RTM成形装置及びRTM成形方法、並びに半成形体
【課題】大型部材及び厚板部材に対しても未含浸や繊維の蛇行等を引き起こさずに樹脂を含浸させることができ、高靭性且つ高精度な成形体を得ることのできるRTM成形装置及びRTM成形方法を提供することを目的とする。
【解決手段】RTM成形装置100は、繊維強化基材11と成形型1との間に配置され、貫通孔7が複数形成され、且つ、キャビティ内を減圧したときのキャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層4と、表面成形層4の繊維強化基材11と反対の側に位置し、表面成形層4の複数の貫通孔7と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部5と、を繊維強化基材11の少なくとも一方の面側に備える。
【解決手段】RTM成形装置100は、繊維強化基材11と成形型1との間に配置され、貫通孔7が複数形成され、且つ、キャビティ内を減圧したときのキャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層4と、表面成形層4の繊維強化基材11と反対の側に位置し、表面成形層4の複数の貫通孔7と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部5と、を繊維強化基材11の少なくとも一方の面側に備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化基材に樹脂を含浸させてRTM成形するためのRTM成形装置及びRTM成形方法、並びに半成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)等の複合材は、軽量かつ高強度であるため、航空機、自動車、船舶等の構造部材として広く用いられている。複合材の成形方法の一つとして、RTM(Resin Transfer Molding)成形法がある。RTM成形法は、雌、雄一対の成形金型内に繊維強化基材を配置し、型を閉締した後、減圧された金型内へ樹脂注入口より樹脂を注入することで繊維強化基材に樹脂を含浸させて成形する方法である。
一般的なRTM成形方法では、図9に示すように、樹脂は、端部に設けられた樹脂注入ライン2から注入され、強化繊維基板11内を面方向に流動して、逆端部に設けられた吸引ライン3から排出される。RTM成形方法では、繊維強化基材の中を樹脂が流動するため、樹脂の低粘度・高流動性は不可欠な特性となる。
【0003】
RTM法は、非常に高い形状精度で成形できるという利点がある。しかしながら、上記RTM成形法では、繊維強化基材の端部から逆端部に向けて樹脂を含浸させるため、部材が大型化・厚板化すると、樹脂含浸に多大な時間を要するようになるとともに、未含浸領域が発生するなどの問題が生じる場合がある。含浸時間の短縮を目的として、樹脂の注入速度を速めるため注入圧力を上げると、圧損が大きくなり、繊維の蛇行を引き起こす恐れがある。
【0004】
上記課題を解決するために、図10及び図11に示すような板厚方向へ樹脂を含浸させる方法が提案されている。図10は、上型に複数の注入口を配置して、樹脂を繊維強化基材に供給し、繊維強化基材の板厚方向に向けて含浸させる方法である。図11は、繊維強化基材の上に多孔板41と中間部材40とを載置し、繊維強化基材の略全面から板厚方向に向けて含浸させる方法である。中間部材40としては、樹脂製の孔あきフィルムなどが用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10のように複数の注入口を配置する方法では、注入口の設置箇所の最適化に多大な労力を要し、さらなる大型部材・厚板部材への対応に問題がある。また、一般に金型は、離型後に清掃して繰り返し使用されるが、注入口が複数設けられることで、清掃に手間がかかるようになる。
【0006】
図11のように中間部材40を載置する方法では、中間部材40に剛性がないため、金型内を真空環境としたときに中間部材40が変形してダンパーとして作用し、成形品の寸法(板厚)精度を確保できなくなるという問題がある。
【0007】
また、航空機などの構造部材では、高い靭性が要求される。一般に、樹脂粘度と成形体の靭性とは相反すると言われている。すなわち、分子量を小さくするなどして樹脂の粘度を下げて繊維強化基材に含浸させ、成形した成形体の靭性は、分子量の大きな粘度の高い樹脂を用いた場合と比べて低くなる。そのため、樹脂は高粘度で繊維強化基材に含浸させることが望ましい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、大型部材及び厚板部材に対しても未含浸や繊維の蛇行等を引き起こさずに樹脂を含浸させることができ、高靭性且つ高精度な成形体を得ることのできるRTM成形装置及びRTM成形方法を提供するとともに、上記RTM成形装置に適用可能な半成形体を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、内部にキャビティが形成された成形型と、前記キャビティに連通する樹脂注入ライン及び吸引ラインと、を備え、前記キャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入して前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するよう構成されたRTM成形装置であって、前記繊維強化基材と前記成形型との間に配置され、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層と、前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に位置し、前記表面成形層の複数の貫通孔と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部と、を前記繊維強化基材の少なくとも一方の面側に備えるRTM成形装置を提供する。
【0010】
上記発明の一態様において、前記表面成形層の前記貫通孔の径が、前記キャビティ内を減圧したときの圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とされることが好ましい。
【0011】
上記発明の一態様において、前記繊維強化基材の樹脂が注入される側または樹脂が排出される側の少なくとも一方の面に前記樹脂拡散部を備え、前記樹脂拡散部が前記繊維強化基材の樹脂が注入される側に設けられる場合、前記樹脂流路が前記樹脂注入ラインと連通し、前記樹脂拡散部が前記繊維強化基材の樹脂が排出される側に設けられる場合、前記樹脂流路が前記吸引ラインと連通することが好ましい。
【0012】
上記構成の樹脂拡散部を備えることで、キャビティ内に注入した樹脂を素早く面方向に拡散できる空隙領域を保持することができる。それによって、繊維強化基材の全面から樹脂を供給して板厚方向に向けて含浸させることが可能となる。また、表面成形層及び樹脂拡散部を、繊維強化基材の樹脂排出側に備えることで、繊維強化基材の全面から樹脂を排出することが可能となる。それにより、より短時間で、より均等に、且つ、繊維を蛇行させることなく繊維強化基材に樹脂組成物を含浸させることが可能となる。
【0013】
繊維強化基材に接する表面成形層は、孔形状が繊維強化基材へと転写されない大きさで形成されているため、成形体の表面を凹凸のない面とすることができる。表面成形層は、樹脂注入時のキャビティ内の圧力下においても厚さが実質的に変化しない剛性を有する。それによって、繊維強化基材へ樹脂を含浸させる工程において、剛性多孔部材がダンパーとして作用することがないため、成形体の高い板厚精度を確保することができる。「実質的に厚さが変化しない」とは、成形体としたときに要求される寸法精度で許容される範囲の厚さ変化を含むことを意味する。例えば、航空機の一次構成部材では±0.1mm以下程度の寸法精度が要求される場合がある。
【0014】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部が、前記繊維強化基材側に隣接する層に形成された貫通孔よりも大きな径を有する貫通孔が複数形成され、且つ、前記圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する、前記表面成形層と前記成形型との間に配置される少なくとも1の樹脂拡散層からなり、各層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と連通して樹脂流路を形成しても良い。
【0015】
樹脂拡散部を樹脂拡散層とすることで、成形型に加工することなく、より短時間で、より均等に、且つ、繊維を蛇行させることなく繊維強化基材に樹脂組成物を含浸させることが可能となる。
樹脂拡散層は、樹脂注入時のキャビティ内の圧力下においても厚さが実質的に変化しない剛性を有する。それによって、繊維強化基材へ樹脂を含浸させる工程において、剛性多孔部材がダンパーとして作用することがないため、成形体の高い板厚精度を確保することができる。
樹脂拡散層は繊維強化基材側に位置する層に形成された貫通孔よりも大きく形成されているため、注入された樹脂は、素早く拡散される。
樹脂拡散層に形成された孔の大きさは、表面成形層側に向けて段階的に小さくなるため、一の層が他の層の孔に落ち込むことを防止することができる。
【0016】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散層が、パンチングメタルからなる多孔板であることが好ましい。また、上記発明の一態様において、前記表面成形層が、パンチングメタルからなる多孔板であることが好ましい。
【0017】
パンチングメタルは、孔あきフィルムなどよりも安価であるため、使い捨てとすることが可能である。それによって、離型後の成形型の清掃が容易となる。また、パンチングメタルは、孔あきフィルムなどよりも剛性が高く、キャビティ内での圧力下においても厚さが実質的に変化することはない。
【0018】
上記発明の一態様において、前記表面成形層に形成された貫通孔の径が0.3mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0019】
孔径は、0.3mm以上2mm以下、好ましくは0.5mm以上1mm以下とすること良い。孔径を大きくしすぎると、条件によっては繊維の剛性が負けてたわんでしまい、成形体表面に孔形状が転写されてしまう恐れがある。孔径を小さくしすぎると、条件によっては、樹脂組成物が流れ難くなる可能性がある。
【0020】
