質産物のレベルを下げる)ことによって治療効果を示すであろう。別の選択肢として、本発明のsiNAは、一つの遺伝子の発現の低下を目的とすることによって、その標的遺伝子の産物又は活性によって発現が負の制御を受ける「下流」の遺伝子の上方制御を行うことができる。
【0164】
本発明のこのsiNAは、例えば経皮投与又は局所注射など、いかなる形でも投与することができる。動物を対象として、選択された疾患状態と関連する原因因子又は寄与因子として発現が異常に増加することが公知である大多数の遺伝子のいずれをも含む、その選択された疾患状態と関連する1又はそれ以上の異なる遺伝子の発現を標的とする類似の方法及び組成物が提供される。
【0165】
本発明の負に帯電したポリヌクレオチド(例:RNA又はDNA)は、医薬組成物を形成する安定剤やバッファ等を含んだ又は含まない状態で、いかなる標準的な方法によっても患者に投与することができる。リポソームによる送達メカニズムの使用を所望する場合は、リポソームを形成する標準的なプロトコルに従うことができる。本発明の組成物は、経口投与のために錠剤、カプセル、又はエリキシール剤として、直腸内投与のために坐薬として、注射投与のために無菌溶液又は懸濁液として、及び本技術分野で公知のその他の組成物として製剤し、使用することもできる。
【0166】
本発明はさらに、本明細書で述べる組成物の薬理学的に許容される製剤も含む。このような製剤は、例えば塩酸、臭素酸、酢酸、及びベンゼンスルホン酸の塩といった酸付加塩等の上述の化合物の塩を含む。
【0167】
siNAは、例えば薬物の直腸内投与のために坐薬の形で投与することもできる。このような組成物は、薬物を、常温で固体だが直腸内温度では液体となるため直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。そのような物質としては、ココアバター及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0168】
核酸分子は、当業者に公知の様々な方法によって細胞へ投与することができ、その方法にはリポソーム内への封入、イオントフォレーシスによるもの、生分解性ポリマ、ハイドロゲル、シクロデキストリン(例えば、Gonzalezら,Bioconjugate Chem. 10: 1068−1074, 1999、並びにWangら、国際公開公報WO03/47518及び国際公開公報WO03/46185参照)、乳酸−グリコール酸共重合ポリマ(PLGA)及びPLCAマイクロスフェア(例えば、米国特許公報第6447796号、米国特許公開公報US2002/130430参照)、生分解性ナノカプセル、並びに生体接着性マイクロスフェア等のその他の運搬体への取り込みによるもの、又はタンパク質ベクタによるもの(O’Hare及びNormand、国際公開公報WO00/53722参照)が含まれるが、これらに限定されない。別の選択肢として、核酸/運搬体の組み合わせは、直接注射又は輸液ポンプの使用によって局所的に送達される。本発明の核酸分子の直接注射は、皮下注射、筋肉内注射、若しくは皮内注射を問わず、標準的な針とシリンジによる方法、又は、Conryら,Clin. Cancer Res. 5: 2330−2337, 1999、及びBarryら、国際公開公報WO99/31262に記載のような無針技術を用いて行うことができる。本発明の分子は医薬品として使用することができる。医薬品は、対象の疾患状態について、その発生を予防若しくは調節したり、又はこれらを治療(一つの症状を、好ましくはすべての症状をある程度軽減)したりする。
【0169】
本発明のカチオン性ペプチドのいずれか一つを選択又はいくつかを組み合わせることにより、本発明の方法及び組成物の範囲内においてsiNAの細胞内送達を誘導又は促進するのに有効なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド試薬を得ることができる。
【0170】
医薬組成物
本発明は、本明細書で述べる化合物の薬理学的に許容される製剤又は組成物も含む。このような製剤には、例えば塩酸、臭素酸、酢酸、及びベンゼンスルホン酸の塩といった酸付加塩等の上述の化合物の有機塩及び無機塩が含まれる。
【0171】
水性懸濁液は、水性懸濁液を製造するのに適した賦形剤との混合物の形で活性物質を含む。そのような賦形剤は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、メチルセルロース、ヒドロプロピル−メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガム、及びアカシアガム等の懸濁剤であり、分散剤又は湿潤剤は例えばレシチン等の天然のホスファチド、例えばポリオキシエチレンステアレート等のアルキレンオキサイドと脂肪酸との縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール等のエチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート等のエチレンオキサイドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、又は例えばポリエチレンソルビタンモノオレエート等のエチレンオキサイドと脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物であってよい。水性懸濁液は、例えばp−ヒドロキシ安息香酸のエチル若しくはn−プロピルエステル等の1又はそれ以上の保存剤、1又はそれ以上の着色剤、1又はそれ以上の香味料、及びスクロース若しくはサッカリン等の1又はそれ以上の甘味料をさらに含んでよい。
【0172】
油性懸濁液は、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはココナッツ油等の植物性油、又は液状パラフィン等の鉱油中に活性成分を懸濁させることで調製することができる。油性懸濁液は、例えば蜜蝋、固形パラフィン、又はセチルアルコール等の増粘剤を含んでもよい。飲みやすい経口製剤を提供するために甘味料及び香味料を加えてもよい。このような組成物は、アスコルビン酸等の抗酸化剤を加えることで保存することができる。
【0173】
水の添加によって水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末及び顆粒により、活性成分は、分散剤又は湿潤剤と、懸濁剤と、1又はそれ以上の保存料との混合物として提供される。例えば甘味料、香味料、及び着色料等の追加的な賦形剤も存在してよい。
【0174】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形をとることもできる。油相は、植物油、鉱油、又はこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤としては、例えばアカシアガム又はトラガントガム等の天然ガム、例えば大豆、レシチン等の天然ホスファチド、及び例えばソルビタンモノオレエート等の脂肪酸と無水ヘキシトールとから誘導されるエステル又は部分エステル、並びに例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の前述の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物であってよい。また、エマルジョンは甘味料及び香味料を含んでいてもよい。
【0175】
医薬組成物は水性又は油性の無菌注射用懸濁液の形をとることができる。この懸濁液は、適切な分散剤若しくは湿潤剤、及び/又は懸濁剤を用いて調製することができる。無菌注射用製剤は、例えば1,3−ブタノール溶液等非経口的に許容される無害な希釈剤若しくは溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。
【0176】
医薬組成物用の許容可能な担体、運搬体、及び溶媒としては、水、リンゲル液、及び等張性の塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、無菌固定油は、担体、運搬体、溶媒、又は懸濁媒体として従来から使用されている。上記目的のためには、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含むいかなる無刺激性の固定油も使用することができる。さらに、オレイン酸等の脂肪酸も注射液の調製に有用である。
【0177】
本明細書で引用するあらゆる刊行物、参考文献、特許、及び特許出願の全文献は、参照することで具体的に本明細書に組み入れられる。
【0178】
本発明を特定の態様について説明し、例示の目的で多くの詳細事項を述べてきたが、本発明が追加的な態様を含み、本明細書で述べた詳細事項が本発明の範囲から逸脱しない範囲で大きく変形され得ることは、当業者には明らかであろう。本発明は、そのような追加的な態様、変更、及び同等な内容を含む。
【0179】
本発明の説明及び請求項においてここで使用する「1の(a)」、「1の(an)」、「その(the)」、及びこれらに類似の言葉は、単数形及び複数形の両方を含むものとして解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という言葉は、例えば「含むがこれらに限定されない」という意味のように、目的語を制限しない言葉として解釈されるべきである。本明細書における数値の範囲の列挙は、その範囲内の数値が明示的に列挙されていてもいなくても、本明細書において個々の数値が列挙されているかのごとく、その範囲内に入る個々の各数値を意味することを意図したものである。本明細書で取り上げた具体的数値は典型例であって本発明を制限するものではないことが理解されるであろう。
【0180】
本明細書で示された例及び用いられた典型的な用語は単に例示目的のためのものであって、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0181】
調製例1
水中でのPN0826:siRNA化合物。
化合物は以下のようにして調製した。RNaseを含有しない82.12μlの水、続いて10μlのG1498(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加した。この溶液をボルテックス撹拌により混合した。最後に7.88μlのPN0826(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を加え、ボルテックス撹拌により混合した。
【0182】
調製例2
PN0826、F−108、及び水。
化合物は以下のようにして調製した。まずRNaseを含有しない82.12μlの水を、続いて10μlのG1498(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。次に7.88μlのPN0826(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を加えてボルテックス撹拌により混合した。最後に、5μlのプルロニックF108(20mg/ml、0.2μMろ過済み)を添加してピペットで混合した。
【0183】
調製例3
Cy5−Inm4、PN0183、及び一晩。
化合物は以下のようにして調製した。まず119.40μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて15.60μlのペプチドPN0183(2mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を4℃で一晩保存した。最後に15μlのCy5−Inm4(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。
【0184】
調製例4
Cy5−Inm4、PN0183、F127、及び一晩。
化合物は以下のようにして調製した。まず119.40μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて15.60μlのペプチドPN0183(2mg/ml、RNaseを含有しない水中)及び7.5μlのプルロニックF127(20mg/ml、0.2μMろ過済み)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を4℃で一晩保存した。最後に15μlのCy5−Inm4(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)を添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。
【0185】
調製例5
G1498、PN0183、希釈用水、及びペプチドから添加。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、RNaseを含有しない水中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。
【0186】
調製例6
G1498、PN0183、希釈用バッファ、及びペプチドから添加。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。
【0187】
調製例7
G1498、PN0183、ペプチドから添加、及びボルテックス撹拌なし。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加してピペッティングにより混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ピペッティングにより混合した。
【0188】
調製例8
