説明

SSL代替物としてのベーキング酵素組成物

本発明は、生地およびベイクド製品中でSSLおよび/またはCSLまたはその他の乳化剤を完全に置き換えるために使用し得る、トリグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質活性を有する脂肪分解酵素、トリアシルグリセロールリパーゼ、および好ましくはヘミセルラーゼまたはセルラーゼおよびアミログルコシダーゼから選択される少なくとももう1つの酵素を含んでなるベーキング酵素組成物に関する。ベーキング酵素組成物が有効量で添加された生地、およびそれから得られるベイクド製品は、優れた生地安定性と耐衝撃性、およびベイクド製品の改善された体積、クラム構造とクラムの柔らかさならびに改善された抗老化性などの改善された特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、新しいベーキング酵素組成物、前記組成物を使用して製造される生地、およびそれから得られるベイクド製品に関する。本発明はまた、生地またはそれから得られるベイクド製品の製造において、SSLまたはCSLを置き換える新しいベーキング酵素組成物の使用にも関する。
【0002】
[発明の背景]
生地の取り扱い特性および/またはベイクド製品の最終特性を改善するために、特性を改善する加工助剤を開発するたゆみない努力がなされている。加工助剤は本明細書で、生地の取り扱い特性および/またはベイクド製品の最終特性を改善する化合物と定義される。改善されうる生地特性としては、安定性、機械加工適性、ガス保持能力、粘性低下、弾性、伸展性、成形性などが挙げられる。改善されベイクド製品の特性としては、膨化体積、外皮サクサク感、火ぶくれ減少、クラム構造、クラム柔らかさ、香味、相対老化、および貯蔵寿命が挙げられる。これらの生地および/またはベイクド製品改善加工助剤は、化学添加剤と酵素(ベーキング酵素とも称される)に二分し得る。
【0003】
特性改善化学添加剤は、アスコルビン酸、臭素、およびアゾジカルボン酸などの酸化剤;L−システインおよびグルタチオンなどの還元剤;モノ/ジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、ステアロイルラクチル酸ナトリウム(SSL)またはステアロイルラクチル酸カルシウム(CSL)などの生地調整剤として機能する乳化剤;またはモノステアリン酸グリセロール(GMS)などのクラム軟化剤として機能する乳化剤;トリグリセリド(脂肪)またはレシチンなどの脂肪質を含んでなる。
【0004】
製パン工業で適用される乳化剤は、クラム軟化剤または生地強化剤に大まかに区分し得る。蒸留されたモノグリセリドは、主にクラム軟化のために使用される。モノグリセリドのデンプンとの複合体形成は、デンプンの完全な再結晶化を防止して、初期のクラム軟らかさおよび/またはベイクド製品の貯蔵寿命中のクラム固化速度の低下をもたらす。生地強化のためには、DATEM、CSL、およびSSLなどのいくつかの異なる合成極性脂質類似物を応用する。それらの製パンにおける効果は、主に生地の安定性を改善することである。
【0005】
生地の粘性低下、生地機械加工性の改善などのその他の生地の特徴、そして膨化体積の増大、クラム構造の改善、クラム柔らかさと貯蔵寿命の改善、および外皮サクサク感の改善などの改善されたベイクド製品の特徴もまた達成され得る。
【0006】
皮の硬いローフタイプのパンでは化学乳化剤としてDATEMが主に使用される一方、SSLまたはCSLは、主に型焼きパン、サンドイッチパン、およびソフトロールバンズなどの柔らかいパンで使用される。
【0007】
化学添加剤をより多くの天然物で置き換える消費者主導の必要性の結果として、特定のベーキング用途条件に応じた生地および/またはベイクド製品改善特性がある、いくつかのベーキング酵素が開発されている。
【0008】
化学添加剤に対する消費者の抵抗は増大しており、したがって消費者に抵抗なく受け入れられる添加剤および/または酵素によって、加工助剤と見なされる乳化剤を置き換える絶え間ない需要がある。しかし例えば乳化剤を省くとパンの品質は相当に低下し、SSLまたはモノグリセリドのような乳化剤を使用せずに3〜5日間の貯蔵寿命を達成することは、サンドイッチパンなどの皮の硬くない各種パンにとって困難である。
【0009】
パンの老化に関する研究は、パン中のデンプン画分が保存中に再結晶化することにより、クラムの硬さの増大を引き起こすことを示唆した。アミラーゼおよびヘミセルラーゼは、クラム柔らかさと膨化体積を改善するパン改良剤の中で広く使用されている。αアミラーゼはベーキング中にデンプン画分を部分的に分解し、クラム柔らかさを増大させる。ヘミセルラーゼは小麦粉のヘミセルロース画分を分解し、それによって常態ではこの画分に結合する水を生地の中に遊離させる。パン改良剤中のヘミセルラーゼの使用は、ベーキング中の改善された生地の窯伸び、ベーカリー製品の改善された膨化体積、粒構造、およびより良い保存性をもたらす。しかしアミラーゼおよびヘミセルラーゼによって与えられる改善は限定的であり、したがってパンの許容可能な日持ちを得るためには、乳化剤がなおも必要とされる。
【0010】
De Maria et al in Appl.Microbiol.Biotechnol.(2007)74:290−300は、製パン工業においてホスホリパーゼを使用して、特にベイクド製品の製造において、DATEM、CSLまたはSSLなどの乳化剤を部分的にまたは完全に置き換えてもよいことを記載する。
【0011】
国際公開第02/03805号パンフレットは、異なる基質特異性のある2つの脂肪分解酵素の組み合わせが、生地、または生地からできたベイクド製品に対して相乗効果をもたらし、体積が改善されたベイクド製品および/またはベーキング中に形状がより良く保持されるベイクド製品を生じることを記載する。
【0012】
欧州特許第0585988号明細書は、好ましくはショートニングと組み合わされた、リパーゼ、ヘミセルラーゼ、およびアミラーゼを含んでなるパン改良剤組成物について記載する。前記酵素製剤および好ましくはショートニングの組み合わせは、SSLやモノグリセリドのような乳化剤を置換し得る。
【0013】
ベーキング製品の製造において、SSLまたはCSLなどの化学乳化剤の使用を削減する新しい趨勢のために、ベーキング工程において、これらの化学乳化剤を置き換え得る代替のまたは改善されたベーキング酵素組成物に対する必要性がある。生地およびそれから製造されるベイクド製品の生産において、乳化剤、特にSSLまたはCSLを部分的にまたは完全に置き換え得る、新しいベーキング酵素組成物を提供することが本発明の目的である。
【0014】
[発明の概要]
本発明の第1の態様では、
(A)配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチド、または配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%相同的なアミノ酸配列を有するその機能的同等物に従うアミノ酸配列;または
(B)(a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するその機能的同等物;または
(b)配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%相同的であるヌクレオチド配列;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列;または
(d)(a)、(b)、(c)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コード縮重の結果として縮重される配列;または
(e)(a)、(b)、(c)、または(d)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
を含んでなるポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
を含んでなる、単離ポリペプチドである脂肪分解酵素を含んでなる、ベーキング酵素組成物が開示され、
組成物は、トリアシルグリセロールリパーゼ、好ましくはリゾプス・オリーゼ(Rhizopus oryzae)に由来するリパーゼをさらに含んでなる。
【0015】
ベーキング酵素組成物は、セルラーゼまたはヘミセルラーゼ、およびアミログルコシダーゼまたはこれらの酵素の1つ以上の混合物をさらに含んでなってもよい。本発明に従ったベーキング酵素組成物は、1つ以上のその他の酵素、1つ以上の生地改善および/またはパン改善添加剤をさらに含んでなってもよい。第2の態様では、本発明は本発明の第1の態様に従ったベーキング酵素組成物、小麦粉、および1つ以上の生地またはパン添加剤を含んでなるプレミックスを提供する。
【0016】
別の態様では本発明は、小麦粉、水、酵母、および本発明に従ったベーキング酵素組成物またはプレミックスを含んでなる生地を提供する。本発明に従ったベーキング酵素組成物を含んでなる生地は、優れた安定性、機械的損傷に対する耐衝性、および良好な伸展性や低粘性などのその他の特性を有することが意外にも分かった。本発明に従ったベーキング組成物の使用は、季節的変動に起因する小麦粉中の異なる脂質プロフィールの変化を自動的に緩和することで、小麦粉の変動性の影響を排除する。本発明の第4の態様では、本発明に従った生地を焼くことで得られるベイクド製品が提供される。本発明に従ったベイクド製品は、改善された体積と非常に良好なクラム構造、特に細かいクラム構造、クラム柔らかさを有し、したがって貯蔵寿命が増大することが意外にも発見された。
【0017】
本発明のさらなる態様では、本発明に従った生地およびベイクド製品を製造する方法が提供される。本発明はまた、生地またはそれに由来するベイクド製品の製造において、乳化剤を置き換え、好ましくはSSLまたはCSLを置き換えるための本発明に従ったベーキング酵素組成物またはプレミックスの使用も提供する。プレミックスからのSSLおよび/またはCSLの省略は、ベイクド製品成分の製造中の取り扱いおよび保存節減をもたらし、本発明のベーキング組成物は、SSLまたはCSLよりもはるかに低い投与量で使用し得るという事実のために、コスト削減を可能にする。
【0018】
[発明の詳細な説明]
したがって本発明の第1の態様では、
(A)配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチド、または配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%相同的なアミノ酸配列を有するその機能的同等物に従うアミノ酸配列;または
(B)(a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するその機能的同等物;または
(b)配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%相同的であるヌクレオチド配列;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列;または
(d)(a)、(b)、(c)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コード縮重の結果として縮重される配列;または
(e)(a)、(b)、(c)、または(d)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
を含んでなるポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含んでなる単離ポリペプチドである、脂肪分解酵素(本細書中で本発明に従った脂肪分解酵素として示される)を含んでなるベーキング組成物が開示され、
組成物は、トリアシルグリセロールリパーゼ、好ましくはリゾプス・オリーゼ(Rhizopus oryzae)に由来するトリアシルグリセロールリパーゼをさらに含んでなる。
【0019】
ベーキング酵素組成物中で使用される本発明に従った脂肪分解酵素は、製パン用途において、グリセリド(例えばトリグリセリド)、リン脂質、およびガラクト脂質などの糖脂質に及ぶ、いくつかの各種脂質に作用できる。好ましくは本発明に従った脂肪分解酵素は、製パン用途において、例えば生地状態で、トリグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質に対する脂肪分解活性を有する。
【0020】
脂肪分解酵素は、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%または最も好ましくは90%の相同性を有するヌクレオチド配列によってコードされ、または配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチドであり、または配列番号2のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドと少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%または最も好ましくは少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物である。
【0021】
本発明のベーキング組成物で使用される好ましい脂肪分解酵素は、配列番号2に記載のアミノ酸(L01として示される)、すなわち配列番号2に記載のアミノ酸34〜304に由来して、アミノ酸配列が配列番号1のヌクレオチド配列によってコードされる、成熟ポリペプチドに相当する脂肪分解酵素である。
【0022】
さらに具体的には本発明に従ったベーキング酵素組成物中で使用される脂肪分解酵素は、生地中原位置で使用した場合に、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくは全てを示す。
●無極性脂質に対する比較的低い活性。
●ジアシルガラクト脂質などの極性ジアシル脂質および/またはリン脂質に対する比較的高い活性。
●リゾガラクト脂質やリゾリン脂質などの極性モノアシル化合物に対する比較的低い活性。
【0023】
これらの意外な特性は全て、生地中で化学乳化剤代替物として使用した場合に、極めて有利であることが分かった。
【0024】
グリセリドは、グリセロールと脂肪酸のエステルである。トリグリセリド(トリアシルグリセロールまたはトリアシルグリセリドとしてもまた知られている)は、主に植物油および動物脂肪中に存在する。リパーゼ(トリアシルグリセロールリパーゼとしてもまた知られている)(EC3.1.1.3)は、本明細書で、トリグリセリド中に存在する脂肪酸の1つ以上を加水分解する酵素と定義され、さらに具体的にはそれらは脂肪酸とグリセロール部分の水酸基の間のエステル結合を加水分解する。
【0025】
糖脂質(例えばガラクト脂質)は、外側(sn−1)および中央(sn−2)の位置に2つのエステル化脂肪酸があるグリセロール主鎖から構成される一方、第3の水酸基は、例えばモノガラクトシルジグリセリド(MGDG)またはジガラクトシルジグリセリド(DGDG)のようなガラクト脂質の場合は、ガラクトースなどの糖残基に結合する。ガラクトリパーゼ(EC3.1.1.26)は、ガラクトシルジグリセリドからのそれぞれsn−1およびsn−2位置中の片方または双方の脂肪アシル基の加水分解を触媒する。
【0026】
リン脂質は、外側(sn−1)と中央(sn−2)の位置に2つのエステル化脂肪酸があるグリセロール主鎖から構成される一方、グリセロールの第3の水酸基でリン酸でエステル化される。次にリン酸は、例えばエタノールアミン(ホスファチジルエタノールアミン)のようなアミノアルコール、コリン(ホスファチジルコリン)でエステル化されてもよい。ホスホリパーゼは、本明細書でリン脂質中の1つ以上の結合の加水分解に関与する酵素と定義される。
【0027】
脂肪酸アシル部分をグリセロール主鎖に結合するエステル結合を加水分解する、ホスホリパーゼ活性のいくつかのタイプが、区別され得る。
●ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)およびA2(EC3.1.1.4)は、ジアシルグリセロリン脂質から、それぞれsn−1およびsn−2位置中の1つの脂肪酸アシル基の脱アシル化を触媒して、リゾリン脂質を生成する。これは乳化剤代替物質にとって、望ましい活性である。
●リゾホスホリパーゼ(EC3.1.1.5;Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology(Enzyme Nomenclature,Academic Press,New York,1992)によってホスホリパーゼBとも称される)は、リゾリン脂質中の残る脂肪酸アシル基の加水分解を触媒する。
ジアシルグリセロリン脂質からの双方の脂肪酸の脱アシル化を触媒し、リゾホスホリパーゼ活性を内在性に有する、アオカビ(Penicillium notatum)からのホスホリパーゼBが報告されている(Saito et al.,1991,Methods in Enzymology 197:446−456)。リゾホスホリパーゼ活性は極性頭部と無極性尾部の組み合わせの欠失をもたらし、得られる製品は表面特性に影響できなくなるので、乳化剤代替物質にとって望ましくない。意外なことに、本発明に従った脂肪分解酵素は生地中で比較的低いリゾホスホリパーゼ活性を示すことが示された。
【0028】
トリグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質に対する活性を有する本発明に従った脂肪分解酵素そのまま使用して、生地中の好ましくはSSLおよび/またはCSLである乳化剤を置き換えてもよい。生地に有効量で組み込まれると、トリグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質に対する活性を有する脂肪分解酵素は、その中にポリペプチドが組み込まれない生地またはベイクド製品と比較して、生地またはそれから得られるベイクド製品の1つ以上の特性を改善するかもしれない。
【0029】
「特性改善」という用語は、本明細書で、本発明に従った脂肪分解酵素または本発明に従ったベーキング酵素組成物の作用によって、その中に本発明に従った脂肪分解酵素または組成物組み込まれない生地または製品と比較して改善された、生地および/または生地から得られる製品、特にベイクド製品のあらゆる特性と定義される。改善された特性としては、生地の強度増大、生地の弾性増大、生地の安定性増大および耐衝撃性増大、生地の粘性低下、生地の伸展性改善、生地の機械加工適性改善、ベイクド製品の体積増大、ベイクド製品の香味改善、ベイクド製品のクラム構造改善、ベイクド製品のクラム柔らかさ改善、ベイクド製品の火ぶくれ減少および/またはベイクド製品の抗老化改善が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
特性改善は、下述する本発明の方法に従って、本発明の脂肪分解酵素またはベーキング酵素組成物の添加ありまたはなしで調製された生地および/またはベイクド製品を比較することで判定されてもよい。官能特性は製パン工業で確立された手順を使用して評価されてもよく、例えば訓練された味覚テスターパネルの使用を含んでもよい。
【0031】
「生地の強度増大」という用語は、本明細書で、一般により弾力のある特性を有し、および/または成形と造形により多くの力を要する、生地の特性と定義される。
【0032】
「生地の弾性増大」という用語は、本明細書で、特定の物理的歪みを加えられた後に、元の形状に復帰するより高い傾向を有する生地の特性と定義される。
【0033】
「生地の安定性増大」という用語は、本明細書で機械的損傷を受けにくく、したがってその形状と体積をより良く保つ生地の特性と定義され、通常のおよび/または長時間発酵後のローフ断面の高さ:幅比率によって評価される。
【0034】
「生地の粘性低下」という用語は、本明細書で例えば生地製造機内において、表面に付着するより低い傾向を有する生地の特性と定義され、当該技術分野で知られているように、熟練した試験パン職人によって経験的に評価され、またはテクスチャー分析器(例えばTAXT2)の使用によって測定される。
【0035】
「生地の伸展性改善」という用語は、本明細書で、裂けることなく、歪みまたは伸展の増大を被り得る生地の特性と定義される。
【0036】
「生地の機械加工適性改善」という用語は、本明細書で、一般に粘性がより低くおよび/またはより堅固でおよび/または弾性のある生地の特性と定義される。
【0037】
「生地の耐衝撃性増大」という用語は、本明細書で、機械的衝撃を被った後にその形状と体積を保つ生地の特性と定義される。これは衝撃を与えなかった同一の生地から得られるベイクド製品と比較して、衝撃を与えた生地から得られるベイクド製品の体積変動百分率を測定することで評価される。衝撃を与えた生地によって得られるベイクド製品の体積損失が、衝撃を与えなかった同一の生地によって得られるベイクド製品と比較して、可能な限り小さくまたは不在であれば、生地は十分に安定している。生地には当業者に知られている方法によって、例えば実験の項で報告される方法によって衝撃を与えてもよい。