上記発明の一態様において、前記表面成形層及び前記樹脂拡散層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と異なる形状で形成されることが好ましい。また、上記発明の一態様において、前記表面成形層及び前記樹脂拡散層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と位相をずらして配置されることが好ましい。
【0021】
そうすることで、各層を積層させたときに、隣接する層にそれぞれ形成された孔同士が完全に重なることがなくなるため、樹脂経路をより確実に形成することが可能となる。
【0022】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部が、成形型の前記繊維強化基材側の面に形成された溝を含み、該溝が、前記樹脂注入ライン及び隣接する層の貫通孔と連通して樹脂流路を形成しても良い。また、上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部が、成形型の前記繊維強化基材側の面に形成された溝を含み、該溝が、前記吸引ライン及び隣接する層の貫通孔と連通して樹脂流路を形成しても良い。
【0023】
上記構成とすることで、溝が樹脂流路となり、面方向への樹脂の拡散をサポートすることができる。離型後の清掃を考慮すると、溝はV字形状とされることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、成形型の内部に形成されたキャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入し、前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するRTM成形方法であって、前記キャビティに配置した繊維強化基材上に、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層を配置する工程と、前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に、樹脂経路を含む樹脂拡散部を、前記樹脂経路が前記表面成形層の貫通孔と連通するよう設ける工程と、を備えるRTM成形方法を提供する。
【0025】
上記発明の一態様において、前記表面成形層の前記貫通孔の径を、前記キャビティ内を減圧したときの圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とすることが好ましい。
【0026】
上記発明によれば、樹脂拡散部及びキャビティ内の圧力下で変形しない剛性を有する表面成形層を樹脂供給側に設けた場合、樹脂組成物を拡散させることで、繊維強化基材の略全面から樹脂組成物を供給し、板厚方向に含浸させることが可能となる。これによって、未含浸領域や繊維の蛇行を生じさせることなく、より短時間で高品質の成形体を成形することができる。また、タフ化を向上させた高粘度の樹脂組成物を適用することができるため、靭性の高い成形体を成形することもできる。
【0027】
樹脂拡散部及び表面成形層を樹脂排出側に設けた場合、繊維強化基材の略全面から樹脂組成物を排出することが可能となる。そうすることで、より短時間で、より均等に、且つ、繊維を蛇行させることなく繊維強化基材に樹脂組成物を含浸させることが可能となる。
【0028】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、前記樹脂拡散部として、前記繊維強化基材側に隣接する層に形成された貫通孔よりも大きな径を有する貫通孔が複数形成され、且つ、前記圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する少なくとも1の樹脂拡散層を、前記表面成形層と前記成形型との間に、各層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と連通して樹脂流路を形成するよう配設しても良い。
【0029】
樹脂拡散部を樹脂拡散層とすることで、成形型に加工することなく、樹脂をより短時間で、より均等に、且つ、繊維を蛇行させることなく繊維強化基材に樹脂組成物を含浸させることが可能となる。
【0030】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散層を、パンチングメタルからなる多孔板とすることが好ましい。また、上記発明の一態様において、前記表面成形層を、パンチングメタルからなる多孔板とすることが好ましい。
パンチングメタルを用いることで、低コストで容易に寸法精度の高い成形体を成形することができる。
【0031】
上記発明の一態様において、前記表面成形層に形成された貫通孔の径を0.3mm以上2mm以下とすることが好ましい。
孔径は、0.3mm以上2mm以下、好ましくは0.5mm以上1mm以下とすること良い。そのようにすることで、より確実に成形体に孔形状が転写されないようにすることができる。
【0032】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部を設ける工程において、互いに異なる形状の貫通孔が形成された層を、隣接させて配置することが好ましい。また、上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部を設ける工程において、異なる位相で複数の貫通孔が形成された層同士を隣接させて配置するが好ましい。
そうすることで、各層を積層させたときに、隣接する層にそれぞれ形成された孔同士が完全に重なることがなくなるため、樹脂経路をより確実に形成することが可能となる。
【0033】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部を設ける工程において、成形型の前記繊維強化基材側の面に、前記樹脂注入ライン及び隣接する層の貫通孔と連通する溝を形成しても良い。また、上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部を設ける工程において、成形型の前記繊維強化基材側の面に、前記吸引ライン及び隣接する層の貫通孔と連通する溝を形成しても良い。
そのようにすることで、溝が樹脂流路となり、面方向への樹脂の拡散をサポートすることができる。離型後の清掃を考慮すると、溝をV字形状で形成すると良い。
【0034】
また、本発明は、内部にキャビティが形成された成形型と、前記キャビティに連通する樹脂注入ライン及び吸引ラインと、を備え、前記キャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入して前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するよう構成されたRTM成形装置に適用される半成形体であって、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層と、前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に配置された、前記表面成形層の複数の貫通孔と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部とを、前記繊維強化基材の片面または両面に備える半成形体を提供する。
【0035】
上記発明の一態様において、前記表面成形層の前記貫通孔の径が、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とされることが好ましい。
【0036】
上記発明によれば、繊維強化基材は剛性を有する部材に載置されているため、輸送時に変形や損傷することを防止できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、表面成形層及び樹脂拡散部で樹脂組成物を拡散させて繊維強化基材の略全面から供給または排出し、板厚方向に含浸させることで、大型部材や厚板部材に対しても未含浸や繊維の蛇行等を引き起こさずに、短時間で高い寸法精度の成形体を成形することが可能となる。また、タフ化を向上させた高粘度の樹脂を適用することも可能となるため、高靭性の構造部材を成形することができる。このように成形された成形体は、航空機の一次部材への適用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態に係るRTM成形装置の断面図である。
【図2】パンチングメタルの一例を示す上面図である。
【図3】パンチングメタルの一例を示す上面図である。
【図4】パンチングメタルの一例を示す上面図である。
【図5】樹脂の流れを説明する断面図である。
【図6】C型構造部材の一例を示す図である。
【図7】第2実施形態に係るRTM成形装置の断面図である。
【図8】従来のRTM成形装置の断面図である。
【図9】従来のRTM成形装置の断面図である。
【図10】従来のRTM成形装置の断面図である。
【図11】従来のRTM成形装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1実施形態〕
本実施形態では、平板型構造部材を成形するRTM成形装置及びRTM成形方法について説明する。
図1に、本実施形態に係るRTM成形装置100の断面図を示す。本実施形態に係るRTM成形装置100は、成形型1、樹脂注入ライン2、吸引ライン3、表面成形層4、及び樹脂拡散部5を備えている。
【0040】
成形型1は、上型と下型から構成されている。上型を下型に接合させることで内部にキャビティが形成される。上型と下型との接合面には、上型と下型とを接合させた際にキャビティ内が密閉されるようシール部材6が配置される。
【0041】
樹脂注入ライン2及び吸引ライン3は、キャビティ内に連通して設けられている。図1では、樹脂注入ライン2の一端部がキャビティ内の一端面上部、吸引ライン3の一端部がキャビティ内の他端面下部に配置されている。
【0042】
表面成形層4は、厚さ方向に貫通した複数の孔7が形成されている。孔径は、成形体の表面に表面成形層4の孔形状が転写されないような大きさとされ、好ましくは0.3mm以上2mm以下、更に好ましくは0.5mm以上1mm以下とされる。開孔率は、例えば51%以下とされると良い。孔7の形状は、丸、長丸、四角形、六角形、長方形などとされ、適宜選択される。孔7の配列は、千鳥配列、格子配列などとされ、適宜選択される。
表面成形層4は、樹脂を含浸させる際のキャビティ内に係る圧力が付加されても実質的に厚さが変化しない剛性を有する材質からなる。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、鉄または銅などからなるパンチングメタルを用いると良い。厚さは、例えば、0.2mm〜3mm程度、好ましくは0.3mm〜2mm、更に好ましくは0.5mm〜1mmとされる。
