説明

SARSウイルスを検出するための方法および組成物

本発明は、一般的に、ウイルス検出の分野に関する。特に、本発明は、重症急性呼吸器症候群を引き起こすコロナウイルス(SARS−CoV)ヌクレオチド配列を増幅および検出するためのチップ、プローブ、プライマー、キットおよび方法を提供する。本発明のチップ、プローブ、プライマー、キットおよび方法の臨床上の使用および他の使用も、また検討される。上記チップは、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な支持体を備え、この支持体は、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブをその上に固定し、この2つの異なるヌクレオチド配列の各々は、少なくとも10ヌクレオチドを含有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
2002年の11月以来、重症急性呼吸器症候群(SARS)と呼ばれる疾患が、世界各地の22カ国で報告されている。WHOは、2003年5月2日の時点において、累計6,054例のSARSの症例および感染した人々のうちで417人の死亡を報告している。同じ時期に、中国は、累計3,788例のSARSの症例および感染した人々のうちで181人の死亡を報告している。
【0002】
SARS患者の主な症状としては、熱(38℃より高い)、頭痛、体の痛みが挙げられる。疾患の2〜7日後、患者は、呼吸困難を伴ない得る乾性咳を発症し得る。
【0003】
香港、カナダ、およびアメリカからの知見に基づいて、以前には認識されていなかったコロナウイルスが、SARSの原因として同定されている。研究者は、SARSコロナウイルスが、DNAの中間段階なしで複製し、標準的なコドンを使用する+鎖のRNAウイルスであると見出した(Marraら、Science 2003年5月1日;(電子ジャーナル版(epub ahead of print));およびRotaら、Science 2003年5月1日(電子ジャーナル版))。
【0004】
SARSコロナウイルスは、以前にはヒトまたは動物において検出されていなかった、新しく発見されたウイルスである。SARSコロナウイルスのゲノム構造は、他のコロナウイルスに非常に類似している。SARSコロナウイルスのゲノムは、30K塩基対の長さであり、そのゲノムは、ウイルスにとって非常に大きいとみなされている。SARSコロナウイルスのゲノムは、RNAポリメラーゼ(ポリメラーゼ1aおよび1b)、Sタンパク質(スパイクタンパク質)、Mタンパク質(膜タンパク質)、およびNタンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)などをコードする。
【0005】
現在のところ、SARSコロナウイルスについての3タイプの検出方法:免疫学的方法(例えば、ELISA)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)試験、および細胞培養方法がある。
【0006】
上記3つの検出方法には有意な欠点がある。例えば、ELISAは、確実にSARS患者の血清から抗体を検出し得る。しかし、それらの抗体は、症状の発生から21日後にのみ検出され得る。細胞培養方法は、比較的長い検出サイクルを有し、限られた条件にのみ適用され得る。さらに、細胞培養方法は、生きているウイルスの存在のみを検出し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SARSコロナウイルスの蔓延を予防する重要な段階は、早期の診断ならびに早期の検疫および処置である。RT−PCRは、SARSコロナウイルスの核酸の検出を可能にする唯一の方法である。しかし、RT−PCRは、SARSウイルス発現の前には感染した患者を除去し得ず、RT−PCRの検出率は低い。検出プロセスは、高価なリアルタイムPCR機器を必要とする。このように、RT−PCRは、早期の臨床のスクリーニングおよび診断の要求を満たし得ない。
【0008】
重症急性呼吸症候群(SARS)の迅速で、感度がよく、かつ正確な診断の対する要求が当該分野において存在する。本発明は、当該分野におけるこの要求および他の関連した要求を扱う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、重症急性呼吸症候群を引き起こすコロナウイルス(SARS−CoV)をアッセイするためのチップに関し、そのチップは、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な支持体を含み、この支持体には、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列と相補的な少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブが固定化されており、その各2つの異なるヌクレオチド配列は、少なくとも10個のヌクレオチドを含む。
【0010】
別の局面において、本発明は、サンプル中のSARS−CoVをアッセイするための方法に関し、その方法は:a)上記のチップを提供する工程;b)そのチップを、核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下でSARS−CoVヌクレオチド配列を含有するか、または含有すると推測されるサンプルと接触させる工程;およびc)そのSARS−CoVヌクレオチド配列(そのサンプル中に存在する場合)と、SARS−CoVゲノムの2つの異なるヌクレオチド配列と相補的な少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブとの間にそれぞれ形成されたハイブリッドを評価して、上記サンプル中のSARS−CoVの存在、非存在または量を決定し、それによって、1つまたは両方の上記ハイブリッドの検出が、上記サンプル中のSARS−CoVの存在を示す工程を包含する。
【0011】
複数のハイブリダイゼーション標的の同時に変異する確率は、単一のハイブリダイゼーション標的における変異の確率より非常に小さいので、複数のハイブリダイゼーションプローブを使用することによって、本方法は、単一のハイブリダイゼーションプローブに基づいた試験と比べて、偽陰性結果の発生を減少させる。他の好ましい実施形態(例えば、チップ上のネガティブコントロールプローブおよびブランクスポット)が使用される場合、偽陽性結果の確率はまた、減少され得る。より好ましい実施形態(例えば、チップ上の固定化コントロールプローブおよびポジティブコントロールプローブ)を含むものは、さらにアッセイ結果の検証を提供し得る。好ましいサンプル調製手順である、RNA抽出手順および増幅手順の使用は、本方法の感受性をさらに高め得る。
【0012】
さらに別の局面において、本発明は、SARS−CoVヌクレオチド配列を増幅させるためのオリゴヌクレオチドプライマーに関し、そのオリゴヌクレオチドプライマーは:a)表1に示される、標的SARS−CoVヌクレオチド配列、またはその相補的な鎖と、高ストリンジェンシー下で、ハイブリダイズするか;あるいはb)表1に示されるヌクレオチド配列を含む標的SARS−CoVヌクレオチド配列、またはその相補的な鎖と少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列を含む。プライマーを用いるSARS−CoVヌクレオチド配列を増幅するためのキットおよび方法もまた、企図される。
【0013】
【表1−1】

【0014】
【表1−2】

さらに別の局面において、本発明は、SARS−CoVヌクレオチド配列にハイブリダイズするためのオリゴヌクレオチドプローブに関し、そのオリゴヌクレオチドプローブは:a)表2に示される、標的SARS−CoVヌクレオチド配列またはその相補的な鎖と、高ストリンジェンシー下で、ハイブリダイズするか、あるいはb)表2に示される、ヌクレオチド配列、またはその相補的な鎖を含む標的SARS−CoVヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列を含む。プローブを用いるSARS−CoVヌクレオチド配列のハイブリダイゼーション解析のためのキットおよび方法もまた、企図される。
【0015】
【表2−1】

【0016】
【表2−2】

(発明の詳細な説明)
限定の目的ではなく、開示を明確にするために、本発明の詳細な説明は、以下の小節に分割される。
【0017】
(A.定義)
他に定義されない場合、本明細書中で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に参照された全ての特許、出願、公開された出願および他の刊行物は、それらの全てが参考として援用される。この節に示される定義が、本明細書中で参考として援用された特許、出願、公開された出願および他の刊行物に示される定義と反するか、またはそうでなければ、一致しない場合、この節に示される定義は、本明細書中で参考として援用された定義より優先する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「コロナウイルス科」は、呼吸器疾患の原因である一本鎖RNAウイルスのファミリーをいう。ウイルスの外側のエンベロープは、外向きに放射状に広がり、陰性に染色されたウイルス粒子に特有の冠の形状を与える棍棒状の突起を有する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)」は、インビトロでのDNAの増幅のためのシステムをいう。増幅されるべき標的DNAの2つの領域(各鎖に関して1つ)に相補的である2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーは、過剰のデオキシヌクレオチドおよび熱安定性のDNAポリメラーゼ(例えば、Taq DNAポリメラーゼ)の存在下で、標的DNA(純粋である必要はない)に添加される。連続した温度サイクル(例えば、30サイクル)において、標的DNAは、繰り返し変性され(例えば、約90℃)、プライマー(例えば、50〜60℃で)およびプライマーから伸長した娘鎖(例えば、72℃)にアニールされる。娘鎖自体は、後のサイクルのためのテンプレートとしてはたらき、両方のプライマーと適合するDNAフラグメントは、直線的ではなく、指数関数的に増幅される。従って、元のDNAは、純粋である必要も豊富である必要もなく、それによって、PCR反応は、研究だけではなく、臨床診断および法医科学において広範に使用される。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「ネスト(ネスティド)(nested)PCR」は、連続して2対のプライマーを使用することによって、特異性が改良されるPCRをいう。最初のPCRは、「外側の」プライマー対を用いて行われ、次いで、少量が、「内側の」プライマー対を用いる2回目のPCRのためのテンプレートとして使用される。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「逆転写PCRまたはRT−PCR」は、開始テンプレートがRNAであり、DNAテンプレートを作製するために、最初の逆転写酵素段階の必要性を含む、PCRをいう。いくつかの熱安定性ポリメラーゼは、感知できるほどの逆転写酵素活性を有する;しかし、明示的な逆転写を行い、逆転写酵素を不活性化するか、または生成物を精製し、そして別の従来のPCRを進行することが、より一般的である。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「プライマー」は、代表的に、増幅プロセスにおいて核酸を初回刺激するために、標的配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをいう。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「プローブ」は、代表的に、標的配列の検出を容易にするために、標的配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをいう。用語「標的配列」とは、プローブが特異的に結合する核酸配列をいう。増幅プロセスにおいて標的核酸を初回刺激するために使用されるプライマーとは異なり、プローブは、ポリメラーゼ酵素を使用して標的配列を増幅させるために伸長される必要がない。しかし、プローブおよびプライマーが、多くの場合において構造的に類似しているか、または同一であることは、当業者に明らかである。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「5’および3’のユニバーサルプライマーの濃度は、それぞれ、5’および3’の特異的プライマーの濃度に等しいか、または5’および3’の特異的プライマーの濃度より高い」は、5’ユニバーサルプライマーの濃度が、5’特異的プライマーの濃度に等しいか、または5’特異的プライマーの濃度より高く、そして3’ユニバーサルプライマーの濃度が、3’特異的プライマーの濃度に等しいか、または3’特異的プライマーの濃度より高いことを意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「へアピン構造」は、二本鎖のステム部分および一本鎖のループ部分を含むポリヌクレオチドまたは核酸をいい、ここで、二本鎖のステム部分を形成する2つのポリヌクレオチドまたは核酸の鎖は、ループ部分を形成する単一のポリヌクレオチドまたは核酸の鎖によって連結または分離される。「ヘアピン構造」は、さらに、二本鎖のステム部分から伸長する3’および/または5’の一本鎖領域を含み得る。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「核酸」は、特に、一本鎖、二重鎖、三重鎖、直線状および環状の形態を含む、任意の形態のデオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)をいう。それはまた、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸のキメラおよびそのアナログを含む。本明細書中で記載される核酸は、塩基のアデノシン、シトシン、グアニン、チミジン、およびウリジンからなる周知のデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドから構成され得るか、あるいは、これらの塩基のアナログまたは誘導体から構成され得る。さらに、これまでにないリン酸ジエステル骨格を有する種々の他のオリゴヌクレオチド誘導体(例えば、リン酸トリエステル、ポリヌクレオペプチド(PNA)、メチルホスホネート、ホスホロチオネート、ポリヌクレオチドプライマー、ロックされた核酸など)もまた、本明細書中に含まれる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「相補的なまたは一致した」は、2つの核酸配列が、少なくとも50%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、2つの核酸配列は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。「相補的なまたは一致した」はまた、2つの核酸配列が、低ストリンジェンシー、中間のストリンジェンシーおよび/または高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズし得ることを意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「実質的に相補的なまたは実質的に一致した」は、2つの核酸配列が、少なくとも90%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、2つの核酸配列は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。あるいは、「実質的に相補的なまたは実質的に一致した」は、2つの核酸配列が、高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズし得ることを意味する。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「2つの完全に一致したヌクレオチド配列」は、核酸の二重鎖をいい、ここで、2つのヌクレオチドの鎖は、ワトソン−クリックの塩基対の原理(すなわち、DNA:DNA二重鎖中のA−T対およびC−G対ならびにDNA:RNA二重鎖またはRNA:RNA二重鎖中のA−U対およびC−G対)に従って一致し、2つの鎖の各々に欠失または付加がない。
【0031】
本明細書中で使用される場合:ミスマッチのパーセントを決定する際の「ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー」は、以下:
1)高ストリンジェンシー: 0.1×SSPE(または0.1×SSC)、0.1%SDS、65℃;
2)中間のストリジンジェンシー:0.2×SSPE(または1.0×SSC)、0.1% SDS、50℃(また、中程度のストリンジェンシーともいう);および
3)低ストリンジェンシー: 1.0×SSPE(または5.0×SSC)、0.1%SDS、50℃
の通りである。
【0032】
等価のストリンジェンシーが、代わりの緩衝液、塩および温度を使用して達成され得ることは、理解される。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「遺伝子」は、染色体上の特定の座を占める遺伝の単位をいい、その存在は、異なる対立形質の発生によって確認され得る。スプリット遺伝子の発生を仮定すると、遺伝子はまた、単一のポリペプチドを生成するために必要とされるDNA配列のセット(エキソン)を包含する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「融解温度」(「Tm」)は、核酸の二重鎖(すなわち、DNA:DNA、DNA:RNA、RNA:RNA、PNA:DNA、LNA:RNAおよびLNA:DNAなど)が、変性されるより大きい温度範囲の中間点をいう。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「サンプル」は、本発明のチップ、プライマー、プローブ、キットおよび方法によってアッセイまたは増幅されるべき、標的SARS−CoVを含有し得るものをいう。サンプルは、生物学的サンプル(例えば、生物学的流体または生物学的組織)であり得る。生物学的流体の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水などが挙げられる。生物学的組織は、細胞、普通は、結合組織、上皮組織、筋肉組織および神経組織を含む、ヒト、動物、植物、細菌、真菌またはウイルスの構造の1つの構造材料を形成するそれらの細胞間物質と一緒の特定の種類の凝集体である。生物学的組織の例としてはまた、器官、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞が挙げられる。生物学的組織は、細胞懸濁液サンプルを得るために処理され得る。サンプルはまた、インビトロで調製された細胞の混合物であり得る。サンプルはまた、培養された細胞懸濁液であり得る。生物学的サンプルの場合、サンプルは、粗製のサンプルあるいは元のサンプルの種々の処理または調製後に得られる処理されたサンプルであり得る。例えば、種々の細胞分離方法(例えば、磁力的に活性化された細胞分類)は、体液サンプル(例えば、血液)から標的細胞を分離または濃縮するために適用され得る。本発明に使用されるサンプルは、そのような標的細胞を濃縮した細胞調製物を含む。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「液体(流体)サンプル」は、液体または流体として天然に存在するサンプル(例えば、生物学的流体)をいう。「液体サンプル」はまた、非液体状態(例えば、固体または気体)で天然に存在するが、固体または気体のサンプル物質を含有する液体、流体、溶液または懸濁液として調製されるサンプルをいう。例えば、液体サンプルは、生物学的組織を含有する液体、流体、溶液または懸濁液を包含し得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「PCR産物を評価すること」は、PCR産物の定量的および/または定性的な測定、そしてまた、PCR産物のレベルを示す指標、比率、割合、目視または他の値を得ることをいう。評価は、直接または間接であり得、実際に検出される化学種は、もちろんPCR産物自体である必要はないが、例えば、その誘導体、またはいくつかのさらなる物質であり得る。
【0038】
(B.SARS−CoVをアッセイするためのチップ)
1つの局面において、本発明は、重症急性呼吸症候群を引き起こすコロナウイルス(SARS−CoV)をアッセイするためのチップに関し、そのチップは、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な支持体を含み、この支持体には、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列と相補的な少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブが固定化されており、その各2つの異なるヌクレオチド配列は、少なくとも10個のヌクレオチドを含む。
【0039】
少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列は、任意の適切な組み合わせであり得る。例えば、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列は、SARS−CoVゲノムの保存された領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列、およびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み得る。別の例において、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列は、SARS−CoVゲノムの遺伝子をコードする構造タンパク質内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列、およびSARS−CoVゲノムの遺伝子をコードする非構造タンパク質内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み得る。
【0040】
所望の場合、本発明のチップは、他のタイプのプローブまたは他の特性を含み得る。例えば、チップは:a)以下の3つのオリゴヌクレオチドプローブ:SARS−CoVを含有するか、または含有すると推測されるサンプルが、そのチップと接触する場合、標識されて、任意のハイブリダイゼーション反応に関与しない固定化コントロールプローブ、任意のSARS−CoV配列と相補的でないが、サンプル中に含まれる非SARS−CoV配列と相補的であるポジティブコントロールプローブ、およびサンプル中に含まれる任意のヌクレオチド配列と相補的でないネガティブコントロールプローブ、のうちの少なくとも1つ;ならびにb)ブランクスポット、をさらに含み得る。
【0041】
特定の実施形態において、本発明のチップは、それぞれ、SARS−CoVゲノムの保存された領域内に位置するか、SARS−CoVゲノムの遺伝子をコードする構造タンパク質内に位置するか、または、SARS−CoVゲノムの遺伝子をコードする非構造タンパク質内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドの2つの異なるヌクレオチド配列と相補的な少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを含み得る。
【0042】
SARS−CoVゲノムの任意の保存された領域は、アッセイ標的として使用され得る。例えば、SARS−CoVゲノムの保存された領域は、SARS−CoVのレプリカーゼ1A遺伝子、1B遺伝子またはヌクレオカプシド(N)遺伝子内に位置する領域であり得る。
【0043】
SARS−CoVゲノムの任意の可変領域は、アッセイ標的として使用され得る。例えば、SARS−CoVゲノムの可変領域は、SARS−CoVのスパイク糖タンパク質(S)遺伝子内に位置する領域であり得る。
【0044】
SARS−CoVゲノムの遺伝子をコードする任意の構造タンパク質は、アッセイ標的として使用され得る。例えば、SARS−CoVゲノムの遺伝子をコードする構造タンパク質は、スパイク糖タンパク質(S)、小さいエンベロープタンパク質(E)またはヌクレオカプシドタンパク質(N)をコードする遺伝子であり得る。
【0045】
SARS−CoVゲノムの遺伝子をコードする任意の非構造タンパク質は、アッセイ標的として使用され得る。例えば、SARS−CoVゲノムの遺伝子をコードする非構造タンパク質は、レプリカーゼ1Aまたは1Bをコード化する遺伝子であり得る。
【0046】
別の特定の実施形態において、本発明のチップは、以下の4つのオリゴヌクレオチドプローブ:SARS−CoVのレプリカーゼ1A遺伝子または1B遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドの2つの異なるヌクレオチド配列と相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、およびSARS−CoVのS遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、のうちの少なくとも2つを含み得る。
【0047】
好ましくは、SARS−CoVのレプリカーゼ1A遺伝子または1B遺伝子内に位置する異なるヌクレオチド配列の一方または両方は:a)表3に示される、レプリカーゼ1Aまたは1Bのヌクレオチド配列またはその相補的な鎖と、高ストリンジェンシー下で、ハイブリダイズするか;あるいはb)表3に示される、ヌクレオチド配列、またはその相補的な鎖を含むレプリカーゼ1Aもしくは1Bのヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列を含み得る。より好ましくは、SARS−CoVのレプリカーゼ1A遺伝子または1B遺伝子内に位置する異なるヌクレオチド配列の一方または両方は、表3に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0048】
【表3−1】