G1498、PN0183、ペプチドから添加、そして希釈による濃度低下。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。最後にこの溶液を10倍に希釈して濃度を下げた。
【0189】
調製例9
G1498、PN0183、及びsiRNAから添加。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。
【0190】
調製例10
G1498、PN0183、ペプチドから添加、そして30分間放置。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10M Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を氷上で30分間平衡化した。
【0191】
調製例11
G1498、PN0183、ペプチドから添加、そして60分間放置。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を氷上で60分間平衡化した。
【0192】
調製例12
G1498、PN0183、ペプチドから添加、そして24時間放置。
化合物は以下のようにして調製した。まず85.83μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのペプチドPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加し、ボルテックス撹拌により混合した。最後に10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)をこの溶液に添加して再度ボルテックス撹拌により混合した。この溶液を氷上で24時間平衡化した。
【0193】
調製例13
Inm4、PN0183、PN0939、及びsiRNAを投与直前に添加。
化合物は以下のようにして調製した。まず259.1μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて15.60μlのPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)及び10.30μlのPN0939(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。最後に15.00μlのInm4(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。ボルテックス撹拌により混合した。
【0194】
調製例14
Inm4、siRNA、PN0183、PN0939の順番、及びピペッティングによる混合。
化合物は以下のようにして調製した。まず172.00μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて10μlのInm4(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加した。ピペッティングにより混合した。その後11.20μlのPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。ピペッティングにより混合した。最後に6.80μlのPN0939(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。再度ピペッティングにより混合した。この溶液を氷上で1時間平衡化した。
【0195】
調製例15
Inm4、siRNA、PN0183、PN0939の順番、及びボルテックス混合。
化合物は以下のようにして調製した。まず2289.50μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて24.00μlのInm4(20mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。その後53.60μlのPN0183(10mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。ボルテックス撹拌により混合した。最後に32.90μlのPN0939(20mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。ピペッティングにより混合した。この溶液を氷上で1時間平衡化した。
【0196】
調製例16
Inm4、siRNA、PN0183、PN0939の順番、及びpH7.4。
化合物は以下のようにして調製した。まず376.19μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH7.4)を、続いて5μlのInm4(20mg/ml、RNaseを含有しない水中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。その後15.39μlのPN0183(7.26mg/ml、RNaseを含有しない水中)を添加した。ボルテックス撹拌により混合した。最後に3.42μlのPN0939を添加した。ピペッティングにより混合した。
【0197】
調製例17
G1498、PN0183、及びtert−ブタノール。
化合物は以下のようにして調製した。まず72.93μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。その後10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。再度ボルテックス撹拌により混合した。最後に12.90μlのtert−ブタノールを添加し、ピペッティングにより混合した。
【0198】
調製例18
G1498、PN0183、及びエタノール。
化合物は以下のようにして調製した。まず73.33μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH5.0)を、続いて4.17μlのPN0183(5mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を遠心用チューブに添加した。ボルテックス撹拌により混合した。その後10μlのG1498(1mg/ml、pH5.0の10mM Hepes/5%デキストロースバッファ中)を添加した。再度ボルテックス撹拌により混合した。最後に12.50μlのエタノールを添加し、ピペッティングにより混合した。
【0199】
調製例19
Lac−Z、PN0183、PN0939。
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)及び1.98μlのPN0939(1mg/ml)を121.40μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。
【0200】
Lac−Zの構造は以下の通りである。
センス鎖:CN2938。(配列番号64)
5’−r(CUACACAAAUCAGCGAUUU)dTdT−3’
アンチセンス鎖:CN2939。(配列番号65)
5’−r(AAAUCGCUGAUUUGUGUAG)dTdC−3’
【0201】
調製例20
Lac−Z、PN0183、PN0938。
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)及び0.97μlのPN0938(1mg/ml)を一緒に122.41μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。
【0202】
調製例21
Lac−Z、PN0183、PN0939、及び架橋。
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)及び1.98μlのPN0939(1mg/ml)を119.80μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。次に1.60μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加してピペッティングにより混合した。この溶液を室温で1時間平衡化した。
【0203】
調製例22
Lac−Z、PN0183、架橋、及びPN0939。
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)を119.80μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、続いて1.60μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加した。ピペッティングにより混合した。この溶液を室温で1時間平衡化した。最後に1.98μlのPN0939(1mg/ml)を添加した。ピペッティングにより混合した。
【0204】
調製例23
Lac−Z、PN0183、架橋、PN0939、及び架橋
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)を120μlのOPTI−MEM培地中へ希釈した。1.62μlのPN0183(1mg/ml)を119.80μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、続いて0.8μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加した。ピペッティングにより混合した。この溶液を室温で1時間平衡化した。続いて1.98μlのPN0939(1mg/ml)及び0.8μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加した。ピペッティングにより混合した。
【0205】
調製例24
Lac−Z、PN0183、架橋、透析、及びPN0939
化合物は以下のようにして調製した。まず158.6μlの10mM Hepes/5%デキストロースバッファ(pH7.4)、103.45μlのLac−Z siRNA(20μM)、及び33.53μlのPN0183(1mg/ml)を加えることでLac−Z siRNAとPN0183の混合物を作成した。ボルテックス撹拌によって混合した。次に4.4μlのグルタルアルデヒド(0.05%、W/V)を添加した。ピペッティングにより混合した。この溶液を室温で2時間平衡化した。続いてこの溶液を4℃で一晩透析にかけた。43.5μlの架橋された混合物を331.5μlのOPTI−MEM中へ希釈した。4.96μlのPN0939(0.1mg/ml)を57.54μlのOPTI−MEM中へ希釈した。この二つの希釈溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。
【0206】
調製例25
Lac−Z、PN0183、PN0826、及びPEG3350
化合物は以下のようにして調製した。5.0μlのLac−Z siRNA(20μM)及び1.6μlのPN0183(0.1mg/ml)を120μlのOPTI−MEM培地中へ添加し、ボルテックス撹拌により混合した。3.96μlのPN0826(0.1mg/ml)及び2.50μlのPEG3350(10mg/ml)を118.54μlのOPTI−MEM培地中へ添加した。この二つの溶液を一つにまとめ、ピペッティングにより混合した。
【0207】
実施例1
ゴールドダイ置換分析(Gold Dye Displacement Assay)によるペプチド−siRNA親和性
高速スクリーニングによる様々なペプチドのsiRNAに対する相対結合性を、核酸結合性色素SYBR−goldの置換を間接的に測定することによって評価した。ペプチドとSYBR−goldが同時にsiRNAとの競争結合を起こすように、siRNA、ペプチド、及びSYBR−goldの緩衝混合物を測定プレート内で2つの系に重複して調製した。siRNAの濃度は10μg/mLに固定し、それを0.05乃至10のペプチド:siRNA電荷比に対応する濃度範囲の各ペプチドの力価と組み合わせた。SYBR−gold色素はsiRNAと結合した時にのみ蛍光を発するため、siRNAと結合するペプチドは色素の結合を阻害し、結果として蛍光発光が減少する。従って、蛍光発光量はペプチドのsiRNAとの結合と逆相関を示した。Kd及びBmaxの両方の値を算出した。高いKd値は、ペプチドとsiRNAとの結合親和性が高いことを示すものであった。
【0208】
10,000倍濃度の核酸結合性SYBR−gold色素ストック液は、Invitrogen社(カリフォルニア州、カールズバッド)より入手し、−20℃で保存した。このストック液は、室温と平衡状態にしてからHyclone社のヌクレアーゼを含有しない水で100倍希釈した。これを測定プレート上で10倍希釈し、分析用の最終濃度である10倍濃度とした。これは、50μg/mLまでの濃度においてsiRNA二重鎖と正比例にある結合が得られる最適濃度であった。SYBR−goldとG1498siRNAとの正比例にある結合度を示す検量線作成に用いた数値を表4に示す。
【0209】
【表4】
【0210】
サンプルは384ウェルの分析プレート上で直接混合した。まず、マルチチャネルピペットを用い、ピペットチップをウェルの底に接触させることで溶液が完全に排出されるようにして、5μLのSYBR−gold色素を各ウェルへ分注した。次に、22.5μLの2×ペプチド溶液をシングルチャネルピペットで添加した。最後に、22.5μLの2×siRNA溶液をマルチチャネルピペットで添加した。プレートを直ちに箔でカバーし、軽くたたいて混合しウェルの側壁についた液滴を落とした。
【0211】
蛍光強度は、Molecular Devices社(カリフォルニア州、サニーベール)のSpectraMax蛍光プレートリーダーで測定した。プレートの設定条件に含まれたのは、励起波長を495nm及び発光波長を537nmとし、測定前の振とう及びウェル一つあたり1回の測定であった。プレートはsiRNAの添加後30分以内に測定した。