【0043】
本実施形態において樹脂拡散部5は、樹脂拡散層8からなり、図1では、樹脂拡散層8a,8bが積層された構成とされている。
表面成形層4の上には、下部樹脂拡散層8aが積層されている。下部樹脂拡散層8aには、厚さ方向に貫通した複数の孔9が形成されている。孔径は、表面成形層4に形成された孔7よりも大きな径とされる。下部樹脂拡散層8aの開孔率は表面成形層4の開孔率よりも高い方が好ましく、大きい程樹脂の含浸には有利である。孔の寸法を決定する上で、重要となるのは、成形時に表面成形層4が下部樹脂拡散層8aの孔9に落ち込まない様にすることである。例えば、長丸または長方形であれば短径、短辺または丸や六角形であれば直径、対角線を基準に表面成形層4の剛性とのバランスをとる必要がある。そのため、前述の孔の寸法の制約から下部樹脂拡散層8aの開孔率には限界がある。
【0044】
孔9の形状は、丸、長丸、四角形、六角形、長方形などとされ、表面成形層4で形成された孔の形状とは別の形状が選択されると良い。孔9の配列は、千鳥配列、格子配列などとされ、適宜選択されるが、表面成形層4で形成された孔7と位相をずらすため、表面成形層4とは異なる配列とすることが好ましい。
【0045】
下部樹脂拡散層8aは、樹脂を含浸させる際のキャビティ内に係る圧力が付加されても実質的に厚さが変化しない材質からなる。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、鉄または銅などからなるパンチングメタルを用いると良い。例えば、10%〜60%程度が入手しやすいが、孔の形状を長方形にするなどの工夫により、それ以上も可能である。パンチングメタルの厚さは、1mm〜4mm程度とされると良い。
【0046】
下部樹脂拡散層8aの上には、上部樹脂拡散層8bが積層されている。図1において、上部樹脂拡散層8bは、片面(上面)が上型に接し、樹脂供給ラインから樹脂が直接注入されるよう配置されている。上部樹脂拡散層8bは、厚さ方向に貫通した複数の孔10が形成されている。孔10の孔径は、下部樹脂拡散層8aに形成された孔9よりも大きな径とされる。上部樹脂拡散層8bの開孔率は、下部樹脂拡散層8aの開孔率よりも高い範囲とされる。孔10の形状は、丸、長丸、四角形、六角形、長方形などとされ、下部樹脂拡散層8aで形成された孔9の形状とは別の形状が選択されると良い。孔10の配列は、千鳥配列、格子配列などとされ、適宜選択されるが、下部樹脂拡散層8aで形成された孔と位相をずらすため、下部樹脂拡散層8aとは異なる配列とすることが好ましい。
上部樹脂拡散層8bは、樹脂を含浸させる際のキャビティ内に係る圧力が付加されても実質的に厚さが変化しない材質からなる。ステンレス鋼、アルミニウム、鉄または銅などからなるパンチングメタルを用いると良い。厚さは、1mm〜4mm程度とされると良い。
【0047】
図2〜図4は、表面成形層4または樹脂拡散層8で用いられるパンチングメタルの一例である。図2〜図4に示すように、パンチングメタルは縁取りされていないものとする。
【0048】
上記構成の表面成形層4及び樹脂拡散層8では、各層に形成された孔7,9,10が、他の層に形成された孔7,9,10と重なることで連通し、厚さ方向及び面方向へと樹脂が流動可能な樹脂流路が形成されている。
【0049】
次に、本実施形態に係るRTM成形方法を説明する。
本実施形態で用いられる強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素高強度合成繊維等とされ、とくに、炭素繊維が好ましい。繊維強化基材11の形態は特に限定されず、一方向シートや織物等を採用でき、通常、これらを複数枚積層して基材を形成し、必要に応じて事前に賦形した半成形体の形態で用いる。その際、繊維強化基材11を表面成形層4及び樹脂拡散層8から構成された剛性多孔部材の上に載置した状態で賦形した半成形体としておいても良い。また、繊維強化基材11を2の剛性多孔部材で挟んだ状態で賦形した半成形体としてRTM成形装置100に供しても良い。
【0050】
本実施形態では樹脂として、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を形成するRIM用(Resin Injection Molding)モノマーなどが用いられる。熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、グアナミン樹脂、また、ビスマレイド・トリアジン樹脂等のポリイミド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリジアリルフタレート樹脂、さらにメラミン樹脂やユリア樹脂やアミノ樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴムから選ばれた複数をブレンドした樹脂を用いることもできる。
【0051】
本実施形態に係るRTM成形方法では、まず、下型のキャビティ内に繊維強化基材11を配置する。繊維強化基材11の上に、表面成形層4、下部樹脂拡散層8a、及び上部樹脂拡散層8bを順次載置させる。このとき、隣接する各層の孔7、9、10が連通し、樹脂流路が形成される。その後、上型を下型に接合させて型締めする。繊維強化基材11と表面成形層4との間には、離型用クロス(ピールプライ)を挿入しても良い。次に、吸引ライン3から吸引し、キャビティ内を減圧する。そして樹脂注入ライン2を通してキャビティ内の上部樹脂拡散層8bへ樹脂を加圧注入する。
【0052】
注入された樹脂は、樹脂流路を通って、面方向及び厚さ方向に拡散される。図5に、樹脂の流れを説明する断面図を示す。説明の簡略化のため、樹脂拡散層8は1層とした。図5において、樹脂は、上下の層(樹脂拡散層8及び表面成形層4)に形成された孔を縫うように流れる。上下の層に形成された孔はそれぞれ大きさが異なるため、一の層に形成された孔が他の層に形成された2以上の孔と連通することが可能となる。仮に、一断面において孔A、孔B1のように上下の層の孔が連通していない場合であっても、孔Aは、他断面(例えば、図5の紙面奥行き方向)にある孔B2(不図示)と連通しているため、樹脂は、孔B2を介して面方向に流動することができる。異なる形状の孔を有する層を隣接させると、より確実に樹脂流路を形成させることができる。また、異なる配列で穿孔された層を隣接させると、より確実に樹脂流路を形成させることができる。
【0053】
樹脂流路を経由して拡散された樹脂は、表面成形層4に形成された孔7から繊維強化基材11の略全面へと供給され、繊維強化基材11の板厚方向に向けて浸透される。このとき、余剰な樹脂は吸引ライン3から排出される。樹脂が繊維強化基材11の全体に含浸されたところで、吸引を停止する。その後、キャビティ内を所定圧力、例えば、1気圧(101325Pa)以上に保持し、樹脂を硬化させる。表面成形層4及び樹脂拡散層8としてパンチングメタルを用いた場合、該パンチングメタルは成形体を離型後、廃棄しても良い。それによって、離型後の成形型の清掃が容易となる。
【0054】
本実施形態に従って180mm×150mm×板厚25mmの平板型構造部材を成形したところ、繊維強化基材に樹脂を約10分で含浸させることができた。同様に平板型構造部材を、図9に示すような繊維強化基材の一端部から樹脂を含浸させる従来法で成形したところ、繊維強化基材に樹脂を含浸させるのに約35分を要した。上記結果から、本実施形態によれば、樹脂を短時間で繊維強化基材に含浸させることができることがわかった。
【0055】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、成形体の形状をC型とする。図6に、C型構造部材の一例を示す。図6(a)が上面図、図6(b)が断面図である。図6において、C型構造部材の大きさは、300mm×180mm×板厚40mm、凹部100mm×100mmとする。
【0056】
図7に、図6に示すC型構造部材を成形するRTM成形装置200の断面図を示す。RTM成形装置200は、第1実施形態と同様に、成形型21、樹脂注入ライン22、吸引ライン23、及び表面成形層24及び樹脂拡散部を備えている。
【0057】
成形型21は、上型と下型から構成されている。上型を下型に接合させることで内部にキャビティが形成される。上型と下型との接合面には、上型と下型とを接合させた際にキャビティ内が密閉されるようシール部材26が配置される。
【0058】
樹脂注入ライン22及び吸引ライン23は、キャビティ内に連通して設けられている。図7では、樹脂注入ライン2の一端部がC型のキャビティ内の一端面側、吸引ライン23の一端部がC型のキャビティ内の他端面側に配置されている。
【0059】
表面成形層24は、第1実施形態と同様とされる。
樹脂拡散部は、1層の樹脂拡散層28と、該樹脂拡散層28が接する成形型の面に形成された溝(不図示)から構成されている。場合によっては、樹脂拡散層28を含まなくても良い。
樹脂拡散層28は、第1実施形態の上部樹脂拡散層8bと同様とされる。なお、本実施形態では成形する成形体の形状がC型であるため、樹脂拡散層(パンチングメタル)28の厚さは、1mm〜4mmとされることが好ましい。そのようにすることで、Rが追従することができる。
【0060】
成形型に形成された溝は、樹脂注入ライン22と連通した筋溝とされる。筋溝の形状は、V字(三角)とさせると良い。そうすることで、離型後の清掃が容易となる。筋溝の形成位置は適宜設定される。
【0061】
次に、本実施形態に係るRTM成形方法について説明する。キャビティ内に繊維強化基材31を配置し、その上に表面成形層24及び樹脂拡散層28を順次載置する。このとき、成形型に形成された溝と樹脂拡散層28に形成された孔、及び表面成形層24の孔と樹脂拡散層28の孔とが連通し、樹脂流路が形成される。繊維強化基材31と表面成形層24との間には、離型用クロス(ピールプライ)を挿入しても良い。吸引ライン23により吸引してキャビティ内を減圧するとともに、樹脂注入ライン22より樹脂を加圧注入する。
【0062】
樹脂注入ライン2からキャビティ内に加圧注入された樹脂は、樹脂拡散層28に入るとともに、筋溝内を通って成形型21に接触する樹脂拡散層28の面方向へと拡散される。それによって、樹脂拡散層28が1層であった場合でも、表面成形層24へと樹脂を素早く拡散させることができる。
【0063】
樹脂は、樹脂流路を通って、面方向及び厚さ方向に拡散される。樹脂は、表面成形層24に形成された複数の孔から繊維強化基材31の略全面へと供給され、繊維強化基材31の板厚方向に浸透する。このとき、余剰な樹脂は吸引ライン23から排出される。樹脂が繊維強化基材31の全体に含浸されたところで、吸引を停止する。その後、キャビティ内を所定圧力に保持し、樹脂を硬化させて成形体とする。
