説明

SPARC抗炎症活性及びその使用

本発明は、抗炎症剤としての、そして特に、腹膜炎のための治療剤としての、SPARCの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究開発に関する陳述
【0002】
本発明は、国立衛生研究所により交付された助成番号K01-CA089689、HL74279及びHL59699のもとで、政府の援助によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
関連出願の相互参照
【0004】
本願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2008年4月14日に出願された米国仮出願第61/044,609号の利益を主張する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
【0006】
炎症性疾患及び炎症状態は、過剰な炎症又は過剰な免疫応答により特徴付けられる。炎症性疾患の基礎にある病因は、感染プロセス、自己免疫プロセス、移植拒絶反応プロセス又は他の病理学的プロセスであり得る。いくつかの一般的な炎症性疾患としては、例えば、腹膜炎、胸膜炎(plueritis)、関節リウマチ、炎症性関節症(例、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、潰瘍性大腸炎(2種類の特発性炎症性腸疾患「IBD」のうちの1つ)、クローン病(2種類の特発性炎症性腸疾患「IBD」のうちの1つ)、皮膚筋炎、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本病、川崎病、間質性膀胱炎、エリテマトーデス、混合性結合組織病、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、乾癬性関節炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変(chirrosis)、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られる)、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫などが挙げられる。多数の抗炎症薬が存在するが、炎症性疾患のための改善された療法を開発する必要性が依然として存在する。
【0007】
腹膜炎は、典型的な炎症性疾患である。腹膜炎は、腹腔の内膜の炎症である。腹膜炎の最も一般的な原因は、細菌感染及び化学刺激である。細菌性腹膜炎は通常、虫垂炎、急性胆嚢炎、消化性潰瘍、憩室炎、腸閉塞症、膵臓炎、腸間膜血栓、骨盤内炎症性疾患、腫瘍若しくは穿通性外傷、又はそれらの組み合わせなどの障害に伴って起こるような、腹部器官を通じた細菌の侵入に続発する。また、特発性細菌性腹膜炎(SBP)は、明らかな汚染源なしに発症し得、SBPは、免疫抑制状態(肝硬変腹水又はネフローゼ症候群など)にしばしば付随する。腹膜炎は、持続携帯式腹膜透析(CAPD)の一般的な合併症でもある。
【0008】
ほとんど全ての生物が細菌性腹膜炎に関与しているが、最も一般的な生物は、E. coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、C. perfingens、Neisseria gonorrhea、Chlamydia trachomatis、連鎖球菌及び腸球菌(enteroococci)である。感染性腹膜炎を引き起こす最も一般的な真菌病原体は、Candida albicans、Candida parapsilosis、及びAspergillus fumigatusである。非感染性化学性腹膜炎は、例えば手術中に又は外傷により、腹膜へと導入された異物に起因し得、化学性腹膜炎は、消化酵素又は胆汁などの刺激性の内因性物質を腹腔へと導入する急性膵臓炎などの状態においても発症し得る。
【0009】
腹膜癒着及び膿瘍は、腹膜炎のよくある長期合併症である。腹膜癒着は、腹腔内漿膜表面間の異常な繊維組織の結合である。手術及び腹部の炎症は、腹膜癒着の最も一般的な原因である。腹膜感染は、腹腔へのフィブリノゲン及びフィブリンの滲出を含む、腹膜炎症をしばしば伴う。フィブリノゲン及びフィブリンの存在は、線維症及び癒着形成を促進する。
【0010】
炎症は、成長因子、サイトカイン、プロテアーゼ、及び細胞外マトリクス(線維症及び癒着形成を更に促進する)の腹腔内蓄積ももたらす。感染性腹膜炎において、フィブリン沈着は、感染性病原体を捕捉して、膿瘍をもたらし得、それがひいては更に線維性の癒着を引き起こし得る。腹膜癒着は、腹腔内器官の正常な運動及び活動、特に胃腸管の正常な機能を制限する。腹膜癒着は、骨盤の痛み、不妊、及び虚血性腸閉塞ももたらし得る。
【0011】
腹膜膿瘍は、壁で囲まれた、微生物並びに炎症性細胞及び炎症性メディエータの集合(即ち、「膿」)である。腹膜膿瘍は、腹膜膿瘍内で抗生物質の治療レベルに達するのを困難にする線維性皮膜により壁で囲まれているため、治療するのが困難である。腹膜膿瘍は、遠隔器官における深刻な感染、及び敗血症の原因であり得る。従って、腹膜癒着及び腹膜膿瘍は、病的状態及び死亡の主要な原因である。腹膜炎の有効な治療又は予防は、腹腔内癒着及び腹腔内膿瘍を発症するリスクを顕著に低減し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
腹膜炎を治療又は予防するために現在使用されている方法は、限られている。いくつかの場合において、化学性腹膜炎は、腹腔洗浄に反応し得る。複数回の再診査及び、大量の無菌生理食塩水を用いた術中洗浄が、術後の腹膜感染、腹膜炎及び癒着のリスクを低減させるために推奨されてきた。しかしながら、無菌生理食塩水を用いた反復洗浄の使用にもかかわらず、腹膜炎及び癒着を発症する顕著なリスクがそれでも存在する。種々の局所抗菌剤も試験されているが、有効性の欠如又は深刻な副作用(即ち、硬化性腹膜炎)のいずれかに起因して、いずれも原因制御のために広くは受け入れられていない。更に、状態が元々は化学性の病因であるとしても、全身抗生物質療法がしばしば必要である。
【0013】
腹膜炎の種類及び重症度に応じて、臨床像は、急性全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症又は敗血症性ショックへと進行し得る。これらの状態の生理病理学は複雑であるが、それは、局所的及び全身的の両方での、感染の存在及び急性炎症反応の存在と関連付けられ得る。従って、初期段階(即ちSIRS)においてさえ、多臓器不全の成立及び死の一因となる、腹腔内及び血中の炎症性サイトカインの蓄積が存在する。これらのサイトカインは、少なくともマウスの腹膜炎モデルにおいては、大部分は腹腔内の活性化マスト細胞に由来する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、腹膜炎の改善された治療方法又は予防方法の必要性が存在する。本発明は、このような方法を提供する。本発明のこれらの及び他の利点、並びに更なる発明の特徴は、本明細書中に提供される本発明の説明から明らかであろう。
【0015】
発明の概要
【0016】
本発明は、炎症性疾患又は炎症状態を患う哺乳動物を治療する方法であって、罹患哺乳動物への、治療上有効量のSPARCポリペプチド又はSPARCポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド及び薬理学的担体の投与を含む方法を提供する。
【0017】
本発明は、腹膜炎を患う哺乳動物を治療する方法であって、治療上有効量のSPARCポリペプチド又はSPARCポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド及び薬理学的担体の腹腔内投与を含む方法を提供する。
【0018】
本発明は、哺乳動物において腹膜癒着の発生率を低下させる方法であって、治療上有効量のSPARCポリペプチド又はSPARCポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド及び薬理学的担体の腹腔内投与を含む方法を提供する。
【0019】
本発明は、子宮内膜症を患う哺乳動物を治療する方法であって、治療上有効量のSPARCポリペプチド又はSPARCポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド及び担体の腹腔内投与を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】図1は、卵巣癌細胞の、単独での又は中皮細胞との共培養における、単球走化性タンパク質−1(MCP-1)産生及び遊走への、SPARCの影響を示す。
【図1B】図1は、卵巣癌細胞の、単独での又は中皮細胞との共培養における、単球走化性タンパク質−1(MCP-1)産生及び遊走への、SPARCの影響を示す。
【図1C】図1は、卵巣癌細胞の、単独での又は中皮細胞との共培養における、単球走化性タンパク質−1(MCP-1)産生及び遊走への、SPARCの影響を示す。
【図1D】図1は、卵巣癌細胞の、単独での又は中皮細胞との共培養における、単球走化性タンパク質−1(MCP-1)産生及び遊走への、SPARCの影響を示す。
【図2A】図2は、抗MCP-1抗体の存在下又は非存在下における、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性を比較する。
【図2B】図2は、抗MCP-1抗体の存在下又は非存在下における、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性を比較する。
【図2C】図2は、抗MCP-1抗体の存在下又は非存在下における、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性を比較する。
【図2D】図2は、抗MCP-1抗体の存在下又は非存在下における、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性を比較する。
【図3A】図3は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の、単独での又はマクロファージ(及び随意に、腹膜中皮細胞)との共培養における浸潤性及びIL-6産生を比較する。
【図3B】図3は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の、単独での又はマクロファージ(及び随意に、腹膜中皮細胞)との共培養における浸潤性及びIL-6産生を比較する。
【図3C】図3は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の、単独での又はマクロファージ(及び随意に、腹膜中皮細胞)との共培養における浸潤性及びIL-6産生を比較する。
【図3D】図3は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の、単独での又はマクロファージ(及び随意に、腹膜中皮細胞)との共培養における浸潤性及びIL-6産生を比較する。
【図3E】図3は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の、単独での又はマクロファージ(及び随意に、腹膜中皮細胞)との共培養における浸潤性及びIL-6産生を比較する。
【図4A】図4は、卵巣癌細胞及びマクロファージのタンパク質分解活性へのSPARCの影響を示す。
【図4B】図4は、卵巣癌細胞及びマクロファージのタンパク質分解活性へのSPARCの影響を示す。
【図4C】図4は、卵巣癌細胞及びマクロファージのタンパク質分解活性へのSPARCの影響を示す。
【図4D】図4は、卵巣癌細胞及びマクロファージのタンパク質分解活性へのSPARCの影響を示す。
【図4E】図4は、卵巣癌細胞及びマクロファージのタンパク質分解活性へのSPARCの影響を示す。
【図4F】図4は、卵巣癌細胞及びマクロファージのタンパク質分解活性へのSPARCの影響を示す。
【図5A】図5は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又は中皮細胞及び/若しくはマクロファージとの共培養における、プロスタグランジンE2(PGE2)産生を示し、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性へのPGE2の影響を示す。
【図5B】図5は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又は中皮細胞及び/若しくはマクロファージとの共培養における、プロスタグランジンE2(PGE2)産生を示し、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性へのPGE2の影響を示す。
【図5C】図5は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又は中皮細胞及び/若しくはマクロファージとの共培養における、プロスタグランジンE2(PGE2)産生を示し、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性へのPGE2の影響を示す。
【図5D】図5は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又は中皮細胞及び/若しくはマクロファージとの共培養における、プロスタグランジンE2(PGE2)産生を示し、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性へのPGE2の影響を示す。
【図5E】図5は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又は中皮細胞及び/若しくはマクロファージとの共培養における、プロスタグランジンE2(PGE2)産生を示し、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性へのPGE2の影響を示す。
【図5F】図5は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又は中皮細胞及び/若しくはマクロファージとの共培養における、プロスタグランジンE2(PGE2)産生を示し、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞の増殖及び浸潤性へのPGE2の影響を示す。
【図6A】図6は、卵巣癌細胞における、単独での又は中皮細胞及び/若しくはマクロファージとの共培養における、8-イソプロスタン産生へのSPARCの影響を示す。
【図6B】図6は、卵巣癌細胞における、単独での又は中皮細胞及び/若しくはマクロファージとの共培養における、8-イソプロスタン産生へのSPARCの影響を示す。
【図7A】図7は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又はマクロファージとの共培養における、NF-κBプロモーター活性を比較する。
【図7B】図7は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又はマクロファージとの共培養における、NF-κBプロモーター活性を比較する。
【図7C】図7は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又はマクロファージとの共培養における、NF-κBプロモーター活性を比較する。
【図7D】図7は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又はマクロファージとの共培養における、NF-κBプロモーター活性を比較する。
【図7E】図7は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又はマクロファージとの共培養における、NF-κBプロモーター活性を比較する。
【図7F】図7は、SPARCを発現する又は発現しない卵巣癌細胞における、単独での又はマクロファージとの共培養における、NF-κBプロモーター活性を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
【0022】
定義:以下の説明において、多くの用語が広範囲にわたって使用され、以下の定義は発明の理解を容易にするために提供される。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「薬剤(medicament)」は、患者又は試験対象へと投与され得る、効果をもたらすことができる組成物である。該効果は化学的、生物学的又は物理的であり得、患者又は試験対象は、ヒト、又は非ヒト動物(例えばげっ歯類又はトランスジェニックマウスなど)であり得る。組成物は、合成的に作られた、天然に見出された、又は部分的に合成起源の、明確な分子組成を有する、有機又は無機小分子を含み得る。この群の中には、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド核酸又はこれらの実体のうち少なくとも1つを含む複合体が含まれる。薬剤は、有効な組成物を、単独で、又は医薬上許容される賦形剤と組み合わせて含み得る。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「医薬上許容される賦形剤」としては、生理学的に適合性の、いずれかの及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤、抗菌剤又は抗真菌剤、等張な吸収遅延剤などが挙げられる。賦形剤は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、髄腔内投与又は経口投与に適合し得る。賦形剤は、無菌注射液又は分散物の即時調製用の、無菌水性溶液又は分散物を含み得る。薬剤の調製用のこのような媒体の使用は当該分野において公知である。
【0025】
