説明

T細胞を共刺激するためにpHHLA2を使用する方法

本発明は、pHHLA2共受容体ポリペプチドおよび機能的断片、これらに対する抗体、これらをコードする単離されたポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ベクターを含む細胞を提供する。これらの共刺激性pHHLA2共受容体分子を作製および使用する方法もまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
正および負の共刺激シグナルはT細胞活性の調節において重要な役割を果たし、これらのシグナルを媒介する分子は免疫調節薬剤の有効な標的であることが判明している。T細胞受容体(TCR)の結合に加えて正の共刺激がナイーブT細胞の最適な活性化に必要であるのに対し、負の共刺激は自己に対する免疫寛容の獲得およびエフェクターT細胞機能の終結に必要であると考えられている。抗原提示細胞(APC)の表面上のB7-1またはB7-2と相互作用することにより、原型T細胞共刺激分子であるCD28は、TCR結合に応答してT細胞の増殖および分化を促進するシグナルを放出し、CD28相同体細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)はT細胞増殖およびエフェクター機能の抑制を媒介する(Chambers et al., Ann. Rev. Immunol., 19:565-594, 2001(非特許文献1);Egen et al., Nature Immunol., 3:611-618, 2002(非特許文献2))。
【0002】
B7ファミリーと相同性を有するいくつかの新規分子が発見されており(Abbas et al., Nat. Med., 5:1345-6, 1999(非特許文献3);Coyle et al., Nat. Immunol., 2: 203-9, 2001(非特許文献4);Carreno et al., Annu. Rev. Immunol., 20: 29-53, 2002(非特許文献5);Liang et al., Curr. Opin. Immunol., 14: 384-90, 2002(非特許文献6))、T細胞活性化におけるそれらの役割は解明が始まったばかりである。これらの新規な共刺激リガンドには、例えば、B7h2、PD-L1、PD-L2、B7-H3、およびB7-H4が含まれる。
【0003】
B7h2(Swallow et al., Immunity, 11: 423-32, 1999(非特許文献7))は、B7RP-1(Yoshinaga et al., Nature, 402: 827-32, 1999(非特許文献8))、GL50(Ling, et al., J. Immunol., 164:1653-7, 2000(非特許文献9))、B7H2(Wang et al., Blood, 96: 2808-13, 2000(非特許文献10))、およびLICOS(Brodie et al., Curr. Biol., 10: 333-6, 2000(非特許文献11))としても知られており、活性化T細胞上の誘導性共刺激分子(ICOS)に結合し、T細胞増殖ならびにインターロイキン4(IL-4)およびIL-10などのサイトカインの産生を共刺激する。
【0004】
ヒトにおけるB7-Hl(Dong et al., Nat. Med., 5, 1365-9, 1999(非特許文献12))としても知られるPD-L1(Freeman et al., J. Exp. Med., 192: 1027-34, 2000(非特許文献13))、およびB7-DC(Tseng et al., J. Exp. Med., 193, 839-46, 2001(非特許文献14))としても知られるPD-L2(Latchman et al., Nat. Immunol., 2: 261-8, 2001(非特許文献15))は、T細胞およびB細胞上のプログラム死1(PD-1)受容体に結合するが、現時点ではこれらの相互作用の機能は議論を呼んでいる。PD-L1およびPD-L2がT細胞応答に対して抑制効果を有することを実証している報告もあれば(Freeman et al., J. Exp. Med., 192: 1027-34, 2000(非特許文献13);Latchman et al., Nat. Immunol., 2: 261-8, 2001(非特許文献15))、両リガンド(B7-H1およびB7-DC)がT細胞増殖を正に調節し、IL-10またはインターフェロンγ(IFN-γ)の産生を特異的に増強することを示しているものもある(Dong et al., Nat. Med., 5, 1365-9, 1999(非特許文献12);Tseng et al., J. Exp. Med., 193, 839-46, 2001(非特許文献14))。
【0005】
最後に、B7-H3およびB7-H4はいずれも新たに同定されたB7相同体であり、活性化T細胞上の現時点では未知である1つまたは複数のカウンター受容体と結合し、CD4+ Tヘルパー(Th)細胞およびCD8+細胞障害性Tリンパ球(CTLまたはTc)の増殖を増強すること、ならびにIFN-γ発現を選択的に増強することが報告されている(Chapoval et al., Nat. Immunol., 2, 269-74, 2001(非特許文献16);Sun et al., J. Immunol., 168, 6294-7, 2002(非特許文献17))。
【0006】
非リンパ組織においていくらかの発現を示すPD-1リガンドを例外として、公知のB7ファミリーメンバーの発現は主としてリンパ系細胞に限定されている。まとめると、これらの研究から、B7ファミリーメンバーが、リンパ球上の同族受容体と相互作用して、細胞性免疫応答の調節において重要な役割を果たす正または負の共刺激シグナルを提供する、リンパ系細胞上のリガンドであることが明らかにされた。
【0007】
特に、多くの自己免疫疾患には、自己反応性T細胞および自己抗体が関与していることが知られている。病原体を防ぐ免疫系の能力を損なうことなく、自己反応性リンパ球を抑制または排除し得る薬剤は非常に望ましい。逆に、養子免疫療法などの多くの癌免疫療法は、腫瘍特異的T細胞集団を拡大し、腫瘍細胞を攻撃して死滅させるようそれらを指向させる(Dudley et al., Science 298:850-854, 2002(非特許文献18);Pardoll, Nature Biotech.,20:1207-1208, 2002(非特許文献19);Egen et al., Nature Immunol., 3:611-618, 2002(非特許文献2))。腫瘍攻撃を増強し得る薬剤は非常に望ましい。さらに、多くの様々な抗原(例えば、微生物抗原または腫瘍抗原)に対する免疫応答は、検出できるものの、そのような抗原を発現する病原体(例えば、感染性微生物または腫瘍細胞)によって媒介される疾患過程を防御するには不十分である場合が多い。多くの場合、抗原に対する対象の免疫応答を増強するのに役立つアジュバントを、抗原と共に対象に投与することが望ましい。また、特定の状況下においては、抗原に対する正常な免疫応答を抑制することが望ましい。例えば、移植を受けた患者では正常な免疫応答の抑制が望ましく、そのような免疫抑制活性を示す薬剤は非常に望ましい。
【0008】
共刺激シグナル、特に正の共刺激シグナルはまた、B細胞活性の調節においても役割を果たしている。例えば、B細胞活性化および胚中心B細胞の生存は、抗原による刺激に加えてT細胞由来シグナルを必要とする。ヘルパーT細胞の表面上に存在するCD40リガンドはB細胞の表面上のCD40と相互作用し、B細胞における多くのそのようなT細胞依存的効果を媒介する。興味深いことに、CTLA-4と類似している負の共刺激受容体はB細胞上で同定されていない。このことは、T細胞およびB細胞が抗原に応答するよう誘導される方法に基本的な相違が存在することを示唆し、自己寛容および抗体産生などのB細胞エフェクター機能の抑制の機序に対して関係を有している。B細胞上に機能的なCTLA様分子が見出されるならば、その知見によって、B細胞刺激の機序に関する我々の理解が劇的に変わることになる。さらに、そのような受容体の同定により、B細胞活性化および抗体産生を調節することができ、免疫応答の調節に有用な新規治療薬剤の開発が提供され得る。
【0009】
したがって、T細胞共刺激活性および/またはB細胞共刺激活性のいずれかまたは両方を有するさらなるB7ファミリーメンバーおよびそれら由来の分子を同定する必要性が当技術分野において存在する。この必要性は主として、それらの根本的な生物学的重要性およびそれらの活性に影響し得る薬剤の治療可能性に基づく。共刺激シグナルを調節し得るそのような薬剤は、免疫応答の調節において著しく有用であり、非常に望ましい。
【0010】
本発明は、これらの、および本明細書の教示から当業者に明らかとなるはずの他の用途のための、そのようなポリペプチドを提供する。
【0011】
【非特許文献1】Chambers et al., Ann. Rev. Immunol., 19:565-594, 2001
【非特許文献2】Egen et al., Nature Immunol., 3:611-618, 2002
【非特許文献3】Abbas et al., Nat. Med., 5:1345-6, 1999
【非特許文献4】Coyle et al., Nat. Immunol., 2: 203-9, 2001
【非特許文献5】Carreno et al., Annu. Rev. Immunol., 20: 29-53, 2002
【非特許文献6】Liang et al., Curr. Opin. Immunol., 14: 384-90, 2002
【非特許文献7】Swallow et al., Immunity, 11: 423-32, 1999
【非特許文献8】Yoshinaga et al., Nature, 402: 827-32, 1999
【非特許文献9】Ling, et al., J. Immunol., 164:1653-7, 2000
【非特許文献10】Wang et al., Blood, 96: 2808-13, 2000
【非特許文献11】Brodie et al., Curr. Biol., 10: 333-6, 2000
【非特許文献12】Dong et al., Nat. Med., 5, 1365-9, 1999
【非特許文献13】Freeman et al., J. Exp. Med., 192: 1027-34, 2000
【非特許文献14】Tseng et al., J. Exp. Med., 193, 839-46, 2001
【非特許文献15】Latchman et al., Nat. Immunol., 2: 261-8, 2001
【非特許文献16】Chapoval et al., Nat. Immunol., 2, 269-74, 2001
【非特許文献17】Sun et al., J. Immunol., 168, 6294-7, 2002
【非特許文献18】Dudley et al., Science 298:850-854, 2002
【非特許文献19】Pardoll, Nature Biotech.,20:1207-1208, 2002
【発明の開示】
【0012】
発明の説明
以下の説明においては、いくつかの用語が頻繁に用いられる。本発明の理解を容易にするために、以下の定義を提供する。
【0013】
特記しない限り、「1つの(a)」「1つの(an)」、「その」、および「少なくとも1つの」は互換的に用いられ、1つまたは複数を意味する。
【0014】
本明細書において用いる「核酸」または「核酸分子」とは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により作製された断片、ならびに連結、切断、エンドヌクレアーゼ作用、およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかにより作製された断片などのポリヌクレオチドを指す。核酸分子は、天然ヌクレオチド(DNAおよびRNAなど)である単量体、もしくは天然ヌクレオチドの類似体(例えば、天然ヌクレオチドのα-鏡像異性体)、または両者の組み合わせから構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分に、および/またはピリミジン塩基もしくはプリン塩基部分に変化を有し得る。糖修飾には、例えば、ハロゲン、アルキル基、アミン、およびアジド基による1つもしくは複数のヒドロキシル基の置換が含まれ、または糖はエーテルもしくはエステルとして官能基が付加され得る。さらに、糖部分全体を、アザ糖および炭素環式糖類似体などの、立体的および電子的に類似の構造体と置換することができる。塩基部分の修飾の例には、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンもしくはピリミジン、またはその他の周知の複素環式置換基が含まれる。核酸単量体は、ホスホジエステル結合、またはそのような結合の類似結合によって結合され得る。ホスホジエステル結合の類似結合には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホラニリデート(phosphoranilidate)、ホスホロアミダートなどが含まれる。「核酸分子」という用語には、ポリアミド骨格に結合した天然または修飾核酸塩基を含む、いわゆる「ペプチド核酸」もまた含まれる。核酸は一本鎖または二本鎖のいずれかであってよい。
【0015】
「核酸分子の相補体」という用語は、参照ヌクレオチド配列に対して逆方向である相補的ヌクレオチド配列を有する核酸分子を指す。例えば、配列5' ATGCACGGG 3'は5' CCCGTGCAT 3'と相補的である。
【0016】
「縮重ヌクレオチド配列」という用語は、ポリペプチドをコードする参照核酸分子と比較して1つまたは複数の縮重コドンを含むヌクレオチドの配列を意味する。縮重コドンはヌクレオチドの異なるトリプレットを含むが、同じアミノ酸残基をコードする(すなわち、GAUおよびGACトリプレットはそれぞれAspをコードする)。
【0017】
「構造遺伝子」という用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、その後そのmRNAが特定のポリペプチドに特有であるアミノ酸配列に翻訳される核酸分子を指す。
【0018】
「単離された核酸分子」とは、生物のゲノムDNA中に組み込まれていない核酸分子である。例えば、細胞のゲノムDNAから分離された増殖因子をコードするDNA分子は、単離されたDNA分子である。単離された核酸分子の別の例は、生物のゲノム中に組み込まれていない化学合成された核酸分子である。特定の種から単離された核酸分子は、その種の染色体の完全なDNA分子よりも小さい。
【0019】
「核酸分子構築物」とは、天然には存在しない配置で組み合わせかつ並置された核酸の部分を含むように人間の介入により修飾された、一本鎖または二本鎖の核酸分子である。
【0020】
「相補的DNA(cDNA)」とは、逆転写酵素によってmRNA鋳型から形成される一本鎖DNA分子である。典型的に、mRNAの一部と相補的なプライマーが、逆転写の開始に用いられる。当業者はまた、このような一本鎖DNA分子およびその相補的DNA鎖からなる二本鎖DNA分子を指して、「cDNA」という用語を使用する。「cDNA」という用語はまた、RNA鋳型から合成されたcDNA分子のクローンも意味する。
【0021】
「プロモーター」とは、構造遺伝子の転写を指示するヌクレオチド配列である。典型的に、プロモーターは、構造遺伝子の転写開始部位に近い、遺伝子の5'非コード領域に位置する。転写の開始において機能するプロモーター内の配列エレメントは、共通ヌクレオチド配列によって特徴づけられる場合が多い。これらのプロモーターエレメントには、RNAポリメラーゼ結合部位、TATA配列、CAAT配列、分化特異的エレメント(DSE;McGehee et al., Mol. Endocrinol. 7:511 (1993))、サイクリックAMP応答エレメント(CRE)、血清応答エレメント(SRE;Treisman, Seminars in Cancer Biol. 1:47 (1990))、グルココルチコイド応答エレメント(GRE)、ならびにCRE/ATF(O'Reilly et al., J. Biol. Chem. 267:19938 (1992))、AP2(Ye et al., J. Biol. Chem. 269:25728 (1994))、SP1、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB;Loeken, Gene Expr. 3:253 (1993))、およびオクタマー因子などの他の転写因子の結合部位が含まれる(一般的には、Watson et al., eds., Molecular Biology of the Gene, 4th ed. (The Benjamin/Cummings Publishing Company, Inc. 1987)、およびLemaigre and Rousseau, Biochem. J. 303:1 (1994)を参照されたい)。プロモーターが誘導性プロモーターである場合には、転写速度は誘導物質に応じて増大する。これとは対照的に、プロモーターが構成的プロモーターである場合には、転写速度は誘導物質による調節を受けない。抑制性プロモーターもまた知られている。
【0022】
「コアプロモーター」は、TATAボックスおよび転写開始点を含む、プロモーターの機能に不可欠なヌクレオチド配列を含む。この定義によれば、コアプロモーターは、活性を増強し得るかまたは組織特異的活性を付与し得る特定の配列の非存在下で、検出可能な活性を有する場合もあれば有さない場合もある。
【0023】
「エンハンサー」とは、転写開始部位に対するエンハンサーの距離または方向にかかわらず、転写効率を増大し得る調節エレメントの一種である。
【0024】
「異種DNA」とは、所与の宿主細胞内に天然では存在しないDNA分子またはDNA分子の集団を指す。特定の宿主細胞に対して異種であるDNA分子は、宿主DNAが非宿主DNA(すなわち、外因性DNA)と結合している限り、宿主細胞種に由来するDNA(内因性DNA)を含む場合がある。例えば、転写プロモーターを含む宿主DNA部分に機能的に連結されたポリペプチドをコードする非宿主DNA部分を含むDNA分子は、異種DNA分子であると見なされる。逆に、異種DNA分子は、外因性プロモーターと機能的に連結された内因性遺伝子を含み得る。別の説明として、野生型細胞に由来する遺伝子を含むDNA分子は、そのDNA分子が野生型遺伝子を欠く突然変異細胞に導入される場合、異種DNAと見なされる。
【0025】
「ポリペプチド」とは、天然で産生されたか合成で産生されたかに関わらず、ペプチド結合で連結されたアミノ酸残基のポリマーである。約10アミノ酸残基未満のポリペプチドは一般に、「ペプチド」と称される。
【0026】
「タンパク質」とは、1本または複数本のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質はまた、糖質基などの非ペプチド成分を含み得る。糖質およびその他の非ペプチド置換基は、タンパク質を産生する細胞によってタンパク質に付加され得、細胞の種類によって変化することになる。タンパク質は、本明細書ではそのアミノ酸骨格構造の観点から定義され;糖質基などの置換基は一般に規定しないが、それにもかかわらず存在する場合がある。
【0027】
非宿主DNA分子によってコードされるペプチドまたはポリペプチドは、「異種」のペプチドまたはポリペプチドである。
【0028】
「クローニングベクター」とは、宿主細胞内で自律的に複製する能力を有する、プラスミド、コスミド、またはバクテリオファージなどの核酸分子である。クローニングベクターは典型的に、ベクターの必須の生物学的機能を失うことのない確定した様式で核酸分子の挿入を可能とする1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位、ならびにクローニングベクターで形質転換した細胞の同定および選択での使用に適したマーカー遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含む。マーカー遺伝子は典型的に、テトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性を提供する遺伝子を含む。
【0029】
「発現ベクター」とは、宿主細胞において発現される遺伝子をコードする核酸分子である。典型的に発現ベクターは、転写プロモーター、遺伝子、および転写ターミネーターを含む。遺伝子発現は通常、プロモーターの制御下に置かれ、このような遺伝子はプロモーターに「機能的に連結された」と称される。同様に、調節エレメントおよびコアプロモーターは、調節エレメントがコアプロモーターの活性を調節する場合、機能的に連結されている。
【0030】
「組換え宿主」とは、クローニングベクターまたは発現ベクターなどの異種核酸分子を含む細胞である。本発明の状況において、組換え宿主の例は発現ベクターからpHHLA2を産生する細胞である。対照的に、pHHLA2は、pHHLA2の「天然供給源」であり、発現ベクターを欠く細胞によって産生され得る。
【0031】
「融合タンパク質」とは、少なくとも2つの遺伝子のヌクレオチド配列を含む核酸分子によって発現されるハイブリッドタンパク質である。例えば融合タンパク質は、親和性基質と結合するポリペプチドと融合したpHHLA2ポリペプチドの少なくとも一部を含み得る。このような融合タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーにより大量のpHHLA2を単離するための手段を提供する。
【0032】
「分泌シグナル配列」という用語は、より大きなポリペプチドの成分として、それが合成される細胞の分泌経路を介してより大きなポリペプチドを方向づけるペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするヌクレオチド配列を示す。より大きなポリペプチドは通常、分泌経路を介した移行過程において、切断されて分泌ペプチドが除去される。
【0033】
「単離されたポリペプチド」とは、天然状態でポリペプチドと会合している糖質、脂質、またはその他のタンパク質性不純物などの混入細胞成分を本質的に含まないポリペプチドである。典型的に、単離されたポリペプチドの調製物は、高度に純粋な形態の、すなわち少なくとも約80%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、95%を超えて純粋、または99%を超えて純粋なポリペプチドを含む。特定のタンパク質調製物が単離されたポリペプチドを含むことを示すための1つの方法は、タンパク質調製物のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲルのクマシーブリリアントブルー染色後の、単一バンドの出現による。しかしながら「単離された」という用語は、二量体または他の様式でグリコシル化もしくは誘導体化された形態など、別の物理的形態での同じポリペプチドの存在を排除しない。
【0034】
「アミノ末端」および「カルボキシル末端」という用語は、本明細書において、ポリペプチド内の位置を示すために用いられる。その状況が可能である場合、これらの用語は、近接性または相対位置を示すためにポリペプチドの特定の配列または部分に関して用いられる。例えば、ポリペプチド内の参照配列に対してカルボキシル末端側に位置する特定の配列は、参照配列のカルボキシル末端の近位に位置するが、必ずしも完全なポリペプチドのカルボキシル末端に位置するとは限らない。
【0035】
本明細書において用いる「活性化刺激」とは、好ましくは抗原特異的T細胞受容体(TCR)を介して、T細胞に活性化シグナルを送達する分子である。活性化刺激は、T細胞において検出可能な応答を誘発するのに十分であってよい。または、T細胞は、活性化刺激に対して検出可能に応答するために(例えば、pHHLA2共受容体ポリペプチドによる)共刺激を必要とし得る。活性化刺激の例には、非限定的に、TCRと、もしくはT細胞表面上でTCRと物理的に会合しているCD3複合体のポリペプチドと結合する抗体、同種抗原、またはMHC分子と結合している抗原ペプチドが含まれる。
【0036】
「発現」という用語は、遺伝子産物の生合成を指す。例えば、構造遺伝子の場合、発現は、構造遺伝子のmRNAへの転写、およびmRNAから1つまたは複数のポリペプチドへの翻訳を含む。
【0037】
「スプライス変異体」という用語は、本明細書において、遺伝子から転写される別の形態のRNAを示すために用いられる。スプライス変異は、転写後のRNA分子内の、またはあまり一般的ではないが転写後の別個のRNA分子間の、選択的スプライス部位の使用によって自然に起こり、同じ遺伝子から転写されたいくつかのmRNAを生じ得る。スプライス変異体は、変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。スプライス変異体という用語はまた、本明細書において、遺伝子から転写されたmRNAのスプライス変異体によってコードされるポリペプチドを示すために用いられる。
【0038】
本明細書において用いる「免疫調節物質」という用語には、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、共刺激分子、造血因子、およびこれらの分子の合成類似体が含まれる。
【0039】
「相補体/抗相補体対」という用語は、適切な条件下で非共有結合された安定な対を形成する非同一な成分を示す。例えば、ビオチンおよびアビジン(またはストレプトアビジン)は、相補体/抗相補体対の典型的なメンバーである。その他の例示的な相補体/抗相補体対には、受容体/リガンド対、抗体/抗原(またはハプテンもしくはエピトープ)対、センスポリヌクレオチド/アンチセンスポリヌクレオチド対などが含まれる。相補体/抗相補体対が後に解離されることを所望する場合には、相補体/抗相補体対は109 M-1未満の結合親和性を有することが好ましい。
【0040】
「抗イディオタイプ抗体」とは、免疫グロブリンの可変領域ドメインと結合する抗体である。本発明の状況において、抗イディオタイプ抗体は抗pHHLA2抗体の可変領域と結合し、したがって抗イディオタイプ抗体はpHHLA2のエピトープを模倣する。
【0041】
「抗体断片」とは、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab、scFvなどの、抗体の一部である。構造とは無関係に、抗体断片は、完全な抗体によって認識される同じ抗原と結合する。例えば、抗pHHLA2モノクローナル抗体断片は、pHHLA2の細胞外ドメインのエピトープと結合する。
【0042】
「抗体断片」という用語には、軽鎖の可変領域からなるポリペプチド、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖および重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって連結された組換え一本鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)、ならびに超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位などの、特定の抗原と結合する合成ポリペプチドまたは遺伝子改変ポリペプチドもまた含まれる。
【0043】
「キメラ抗体」とは、げっ歯類抗体に由来する可変ドメインおよび相補性決定領域を含み、抗体分子の残りの部分はヒト抗体に由来する組換えタンパク質である。
【0044】
「ヒト化抗体」とは、モノクローナル抗体のマウス相補性決定領域が、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域から、ヒト可変ドメインに移行された組換えタンパク質である。
【0045】
本明細書において用いる「治療薬剤」とは、抗体部分と結合されて治療に有用な複合体を生じる分子または原子である。治療薬剤の例には、薬物、毒素、免疫調節物質、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤または色素、および放射性同位体が含まれる。
【0046】
「検出可能な標識」とは、抗体部分と結合されて診断に有用な分子を生じる分子または原子である。検出可能な標識の例には、キレート剤、光活性剤、放射性同位体、蛍光剤、常磁性イオン、またはその他のマーカー部分が含まれる。