【0064】
第1実施形態及び第2実施形態によれば、表面成形層及び樹脂拡散部を備えることで、キャビティ内に加圧注入された樹脂を拡散させて、繊維強化基材の略全面から供給することができる。また、樹脂を繊維強化基材の板厚方向に向けて流動させるため、従来法(図8)と比較して、樹脂が繊維強化基材内を通る距離が短くなる。それによって、高粘度の樹脂を用いた場合であっても、繊維の蛇行等を引き起こさずに樹脂を繊維強化基材に含浸させることができる。また、成形体の厚さが40mm程度の厚さとなっても、未含浸領域を残すことなく、短時間で樹脂を繊維強化基材に含浸させることができる。成形中、表面成形層は繊維強化基材側に押圧された状態となるが、表面成形層に形成された孔の径を小さくすることで、成形体表面に表面成形層の孔形状が転写されることを防止できる。表面成形層及び樹脂拡散層は、成形中のキャビティ内の圧力では変形しない剛性を有する。そのため、表面成形層及び樹脂拡散層を成形型と繊維強化基材との間に介在させた場合であっても、成形体の高い寸法(板厚)精度を確保することができる。
【0065】
第1実施形態及び第2実施形態において、表面成形層及び樹脂拡散部を繊維強化基材の樹脂注入側に設けたが、表面成形層及び樹脂拡散部を設ける位置はこれに限定されない。表面成形層及び樹脂拡散部は、繊維強化基材の樹脂排出側、または樹脂注入側及び樹脂排出側の両面に設けられても良い。
【0066】
上記構成のRTM成形装置によれば、樹脂拡散層の枚数や厚さを調整することで、同じ成形型を用いて、異なる板厚の成形体を成形することもできる。すなわち、多少の厚さの変更であれば、型を新たに用意する必要がない。また、剛性多孔部材と繊維強化基材を共に賦形させた半成形品を適用することができる。このような半成形品は、輸送時に損傷や変形することを防止できる。
【符号の説明】
【0067】
1,21 成形型
2,22 樹脂注入ライン
3,23 吸引ライン
4,24 表面成形層
5 樹脂拡散部
6,26 シール部材
7,9,10 孔
8,8a,8b 樹脂拡散層
11,31 繊維強化基材
40 中間部材
41 多孔板
100,200 RTM成形装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化基材に樹脂を含浸させてRTM成形するためのRTM成形装置及びRTM成形方法、並びに半成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)等の複合材は、軽量かつ高強度であるため、航空機、自動車、船舶等の構造部材として広く用いられている。複合材の成形方法の一つとして、RTM(Resin Transfer Molding)成形法がある。RTM成形法は、雌、雄一対の成形金型内に繊維強化基材を配置し、型を閉締した後、減圧された金型内へ樹脂注入口より樹脂を注入することで繊維強化基材に樹脂を含浸させて成形する方法である。
一般的なRTM成形方法では、図9に示すように、樹脂は、端部に設けられた樹脂注入ライン2から注入され、強化繊維基板11内を面方向に流動して、逆端部に設けられた吸引ライン3から排出される。RTM成形方法では、繊維強化基材の中を樹脂が流動するため、樹脂の低粘度・高流動性は不可欠な特性となる。
【0003】
RTM法は、非常に高い形状精度で成形できるという利点がある。しかしながら、上記RTM成形法では、繊維強化基材の端部から逆端部に向けて樹脂を含浸させるため、部材が大型化・厚板化すると、樹脂含浸に多大な時間を要するようになるとともに、未含浸領域が発生するなどの問題が生じる場合がある。含浸時間の短縮を目的として、樹脂の注入速度を速めるため注入圧力を上げると、圧損が大きくなり、繊維の蛇行を引き起こす恐れがある。
【0004】
上記課題を解決するために、図10及び図11に示すような板厚方向へ樹脂を含浸させる方法が提案されている。図10は、上型に複数の注入口を配置して、樹脂を繊維強化基材に供給し、繊維強化基材の板厚方向に向けて含浸させる方法である。図11は、繊維強化基材の上に多孔板41と中間部材40とを載置し、繊維強化基材の略全面から板厚方向に向けて含浸させる方法である。中間部材40としては、樹脂製の孔あきフィルムなどが用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10のように複数の注入口を配置する方法では、注入口の設置箇所の最適化に多大な労力を要し、さらなる大型部材・厚板部材への対応に問題がある。また、一般に金型は、離型後に清掃して繰り返し使用されるが、注入口が複数設けられることで、清掃に手間がかかるようになる。
【0006】
図11のように中間部材40を載置する方法では、中間部材40に剛性がないため、金型内を真空環境としたときに中間部材40が変形してダンパーとして作用し、成形品の寸法(板厚)精度を確保できなくなるという問題がある。
【0007】
また、航空機などの構造部材では、高い靭性が要求される。一般に、樹脂粘度と成形体の靭性とは相反すると言われている。すなわち、分子量を小さくするなどして樹脂の粘度を下げて繊維強化基材に含浸させ、成形した成形体の靭性は、分子量の大きな粘度の高い樹脂を用いた場合と比べて低くなる。そのため、樹脂は高粘度で繊維強化基材に含浸させることが望ましい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、大型部材及び厚板部材に対しても未含浸や繊維の蛇行等を引き起こさずに樹脂を含浸させることができ、高靭性且つ高精度な成形体を得ることのできるRTM成形装置及びRTM成形方法を提供するとともに、上記RTM成形装置に適用可能な半成形体を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、内部にキャビティが形成された成形型と、前記キャビティに連通する樹脂注入ライン及び吸引ラインと、を備え、前記キャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入して前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するよう構成されたRTM成形装置であって、前記繊維強化基材と前記成形型との間に配置され、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層と、前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に位置し、前記表面成形層の複数の貫通孔と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部と、を前記繊維強化基材の少なくとも一方の面側に備えるRTM成形装置を提供する。
【0010】
上記発明の一態様において、前記表面成形層の前記貫通孔の径が、前記キャビティ内を減圧したときの圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とされることが好ましい。
【0011】
上記発明の一態様において、前記繊維強化基材の樹脂が注入される側または樹脂が排出される側の少なくとも一方の面に前記樹脂拡散部を備え、前記樹脂拡散部が前記繊維強化基材の樹脂が注入される側に設けられる場合、前記樹脂流路が前記樹脂注入ラインと連通し、前記樹脂拡散部が前記繊維強化基材の樹脂が排出される側に設けられる場合、前記樹脂流路が前記吸引ラインと連通することが好ましい。
【0012】
上記構成の樹脂拡散部を備えることで、キャビティ内に注入した樹脂を素早く面方向に拡散できる空隙領域を保持することができる。それによって、繊維強化基材の全面から樹脂を供給して板厚方向に向けて含浸させることが可能となる。また、表面成形層及び樹脂拡散部を、繊維強化基材の樹脂排出側に備えることで、繊維強化基材の全面から樹脂を排出することが可能となる。それにより、より短時間で、より均等に、且つ、繊維を蛇行させることなく繊維強化基材に樹脂組成物を含浸させることが可能となる。
【0013】
繊維強化基材に接する表面成形層は、孔形状が繊維強化基材へと転写されない大きさで形成されているため、成形体の表面を凹凸のない面とすることができる。表面成形層は、樹脂注入時のキャビティ内の圧力下においても厚さが実質的に変化しない剛性を有する。それによって、繊維強化基材へ樹脂を含浸させる工程において、剛性多孔部材がダンパーとして作用することがないため、成形体の高い板厚精度を確保することができる。「実質的に厚さが変化しない」とは、成形体としたときに要求される寸法精度で許容される範囲の厚さ変化を含むことを意味する。例えば、航空機の一次構成部材では±0.1mm以下程度の寸法精度が要求される場合がある。
【0014】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部が、前記繊維強化基材側に隣接する層に形成された貫通孔よりも大きな径を有する貫通孔が複数形成され、且つ、前記圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する、前記表面成形層と前記成形型との間に配置される少なくとも1の樹脂拡散層からなり、各層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と連通して樹脂流路を形成しても良い。
【0015】
樹脂拡散部を樹脂拡散層とすることで、成形型に加工することなく、より短時間で、より均等に、且つ、繊維を蛇行させることなく繊維強化基材に樹脂組成物を含浸させることが可能となる。
樹脂拡散層は、樹脂注入時のキャビティ内の圧力下においても厚さが実質的に変化しない剛性を有する。それによって、繊維強化基材へ樹脂を含浸させる工程において、剛性多孔部材がダンパーとして作用することがないため、成形体の高い板厚精度を確保することができる。
樹脂拡散層は繊維強化基材側に位置する層に形成された貫通孔よりも大きく形成されているため、注入された樹脂は、素早く拡散される。
樹脂拡散層に形成された孔の大きさは、表面成形層側に向けて段階的に小さくなるため、一の層が他の層の孔に落ち込むことを防止することができる。
【0016】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散層が、パンチングメタルからなる多孔板であることが好ましい。また、上記発明の一態様において、前記表面成形層が、パンチングメタルからなる多孔板であることが好ましい。
【0017】
パンチングメタルは、孔あきフィルムなどよりも安価であるため、使い捨てとすることが可能である。それによって、離型後の成形型の清掃が容易となる。また、パンチングメタルは、孔あきフィルムなどよりも剛性が高く、キャビティ内での圧力下においても厚さが実質的に変化することはない。
