説明

T細胞ワクチン

改良されたT細胞ワクチンおよびワクチンを作る方法の説明。本ワクチンは、自己反応性T細胞を刺激する能力があり得る抗原性ポリペプチドのエピトープすべてに対するT細胞の刺激により作られ得る。一実施形態において本発明は、自己反応性T細胞のためのポリペプチド抗原中のエピトープを同定する方法を提供する。宿主から単離したT細胞を含むサンプルも提供され得る。一個以上の異なるペプチドは、複数のサンプルの一部に加えられ得る。ペプチドの配列は、ポリペプチド抗原の配列の一部に集合的に含まれ得る。活性化した自己反応性T細胞を含む一部のサンプルは同定され得る。自己反応性T細胞を活性化するペプチドは、エピトープを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞ワクチンおよびこれらワクチンの調製方法に関する。T細胞ワクチンは、例えば多発性硬化症などの自己免疫疾患の処置に使用し得る。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)は、中枢神経系(CNS:Central Nervous System)のミエリンの破壊を特徴とする炎症性疾患である。この疾患の病因は、例えばミエリン塩基性タンパク質(MBP:Myelin Basic Protein)、ミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG:Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein)およびミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP:Proteolipid Protein)など、ミエリン抗原に応答する自己免疫T細胞に関係するという証拠が増えている(非特許文献1)。ミエリン反応性T細胞の活性化とクローン増殖のあと、これらは血液脳関門を通ってCNSへ侵入し、ミエリン膜を損傷する結果となる。MBP−反応性T細胞は、in vivoの活性化を起こし、MS患者の血液および脳脊髄液中に高頻度で前駆物質を生じることが判った(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。この疾患と戦うための最近の方略は、T細胞ワクチン接種と称される手段によって活性化ミエリン−反応性T細胞の数を減少させることに焦点を合わせた。化学的処置または放射線照射によって不活性化したMBP−反応性T細胞による繰り返し接種は、MSの動物モデルで、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE:Experimental Autoimmune Encephalomyelitis)を予防または治療すると証明された(非特許文献5)。
【0003】
T細胞ワクチン接種は、MS患者における臨床試験に進んでいる。予備的臨床試験において、放射線照射したMBP−反応性T細胞による3回の皮下接種は、多くの被験体に検出不能なレベルまで循環MBP−反応性T細胞数を減らすT細胞応答を誘発した(非特許文献6、非特許文献7)。その結果として、ワクチンを投与された患者では、再発率およびMRI病変活性の減少からもわかるように臨床改善が見られた。この予備的臨床試験では、安全プロフィールおよび技術的な実現可能性が優れていた。患者は、主観的な身体的および心理学的パラメータならびに患者の身体障害の客観的な尺度であるKurtzke総合障害度評価尺度(EDSS:Expanded Disability Status Scale)において改善が見られた。
【0004】
初期のT細胞ワクチン接種方略は、自己反応性エピトープを同定するために全長MBPを使用した。この方法を用いて産生した不活性化した自己反応性T細胞によるワクチン接種は、当初、MSの処置に十分であると信じられていた。しかしながら、その後の研究で、ワクチン接種をしてからある期間を経過すると、ミエリン抗原−反応性T細胞が再出現したことが明らかにされた。(Zhangら)。これらのミエリン抗原−反応性T細胞は頻繁に、エピトープシフトと称される過程で、最初に同定されたものとは異なる反応特性を提示した。再出現したT細胞によって認識されたエピトープはしばしば、全長ポリペプチドの免疫系に接近できない隠れたエピトープであり、および免疫優性での変異を意味するものであった。
【0005】