【0047】
「親和性タグ」という用語は、本明細書において、第2のポリペプチドの精製もしくは検出を提供するか、または基材に対して第2のポリペプチドを付着させるための部位を提供する目的で、第2のポリペプチドに結合され得るポリペプチド部分を示すために用いられる。原理上は、抗体またはその他の特異的な結合剤が利用できる任意のペプチドまたはタンパク質を、親和性タグとして用いることができる。親和性タグには、ポリヒスチジン区域、プロテインA(Nilsson et al., EMBO J. 4:1075 (1985);Nilsson et al., Methods Enzymol. 198:3 (1991))、グルタチオンSトランスフェラーゼ(Smith and Johnson, Gene 67:31 (1988))、Glu-Glu親和性タグ(Grussenmeyer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:7952 (1985))、サブスタンスP、FLAGペプチド(Hopp et al., Biotechnology 6:1204 (1988))、ストレプトアビジン結合ペプチド、またはその他の抗原エピトープもしくは結合ドメインが含まれる。一般的には、Ford et al., Protein Expression and Purification 2:95 (1991)を参照されたい。親和性タグをコードする核酸分子は、市販業者(例えば、Pharmacia Biotech、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)から入手することができる。
【0048】
「裸の抗体」とは、抗体断片とは対照的に、治療薬剤と結合していない完全な抗体である。裸の抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびにキメラ抗体およびヒト化抗体などの特定の組換え抗体が含まれる。
【0049】
本明細書において用いる「抗体成分」という用語には、完全な抗体および抗体断片の両方が含まれる。
【0050】
「免疫複合体」とは、抗体成分と治療薬剤または検出可能な標識との複合体である。
【0051】
本明細書において用いる「抗体融合タンパク質」という用語は、抗体成分および治療薬剤を含む組換え分子を指す。そのような融合タンパク質に適した治療薬剤の例には、免疫調節物質(「抗体-免疫調節物質融合タンパク質」)および毒素(「抗体-毒素融合タンパク質」)が含まれる。
【0052】
「標的ポリペプチド」または「標的ペプチド」とは、少なくとも1つのエピトープを含み、腫瘍細胞または感染性病原体抗原を保有する細胞などの標的細胞上で発現されるアミノ酸配列である。T細胞は、標的ポリペプチドまたは標的ペプチドに対する主要組織適合遺伝子複合体分子によって提示されるペプチドエピトープを認識し、典型的に、標的細胞を溶解するか、または標的細胞の部位に他の免疫細胞を動員し、それにより標的細胞を死滅させる。
【0053】
「抗原ペプチド」とは、主要組織適合遺伝子複合体分子と結合して、T細胞によって認識されるMHC-ペプチド複合体を形成し、それによってT細胞への提示に基づいて細胞傷害性リンパ球応答を誘導するペプチドである。したがって抗原ペプチドは、適切な主要組織適合遺伝子複合体分子と結合すること、および細胞溶解、または抗原を結合するもしくは発現する標的細胞に対する特定のサイトカインの放出などの細胞傷害性T細胞応答を誘導することができる。抗原ペプチドは、抗原提示細胞上でまたは標的細胞上で、クラスIまたはクラスII主要組織適合遺伝子複合体分子に関して結合され得る。
【0054】
真核生物では、RNAポリメラーゼIIが、構造遺伝子の転写を触媒してmRNAを産生させる。RNA転写産物が特定のmRNAの配列と相補的な配列を有するRNAポリメラーゼII鋳型を含むように、核酸分子を設計することができる。このようなRNA転写産物は「アンチセンスRNA」と称され、アンチセンスRNAをコードする核酸分子は「アンチセンス遺伝子」と称される。アンチセンスRNA分子は、mRNA分子と結合し、その結果mRNAの翻訳を抑制することができる。
【0055】
「pHHLA2に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド」または「pHHLA2アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、(a) pHHLA2遺伝子の一部と安定な三本鎖を形成し得る、または(b) pHHLA2遺伝子のmRNA転写産物の一部と安定な二本鎖を形成し得る配列を有するオリゴヌクレオチドである。
【0056】
「リボザイム」とは、触媒中心を含む核酸分子である。この用語には、RNA酵素、自己スプライシングRNA、自己切断RNA、およびこれらの触媒機能を行う核酸分子が含まれる。リボザイムをコードする核酸分子は、「リボザイム遺伝子」と称される。
【0057】
「外部ガイド配列」とは、内因性リボザイムであるRNase Pを特定の細胞内mRNA種に導くことで、RNase PによるmRNAの切断をもたらす核酸分子である。外部ガイド配列をコードする核酸分子は、「外部ガイド配列遺伝子」と称される。
【0058】
本明細書において用いる「抗原提示細胞」または「APC」とは、T細胞がそれを認識できる形態で、その表面上でMHCと複合体形成した外来抗原を提示する細胞である。抗原を「提示」し得る細胞には、B細胞、ならびに樹状細胞、単核細胞、およびマクロファージを含む単球系譜の細胞が含まれる。
【0059】
「変異体pHHLA2遺伝子」という用語は、配列番号:2または配列番号:5の修飾物であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子を指す。このような変異体には、pHHLA2遺伝子の天然の多型、および配列番号:2または5のアミノ酸配列の保存的アミノ酸置換を含む合成遺伝子が含まれる。pHHLA2遺伝子のさらなる変異体形態は、本明細書に記載するヌクレオチド配列の挿入または欠失を含む核酸分子である。変異体pHHLA2遺伝子は、その遺伝子が、配列番号:1もしくは配列番号:4またはその相補体のヌクレオチド配列を有する核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするかどうかを判定することによって、同定することができる。
【0060】
または、変異体pHHLA2遺伝子は配列比較によって同定することができる。2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基が、最大の一致を求めて整列させた際に同一である場合、2つのアミノ酸配列は「100%のアミノ酸配列同一性」を有する。同様に、2つのヌクレオチド配列のヌクレオチド残基が、最大の一致を求めて整列させた際に同一である場合、2つのヌクレオチド配列は「100%のヌクレオチド配列同一性」を有する。配列比較は、DNASTAR(ウィスコンシン州、マディソン)製のLASERGENEバイオインフォマティクス算出ソフトに含まれるプログラムのような、標準的なソフトウェアプログラムを用いて行うことができる。最適なアライメントを決定することによって2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を比較するためのその他の方法は、当業者に周知である(例えば、Peruski and Peruski, The Internet and the New Biology: Tools for Genomic and Molecular Research (ASM Press, Inc. 1997)、Wu et al. (eds.), 「Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins」, Methods in Gene Biotechnology, pages 123-151 (CRC Press, Inc. 1997)、およびBishop (ed.), Guide to Human Genome Computing, 2nd Edition (Academic Press, Inc. 1998)を参照されたい)。配列同一性を決定するための特定の方法については後述する。
【0061】
「対立遺伝子変異体」という用語は、本明細書において、同じ染色体座を占める遺伝子の2つまたはそれ以上の別の形態のいずれかを示すために用いられる。対立遺伝子の変異は突然変異によって自然に生じ、集団内で表現型多型を生じ得る。遺伝子突然変異はサイレントである(コードされたポリペプチドに変化がない)場合もあれば、変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする場合もある。対立遺伝子変異体という用語はまた、本明細書において、遺伝子の対立遺伝子変異体によってコードされるタンパク質を示すために用いられる。
【0062】
「オーソログ」という用語は、異なる種に由来するポリペプチドまたはタンパク質の機能的対応物である、1つの種から得られるポリペプチドまたはタンパク質を示す。オーソログ間の配列の差は、種分化の結果である。
【0063】
「パラログ」とは、生物によって作製される、異なるが構造的に関連したタンパク質である。パラログは、遺伝子重複によって生じると考えられている。例えば、α-グロビン、β-グロビン、およびミオグロビンは相互にパラログである。本発明との関連において、pHHLA2遺伝子の「機能的断片」とは、抗pHHLA2抗体と特異的に結合するpHHLA2ポリペプチドの一部をコードする核酸分子を指す。例えば、本明細書に記載するpHHLA2遺伝子の機能的断片は、配列番号:1または配列番号:4のヌクレオチド配列の一部を含み、抗pHHLA2抗体と特異的に結合するポリペプチドをコードする。
【0064】
本明細書において用いるT細胞を「共刺激するポリペプチド」とは、T細胞上の細胞表面分子との相互作用に際して、T細胞の応答を増強するポリペプチドである。相互作用によって生じるT細胞応答は、ポリペプチドの非存在下における応答よりも大きくなる。共刺激ポリペプチドの非存在下におけるT細胞の応答は、応答がない場合もあれば、または共刺激ポリペプチドの存在下におけるよりも有意に低い応答である場合もある。T細胞の応答は、エフェクター、ヘルパー、または抑制応答であり得ることが理解される。
【0065】
本明細書において用いる「活性化刺激」とは、好ましくは抗原特異的T細胞受容体(TCR)を介して、T細胞に活性化シグナルを送達する分子である。活性化刺激は、T細胞において検出可能な応答を誘発するのに十分であってよい。または、T細胞は、活性化刺激に対して検出可能に応答するために(例えば、pHHLA2ポリペプチドによる)共刺激を必要とし得る。活性化刺激の例には、非限定的に、TCRと、もしくはT細胞表面上でTCRと物理的に会合しているCD3複合体のポリペプチドと結合する抗体、同種抗原、またはMHC分子と結合している抗原ペプチドが含まれる。
【0066】
本明細書において用いるpHHLA2ポリペプチドの「断片」とは、全長ポリペプチドよりも短い、好ましくはpHHLA2の細胞外ドメインよりも短いポリペプチドの断片である。一般的に、断片は5アミノ酸長またはそれ以上の長さである。抗原断片は、抗体によって認識され結合される能力を有する。
【0067】
本明細書において用いるpHHLA2ポリペプチドの「機能的断片」とは、全長ポリペプチドよりも短く、かつT細胞を共刺激する能力を有するポリペプチドの断片である。さらに、pHHLA2の細胞外ドメインの「機能的断片」は、このポリペプチドの細胞外ドメインよりも短く、かつpHHLA2の共刺激活性を拮抗する能力を有する。pHHLA2分子の断片が機能的であるかどうかを確証する方法は、当技術分野において公知である。例えば、関心対象の断片を、組換え、合成、またはタンパク質分解消化方法により作製し得る。次いで、そのような断片を単離し、本明細書に記載する手順によりT細胞を共刺激する能力について試験することができる。
【0068】
標準的な解析法の不正確さのため、ポリマーの分子量および長さは概数値であると理解される。このような値が「約」Xまたは「およそ」Xと表記される場合、Xの記載値は±10%で正確であると理解される。
【0069】
pHHLA2リガンドまたは共受容体ポリペプチドは、抗原提示細胞上に存在し、T細胞上の細胞表面分子(対応物共受容体)との相互作用に際してT細胞を「共刺激し」、T細胞の応答を増強するポリペプチドである。相互作用によって生じるT細胞応答は、ポリペプチドの非存在下における応答よりも大きくなる。共刺激ポリペプチドの非存在下におけるT細胞の応答は、応答がない場合もあれば、または共刺激ポリペプチドの存在下におけるよりも有意に低い応答である場合もある。T細胞の応答は、エフェクター、ヘルパー、または抑制応答であり得ることが理解される。
【0070】
本発明は、B7ファミリーのタンパク質と相同性を有するポリペプチドをコードする、抗原提示細胞APC上の単離された受容体を提供する。このポリペプチドはpHHLA2と命名された。pHHLA2のヌクレオチド配列は配列番号:1(x1変異体)および配列番号:4(x2変異体)に記載されており、その推定アミノ酸配列はそれぞれ配列番号:2および配列番号:5に記載されている。pHHLA2x1ポリペプチド(配列番号:2)は、配列番号:1のヌクレオチド1〜66によってコードされる、配列番号:2のアミノ酸1(Met)〜アミノ酸残基22(Gly)を含むシグナル配列を含む。成熟ポリペプチドは、配列番号:1のヌクレオチド67〜1242によってコードされる、配列番号:2のアミノ酸23(Ile)からアミノ酸414(Val)にわたる。pHHLA2ポリペプチドは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを有する。成熟ポリペプチドの細胞外ドメインは、配列番号:1のヌクレオチド67〜1038(配列番号:4のヌクレオチド1〜939)によってコードされる、配列番号:2のアミノ酸残基23(Ile)〜346(Gly)(配列番号:5のアミノ酸残基1(Met)〜313(Gly))を含む。成熟ポリペプチドの細胞外ドメイン内に、配列番号:1のヌクレオチド115〜417(配列番号:4のヌクレオチド16〜318)によってコードされる、配列番号:2のアミノ酸残基39(Val)と139(Gly)(配列番号:5のアミノ酸残基6(Val)と106(Gly))の間に、2つの免疫グロブリン可変領域の1つ目(Igv1)が存在する。さらに、免疫グロブリン定常領域(Igc)もまた成熟ポリペプチドの細胞外ドメイン内に位置し、これは配列番号:1のヌクレオチド706〜957(配列番号:4のヌクレオチド607〜858)によってコードされる、配列番号:2のアミノ酸残基236(Ser)〜319(Ile)(配列番号:5のアミノ酸残基203(Ser)〜286(Ile))を含む。第2の免疫グロブリン可変領域(Igv2)は、配列番号:1のヌクレオチド688〜990(配列番号:4のヌクレオチド589〜891)によってコードされる、配列番号:2のアミノ酸残基230(Gly)と330(His)(配列番号:5のアミノ酸残197(Gly)と297(His))の間に位置する。「pHHLA2」に言及する場合、pHHLA2はpHHLA2x1およびpHHLA2x2の両方を包含する。
【0071】
pHHLA2成熟ポリペプチドはまた、配列番号:1のヌクレオチド1039〜1095(配列番号:4のヌクレオチド940〜996)によってコードされる、配列番号:2のアミノ酸残基347(Leu)〜365(Val)(配列番号:5のアミノ酸残基314(Leu)〜332(Val))を含む膜貫通ドメインを含む。
【0072】
pHHLA2成熟ポリペプチドの細胞内ドメインは、配列番号:1のヌクレオチド1096〜1242(配列番号:4のヌクレオチド997〜1143)によってコードされる、配列番号:2のアミノ酸残基366(Lys)と414(Val)(配列番号:5のアミノ酸残基333(Lys)と381(Val))の間に位置する。
【0073】
当業者は、これらのドメインの境界が概算であって、公知のタンパク質とのアライメントおよびタンパク質折りたたみの予測に基づくことを理解すると考えられる。
【0074】
本発明は、本明細書に開示するpHHLA2ポリペプチドをコードする、DNA分子およびRNA分子を含むポリヌクレオチド分子を提供する。当業者は、遺伝コードの縮重の観点から、これらのポリヌクレオチド分子間で相当数の配列変異が可能であることを認識すると考えられる。配列番号:3および6は、それぞれ配列番号:2および配列番号5のpHHLA2ポリペプチドならびにその断片をコードする全DNAを包含する縮重DNA配列である。当業者は、配列番号:3および6の縮重配列がまた、Tに代えてUに置換することによって、配列番号:2および5をコードする全RNA配列を提供することを理解すると考えられる。したがって、本発明のpHHLA2ポリペプチドをコードするpHHLA2ポリヌクレオチドは、配列番号:3のヌクレオチド1〜ヌクレオチド1242および配列番号:6のヌクレオチド1〜ヌクレオチド1143を含み、それらのRNA同等物も本発明によって意図される。表1は、縮重ヌクレオチド位置を示すために配列番号:3および6において用いられる1文字コードを示す。「解」とは、コード文字によって示されるヌクレオチドである。「相補体」は、1つまたは複数の相補的ヌクレオチドのコードを示す。例えば、コードYはCまたはTを示し、その相補体RはAまたはGを示し、AはTと相補的であり、GはCと相補的である。
【0075】
【表1】

【0076】
所与のアミノ酸について可能なすべてのコドンを包含する、配列番号:3および6において用いられる縮重コドンを表2に記載する。
【0077】
【表2】

【0078】
当業者は、各アミノ酸をコードするすべての可能なコドンを代表する縮重コドンの決定において、多少のあいまい性が導入されることを理解すると考えられる。例えば、セリンの縮重コドン(WSN)は、場合によってはアルギニン(AGR)をコードし、またアルギニンの縮重コドン(MGN)は、場合によってはセリン(AGY)をコードし得る。フェニルアラニンおよびロイシンをコードするコドン間にも、同様の関係が存在する。このように、縮重配列により包含されるいくつかのポリヌクレオチドは変異体アミノ酸配列をコードする可能性があるが、当業者は、配列番号:2および配列番号:5のアミノ酸配列を参照することにより、そのような変異体配列を容易に同定することができる。変異体配列は、本明細書に記載する通りに機能性に関して容易に試験することができる。
【0079】
当業者はまた、様々な種が「優先的コドン使用」を示し得ることを理解すると考えられる。一般的には、Grantham, et al., Nuc. Acids Res. 8:1893-912, 1980;Haas, et al. Curr. Biol. 6:315-24, 1996;Wain-Hobson et al., Gene 13:355-64, 1981;Grosjean and Fiers, Gene 18:199-209, 1982;Holm, Nuc. Acids Res. 14:3075-87, 1986;Ikemura, J. Mol. Biol. 158:573-97, 1982を参照されたい。本明細書において用いる「優先的コドン使用」または「優先的コドン」という用語は、ある種の細胞で最も高い頻度で使用され、そのため各アミノ酸をコードする可能なコドン(表2を参照されたい)の中でも1個または少数のコドンが優先されるタンパク質翻訳コドンを指す当技術分野の用語である。例えば、アミノ酸スレオニン(Thr)はACA、ACC、ACG、またはACTによってコードされ得るが、哺乳動物細胞では、ACCが最も一般的に用いられるコドンである;その他の種、例えば昆虫細胞、酵母、ウイルス、または細菌では、異なるThrコドンが優先的であり得る。当技術分野で公知の様々な方法により、特定の種における優先的なコドンを、本発明のポリヌクレオチドに導入することができる。例えば、優先的コドン配列を組換えDNAに導入することによって、特定の細胞種または種において、タンパク質の翻訳をより効率的にすることでタンパク質の産生を高めることができる。したがって、配列番号:3および配列番号:6に開示する縮重コドン配列は、当技術分野で一般的に用いられ、本明細書において開示する様々な細胞種または種におけるpHHLA2ポリヌクレオチドの発現を最適化するための鋳型として役立つ。優先的コドンを含む配列を、様々な種において発現に関して試験し、最適化することができ、また本明細書に開示するように機能性に関して試験することができる。
【0080】
先述の通り、本発明の単離されたポリヌクレオチドには、DNAおよびRNAが含まれる。DNAおよびRNAを調製する方法は、当技術分野において周知である。一般的に、大量のpHHLA2 RNAを産生する組織または細胞からRNAを単離する。そのような組織および細胞はノーザンブロッティング(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:5201, 1980)によって同定され、これにはPBL、脾臓、胸腺、骨髄、前立腺、およびリンパ組織、ヒト赤白血病細胞株、急性単球性白血病細胞株、その他のリンパ球系および造血細胞株などが含まれる。グアニジンイソチオシアネート抽出およびその後のCsCl勾配中での遠心分離による単離を用いて、全RNAを調製し得る(Chirgwin et al., Biochemistry 18:52-94, 1979)。Aviv and Leder(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:1408-12, 1972)の方法を用いて、全RNAからポリ(A)+ RNAを調製する。公知の方法を用いて、ポリ(A)+ RNAから相補DNA(cDNA)を調製する。別の方法では、ゲノムDNAを単離し得る。次いで、例えばハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)(Mullis、米国特許第4,683,202号)により、pHHLA2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定および単離する。
【0081】
pHHLA2をコードする全長クローンは、従来のクローニング手順によって得ることができる。相補DNA(cDNA)クローンが好ましいが、いくつかの用途(例えば、トランスジェニック動物での発現)に関しては、ゲノムクローンを使用すること、または少なくとも1つのゲノムイントロンを含むようcDNAクローンを改変することが好ましい場合がある。cDNAおよびゲノムクローンを調製する方法は周知であり、当業者のレベルの範囲内であり、ライブラリーをプロービングするまたはプライミングするための、本明細書に開示する配列またはその一部の使用を含む。発現ライブラリーは、pHHLA2に対する抗体、受容体断片、またはその他の特異的結合パートナーでプロービングすることができる。
【0082】
本発明のポリヌクレオチドはまた、DNA合成装置を用いて合成することもできる。現在、選択される方法はホスホロアミダイト法である。遺伝子または遺伝子断片の合成といった用途のために化学合成された二本鎖DNAが必要な場合には、各相補鎖を別々に作製する。短いポリヌクレオチド(60〜80 bp)の生成は技術的に容易であり、相補鎖を合成してからそれらをアニールすることによって達成され得る。しかし、より長いポリヌクレオチド(>300 bp)を生成するには、化学的DNA合成中の各サイクルの結合効率が100%であることはほとんどないため、通常は特別な方策が用いられる。この問題を克服するため、20〜100ヌクレオチド長の一本鎖断片から、モジュール形式で合成遺伝子(二本鎖)を構築する。
【0083】
全長遺伝子を調製するための別の方法は、重複オリゴヌクレオチド(40〜100ヌクレオチド)の特定のセットを合成することである。3'および5'の短い重複相補領域(6〜10ヌクレオチド)をアニールした後には、大きなギャップが残るものの、塩基対形成された短い領域は、構造を保持するのに十分に長くかつ十分に安定である。大腸菌(E. coli) DNA ポリメラーゼIによる酵素的なDNA合成により、ギャップを埋め、DNA二重鎖を完成させる。酵素的合成が完了した後、T4 DNAリガーゼによりニックをふさぐ。二本鎖構築物を相互に順次連結して遺伝子配列全体を形成し、これをDNA配列解析により確認する。Glick and Pasternak, Molecular Biotechnology, Principles & Applications of Recombinant DNA, (ASM Press, Washington, D.C. 1994);Itakura et al., Annu. Rev. Biochem. 53: 323-56, 1984、およびClimie et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:633-7, 1990を参照されたい。さらに、一般的には、転写および翻訳の正確な開始および終結のためのシグナルを含む他の配列を付加する。
【0084】
本発明はまた、診断用途に役立つ試薬を提供する。例えば、pHHLA2遺伝子、pHHLA2 DNAもしくはRNAを含むプローブ、またはそれらのサブ配列を用いて、pHHLA2遺伝子が第3染色体などのヒト染色体上に存在するかどうか、または遺伝子突然変異が生じているかどうかを判定することができる。pHHLA2は第3染色体のq13.13領域に位置する。pHHLA2遺伝子座において検出可能な染色体異常性(aberration)には、異数性、遺伝子コピー数変化、ヘテロ接合性欠失(LOH)、転座、挿入、欠失、制限部位変化、および再配列が含まれるが、これらに限定されない。このような異常性は、本発明のポリヌクレオチドを用いて、制限断片長多型(RFLP)解析、PCR法を用いた短いタンデム反復(STR)解析、および当技術分野において公知の他の遺伝子連鎖解析法などの分子遺伝学的技法により検出することができる(Sambrook et al.、前記;Ausubel et al.、前記;Marian, Chest 108:255-65, 1995)。
【0085】
遺伝子の位置に関する正確な知識は、以下を含むいくつかの目的に有用であり得る:(1) 配列が既存のコンティグの一部かどうかを判定し、YAC、BAC、またはcDNAクローンなどの様々な形態でさらなる周囲の遺伝子配列を得ること;(2) 同じ染色体領域との連鎖を示す遺伝性疾患の可能性のある候補遺伝子を提供すること;および(3) 特定の遺伝子がどのような機能を有するかを決定するのに役立ち得る、マウスなどのモデル生物を相互参照すること。
【0086】
診断は、疾患の種類および適切な関連療法の決定において、または遺伝カウンセリングの補助において、医師を補助し得る。したがって、本発明の抗pHHLA2抗体、ポリヌクレオチド、およびポリペプチドをpHHLA2ポリペプチド、mRNA、または抗pHHLA2抗体の検出において用いてマーカーとして役立てること、ならびに当技術分野で公知であり本明細書に記載する方法を用いて本明細書に記載する通りに、遺伝性疾患または癌の検出に直接使用することができる。さらに、pHHLA2ポリヌクレオチドプローブを用いて、染色体3q13.13の欠失に関連する異常もしくは遺伝子型、およびヒト疾患に関連する転座、もしくは腫瘍の悪性進行に関与するその他の転座、または悪性腫瘍もしくは他の癌における染色体再配列との関与が予測されるその他の3q13.13突然変異を検出することができる。同様に、pHHLA2ポリヌクレオチドプローブを用いて、第3染色体トリソミーに関連する異常または遺伝子型、およびヒトの疾患もしくは自然流産に関連する染色体欠損を検出することができる。したがって、pHHLA2ポリヌクレオチドプローブを用いて、これらの欠陥に関連する異常または遺伝子型を検出することができる。
【0087】