【0038】
「ベイクド製品の体積増大」という用語は、当該技術分野で知られている超音波またはレーザー検出を使用して、自動化パン体積分析器(例えばBVM−3;スウェーデン国のTex Vol Instruments AB(Sweden,Viken)によって測定される、特定のパンローフの体積として測定される。
【0039】
「ベイクド製品の火ぶくれ減少」という用語は、本明細書で視覚的に判定される焼かれたパン外皮の火ぶくれ形成の減少と定義される。
【0040】
「ベイクド製品のクラム構造改善」という用語は、本明細書で、クラム中のより細かい気泡および/またはより薄い気泡壁および/またはクラム中の気泡のより均一/均質の分布があるベイクド製品の特性と定義され、通常、当該技術分野で知られているように、パン職人によって視覚的に、またはデジタル画像分析(例えばC−cell;英国ウォリントンのアップルトン(Appleton,Warrington,UK)のCalibre Control International Ltd)によって評価される。
【0041】
「ベイクド製品の軟らかさ改善」という用語は、「硬さ」の逆であり、本明細書でより容易に押圧されるベイクド製品の特性と定義され、当該技術分野で知られているように、熟練した試験パン職人によって経験的に評価され、またはテクスチャー分析器(例えばTAXT2またはTA−XT Plus;英国サリーのStable Micro Systems Ltd(surrey, UK)の使用によって測定される。
【0042】
「ベイクド製品の香味改善」という用語は、訓練された試験パネルによって評価される。
【0043】
「ベイクド製品の抗老化改善」という用語は、本明細書で、保存中における例えば軟らかさおよび/または弾性などの品質パラメーターの劣化速度が低下している、ベイクド製品の特性と定義される。
【0044】
「サクサク感の改善」という用語は、本明細書で、当該技術分野で知られている参考製品よりも強いサクサク感を与え、ならびにこの強いサクサク感を参考製品よりも長く保つベイクド製品の特性と定義される。この特性は、例えばテクスチャー分析器TA−XT Plus(英国サリーのStable Micro Systems Ltd(surrey, UK))を使用して、押圧実験で固定速度における距離対力曲線を測定し、この圧縮曲線から物理的パラメーター、すなわち(i)第1のピーク力、(ii)第1のピーク距離、(iii)初期傾斜、(iv)最大ピーク力、(v)グラフ下面積、および(vi)破壊事象数(力が特定の設定値よりも大きく低下する)を得ることによって定量化し得る。サクサク感改善の指標は、より高い第1のピーク力、より短い第1のピーク距離、より高い初期傾斜、より高い最高ピーク力、より大きなグラフ下面積、およびより多数の破壊事象である。サクサクのより強い製品は、参考製品と比較して、少なくともこれらのパラメーターの2つにおいて統計的に有意により良く得点すべきである。当該技術分野で、「サクサク感」はまた、サクサク感、カリカリ感またはパリパリ感とも称され、サクサク、カリカリしてまたはパリパリした破壊挙動のある物質を意味する。
【0045】
トリアシルグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質に対する活性を有する、本発明に従った脂肪分解酵素をそのまま有効量で生地に組み込んだ場合、生地強度などのいくつかの生地特性、およびそれから得られるベイクド製品のパン体積などのいくつかの特性が改善されるかもしれない。しかしこれらの改善は、特にベイクド製品が、型焼きパンまたはサンドイッチパン、ロール、ハンバーガーバンズのようなバンズ、またはイーストで膨らませたドーナツなどの柔らかく皮が硬くないタイプである場合、完全に十分でないかもしれない。したがって所望の生地およびベイクド製品の特徴を得るためには、なおもSSLまたはCSLを生地成分として添加する必要がある。
【0046】
本発明に従った脂肪分解酵素とトリアシルグリセロールリパーゼを型焼きパンなどのベイクド製品を製造するのに使用される生地に有効量で添加した場合、良好な強度、改善された安定性、および機械加工性がある生地が得られる一方、対応するベイクド製品は改善されたパン体積と細かいクラム構造を示すことが意外にも分かった。有効量の本発明に従った脂肪分解酵素と、トリアシルグリセロールリパーゼを含んでなる生地は、SSLまたはCSLが組み込まれた場合と同様の安定特性を有してもよい。
【0047】
トリアシルグリセロールリパーゼは、好ましくは真菌リパーゼであり、好ましくはクモノスカビ(Rhizopus)、アスペルギルス(Aspergillus)、カンジダ(Candida)、ペニシリウム(Penicillum)、サーモマイセス(Thermomyces)、またはリゾムコール(Rhizomucor)に由来する。より好ましくはクモノスカビ属(Rhyzopus)に由来する、より好ましくはリゾプス・オリーゼ(Rhyzopus oryzae)に由来するトリアシルグリセロールリパーゼが使用される。任意に2つ以上のトリアシルグリセロールリパーゼの組み合わせを使用し得る。したがって本発明の別の実施態様では、本発明に従ったベーキング酵素組成物は、2つ以上のトリアシルグリセロールリパーゼの組み合わせをさらに含んでなる。
【0048】
好ましい本発明の実施態様では、本発明に従ったベーキング酵素組成物は、ヘミセルラーゼまたはセルラーゼ、好ましくはセルラーゼをさらに含んでなる。任意に2つ以上のヘミセルラーゼおよび/または2つ以上のセルラーゼの組み合わせ、および/または1つ以上のヘミセルラーゼと1つ以上のセルラーゼの組み合わせを使用し得る。
【0049】
本発明に従った脂肪分解酵素、トリアシルグリセロールリパーゼ、およびヘミセルラーゼまたはセルラーゼ、好ましくはセルラーゼを含んでなるベーキング組成物を型焼きパンまたはサンドイッチパン、ハンバーガーバンズのようなバンズ、ロール、およびイーストで膨らませたドーナツなどのベイクド製品を製造するのに使用される生地に有効量で添加すると、生地の特性および生地から得られるベイクド製品の特性が、本発明に従った脂肪分解酵素およびトリアシルグリセロールリパーゼを含んでなるがヘミセルラーゼまたはセルラーゼを含まない生地と比較して、さらに改善されてもよいことが意外にも分かった。特に、さらに改善された体積および/またはより細かいクラム構造および/またはクラム柔らかさが得られてもよい。
【0050】
特に良好な結果が、A.ニガー(A.niger)に由来する、またはトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)に由来するセルラーゼを使用して得られてもよい。
【0051】
なおもより好ましい本発明の実施態様では、本発明に従ったベーキング酵素組成物は、アミログルコシダーゼ、好ましくはコウジカビ(A.oryzae)またはA.ニガー(A.niger)、より好ましくはA.ニガー(A.niger)などのアスペルギルス(Aspergillus)に由来するアミログルコシダーゼをさらに含んでなる。
【0052】
意外なことに、本発明に従った脂肪分解酵素、トリアシルグリセロールリパーゼ、ヘミセルラーゼまたはセルラーゼ、好ましくはセルラーゼ、およびアミログルコシダーゼを含んでなるベーキング酵素組成物を生地に有効量で組み込むと、生地およびそれから得られるベイクド製品の質が、本発明に従った脂肪分解酵素、トリアシルグリセロールリパーゼおよびヘミセルラーゼまたはセルラーゼを含んでなるが、アミログルコシダーゼを含まない生地と比較してさらに改善されてもよい。得られる生地は、改善された安定性および/または増大する耐衝撃性、改善された機械加工性、良好な膨らみなどの例外的な質を有し、対応する製品は、優れた体積、細かいクラム構造および/またはクラム柔らかさを有してもよく、結果としてそれは長期の貯蔵寿命を有してもよい。これらの改善は、生地中のSSLまたはCSLの完全な置き換えを可能にする。
【0053】
本発明に従ったベーキング酵素組成物は、追加的酵素および/または生地および/またはパン添加剤をさらに含んでなってもよい。
【0054】
追加的酵素は、哺乳類および植物をはじめとするあらゆる起源、好ましくは微生物(細菌、酵母または真菌)起源であってもよく、通常当該技術分野で利用される技術によって得られてもよい。
【0055】
追加的酵素は、αアミラーゼ(酵母が発酵できる糖を提供し、老化を遅らせるのに有用である)、βアミラーゼ、マルトース生成アミラーゼまたは非マルトース生成アミラーゼなどのアミラーゼ;シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ;プロテアーゼ;特にエキソペプチダーゼ(香味改良に有用である)などのペプチダーゼ;トランスグルタミナーゼ;ガラクトリパーゼ;ホスホリパーゼ;特に例えばキシラナーゼ(ペントサンの部分的加水分解に有用であり、さらに具体的には生地の伸展性を増大させるアラビノキシラン)のようなペントサナーゼなどのヘミセルラーゼ;プロテアーゼ(特に強力粉を使用する場合、グルテン弱化に有用である);例えば国際公開第95/00636号パンフレットで開示されるようなタンパク質ジスルフィドイソメラーゼなどのタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ;グリコシルトランスフェラーゼ;ペルオキシダーゼ(生地粘稠度を改善するのに有用である);ラッカーゼ;またはオキシダーゼ;例えばグルコースオキシダーゼなどのヘキソースオキシダーゼ;アルドースオキシダーゼ;ピラノースオキシダーゼ;リポキシゲナーゼまたはL−アミノ酸オキシダーゼ(生地粘稠度を改善するのに有用である)であってもよい。本発明に従ったベーキング組成物がマルトース生成アミラーゼをさらに含んでなる場合、生地に添加された組成物は、改善されたクラム柔らかさ、ひいては改善された貯蔵寿命がある、それから得られるベイクド製品をもたらす。
【0056】
生地およびパン製造において、本発明に従ったベーキング酵素組成物をその他のパンまたは生地成分との、または塩、酸化剤(例えばアスコルビン酸)や還元剤(例えばL−システイン)および/または乳化剤(例えばDATEM、SSLおよび/またはCSL)のような化学加工助剤、および/またはオキシド還元酵素(例えばグルコースオキシダーゼ)や多糖類修飾酵素(例えばαアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、分枝酵素など)および/またはタンパク質修飾酵素(エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ、分枝酵素など)などの酵素加工助剤などの添加剤との組み合わせで使用してもよい。好ましくはベイクド製品または生地を製造するのに使用される添加剤はSSLおよび/またはCSLを含まず、より好ましくはそれらはSSL、CSL、DATEM、GMSから選択される乳化剤を含まず、より好ましくは乳化剤を含まない。
【0057】
第2の態様では、本発明は、本発明に従ったベーキング酵素組成物、小麦粉、および前述の1つ以上のパンまたは生地添加剤を含んでなるプレミックスを提供する。
【0058】
「プレミックス」という用語は、本明細書において、その従来の意味で、すなわち工業的製パン工場/設備だけでなく、小売ベーカリーでも使用されてよい、一般に小麦粉を含むベーキング剤の混合物と理解されるべきであると定義される。プレミックスは、本発明のベーキング酵素組成物を小麦粉、デンプン、糖、マルトデキストリンなどの複合糖質、または塩などの適切なキャリアと混合して調製されてもよい。プレミックスは、例えば上述のいずれかの酵素をはじめとする添加剤、その他の生地および/またはパン添加剤を含有してもよい。
【0059】
別の態様では本発明は、少なくとも小麦粉、水、および酵母を含んでなる生地成分に、本発明に従ったベーキング酵素組成物またはプレミックスを添加するステップを含んでなる、生地を調製する方法を開示する。
【0060】
上述の成分およびパンまたは生地添加剤からの生地の調製は、当該技術分野で良く知られており、前記成分と添加剤を混合するステップと、1つ以上の成形および発酵ステップを含んでなる。
【0061】
別の態様では、本発明は、小麦粉、水、酵母、および有効量の本発明に従ったベーキング酵素組成物またはプレミックスを含んでなる生地を提供する。
【0062】
本発明はまた、ポリペプチドが組み込まれていない生地またはベイクド製品と比較して、生地または生地から得られるベイクド製品の1つ以上の特性を改善する、有効量の本発明のベーキング酵素組成物を生地に組み込むステップを含んでなる、生地またはベイクド製品を調製する方法にも関する。
【0063】
「生地に組み込む」という語句は、本明細書で、生地に、生地がそれから作られるあらゆる成分に、および/または生地がそれから作られるあらゆる生地成分混合物に、本発明に従ったベーキング酵素組成物を添加することと定義される。換言すれば本発明のベーキング酵素組成物は、生地調製のあらゆるステップで添加されてもよく、1つまたは2つ以上のステップで添加されてもよい。組成物は、当該技術分野で良く知られている方法を使用して、練られて焼かれベイクド製品が製造される生地成分に添加される。例えば米国特許第4,567,046号明細書、欧州特許出願公開第A−426,211号明細書、特開昭60−78529号公報、特開昭62−111629号公報、および特開昭63−258528号公報を参照されたい。
【0064】
「有効量」という用語は、本明細書で、生地および/またはベイクド製品の関心のある少なくとも1つの特性に対して、測定可能な効果を与えるのに十分な、本発明に従ったベーキング酵素組成物の量と定義される。
【0065】
「生地」という用語は、本明細書で、練るのにまたは丸めるのに十分に硬い小麦粉とその他の成分との混合物と定義される。生地は、新鮮、凍結、調製済、または予備焼成であってもよい。凍結生地の調製については、KulpおよびLorenzによって「Frozen and Refrigerated Doughs and Batters」,K.Kulp,K.Lorenz,J.Brummer,Editors,American Association of Cereal Chemists,Publisher(1995)で記載される。
【0066】
本発明の好ましい実施態様に従って、本発明に従った脂肪分解酵素は、本発明に従った脂肪分解酵素の小麦粉(例えばL01)1kgあたり少なくとも3.57DLU単位の量、好ましくは少なくとも7.15DLU/kg小麦粉、より好ましくは少なくとも14.30DLU/kg小麦粉の量で生地に添加されてもよい。好ましい本発明の実施態様に従って、本発明に従った脂肪分解酵素は、最大で143DLU/kg小麦粉の本発明に従った脂肪分解酵素、好ましくは最大で71.50DLU/kg小麦粉、より好ましくは最大で35.75DLU/kg小麦粉の量で生地に添加されてもよい。本発明に従った脂肪分解酵素のDLU単位での活性は、「材料および方法」で示されるようにして測定し得る。
【0067】
本発明に従った生地は、トリアシルグリセロールリパーゼをさらに含んでなる。本発明の好ましい実施態様に従って、トリアシルグリセロールリパーゼが、1kgのトリアシルグリセロールリパーゼ小麦粉あたり少なくとも80PLI単位の量、好ましくは少なくとも160PLI/kg小麦粉、より好ましくは少なくとも320PLI/kg小麦粉の量で生地に添加されてもよい。好ましい本発明の実施態様に従って、トリアシルグリセロールリパーゼが、最大3200PLI/kgトリアシルグリセロールリパーゼ小麦粉、好ましくは最大1600PLI/kg小麦粉、より好ましくは最大800PLI/kg小麦粉の量で生地に添加されてもよい。トリアシルグリセロールリパーゼのPLI単位での活性は、「材料および方法」で示されるようにして測定し得る。
【0068】
本発明に従った生地は、セルラーゼをさらに含んでなってもよい。本発明の好ましい実施態様に従って、セルラーゼが1kgの小麦粉あたり少なくとも2.34CXU単位のセルラーゼ、好ましくは少なくとも4.68CXU/kg小麦粉、より好ましくは少なくとも7.5CXU/kg小麦粉、なおもより好ましくは少なくとも9.36CXU/kg小麦粉、なおもより好ましくは少なくとも15CXU/kg小麦粉、最も好ましくは少なくとも23.4CXU/kg小麦粉の量で生地に添加されてもよい。本発明の好ましい実施態様に従って、セルラーゼが、最大300CXUセルラーゼ/kg小麦粉の量で、好ましくは最大150CXU/kg小麦粉、より好ましくは最大93.6CXU/kg小麦粉、なおもより好ましくは最大75CXU/kg小麦粉、なおもより、好ましくは最大46.8CXU/kg小麦粉、最も好ましくは最大30CXU/kg小麦粉の量で生地に添加されてもよい。セルラーゼのCXU単位での活性は、「材料および方法」で示されるようにして測定し得る。
【0069】
本発明に従った生地は、アミログルコシダーゼをさらに含んでなってもよい。好ましい実施態様に従って、アミログルコシダーゼが、1kgの小麦粉あたり少なくとも130AGI単位のアミログルコシダーゼ、好ましくは少なくとも260AGI/kg小麦粉、より好ましくは少なくとも520AGI/kg小麦粉の量で生地に添加されてもよい。本発明の好ましい実施態様に従って、アミログルコシダーゼが、最大5200AGI/kg小麦粉のアミログルコシダーゼ、好ましくは最大2600AGI/kg小麦粉、より好ましくは最大1300AGI/kg小麦粉の量で生地に添加されてもよい。アミログルコシダーゼのAGI単位での活性は、「材料および方法」で示されるようにして測定し得る。
【0070】
好ましい実施態様では、本発明に従った生地はSSLおよび/またはCSLを実質的に含まず、好ましくはそれは実質的にSSL、CSL、DATEM、GSMから選択される乳化剤を含まず、より好ましくはそれは乳化剤を含まない。一般に、通常生地中で使用されるSSLおよび/またはCSLの量は、生地中に存在する小麦粉を基準にして0.1〜0.5%w/wである。本発明に従ったベーキング組成物を特に上述の量で生地に添加すると、生地中に存在する上述の量のSSLまたはCSLが完全に置き換えられてもよい。SSLが主にクラム軟化剤および老化防止として使用され、他の軟化システムが製パン過程で添加されない用途では、マルトース生成アミラーゼと組み合わされた本発明に従ったベーキング酵素組成物を使用して利点を達成し得て、置き換える各0.1%のSSLに対し、1〜2ppmのマルトース生成アミラーゼを使用することが有用かもしれない。
【0071】
本発明のさらなる態様は、本発明に従った生地を焼くステップを含んでなるベイクド製品を調製する方法を提供する。
【0072】
本発明はまた、本発明に従った生地焼くことで得られるベイクド製品も提供する。
【0073】
このような生地からのベイクド製品の調製はまた、当該技術分野で良く知られており、生地を成形して造形しさらに発酵させるステップと、それに続く必要な温度とベーキング時間で焼くステップを含んでなってもよい。一実施態様では本発明は、本発明に従った生地を焼くステップを含んでなるベイクド製品を調製する方法を提供する。本発明はまた、この方法に従って得られるベイクド製品も提供する。好ましくは本発明に従ったベイクド製品はパンであり、より好ましくはベイクド製品は型焼きパン、サンドイッチパン、バンズまたはロールなどの柔らかい性質である。
【0074】
「ベイクド製品」という用語は、本明細書で、生地から調製される柔らかいまたはサクサクした性質のどちらかのあらゆる製品と定義される。好ましくはベイクド製品は柔らかい性質であり、好ましくは型焼きパン、サンドイッチパン、バンズまたはロールなどの柔らかい性質である。白色、淡色または暗色タイプにかかわらず、有利には本発明によって製造されてもよいベイクド製品のさらなる例は、典型的にローフまたはロールの形態のパン(特に精白、全粒またはライ麦パン)、フランスパンタイプのパン、焼き菓子、クロワッサン、パスタ、麺類(茹で麺または炒め麺、揚げ麺)、ピタパン、トルティーヤ、タコス、ケーキ、マフィン、パンケーキ、ビスケット、クッキー、ドーナツ、ベーグル、パイ皮、蒸しパン、およびクリスプブレッドなどである。
【0075】
本発明は、生地またはそれに由来するベイクド製品の製造において、SSLまたはCSLを置き換え、好ましくはSSL、CSL、DATEM、GMSから選択される乳化剤を置き換え、好ましくは全ての乳化剤を置き換える、本発明に従ったベーキング組成物またはプレミックスの使用をさらに提供する。
【0076】
以下、製パン用途においてトリアシルグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質に対する活性を有する本発明に従った脂肪分解酵素、ならびに脂肪分解酵素をコードするポリヌクレオチド(以下、本発明に従ったポリヌクレオチドと称される)についてさらに詳しく記載する。
【0077】
本発明に従ったポリヌクレオチドは、
(a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するその機能的同等物;