本明細書中で使用される場合、薬剤の「薬理学的有効量」とは、該薬物が使用される期間を通じて治療レベルの薬物が送達されるような濃度で存在する薬剤の量を使用することを言う。これは、送達の様式、投薬の期間、薬剤を投与される対象の年齢、体重、全体的健康、性別及び食事に左右され得る。どのような用量が「薬理学的有効量」であるかの決定は、通常の最適化を必要とし、それは当業者の能力の範囲内である。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「炎症性疾患又は炎症状態」は、炎症又は過剰な免疫応答により特徴付けられる、任意の疾患又は状態を言う。炎症性疾患の基礎にある病因は、感染プロセス、自己免疫プロセス、移植拒絶反応プロセス又は他の病理学的プロセスであり得る。例えば、限定はされないが、いくつかの一般的な炎症性疾患としては以下が挙げられる:腹膜炎、胸膜炎、関節リウマチ、炎症性関節症(例、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、クローン病(2種類の特発性特発性炎症性腸疾患「IBD」のうちの1つ)、皮膚筋炎、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本病、川崎病、間質性膀胱炎、エリテマトーデス、混合性結合組織病、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、乾癬性関節炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変(chirrosis)、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られる)、潰瘍性大腸炎(2種類の特発性炎症性腸疾患「IBD」のうちの1つ)、血管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「抗炎症薬」は、炎症を軽減する薬物である。これは、例えば、炎症の指標(例えば、限定はされないが、CRPレベル、沈降速度、白血球数、特異的抗体レベル、疾患部位における炎症細胞など)における、約10%以上、例えば、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又はそれ以上から、約2分の1倍、約3分の1倍、約4分の1倍、約5分の1倍、約10分の1倍、約15分の1倍、約20分の1倍又はそれ以下までの低下に、望ましく現れる。応答のモニタリングは、本明細書中に記載され、当業者に公知であるような、多数の病理学的方法、臨床的方法及び画像検査方法により達成され得る。
【0028】
典型的な抗炎症薬としては、グルココルチコステロイド、免疫抑制剤(シクロスポリン及びタクロリムスを含む)、細胞毒性プリン代謝拮抗剤アザチオプリン、アルキル化剤、シクロホスファミド、メトトレキサート、シタラビン、ダクチノマイシン、及びチオグアニンが挙げられる。非ステロイド系抗炎症薬としては、アスピリン(Anacin、Ascriptin、Bayer、Bufferin、Ecotrin、Excedrin)、コリン及びサリチル酸マグネシウム(CMT、Tricosal、Trilisate)、サリチル酸コリン(Arthropan)、セレコキシブ(Celebrex)、ジクロフェナクカリウム(Cataflam)、ジクロフェナクナトリウム(Voltaren、Voltaren XR)、ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール(Arthrotec)、ジフルニサル(Dolobid)、エトドラク(Lodine、Lodine XL)、フェノプロフェンカルシウム(Nalfon)、フルルビプロフェン(Ansaid)、イブプロフェン(Advil、Motrin、Motrin IB、Nuprin)、インドメタシン(Indocin、Indocin SR)、ケトプロフェン(Actron、Orudis、Orudis KT、Oruvail)、サリチル酸マグネシウム(Arthritab、Mobidin、Mobogesic)、メクロフェナム酸ナトリウム(Meclomen)、メフェナム酸(Ponstel)、メロキシカム(Mobic)、ナブメトン(Relafen)、ナプロキセン(Naprosyn、Naprelan)、ナプロキセンナトリウム(Aleve、Anaprox)、オキサプロジン(Daypro)、ピロキシカム(Feldene)、ロフェコキシブ(Vioxx)、サルサラート(Amigesic、Anaflex 750、Disalcid、Marthritic、Mono-Gesic、Salflex、Salsitab)、サリチル酸ナトリウム(種々のジェネリック医薬品)、スリンダク(Clinoril)トルメチンナトリウム(Tolectin)、及びバルデコキシブ(Bextra)が挙げられるが、これらに限定されない。T細胞受容体に対するモノクローナル抗体(ムロモナブ-CD3)及びインターロイキン2受容体に対するモノクローナル抗体(バシリキシマブ及びダクリズマブ)も、抗炎症性である。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「別の治療計画」又は「別の治療」は、例えば、生物反応修飾物質(ポリペプチド−、炭水化物−、及び脂質−生物反応修飾物質を含む)、毒素、レクチン、血管新生阻害剤などを含み得る。特に、適切な別の治療計画としては、例えば、抗体フラグメントが完全又は部分Fcドメインであり得るようなものが挙げられる。
【0030】
「腹膜癒着の発生率を低下させる」とは、臨床試験又は適切な動物モデル系における癒着の発生率の、統計的に有意な低下を言う。
【0031】
「抗体」により、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイマー、マルチマー、多重特異性抗体(例、二重特異性抗体)が意味されるが、これらに限定されない。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ、又は他の種由来であり得る。抗体は、免疫系により生み出され、特定の抗原を認識して結合することのできるタンパク質である。標的抗原は一般に、複数の抗体上のCDRにより認識される、多数の結合部位(エピトープとも呼ばれる)を有する。異なるエピトープへと特異的に結合する各抗体は、異なる構造を有する。従って、1つの抗原は、1を超える対応する抗体を有し得る。
【0032】
抗体としては、全長免疫グロブリン分子又は、全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち目的の標的又はその一部の抗原を免疫特異的に(immunospecifically)結合する抗原結合部位を含む分子が挙げられる。標的としては、癌細胞又は、自己免疫疾患に関連する自己免疫性抗体を産生する他の細胞が挙げられる。
【0033】
本明細書中に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又はサブクラス(例、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のものであり得る。免疫グロブリンは、任意の種由来であり得る。
【0034】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部(所望の生物活性を保持する)を含む。「抗体フラグメント」は一般に、抗原結合領域又はその可変領域である。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖状抗体;Fab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、及び癌細胞抗原、ウイルス抗原、若しくは微生物抗原に免疫特異的に結合する上記のうちのいずれかのエピトープ結合フラグメント、単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0035】
本明細書中で言及されるモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又は相同であるが、その鎖(複数可)の残りは、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体、並びにこのような抗体のフラグメントを、それらが所望の生物活性を示す限り、含む(米国特許第4,816,567号)。本明細書中において目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例、旧世界ザル又は類人猿)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む、「霊長類化(primatized)」抗体が挙げられる。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「感作物質」は、抗炎症薬の治療効果を増強し得る薬剤である。組成物又は治療の方法は、治療感受性において、このような組成物又は方法の非存在下における治療感受性又は抵抗性と比較して、約10%以上、例えば、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又はそれ以上から、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍又はそれ以上までの向上を引き起こす場合、抗炎症薬に対し敏感になり得る。治療的処置への感受性又は抵抗性の決定は、当該分野においてありふれたものであり、当該分野に精通した者の技術の範囲内である。
【0037】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、互換的に使用され得、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合により共有結合している少なくとも2アミノ酸残基を含む化合物(例えば、半減期の増加など、ペプチドに更なる所望の特性を提供し得るペプチドアイソスター(修飾ペプチド結合))を言う。ペプチドは、少なくとも2アミノ酸を含み得る。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方の、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成型、並びに混合ポリマーを含み、当業者によって容易に理解されるように、化学的又は生化学的に修飾され得、又は非天然若しくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含み得る。このような修飾としては、例えば、標識、メチル化、アナログを用いた1以上の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド内修飾、例えば非荷電結合(例、メチルホスホン酸、ホスホトリエステル、ホスホアミデート(phosphoamidates)、カルバメートなど)、荷電結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、懸垂部分(例、ポリペプチド)、及び修飾結合(例、αアノマーポリヌクレオチドなど)が挙げられる。水素結合及び他の化学的相互作用を介して指定された配列へと結合するそれらの能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子も含まれる。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「ベクター」とは、宿主細胞内へと外因性又は内因性ポリヌクレオチドを導入するために使用されるポリヌクレオチド化合物を言う。ベクターは、ヌクレオチド配列(1以上のポリペプチド分子をコードし得る)を含む。天然状態の、又は組換え操作を受けている、プラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージは、一般的に使用されるベクターの非限定的な例であり、少なくとも1つの所望の単離されたポリヌクレオチド分子を含む組換えベクターを提供する。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「担体」又は「薬理学的担体」(これらは交換可能である)とは、医薬品有効成分(API)を、適切なin vitro又はin vivo作用部位へと送達するためのビヒクルとして適した任意の物質を言う。従って、担体は、APIを含む治療試薬又は実験試薬の製剤化のための賦形剤として機能し得る。好ましい担体は、APIを、T細胞と相互作用することが可能な形態で、保持することが可能である。このような担体の例としては、水、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス液及び他の水性の生理学的平衡溶液或いは細胞培養培地が挙げられるが、これらに限定されない。水性担体は、レシピエントの生理学的状態に近づけるのに必要な、例えば化学的安定性及び等張性の増強に必要な、適切な補助物質も含み得る。適切な補助物質としては、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、並びに、リン酸バッファー、Trisバッファー、及び重炭酸塩バッファーを調製するために使用される他の物質が挙げられる。
【0041】
抗炎症薬としてのSPARC
【0042】
酸性であり且つシステインに富んだ分泌タンパク質(Secreted protein acidic and rich in cysteine)(オステオネクチン、BM40、又はSPARCとしても知られる)(以下「SPARC」)は、細胞の形の変化を引き起こし、細胞周期の進行を阻害し、そして細胞外マトリクスの合成に影響する、マトリクス結合タンパク質である(Bradshaw et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 100: 6045-6050 (2003))。マウスSPARC遺伝子は1986年にクローン化され(Mason et al., EMBO J. 5: 1465-1472 (1986))、そして全長ヒトSPARC cDNAは1987年にクローン化及び配列決定された(Swaroop et al., Genomics 2: 37-47 (1988))。SPARC発現は、発生的に制御されており、正常な発生の過程で又は傷害に応答して再構築を受けている組織において主に発現している。例えば、高レベルのSPARCタンパク質が、発生中の骨及び歯において発現する(例えば、Lane et al., FASEB J., 8, 163 173 (1994); Yan & Sage, J. Histochem. Cytochem. 47:1495-1505 (1999)を参照のこと)。
【0043】
全長SPARCタンパク質は、複数の機能ドメイン(N末端酸性ドメイン、細胞増殖を阻害し得るフォリスタチン様ドメイン、及びカルシウムイオンを高い親和性で結合し、細胞増殖を阻害するC末端細胞外ドメインを含む)を有する。SPARCは広範な種々のリガンドに対して親和性を有し、リガンドとしては、陽イオン(例えば、Ca2+、Cu2+、Fe2+)、成長因子(例えば、血小板由来成長因子(PDGF)、及び血管内皮成長因子(VEGF))、細胞外マトリクス(ECM)タンパク質(例えば、コラーゲンI V及びコラーゲンIX、ビトロネクチン(vitronectin)、及びトロンボスポンジン1(thrombospondin 1))、内皮細胞、血小板、アルブミン、及びヒドロキシアパタイトが挙げられる(例えば、Lane et al., FASEB J., 8, 163 173 (1994);Yan & Sage, J. Histochem. Cytochem. 47:1495-1505 (1999)を参照のこと)。SPARCは、アルブミンに結合することも知られている(例えば、Schnitzer, J. Biol. Chem., 269, 6072 (1994)を参照のこと)。
【0044】
発明者らは、驚くべきことに、SPARCは抗炎症活性を有することを見出した。いかなる特定の理論によっても制約されることを望まないが、本発明者らは、モデル腹腔内系及びin vitroにおいて、SPARCが、マクロファージ(marophage)走化性タンパク質−1レベルを顕著に低下させ、そのマクロファージ走化性効果を阻害することを見出した。細胞におけるSPARCの過剰発現はまた、インターロイキン-6、プロスタノイド(プロスタグランジンE2及び8-イソプロスタン)並びにマトリクスメタロプロテアーゼ及びウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子の、マクロファージ誘導性の及び中皮細胞誘導性の産生及び活性を、顕著に減衰させる。SPARCのこれらの効果は、部分的に、核因子-κBプロモーター活性化の阻害を介して仲介される。これらの結果は、SPARCがマクロファージの動員を減少させ得、関連する炎症を下方調節し得ることを示す。
【0045】
本発明は、炎症性疾患を患う哺乳動物を治療する方法であって、罹患哺乳動物への、治療上有効量のSPARCポリペプチド及び薬理学的担体の投与を含む方法を提供し、ここでSPARCポリペプチドが配列番号1又はその断片である場合を含む。
【0046】
本発明に従う治療に適した炎症性疾患及び炎症状態としては、例えば、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、敗血症、急性気管支炎、アレルギー性気管支炎、若しくは慢性気管支炎、慢性閉塞性気管支炎(COPD)、咳嗽、肺気腫、アレルギー性鼻炎若しくは副鼻腔炎又は非アレルギー性鼻炎若しくは副鼻腔炎、慢性鼻炎若しくは副鼻腔炎、喘息、肺胞炎、農夫病、過反応性気道、感染性気管支炎若しくは肺臓炎、小児喘息、気管支拡張症、肺線維症、ARDS(成人急性呼吸窮迫症候群)、気管支浮腫、肺浮腫、気管支炎、種々の原因(毒ガスの吸引、吸入など)により引き起こされる肺炎若しくは間質性肺炎、又は心不全、放射線照射、化学療法、嚢胞性線維症、若しくは嚢胞性線維症(mucoviscidosis)の結果としての気管支炎、肺炎若しくは間質性肺炎、又はα1−アンチトリプシン欠損症、胆嚢炎における急性炎症性変化若しくは慢性炎症性変化、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性偽ポリープ、若年性ポリープ、深在性嚢胞性大腸炎、腸壁嚢状気腫症(pneumatosis cystoides intestinales)、胆管及び胆嚢の疾患(例、胆石及び集塊(conglomerates))、関節の炎症性疾患(関節リウマチなど)又は皮膚及び目の炎症性疾患の治療に適した炎症性疾患及び炎症状態が挙げられる。
【0047】
本発明に従う治療に特に適した疾患及び状態としては、細胞外マトリクスの分解が関与するものが挙げられ、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、骨関節炎、強直性脊椎炎、骨粗しょう症、腱炎及び歯周病のような筋骨格(muskuloskeletal)疾患、癌転移、気道疾患(COPD、喘息)、腎線維症及び肝線維症、アテローム性動脈硬化症及び心不全のような心血管疾患、並びに神経炎症、多発性硬化症のような神経疾患が挙げられるが、これらに限定されず、そして原発性の関節の変性が関与する疾患としては、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、及び骨関節炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本発明に従う炎症性疾患の治療方法としては、例えば、抗炎症薬の投与を更に含む方法、及び/又は抗真菌剤、抗ウイルス剤又は抗生物質などの抗菌剤の投与を更に含む方法が挙げられる。