【0018】
上記発明の一態様において、前記表面成形層に形成された貫通孔の径が0.3mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0019】
孔径は、0.3mm以上2mm以下、好ましくは0.5mm以上1mm以下とすること良い。孔径を大きくしすぎると、条件によっては繊維の剛性が負けてたわんでしまい、成形体表面に孔形状が転写されてしまう恐れがある。孔径を小さくしすぎると、条件によっては、樹脂組成物が流れ難くなる可能性がある。
【0020】
上記発明の一態様において、前記表面成形層及び前記樹脂拡散層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と異なる形状で形成されることが好ましい。また、上記発明の一態様において、前記表面成形層及び前記樹脂拡散層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と位相をずらして配置されることが好ましい。
【0021】
そうすることで、各層を積層させたときに、隣接する層にそれぞれ形成された孔同士が完全に重なることがなくなるため、樹脂経路をより確実に形成することが可能となる。
【0022】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部が、成形型の前記繊維強化基材側の面に形成された溝を含み、該溝が、前記樹脂注入ライン及び隣接する層の貫通孔と連通して樹脂流路を形成しても良い。また、上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部が、成形型の前記繊維強化基材側の面に形成された溝を含み、該溝が、前記吸引ライン及び隣接する層の貫通孔と連通して樹脂流路を形成しても良い。
【0023】
上記構成とすることで、溝が樹脂流路となり、面方向への樹脂の拡散をサポートすることができる。離型後の清掃を考慮すると、溝はV字形状とされることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、成形型の内部に形成されたキャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入し、前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するRTM成形方法であって、前記キャビティに配置した繊維強化基材上に、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層を配置する工程と、前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に、樹脂経路を含む樹脂拡散部を、前記樹脂経路が前記表面成形層の貫通孔と連通するよう設ける工程と、を備えるRTM成形方法を提供する。
【0025】
上記発明の一態様において、前記表面成形層の前記貫通孔の径を、前記キャビティ内を減圧したときの圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とすることが好ましい。
【0026】
上記発明によれば、樹脂拡散部及びキャビティ内の圧力下で変形しない剛性を有する表面成形層を樹脂供給側に設けた場合、樹脂組成物を拡散させることで、繊維強化基材の略全面から樹脂組成物を供給し、板厚方向に含浸させることが可能となる。これによって、未含浸領域や繊維の蛇行を生じさせることなく、より短時間で高品質の成形体を成形することができる。また、タフ化を向上させた高粘度の樹脂組成物を適用することができるため、靭性の高い成形体を成形することもできる。
【0027】
樹脂拡散部及び表面成形層を樹脂排出側に設けた場合、繊維強化基材の略全面から樹脂組成物を排出することが可能となる。そうすることで、より短時間で、より均等に、且つ、繊維を蛇行させることなく繊維強化基材に樹脂組成物を含浸させることが可能となる。
【0028】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、前記樹脂拡散部として、前記繊維強化基材側に隣接する層に形成された貫通孔よりも大きな径を有する貫通孔が複数形成され、且つ、前記圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する少なくとも1の樹脂拡散層を、前記表面成形層と前記成形型との間に、各層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と連通して樹脂流路を形成するよう配設しても良い。
【0029】
樹脂拡散部を樹脂拡散層とすることで、成形型に加工することなく、樹脂をより短時間で、より均等に、且つ、繊維を蛇行させることなく繊維強化基材に樹脂組成物を含浸させることが可能となる。
【0030】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散層を、パンチングメタルからなる多孔板とすることが好ましい。また、上記発明の一態様において、前記表面成形層を、パンチングメタルからなる多孔板とすることが好ましい。
パンチングメタルを用いることで、低コストで容易に寸法精度の高い成形体を成形することができる。
【0031】
上記発明の一態様において、前記表面成形層に形成された貫通孔の径を0.3mm以上2mm以下とすることが好ましい。
孔径は、0.3mm以上2mm以下、好ましくは0.5mm以上1mm以下とすること良い。そのようにすることで、より確実に成形体に孔形状が転写されないようにすることができる。
【0032】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部を設ける工程において、互いに異なる形状の貫通孔が形成された層を、隣接させて配置することが好ましい。また、上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部を設ける工程において、異なる位相で複数の貫通孔が形成された層同士を隣接させて配置するが好ましい。
そうすることで、各層を積層させたときに、隣接する層にそれぞれ形成された孔同士が完全に重なることがなくなるため、樹脂経路をより確実に形成することが可能となる。
【0033】
上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部を設ける工程において、成形型の前記繊維強化基材側の面に、前記樹脂注入ライン及び隣接する層の貫通孔と連通する溝を形成しても良い。また、上記発明の一態様において、前記樹脂拡散部を設ける工程において、成形型の前記繊維強化基材側の面に、前記吸引ライン及び隣接する層の貫通孔と連通する溝を形成しても良い。
そのようにすることで、溝が樹脂流路となり、面方向への樹脂の拡散をサポートすることができる。離型後の清掃を考慮すると、溝をV字形状で形成すると良い。
【0034】
また、本発明は、内部にキャビティが形成された成形型と、前記キャビティに連通する樹脂注入ライン及び吸引ラインと、を備え、前記キャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入して前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するよう構成されたRTM成形装置に適用される半成形体であって、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層と、前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に配置された、前記表面成形層の複数の貫通孔と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部とを、前記繊維強化基材の片面または両面に備える半成形体を提供する。
【0035】
上記発明の一態様において、前記表面成形層の前記貫通孔の径が、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とされることが好ましい。
【0036】
上記発明によれば、繊維強化基材は剛性を有する部材に載置されているため、輸送時に変形や損傷することを防止できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、表面成形層及び樹脂拡散部で樹脂組成物を拡散させて繊維強化基材の略全面から供給または排出し、板厚方向に含浸させることで、大型部材や厚板部材に対しても未含浸や繊維の蛇行等を引き起こさずに、短時間で高い寸法精度の成形体を成形することが可能となる。また、タフ化を向上させた高粘度の樹脂を適用することも可能となるため、高靭性の構造部材を成形することができる。このように成形された成形体は、航空機の一次部材への適用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態に係るRTM成形装置の断面図である。
【図2】パンチングメタルの一例を示す上面図である。
【図3】パンチングメタルの一例を示す上面図である。
【図4】パンチングメタルの一例を示す上面図である。
【図5】樹脂の流れを説明する断面図である。
【図6】C型構造部材の一例を示す図である。
【図7】第2実施形態に係るRTM成形装置の断面図である。
【図8】従来のRTM成形装置の断面図である。
【図9】従来のRTM成形装置の断面図である。
【図10】従来のRTM成形装置の断面図である。
【図11】従来のRTM成形装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1実施形態〕
本実施形態では、平板型構造部材を成形するRTM成形装置及びRTM成形方法について説明する。
図1に、本実施形態に係るRTM成形装置100の断面図を示す。本実施形態に係るRTM成形装置100は、成形型1、樹脂注入ライン2、吸引ライン3、表面成形層4、及び樹脂拡散部5を備えている。
【0040】
成形型1は、上型と下型から構成されている。上型を下型に接合させることで内部にキャビティが形成される。上型と下型との接合面には、上型と下型とを接合させた際にキャビティ内が密閉されるようシール部材6が配置される。
【0041】
樹脂注入ライン2及び吸引ライン3は、キャビティ内に連通して設けられている。図1では、樹脂注入ライン2の一端部がキャビティ内の一端面上部、吸引ライン3の一端部がキャビティ内の他端面下部に配置されている。
【0042】