【0212】
ペプチド結合性のためのスキャッチャードプロット
スキャッチャードプロットはペプチドの結合性(結合[ペプチド]/遊離[ペプチド])vs結合[ペプチド]のプロットである。このプロットの直線回帰の傾きは、−1/Kdであり、Bmaxはy切片である。遊離のペプチドと結合ペプチドの濃度を直接測定することはできないので、siRNAの間接測定値を用いて算出した。遊離siRNAは、測定された蛍光強度から検量線を用いて定量した。結合siRNAは、既知の初期siRNA濃度(10μg/mL)からの物質収支により、検量線から定量した。
【0213】
結合ペプチドは、(siRNA:ペプチド)結合モル比が単一分子対の(siRNA:ペプチド)電荷比に等しいと仮定して、結合siRNAから算出した。この結合ペプチド算出量から、物質収支により遊離ペプチドを算出した。
【0214】
粒子サイズとゼータ電位
粒子サイズとゼータ電位は、ゼータ電位測定用透明使い捨てセルDTS1060Cを用い、25℃でMalvern Zetasizer Nano ZS(Malvern社、イギリス、ウスターシャー)により測定した。粒子サイズ用の分散剤は粘度1.0200cPのPBS又は粘度0.8872CPの水を用いた。ゼータ電位用の分散剤は粘度0.8872CPの水を用いた。分散剤粘度をサンプル粘度として使用した。ゼータ電位と粒子サイズの両方を測定する場合は、ゼータ電位測定用透明使い捨てセルを用いた。粒子サイズのみを測定する場合は、サイズ測定用低容量使い捨てキュベットを用いた。
【0215】
実施例2
様々な核酸濃度及びN/P比における縮合体粒子サイズ
様々なG1498濃度とN/P比におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図1に示す。特定のN/P比における各一組の3本の棒グラフにおいて、G1498濃度は一番左の棒グラフが100μg/ml、真ん中が50μg/ml、一番右が10μg/mlであった。N/P比0.2及び0.5では、G1498濃度が10μg/mlの時の粒子が非常に小さかったため、その濃度の棒グラフは図示されていない。
【0216】
P/N比が約1.4より小さい場合は、すべてのsiRNA濃度において粒子サイズは約200nmよりも小さかった。P/N比が約1.4か又はそれより大きい場合も、最も高い濃度(100μg/ml)を除くすべてのRNA濃度において縮合体粒子サイズは約200nmよりも小さいままであった。
【0217】
実施例3
様々な核酸濃度及びN/P比における縮合体粒子サイズ
様々な混合後の時間及び窒素/リン比(N/P比)で得られたsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図2乃至図5に示す。図2乃至図5の各図の特定のN/P比における各一組の2本の棒グラフにおいて、左の棒グラフがボルテックス撹拌ありの場合、右の棒グラフがボルテックス撹拌なしの場合であった。
【0218】
図2の粒子径は混合後直ちに測定されたものであり、図3、図4、及び図5の粒子径は、それぞれ混合後30分、60分、及び24時間で測定された。
【0219】
実施例4
縮合体粒子サイズに対するpHの影響
N/P比1.4及びG1498濃度100μg/mlで得られた、様々なpH値に対するsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図6に示す。
【0220】
pHが約12より低い場合、縮合体粒子サイズは減少し、pHの低下に伴って減少し続ける。約11より低いpHでは、粒子サイズは約500nmより小さかった。
【0221】
強度は、後方散乱光子 (back scattered photon)(後方散乱モード (Back scattered mode))の測定値である。粒子サイズは、拡散自己相関アルゴリズムを使って計算したサイズである。
【0222】
実施例5
縮合体粒子サイズに対する塩濃度の影響
様々な塩化ナトリウム濃度で得られたsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図7に示す。
【0223】
約0.5までの塩化ナトリウム濃度では、粒子径は約100nmから約275nmへ増加する。塩化ナトリウム濃度が約0.5を超えると、縮合体粒子サイズは上下に変動する。
【0224】
実施例6
縮合体粒子サイズに対するRNA及びペプチドの添加順の影響
様々なN/P比及び混合順におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合化合物の粒子径を図8に示す。N/P比が0.5以下の場合、粒子サイズは添加順による大きな影響は受けない。N/P比が0.5を超える場合は、siRNAが先に溶液中へ導入され、そのsiRNA溶液にペプチドが添加された場合に粒子サイズは概して小さかった。
【0225】
実施例7
縮合体粒子の形態
ペプチド−RNA縮合化合物の粒子形態は、透過電子顕微鏡(TEM)イメージングによって測定した。以下のプロトコルを用いた。
グリッド上に15μLのサンプルを滴下して10分放置;
半分の強度のカルノフスキー液に浸漬;
カコジル塩バッファに浸漬;
TEM造影剤:3%酢酸ウラニル(UA);
3回水に浸漬、UAに浸漬、湿らせたフィルター紙で余分な液体を除去、乾燥;
混合物1:(オリジナルのカルノフスキー混合物);
16%パラホルムアルデヒド溶液:20mL;
50%グルタルアルデヒド EM級:8mL;
0.2Mリン酸ナトリウムバッファ:25mL;
蒸留水:25mL。
最終混合物は78mLで、0.08Mバッファ中に5%グルタルアルデヒドと4%ホルムアルデヒドを含む。
この混合物のモル浸透圧濃度は2000mOSMを超えていた。
カコジル酸ナトリウムバッファ0.1M;
カコジル酸ナトリウム:4.28gm;
塩化カルシウム:25.0gm;
0.2N塩酸:2.5ml;
蒸留水で200mlに希釈、pHは7.4。
【0226】
グロー放電なしで上記のプロトコルを用いた時の、siRNA G1498(濃度100μ/ml)とペプチドPN183(N/P比1.4)との縮合化合物の粒子のTEM写真を図9に示す。この写真から、サイズが均一で形態が球状の粒子であることがわかる。粒子サイズは100nmより小さく、典型的には約50乃至60nmであった。
【0227】
グロー放電ありで上記のプロトコルを用いた時の、siRNA G1498(濃度100μ/ml)とペプチドPN183(N/P比1.4)との縮合化合物の粒子のTEM写真を図10に示す。この写真から、サイズが均一で形態が球状の粒子であることがわかる。粒子サイズは100nmより小さく、典型的には約30乃至60nmであった。
【0228】
実施例8
ペプチド−RNA縮合化合物の粒子サイズの特徴
いくつかのペプチド−RNA縮合化合物の粒子サイズ特性を表5にまとめて示す。
【0229】
【表5】
【0230】
例えば、N/P比0.5における化合物G1498/PN183は、全強度の98.7%を占めるピークを示し、ピーク径が73.3nm、ピーク幅が32.9nm、Z−平均粒子径が63.8であった。
【0231】
実施例9
ペプチド−RNA縮合体を用いてLPS刺激されたマウスの肺内でのTFN−αのインビボノックダウンアッセイ
siRNAのノックダウン活性を、細胞にペプチド−siRNA縮合化合物をトランスフェクトすることによって測定した。ランダムsiRNA配列をネガティブコントロールとして用いた。
【0232】
siRNA Inm−4及びペプチドPN183及びPN939との縮合化合物を含む組成物の鼻孔内投与による、モデルマウス内でのLPS誘導性TFN−α発現(pg/ml)のノックダウンアッセイの結果を図11に示す。
【0233】
図11において、一番左の棒グラフがバッファコントロールであり、次がInm−4/PN183/PN939縮合体のデータ、その右がグルタルアルデヒド(G)で架橋したInm−4/PN183/PN939化合物のデータである。プラセボ(Placebo)はsiRNAを含有しておらず、Qnegは不活性siRNAを含有している。
【0234】
図11のデータを表6に示す。
【0235】
【表6】
【0236】
投与は鼻腔内から行った。投与後4時間及び24時間で、動物を0.625ng(50μl)のLPSで誘起した。LPS導入後2時間で肺を採取した。TNFαのELISAアッセイ及びBCA全タンパク質アッセイを行った。実験に用いた物質及び方法は以下の通りであった。
動物:正常マウス
投与量:0.5mg/kg
容量:50μL
反復実験数:n=3
全グループ数:10
コントロール:媒体、Qneg
siRNA:Inm4
投与:Inm4濃度0.5mg/kgで製剤を調製した。各製剤の全容量は200μlであった。各マウス(n=3)に50μlずつ投与した。
siRNAの調製:既存の20mg/mlのInm−4siRNAストック液を Hepes/バッファにより5mg/mlに希釈した。Qnegは、既存の3.29mg/mlのストック液を使用した。
ペプチド:ペプチドはバッファ(10mM Hepes/5%デキストロース)により適切な濃度に希釈した。
賦形剤調製:グルタルアルデヒド(0.05%W/V)を使用した。0.2μmで滅菌ろ過した。
製剤調製:1.5mlBio−pur Eppendorfチューブに各成分を加えた。
(A)まず、少量の他の成分を受ける容量のバッファを加えた。
(B)以下に示す順序で全成分を加えた。siRNA、ペプチド1、ペプチド2、必要に応じて添加剤、バッファ。
(C)グルタルアルデヒド架橋を行う製剤については、1時間経ってから投与した。
【0237】
代表的な製剤を表7に示す。
【0238】
【表7】
【0239】
代表的製剤の詳細を表8及び表9に示す。
【0240】
【表8】
【0241】
【表9】
【0242】
実施例10
ラット膠肉腫線維芽細胞(9L/LacZ)におけるLac−z発現のインビトロノックダウンアッセイ
lac−z siRNAとペプチドPN183並びに様々な第二のペプチドとの縮合化合物によるラット膠肉腫線維芽細胞である9L/LacZ内でのlac−z発現のインビトロノックダウンアッセイの結果を図12に示す。
【0243】
図12において、一番左の棒グラフがHiPerFect(商標)(Qiagen社、カリフォルニア州、バレンシア)を用いた比較データであり、それに続くのが本発明の様々な化合物のデータによるものである。PN183のN/P比は0.75であり、第二のペプチドのN/P比0.3であった。図12のデータを表10に示す。
【0244】
【表10】
【0245】
実験に用いた物質及び方法は以下の通りであった。
細胞:9L/LacZ
投与量:100nM、全トランスフェクション用量100μlに基づく
容量:製剤容量25μL
反復実験数:n=3
全グループ数:20
コントロール:Qneg w/Alexis546
siRNA:LacZ
Lac−Z又はQneg:54μlのsiRNA+17.28μlのPN0183+1278μlのOPTI−MEM
ペプチドはOPTI−MEM培地で適切な濃度に希釈した。
賦形剤はすべて0.2μmで滅菌ろ過した。
製剤:
(A)siRNAとPN0183を一緒にOPTI−MEMで希釈して粒子を形成させた。ボルテックス撹拌した。
(B)送達媒体をOPTI−MEMで希釈した。ボルテックス撹拌で送達媒体を混合した。
(C)各製剤について、96ウェルに希釈した送達媒体をまず添加し、続いてsiRNA/PN0183製剤を添加した。ピペッティングにより混合した。トランスフェクトする前に30分間放置した。トランスフェクション:各製剤は5つのウェルに十分な125μlであった。各ウェル(n=3)には25μl注入した。
【0246】
代表的な製剤の詳細を表11に示す。
【0247】
【表11】
【0248】
代表的製剤の詳細を表12に示す。
【0249】
【表12】
【0250】
実施例11
ラット膠肉腫線維芽細胞(9L/LacZ)におけるLac−z発現のインビトロノックダウンアッセイ
様々な縮合化合物によるラット膠肉腫線維芽細胞である9L/LacZ内でのlac−z発現のインビトロノックダウンアッセイの結果を表13に示す。
【0251】
【表13】
【0252】
実験に用いた材料と方法は以下の通りであった。
細胞:9L/LacZ
投与量:100nM、全トランスフェクション用量100μlに基づく
容量:製剤容量25μL
反復実験数:n=3
全グループ数:20
コントロール:Qneg w/Alexis546
siRNA:LacZ
トランスフェクション:各製剤は5つのウェルに十分な125μlであった。各ウェル(n=3)には25μl注入した。
ペプチド調製:ペプチドはOPTI−MEM培地で適切な濃度に希釈した。
賦形剤調製:賦形剤はすべて0.2μmで滅菌ろ過した。
製剤調製:
(A)PN0183なしの製剤については、送達媒体をまず添加してからsiRNAを添加し、ピペッティングにより混合した。
(B)PN0183ありの製剤については、siRNAとPN0183の複合体をまず作製した。96ウェルプレートに、送達媒体をまず添加し、それからsiRNA/PN0183複合体を添加し、ピペッティングにより混合した。
(C)架橋を行う製剤については、siRNAとPN0183の複合体をまず作製し、それから透析(4℃、一晩)を行うか、又は行わなかった。続いて翌朝に他の送達媒体をまず添加し、そしてsiRNA/PN0183複合体を添加、それからピペッティングにより混合した。
【0253】
代表的な製剤を表14に示す。
【0254】
【表14】
【0255】
代表的製剤の詳細を表15、16、及び17に示す。
【0256】
【表15】
【0257】
【表16】
【0258】
【表17】
【0259】
実施例12
ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド
典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73は、以下に示すヒトのヒストン2B(H2B)タンパク質のアミノ酸配列から誘導された。H2Bタンパク質中の下線部13乃至48番目までの残基部分がPN73を誘導するために使用された断片部を示す。H2Bの12乃至48番目までのアミノ酸で表される場合もある。PN73の一次構造も以下に示す。
H2B(ヒストン2B)アミノ酸配列(配列番号66)
MPEPAKSAPAPKKGSKKAVTKAQKKDSKKRKRSRKESYSVYVYKVLKVHPDTGISSKAMGIMNSFVNDIFERIAGEASRLAHYNKRSTITSREIQTAVRLLLPGELAKHAVSEGTKAVTKYTSSK
PN73(13−48)(配列番号42)
NH2−KGSKKAVTKAQKKDGKKRKRSRKESYSVYVYKVLKQ−アミド
【0260】
典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73残基の置換及び欠失によって作製したいくつかのポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド変異体の構造を表18に示す。
【0261】
【表18】
【0262】
表19に示すのは、典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73及びその切断型誘導体の構造である。以下に示すPN360及びPN361のアミノ酸配列は、PN73の対応するアミノ酸配列にアラインメントしてある。
【0263】
【表19】
【0264】
PN360はPN73とN末端は共通だがPN73のC末端が欠失しており、PN361はPN73とC末端が共通だがPN73のN末端が欠失している。PN766はPN73のC末端側15のアミノ酸に相当する。PN73、PN360、PN361、及びPN766はFITC(フルオレセイン−5−イソチオシアネート)(すなわち、−GK[イプシロン]G−アミド)によるC末端標識はされていない。表19にはさらに11のPN73切断型を示し、これらはPN768を除いてペプチドのN末端から順に残基を3つずつ欠失させて作成した。これらのペプチドはすべて、このペプチドを含む細胞を蛍光顕微鏡で検出し、そして/又はフローサイトメトリで分離できるように、FITC(フルオレセイン−5−イソチオシアネート)(すなわち、−GK[イプシロン]G−アミド)によるC末端標識が施されている。PN766及びPN708は同じアミノ酸配列を持つが、PN708がC末端FITC標識されている点で異なっている。
【0265】
実施例13
siRNAの細胞取り込みと標的遺伝子ノックダウンのためのインビトロでの実験方法及び手順
本実施例では、実施例12の表18及び表19に挙げた典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドによる、siRNAの細胞取り込み及びsiRNAによる標的遺伝子ノックダウン活性を促進する有効性を評価するために使用される方法と手順を示す。細胞の生存率も評価した。各実験における細胞の培養条件及びプロトコルは以下に詳細に説明する。
【0266】
細胞培養
初代ヒト単球:
健康な提供者からのヒトの新鮮血サンプルをGolden West Biologicals社より購入した。単球の単離のために、血液サンプルは入手後直ちにPBSにより1:1の比率で希釈した。まず全血から末梢血液単核細胞(PBMC)をFicoll(Amersham社)勾配法により単離した。さらにMiltenyiCD14ポジティブ選別キット及び提供されたプロトコル(Miltenyi Biotec社)を用いて単球をPBMCから分離した。単球試料の純度を評価するために、細胞を抗CD14抗体(BD Biosciences社)とインキュベートし、その後フローサイトメトリで分離した。単球試料の純度は95%超であった。
【0267】
0.1乃至1.0ng/mlのリポ多糖、LPS(Sigma社、ミズーリ州、セントルイス)を細胞培養液に添加して腫瘍壊死因子−±(TNF−±)の生成を刺激することにより、ヒト単球の活性化を行った。細胞はLPSと共に3時間インキュベートした後に回収し、Quantigeneアッセイ(Genospectra社、カリフォルニア州、フリーモント)を用いて製造元の説明書に従ってmRNAレベルを測定した。
【0268】
マウス尾線維芽細胞:マウス尾線維芽細胞(MTF)はC57BL/6Jマウスの尾から得た。尾を切り離し、70%エタノールに浸漬した後剃刀の刃で切って小片とした。この小片をPBSで3回洗浄した後、0.5mg/mLのコラゲナーゼ、100ユニット/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンと共に37℃で振とう器中でインキュベーションして組織を破壊した。次に尾の小片を完全培地(20%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、100ユニット/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシン含有ダルベッコ改変必須培地)中で細胞が樹立するまで培養した。細胞は、上で概説したように、37℃、5%CO2下で、完全培地中で培養した。
【0269】
細胞生存率(MTTアッセイ法)
細胞生存率は、MTTアッセイ法(MTT−100、MatTekキット)を用いて評価した。このキットは、テトラゾリウム塩の取り込みとホルマザン色素への変換を測定するものである。解凍した濃縮MTT2mLをMTT希釈剤8mLと混合することで脂質を用いて解凍して希釈したMTTの濃縮物を投与終了時の1時間前に調製した。各細胞培養インサートをCa2+及びMg2+含有PBSで2回洗浄し、それから各ウェルに100μLの混合MTT溶液を含む新品の96ウェル輸送用プレートへ移した。この96ウェル輸送用プレートを次に37℃、5%CO2下で3時間インキュベートした。3時間のインキュベーションの後MTT溶液を除去し、各ウェルに250μLのMTT抽出溶液を含む第二の96ウェル供給用トレイへ培養物を移した。各培養ウェルの表面へ150μLのMTT抽出溶液を追加添加し、このサンプルを暗所に室温で最小2時間、最大24時間放置した。その後ピペットチップをインサート膜に突き刺して、ウェルの上部と下部の溶液を混合させた。この混合抽出溶液200μLを抽出ブランク(ネガティブコントロール)と共にマイクロリーダー測定のための96ウェルプレートへ移した。プレートリーダーにより、650nmでバックグラウンド除去を行い、570nmでサンプルの光学濃度(OD)を測定した。細胞生存率はパーセントで表され、処理インサートに対して読み取ったODをPBS処理インサートに対して読み取ったODで割り、それを100倍して計算した。本分析の目的のために、PBSは細胞生存率に影響せず、従って100%の細胞生存率を表していると仮定した。
【0270】
siRNA調製
オリゴヌクレオチドの合成は、5’−O−ジメチルトリチル−2’−O−t−ブチルジメチルシリル−3’−O−スクシニルリボヌクレオシドで誘導体化された長鎖アルキルアミン処理多孔質ガラス上、又は場合によっては5’−O−ジメチルトリチル−2’−デオキシ−3’−O−スクシニルチミジンの支持体上での標準2−シアノエチルホスホラミダイト法(1)によって行った。オリゴヌクレオチドはすべて、ABI3400DNA/RNA合成装置(Applied Biosystems社、カリフォルニア州、フォスターシティ)を用いて0.2又は1μmolのオーダーで合成し、濃NH4OHを用いて固体担体から切断し、NH4OH:エタノール3:1混合液を用いて55℃で脱保護した。保護基2’−TBDMSの脱保護は、塩基が脱された保護RNAをN−メチルピロリジノン/トリエチルアミン/トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(NMP/TEA/3HF;体積比で6:3:4)の溶液(1μmolあたり600μL)と共に65℃で2.5時間インキュベートすることで達成した。対応する構成要素である、A、U、C及びGの5’−ジメトキシトリチル−N−(tac)−2’−O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]ホスホラミダイト(Proligo社、コロラド州、ボールダー)、並びに修飾ホスホラミダイトである5’−DMTr−5−メチル−U−TOM−CEホスホラミダイト、5’−DMTr−2’−OMe−Ac−C−CEホスホラミダイト、5’−DMTr−2’−OMe−G−CEホスホラミダイト、5’−DMTr−2’−OMe−U−CEホスホラミダイト、5’−DMTr−2’−OMe−A−CEホスホラミダイト(Glen Research社、バージニア州、スターリング)は供給業者から直接購入した。トリエチルアミン三フッ化水素酸塩、N−メチルピロリジノン、及び濃水酸化アンモニウムはAldrich社(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)から購入した。すべてのHPLC分析及び精製は、Xterra(商標)C18カラムを用いてWaters2690HPLCシステムにより行った。その他の試薬はすべてGlen Research Inc.社から購入した。オリゴヌクレオチドは、RP−HPLCで測定したところ純度97%超まで精製されていた。マウス注射用siRNAは、Qiagen社(カリフォルニア州、バレンシア)からインビボグレードのものを購入し、アニーリング後HPLCで精製した。一本鎖siRNAの量は、λ=260nmにおけるナトリウム塩の形での消衰係数の計算値35.0μg/ODに基づき、分光測定により求めた。二本の鎖がアニールされる時は、約10%の淡色効果が観測された。従って、二本鎖型の定量には消衰係数を10%低下させた。siRNAの内毒素レベルは通常0.0024EU/mg以下であった。
【0271】
ペプチド合成
ペプチドは固相Fmoc法により、Rainin社シンフォニー(Symphony)合成装置を用いてCLEARアミド樹脂上に合成した。5当量のHCTU及びFmocアミノ酸を用い、過剰のN−メチルモルフォリンと共に40分間カップリングを行った。このペプチド樹脂を20%ピペリジンのDMF溶液で10分間2回の処理を行い、Fmocを除去した。全ペプチドの反応が完了した時点で、Fmoc基をピペリジンで除去し、DMFで十分に洗浄を行った。ペプチド樹脂のN末端に、3.0当量の3−マレイミドプロピオン酸及びHCTUを6当量のN−メチルモルフォリンの存在下でカップリングすることにより、マレイミド変性ペプチドを調製した。カップリングの進み具合はカイザーテストでモニターした。2.5%の水と2.5のトリイソプロピルシランを含有するTFA10mLを添加し、続いて室温で2時間ゆるやかに撹拌することによりペプチドを樹脂から開裂させた。得られた粗ペプチドはエーテルで倍散し、続いてろ過により回収した。粗生成物をMillipore水に溶解し、凍結乾燥により乾固した。粗ペプチドを0.05%のTFAを含有する水15mLと酢酸3mLへ投入し、5mLの注入ループを通して流速5mL/分でZorbax RX−C8逆相カラム(内径22mm×250mm、粒子径5μm)にローディングした。精製は、溶媒Aを0.05%TFA含有水とし、溶媒Bを0.05%TFA含有アセトニトリルとした場合、0.1%B/分の直線AB勾配を流すことで達成した。精製ペプチドはHPLC及びESMSによって分析した。
【0272】
フローサイトメトリ
蛍光活性セルソーティング(Fluorescence activated cell sorting)(FACS)分析は、Beckman社のCoulter FC500セルアナライザー(カリフォルニア州、フラートン)で行った。装置は、用いた蛍光プローブ(siRNAにはFAM又はCy5、CD14にはFITC及びPE)に合わせて調節した。細胞生存率及び細胞毒性の指標として、ヨウ化プロピジウム(Fluka社、セントルイス)及びアネキシンV(R&D Systems社、ミネアポリス)を用いた。工程順のプロトコルを簡単に以下に示す。
(a)siRNA/ペプチド複合体に曝露後、細胞を少なくとも3時間インキュベートした。
(b)200μlのPBSで細胞を洗浄する。
(c)15μlのTEによって細胞を脱離し、37℃で温置する。
(d)30μlのFACS溶液(0.5%BSA及び0.1%アジ化ナトリウム含有PBS)が入った5つのウェル中で細胞を再懸濁する。
(e)5つのウェルの溶液を一つのチューブにまとめる。
(f)5μlのPI(ヨウ化プロピジウム)各チューブへ加える。
(g)蛍光活性セルソーティング(Fluorescence activated cell sorting)(FACS)により、製造元の説明書に従って細胞を分析する。
【0273】
siRNA取り込みの分析については、細胞をPBSで洗浄し、トリプシンで処理し(付着細胞のみ)、続いてフローサイトメトリで分析した。上述のBAで表されるsiRNAの取り込みも、細胞内のCy5又はFITCの蛍光強度によって測定し、そしてヨウ化プロピジウム又はアネキシンV−PEの添加によって細胞生存率を評価した。細胞取り込みを蛍光標識siRNAの膜への挿入と区別するため、トリパンブルーを用いて細胞膜表面の蛍光を消光した。
【0274】
実施例14
典型的ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドの欠失解析