【0049】
本発明は、腹膜炎を患う哺乳動物を治療する方法であって、治療上有効量のSPARCポリペプチド及び薬理学的担体の腹腔内投与を含む方法を提供し、ここでSPARCポリペプチドが配列番号1又はその断片である場合を含む。本発明に従う方法としては、例えば、抗炎症薬の投与を更に含む方法、及び/又は抗真菌剤、抗ウイルス剤又は抗生物質などの抗菌剤の投与を更に含む方法が挙げられる。本発明に従う腹膜炎の治療に適した腹膜炎の原因としては、例えば、特発性細菌性腹膜炎、化学性腹膜炎、虫垂炎、腸梗塞(infract)、膵臓炎、胃破裂、穿孔性胃潰瘍又は外傷(truma)が挙げられる。本発明に従う腹膜炎の治療方法としては、例えば、抗炎症薬の投与を更に含む方法、及び/又は抗真菌剤、抗ウイルス剤又は抗生物質などの抗菌剤の投与を更に含む方法が挙げられる。
【0050】
本発明は、哺乳動物において腹膜癒着の発生率を低下させる方法であって、治療上有効量のSPARCポリペプチド及び薬理学的担体の腹腔内投与を含む方法を提供し、ここでSPARCポリペプチドが配列番号1又はその断片である場合を含む。癒着の適切な原因としては、例えば、外傷腹部又は骨盤内手術、及び腹膜炎が挙げられる。
【0051】
本発明は、子宮内膜症を患う哺乳動物を治療する方法であって、治療上有効量のSPARCポリペプチド及び担体の腹腔内投与を含む方法を提供し、ここでSPARCポリペプチドが配列番号1又はその断片である場合を含む。本発明に従う子宮内膜症の治療方法としては、例えば、抗炎症薬の投与を更に含む方法、及び/又は抗真菌剤、抗ウイルス剤又は抗生物質などの抗菌剤の投与を更に含む方法が挙げられる。
【0052】
SPARCの発現のための核酸
【0053】
SPARCポリペプチドは、SPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号2など)を含む組換え宿主細胞から発現され得、そして精製され得る。組換え宿主細胞は、原核生物の細胞又は真核生物の細胞であり得、細菌(E. coliなど)、真菌細胞(酵母など)、昆虫細胞(ショウジョウバエ及びカイコ由来細胞株を含むが、これらに限定されない)、並びに哺乳動物細胞及び細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本発明は更に、ポリペプチド又は本明細書中に記載されたポリペプチドの発現のための、制御エレメント及び、該制御エレメント(例、適切なプロモーター)に作動可能に連結された本明細書中に記載された核酸分子を含む、核酸構築物を提供する。タンパク質発現はRNA転写(それはひいてはDNAシグナルにより調節される)のレベルに左右される。同様に、mRNAの翻訳は、最低限でも、AUG開始コドン(これは通常、メッセージの5’端の約10から約100ヌクレオチドの範囲内に位置する)を必要とする。AUG開始コドンに隣接する配列は、真核生物リボソームによるその認識に影響することが示されており、完全なコザックコンセンサス配列と一致すると最適な翻訳をもたらす(例えば、Kozak, J. Molec. Biol. 196: 947-950 (1987)を参照のこと)。また、細胞における外因性核酸の発現の成功は、得られるタンパク質の翻訳後修飾を必要とし得る。従って、本発明は、ポリペプチドをコードするプラスミドを提供し、ここでベクターは、例えばpCDNA3.1又はその誘導体である。
【0055】
本明細書中に記載された核酸分子は、適切なプロモーターに作動可能に連結されたコード領域を好ましくは含み、このプロモーターは真核細胞において機能的であることが好ましい。RSVプロモーター及びアデノウイルス主要後期プロモーターなど(これらに限定されない)のウイルスプロモーターが、本発明において使用され得る。適切な非ウイルスプロモーターとしては、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター及び伸長因子1αプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。非ウイルスプロモーターは、望ましくはヒトプロモーターである。更なる適切な遺伝因子(これらの多くは当該分野において公知である)がまた、本発明の核酸及び構築物にライゲーション、結合、又は挿入され得、更なる機能、発現レベル又は発現パターンを提供し得る。SPARCファミリー遺伝子の発現のためのネイティブプロモーターもまた使用され得るが、その場合、その染色体を実質的に変化させるプロセスによって改変されない限り、それらを天然にコードする染色体中では使用されないことが好ましい。このような実質的に変化した染色体としては、レトロウイルスベクター又は類似のプロセスによってトランスフェクト及び変更された染色体を含み得る。或いは、このような実質的に変化した染色体は、HAC、YAC、又はBACなどの人工染色体を含み得る。
【0056】
更に、本明細書中に記載される核酸分子は、転写を促進するためにエンハンサーに作動可能に連結され得る。エンハンサーは、隣接遺伝子の転写を刺激する、DNAのシス作用性因子である。多数の種由来の多数の異なる細胞型において、連結された遺伝子に対して高レベルの転写を付与するエンハンサーの例としては、SV40及びRSV-LTR由来のエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。このようなエンハンサーは、細胞型特異的な効果を有する他のエンハンサーと組み合わせられ得、又は任意のエンハンサーが、単独で使用され得る。
【0057】
タンパク質産生を最適化するために、本発明の核酸分子は、この核酸分子のコード領域の後にポリアデニル化部位を更に含み得る。また、好ましくは全ての適切な転写シグナル(及び必要に応じて翻訳シグナル)は、外因性核酸が導入される細胞中で適切に発現するように正確に配置されよう。所望の場合、外因性核酸はまた、インフレームの全長転写物を維持しながらmRNA産生を促進するために、スプライス部位(即ち、スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位)を組み込み得る。更に、本発明の核酸分子は、プロセシング、分泌、細胞内局在などのために適切な配列を更に含み得る。
【0058】
核酸分子は、任意の適切なベクターに挿入され得る。適切なベクターとしてはウイルスベクターが挙げられるが、これに限定されない。適切なウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及び鶏痘ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは好ましくは、真核細胞(例えば、CHO-K1細胞)を形質転換するための、ネイティブの又は操作された能力を有する。また、本発明に関して有用なベクターは、プラスミド若しくはエピソームのような「裸の」核酸ベクター(即ち、ベクターを封入するタンパク質、糖、及び/又は脂質をほとんど又は全く有さないベクター)であり得、又はベクターは、他の分子と複合体化され得る。本発明の核酸と適切に組み合わせられ得る他の分子としては、ウイルス被膜、陽イオン性脂質、リポソーム、ポリアミン、金粒子、及び細胞分子を標的化するリガンド、受容体、又は抗体などの標的化部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
上記の核酸及びタンパク質に関して、本明細書中で使用するための核酸、ペプチド又はタンパク質の「対応」の一基準は、配列間の相対的「同一性」であり、ペプチド若しくはタンパク質の場合、又はコードされるペプチド若しくはタンパク質に従って規定される核酸の場合、対応としては、少なくとも約50%同一性、又は少なくとも約70%同一性、又は少なくとも約90%同一性、或いは更には約95%同一性を有するペプチドが挙げられ、特定のペプチド又はタンパク質に少なくとも約98〜99%同一性でもあり得る。核酸の間の同一性の好ましい基準は、ペプチドについて上に明記されたのと同じであり、少なくとも約90%同一性、又は少なくとも約98〜99%同一性が最も好ましい。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「同一性」とは、2つのペプチド間、又は2つの核酸分子間の配列の同一性の基準を言う。同一性は、各配列(比較の目的で直線であり得る)における位置を比較することにより、決定され得る。2つのアミノ酸配列又は核酸配列は、それらが少なくとも約75%配列同一性、好ましくは少なくとも約90%配列同一性及びなおより好ましくは少なくとも95%配列同一性及び最も好ましくは少なくとも約98〜99%同一性を共有する場合、実質的に同一であるとみなされる。
【0061】
配列同一性は、現在使用されており、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に最初に記載された、BLASTアルゴリズムにより決定され得る。BLASTアルゴリズムは、公開された初期設定で使用され得る。比較される配列における1つの位置が同じ塩基又はアミノ酸により占められる場合、これらの分子はその位置において同一性を共有したとみなされる。配列間の同一性の程度は、配列により共有されるマッチしている位置の数の関数である。
【0062】
核酸配列の同一性の別の基準は、低ストリンジェンシー条件下で、好ましくは高ストリンジェンシー条件下で、2つの配列が互いにハイブリダイズするか否かを決定することである。このような配列が高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする場合、それらは実質的に同一である。低ストリンジェンシー条件下でのフィルターに結合した配列へのハイブリダイゼーションは、例えば、65℃で0.5 M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1 mM EDTA中で実施してよく、そして42℃で0.2 x SSC/0.1 SDS中で洗浄する(Ausubel et al. (eds.) 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, Green Publishing Associates, Inc., and John Wiley & sons, Inc., New York, at p. 2.10.3を参照のこと)。或いは、高ストリンジェンシー条件下でのフィルターに結合した配列へのハイブリダイゼーションは、例えば、65℃(650C)で0.5 M NaHPO4、7%(SDS)、1 mM EDTA中で実施してよく、そして68℃で0.2 x SSC/0.1 % SDS中で洗浄する(上記Ausubel et al. (eds.) 1989を参照のこと)。ハイブリダイゼーション条件は、目的の配列に応じて公知の方法に従って変更され得る(Tijssen, 1993, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology - - Hybridization with Nucleic Acid Probes, Part I, Chapter 2 "Overview of Principles in Hybridization and the Strategy of Nucleic Acid Probe Assays", Elsevier, New Yorkを参照のこと)。一般的には、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度及びpHにおける特定の配列についての融点(thermal melting point)よりも約50℃低くなるように選択される。
【0063】
当業者は、遺伝子コードの普遍性に起因して、任意の所定のアミノ酸配列の知識が、前記アミノ酸配列のポリペプチドをコードし得る有限の数の特定のポリヌクレオチド配列を当業者に容易に想像させることを認識するであろう。更に、当業者は、「コドン最適化」のプロセス(それは当該分野において周知である)を介して、任意の所定の種における発現のために、前記アミノ酸配列のポリペプチドをコードする最適なポリヌクレオチド配列を容易に決定することができる(例えば、VILLALOBOS et al.: Gene Designer: a synthetic biology tool for constructing artificial DNA segments. BMC Bioinformatics. 2006 Jun 6;7:285を参照のこと)。
【0064】
また、本発明は、SPARCポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供し、ここで単離された核酸分子は、低ストリンジェンシー条件下で、好ましくは中程度にストリンジェントな条件下で、なおより好ましくは高ストリンジェントな条件下で、配列番号3にハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」は、核酸配列の、約25%から約5%のミスマッチ、より好ましくは約15%から約5%のミスマッチ、そして最も好ましくは約10%から約5%のミスマッチを好ましくは許容する。「中程度にストリンジェントな条件」は、核酸配列の、約40%から約15%のミスマッチ、より好ましくは約30%から約15%のミスマッチ、そして最も好ましくは約20%から約15%のミスマッチを好ましくは許容する。「低ストリンジェンシー条件」は、核酸配列の、約60%から約35%のミスマッチ、より好ましくは約50%から約35%のミスマッチ、そして最も好ましくは約40%から約35%のミスマッチを好ましくは許容する。
【0065】
非特異的結合がないことは、部分的な程度の相補性(例、約30%よりも低い同一性)すら欠如している第二の標的の使用により試験され得る;非特異的結合がない場合、プローブは第二の非相補的な標的にハイブリダイズしないであろう。部分的な相同性又は完全な相同性(即ち、同一性)があり得る。部分的に相補的な配列は、少なくとも部分的に、完全に相補的な配列が標的核酸にハイブリダイズするのを阻害する配列である。標的配列への完全に相補的な配列のハイブリダイゼーションの阻害は、低ストリンジェンシーの条件下でのハイブリダイゼーションアッセイ(サザンブロット又はノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど)を使用して、調べられ得る。「実質的に相同な」配列又はプローブは、低ストリンジェンシーの条件下で、標的への完全に相同な配列の結合(即ち、ハイブリダイゼーション)をめぐって競合し、結合を阻害する。これは、低ストリンジェンシーの条件が非特異的結合を許すようなものである、と言うわけではない;低ストリンジェンシー条件は、2つの配列の互いへの結合が、特異的(即ち、選択的)相互作用であることを必要とする。用語「相同性」とは、相補性の程度を言う。
【0066】
タンパク質生産を最適化するために、本発明の核酸分子は、核酸分子のコード領域の後にポリアデニル化部位を更に含み得る。また、好ましくは全ての適切な転写シグナル(及び必要に応じて翻訳シグナル)は、外因性核酸が導入される細胞中で適切に発現するように正確に配置されよう。所望の場合、外因性核酸はまた、インフレームの全長転写物を維持しながらmRNA産生を促進するために、スプライス部位(即ち、スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位)を組み込み得る。更に、本発明の核酸分子は、プロセシング、分泌、細胞内局在などのために適切な配列を更に含み得る。
【0067】
核酸分子は、任意の適切なベクターに挿入され得る。適切なベクターとしてはウイルスベクターが挙げられるが、これに限定されない。適切なウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及び鶏痘ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは好ましくは、真核細胞(例えば、CHO-K1細胞)を形質転換するための、ネイティブの又は操作された能力を有する。また、本発明に関して有用なベクターは、プラスミド若しくはエピソームのような「裸の」核酸ベクター(即ち、ベクターを封入するタンパク質、糖、及び/又は脂質をほとんど又は全く有さないベクター)であり得、又はベクターは、他の分子と複合体化され得る。本発明の核酸と適切に組み合わせられ得る他の分子としては、ウイルス被膜、陽イオン性脂質、リポソーム、ポリアミン、金粒子、及び細胞分子を標的化するリガンド、受容体、又は抗体などの標的化部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
従って、本発明は、本明細書中に記載の本発明の核酸分子で形質転換又はトランスフェクトされた細胞を提供する。外因性DNA分子で細胞を形質転換又はトランスフェクトする手段は、当該分野で周知である。例えば、限定ではなく、DNA分子は、当該分野で周知の標準的な形質転換又はトランスフェクション技術(例えばリン酸カルシウム又はDEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、プロトプラスト(protoblast)融合、エレクトロポレーション、リポソーム及び直接的マイクロインジェクションなど)を使用して細胞中に導入される(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, ColdSpring HarborLaboratory Press, New York(2001), pp. 1.1-1.162, 15.1-15.53, 16.1- 16.54を参照のこと)。形質転換に広く使用されている方法は、リン酸カルシウム又はDEAE−デキストランのいずれかによって媒介されるトランスフェクションである。細胞型によっては、培養細胞集団の20%までが、いつでもトランスフェクトされ得る。
【0069】
形質転換法の別の例は、プロトプラスト融合法であり、高コピー数の目的のプラスミドを保有する細菌由来のプロトプラストが、培養哺乳動物細胞と直接混合される。細胞膜の融合(通常ポリエチレングリコールを用いる)の後、細菌の内容物が哺乳動物細胞の細胞質中に送達され、プラスミドDNAが核へ移行する。プロトプラスト融合は、一過性発現アッセイに一般に使用される細胞株の多くについてはトランスフェクションほど効率的ではないが、DNAのエンドサイトーシスが非効率的に生じる細胞株については有用である。プロトプラスト融合は、宿主染色体中にランダムに組み込まれた複数コピーのプラスミドDNAを高い頻度で生じさせる。
【0070】