(b)配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%相同的なヌクレオチド配列;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、または配列番号2のアミノ酸配列の成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するその機能的同等物;
(d)(a)、(b)、(c)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コードの縮重の結果として縮重された配列;
(e)(a)、(b)、(c)、(d)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
から選択されるヌクレオチド配列を含んでなる。
【0078】
特に本発明は、好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを提供し、前記配列は配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%相同的である。したがって本発明は、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、93%、94%、95%、なおもより好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%相同的なポリヌクレオチドを提供する。
【0079】
一実施態様ではこのような単離されたポリヌクレオチドは、例えば固相合成によって合成的に、または当業者に知られているその他の方法によって得られる。
【0080】
別の実施態様では本発明は、配列番号1に記載の脂肪分解酵素遺伝子、または活性脂肪分解酵素をなおもコードする機能的同等物を提供する。
【0081】
好ましくは本発明に従ったポリヌクレオチドは、DNA配列である。
【0082】
本発明はまた、本発明に従ったDNAを増幅するまたは検出するのに使用してもよい、本発明に従ったポリヌクレオチド配列、プライマー、プローブ、および断片を含んでなるベクターにも関する。
【0083】
さらなる好ましい実施態様では、その中で本発明に従ったポリヌクレオチド配列が少なくとも1つの制御配列と、適切な宿主細胞内でポリヌクレオチド配列が発現できるように作動的に連結するベクターが提供される。好ましくは前記適切な宿主細胞は糸状菌であり、より好ましくはアスペルギルス(Aspergillus)種である。適切な株は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)またはアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)に属する。好ましくは宿主細胞は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である。
【0084】
本発明はまた、本発明に従ったポリヌクレオチドを含有する組換え的に生成された宿主細胞にも関する。
【0085】
本発明はまた、本発明に従ったポリヌクレオチドおよびベクターを調製する方法も提供する。
【0086】
別の実施態様では、本発明は、その中で本発明に従ったポリヌクレオチドの発現が顕著に増大されており、または脂肪分解活性の産生レベルが顕著に改善されている組み換え宿主細胞を提供する。
【0087】
別の実施態様では本発明は、例えば本発明に従った遺伝子の増大したコピー数を含んでなるアスペルギルス(Aspergillus)株のように、その中で細胞が本発明に従った機能性の脂肪分解酵素産生でき、すなわち本発明に従った脂肪分解酵素をコードするポリヌクレオチドを発現または好ましくは過剰発現できる、本発明に従った異種または相同DNAを含有する組換え的に生成された宿主細胞を提供する。
【0088】
本発明のさらに別の態様では、脂肪分解活性を有する単離ポリペプチドが提供される。本発明に従ったポリペプチドは、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチドに従ったアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%相同的なアミノ酸配列を有するその機能的同等物から選択されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0089】
一実施態様では本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドの機能的同等物である脂肪分解活性を有する単離ポリペプチドにも関し、それは前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%相同的である。
【0090】
本発明に従ったポリペプチドを含んでなる融合タンパク質もまた、本発明の範囲内である。本発明はまた、本発明に従ったポリペプチドを製造する方法も提供する。
【0091】
本発明はまた、本発明に従ったベーキング酵素組成物中における、本発明に従った脂肪分解酵素の使用にも関する。
【0092】
[ポリヌクレオチド]
本発明は、
(a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するその機能的同等物;
(b)配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%相同的なヌクレオチド配列;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、または配列番号2のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するその機能的同等物;
(d)(a)、(b)、(c)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コードの縮重の結果として縮重された配列;
(e)(a)、(b)、(c)、(d)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
から選択されるヌクレオチド配列を含んでなる、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0093】
一実施態様では、本発明は、配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチドに対応するアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドに対応するアミノ酸配列と少なくとも60、70、80または90%の相同性を有する機能的同等物を有する、脂肪分解酵素をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0094】
本発明の文脈で「成熟ポリペプチド」とは、本明細書で、翻訳と、N末端プロセシング、C末端トランケーション、グリコシル化、リン酸化などのあらゆる翻訳後修飾に続くその最終形態において、脂肪分解活性を有するポリペプチドと定義される。成熟過程は、使用される特定の発現ベクター、発現宿主、および製造工程に左右されてもよい。好ましくは成熟ポリペプチドは、アミノ酸配列番号2中のアミノ酸34〜304である。「成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列」は、本明細書で成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と定義される。好ましくは成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に記載のヌクレオチド100〜912である。
【0095】
別の実施態様では本発明は、配列番号2のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドの機能的同等物である、脂肪分解活性を有する単離ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに関し、それは前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%相同的である。
【0096】
本発明は、脂肪分解酵素をコードする遺伝子を構成するポリヌクレオチド配列、ならびにそのコード配列を提供する。したがって本発明は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド、または配列番号1と少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するその機能的同等物などの変異体に関する。
【0097】
特に本発明は、好ましくはストリンジェントな条件下で、より好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの補体とハイブリダイズするヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチドに関し、好ましくは前記配列は、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80または90%相同的である。
【0098】
さらに具体的には、本発明は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含んでなり、または本質的にそれからなる単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0099】
このような単離されたポリヌクレオチドは、当業者に知られている方法を用いた合成によって得られてもよい。
【0100】
本明細書での用法では、「遺伝子」および「組み換え遺伝子」という用語は、例えば脂肪分解酵素などのタンパク質をコードする読み取り枠を含む、染色体DNAから単離されてもよい核酸分子を指す。遺伝子は、コード配列、非コード配列、イントロン、および制御配列を含んでもよい。さらに遺伝子は、本明細書で定義される単離された核酸分子またはポリヌクレオチドを指す。
【0101】
配列番号1のヌクレオチド配列またはその機能的同等物を有する核酸分子などの本発明の核酸分子は、標準分子生物学技術および本明細書で提供される配列情報を使用して単離し得る。例えばハイブリダイゼーションプローブとして配列番号1の核酸配列の全部または一部を使用して、標準ハイブリダイゼーションおよびクローニング技術を使用して本発明に従った核酸分子を単離し得る(例えばSambrook,J.,Fritsh,E.F.,and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載される)。
【0102】
さらに配列番号1に含有される配列情報に基づいてデザインされた合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、配列番号1の全部または一部を包含する核酸分子をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離し得る。
【0103】
本発明の核酸は、標準PCR増幅技術に従って、cDNA、mRNAまたは代案としてはゲノムDNAをテンプレートとして、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅し得る。このように増幅された核酸を適切なベクターにクローンして、DNA配列分析によって特性解析し得る。
【0104】
さらに本発明に従ったヌクレオチド配列の補体に対応する、またはそれとハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドは、標準合成技術によって、例えば自動化DNA合成機を使用して調製し得る。
【0105】
好ましい実施態様では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含んでなる。配列番号1の配列は、配列番号2に記載のポリペプチドと、配列番号2に記載の成熟ポリペプチドに従った脂肪分解酵素とをコードする。配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドに従った脂肪分解酵素は、L01として示される。配列番号1に記載のヌクレオチド配列は、DNA L01として示される。
【0106】
別の好ましい実施態様では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1に示すヌクレオチド配列の補体である核酸分子、またはこれらのヌクレオチド配列の機能的同等物を含んでなる。
【0107】
別のヌクレオチド配列に相補的な核酸分子とは、それが別のヌクレオチド配列とハイブリダイズして安定した二本鎖を形成し得る程度に、別のヌクレオチド配列に十分に相補的なものである。
【0108】
本発明の一態様は、本発明のポリペプチド、またはその機能的同等物などの変異体をコードする、例えば生物学的に活性な断片またはドメインなどの単離された核酸分子、ならびに核酸分子増幅または変異のためのPCRプライマーとして使用するのに適した、本発明のポリペプチドおよびこのような核酸分子の断片をコードする核酸分子を同定するハイブリダイゼーションプローブとして使用するのに十分な核酸分子に関する。
【0109】
「単離されたポリヌクレオチド」または「単離された核酸」は、それが由来する生物の天然ゲノム中でそれが隣接するコード配列(片方は5’末端もう一方は3’末端)のどちらにも隣接しないDNAまたはRNAである。したがって一実施態様では、単離された核酸は、コード配列に隣接する5’非コード(例えばプロモーター)配列の一部または全部を含む。したがってこの用語は、例えばベクターに、自己複製プラスミドまたはウィルスに、または原核生物または真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組み換えDNA、またはその他の配列から独立して別個の分子として存在する組み換えDNA(例えばPCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって生成されるcDNAまたはゲノムDNA断片)を含む。それはまた、実質的に細胞物質、ウィルス性物質、または培養液(組み換えDNA技術によって生成される場合)、または化学前駆体またはその他の化学物質(化学的に合成される場合)を含まない、追加的ポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子の一部である組み換えDNAも含む。さらに「単離された核酸断片」は、断片として天然に存在せず、自然状態では見られない核酸断片である。
【0110】
本明細書での用法では、「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)と、RNA分子(例えばmRNA)と、ヌクレオチド類似体を使用して作成されるDNAまたはRNA類似体とを含むことが意図される。核酸分子は一本鎖または二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸は、オリゴヌクレオチド類似体または誘導体(例えばイノシンまたはホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドを使用して、例えば改変された塩基対合能力または増大したヌクレアーゼ耐性を有する核酸を調製し得る。
【0111】
別の本発明の実施態様は、例えば本発明に従った核酸分子のコード鎖など、本発明に従った核酸分子のアンチセンスである単離された核酸分子を提供する。
【0112】
本発明に従ったポリヌクレオチドの補体鎖もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0113】
[核酸断片、プローブ、およびプライマー]
本発明に従った核酸分子は、例えばプローブまたはプライマーとして使用し得る断片、または本発明に従ったタンパク質の一部をコードする断片など、配列番号1に記載の核酸配列の一部または断片のみを含んでなってもよい。本発明に従ったヌクレオチド配列は、配列番号2に記載のタンパク質と少なくとも60、70、80または90%の相同性を有する、本発明に従ったタンパク質の機能的同等物の同定および/またはクローニングで使用するためにデザインされたプローブおよびプライマーを作成できるようにする。プローブ/プライマーは、典型的に好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、本発明に従ったヌクレオチド配列の少なくとも約12または15、好ましくは約18または20、好ましくは約22または25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65、または75個以上の連続的ヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含んでなる、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含んでなる。
【0114】
本発明に従ったヌクレオチド配列に基づく、より好ましくは配列番号1に基づくプローブを使用して、例えば生物中で、転写物、またはそれをコードするゲノム配列、または相同タンパク質を検出し得る。好ましい実施態様では、プローブはそれに付着する標識グループをさらに含んでなり、例えば標識グループは、放射性同位体、蛍光性化合物、酵素、または酵素補助因子であり得る。このようなプローブはまた、本発明に従ったタンパク質を発現する細胞を同定する診断試験キットの一部としても使用し得る。
【0115】
[同一性および相同性]
「相同性」または「%同一性」は、本明細書で同義的に使用される。本発明の目的では、2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列の%相同性を判定するために、配列は最適比較目的で配置合わせされると定義される。2配列間の位置合わせを最適化するために、比較される2配列のいずれかにギャップを導入してもよい。このような位置合わせは、比較される配列全長にわたって実施し得る。代案としては、位置合わせは、例えば約20、約50、約100以上の核酸/塩基またはアミノ酸などのより短い長さにわたって実施されてもよい。同一性は、報告された配列比較領域にわたる、2つの配列間の完全一致の百分率である。
【0116】
配列比較および2配列間の%同一性判定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。当業者は、2配列の配列比較および2配列間の相同性判定のために、いくつかの異なるコンピュータプログラムが利用できるという事実を知っている(Kruskal,J.B.(1983)An overview of squence comparison In D.Sankoff and J.B.Kruskal,(ed.),Time warps,string edits and macromolecules:the theory and practice of sequence comparison,pp.1−44 Addison Wesley)。2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の%同一性は、2配列間の配列比較のためのNeedleman and Wunschアルゴリズムを使用して判定されてもよい(Needleman,S.B.and Wunsch,C.D.(1970)J.Mol.Biol.48,443−453)。アミノ酸配列およびヌクレオチド配列のどちらも、アルゴリズムによって配列比較され得る。Needleman−Wunschアルゴリズムは、コンピュータプログラムNEEDLEで実装されている。本発明の目的では、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムが使用された(バージョン2.8.0以上、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite(2000)Rice,P.Longden I.and Bleasby,A. Trends in Genetics 16,(6)pp276-277,http://emboss.bioinformatics.nl/)。タンパク質配列では、置換マトリックスのためにEBLOSUM62が使用される。ヌクレオチド配列では、EDNAFULLが使用される。使用される任意のパラメーターは、gap−openペナルティ10およびgap−extensionペナルティ0.5である。当業者は、これらの全ての異なるパラメーターがわずかに異なる結果をもたらすが、2配列の全体的同一性百分率は、異なるアルゴリズムを使用した場合に顕著に変化しないことを理解するであろう。
【0117】
上述のようなプログラムNEEDLEによる配列比較後、クエリー配列と本発明の配列間の同一性百分率は、次のように計算される。配列比較中のギャップ総数を減じた後に、双方の配列中の同一アミノ酸または同一ヌクレオチドを示す配列比較中の対応する位置の数を配列比較の全長で除する。同一性は本明細書で、NOBRIEFオプションを使用してNEEDLEから入手し得ると定義され、プログラムの出力中で「最長同一性」と標識される。