初代マウス尾線維芽細胞(MTF)の細胞取り込みアッセイをインビトロで行い、完全長型と切断型のポリペプチドPN73の細胞内への進入効率を調べた。培養液中のFITC標識ペプチドを受けとった細胞数はフローサイトメトリで測定した。ペプチドの細胞取り込み率は培養液中の全細胞数に対する割合で表した。さらに、細胞内のFITC標識ペプチド量は平均蛍光強度(MFI)を用いて評価した。MFIは細胞内のFITC標識ペプチド量と正の相関関係があり、相対的に高いMFI値は高い細胞内FITC標識ペプチド量と相関している。ペプチドは0.63μM、2.5μM、及び10μMの濃度で評価し、PN768は2μM、10μM、及び50μMでテストした。
【0275】
完全長型と切断型のポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73を、トランスフェクションの前日に細胞に曝露した。FITC標識ペプチドはOpti−MEM(登録商標)培地(Invitrogen社)中で室温で約5分間希釈してから細胞へ添加した。細胞は3時間かけてトランスフェクトして、PBSで洗浄し、トリプシンで処理後、フローサイトメトリで分析した。細胞生存率を上述のようにして測定した。細胞取り込みを膜挿入と区別するため、トリパンブルーを用いて細胞膜表面の蛍光を消光した。
【0276】
この細胞取り込み分析において、完全長型FITC標識PN73ペプチド(PN690)は、テストしたすべての濃度において(10μMの結果を表20中「ペプチド細胞取り込み率(%)」の列に示す)ほぼ100%の細胞取り込みを達成した。残りの切断型PN73は、50μMの濃度が必要であったPN768を除いて、10μMの濃度においてPN690と同等の細胞取り込み率(カッコ内の数値)を達成し、これはPN73のN末端残基はペプチドが細胞内へ進入する能力にとって必要ではないことを示唆している。ペプチドの細胞取り込みには、PN768として示すPN73の5塩基分のC末端残基で十分である。切断型PN73は、0.63μMにおいてペプチドの長さに比例して細胞取り込み活性の低下を示した。すなわち、0.63μMの濃度でテストされたペプチドを全体的に見ると、PN73ペプチドの長さが減少するとその細胞取り込み活性も低下し、従って、ペプチドの細胞取り込み活性は投与量に依存することが示唆された。
【0277】
表20に細胞取り込みと標的遺伝子ノックダウン(KD)のデータをまとめた。
【0278】
【表20】
【0279】
表20より、欠失したPN73のN末端部(PN361参照)がsiRNA細胞取り込み活性を50%低下させ、またC末端を除くことで(PN360参照)siRNA細胞取り込み活性が低下したことが分かる。これらのデータは、典型的ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73のC末端領域が、ペプチドのヌクレオチド細胞取り込み活性に寄与していることを示している。
【0280】
本発明のsiRNA/ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド化合物による標的遺伝子発現の有効なノックダウンを実証した。具体的には、siRNA/ペプチド化合物によるヒト腫瘍壊死因子α(hTNF−α)遺伝子の発現を調節する能力を評価した。hTNF−α遺伝子は、ヒトやその他の哺乳類の対象中で過剰発現すると関節リウマチ(RA)の発症と進行を媒介することが示唆されているため、これを標的とすることは重要である。
【0281】
ヒト単球をモデルシステムとして用いて、siRNA/ペプチド複合体のhTNF−α遺伝子発現に対する影響を測定した。QnegはランダムsiRNA配列を表し、ネガティブコントロールとした。観察されたQnegによるノックダウン活性を100%(遺伝子発現レベル100%)の基準とし、以下の各siRNA、A19S21、21/21、及びLC20のノックダウン活性はこのネガティブコントロールに対する相対パーセントで表した。A19S21、21/21、及びLC20はhTNF−αmRNAを標的とするsiRNAである。典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドであるPN643(完全長型PN73からC末端標識を取り除いたもの)、PN690(C末端FITC標識付き完全長型PN73)、並びに欠失系PN660,PN735、PN654及びPN708からのPN73の切断型を上で挙げたsiRNAと複合体化させ、各siRNAがヒト単球中hTNF−α遺伝子の発現レベルを低下させる能力に対するこれらポリペプチドの影響を調べた。典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN73の完全長型及び切断型のノックダウン活性を上の表20にまとめる。「KD」の列の「+」は、ペプチド/siRNA化合物がQnegのネガティブコントロールsiRNAに対して80%のノックダウン活性(Qnegネガティブコントロールと比較してmRNAレベルが20%低下)を有していたことを意味する。「+/−」は、ペプチド/siRNA化合物がQnegのネガティブコントロールsiRNAに対して約90%のノックダウン活性(Qnegネガティブコントロールと比較してmRNAレベルが10%低下)を有していたことを意味する。最後に「−」は、ペプチド/siRNA化合物がQnegネガティブコントロールと比較して有意なノックダウン活性を有していなかったことを意味する。
【0282】
健康なヒトの血液をGolden West Biologicals社(カリフォルニア州)から購入し、Ficoll−Pague Plus(Amersham社)の勾配を用いて末梢血液単核細胞(PBMC)を血液から分離した。次にMiltenyi Biotech社の磁気マイクロビーズを用い、ヒト単球をPBMC分画から分離した。単離したヒト単球は、4mMのグルタミン、10%FBS、1×非必須アミノ酸、及び1×ペニシリン−ストレプトマイシンを添加したIMDM中に再懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0283】
96ウェル平底プレートを使い、OptiMEM培地(Invitrogen社)中にヒト単球を100K/ウェル/100μlで播種した。典型的ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを、20nMのsiRNAとモル比1:5にてOptiMEM培地中室温で5分間混合した。このインキュベーションの最後にFBSをこの混合物へ添加し(終濃度3%)、この混合物50μlを細胞へ添加した。細胞は37℃で3時間温置した。温置の後、細胞をV底プレートへ移し、1500rpmで5分間かけてペレット化した。細胞を増殖培地(グルタミン、非必須アミノ酸、及びペニシリン−ストレプトマイシンを含むIMDM)中へ再懸濁した。一晩のインキュベーションの後、単球に1ng/mlのLPS(Sigma社)を適用して3時間刺激し、TNF−α発現レベルを増加させた。LPSの導入後、mRNA定量のために細胞を上述のように回収し、上清はタンパク質定量が必要な場合は保存した。
【0284】
mRNAの測定は、Genospectra社(カリフォルニア州)の分岐DNA技術を用いて製造者の仕様に従って行った。細胞中のmRNAレベルを定量するために、ハウスキーピング遺伝子(cypB)及び標的遺伝子(TNF−α)のmRNAの両方を測定し、TNF−αの読み取りをcypBに対して標準化して相対発光単位を得た。
【0285】
全体として、PN643(FITC標識なし完全長型PN73)及びPN690(FITC標識完全長型PN73)は、「KD」列の「+」(結果を表20に示す)が示すように、テストしたすべてのsiRNAにおいて、同等のsiRNAノックダウン活性を有していた。さらに、PN660は、テストしたすべてのsiRNAにおいてPN643及びPN690と同等のsiRNAノックダウン活性を有しており、このことはPN73の最もN末端側の9残基を除いても、siRNAが媒介する標的TNF−αmRNAのノックダウン活性に影響がないことを示唆している。PN654は、A19S21及び21/21の両siRNAに対して中程度のノックダウン活性を示したが、LC20siRNAに対してはノックダウン活性を示さなかった(ノックダウン活性は、ノックダウン活性の列中に「±」として示されている)。しかし、PN708又はPN735と複合体化されたsiRNAは、いずれのsiRNAについても観測可能なノックダウン活性を示さなかった。
【0286】
実施例15
ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN708
上述のように、細胞取り込み分析は、ペプチドと化合物化されたCy5抱合siRNAを受け入れる細胞の数を測定する。siRNAの細胞取り込みはフローサイトメトリ(詳細は実施例2を参照)で評価した。取り込み率は、Cy5抱合siRNAを含有する細胞の数を培養液中のトランスフェクトされた細胞及びされていない細胞を合わせた全細胞数で割って計算したパーセントで表した。平均蛍光強度(MFI)はフローサイトメトリで測定し、これにより細胞内のCy5抱合siRNAを定量した。MFI値は細胞内のCy5抱合siRNAの量と正の相関関係があり、従って高いMFI値は細胞内のCy5抱合siRNAの数が多いことを示す。
【0287】
この例では、PN643(完全長型PN73からC末端標識を取り除いたもの)、PN690(C末端FITC標識を有する完全長型PN73)、及びPN708(15塩基長、PN73のN末端残基21個を欠失して誘導)は5μM、10μM、20μM、及び40μMでテストした。PN643及びPN690は2.5μMでもテストし、PN690はさらに1.25μMでもテストした。PN643及びPN708の両方は80μMでもテストした。
【0288】
表21に示すように、FITC標識なしのPN73(PN643)ペプチドは10μMの濃度でほぼ100%のsiRNAの取り込みを達成した。しかし、PN73をFITCで標識すると(PN690)、最大細胞取り込み活性は約70%まで低下した。PN708は、siRNAの細胞取り込み活性が投与量に依存して増加することを示した。PN708は、80μMでsiRNAの細胞取り込み活性の最大である95%を達成した。完全長型PN73ペプチドでは、ペプチド濃度の上昇に伴って細胞生存率が減少した。対照的に、PN708ペプチドとインキュベートした細胞は、すべてのテスト濃度のペプチド存在下において90%超の生存率を維持した。この例では、切断型ペプチドPN708は、完全長型PN73(PN690)と比較して細胞内へ送達されたCy5−siRNAの量を約2倍に増加させた。
【0289】
【表21】
【0290】
ポリペプチドPN708は、siRNAが媒介する標的遺伝子発現低下への影響によってその特性を評価した。PN708ペプチドのC末端FITC標識を除いてから、siRNAと複合体化した時のその標的遺伝子発現低下を促進する能力を評価した。FITC標識が存在しない場合の切断型の典型的なポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドは、PN766とした(実施例12の表19参照)。siRNA/ペプチド複合体によるヒト腫瘍壊死因子α(hTNF−α)遺伝子発現の調節能を評価した(プロトコルの詳細は実施例3参照)。この例では、ランダムsiRNA配列であるQnegをネガティブコントロールとし、LC20及びLC17のsiRNAを用いてヒト単球中のhTNF−αmRNAを標的とした。テストしたsiRNAのペプチドに対するモル比は1:5、1:10、1:25、1:50、1:75、及び1:100であった。LC20、LC17共に20nMの濃度で使用した。
【0291】
ノックダウンの結果は、LC20/PN766及びLC17/PN766の両方のsiRNA/ペプチド複合体共に、1:5、1:10、及び1:25においてhTNF−αmRNAのレベルがsiRNAネガティブコントロールQnegの約70乃至80%まで低下した(すなわち、ネガティブコントロールQnegに比べてmRNAのレベルが20乃至30%低下)。siRNA/ペプチド比が1:50、1:75、及び1:100の場合は、コントロールQnegと比較してhTNF−αmRNAのレベルに有意の影響はなかった。PN766ペプチド存在下においてヒト単球に細胞毒性は見られなかった。
【0292】
実施例16
ペプチド媒介によるsiRNAの細胞取り込み活性
siRNAの細胞取り込み分析及びMFI測定を、実施例2及び3で既述のように行った。データを表22にまとめた。各ペプチドは、0.63μM、1.25μM、2.5μM、及び5μMの濃度でテストした。
【0293】
【表22】
【0294】
実施例17
ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチド
表23に示すポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを、マウス尾線維芽細胞(MTF)中へのsiRNA送達能についてスクリーニングした。
【0295】
【表23】
【0296】
siRNAと化合物化された表23に挙げたポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドのsiRNA細胞取り込み活性。各ポリペプチドのsiRNA細胞取り込み活性データ、平均蛍光強度(MFI)測定値、及び細胞生存率データを表24にまとめた。「処理」の列にグレーでハイライトしたものがsiRNA細胞取り込み率75%以上を達成したポリペプチドである。これらのハイライトした各siRNA/ペプチド複合体の具体的なsiRNA細胞取り込み率も、「siRNA細胞取り込み率(%)」の列中にグレーでハイライトされている。
【0297】
LC20はヒト腫瘍壊死因子α(hTNF−α)mRNAを標的とするsiRNAとして使用されるオリゴであり、以下のリボヌクレオチド配列で表される。
(配列番号96)
UAGGGUCGGAACCCAAGCUUA
【0298】