その後のT細胞ワクチン接種方略では、任意のMS患者の自己反応性T細胞を同定するために、免疫優性ミエリン抗原エピトープを使用し続けている。T細胞応答を促すT細胞受容体(TCR:T Cell Receptor)−主要組織適合遺伝子複合体(MHC:Major Histocompatibility Complex)クラスIIおよび/またはクラスI−ペプチド相互作用の構造上の特色は、顕著なエピトープに対応するものとした。免疫優性のための分子基盤がMHCに対するペプチド親和性に関係する一方で、T細胞は、抗原提示細胞(APC:Antigen Presenting Cells)であるMHCと会合した抗原断片複合体を認識する。特定の抗原に対し活性化閾(例えば、刺激指数)に達して応答する抗原特異的T細胞の相対数(または頻度)が高い方を免疫優性とする。個体間または個体内免疫優性のどちらであるかを決定する要因は、未だ十分解明されていないが、免疫優性は、テストされた被験体間で一番高頻度に検出可能である応答、または一個人内で最も強い応答のいずれかを記述する際に可変的に用いられる。
【0006】
免疫優性は、抗原に対するT細胞応答の中心的な特色である。抗原複合体の中には多くのペプチドが存在するが、ペプチドに対する応答を、T細胞と応答する数および/または活性に基づいて、比較的安定した序列に順序づけることができる。免疫優性は、免疫応答の解明およびワクチン創薬に対して重要であるにもかかわらず、その機序レベルでは十分解明されていない。免疫優性は、以下の各パラメータがこの現象に寄与するとはいえ、抗原提示細胞(APCs:Antigen Presenting Cells)によって発生するペプチド複合体の数、クラスIまたはクラスII分子に対するペプチドの親和性、ペプチドクラスIまたはクラスII複合体に対するT細胞受容体の親和性で容易に説明されるものではない。
【0007】
ミエリン抗原に応答するT細胞がエピトープ認識の際、各個人間でばらつきがあるものの、例えばMBPの83〜99および151〜170残基などのミエリン抗原の特定領域が、一部のMS患者において優先的に認められているとの認識(非特許文献8)に基づき、T細胞ワクチンの産生において免疫優性エピトープが使用された患者には、免疫優性ペプチドに反応する自己T細胞を患者から単離し、それを増やして不活性化したものを注射した。この方略は疾患進行率の減少につながったが、患者の疾病経過は進行し続けている。故に、改善されたT細胞ワクチンが必要である。
【非特許文献1】Stinissenら、Crit.Rev.Immunol.1997;17:33〜75
【非特許文献2】Zhangら、J.Exp.Med.、1994;179:973〜984
【非特許文献3】Chouら、J.Neuroimmunol.、1992;38:105〜114
【非特許文献4】Allegrettaら、Science、1990;247:718〜721
【非特許文献5】Ben−Nunら、Eur.J.Immunol.、1981;11:195〜204
【非特許文献6】Zhangら、Science、1993;261:1451−1454
【非特許文献7】Medearら、Lancet 1995;346:807−808
【非特許文献8】Otaら、Nature、1990;346:183〜187
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
自己反応性T細胞のためのポリペプチド抗原中のエピトープを同定する方法を提供する。宿主から単離したT細胞を含むサンプルも提供され得る。一個以上の異なるペプチドは、複数のサンプルの一部に加えられ得る。ペプチドの配列は、ポリペプチド抗原の配列の一部に集合的に含まれ得る。活性化した自己反応性T細胞を含む一部のサンプルは同定され得る。自己反応性T細胞を活性化するペプチドは、エピトープを含み得る。
【0009】
ペプチドの配列は、ポリペプチド抗原の完全な配列に集合的に含まれ得る。ポリペプチド抗原は、MBP、PLP、MOGまたはその組合せであり得る。異なるペプチドは、重複する8〜12個または4〜19個のアミノ酸の配列を含み得る。異なるペプチドは、約12〜16個または8〜20個のアミノ酸を含み得る。刺激された自己反応性T細胞の数は、対照と比較して少なくともおよそ2〜4の因数によって増量され得る。
【0010】
T細胞ワクチンを調製する方法も提供する。患者から単離したT細胞を含むサンプルが提供され得る。T細胞は、自己反応性T細胞を活性化させ得るある一個以上の異なるペプチドと接触する可能性があり得る。活性化された自己反応性T細胞は増大し得る。自己反応性T細胞は、それから弱毒化し得る。異なるペプチドは、所定値を超す刺激指数で自己反応性T細胞を刺激することができる抗原性ポリペプチドのすべてのエピトープを含み得る。抗原性ポリペプチドは、MBP、PLP、MOGまたはその組み合わせであり得る。
【0011】