一般的に、患者の遺伝子の異常(abnormality)または異常性(aberration)を検出するために遺伝子連鎖解析で用いられる診断方法は、当技術分野において公知である。解析プローブは一般的には少なくとも20 nt長であるが、幾分短いプローブを用いることも可能である(例えば、14〜17 nt)。PCRプライマーは、少なくとも5 nt長、好ましくは15 ntまたはそれ以上、より好ましくは20〜30 ntである。遺伝子または染色体DNAを全体的に解析するには、pHHLA2ポリヌクレオチドプローブはエキソン全体またはそれ以上を含み得る。一般的に、患者の遺伝子の異常または異常性を検出するために遺伝子連鎖解析で用いられる診断方法は、当技術分野において公知である。大部分の診断方法は以下の段階を含む:(a) 潜在的罹患患者、罹患患者、または劣性疾患対立遺伝子の潜在的非罹患保因者から遺伝子試料を得る段階;(b) RFLP解析などにおいて遺伝子試料をpHHLA2ポリヌクレオチドプローブと共にインキュベートすることにより(ポリヌクレオチドは、相補的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズする)、または適切なPCR反応条件下でのPCR反応において、遺伝子試料をセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーと共にインキュベートすることにより、第1反応産物を生成する段階;(iii) 電気泳動、および/または第1反応産物をpHHLA2ポリヌクレオチドプローブで可視化する(ポリヌクレオチドは、第1反応の相補的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズする)などのその他の公知の方法により、第1反応産物を可視化する段階;および(iv) 可視化した第1反応産物を、野生型患者または正常もしくは対照個体による遺伝子試料の第2の対照反応産物と比較する段階。第1反応産物と対照反応産物との相違は、罹患もしくは潜在的罹患患者における遺伝子異常、または非罹患患者についてのヘテロ接合性劣性保因者表現型の存在、または罹患患者の腫瘍における遺伝子欠損の存在、または胎児胚もしくは着床前胚における遺伝子異常の存在を示す。例えば、制限断片パターン、PCR産物の長さ、pHHLA2遺伝子座における反復配列の長さなどの相違は、遺伝子異常、遺伝子異常性、または正常野生型対照と比較した対立遺伝子の相違を示す。対照は、試験および試料の入手可能性に応じて、罹患していない家族の一員または血縁関係のない個体に由来し得る。本発明において用いられる遺伝子試料には、患者由来の任意の組織、または非限定的に血液、唾液、精液、胚細胞、羊水などの患者由来のその他の生物試料から単離されたゲノムDNA、mRNA、およびcDNAが含まれる。ポリヌクレオチドプローブまたはプライマーはRNAまたはDNAであってよく、配列番号:1の一部、配列番号:1の相補体、またはそれらのRNA同等物を含む。ヒト疾患表現型に対する遺伝子連鎖解析を示すそのような方法は、当技術分野において周知である。診断におけるPCRに基づく方法の参考文献に関しては、一般的に、Mathew (ed.), Protocols in Human Molecular Genetics (Humana Press, Inc. 1991)、White (ed.), PCR Protocols: Current Methods and Applications (Humana Press, Inc. 1993)、 Cotter (ed.), Molecular Diagnosis of Cancer (Humana Press, Inc. 1996)、Hanausek and Walaszek (eds.), Tumor Marker Protocols (Humana Press, Inc. 1998)、Lo (ed.), Clinical Application of PCR (Humana Press, Inc. 1998)、およびMeltzer (ed.), PCR in Bioanalysis (Humana Press, Inc. 1998)を参照されたい。
【0088】
pHHLA2遺伝子座に関連する突然変異は、本発明の核酸分子を用いて、制限断片長多型解析、PCR法を用いた短いタンデム反復解析、増幅-抵抗性突然変異システム解析、一本鎖高次構造多型検出、RNase切断法、変性勾配ゲル電気泳動、蛍光支援ミスマッチ解析、および当技術分野において公知のその他の遺伝子解析法などの、標準的な直接突然変異解析法で検出することができる(例えば、Mathew (ed.), Protocols in Human Molecular Genetics (Humana Press, Inc. 1991)、Marian, Chest 108:255 (1995)、Coleman and Tsongalis, Molecular Diagnostics (Human Press, Inc. 1996)、Elles (ed.) Molecular Diagnosis of Genetic Diseases (Humana Press, Inc. 1996)、Landegren (ed.), Laboratory Protocols for Mutation Detection (Oxford University Press 1996)、Birren et al. (eds.), Genome Analysis, Vol. 2: Detecting Genes (Cold Spring Harbor Laboratory Press 1998)、Dracopoli et al. (eds.), Current Protocols in Human Genetics (John Wiley & Sons 1998)、およびRichards and Ward, 「Molecular Diagnostic Testing」, Principles of Molecular Medicine, pages 83-88 (Humana Press, Inc. 1998)を参照されたい)。突然変異に関するpHHLA2遺伝子の直接解析は、対象のゲノムDNAを用いて行うことができる。例えば末梢血リンパ球から得られたゲノムDNAを増幅する方法は、当業者に周知である(例えば、Dracopoli et al. (eds.), Current Protocols in Human Genetics, pages 7.1.6-7.1.7 (John Wiley & Sons 1998)を参照されたい)。
【0089】
本発明はさらに、その他の種に由来する対応物ポリペプチドおよびポリヌクレオチド(オーソログ)を提供する。これらの種には、哺乳動物、鳥類、両生類、爬虫類、魚類、昆虫、ならびにその他の脊椎動物および無脊椎動物種が含まれるが、これらに限定されない。特に対象となるのは、マウス、ブタ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、およびその他の霊長動物のポリペプチドを含む、その他の哺乳動物種由来のpHHLA2ペプチドである。ヒトpHHLA2のオーソログは、本発明によって提供される情報および組成物を従来のクローニング技法と組み合わせて用いることで、クローニングすることができる。例えば、本明細書に開示するpHHLA2を発現する組織または細胞種より得られたmRNAを用いて、cDNAをクローニングすることができる。mRNAの適切な供給源は、本明細書に開示する配列から設計されたプローブでノーザンブロットをプロービングすることによって同定することができる。次に、陽性組織または細胞株のmRNAからライブラリーを調製する。次いで、完全もしくは部分的ヒトcDNA、または開示配列に基づく1組もしくは複数組の縮重プローブでプロービングするなど、種々の方法により、pHHLA2をコードするcDNAを単離することができる。cDNAはまた、本明細書に開示する代表的なヒトpHHLA2配列から設計されたプライマーを用いて、PCR(Mullis、前記)によりクローニングすることもできる。さらなる方法では、cDNAライブラリーを用いて宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションすることができ、関心対象のcDNAの発現をpHHLA2ポリペプチドに対する抗体で検出することができる。同様の技法は、ゲノムクローンの単離にも適用することができる。
【0090】
本発明はまた、配列番号:2または配列番号:5のポリペプチドと実質的に類似している単離されたpHHLA2ポリペプチドを提供する。「実質的に類似している」という用語は、本明細書において、配列番号:2または配列番号:5に示される配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または99.5%を超える配列同一性を有するポリペプチドを示すために用いられる。配列同一性のパーセントは従来の方法で決定される。例えば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48: 603-616, 1986、およびHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919, 1992を参照されたい。簡潔に説明すると、ギャップオープンペナルティ 10、ギャップ伸長ペナルティ 1、および表3(アミノ酸は標準的な1文字コードで表示)に示すHenikoff and Henikoff(前記)の「blosum62」スコアマトリックスを用いて、2つのアミノ酸配列をアライメントスコアが最適となるように整列させる。次いで、同一性のパーセントを以下のように算出する。

【0091】
【表3】

【0092】
ポリヌクレオチド分子の配列同一性は、上記の比を用いて同様の方法によって決定される。
【0093】
当業者であれば、2つのアミノ酸配列を整列させるために利用できる多くの確立されたアルゴリズムが存在することを理解する。PearsonおよびLipmanの「FASTA」類似性探索アルゴリズムは、本明細書に開示するアミノ酸配列と推定変異体pHHLA2のアミノ酸配列によって共有される同一性レベルを調べるのに適したタンパク質アライメント法である。FASTAアルゴリズムについては、Pearson and Lipman, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)、およびPearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)によって記載されている。
【0094】
簡潔に説明すると、FASTAでは最初に、クエリ配列(例えば、配列番号:2および配列番号:5)と試験配列によって共有される、最も高い同一性密度(ktup変数が1の場合)または同一性対(ktup=2の場合)を有する領域を、保存的アミノ酸の置換、挿入、または欠失を考慮することなく同定することにより、配列類似性を特徴づける。次いで、同一性密度の最も高い10の領域を、アミノ酸置換行列を用いて対のアミノ酸すべての類似性を比較することにより再スコア化し、最高のスコアに寄与する残基のみを含めるように領域の末端を「切り詰める(trim)」。「カットオフ(cutoff)」値(配列の長さおよびktup値に基づき、所定の式により算出される)よりも大きいスコアを有する領域がいくつか存在する場合には、切り詰めた当初の領域を調べて、その領域を結合してギャップを含む近似のアラインメントを形成できるかどうかを決定する。最後に、2つのアミノ酸配列の最もスコアの高い領域を、アミノ酸の挿入および欠失を認める改良Needleman-Wunsch-Sellersアルゴリズム(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:444 (1970);Sellers, SIAM J. Appl. Math. 26:787 (1974))を用いて整列させる。FASTA解析の好ましいパラメータは、ktup=1、ギャップオープンペナルティ=10、ギャップ伸長ペナルティ=1、および置換行列=BLOSUM62であり、その他のパラメータは初期値として設定する。これらのパラメータは、Pearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)のAppendix 2に説明されているようにスコアマトリックスファイル(「SMATRIX」)を改良することによって、FASTAプログラムに導入することができる。
【0095】
FASTAを使用して、上記の比を用いて核酸分子の配列同一性を決定することもできる。ヌクレオチド配列を比較する場合には、ktup値を1〜6、好ましくは3〜6、最も好ましくは3とすることができ、その他のFASTAプログラムパラメータは初期値として設定する。
【0096】
BLOSUM62表(表3)は、500を超える関連タンパク質群の高度に保存された領域を表す、タンパク質配列部分の約2,000の局所的多重アライメントに由来するアミノ酸置換行列である(Henikoff and Henikoff, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:10915 (1992))。したがって、BLOSUM62置換頻度を用いて、本発明のアミノ酸配列に導入され得る保存的アミノ酸置換を規定することができる。(後述するように)化学的特性のみに基づいてアミノ酸置換を設計することも可能であるが、「保存的アミノ酸置換」という用語は好ましくは、-1を上回るBLOSUM62値で示される置換を指す。例えば、アミノ酸置換は、置換が0、1、2、または3のBLOSUM62値により特徴づけられる場合に保存的である。この系によれば、好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも1(例えば、1、2、または3)のBLOSUM62値により特徴づけられるが、より好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも2(例えば、2または3)のBLOSUM62値により特徴づけられる。
【0097】
本発明の特定の態様において、単離された核酸分子は、本明細書に開示するヌクレオチド配列を含む核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る。例えば、このような核酸分子は、配列番号:1もしくは配列番号:4のヌクレオチド配列を含む核酸分子、配列番号:1もしくは配列番号:4のヌクレオチド配列からなる核酸分子、または配列番号:1もしくは配列番号:4と相補的なヌクレオチド配列からなる核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHにおいて、特定の配列の熱融点(Tm)より約5℃低く選択される。Tmとは、標的配列の50%が、完全に一致するプローブとハイブリダイズする(規定のイオン強度およびpHにおける)温度である。
【0098】
DNA-DNA、RNA-RNA、およびDNA-RNAなどの核酸分子の対は、ヌクレオチド配列がある程度の相補性を有する場合にハイブリダイズし得る。ハイブリッドは二重らせん内のミスマッチ塩基対を許容し得るが、ハイブリッドの安定性はミスマッチの程度に影響を受ける。ミスマッチを含むハイブリッドのTmは、1〜1.5%の塩基対ミスマッチにつき1℃低下する。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを変えることで、ハイブリッド中に存在するミスマッチの程度を調節することができる。ストリンジェンシーの程度は、ハイブリダイゼーション温度を上げると、またハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度を下げると上昇する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ハイブリッドのTmより約5〜25℃低い温度、および最大1 MのNa+を有するハイブリダイゼーション緩衝液を含む。より低い温度でのより高いストリンジェンシーの程度は、ハイブリッドのTmを緩衝液中の1%ホルムアミドにつき約1℃低下させるホルムアミドを添加することにより達成され得る。一般的に、そのようなストリンジェントな条件は、20℃〜70℃という温度、ならびに最大6x SSCおよび0〜50%のホルムアミドを含むハイブリダイゼーション緩衝液を含む。より高い程度のストリンジェンシーは、40℃〜70℃の温度で、最大4x SSCおよび0〜50%のホルムアミドを有するハイブリダイゼーション緩衝液を用いて達成され得る。高度にストリンジェントな条件は典型的に、42℃〜70℃という温度、ならびに最大1x SSCおよび0〜50%のホルムアミドを有するハイブリダイゼーション緩衝液を含む。様々な程度のストリンジェンシーをハイブリダイゼーション時および洗浄時に用いて、標的配列に対する最大限に特異的な結合を達成することができる。典型的に、ハイブリダイゼーション後の洗浄は、ハイブリダイズしないポリヌクレオチドプローブをハイブリダイズした複合体から除去するために、ストリンジェンシーの程度を上げて実施する。
【0099】
上記の条件は手引きとして機能することが意図されており、これらの条件を特定のポリペプチドハイブリッドと共に用いるために適合化することは、十分に当業者の能力の範囲内にある。特定の標的配列のTmとは、標的配列の50%が、完全に一致したプローブ配列とハイブリダイズする(既定条件下での)温度である。Tmに影響する条件には、ポリヌクレオチドプローブの大きさおよび塩基対含量、ハイブリダイゼーション溶液のイオン強度、ならびにハイブリダイゼーション溶液中の不安定化剤の存在が含まれる。Tmを計算するための数多くの式が当技術分野で公知であり、様々な長さのDNA、RNA、およびDNA-RNAハイブリッド、ならびにポリヌクレオチドプローブの配列に特異的である(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (Cold Spring Harbor Press 1989);Ausubel et al., (eds.), Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Inc. 1987);Berger and Kimmel (eds.), Guide to Molecular Cloning Techniques, (Academic Press, Inc. 1987);およびWetmur, Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol. 26:227 (1990)を参照されたい)。配列解析ソフトウェアおよびインターネット上のサイトは、ユーザー定義の基準に基づいた所与の配列の解析およびTmの計算に利用できるツールである。このようなプログラムは、規定の条件下において所与の配列を解析し、適切なプローブ配列を同定することもできる。典型的に、>50塩基対という長いポリヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションは、Tm計算値より約20〜25℃低い温度で実施する。<50塩基対の短いプローブの場合には、ハイブリダイゼーションは典型的に、TmまたはTmより5℃〜10℃低い温度で実施する。こうすることで、DNA-DNAハイブリッドおよびDNA-RNAハイブリッドのハイブリダイゼーション速度が最大となる。
【0100】
ポリヌクレオチド配列の長さは、ハイブリッド形成の速度および安定性に影響を及ぼす。<50塩基対の短いプローブ配列は相補配列と共に速やかに平衡に達するが、安定性に劣るハイブリッドを形成し得る。数分〜数時間のインキュベーション時間で、ハイブリッド形成が達成され得る。長いプローブ配列はより緩やかに平衡に達するが、より低温であってもより安定な複合体を形成する。インキュベーションは一晩かまたはそれ以上かけて行う。一般的にインキュベーションは、算出されたCot時間の3倍に相当する時間をかけて行う。Cot時間とはポリヌクレオチド配列が再会合するのに要する時間であり、当技術分野で公知の方法によって特定の配列に関して算出することができる。
【0101】
ポリヌクレオチド配列の塩基対組成は、ハイブリッド複合体の熱安定性に影響を及ぼし、よってハイブリダイゼーション温度およびハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度の選択に影響する。A-T対は、塩化ナトリウムを含む水溶液中でG-C対よりも安定性に劣る。したがってG-C含量が高いほど、ハイブリッドは安定性を増す。配列内でのG残基およびC残基の均等な分布もまた、ハイブリッドの安定性にプラスに寄与する。さらに、塩基対組成を操作して所与の配列のTmを変更することができる。例えば、デオキシシチジンに代えて5-メチルデオキシシチジンを使用し、またチミジンに代えて5-ブロモデオキシウリジンを使用することで、Tmを上昇させることができ、一方、グアノシンに代えて7-デアザ-2'-デオキシグアノシンを使用することで、Tmに対する依存性を低くすることができる。
【0102】
ハイブリダイゼーション緩衝液のイオン濃度もまた、ハイブリッドの安定性に影響を及ぼす。ハイブリダイゼーション緩衝液は一般に、デンハルト溶液(Sigma Chemical Co.、ミズーリ州、セントルイス)、変性サケ精子DNA、tRNA、粉乳(BLOTTO)、ヘパリン、またはSDSなどのブロッキング剤、およびSSC(1x SSC:0.15 M塩化ナトリウム、15 mMクエン酸ナトリウム)またはSSPE(1x SSPE:1.8 M NaCl、10 mM NaH2PO4、1 mM EDTA、pH 7.7)などのNa+源を含む。緩衝液のイオン濃度を減少させることにより、ハイブリッドの安定性が増大する。典型的に、ハイブリダイゼーション緩衝液は10 mM〜1 MのNa+を含む。ホルムアミド、テトラアルキルアンモニウム塩、グアニジン陽イオン、またはチオシアン酸陽イオンなどの不安定化剤または変性剤をハイブリダイゼーション溶液に添加すると、ハイブリッドのTmが変化する。典型的に、インキュベーションをより簡便でかつより低い温度で行うことができるように、最大50%の濃度でホルムアミドを使用する。ホルムアミドにはまた、RNAプローブを用いる際に非特異的なバックグラウンドを低減させる作用もある。
【0103】
例として、変異体pHHLA2ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:1(またはその相補体)のヌクレオチド配列を有する核酸分子と、50%ホルムアミド、5xSSC(1xSSC:0.15 M塩化ナトリウムおよび15 mMクエン酸ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5xデンハルト溶液(100xデンハルト溶液:2%(w/v) Ficoll 400、2%(w/v)ポリビニルピロリドン、および2%(w/v)ウシ血清アルブミン)、10%デキストラン硫酸、および20 μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃で一晩でハイブリダイズし得る。当業者は、これらのハイブリダイゼーション条件を様々に工夫することができる。例えば、ハイブリダイゼーション混合物を、ホルムアミドを含まない溶液中で、より高い温度(約65℃など)でインキュベートすることができる。さらに、予め混合してあるハイブリダイゼーション溶液(例えば、CLONTECH Laboratories, Inc.製のEXPRESSHYBハイブリダイゼーション溶液)が入手可能であり、製造業者の説明書に従ってハイブリダイゼーションを行うことができる。
【0104】
ハイブリダイゼーション後に核酸分子を洗浄して、ハイブリダイズしていない核酸分子をストリンジェントな条件下、または高度にストリンジェントな条件下で除去することができる。典型的なストリンジェントな洗浄条件には、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む0.5x〜2x SSCの溶液中での55〜65℃における洗浄が含まれる。すなわち、変異体zacrp8ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:1(またはその相補体)のヌクレオチド配列を有する核酸分子とハイブリダイズした状態を、55〜65℃での0.1% SDSを含む0.5x〜2x SSC(55℃での0.1% SDSを含む0.5x SSC、または65℃での0.1% SDSを含む2x SSCを含む)に相当するストリンジェントな洗浄条件で維持する。当業者は、例えば洗浄液中のSSCをSSPEに代えるなどして、同等の条件を容易に考案することができる。
【0105】
典型的な高度にストリンジェントな洗浄条件には、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む0.1x〜0.2x SSCの溶液中での50〜65℃における洗浄が含まれる。すなわち、変異体pHHLA2ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:1(またはその相補体)のヌクレオチド配列を有する核酸分子とハイブリダイズした状態を、50〜65℃での0.1% SDSを含む0.1x〜0.2x SSC(50℃での0.1% SDSを含む0.1x SSC、または65℃での0.1% SDSを含む0.2x SSCを含む)に相当するストリンジェントな洗浄条件で維持する。
【0106】
変異体pHHLA2ポリペプチドまたは実質的に相同的なpHHLA2ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、または付加を有すると特徴づけられる。これらの変化は好ましくは、保存的アミノ酸置換(表4を参照されたい)、およびポリペプチドの折りたたみまたは活性に有意に影響を及ぼさないその他の置換;典型的に1〜約30アミノ酸の小さな欠失;ならびにアミノ末端またはカルボキシル末端の伸長(アミノ末端メチオニン残基、最大約20〜25残基の小さなリンカーペプチド、または親和性タグなど)である、軽微なものである。したがって本発明は、タグ、伸張、リンカー配列などを除いて、配列番号:2または配列番号:5の対応する領域に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%である、または99.5%を超える配列を含むポリペプチドを含む。親和性タグを含むポリペプチドは、pHHLA2ポリペプチドと親和性タグとの間にタンパク質切断部位をさらに含み得る。適切な部位には、トロンビン切断部位およびファクターXa切断部位が含まれる。
【0107】
【表4】

【0108】
抗原提示細胞上に発現される全長pHHLA2ポリペプチドは、T細胞を共刺激することが示された(実施例5を参照されたい)。活性化T細胞がいくつかの炎症性サイトカイン、例えばIFNγ、TNFα、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18、IL-21、およびIL-23を分泌することは十分に確証されている。これらのサイトカインの多くは、例えばヒトIBD試料において過剰発現されていることが示されており、そのため腸における炎症促進性免疫応答の惹起および永続化と関係づけられている。したがって、可溶型のpHHLA2またはpHHLA2抗体もしくはその断片によってT細胞のpHHLA2共刺激を抑制することは、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、移植片対宿主病、および過敏性腸症候群などの、免疫学的成分に関連した腸(実施例6の組織発現データを参照されたい)炎症性疾患に罹患している患者にとって有益である。可溶性pHHLA2ポリペプチド(例えば、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313);アイソタイプIgG(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgM、IgD、IgA(IgA1またはIgA2)、もしくはIgEなどの免疫グロブリン重鎖定常領域(例えば、Fc2)にインフレームで融合されたもしくは結合された、または任意に分子量5 kD〜60 kDを有する分枝状もしくは直鎖状である、ポリエチレングリコールなどのポリアルキルオキシド部分に結合された同ポリペプチドの融合タンパク質;ならびに抗体および抗体断片は、APC上の内因性pHHLA2がそのT細胞対応物受容体と結合しT細胞を共刺激するのを抑制する。
【0109】
本発明の別の態様は、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含む単離された可溶性pHHLA2ポリペプチドであって、T細胞の共刺激を抑制するポリペプチドである。ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313であってよい。
【0110】
本発明の別の態様は、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含み、T細胞の共刺激を抑制する可溶性ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドである。単離されたポリヌクレオチドは、配列番号:1のヌクレオチド67〜1038または配列番号:4のヌクレオチド1〜939であってよい。