【0118】
本発明の核酸およびタンパク質配列をさらに「クエリー配列」として使用して公共データベースに対する検索を実施し、例えばその他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定し得る。このような検索は、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施され得る。BLASTヌクレオチド検索はNBLASTプログラム、score=100、wordlength=12を用いて実施され、本発明の核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得る。BLASTタンパク質検索はXBLASTプログラム、score=50、wordlength=3を用いて実施され、本発明のタンパク質分子と相同的なアミノ酸配列を得る。比較目的で、ギャップド配列比較を得るためにAltschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記載されるようなギャップドBLASTを利用し得る。BLASTおよびギャップドBLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用し得る。国立バイオテクノロジー情報センターのウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/を参照されたい。
【0119】
[ハイブリダイゼーション]
本明細書での用法では、「ハイブリダイズする」という用語は、その下で互いに少なくとも約60%、65%、80%、85%、90%、好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%相同的なヌクレオチド配列が、典型的に互いの補体にハイブリダイズしたままである、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件について記載することが意図される。
【0120】
このようなハイブリダイゼーション条件の好ましい、非限定的例は、6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中約45℃でのハイブリダイゼーション後、1xSSC、0.1%SDSで50℃、好ましくは55℃、好ましくは60℃、なおもより好ましくは65℃で1回以上の洗浄である。
【0121】
高度にストリンジェントな条件としては、例えば68℃で5xSSC/5xデンハルト液/1.0%SDSでのハイブリダイズ、および室温で0.2xSSC/0.1%SDS中での洗浄が挙げられる。代案としては、洗浄は42℃で実施されてもよい。
【0122】
当業者は、ストリンジェントおよび高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に、どの条件を当てはめるかを知るであろう。このような条件に関する追加的ガイダンスは、例えば、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.;およびAusubel et al.(eds.),1995,Current Protocols in Molecular Biology,(John Wiley & Sons,N.Y.)にあり、当該技術分野で容易に入手できる。
【0123】
もちろん、ポリA配列(mRNAの3’末端ポリ(A)トラクトなど)のみ、またはT(またはU)残基の相補的ストレッチのみとハイブリダイズするポリヌクレオチドは、ポリ(A)ストレッチを含有するあらゆる核酸分子またはその補体(例えば事実上あらゆる二本鎖cDNAクローン)とハイブリダイズするので、このようなポリヌクレオチドは、本発明の核酸の一部と特異的にハイブリダイズさせるのに使用される本発明のポリヌクレオチドに含まれない。
【0124】
[別の生物から全長DNAを得る]
典型的なアプローチでは、別の生物からcDNAライブラリーが構築され、例えば特にフザリウム(Fusarium)種からの糸状菌をスクリーニングし得る。
【0125】
例えばノーザンブロット法分析によって、配列番号1に関して相同的なポリヌクレオチドについてフザリウム(Fusarium)株をスクリーニングし得る。本発明に従ったポリヌクレオチドと相同的な転写物が検出されたら、当業者に良く知られている標準技術を使用して、適切な株から単離されたRNAからcDNAライブラリーを構築し得る。代案としては、本発明に従ったポリヌクレオチドとハイブリダイズできるプローブを使用して、全ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングし得る。
【0126】
相同遺伝子配列は、例えば本明細書で教示されるヌクレオチド配列に基づいてデザインされた2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマープールを使用して、PCRを実施することによって単離し得る。
【0127】
反応のためのテンプレートは、本発明に従ったポリヌクレオチドを発現することが知られている、または疑われる株から調製されたmRNAの逆転写によって得られるcDNAであり得る。PCR産物をサブクローンして配列決定し、増幅された配列が本発明に従った新しい核酸配列、またはその機能的同等物の配列に相当することを確証し得る。
【0128】
次にPCR断片を使用して、多様な既知の方法によって全長cDNAクローンを単離し得る。例えば増幅された断片を標識して使用し、バクテリオファージまたはコスミドcDNAライブラリーをスクリーニングし得る。代案としては、標識断片を使用してゲノムライブラリをスクリーニングし得る。
【0129】
PCR技術はまた、別の生物からの全長cDNA配列を単離するのにも使用し得る。例えば標準操作手順に続いて、適切な細胞または組織原料からRNAが単離され得る。第一鎖合成のプライミングのために、増幅された断片のほとんどの5’末端に対して特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、逆転写反応をRNA上で実施し得る。
【0130】
次に標準末端トランスフェラーゼ反応を使用して、得られたRNA/DNAハイブリッドに(例えばグアニンで)「tail付加」し得て、ハイブリッドをRNase Hで消化し得て、次に第二鎖合成を(例えばポリ−Cプライマーによって)プライムし得る。したがって増幅された断片の上流のcDNA配列は、容易に単離し得る。有用なクローニング戦略のレビューについては、例えばSambrook et al.,前出;およびAusubel et al.,前出を参照されたい。
【0131】
[ベクター]
本発明の別の態様は、脂肪分解活性を有するポリペプチドをコードする本発明に従ったポリヌクレオチド配列を含んでなる、クローニングおよび発現ベクターをはじめとするベクター、または本発明に従ったその機能的同等物に関する。本発明はまた、例えば本発明のポリペプチドの発現が起きる条件下で、このようなベクターを適切な宿主細胞内で成長させ、それに形質転換または形質移入する方法に関する。本明細書での用法では、「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送できる核酸分子を指す。
【0132】
本発明のポリヌクレオチドは、例えばクローニングまたは発現ベクターなどの組み換え複製可能なベクター中に組込み得る。ベクターを使用して、適合性宿主細胞内で核酸を複製してもよい。したがって本発明のさらなる実施態様は、本発明のポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入し、ベクターを適合性宿主細胞に導入して、ベクターの複製をもたらす条件下で宿主細胞を成長させることで、本発明のポリヌクレオチドを生成する方法を提供する。ベクターを宿主細胞から回収してもよい。適切な宿主細胞については下で述べる。
【0133】
その中に発現カセットまたは本発明のポリヌクレオチドが挿入されるベクターは、好都合には組み換えDNA処置の対象であってもよいあらゆるベクターであってもよく、ベクターの選択は、それが導入される宿主細胞に依存することが多い。
【0134】
本発明に従ったベクターは、自己複製ベクター、すなわち例えばプラスミドなど、その複製が染色体の複製から独立している染色体外の実体として存在するベクターであってもよい。代案としてはベクターは、宿主細胞に導入され、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。
【0135】
ベクターの1タイプは「プラスミド」であり、それはその中に追加的DNAセグメントをライゲートし得る環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウィルスベクターであり、その中ではウィルス性ゲノムに追加的DNAセグメントをライゲートし得る。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自律複製できる(例えば細菌複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに特定のベクターは、それらが作動可能なように結合する遺伝子に対して発現を誘導できる。このようなベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。一般に組み換えDNA技術中で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは通常ベクターの形態で使用されることから、「プラスミド」および「ベクター」という用語は、本明細書で同義的に使用され得る。しかし本発明は、同等機能を果たすコスミド、ウィルスベクター(例えば複製欠損レトロウィルス、アデノウィルス、およびアデノ随伴ウィルス)、およびファージベクターなどの別の形態の発現ベクターを含むことが意図される。
【0136】
本発明に従ったベクターは、例えばRNA生成のために生体外で使用してもよく、または宿主細胞を形質転換するために使用してもよい。
【0137】
本発明のベクターは、例えば過剰発現のために、2つ以上の、例えば3、4または5つの本発明のポリヌクレオチドを含んでなってもよい。
【0138】
本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞内における核酸の発現に適した形態で本発明の核酸を含んでなり、それは組み換え発現ベクターが、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択される1つ以上の制御配列を含み、それが発現される核酸配列と作動的に連結することを意味する。
【0139】
組み換え発現ベクター内で「作動的に連結する」とは、関心のあるヌクレオチド配列が(例えば生体外転写/翻訳系で、またはベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞内で)、ヌクレオチド配列を発現できるような様式で制御配列に結合していることを意味することが意図され、すなわち「作動的に連結する」という用語は、記載される構成要素がそれらの意図される様式で機能できるような関係にある並置を指す。コード配列と「作動的に連結する」プロモーター、エンハンサーまたはその他の発現調節シグナルなどの制御配列は、制御配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるような様式で配置され、または配列は、それらの意図される目的のために協力して機能するように配列され、例えば転写はプロモーターで開始して、ポリペプチドをコードするDNA配列を通じて進行する。
【0140】
「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、およびその他の発現制御要素(例えばポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような制御配列については、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載される。
【0141】
制御配列という用語は、各種宿主細胞中でヌクレオチド配列の構成的発現を誘導する配列と、特定の宿主細胞(例えば組織特異的制御配列)中でのみヌクレオチド配列の発現を誘導する配列を含む。
【0142】
したがって所定の宿主細胞のためのベクターまたは発現コンストラクトは、第1の発明のポリペプチドをコードする配列のコード鎖に対して、5’末端から3’末端への連続した順序で互いに作動的に連結する以下の要素を含んでなってもよい。(1)特定の宿主細胞中でポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の転写を誘導できるプロモーター配列;(2)任意に培地内に特定の宿主細胞からのポリペプチド分泌を誘導できるシグナル配列;(3)本発明に従った脂肪分解活性を有する成熟した好ましくは活性形態のポリペプチドをコードする本発明のDNA配列;および好ましくはまた(4)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列下流の転写を終結できる転写終結領域(ターミネーター)。
【0143】
本発明に従ったヌクレオチド配列の下流には、1つ以上の転写終結部位(すなわちターミネーター)を含有する3’非翻訳領域があってもよい。ターミネーターの起源はそれほど重要でない。ターミネーターは、例えばポリペプチドをコードするDNA配列に天然であり得る。しかし好ましくは酵母宿主細胞中では酵母ターミネーターが、糸状菌宿主細胞中では糸状菌ターミネーターが使用される。より好ましくはターミネーターは、(その中でポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が発現される)宿主細胞に内在性である。転写された領域中では、翻訳のためのリボソーム結合部位が存在してもよい。コンストラクトによって発現される成熟転写物のコーディング部分は、先頭に翻訳開始AUGを含み、終止コドンが翻訳されるポリペプチドの終わりに適切に配置される。
【0144】
本発明のポリヌクレオチドの増強された発現は、発現宿主からの関心のあるタンパク質の発現と、所望ならば分泌レベルを増大させ、および/または本発明のポリペプチド発現の誘導性制御を提供する役割を果たしてもよい異種性調節領域、例えばプロモーター、分泌リーダーおよび/またはターミネーター領域などの選択によって達成されてもよい。
【0145】
発現ベクターのデザインが、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどのような要素に依存し得ることは、当業者によって理解されるであろう。本発明の発現ベクターは宿主細胞に導入され得て、それによって本明細書に記載されるような核酸によってコードされるタンパク質またはペプチド(例えば本発明に従った脂肪分解活性を有するポリペプチド、ポリペプチド突然変異型、断片、変異体またはその機能的同等物、融合タンパク質など)が生成される。
【0146】
本発明の組み換え発現ベクターは、原核生物または真核細胞中における本発明に従ったポリペプチドの発現のためにデザインし得る。例えば本発明に従ったポリペプチドは、大腸菌(E.coli)および桿菌などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウィルス発現ベクターを使用)、真菌細胞、酵母細胞または哺乳類細胞中で生成され得る。適切な宿主細胞については、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)でさらに詳しく考察される。代案としては、組み換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼを使用して、生体外で転写され翻訳され得る。
【0147】
ほとんどの糸状菌および酵母では、安定した形質転換体を得るために、好ましくはベクターまたは発現コンストラクトは宿主細胞のゲノムに組み込まれる。しかし特定の酵母では、安定した高レベル発現のためにその中に発現コンストラクトを組込み得る適切なエピソームベクターもまた利用でき、その例としては、それぞれサッカロミセス(Saccharomyces)およびクリヴェロミセス(Kluyveromyces)の2μおよびpKD1プラスミドに由来するベクター、またはAMA配列(例えばアスペルギルス(Aspergillus)からのAMA1)を含有するベクターが挙げられる。発現コンストラクトが宿主細胞のゲノムに組み込まれる場合、コンストラクトは、ゲノム中の無作為な遺伝子座に組み込まれるか、または相同的組換えを使用して所定の標的遺伝子座に組み込まれるかのどちらかであり、その場合、標的遺伝子座は好ましくは高度に発現される遺伝子を含んでなる。
【0148】
したがって本発明で有用な発現ベクターとしては、例えば細菌プラスミドと、バクテリオファージと、酵母エピソームと、酵母染色体要素と、バキュロウィルス、パポバウィルス、ワクシニアウィルス、アデノウィルス、鶏痘ウィルス、仮性狂犬病ウィルス、およびレトロウィルスなどのウィルスに由来するベクターなどの染色体由来、エピソーム由来、およびウィルス由来ベクター、そしてコスミドやファージミドなどのプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝要素に由来するものなどのそれらの組み合わせに由来するベクターが挙げられる。
【0149】
ヌクレオチド挿入断片は、適切なプロモーターと作動可能に結合しなくてはならない。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子に天然のプロモーターの他に、別のプロモーターを使用して本発明のポリペプチドの発現を誘導してもよい。プロモーターは、所望の発現宿主中で本発明のポリペプチドの発現を誘導するその効率について選択されてもよい。本発明で有用かもしれないプロモーターの例としては、ファージλPLプロモーター、大腸菌(E.coli)lac、trp、およびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、およびレトロウィルスLTRプロモーターが挙げられる。その他の適切なプロモーターについては、当業者に知られている。特定の実施態様では、真菌または酵母中で本発明に従ったポリペプチドの高度発現レベルを誘導できるプロモーターが好ましい。このようなプロモーターは当該技術分野で知られている。
【0150】
本発明の宿主細胞中で転写を誘導できる、多様なプロモーターを使用し得る。好ましくはプロモーター配列は、高度に発現される遺伝子に由来する。それからプロモーターが好ましくは由来し、および/または発現コンストラクトの組み込みのために好ましい所定の標的遺伝子座にそれが含まれる、好ましい高度に発現される遺伝子の例としては、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、グリセルアルデヒド−リン酸脱水素酵素(GAPDH)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ(PYKまたはPKI)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)などの解糖作用酵素をコードする遺伝子、ならびにアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ、キシラナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、βガラクトシダーゼ、アルコール(メタノール)オキシダーゼ、延長因子、およびリボソームタンパク質をコードする遺伝子が挙げられるが、これに限定されるものではない。適切な高度に発現される遺伝子の特定例としては、例えばクリヴェロミセス(Kluyveromyces)種からのLAC4遺伝子、それぞれハンゼヌラ(Hansenula)およびピチア(Pichia)からのメタノールオキシダーゼ遺伝子(AOXおよびMOX)、A.ニガー(A.niger)およびA.アワモリ(A.awamori)からのグルコアミラーゼ(glaA)遺伝子、コウジカビ(A.oryzae)TAKA−アミラーゼ遺伝子、A.ニデュランス(A.nidulans)gpdA遺伝子、およびT.リーセイ(T.reesei)セロビオヒドロラーゼ遺伝子が挙げられる。
【0151】
真菌発現宿主中で使用するのに好ましい強力な構成的および/または誘導性プロモーターの例は、キシラナーゼ(xlnA)、フィターゼ、ATP−シンセターゼ、サブユニット9(oliC)、トリオースリン酸イソメラーゼ(tpi)、アルコールデヒドロゲナーゼ(AdhA)、α−アミラーゼ(amy)、アミログルコシダーゼ(glaA遺伝子からのAG)、アセトアミダーゼ(amdS)、およびグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(gpd)プロモーターの真菌遺伝子から得られるものである。
【0152】