エレクトロポレーション(種々の哺乳動物細胞及び植物細胞への短時間の高電圧の電気パルスの印加)は、原形質膜にナノメートルサイズの孔を形成させる。DNAは、これらの孔を通過するか、又は孔の閉鎖に伴う膜成分の再分布の結果として、細胞の細胞質中に直接取り込まれる。エレクトロポレーションは極めて効率的であり得、クローン化した遺伝子(clones genes)の一過的な発現のため、及び目的の遺伝子の組み込まれたコピーを保有する細胞株の樹立のため、の両方に使用され得る。
【0071】
リポソーム形質転換は、リポソーム内へのDNA及びRNAの封入と、その後の細胞膜とのリポソームの融合を含む。また、合成陽イオン性脂質で被覆されたDNAは、融合によって細胞中に導入され得る。或いは、直鎖及び/又は分枝鎖のポリエチレンイミン(PEI)が、トランスフェクションにおいて使用され得る。
【0072】
核内へのDNA分子の直接的マイクロインジェクションには、低pHのエンドソームなどの細胞区画へDNA分子をさらさないという利点がある。従って、マイクロインジェクションは、目的のDNAの組み込まれたコピーを保有する細胞の系統を樹立するための方法として主に使用される。
【0073】
このような技術は、真核細胞の安定且つ一過性の形質転換のために使用され得る。安定に形質転換された細胞の単離には、目的の遺伝子での形質転換と併せて選択マーカーの導入が必要である。このような選択マーカーとしては、ネオマイシンへの耐性を付与する遺伝子、並びにHPRT陰性細胞におけるHPRT遺伝子が挙げられる。選択には、少なくとも約2〜7日間、好ましくは少なくとも約1〜5週間の、選択培地中での長期培養が必要とされ得る(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 16.1-16.54を参照のこと)。
【0074】
本発明における使用のための核酸配列はまた、市販の自動オリゴヌクレオチド合成機で実施され得る化学合成により(例えば、Beaucage, et al.(Tetra. Letts. 22: 1859-1862 (1987))によって記載されたホスホロアミダイト法、又はトリエステル法(Matteucci et al., J. Am. Chem. Soc. 103: 3185 (1981))により)、一部又は全体が産生され得る。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、その鎖を適切な条件下で一緒にアニーリングすることにより、又は適切なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを使用して相補鎖を合成することにより、化学合成の一本鎖産物から得られ得る。
【0075】
SPARCタンパク質の発現及び精製
【0076】
特定の実施形態において、SPARCポリペプチドを発現させ、精製する場合、封入体(これは不溶性画分である)の形成を防ぐために、タンパク質の溶解性を改善する技術が使用され、その結果大量のポリペプチドが得られる。封入体中に蓄積したSPARCは、その生理学的活性を保持しない不活性型SPARCである。
【0077】
精製されたSPARCポリペプチドの溶解性は、当該分野で公知の方法によって改善され得る。例えば、溶解性は、全長SPARCポリペプチドではなく、機能的断片を発現させることによっても改善され得る。また、(例えばE.coli中で)発現したタンパク質の溶解性を増大させるために、Georgiou & Valax(Current Opinion Biotechnol. 7: 190-197 (1996))に記載されているように、増殖温度を低下させ、より弱いプロモーターを使用し、より低コピー数のプラスミドを使用し、誘導因子濃度を低下させ、増殖培地を変化させることによって、タンパク質合成の速度を低下させることができる。これは、タンパク質合成の速度を低下させ、通常、より溶解性の高いタンパク質が得られる。適切な折り畳み若しくはタンパク質の安定性に必須な補欠分子族又は補因子を添加するか、増殖の間の培地中のpHの変動を制御するためのバッファーを添加するか、或いはラクトース(これは、ほとんどの栄養豊富な培地(例えばLB、2xYTなど)中に存在する)によるlacプロモーターの誘導を抑制するために1%グルコースを添加することもできる。ポリオール(例えば、ソルビトール)及びスクロースの添加に起因する浸透圧の上昇は、細胞における浸透圧保護剤の蓄積を引き起こし、これがネイティブタンパク質の構造を安定化するため、ポリオール(例えば、ソルビトール)及びスクロースも培地に添加され得る。エタノール、低分子量チオール及びジスルフィド、並びにNaClが添加され得る。また、シャペロン及び/又はフォールダーゼ(foldases)が、所望のポリペプチドと共に同時発現され得る。分子シャペロンは、折り畳み中間体と一過的に相互作用することによって、適切な異性化及び細胞内標的化を促進する。E.coliのシャペロン系としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:GroES−GroEL、DnaK−DnaJ−GrpE、CIpB。
【0078】
フォールダーゼは、折り畳み経路に沿った律速段階を加速する。3つの型のフォールダーゼが、重要な役割を果たす:ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPI’s)、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbA)及びジスルフィドイソメラーゼ(DsbC)、タンパク質のシステインの酸化及びジスルフィド結合の異性化の両方を触媒する真核生物のタンパク質であるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)。1つ以上のこれらのタンパク質と標的タンパク質との同時発現は、より高いレベルの可溶性標的タンパク質を生じ得る。
【0079】
SPARCポリペプチドは、その溶解性及び産生量を改善するために、融合タンパク質として産生され得る。この融合タンパク質は、インフレームで一緒に融合したSPARCポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む。第2のポリペプチドは、それが融合されたポリペプチドの溶解性を改善することが当該分野で公知の融合パートナーであり得る(例えば、NusA、バクテリオフェリチン(BFR)、GrpE、チオレドキシン(TRX)及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST))。Novagen Inc.(Madison、Wis.)は、NusA−標的融合物の形成を可能にするpET43.1ベクターシリーズを提供している。DsbA及びDsbCも、融合パートナーとして使用されるときには、発現レベルに対して正の効果を示しており、従ってより高い溶解性を達成するためにSPARCポリペプチドと融合するために使用され得る。
【0080】
一実施形態において、SPARCポリペプチドは、米国特許第6,387,664号(本明細書でその全体が参照により組み込まれる)に記載されているように、SPARCポリペプチド及び融合パートナーのチオレドキシンを含む融合ポリペプチドとして産生される。チオレドキシン−SPARC融合物は、生理学的活性を失うことなく、大量に、製剤化の容易な可溶性タンパク質として、E.coli中で産生され得る。米国特許第6,387,664号は、チオレドキシンのC末端にSPARCが融合された融合SPARCタンパク質を提供するが、本発明の目的のためには、SPARCポリペプチドは、その感作機能が保持される限り、第2のポリペプチドのN末端(tenninus)又はC末端のいずれにも融合され得ることが理解される。
【0081】
溶解性を増大させることに加えて、SPARCポリペプチドを含む融合タンパク質は、細胞におけるSPARCポリペプチドの発現の容易な検出のために構築され得る。一実施形態において、SPARCポリペプチドに融合した第2のポリペプチドは、レポーターポリペプチドである。このレポーターポリペプチドは、このような検出目的のために提供されるときには、SPARCポリペプチドと融合される必要はない。レポーターポリペプチドは、SPARCポリペプチドもコードする同じポリヌクレオチド(例えば、ベクター)によってコードされ得、標的細胞において同時導入及び同時発現され得る。
【0082】
平均蛍光強度及び分散などの定量的パラメーターは、細胞集団の蛍光強度プロファイルから決定され得る(Shapiro, H., 1995, Practical Flow Cytometry, 217-228)。本発明において有用なレポーター分子の非限定的な例としては、ルシフェラーゼ(蛍又は他の種由来)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、及びdsRedが挙げられる。
【0083】
SPARCポリペプチドの発現(単独か又は融合タンパク質としてかのいずれかで)はまた、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)(例えば、米国特許第5,962,320号;6,187,307号;及び6,194,205号を参照のこと)ウェスタンブロットなどの免疫測定法により、又は当該分野において通常の他の方法により、直接的に決定され得る。SPARCポリペプチドの発現は、タンパク質の転写産物を検出することにより(例えば、ノーザンブロット又はDNAマイクロアレイなどのハイブリダイゼーションアッセイにより、又はPCRにより)、間接的に検出され得る。
【0084】
一実施形態において、第二のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、リンカーポリペプチドをコードする介在リンカー配列を介して、SPARCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに融合される。
【0085】
別の実施形態において、リンカーポリペプチドは、プロテアーゼにより加水分解され得るペプチド結合を含むプロテアーゼ切断部位を含む。結果として、SPARCポリペプチドは、タンパク質分解により、発現後、第二のポリペプチドから分離され得る。リンカーは、該結合のいずれかの側(プロテアーゼの触媒部位がそこにも結合する)に、1以上の更なるアミノ酸を含み得る(例えば、Schecter & Berger, Biochem. Biophys. Res. Commun. 27, 157-62 (1967)を参照のこと)。或いは、リンカーの切断部位は、プロテアーゼの認識部位から離れてあり得、切断部位及び認識部位の2つは、1以上(例2から4)のアミノ酸により隔てられ得る。一態様において、リンカーは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、約10、約20、約30、約40、約50又はそれ以上のアミノ酸を含む。より好ましくは、リンカーは、約5から約25アミノ酸長であり、最も好ましくは、リンカーは約8から約15アミノ酸長である。
【0086】
本発明に従う有用ないくつかのプロテアーゼが以下の参考文献において考察される:Hooper et al, Biochem. J. 321: 265-279 (1997);Werb, Cell 91 : 439-442 (1997);Wolfsberg et al., J. Cell Biol. 131 : 275-278 (1995);Murakami & Etlinger, Biochem. Biophys. Res. Comm. 146: 1249-1259 (1987);Berg et al., Biochem. J. 307: 313-326 (1995);Smyth and Trapani, Immunology Today 16: 202-206 (1995);Talanian et al., J. Biol. Chem. 272: 9677-9682 (1997);及びThornberry et al., J. Biol. Chem. 272: 17907-17911 (1997)。細胞表面プロテアーゼも、本発明に従う切断可能なリンカーと共に使用され得、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アミノペプチダーゼN;ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ;アンジオテンシン変換酵素;ピログルタミルペプチダーゼII;ジペプチジルペプチダーゼIV;N-アルギニン二塩基性転換酵素;エンドペプチダーゼ24.15;エンドペプチダーゼ24.16;アミロイド前駆体タンパク質セクレターゼα、β及びγ;アンジオテンシン変換酵素セクレターゼ;TGFαセクレターゼ;TNFαセクレターゼ;FASリガンドセクレターゼ;TNF受容体−I及び−IIセクレターゼ;CD30セクレターゼ;KL1及びKL2セクレターゼ;IL6受容体セクレターゼ;CD43、CD44セクレターゼ;CD16-I及びCD16-IIセクレターゼ;L-セレクチンセクレターゼ;葉酸受容体セクレターゼ;MMP 1、2、3、7、8、9、10、11、12、13、14、及び15;ウロキナーゼ・プラスミノーゲン活性化因子;組織プラスミノーゲン活性化因子;プラスミン;トロンビン;BMP-1(プロコラーゲンC-ペプチダーゼ);ADAM 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11;並びにグランザイムA、B、C、D、E、F、G、及びH。
【0087】
細胞結合型プロテアーゼに依存することの代替手段は、自己切断リンカーを使用することである。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aプロテアーゼが、リンカーとして使用され得る。これは、2A/2B接合部においてFMDVのポリタンパク質を切断する17アミノ酸の短いポリペプチドである。FMDV 2Aポリペプチドの配列は、NFDLLKLAGDVESNPGPである。切断は、ペプチドのC末端において、最後のグリシン−プロリンアミノ酸対において起こり、他のFMDV配列の存在には非依存的であり、異種配列の存在下であっても切断する。
【0088】
2つのタンパク質コード領域の間への(即ち、本発明に従う融合タンパク質の、SPARCポリペプチドと第二のポリペプチドの間への)この配列の挿入は、C末端断片(そのN末端に2AプロテアーゼのC末端プロリンを保持する)とN末端断片(そのC末端に2Aプロテアーゼペプチドの残りを保持する)とに自らを切断する、自己切断キメラの形成をもたらす(例えば、de Felipe et al., Gene Therapy 6: 198-208 (1999)を参照のこと)。自己切断リンカー及び更なるプロテアーゼ−リンカーの組み合わせは、国際公開WO01/20989に更に記載されており、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0089】
上記のリンカー配列をコードするポリヌクレオチドは、適切なプロテアーゼの天然基質をコードする配列からクローン化され得、又は当該分野における通常の方法を使用して化学的に合成され得る。
【0090】
SPARCリガンド及び/または抗SPARC抗体を使用するアフィニティークロマトグラフィーも、本発明に従うSPARCポリペプチドを精製するために使用され得る。アフィニティークロマトグラフィーは、単独で、又は、イオン交換、分子サイジング、若しくはHPLCクロマトグラフィー技術と組み合わせて、使用され得る。このようなクロマトグラフィーアプローチは、カラムを使用して、又はバッチ形式で実施され得る。このようなクロマトグラフィーによる精製方法は、当該分野において周知である。
【0091】
試料中のSPARCタンパク質の発現は、当該分野において公知の任意の適切な方法により、検出及び定量され得る。タンパク質検出及び定量の適切な方法としては、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、銀染色、BCAアッセイ(Smith et al., Anal. Biochem. 150, 76-85 (1985))、ローリータンパク質アッセイ(例えば、Lowry et al., J. Biol. Chem. 193, 265-275 (1951)に記載されている)(これは、タンパク質−銅錯体に基づく比色分析である)、及びブラッドフォードタンパク質アッセイ(例えば、Bradford et al., Anal. Biochem. 72, 248 (1976)に記載されている)(これは、タンパク質結合による、クマシーブルーG-250における吸光度の変化に依存する)が挙げられる。腫瘍生検は、前記方法のいずれかにより分析され得るか、又はそれは、抗SPARC抗体(例、抗SPARCポリペプチド抗体(モノクローナル又はポリクローナルのいずれか)を、適切な可視化システム(即ち、HRP基質及びHRP結合二次抗体)と組み合わせて使用する、免疫組織化学により分析され得る。
【0092】
SPARCタンパク質又はポリヌクレオチドの投与
【0093】
SPARCタンパク質は、典型的には、担体と共に投与されるだろう。組成物は、特に該組成物及び/又はその最終用途の安定性を増強するために、任意の他の適切な成分を更に含み得る。従って、本発明の組成物の、多種多様な適切な製剤が存在する。以下の製剤及び方法は、単なる例示であり、限定では全くない。
【0094】
担体は、典型的には液体であるが、固体、又は液体及び固体成分の組み合わせでもあり得る。担体は、望ましくは、生理学的に許容される(例えば、医薬上又は薬理学的に許容される)担体(例えば、賦形剤又は希釈剤)である。生理学的に許容される担体は周知であり、容易に入手可能である。担体の選択は、少なくとも一部分においては、標的組織及び/又は細胞の位置、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法によって、決定されよう。
【0095】
典型的には、このような組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製され得る;注射前の液体添加で溶液又は懸濁液を調製するために使用するのに適切な固体形態も、調製され得る;調製物は乳化もされ得る。注射での使用に適切な医薬製剤としては、無菌の水溶液又は分散物;公知のタンパク質安定剤及び凍結保護剤(lyoprotectants)を含む製剤、ゴマ油、ピーナツ油又は水性プロピレングリコールを含む製剤、並びに無菌の注射可能な溶液又は分散物の即時調製のための無菌粉末、が挙げられる。全ての場合において、製剤は無菌でなければならず、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度まで流動的でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤(例えばヒドロキシセルロースなど)と適切に混合された水の中で調製され得る。分散物はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、並びに油中で調製され得る。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐため、保存剤を含む。