【0111】
本発明の別の態様は、配列番号:1の67〜1038、配列番号:1の1〜1038、配列番号:1の67〜1095、配列番号:1の1〜1095、配列番号:1の67〜1242、配列番号:1の1〜1242、配列番号:4の1〜939、配列番号:4の1〜996、および配列番号:4の1〜1143からなる群より選択されるヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチドである。任意に、単離されたポリヌクレオチドは、5xSSC、5xデンハルト溶液、0.5% SDS、サケ精子1 mg/ハイブリダイゼーション溶液25 mlを含む緩衝液中での65℃で一晩インキュベートするハイブリダイゼーション、およびその後の65℃での0.2x SSC/0.1% SDSによる高ストリンジェンシー洗浄というストリンジェントな条件下において、配列番号:1の67〜1038、配列番号:1の1〜1038、配列番号:1の67〜1095、配列番号:1の1〜1095、配列番号:1の67〜1242、配列番号:1の1〜1242、配列番号:4の1〜939、配列番号:4の1〜996、および配列番号:4の1〜1143とハイブリダイズし、T細胞の共刺激を抑制する可溶性ポリペプチドをコードする。
【0112】
本発明の別の態様は、以下の機能的に連結されたエレメント:転写プロモーター;配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含むポリペプチドであって、T細胞の共刺激を抑制するポリペプチドをコードするDNA部分;および転写ターミネーターを含む発現ベクターである。コードされるポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313であってよい。本発明の別の態様は、この発現ベクターが導入された培養細胞であって、DNA部分によってコードされるポリペプチドを発現する細胞である。
【0113】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の発現ベクターが導入された細胞であって、DNA部分によってコードされるポリペプチドを発現する細胞を培養する段階;および発現されたポリペプチドを回収する段階を含む、ポリペプチドを生成する方法である。
【0114】
本発明の別の態様は、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含むまたはそれらからなるポリペプチドに特異的に結合する単離されたまたは精製された抗体または抗体断片である。ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313であってよい。単離されたまたは精製された抗体または抗体断片は、pHHLA2の細胞外ドメイン中のエピトープに選択的に結合し得る。単離されたまたは精製された抗体または抗体断片は、pHHLA2の細胞外ドメインに結合して、pHHLA2のそのT細胞カウンター受容体に対する結合を抑制し得る。単離されたまたは精製された抗体は、ポリクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体に由来するヒト化抗体、抗体断片、中和抗体、およびヒトモノクローナル抗体であってよい。単離されたまたは精製された抗体断片は、F(ab')、F(ab)、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、scFv、および最小認識単位であってよい。
【0115】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の抗体または抗体断片に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体を含む抗イディオタイプ抗体である。
【0116】
本発明の別の態様は、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含むポリペプチド;およびポリアルキルオキシド部分を含む融合タンパク質であって、T細胞の共刺激を抑制する融合タンパク質である。ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313であってよい。ポリアルキルオキシド部分は、ポリエチレングリコール(PEG)であってよい。PEGは、ポリペプチドのN末端またはC末端に結合することができ、例えば20 kDまたは30 kDのモノメトキシ-PEGプロピオンアルデヒドを含み得る。PEGは直鎖状または分枝状であってよい。融合タンパク質を患者に投与すると、pHHLA2のT細胞カウンター受容体に結合して、抗原提示細胞上に発現された内因性pHHLA2がそのT細胞カウンター受容体に結合しT細胞を活性化するのを抑制することによって、T細胞の共刺激が抑制され得る。
【0117】
本発明の別の態様は、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含むポリペプチド;および免疫グロブリン重鎖定常領域を含む融合タンパク質であって、T細胞の共刺激を抑制する融合タンパク質である。ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313であってよい。免疫グロブリン重鎖定常領域はFc断片であってよい。免疫グロブリン重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgE、IgA、およびIgDからなる群より選択されるアイソタイプであってよい。IgGアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4であってよい。
【0118】
本発明の別の態様は、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含む単離された可溶性ポリペプチド;および薬学的に許容される賦形剤を含む製剤である。単離された可溶性ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313であってよい。製剤はキット中に包装され得る。
【0119】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の抗体または抗体断片;および薬学的に許容される賦形剤を含む製剤である。製剤はキット中に包装され得る。
【0120】
本発明の別の態様は、T細胞の共刺激を抑制する方法であって、T細胞を、その配列が配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の同一性を有する配列を含み、T細胞の共刺激を抑制する可溶性ポリペプチドと接触させる段階を含む方法である。可溶性ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313であってよい。接触段階は、ポリペプチドをT細胞と共にインビトロで培養する段階を含み得る。T細胞は患者内にあってもよい。接触段階は、ポリペプチドを患者に投与する段階を含み得る。接触段階は、ポリペプチドをコードする核酸を患者に投与する段階を含み得る。本方法は、(a) 患者から得られた細胞の子孫であって、細胞がポリペプチドを発現するように、ポリペプチドをコードする核酸分子をエクスビボでトランスフェクションまたは形質転換した組換え細胞を提供する段階;および(b) その細胞を患者に投与する段階をさらに含み得る。組換え細胞は抗原提示細胞(APC)であってよく、その表面上にポリペプチドを発現する。本方法は、投与段階の前に、APCを抗原または抗原ペプチドでパルスすることを含む。患者は、クローン病、潰瘍性大腸炎、移植片対宿主病、セリアック病、および過敏性腸症候群からなる群より選択される炎症性疾患に罹患していてよい。
【0121】
本発明の別の態様は、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、移植片対宿主病、および過敏性腸症候群からなる群より選択される疾患に関連した症状または状態の少なくとも1つを治療する、予防する、その進行を抑制する、その発症を遅延させる、および/または軽減する方法であって、本明細書に記載の製剤の有効量を患者に投与する段階を含む方法である。
【0122】
本発明は、そのアミノ酸配列が配列番号:2のアミノ酸残基23〜346と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含み、T細胞の共刺激を抑制する単離されたpHHLA2可溶性ポリペプチドを提供する。単離されたpHHLA2ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基23〜414を含み得る。単離されたpHHLA2ポリペプチドは、可溶性pHHLA2ポリペプチドであってよい。可溶性pHHLA2は、別のタンパク質に融合させることができる。他のタンパク質は、抗体の定常領域(例えば、Fc2)、ポリエチレングリコール、または血清アルブミンであってよい。
【0123】
本発明は、そのアミノ酸配列が配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含み、T細胞の共刺激を抑制する単離された可溶性pHHLA2ポリペプチドを提供する。単離されたpHHLA2ポリペプチドは、可溶性pHHLA2共受容体であってよい。単離されたpHHLA2共受容体は、配列番号:5のアミノ酸残基1〜381を含み得る。単離されたpHHLA2共受容体は、配列番号:5のアミノ酸残基1〜313を含み得る。単離されたpHHLA2ポリペプチドは、可溶性pHHLA2ポリペプチドであってよい。可溶性pHHLA2は、別のタンパク質に融合させることができる。他のタンパク質は、抗体の定常領域(例えば、Fc2)、ポリエチレングリコール、または血清アルブミンであってよい。
【0124】
本発明はまた、そのアミノ酸配列が配列番号:2のアミノ酸残基23〜346と少なくとも95%の配列同一性を有し、T細胞の共刺激を抑制するポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは任意に、配列番号:2のアミノ酸残基23〜414または配列番号:2のアミノ酸残基23〜346を含むポリペプチドをコードし得る。コードされるポリペプチドは可溶性であってよい。ポリヌクレオチドは、配列番号:1のヌクレオチド67〜1038を含み得る。
【0125】
本発明はまた、そのアミノ酸配列が配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有し、T細胞の共刺激を抑制するポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは任意に、配列番号:5のアミノ酸残基1〜381または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313を含むポリペプチドをコードし得る。コードされるポリペプチドは可溶性であってよい。ポリヌクレオチドは、配列番号:4のヌクレオチド1〜939を含み得る。
【0126】
本発明はさらに、種々の他のポリペプチド融合物、および1つまたは複数のポリペプチド融合物を含む関連の多量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)タンパク質を提供する。例えば、可溶性pHHLA2ポリペプチド(pHHLA2の細胞外ドメインまたはその断片、例えば、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346および配列番号:5のアミノ酸残基1〜313)は、別の可溶性pHHLA2二量体化タンパク質との融合物として調製することができる。この点における好ましい二量体化タンパク質には、免疫グロブリン定常領域ドメインが含まれる。免疫グリブリン-pHHLA2ポリペプチド融合物を遺伝子改変細胞において発現させて、種々のpHHLA2類似体を生成することができる。補助的ドメインをpHHLA2ポリペプチドに融合させて、これを特定の細胞、組織、または高分子(例えば、コラーゲン)に標的化することができる。pHHLA2ポリペプチドは、精製のための親和性タグおよび標的化ドメインなどの2つまたはそれ以上の部分に融合させることもできる。ポリペプチド融合物はまた、1つまたは複数の切断部位を特にドメイン間に含んでもよい。Tuan et al., Connective Tissue Research 34:1-9, 1996を参照されたい。さらに、可溶性多量体サイトカイン受容体は、親和性タグをさらに含み得る。親和性タグは、例えば、ポリヒスチジン、プロテインA、グルタチオンSトランスフェラーゼ、Glu-Glu、サブスタンスP、FLAG(商標)ペプチド、ストレプトアビジン結合ペプチド、および免疫グロブリンFcポリペプチドの群より選択されるタグであってよい。
【0127】
本発明のタンパク質はまた、天然に存在しないアミノ酸残基も含み得る。天然に存在しないアミノ酸には、非限定的に、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノプロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグリシン、アロ-スレオニン、メチルスレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3-および4-メチルプロリン、3,3-ジメチルプロリン、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、および4-フルオロフェニルアラニンが含まれる。天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質に導入するためのいくつかの方法が、当技術分野において公知である。例えば、化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを用いてナンセンス突然変異を抑制するインビトロ系を用いることができる。アミノ酸を合成する方法およびtRNAをアミノアシル化する方法は、当技術分野において公知である。ナンセンス突然変異を含むプラスミドの転写および翻訳は、大腸菌S30抽出物、ならびに市販の酵素およびその他の試薬を含む無細胞系で行われる。タンパク質はクロマトグラフィーによって精製する。例えば、Robertson et al., J. Am. Chem. Soc. 113:2722, 1991;Ellman et al., Methods Enzymol. 202:301, 1991;Chung et al., Science 259:806-9, 1993;およびChung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10145-9, 1993を参照されたい。第2の方法では、突然変異mRNAおよび化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAをマイクロインジェクションすることにより、アフリカツメガエル卵母細胞において翻訳を行う(Turcatti et al., J. Biol. Chem. 271:19991-8, 1996)。第3の方法では、置換しようとする天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の非存在下、かつ所望する1種または複数種の天然に存在しないアミノ酸(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、または4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で、大腸菌細胞を培養する。天然に存在しないアミノ酸は、その天然対応物の代わりにタンパク質中に取り込まれる。Koide et al., Biochem. 33:7470-7476, 1994を参照されたい。天然に存在するアミノ酸残基は、インビトロ化学修飾により天然に存在しない種に変換することができる。化学修飾を部位特異的突然変異誘発と併用して、置換の範囲をさらに拡張することができる(Wynn and Richards, Protein Sci. 2:395-403, 1993)。
【0128】
限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝コードによりコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、および非天然アミノ酸を、pHHLA2アミノ酸残基と置換することができる。
【0129】
本発明のポリペプチド中の必須アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャン突然変異誘発などの、当技術分野において公知の手順に従って同定することができる(Cunningham and Wells, Science 244: 1081-5, 1989;Bass et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4498-502, 1991)。後者の技法においては、分子内のあらゆる残基に単一のアラニン突然変異を導入し、得られた突然変異分子を以下に開示する生物活性(例えば、リガンド結合およびシグナル伝達)について試験して、分子の活性に重要であるアミノ酸残基を同定する。同様に、Hilton et al., J. Biol. Chem. 271:4699-4708, 1996も参照されたい。リガンド-受容体、タンパク質-タンパク質、またはその他の生物学的相互作用の部位もまた、推定接触部位アミノ酸の突然変異と併用して、核磁気共鳴、結晶解析、電子線回折、または光親和性標識のような技法で決定される構造の物理的解析によって決定することができる。例えば、de Vos et al., Science 255:306-312, 1992;Smith et al., J. Mol. Biol. 224:899-904, 1992;Wlodaver et al., FEBS Lett. 309:59-64, 1992を参照されたい。必須アミノ酸の同一性はまた、関連受容体との相同性の解析から推測することもできる。
【0130】
構造の完全性を維持するのに重要な領域またはドメイン内のアミノ酸残基の決定を行うこともできる。これらの領域内で、事実上変化を許容し、分子の全体的な三次構造を維持すると考えられる特定の残基を決定することができる。配列構造を解析する方法には、非限定的に、高いアミノ酸またはヌクレオチド同一性を有する複数配列のアライメント、および利用可能なソフトウェア(例えば、Insight II(登録商標)ビューアおよび相同性モデリングツール;MSI、カリフォルニア州、サンディエゴ)を用いるコンピュータ解析、二次構造的性質、二元パターン、相補的パッキング、ならびに埋没した極性相互作用(buried polar interation)が含まれる(Barton, Current Opin. Struct. Biol. 5:372-376, 1995、およびCordes et al., Current Opin. Struct. Biol. 6:3-10, 1996)。一般的に、分子に対して修飾を設計するかまたは特定断片を同定する場合、構造の決定は、修飾された分子の活性評価を伴う。
【0131】
pHHLA2ポリペプチドにおいて、アミノ酸配列の変化は、生物活性に必須である高次構造の破壊を最小限に抑えるように行われる。例えば、pHHLA2ポリペプチドが1つまたは複数のヘリックスを含む場合、アミノ酸残基の変化は、高次構造の変化が何らかの重要な機能(例えば、分子のその結合パートナーに対する結合)を弱める、分子のヘリックス配置およびその他の成分の破壊を起こさないように行われる。アミノ酸配列変化の影響は、例えば上記に開示するコンピュータモデリングにより予測することができ、または結晶構造の解析により決定することができる(例えば、Lapthorn et al., Nat. Struct. Biol. 2:266-268, 1995を参照されたい)。当技術分野において周知であるその他の技法では、変異体タンパク質の折りたたみを基準分子(例えば、天然タンパク質)と比較する。例えば、変異体と基準分子におけるシステインパターンの比較を行うことができる。質量分析ならびに還元およびアルキル化を用いた化学修飾は、ジスルフィド結合に使われているかまたはそのような結合に使われていないシステイン残基を決定するための方法を提供する(Bean et al., Anal. Biochem. 201:216-226, 1992;Gray, Protein Sci. 2:1732-1748, 1993;およびPatterson et al., Anal. Chem. 66:3727-3732, 1994)。修飾を受けた分子が基準分子と同じジスルフィド結合パターンを有さない場合、折りたたみに影響を受けると一般的に考えられている。折りたたみを測定するための周知でありかつ認められている別の方法は、円二色性(CD)である。修飾分子および基準分子によって生じるCDスペクトルを測定および比較することは、日常的業務である(Johnson, Proteins 7:205-214, 1990)。結晶学は、折りたたみおよび構造を解析するための別の周知の方法である。核磁気共鳴(NMR)、消化ペプチドマッピング、およびエピトープマッピングもまた、折りたたみならびにタンパク質およびポリペプチド間の構造的類似性を解析するための公知の方法である(Schaanan et al., Science 257:961-964, 1992)。
【0132】
配列番号:2および配列番号:5に示すpHHLA2ポリペプチド配列のHopp/Woods親水性プロファイルを作成することができる(Hopp et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 78:3824-3828, 1981;Hopp, J. Immun. Meth. 88:1-18, 1986、およびTriquier et al., Protein Engineering 11:153-169, 1998)。このプロファイルは、スライドする6残基領域に基づく。埋没したG、S、およびT残基、ならびに露出しているH、Y、およびW残基は無視される。
【0133】
当業者は、pHHLA2ポリペプチドのアミノ酸配列において修飾を設計する際に、全体的な構造および生物学的特性を破壊しないよう、親水性または疎水性が考慮されることを認識すると考えられる。置換に関して特に対象となるのは、Val、Leu、およびIleからなる群、またはMet、Gly、Ser、Ala、Tyr、およびTrpからなる群より選択される疎水性残基である。例えば、置換を許容する残基には、配列番号:2および配列番号:5に示されるような残基が含まれ得る。しかしながら、システイン残基は比較的置換の許容性がないと考えられる。
【0134】
必須アミノ酸の同一性はまた、B7ファミリーメンバーとpHHLA2との配列類似性の解析から推測することができる。前述の「FASTA」解析などの方法を用いて、高い類似性の領域がタンパク質ファミリー内に同定され、これを用いて保存領域のアミノ酸配列を解析する。構造に基づいて変異体pHHLA2ポリヌクレオチドを同定する別のアプローチは、潜在的変異体pHHLA2ポリヌクレオチドをコードする核酸分子が、本明細書に記載の配列番号:1または配列番号:4のヌクレオチド配列を有する核酸分子とハイブリダイズし得るかどうかを決定することである。
【0135】
本発明のポリペプチド中の必須アミノ酸を同定するその他の方法は、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャン突然変異誘発などの、当技術分野において公知の手順である(Cunningham and Wells, Science 244:1081 (1989)、Bass et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 88:4498 (1991)、Coombs and Corey, 「Site-Directed Mutagenesis and Protein Engineering」, Proteins: Analysis and Design, Angeletti (ed.), pages 259-311 (Academic Press, Inc. 1998))。後者の技法においては、分子内のあらゆる残基に単一のアラニン突然変異を導入し、得られた突然変異分子を以下に開示する生物活性について試験して、分子の活性に重要であるアミノ酸残基を同定する。同様に、Hilton et al., J. Biol. Chem. 271:4699 (1996)も参照されたい。
【0136】
本発明はまた、可溶性pHHLA2ポリペプチドの機能的断片を含む可溶性pHHLA2ポリペプチド、およびそのような機能的断片をコードする核酸分子を含む。核酸分子の常用的な欠失解析を行い、pHHLA2ポリペプチドをコードする核酸分子の機能的断片を得ることができる。例として、配列番号:1もしくは配列番号:5またはその断片のヌクレオチド配列を有するDNA分子をBal31ヌクレアーゼで消化して、一連の入れ子状態の欠失体を得ることができる。次いで、これらのDNA断片を適切な読み枠で発現ベクターに挿入し、発現されたポリペプチドを単離し、pHHLA2活性または抗pHHLA2と結合する能力に関して試験する。エキソヌクレアーゼ消化に代わる別の方法では、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を用いて、所望のpHHLA2断片の産生を特定化するために欠失または終止コドンを導入する。または、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、pHHLA2ポリヌクレオチドの特定の断片を合成することができる。
【0137】
機能的ドメインを同定するための標準的な方法は、当業者に周知である。例えば、インターフェロンの片側または両側の末端における切断に関する研究が、Horisberger and Di Marco, Pharmac. Ther. 66:507 (1995)によって要約されている。さらに、タンパク質の機能解析の標準的な技法は、例えば、Treuter et al., Molec. Gen. Genet. 240:113 (1993);Content et al., 「Expression and preliminary deletion analysis of the 42 kDa 2-5A synthetase induced by human interferon」, Biological Interferon Systems, Proceedings of ISIR-TNO Meeting on Interferon Systems, Cantell (ed.), pages 65-72 (Nijhoff, 1987);Herschman, 「The EGF Receptor」, Control of Animal Cell Proliferation 1, Boynton et al., (eds.) pages 169-199 (Academic Press 1985);Coumailleau et al., J. Biol. Chem. 270:29270 (1995);Fukunaga et al., J. Biol. Chem. 270:25291 (1995);Yamaguchi et al., Biochem. Pharmacol. 50:1295 (1995);およびMeisel et al., Plant Molec. Biol. 30:1 (1996)により記載されている。
【0138】
Reidhaar-Olson and Sauer(Science 241:53-57, 1988)またはBowie and Sauer(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-2156, 1989)によって開示されているような突然変異誘発およびスクリーニングの公知の方法を用いて、複数のアミノ酸置換を作製して試験することができる。簡潔に説明すると、これらの著者らは、ポリペプチド中の2か所またはそれ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、次いで突然変異誘発ポリペプチドの配列を決定して、各位置における許容可能な置換の範囲を決定する方法について開示している。用いることができるその他の方法には、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al., Biochem. 30:10832-10837, 1991;Ladner et al.、米国特許第5,223,409号;Huse, WIPO公報 WO 92/062045)、および領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al., Gene 46:145, 1986;Ner et al., DNA 7:127, 1988)が含まれる。