強力な酵母プロモーターの例は、アルコールデヒドロゲナーゼ、ラクターゼ、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、およびトリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子から得られるものである。
【0153】
強力な細菌プロモーターの例は、αアミラーゼおよびSPo2プロモーター、ならびに細胞外プロテアーゼ遺伝子からのプロモーターである。
【0154】
植物細胞に適したプロモーターとしては、ノパリンシンターゼ(nos)、オクトピンシンターゼ(ocs)、マンノピンシンターゼ(mas)、リブロース小サブユニット(rubisco ssu)、ヒストン、イネアクチン、ファゼオリン、カリフラワーモザイクウィルス(CMV)35Sおよび19S、およびサーコウィルスプロモーターが挙げられる。
【0155】
上述のプロモーターは全て当該技術分野で容易に入手できる。
【0156】
ベクターは、ポリヌクレオチドの側面にあって、真核生物ゲノム配列またはウィルスゲノム配列に相同的な配列を含んでなるRNAを生じる配列をさらに含んでもよい。これは宿主細胞ゲノムへの本発明のポリヌクレオチドの導入を可能にする。
【0157】
ベクターは、アンチセンス方向に配向する本発明のポリヌクレオチドを含有して、アンチセンスRNA生成を提供してもよい。
【0158】
ベクターDNAは、従来の形質転換または形質移入技術を通じて原核生物または真核細胞中に導入され得る。本明細書での用法では、「形質転換」および「形質移入」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン−媒介形質移入、形質導入、感染、リポフェクション、カチオン性脂質媒介形質移入または電気穿孔をはじめとする、外来性核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入するための当業者に認識された多様な技術を指すことを意図する。宿主細胞を形質転換するまたは形質移入する適切な方法については、Sambrook,et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd,ed.Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY, 1989),Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology(1986)、およびその他の実験手引き書に記載される。
【0159】
哺乳類細胞の安定した形質移入のためには、使用される発現ベクターおよび形質移入技術次第で、細胞のほんの一部のみが、それらのゲノムに外来性DNAを組み込むかもしれないことが知られている。これらの組み込み体を同定し選択するために、一般に、関心のある遺伝子と共に、選択可能なマーカー(例えば抗生物質耐性)をコードする遺伝子が宿主細胞に導入される。好ましい選択可能なマーカーとしては、薬剤耐性をもたらすものまたは宿主細胞中の欠陥を補うものが挙げられるが、これに限定されるものではない。それらとしては、例えばほとんどの糸状菌および酵母の形質転換のために使用し得る、アセトアミダーゼ遺伝子またはcDNA(A.ニデュランス(A.nidulans)、コウジカビ(A.oryzae)またはA.ニガー(A.niger)からのamdS、niaD、facA遺伝子またはcDNA)、またはG418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、メトトレキサート、フレオマイシンまたはベノミル耐性(benA)などの抗生物質耐性を提供する遺伝子などの用途の広いマーカー遺伝子が挙げられる。代案としては、例えばURA3(S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)からのまたはその他の酵母からの類似遺伝子)、pyrGまたはpyrA(A.ニデュランス(A.nidulans)またはA.ニガー(A.niger)から)、argB(A.ニデュランス(A.nidulans)またはA.ニガー(A.niger)から)またはtrpCなど、対応する変異体宿主株を必要とする栄養要求性マーカーなどの特異的選択マーカーを使用し得る。好ましい実施態様では、選択マーカー遺伝子を含まないポリペプチドを生成できる形質転換宿主細胞を得るように、発現コンストラクトの導入後に選択マーカーを形質転換宿主細胞から除去する。
【0160】
その他のマーカーとしては、ATPシンセターゼ、サブユニット9(oliC)、オロチジン−5’−リン酸塩含有カルボキシラーゼ(pvrA)、細菌G418耐性遺伝子(これはまた酵母で使用してもよいが真菌では使用できない)、アンピシリン耐性遺伝子(大腸菌(E.coli))、ネオマイシン耐性遺伝子(バチルス(Bacillus))、およびβ−グルクロニダーゼ(GUS)をコードする大腸菌(E.coli)uidA遺伝子が挙げられる。ベクターは例えばRNAを生成するために生体外で使用してもよく、または宿主細胞を形質移入または形質転換するために使用してもよい。
【0161】
原核生物中のタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質のどちらかを発現を誘導する構成的または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて、大腸菌(E.coli)中で実施されることが多い。融合ベクターは、例えば組み換えタンパク質のアミノ末端など、その中でコードされるタンパク質にいくつかのアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、典型的に3つの目的の役割を果たす。1)組み換えタンパク質の発現を増大させる;2)組み換えタンパク質の溶解度を増大させる;3)親和性精製中でリガンドとして機能することで組み換えタンパク質の精製を助ける。融合発現ベクター中では、融合タンパク質の精製に引き続いて、組み換えタンパク質を融合部分から分離できるように、融合部分と組み換えタンパク質の接合部にタンパク質分解切断部位が導入されることが多い。
【0162】
示されたように、発現ベクターは、好ましくは選択可能なマーカーを含有する。このようなマーカーとしては、真核細胞培養ではジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、そして大腸菌(E.coli)およびその他の細菌の培養では、テトラサイクリンまたはアンピシリン耐性が挙げられる。適切な宿主の代表的な例としては、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス(Streptomyces)ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、および特定のバチルス(Bacillus)種などの細菌細胞;例えばA.ニガー(A.niger)やコウジカビ(A.oryzae)やA.ニデュランス(A.nidulans)のようなアスペルギルス(Aspergillus)種、そして例えばK.ラクチス(K.lactis)などのクリヴェロミセス(Kluyveromyces)および/または例えばP.パストリス(P.pastoris)などのピチア(Puchia)のような酵母などの真菌細胞;ショウジョウバエ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9などの昆虫細胞;CHO、COS、およびBowes黒色腫などの動物細胞;および植物細胞が挙げられる。上記の宿主細胞のための適切な培地および条件については、当該技術分野で知られている。
【0163】
細菌中で使用するのに好ましいベクターは、例えば本明細書に参照として援用する国際公開第A1−2004/074468号パンフレットで開示される。その他の適切なベクターについては、当業者には容易に分かる。
【0164】
本発明で使用するのに適した既知の細菌プロモーターとしては、本明細書に参照として援用する国際公開第A1−2004/074468号パンフレットで開示されるプロモーターが挙げられる。
【0165】
高等真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクター中へのエンハンサー配列の挿入によって増大されてもよい。エンハンサーは、通常約10〜300bpのDNAのシス作用エレメントであり、それは特定の宿主細胞タイプでプロモーターの転写活性を増大させるように機能する。エンハンサーの例としては、複製起点後期側のbp100〜270に位置するSV40エンハンサーと、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサーと、複製起点後期側にあるポリオーマエンハンサーと、アデノウィルスエンハンサーとが挙げられる。
【0166】
小胞体内腔、細胞膜周辺腔、または細胞外環境への翻訳タンパク質分泌のために、発現される遺伝子に適切な分泌シグナルを組み込んでもよい。シグナルはポリペプチドに内在性であってもよく、またはそれらは異種性シグナルであってもよい。
【0167】
本発明に従ったポリペプチドは、融合タンパク質などの修飾形態で生成されてもよく、分泌シグナルだけでなく追加的な異種性機能的領域もまた含んでもよい。したがって例えば、追加的なアミノ酸、特に荷電アミノ酸領域をポリペプチドのN末端に付加して、精製中または引き続く取り扱いと保存中に、宿主細胞中における安定性および持続性を改善してもよい。またポリペプチドにペプチド部分を付加して、精製を容易にしてもよい。
【0168】
[発明に従ったポリペプチド]
本発明は、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%相同的なアミノ酸配列を有するまたはその機能的同等物;
(b)本発明に従ったポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
を含んでなる脂肪分解活性を有する単離ポリペプチドを提供する。
【0169】
したがって本発明は、配列番号2に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドを含んでなり、好ましくは配列番号2のアミノ酸34〜304を含んでなる脂肪分解活性を有する単離ポリペプチド、および適切な宿主中で配列番号1のポリヌクレオチドを発現することで得られるアミノ酸配列を提供する。また機能的同等物であり、配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%相同的である、ペプチドまたはポリペプチドもまた本発明に含まれる。
【0170】
別の実施態様では本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドと機能的同等物である脂肪分解活性を有する単離ポリペプチドにも関し、それは前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%相同的である。
【0171】
上記ポリペプチドは、「本発明に従ったポリペプチド」という用語に集合的に含まれる。
【0172】
「ペプチド」および「オリゴペプチド」という用語は、(一般に認識されるように)同義と見なされ、各用語はペプチジル結合でカップリングされた少なくとも2つのアミノ酸鎖を示すために文脈に応じて同義的に使用し得る。「ポリペプチド」(またはタンパク質)という用語は、本明細書で7個を超えるアミノ酸残基を含有する鎖について使用される。全てのオリゴペプチドおよびポリペプチドの化学式または配列は、本明細書ではアミノ末端からカルボキシ末端に向けて左から右に記述される。本明細書で使用されるアミノ酸の一文字コードは、一般に当該技術分野で知られており、Sambrook,et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd,ed.Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)にある。
【0173】
「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質であることが意図される。例えば宿主細胞中で生成された組換え的に生成されたポリペプチドおよびタンパク質は、本発明の目的のために単離されたと見なされ、例えばSmith and Johnson,Gene 67:31−40(1988)で開示されるシングルステップ純化法などのあらゆる適切な技術によって実質的に精製された、天然または組み換えポリペプチドについても同様である。
【0174】
当業者には知られているように、成熟中のプロセッシングエラーのために、配列番号2のN末端、または配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドのN末端は不均一かもしれず、ならびに配列番号2のC末端または配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドのC末端についても同様である。特にこのようなプロセッシングエラーは、ポリペプチドの過剰発現に際して起きるかもしれない。さらにエキソプロテアーゼ活性は、不均一性を引き起こすかもしれない。不均一性が起きる程度は、使用される宿主および発酵プロトコルにもまた左右される。このようなC末端プロセッシングアーチファクトは、配列番号2で、または配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドで示されるように、より短いポリペプチドまたはより長いポリペプチドをもたらすかもしれない。このようなエラーの結果として、N末端もまた不均一かもしれない。
【0175】
さらなる実施態様では、本発明は、配列番号2に記載のポリペプチドの少なくとも1つの機能ドメインをコードする、または追加的残基を含有して、位置1、または2、または3などで開始する、配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドの少なくとも1つの機能ドメインをコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供する。代案としては、それは特定の残基を欠如しており、結果として位置2、または3、または4などで開始するかもしれない。また追加的残基が、例えば位置347、348などのC末端に存在してもよい。代案としては、C末端には特定の残基が欠如しており、結果として位置345または344で終わるかもしれない。
【0176】
本発明に従った脂肪分解酵素は、当該技術分野で知られている方法によって組み換え細胞培養物から回収して精製し得る(Protein Purification Protocols,Methods in Molecular Biology series by Paul Cutler,Humana Press,2004)。
【0177】
本発明のポリペプチドは、自然に精製された産物、化学合成手順の産物、および例えば細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳類細胞をはじめとする原核生物または真核生物の宿主から組み換え技術によって生成された産物を含む。組み換え生産手順で用いられる宿主に応じて、本発明のポリペプチドは、グリコシル化されてもまたはグリコシル化されなくてもよい。さらに本発明のポリペプチドは、場合によっては宿主媒介プロセスの結果として、修飾された開始メチオニン残基もまた含む。
【0178】
[ポリペプチド断片]
本発明はまた、本発明に従ったポリペプチドの生物学的活性断片を特徴とする。
【0179】
本発明のポリペプチドの生物学的活性断片は、本発明に従ったタンパク質のアミノ酸配列と十分に同一であり、またはそれに由来する、アミノ酸配列を含んでなるポリペプチド(例えば配列番号2のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチド)を含み、それは全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含むが、対応する全長タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を示し、好ましくはそれは脂肪分解活性を示す。典型的に、生物学的活性断片は、本発明に従ったタンパク質の少なくとも1つの活性があるドメインまたはモチーフを含んでなる。本発明のタンパク質の生物学的活性断片は、例えば長さが配列番号2に記載の成熟ポリペプチドよりも5、10、15、20、25個のアミノ酸以上短く、配列番号2に記載の成熟ポリペプチドと少なくとも60、70、80または90%の相同性を有するポリペプチドであり得る。さらに組み換え技術によって、その中でタンパク質の別の領域が消去された別の生物学的活性部分を調製し、天然形態の本発明のポリペプチドの生物学的活性の1つ以上について評価し得る。
【0180】
本発明はまた、本発明に従ったタンパク質の上記生物学的活性断片をコードする、核酸断片を特徴とする。
【0181】
[融合タンパク質]
本発明に従ったポリペプチド、または例えばその生物学的活性部分などのその機能的同等物は、本発明に従わないポリペプチド(例えば異種性アミノ酸配列)と作動的に連結して、融合タンパク質を形成し得る。「本発明に従わないポリペプチド」とは、本発明に従ったタンパク質と実質的に相同的でないタンパク質に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。このような「本発明に従わないポリペプチド」は、同一または異なる生物に由来し得る。融合タンパク質内で、本発明に従ったポリペプチドは、本発明に従った脂肪分解酵素の全部または生物学的活性断片に相当し得る。好ましい実施態様では、融合タンパク質は、本発明に従ったタンパク質の少なくとも2つの生物学的活性部分を含んでなる。融合タンパク質内で「作動的に連結する」という用語は、本発明に従ったポリペプチドと本発明に従わないポリペプチドとが、互いにフレーム内融合していることを示すことが意図される。本発明に従わないポリペプチドは、ポリペプチドのN末端またはC末端に融合し得る。
【0182】
例えば一実施態様では、融合タンパク質は、その中でアミノ酸配列がGST配列のC末端に融合している融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、本発明に従った組み換えタンパク質の精製を促進し得る。別の実施態様では、本発明に従った融合タンパク質は、そのN末端に異種性シグナル配列を含有するタンパク質である。特定の宿主細胞(例えば哺乳類および酵母宿主細胞)中では、本発明に従ったタンパク質の発現および/または分泌は、異種性シグナル配列の使用を通じて増大させ得る。
【0183】
別の例では、異種性シグナル配列として、バキュロウィルス外被タンパク質のgp67分泌配列を使用し得る(Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,1992)。真核生物の異種性シグナル配列の別の例としては、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスファターゼ分泌配列が挙げられる(カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla,California)のStratagene;)。さらに別の例では、有用な真核異種性シグナル配列としては、phoA分泌シグナル(Sambrookら、前出)およびタンパク質A分泌シグナル(ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway,New Jersey)のPharmacia Biotech)が挙げられる。
【0184】
シグナル配列を使用して、本発明のタンパク質またはポリペプチドの分泌および単離を促進し得る。シグナル配列は、典型的に疎水性アミノ酸コアによって特徴付けられ、それは一般に分泌中に1つ以上の切断事象において成熟タンパク質から切断される。このようなシグナルペプチドは、それらが分泌経路を通過する間に、成熟タンパク質からシグナル配列を切断できるようにするプロセッシング部位を含有する。シグナル配列は、その中に発現ベクターが形質転換された真核生物の宿主などからのタンパク質の分泌を誘導し、シグナル配列は引き続いてまたは同時に切断される。次にタンパク質は、既知の方法によって細胞外培地から容易に精製され得る。代案としては、GSTドメインなどの配列を使用してシグナル配列を関心のあるタンパク質に結合させ得て、それは精製を容易にする。したがって例えばペプチドをコードする配列などのマーカー配列に、ポリペプチドをコードする配列を融合させてもよく、それは融合ポリペプチドの精製を容易にする。本発明のこの態様の特定の好ましい実施態様では、マーカー配列は特にpQEベクター(Qiagen,Inc.)中で提供されるtagなどのヘキサヒスチジンペプチドであり、それらの多くは市販される。Gentz et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824(1989)に記載されるように、例えばヘキサヒスチジンが融合タンパク質の都合よい精製を提供する。HA tagは精製のために有用な別のペプチドであり、それはインフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに相当し、それについては例えばWilson et al.,Cell 37:767(1984)に記載される。