表面成形層4は、厚さ方向に貫通した複数の孔7が形成されている。孔径は、成形体の表面に表面成形層4の孔形状が転写されないような大きさとされ、好ましくは0.3mm以上2mm以下、更に好ましくは0.5mm以上1mm以下とされる。開孔率は、例えば51%以下とされると良い。孔7の形状は、丸、長丸、四角形、六角形、長方形などとされ、適宜選択される。孔7の配列は、千鳥配列、格子配列などとされ、適宜選択される。
表面成形層4は、樹脂を含浸させる際のキャビティ内に係る圧力が付加されても実質的に厚さが変化しない剛性を有する材質からなる。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、鉄または銅などからなるパンチングメタルを用いると良い。厚さは、例えば、0.2mm〜3mm程度、好ましくは0.3mm〜2mm、更に好ましくは0.5mm〜1mmとされる。
【0043】
本実施形態において樹脂拡散部5は、樹脂拡散層8からなり、図1では、樹脂拡散層8a,8bが積層された構成とされている。
表面成形層4の上には、下部樹脂拡散層8aが積層されている。下部樹脂拡散層8aには、厚さ方向に貫通した複数の孔9が形成されている。孔径は、表面成形層4に形成された孔7よりも大きな径とされる。下部樹脂拡散層8aの開孔率は表面成形層4の開孔率よりも高い方が好ましく、大きい程樹脂の含浸には有利である。孔の寸法を決定する上で、重要となるのは、成形時に表面成形層4が下部樹脂拡散層8aの孔9に落ち込まない様にすることである。例えば、長丸または長方形であれば短径、短辺または丸や六角形であれば直径、対角線を基準に表面成形層4の剛性とのバランスをとる必要がある。そのため、前述の孔の寸法の制約から下部樹脂拡散層8aの開孔率には限界がある。
【0044】
孔9の形状は、丸、長丸、四角形、六角形、長方形などとされ、表面成形層4で形成された孔の形状とは別の形状が選択されると良い。孔9の配列は、千鳥配列、格子配列などとされ、適宜選択されるが、表面成形層4で形成された孔7と位相をずらすため、表面成形層4とは異なる配列とすることが好ましい。
【0045】
下部樹脂拡散層8aは、樹脂を含浸させる際のキャビティ内に係る圧力が付加されても実質的に厚さが変化しない材質からなる。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、鉄または銅などからなるパンチングメタルを用いると良い。例えば、10%〜60%程度が入手しやすいが、孔の形状を長方形にするなどの工夫により、それ以上も可能である。パンチングメタルの厚さは、1mm〜4mm程度とされると良い。
【0046】
下部樹脂拡散層8aの上には、上部樹脂拡散層8bが積層されている。図1において、上部樹脂拡散層8bは、片面(上面)が上型に接し、樹脂供給ラインから樹脂が直接注入されるよう配置されている。上部樹脂拡散層8bは、厚さ方向に貫通した複数の孔10が形成されている。孔10の孔径は、下部樹脂拡散層8aに形成された孔9よりも大きな径とされる。上部樹脂拡散層8bの開孔率は、下部樹脂拡散層8aの開孔率よりも高い範囲とされる。孔10の形状は、丸、長丸、四角形、六角形、長方形などとされ、下部樹脂拡散層8aで形成された孔9の形状とは別の形状が選択されると良い。孔10の配列は、千鳥配列、格子配列などとされ、適宜選択されるが、下部樹脂拡散層8aで形成された孔と位相をずらすため、下部樹脂拡散層8aとは異なる配列とすることが好ましい。
上部樹脂拡散層8bは、樹脂を含浸させる際のキャビティ内に係る圧力が付加されても実質的に厚さが変化しない材質からなる。ステンレス鋼、アルミニウム、鉄または銅などからなるパンチングメタルを用いると良い。厚さは、1mm〜4mm程度とされると良い。
【0047】
図2〜図4は、表面成形層4または樹脂拡散層8で用いられるパンチングメタルの一例である。図2〜図4に示すように、パンチングメタルは縁取りされていないものとする。
【0048】
上記構成の表面成形層4及び樹脂拡散層8では、各層に形成された孔7,9,10が、他の層に形成された孔7,9,10と重なることで連通し、厚さ方向及び面方向へと樹脂が流動可能な樹脂流路が形成されている。
【0049】
次に、本実施形態に係るRTM成形方法を説明する。
本実施形態で用いられる強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素高強度合成繊維等とされ、とくに、炭素繊維が好ましい。繊維強化基材11の形態は特に限定されず、一方向シートや織物等を採用でき、通常、これらを複数枚積層して基材を形成し、必要に応じて事前に賦形した半成形体の形態で用いる。その際、繊維強化基材11を表面成形層4及び樹脂拡散層8から構成された剛性多孔部材の上に載置した状態で賦形した半成形体としておいても良い。また、繊維強化基材11を2の剛性多孔部材で挟んだ状態で賦形した半成形体としてRTM成形装置100に供しても良い。
【0050】
本実施形態では樹脂として、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を形成するRIM用(Resin Injection Molding)モノマーなどが用いられる。熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、グアナミン樹脂、また、ビスマレイド・トリアジン樹脂等のポリイミド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリジアリルフタレート樹脂、さらにメラミン樹脂やユリア樹脂やアミノ樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴムから選ばれた複数をブレンドした樹脂を用いることもできる。
【0051】
本実施形態に係るRTM成形方法では、まず、下型のキャビティ内に繊維強化基材11を配置する。繊維強化基材11の上に、表面成形層4、下部樹脂拡散層8a、及び上部樹脂拡散層8bを順次載置させる。このとき、隣接する各層の孔7、9、10が連通し、樹脂流路が形成される。その後、上型を下型に接合させて型締めする。繊維強化基材11と表面成形層4との間には、離型用クロス(ピールプライ)を挿入しても良い。次に、吸引ライン3から吸引し、キャビティ内を減圧する。そして樹脂注入ライン2を通してキャビティ内の上部樹脂拡散層8bへ樹脂を加圧注入する。
【0052】
注入された樹脂は、樹脂流路を通って、面方向及び厚さ方向に拡散される。図5に、樹脂の流れを説明する断面図を示す。説明の簡略化のため、樹脂拡散層8は1層とした。図5において、樹脂は、上下の層(樹脂拡散層8及び表面成形層4)に形成された孔を縫うように流れる。上下の層に形成された孔はそれぞれ大きさが異なるため、一の層に形成された孔が他の層に形成された2以上の孔と連通することが可能となる。仮に、一断面において孔A、孔B1のように上下の層の孔が連通していない場合であっても、孔Aは、他断面(例えば、図5の紙面奥行き方向)にある孔B2(不図示)と連通しているため、樹脂は、孔B2を介して面方向に流動することができる。異なる形状の孔を有する層を隣接させると、より確実に樹脂流路を形成させることができる。また、異なる配列で穿孔された層を隣接させると、より確実に樹脂流路を形成させることができる。
【0053】
樹脂流路を経由して拡散された樹脂は、表面成形層4に形成された孔7から繊維強化基材11の略全面へと供給され、繊維強化基材11の板厚方向に向けて浸透される。このとき、余剰な樹脂は吸引ライン3から排出される。樹脂が繊維強化基材11の全体に含浸されたところで、吸引を停止する。その後、キャビティ内を所定圧力、例えば、1気圧(101325Pa)以上に保持し、樹脂を硬化させる。表面成形層4及び樹脂拡散層8としてパンチングメタルを用いた場合、該パンチングメタルは成形体を離型後、廃棄しても良い。それによって、離型後の成形型の清掃が容易となる。
【0054】
本実施形態に従って180mm×150mm×板厚25mmの平板型構造部材を成形したところ、繊維強化基材に樹脂を約10分で含浸させることができた。同様に平板型構造部材を、図9に示すような繊維強化基材の一端部から樹脂を含浸させる従来法で成形したところ、繊維強化基材に樹脂を含浸させるのに約35分を要した。上記結果から、本実施形態によれば、樹脂を短時間で繊維強化基材に含浸させることができることがわかった。
【0055】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、成形体の形状をC型とする。図6に、C型構造部材の一例を示す。図6(a)が上面図、図6(b)が断面図である。図6において、C型構造部材の大きさは、300mm×180mm×板厚40mm、凹部100mm×100mmとする。
【0056】
図7に、図6に示すC型構造部材を成形するRTM成形装置200の断面図を示す。RTM成形装置200は、第1実施形態と同様に、成形型21、樹脂注入ライン22、吸引ライン23、及び表面成形層24及び樹脂拡散部を備えている。
【0057】
成形型21は、上型と下型から構成されている。上型を下型に接合させることで内部にキャビティが形成される。上型と下型との接合面には、上型と下型とを接合させた際にキャビティ内が密閉されるようシール部材26が配置される。
【0058】
樹脂注入ライン22及び吸引ライン23は、キャビティ内に連通して設けられている。図7では、樹脂注入ライン2の一端部がC型のキャビティ内の一端面側、吸引ライン23の一端部がC型のキャビティ内の他端面側に配置されている。
【0059】
表面成形層24は、第1実施形態と同様とされる。
樹脂拡散部は、1層の樹脂拡散層28と、該樹脂拡散層28が接する成形型の面に形成された溝(不図示)から構成されている。場合によっては、樹脂拡散層28を含まなくても良い。
樹脂拡散層28は、第1実施形態の上部樹脂拡散層8bと同様とされる。なお、本実施形態では成形する成形体の形状がC型であるため、樹脂拡散層(パンチングメタル)28の厚さは、1mm〜4mmとされることが好ましい。そのようにすることで、Rが追従することができる。
【0060】
成形型に形成された溝は、樹脂注入ライン22と連通した筋溝とされる。筋溝の形状は、V字(三角)とさせると良い。そうすることで、離型後の清掃が容易となる。筋溝の形成位置は適宜設定される。
【0061】
次に、本実施形態に係るRTM成形方法について説明する。キャビティ内に繊維強化基材31を配置し、その上に表面成形層24及び樹脂拡散層28を順次載置する。このとき、成形型に形成された溝と樹脂拡散層28に形成された孔、及び表面成形層24の孔と樹脂拡散層28の孔とが連通し、樹脂流路が形成される。繊維強化基材31と表面成形層24との間には、離型用クロス(ピールプライ)を挿入しても良い。吸引ライン23により吸引してキャビティ内を減圧するとともに、樹脂注入ライン22より樹脂を加圧注入する。