【0139】
開示するpHHLA2のヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の変異体は、Stemmer, Nature 370:389-91, 1994、Stemmer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:10747-51, 1994、およびWIPO公報 WO 97/20078により開示されているDNAシャフリングによって作製することもできる。簡潔に説明すると、親DNAのランダムな断片化およびこれに続くPCRを用いた再構築による、ランダムに導入された点突然変異を生じるインビトロ相同組換えによって、変異体DNA分子が作製される。この技法は、対立遺伝子変異体または異なる種に由来するDNA分子などの親DNA分子のファミリーを用いて改良することで、この過程にさらなる多様性を導入することができる。所望の活性の選択またはスクリーニングの後に、突然変異誘発およびアッセイをさらに繰り返すことにより、所望の突然変異を選択しつつ同時に有害な変化に対して選択することによる配列の速やかな「進化」が提供される。
【0140】
本明細書に開示する突然変異誘発法をハイスループット自動スクリーニング法と併用して、宿主細胞内のクローン化突然変異誘発pHHLA2共受容体ポリペプチドの活性を検出することができる。この点において好ましいアッセイ法には、後述する細胞増殖アッセイ法およびバイオセンサーに基づくリガンド結合アッセイ法が含まれる。活性のある受容体またはその一部(例えば、リガンド結合断片、シグナル伝達ドメインなど)をコードする突然変異誘発DNA分子を宿主細胞から回収し、最新装置を用いて迅速に配列決定することができる。これらの方法により、関心対象のポリペプチド内の個々のアミノ酸残基の重要性を迅速に決定することができ、またこれらの方法は未知の構造のポリペプチドにも適用することができる。
【0141】
本明細書において考察した方法を用いて、当業者は、共刺激活性を保持する配列番号:2および配列番号:5の種々のポリペプチド断片または変異体を同定および/または調製することができる。例えば、細胞外ドメイン(配列番号:2の残基23(Ile)〜346(Gly);および配列番号:5の残基1(Met)〜313(Gly))またはその対立遺伝子変異体もしくは種オーソログと実質的に相同的であり、野生型pHHLA2タンパク質の共刺激活性の抑制を保持する種々のポリペプチドを調製することによって、pHHLA2「可溶性受容体」を作製することができる。そのようなポリペプチドは、例えば膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインの一部またはすべてに由来するさらなるアミノ酸を含み得る。そのようなポリペプチドはまた、標識、親和性タグなどの、本明細書に一般的に開示するさらなるポリペプチド部分を含み得る。
【0142】
変異体、可溶性受容体、および融合ポリペプチドまたはタンパク質を含む任意のpHHLA2ポリペプチドに関して、当業者は、上記の表1および2に記載される情報を用いて、そのような変異体をコードする完全に縮重したポリヌクレオチド配列を容易に作製することができる。
【0143】
全長ポリペプチド、可溶性ポリペプチド、機能的断片、および融合ポリペプチドを含む本発明のpHHLA2ポリペプチドは、従来の技法に従って、遺伝子改変宿主細胞において生成することができる。適切な宿主細胞は、外因性DNAを形質転換またはトランスフェクションし、培養で増殖させることができる細胞種であり、これには細菌、真菌細胞、および培養高等真核細胞が含まれる。真核細胞、特に多細胞生物の培養細胞が好ましい。クローニングされたDNA分子を操作する技法、および外因性DNAを種々の宿主細胞に導入する技法は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989、およびAusubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc., NY, 1987によって開示されている。
【0144】
本発明はまた、以下の機能的に連結されたエレメント:転写プロモーター、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする第1DNA部分、および転写ターミネーターを含む単離されたおよび精製されたDNA分子を含む発現ベクターであって、コードされる可溶性ポリペプチドがT細胞の共刺激を抑制するまたは拮抗する発現ベクターを提供する。DNA分子は、DNA部分に機能的に連結された分泌シグナル配列をさらに含み得る。DNA部分は可溶性共受容体をコードし得、親和性タグをさらにコードし得る。本発明はまた、上記発現ベクターを含む培養細胞を提供する。
【0145】
通常、例えばpHHLA2ポリペプチドをコードするDNA配列は、発現ベクターにおいて、一般的に転写プロモーターおよび転写ターミネーターを含むその発現に必要な他の遺伝子エレメントに機能的に連結させる。ベクターもまた一般的に、1つまたは複数の選択マーカーおよび1つまたは複数の複製開始点を含むが、当業者であれば、特定の系においては選択マーカーが別個のベクターに提供されてもよく、外因性DNAの複製が宿主細胞ゲノムへの組込みによって提供され得ることを認識すると考えられる。プロモーター、ターミネーター、選択マーカー、ベクター、およびその他のエレメントの選択は、当業者のレベル内での日常的な設計事項である。そのような多くのエレメントが文献に記載されており、市販業者を通して入手することができる。
【0146】
例えばpHHLA2ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に導くためには、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、またはプレ配列としても知られる)を発現ベクター中に提供する。分泌シグナル配列はpHHLA2のものであってよく、または別の分泌タンパク質(例えば、t-PA)に由来してもよいし、もしくは新規に合成してもよい。分泌シグナル配列はpHHLA2 DNA配列に機能的に連結する、すなわち2つの配列を正確な読み枠で結合し、新たに合成されるポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に導くように配置する。分泌シグナル配列は通常、関心対象のポリペプチドをコードするDNA配列の5'側に位置するが、ある種のシグナル配列は、関心対象のDNA配列の他所に位置してもよい(例えば、Welch et al.、米国特許第5,037,743号;Holland et al.、米国特許第5,143,830号を参照されたい)。
【0147】
または、他のポリペプチドを分泌経路に導くために、本発明のポリペプチドに含まれる分泌シグナル配列を用いる。本発明は、そのような融合ポリペプチドを提供する。当技術分野において公知であり本明細書において開示する方法を用いて、配列番号:2のアミノ酸1(Met)〜アミノ酸22(Gly)に由来する分泌シグナル配列を別のポリペプチドに機能的に連結したシグナル融合ポリペプチドを作製することができる。本発明の融合ポリペプチドに含める分泌シグナル配列は好ましくは、付加的ペプチドを分泌経路に導くために、付加的ペプチドのアミノ末端に融合する。そのような構築物は、当技術分野において公知である多くの用途を有する。例えば、これらの新規分泌シグナル配列融合構築物は、通常は非分泌性であるタンパク質の活性成分の分泌を導き得る。このような融合物をインビボまたはインビトロで用いて、ペプチドを分泌経路に導くことができる。
【0148】
本発明はまた、以下の機能的に連結されたエレメント:転写プロモーター、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有する可溶性ポリペプチドをコードするDNA部分、および転写ターミネーターを含むDNA分子を含む第1発現ベクターを含む培養細胞であって、コードされる可溶性ポリペプチドがT細胞の共刺激を抑制する培養細胞を提供する。DNA部分は、ホモ二量体もしくはヘテロ二量体であってよい可溶性ポリペプチドをコードし得、および/または本明細書に記載の親和性タグをさらに含み得る。DNA部分は、全長pHHLA2ポリペプチドをコードし得る。
【0149】
培養哺乳動物細胞は、本発明において適切な宿主である。外因性DNAを哺乳動物宿主細胞に導入する方法には、リン酸カルシウムによるトランスフェクション法(Wigler et al., Cell 14:725, 1978;Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7:603, 1981:Graham and Van der Eb, Virology 52:456, 1973)、エレクトロポレーション法(Neumann et al., EMBO J. 1: 841-845, 1982)、DEAE-デキストランによるトランスフェクション法(Ausubel et al.、前記)、およびリポソームによるトランスフェクション法(Hawley-Nelson et al., Focus 15:73, 1993;Ciccarone et al., Focus 15:80, 1993)、ならびにウイルスベクター(Miller and Rosman, BioTechniques 7:980-90, 1989;Wang and Finer, Nature Med. 2:714-716, 1996)が含まれる。培養哺乳動物細胞における組換えポリペプチドの産生は、例えば、Levinson et al.、米国特許第4,713,339号;Hagen et al.、米国特許第4,784,950号;Palmiter et al.、米国特許第4,579,821号;およびRingold、米国特許第4,656,134号よって開示されている。適切な培養哺乳動物細胞には、COS-1(ATCC番号CRL 1650)、COS-7(ATCC番号CRL 1651)、BHK(ATCC番号CRL 1632)、BHK 570(ATCC番号CRL 10314)、293(ATCC番号CRL 1573;Graham et al., J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977)、およびチャイニーズハムスター卵巣(例えば、CHO-K1;ATCC番号CCL 61)細胞株が含まれる。さらなる適切な細胞株が当技術分野において公知であり、American Type Culture Collection、メリーランド州、ロックビルなどの公共受託所から入手することができる。一般的に、SV-40またはサイトメガロウイルス由来のプロモーターなどの、強力な転写プロモーターが好ましい。例えば、米国特許第4,956,288号を参照されたい。その他の適切なプロモーターには、メタロチオネイン遺伝子に由来するプロモーター(米国特許第4,579,821号および第4,601,978号)およびアデノウイルス主要後期プロモーターが含まれる。
【0150】
外来DNAが挿入された培養哺乳動物細胞を選択するには、薬剤選択が一般的に用いられる。このような細胞は通常、「トランスフェクタント」と称される。選択薬剤の存在下で培養され、関心対象の遺伝子をそれらの子孫に受け渡し得る細胞は、「安定なトランスフェクタント」と称される。好ましい選択マーカーは、抗生物質ネオマイシンに対する耐性をコードする遺伝子である。選択は、G-418などのネオマイシン型薬剤の存在下で行われる。選択システムを用いて関心対象の遺伝子の発現レベルを上昇させることも可能であり、この過程は「増幅」と称される。増幅は、低レベルの選択薬剤の存在下でトランスフェクタントを培養し、次いで、導入遺伝子の産物を高レベルで産生する細胞を選択するために、選択薬剤の量を増加していくことによって行われる。好ましい増幅可能な選択マーカーは、メトトレキセートに対する耐性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼである。その他の薬物耐性遺伝子(例えば、ハイグロマイシン耐性、多剤耐性、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ)を用いることもできる。表現型変化を導入する緑色蛍光タンパク質などの他のマーカー、またはCD4、CD8、クラスI MHC、胎盤アルカリホスファターゼなどの細胞表面タンパク質を用いて、FACSソーティングまたは磁気ビーズ分離技術などの手段により、トランスフェクションされていない細胞からトランスフェクションされた細胞を分別することも可能である。
【0151】
植物細胞、昆虫細胞、および鳥類細胞を含む、その他の高等真核細胞を宿主として用いることもできる。植物細胞で遺伝子を発現させるためのベクターとしてのアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)の使用は、Sinkar et al., J. Biosci. (Bangalore) 11:47-58, 1987によって概説されている。昆虫細胞の形質転換およびその細胞における外来ポリペプチドの産生は、Guarino et al.、米国特許第5,162,222号、およびWIPO公報 WO 94/06463によって開示されている。通常オートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus:AcNPV)に由来する組換えバキュロウイルスを、昆虫細胞に感染させることができる。King, L.A. and Possee, R.D., The Baculovirus Expression System: A Laboratory Guide, London, Chapman & Hall;O'Reilly, D.R. et al., Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual, New York, Oxford University Press., 1994;およびRichardson, C. D., Ed., Baculovirus Expression Protocols. Methods in Molecular Biology, Totowa, NJ, Humana Press, 1995を参照されたい。組換えpHHLA2バキュロウイルスを作製する第2の方法は、Luckow(Luckow, V.A, et al., J Virol 67:4566-79, 1993)により記載されるトランスポゾンに基づく系を利用する。トランスファーベクターを利用するこの系は、Bac-to-Bac(商標)キット(Life Technologies、メリーランド州、ロックビル)として市販されている。この系は、「バクミド」と称される大型プラスミドとして大腸菌内で維持されるバキュロウイルスゲノム中に、pHHLA2ポリペプチドをコードするDNAを移動させるために、Tn7トランスポゾンを含むトランスファーベクター、pFastBac1(商標)(Life Technologies)を利用する。Hill-Perkins, M.S. and Possee, R.D., J Gen Virol 71:971-6, 1990;Bonning, B.C. et al., J Gen Virol 75:1551-6, 1994;およびChazenbalk, G.D., and Rapoport, B., J Biol Chem 270:1543-9, 1995を参照されたい。さらに、トランスファーベクターは、発現されるpHHLA2ポリペプチドのC末端またはN末端における、エピトープタグをコードするDNAとのインフレーム融合物を含み得、タグは例えばGlu-Gluエピトープタグである(Grussenmeyer, T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 82:7952-4, 1985)。当技術分野で公知の技法を用いて、pHHLA2を含むトランスファーベクターで大腸菌を形質転換し、組換えバキュロウイルスの指標となる中断されたlacZ遺伝子を含むバクミドをスクリーニングする。組換えバキュロウイルスゲノムを含むバクミドDNAを通常の技法で単離し、これを用いてヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞、例えばSf9細胞にトランスフェクションする。その後、pHHLA2を発現する組換えウイルスが産生される。当技術分野で通常用いられる方法により、組換えウイルス保存液を作製する。
【0152】
組換えウイルスを用いて、宿主細胞、典型的にはヨトウガに由来する細胞株を感染させる。一般的には、Glick and Pasternak, Molecular Biotechnology: Principles and Applications of Recombinant DNA, ASM Press, Washington, D.C., 1994を参照されたい。別の適切な細胞株は、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)に由来するHigh FiveO(商標)細胞株(Invitrogen)である(米国特許第5,300,435号)。市販の無血清培地を用いて、これらの細胞を培養および維持することができる。適切な培地は、Sf9細胞に関してはSf900 II(商標)(Life Technologies)またはESF 921(商標)(Expression Systems)であり;およびイラクサギンウワバ細胞に関してはEx-cellO405(商標)(JRH Biosciences、カンザス州、レネックサ)またはExpress FiveO(商標)(Life Technologies)である。使用する手順は一般的に、入手可能な実験室手引き書に記載されている(King, L. A. and Possee, R.D.、前記;O'Reilly, D.R. et al.、前記;Richardson, C. D.、前記)。その後の上清からのpHHLA2の精製は、本明細書に記載の方法を用いて達成することができる。
【0153】
酵母細胞を含む真菌細胞もまた、本発明において用いることができる。この点において特に対象となる酵母種には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、およびピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)が含まれる。外因性DNAでS. セレビシエ細胞を形質転換し、その細胞から組換えポリペプチドを産生させる方法は、例えば、Kawasaki、米国特許第4,599,311号;Kawasaki et al.、米国特許第4,931,373号;Brake、米国特許第4,870,008号;Welch et al.、米国特許第5,037,743号;およびMurray et al.、米国特許第4,845,075号によって開示されている。形質転換細胞は、選択マーカーによって決定される表現型、通常、薬剤耐性かまたは特定の栄養素(例えば、ロイシン)の非存在下で増殖する能力により選択される。サッカロミセス・セレビシエで用いるための好ましいベクター系は、グルコース含有培地中での増殖によって形質転換細胞を選択できる、Kawasaki et al.(米国特許第4,931,373号)によって開示されているPOT1ベクター系である。酵母での使用に適したプロモーターおよびターミネーターには、解糖系酵素遺伝子(例えば、Kawasaki、米国特許第4,599,311号;Kingsman et al.、米国特許第4,615,974号;およびBitter、米国特許第4,977,092号を参照されたい)およびアルコール脱水素酵素遺伝子のプロモーターおよびターミネーターが含まれる。米国特許第号4,990,446号;第5,063,154号;第5,139,936号;および第4,661,454号もまた参照されたい。ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、黒穂菌(Ustilago maydis)、ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカ、ピキア・ギリエルモンジイ(Pichia guillermondii)、およびカンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)を含む他の酵母の形質転換系も、当技術分野において公知である。例えば、Gleeson et al., J. Gen. Microbiol. 132:3459-65, 1986、およびCregg、米国特許第4,882,279号を参照されたい。アスペルギルス属(Aspergillus)細胞は、McKnight et al.、米国特許第4,935,349号の方法に従って利用することができる。アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)を形質転換する方法は、Sumino et al.、米国特許第5,162,228号によって開示されている。ニューロスポラ属(Neurospora)を形質転換する方法は、Lambowitz、米国特許第4,486,533号によって開示されている。
【0154】
組換えタンパク質を産生させるための宿主としてのピキア・メタノリカの使用は、WIPO公報 WO 97/17450、WO 97/17451、WO 98/02536、およびWO 98/02565において開示されている。P. メタノリカの形質転換に使用するDNA分子は通常、二本鎖の環状プラスミドとして調製し、好ましくは線状化してから形質転換に使用する。P. メタノリカでポリペプチドを産生させる場合、プラスミド中のプロモーターおよびターミネーターは、P. メタノリカアルコール利用遺伝子(AUG1またはAUG2)などのP. メタノリカ遺伝子のプロモーターおよびターミネーターであることが好ましい。その他の有用なプロモーターには、ジヒドロキシアセトンシンターゼ(DHAS)、ギ酸脱水素酵素(FMD)、およびカタラーゼ(CAT)遺伝子のプロモーターが含まれる。宿主染色体へのDNAの組込みを促進するには、プラスミドの発現部分全体が、両末端において宿主DNA配列と隣接していることが好ましい。ピキア・メタノリカにおいて用いるための好ましい選択マーカーは、ホスホリボシル-5-アミノイミダゾールカルボキシラーゼ(AIRC;EC 4.1.1.21)をコードし、アデニンの非存在下でade2宿主細胞の増殖を可能とする、P. メタノリカADE2遺伝子である。メタノールの使用を最小限に抑えることが望ましい大規模な産業工程の場合には、両メタノール利用遺伝子(AUG1およびAUG2)が欠損している宿主細胞を用いることが好ましい。分泌タンパク質を産生させる場合には、液胞プロテアーゼ遺伝子(PEP4およびPRB1)が欠損している宿主細胞が好ましい。関心対象のポリペプチドをコードするDNAを含むプラスミドのP. メタノリカ細胞への導入を促進するには、エレクトロポレーションが用いられる。P. メタノリカ細胞は、電界強度2.5〜4.5 kV/cm、好ましくは約3.75 kV/cm、および時定数(t) 1〜40ミリ秒、最も好ましくは約20ミリ秒を有する指数関数的に減衰するパルス電界を用いるエレクトロポレーションにより形質転換することが好ましい。
【0155】
細菌である大腸菌、バチルス属(Bacillus)、およびその他の属の株を含む原核宿主細胞もまた、本発明において有用な宿主細胞である。これらの宿主を形質転換し、宿主内のクローン化された外来DNA配列を発現させる技法は、当技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al.、前記を参照されたい)。pHHLA2ポリペプチドを大腸菌などの細菌で発現させる場合、ポリペプチドは、典型的に不溶性の顆粒として細胞質中に維持され得るか、または細菌の分泌配列によって細胞膜周辺腔に導かれ得る。前者の場合は、細胞を溶解し、顆粒を回収して、例えばグアニジンイソチオシアネートまたは尿素を用いて変性させる。次いで、尿素、および還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンの組み合わせの溶液に対して透析を行い、次に緩衝生理食塩水溶液に対して透析を行うなどして、変性剤を希釈することにより、変性ポリペプチドを再び折りたたんで二量体化することができる。後者の場合は、(例えば、超音波処理または浸透圧ショックにより)細胞を破砕して細胞膜周辺腔の内容物を放出させ、タンパク質を回収することにより、変性および再折りたたみを必要とすることなく、ポリペプチドを細胞膜周辺腔から可溶型でかつ機能的な形態で回収することができる。
【0156】
形質転換またはトランスフェクションした宿主細胞は、従来の手順に従って、選択した宿主細胞の増殖に必要な栄養素およびその他の成分を含む培地で培養する。既知組成培地および複合培地を含む種々の適切な培地が当技術分野において公知であり、これらは一般に、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、およびミネラルを含む。培地はまた、必要に応じて、増殖因子または血清のような成分を含み得る。一般的に増殖培地によって、外因的に加えられたDNAを含む細胞が選択されるが、例えばこれは、薬剤選択によるか、または発現ベクター上で運搬されたもしくは宿主細胞に同時トランスフェクションされた選択マーカーによって補足される必須栄養素の欠乏による。P. メタノリカ細胞は、適切な炭素源、窒素源、および微量栄養素を含む培地中で、約25℃〜35℃の温度で培養する。液体培養液には、小フラスコの振盪または発酵槽のスパージングなど、従来の手段により十分な通気を与える。P. メタノリカの好ましい培地は、YEPD(2% D-グルコース、2% Bacto(商標)ペプトン(Difco Laboratories、ミシガン州、デトロイト)、1% Bacto(商標)酵母抽出物(Difco Laboratories)、0.004%アデニン、および0.006% L-ロイシン)である。
【0157】
本発明の1つの局面においては、pHHLA2ポリペプチドを培養細胞により産生させ、この細胞を用いて、T細胞上のその対応物共受容体をスクリーニングする。このアプローチを要約すると、受容体をコードするcDNAまたは遺伝子を、その発現に必要な他の遺伝子エレメント(例えば、転写プロモーター)と結合し、得られた発現ベクターを宿主細胞に挿入する。DNAを発現し、機能的受容体を産生する細胞を選択して、これを種々のスクリーニング系において用いる。
【0158】
本発明のpHHLA2タンパク質は、哺乳動物細胞で発現させることができる。適切な哺乳動物宿主細胞の例には、アフリカミドリザル腎細胞(Vero;ATCC CRL 1587)、ヒト胚腎細胞(293-HEK;ATCC CRL 1573)、ベビーハムスター腎細胞(BHK-21、BHK-570;ATCC CRL 8544、ATCC CRL 10314)、イヌ腎細胞(MDCK;ATCC CCL 34)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-K1;ATCC CCL61;CHO DG44 (Chasin et al., Som. Cell. Molec. Genet. 12:555, 1986))、ラット下垂体細胞(GH1;ATCC CCL82)、HeLa S3細胞(ATCC CCL2.2)、ラット肝細胞癌細胞(H-4-II-E;ATCC CRL 1548)、SV40形質転換サル腎細胞(COS-1;ATCC CRL 1650)、およびマウス胚細胞(NIH-3T3;ATCC CRL 1658)が含まれる。
【0159】