【0185】
好ましくは、本発明に従った融合タンパク質は、標準組み換えDNA技術によって生成される。例えばライゲーションのための平滑末端または付着末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じて付着末端充填、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを用いて、従来の技術に従って、例えば異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片を共にインフレームでライゲーションする。別の実施態様では、融合遺伝子は、自動化されたDNA合成機をはじめとする従来の技術によって合成し得る。代案としては、2つの連続的遺伝子断片の間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して遺伝子断片のPCR増幅を実施し得て、それを引き続いてアニールし、再増幅して、キメラ遺伝子配列を作成し得る(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel et al.John Wiley & Sons:1992を参照されたい)。さらに融合部分をあらかじめコードする多数の発現ベクターが市販される(例えばGSTポリペプチド)。本発明に従ったポリペプチドをコードする核酸は、融合部分が本発明に従ったタンパク質にインフレーム連結されるように、このような発現ベクター中にクローンし得る。
【0186】
[機能的同等物]
「機能的同等物」および「機能的変異体」という用語は、本明細書で同義的に使用される。
【0187】
本発明に従ったポリヌクレオチドの機能的同等物は、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、好ましくは少なくとも90%の相同性を有して、本発明に従った脂肪分解酵素の少なくとも特定の機能を示すポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド、好ましくは脂肪分解活性を有するポリペプチドである。好ましくは本発明に従った脂肪分解酵素または脂肪分解活性を有するポリペプチドは、製パン用途において、例えば生地条件下で、トリグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質に対する脂肪分解活性を有する。本発明に従ったポリペプチドの機能的同等物は、配列番号2のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、好ましくは少なくとも90%の相同性を有するポリペプチドであり、それは本発明に従った脂肪分解酵素の少なくとも1つの機能を示し、好ましくはそれは脂肪分解活性を示し、より好ましくはそれは製パン用途において、例えば生地条件下で、トリグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質に対する脂肪分解活性を示す。言及される機能的同等物はまた、上述のような脂肪分解活性を有する生物学的活性断片もまた包含する。
【0188】
本発明に従ったポリペプチドの機能的同等物は、配列番号2に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸の置換、または酵素の特定の機能性に影響を及ぼさないアミノ酸の置換、挿入または欠失を含有してもよい。したがって機能的中立アミノ酸置換は、その特定の機能性を実質的に改変しない、配列番号2に記載のアミノ酸配列の成熟ポリペプチド中の置換である。例えば本発明のタンパク質中で保存されるアミノ酸残基は、特に改変を容易に受け入れないことが予測される。さらに本発明に従ったタンパク質およびその他の脂肪分解酵素の中で保存されるアミノ酸は、改変を容易に受け入れない可能性が高い。
【0189】
本発明に従ったポリヌクレオチドの機能的同等物は、典型的にサイレント突然変異、またはコードされるポリペプチドの生物学的機能を改変しない突然変異を含有してもよい。したがって本発明は、特定の生物学的活性に必須でないアミノ酸残基の変更を含有する、本発明に従ったポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。このようなタンパク質は配列番号2に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なるが、なおもその少なくとも1つの生物学的活性を保ち、好ましくはそれらは脂肪分解活性を保つ。一実施態様では、本発明に従ったポリヌクレオチドの機能的同等物は、本発明に従ったポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなり、ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドと実質的に少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%相同的で、好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上相同的なアミノ酸配列を含んでなる。一実施態様では、それと少なくとも90%の相同性を有する、配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドの機能的同等物は、配列番号4に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドに従ったアミノ酸配列を有するポリペプチドであり(以下、L02で示す)、別の実施態様では、それは配列番号6に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドに従ったアミノ酸配列を有するポリペプチドであり(以下、L03で示す)、さらに別の実施態様では、それは配列番号8に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドに従ったアミノ酸配列を有するポリペプチドである(以下、L04で示す)。好ましい実施態様では、配列番号4に記載のアミノ酸、配列番号6または配列番号8にそれぞれ由来する成熟ポリペプチドは、配列番号4、配列番号6または配列番号8にそれぞれ記載のアミノ酸中のアミノ酸配列34〜304である。
【0190】
本発明に従ったポリペプチドをコードする本発明に従ったポリヌクレオチドの機能的同等物は、配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上相同的なポリヌクレオチド配列を含んでなる。
【0191】
一実施態様では、それと少なくとも90%の相同性を有する、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの機能的同等物は、配列番号3に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであり(DNA L02で示す)、別の実施態様ではそれは配列番号5に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであり(DNA L03で示す)、さらに別の実施態様ではそれは配列番号7に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドである(DNA L04で示す)。配列番号3に記載のポリヌクレオチド配列は配列番号4に記載のポリペプチドをコードし、配列番号5に記載のポリヌクレオチド配列は、配列番号6に記載のポリペプチドをコードし、配列番号7に記載のポリヌクレオチド配列は、配列番号8に記載のポリペプチドをコードする。好ましい実施態様では、配列番号3、5、7に記載のポリヌクレオチド100〜912は、それぞれ配列番号4、6、8に記載の成熟ポリペプチドをコードする。
【0192】
配列番号2に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドに相同的なタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドは、コードされるタンパク質中に1つ以上のアミノ酸置換、欠失または挿入が導入されるように、配列番号1に記載のコードヌクレオチド配列中に1つ以上のヌクレオチド置換、付加または欠失を導入することで作り出し得る。このような突然変異は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などの標準技術によって導入されてもよい。
【0193】
脂肪分解活性を有するその他のファミリーメンバーをコードし、したがって配列番号1、3、5、7とは異なるヌクレオチド配列を有し、上述の条件を満たす核酸は、本発明の範囲内である。さらに脂肪分解活性を有するタンパク質をコードして、配列番号2、4、6、8のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有し、上述の条件を満たす核酸は、本発明の範囲内である。
【0194】
本発明に従ったポリヌクレオチドは、好ましくは国際公開第2006/077258号パンフレットおよび/または国際公開第2008/000632号パンフレットに記載される方法に従ってそれらのコドン使用が最適化されてもよい。国際公開第2008/000632号パンフレットは、コドンペア最適化に対処する。コドンペア最適化は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、コドン使用頻度、特に使用されるそれらのコドンペアに関して修正され、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の改善された発現、および/またはコードされるポリペプチドの改善された生成が得られる方法である。コドンペアは、コード配列中の2つの続く三つ組(コドン)と定義される。
【0195】
本発明に従ったポリヌクレオチドの変異体(例えば天然の対立遺伝子変異体)および相同体に相当する核酸分子は、好ましくは高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標準ハイブリダイゼーション技術に従って、本明細書で開示されるcDNAまたはその適切な断片をハイブリダイゼーションプローブとして使用して、本明細書で開示される核酸とのそれらの相同性に基づいて単離され得る。
【0196】
本発明の別の態様では、改善されたタンパク質が提供される。改善されたタンパク質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性と比較すれば、少なくとも1つの生物学的活性が改善されたタンパク質である。このようなタンパク質は、飽和変異誘発などによって、配列番号1のコード配列の全部または一部に沿って突然変異を無作為に導入することで得られてもよく、得られた突然変異体を組み換え的に発現させて生物学的活性についてスクリーニングし得る。例えば脂肪分解酵素の酵素活性を測定するための標準アッセイ、ひいては改善されたタンパク質を提供する技術は、容易に選択される。
【0197】
好ましい実施態様では、本発明に従ったポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸34〜304に従ったアミノ酸配列を有する。別の実施態様では、ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドと少なくとも90%相同的であり、配列番号2に記載のアミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を保ち、好ましくはそれは脂肪分解活性を保ち、より好ましくは製パン用途において、例えば生地状態でトリグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質に対する脂肪分解活性を保ちながら、上述のような自然変動または変異誘発のためになおもアミノ酸配列が異なる。
【0198】
さらなる好ましい実施態様では、本発明に従ったタンパク質は、配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズする単離された核酸断片によってコードされるアミノ酸配列を有し、前記ヌクレオチド配列は、好ましくは高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%相同的である。
【0199】
したがって本発明に従ったタンパク質は、好ましくは配列番号2に記載の2アミノ酸配列に由来する成熟ポリペプチドと、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上相同的であって、配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドの少なくとも1つの機能活性を保つアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、好ましくはそれは脂肪分解活性を保ち、より好ましくは、製パン用途において例えば生地状態で、トリグリセリド、リン脂質、およびガラクト脂質に対する脂肪分解活性を保つ。
【0200】
本発明に従ったタンパク質の機能的同等物はまた、例えば脂肪分解酵素活性について、本発明のタンパク質の変異体、例えばトランケーション変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることで同定し得る。一実施態様では、変異体の多様化ライブラリーは、核酸レベルでのコンビナトリアル変異誘発によって作成される。変異体の多様化ライブラリーは、例えば可能なタンパク質配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、または代案としては(例えばファージディスプレイのために)より大きな融合タンパク質のセットとして発現可能であるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的にライゲートして遺伝子配列にすることで生成し得る。縮重オリゴヌクレオチド配列から、本発明のポリペプチドの可能な変異体ライブラリーを生成するために使用し得る多様な方法がある。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法については、当該技術分野で知られている(例えばNarang(1983)Tetrahedron 39:3;Itakura et al.(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura et al.(1984)Science 198:1056;Ike et al.(1983)Nucleic Acid Res.11:477を参照されたい)。
【0201】
さらに引き続く変異体選択をスクリーニングするために、本発明のポリペプチドコード配列断片のライブラリーを使用して、ポリペプチド多様化集団を作成し得る。例えば分子あたりほぼ1回だけニッキングが起きる条件下において、関心のあるコード配列の二本鎖PCR断片をヌクレアーゼ処理して二本鎖DNAを変性させ、DNAを復元して異なるニック生成物からのセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖のDNAを形成させて、S1ヌクレアーゼ処理によって再編成された二本鎖から一本鎖部分を除去し、得られた断片ライブラリーをライゲートして発現ベクターにすることで、コード配列断片のライブラリーを作成し得る。この方法によって、様々なサイズの関心のあるタンパク質のN末端および内部断片をコードする、発現ライブラリーを誘導し得る。
【0202】
トランケーションの点突然変異によって作成されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、そして選択される特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術が、当該技術分野で知られている。より大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするためのハイスループット分析にふさわしい最も広く使用されている技術は、典型的に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングするステップと、適切な細胞を得られたベクターライブラリーで形質転換するステップと、所望の活性の検出が、その生成物が検出される遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現するステップを含む。ライブラリー中機能性変異体の頻度を向上させる技術である再帰アンサンブル変異誘発(REM)をスクリーニングアッセイと組み合わせて使用して、本発明のタンパク質の変異体を同定し得る(Arkin and Yourvan(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815;Delgrave et al.(1993)Protein Engineering 6(3):327−331)。
【0203】
本発明に従ったポリヌクレオチドの断片はまた、機能性ポリペプチドをコードしないポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなポリヌクレオチドは、PCR反応のためのプローブまたはプライマーとして機能してもよい。
【0204】
本発明に従った核酸は、それらが機能性または非機能性ポリペプチドをコードするかどうかに関わりなく、ハイブリダイゼーションプローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして使用し得る。本発明に従った脂肪分解活性を有するポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の用途としては、(1)タンパク質をコードする遺伝子、またはその対立遺伝子変異体をcDNAライブラリーから単離する;(2)Verma et al.,Human Chromosomes:a Manual of Basic Techniques,Pergamon Press,New York(1988)に記載されるような、遺伝子の正確な染色体位置を提供するための分裂中期染色体スプレッドのための原位置ハイブリダイゼーション(例えばFISH);(3)特定組織および/または細胞中でmRNAの発現を検出するためのノーザンブロット法分析、および4)特定の生物学的(例えば組織)サンプル中で、プローブとハイブリッドできる核酸の存在を分析するための診断ツールとして使用し得るプローブおよびプライマーが挙げられる。
【0205】
本発明に従った遺伝子の機能的同等物を得る方法もまた、本発明に包含される。このような方法は、配列番号2に記載のアミノ酸配列がある成熟ポリペプチドに従ったタンパク質配列、またはそれらのいずれかの変異体の全部または一部をコードする単離された核酸を含む標識されたプローブを得るステップと;プローブがライブラリー中の核酸断片にハイブリダイゼーションできるようにする条件下で、核酸断片ライブラリーを標識プローブでスクリーニングすることにより、核酸二本鎖を形成して、あらゆる標識二本鎖中の核酸断片から全長遺伝子配列を調製して、本発明に従った遺伝子に関連した遺伝子を得るステップを要する。
【0206】
[宿主細胞]
別の実施態様では、本発明は、例えば本発明に従ったポリヌクレオチドを含んでなる、または本発明に従ったベクターを含んでなる、形質転換宿主細胞または組み換え宿主細胞などの細胞を特徴とする。
【0207】
「形質転換細胞」または「組み換え細胞」は、組み換えDNA技術の手段によって、その中に(またはその祖先中に)本発明に従った核酸が導入された細胞である。例えば細菌、真菌、酵母などの原核細胞と真核細胞の双方が含まれる。宿主細胞としてはまた、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38、および脈絡叢細胞系などの哺乳類細胞系が挙げられるが、これに限定されるものではない。哺乳類細胞の安定した形質移入に適したいくつかのベクターは、一般に入手でき、のような細胞系を構築する方法もまた、例えばAusubel et al.(前出)などのように一般に知られている。特に好ましいのは、糸状菌、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはコウジカビ(Aspergillus oryzae)またはアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)などのアスペルギルス(Aspergillus)種からの細胞である。