【0049】
【表3−2】

また好ましくは、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列は:a)表3に示される、Nヌクレオチド配列またはその相補的な鎖と、高ストリンジェンシー下で、ハイブリダイズするか;あるいはb)表3に示される、ヌクレオチド配列、またはその相補的な鎖を含むNヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列を含み得る。さらに好ましくは、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列は、表3に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0050】
また好ましくは、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列は:a)表3に示される、Sヌクレオチド配列、またはその相補的な鎖と、高ストリンジェンシー下で、ハイブリダイズするか;あるいはb)表3に示される、ヌクレオチド配列またはその相補的な鎖を含むSヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列を含み得る。さらに好ましくは、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列は、表3に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0051】
任意の適切な標識は、固定化コントロールプローブ(例えば、化学標識、酵素標識、免疫原性標識、放射性標識、蛍光標識、発光標識またはFRET標識)に使用され得る。
【0052】
任意の適切な非SARS−CoV配列が、使用され得る。例えば、非SARS−CoV配列は、アッセイされるべきサンプルの内因性の成分であり得る。あるいは、非SARS−CoV配列は、アッセイされるべきサンプル中にスパイクされる。別の例において、スパイクされた非SARS−CoV配列は、Arabidopsis起源の配列であり得る。
【0053】
さらに別の特定の実施形態において、本発明のチップは、SARS−CoVのレプリカーゼ1A遺伝子または1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列と相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVを含有するか、または含有すると推測されるサンプルが、そのチップと接触する場合、標識されて、任意のハイブリダイゼーション反応に関与しない固定化コントロールプローブ、任意のSARS−CoV配列と相補的でないが、サンプル中に含まれる非SARS−CoV配列と相補的であるポジティブコントロールプローブ、およびサンプル中に含まれる任意のヌクレオチド配列と相補的でないネガティブコントロールプローブを含み得る。
【0054】
好ましくは、そのチップは、記載されたプローブの複数のスポット(例えば、SARS−CoVのレプリカーゼ1A遺伝子または1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列と相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、固定化コントロールプローブ、ポジティブコントロールプローブおよびネガティブコントロールプローブの複数のスポット)を含む。
【0055】
本発明のチップはさらに、SARS−CoVに関連しないコロナウイルスのヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブ含み得る。例えば、SARSに関連しないコロナウイルスは、第I群、第II群もしくは第III群のコロナウイルスであり得るか、または以下の種に感染するコロナウイルスである:トリ種(例えば、トリ感染性気管支炎ウイルスおよびトリ感染性喉頭気管支炎ウイルス)、ウマ種(例えば、ウマコロナウイルス)、イヌ種(例えば、イヌコロナウイルス)、ネコ種(例えば、ネココロナウイルスおよびネコ感染性腹膜炎ウイルス)、ブタ種(例えば、ブタ流行性下痢ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルスおよびブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス)、仔ウシ種(例えば、新生仔ウシ下痢コロナウイルス)、ウシ種(例えば、ウシコロナウイルス)、マウス種(例えば、マウス肝炎ウイルス)、パフィノシス(puffinosis)種(例えば、パフィノシスウイルス)、ラット種(例えば、ラットコロナウイルスおよびラットの唾液涙腺炎ウイルス)、シチメンチョウ種(例えば、シチメンチョウコロナウイルス)またはヒト種(例えば、ヒト腸内コロナウイルス)。本発明のチップはさらに、他のタイプのウイルスまたは病原体のヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブを含み得る。本発明のチップを用いてアッセイされ得るウイルスおよび病原体の例示的なリストを、以下の表5に示す。
【0056】
【表5−1】