T細胞媒介疾患のエピトープシフトを見つける方法をまた提供し、先に述べたように、自己反応性抗原のエピトープは同定され得る。エピトープは、対照と比較され得る。エピトープが異なるならば、エピトープシフトが生じ得る。エピトープシフトを見つけることは、被験体のエピトープシフトを診断するのに用いられ得る。エピトープシフトを見つけることはまた、前回のエピトープをエピトープと比較することによって被験体のエピトープの変異を観察するために使用され得る。
【0012】
T細胞ワクチンも、提供する。本ワクチンは、抗原性ポリペプチドに対して特異的であるT細胞を含み得る。本ワクチンは、所定値を超す刺激指数で産生することが可能な抗原性ポリペプチドのエピトープそれぞれを認識できるT細胞を含み得る。抗原性ポリペプチドは、MBP、PLP、MOGまたはその組み合わせであり得る。ワクチンは、所定値未満の刺激指数で産生することが可能な抗原性ポリペプチドのエピトープを認識する50%未満のT細胞を含み得る。T細胞は、これに限定されるものではないが、CD3、CD4、CD8、CD25、TCRαβ、TCRγδ、HSP60(熱ショックタンパク60)またはその組合せを包含する細胞マーカーを含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
抗原性ポリペプチドのエピトープに対して特異的なT細胞を含むT細胞ワクチンを提供する。また、このようなエピトープを特定する方法およびこのようなワクチンを調製する方法を提供する。このワクチンは、個別のワクチンであり得る。その他の態様は、以下の記載によって当業者に明らかになるであろう。
【0014】
1.定義
本願明細書において用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載することだけを目的とし、限定的なものではない。本願明細書および添付の請求の範囲で使用される単数形、「一つの」および「前記」は、文脈にその他の明瞭な指図がない限り複数形を包含する。
【0015】
「ペプチド」または「ポリペプチド」は、アミノ酸の連鎖配列を意味し得、天然もしくは合成または天然および合成アミノ酸の組み換えもしくは組み合わせであってよい。
【0016】
疾患由来の動物保護に言及する時、「処置」または「処置する」は、疾患を予防すること、鎮静することまたは完全に除去することを意味する。疾患を予防することは、疾患の兆候が見える前に動物へ本発明の組成物を投与することを伴う。疾患を鎮静することは、疾患を発症した後、臨床所見がつく前に動物へ本発明の組成物を投与することを伴う。疾患を抑制することは、疾患の臨床所見がついた後に動物へ本発明の組成物を投与することを伴う。
【0017】
a.実質的に同一
本願明細書において用いられる「実質的に同一」は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個またはそれ以上のアミノ酸の領域にわたって、第1および第2配列が、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%同一であることを意味し得る。
【0018】
2.T細胞免疫応答
ミエリン−反応性T細胞(MRTC:Myelin−Reactive T−Cell)に対する特異的免疫応答を引き起こすために、免疫系は、病因に伴う自己反応性T細胞を同定し、宿主防衛の取り組みに励む特定のタンパク質産物を単離できなければならない。このようなモデルの拮抗作用の裏側には、抗原−提示細胞の表面での免疫原性ペプチドエピトープおよびその提示のプロセシングがある。これらの作用の結果、免疫応答に関わるその他の分子を寄り集めて拘束するT細胞応答が誘発される。この免疫系の中核を成すのは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)である。ヒト染色体6上にあるMHCは、自己/非自己識別および抗原プロセシングおよび提示に不可欠である分子をコードする高度に多型性のある一連の遺伝子である。この多重遺伝子複合体の能力はその多型性にあり、異なる対立遺伝子クラスIおよびクラスII産物が無限に近い一連のペプチドと結合することが可能となる。MHCの性質からは、自己−MHC拘束の現在の基本概念が示唆される。CD4+T細胞は、クラスIIMHC対立遺伝子を共有する抗原提示細胞によってのみ活性化する;すなわち、CD4+ヘルパーT(Th:helper T)細胞による抗原認識は、クラスIIMHC拘束性である。一方、CD8+細胞傷害性T(Tc:cytotoxic T)細胞による抗原認識は、クラスIMHC拘束性である。
【0019】