【0062】
樹脂注入ライン2からキャビティ内に加圧注入された樹脂は、樹脂拡散層28に入るとともに、筋溝内を通って成形型21に接触する樹脂拡散層28の面方向へと拡散される。それによって、樹脂拡散層28が1層であった場合でも、表面成形層24へと樹脂を素早く拡散させることができる。
【0063】
樹脂は、樹脂流路を通って、面方向及び厚さ方向に拡散される。樹脂は、表面成形層24に形成された複数の孔から繊維強化基材31の略全面へと供給され、繊維強化基材31の板厚方向に浸透する。このとき、余剰な樹脂は吸引ライン23から排出される。樹脂が繊維強化基材31の全体に含浸されたところで、吸引を停止する。その後、キャビティ内を所定圧力に保持し、樹脂を硬化させて成形体とする。
【0064】
第1実施形態及び第2実施形態によれば、表面成形層及び樹脂拡散部を備えることで、キャビティ内に加圧注入された樹脂を拡散させて、繊維強化基材の略全面から供給することができる。また、樹脂を繊維強化基材の板厚方向に向けて流動させるため、従来法(図8)と比較して、樹脂が繊維強化基材内を通る距離が短くなる。それによって、高粘度の樹脂を用いた場合であっても、繊維の蛇行等を引き起こさずに樹脂を繊維強化基材に含浸させることができる。また、成形体の厚さが40mm程度の厚さとなっても、未含浸領域を残すことなく、短時間で樹脂を繊維強化基材に含浸させることができる。成形中、表面成形層は繊維強化基材側に押圧された状態となるが、表面成形層に形成された孔の径を小さくすることで、成形体表面に表面成形層の孔形状が転写されることを防止できる。表面成形層及び樹脂拡散層は、成形中のキャビティ内の圧力では変形しない剛性を有する。そのため、表面成形層及び樹脂拡散層を成形型と繊維強化基材との間に介在させた場合であっても、成形体の高い寸法(板厚)精度を確保することができる。
【0065】
第1実施形態及び第2実施形態において、表面成形層及び樹脂拡散部を繊維強化基材の樹脂注入側に設けたが、表面成形層及び樹脂拡散部を設ける位置はこれに限定されない。表面成形層及び樹脂拡散部は、繊維強化基材の樹脂排出側、または樹脂注入側及び樹脂排出側の両面に設けられても良い。
【0066】
上記構成のRTM成形装置によれば、樹脂拡散層の枚数や厚さを調整することで、同じ成形型を用いて、異なる板厚の成形体を成形することもできる。すなわち、多少の厚さの変更であれば、型を新たに用意する必要がない。また、剛性多孔部材と繊維強化基材を共に賦形させた半成形品を適用することができる。このような半成形品は、輸送時に損傷や変形することを防止できる。
【符号の説明】
【0067】
1,21 成形型
2,22 樹脂注入ライン
3,23 吸引ライン
4,24 表面成形層
5 樹脂拡散部
6,26 シール部材
7,9,10 孔
8,8a,8b 樹脂拡散層
11,31 繊維強化基材
40 中間部材
41 多孔板
100,200 RTM成形装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にキャビティが形成された成形型と、
前記キャビティに連通する樹脂注入ライン及び吸引ラインと、を備え、
前記キャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入して前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するよう構成されたRTM成形装置であって、
前記繊維強化基材と前記成形型との間に配置され、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層と、
前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に位置し、前記表面成形層の複数の貫通孔と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部と、
を前記繊維強化基材の少なくとも一方の面側に備えるRTM成形装置。
【請求項2】
前記表面成形層の前記貫通孔の径が、前記キャビティ内を減圧したときの圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とされる請求項1に記載のRTM成形装置。
【請求項3】
前記繊維強化基材の樹脂が注入される側または樹脂が排出される側の少なくとも一方の面に前記樹脂拡散部を備え、
前記樹脂拡散部が前記繊維強化基材の樹脂が注入される側に設けられる場合、前記樹脂流路が前記樹脂注入ラインと連通し、
前記樹脂拡散部が前記繊維強化基材の樹脂が排出される側に設けられる場合、前記樹脂流路が前記吸引ラインと連通する請求項1または請求項2に記載のRTM成形装置。
【請求項4】
前記樹脂拡散部が、前記繊維強化基材側に隣接する層に形成された貫通孔よりも大きな径を有する貫通孔が複数形成され、且つ、前記圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する、前記表面成形層と前記成形型との間に配置される少なくとも1の樹脂拡散層からなり、各層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と連通して樹脂流路を形成する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項5】
前記樹脂拡散層が、パンチングメタルからなる多孔板である請求項4に記載のRTM成形装置。
【請求項6】
前記表面成形層が、パンチングメタルからなる多孔板である請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項7】
前記表面成形層に形成された貫通孔の径が0.3mm以上2mm以下である請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項8】
前記表面成形層及び前記樹脂拡散層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と異なる形状で形成される請求項4乃至請求項7のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項9】
前記表面成形層及び前記樹脂拡散層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と位相をずらして配置される請求項4乃至請求項8のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項10】
前記樹脂拡散部が、成形型の前記繊維強化基材側の面に形成された溝を含み、
該溝が、前記樹脂注入ライン及び隣接する層の貫通孔と連通して樹脂流路を形成する請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項11】
前記樹脂拡散部が、成形型の前記繊維強化基材側の面に形成された溝を含み、
該溝が、前記吸引ライン及び隣接する層の貫通孔と連通して樹脂流路を形成する請求項1乃至請求項10に記載のRTM成形装置。
【請求項12】
成形型の内部に形成されたキャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入し、前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するRTM成形方法であって、
前記キャビティに配置した繊維強化基材上に、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層を配置する工程と、
前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に、樹脂経路を含む樹脂拡散部を、前記樹脂経路が前記表面成形層の貫通孔と連通するよう設ける工程と、
を備えるRTM成形方法。
【請求項13】
前記表面成形層の前記貫通孔の径を、前記キャビティ内を減圧したときの圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とする請求項12に記載のRTM成形方法。
【請求項14】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、
前記樹脂拡散部として、前記繊維強化基材側に隣接する層に形成された貫通孔よりも大きな径を有する貫通孔が複数形成され、且つ、前記圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する少なくとも1の樹脂拡散層を、前記表面成形層と前記成形型との間に、各層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と連通して樹脂流路を形成するよう配設する請求項12または請求項13に記載のRTM成形方法。
【請求項15】
前記樹脂拡散層を、パンチングメタルからなる多孔板とする請求項14に記載のRTM成形方法。
【請求項16】
前記表面成形層を、パンチングメタルからなる多孔板とする請求項12乃至請求項15のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項17】
前記表面成形層に形成された貫通孔の径を0.3mm以上2mm以下とする請求項12乃至請求項16のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項18】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、互いに異なる形状の貫通孔が形成された層を、隣接させて配置する請求項14乃至請求項17のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項19】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、異なる位相で複数の貫通孔が形成された層同士を隣接させて配置する請求項14乃至請求項17のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項20】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、成形型の前記繊維強化基材側の面に、前記樹脂注入ライン及び隣接する層の貫通孔と連通する溝を形成する請求項12乃至請求項19のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項21】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、成形型の前記繊維強化基材側の面に、前記吸引ライン及び隣接する層の貫通孔と連通する溝を形成する請求項12乃至請求項20のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項22】