【0057】
【表5−2】

種々のプローブ(例えば、SARS−CoVゲノムの保存された領域内に位置するヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVゲノムの可変領域内に位置するヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、固定化コントロールプローブ、ポジティブコントロールプローブまたはネガティブコントロールプローブ)は、その5’末端に、ポリdT領域を含み得、支持体上のその固定を増強する。
【0058】
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは、SARS−CoVゲノムの高度に発現されるヌクレオチド配列に相補的である。このようなチップは、初期段階のSARS−CoV感染を検出することにおいて特に有用である。
【0059】
このオリゴヌクレオチドプローブおよび標的SARS−CoVヌクレオチド配列は、任意の適切な長さであり得る。好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブおよび標的SARS−CoVヌクレオチド配列は、少なくとも7、10、20、30、40、50、60、80、90、100または100を超えるヌクレオチドの長さを有する。
【0060】
このオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーは、任意の適切な方法(例えば、化学合成、組換え法および/またはその両方(一般には、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(2000)を参照のこと))によって調製され得る。
【0061】
任意の適切な支持体が、本発明のチップにおいて使用され得る。例えば、この支持体は、ケイ素、プラスチック、ガラス、セラミック、ゴム、およびポリマーの表面からなる群より選択される表面を含み得る。
【0062】
(C.サンプル中のSARS−CoVについてアッセイするための方法)
別の局面において、本発明は、サンプル中のSARS−CoVについてアッセイするための方法に関し、この方法は、a)上記のチップを提供する工程;b)上記のチップと、SARS−CoVヌクレオチド配列を含むサンプルまたはこのヌクレオチド配列を含むと疑われるサンプルとを、核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で接触させる工程;およびc)上記SARS−CoVヌクレオチド配列(上記サンプル中に存在する場合)と、SARS−CoVゲノムの2つの異なるヌクレオチド配列にそれぞれ相補的な上記少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブとの間で形成されるハイブリッドを評価して、上記サンプル中のSARS−CoVの存在、非存在または量を決定し、それにより上記ハイブリッドの一方または両方の検出が、上記サンプル中の上記SARS−CoVの存在を示す工程を包含する。
【0063】
特定の実施形態において、本発明の方法は、a)SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列およびSARS−CoVゲノムの可変性領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列、またはSARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列およびSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むチップを提供する工程;b)上記チップと、SARS−CoVヌクレオチド配列を含むサンプルまたはこのヌクレオチド配列を含むと疑われるサンプルとを、核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で接触させる工程;ならびにc)上記SARS−CoVヌクレオチド配列(上記サンプル中に存在する場合)と、i)SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的な上記オリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVゲノムの可変性領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブとの間で形成されるハイブリッド、またはii)SARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブとの間で形成されるハイブリッド、をそれぞれ評価して、上記サンプル中のSARS−CoVの存在、非存在または量を決定し、それにより上記ハイブリッドの一方または両方の検出が、上記サンプル中の上記SARS−CoVの存在を示す工程、を包含する。
【0064】
別の特定の実施形態において、本発明の方法は、a)SARS−CoVゲノムの保存領域内のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVゲノムの可変性領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、以下の3つのオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つ:標識され、SARS−CoVを含むかまたはこれを含むと疑われるサンプルがチップと接触した場合に、いかなるハイブリダイゼーション反応にも関与しない固定化コントロールプローブ、どのSARS−CoV配列にも相補的でないが、サンプル中に含まれる非SARS−CoV配列に相補的であるポジティブコントロールプローブ、およびサンプル中に含まれるどのヌクレオチド配列にも相補的でないネガティブコントロールプローブ、ならびにブランクスポットを含むチップを提供する工程;b)上記チップと、SARS−CoVヌクレオチド配列を含むサンプルまたはこのヌクレオチド配列を含むと疑われるサンプルとを、核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で接触させる工程;ならびにc)(i)上記SARS−CoVヌクレオチド配列(サンプル中に存在する場合)と、SARS−CoVゲノムの保存領域内のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVゲノムの可変性領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブとの間でそれぞれ形成されるハイブリッド;(ii)固定化コントロールプローブに含まれる標識、またはポジティブコントロールプローブおよび/もしくはネガティブコントロールプローブを含むハイブリッド、ならびに(iii)上記ブランクスポットにおけるシグナルを評価して、サンプル中の上記SARS−CoVの存在、非存在または量を決定する工程、を包含する。
【0065】
好ましくは、本発明のチップは、SARS−CoVのレプリカーゼ1A遺伝子またはレプリカーゼ1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、固定化コントロールプローブ、ポジティブコントロールプローブおよびネガティブコントロールプローブを含み、SARS−CoVの存在は、a)ポジティブハイブリダイゼーションシグナルが、SARS−CoVのレプリカーゼ1A遺伝子またはレプリカーゼ1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、およびSARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つを使用して検出される場合;b)ポジティブシグナルが、固定化コントロールプローブから検出される場合;c)ポジティブハイブリダイゼーションシグナルがポジティブコントロールプローブを使用して検出される場合;d)ポジティブハイブリダイゼーションシグナルが、ネガティブコントロールプローブを使用して検出されない場合;ならびにe)ポジティブハイブリダイゼーションシグナルがブランクスポットにおいて検出される場合に、決定される。
【0066】
SARS−CoVの可変性領域における標的配列を含めると、SARS−CoVのあり得る変異の評価が可能になる。例えば、SARS−CoVのレプリカーゼ1A遺伝子またはレプリカーゼ1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列、またはSARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つを使用してポジティブハイブリダイゼーションシグナルのうちを検出する一方で、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを用いてポジティブハイブリダイゼーションシグナルを検出しないことは、SARS−CoVの変異を示す。
【0067】
本発明の方法は、任意の適切な予後目的および診断目的のために使用され得る。一例において、本発明の方法は、SARS−CoVに感染した患者を、SARS様症状(例えば、発熱または高温、乾いた咳、筋肉痛、呼吸困難、上昇した乳酸デヒドロゲナーゼ、低カルシウム血症、およびリンパ球減少症を有する患者の集団からポジティブに識別するために使用される(Boothら,JAMA,2003 May 6;[印刷より前に電子公開されている])。本発明のチップ、方法およびキットは、上昇した乳酸デヒドロゲナーゼ、低カルシウム血症、およびリンパ球減少症などについて評価することをさらに包含し得る。
【0068】
別の例において、コロナウイルスのヌクレオチド配列に相補的であるが、SARS−CoVに関連しないオリゴヌクレオチドプローブをさらに含むチップが使用され、この方法は、SARS−CoVに感染した患者を、コロナウイルスに感染しているが、SARSには関連しない患者から、ポジティブに同定するために使用され、例えば、コロナウイルスとしては、例えば、トリ種に感染するコロナウイルス(例えば、トリ感染性気管支炎ウイルスおよびトリ感染性咽頭気管支炎ウイルス)、例えば、ウマ種に感染するコロナウイルス(例えば、ウマコロナウイルス)、例えば、イヌ種に感染するコロナウイルス(例えば、イヌコロナウイルス)、例えば、ネコ種に感染するコロナウイルス(例えば、ネココロナウイルスおよびネコ感染性腹膜炎ウイルス)、例えば、ブタ種に感染するコロナウイルス(例えば、ブタ流行性下痢ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルスおよびブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス)、例えば、仔ウシ種に感染するコロナウイルス(例えば、新生仔ウシ下痢コロナウイルス)、例えば、ウシ種に感染するコロナウイルス(例えば、ウシコロナウイルス)、例えば、マウス種に感染するコロナウイルス(例えば、マウス肝炎ウイルス)、例えば、puffinosis種に感染するコロナウイルス(例えば、Puffinosisウイルス)、例えば、ラット種に感染するコロナウイルス(例えば、ラットコロナウイルスおよびラットのSialodacryoadenitisウイルス)、例えば、七面鳥種に感染するコロナウイルス(例えば、七面鳥コロナウイルス)またはヒト種に感染するコロナウイルス(例えば、ヒト腸管コロナウイルス)が挙げられる。
【0069】
なお別の例において、SARS−CoVゲノムの高度に発現されるヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを含むチップが使用され、この方法は、約1日未満から約3日で、初期段階SARS患者(例えば、SARS−CoVに感染したSARS患者)を診断するために使用される。
【0070】
なお別の例において、本発明の方法は、SARSの処置(例えば、インターフェロンまたは種々のRNAウイルスの複製を阻害する薬剤(例えば、リバビリン)での処置)をモニターするために使用される。本発明の方法はまた、薬物スクリーニングアッセイにおいて、潜在的な抗SARS−CoV薬剤を評価するために使用され得る。
【0071】
任意の適切なSARS−CoVヌクレオチド配列がアッセイされ得る。例えば、アッセイされるべきSAROS−CoVヌクレオチド配列は、抽出されたSARS−CoV RNAゲノム配列から増幅される、SARS−CoVのRNAゲノム配列またはDNA配列であり得る。
【0072】
このSARS−CoV RNAゲノム配列は、任意の適切な方法によって調製され得る。例えば、SARS−CoV RNAゲノム配列は、SARS−CoV感染細胞または他の材料からQIAamp Viral RNAキット、Chomczynski−Sacchi技術またはTRIzol(De Paulaら,J.Virol.Methods,98 (2):119−25(2001))を用いて抽出され得る。好ましくは、このSARS−CoV RNAゲノム配列は、QIAamp Viral RNAキットを用いて、SARS−CoV感染細胞または他の材料から抽出される。このSARS−CoV RNAゲノム配列は、任意の適切な供給源から抽出され得る。例えば、このSARS−CoV RNAゲノム配列は、痰または唾液のサンプルから抽出され得る。別の例において、このSARS−CoV RNAゲノム配列は、血液サンプルのリンパ球から抽出され得る。
【0073】
このSARS−CoV RNAゲノム配列は、任意の適切な方法(例えば、PCR)によって増幅され得る。好ましくは、標識は、PCRの間にその増幅されたDNA配列に組み込まれる。任意の適切なPCR、例えば、従来の多重のネスト化PCRまたはRT−PCRが使用され得る。一例において、このPCRは、2工程ネスト化PCRを含み得、第1の工程は、RT−PCRであり、第2の工程は、従来のPCRである。別の例において、このPCRは、複数の5’特異的プライマーおよび3’特異的プライマー(これらの特異的プライマーの各々は、増幅される標的配列に相補的な特異的配列および共通配列を含む)、ならびに5’ユニバーサルプライマーおよび3’ユニバーサルバーサルプライマー(この5’ユニバーサルプライマーは、5’特異的プライマーの共通配列に相補的であり、この3’ユニバーサルプライマーは、3’特異的プライマーの共通配列に相補的である)を使用する、1工程の多重RT−PCRを包含し得る。そしてここでこのPCRにおいて、この5’ユニバーサルプライマーおよび3’ユニバーサルプライマーの濃度は、それぞれ、5’特異的プライマーおよび3’特異的プライマーの濃度以上である。好ましくは、この3’ユニバーサルプライマーおよび/または5’ユニバーサルプライマーは、例えば、蛍光標識で標識される。なお別の例において、このPCRは、複数工程のネスト化PCRまたはRT−PCRを含む。なお別の例において、このPCRは、表4に示される以下の対のプライマーのうちの少なくとも1つを使用して行われる。
【0074】
(表4.例示的SARS−CoVプライマー)
【0075】
【表4−1】