T細胞免疫応答のセントラルドグマは、ヒト白血球抗原(HLA:Human Leukocyte Antigen、またMHCとして周知の)によるペプチドの提示である。HLA分子は、抗原提示細胞(APC)の表面に存在する。これらHLA分子(この内に何百もの異なる対立遺伝子が存在する)は、患者のHLA表現型を作る。T細胞へ提示されるペプチドは、具体的には、HLA分子によって作られたMHCIまたはIIグルーブ内部で結合しなければならない。
【0020】
既に記載のように全長抗原性タンパク質を使用して産生したT細胞ワクチンは、失敗であった。全長抗原の場合、HLAによって正確なペプチドが提示されるには、APCによるプロセシング次第となる。不完全なプロセシングは、疾患に関連のあるエピトープを提示するHLAの能力を減少する。
【0021】
全長抗原のプロセシング問題を解決する最初の試みは、ペプチドを使用したワクチンを代わりに産生することであった。どのペプチドが適当な刺激性抗原であったかを判定するために、MS患者のスクリーンを免疫優性エピトープの同定のために実行した。これら免疫優性エピトープは、実際には、MS罹患者に見られる全反応のうちささいな部分しかカバーしていない。各個人に見られる非常に個別的な特異的免疫反応性(疾患に関連する)ペプチドを検出する方法を、本願明細書において提供する。この方法は、これらのイディオタイプ細胞をトレース記録するのに用いることもできる。この方法は、新しい病原性イディオタイプが発生した時にそれらを検出し、他の抑制が持続しているのかについて観察するのに用いられ得る。
【0022】
特定の患者についてさらに別の疾患関連性ペプチドがあるかもしれないが、このようなワクチンを患者に接種すると、抗イディオタイプおよび抗エルゴタイプの免疫反応が導かれるので、免疫優性エピトープの使用は十分であると見なされていた。抗イディオタイプ反応は、ワクチンにおける特定のT細胞集団に対するものと考えられており、一方、抗エルゴタイプ反応は、すべての活性化したT細胞集団に対するものであると考えられた。
【0023】
すべての患者に同じペプチドセットを使用することは、個人のHLA表現型を一切考慮しないこととなるので、それらAPCと結合するペプチドは最適化されない。T細胞はこのようなペプチドによって適切に刺激されず、免疫優性ペプチドだけの使用は、しばしば不十分な増殖培養結果となる。周知のHLA対立遺伝子の場合、一般に患者のHLAと結合することが可能なペプチドを使用してT細胞ワクチンを産生すると、強力なワクチンが産生される。一方、未知のHLA対立遺伝子の場合、結合するペプチドの予測ができず、したがって強力な応答を産生するためのスキャン分析評価にかけなければならない。さらに、周知の対立遺伝子の場合でも、予測モデルは100%正確ではない。したがって、本願明細書において記載のエピトープスクリーニング分析(EAA:Epitope Screening Analysis)によるアプローチはまた、ミエリンタンパク質上でのさらなるペプチドに対するエピトープの広がりの影響を制限し得る。本願明細書において提供されたT細胞ワクチンは、患者間の自己反応性T細胞受容体の可変性およびばらつきに基づいてどの患者に対しても個別化され得る。
【0024】
3.エピトープスクリーニング分析(EAA)
自己反応性ポリペプチドのエピトープを同定する方法を、提供する。宿主から単離されたT細胞を含むサンプルを、提供する。たとえば、末梢血単核球(PBMCs:Peripheral Blood Mononuclear Cells)または脳脊髄液由来の単核球(CSFMCs:Mononuclear Cells from the CerebroSpinal Fluid)は、宿主から採取され得る。サンプルはそれから複数の部分に分割し得、それぞれの部分を一種以上の異なるペプチドまたは対照の存在下でインキュベートし得る。ペプチドの配列は、ポリペプチド抗原の一部の配列を集合的に含み得、これは完全なポリペプチドとすればよい。最終的に、刺激された自己反応性T細胞を含む一部のサンプルを同定すればよい。刺激された自己反応性T細胞を含むサンプルの一部は、刺激指数(SI:Stimulation Index)を参照することによって同定され得る。
【0025】
EAAは、CD4(MHC II)およびCD8(MHC I)に成長をもたらし得る。本来、Th1 CD4クラスII細胞は、MSの唯一の病因細胞であると考えられていた;しかしながら、CTL CD8クラスI細胞も、MSと強く関係していることが明白となった。MHC II遺伝子座が主要な遺伝子的つながりであると記載するものもあるし、MHC II遺伝子座の背景では、MSおよびMSの重症型に対して特定のMHC Iと強い関係があると示すものもある。過去に予測した方法論は、MHC IIおよびIの両方のペプチドを同定するものではない。EAAは、MHC IIおよびIとの関係を知る必要はなく、これらペプチドを同定する。さらに、EAAは患者に合ったワクチンを作るために十分な長さのペプチドを使用し得る。APCsは、クラスII MHCによって現れる、10〜11個のアミノ酸ペプチドを産出するためにペプチドを処理し得る。ペプチドは、クラスI MHCと結合し得る配列を産出する部分的なタンパク質分解を起こし得、それはアミノ酸約9個の長さであり得る。その結果、本当にMHC IおよびMHC IIが特定の患者においてMSと関係しているならば、CD4およびCD8T細胞は、好適なペプチドを用いて増殖し得る。