細胞によるsiRNAの取り込みはフローサイトメトリ(詳細は実施例2参照)によって評価した。取り込み率は、Cy5抱合siRNAを含有する細胞の数を培養液中のトランスフェクトされた細胞及びされていない細胞を合わせた全細胞数で割って計算したパーセントで表した。平均蛍光強度(MFI)はフローサイトメトリで測定し、これにより細胞内のCy5抱合siRNAを定量した。MFI値は細胞内のCy5抱合siRNAの量と正の相関関係があり、従って高いMFI値は細胞内のCy5抱合siRNAの数が多いことを示す。
【0299】
データによると、PN680、PN681、PN709、PN760、PN759、及びPN682が、siRNAと複合体化されると細胞内へsiRNAを送達する。表23に示したポリペプチドのスクリーニングの結果を表24に示す。
【0300】
【表24】
【0301】
表24の「siRNA細胞取り込み率(%)」の列に示すように、「未処理」ネガティブコントロールはsiRNAの細胞取り込みが見られず、一方ポジティブコントロールのペプチドは95%のsiRNA細胞取り込み活性を達成した。ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドのPN680、PN681、PN709、PN760、PN759、又はPN682と複合体化したsiRNAのCy5抱合LC20は、75%を超えるかそれ以上のsiRNA細胞取り込み活性を達成した。ポリペプチドPN694及びPN714は、それぞれ54%及び43%という中程度のsiRNA細胞取り込み活性を示した。ポリペプチドPN665及びPN734は、有意のsiRNA細胞取り込み活性を示さなかった(5%未満)。
【0302】
ポリペプチドはさらにそのsiRNAを細胞中へトランスフェクトする能力を、平均蛍光強度(MFI)を分析することによって評価した。細胞取り込み分析がCy5抱合siRNAを含む細胞のパーセントを定量したのに対し、MFI測定では細胞内へ進入したCy5抱合siRNAの相対平均量を定量した。表24の「Cy5抱合siRNAのMFI」の列に示すように、ポジティブコントロールペプチドPN643によるCy5抱合siRNAの送達では、約7単位のMFIが達成された。予想通り、「未処理」のネガティブコントロールでは測定可能なMFIを示さなかった。ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN665に対してはMFIの測定は行わなかった。PN743、PN694、及びPN714のMFI測定値はポジティブコントロールよりも著しく低かった。ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN680、PN709、及びPN682のMFI測定値はPN643のポジティブコントロールと同等であり、一方PN681のMFIはポジティブコントロールの2倍であった。PN760及びPN759のMFI測定値は、ポジティブコントロールと比べてそれぞれ約13倍及び6倍高かった。
【0303】
以下のプロトコルを用いて、表23に挙げたポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドをテストした。完全培地中でトランスフェクションを行う前日に、マウス尾線維芽細胞(MTF)を24ウェルプレートの各ウェルに約80,000個ずつ播種した。ポジティブコントロールを除く各送達ペプチドを、0.5μMのCy5抱合siRNAの存在下で、0.63μM、2.5μM、10μM、及び40μMの濃度でテストした。siRNA/ペプチド複合体については、Cy5抱合siRNAとペプチドを別々にOpti−MEM(登録商標)培地(Invitrogen社)により、最終濃度の2倍まで希釈した。等容量のsiRNAとペプチドを混合し、室温で5分間複合体化させた。このsiRNA/ペプチド複合体をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄済みの細胞へ添加した。細胞は37℃、5%CO2下で3時間トランスフェクトさせた。細胞をPBSで洗浄し、トリプシンで処理後フローサイトメトリで分析した。siRNAの細胞取り込み量は細胞内のCy5の蛍光強度により測定した。細胞生存率は、ヨウ化プロピジウム取り込み又はアネキシンV−PE(BD Biosciences社)染色法を用いて測定した。標識siRNA(又は蛍光標識ペプチド)の細胞による取り込みを膜挿入と区別するため、トリパンブルーを用いて細胞膜表面の蛍光を消光した。トリパンブルー(Sigma社)を最終濃度0.04%となるように細胞に添加して再度フローサイトメトリにかけ、蛍光が細胞膜に集中していることを示唆する蛍光強度の変化が見られるかどうかを調べた。
【0304】
実施例18
ポリペプチドを有するsiRNAのノックダウン活性
ヒト腫瘍壊死因子α(hTNF−α)遺伝子の発現を調節するsiRNA/ペプチド化合物の能力を評価した。
【0305】
ヒト単球をモデルシステムとして用い、siRNA/ペプチド化合物のhTNF−α遺伝子発現に対する影響を測定した。QnegはランダムsiRNA配列を表し、ネガティブコントロールとして機能した。観察されたQnegによるノックダウン活性を100%(遺伝子発現レベル100%)の基準とし、以下の各siRNA、A19S21 MD8、21/21 MD8、及びLC20のノックダウン活性はこのネガティブコントロールに対する相対パーセントで表した。A19S21 MD8、21/21 MD8、及びLC20はhTNF−αmRNAを標的とするsiRNAである。
【0306】
ポリペプチドPN602は前述の実施例において使用されたポジティブコントロールをアセチル化したものであり、この例においては、siRNAのヒト単球への有効な送達及びsiRNAの媒介によるhTNF−αmRNAレベルの許容ノックダウン活性の両方についてのポジティブコントロールとして使用した。
【0307】
データが示すのは、ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN680がsiRNAを細胞内へ送達し、siRNA媒介による有効なジーンサイレンシングを可能とすることである。PN602、PN680、及びPN681のノックダウン活性を表25に示す。「+」のマークは、ペプチド/siRNA複合体がQnegのネガティブコントロールsiRNAに対して80%のノックダウン活性(Qnegネガティブコントロールと比較してmRNAレベルが20%低下)を有していたことを意味する。「+/−」は、ペプチド/siRNA複合体がQnegのネガティブコントロールsiRNAに対して約90%のノックダウン活性(Qnegネガティブコントロールと比較してmRNAレベルが10%低下)を有していたことを意味する。最後に「−」は、ペプチド/siRNA化合物がQnegネガティブコントロールと比較して有意なノックダウン活性を有していなかったことを意味する。
【0308】
【表25】
【0309】
表25の結果は、ポジティブコントロールであるポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN602と1:5及び1:10の比率で複合体化された三種類のsiRNAはすべて、同じポリペプチドと複合体化されたQnegネガティブコントロールと比較してhTNF−α遺伝子発現のレベルを中程度に低下させたことを示している。しかし、ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN681と1:5及び1:10の比率で複合体化された同じsiRNAは、QnegネガティブコントロールであるsiRNA/PN681複合体と比べてほとんど乃至全くノックダウン活性を示さなかった。対照的に、hTNF−αに特異的なsiRNAのいずれかと1:5の比率で複合体化されたポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドPN680は、Qneg/PN680コントロール複合体と比べて有意なhTNF−αmRNAのノックダウン活性を示した。さらに、1:10の比率のLC20/PN680複合体も、Qneg/PN680コントロール複合体と比べて有意なノックダウン活性を示した。
【0310】
健康なヒトの血液をGolden West Biologicals社(カリフォルニア州)から購入し、Ficoll−Pague Plus(Amersham社)の勾配を用いて末梢血液単核細胞(PBMC)を血液から分離した。次にMiltenyi Biotech社の磁気マイクロビーズを用い、ヒト単球をPBMC分画から分離した。単離したヒト単球は、4mMのグルタミン、10%FBS、1×非必須アミノ酸、及び1×ペニシリン−ストレプトマイシン(添加したIMDM中に再懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0311】
96ウェル平底プレートを使い、OptiMEM培地(Invitrogen社)中にヒト単球を100000個/ウェル/100μlで播種した。ポリヌクレオチド送達促進ポリペプチドを、20nMのsiRNAとモル比1:5又は1:10にてOptiMEM培地中室温で5分間混合した。このインキュベーションの最後にFBSをこの混合物へ添加し(終濃度3%)、この混合物50μlを細胞へ添加した。細胞は37℃で3時間温置した。温置の後、細胞をV底プレートへ移し、1500rpmで5分間かけてペレット化した。細胞を増殖培地(グルタミン、非必須アミノ酸、及びペニシリン−ストレプトマイシンを含むIMDM)中へ再懸濁した。一晩のインキュベーションの後、単球に1ng/mlのLPS(Sigma社)を適用して3時間刺激し、TNF−α発現レベルを増加させた。LPSの導入後、mRNA定量のために細胞を上述のように回収し、上清はタンパク質定量が必要な場合は保存した。
【0312】
mRNAの測定は、Genospectra社(カリフォルニア州)の分岐DNA技術を用いて製造元の説明書に従って行った。細胞中のmRNAレベルを定量するために、ハウスキーピング遺伝子(cypB)及び標的遺伝子(TNF−α)mRNAの両方を測定し、TNF−αの読み取りをcypBに対して標準化して相対発光単位を得た。
【図面の簡単な説明】
【0313】
【図1】様々なsiRNA G1498濃度及び窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における3本の棒グラフにおいて、G1498濃度は左から100μg/ml、50μg/ml、及び10μg/mlであった。N/P比0.2及び0.5において、G1498濃度が10μg/mlの時の粒子は非常に小さかった。
【図2】様々な窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はボルテックス撹拌あり、右はボルテックス撹拌なしであった。データは混合後直ちに取得した。
【図3】様々な窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はボルテックス撹拌あり、右はボルテックス撹拌なしであった。データは混合後30分経過後に取得した。
【図4】様々な窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はボルテックス撹拌あり、右はボルテックス撹拌なしであった。データは混合後60分経過後に取得した。
【図5】様々な窒素/リン比(N/P)におけるsiRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はボルテックス撹拌あり、右はボルテックス撹拌なしであった。データは混合後24時間経過後に取得した。
【図6】siRNA G1498濃度100μg/mlにおける、様々なpH値に対するG1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。
【図7】塩化ナトリウム濃度を増加させた時の、siRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。
【図8】様々なN/P比及び成分添加の順番における、siRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子径を示す図である。各N/P比における2本の棒グラフにおいて、左はsiRNAを先に加えて得られたもの、右はペプチドを先に加えて得られたものであった。
【図9】siRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子の透過電子顕微鏡写真である。長さの指標記号は200nmを表す。
【図10】siRNA G1498とペプチドPN183との縮合体粒子の透過電子顕微鏡写真である。長さの指標記号は200nmを表す。
【図11】siRNA Inm−4とペプチドPN183及びPN939との縮合体粒子を含む組成物の鼻腔内投与による、モデルマウスにおけるLPS刺激によるTFN−α発現(pg/ml)のノックダウンアッセイの結果を示す図である。一番左の棒グラフが緩衝液による対照実験、次がInm−4/PN183/PN939縮合体のデータ、その右がグルタルアルデヒド(G)で架橋したInm−4/PN183/PN939縮合体のデータである。プラセボはsiRNAを含んでおらず、Qnegは不活性siRNAを含む。