【0208】
挿入配列の発現を調節し、または遺伝子産物を特有の所望の様式で修飾して加工する宿主細胞を選択し得る。このようなタンパク質生成物の修飾(例えばグリコシル化)およびプロセッシング(例えば切断)は、タンパク質の最適機能化を促進してもよい。
【0209】
様々な宿主細胞が、タンパク質と遺伝子産物の翻訳後プロセシングと修飾のための特徴的で特異的な機序を有する。分子生物学および/または微生物学の当業者に良く知られている適切な細胞系または宿主系を選択して、外来性タンパク質生成物の所望の正確な修飾とプロセシングを確実にし得る。この目的を達成するために、遺伝子産物の一次転写産物、グリコシル化、およびリン酸化の適切なプロセッシングのための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を使用し得る。このような宿主細胞については、当該技術分野で良く知られている。
【0210】
所望ならば、本発明に従ったポリペプチドの調製において上述のような細胞を使用してもよい。このような方法は、典型的に、ポリペプチドをコードするコード配列の(ベクターによる)発現を提供する条件下で、(例えば上述のような発現ベクターで形質転換または形質移入された)組み換え宿主細胞を培養するステップと、任意に生成ポリペプチドを細胞または培地から回収し、より好ましくは回収して精製するステップを含んでなる。本発明のポリヌクレオチドは、例えば発現ベクターなどの組み換え複製可能なベクターに組み込み得る。ベクターを使用して、適合性宿主細胞中で核酸を複製してもよい。したがってさらなる実施態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入して、ベクターを適合性宿主細胞に導入し、ベクターの複製をもたらす条件下で宿主細胞を成長させることにより、本発明のポリヌクレオチドを生成する方法を提供する。ベクターを宿主細胞から回収してもよい。
【0211】
好ましくはポリペプチド分泌タンパク質はとして生成され、その場合、発現コンストラクト中の成熟形態のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列と作動的に連結する。好ましくはシグナル配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に天然(同種)である。代案としてはシグナル配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に外来性(異種性)であり、その場合、シグナル配列は、好ましくはその中で本発明に従ったヌクレオチド配列が発現される宿主細胞に内在性である。酵母宿主細胞のための適切なシグナル配列の例は、酵母a因子遺伝子に由来するシグナル配列である。同様に糸状菌宿主細胞のための適切なシグナル配列は、例えばA.ニガー(A.niger)glaA遺伝子などの糸状菌アミログルコシダーゼ(AG)遺伝子に由来するシグナル配列である。これはアミログルコシダーゼ((グルコ)アミラーゼとも称される)プロモーターそれ自体と組み合わせて、ならびにその他のプロモーターと組み合わせて使用されてもよい。ハイブリッドシグナル配列もまた、本発明の文脈で使用されてもよい。
【0212】
好ましい異種性分泌リーダー配列は、真菌アミログルコシダーゼ(AG)遺伝子(例えばアスペルギルス(Aspergillus)からのglaA−18および24アミノ酸双方のバージョン)、α因子遺伝子(例えばサッカロミセス(Saccharomyces)およびクリヴェロミセス(Kluyveromyces)などの酵母)、またはαアミラーゼ遺伝子(バチルス(Bacillus))起源のものである。
【0213】
上述のような適切な宿主細胞中にベクターを形質転換または形質移入して、本発明のポリペプチド発現を提供してもよい。この方法は、ポリペプチドをコードするコード配列のベクターによる発現を提供する条件下において、上述のような発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップを含んでなってもよい。
【0214】
したがって本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換または形質移入された、またはそれを含んでなる宿主細胞を提供する。好ましくはポリヌクレオチドの複製および発現のために、ポリヌクレオチドをベクターに入れる。細胞は前記ベクターに適合するように選択され、例えば原核細胞(例えば細菌)、真菌細胞、酵母細胞または植物細胞であってもよい。
【0215】
その中で本発明のポリペプチドが、例えばデンプン分解、セルロース分解またはヘミセルロース分解酵素を含まないなど、用途を妨げるかもしれない酵素活性を実質的に含まない形態で生成される、異種宿主もまた選択してもよい。これは常態ではこのような酵素を産生しない宿主を選択することで、達成されてもよい。
【0216】
本発明は、ポリペプチドをコードするDNA配列の組み換え発現の手段によって、本発明のポリペプチドを生成する方法を包含する。この目的で、本発明のDNA配列は、適切な相同的または異種宿主細胞内でのポリペプチドの経済的生産を可能にするために、遺伝子増幅および/またはプロモーターや分泌シグナル配列などの発現シグナル交換のために使用し得る。相同的な宿主細胞は、同一種の宿主細胞であり、またはそれはDNA配列がそれから誘導された種と同一種内の変異株である。
【0217】
適切な宿主細胞は、好ましくは細菌などの原核微生物であり、またはより好ましくは例えば酵母または糸状菌などの真菌、または植物細胞などの真核生物である。操作が容易であることから、一般に真菌細胞よりも酵母細胞が好ましい。しかしタンパク質によっては、酵母からの分泌が不良であったり、または場合によっては適切にプロセッシングされない(例えば酵母中での過グリコシル化)。これらの場合、真菌宿主生物を選択すべきである。
【0218】
宿主細胞はポリペプチドを過剰発現してもよく、過剰発現を導く技術は良く知られている。したがって宿主は、コードするポリヌクレオチドの2つ以上のコピーを有してもよい(したがってベクターは2つ以上のコピーを有してもよい)。
【0219】
したがって本発明の一実施態様では、本発明に従った組み換え宿主細胞は、本発明に従ったポリヌクレオチドまたはベクターを発現または過剰発現できる。
【0220】
本発明に従って、本発明のポリペプチドの生成は、本発明の1つ以上のポリヌクレオチドで形質転換された、本発明に従った宿主細胞を従来の栄養発酵培地内で培養することによって達成され得る。
【0221】
本発明に従った組み換え宿主細胞は、当該技術分野で知られている手順を使用して培養されてもよい。プロモーターおよび宿主細胞の各組み合わせで、ポリペプチドをコードするDNA配列の発現に寄与する培養条件が利用できる。所望の細胞密度またはポリペプチド力価に達した後、培養を停止し、既知の手順を使用してポリペプチドを回収する。
【0222】
発酵培地は、炭素源(例えばグルコース、マルトース、糖蜜など)、窒素源(例えば硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウムなど)、有機窒素源(例えば酵母抽出物、麦芽エキス、ペプトンなど)、および無機栄養源(例えばリン酸塩、マグネシウム、カリウム、亜鉛、鉄など)を含有する既知の培地を含んでなり得る。
【0223】
適切な培地の選択は、発現宿主の選択に基づいてもよく、および/または発現コンストラクトの調節要件に基づいてもよい。このような培地は当業者に知られている。培地は、所望ならば、その他の潜在的汚染微生物よりも形質転換発現宿主の利益になる、さらなる構成要素を含有してもよい。
【0224】
発酵は、0.5〜30日の期間にわたって実施し得る。それは適切には例えば約0〜45℃の範囲の温度、および/または例えば約2〜約10のpHにおける、バッチ、連続または流加プロセスであってもよい。好ましい発酵条件は、約20〜約37℃の範囲の温度、および/または約3〜約9のpHである。適切な条件は、通常、発現宿主の選択と、生成されるタンパク質に基づいて選択される。
【0225】
発酵後、必要ならば遠心分離または濾過の手段によって、発酵ブロスから細胞を除去し得る。発酵停止または細胞除去後、次に本発明のポリペプチドを回収し、所望ならば従来の手段によって精製および単離してもよい。
【0226】
本発明を制限するものではない実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。
【0227】
[実施例]
[材料および方法]
[アッセイ]
[脂肪分解活性(DLU)]
[単位定義]
1DLUは、試験条件(pH8.5、37℃)下で1分間あたり1μmolのp−ニトロフェノールを遊離させる酵素量と定義される。
【0228】
[アッセイ]
脂肪分解活性は、色素産生基質パルミチン酸p−ニトロフェニル(pNPP)を用いたアッセイ中で測定した。基質(シグマ(Sigma) N2752)を2−プロパノール(3mg/mL)に溶解した。激しく撹拌しながらこの溶液の3.5mLを滴下して、1%のTriton X−100を含有する46.5mLの100mmol/lのTRIS緩衝液pH8.5に添加した。t=0の時点で、50μLのサンプルを1mLの基質液体と混合した。37℃でのインキュベーション中に、サンプル空試験と比較して、吸光度変化を405nmで測定した。曲線の直線部分の傾斜(ΔOD/時間)を活性尺度として使用する。活性は、DLU(DSMリパーゼ単位)で表される。
【0229】
[リパーゼ活性(PLI)]
[単位定義]
1PLIリパーゼ単位は、中和オリブ油エマルジョンから、37℃およびpH7.5で1分間あたり1μモルの遊離脂肪酸を遊離させる酵素量である。
【0230】
[アッセイ]
酵素インキュベーション中に発生する遊離脂肪酸を水酸化ナトリウムによって7.5の一定pHに滴定する。使用される水酸化ナトリウムの量は、発生する遊離脂肪酸量に、ひいてはリパーゼ活性に正比例する。信頼できるデータを得るために、低酸度オリブ油(シグマカタログ録番号01514)を使用すべきであり、オリブ油エマルジョンは特定の滴径要件を満たすべきである。Ultra Turraxを用いた、50mLのオリブ油と、50mLのポリビニルアルコール溶液(Rhone−Poulenc/ProlaboからのRhodoviol 25/140;カタログ番号20954 295)および25mLの水との混合によって、エマルジョンが得られる。10μmの直径を超える油滴が存在してはならず、小滴の10〜20%は4〜9μmの直径を有するべきであり、小滴の80%は4μm未満の直径を有すべきである。最終インキュベーション混合物は、7.5mLのオリブ油エマルジョン、5.0mLのCaCl溶液((3.675gのCaCl・2HO/250mL)、1.0mLのアルブミン溶液(200g/l)、および11.5mLの水を含有する。測定は、好都合にはpH−statユニット(、デンマーク国コペンハーゲン(Denmark,Copenhagen)のRadiometer)中で実施される。
【0231】
[セルラーゼ活性(CXU)]
[単位定義]
1CXUは、試験条件下で1時間あたり、0.5mgのグルコースに相当する還元糖量を与えるカルボキシメチルセルロース(CMC)量を加水分解する酵素量である。
【0232】
[アッセイ]
形成された還元糖の量は、ジニトロサリチル酸を用いて定量的に判定される。CMC基質は、18gのCMC(NovacelからのBlanose R.110、フランス国パリ(Paris,France))を900mLの水と100mLの酢酸緩衝液pH4.6とに1時間懸濁し、引き続いて粒子状物質を濾過して除くことによって調製される。ジニトロサリチル酸溶液は、次のようにして調製する。(A)13.5gのNaOHペレットを300mLの水に溶解する。(B)8.8gジニトロサリチル酸を60℃で400mLの水に溶解し、400mLの水に溶解した225gの酒石酸ナトリウムカリウムを添加して混合する。(C)次に300mLのNaOH溶液をジニトロサリチル酸/酒石酸ナトリウムカリウム溶液に混合する。(D)2.2gのNaOHペレットと、100mLの水中の10gの100%フェノールとを合わせて溶液を調製し、さらに100mLの水に37.5gのNaHSOを合わせて亜硫酸塩溶液を調製する。ジニトロサリチル酸使用液を調製するために、69mLの溶液(D)と溶液(C)とを混合し、23.2mLのNaHSO溶液を添加する。混合物は調製した5日後に使える状態になる。
【0233】
酵素インキュベーションは、1mLのCMC溶液を1mLのサンプル溶液に添加して37℃で60分間インキュベートすることで実施される。1mLの1mol/LのNaOHを1mLのインキュベーション混合物に添加して、反応を終結する。次に3mLのジニトロサリチル酸使用液を添加して混合し、沸騰水中で5分間加熱し、冷却後、混合物に19mLの水を添加する。最後に分光光度計内で540nmにおける吸光度を測定する。
【0234】
[アミログルコシダーゼ活性(AGI)]
[単位定義]
1アミログルコシダーゼ単位(AGI)は、試験条件下で、1分間あたり1μmolのグルコースを遊離させる酵素量である。
【0235】
[アッセイ]
アミログルコシダーゼ活性を測定するために、以下の試薬を調製した。
【0236】
デンプン基質:1.6gのデンプン(メルク(Merck);カタログ番号1252)を10mLの冷水に懸濁した。引き続いてこれを50mLの沸騰水に注いだ。2分間の沸騰と室温への冷却後、2mLの酢酸緩衝液(2mol/L、pH4.3)を添加した。pHをチェックし、必要ならば4mol/Lの酢酸または4mol/LのNaOHによってpH4.3に調節した。
【0237】
o−アニシジン溶液:660mgのo−ジアニシジン二塩酸塩(シグマB3252)を100mLの水に溶解した。
【0238】
グルコースオキシダーゼ−ペルオキシダーゼ試薬:5000単位のグルコースオキシダーゼ(シグマG6125)および1200単位のペルオキシダーゼ(シグマP8125)を900mLの水に溶解した。連続的に13.8gのリン酸水素二ナトリウム二水和物、6.42gのリン酸水素二ナトリウム一水和物、および6.10gトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを添加して溶解した。100g/Lのリン酸を添加して、溶液のpHを7.0に調節した。体積を水で1000mLにした後、溶液を再度混合した。
【0239】
[呈色試薬]
99部のグルコースオキシダーゼ−ペルオキシダーゼ試薬を1部のo−アニシジン溶液と混合した。
【0240】
アッセイ:2mLのデンプン基質と混合した2mLのサンプルを60℃で15分間インキュベートした。20mLの0.005mol/LのNaOH溶液を添加して反応を停止した。
【0241】
1mLのインキュベートを4mLの呈色試薬と混合して、グルコース含量を測定した。37℃で10分間のインキュベーション後、5mLの5mol/L硫酸を添加して反応を停止させた。吸光度を540nmで測定した。25〜150μg/mLの範囲の標準を用いたグルコース検量線を使用して、グルコース含量を計算した。標準は、呈色試薬により直接着色された。
【0242】
[実施例1]
[発明のリパーゼの生成]
本明細書に提供される配列番号1(DNA L01)、配列番号3(DNAL02)、配列番号5(DNAL03)、配列番号7(DNAL04)のヌクレオチド配列によってコードされる脂肪分解酵素L01、L02、L03、L04は、DNA配列を含有する発現プラスミドを構築し、このようなプラスミドでアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株を形質転換して、A.ニガー(A.niger)株を以下のようにして成長させることで得られた。
【0243】
A.ニガー(A.niger)株の新鮮な胞子(10〜10)を20mLのCSL培地(100mLフラスコ、整流装置)に接種して、34℃および170rpmで20〜24時間培養した。5〜10mLのCSL前培養を100mLのCSM培地(500mLフラスコ、整流装置)に接種した後、株を34℃および170rpmで3〜5日間発酵させた。
【0244】
4℃および5000×gで30分間の発酵ブロスの遠心分離によって、無細胞上清が得られた。無細胞上清を使用時まで−20℃で保存した。任意に上清をGF/Aワットマン(Whatmann)ガラスマイクロファイバーフィルター(150mm径)上でさらに濾過し、より大きな粒子を除去し得る。必要ならば4NのKOHによって上清のpHをpH5に調節し、0.2μm(ボトルトップ)フィルター上で吸引して無菌濾過し、真菌材料を除去する。
【0245】
CSL培地は次からなった(1Lあたりの量):100gのコーンスティープ固形物(ロケット(Roquette))、1gのNaHPO・H0、0.5gのMgSO・7H0、10gのグルコース・HO、および0.25gのBasildon(消泡剤)。成分を純水に溶解して、NaOHまたはHSOでpHをpH5.8に調節した;整流装置および気泡ボール付きの100mLフラスコに20mL発酵ブロスを充填して120℃で20分間滅菌し、その後、室温への冷却後、5000IU/mLペニシリンおよび5mg/mLのストレプトマイシンを含有する200μlの無菌溶液を各フラスコに添加した。
【0246】
CSM培地は次からなった(1Lあたりの量):150gのマルトース・H0、60gのSoytone(ペプトン)、1gのNaHPO・H0、15gのMgSO・7HO、0.08gのTween80、0.02gのBasildon(消泡剤)、20gのMES、1gのL−アルギニン。成分を純水に溶解して、NaOHまたはHSOでpHをpH6.2に調節した;整流装置および気泡ボール付きの500mLフラスコに100mL発酵ブロスを充填して120℃で20分間滅菌し、その後、室温への冷却後、5000IU/mLペニシリンおよび5mg/mLのストレプトマイシンを含有する1mLの無菌溶液を各フラスコに添加した。
【0247】
[実施例2]
[発明の脂肪分解酵素の精製]
実施例1で得られた凍結無細胞上清の解凍後に、上清を4℃で徹底的に遠心分離して、あらゆる固形物を除去した。低分子量の汚染物を除去するために、10kDaカットオフの濾紙を装着したミリポア(Millipore)Labscale TFFシステムを使用して、上清を限外濾過液した。0.5mMのCaClを含む40mL体積の冷100mMリン酸緩衝液pH6.0を用いて、サンプルを3〜5回洗浄した。酵素溶液の最終体積は30mLであり、さらに「限外濾過液」と称される。
【0248】
さらなる精製のために、限外濾過液をモノQアニオン交換カラムに通過させ得る。塩勾配を20カラム体積にわたり1MのNaClに設定した。緩衝液は、70mMのBis−TRISと50mMのTRISの混合物であった。pHを0.1M HClで調整した。意外なことに、リパーゼが導電率35mS/cmで溶出するpH=9で精製を実施した場合に、最良の結果が得られることが察された。
【0249】
サンプルの総タンパク含量は、Bradford法を使用して測定された(The Protein Protocols Handbook,2nd edition,Edited by J.M.Walker,Humana Press Inc,Totowa 2002,p15−21)。
【0250】
[実施例3]
[オランダ型焼きパン(Dutch tin bread)のベーキング実験]
[L01、トリアシルグリセロールリパーゼ、セルラーゼ、およびアミログルコシダーゼを含んでなる組成物の生地およびパン特性に対する効果]
オランダ型焼きパンを次のようにして調製した。3500gの小麦粉(2800gのKolibri+700gのIbis)、小麦粉を基準にして58%w/wの水、80gの圧搾酵母、90gのパン改良剤(35%酵素活性ダイズ粉、30%小麦粉、18%乳清粉末、7%油、10%デキストロースを含んでなる)、70gの塩(NaCl)、40ppmのアスコルビン酸(小麦粉重量基準)、7ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme P500(真菌αアミラーゼ)、20ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および表1に示す様々な酵素またはSSLをDiosnaミキサーで上で、速度1で2分間、速度2で125kWhで、最終生地温度約28℃に混合した。880gの生地片を丸めて34℃および85%の相対湿度で40分間発酵させた。引き続いて生地片を成形して造形し、型に入れて38℃および85%相対湿度(R.H.)で75分間発酵させた。完全に発酵した生地を265℃のオーブンで30分間焼いた。
【0251】
室温への冷却後、自動化パン体積分析器(BVM−3;TexVol Instruments)によってローフ体積を測定した。空試験パンの膨化体積を100%と定義する。さらなる効果は、表2に示すように熟練パン職人により手動で視覚的に評価された。
【0252】
【表1】



【0253】
さらなる酵素:実施例1および2に示すように、脂肪分解酵素L01を得て精製した。精製サンプルの活性は、「材料および方法」で指定されるアッセイを使用して、Bradfordタンパク質1グラムあたりのDLU単位で測定された。