【0026】
a.ペプチド
任意の自己反応性ポリペプチドの一部を含むペプチドが、スクリーニング方法でも使用し得る。ペプチドは、例えばMBP(NCBIアクセッション番号P02686、またはそれと実質的に同一のポリペプチド)、MOG(NCBIアクセッション番号CAA52617、またはそれと実質的に同一のポリペプチド)、PLP(NCBIアクセッション番号AAA60350、またはそれと実質的に同一のポリペプチド)、またはその組み合わせなど、MSに関連した自己反応性ポリペプチドの一部を含み得る。ペプチドの配列は、集合的にではあるがポリペプチド抗原の完全な配列を含み得る。異なるペプチドは、重複する約4〜約19個のアミノ酸または約8個〜約12個のアミノ酸の配列を含み得る。ペプチドはまた、約8〜約20個のアミノ酸または約12〜約16個のアミノ酸を含み得る。
【0027】
b.刺激指数(SI)
SIは、MRTCポリペプチド標的の一部を含むペプチド存在下でのサンプルの〔H〕チミジンの取り込みを媒体のみの対照と比較することによって計算され得る。簡潔に書くと、サンプルの各アリコートを播種し、反応性T細胞を刺激するためにポリペプチドの一部を含むペプチドのみの対照または媒体いずれかの存在下でインキュベートする。培養物は、インキュベーションの最後の6〜18時間に〔H〕チミジンをパルスラベルにする。SIは、抗原アリコートの1分当たりの平均的カウント(cpm:counts per minute)/対照アリコートの商として計算される。自己反応性T細胞のSIは、対照と比較して少なくとも1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7.2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0の倍で増大し得る。
【0028】
(1)所定値
SIは、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7.2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0であり得る所定値を有し得る。
【0029】
所定値はまた、以下のような分散評価方法を使用して計算され得る:
1.EAAは、任意の患者個体群に実施すればよい(120人の各被験体から最低120アッセイ)
2.「陰性個体群」は、すべてのSI値の平均が<2.5であるものとすればよい
3.標準偏差(SD:Standard Deviation)は、ペプチドそれぞれについて計算すればよい
4.各ペプチドについて、以下のものを計算すればよい:
a.平均+1SD
b.平均+2DD
c.平均+3SD
5.以下のSIは所定値を超すとみなせばよい:
a.SIが、平均+3SD<以上
b.任意のSIが、2.5<以上
SIはまた、3重に実行してウェルを平均する代わりにそれぞれのウェルをテストすることによって計算してもよい。この場合、上記基準値を触れる単一ウェルはいずれも、所定値を超えたアッセイであると見なされ得る。
【0030】
所定値はまた、1分当たりのカウント(CPM)の分散評価方法を使用して評価され得る。このアルゴリズムは、任意のアッセイ内のペプチドすべてに対し広範囲なカットオフをセットされ得る。以下のように計算され得る:
1.EAAを実施し、すべての対照(媒体のみ、抗原は無し)ウェルに対するCPMを平均すればよい。
【0031】
2.次に対照ウェルのCPMに対するSDを計算すればよい。
【0032】
3.以下は、制御された各ウェルについて、以下のものを計算すればよい:
a.平均+1SD
b.平均+2SD
c.平均+3SD
4.対照ウェルの平均+3SD以上の平均CPMをもつ各ペプチドが所定値を超えると見なせばよい。
【0033】
各ウェルはまた、3重に実行してウェルを平均する代わりに評価してもよい。この場合、上記基準値を触れる単一ウェルはいずれも、所定値を超えたアッセイであると見なされ得る。
【0034】
個々のウェルで分析されたペプチドまたは3重に実行されるウェルで平均をとったペプチドのうち、分散評価方法でSI≧2.5、SI≧平均+3SD、またはCPM評価方法でSI≧平均+3SDとなったペプチドはいずれも、所定値を超えると見なされ得、ペプチドに対する反応が陽性であるT細胞群を指し得る。