内部にキャビティが形成された成形型と、前記キャビティに連通する樹脂注入ライン及び吸引ラインと、を備え、前記キャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入して前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するよう構成されたRTM成形装置に適用される半成形体であって、
貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層と、
前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に配置された、前記表面成形層の複数の貫通孔と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部と、
を、前記繊維強化基材の片面または両面に備える半成形体。
【請求項23】
前記表面成形層の前記貫通孔の径が、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とされる請求項22に記載の半成形体。
【請求項1】
内部にキャビティが形成された成形型と、
前記キャビティに連通する樹脂注入ライン及び吸引ラインと、を備え、
前記キャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入して前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するよう構成されたRTM成形装置であって、
前記繊維強化基材と前記成形型との間に配置され、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層と、
前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に位置し、前記表面成形層の複数の貫通孔と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部と、
を前記繊維強化基材の少なくとも一方の面側に備えるRTM成形装置。
【請求項2】
前記表面成形層の前記貫通孔の径が、前記キャビティ内を減圧したときの圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とされる請求項1に記載のRTM成形装置。
【請求項3】
前記繊維強化基材の樹脂が注入される側または樹脂が排出される側の少なくとも一方の面に前記樹脂拡散部を備え、
前記樹脂拡散部が前記繊維強化基材の樹脂が注入される側に設けられる場合、前記樹脂流路が前記樹脂注入ラインと連通し、
前記樹脂拡散部が前記繊維強化基材の樹脂が排出される側に設けられる場合、前記樹脂流路が前記吸引ラインと連通する請求項1または請求項2に記載のRTM成形装置。
【請求項4】
前記樹脂拡散部が、前記繊維強化基材側に隣接する層に形成された貫通孔よりも大きな径を有する貫通孔が複数形成され、且つ、前記圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する、前記表面成形層と前記成形型との間に配置される少なくとも1の樹脂拡散層からなり、各層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と連通して樹脂流路を形成する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項5】
前記樹脂拡散層が、パンチングメタルからなる多孔板である請求項4に記載のRTM成形装置。
【請求項6】
前記表面成形層が、パンチングメタルからなる多孔板である請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項7】
前記表面成形層に形成された貫通孔の径が0.3mm以上2mm以下である請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項8】
前記表面成形層及び前記樹脂拡散層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と異なる形状で形成される請求項4乃至請求項7のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項9】
前記表面成形層及び前記樹脂拡散層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と位相をずらして配置される請求項4乃至請求項8のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項10】
前記樹脂拡散部が、成形型の前記繊維強化基材側の面に形成された溝を含み、
該溝が、前記樹脂注入ライン及び隣接する層の貫通孔と連通して樹脂流路を形成する請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のRTM成形装置。
【請求項11】
前記樹脂拡散部が、成形型の前記繊維強化基材側の面に形成された溝を含み、
該溝が、前記吸引ライン及び隣接する層の貫通孔と連通して樹脂流路を形成する請求項1乃至請求項10に記載のRTM成形装置。
【請求項12】
成形型の内部に形成されたキャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入し、前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するRTM成形方法であって、
前記キャビティに配置した繊維強化基材上に、貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層を配置する工程と、
前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に、樹脂経路を含む樹脂拡散部を、前記樹脂経路が前記表面成形層の貫通孔と連通するよう設ける工程と、
を備えるRTM成形方法。
【請求項13】
前記表面成形層の前記貫通孔の径を、前記キャビティ内を減圧したときの圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とする請求項12に記載のRTM成形方法。
【請求項14】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、
前記樹脂拡散部として、前記繊維強化基材側に隣接する層に形成された貫通孔よりも大きな径を有する貫通孔が複数形成され、且つ、前記圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する少なくとも1の樹脂拡散層を、前記表面成形層と前記成形型との間に、各層に形成された貫通孔が、隣接する他の層に形成された貫通孔と連通して樹脂流路を形成するよう配設する請求項12または請求項13に記載のRTM成形方法。
【請求項15】
前記樹脂拡散層を、パンチングメタルからなる多孔板とする請求項14に記載のRTM成形方法。
【請求項16】
前記表面成形層を、パンチングメタルからなる多孔板とする請求項12乃至請求項15のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項17】
前記表面成形層に形成された貫通孔の径を0.3mm以上2mm以下とする請求項12乃至請求項16のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項18】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、互いに異なる形状の貫通孔が形成された層を、隣接させて配置する請求項14乃至請求項17のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項19】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、異なる位相で複数の貫通孔が形成された層同士を隣接させて配置する請求項14乃至請求項17のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項20】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、成形型の前記繊維強化基材側の面に、前記樹脂注入ライン及び隣接する層の貫通孔と連通する溝を形成する請求項12乃至請求項19のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項21】
前記樹脂拡散部を設ける工程において、成形型の前記繊維強化基材側の面に、前記吸引ライン及び隣接する層の貫通孔と連通する溝を形成する請求項12乃至請求項20のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項22】
内部にキャビティが形成された成形型と、前記キャビティに連通する樹脂注入ライン及び吸引ラインと、を備え、前記キャビティに繊維強化基材を配置し、前記キャビティ内を減圧するとともに、樹脂組成物を前記キャビティ内に注入して前記繊維強化基材に含浸させて成形体を成形するよう構成されたRTM成形装置に適用される半成形体であって、
貫通孔が複数形成され、且つ、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において実質的に厚さが変化しない剛性を有する表面成形層と、
前記表面成形層の前記繊維強化基材と反対の側に配置された、前記表面成形層の複数の貫通孔と連通して形成された樹脂流路を含む樹脂拡散部と、
を、前記繊維強化基材の片面または両面に備える半成形体。
【請求項23】
前記表面成形層の前記貫通孔の径が、前記キャビティ内を減圧したときの前記キャビティ内の圧力下において、前記成形体に形状が転写されない所定値以下とされる請求項22に記載の半成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−179760(P2012−179760A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43185(P2011−43185)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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