【0096】
SPARCタンパク質は、中性又は塩の形態で組成物へと製剤化され得る。医薬上許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)及び無機酸(例えば、塩酸若しくはリン酸など)又は有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)と形成される塩が挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化第二鉄など)及び有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)からも得られる。
【0097】
組成物は、特に該組成物及び/又はその最終用途の安定性を増強するために、任意の他の適切な成分を更に含み得る。従って、本発明の組成物の、多種多様な適切な製剤が存在する。以下の製剤及び方法は、単なる例示であり、限定では全くない。
【0098】
吸入による投与に適切な製剤としては、エアロゾル製剤が挙げられる。エアロゾル製剤は、加圧された許容される噴霧剤(例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)の中に入れられ得る。それらは、ネブライザー又はアトマイザーからの送達のために、非加圧調製物としても製剤化され得る。
【0099】
非経口投与に適切な製剤としては、水性及び非水性の、等張の無菌注射溶液(酸化防止剤、バッファー、静菌剤、及びこの製剤を、対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る)、並びに水性及び非水性の無菌懸濁液(懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含み得る)が挙げられる。これらの製剤は、単回用量又は複数用量の密封容器(例えばアンプル及びバイアルなど)中で提供され得、使用直前に、注射のために無菌液体賦形剤(例えば、水)の添加のみを要する、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即席の注射溶液及び懸濁液は、これまでに記載された種類の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。この関連で、製剤は、望ましくは、炎症部位における投与に適しており、従って、しかしまた、静脈注射、腹腔内注射、皮下注射などのためにも製剤化され得る。
【0100】
肛門投与に適切な製剤は、活性成分を種々の基剤(例えば乳化基剤又は水溶性基剤)と混合することによって坐剤として調製され得る。膣投与に適切な製剤は、活性成分に加えて、適切であることが当該分野で公知であるような担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー製剤として提供され得る。
【0101】
また、本発明の組成物は、更なる治療剤又は生物活性のある薬剤を含み得る。例えば、特定の適応症の治療において有用な治療因子が存在し得る。炎症を制御する因子(例えばイブプロフェン又はステロイドなど)は、医薬組成物のin vivo投与に関連する腫脹(swelling)及び炎症、並びに生理学的な苦痛を低減させるために、組成物の一部であり得る。
【0102】
SPARCポリペプチド又はSPARCをコードする単離されたポリヌクレオチドは、1以上の更なる治療剤(例えば、抗感染剤(例、抗細菌剤(例えば、抗生物質)、抗真菌剤及び抗ウイルス剤)、抗炎症剤、組換えタンパク質若しくは抗体、1以上の合成薬及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、1以上の化合物)と併せて投与され得る。SPARCポリペプチド又はSPARCをコードする単離されたポリヌクレオチドと併せてこのような治療剤を投与することは、1以上のこのような更なる薬剤を、例えば、ORP水溶液の投与前、投与中(例、同時に、同時投与により、若しくは組み合わせて)、又は投与後に、投与することを含み得る。
【0103】
適切な抗生物質としては、ペニシリン、セファロスポリン又は他のβ−ラクタム、マクロライド(例、エリスロマイシン、6-O-メチルエリスロマイシン、及びアジスロマイシン)、フルオロキノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、アミノグリコシド、クリンダマイシン、キノロン、メトロニダゾール、バンコマイシン、クロラムフェニコール、抗細菌効果のあるそれらの誘導体、並びにそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。適切な抗感染剤としては、例えば、アンホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、ケトコナゾール、ミコナゾール、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせなどの抗真菌剤も挙げられ得る。適切な抗炎症剤としては、例えば、1以上の抗炎症薬(例、1以上の抗炎症性ステロイド又は1以上の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID))が挙げられ得る。典型的な抗炎症薬としては、例えば、サイクロフィリン、FK結合タンパク質、抗サイトカイン抗体(例、抗TNF)、ステロイド、及びNSAIDが挙げられ得る。
【0104】
本発明に従って、SPARCポリペプチド又はSPARCをコードする単離されたポリヌクレオチドは、単独で、又は1以上の医薬上許容される担体(例、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、希釈剤、それらの組み合わせなど)と組み合わせて投与され得る。当業者は、本発明に従って使用されるSPARCポリペプチド又はSPARCをコードする単離されたポリヌクレオチドを投与するための、適切な製剤及び方法を容易に決定することができる。例としては、ORP水溶液を含むゲルベースの製剤の使用が、微生物に対する障壁を与えながら腹腔の水分補給を維持するために、使用され得る。適切なゲル製剤は、例えば、米国特許出願公開第2005/0142157号に記載されている。用量における任意の必要な調節は、1以上の臨床的に関連する因子(例えば、副作用、患者の全身状態における変化など)を考慮して、治療される状態の性質及び/又は重症度に対処するために、当業者によって容易になされ得る。
【0105】
SPARC遺伝子治療
【0106】
遺伝子治療は、疾患と闘うために生細胞の遺伝物質を修飾することを含む医療介入である。遺伝子治療は、多くの異なる種類の癌及び他の疾患のために臨床試験(ヒトを対象とする調査研究)において研究されている。従って、本発明は、「遺伝子治療」における使用に適した、SPARCポリペプチドをコードする単離された核酸分子を更に提供する(例えば、Patil et al., AAPS J. 7(l):E61-77 (2005)を参照のこと)。
【0107】
遺伝子治療は、ex vivo及びin vivoの両方で実施され得る。典型的には、ex vivo遺伝子治療臨床試験では、患者の血液又は骨髄由来の細胞を取り出して、実験室で増殖させる。それらの細胞は、所望遺伝子を保持するウイルスに曝露される。ウイルスは細胞に入り込み、所望遺伝子は細胞のDNAの一部となる。細胞は実験室で増殖し、次いで静脈への注射により患者へと戻される。in vivo遺伝子治療を使用する場合、ベクター(例、ウイルス又はリポソームなど)が、所望遺伝子を患者の体内の細胞に送達するために使用され得る。
【0108】
本発明は、遺伝子治療における使用に適した、SPARCポリペプチドをコードする単離された核酸分子を更に提供する。適切な核酸としては、本明細書中に記載される、配列番号2を含む核酸若しくはそれらの修飾物及びホモログが挙げられるが、それらに限定されない。遺伝子治療の目標の1つは、例えば、SPARCポリペプチドをコードする単離された核酸分子などの改変遺伝子を細胞に供給することである。遺伝子治療はまた、例えば、癌細胞を攻撃するように免疫系細胞を刺激することによって、細胞の機能の仕方を変化させる方法としても研究されている。
【0109】
一般に、遺伝子は、「ベクター」(本明細書中に開示されるものなど)を用いて細胞へと送達される。遺伝子治療において使用される最も一般的な種類のベクターは、ウイルスである。遺伝子治療においてベクターとして使用されるウイルスは、遺伝的に不能化される;それらは、自らを複製することができない。ほとんどの遺伝子治療臨床試験は、所望の遺伝子を送達するために、マウスレトロウイルスに依存する。ベクターとして使用される他のウイルスとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス及びヘルペスウイルスが挙げられる。適切なウイルス遺伝子治療ベクター並びにin vivo及びex vivoのそれらの投与の様式は、当該分野において公知である。
【0110】
遺伝子治療は、ex vivo及びin vivoの両方で実施され得る。典型的には、ex vivo遺伝子治療臨床試験では、患者の血液又は骨髄由来の細胞を取り出して、実験室で増殖させる。それらの細胞は、所望遺伝子を保持するウイルスに曝露される。ウイルスは細胞に入り込み、所望遺伝子は細胞のDNAの一部となる。細胞は実験室で増殖し、次いで静脈への注射により患者へと戻される。in vivo遺伝子治療において、ベクター(例、ウイルス又はリポソームなど)が、所望遺伝子を患者の体内の細胞に送達するために使用され得る。
【0111】
SPARCタンパク質の修飾
【0112】
本明細書中に記載されるペプチド又はタンパク質を構成するアミノ酸は、天然のプロセス(翻訳後プロセシングなど)、又は当該分野において周知の化学修飾技術のいずれかにより、修飾もされ得る。修飾は、ペプチド中のどこでも(ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端若しくはカルボキシル末端を含む)、起こり得る。同じ種類の修飾が、所定のペプチド中のいくつかの部位において、同じ程度で、又は様々な程度で存在し得ることが理解される。
【0113】
ペプチドへの修飾の例としては、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、トランスファーRNAを介したタンパク質へのアミノ酸の付加(アルギニン化(arginylation)など)、及びユビキチン化が挙げられ得る。例として、Proteins-Structure and Molecular Properties, 2nd ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993及びWold F, Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs. 1-12 in Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, ed., Academic Press, New York, 1983;Seifter et ah, Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors, Meth. Enzymol. (1990) 182: 626-646及びRattan et al. (1992), Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging, " Ann NY Acad Sci 663: 48-62を参照されたい。
【0114】
実質的に類似の配列は、本明細書中に記載される1以上の保存的置換のみによって参照配列とは異なるアミノ酸配列である。このような配列は、例えば、別の実質的に類似の配列と、機能的に相同であり得る。置換され得る、本発明のペプチド中の個々のアミノ酸の特徴が、当業者によって理解されるであろう。
【0115】
アミノ酸配列の類似性又は同一性は、例えば、BLAST(basic local alignment search tool)2.0アルゴリズムを使用する、BLASTP及びTBLASTNプログラムを使用することにより、計算され得る。アミノ酸配列の類似性又は同一性を計算するための技術は、当業者に周知であり、BLASTアルゴリズムの使用は、ALTSCHUL et al. 1990, J MoI. Biol. 215: 403- 410及びALTSCHUL et al. (1997), Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されている。
【0116】
アラインメントを実施する配列は、多数のデータベースから収集され得る。タンパク質データベースの例としては、SWISS-PROT(タンパク質の機能、そのドメイン構造、翻訳後修飾、変異体に関する、高いレベルのアノテーションも提供する)(Bairoch A. and Apweiler R. (2000) Nucleic Acids Res. 28(l):45-48;Bairoch A. and Apweiler R. (1997) J. MoI. Med. 75(5):312-316;Junker V.L. et al.(1999) Bioinformatics 15(12): 1066-1007)、TrEMBL(EMBLヌクレオチド配列エントリーの全ての翻訳物を含む、コンピューターによりアノテーションされたSWISS-PROTの補完)(Bairoch A. and Apweiler R. (2000) Nucleic Acids Res. 28(l):45-48)が挙げられ、nrデータベースは、全て重複のないGenBank CDS翻訳物、更に他のデータベース(PDB、SwissProt、PIR及びPRFなど)からのタンパク質配列を比較する。
【0117】
タンパク質配列のアラインメントは、クエリー配列に類似する配列についてデータベースを検索するための既存のアルゴリズムを使用して行なわれ得る。1つのアラインメント法は、Smith-Watermanアルゴリズム(Smith, T. F. and Waterman, M.S. 1981. Journal of Molecular Biology 147(1):195-197)であり、これはクエリー配列とデータベース配列との間の最適なアラインメントがいかに作成され得るかを決定するのに有用である。このようなアラインメントは、データベース配列と一致させるためにクエリー配列がいかなる変換を受ける必要があるかを決定することにより得られる。変換としては、1文字の別のものへの置換、及び一連の文字の挿入若しくは置換が挙げられる。スコアは、正確な一致及びある種の置換については各文字対文字比較の正のスコア、他の置換及び挿入/欠失については負のスコアが割り当てられる。スコアは、統計的に導かれたスコアリングマトリックスから得られる。最高スコアを生じる変換の組み合わせが、クエリー配列とデータベース配列との間のアラインメントを作成するために使用される。Needleman-Wunsch(Needleman, S. B. and Wunsch, C.D. 1970. Journal of Molecular Biology 48(3):443-453)アルゴリズムは、Smith-Watermanアルゴリズムと類似しているが、配列の比較は全体的であり、局所的ではない。全体比較は、データベース配列全体に対してクエリー配列全体をアラインメントさせる。局所アラインメントは常に、一致で開始し終了するが、全体アラインメントは、挿入又は欠失(インデル)で開始又は終了し得る。所定のクエリー配列とデータベース配列については、全体スコアは、末端のインデルに起因して、局所スコアより小さいか又は同じであろう。上記アルゴリズムの代替手段として、隠れマルコフモデル(HMM)検索(Eddy, S. R. 1996. Current Opinion in Structural Biology 6(3):361-365)が、タンパク質配列のアラインメントを作成するために、使用され得る。HMMスコアリングは、挿入/欠失前の一致の確率(又はその逆)を重み付けする。また、HMMは、挿入から欠失への移行(及びその逆)、並びに開始及び終了状態のスコアリングを可能にし、検索が全体的に実行されるかそれとも局所的に実行されるかを制御する。
【0118】
1以上の上記アルゴリズムが、タンパク質配列アラインメントを作成するために、アラインメントプログラムにおいて使用され得る。当業者は、種々の異なるアルゴリズムを含む、選択すべき多数の配列アラインメントプログラムを有する。アラインメントプログラムの一例は、BLASTP(Altschul, S.F. et al.(1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402)である。他のアラインメントプログラムは、CLUSTAL W及びPILEUPである。BLASTPの実行からの標準的出力は、更に下記のindel分析を行うのに十分な情報を含む。
【0119】
アミノ酸は、例えば、極性、非極性、酸性、塩基性、芳香族、又は中性として記載され得る。極性アミノ酸は、生物学的又はほぼ中性のpHにおいて、水素結合により水と相互作用し得るアミノ酸である。アミノ酸の極性は、生物学的又はほぼ中性のpHにおける水素結合の程度の指標である。極性アミノ酸の例としては、セリン、プロリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、チロシン、およびグルタミン酸が挙げられる。非極性アミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、及びトリプトファンが挙げられる。酸性アミノ酸は、中性pHにおいて正味の負電荷を有する。酸性アミノ酸の例としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。塩基性アミノ酸は、中性pHにおいて正味の正電荷を有する。塩基性アミノ酸の例として、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが挙げられる。芳香族アミノ酸は、一般的には非極性であり、疎水性相互作用に参加し得る。芳香族アミノ酸の例としては、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンが挙げられる。チロシンは、芳香族側鎖上のヒドロキシル基を介して水素結合に参加もし得る。中性の脂肪族アミノ酸は、一般的には非極性且つ疎水性である。中性アミノ酸の例としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びメチオニンが挙げられる。アミノ酸は、1を超える記述的カテゴリーにより記載され得る。共通の記述的カテゴリーを共有するアミノ酸は、ペプチド中で互いに置換可能であり得る。