【0035】
4.T細胞ワクチンを作る方法
T細胞ワクチンを調製する方法が、提供される。患者から単離したT細胞を含むサンプルも、提供し得る。さらに、スクリーニング方法によって同定したエピトープを含むペプチドも追加される。さらに、自己反応性T細胞も単離され得る。さらに、T細胞をも弱毒化し得る。
【0036】
a.刺激
スクリーニング方法によって同定されたエピトープを含むペプチドに対し所定値を超えるS.I.を有すると同定された自己T細胞は、例えば放射線照射した自己PBMCなどのAPCの存在下、対応するペプチドと任意ではあるがIL−2とで刺激サイクルを繰り返しかければよい。照射は、3500または2500〜6000ラドであり得る。刺激サイクルは、7〜14日間実行され得る。刺激サイクルはまた、7〜10日間実行され得る。総細胞数が治療的なレベルに達するまで、T細胞は刺激サイクルで増殖し得る。T−細胞株は、この時点で凍結保存され得る。
【0037】
T細胞は、エルゴトップ(ergotopes)の上方制御を誘発するために、非特異的である刺激によって活性化し得る。次に結果として生じる活性化したT細胞は、弱毒化し得る。T細胞は、T細胞を複製能力はないが生存能力はあるものとするいずれもの方法によって弱毒化し得る。例として、T細胞は例えばガンマ照射などの放射線照射によってまたは化学的不活性化によって弱毒化し得る。
【0038】
b.活性化
自己反応性T細胞は、希釈前の刺激の増殖サイクル間に活性化し得る。希釈前の増殖サイクル間、T細胞の活性化は休眠状態のT細胞ではないが、活性化された表面に発現したエルゴトップ(ergotopes)の全体的な上方制御を誘発し得る(Iran R.Cohen,Francisco J.Quintana and Avishai Mimran.Tregs in T cell vaccination:exploring the regulation of regulation.JCI Volume114(9)1227〜1232,2004)。故に、自己反応性T細胞は、抗エルゴタイプおよび抗イディオタイプT細胞反応の両方を希釈前に活性T細胞として成長させる時、以下のワクチン接種を見込めばよい。(Cohenら、JCI Volume114(9):1227〜1232、2004)。自己反応性T細胞は、マイトジェン(例えばフィトヘムアグルチニン(PHA:PhytoHemAgglutinin)など)またはPHA存在下でのインターロイキン−2またはTCR/CD3複合体の連結反応を通しての曝露によって活性化され得る(Kobayashiら、J.Exp.Med.170:827)。T細胞活性がIL−2に対する反応性を与え得る主要な機序の一つに、これらサイトカインに対する受容体サブユニット(エルゴトップ(ergotopes))の上方制御を介するものがある(Chuaら、J.Immunol.153:128、1994;Desaiら、J.Immunol.148:3125、1992;Preskyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:14002、1997;and Wuら、Eur.J.Immunol.27:147、1997)。
【0039】
c.APC
APCは白血球であり得る。APCの代表的な例には、単核白血球、樹状細胞およびB細胞が含まれる。
【0040】
d.T細胞
T細胞ワクチンは、CD3、CD4、CD8、CD25、TCRαβ、TCRγδ、HSP60(熱ショックタンパク60)またはその組合せに対して細胞マーカーを含み得る。T細胞ワクチンはまた、T細胞膜またはその断片を含み得る。
【0041】
e.希釈
T細胞ワクチンは、弱毒化し得る。弱毒化は、T細胞を複製能力はないが生存能力はあるものとするいずれもの方法によって成し得る。例えば、T細胞は、ガンマ線照射などの放射線照射または化学的不活性化によって弱毒化し得る。ガンマ線照射は、10,000または7,000〜12,000ラドであろう。
【0042】
5.T細胞ワクチン
T細胞ワクチンがさらに、提供される。ワクチンは、上記記載のように産生され得る。ワクチンは、所定値を超える刺激指数を生成する能力がある抗原性ポリペプチドのエピトープ(任意に、すべてのエピトープ)がワクチンに存在する自己反応性T細胞によって認識されることを特徴とする、抗原性ポリペプチドに特異的であるT細胞を含み得る。ワクチンは、6000万〜9000万、3000万〜4500万、または600万〜900万のT細胞を含み得る。ワクチンはまた、所定値未満の刺激指数を生成する能力がある抗原性ポリペプチドのエピトープを認識する50%未満のT細胞を含み得る。ワクチンはまた、所定値未満の刺激指数を生成する能力がある抗原性ポリペプチドのエピトープを認識する45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満のT細胞を含み得る。