可溶性pHHLA2ポリペプチド(例えば、単量体またはホモ二量体)は、免疫グロブリン重鎖定常領域、典型的に2つの定常領域ドメインを含み可変領域を欠くFc断片との融合物として発現させることができる。そのような融合物を調製する方法は、米国特許第5,155,027号および第5,567,584号に開示されている。このような融合物は典型的に、Fc部分が相互にジスルフィド結合し、2つの非Igポリペプチドが相互に近接して配置された多量体分子として分泌される。この種の融合物は、例えば、二量体化のため、安定性およびインビボ半減期を増大させるため、リガンドをアフィニティー精製するため、インビトロアッセイツールまたはアンタゴニストとして用いることができる。アッセイに用いるためには、Fc領域を介してキメラを支持体に結合し、ELISA形式で使用する。
【0160】
本発明はまた、pHHLA2ポリペプチドまたは本明細書に記載するその少なくとも一部に特異的に結合する抗体(例えば、中和モノクローナル抗体、アゴニストモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体)を提供する。
【0161】
pHHLA2ポリペプチドはまた、そのエピトープ、ペプチド、またはポリペプチド(例えば、配列番号:2および/または配列番号:5の細胞外ドメインの一部)に結合する抗体を調製するために用いることができる。pHHLA2ポリペプチドの細胞外ドメインまたはその断片は、動物に接種し、免疫応答を誘発するための抗原(免疫原)として働く。当業者であれば、抗原性のエピトープ保有ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346および/または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313などの、pHHLA2ポリペプチドの細胞外ドメインの少なくとも6個、好ましくは少なくとも9個、より好ましくは少なくとも15個〜約30個の連続したアミノ酸残基の配列を含み得ることを認識すると考えられる。例えば、30〜100残基から最大でアミノ酸配列の全長までといった、pHHLA2ポリペプチドのより大きな部分を含むポリペプチドも含まれる。抗原または免疫原性エピトープはまた、本明細書に記載するように、結合されたタグ、アジュバント、担体、および賦形剤を含み得る。
【0162】
これらの抗原を動物に接種することによって生じた免疫応答による抗体は、本明細書に記載する通りに単離し精製することができる。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を調製し単離する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Current Protocols in Immunology, Cooligan, et al. (eds.), National Institutes of Health, John Wiley and Sons, Inc., 1995;Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, NY, 1989;およびHurrell, J. G. R., Ed., Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications, CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, 1982を参照されたい。
【0163】
当業者に明白であるように、ポリクローナル抗体は、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウス、およびラットなどの様々な温血動物にpHHLA2ポリペプチドまたはその断片を接種することにより作製することができる。多量体サイトカイン受容体の免疫原性は、ミョウバン(水酸化アルミニウム)またはフロイント完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバントなどのアジュバントを使用することで増大させることができる。ポリペプチド免疫原は全長分子またはその一部であってよい。ポリペプチド部分が「ハプテン様」である場合には、免疫化のために、そのような部分を高分子担体(キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、または破傷風トキソイドなど)と有利に結合または連結することができる。
【0164】
本明細書において用いる「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、アフィニティー精製ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(例えば、中和およびアゴニスト)、ならびにF(ab')2およびFabタンパク質分解断片などの抗原結合断片が含まれる。「Fab断片」(VL-CL-CH1-VH)、「Fab'断片」(重鎖ヒンジ領域を有するFab)、および「F(ab')2断片」(重鎖ヒンジ領域によって結合されたFab'断片の二量体)、キメラ抗体、Fv断片、一本鎖抗体などの遺伝子改変された無傷の抗体または断片、ならびに合成抗原結合ペプチドおよびポリペプチドもまた含まれる。組換え法を用いて、合成ペプチドリンカーによって結合されたVLおよびVHからなる、「一本鎖Fv」(可変断片)または「scFv」と称されるより小さな抗原結合断片も作製されている。非ヒトCDRをヒトフレームワークおよび定常領域に移植することにより、または非ヒト可変ドメイン全体を組み込むことにより(任意に、露出残基の置換によりヒト様表面でそれらを「覆い隠す(cloaking)」が、この場合「張り合わせ(veneered)」抗体が生じる)、非ヒト抗体をヒト化することができる。場合によっては、ヒト化抗体は、適切な結合特性を増強するために、ヒト可変領域フレームワークドメイン内に非ヒト残基を保持し得る。抗体をヒト化することによって、生物学的半減期を延長することができ、またヒトに投与した際の有害な免疫応答の可能性が減少する。さらに、WIPO公報 WO 98/24893に開示されているように、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むように操作されたトランスジェニック非ヒト動物において、ヒト抗体を産生させることができる。これらの動物における内因性免疫グロブリン遺伝子は、例えば相同組換えによって不活化するかまたは除去することが好ましい。
【0165】
抗体は、(1) 抗体が閾値レベルの結合活性を示し、かつ(2) 抗体が関連ポリペプチド分子と有意に交差反応しない場合に、特異的に結合すると見なされる。閾値レベルの結合は、本明細書中の抗多量体サイトカイン受容体抗体が、多量体サイトカイン受容体、ペプチド、またはエピトープと、対照(非多量体サイトカイン受容体)タンパク質に対する結合親和性よりも少なくとも10倍高い親和性で結合する場合に決定される。抗体は、106 M-1またはそれ以上、好ましくは107 M-1またはそれ以上、より好ましくは108 M-1またはそれ以上、最も好ましくは109 M-1またはそれ以上の結合親和性(Ka)を示すことが好ましい。抗体の結合親和性は、例えばスキャッチャード解析(Scatchard, G., Ann. NY Acad. Sci. 51:660-672 (1949))により、当業者によって容易に決定され得る。
【0166】
抗pHHLA2ポリペプチド抗体が関連ポリペプチド分子と有意に交差反応しないかどうかは、例えば、標準的なウェスタンブロット解析(Ausubel et al.、前記)を用いて、その抗体がpHHLA2ポリペプチドを検出するが公知の関連ポリペプチドを検出しないことにより示される。公知の関連ポリペプチドの例は、公知のオーソログおよびパラログ、ならびにタンパク質ファミリーの類似の公知のメンバーなど、先行技術において開示されているものである。非ヒトpHHLA2およびpHHLA2突然変異体ポリペプチドを用いて、スクリーニングを行うことができる。さらに、抗体を公知の関連ポリペプチド「に対してスクリーニングして」、pHHLA2ポリペプチドに特異的に結合する集団を単離することができる。例えば、pHHLA2ポリペプチドに対して産生された抗体を、不溶性の基質に接着させた関連ポリペプチドに吸着させると、適切な緩衝条件下において、pHHLA2ポリペプチドに特異的な抗体は基質を通過することになる。スクリーニングによって、公知の密接に関連するポリペプチドに対して非交差反応性のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が単離され得る(Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988;Current Protocols in Immunology, Cooligan, et al. (eds.), National Institutes of Health, John Wiley and Sons, Inc., 1995)。特異的抗体のスクリーニングおよび単離は、当技術分野において周知である。Fundamental Immunology, Paul (eds.), Raven Press, 1993;Getzoff et al., Adv. in Immunol. 43: 1-98, 1988;Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Goding, J.W. (eds.), Academic Press Ltd., 1996;Benjamin et al., Ann. Rev. Immunol. 2: 67-101, 1984を参照されたい。特異的に結合する抗pHHLA2ポリペプチド抗体は、以下に開示する当技術分野おけるいくつかの方法によって検出することができる。
【0167】
当業者に公知の種々のアッセイ法を利用して、pHHLA2共受容体タンパク質またはポリペプチドに結合する抗体を検出することができる。例示的なアッセイ法は、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (Eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988に詳述されている。このようなアッセイ法の代表例には、同時免疫電気泳動、放射性免疫測定法、放射性免疫沈降法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ドットブロットまたはウエスタンブロットアッセイ法、阻害または競合アッセイ法、およびサンドイッチアッセイ法が含まれる。さらに、野生型 対 突然変異体pHHLA2共受容体タンパク質またはポリペプチドに対する結合に関して、抗体をスクリーニングすることができる。
【0168】
別の局面において、本発明は、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313を含むpHHLA2ポリペプチドの細胞外ドメインの少なくとも一部に結合する、先に開示した方法によって生成される抗体を提供する。1つの態様において、先に開示した抗体は、配列番号:2または配列番号:5に示されるポリペプチドに特異的に結合する。別の態様において、抗体は、中和モノクローナル抗体、pHHLA2の細胞外ドメインを標的化する1つもしくは複数のscFv抗体断片(例えば、二重特異性または三重特異性抗体)などの中和抗体断片、またはポリクローナル抗体であってよい。
【0169】
pHHLA2ポリペプチドに対する抗体は、pHHLA2ポリペプチドを発現する細胞にタグ付けするため;アフィニティー精製によりpHHLA2ポリペプチドを単離するため;pHHLA2ポリペプチドの循環レベルを決定する診断アッセイのため;根底にある病態または疾患のマーカーとして可溶性pHHLA2ポリペプチドを検出または定量化するため;FACSを用いる解析法において;発現ライブラリーをスクリーニングするため;抗イディオタイプ抗体を作製するため;ならびにpHHLA2ポリペプチド活性をインビトロおよびインビボで遮断するための中和抗体またはアンタゴニストとして、用いることができる。適切な直接的タグまたは標識には、放射性核種、酵素、基質、補因子、ビオチン、阻害剤、蛍光マーカー、化学発光マーカー、磁気粒子などが含まれる;間接的なタグまたは標識は、中間体としてのビオチン-アビジンまたはその他の相補体/抗相補体対の使用を特徴とし得る。本明細書における抗体はまた、薬物、毒素、放射性核種などに直接または間接的に結合させることができ、これらの複合体はインビボでの診断または治療用途に用いられる。さらに、多量体サイトカイン受容体に対する抗体またはその断片は、例えばウェスタンブロットまたは当技術分野で公知のその他のアッセイといったアッセイにおいて、変性した多量体サイトカイン受容体またはその断片を検出するためにインビトロで用いることができる。
【0170】
適切な検出可能分子をpHHLA2ポリペプチドまたは抗体に直接または間接的に結合させることができ、これには放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光マーカー、化学発光マーカー、磁気粒子などが含まれる。適切な細胞毒性分子をポリペプチドまたは抗体に直接または間接的に結合させることもでき、これには細菌または植物毒素(例えば、ジフテリア毒素、サポリン、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、リシン、アブリンなど)、およびヨウ素-131、レニウム-188、またはイットリウム-90などの治療用放射性核種(ポリペプチドもしくは抗体に直接結合させるか、または例えばキレート部分によって間接的に結合させる)が含まれる。多量体サイトカイン受容体または抗体はまた、アドリアマイシンなどの細胞毒性薬に結合させてもよい。検出可能分子または細胞毒性分子の間接的結合に関しては、検出可能分子または細胞毒性分子を相補体/抗相補体対のメンバーと結合させることができ、この場合、もう一方のメンバーはポリペプチドまたは抗体部分に結合させる。これらの目的に関して、ビオチン/ストレプトアビジンは例示的な相補体/抗相補体対である。
【0171】
ポリペプチド-毒素融合タンパク質または抗体-毒素融合タンパク質は、細胞または組織の標的抑制または除去のために用いることができる(例えば、癌細胞または組織を治療するため)。または、ポリペプチドが複数の機能的ドメイン(すなわち、活性化ドメインまたは受容体結合ドメインおよび標的化ドメイン)を有する場合には、標的化ドメインのみを含む融合タンパク質が、検出可能分子、細胞毒性分子、または相補体分子を関心対象の細胞または組織種に導くために適していると考えられる。ドメインのみを含む融合タンパク質が相補体分子を含む場合、抗相補体分子を検出可能分子または細胞毒性分子に結合させることができる。したがって、このようなドメイン-相補体分子融合タンパク質は、一般的な抗相補体-検出可能分子/細胞毒性分子複合体の細胞/組織特異的送達のための一般的な標的化媒体となる。
【0172】
本発明はまた、機能的ペプチド断片のアミノ酸配列に基づいて設計されたペプチド模倣化合物を提供する。ペプチド模倣化合物は、選択したペプチドの三次元構造と実質的に同じ三次元構造(すなわち、「ペプチドモチーフ」)を有する合成化合物である。ペプチドモチーフは、ペプチド模倣物が導出された元のpHHLA2機能的ペプチド断片の様式と質的に同一の様式でT細胞を共刺激する能力を有するペプチド模倣化合物を提供する。ペプチド模倣化合物は、細胞透過性の増加および生物学的半減期の延長など、それらの治療的有用性を増強する付加的な特徴を有し得る。
【0173】
ペプチド模倣物は典型的に、部分的または完全に非ペプチドである骨格を有するが、側鎖は、ペプチド模倣物の元となるペプチドに存在するアミノ酸残基の側鎖と同一である。いくつかの化学結合種、例えば、エステル、チオエステル、チオアミド、レトロアミド、還元カルボニル、ジメチレン、およびケトメチレン結合は、当技術分野において、プロテアーゼ抵抗性ペプチド模倣物の構築におけるペプチド結合の一般的に有用な代用結合であることが知られている。
【0174】
本発明の方法は、T細胞を共刺激するpHHLA2の機能を共刺激するまたは拮抗するために、T細胞をpHHLA2ポリペプチド分子またはその機能的断片と接触させる段階を含む。接触段階は、T細胞の活性化前、活性化中、活性化後に引き起こすことができる。T細胞をpHHLA2共受容体ポリペプチドと接触させる段階は、好ましくは活性化と実質的に同時である。活性化は、例えば、T細胞を、TCRまたはTCRと物理的に会合しているCD3複合体のポリペプチドの1つと結合する抗体に曝露することによって起こり得る。または、T細胞を、例えば抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞、マクロファージ、単球、またはB細胞)上の同種抗原(例えば、MHC同種抗原)、または上記APCのいずれかによるタンパク質抗原のプロセシングによって生成され、APC表面上のMHC分子によってT細胞に対して提示される抗原ペプチドに曝露することができる。T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞であってよい。pHHLA2共受容体分子は、細胞を含む溶液に添加してもよいし、または例えばMHC分子に結合した同種抗原または抗原ペプチドを提示するAPCのようなAPCの表面上に発現させてもよい。または、活性化がインビトロで行われる場合には、pHHLA2共受容体分子を、関連する培養容器、例えばプラスチックマイクロタイタープレートのウェルの底に結合させてもよい。
【0175】
本方法は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで行うことができる。pHHLA2共受容体のインビトロ適用は、例えば、免疫機序の基本的な科学的研究において、またはT細胞機能に関するいずれかの研究において用いるための活性化T細胞の生成のため、または例えば受動免疫療法のために有用であり得る。さらに、pHHLA2共受容体は、T細胞を取得した患者における関心対象の抗原に対する免疫に関して試験するよう設計されたインビトロアッセイ(例えば、T細胞増殖アッセイ)に添加することができる。pHHLA2共受容体をそのようなアッセイに添加することにより、より強力な、したがってより容易に検出できるインビトロ応答が生じることが予測される。
【0176】
pHHLA2共受容体タンパク質およびその変異体は、免疫応答促進治療薬として一般的に有用である。例えば、本発明のポリペプチドは、例えば、癌、エイズまたはエイズ関連症候群、その他のウイルスまたは環境により誘発される状態、および特定の先天性免疫不全症といった、免疫抑制を特徴とする疾患状態の治療に用いることができる。化合物はまた、放射線療法または特定の化学療法剤などの免疫抑制薬の使用によって損なわれた免疫機能を増大させるために用いることができ、したがって、そのような薬物または放射線療法と併用して与えられた場合に特に有用である。
【0177】
本発明のこれらの方法は、広範な種または患者、例えばヒト、非ヒト霊長動物、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、およびマウスに適用することができる。
【0178】
米国では、約500,000人の人々が、結腸および直腸(潰瘍性大腸炎)、または小腸および大腸の両方(クローン病)に影響を及ぼし得る炎症性腸疾患(IBD)に罹患している。これらの疾患の病因は不明であるが、これらの疾患には罹患組織の慢性炎症が関与している。可能性のある治療薬には、可溶性融合タンパク質を含むpHHLA2可溶性ポリペプチド、または本発明の抗pHHLA2抗体またはその抗体断片が含まれ、これらはIBDおよび関連疾患における炎症および病理学的影響を低減するための有益な治療薬として役立ち得る。
【0179】
クローン病は、消化管および胃腸(GI)管の炎症を引き起こす慢性疾患である。これは口腔から肛門に至るGI管のいずれの領域をも侵し得るが、小腸および/または結腸に最も好発する。クローン病の症状には、下痢(軟便、水性、頻回排便)、痙攣性の腹痛、発熱、および場合により直腸出血が含まれる。これらはクローン病の顕著な症状であるが、症状は人によって異なり得て、また経時的に変化し得る。食欲不振およびそれに続く体重減少も起こり得る。疲労はよく見られる状態である。患者によっては、肛門粘膜に裂傷(裂溝)を生じ得る。炎症はまた、瘻孔も引き起こし得る。瘻孔とは、腸の1つのループから別のループに通じる、または腸から膀胱、膣、もしくは皮膚に通じるトンネルである。症状は、軽度から重度まで様々であり得る。患者は、疾患が突発し、活性化し、症状をもたらすという経過を経る。これらの症状発現後に、症状が消失するかまたは疾患の重症度が軽減する期間である寛解期が続く。クローン病を治療するために用いられる薬物には、アミノサリチル酸(5-ASA)(例えば、Asacol(登録商標)、Colazal(登録商標)、Dipentum(登録商標)、またはPentasa(登録商標))、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾンおよびメチルプレドニゾン)、免疫調節剤(例えば、アザチオプリン(Imuran(登録商標))、6-MP(Purinethol(登録商標))、およびメトトレキセート免疫調節剤)、抗生物質(例えば、メトロニダゾール、アンピシリン、シプロフロキサシン)、および生物療法(例えば、インフリキシマブ(例えば、Remicade(登録商標)))が含まれる。
【0180】
セリアック病は、遺伝的素因のある個体において起こる消化器系の自己免疫疾患である。本疾患は、小腸の内側を覆う絨毛の全体または一部に対する損傷または平坦化を特徴とし、これは栄養素の吸収を妨げる。この損傷は、小麦、ライ麦、および大麦中に見出されるタンパク質であるグルテン(グリアジン)を含む何らかのものを摂食することによって生じる。セリアック病患者によっては、胃腸障害または消化器系障害を生じる。一部のセリアック病患者は、下痢、体重減少、および栄養障害を患う。しかし、セリアック病患者は広範囲でかつ幅広い重症度の症状を患う可能性があり、これには口唇潰瘍から下痢、便秘、悪心まであらゆるものが含まれる。症状の多くは、過敏性腸症候群、逆流症、またはさらにクローン病など他の疾患に類似している場合があり、セリアック病患者はこれらのうちのいずれかとして誤診される場合がある。起こり得るその他の症状は、便器で浮遊し得る淡色で臭いの強い多量の便、過度の鼓腸、稀な微量の直腸出血、または腹部の持続痛である。いくつかの症状は、絨毛が栄養素を吸収できないために起こると考えられる。いくつかの例は、骨粗鬆症、歯のエナメル質の欠損、貧血、疲労、急速なまたは原因不明の体重減少、過体重、小児の成長障害または発育不全などである。さらに別の症状は、抑うつおよび興奮性など感情的なもののようである。疱疹状皮膚炎は、一部のセリアック病患者で起こる痒みを伴う水疱形成皮膚疾患であり、セリアック病の外的徴候であると見なされる。唯一の治療法は、無グルテン食を一生続けることである。
【0181】
過敏性腸症候群(IBS)または痙攣性結腸は、腹痛および排便習慣の変化を特徴とする機能性腸疾患である。IBSの一連の症状には、食物アレルギーおよび食物過敏症を含む種々の原因が存在する。IBSと食物アレルギーに関して原因の定義に議論が続けられているが、研究から、IBS症状は場合により食物に対する免疫応答によって起こり、免疫系が反応する食物を排除することにより、IBS症状が軽減または除去されることが実証され、因果関係が示されている。
【0182】
潰瘍性大腸炎(UC)は、結腸の粘膜または最内層の炎症および潰瘍形成を特徴とする、一般に結腸と呼ばれる大腸の炎症性疾患である。この炎症は高頻度で結腸を空にし、下痢を引き起こす。症状には、軟便および関連する腹部痙攣、発熱、ならびに体重減少が含まれる。UCの正確な原因は不明であるが、最近の研究から、身体が異物と見なす体内のタンパク質に対して身体の生来の防御機序が作用すること(「自己免疫応答」)が示唆されている。おそらくはそれらが腸内の細菌タンパク質に似ているため、これらのタンパク質が、結腸の内層を破壊し始める炎症過程を誘導または促進する可能性がある。結腸の内層が破壊されると、潰瘍が形成されて粘液、膿、および血液が放出される。本疾患は通常、直腸領域で始まり、最終的に大腸全体に広がり得る。炎症を繰り返して発症することで、腸壁および直腸壁は瘢痕組織を伴い肥厚する。結腸組織の死滅または敗血症は、重篤な疾患を併発し得る。潰瘍性大腸炎の症状は重症度が多様であり、その発症は段階的である場合もあれば、突発性である場合もある。呼吸器感染またはストレスを含む多くの要因により、発作が誘発され得る。UCの最も多く見られる症状は、腹痛および下痢である。UC患者はまた、貧血、疲労、体重減少、食欲不振、直腸出血、体液および栄養素の喪失、皮膚損傷、関節痛、および成長阻害(特に小児において)を経験し得る。
【0183】
現在のところUCに利用できる治療法は存在しないが、治療は結腸内層の異常な炎症過程の抑制に重点が置かれている。潰瘍性大腸炎を治療するには、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、およびヒドロコルチゾン)、アミノサリチル酸(例えば、スルファサラジン、オルサラジン、メサラミン、およびバルサラジドなどの、5-アミノサリチル酸(5-ASA)を含む薬物)、および免疫調節剤(例えば、アザチオプリンおよび6-メルカプトプリン)を含む治療が利用できる。しかし、副腎皮質ステロイドおよびアザチオプリンなどの免疫抑制薬の長期使用は、骨の菲薄化、白内障、感染症、ならびに腎臓および骨髄への影響を含む重篤な副作用をもたらし得る。現在の治療法で良好な結果が得られない患者では、手術も選択肢の1つである。手術は結腸全体および直腸の摘出を含む。
【0184】
慢性潰瘍性大腸炎を部分的に模倣し得る動物モデルがいくつか存在する。最も広く用いられているモデルは2,4,6-トリニトロベンスルホン酸/エタノール(TNBS)誘発性大腸炎モデルであり、これは結腸において慢性炎症および潰瘍形成を誘発する。直腸内点滴によりTNBSを感受性マウスの結腸に導入すると、TNBSは結腸粘膜においてT細胞媒介性免疫応答を誘発し、この場合、大腸壁全体にわたるT細胞およびマクロファージの高密度浸潤を特徴とする重度の粘膜炎症が起こる。さらに、この組織病理像は、進行性体重減少(消耗)、出血性下痢、直腸脱、および大腸壁肥厚の臨床像を伴う(Neurath et al. Intern. Rev. Immunol. 19:51-62, 2000)。
【0185】
別の大腸炎モデルではデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を使用し、これにより出血性下痢、体重減少、結腸短縮、および好中球浸潤を伴う粘膜潰瘍形成を呈する急性大腸炎が誘発される。DSS誘発性大腸炎は、リンパ過形成、局所的陰窩損傷、および上皮潰瘍形成を伴う、固有層への炎症細胞の浸潤によって組織学的に特徴づけられる。これらの変化は、上皮に対するDSSの毒性作用に起因して、固有層細胞の食作用ならびにTNF-αおよびIFN-γの産生によって生じると考えられている。一般的に使用されているにもかかわらず、ヒト疾患との関連性についてのDSSの機序に関するいくつかの問題点は末解決のままである。DSSは、SCIDマウスなどのT細胞欠損動物においても認められるため、T細胞非依存性モデルと見なされる。
【0186】