【0076】
【表4−2】

【0077】
【表4−3】

(D.SARS−CoVプライマー、プローブ、キットおよびその使用)
なお別の局面において、本発明は、SARS−CoVヌクレオチド配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーに関し、このオリゴヌクレオチドプライマーは、a)高ストリンジェンシー下で、表1に示される標的SARS−CoVヌクレオチド配列またはその相補鎖とハイブリダイズするか;またはb)表1に示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含む標的SARS−CoVヌクレオチド配列に対して少なくとも90%同一性を有する、ヌクレオチド配列を含む。
【0078】
本発明のプライマーは、任意の適切な型の核酸(例えば、DNA、RNA、PNAまたはこれらの誘導体)を含み得る。好ましくは、このプライマーは、表1に示されるヌクレオチド配列、またはその相補鎖を含む。
【0079】
特定の実施形態において、本発明は、SARS−CoVヌクレオチド配列を増幅するためのキットに関し、このキットは、a)上記のプライマー;およびb)このプローブ(プライマー)を使用してSARS−CoVヌクレオチド配列を増幅し得る核酸ポリメラーゼを含む。好ましくは、この核酸ポリメラーゼは、逆転写酵素である。
【0080】
なお別の局面において、本発明は、SARS−CoVヌクレオチド配列にハイブリダイズさせるためのオリゴヌクレオチドプローブに関し、このオリゴヌクレオチドプローブは、a)高ストリンジェンシー下で、表2に示される標的SARS−CoVヌクレオチド配列もしくはその相補鎖とハイブリダイズするか;またはb)表2に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補鎖を含む標的SARS−CoVヌクレオチド配列に対して少なくとも90%同一性を有する、ヌクレオチド配列を含む。
【0081】
本発明のプローブは、任意の適切な型の核酸(例えば、DNA、RNA、PNAまたはそれらの誘導体)を含み得る。好ましくは、このプローブは、表2に示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含む。また好ましくは、このプローブは、例えば、化学標識、酵素標識、免疫原性標識、放射活性標識、蛍光標識、ルミネッセント標識およびFRET標識で標識される。
【0082】
特定の実施形態において、本発明は、SARS−CoVヌクレオチド配列のハイブリダイゼーション分析のためのキットに関し、このキットは、a)上記のプローブ;およびb)SARS−CoVヌクレオチド配列と上記プローブとの間で形成されるハイブリッドを評価するための手段を含む。
【0083】
このオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、任意の適切な方法によって生成され得る。例えば、このプローブは、化学的に合成され得(概して、Ausubel(編)Current Protocols in Molecular Biology,2.11. Synthesis and purification of oligonucleotides,John Wiley & Sons,Inc.(2000)を参照のこと)、天然源から単離され得、組換え法またはそれらの組み合わせによって生成され得る。合成オリゴヌクレオチドはまた、Matteucciら,J.Am.Chem.Soc.,3:3185−3191(1981)のトリエステル法を使用することによって調製され得る。あるいは、例えば、シアノエチルホスホルアミダイト化学を使用して、Applied Biosynthesis DNA合成機での自動化合成が、好ましくあり得る。好ましくは、このプローブおよびプライマーは、化学的に合成される。
【0084】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーを調製するための適切な塩基は、天然に存在するヌクレオチド塩基(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシルおよびチミン)から選択され得る。これらの塩基はまた、天然に存在しないヌクレオチド塩基または「合成」ヌクレオチド塩基(例えば、8−オキソ−グアニン、6−メルカプトグアニン、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシエチル)ウリジン、2’−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノ−メチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−O−メチルプソイドウリジン、β−D−ガラクトシルキューオシン、2’−O−メチルグアノシン、イノシン、N−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、β−D−マンノシルキューオシン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N−イソペンテニルアデノシン、N−((9−β−D−リボフラノシル−2−メチルチオプリン−6−イル)カルバモイル)スレオニン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチルカルバモイル)スレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン−5−オキシ酢酸、ワイブトキソシン、プソイドウリジン、キューオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、2−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)スレオニン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン、ワイブトシン、および3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジンから選択され得る。
【0085】
同様に、オリゴヌクレオチドの化学アナログ(例えば、ホスホジエステル結合が、例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートまたはホスホルアミデートに改変されるオリゴヌクレオチド)もまた、使用され得る。分解からの保護は、「3’−エンドキャップ」ストラテジーの使用によって達成され得る。このストラテジーによって、ヌクレアーゼ耐性連結が、このオリゴヌクレオチドの3’末端においてホスホジエステル連結に置換され得る(Shawら,Nucleic Acids Res.,19:747(1991))。ホスホルアミデート、ホスホロチオエート、およびメチルホスホネート連結は全て、この様式において適切に機能する。ホスホジエステル骨格のより徹底的な改変が、安定性を付与することが示され、オリゴヌクレオチドの増強された親和性および細胞透過の増大を可能にし得る(Milliganら,J.Med.Chem.,36:1923(1993))。多くの異なる化学ストラテジーは、ホスホジエステル骨格全体を、新規な連結で置換するために使用された。骨格アナログは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ボラノホスフェート、ホスホトリエステル、ホルムアセタール、3’−チオホルムアセタール、5’−チオホルムアセタール、5’−チオエーテル、カーボネート、5’−N−カーボネート、スルフェート、スルホネート、スルファメート、スルホンアミド、スルホン、スルファイト、スルホキシド、スルフィド、ヒドロキシルアミン、メチレン(メチルイミノ)(MMI)またはメチレンオキシ(メチルイミノ)(MOMI)連結を含む。ホスホロチオエートおよびメチルホスホネート改変オリゴヌクレオチドは、自動化オリゴヌクレオチド合成を介してそれらの利用可能性に起因して、特に好ましい。このオリゴヌクレオチドは、「ペプチド核酸」(例えば、(Milliganら,J.Med.Chem.,36:1923(1993)に記載される)であり得る。オリゴヌクレオチドプローブが標的SARS−CoV配列の一部に結合し得るものの少なくとも一部の配列を保有するべきであることが、唯一の要件である。
【0086】
ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーは、任意の適切な長さであり得る。プローブがSARS−CoV標的核酸にハイブリダイズし、プローブまたはプライマーとして有効に機能する(例えば、検出または増幅を容易にする)限りにおいて、プローブまたはプライマーの長さには、上限も下限もない。本発明のプローブおよびプライマーは、50、40、30、20、15または10ヌクレオチド程度の短さまたはそれより短いものであり得る。同様に、このプローブまたはプライマーは、20、40、50、60、75、100または200ヌクレオチド程度の長さ、またはこれより長いもの(例えば、SARS−CoV標的配列の全長まで)であり得る。一般に、このプローブは、相補的な標的核酸鎖のいずれかの少なくとも14ヌクレオチド、好ましくは、少なくとも18ヌクレオチド、およびより好ましくは少なくとも20〜30ヌクレオチドを有し、ヘアピン二次構造を全く含まない。特定の実施形態において、このプローブは、少なくとも30ヌクレオチドまたは少なくとも50ヌクレオチドの長さを有し得る。完全な相補性があるべきであれば、すなわち、この鎖がプローブの配列に同一な配列を含む場合、この二本鎖は、ストリンジェントな条件下ですら比較的安定であり、このプローブは、短くてもよく、すなわち、約10〜30塩基対の範囲であってもよい。このプローブにおいてある程度のミスマッチが予測される場合、すなわち、このプローブが、可変領域または特定の属内の全ての種のような配列の群にハイブリダイズすると疑われる場合、このプローブは、ミスマッチの効果と釣り合いをとるために、プローブは、より長くてもよい(すなわち、15〜40塩基)。
【0087】
このプローブは、SARS−CoV標的遺伝子全体にまたがる必要はない。SARS−CoV標的または対立遺伝子を特異的に同定する可能性を有する標的領域の任意のサブセットが、使用され得る。結論として、この核酸プローブは、標的領域の8個程度の少ないヌクレオチドにハイブリダイズし得る。さらに、このプローブのフラグメントは、これらのフラグメントが型決定されるべきSARS−CoV標的遺伝子に十分に特徴的である限りにおいて、使用され得る。
【0088】
このプローブまたはプライマーは、低ストリンジェント条件下で少なくとも8ヌクレオチドの長さであるSARS−CoV標的ヌクレオチド配列とハイブリダイズし得るはずである。好ましくは、このプローブまたはプライマーは、中程度のストリンジェンシー下または高ストリンジェンシー下でSARS−CoV標的ヌクレオチド配列とハイブリダイズする。
【0089】
なお別の局面において、本発明は、SARS−CoV標的遺伝子を型決定するための、支持体に固定化されたオリゴヌクレオチドプローブのアレイに関し、このアレイは、複数のオリゴヌクレオチドプローブが固定化された、核酸ハイブリダイゼーションにおいて使用するために適切な支持体、a)高ストリンジェンシーで、表3に示されるSARS−CoVヌクレオチド配列またはその相補鎖とハイブリダイズするか;またはb)表3に示されるヌクレオチド配列を含む標的SARS−CoVヌクレオチド配列またはその相補鎖に少なくとも90%の配列同一性を有する、ヌクレオチド配列を含む。
【0090】
複数のプローブは、DNA、RNA、PNAまたはこれらの誘導体を含み得る。これらのプローブのうちの少なくとも1つまたはいくつかは、表1に示されるヌクレオチド配列、またはその相補鎖を含み得る。好ましくは、プローブアレイは、表3に示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖の全てを含む。これらのプローブのうちの少なくとも1つ、いくつかまたは全ては、標識され得る。例示的な標識としては、化学標識、酵素標識、免疫原性標識、放射活性標識、蛍光標識、発光標識およびFRET標識が挙げられる。任意の適切な支持体(例えば、ケイ素、プラスチック、ガラス、セラミック、ゴム、およびポリマーの表面)が使用され得る。
【0091】
(E.アッセイのフォーマット)
(プローブの固定化)
本発明の方法、プローブおよびプローブアレイは、溶液中で使用され得る。好ましくは、チップフォーマットにおいて、例えば、固体支持体上に固定化されたプローブを使用することによって、行われる。
【0092】
このプローブは、任意の適切な表面、好ましくは、固体支持体(例えば、ケイ素、プラスチック、ガラス、セラミック、ゴムまたはポリマーの表面など)上に固定化され得る。このプローブはまた、3次元の多孔性ゲル基材(例えば、Packard HydroGel chip(Broudeら,Nucleic Acids Res.,29(19):E92(2001))中に固定化され得る。
【0093】
アレイベースのアッセイについて、これらのプローブは、好ましくは、固体支持体(例えば、「バイオチップ」)に固定化される。この固体支持体は、生物学的、非生物学的、有機的、無機的、またはこれらのいずれかの組み合わせであり得る。この固体支持体は、粒子、繊維(strand)、凝固物(precipitate)、ゲル、シート、チューブ、球体、容器、キャピラリー、パッド、スライス、フィルム、プレート、スライドなどとして存在する。
【0094】
プローブのライブラリーを含むマイクロアレイバイオチップは、多くの周知のアプローチによって調製され得る。これらのアプローチとしては、例えば、光指向性方法(例えば、米国特許第5,143,854号、同第5,384,261号または同第5,561,071号に記載されるVLSIPSTM);ビーズベースの方法(例えば、米国特許第5,541,061号に記載される);およびピンベースの方法(例えば、米国特許第5,288,514号に記載される)が挙げられる。米国特許第5,556,752号(これは、VLSIPSTMを使用して、マイクロアレイとして異なる二本鎖プローブのライブラリーを調製することを詳述する)はまた、マイクロアレイにおけるヘアピンプローブのライブラリーの調製に適している。
【0095】
フローチャネル法(例えば、米国特許第5,677,195号および同第5,384,261号に記載される)は、種々の異なるプローブを有するマイクロアレイバイオチップを調製するために使用され得る。この場合、基材の特定の活性化された領域は、プローブがフローチャネルを通って支持体に送達される場合、他の領域から機械的に分離される。フローチャネル法の詳細な説明は、湿潤促進剤の保護コーティングを使用して、設計された流路を通る液体の指向性の流れを増強することを含め、米国特許第5,556,752号に記載され得る。
【0096】
スポット方法もまた、種々のプローブが固定化されたマイクロアレイバイオチップを調製するために使用され得る。この場合、反応物は、この支持体の選択された領域に比較的少量、直接沈着させることにより、送達される。いくつかの工程において、当然のことながら、支持体表面全体が、噴霧されてもよいし、そうでなければ、特定の溶液でコーティングされてもよい。特定のフォーマットにおいて、ディスペンサーが、領域間を移動し、各工程に必要な程度だけ、プローブまたは他の試薬を沈着させる。代表的なディスペンサーは、このプローブ含有溶液または他の流体を支持体に送達するためのマイクロピペット、ナノピペット、インクジェット型カートリッジおよびピン、および必要に応じて、この支持体に対するこれらの送達デバイスの位置を制御するためのロボットシステムを含む。他のフォーマットにおいて、このディスペンサーは、一連のチューブまたは複数のウェルトレイ、マニホルド、および送達デバイスのアレイを備え、その結果、種々の試薬が、同時に反応領域に送達され得る。スポット方法は、当該分野で周知であり、例えば、米国特許第5,288,514号、同第5,312,233号および同第6,024,138号に記載されるものを含む。いくつかの場合において、フローチャネルと支持体の所定の領域に対する「スポッティング」の組み合わせはまた、固定化されたプローブを有するマイクロアレイバイオチップを調製するために使用され得る。
【0097】
プローブを固定化するための固体支持体は、好ましくは平坦であるが、別の表面構成をとってもよい。例えば、この固体支持体は、隆起した領域または凹んだ領域を含み得る。この領域の上で、プローブ合成が行われるか、またはこの場所にプローブが結合される。いくつかの実施形態において、この固体支持体は、適切な吸光特徴を提供するように選択され得る。例えば、この支持体は、重合化ラングミュアブロジェット膜、ガラスまたは官能化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SiN、改変ケイ素、または種々のゲルもしくはポリマー(例えば、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはこれらの組み合わせ)のうちのいずれか1つであり得る。他の適切な固体支持体材料は、当業者に容易に明らかである。
【0098】
固体支持体の表面は、反応性基を含み得、この反応性基としては、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、チオールなどが挙げられ、これらの基は、オリゴヌクレオチドまたは核酸と結合される反応性基に結合させるために適切である。好ましくは、この表面は、光学的に透明であり、表面Si−−OH官能基(例えば、シリカ表面で見出されるもの)を有する。
【0099】
これらのプローブは、当業者に周知の化学的手段または物理的手段(例えば、イオン結合力、共有結合力または他の力)によって、支持体に結合され得る。核酸およびオリゴヌクレオチドの固定化は、当該分野で周知の任意の手段により達成され得る(例えば、Dattaguptaら,Analytical Biochemistry,177:85−89(1989);Saikiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:6230−6234(1989);およびGravittら,J.Clin.Micro.,36:3020−3027(1998)を参照のこと)。
【0100】
このプローブは、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて都合がよい場合には、スペーサー分子(例えば、Lockhartらに対する米国特許第5,556,752号に記載される)によって支持体に結合されて、このプローブの二本鎖部分の間に間隔が設けられ得る。スペーサー分子は、代表的には、6〜50原子の間の長さを含み、この支持体に結合する表面結合部分を含む。この支持体への結合は、例えば、(ポリ)トリフルオロクロロエチレン表面を有する支持体を用いて、炭素−炭素結合によって、または好ましくは、シロキサン結合(例えば、固体支持体としてガラスまたは二酸化ケイ素を用いて)達成され得る。シロキサン結合は、その支持体と、スペーサーのトリクロロシリル基またはトリアルコキシシリル基とを反応させることによって形成され得る。アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、またはヒドロキシプロピルトリエトキシシランは、有用な表面結合基である。
【0101】
このスペーサーはまた、伸長した部分またはより長い鎖の部分を含み得る。これらの部分は、そのプローブの表面結合部分に結合される。例えば、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、およびカルボキシル基は、スペーサーの伸長した部分を、表面結合部分に結合するために適している。このスペーサーの伸長した部分は、任意のその後のポリマー合成の条件に対して不活性である、種々の分子のいずれかであり得る。これらのより長い鎖の部分は、代表的には、アリールアセチレン、2〜14個のモノマーユニットを含むエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、ペプチド、またはこれらの組み合わせである。
【0102】
いくつかの実施形態において、このスペーサーの伸長した部分はポリヌクレオチドであるか、またはこのスペーサー全体が、ポリヌクレオチドであり得る。このスペーサーの伸長した部分はまた、ポリエチレングリコール、ポリヌクレオチド、アルキレン、多価アルコール、ポリエステル、ポリアミン、ポリホスホジエステルおよびこれらの組み合わせから構築され得る。さらに、プローブの合成における使用に関して、スペーサーは、スペーサーの遠位端または末端(固体支持体の反対側)の官能基(例えば、ヒドロキシル、アミノまたはカルボン酸)に結合された保護基を有し得る。脱保護およびカップリングの後、この遠位端は、オリゴマーまたはプローブに共有結合され得る。
【0103】
本発明の方法は、一度に単一のプローブを用いて単一のサンプルを分析するために使用され得る。好ましくは、この方法は、ハイスループットフォーマットで行われる。例えば、複数のサンプルが、単一のプローブで同時に分析され得るか、または単一のサンプルが、複数のプローブを使用して同時に分析され得る。より好ましくは、複数のサンプルが、複数のプローブを使用して同時に分析され得る。
【0104】
(ハイブリダイゼーション条件)
ハイブリダイゼーションは、当該分野で公知の任意の適切な技術の下で行われ得る。ハイブリダイゼーション条件が、ハイブリダイゼーションの程度、ハイブリダイゼーションの特異性のレベル、および非特異的結合のバックグラウンドレベルを増大または減少させるために、(すなわち、ハイブリダイゼーションまたは洗浄の塩濃度または温度を変化させることによって)変化し得ることは、当業者に明らかである。これらのプローブと標的ヌクレオチド配列との間のハイブリダイゼーションは、任意の適切なストリンジェンシー(高ストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、または低ストリンジェンシーを含む)の下で行われ得る。代表的には、ハイブリダイゼーションは、高ストリンジェンシーの条件下で行われる。