Bakezyme AG800は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に由来するアミログルコシダーゼである。Bakezyme L80000は、リゾプス・オリーゼ(Rhyzopusoryzae)に由来するトリアシルグリセロールリパーゼである。Bakezyme X−Panは、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に由来するセルラーゼである。
【0254】
【表2】



【0255】
実験の第1のセット(実施例1〜4)では、生地およびベイクド製品は上述の通り調製された。
生地および生地から得られたベイクド製品の評価結果を表3に示す。
【0256】
【表3】



【0257】
表3の結果は、本発明に従ったベーキング酵素組成物(実施例3、4)を使用して調製された生地およびパンが、例えば生地伸展性と粘性、パン体積、およびクラム柔らかさなどの生地特性を改善できることを示す。これらの改善は、乳化剤SSL(実施例2)を使用して得られるものに匹敵する。本発明に従ったベーキング組成物を含んでなる生地から得られるベイクド製品の体積は、乳化剤SSLを含有する生地から得られるベイクド製品と比較すると、実際改善された。これらの結果は、本発明に従ったベーキング酵素組成物が、オランダ型焼きパンなどの柔らかいパンの調製においてSSLを完全に置き換え得ることを示す。
【0258】
実験の第2のセット(実験5〜8)では、ベーキングに先だって生地に衝撃を与えたという違いを除いて、生地は上述の通り調製された。生地への衝撃付与は、ベーキング型に含有される完全に発酵した生地を20cmの高さから落下させて、それを上述の通り焼くことで実施された。生地から得られるベイクド製品の評価結果を表4に示す。
【0259】
【表4】



【0260】
結果は、乳化剤を使用せずに調製されて、衝撃を与えた生地から得られたパンが、その体積を20%以超失ったことを示唆する。これはそれからそれが調製された生地の耐衝撃性が低いことを示唆する。同一条件下で衝撃を与えた生地から調製されてSSLを含んでなるパンは、乳化剤を含まず衝撃を与えられなかった生地によって得られるパンとおよそ同一体積を有する。同一条件下で衝撃を与えた生地から得られ、本発明に従ったベーキング組成物を含んでなるパンは、乳化剤を含まず衝撃を与えられなかった生地によって得られるパン(体積100%に相当する;表4には示さず)と比較しても、なおも改善された体積を有する。このパンはまた、SSLを含んでなる生地から得られて、衝撃を与えられた実験6のパンと比較して、より良い体積も有する。これは本発明に従ったベーキング組成物を含んでなる生地の優れた耐衝撃性を示唆し、それは乳化剤としてSSLを含んでなる生地の耐衝撃性よりなおも良い。
【0261】
[実施例4]
[ベーキング実験−標準バタール]
[脂肪分解酵素L01およびトリアシルグリセロールリパーゼを含んでなる組成物の生地およびパン特性に対する効果]
標準バタールパンを次のようにして調製した。3000gの小麦粉(2700gのKolibri+300gのIbis)、58%のw/w水(小麦粉基準)、70gの圧搾酵母、60gの塩(NaCl)、34ppm(小麦粉重量基準)のアスコルビン酸、3ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme P500(真菌αアミラーゼ)、15ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および表5に示す酵素をDiosnaミキサー上で速度1で2分間、速度2で105kWhで最終生地温度約27℃に混合した。350gの生地片を丸め、32℃および90%の相対湿度で40分間発酵させた。引き続いて生地片を成形して造形し32℃および90%R.H.で100分間発酵させた。完全に発酵した生地をオーブン内で280℃で7分間、265〜270℃で28分間焼いた。
【0262】
室温に冷却した後、実施例3に示すたようにローフの体積を測定した。生地弾性、生地安定性、およびベイクド製品のクラム構造は、熟練パン職人によって視覚的に評価された。
【0263】
【表5】



【0264】
実験は、脂肪分解酵素L01およびトリアシルグリセロールリパーゼを含んでなる本発明に従った組成物をバタール製造において使用すると、良好な安定性と改善された弾性がある生地が得られ、対応するベイクド製品は、脂肪分解酵素L01のみを使用して製造されたベイクド製品と比較すると、より細かいクラム構造と比較できるパン体積を有することを示す。
【0265】
[実施例5]
[ベーキング実験−標準バタール]
[先行技術の脂肪分解酵素と比較した、脂肪分解酵素L01およびトリアシルグリセロールリパーゼを含んでなる組成物のパンおよび生地特性に対する効果]
速度2での成分混合が105kWhでなく71kWhで達成されたという違いを除いて、実施例4に示すようにして標準バタールパンを調製した。以下の成分を使用した。2000gの小麦粉(1800gのKolibri+200gのIbis)、58%w/wの水(小麦粉基準)、47gの圧搾酵母、40gの塩(NaCl)、44ppmのアスコルビン酸(1kgの小麦粉基準)、3ppm(1kgの小麦粉基準)のBakezyme P500(真菌αアミラーゼ)、15ppm(1kgの小麦粉基準)のBakezyme HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および表6に示す酵素。
【0266】
【表6】



【0267】
パン体積を実施例3と同様にして測定した。ベイクド製品の生地伸展性、生地弾性は、熟練パン職人によって視覚的に評価された。実験は、バタールの製造において、脂肪分解酵素L01およびトリアシルグリセロールリパーゼを含んでなる本発明に従った組成物を使用した場合、良好な安定性と改善された弾性のある生地が得られ、対応するベイクド製品は、リン脂質、トリグリセリド、およびガラクト脂質に対する活性がある先行技術の脂肪分解酵素を使用して得られる生地およびベイクド製品と比較すると、改善された体積を有することを示す。
【0268】
[実施例6]
[ベーキング実験−オランダ型焼きパン]
[L01およびトリアシルグリセロールリパーゼを含んでなる組成物と比較した、脂肪分解酵素L01、トリアシルグリセロールリパーゼ、およびセルラーゼを含んでなる組成物のパンおよび生地特性に対する効果]
一次発酵が34℃および85%R.H.で35分間、二次発酵が38℃および85%R.H.で70分間、完全発酵生地のベーキングが280℃で7分間、そして265〜270℃で28分間実施されたことを除いては、実施例3に示すようにしてオランダ型焼きパンを調製した。以下の成分を使用した。3500gの小麦粉(2800gのKolibri+700gのIbis)、58%w/w(小麦粉基準)の水、77gの圧搾酵母、70gの塩(NaCl)、35gの糖、35gの脂肪、40ppm(小麦粉重量基準)のアスコルビン酸、3ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme P500(真菌αアミラーゼ)、15ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、10ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme MA10000(抗老化アミラーゼ)、および表7に示す様々な酵素。
【0269】
実施例3に示すようにしてベイクド製品の体積を測定する一方、軟らかさは熟練パン職人によって経験的に判定された。
【0270】
【表7】



【0271】
実験は、本発明組成物が、柔らかい型焼きパンの製造において使用した場合に、パンの軟らかさをかなり改善することを明らかに示す。改善は、組成物中で脂肪分解酵素L01を使用した場合に特に明白である。
【0272】
[実施例7]
[ベーキング実験−オランダ型焼きパン]
[脂肪分解酵素L01およびトリアシルグリセロールリパーゼを含んでなる組成物と比較した、脂肪分解酵素L01、トリアシルグリセロールリパーゼ、およびセルラーゼを含んでなる組成物の効果]
オランダ型焼きパンを次のようにして調製した。3500gの小麦粉(2800gのKolibri+700gのIbis)、58%w/w(小麦粉基準)の水、80gの圧搾酵母、87.5gのパン改良剤(35%酵素活性ダイズ粉、30%小麦粉、18%乳清粉末、7%油、10%デキストロースを含んでなる)、70gの塩(NaCl)、40ppm(小麦粉重量基準)のアスコルビン酸(1kgの小麦粉重量基準)、10ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme P500(真菌αアミラーゼ)、20ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、10ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme MA10000(抗老化アミラーゼ)および表8に示す様々な酵素をDiosnaミキサー上で速度1で3分間、速度2で130kWhで、最終生地温度28℃に混合した。875gの生地片を丸めて室温で5分間発酵させ、引き続いてそれらを成形して造形し室温で15分間発酵させた。引き続いて生地を成形して造形し、型に入れて38℃および85%R.H.で70分間発酵させた。完全に発酵させた生地をオーブン内で280℃で7分間、265〜270℃で28分間焼いた。
【0273】
生地特徴およびパン体積を実施例3に示すように判定した。結果を表8に報告する。
【0274】
【表8】



【0275】
実験1と2の比較から、L01、トリアシルグリセロールリパーゼ、およびセルラーゼを含んでなる本発明に従った組成物(実験2)は、パン生地に有効量で添加した際に、セルラーゼを含まない本発明に従った組成物と比較して、伸展性および弾性などの生地の特徴を改善し、生地粘性を低下させることは明白である。
【0276】
[実施例8]
[ベーキング実験−オランダ型焼きパン]
[脂肪分解酵素L01、トリアシルグリセロールリパーゼ、およびセルラーゼを含んでなる組成物と比較した、脂肪分解酵素L01、トリアシルグリセロールリパーゼ、セルラーゼ、およびアミノグルコシダーゼを含んでなる組成物の効果]
混合を速度1で3分間、速度2で120kWhで実施したことを除いては、実施例7に示すようにしてオランダ型焼きパンを調製した。生地片(750g)を32℃および85%R.V.で35分間、引き続いて同一条件下で70分間発酵させた。
【0277】
使用された成分は、次のとおりであった。3000gの小麦粉(2400gのKolibri+600gのIbis)、58%w/w(小麦粉基準)の水、60gの圧搾酵母、75gのパン改良剤(35%酵素活性ダイズ粉、30%小麦粉、18%乳清粉末、7%油、10%デキストロースを含んでなる)、60gの塩(NaCl)、40ppm(小麦粉重量基準)のアスコルビン酸(1kgの小麦粉重量基準)、7ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme P500(真菌αアミラーゼ)、20ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、10ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme MA10000(抗老化アミラーゼ)、および表9に示す様々な酵素。
【0278】
生地特徴およびパン体積を実施例3に示すように判定した。結果を表9に報告する。
【0279】
【表9】



【0280】
実験1と2の比較から、L01、トリアシルグリセロールリパーゼ、セルラーゼ、およびアミログルコシダーゼを含んでなる本発明に従った組成物(実験2)は、パン成分に有効量で添加された際に、伸展性や弾性などの生地特徴をさらに改善し、アミログルコシダーゼを含まない本発明に従った組成物(実験1)と比較して、更に細かいクラム構造のベイクド製品を生じることが明白である。
【0281】
[実施例9]
[ベーキング実験−オランダ型焼きパン]
[GMSまたはSSLと比較した、脂肪分解酵素L01、トリアシルグリセロールリパーゼ、セルラーゼおよびアミノグルコシダーゼを含んでなる組成物の生地特徴およびパン体積および軟らかさに対する効果]
混合を速度1で4分間、速度2で112kWhで実施したことを除いては、実施例7に示すようにしてオランダ型焼きパンを調製した。生地片(840g)を30℃および70%R.V.で40分間、引き続いて38℃および90%R.H.で70分間発酵させた。
【0282】
使用した成分は、次のとおりであった。3000gの小麦粉(2400gのKolibri+600gのIbis)、58%w/w(小麦粉基準)の水、75gの圧搾酵母、60gの塩(NaCl)、90gのショートニング、45gの糖、20ppm(小麦粉重量基準)のL−システイン、30ppm(小麦粉重量基準)のアスコルビン酸(1kgの小麦粉重量基準)、7.8ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme P500(真菌αアミラーゼ)、17.5ppm(小麦粉重量基準)のBakezyme HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および表10に示す様々な酵素、SSLまたはGMS。
【0283】
パン体積を実施例3に示すようにして測定した。クラム硬さは、24時間後にテクスチャー分析器TA−TX Plusによって測定した。パン体積およびクラム硬さの結果を表11に報告する。
【0284】
【表10】



【0285】
【表11】



【0286】
表11の結果は、本発明に従ったベーキング酵素組成物(実施例4)を使用して調製されたパンが、SSLを含有するパン(実施例3)に匹敵し、GMSを含有するパン(実施例2)に優る、改善されたクラム柔らかさを有することを示す。本発明に従ったベーキング組成物を含んでなる生地から得られるベイクド製品の体積は、乳化剤SSLまたはGMSを含有する生地から得られるベイクド製品と比較すると、実際、わずかに改善された。これらの結果はオランダ型焼きパンなどの柔らかいパンの調製において、本発明に従ったベーキング酵素組成物が、SSLまたはGMSを完全に置き換え得ることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)配列番号2に記載のアミノ酸に由来する成熟ポリペプチド、または前記配列番号2に記載のアミノ酸に由来する前記成熟ポリペプチドと少なくとも80または90%相同的なアミノ酸配列を有するその機能的同等物に従うアミノ酸配列;または
(B)(a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または前記配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも80または90%の相同性を有するその機能的同等物;または
(b)前記配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、前記配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも80または90%相同的であるヌクレオチド配列;または
(c)前記配列番号2に記載のアミノ酸に由来する前記成熟ポリペプチド、または前記配列番号2のアミノ酸配列に記載の前記成熟ポリペプチドと少なくとも80または90%の相同性を有するその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列;または
(d)(a)、(b)、(c)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コード縮重の結果として縮重される配列;または
(e)(a)、(b)、(c)、または(d)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
を含んでなるポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
を含んでなる、単離ポリペプチドである脂肪分解酵素を含んでなり、
トリアシルグリセロールリパーゼをさらに含んでなるベーキング酵素組成物。
【請求項2】
ヘミセルラーゼまたはセルラーゼ、好ましくはセルラーゼをさらに含んでなる、請求項1に記載のベーキング酵素。
【請求項3】
アミログルコシダーゼをさらに含んでなる、請求項1または2に記載のベーキング酵素組成物。
【請求項4】
2つ以上のトリアシルグリセロールリパーゼの組み合わせをさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のベーキング酵素組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のベーキング酵素組成物、小麦粉、および1つ以上の生地またはパン添加剤を含んでなるプレミックス。
【請求項6】
少なくとも小麦粉、水、および酵母を含んでなる生地成分に、請求項の1〜5のいずれか一項に記載のベーキング組成物またはプレミックスを添加するステップを含んでなる、生地を調製する方法。
【請求項7】
小麦粉、水、酵母、および有効量の請求項1〜6のいずれか一項に記載のベーキング酵素組成物またはプレミックスを含んでなる生地。
【請求項8】
1kgの小麦粉あたり少なくとも3.57DLU単位の脂肪分解酵素、好ましくは少なくとも7.15DLU/kg小麦粉、より好ましくは少なくとも14.30DLU/kg小麦粉の脂肪分解酵素を含んでなり、そして好ましくは最大143DLU/kg小麦粉の脂肪分解酵素、より好ましくは最大71.50DLU/kg小麦粉、最も好ましくは最大35.75DLU/kg小麦粉の脂肪分解酵素を含んでなる請求項7に記載の生地。
【請求項9】
1kgの小麦粉あたり少なくとも80PLI単位のトリアシルグリセロールリパーゼ、好ましくは少なくとも160PLI/kg小麦粉、より好ましくは少なくとも320PLI/kg小麦粉のトリアシルグリセロールリパーゼを含んでなり、好ましくは最大3200PLI/kg小麦粉のトリアシルグリセロールリパーゼ、より好ましくは最大1600PLI/kg小麦粉、最も好ましくは最大800PLI/kg小麦粉のトリアシルグリセロールリパーゼを含んでなる、請求項7または8に記載の生地。
【請求項10】
1kgの小麦粉あたり少なくとも2.34CXU単位のセルラーゼ、好ましくは少なくとも4.68CXU/kg小麦粉、より好ましくは少なくとも7.5CXU/kg小麦粉、なおもより好ましくは少なくとも9.36CXU/kg小麦粉、なおもより好ましくは少なくとも15CXU/kg小麦粉、最も好ましくは少なくとも23.4CXU/kg小麦粉のセルラーゼを含んでなり、好ましくは最大300CXU/kg小麦粉のセルラーゼ、好ましくは最大150CXU/kg小麦粉、より好ましくは最大93.6CXU/kg小麦粉、なおもより好ましくは最大75CXU/kgの小麦粉、なおもより好ましくは最大46.8CXU/kg小麦粉、最も好ましくは最大30CXU/kg小麦粉のセルラーゼを含んでなる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の生地。
【請求項11】
1kgの小麦粉あたり少なくとも130AGI単位のアミログルコシダーゼ、好ましくは少なくとも260AGI/kg小麦粉、より好ましくは少なくとも520AGI/kg小麦粉のアミログルコシダーゼを含んでなり、そして好ましくは最大5200AGI/kg小麦粉のアミログルコシダーゼ、より好ましくは最大2600AGI/kg小麦粉、最も好ましくは最大1300AGI/kg小麦粉のアミログルコシダーゼを含んでなる、請求項7〜10のいずれか一項に記載の生地。
【請求項12】
実質的にSSLおよび/またはCSLを含まない、請求項7〜11のいずれか一項に記載の生地。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか一項に記載の生地を焼くステップを含んでなる、ベイクド製品を調製する方法。
【請求項14】
請求項7〜13のいずれか一項に記載の生地を焼くことで得られるベイクド製品。
【請求項15】
生地またはそれに由来するベイクド製品の製造において乳化剤を置き換えるための、好ましくはSSLを置き換えるための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のベーキング組成物またはプレミックスの使用。

【公表番号】特表2013−503612(P2013−503612A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527312(P2012−527312)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062834
【国際公開番号】WO2011/026877
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】