【0120】
本発明のペプチド化合物を記載するために使用される命名法は、アミノ基が各アミノ酸残基の左に示され、カルボキシル基が各アミノ酸残基の右に示されるという、通常の慣行に従う。本発明の選択された特定の実施形態を表す配列において、アミノ末端基及びカルボキシ末端基は、具体的には示されないが、特に定めのない限り、それらが生理学的pH値においてとるであろう形態であることが理解されよう。アミノ酸の構造式において、各残基は、一般的に、当業者に公知であるように、1文字又は3文字表示により表され得る。
【0121】
アミノ酸のハイドロパシー指標は、水性環境(負値)又は疎水性環境(正値)を求めるための、アミノ酸の傾向を示す尺度である(KYTE & DOOLITTLE 1982. J Mol Biol 157:105-132)。標準的アミノ酸のハイドロパシー指標としては、アラニン(1.8)、アルギニン(-4.5)、アスパラギン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、システイン(2.5)、グルタミン(-3.5)、グルタミン酸(-3.5)、グリシン(-0.4)、ヒスチジン(-3.2)、イソロイシン(4.5)、ロイシン(3.8)、リジン(-3.9)、メチオニン(1.9)、フェニルアラニン(2.8)、プロリン(-1.6)、セリン(-0.8)、トレオニン(-0.7)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、及びバリン(4.2)が挙げられる。類似のハイドロパシー指標を有するアミノ酸は、ペプチド中で互いに置換可能であり得る。
【0122】
本明細書中に記載されるペプチドを構成するアミノ酸は、L-又はD-配置にあると理解されよう。本発明のペプチド及びペプチド模倣体においては、D-アミノ酸がL-アミノ酸と置換可能であり得る。
【0123】
本発明のペプチド内、特にカルボキシ末端又はアミノ末端に含まれるアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、又はそれらの生物活性に悪影響を与えることなくペプチドの循環半減期を変化させ得る他の化学基による置換により修飾され得る。また、ジスルフィド結合は、本発明のペプチド中に存在しても存在しなくてもよい。
【0124】
非標準的アミノ酸は、天然に存在してもよく、遺伝的にコードされていてもいなくてもよい。遺伝的にコードされた非標準的アミノ酸の例としては、セレノシステイン(通常は終止コドンであり得るUGAコドンにおいて、いくつかのタンパク質中に組み込まれることがある)、又はピロリジン(通常は終止コドンであり得るUAGコドンにおいて、いくつかのタンパク質中に組み込まれることがある)が挙げられる。遺伝的にコードされていないいくつかの非標準的アミノ酸は、ペプチド中に既に組み込まれた標準的アミノ酸の修飾から生じてもよく、又は例えば代謝中間体若しくは前駆体であってもよい。非標準的アミノ酸の例としては、4-ヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシリジン、6-N-メチルリジン、γ-カルボキシグルタミン酸、デスモシン、セレノシステイン、オルニチン、シトルリン、ランチオニン、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸、γ-アミノ酪酸、カルニチン、サルコシン、又はN-ホルミルメチオニンが挙げられる。標準的及び非標準的アミノ酸の合成変異体も公知であり、化学的に誘導体化されたアミノ酸、同定若しくは追跡のために標識されたアミノ酸、又はα炭素に種々の側基を有するアミノ酸が挙げられ得る。このような側基の例は当該分野で公知であり、脂肪族、単芳香族、多環式芳香族、複素環、異核、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシルエステル、グアニジン、アミジン、ヒドロキシル、アルコキシ、メルカプト−、アルキルメルカプト−、又は他のヘテロ原子−含有側鎖が挙げられ得る。他の合成アミノ酸としては、α−イミノ酸、非α−アミノ酸(β-アミノ酸、des-カルボキシ、又はdes-アミノ酸など)が挙げられ得る。アミノ酸の合成変異体は、当該分野で公知の一般的方法を使用して合成されてもよく、又は商業的供給者、例えばRSP Amino Acids LLC(Shirley、MA)から購入されてもよい。
【0125】
保存的アミノ酸置換によって何が意味されるかをさらに例示するために、グループA〜Fを以下に記載する。以下のグループのあるメンバーの、同じグループの別のメンバーによる置換は、保存的置換であるとみなされる。
【0126】
グループAは、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、システイン、トレオニン、及び以下の側鎖を有する修飾アミノ酸を含む:エチル、イソブチル、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CHOHCH3、及びCH2SCH3。
【0127】
グループBは、グリシン、アラニン、バリン、セリン、システイン、トレオニン、及びエチル側鎖を有する修飾アミノ酸を含む。
【0128】
グループCは、フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシン、トリプトファン、シクロヘキシルメチル、及び置換ベンジル又はフェニル側鎖を有する修飾アミノ残基を含む。
【0129】
グループDは、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸若しくはアスパラギン酸の、置換若しくは非置換の、脂肪族、芳香族若しくはベンジルエステル(例、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、シクロヘキシル、ベンジル、若しくは置換ベンジル)、グルタミン、アスパラギン、CO-NH-アルキル化グルタミン若しくはアスパラギン(例、メチル、エチル、n-プロピル、及びイソ−プロピル)、及び側鎖-(CH2)3COOHを有する修飾アミノ酸、それらのエステル(置換若しくは非置換の、脂肪族、芳香族、若しくはベンジルエステル)、それらのアミド、及びそれらの置換若しくは非置換のN-アルキル化アミドを含む。
【0130】
グループEは、ヒスチジン、リジン、アルギニン、N-ニトロアルギニン、p-シクロアルギニン、g-ヒドロキシアルギニン、N-アミジノシトルリン、2-アミノグアニジノブタン酸、リジンの同族体、アルギニンの同族体、及びオルニチンを含む。
【0131】
グループFは、セリン、トレオニン、システイン、及び-OH若しくは-SHで置換されたCl-C5直鎖若しくは分岐鎖アルキル側鎖を有する修飾アミノ酸を含む。
【0132】
グループA〜Fは例示であり、本発明を限定することは意図されない。
【0133】
このような保存的変異及びアミノ酸の変化は、部位特異的変異導入のために、当業者に公知の任意の適切な方法により導入され得る。
【0134】
以下の実施例は、卵巣癌の病態生理学を反映していることが当業者に周知である種々のin vitroモデル系において、癌に関連する炎症へのSPARCの影響を実証する。これらの実施例は、本発明を説明するのに役立つが、いかなる意味においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0135】
実施例1
【0136】
本実施例は、SPARCがMCP-1産生を阻害することを実証する。
【0137】
ヒト卵巣癌細胞株(SKOV3及びOVCAR3)及びヒト腹膜中皮細胞株(Meso301)は、以前に記載されたように取得し、維持した(Said et al., Am J Pathol, 170: 1054-63 (2007)及びSaid et al., Am J Pathol, 167: 1739-52 (2005))。ヒト単球様細胞株(U937)はATCC(Manassas、VA)から購入し、10% FBSを含むRPMI 1640(Atlanta Biologicals、Norcross、GA)中で維持した。
【0138】
サイトメガロウイルスプロモーターの制御下でSPARC又は緑色蛍光タンパク質(GFP)のいずれかを発現する複製欠損アデノウイルスを、以前に記載されたように作製した(Said et al., Am J Pathol, 170: 1054-63 (2007))。卵巣癌細胞株を、以前に記載されたように、15から25の感染の多重度において、完全増殖培地中で、GFPを発現するアデノウイルス(Ad-GFP)又はGFP及びSPARCを発現するアデノウイルス(Ad-GFP-SPARC)を用いて、24時間形質導入した(Said et al., Am J Pathol, 170: 1054-63 (2007))。SPARCタンパク質は、Ad-GFP-SPARC形質導入後には、SKOV3及びOVCAR3卵巣癌細胞株の細胞ライセート及び馴化培地中に検出されたが、Ad-GFP形質導入後には検出されなかった。
【0139】
野生型(WT)ヒト卵巣癌細胞株SKOV3又はOVCAR3のコンフルエントな単層(約106細胞、一晩血清飢餓)を、SPARC(10μg/ml)の存在下及び非存在下で、24時間、50μMリゾホスファチジン酸(LPA)で刺激した。同様に、アデノウイルスにより形質導入したSKOV3及びOVCAR3を、24から48時間、50μM LPAで刺激した。或いは、アデノウイルスにより形質導入したSKOV3及びOVCAR3を、24から48時間コンフルエントな単層上へと播種するか、又は24から48時間Meso301と共培養した。SKOV3及びOVCAR3の馴化培地(CM)中に分泌されたMCP-1タンパク質を、市販のキット(RayBioTech, Inc.、Norcross、GA)を使用して、ELISAにより決定した。対照には、LPAで刺激しなかった(NS)細胞を含めた。図1に示す結果は、それぞれ二連で実施した、3つの独立した実験の代表の平均± SEMである。*P < .05、対応の非刺激条件又はAd-GFP条件と比較。#P < .05、非刺激WT細胞又はAd-GFP細胞と比較。
【0140】
LPA刺激の後、SKOV3及びOVCAR3細胞株によるMCP-1産生の時間依存的な増加があった(24時間後及び48時間後に、それぞれおよそ3倍及び9倍の増加)。外因性SPARC、及びSKOV3及びOVCAR3細胞株におけるSPARCのアデノウイルスによる発現は、基礎のMCP-1産生(54%から64%)及びLPA誘導MCP-1産生(SKOV3においては、24時間及び48時間で、それぞれ54%及び43%の阻害;OVCAR3においては、24時間及び48時間で、それぞれ59%及び30%の阻害)の両方を、顕著に阻害した。腹膜中皮細胞(Meso301)の、卵巣癌細胞との共培養は、時間依存的な様式で、MCP-1産生を更に増加させた。増加は、SKOV3では、24時間及び48時間で、それぞれ16倍から21倍、OVCAR3では、24時間及び48時間で、それぞれ14倍から20倍であった。SPARCの過剰発現は、共培養において増加したMCP-1産生を、SKOV3においては、24時間及び48時間で、それぞれ約26%から36%、OVCAR3においては、24時間及び48時間で、それぞれ36%から28%、顕著に減衰させた。本実施例は、卵巣癌細胞によるMCP-1分泌が、LPA刺激によって増加すること、及び腹膜中皮細胞との共培養において増加すること、並びに卵巣癌細胞におけるSPARCの過剰発現がMCP-1産生を減衰させることを実証した。
【0141】
実施例2
【0142】
本実施例は、卵巣癌細胞により誘導されたマクロファージの遊走へのSPARCの阻害効果を実証する。
【0143】
マクロファージ走化性アッセイは、3-μm孔径ポリカーボネートインサート(Corning Costar)を使用して実施した。卵巣癌細胞の形質導入は、実施例1に記載したように実施した。24時間形質導入したSKOV3及びOVCAR3細胞を、24ウェルプレートにおいて、600μlの無血清培地(SFM)中、2×105細胞/ウェルで播種し、コンフルエントへと増殖させるか、又は24ウェルプレートにおいて増殖させたMeso301のコンフルエントな単層上に播種した。U937マクロファージ(100μl SFM中105細胞)を、トランスウェルのトップチャンバへと添加した。いくつかの実験において、中和抗MCP-1抗体(25μg/ml)(Chemicon、Temecula、CA)を、Ad-GFPで形質導入した卵巣癌細胞−Meso301共培養に含めた。90分間37℃でのインキュベーションの後、上部(upper)チャンバの内容物を吸引し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、そしてDAPI(Sigma)で染色した。U937の遊走を、Q-イメージングデジタルカメラを備えた蛍光顕微鏡(Leica Microsystems、Wetzlar、Germany)を使用して、ウェル当り6箇所の高倍率視野において、膜の下面に付着した細胞の数を計数することにより評価した。図1に示す結果は、それぞれ三連で実施した、3つの独立した実験の代表の平均± SEMである。*P < .05、非刺激(NS)細胞又はAd-GFPで形質導入した細胞と比較。**P < .05、Meso301及びAd-GFPで形質導入した卵巣癌細胞の共培養と比較。
【0144】
SKOV3及びOVCAR3の単層は、腫瘍細胞に向かうU937マクロファージの遊走を刺激した。この走化性効果は、SPARCを過剰発現しているSKOV3及びOVCAR3細胞においては顕著に減衰した。卵巣癌−中皮細胞の共培養は、マクロファージへの走化性効果を、卵巣癌細胞単独によってもたらされるものと比較して、5倍増加させた。走化性活性は、卵巣癌細胞においてSPARCを過剰発現させることにより、又はMCP-1中和抗体の存在により、顕著に抑制された。
【0145】
実施例3
【0146】
本実施例は、MCP-1で誘導された卵巣癌細胞の増殖及び浸潤へのSPARCの阻害効果を実証する。
【0147】
実施例1に記載したようにAd-GFP又はAd-GFP-SPARCで形質導入した又はしていないSKOV3及びOVCAR3の、MCP-1に応答した増殖を、市販のCellTiter96キット(Promega)を製造者の使用説明書に従って使用して評価した。増殖している細胞の数を、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS)を添加して3時間の後、溶解ホルマザン産物の590 nmにおける吸光度(OD590)を測定することにより、比色分析により決定した。
【0148】
実施例1に記載したようにAd-GFP又はAd-GFP-SPARCで形質導入した又はしていないSKOV3及びOVCAR3の、MCP-1に応答した浸潤性を、以前に記載されたように評価した(Said et al, Am J Pathol, 167: 1739-52 (2005))。MCP-1の存在下及び非存在下で、1×105細胞/100μl SFMを、成長因子を減少させたマトリゲル(BD Biosciences、Bedford、MA)(SFM中で1:3に希釈)で氷上でコートした、ポリカーボネートインサート(8-mm孔径、Corning Costar、Corning、NY)の上部チャンバーへと添加した。いくつかの実験において、細胞を、刺激前に30分間、MCP-1抗体(25□g/ml)又はそのアイソタイプ対照(50μg/ml)で前処理した。ボトムチャンバーは、完全増殖培地を含んだ。アッセイを、5% CO2加湿インキュベーター内で、37℃にて6時間行なった。遊走した細胞を、hemacolor 3 stain(SOURCE?)で染色した後、DFC 320デジタルカメラを備えた倒立顕微鏡(Leica Microsystems、Wetzlar、Germany)を使用して、200×倍率下で、6箇所の視野において計数した。
【0149】
図2に示す結果は、四連(増殖)又は三連(浸潤)で実施した、3つの独立した実験の平均± SEMである。*P < .05、対照NS細胞と比較。#P < .01、対応のWT細胞又はAd-GFPで形質導入した細胞と比較。
【0150】
卵巣癌細胞におけるSPARCの過剰発現は、MCP-1の分裂促進効果(SKOV3及びOVCAR3についてそれぞれ17%から23%阻害及び15%から27%阻害)及び浸潤促進(proinvasive)効果(SKOV3及びOVCAR3についてそれぞれ15%から28%阻害及び30%から43%阻害)へのそれらの応答を抑制した。本実施例は、MCP-1が、卵巣癌細胞に対し分裂促進効果及び浸潤促進効果を発揮すること、並びに卵巣癌細胞におけるSPARCの発現が、増殖及び浸潤へのMCP-1の効果を減衰させることを実証した。
【0151】
実施例4
【0152】
本実施例は、マクロファージで誘導された卵巣癌細胞の浸潤へのSPARCの阻害効果を実証する。
【0153】
実施例1に記載したようにAd-GFP又はAd-GFP-SPARCで形質導入した又はしていないSKOV3及びOVCAR3細胞を、マトリゲルでコートしたインサートの上部チャンバへと播種した(105細胞/100 μl SFM/ウェル)。U937マクロファージ(2×106細胞/600μl SFM)を、下部チャンバ内に播種した。浸潤している細胞の数を、実施例3に記載したように決定した。図3に示す結果は、三連で実施した、3つの独立した実験の平均± SEMである。*P < .05、ボトムチャンバ中の完全増殖培地(CGM)を使用した単一細胞培養における対照SKOV3及びOVCAR3細胞と比較。
【0154】
U937マクロファージの腫瘍細胞との共培養は、SKOV3(約50%)及びOVCAR3(およそ3倍)細胞株の浸潤性を、単一細胞培養を超えて、顕著に増加させた。卵巣癌細胞株におけるSPARCの発現は、マクロファージで誘導されたSKOV3及びOVCAR3の浸潤性を、それぞれ48%及び50%、顕著に抑制した。
【0155】
本実施例は、マクロファージが卵巣癌細胞浸潤への刺激効果を発揮する(その効果は、卵巣癌細胞におけるSPARCの発現により減衰する)ことを実証した。
【0156】
実施例5
【0157】
本実施例は、SPARCが、マクロファージとの、又はマクロファージ及び中皮細胞との、卵巣癌細胞の共培養において、IL-6産生を阻害することを実証する。
【0158】
Ad-GFP又はAd-GFP-SPARCで形質導入した又はしていないSKOV3及びOVCAR3細胞、並びにU937細胞を、個別に、共培養で、又はMeso301細胞との三重培養で24時間培養し、馴化培地を、実施例1に記載したようにELISAにより、IL-6についてアッセイした。図3に示す結果は、それぞれ二連で実施した、3つの独立した実験のうちの1つの平均± SEMを表す。*P < .05、対応のWT又はAd-GFPと比較。**P < .05、中皮細胞の非存在下における二重培養と比較。