【0105】
上記プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーションは、均質であり得る(例えば、分子ビーコンにおいて使用される代表的条件(Tyagi S.ら,Nature Biotechnology,14:303−308(1996);および米国特許第6,150,097号)およびハイブリダイゼーション保護アッセイにおいて使用される代表的条件(Gen−Probe,Inc)(米国特許第6,004,745号))か、または不均質であり得る(異なる型のニトロセルロースベースのハイブリダイゼーションにおいて使用される代表的条件および磁性ビーズベースのハイブリダイゼーションにおいて使用される代表的条件)。
【0106】
この標的ポリヌクレオチド配列は、高〜低のストリジェンシーハイブリダイゼーション条件および洗浄条件の下で、上記標的配列のオリゴヌクレオチドと安定なハイブリッドを形成するオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーションすることによって検出され得る。ハイブリダイゼーションによる検出の利点は、使用されるプローブに依存して、さらなる特異性があり得ることである。上記プローブが、標的配列に対して完全に相補的(すなわち、約99%以上)であることが予想される場合、高ストリジェンシー条件が使用される。いくつかのミスマッチが予想される場合(例えば、プローブが完全には相補的でないという結果から、改変株が予想される場合)、ハイブリダイゼーションのストリジェンシーはより低下し得る。しかし、条件は、非特異的ハイブリダイゼーションを最小化するか、または除去するために選択される。
【0107】
ハイブリダイゼーションに影響する条件および非特異的ハイブリダイゼーションに対して選択する条件は、当該分野において公知である(Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版,J.Sambrook,E.Fritsch,T.Maniatis,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)。一般的に、より低い塩濃度およびより高い温度が、ハイブリダイゼーションのストリジェンシーを増加させる。例えば、一般的にストリジェントなハイブリダイゼーション条件としては、およそ0.1×SSC、0.1% SDSを含む溶液中での、約65℃のインキュベーション温度/洗浄温度におけるインキュベーションが挙げられる。中ストリジェントな条件としては、およそ1〜2×SSC、0.1% SDSを含む溶液中での、約50℃〜65℃のインキュベーション温度/洗浄温度におけるインキュベーションが挙げられる。低ストリジェントな条件は、2×SSCおよび約30℃〜50℃である。
【0108】
ハイブリダイゼーションおよび洗浄の代替的方法は、まず低ストリジェンシー条件(5×SSPE、0.5% SDS)が実行され、続いて3M塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)の存在下で高ストリジェンシー洗浄を実行することである。このTMACの効果は、A−T塩基対およびG−C塩基対の相対的な結合を均等にし、所定の温度でのハイブリダイゼーションの効率が、ポリヌクレオチドの長さとより密接に対応することである。TMACを使用して、洗浄の温度を変動して所望のストリジェンシーのレベルを達成することが可能である(Woodら,Proc.Natl.Acad.Sci. USA,82:1585−1588(1985))。
【0109】
ハイブリダイゼーション溶液は、25%ホルムアミド、5×SSC、5×デンハート溶液、100μg/mlの一本鎖DNA、5%硫酸デキストラン、またはプローブハイブリダイゼーションに有用であることが公知な他の試薬を含み得る。
【0110】
(ハイブリッドの検出)
上記プローブと標的SARS−CoV核酸との間のハイブリダイゼーションの検出は、当該分野で公知の(例えば、プローブ、二次プローブ、標的核酸またはそれらの組み合わせを標識すること)任意の方法で実施され得、そして本発明の目的に適切である任意の方法によって実施され得る。あるいは、このハイブリッドは、検出可能な標識の非存在下において、質量分析によって検出され得る(例えば、米国特許番号6,300,076号)。
【0111】
検出可能な標識は、ハイブリダイゼーションの後に直接的にか、または間接的にのどちらかで検出され得る部分である。言い換えると、検出可能な標識は、測定可能な物理的特徴を有するか(例えば、蛍光または吸光度)、または酵素反応の参加者である。直接標識を使用して、標的ヌクレオチド配列またはプローブが標識され、ハイブリッドの形成は、ハイブリッド中の標識を検出することによって評価される。間接標識を使用して二次プローブが標識され、ハイブリッドの形成は、二次プローブともとのハイブリッドとの間に形成される二次ハイブリッドを検出することによって、評価される。
【0112】
プローブまたは核酸を標識する方法は、当該分野で周知である。適切な標識としては、フルオロフォア、発色団、発光団、放射性同位元素、電子密度試薬、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)、特異的な結合パートナーを有する酵素およびリガンドが挙げられる。特に有用な標識は、酵素的活性基(例えば、酵素(Wisdom,Clin.Chem.,22:1243(1976));酵素基質(英国特許第1,548,741号);補酵素(米国特許第4,230,797号および同第4,238,565号)および酵素インヒビター(米国特許第4,134,792号);蛍光剤(SoiniおよびHemmila,Clin.Chem.,25:353(1979));発色団(フィコビリタンパク質を含む)、ルミネサー(luminescer)(例えば、ケミルミネサー(chemiluminescer)およびバイオルミネサー(bioluminescer))(GorusおよびSchram,Clin.Chem.,25:512(1979)および同書,1531);特異的に結合可能なリガンド(すなわち、タンパク質結合リガンド);抗原;および放射性同位体(例えば、H、35S、32P、125I、および14C)を含む残基)である。
【0113】
このような標識は、それら自身の物理的特性(例えば、蛍光剤、発色団および 放射性同位元素)、またはそれらの反応特性もしくは結合特性(例えば、抗体、酵素、基質、補酵素およびインヒビター)に基づいて検出される。リガンド標識もまた、オリゴヌクレオチドプローブ(すなわち、捕獲プローブ)の固相捕獲に有用である。例示的な標識としては、ビオチン(標識されたアビジンまたはストレプトアビジンへの結合によって検出可能)および酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ(酵素基質を添加して、有色反応生成物を生成することによって検出可能)が挙げられる。
【0114】
例えば、放射性同位体で標識したプローブまたは標的核酸はオートラジオグラフィによって検出され得る。あるいは、蛍光性部分で標識されたプローブまたは標的核酸は、当該分野で公知のような蛍光定量法によって検出され得る。ハプテンまたはリガンド(例えば、ビオチン)で標識された核酸は、標識されたリガンドに結合するハプテンまたはタンパク質に対する、抗体あるいは抗体色素(例えば、アビジン)を添加することによって検出され得る。
【0115】
さらなる選択肢として、上記プローブまたは核酸は、ハイブリダイゼーションを検出するためのさらなる試薬を必要とする部分で標識され得る。この標識が酵素である場合、標識された核酸(例えば、DNA)は、最終的には適切な媒体中に配置され、触媒の程度を決定する。例えば、補因子で標識された核酸は、その標識が酵素についての補因子であり、基質である酵素を添加することによって検出され得る。従って、この酵素がホスファターゼである場合、媒体はニトロフェニルホスフェートを含み得、その色を観察することによって、生成されるニトロフェノールの量をモニタリングし得る。この酵素がβ−ガラクトシダーゼである場合、媒体は、o−ニトロ−フェニル−D−ガラクト−ピラノシドを含み得る。o−ニトロ−フェニル−D−ガラクト−ピラノシドもまた、ニトロフェノールを遊離する。後半の例示的な例としては、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パパインおよびペルオキシダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。インサイチュハイブリダイゼーション研究について、基質の最終生成物は、好ましくは水不溶性である。他の標識(例えば、色素)は、当業者に明白である。
【0116】
上記標識は、DNA結合リガンド(例えば、アクリジン染料、フェナントリジン、フェナジン、フロクマリン、フェノチアジンおよびキノリン)に直接的に結合し得る。この結合は、直接の化学的結合(例えば、共有結合を含む)によるか、または間接の結合(例えば、マイクロカプセルまたはリポソーム中での標識の取り込みによる)によるものであり、これは結合リガンドに同様に結合する。標識がDNA結合リガンド(例えば、インターカレーター化合物)に結合することによる方法は、当該分野で周知であり、任意の便利な方法が使用され得る。代表的なインターカレートとしては、モノ−アジドアミノアルキルメチジウム化合物またはビス−アジドアミノアルキルメチジウム化合物またはエチジウム化合物、エチジウムモノアジドエチジウムジアジド、エチジウムダイマーアジド(Mitchellら,J Am.Chem.Soc.,104:4265(1982)))、4−アジド−7−クロロキノリン、2−アジドフルオレン、4’−アミノメチル−4,5’−ジメチルアンゲリシン、4’−アミノメチル−トリオキシサレン(trioxsalen)(4’アミノメチル−4,5’,8−トリメチル−ソラレン)、3−カルボキシ−5−または−8−アミノ−または−ヒドロキシ−ソラレンが挙げられる。特異的な核酸結合アジド化合物は、Forsterら,Nucleic Acid Res.,13:745(1985)により記載されている。他の有用な光反応性のインターカレーターは、ピリミジン残基と(2+2)環付加物を形成するフルクマリンである。アルキル化剤はまた、DNA結合リガンドとして使用され得、それらとしては、例えば、ビス−シクロエチルアミンおよびエポキシドまたはアジリジン(例えば、アフラトキシン、多環炭化水素エポキシド、マイトマイシンおよびノルフィリン(norphillin)A)が挙げられる。特に有用な挿入剤の光活性形態は、アジドインターカレーターである。その反応性のニトレンは、長波長の紫外光または可視光で容易に生成され、アリールアジドのニトレンは、再構成生成物より挿入反応の方を優先する(Whiteら,Meth.Enzymol.,46:644(1977))。
【0117】
上記プローブはまた、特定の形式(例えば、逆ドットブロット(reverse dot blot)のための10〜100個のT残基の添加、またはウシ血清アルブミンの結合または磁気的ビーズ上への固定)で使用するために改変され得る。
【0118】
非間接的な検出方法によってハイブリダイゼーションを検出する場合、検出可能に標識された第二のプローブが、プローブと標識との間の最初のハイブリダイゼーションの後に、またはプローブおよび標的のハイブリダイゼーションの間に、添加され得る。必要に応じて、このハイブリダイゼーション条件は、二次プローブの添加の後に改変され得る。ハイブリダイゼーションの後、ハイブリダイズしていない二次プローブは、最初のプローブから分離され得る(例えば、最初のプローブが固体支持体上に固定されている場合、洗浄による)。固体支持体の場合において、支持体上の位置に結合した標識の検出は、サンプル中の標的ヌクレオチド配列のプローブに対するハイブリダイゼーションを示す。
【0119】
検出可能に標識された二次プローブは、特異的プローブであり得る。あるいは、検出可能に標識されたプローブは、変性プローブ(例えば、米国特許第5,348,855号に本質的に記載されるゲノムDNA全体のような配列の混合物)であり得る。後半の場合において、標識は、その二次プローブが二本鎖DNAを含む場合、インターカレート色素(intercalating dye)を用いて達成され得る。好ましいDNA結合リガンドは、上に記載したようなインターカレーター化合物である。
【0120】
二次プローブはまた、ランダムヌクレオチドプローブ配列のライブラリーであり得る。二次プローブの長さは、二次プローブによって検出される固体支持体上の一次プローブまたは標的ヌクレオチド配列の長さおよび組成物を考慮して決定されるべきである。このようなプローブライブラリーは、光活性化試薬で標識された3’端または5’端および検出試薬(例えば、フルオロフォア、酵素、色素、発光団,または他の検出可能な公知の部分)でロードされた他の端を、好ましくは提供する。
【0121】
標識された核酸を作製する際に使用される特定の配列は、異なり得る。従って、例えば、アミノ置換ソラレンは、まず核酸に光化学的に結合し得、この生成物は、標識に結合し得ることによってペンダントアミノ基を有する(すなわち、標識は、DNA結合リガンドと試験サンプル中の核酸を光化学的に反応させることによって実施され得る)。あるいは、上記ソラレンは、まず標識(例えば、酵素)に結合し、次いでその核酸に結合し得る。
【0122】
好都合なことに、DNA結合リガンドは、まず化学的に標識と結合し、その後核酸プローブと結合する。例えば、ビオチンはカルボキシル基を運ぶので、ビオチンは、アミド形成またはエステル形成によって、フロクマリンまたはビオチンの生物学的活性の光化学的活性への干渉を伴わずに、フロクマリンと結合し得る。アミノメチルアンゲリシン(Aminomethylangelicin)、ソラレンおよびフェナントリジウム(phenanthridium)の誘導体は、臭化フェナントリジウムおよびこれらの誘導体(例えば、塩化アミノプロピルメチジウム)が結合し得るのと同様に(Hertzbergら,J.Amer.Chem.Soc.,104:313(1982))、標識に結合し得る。あるいは、二官能性試薬(例えば、ジチオビススクシンイミジルプロピオネートまたは1,4−ブタンジオールジグリシジルエステル)は、DNA結合リガンドを反応物がアルキルアミノ残基を有する標識に結合させるために、溶媒、比率、および反応の条件に関してさらに公知の様式で直接的に使用され得る。特定の二官能性試薬、グルタルアルデヒドは、適切であり得ない可能性がある。なぜならば、グルタルアルデヒドが結合する間、これらは核酸を改変し得、従ってアッセイを干渉し得るからである。このような困難を防ぐために、決まった注意を払い得る。
【0123】
また好都合なことに、DNA結合リガンドは、スペーサーによって標識に結合し得る。スペーサーは、約40原子まで(好ましくは、約2〜20原子)の鎖を含み、炭素、酸素、窒素および硫黄が挙げられるが、これらに限定されない。このようなスペーサーは、多機能性ラジカルのメンバーであり、ペプチド、炭化水素、ポリアルコール、ポリエーテル、ポリアミン、ポリイミンおよび炭水化物(例えば、−グリシル−グリシル−グリシル−または他のオリゴペプチド、カルボニルジペプチド、およびω−アミノ−アルカン−カルボニルラジカルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。糖、ポリエチレンオキシドラジカル、グリセリル、ペンタエリトリトールおよび類似のラジカルもまた、スペーサーとして役割を果たし得る。スペーサーは、核酸結合リガンドおよび/または標識に直接的に結合し得るか、あるいはこの結合は、二価ラジカルの連結(例えば、ジチオビス−スクシンイミジル−プロピオネート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジイソシアネート、カルボジイミド、グリオキサール、グルタルアルデヒドなど)を含み得る。
【0124】
ハイブリダイゼーションを間接的に検出するための二次プローブはまた、例えば、TyagiおよびKramer、Nature Biotech.、14:303−309(1996)またはLizardiらに対する米国特許第5,119,801号および同第5,312,728号に記載される「ビーコンプローブ」方法におけるエネルギー移動によって検出され得る。当該分野で公知のいずれのFRET検出系も、本方法において使用され得る。例えば、AlphaScreenTM系が使用され得る。AlphaScreen技術は、「Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay」方法である。
【0125】
680nmでのレーザー光での照射に関して、供与体ビーズ中の光増感剤は、周囲の酸素(ambient oxygen)を一重項状態の酸素に変換する。励起された一重項状態の酸素分子は、急速に崩壊する前に、およそ250nm(1個のビーズの直径)に発散する。アクセプタービーズが、供与体ビーズの非常に近接している場合、生物学的相互作用の効力によって、一重項状態の酸素分子は、アクセプタービーズ中の化学発光基と反応し、即座に、同じビーズ中の蛍光アクセプターにエネルギーを移す。これらの蛍光アクセプターは、発光の波長を520〜620nmに移動させる。この全体の反応は、0.3秒の崩壊の半減期を有し、測定は、時間分解様式(time−resolved mode)で行われる。他の例示的なFRET供与体/アクセプター対としては、Fluorescein(供与体)およびテトラメチルローダミン(アクセプター)(55Åの有効距離);IAEDANS(供与体)およびFluorescein(アクセプター)(46Åの有効距離);ならびにFluorescein(供与体)およびQSY−7色素(アクセプター)(61Åの有効距離)(Molecular Probes)が挙げられる。
【0126】
核酸検出のための定量的アッセイはまた、本発明に従って行われ得る。マイクロアッセイスポットに結合した二次プローブの量は、測定され得、そしてサンプル中の核酸標的の量と関連し得る。サンプルの希釈は、公知の量の標的核酸を含むコントロールを用いて使用され得る。これらの工程を実行するための正確な条件は、当業者には明らかなようにみえる。マイクロアレイアッセイ分析において、検出可能な標識は、プローブアレイをx線フィルムもしくはホスホイメージャー(phosphoimager)の隣に配置し、プローブが結合している部位を同定することによって、可視化され得るか、または評価され得る。蛍光は、電荷結合素子(CCD)またはレーザースキャンニングによって検出され得る。
【0127】
(試験サンプル)
任意の適切なサンプル(ヒト、動物または環境(例えば、土または水)起源のサンプルを含む)は、本方法を使用して分析され得る。試験サンプルとしては、体液(例えば、血液、精液、脳脊髄液、膿、羊水、涙)、または半固体もしくは流体分泌物(例えば、痰、唾液、肺の吸引物(aspirate)、膣もしくは尿道の排泄物、便または固体組織サンプル(例えば、生検材料または絨毛膜絨毛の標本)が挙げられ得る。試験サンプルはまた、皮膚、性器、または咽喉から綿棒で回収されるサンプルを含む。
【0128】
試験サンプルは、当該分野で周知の種々の手段によって処理され、核酸を単離し得る(一般的には、Ausubel(編)Carrrent Protocols in Molecular Biolo,2.Preparation and Analysis of DNA、および4.Preparafion and Analsis of RNA,JohnWiley & Sons,Inc.(2000)を参照のこと)。標的核酸が、直接的なサンプルの形態か、または精製された核酸もしくはアンプリコンの形態であり得るRNAあるいはDNAであり得ることは、当業者に明らかである。
【0129】
精製された核酸は、上記のサンプルから抽出され得、そして純度について分光光分析的に(spectraphotometrically)または他の機器によって測定され得る。核酸増幅の当業者にとって、アンプリコンは、種々の増幅方法による最終生成物として得られる。種々の増幅方法は、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号および同第4,965,188号))、NASBA(核酸配列ベースの増幅)(米国特許第5,130,238号))、TMA(転写介在増幅))(Kwohら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86:1173−1177(1989))、SDA(鎖置換増幅(Walkerら,米国特許第5,270,184号によって記載))、tSDA(好熱性の鎖置換増幅(米国特許第5,648,211号および欧州特許No.EP0 684315))、SSSR(自立配列複製)(米国特許第6,156,508号)である。
【0130】
特異的な実施形態において、ヒト起源のサンプルがアッセイされる。さらに別の特異的な実施形態において、唾液、尿、血液、組織切片、食物、土または水のサンプルがアッセイされる。
【0131】
(キット)
本プローブは、キット形式中に、好ましくは標的遺伝子を検出するためのプローブの使用についての指示を含んでパッケージングされ得る。上記キットの構成要素は、共通の容器に一緒にパッケージングされ得、代表的には、本明細書中に開示される方法の選択された特定の実施形態を実行するための書面の指示を含む。検出方法のための構成要素は、本明細書中に記載されるとおり、必要に応じてキット中に含まれ得る。これらの構成要素は、例えば、第二のプローブ、および/または試薬、ならびに標識検出を実施するための手段(例えば、放射性標識、酵素基質、抗体など)である。
【実施例】
【0132】
(実施例1.プローブ設計)
SARS−CoVの種々のゲノム配列が、利用可能である(例えば、表6を参照のこと)。
【0133】
(表6:最近得られたSARSコロナウイルスのゲノム配列(2003年5月2日現在))
【0134】
【表6】