炎症性腸疾患(IBD)として知られる、免疫調節不全に起因する腸の炎症は、2つの広い疾患定義、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)に特徴づけられる。免疫調節不全に起因する腸のさらなる炎症性疾患は、セリアック病および過敏性腸症候群(IBS)である。一般的に、CDはTh1反応の調節不全に起因すると考えられており、UCはTh2反応の調節不全に起因すると考えられている。複数のサイトカイン、ケモカイン、およびマトリックスメタロプロテイナーゼが、IBD患者の炎症病変で上方制御されていることが示されている。これらには、IL-1、IL-12、IL-18、IL-15、TNF-α、IFN-γ、MIP1α、MIP1β、MIP2が含まれる。他の治療が概して患者の生活の質を改善するものであるのに対して、REMICADE(登録商標)(Centocor、ペンシルベニア州、マルバーン)は、CD患者を処置する際にその疾患自体を標的化するために用いるのに成功した、現在唯一の薬物である。IBDに関連する自己免疫応答のIL-28A、IL-28B、およびIL-29抑制が、マウスのDSSモデル、TNBSモデル、CD4+CD45Rbhiモデル、mdr1a-/-モデル、および移植片対宿主病(GVHD)腸炎症モデルなどのIBDモデルで実証されている(Stadnicki A and Colman RW, Arch Immunol Ther Exp 51:149-155, 2003;Pizarro TT et al., Trends in Mol Med 9:218-222, 2003)。ヒトIBDの実験モデルの一つに、げっ歯動物へのデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の経口投与がある。DSSは、ある程度ヒトの組織学的所見に似た特徴を有する急性および慢性潰瘍性大腸炎を誘発する。DSS誘発性大腸炎には腸内細菌、マクロファージ、および好中球が関与し、T細胞およびB細胞が果たす役割は小さい(Mahler et al., Am. J. Physiol. 274:G544-G551, 1998;Egger et al., Digestion 62:240-248, 2000)。TNBS誘発性大腸炎はTh1媒介性疾患と考えられているため、ヒトのUCよりもCDと類似している。トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を様々な用量(系統に依存する)でマウスに直腸注入し、Th1様サイトカインIL-12、IL-18、およびIFNγの分泌を伴う抗原特異的(TNBS)T細胞応答を誘発する。大腸炎は、炎症部位への抗原特異的T細胞、マクロファージ、および好中球の動員を伴う(Neurath et a1., Int. Rev. Immunol., 19:51-62, 2000;Dohi T et al., J. Exp. Med. 189:1169-1179, 1999)。大腸炎の別の比較的新しいモデルとしては、SCIDマウスに対するCD4+CD45RBhi移入モデルがある。CD4+ T細胞は、CD45Rbの発現に基づいて2つのカテゴリーに大きく分類される。CD4+CD45RBhi細胞はナイーブT細胞と見なされ、CD4+CD45Rblo細胞は調節性T細胞と見なされる。同系SCIDマウスに全CD4+ T細胞を移入しても、大腸炎の症状は誘発されない。しかし、CD4+CD45RBhi T細胞のみをSCIDマウスに注入すると、マウスは3〜6週間の期間にわたって大腸炎を発症する。ナイーブT細胞とCD4+CD45Rblo調節性T細胞を同時移入すると大腸炎が抑制されることから、調節性T細胞が免疫応答の調節に重要な役割を果たしていることが示唆される(Leach et al., Am. J. Pathol., 148:1503-1515, 1996;Powrie et al., J. Exp. Med., 179:589-600, 1999)。本モデルにより、pHHLA2アンタゴニスト(pHHLA2抗体または可溶性pHHLA2ポリペプチド)が、T細胞の活性化ならびに活性化T細胞が炎症性サイトカインを発現および分泌するのを抑制することにより、大腸炎を抑制することが示される。骨髄移植に関連する大腸炎の臨床上関連のあるモデルとしては、GVHD誘発性大腸炎がある。移植片対宿主病(GVHD)は、エフェクター細胞の免疫不全組織適合性レシピエントで発症し、その細胞が増殖して宿主細胞を攻撃する。同種骨髄移植を受けた患者または重度の再生不良性貧血は、GVHDのリスクがある。マウスにおいてもヒトにおいても、下痢は本症候群の共通した重篤な症状である。ヒトでは、結腸および小腸の疾患が認められている。GVHD誘発性大腸炎のマウスモデルは、ヒトに見られるのと類似した組織学的疾患を示す。したがってこれらのマウスモデルは、GVHDに関して大腸炎阻害薬の有効性を評価するために用いることができる(Eigenbrodt et al., Am. J. Pathol., 137:1065-1076, 1990;Thiele et al., J. Clin. Invest., 84:1947-1956, 1989)。
【0187】
したがって、本発明は、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、移植片対宿主病、および過敏性腸症候群の群より選択される疾患に関連した症状または状態の少なくとも1つを治療する、予防する、その進行を抑制する、その発症を遅延させる、および/または軽減するための、pHHLA2アンタゴニスト(例えば、中和抗体またはその断片および可溶性/融合pHHLA2ポリペプチド、例えば、配列番号:2のアミノ酸残基23〜346もしくはその一部または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313もしくはその一部)の使用を意図する。本発明の別の態様は、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、および過敏性腸症候群の現在の治療と併用して、本明細書に記載のpHHLA2アンタゴニストを使用することである。
【0188】
治療目的のために、pHHLA2拮抗活性を有する分子(例えば、可溶性pHHLA2ポリペプチド、pHHLA2に対する抗体または抗体断片)および薬学的に許容される賦形剤を、治療有効量で患者に投与する。pHHLA2拮抗活性を有するタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドと薬学的に許容される賦形剤との混合物は、投与量が生理学的に有意である場合に、「治療有効量」または「有効量」で投与されると表現される。薬剤は、その存在によりレシピエント患者の生理機能に検出可能な変化が生じる場合に、生理学的に有意である。例えば、炎症の治療に用いられる薬剤は、その存在により炎症反応の少なくとも一部が軽減する場合に、生理学的に有意である。
【0189】
1つのインビボアプローチでは、pHHLA2共受容体ポリペプチド(またはその機能的断片)自体を、「治療有効量」で患者に投与する。その存在によりレシピエント対象の生理機能に検出可能な変化が生じる場合に、量は「治療有効量」であると見なされる。例えば、炎症の治療に用いられる薬剤は、その存在により炎症反応の少なくとも一部が軽減する場合に、生理学的に有意である。
【0190】
一般的に、本発明の化合物は薬学的に許容される担体(例えば、生理食塩水)に懸濁して、経口投与、静脈点滴、または皮下、筋内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻腔内、胃内、気管内、もしくは肺内注射する。化合物は好ましくは、適切なリンパ組織(例えば、脾臓、リンパ節、または粘膜関連リンパ組織(MALT))に直接送達する。必要な投与量は、投与経路の選択、製剤の性質、患者の疾患の性質、対象の大きさ、体重、表面積、年齢、および性別、投与されているその他の薬物、ならびに主治医の判断に依存する。適切な投与量は、0.01〜100.0 .mu.g/kgの範囲である。利用できるポリペプチドおよび断片の多様性、ならびに様々な投与経路の異なる効率を考慮して、必要な投与量には広いばらつきがあると予測される。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも多くの投与量を必要とすることが予測される。これらの投与量レベルのばらつきは、当技術分野で十分に理解されているように、周知の最適化のための標準的な経験的日常的業務により調整することができる。投与は、単回または複数回(例えば、2もしくは3、4、6、8、10、20、50、100、150倍、またはそれ以上)であってよい。適切な送達媒体(例えば、ポリマー微粒子または埋め込み型装置)にポリペプチドを封入することにより、特に経口送達に関して送達の効率が増加し得る。
【0191】
または、pHHLA2ポリペプチドまたは機能的断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを、動物の適切な細胞に送達することができる。コード配列の発現は好ましくは、例えばポリヌクレオチドをリンパ組織に送達することによって、対象のリンパ組織に方向づける。これは、例えば、マクロファージなどの食細胞による食作用を最適化するための大きさのポリマー生分解性微粒子またはマイクロカプセル送達媒体の使用によって達成することができる。例えば、直径約1〜10 .mu.mのPLGA(乳酸-グリコール酸共重合体)微粒子を用いることができる。ポリヌクレオチドをこのような微粒子に封入すると、これはマクロファージによって取り込まれ、細胞内で徐々に生分解されて、その結果ポリヌクレオチドが放出される。放出されると、このDNAは細胞内で発現される。第2の種類の微粒子は、細胞によって直接取り込まれることを意図しておらず、むしろ主に核酸の徐放貯蔵所として働くことを意図しており、核酸は生分解によって微粒子から放出された場合にのみ細胞によって取り込まれる。したがってこれらのポリマー粒子は、食作用を免れるために十分に大きくなくてはならない(すなわち、5.mu.m超、および好ましくは20.mu.m超)。
【0192】
核酸の取り込みを達成するためのさらなる方法は、標準的な方法により調製されたリポソームを用いることである。ベクターは、これらの送達媒体中に単独で取り込むか、または組織特異的抗体と共に組み込むことができる。または、静電気力または共有結合力によってポリ-L-リジンに結合したプラスミドまたは他のベクターから構成される分子複合体を調製することもできる。ポリ-L-リジンは、標的細胞上の受容体に結合し得るリガンドに結合する(Cristiano et al. (1995), J. Mol. Med 73, 479)。または、Bリンパ球、Tリンパ球、または樹状細胞特異的TREなどのリンパ組織特異的転写調節エレメント(TRE)を使用することにより、リンパ組織特異的標的化を達成することができる。リンパ組織特異的TREは公知である(Thompson et al. (1992), Mol. Cell. Biol. 12, 1043-1053;Todd et al. (1993), J. Exp. Med. 177, 1663-1674;Penix et al. (1993), J. Exp. Med. 178, 1483-1496)。筋肉内、皮内、または皮下部位への「裸のDNA」の送達(すなわち、送達媒体を伴わない)は、インビボ発現を達成するための別の手段である。
【0193】
末梢血単核細胞(PBMC)を患者または適切なドナーから採取し、エクスビボで活性化刺激およびpHHLA2共受容体ポリペプチドまたはポリペプチド断片(可溶型または標準的な方法により固体支持体に結合している)に曝露することができる。次いで、高度に活性化したT細胞を含むPBMCを、同じまたは異なる患者に導入する。
【0194】
別のエクスビボの方策は、上記のpHHLA2共受容体ポリペプチドまたは機能的断片をコードする核酸配列をコードするポリヌクレオチドを、対象から得られた細胞にトランスフェクションまたは形質導入することを含み得る。次に、トランスフェクションまたは形質導入した細胞を患者に戻す。そのような細胞は好ましくは造血細胞(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、またはB細胞)であるが、対象において生存する限りpHHLA2共受容体ポリペプチドまたは機能的断片の供給源として作用する繊維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、または筋細胞を非限定的に含む、広範な種類のいずれかであってもよい。上記APCを含む造血細胞を用いることは、そのような細胞が特にリンパ様組織(例えば、リンパ節または脾臓)に戻ることが予測され、したがってpHHLA2共受容体ポリペプチドまたは機能的断片が、それらの効果、すなわち免疫応答の増強を発揮する部位において高濃度で産生されるという点で、特に有利であると考えられる。さらに、APCを用いる場合、外因性pHHLA2共受容体分子を発現するAPCは、関連するT細胞に同種抗原または抗原ペプチドを提示するのと同じAPCであってよい。pHHLA2共受容体はAPCによって分泌されるか、またはその表面上に発現され得る。組換えAPCを患者に戻す前に、それらを関心対象の抗原または抗原ペプチドの供給源、例えば腫瘍、感染性微生物、または自己抗原の供給源に任意に曝露することができる。インビボアプローチについて記載したものと同じ遺伝子構築物および輸送配列を、このエクスビボの方策にも用いることができる。さらに、好ましくは患者から得られた腫瘍細胞を、pHHLA2共受容体ポリペプチドまたはその機能的断片をコードするベクターによりトランスフェクションまたは形質転換することができる。次いで、好ましくはその増殖能を除去する因子で処理(例えば、イオン化照射)した腫瘍細胞を患者に戻すが、そこで腫瘍細胞は外因性pHHLA2共受容体を(細胞表面上で、または分泌により)発現するために、殺腫瘍性T細胞免疫応答の増強を促進し得る。トランスフェクションまたは形質転換後に患者に注入される腫瘍細胞は、元々患者以外の個体から得られたものでもあってよいことが理解される。
【0195】
エクスビボ法は、患者から細胞を採取する段階、細胞を培養する段階、それらに発現ベクターを形質導入する段階、およびpHHLA2共受容体ポリペプチドまたは機能的断片の発現に適した条件下で細胞を維持する段階を含む。これらの方法は、分子生物学の分野において公知である。形質導入段階は、リン酸カルシウム、リポフェクション、エレクトロポレーション、ウイルス感染、および遺伝子銃遺伝子移入を含む、エクスビボ遺伝子治療のために用いられる任意の標準的な手段によって達成される。または、リポソームまたはポリマー微粒子を用いることができる。次いで、形質導入に成功した細胞を、例えばコード配列または薬物耐性遺伝子の発現に関して選択する。次に、細胞に致死的に放射線照射して(必要に応じて)、これを患者に注入または移植することができる。
【0196】
本発明は、免疫応答を抑制するまたは増強する化合物(小分子または高分子)を試験する方法を提供する。そのような方法は、例えば、本発明のpHHLA2共受容体(またはその機能的断片)を、T細胞刺激(上記を参照されたい)の存在下においてT細胞と共に培養する段階を含み得る。pHHLA2共受容体分子は、溶液中にあってもよいしまたは膜結合性(例えば、T細胞の表面上に発現される)であってもよく、天然であってもまたは組換えであってもよい。T細胞応答を抑制する化合物は免疫応答を抑制する化合物である可能性が高く、T細胞応答を増強する化合物は免疫応答を増強する化合物である可能性が高い。
【0197】
本発明はまた、pHHLA2共受容体と相互作用し得る免疫調節化合物をスクリーニングするために、pHHLA2共受容体またはその機能的断片を使用することに関する。当業者であれば、標準的な分子モデリングを使用する方法、またはpHHLA2共受容体のT細部相互作用部位に結合する小分子を同定するためのその他の技法を理解していると考えられる。1つのそのような例は、Broughton (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1, 392-398に提供されている。
【0198】
既定の任意レベルのT細胞活性化を達成するために、化合物が存在しない場合と比較して、その存在が少なくとも1.5倍(例えば、2倍、4倍、6倍、10倍、150倍、1000倍、10,000倍、または100,000倍)多くのB7-H1を必要とする候補化合物は、免疫応答の抑制に有用であり得る。一方、既定の任意レベルのT細胞活性化を達成するために、化合物が存在しない場合と比較して、その存在が少なくとも1.5倍(例えば、2倍、4倍、6倍、10倍、100倍、1000倍、10,000倍、または100,000倍)少ないpHHLA2共受容体を必要とする候補化合物は、免疫応答の増強に有用であり得る。pHHLA2共受容体機能を妨げ得るまたは調節し得る化合物は、例えば、自己免疫応答を調節するため、または同種もしくは異種移植片拒絶を抑制するための、免疫抑制免疫調節薬剤の良好な候補である。
【0199】
本発明を以下の非制限的な実施例によりさらに説明する。
【0200】
実施例
実施例1
発現ベクターヒトpHHLA2Avi-HIS TagpZMP21の構築
四量体分子を作製する試みにおいて、ヒトpHHLA2の細胞外ドメイン、Aviタグ、およびHisタグをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドを構築した。ヒトpHHLA2の細胞外ドメインのDNA断片は、ヒトpHHLA2挿入点に隣接するベクター配列ならびにAviタグおよびHisタグ配列(それぞれ配列番号:8および9)に相当する5'および3'末端における隣接領域を有する配列番号:7のポリヌクレオチド配列を用いて、PCRにより単離した。プライマーzc50487およびzc50736を、それぞれ配列番号:10および11に示す。
【0201】
PCR反応混合物を2%アガロースゲルで泳動し、挿入物の大きさに相当するバンドを、QIAquick(商標) Gel Extraction Kit(Qiagen、カリフォルニア州、バレンシア)を用いてゲル抽出した。プラスミドpZMP21は、MPSVプロモーター、コード配列を挿入するための複数制限部位、終止コドン、大腸菌(E. coli)複製開始点を含む発現カセット;SV40プロモーター、エンハンサー、および複製開始点、DHFR遺伝子、およびSV40ターミネーターを含む哺乳動物選択マーカー発現ユニット;ならびにS. セレビシエ(S. cerevisiae)における選択および複製に必要なURA3およびCEN-ARSを含む哺乳動物発現ベクターである。これは、pRS316(American Type Culture Collection, 10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209にアクセッション番号77145として寄託されている)から回収された酵母遺伝子エレメント、ポリオウイルス由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメント、および膜貫通ドメインのC末端で切断されたCD8の細胞外ドメインを用いて、pZP9(American Type Culture Collection, 10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209にアクセッション番号98668として寄託されている)から構築した。PTAリーダーを切断除去するためにプラスミドpZMP21をEcoR1/BglIIで消化し、PCR挿入物との組換えに使用した。
【0202】
組換えは、BD In-Fusion(商標) Dry-Down PCR Cloningキット(BD Biosciences、カリフォルニア州、パロアルト)を用いて行った。10μl中のPCR断片と消化ベクターの混合物を凍結乾燥クローニング試薬に添加し、37℃で15分間および50℃で15分間インキュベートした。反応物は形質転換の準備ができた。組換え反応物2μlをOne Shot TOP10 Chemical Competent Cell(Invitrogen、カリフォルニア州、カールズバッド)に形質転換した;形質転換物を氷上で10分間インキュベートし、42℃の熱ショックを30秒間与えた。反応物を氷上で2分間インキュベートした(形質転換細胞が回復するのを助ける)。2分間インキュベートした後、300μlのSOC(2% Bacto(商標) Tryptone(Difco、ミシガン州、デトロイト)、0.5%酵母抽出物(Difco)、10 mM NaCl、2.5 mM KCl、10 mM MgCl2、10 mM MgSO4、20 mMグルコース)を添加し、振盪機を用いて形質転換物を37℃で1時間インキュベートした。全形質転換物を1枚のLB AMPプレート(LBブロス(Lennox)、1.8% Bacto(商標) Agar(Difco)、100 mg/Lアンピシリン)にプレーティングした。
【0203】
プライマーzc50487(配列番号:10)およびzc50736(配列番号:11)を用いて、PCRによりコロニーをスクリーニングした。陽性コロニーを配列決定により確認した。正確な構築物を、hHHLA2AviHISpZMP21と命名した。
【0204】
実施例2
発現ベクターヒトpHHLA2mFc2pZMP21の構築
マウスFc2(配列番号:12の345(Glu)〜437(Pro))に融合されたヒトpHHLA2x1の機能的細胞外ドメイン(配列番号:2の1(Met)〜344(Asn)または配列番号:12の1(Met)〜344(Asn))を含むpZMP21発現ベクターを構築した(配列番号:12)。pHHLA2 PCR断片は、クローントラックCT:101518を鋳型として使用し、プライマーzc48957(配列番号:13)およびzc48958(配列番号:14)を用いて、以下の通りに作製した:94℃で2分の1サイクル;94℃で1分、次いで55℃で1分、次いで72℃で2分の30サイクル;72℃で10分の1サイクル。PCR反応混合物を1%アガロースゲルで泳動し、挿入物の大きさに相当するバンドを、QIAquick(商標) Gel Extraction Kit(Qiagen、カタログ番号28704)を用いてゲル抽出した。続いて、精製されたPCR断片をEcoRIおよびBglIIで消化し、上記の通りに再度バンド精製した。挿入遺伝子を除去してpHHLA2x1遺伝子のmFc2とのインフレームの挿入が可能となるようにEcoRIおよびBglIIで切断したpZMP挿入遺伝子/mFc2に、得られた断片を連結した。上記の連結物2μlを、エレクトロマックスDH10Bにエレクトロポレーションした(25 uF/30オーム/2100ボルト/2 mmギャップキュベット)。この連結によるクローンを、BamHIによる消化により挿入物に関してスクリーニングし、適切な1.802 kB挿入物を有する3つのクローンを配列決定に供した。配列決定に供した3つのクローンはいずれも様々な点突然変異を有していたが、2つのクローンをつなぎ合わせて正確な配列のクローンを作製できることが判明した。クローン#4413および#4414をMfeIで切断し、適切なバンドを精製して再連結した。上記の連結物1μlを、エレクトロマックスDH10Bにエレクトロポレーションした(25 uF/30オーム/2100ボルト/2 mmギャップキュベット)。EcoRIおよびBglII消化によりクローンをスクリーニングし、適切な1.048 kB挿入物を有する2つのクローンをDNA配列決定に供した。これらのクローンのうちの1つ(#4445)が、配列が正確であることが判明した(配列番号:12)。配列番号:12のポリヌクレオチドは、pHHLA2mFc2融合タンパク質をコードする。配列番号:12のポリヌクレオチドは、第1N末端部分(配列番号:2のアミノ酸残基1〜344と同じであるが、2つのサイレント突然変異を有する(配列番号:12の72位においてcaTでなくCaCがヒスチジンをコードし、配列番号:12の105位においてtcAでなくtcGがセリンをコードする))および第2のC末端部分(マウスFc2‐配列番号:12の345(Glu)〜437(Pro))をコードする。
【0205】
実施例3
CHO細胞からのpHHLA2mFc2の精製および解析
A. pHHLA2mFc2の精製
発現ベクターヒトpHHLA2mFc2pZMP21(実施例2)を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションした。CHOのトランスフェクションは、当技術分野において公知の方法を用いて行った。馴化培地約10 Lを回収し、Nalgene 0.2μmフィルターを用いて滅菌濾過した。
【0206】
Poros A50プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(PerSeptive Biosystems、1-5559-01、マサチューセッツ州、フラミンガム)およびSuperdex 200サイズ排除クロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)を併用して、濾過培地からタンパク質を精製した。118 ml Poros A50プロテインAカラム(50 mm x 60 mm)を3カラム容量(CV)の25 mMクエン酸ナトリウム-リン酸ナトリウム、250 mM硫酸アンモニウム pH 3緩衝液で前溶出し、20 CVのPBS pH 7.2で平衡化した。CHO培養上清を0.2μmのフィルターで濾過し、pH 7.2に調整した。プロテインAカラムに31 cm/hrで一晩、4℃で直接添加して、調整した上清中のpHHLA2mFc2を捕捉した。添加が完了した後、カラムを10 CVの平衡化緩衝液で洗浄した。次に、カラムを10 CVの25 mMクエン酸ナトリウム-リン酸ナトリウム、250 mM硫酸アンモニウム pH 7.2緩衝液で洗浄し、次いでクエン酸-リン酸-硫酸アンモニウム緩衝液を用いて形成した5 CVのpH 7.2〜pH 3の勾配により、結合したタンパク質を62 cm/hrで溶出した。凝集物質の一部は早い段階で溶出されたが、大部分のpHHLA2mFc2は約pH 4.8にてカラムから溶出された。溶出されたタンパク質を中和するため、各10 mlの画分は、600μlの2.0 M Tris、pH 8.0を含むチューブ中に回収した。A280および非還元SDS-PAGEに基づいて、画分をプールした。pHHLA2mFc2含有画分をプールして、Amicon Ultra-15 30K NWML遠心装置(Millipore)での限外濾過により10 mlまで濃縮し、35 mMリン酸ナトリウム、120 mM NaCl pH 7.3で予め平衡化した318 ml(26 mm x 300 mm) Superdex 200カラムに28 cm/hrで注入した。A280および非還元SDS-PAGEに基づいて、精製pHHLA2mFc2を含む画分をプールし、0.2μmフィルターを通して濾過し、分割量として-80℃で凍結した。最終的な精製タンパク質の濃度は、BCAアッセイ(Pierce、イリノイ州、ロックフォード)により決定した。
【0207】
B. 精製pHHLA2mFc2の解析
組換えpHHLA2mFc2を、SDS-PAGE(4〜12% BisTris、Invitrogen、カリフォルニア州、カールズバッド)のタンパク質に関する0.1%クマシーR250染色により、および抗マウスIgG-HRPによる免疫ブロッティングにより解析した。Invitrogen NovexのXcell IIミニセルを用いて精製タンパク質を電気泳動し、25 mM Trisベース、200 mMグリシン、および20%メタノールを含む緩衝液中、常温、600 mAで45分かけてニトロセルロース(0.2mm;Invitrogen、カリフォルニア州、カールズバッド)に転写した。次いでフィルターを、50 mM Tris、150 mM NaCl、5 mM EDTA、0.05% Igepal (TBS)中の10%脱脂粉乳で室温にて15分間ブロッキングした。ニトロセルロースを速やかにすすぎ、IgG-HRP抗体(1:10,000)を添加した。ブロットは、穏やかに振盪させながら4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、ブロットをTBSで10分間ずつ3回洗浄し、次いでH2O中で速やかにすすいだ。市販の化学発光基質試薬(Roche LumiLight)を用いてブロットを発現させ、シグナルをLumi-ImagerのLumi Analyst 3.0ソフトウェア(Boehringer Mannheim GmbH、ドイツ)を用いて捕捉した。精製pHHLA2mFc2は、ウェスタンブロットおよびクマシー染色ゲルのいずれにおいても、非還元条件下では約180 kDaにおいておよび還元条件下では約90 kDaにおいて単一バンドとして出現し、予測通り、非還元条件下におけるグリコシル化二量体型が示唆された。タンパク質は正確なNH2末端、アミノ酸組成、およびSEC MALSによる正確な質量を有した。全工程での回収率は65〜70%であった。
【0208】
実施例4
pHHLA2モノクローナル抗体
雌BALB/cマウスを、pHHLA2/pVAC2(pHHLA2x1の細胞外ドメイン‐配列番号:2のアミノ酸残基1〜344)(Invitrogen、カリフォルニア州、サンディエゴ)DNA、またはpHHLA2(pHHLA2x1の細胞外ドメイン‐配列番号:2のアミノ酸残基1〜344)を発現するP815細胞(ATCC、バージニア州、マナッサス)のいずれかで免疫化した。陽性血清力価を有するマウスに、可溶性pHHLA2mFc2融合タンパク質(実施例2)の融合前の追加免疫を行った。
【0209】