【0159】
卵巣癌細胞とマクロファージの共培養において、IL-6レベルは、SKOV3(17倍)、OVCAR3(17.6倍)、又はU937(25から28倍)による基礎分泌を超えて、顕著に増加した。卵巣癌細胞におけるSPARC発現の回復は、SKOV3及びOVCAR3との共培養におけるIL-6産生を、それぞれ39%及び55%、顕著に減少させた。Meso301を三重培養に組み入れると、IL-6産生における顕著な増加(U937-SKOV3及びU937 OVCAR3共培養に対して2.5倍)をもたらした。この増加は、SKOV3及びOVCAR3細胞におけるSPARC発現を回復させることにより減衰した(それぞれ、44%及び28%)。外因性SPARCも、U937におけるSPARCの過剰発現も、IL-6レベルに何ら影響しなかった。本実施例は、卵巣癌細胞によるIL-6分泌が、マクロファージとの共培養並びにマクロファージ及び中皮細胞との三重培養により増加すること、並びに卵巣癌細胞におけるSPARCの発現が、これらの培養においてIL-6分泌を減衰させることを実証した。
【0160】
実施例6
【0161】
本実施例は、卵巣癌細胞及びマクロファージのタンパク質分解活性へのSPARCの阻害効果を実証する。
【0162】
Ad-GFP及びAd-GFP-SPARCで形質導入した又はしていない卵巣癌細胞のサブコンフルエントの単層を、単独で、又は中皮細胞単層との共培養で、一晩SFM中で血清飢餓にして、6ウェルプレート中で増殖させた。U937マクロファージ(2×106細胞/ml SFM)を、更に24時間、単独で、直接の細胞−細胞接触のない卵巣癌細胞との共培養で、又は卵巣癌細胞及び中皮細胞との三重培養で、0.22-μmトランスウェルチャンバ(Corning, Costar)中で培養した。LPA(50μM)又は外因性SPARC(20μg/ml)(SOURCE?)を、いくつかの実験において含めた。細胞培養馴化培地(CM)を回収し、遠心分離により清澄化し、Centricon遠心フィルター(Millipore、Bedford、MA)を使用して5倍濃縮した。上部及び下部チャンバー内の細胞を、溶解バッファー(20 mM Tris、pH 7.4、150 mM NaCl、1 mM EDTA、50 mM NaF、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1% NP-40、1 mM Na3VO4、及び1×プロテアーゼインヒビターカクテル混合物)中に採取した。ライセートを、4℃にて20分間、12,000gでの遠心分離により清澄化し、タンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce、Rockford、IL)により決定した。200μgの卵巣癌細胞、及び/又はU937細胞に相当するCMを、以前に記載されたようなゼラチンザイモグラフィーにより分析した(Said et al., Am J Pathol, 167: 1739-52 (2005))。SKOV3、OVCAR3、及び/又はU937細胞の細胞ライセート(50μg)を、10% SDS-PAGEにより分離し、ポリビニリデンフルオライド膜(BioRad、Hercules、CA)上に移し、等しいタンパク質使用量であることを確かめるためにβ−チューブリンに対するモノクローナル抗体を用いて調べた。タンパク質の検出は、HRP結合二次抗体及びSuperSignal West Dura化学発光キット(Pierce、Rockford、IL)を使用して行なった。
【0163】
図4に示す結果は、OVCAR3のCMは、わずかに検出可能なプロMMP-9及び活性MMP-9の基礎活性を有していたのに対し、SKOV3のCMは、プロMMP-9及び活性MMP-9並びにプロMMP-2の顕著な活性を示したことを実証する。WT細胞とAd-GFPで形質導入した卵巣癌細胞との間で、これらのゼラチナーゼの酵素活性に違いはなかった。Ad-GFPSPARC形質導入は、OVCAR3におけるプロMMP-9及び活性MMP-9のレベルを低下させたが、一方SKOV3においては、それは、プロMMP-2レベル又はプロMMP-9レベルのいずれにも影響することなく、MMP-2活性及びMMP-9活性の両方を低下させた。LPA刺激は、OVCAR3においては活性MMP-9のレベルを、SKOV3においてはプロMMP-9及び活性MMP-9のレベルを、顕著に増加させた。Ad-GFP-SPARC形質導入は、OVCAR3及びSKOV3の両方において、LPAで誘導されるMMP-9活性を著しく低下させた。いずれかの卵巣癌細胞株のMeso301との共培養は、MMP-2及びMMP-9のプロ型及び活性型のレベル及び活性における、最も顕著な増加をもたらした。
【0164】
U937のCMは、SKOV3又はOVCAR3のいずれと比較しても、MMP-2及びMMP-9の最も高い基礎活性レベルを示した(図4)。LPAは、MMP-2活性及びMMP-9活性を顕著に低下させた。外因性SPARC(20μg/ml)は、MMP-2及びMMP-9の両方の、LPAで誘導される活性を、著しく低下させた。SKOV3又はOVCAR3のいずれかとのU937の共培養は、プロMMP-9及び活性MMP-9並びにプロMMP-2及び活性MMP-2のレベルにおける著しい増加をもたらした。両者は、卵巣癌細胞のAd-SPARC形質導入により、顕著に減衰した。Meso301細胞を含む三重培養からのCMは、プロMMP-2及び活性MMP-2並びにプロMMP-9及び活性MMP-9の、レベル及び活性における顕著な増加を示した。Ad-SPARC形質導入の阻害効果は、SKOV3及びOVCAR3において、MMP-2レベル及び活性に対してよりも、MMP-9レベル及び活性に対して、より顕著であった。
【0165】
本実施例は、卵巣癌におけるMMP-2及びMMP-9のタンパク質分解活性が、卵巣癌細胞及びマクロファージによる構成的産生にのみ起因するのではなく、中皮細胞及びマクロファージとの卵巣癌細胞の相互作用によるそれらの活性化にも起因することを実証した。本実施例は、これらの相互作用が、SKOV3、OVCAR3、及びU937マクロファージにおけるMMP-2及びMMP-9の両方のレベル及び活性を異なって調節すること、並びにMMP-9における変化が、共培養におけるLPAの刺激効果、及びSPARCアデノウイルス遺伝子導入の阻害効果の両方に応答して、より顕著であることを更に実証した。MMP-2及びMMP-9活性の誘導並びにAd-SPARCによるそれらの阻害のパターンは、これらのMMPの活性レベルの下方調節においてSPARCが果たし得る役割を示す。
【0166】
実施例7
【0167】
本実施例は、SPARCが、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)活性を減衰させることを実証する。
【0168】
SPARCプラスミド(pSPARC)を、TOPO部位を使用して、pcDNA3.1(Invitrogen、Carlsbad、CA)内へと、サイトメガロウイルスプロモーターの制御下でヒトSPARCオープンリーディングフレームをクローニングすることにより作製した。ルシフェラーゼレポーターに連結されたuPAプロモーターのプラスミド及びβ−ガラクトシダーゼ参照プラスミドは、当該分野において周知であった(uPA:Dr. Shuang Huang(Medical College of Georgia、Augusta、GA))。卵巣癌細胞株(5×104/ウェル(24ウェルプレート))を、24時間、Lipofectamine 2000(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して、1.5□g uPAプロモータールシフェラーゼレポータープラスミド、0.5μg pSPARC、及び0.2μgのβ−ガラクトシダーゼプラスミドでコトランスフェクトし、次いで、更に24時間飢餓にした。ルシフェラーゼ活性は、市販のルシフェラーゼアッセイ溶液Bright Glo(Promega)を製造者の使用説明書に従って使用して、6時間のLPA(10から50μM)刺激の後、又は0.22-μmインサートにおけるU937細胞との共培養の後、決定した。β−ガラクトシダーゼ活性は、ルシフェラーゼ活性を標準化し、相対ルシフェラーゼユニット(RLU)を計算するために、市販のGalacto-Star System(Applied Biosystems、Bedford、MA)を使用して、細胞溶解(Glo Lysis Buffer、Promega、Madison、WI)の後、測定した。図4に示す結果は、三連で実施した、3つの独立した実験の平均± SEMである。*P < .05、NS対照と比較。**P < .05、pSPARCコトランスフェクションなしの対応の実験条件と比較。
【0169】
pSPARCを用いた卵巣癌細胞のトランスフェクションは、SKOV3(42%)及びOVCAR3(約43%)の両方において、uPAプロモーターの基礎活性を顕著に低下させた。uPAプロモーター活性のLPA刺激は、SKOV3(6%から115%)及びOVCAR3(38%から325%)の両方において、濃度依存的であった。pSPARCを用いたコトランスフェクションは、SKOV3(40%から43%阻害)及びOVCAR3(51%から63%)において、LPAで誘導されるuPAプロモーター活性を顕著に減衰させた。SKOV3細胞又はOVCAR3細胞のいずれかの、U937マクロファージとの共培養は、uPAプロモーター活性の顕著な刺激をもたらし(SKOV3及び0VCAR3においてそれぞれ69%増加及び170%増加)、この増加は、pSPARCコトランスフェクションにより、部分的に(しかし顕著に)減衰した(SKOV3及び0VCAR3においてそれぞれ26%阻害及び36%阻害)。
【0170】
血清飢餓SKOV3及び0VCAR3のコンフルエント単層(約106細胞)のCM中のuPA活性を、SPARC(10μg/ml)の存在下及び非存在下で、LPA(50μM)で24時間刺激したWT細胞において測定した。LPAで刺激した若しくはしていない、又はMeso301単層、U937マクロファージ(0.22-μmトランスウェルインサート中に加えた)と共培養した、又は三重培養系における、アデノウイルスで形質導入したSKOV3及び0VCAR3におけるuPA活性も測定した。CM中のuPA活性を、市販の比色分析キット(Chemicon)を製造者の使用説明書に従って使用して測定した。図4に示す結果は、刺激しなかった(NS)対照WT SKOV3又はOVCAR3(それらを値1とした)からの変化(倍)として表したuPA活性を示す。結果は、それぞれ二連で実施した、3つの独立した実験の代表の平均± SEMである。*P < .05、非刺激WT細胞又はAd-GFP細胞と比較。**P < .05、対応のWT又はAD-GFP条件と比較。#P < .05、二細胞培養系におけるMeso301又はU937のいずれかとの卵巣癌細胞の共培養との比較。
【0171】
SKOV3及びOVCAR3のCMにおける構成的uPA活性は、外因性SPARC又はAd-SPARC形質導入のいずれかにより顕著に減衰した(SKOV3及びOVCAR3においてそれぞれ40%及び29%)。外因性SPARCは、SKOV3(76%)及びOVCAR3(36%)において、LPAで誘導されるuPA活性を顕著に阻害した。LPAは、形質導入していないWT対照並びにAd-GFPで形質導入したSKOV3対照及びOVCAR3対照においてそれぞれuPA活性の4から4.5倍の増加を誘導し、それはAd-SPARC形質導入により顕著に阻害された(SKOV3及びOVCAR3について、それぞれ38%阻害及び28%阻害)。SKOV3又はOVCAR3のいずれかの、Meso301との共培養は、それらのCM中のuPA活性の増加をもたらした(LPA刺激のものと同程度)。Ad-SPARC形質導入は、SKOV3及びOVCAR3においてそれぞれ160%及び60%のuPA活性の顕著な低下をもたらした。更に、U937の、SKOV3又はOVCAR3のいずれかとの共培養は、CM中のuPA活性を1.7から2倍増加させた(これは、SKOV3(110%)及びOVCAR3(70%)のAd-SPARC形質導入により減衰した)。更に、三重培養(卵巣癌細胞及びU937マクロファージと共にMeso301を含む)は、それらのCM中のuPA活性の顕著な増加をもたらし(SKOV3及びOVCAR3についてそれぞれ6.2倍及び5.6倍)、そしてSKOV3(160%)及びOVCAR3(120%)におけるAd-SPARC形質導入により減衰することが示された。本実施例は、SPARCが、卵巣癌細胞における、LPAで誘導されるuPA活性を阻害することを実証した。
【0172】
実施例8
【0173】
本実施例は、SPARCが、単独で培養した、又は中皮細胞及び/又はマクロファージとの共培養における、卵巣癌細胞におけるPGE2産生及び活性を減衰させることを実証する。
【0174】
SKOV3及びOVCAR3細胞を、実施例6に記載したように処理し、そしてPGE2レベルを、市販の酵素免疫アッセイキット(Cayman Inc.)を製造者の使用説明書に従って使用して、CMにおいて決定した。結果を図5に示す。*P < .05、非刺激WT細胞又はAd-GFP細胞と比較。**P < .05、対応のWT又はAD-GFP条件と比較。#P < .05、共培養系におけるMeso301又はU937のいずれかとの卵巣癌細胞の共培養との比較。
【0175】
血清飢餓SKOV3(約7 pg/ml)及びOVCAR3(約5 pg/ml)によるPGE2の基準産生は、外因性及びAd-SPARC形質導入の両方により、それぞれ30%から50%まで減少した。SKOV3及びOVCAR3のLPA刺激は、PGE2産生の約14倍の増加をもたらし、それは、いずれかの細胞株の外因性又はAd-SPARC形質導入によりそれぞれ、40%から55%抑制された。PGE2産生は、SKOV3及びOVCAR3とのMeso301の共培養によりそれぞれ、22から30倍増加した。Ad-SPARCでのSKOV3及びOVCAR3の形質導入は、PGE2産生の顕著な(40%)減少をもたらした。PGE2産生の同様な増加は、U937マクロファージとのSKOV3又はOVCAR3の共培養においても観察された。Ad-SPARC形質導入は、SKOV3を含む共培養においてはPGE2産生の顕著な減少をもたらしたが(50%)、OVCAR3ではもたらさなかった(14%)。PGE2産生の更なる増幅(80から100倍)が三重培養において観察され、そしてそれはSKOV3のAd-SPARC形質導入により顕著に減衰したが、OVCAR3のAd-SPARC形質導入によっては顕著に減衰しなかった。
【0176】
Ad-GFP及びAd-GFP-SPARCで形質導入した又はしていないSKOV3及びOVCAR3細胞の、PGE2に応答した増殖及び浸潤性を、実施例3に記載したように決定した。図5に示す結果は、四連(増殖)又は三連(浸潤)で実施した、3つの独立した実験の平均± SEMとして表した。*P < .05、対応のWT細胞又はAd-GFPで形質導入した細胞と比較。**P < .05、NS対照細胞と比較。
【0177】
SKOV3及びOVCAR3のPGE2で刺激される増殖は、濃度依存的であった。Ad-SPARC形質導入は、SKOV3及びOVCAR3のPGE2で誘導した増殖への応答を、SKOV3においては28%から38%、そしてOVCAR3においては32%から49%、それぞれ顕著に減衰させた。SKOV3及びOVCAR3へのPGE2の浸潤促進効果は濃度依存的であり、そしてそれはAd-SPARCにより顕著に阻害された(SKOV3及びOVCAR3においてそれぞれ12%から35%及び20%から45%)。本実施例は、SPARCが、単独で培養した、又は中皮細胞及び/又はマクロファージとの共培養における、卵巣癌細胞におけるPGE2産生及び活性を減衰させることを実証した。
【0178】
実施例9
【0179】
本実施例は、単独で培養した、又は中皮細胞及び/又はマクロファージとの共培養における、卵巣癌細胞における8-イソプロスタン産生へのSPARCの阻害効果を実証する。
【0180】
SKOV3及びOVCAR3を、実施例6に記載したように処理し、8-イソプロスタンのレベルを、市販の酵素免疫アッセイキット(Cayman Inc.)を製造者の使用説明書に従って使用して、CMにおいて決定した。結果を図6に示す。*P < .05、非刺激WT細胞又はAd-GFP細胞と比較。**P < .05、対応のWT又はAD-GFP条件と比較。#P < .05、二細胞培養系におけるMeso301又はU937のいずれかとの卵巣癌細胞の共培養との比較。§P < .05、OVCAR3-Meso共培養とOVCAR3-U937共培養との間。
【0181】
マウス腹膜卵巣癌腫症における8-イソプロスタンの産生の増加は、対照と比較してSPARCノックアウトマウスにおいて、腫瘍増殖の促進、腫瘍関連マクロファージ及び腫瘍浸潤マクロファージの増加、並びに分裂促進及び炎症性サイトカイン並びに分裂促進及び炎症性成長因子のレベルの増加と、正に相関することが示されている(Said et al., Mol Cancer Res, 5: 1015-30 (2007))。図6の結果は、血清飢餓SKOV3(52 pg/ml)及びOVCAR3(38 pg/ml)における8-イソプロスタンにより測定されるような、活性酸素種(ROS)産生の基礎レベルが、外因性SPARC及びAd-SPARCの両方により、それぞれ70%から90%低下したことを示す。SKOV3及びOVCAR3のLPA刺激は、8-イソプロスタン産生の増加(それぞれ、約2.2から2.5倍)をもたらし、それは、いずれかの細胞株の外因性SPARCの添加又はAd-SPARC形質導入により、それぞれ26%から55%まで抑制された。8-イソプロスタンの産生は、SKOV3及びOVCAR3とのMeso301の共培養において、それぞれおよそ7倍及び4倍へと増幅された。Ad-SPARCでのSKOV3及びOVCAR3の形質導入は、SKOV3及びOVCAR3とのMeso301の共培養において、それぞれ48%及び74%の、ROSの顕著な阻害をもたらした。同様に、U937マクロファージとのSKOV3又はOVCAR3の共培養は、8-イソプロスタンの産生の増幅をもたらし、それはいずれかの卵巣癌細胞株のAd-SPARC形質導入により、顕著に減少した(約50%)。8-イソプロスタンの産生の更なる増幅(5から8倍)が三重培養において観察され、そしてそれはSKOV3(45%)及びOVCAR3(52%)のAd-SPARC形質導入により顕著に減衰した。本実施例は、SPARCが、単独で培養した、又は中皮細胞及び/又はマクロファージとの共培養における、卵巣癌細胞における8-イソプロスタン産生を阻害することを実証した。
【0182】
実施例10
【0183】