表6に示される9種のゲノムの大きさは、非常に類似している。中国によって提出された5種のゲノムは種々のレベルの未同定のヌクレオチド(N)を含む。
【0135】
以下の表7は、SARSコロナウイルスの9種のゲノム間の類似性または同一性を示す。
【0136】
(表7.SARSコロナウイルスの9種のゲノムの間の類似性の比較)
【0137】
【表7】

SARSコロナウイルスの9種のゲノムの類似性を比較した。表7に示される数値は、2種のゲノムの間の類似性の割合を表す。表7中の各数値は、2種のゲノムにおける同じ塩基の数を比較する塩基の総数(約30,000塩基)で割り、次いで100倍した数と等しい。
【0138】
表7は、SARSコロナウイルスの種々のゲノムが、BJ04以外は互いに非常に類似していることを示す。99%未満の類似性は、そのヌクレオチド配列中にNが存在することによって生じる。BJ01〜BJ04に由来するヌクレオチド配列中のNすべてが、他のゲノムと同じであると見なされる場合(この仮定は、上記ゲノムの他の部分の比較に基づいて妥当である)、その9つのゲノムは、互いに対して99%類似している。
【0139】
SARSコロナウイルスが、表6および表7において示されるように保存的である場合、核酸ベースの検出方法が、合理的である。図1Bは、SARSコロナウイルスのゲノムの種々の部分を同時に検出すると、その検出方法の感度および特異性が有意に増加され得ることを、示す。
【0140】
本発明者らは、2つの全体的計画を有する。一方の計画は、SARSコロナウイルスのゲノムの種々の部分についての多重PCRを実施し、検出用プローブとしてPCR産物を使用することである。2番目の計画は、SARSコロナウイルスのゲノムの種々の部分についての多重PCRを実施し、検出用プローブとして70マーオリゴヌクレオチドを使用することである。
【0141】
(標的遺伝子選択)
SARSコロナウイルスのゲノムの分析に基づいて、本発明者らは、3つの遺伝子を標的遺伝子として選択した。これらの3つの遺伝子は、orf 1Aポリメラーゼタンパク質、orf 1Bポリメラーゼタンパク質、スパイクタンパク質、および核カプシドタンパク質である。本発明者らは、ヒトハウスキーピング遺伝子であるGAPD(グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ)(GenBank登録番号NM_002046)を、RNA単離についてのポジティブコントロールとして選択した。本発明者らは、遺伝子(Arabidopsis)(GenBank登録番号AJ441252)を、組込んだポジティブコントロールとして選択した。この遺伝子(Arabidopsis)は、ヒトおよび一般的病原体のヌクレオチドに対して何の相同性も有さない。
【0142】
(プライマーおよびプローブの設計)
SARSコロナウイルスの上記3つのタンパク質を分析し、それらの保存配列を比較した。多重PCRの要件に従って、複数のプライマー対を、種々のゲノムの間で保存された配列に基づいて設計した。この複数のプライマー対は、同様のTm値を有し、距離が1.5Kb離れており、200bp〜900bpの増幅産物を有する。さらに、複数の非重複オリゴヌクレオチド(70マー)を、各プライマー対の増幅産物に基づいて設計した。これらのプライマーおよびプローブを、BLASTNを使用して最新のNCBI核酸非重複ヌクレオチドデータベースと比較し、上記プローブおよびプライマーの特異性を保証した。
【0143】
(実施例2.血液サンプルの予備処理プロセス)
血液サンプルの予備処理は、比較的複雑なプロセスを含む。しかし、報告されている血清中での比較的低いSRASウイルス濃度を考慮すると、本明細書中に記載される予備処理は、約2mlの全血からリンパ球を有効に濃縮して、検出機会を増加させ得る。
【0144】
(1.サンプルの収集および移動)
1)病室にて患者から収集したサンプルを、第一移動ウィンドウに配置する。その後、そのウィンドウのドアを閉じ、鍵をかける。
【0145】
2)その後、それらのサンプルを、第二移動ウィンドウに移す。それらのサンプルを、ノートに記入する。3つのバーコード標識を印刷する。それらのサンプルを、従来の検出のために試験し、予備処理移動ウィンドウへと移す。
【0146】
(2.バイオセーフキャビネットの使用)
1)予備処理プロセスを実施するための病院職員が、上記予備処理室に入室し、そのドアを閉じる。その後、そのバイオセーフキャビネットを作動させる。その後、そのキャビネットのファンおよび照明が、自動的に作動する。
【0147】
2)電力開閉器の表示ライト、気流速度スイッチの表示ライト、および作業ライトスイッチの表示ライトが正常に作動するかを、チェックする。空気選択スイッチの表示ライトが、オフの状態であるかチェックする。異常な作動または異例の作動について、報告する。
【0148】
3)警告スイッチの表示ライトが、自己点検後にバイオセーフキャビネットの正常状態を示す警告音を発する。15分間後、アラームスイッチの表示ライトからの警告音が停止し、そのバイオセーフキャビネットにおけるプロセスを、開始し得る。
【0149】
4)そのキャビネットにおけるプロセスは、上記アラーム音が継続した場合には開始できない。または、そのプロセスは、そのプロセスの間に警告音が鳴った場合には、停止されなければならない。その出来事は、すぐに報告されなければならない。
【0150】
5)そのバイオセーフキャビネットが正常に作動した後、第二移動ウィンドウからサンプルを取り出し、そのキャビネット中に配置する。その移動ウィンドウの上部を、75%アルコールで拭き取って0.5%過酢酸を噴霧することによって、清浄にする。その後、その移動ウィンドウのドアを閉じ、鍵をかける。
【0151】
6)その後、完全なサンプル予備処理プロセスを、そのバイオセーフキャビネットにおいて実施する。
【0152】
(3.血清単離)
1)抗凝固剤を含む血液(1.8ml)を、3,500rpmで10分間遠心分離する。最上層をマーカーペンでマークする。
【0153】
2)最上層の血清(約1.0ml)を次いで収集し、1.5mlの滅菌エッペンドルフ遠心分離チューブに入れる。
【0154】
3)そのエッペンドルフ遠心分離チューブを、バーコード(「P」のようにマークされる)で標識し、そして配列番号で標識する。
【0155】
4)そのサンプルを次いで、ノートに記録する。
【0156】
5)その血清サンプルを含有する遠心分離チューブを、特殊なサンプルボックスに入れ、−80℃で保管する。そのサンプルボックスの外側にSARS、血清およびサンプル番号の範囲を標識する。
【0157】
(4.血球の単離)
1)リンパ球単離溶液(3.6ml)を、10mlの遠心分離チューブに加える。
【0158】
2)滅菌生理食塩水(上記のように遠心分離チューブ内に取り出された血清と等しい容量)を、その血球を含む遠心分離チューブに加える。その血球細胞を、パスツールピペットを使用して生理食塩水中に再懸濁する。
【0159】
3)その再懸濁された血球細胞を、緩やかにリンパ球単離溶液の上に充填し、1,500rpmで20分間遠心分離する。
【0160】
4)その層の間に位置する細胞を収集し、1.5mlの滅菌エッペンドルフ遠心分離チューブに入れ、これを次いで10,000rpmで5分間遠心分離してその細胞をスピンダウンする。その上清を取り除く。
【0161】
5)その細胞ペレットを含むチューブを次いで、バーコード(「C」とマークされる)で標識し、そして配列番号で標識する。
【0162】
6)そのサンプルをノートに記録する。
【0163】
7)その血球サンプルを含む遠心分離チューブを、特殊なサンプルボックスに入れ、−80℃で保管する。そのサンプルボックスの外側を、SARS、血球、およびサンプル数の範囲で標識する。
【0164】
8)次いで生物学的に安全なキャビネットのガラス面のプレートを開ける。次いでその生物学的に安全なキャビネットの表面および他の表面を、70%アルコールで拭き0.5%過酢酸をスプレーして滅菌する。
【0165】
9)清浄後、そのガラス面のプレートを閉じる。紫外線をそのキャビネットの内側に設置し、15分間オンにする。
【0166】
10)その生物学的に安全なキャビネットの電源スイッチを、サンプル前処理の部屋を去る前に、オフにする。
【0167】
(5.注意事項)
1)リンパ球単離溶液は、冷蔵庫から出された直後に使用してはならない。この溶液は、その温度が室温に達し、この溶液が十分混合された後に使用されなければならない。
【0168】
2)この単離プロセス全体は、18〜28℃で行わなければならない。温度が高すぎるまたは低すぎると、単離プロセスの質に影響を及ぼし得る。
【0169】
3)ピペットチップ、エッペンドルフ遠心分離チューブ、グローブ、および処理済みの(disposed)試薬または液体は、廃棄タンク(0.5% 過酢酸を含む)中に廃棄されなければならない。廃棄タンクの中のものは全て、実験後に高温で処理され、その後廃棄されなければならない。
【0170】
4)0.5%の過酢酸は、HO中16% 過酢酸(32ml)で希釈し、最終容積1,000mlにすることで調製される。
【0171】
(実施例3.QIAampウイルスRNAキットを用いて、RNAを抽出するためのプロセス)
以下の手順を、RNA調製において使用する:
1.キャリアRNAを含む560μlの調製した緩衝液AVLを、1.5mlの微小遠心分離チューブの中にピペットで移す。サンプル容積が140μlより多い場合、緩衝液AVL/キャリアRNAの量を、比例して増やす(例えば、280μlのサンプルは、1120μlの緩衝液AVL/キャリアRNAを要する)。
【0172】
2.140μlの血漿、血清、尿、細胞培養上清、または無細胞体液を、この微小遠心分離チューブ中の緩衝液AVL/キャリアRNAに添加する。15秒間パルス状にボルテックスすることによって、混合する。効率的な溶解を確実にするために、このサンプルを、緩衝液AVLと激しく混合して、均質の溶液を得ることが必須である。1回だけ融解した凍結サンプルもまた、使用され得る。
【0173】
3.室温(15〜25℃)で10分間インキュベートする。ウイルス粒子溶解は、室温で10分間の溶解の後に完了する。インキュベーションの時間をより長くしても、精製RNAの収率または量に対する影響はない。潜在的に感染性の因子およびRNaseを、緩衝液AVL中で不活性化する。
【0174】
4.この1.5mlの微小遠心分離チューブを短時間遠心分離して、ふたの内側の液滴を除去する。
【0175】
5.このサンプルに、エタノール(96〜100%)560μlを添加し、15秒間、パルス状にボルテックスすることによって混合する。混合した後、1.5mlの微小遠心分離チューブを短時間遠心分離して、ふたの内側の液滴を除去する。他のアルコールは、RNA収率および純度の低下を生じ得るので、エタノールが唯一好ましい。このサンプル容積が140μlより多い場合、エタノールの量を、比例して増やす(例えば、280μlのサンプルは、1120μlのエタノールを要する)。効率的な結合を確実にするために、このサンプルをエタノールと激しく混合して、均質な溶液を得ることが必須である。
【0176】
6.工程5からの溶液630μlを、QIAampスピンカラム(2ml収集チューブ中)に縁をぬらさないようにして、注意深くアプライする。キャップを閉め、6000×g(8000rpm)で1分間遠心分離する。このQIAampスピンカラムをきれいな2ml収集チューブに入れ、濾液を含むチューブを廃棄する。遠心分離の間に交叉汚染することを防ぐために、各スピンカラムを閉じる。微小遠心分離チューブノイズを制限するために、遠心分離を、6,000×g(8,000rpm)で行う。最高速度での遠心分離しても、ウイルスRNAの収率にも、純度にも影響はない。この溶液が、膜を完全に通過しなかった場合は、この溶液の全てが通過するまで、より高速で再度遠心分離する。
【0177】
7.このQIAampスピンカラムを注意深く開け、工程6を繰り返す。このサンプル容積が140μlより多い場合、溶解物の全てがスピンカラムに載せられるまで、この工程を繰り返す。
【0178】
8.このQIAampスピンカラムを注意深く開け、500μlの緩衝液AW1を添加する。キャップを閉め、6,000×g(8,000rpm)で1分間遠心分離する。このQIAampスピンカラムをきれいな2ml収集チューブ(準備しておく)に入れ、濾液を含むチューブを廃棄する。もとのサンプル容積が140μlより多かったとしても、緩衝液AW1の容積を増やす必要はない。
【0179】
9.このQIAampスピンカラムを注意深く開け、500μlの緩衝液AW2を添加する。キャップを閉め、最高速度(20,000×g;14,000rpm)で3分間遠心分離する。工程10に直接続けるか、またはあり得る緩衝液AW2の持ち越しの可能性を排除するために、工程9aを行い、その後、工程10に続ける。注意:溶離液中の残りの緩衝液AW2は、下流のアプリケーションにおいて問題を引き起こし得る。いくつかの遠心分離ローターは減速の際に振動して、緩衝液AW2を含むフロースルーを生じ、QIAampスピンカラムに接触し得る。このQIAampスピンカラムと収集チューブをローターから外すこともまた、フロースルーを引き起こして、このQIAampスピンカラムとの接触を生じ得る。これらの場合、選択肢としての工程9aを行うべきである。
【0180】
9a.(必要に応じる):上記QIAampスピンカラムを、新しい2mlコレクションチューブ(備えられていない)中に配置し、古いコレクションチューブをその濾液とともに捨てる。最大速度で1分間遠心分離する。
【0181】
10.上記QIAampスピンカラムを、1.5ml微量遠心チューブ(備えられていない)中に配置する。その濾液を含む古いコレクションチューブを捨てる。そのQIAampスピンカラムを注意深く開け、室温まで平衡化した60μlの緩衝液AVEを添加する。その蓋を閉め、室温にて1分間インキュベートする。6,000×g(8,000rpm)にて1分間遠心分離する。60μlの緩衝液AVEを用いて1回溶出すると、十分に、そのQIAampスピンカラムから上記ウイルスRNAのうちの少なくとも90%を溶出し得る。40μlの緩衝液AVEを2回使用して二重溶出を実施すると、収率は10%まで増加する。30μl未満の容量で溶出すると、収量が減少し、その溶出液中の最終RNA濃度は増加しない。ウイルスRNAは、−20℃または−70℃にて保存すると、1年間まで安定である。
【0182】
以下は、上記の手順に関するさらなる情報である:
・サンプルを室温(15℃〜25℃)になるように平衡化する
・緩衝液AVEを、工程10における溶出のために室温まで平衡化する
・緩衝液AW1、緩衝液AW2、およびキャリアRNAを、第14頁〜第15頁にある指示に従って調製したかどうかチェックする
・緩衝液AVL/キャリアRNA中の沈殿物を、必要ならば加熱することにより溶解させ、使用前に室温まで冷却する
・すべての遠心分離工程は、室温にて実施する。
【0183】
(実施例4.SARS−CoV検出チップの例示的アレイ形態)
図5は、SRAR−CoV検出チップの例示的アレイ形態を示す。
【0184】
「固定化コントロール」とは、オリゴプローブであり、これは、末端にて蛍光色素HEXで標識しており、かつSARS−CoVを含むサンプルまたはSARS−CoVを含むと疑われるサンプルをそのチップに接触させた場合にいかなるハイブリダイゼーション反応に関与しない。
【0185】
「ポジティブコントロール(Arabidopsis)」とは、Arabidopsis(あるモデル生物種)遺伝子に従って設計したオリゴプローブであり、かつSARS−CoVを含むサンプルまたはSARS−CoVを含むと疑われるサンプルをそのチップに接触させた場合にはいかなるハイブリダイゼーション反応にも関与しない。ハイブリダイゼーション反応の間、このポジティブコントロールと完全にハイブリダイズし得る標的プローブを、そのハイブリダイゼーション溶液に添加する。そのポジティブコントロールのシグナルは、そのハイブリダイゼーション反応をモニターするために適用し得る。
【0186】
「ネガティブコントロール」とは、SARS−CoVを含むサンプルまたはSARS−CoVを含むと疑われるサンプルをそのチップに接触させた場合に、いかなるハイブリダイゼーション反応にも関与しない、オリゴプローブである。
【0187】
「ブランクコントロール」とは、DMSO溶液スポットである。これは、整列の品質をモニターするために使用する。
【0188】
「SARSプローブ」は、011プローブ、024プローブ、040プローブ、および044プローブである。
【0189】
(実施例5.SARS患者の血液サンプル(サンプル番号3)からのSARS−CoVの検出)