【図12】Lac−z siRNAとペプチドPN183及び異なる第二のペプチドとの縮合体を用いた、ラット膠肉腫線維芽細胞9L/LacZにおけるlac−z発現のインビトロノックダウンアッセイの結果を示す図である。一番左の棒グラフがHiPerFect(商標)(Qiagen社、カリフォルニア州、バレンシア)を用いた比較データであり、それに続くのが本発明の様々な化合物によるデータである。N/P比は、PN183が0.75、第二のペプチドが0.3であった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合粒子を含む化合物であって、各粒子が1又はそれ以上の短鎖干渉RNA(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを具え、該粒子の直径が1000nm未満であり、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えることを特徴とする化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が0.5乃至400nmであることを特徴とする化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が10乃至300nmであることを特徴とする化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が40乃至100nmであることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドが前記粒子の質量の5乃至99%であることを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドが前記粒子の質量の5乃至50%であることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドが前記粒子の質量の50乃至99%であることを特徴とする化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物において、少なくとも30%の前記粒子が1000nm未満の直径を有することを特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物において、少なくとも30%の前記粒子が400nm未満の直径を有することを特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物において、前記粒子が少なくとも20mVの大きさのゼータ電位を有することを特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物において、前記粒子が少なくとも30mVの大きさのゼータ電位を有することを特徴とする化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が10乃至300nmであり、前記siRNAがインフルエンザウィルスを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が10乃至300nmであり、前記siRNAがヒトTNF−αを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物において、前記粒子が架橋されていることを特徴とする化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物において、前記粒子が噴霧乾燥によって調製されることを特徴とする化合物。
【請求項16】
1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを提供するステップであって、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を含むステップと、
水性溶液中で前記siRNAを前記ペプチドと縮合させて直径1000nm未満の粒子を形成するステップと、
を具える方法によって生成される化合物。
【請求項17】
請求項16に記載の化合物において、各ペプチドの電荷比N/Pが0.2乃至50であることを特徴とする化合物。
【請求項18】
請求項16に記載の化合物において、各ペプチドの電荷比N/Pが0.5乃至20であることを特徴とする化合物。
【請求項19】
請求項16に記載の化合物において、各ペプチドの電荷比N/Pが0.5乃至7であることを特徴とする化合物。
【請求項20】
請求項16に記載の化合物において、各ペプチドの電荷比N/Pが0.5乃至2.5であることを特徴とする化合物。
【請求項21】
請求項16に記載の化合物において、前記直径が10乃至300nmであり、前記siRNAがインフルエンザを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項22】
請求項16に記載の化合物において、前記粒子が少なくとも20mVの大きさのゼータ電位を有することを特徴とする化合物。
【請求項23】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液が、11にほぼ等しいか又は11未満のpHを有することを特徴とする化合物。
【請求項24】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液が、9にほぼ等しいか又は9未満のpHを有することを特徴とする化合物。
【請求項25】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液が、約7.4のpHを有することを特徴とする化合物。
【請求項26】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液がボルテックス撹拌されることを特徴とする化合物。
【請求項27】
請求項16に記載の化合物において、前記ペプチドを前記siRNA分子の水性溶液へ添加することによって前記縮合工程が行われることを特徴とする化合物。
【請求項28】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液が塩を含むことを特徴とする化合物。
【請求項29】
請求項28に記載の化合物において、前記水性溶液が約1M未満又は約1Mに等しい濃度の塩化ナトリウムを有することを特徴とする化合物。
【請求項30】
請求項28に記載の化合物において、前記水性溶液が約0.5M未満又は約0.5Mに等しい濃度の塩化ナトリウムを有することを特徴とする化合物。
【請求項31】
請求項28に記載の化合物において、前記水性溶液が約0.25M未満又は約0.25Mに等しい濃度の塩化ナトリウムを有することを特徴とする化合物。
【請求項32】
請求項1に記載の化合物において、前記siRNAがインフルエンザを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項33】
請求項1に記載の化合物において、前記siRNAがTNF−αを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項34】
請求項1に記載の化合物において、前記siRNAが、配列番号62及び63のG1498、配列番号60及び61のG8286、配列番号58及び59のG8282、配列番号56及び57のG6129、配列番号54及び55のG6124、配列番号52及び53のG3817、配列番号50及び51のG3807、配列番号48及び49のG3789、並びにこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする化合物。
【請求項35】
請求項1に記載の化合物において、前記リボ核酸剤が配列番号62及び63のG1498であることを特徴とする化合物。
【請求項36】
請求項1に記載の化合物において、前記化合物が、siRNA単独の場合と比較してインフルエンザウィルスの増殖を2分の1に低下させることを特徴とする化合物。
【請求項37】
請求項1に記載の化合物において、各ペプチドが120kDa未満の質量を有することを特徴とする化合物。
【請求項38】
請求項1に記載の化合物において、各ペプチドが60kDa未満の質量を有することを特徴とする化合物。
【請求項39】
請求項1に記載の化合物において、各ペプチドが30kDa未満の質量を有することを特徴とする化合物。
【請求項40】
請求項1に記載の化合物において、pH7.4におけるペプチドの正電荷数が1乃至100であることを特徴とする化合物。
【請求項41】
請求項1に記載の化合物において、pH7.4におけるペプチドの正電荷数が5乃至30であることを特徴とする化合物。
【請求項42】
請求項1に記載の化合物において、pH7.4におけるペプチドの正電荷数が9乃至15であることを特徴とする化合物。
【請求項43】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドの少なくとも一つがタンパク質導入ドメインを具えることを特徴とする化合物。
【請求項44】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドの少なくとも一つが粘膜透過修飾因子であることを特徴とする化合物。
【請求項45】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドの少なくとも一つがPEG化されていることを特徴とする化合物。
【請求項46】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドのうち少なくとも一つが、配列番号28のPN183、配列番号37のPN826、配列番号38のPN861、配列番号39のPN924、配列番号34のPN939、及びこれらの変異体から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項47】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドの少なくとも一つが配列番号28のPN183であることを特徴とする化合物。
【請求項48】
化合物の生成方法において、1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを提供するステップであって、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えるステップと、
水性溶液中で前記dsRNAを前記ペプチドと縮合させて直径が1000nm未満の粒子を形成するステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法において、前記粒子が架橋されていることを特徴とする方法。
【請求項50】
化合物の生成方法において、
(a)1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを提供するステップであって、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えるステップと、
(b)水性溶液中に前記siRNAを溶解させるステップと、
(c)前記ペプチドを前記水性溶液へ添加して直径が1000nm未満の粒子を縮合させるステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項51】
化合物の生成方法において、
(a)1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを提供するステップであって、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えるステップと、
(b)水性溶液中に前記ペプチドを溶解させるステップと、
(c)前記siRNAを前記水性溶液へ添加して直径が1000nm未満の粒子を縮合させるステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項1乃至47のいずれか1項に記載の化合物と担持体を具えることを特徴とする医薬組成物。
【請求項53】
請求項1乃至47のいずれか1項に記載の化合物を具える治療上有効な量の医薬組成物を必要な対象に投与するステップを具え、前記siRNAがインフルエンザを標的とすることを特徴とするインフルエンザの治療方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法において、前記siRNAが配列番号62及び63のG1498であることを特徴とする方法。
【請求項55】
インフルエンザ及び関節リウマチを含むヒトの疾患又は状態の兆候並びに症状を治療するための薬物としての請求項1乃至47のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項56】
インフルエンザ及び関節リウマチを含むヒトの疾患又は状態の兆候並びに症状を治療するための薬物の製造における請求項1乃至47のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項57】
直径1000nm未満の縮合粒子を具える化合物の使用において、該粒子が、インフルエンザ及び関節リウマチを含む、ヒトの疾患又は状態の兆候及び症状を治療するための薬物の製造において、1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを具え、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えることを特徴とする化合物の使用。
【請求項58】
請求項57に記載の使用において、前記直径が10乃至300nmであり、前記siRNAがインフルエンザウィルスを標的とすることを特徴とする化合物の使用。
【請求項1】