高力価のマウス3匹から脾細胞を回収し、PEG 1500(Roche Applied Science、インディアナ州、インディアナポリス)を用いて3回の別個の融合手順において、P3-X63-Ag8/ATCC(マウス)骨髄腫細胞と融合させた。融合物321および323は、遺伝的に免疫化したマウス由来の脾臓およびリンパ節を使用し、融合物322は、細胞を免疫化したマウス由来のプールした脾臓、リンパ節、および腸間膜リンパ節を使用した。融合後12日間培養した後、直接ELISA、捕捉ELISA、およびFMAT(Applied Biosystems)スクリーニングにより、特異的抗体産生ハイブリドーマプールを同定した。ELISA型式はいずれも、特異的抗体標的として精製組換えpHHLA2-Avi-Hisタグ化タンパク質を使用し、FMATスクリーニングでは、pHHLA2を発現するP815細胞に対する抗体の結合を試験した。少なくとも1回のスクリーニングによる陽性アッセイ結果を有する50個のマスターウェルを選択して保存し、P815/pHHLA2細胞と結合する能力に関してFACSによりさらに解析した。これらのうち5個を選択して、2回の限界希釈によりクローニングした。捕捉ELISAおよびFACS解析を用いて、直接相関するクローンをスクリーニングした。
【0210】
最終的なクローン5個を回収し、アッセイにおいて用いるために精製した:E9346、E9347、E9348、E9349、およびE9350。
【0211】
実施例5
トランスフェクション細胞上のpHHLA2によって増強されるT細胞増殖
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)由来の精製CD4 T細胞および精製CD8 T細胞の増殖は、FDC細胞にトランスフェクションしたpHHLA2によって増強される。CD3に対する抗体(BD Biosciences 555329)は、T細胞抗原認識を模倣する。抗体によるCD3およびT細胞受容体の結合は、インビトロにおいて増殖するためのシグナルを提供する。このシグナルは、第2のまたは共刺激シグナルによって有意に増強され得る。
【0212】
pHHLA2が共刺激シグナルをT細胞に提供する能力を試験するため、人工抗原提示細胞(APC)を構築した。FDC細胞に、全長pHHLA2x1(pzmp21)および陰性対照としてのマウスzcyto35(配列番号:15)(pzmp21)を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)によりトランスフェクションした。インビトロでの増殖を抑制するため、FDCに10,000ラドでγ線照射した。96ウェル平底組織培養プレート当たり5x10E4個のFDCをプレーティングした。
【0213】
健常ボランティア由来のヒトPBMCを、Ficoll-Paque(GE Healthcare)密度勾配によって回収した。CD4およびCD8は、磁気ビーズカラム(Miltenyi Biotec)によりPBMCから同時精製した。T細胞は、フローサイトメトリーによって増殖を評価するために、CFSE(Invitrogen)で標識した。ウェル当たり2x10E5個のCFSE標識T細胞をプレーティングした。50 ng/ml〜1 ug/mlの範囲の可溶型の抗CD3を、各ウェルに添加した。培養物を、5% CO2の加湿インキュベーター内で3日間維持した。CD4およびCD8の増殖を、LSRII(Becton Dickinson)で評価した。
【0214】
FDC-pHHLA2を有するT細胞培養物は、FDC-mcyto35を有するT細胞培養物と比較して大規模に増殖した(それぞれ、全T細胞の>70%および<10%が増殖ゲート中に分類された)。CD4およびCD8は、応答に関して類似していた。ドナー間のばらつきは認められなかった。
【0215】
特異的モノクローナル抗体によって抑制される、pHHLA2によるT細胞増殖の増強
pHHLA2に対するモノクローナル抗体は、トランスフェクション細胞上のpHHLA2によって提供される共刺激効果を抑制した。CD4およびCD8 T細胞を回収し、CFSEで標識した。ウェル当たり1x10E5個のT細胞をプレーティングした。FDCをγ線照射し、2.5x10E4個/ウェルでプレーティングした。1 ug/mlの抗pHHLA2モノクローナル5種(実施例4‐E9346、E9347、E9348、E9349、およびE9350)を、100 ng/ml抗CD3によって媒介されるインビトロT細胞共刺激を遮断する能力に関してアッセイした。CTLA4-Fc(R&D)を、FDCによって発現される内因性CD80/CD86の共刺激に対する寄与を評価するための対照として用いた。培養3日後に、フローサイトメトリーによりT細胞増殖を判定した。pHHLA2抗体は、対照mIgG1抗体と比較して、増殖の有意な量を遮断した(30〜80%)。CTLA4-Fcは、実質的にすべてのT細胞増殖を遮断した。
【0216】
実施例6
ノーザンブロットおよびLUMINEX(登録商標)を用いた組織パネルおよび初代ヒト細胞におけるヒトpHHLA2の組織分布
A. ノーザンブロットを用いたヒトpHHLA2組織分布
ヒト多組織ノーザンブロット(ヒト12レーンMTNブロット I、II、およびIII、癌プロファイリングアレイ)(Clontech)をプロービングして、ヒトpHHLA2の発現の組織分布を決定した。
【0217】
pHHLA2用の約620 bpのPCR由来プローブを、オリゴヌクレオチドZC49085(配列番号:16)およびZC49091(配列番号:17)をプライマーとして用いて増幅した。PCR増幅は以下の通りに行った:サイクル条件は、95℃で5分の1サイクル、94℃で10秒、62℃で20秒、72℃で30秒の35サイクル、および72℃で7分の最終的な1サイクル、ならびに4℃での保持であった。
【0218】
反応物をアガロースゲルで泳動し、製造業者の説明書に従ってQiagenゲル精製カラム(Qiagen、カリフォルニア州、バレンシア)を用いて断片を精製した。分光光度計の測定値により、断片を定量化した。断片50 ngまたは25 ngを、製造業者の説明書に従ってPrime-It II試薬(Stratagene、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ)を用いて標識し、製造業者の手順書に従ってS-200マイクロスピンカラム(Amersham、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)を用いて取り込まれなかったヌクレオチドから分離した。プロービングするブロットを、ブロットに添加する前に煮沸して急冷した100 ug/mlサケ精子DNA(Stratagene、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ)および6 ug/ml cot-I DNA(Invitrogen、カリフォルニア州、カールズバッド)の存在下で、ExpressHyb(BD Biosciences, Clontech、カリフォルニア州、パロアルト)中で55℃にて一晩プレハイブリダイゼーションした。放射標識pHHLA2、サケ精子DNA、およびcot-1 DNAを混合し、5分間煮沸し、その後氷上で急冷した。サケ精子DNAおよびcot-1 DNAの最終濃度はプレハイブリダイゼーション段階と同様であり、放射標識pHHLA2の最終濃度は1x106 cpm/mlであった。ブロットをローラーオーブン中で55℃にて一晩ハイブリダイゼーションし、その後、緩衝液交換を数回行いつつ2X SSC、0.1% SDS中で室温にて十分に洗浄し、次いで65℃で洗浄した。最終的な洗浄は、0.1X SSC、0.1% SDS中で65℃にて行った。その後、増感スクリーンを用いて、ブロットをフィルムに10日間露光した。
【0219】
次に、多組織ノーザンブロットを、以下の通りに作製したトランスフェリン受容体プローブでプロービングした:10X Advantage 2緩衝液 5μl、Advantage 2 cDNAポリメラーゼ混合物(BD Biosciences, Clonetech、カリフォルニア州、パロアルト) 1μl、10X Redi-Load(Invitrogen、カリフォルニア州、カールヅバッド) 5μl、2.5 mM dNTP(Applied Biosystems、カリフォルニア州、フォスターシティー) 4μl、zc10565(配列番号:18)およびzc10651(配列番号:19) 各1μl、ならびに胎盤marathon(商標) cDNA(BD Biosciences, Clonetech、カリフォルニア州、パロアルト) 5μlを有するPCR反応液50 ul中で、センスプライマーzc10565(配列番号:18)およびアンチセンスプライマーzc10651(配列番号:19)を使用した。サイクル条件は、94℃で2分の1サイクル、94℃で20秒、57℃で20秒、72℃で45秒の35サイクル、72℃で7分の1サイクル、およびその後の4℃での保持であった。反応物をアガロースゲルで泳動し、製造業者の説明書に従ってQiagenゲル精製カラム(Qiagen、カリフォルニア州、バレンシア)を用いて断片を精製した。分光光度計の測定値により、断片を定量化した。トランスフェリン受容体断片を標識し、上記の通りに多組織ノーザンブロットおよび胎児組織ノーザンブロットをプロービングするために用いた。増感スクリーンを用いて、ブロットをフィルムに7日間露光した。
【0220】
多組織ノーザンブロットのプロービングの結果から、pHHLA2 mRNAが精巣、小腸、および結腸において高度に発現されることが示される。また中程度から低度の発現が、腎臓、膵臓、胃、および気管において認められた。トランスフェリン受容体対照プロービング実験から、ブロットが良質であり、低度から中程度に発現される対照遺伝子が10日間の露光で認められることが示された。さらに、Cancer Profiling Arrayにおいて、pHHLA2 mRNAは主に小腸、結腸、および直腸に限定されており、いくらかの発現が膵臓、胃、および腎臓に認められる。pHHLA2の発現は、正常非癌性組織において、これらの組織の腫瘍試料よりも高い。これらの結果から、pHHLA2は主に胃腸管の組織で発現されること、およびmRNAはこれらの組織の癌において明らかに増加しないことが示された。
【0221】
B. LUMINEX(登録商標)を用いた初代細胞におけるpHHLA2 mRNA分布
細胞種のアノテーションおよび受容体の発現に影響を及ぼす増殖条件は、その機能の解明およびリガンド源の予測の有用な手段である。そのために、広範な組織および細胞種をLUMINEX(登録商標)により調査した。LUMINEX(登録商標)を用いて、ヒト組織由来のaRNAのパネルをpHHLA2 mRNAに関してスクリーニングした。パネルはインハウスで作製し、種々の正常および自己免疫ヒト組織に由来する48のアンチセンスRNA(aRNA)を含めたが、これを以下の表5に示す。aRNAは、インハウスの組織源またはインハウスのRNA調製物に由来した。造血細胞サブセットのRNAは正常ヒトドナーに由来し、蛍光細胞選別(FACSAria、Becton-Dickinson Cytometry Systems、カリフォルニア州、パロアルト)により精製した。ナイーブT細胞およびメモリーT細胞は、CD4、CD8、およびCD45RBに対する抗体を用いて単離した。B細胞、NK細胞、および単球は、それぞれCD19、CD56、およびCD14に対する抗体を用いて単離した。マクロファージおよびDCは、CD14陽性単球からインビトロで作製した。抗体はすべてBD Biosystems(カリフォルニア州、パロアルト)から入手した。上皮細胞および内皮細胞はCambrex(マサチューセッツ州、ホプキントン)から入手し、製造業者によって提供された条件を用いてインハウスで培養した。場合によっては、細胞を表5に詳述する以下のもので刺激した:抗CD3(1μg/ml)および抗CD28(5μg/ml)(BD Biosystems、カリフォルニア州、パロアルト)、抗CD40および抗IgM(1μg/ml)(BD Biosystems、カリフォルニア州、パロアルト)ならびにIL-4(5 ng/ml)(R&D Systems、ミネソタ州、ミネアポリス)、IL-2、IL-21、hIL10 1 ng/ml(R&D Systems、ミネソタ州、ミネアポリス)、hIFNγ 50 ng/ml(R&D Systems、ミネソタ州、ミネアポリス)、LPS 2 ug/ml(Sigma Chemicals、ミズーリ州、セントルイス)、またはhTNFα 2 ng/ml(R&D Systems、ミネソタ州、ミネアポリス)。上皮細胞および内皮細胞は、表示濃度の以下のものをすべて含む炎症性刺激で、表記した時間処理した:LPS 2 ug/ml(Sigma Chemicals、ミズーリ州、セントルイス)、hTNFα 6 ng/ml(R&D Systems、ミネソタ州、ミネアポリス)、hIFNγ 50 ng/ml(R&D Systems、ミネソタ州、ミネアポリス)、hIL1β 2 ng/ml(R&D Systems、ミネソタ州、ミネアポリス)、pI:C 10 ug/ml(Sigma Chemicals、ミズーリ州、セントルイス)、およびhuCpG 10 ug/ml。
【0222】
RNA作製のため、精製した細胞集団をRLT緩衝液(Qiagen、カリフォルニア州、バレンシア)中で溶解し、Qiashredderカラム(Qiagen、カリフォルニア州、バレンシア)を通し、RNeasyミニキット(Qiagen、カリフォルニア州、バレンシア)を用いてRNAを抽出した。試料を、カラム中のDNase I(RNase-free DNaseセット、Qiagen、カリフォルニア州、バレンシア)で処理した。RNAを定量化し、Agilent 2100 Bioanalyzerを用いてその質を判定した。ビオチン化aRNAを、製造業者の説明書に従ってMessage AmpTM aRNA Amplification Kit(Ambion、テキサス州、オースチン)を用いて作製した。
【0223】
配列番号:20の配列を含む、pHHLA2に特異的なオリゴヌクレオチドを作製した。このオリゴヌクレオチドを、製造業者の指示書に従って蛍光LUMINEX(登録商標)微粒子に結合した。簡潔に説明すると、20秒間のボルテックスおよび超音波処理により微粒子を再懸濁し、微量遠心チューブに移し、14000 rpmで2分間遠心し、0.1 M MES (pH 4.5) 50μLに再懸濁した。オリゴ(1 mM保存液) 1μLおよびEDC 2.5μLを微粒子に添加し、混合物を暗下で30分間インキュベートした。この段階を2回繰り返した。標識微粒子を2回洗浄し、TE (pH 8.0) 50μLに再懸濁し、血球計数器で計数した。
【0224】
オリゴヌクレオチド結合微粒子をビオチン化aRNAにハイブリダイズさせた後、製造業者の指示書に従って、LUMINEX(登録商標) 100 X Map技術アナライザー(Bio-Plexシステム、BioRad、カリフォルニア州、ハーキュリーズ)で解析した。簡潔に説明すると、20秒間のボルテックスおよび超音波処理により微粒子を再懸濁し、1.5X TMACハイブリダイゼーションバッファー40μLおよびTE (pH 8.0) 20μL当たり微粒子2500個になるよう再懸濁した。ビオチン化aRNA(5μg)を微粒子に添加し、混合物を60℃に加熱し、穏やかに振盪させながら5時間インキュベートした。混合物を96ウェルプレートに移し、2回洗浄し、ストレプトアビジン-R-フィコエリトリン(4μg/ml) 75μLを添加した。この反応物を振盪により10分間混合した。この混合物50μLを、システムの手引き書に従ってLUMINEX(登録商標) 100アナライザーで解析した。
【0225】
LUMINEX(登録商標)遺伝子発現解析は、多くの細胞集団および罹患組織におけるpHHLA-2遺伝子および対照遺伝子の蛍光を比較することによって行った。遺伝子発現の標準化は、いくつかのハウスキーピング遺伝子のいずれかを用いて算出したが、クラスリン(プライマーZC50398、配列番号:21)が好ましい選択である。表記の細胞および組織におけるpHHLA-2 mRNA発現の比較から、pHHLA-2が、潰瘍性大腸炎における高レベルの発現を含めて、結腸組織において優先的に発現されることが示される。また中程度レベルの発現が、活性化好中球に認められた。試験した200遺伝子のうち、pHHLA-2は、残りの遺伝子の98%と比較して潰瘍性大腸炎において有意に過剰発現されていた。これによって、多組織ノーザン解析および癌細胞プロファイリングを用いた結果が確認される。さらに、本データはノーザン解析を拡張して、特定のヒト自己免疫疾患、潰瘍性大腸炎における高レベルの発現を示唆する。
【0226】
【表5】


【0227】
実施例7
IBDのインビトロ腸上皮モデル
腸上皮は、その表面上に低レベルのHLAクラスII抗原を発現しており、これらの分子の発現増加は、炎症性腸疾患(IBD‐クローン病および潰瘍性大腸炎)、移植片対宿主病(GVHD)、およびセリアック病などの炎症状態の徴候と関連があると考えられている(Hershberg et al., J Clin Invest.,100(1):204-15 (July 1, 1997))。HLAクラスII分子の発現は抗原提示細胞として機能する細胞の必須条件であり、腸上皮が腸管においてCD4+ T細胞と相互作用し、局所環境において抗原駆動性免疫応答を調節することが示唆される。腸上皮が多量の抗原に対して曝露されること、および無害な抗原に対する腸の寛容性と病原体に対する適切な免疫応答との間に維持されるべき微妙なバランスを考えると、腸のT細胞に対する抗原提示を調節する上皮細胞の能力は、このバランスにとって重要である。
【0228】
pHHLA-2は、B7ファミリーのメンバーとして、抗原特異的T細胞応答の共刺激において役割を果たす。ノーザンブロットによるpHHLA-2 mRNA発現の最初の解析から(実施例6)、腸組織におけるHHLA2の顕著な発現が示唆された。pHHLA-2が腸上皮細胞の表面上で発現されることが示されるならば、pHHLA-2が、腸上皮によって駆動される腸のT細胞応答の調節に関与している可能性が高いと考えられる。pHHLA2が腸のT細胞応答を調節するかどうかを判定するため、可溶性pHHLA-2またはpHHLA2(例えば、細胞外ドメインまたはその一部)に対する抗体を、pHHLA-2とT細胞上のその推定対抗構造との相互作用を遮断することによる、上皮細胞株(例えば、T84およびHT-29)による抗原特異的T細胞の活性化の抑制に関して試験する。簡潔に説明すると、上皮細胞株を平底96ウェルプレートに50,000個細胞/ウェルでプレーティングし、一晩培養する。次いで、細胞を様々な濃度の抗原で37℃にて6時間パルスする。洗浄後、抗原特異的な適切なHLA拘束性T細胞を添加し、可溶性pHHLA-2またはpHHLA2に対する抗体の存在下または非存在下において、上皮細胞と24時間共培養する。上清を回収し、IFNγ、TNFα、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18、IL-21、およびIL-23を含む炎症性サイトカインについて解析する。これらのサイトカインの多くは、ヒトIBD試料において過剰発現されていることが示されており、そのため腸における炎症促進性免疫応答の惹起および永続化と関連づけられている。T細胞増殖アッセイに関しては、上皮細胞を放射線照射してから抗原でパルスし、T細胞と72時間共培養する。次いで、培養物を3hチミジンでさらに16時間パルスし、その後回収する。
【0229】
活性化T細胞は炎症促進性サイトカインの主要な供給源であり、研究から、活性化T細胞の移入によりマウスにおいてIBDが誘発され得ることが実証されている。したがって、pHHLA2によって提供される共刺激シグナルを遮断することによるT細胞活性化およびサイトカイン産生の下方制御は、IBD、セリアック病、および過敏性腸症候群(IBS)などの腸炎症性疾患に関連した不適切な炎症反応を抑制すると考えられる。
【0230】
本明細書において引用したすべての特許、特許出願、および刊行物、ならびに電子的に利用可能な情報(例えば、GenBankアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の寄託)の完全な開示は、参照により組み入れられる。前述の詳細な説明および実施例は、理解を明確にする目的でのみ提供した。そこから不必要な制限はないと理解されるべきである。当業者にとって明らかな変形例は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲に含まれるため、本発明は、提示および記載された厳密な詳細に制限されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含む単離された可溶性pHHLA2ポリペプチドであって、T細胞の共刺激を抑制するポリペプチド。
【請求項2】
配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含み、T細胞の共刺激を抑制する可溶性ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号:1の67〜1038、配列番号:1の1〜1038、配列番号:1の67〜1095、配列番号:1の1〜1095、配列番号:1の67〜1242、配列番号:1の1〜1242、配列番号:4の1〜939、配列番号:4の1〜996、および配列番号:4の1〜1143からなる群より選択されるヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
5xSSC、5xデンハルト溶液、0.5% SDS、サケ精子1 mg/ハイブリダイゼーション溶液25 mlを含む緩衝液中で65℃で一晩インキュベートするハイブリダイゼーション、およびその後の65℃での0.2x SSC/0.1% SDSによる高ストリンジェンシー洗浄というストリンジェントな条件下において、請求項3記載のポリヌクレオチドとハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチドであって、T細胞の共刺激を抑制する可溶性ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
以下の機能的に連結されたエレメントを含む発現ベクター:
転写プロモーター;
請求項1記載のポリペプチドをコードするDNA部分;および
転写ターミネーター。
【請求項6】
請求項5記載の発現ベクターが導入された培養細胞であって、DNA部分によってコードされるポリペプチドを発現する細胞。
【請求項7】
以下の段階を含む、ポリペプチドを生成する方法:
請求項5記載の発現ベクターが導入された細胞であって、DNA部分によってコードされるポリペプチドを発現する細胞を培養する段階;および
発現されたポリペプチドを回収する段階。
【請求項8】
請求項1記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片。
【請求項9】
ポリクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体に由来するヒト化抗体、抗体断片、中和抗体、およびヒトモノクローナル抗体からなる群より選択される、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
F(ab')、F(ab)、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、scFv、および最小認識単位からなる群より選択される、請求項8記載の抗体断片。
【請求項11】
請求項8記載の抗体に特異的に結合する抗イディタイプ抗体を含む抗イディオタイプ抗体。
【請求項12】
配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含むポリペプチド;およびポリアルキルオキシド部分を含む融合タンパク質であって、T細胞の共刺激を抑制する融合タンパク質。
【請求項13】
ポリアルキルオキシド部分がポリエチレングリコールである、請求項12記載の融合タンパク質。
【請求項14】
ポリエチレングリコールがポリペプチドのN末端またはC末端に結合している、請求項13記載の融合タンパク質。
【請求項15】
ポリエチレングリコールがmPEGプロピオンアルデヒドである、請求項13記載の融合タンパク質。
【請求項16】
ポリエチレングリコールが分枝状または直鎖状である、請求項13記載の融合タンパク質。
【請求項17】
ポリエチレングリコールが約5 kD、12 kD、20 kD、30 kD、40 kD、または50 kDの分子量を有する、請求項13記載の融合タンパク質。
【請求項18】
配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含むポリペプチド;および免疫グロブリン重鎖定常領域を含む融合タンパク質であって、T細胞の共刺激を抑制する融合タンパク質。
【請求項19】
免疫グロブリン重鎖定常領域がFc断片である、請求項18記載の融合タンパク質。
【請求項20】
免疫グロブリン重鎖定常領域がIgG、IgM、IgE、IgA、およびIgDからなる群より選択されるアイソタイプである、請求項18記載の融合タンパク質。
【請求項21】
IgGアイソタイプがIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である、請求項20記載の融合タンパク質。
【請求項22】
以下を含む製剤:
配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列を含む単離された可溶性ポリペプチド;および
薬学的に許容される賦形剤。
【請求項23】
請求項22記載の製剤を含むキット。
【請求項24】
以下を含む製剤:
請求項8記載の抗体または抗体断片;および
薬学的に許容される賦形剤。
【請求項25】
T細胞の共刺激を抑制する方法であって、T細胞を、その配列が配列番号:2のアミノ酸残基23〜346または配列番号:5のアミノ酸残基1〜313と少なくとも95%の同一性を有する配列を含み、T細胞の共刺激を抑制する可溶性ポリペプチドと接触させる段階を含む方法。
【請求項26】
接触段階がポリペプチドをT細胞と共にインビトロで培養する段階を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
T細胞が患者内にある、請求項25記載の方法。
【請求項28】
接触段階がポリペプチドを患者に投与する段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
接触段階がポリペプチドをコードする核酸を患者に投与する段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
以下の段階を含む、請求項27記載の方法:
(a) 患者から得られた細胞の子孫であって、細胞がポリペプチドを発現するように、ポリペプチドをコードする核酸分子をエクスビボでトランスフェクションまたは形質転換した組換え細胞を提供する段階;および
(b) その細胞を患者に投与する段階。
【請求項31】
組換え細胞が抗原提示細胞(APC)であり、その表面上にポリペプチドを発現する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
投与段階の前に、APCを抗原または抗原ペプチドでパルスする、請求項31記載の方法。
【請求項33】
患者が、クローン病、潰瘍性大腸炎、移植片対宿主病、セリアック病、および過敏性腸症候群からなる群より選択される炎症性疾患に罹患している、請求項27記載の方法。
【請求項34】
クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、移植片対宿主病、および過敏性腸症候群からなる群より選択される疾患に関連した症状または状態の少なくとも1つを治療する、予防する、その進行を抑制する、その発症を遅延させる、および/または軽減する方法であって、請求項22記載の製剤の有効量を患者に投与する段階を含む方法。
【請求項35】
クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、移植片対宿主病、および過敏性腸症候群からなる群より選択される疾患に関連した症状または状態の少なくとも1つを治療する、予防する、その進行を抑制する、その発症を遅延させる、および/または軽減する方法であって、請求項24記載の製剤の有効量を患者に投与する段階を含む方法。

【公表番号】特表2008−546426(P2008−546426A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522769(P2008−522769)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/018540
【国際公開番号】WO2007/149067
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】