図6Aおよび図6Bは、SARS患者の血液サンプル(サンプル番号3)からのSARS−CoVの検出を示す。リンパ球を、番号3のSARS患者血液サンプルから単離した。リンパ球からのRNAを、QIAamp Kitによって抽出した。RT−ネストPCRを、上記の抽出したRNAをテンプレートとして使用することによって実施した。044 RT−ネストPCRの結果は、良好であった。ハイブリダイゼーションの結果もまた、良好であった。040 RT−ネストPCRの結果は悪かったが、ハイブリダイゼーションの結果は、良好であった。このことは、チップハイブリダイゼーション法は、感度が良くて特異的であることを示す。
【0190】
(実施例6.SARS患者の血液サンプル(サンプル番号4)からのSARS−CoVの検出)
図7Aおよび図7Bは、SARS患者の血液サンプル(サンプル番号4)からのSARS−CoVの検出を示す。リンパ球を、番号4のSARS患者血液サンプルから単離した。リンパ球からのRNAを、QIAamp Kitによって抽出した。RT−ネストPCRを、上記の抽出したRNAをテンプレートとして使用することによって実施した。024 RT−ネストPCR、040 RT−ネストPCR、および044 RT−ネストPCRの結果は、良好であった。ハイブリダイゼーションの結果もまた、良好であった。
【0191】
(実施例7.SARS患者の痰サンプル(サンプル番号5)からのSARS−CoVの検出)
図8は、SARS患者の痰サンプル(サンプル番号5)からのSARS−CoV検出を示す。5番のSARS患者痰サンプル由来のRNAを、QIAamp Kitによって抽出した。上記で抽出したRNAをテンプレートとして用いて、RT−ネストPCRを実施した。040 RT−ネストPCR結果は良好であり、ハイブリダイゼーション結果もまた良好であった。
【0192】
(実施例8.SARS患者痰サンプル(サンプル番号6)からのSARS−CoV検出)
図9は、SARS患者の痰サンプル(サンプル番号6)からのSARS−CoV検出を示す。6番のSARS患者痰サンプル由来のRNAを、QIAamp Kitによって抽出した。上記で抽出したRNAをテンプレートとして用いて、RT−ネストPCRを実施した。全プローブでのRT−ネストPCR結果は良好であり、ハイブリダイゼーション結果もまた良好であった。
【0193】
(実施例9.SARS−CoV検出チップの、別の例示的アレイ形式)
図10は、SARS−CoV検出チップの、別の例示的アレイ形式を示す。
【0194】
固定化コントロールは、その末端において蛍光色素HEXによって標識され、SARS−CoVを含むかまたは含むと疑われるサンプルが上記チップと接触した場合のあらゆるハイブリダイゼーション反応に関与しない、オリゴプローブである。
【0195】
ポジティブコントロール(Arabidopsis)は、Arabidopsis(モデル生物の1種)遺伝子に従って設計され、SARS−CoVを含むかまたは含むと疑われるサンプルが上記チップと接触した場合のあらゆるハイブリダイゼーション反応に関与しない、オリゴプローブである。ハイブリダイゼーション反応の間、このポジティブコントロールと完全にハイブリダイズし得る標的プローブが、このハイブリダイゼーション溶液に添加される。ポジティブコントロールのシグナルは、このハイブリダイゼーション反応をモニタリングするために適用され得る。
【0196】
ネガティブコントロールは、SARS−CoVを含むかまたは含むと疑われるサンプルが上記チップと接触した場合のあらゆるハイブリダイゼーション反応に関与しない、オリゴプローブである。
【0197】
ブランクコントロールは、DMSO溶液スポットである。これは、アレイの品質をモニタリングするために使用される。
【0198】
SARSプローブは、011、024、040および044プローブである。
【0199】
(実施例10.図10に示されたSARS−CoV検出チップ上での、全ての可能性のある陽性結果)
図11は、図10に示されたSARS−CoV検出チップ上での、全ての可能性のある陽性結果を示す。
【0200】
SARSウイルスを検出するため、チップ上に4セットのプローブが存在する:プローブ011、プローブ024、プローブ040およびプローブ044。
【0201】
第1列は、4セットのプローブ全て:011+024+040+044、において出現したシグナルによる陽性結果(1つ)を示す。
【0202】
第2列は、3セットのプローブ:011+024+044、024+040+044、011+040+044、011+024+040、において出現したシグナルによる、可能性のある陽性結果(4つ)全てを示す。
【0203】
第3列は、2セットのプローブ:011+040、024+044、011+044、040+044、011+024、024+040、において出現したシグナルによる、可能性のある陽性結果(6つ)全てを示す。
【0204】
第4列は、1セットのプローブ:011、024、040、044、のみにおいて出現したシグナルによる、可能性のある陽性結果(4つ)全てを示す。
【0205】
上記の実施例は、説明目的のみのために記載されており、本発明の範囲を限定することを意図しない。上記に対する多くの変更が可能である。上記実施例に対する改変および変更は、当業者にとって明らかであるので、本発明は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】図1Aおよび1Bは、例示的なSARS−CoVゲノム構造を示す(Marraら、Science 2003年5月1日の図2;[電子ジャーナル版];およびGenBank登録番号NC_004718号を参照のこと)。
【図2】図2は、例示的なサンプル調製手順を示す。
【図3】図3は、PCRに使用される例示的なプローブ標識を示す。ユニバーサルプライマーの配列は、特異的プライマーの共通の配列に相補的である。ユニバーサルプライマーおよび特異的プライマーは、増幅が行われる前に、PCRマスターミックス中に添加される。増幅の特異性は、特異的プライマーの特異的部分によって確実にされる。1回または数回の熱サイクルの後、ユニバーサルプライマーは、効果的にアンプリコン中に組み込まれ得る。次いで、ユニバーサルプライマーは、特異的プライマーの共通の配列の相補的な配列にアニールし得る。PCRは、さらにユニバーサルプライマーに組み込まれた蛍光染料を用いて進行し得る。1および6は、蛍光染料を示し;2は、上流のユニバーサルプライマーを示し;3は、共通の配列を有する上流の特異的プライマーを示し;4は、テンプレートを示し;5は、共通の配列を有する下流の特異的プライマーを示し;そして7は、下流のユニバーサルプライマーを示す。
【図4】図4は、アミノ基で改変した(例えば、ポリ−L−リジン処理した)スライドガラス表面上のプローブの固定化を示す。アミン結合化学:アミン基材は、ガラス表面(長方形)に共有結合的に付着した第1級アミン基(NH3)を含有する。アミンは、中性のpHで正電荷を運び、負に荷電したリン酸骨格とのイオン結合の形成によって負に荷電したDNA(二重螺旋)の付着を可能にする(中央のパネル)。静電気の付着は、紫外線または熱を用いる処理によって追加され、それは、第1級アミンおよびチミンとの間の共有結合によって表面にDNAの共有結合性の付着を誘発する(右のパネル)。静電結合および共有結合性の付着の組み合わせは、高度に安定な様式でDNAを基材に結合する。
【図5】図5は、SARS−CoV検出チップの例示的なアレイフォーマットを示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、SARS患者の血液サンプル(サンプル番号3)由来のSARS−CoV検出を示す。
【図7】図7Aおよび7Bは、SARS患者の血液サンプル(サンプル番号4)由来のSARS−CoV検出を示す。
【図8】図8Aおよび8Bは、SARS患者の唾液サンプル(サンプル番号5)由来のSARS−CoV検出を示す。
【図9】図9Aおよび9Bは、SARS患者の唾液サンプル(サンプル番号6)由来のSARS−CoV検出を示す。
【図10】図10は、SARS−CoV検出チップの別の例示的なアレイフォーマットを示す。
【図11】図11は、図10に示したSARS SARS−CoV検出チップ上の全ての可能性のあるポジティブ結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症急性呼吸器症候群を引き起こすコロナウイルス(SARS−CoV)についてアッセイするためのチップであって、該チップは、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な支持体を備え、該支持体は、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブをその上に固定し、該2つの異なるヌクレオチド配列の各々は、少なくとも10ヌクレオチドを含有する、チップ。
【請求項2】
請求項1に記載のチップであって、前記SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列が、以下:
a)SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置する少なくとも10ヌクレオチドのヌクレオチド配列、およびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置する少なくとも10ヌクレオチドのヌクレオチド配列;または、
b)SARS−CoVゲノムの構造タンパク質をコードする遺伝子内に位置する少なくとも10ヌクレオチドのヌクレオチド配列、およびSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質をコードする遺伝子内に位置する少なくとも10ヌクレオチドのヌクレオチド配列、
を含有する、チップ。
【請求項3】
請求項1に記載のチップであって、以下:
a)以下の3つのオリゴヌクレオチドプローブのうち少なくとも1つ:標識されて、SARS−CoVを含むかまたは含むと疑われるサンプルが該チップと接触した場合の、あらゆるハイブリダイゼーション反応に関与しない、固定化コントロールプローブ;あらゆるSARS−CoV配列に相補的でないが、該サンプルに含まれる非SARS−CoV配列に相補的である、ポジティブコントロールプローブ;および、該サンプルに含まれるあらゆるヌクレオチド配列に相補的でない、ネガティブコントロールプローブ;ならびに、
b)ブランクスポット、
をさらに備える、チップ。
【請求項4】
請求項1に記載のチップであって、SARS−CoVゲノムの保存領域内に配置されるか、SARS−CoVゲノムの構造タンパク質をコードする遺伝子内に配置されるか、またはSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質をコードする遺伝子内に配置される、少なくとも10ヌクレオチドの2つの異なるヌクレオチド配列のそれぞれに相補的な、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブ、
を含有する、チップ。
【請求項5】
請求項1に記載のチップであって、ここで:
a)前記SARS−CoVゲノムの保存領域が、SARS−CoVのレプリカーゼ1Aもしくは1B遺伝子内、またはヌクレオチドオカプシド(N)遺伝子内に位置する領域であり;
b)前記SARS−CoVゲノムの構造タンパク質をコードする遺伝子が、スパイク糖タンパク質(S)、低分子エンベロープタンパク質(E)、もしくは該ヌクレオチドオカプシドタンパク質(N)をコードする遺伝子であり;あるいは、
c)前記SARS−CoVゲノムの非構造タンパク質をコードする遺伝子が、該レプリカーゼ1Aもしくは1Bをコードする遺伝子である、
チップ。
【請求項6】
請求項1に記載のチップであって、前記SARS−CoVゲノムの可変領域が、前記SARS−CoVのスパイク糖タンパク質(S)遺伝子内に位置する領域である、チップ。
【請求項7】
請求項1に記載のチップであって、以下:以下の4つのオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも2つ:前記SARS−CoVのレプリカーゼ1Aもしくは1B遺伝子内に位置する、少なくとも10ヌクレオチドの2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な、2つのオリゴヌクレオチドプローブ;前記SARS−CoVのN遺伝子内に位置する、少なくとも10ヌクレオチドのヌクレオチド配列に相補的な、オリゴヌクレオチドプローブ;および、前記SARS−CoVのS遺伝子内に位置する、少なくとも10ヌクレオチドのヌクレオチド配列に相補的な、オリゴヌクレオチドプローブ、
を備える、チップ。
【請求項8】
請求項7に記載のチップであって、前記SARS−CoVのレプリカーゼ1Aもしくは1B遺伝子内に位置する、前記2つの異なるヌクレオチド配列のうちの1つが、以下:
a)高ストリンジェント条件下で、表3に示される、レプリカーゼ1Aもしくは1Bヌクレオチド配列またはその相補鎖にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列;または、
b)表3に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補鎖を含む、レプリカーゼ1Aもしくは1Bヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列、
を含む、チップ。
【請求項9】
請求項8に記載のチップであって、前記SARS−CoVのレプリカーゼ1Aもしくは1B遺伝子内に位置する前記2つの異なるヌクレオチド配列のうちの1つが、表3に示されるヌクレオチド配列を含む、チップ。
【請求項10】
請求項7に記載のチップであって、前記SARS−CoVのN遺伝子内に位置する前記ヌクレオチド配列が、以下:
a)高ストリンジェント条件下で、表3に示される、Nヌクレオチド配列またはその相補鎖にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列;または、
b)表3に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補鎖を含む、Nヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列、
を含む、チップ。
【請求項11】
請求項10に記載のチップであって、前記SARS−CoVのN遺伝子内に位置する前記ヌクレオチド配列が、表3に示されるヌクレオチド配列を含む、チップ。
【請求項12】
請求項7に記載のチップであって、前記SARS−CoVのS遺伝子内に位置する前記ヌクレオチド配列が、以下:
a)高ストリンジェント条件下で、表3に示される、Sヌクレオチド配列またはその相補鎖にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列;または、
b)表3に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補鎖を含む、Sヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列、
を含む、チップ
【請求項13】
請求項12に記載のチップであって、前記SARS−CoVのS遺伝子内に位置する前記ヌクレオチド配列が、表3に示されるヌクレオチド配列を含む、チップ。
【請求項14】
請求項3に記載のチップであって、前記固定化コントロールプローブの標識が、化学標識、酵素標識、免疫原性標識、放射性標識、蛍光標識、発光標識、およびFRET標識からなる群より選択される、チップ。
【請求項15】
請求項3に記載のチップであって、前記非SARS−CoV配列が、アッセイされるサンプル中にスパイクされる、チップ。
【請求項16】
請求項15に記載のチップであって、前記スパイクされた非SARS−CoV配列が、Arabidopsis由来の配列である、チップ。
【請求項17】
請求項7に記載のチップであって、以下:前記SARS−CoVのレプリカーゼ1Aもしくは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な、2つのオリゴヌクレオチドプローブ;前記SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な、オリゴヌクレオチドプローブ;前記SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な、オリゴヌクレオチドプローブ;標識されて、SARS−CoVを含むかまたは含むと疑われるサンプルが該チップと接触した場合の、あらゆるハイブリダイゼーション反応に関与しない、固定化コントロールプローブ;あらゆるSARS−CoV配列に相補的でないが、サンプルに含まれる非SARS−CoV配列に相補的である、ポジティブコントロールプローブ;および、該サンプルに含まれるあらゆるヌクレオチド配列に相補的でない、ネガティブコントロールプローブ、