本実施例は、NF-kBプロモーターの活性へのSPARCの阻害効果を実証する。
【0184】
SKOV3及びOVCAR3を、0.5μg pSPARC、いずれかのNF-κBのプラスミド(ルシフェラーゼレポーターに連結した、2コピーの野生型NF-κB(WT-pNF-κB-Luc)結合部位又は変異NF-κB(Mut-pNF-κB-Luc)結合部位を含む(NF-kB:Dr. Jinsong Liu(The University of Texas M. D. AndersonCancer Center、Houston、TX)より分与された)、及び0.2μgのβ−ガラクトシダーゼプラスミドでトランスフェクトし、そして直接の細胞−細胞接触なくU937と共培養するか、又はLPA若しくはPGE2で刺激した。相対ルシフェラーゼ活性を、実施例7に記載したように決定した。図7に示す結果は、三連で実施した、3つの独立した実験の、β-gal活性に対して補正した相対ルシフェラーゼ活性の平均± SEMを表す。*P < .05、単一細胞培養におけるSKOV3及びOVCAR3と比較、又はpSPARCコトランスフェクションなしの対応のNS及びLPA刺激細胞若しくはPGE2刺激細胞と比較。**P < .05、卵巣癌細胞のpSPARCトランスフェクションなしの共培養との間。**P < .05、NSと比較、及びPGE2の試験した濃度の間。***P < .05、NSと比較、及びLPA刺激の各濃度の間。
【0185】
NF-κBの活性化(それはほとんどの癌細胞において見られる)は、多種多様の炎症性サイトカイン、ケモカイン、成長因子、コラゲナーゼ、及び抗アポトーシスタンパク質の産生を仲介することにより、腫瘍の発生、進行、転移、及び化学療法抵抗性において重要な役割を果たす。図7に示す結果は、SKOV3及びOVCAR3細胞とのU937マクロファージの共培養が、非共培養の卵巣癌細胞と比較して、NF-κB活性化の顕著な向上をもたらしたことを示す(SKOV3及びOVCAR3において、それぞれ5倍及び3.5倍)。pSPARCを用いた卵巣癌細胞の一過性のトランスフェクションは、マクロファージで誘導されるNF-κB活性化を、SKOV3及びOVCAR3においてそれぞれ40%及び53%減衰させた。SKOV3及びOVCAR3の両方における、LPAで誘導されるNF-κB活性化(40%から50%)。pSPARCを用いたSKOV3及びOVCAR3のコトランスフェクションは、LPAで誘導されるNF-κB活性化を、両細胞株において約50%減衰させた。SKOV3及びOVCAR3のPGE2処理は、5 nMまでの濃度依存的NF-κB活性化(およそ3倍)をもたらした。pSPARCを用いた卵巣癌細胞のコトランスフェクションは、両細胞株において、PGE2で誘導されるNF-κB活性化の顕著な(30%から50%)減衰をもたらした。pSPARCを用いたSKOV3又はOVCAR3のいずれかの一過性のトランスフェクションは、それらのNF-κBの基礎活性を顕著に減少させた(40%)。本実施例は、SPARCが卵巣癌細胞においてNF-kBプロモーターの活性を減衰させることを実証した。
【0186】
実施例11
【0187】
本実施例は、SPARCが、炎症性遺伝子の発現を負に調節することを実証する。
【0188】
対照緑色蛍光タンパク質(GFP)又はSPARC-GFPを安定的にコードするヒト卵巣癌細胞(OVCAR3)を使用した。2-4 x 106細胞を、ヌードマウスの腹腔内へと移植し、腫瘍成長を4週間観察した。全RNAを固形腫瘍から単離し、Agilent Human Whole Genome 4x44K single color GE chipsを使用するマイクロアレイ分析のためにcDNAを調製した。
【0189】
腹腔内移植した卵巣癌細胞におけるSPARCの過剰発現は、いくつかの炎症経路(インターロイキン(IL)IL-1経路、IL-2/IL-4経路、及びTNF-α経路を含む)の下方調節をもたらした。対照GFPを発現する腹腔内腫瘍と比較してSPARC-GFPを発現する腹腔内腫瘍においてその発現が顕著に変化したIL-1経路内の遺伝子の例としては、IL-1β(2.57倍下方調節された)及びIL-1受容体(1.82倍下方調節された)が挙げられる。MAP3K7(TGF-β-activated kinase 1又はTAK1としても知られ、自然免疫応答及び適応免疫応答において必須の役割を果たす)は、7.44倍下方調節された。Pellino 1(PELI1としても知られ、IL-1に応答したNF-κB活性化及びIL-8発現に必要である)は6.09倍下方調節された。IL-1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAPとしても知られ、IL-1作用の拮抗に寄与する)は、3.48倍上方調節された。
【0190】
IL-2/IL-4経路内のいくつかの遺伝子は、対照GFPを発現する腹腔内腫瘍と比較してSPARC-GFPを発現する腹腔内腫瘍において、顕著に変化した。ETS-1(血管炎症の重要な調節因子であり、有効なタイプ1免疫応答を開始するために必須である)は、5.835倍下方調節された。ATF-2(炎症関連遺伝子の発現を上方調節する)は、5.51倍下方調節された。SOCS3(サイトカインシグナル伝達のサプレッサーである)は、9.35倍上方調節された。
【0191】
TNF-α経路内のいくつかの遺伝子は、対照GFPを発現する腹腔内腫瘍と比較してSPARC-GFPを発現する腹腔内腫瘍において、顕著に変化した。NF-κB1B(細胞質においてNF-κBを捕捉することにより、それを不活性化する、IκBファミリーのタンパク質のメンバーである)は、3.53倍上方調節された。IκBキナーゼβ(IKBKBとしても知られ、その抗炎症機能としては、マクロファージ活性化の古典経路の阻害が挙げられる)は、2.97倍上方調節された。GSK3β(炎症性NF-κB活性化の仲介において重要な役割を果たす)は、2.54倍下方調節された。
【0192】
本実施例は、ヒト卵巣癌細胞におけるSPARCの過剰発現が、IL-1経路、IL-2/IL-4経路、及びTNF-α経路の下方調節をもたらしたことを実証した。
【0193】
本明細書中に引用された全ての参考文献(刊行物、特許出願、及び特許を含む)は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々に且つ具体的に示され、またその全体が本明細書中で説明されたのと同程度まで、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0194】
本発明(特に添付の特許請求の範囲に関して)を記載することに関して、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別途示されない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、別途言及されない限り、制限のない(open-ended)用語(即ち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別途示されない限り、この範囲内に入る各個別の値に個々に言及することの省略方法として機能することを意図するに過ぎず、各個別の値は、それが本明細書中に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書中に提供されるあらゆる全ての例、又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより明確にすることを意図するに過ぎず、別途主張されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中のいかなる語句も、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0195】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されており、本発明を実施するための、本発明者らが知る最良の形態を含む。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の記載を読めば、当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのようなバリエーションを使用することを予期し、また本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で、本発明が実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変物及び均等物を含む。更に、上記要素の全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性疾患又は炎症状態を患う哺乳動物を治療する方法であって、罹患哺乳動物への、治療上有効量のSPARCポリペプチド及び薬理学的担体の投与を含む方法。
【請求項2】
SPARCポリペプチドが配列番号1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炎症性疾患又は炎症状態が、腹膜炎、胸膜炎、関節リウマチ、炎症性関節症、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚筋炎、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギラン・バレー症候群、橋本病、川崎病、間質性膀胱炎、エリテマトーデス、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、乾癬性関節炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、側頭動脈炎、血管炎アテローム性動脈硬化症(vasculitisatherosclerosis)、関節リウマチ、敗血症、急性気管支炎、肺気腫、鼻炎、副鼻腔炎、喘息、肺胞炎、農夫肺病、過反応性気道、気管支炎、肺臓炎、小児喘息、気管支拡張症、肺線維症、ARDS、肺炎、間質性肺臓炎、気管支炎、放射線誘発性傷害、嚢胞性線維症、α1−アンチトリプシン欠損症、炎症性偽ポリープ、深在性嚢胞性大腸炎、腸壁嚢状気腫症、胆石、腎結石、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、早期関節炎、反応性関節炎、骨関節炎、腱炎、歯周病、線維症、神経炎症、多発性硬化症、漿膜炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫、又はアテローム性動脈硬化症、敗血症、急性気管支炎、アレルギー性気管支炎、若しくは慢性気管支炎、慢性閉塞性気管支炎、咳嗽、肺気腫、アレルギー性鼻炎若しくは副鼻腔炎又は非アレルギー性鼻炎若しくは副鼻腔炎、慢性鼻炎若しくは副鼻腔炎、喘息、肺胞炎、農夫肺病、過反応性気道、感染性気管支炎若しくは肺臓炎、小児喘息、気管支拡張症、肺線維症、成人急性呼吸窮迫症候群、気管支浮腫、肺浮腫、気管支炎、肺炎、間質性肺臓炎、又は気管支炎、心不全の結果としての肺炎、放射線肺臓炎、化学療法誘発性肺臓炎、嚢胞性線維症、又はα1−アンチトリプシン欠損症、急性胆嚢炎又は慢性胆嚢炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗炎症薬の投与を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抗菌剤の投与を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抗菌剤が、抗真菌剤、抗ウイルス剤又は抗生物質である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
腹膜炎を患う哺乳動物を治療する方法であって、治療上有効量のSPARCポリペプチド及び薬理学的担体の腹腔内投与を含む方法。
【請求項8】
腹膜炎が特発性細菌性腹膜炎である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
腹膜炎が化学性腹膜炎である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
腹膜炎が虫垂炎の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
腹膜炎が腸梗塞の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
腹膜炎が膵臓炎の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
腹膜炎が胃破裂の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
腹膜炎が穿孔性胃潰瘍の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
腹膜炎が外傷の結果である、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
抗炎症薬の投与を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
抗菌剤の投与を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
抗菌剤が、抗真菌剤、抗ウイルス剤又は抗生物質である、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
SPARCポリペプチドが配列番号1を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物において腹膜癒着の発生率を低下させる方法であって、治療上有効量のSPARCポリペプチド及び薬理学的担体の腹腔内投与を含む方法。
【請求項21】
SPARCポリペプチドが配列番号1を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
腹膜癒着が外傷に起因する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
腹膜癒着が腹部又は骨盤内手術に起因する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
腹膜癒着が腹膜炎に起因する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
子宮内膜症を患う哺乳動物を治療する方法であって、治療上有効量のSPARCポリペプチド及び担体の腹腔内投与を含む方法。
【請求項26】
SPARCポリペプチドが配列番号1を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗炎症薬の投与を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
抗菌剤の投与を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
抗菌剤が、抗真菌剤、抗ウイルス剤又は抗生物質である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
炎症性疾患又は炎症状態を患う哺乳動物を治療する方法であって、罹患哺乳動物への、治療上有効量のSPARCポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド及び薬理学的担体の投与を含む方法。
【請求項31】
SPARCポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが配列番号2を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
炎症性疾患又は炎症状態が、腹膜炎、胸膜炎、関節リウマチ、炎症性関節症、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚筋炎、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギラン・バレー症候群、橋本病、川崎病、間質性膀胱炎、エリテマトーデス、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、乾癬性関節炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、側頭動脈炎、血管炎アテローム性動脈硬化症(vasculitisatherosclerosis)、関節リウマチ、敗血症、急性気管支炎、肺気腫、鼻炎、副鼻腔炎、喘息、肺胞炎、農夫肺病、過反応性気道、気管支炎、肺臓炎、小児喘息、気管支拡張症、肺線維症、ARDS、肺炎、間質性肺臓炎、気管支炎、放射線誘発性傷害、嚢胞性線維症、α1−アンチトリプシン欠損症、炎症性偽ポリープ、深在性嚢胞性大腸炎、腸壁嚢状気腫症、胆石、腎結石、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、早期関節炎、反応性関節炎、骨関節炎、腱炎、歯周病、線維症、神経炎症、多発性硬化症、漿膜炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫、又はアテローム性動脈硬化症、敗血症、急性気管支炎、アレルギー性気管支炎、若しくは慢性気管支炎、慢性閉塞性気管支炎、咳嗽、肺気腫、アレルギー性鼻炎若しくは副鼻腔炎又は非アレルギー性鼻炎若しくは副鼻腔炎、慢性鼻炎若しくは副鼻腔炎、喘息、肺胞炎、農夫肺病、過反応性気道、感染性気管支炎若しくは肺臓炎、小児喘息、気管支拡張症、肺線維症、成人急性呼吸窮迫症候群、気管支浮腫、肺浮腫、気管支炎、肺炎、間質性肺臓炎、又は気管支炎、心不全の結果としての肺炎、放射線肺臓炎、化学療法誘発性肺臓炎、嚢胞性線維症、又はα1−アンチトリプシン欠損症、急性胆嚢炎又は慢性胆嚢炎である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
抗炎症薬の投与を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
抗菌剤の投与を更に含む、請求項30に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【公表番号】特表2011−516609(P2011−516609A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505123(P2011−505123)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/040433
【国際公開番号】WO2009/129205
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】