縮合粒子を含む化合物であって、各粒子が1又はそれ以上の短鎖干渉RNA(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを具え、該粒子の直径が1000nm未満であり、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えることを特徴とする化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が0.5乃至400nmであることを特徴とする化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が10乃至300nmであることを特徴とする化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が40乃至100nmであることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドが前記粒子の質量の5乃至99%であることを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドが前記粒子の質量の5乃至50%であることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドが前記粒子の質量の50乃至99%であることを特徴とする化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物において、少なくとも30%の前記粒子が1000nm未満の直径を有することを特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物において、少なくとも30%の前記粒子が400nm未満の直径を有することを特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物において、前記粒子が少なくとも20mVの大きさのゼータ電位を有することを特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物において、前記粒子が少なくとも30mVの大きさのゼータ電位を有することを特徴とする化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が10乃至300nmであり、前記siRNAがインフルエンザウィルスを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物において、前記直径が10乃至300nmであり、前記siRNAがヒトTNF−αを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物において、前記粒子が架橋されていることを特徴とする化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物において、前記粒子が噴霧乾燥によって調製されることを特徴とする化合物。
【請求項16】
1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを提供するステップであって、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を含むステップと、
水性溶液中で前記siRNAを前記ペプチドと縮合させて直径1000nm未満の粒子を形成するステップと、
を具える方法によって生成される化合物。
【請求項17】
請求項16に記載の化合物において、各ペプチドの電荷比N/Pが0.2乃至50であることを特徴とする化合物。
【請求項18】
請求項16に記載の化合物において、各ペプチドの電荷比N/Pが0.5乃至20であることを特徴とする化合物。
【請求項19】
請求項16に記載の化合物において、各ペプチドの電荷比N/Pが0.5乃至7であることを特徴とする化合物。
【請求項20】
請求項16に記載の化合物において、各ペプチドの電荷比N/Pが0.5乃至2.5であることを特徴とする化合物。
【請求項21】
請求項16に記載の化合物において、前記直径が10乃至300nmであり、前記siRNAがインフルエンザを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項22】
請求項16に記載の化合物において、前記粒子が少なくとも20mVの大きさのゼータ電位を有することを特徴とする化合物。
【請求項23】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液が、11にほぼ等しいか又は11未満のpHを有することを特徴とする化合物。
【請求項24】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液が、9にほぼ等しいか又は9未満のpHを有することを特徴とする化合物。
【請求項25】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液が、約7.4のpHを有することを特徴とする化合物。
【請求項26】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液がボルテックス撹拌されることを特徴とする化合物。
【請求項27】
請求項16に記載の化合物において、前記ペプチドを前記siRNA分子の水性溶液へ添加することによって前記縮合工程が行われることを特徴とする化合物。
【請求項28】
請求項16に記載の化合物において、前記水性溶液が塩を含むことを特徴とする化合物。
【請求項29】
請求項28に記載の化合物において、前記水性溶液が約1M未満又は約1Mに等しい濃度の塩化ナトリウムを有することを特徴とする化合物。
【請求項30】
請求項28に記載の化合物において、前記水性溶液が約0.5M未満又は約0.5Mに等しい濃度の塩化ナトリウムを有することを特徴とする化合物。
【請求項31】
請求項28に記載の化合物において、前記水性溶液が約0.25M未満又は約0.25Mに等しい濃度の塩化ナトリウムを有することを特徴とする化合物。
【請求項32】
請求項1に記載の化合物において、前記siRNAがインフルエンザを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項33】
請求項1に記載の化合物において、前記siRNAがTNF−αを標的とすることを特徴とする化合物。
【請求項34】
請求項1に記載の化合物において、前記siRNAが、配列番号62及び63のG1498、配列番号60及び61のG8286、配列番号58及び59のG8282、配列番号56及び57のG6129、配列番号54及び55のG6124、配列番号52及び53のG3817、配列番号50及び51のG3807、配列番号48及び49のG3789、並びにこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする化合物。
【請求項35】
請求項1に記載の化合物において、前記リボ核酸剤が配列番号62及び63のG1498であることを特徴とする化合物。
【請求項36】
請求項1に記載の化合物において、前記化合物が、siRNA単独の場合と比較してインフルエンザウィルスの増殖を2分の1に低下させることを特徴とする化合物。
【請求項37】
請求項1に記載の化合物において、各ペプチドが120kDa未満の質量を有することを特徴とする化合物。
【請求項38】
請求項1に記載の化合物において、各ペプチドが60kDa未満の質量を有することを特徴とする化合物。
【請求項39】
請求項1に記載の化合物において、各ペプチドが30kDa未満の質量を有することを特徴とする化合物。
【請求項40】
請求項1に記載の化合物において、pH7.4におけるペプチドの正電荷数が1乃至100であることを特徴とする化合物。
【請求項41】
請求項1に記載の化合物において、pH7.4におけるペプチドの正電荷数が5乃至30であることを特徴とする化合物。
【請求項42】
請求項1に記載の化合物において、pH7.4におけるペプチドの正電荷数が9乃至15であることを特徴とする化合物。
【請求項43】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドの少なくとも一つがタンパク質導入ドメインを具えることを特徴とする化合物。
【請求項44】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドの少なくとも一つが粘膜透過修飾因子であることを特徴とする化合物。
【請求項45】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドの少なくとも一つがPEG化されていることを特徴とする化合物。
【請求項46】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドのうち少なくとも一つが、配列番号28のPN183、配列番号37のPN826、配列番号38のPN861、配列番号39のPN924、配列番号34のPN939、及びこれらの変異体から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項47】
請求項1に記載の化合物において、前記ペプチドの少なくとも一つが配列番号28のPN183であることを特徴とする化合物。
【請求項48】
化合物の生成方法において、1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを提供するステップであって、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えるステップと、
水性溶液中で前記dsRNAを前記ペプチドと縮合させて直径が1000nm未満の粒子を形成するステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法において、前記粒子が架橋されていることを特徴とする方法。
【請求項50】
化合物の生成方法において、
(a)1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを提供するステップであって、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えるステップと、
(b)水性溶液中に前記siRNAを溶解させるステップと、
(c)前記ペプチドを前記水性溶液へ添加して直径が1000nm未満の粒子を縮合させるステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項51】
化合物の生成方法において、
(a)1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを提供するステップであって、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えるステップと、
(b)水性溶液中に前記ペプチドを溶解させるステップと、
(c)前記siRNAを前記水性溶液へ添加して直径が1000nm未満の粒子を縮合させるステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項1乃至47のいずれか1項に記載の化合物と担持体を具えることを特徴とする医薬組成物。
【請求項53】
請求項1乃至47のいずれか1項に記載の化合物を具える治療上有効な量の医薬組成物を必要な対象に投与するステップを具え、前記siRNAがインフルエンザを標的とすることを特徴とするインフルエンザの治療方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法において、前記siRNAが配列番号62及び63のG1498であることを特徴とする方法。
【請求項55】
インフルエンザ及び関節リウマチを含むヒトの疾患又は状態の兆候並びに症状を治療するための薬物としての請求項1乃至47のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項56】
インフルエンザ及び関節リウマチを含むヒトの疾患又は状態の兆候並びに症状を治療するための薬物の製造における請求項1乃至47のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項57】
直径1000nm未満の縮合粒子を具える化合物の使用において、該粒子が、インフルエンザ及び関節リウマチを含む、ヒトの疾患又は状態の兆候及び症状を治療するための薬物の製造において、1又はそれ以上の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)及び1又はそれ以上のペプチドを具え、各ペプチドが配列番号28乃至37、42乃至43、及び67乃至95から選択される配列を具えることを特徴とする化合物の使用。
【請求項58】
請求項57に記載の使用において、前記直径が10乃至300nmであり、前記siRNAがインフルエンザウィルスを標的とすることを特徴とする化合物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−511600(P2009−511600A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535735(P2008−535735)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/040174
【国際公開番号】WO2007/047482
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(507328184)エムディーアールエヌエー,インコーポレイテッド (29)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/040174
【国際公開番号】WO2007/047482
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(507328184)エムディーアールエヌエー,インコーポレイテッド (29)
【Fターム(参考)】
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