を備える、チップ。
【請求項18】
請求項17に記載のチップであって、以下の複数のスポット:
前記SARS−CoVのレプリカーゼ1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ;前記SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な、オリゴヌクレオチドプローブ;前記SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な、オリゴヌクレオチドプローブ;前記固定化コントロールプローブプローブ;前記ポジティブコントロールプローブ;および、前記ネガティブコントロールプローブ、
を備える、チップ。
【請求項19】
請求項1に記載のチップであって、SARS−CoVと関係のないコロナウイルスのヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブをさらに備える、チップ。
【請求項20】
請求項19に記載のチップであって、前記SARSと関係のないコロナウイルスが、第1群、第2群もしくは第3群のコロナウイルスであるか、またはトリ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、子ウシ、ウシ、マウス、パフィノシス、ラット、シチメンチョウ、もしくはヒトに感染するコロナウイルスである、チップ。
【請求項21】
請求項3に記載のチップであって、前記オリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つが、その5’末端にポリdT領域を含み、前記支持体上での該プローブの固定を増強する、チップ。
【請求項22】
請求項1に記載のチップであって、前記オリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つが、SARS−CoVゲノムの高発現ヌクレオチド配列と相補的である、チップ。
【請求項23】
請求項1に記載のチップであって、前記支持体が、シリコン表面、プラスチック表面、ガラス表面、セラミック表面、ゴム表面、およびポリマー表面からなる群より選択される表面を備える、チップ。
【請求項24】
サンプル中のSARS−CoVについてアッセイするための方法であって、該方法は、以下:
a)請求項1に記載のチップを提供する工程;
b)該チップと、SARS−CoVヌクレオチド配列を含むかまたは含むと疑われるサンプルとを、核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で接触させる工程;および、
c)該SARS−CoVヌクレオチド配列が該サンプル中に存在する場合、該SARS−CoVヌクレオチド配列と前記SARS−CoVゲノムの2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブそれぞれとの間で形成された、ハイブリッドを評価して、該サンプル中の該SARS−CoVの存在、非存在、もしくは量を決定する工程であって、それにより該ハイブリッドの一方もしくは両方の検出が、該サンプル中の該SARS−CoVの存在を示す、工程、
を包含する、方法。
【請求項25】
サンプル中のSARS−CoVについてアッセイするための方法であって、該方法は、以下:
a)請求項2に記載のチップを提供する工程;
b)該チップと、SARS−CoVヌクレオチド配列を含むかまたは含むと疑われるサンプルとを、核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で接触させる工程;ならびに、
c)該SARS−CoVヌクレオチド配列が該サンプル中に存在する場合、該SARS−CoVヌクレオチド配列と、以下:
i)前記SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、およびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、のそれぞれ;または、
ii)前記SARS−CoVゲノムの構造タンパク質をコードする遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、およびSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質をコードする遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、
との間で形成されたハイブリッドを評価して、該サンプル中の該SARS−CoVの存在、非存在、もしくは量を決定する工程であって、それにより該ハイブリッドの一方もしくは両方の検出が、該サンプル中の該SARS−CoVの存在を示す、工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
サンプル中のSARS−CoVについてアッセイするための方法であって、該方法は、以下:
a)請求項3に記載のチップを提供する工程;
b)該チップと、SARS−CoVヌクレオチド配列を含むかまたは含むと疑われるサンプルとを、核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で接触させる工程;そして、
c)以下:
(i)該SARS−CoVヌクレオチド配列が該サンプル中に存在する場合、該SARS−CoVヌクレオチド配列と、前記SARS−CoVゲノムの保存領域内のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブそれぞれとの間で形成された、ハイブリッド;
(ii)前記固定化コントロールプローブ、またはポジティブコントロールおよび/もしくはネガティブコントロールに関するハイブリッド内に含まれる、標識;ならびに、
(iii)前記ブランクスポットにおけるシグナル、
を評価して該サンプル中の該SARS−CoVの存在、非存在、もしくは量を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記チップが、以下:前記SARS−CoVのレプリカーゼ1Aもしくは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ;前記SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ;前記SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ;固定化コントロールプローブ;ポジティブコントロールプローブ;および、ネガティブコントロールプローブ、を備え、そして以下:
a)該SARS−CoVのレプリカーゼ1Aもしくは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つ;該SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ;および/または該SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、を用いて、ポジティブハイブリダイゼーションシグナルが検出される場合;
b)該固定化コントロールプローブからポジティブシグナルが検出される場合;
c)該ポジティブコントロールプローブを用いてポジティブハイブリダイゼーションシグナルが検出される場合;
d)該ネガティブコントロールプローブを用いてポジティブハイブリダイゼーションシグナルが検出されない場合;ならびに
e)前記ブランクスポットにおいてポジティブハイブリダイゼーションシグナルが検出されない場合、
において、該SARS−CoVの存在が決定される、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記SARS−CoVのレプリカーゼ1Aもしくは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つ、または前記SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ポジティブハイブリダイゼーションシグナルを検出する一方で、前記SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ポジティブハイブリダイゼーションシグナルを検出しないことが、前記SARS−CoVの突然変異を示している、方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法であって、SARS様症状を有する患者の集団から、SARS−CoV感染患者を陽性として同定するために使用される、方法。
【請求項30】
請求項24に記載の方法であって、請求項19に記載のチップおよび該方法が使用されて、SARSと関連のないコロナウイルスに感染した患者からSARS−CoV感染患者を陽性として同定する、方法。
【請求項31】
請求項24に記載の方法であって、請求項22に記載のチップおよび該方法が使用されて、初期段階のSARS患者を診断する、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記初期段階のSARS患者が、SARS−CoVに感染してから約1日未満〜約3日である、方法。
【請求項33】
請求項24に記載の方法であって、前記SARS−CoVヌクレオチド配列が、抽出されたSARS−CoV RNAゲノム配列から増幅されたSARS−CoV RNAゲノム配列またはDNA配列である、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、前記SARS−CoV RNAゲノム配列が、QIAamp Viral RNAキット、Chomczynski−Sacchi技術、またはTRIzolを用いてSARS−CoV感染細胞から抽出される、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記SARS−CoV RNAゲノム配列が、QIAamp Viral RNAキットを用いてSARS−CoV感染細胞から抽出される、方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、前記SARS−CoV RNAゲノム配列が、痰もしくは唾液サンプル、血液サンプルのリンパ球から抽出される、方法。
【請求項37】
請求項33に記載の方法であって、前記SARS−CoV RNAゲノム配列が、鼻咽頭、口腔咽頭、気管、気管支洗浄、胸膜液、尿、便、結膜;ヒト、マウス、イヌ、ラット、ネコ、ウマ、トリ由来の組織;土壌;水;空気から抽出される、方法。
【請求項38】
請求項33に記載の方法であって、前記SARS−CoV RNAゲノム配列が、PCRによって増幅される、方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、PCRの間に、標識が、増幅されたDNA配列内に組み込まれる、方法。
【請求項40】
請求項38に記載の方法であって、前記PCRが、通常のPCR、多重PCR、ネストPCRまたはRT−PCRを包含する、方法。
【請求項41】
請求項38に記載の方法であって、前記PCRが、2ステップネストPCRを包含し、第1ステップがRT−PCRであり、第2ステップが通常のPCRである、方法。
【請求項42】
請求項38に記載の方法であって、前記PCRが、複数の5’および3’特異的プライマー、5’および3’ユニバーサルプライマーを用いた1ステップ多重RT−PCRを包含し、該特異的プライマーの各々は、増幅されるその標的配列に相補的な特異的配列および共通配列を含み、該5’ユニバーサルプライマーは、該5’特異的プライマーの共通配列に相補的であり、そして該3’ユニバーサルプライマーは、該3’特異的プライマーの共通配列に相補的であり、PCRにおいて、該5’および3’ユニバーサルプライマーの濃度がそれぞれ、該5’および3’特異的プライマーの濃度と同等であるかもしくは該5’および3’特異的プライマーの濃度より高い、方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、前記3’ユニバーサルプライマーおよび/または前記5’ユニバーサルプライマーが標識されている、方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、前記標識が、蛍光標識である、方法。
【請求項45】
請求項38に記載の方法であって、前記PCRが、多重ネストPCRを包含する、方法。
【請求項46】
請求項38に記載の方法であって、前記PCRが、以下の表4に示されるプライマー対の少なくとも1つを用いて行われる、方法。
【請求項47】
SARS−CoVヌクレオチド配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマー対であって、該オリゴヌクレオチドプライマーは、以下:
a)高ストリンジェント条件下で、表1に示される、標的SARS−CoVヌクレオチド配列またはその相補鎖にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列;または、
b)表1に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補鎖を含む、標的SARS−CoVヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列、
を含む、プライマー。
【請求項48】
請求項47に記載のプライマーであって、DNA、RNA、PNA、またはそれらの誘導体を包含する、プライマー。
【請求項49】
請求項47に記載のプライマーであって、表1に示されたヌクレオチド配列、またはその相補鎖を包含する、プライマー。
【請求項50】
SARS−CoVヌクレオチド配列を増幅するためのキットであって、該キットは、以下:
a)請求項42に記載のプライマー;および、
b)該請求項42に記載のプライマーを用いてSARS−CoVヌクレオチド配列を増幅し得る、核酸ポリメラーゼ、
を備える、キット。
【請求項51】
請求項50に記載のキットであって、前記核酸ポリメラーゼが、逆転写酵素である、キット。
【請求項52】
SARS−CoVヌクレオチド配列をハイブリダイズするためのオリゴヌクレオチドプローブであって、該オリゴヌクレオチドプローブは、以下:
a)高ストリンジェント条件下で、表2に示される、標的SARS−CoVヌクレオチド配列またはその相補鎖にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列;または、
b)表2に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補鎖を含む、標的SARS−CoVヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列、
を含む、プローブ。
【請求項53】
請求項52に記載のプローブであって、DNA、RNA、PNA、またはそれらの誘導体を包含する、プローブ。
【請求項54】
請求項52に記載のプローブであって、表2に示されたヌクレオチド配列、またはその相補鎖を包含する、プローブ。
【請求項55】
請求項52に記載のプローブであって、標識されている、プローブ。
【請求項56】
請求項55に記載のプローブであって、前記標識が、化学標識、酵素標識、免疫原性標識、放射性標識、蛍光標識、発光標識、およびFRET標識からなる群より選択される、プローブ。
【請求項57】
SARS−CoVヌクレオチド配列のハイブリダイゼーション分析のためのキットであって、該キットは、以下:
a)請求項52に記載のプローブ;および、
b)SARS−CoVヌクレオチド配列と該プローブとの間に形成されたハイブリッドを評価するための手段、
を備える、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−524988(P2006−524988A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571493(P2004−571493)
【出願日】平成15年5月9日(2003.5.9)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000336
【国際公開番号】WO2004/099440
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(504278260)キャピタルバイオ コーポレーション (10)
【出願人】(503012203)ツィンフア ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】