【0043】
T細胞ワクチンは、複数の抗原性ポリペプチドに対して特異的であるT細胞を含み得る。例えば、MS患者へ投与されるためのT細胞ワクチンは、MBP、PLPおよびMOGに対して特異的であるT細胞を包含し得る。
【0044】
6.エピトープシフトを検出する方法
T細胞媒介疾患のエピトープシフトを検出する方法が提供される。この方法は、スクリーニング方法を用いて自己反応性抗原のエピトープを同定することを含み、対照に対するこれらエピトープを含む。エピトープが異なっていても、エピトープシフトは検出された。エピトープシフトを検出するには、エピトープシフトの診断またはエピトープシフトの観察が用いられ得る。
【0045】
ポリペプチド抗原の配列の一部を含むペプチドを提供する工程によって、本発明は、全長タンパク質に覆われた隠れたエピトープを同定する方法を提供する。
【0046】
本発明は、多面的な側面を有し、以下の限定されない実施例で説明される。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
免疫優性型ワクチン
過去の臨床試験では、ワクチン細胞株は、MBP由来の2種の免疫優性ペプチドで培養T細胞を刺激することによって産生された。最近の臨床試験では、ワクチン細胞株は、合計6種の免疫優性ペプチド(MBP由来の2種、PLP由来の2種およびMOG由来の2種)でT細胞を刺激することによって産生された。一部の患者においてこの限られたペプチドセットの使用は、ワクチンの産生に不十分な増殖培養を生じ、数週間を要した。ペプチドが患者全員のHLA表現型と完全に一致しなかったため、T細胞は適切に刺激されなかった。加えて、関与した大部分のエピトープは、予想した免疫優性エピトープのみの使用だけではまかないきれず、故に正確に個別化したワクチンは樹立できなかった。まかないきれなかったエピトープは、in vivo中、クローンの拡大および発生を刺激するかも知れないし、阻止できないかも知れない。
【0048】
(実施例2)
ミエリンエピトープ
適当な刺激を与えたペプチドの選択が改良可能かどうかを判定するため、MBP、PLPおよびMOG内の付加ペプチドエピトープを調製し、そして多発性硬化症患者でテストした。分析のため、MBP、PLPおよびMOGの全長をカバーした合計163種の異なる重複ペプチド(16個のアミノ酸(16マー)から成るペプチドそれぞれの合成を、前の配列と重複する12個のアミノ酸に4個のアミノ酸を補う)を合成した。合計44種のMBP、67種のPLPおよび52種のMOGペプチド配列を合成した。配列一覧表、それらの識別番号とアミノ酸番号、およびEAA(混合物ID)に使用するためどのように組み合わせたかを表1〜3に示す。実施例1に使用した6個の免疫優性配列を太字で示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2−1】

【0051】
【表2−2】

【0052】
【表3−1】

【0053】
【表3−2】

(実施例3)
ミエリン抗原レパートリーの発生
12個のアミノ酸(aa:amino acide)が重複するそれぞれ長さ16個のaaのMBPタンパク質を範囲とする重複するペプチドを発生させた。MBPペプチドすべては生産可能であるが、MBPペプチドのレパートリーは8種のペプチドを除外した。結果として36種のペプチドは、タンパク質の95.7%をカバーする。1〜8個のアミノ酸だけが、カバーされなかった。MBPペプチドの一覧表は、薄灰色で強調表示された不使用のペプチドと並んで表4中にある。
【0054】
【表4】

12個のaaが重複するそれぞれ長さ16個のaaのPLPタンパク質を範囲とする重複するペプチドを発生させた。生産可能であったすべてのPLPペプチドは、アミノ酸の61番〜72番目および245番〜248番目の配列を包含していない。加えて、PLPペプチドレパートリーは、20種のペプチドを除外した。結果として35種のペプチドが、タンパク質の83.0%をカバーする。カバーできなかった領域は、アミノ酸の21番〜24番目、61番〜80番目、117番〜128番目、165番〜168番目および237番〜248番目のみである。PLPペプチドの一覧表は、薄灰色で強調表示された不使用のペプチドと並んで表5に示され、網掛けで影をつけられた箇所は生産不能であった。
【0055】
【表5−1】

【0056】
【表5−2】

12個のaaが重複するそれぞれ長さ16個のaaのMOGタンパク質を範囲とする重複するペプチドを発生させた。生産可能であったすべてのMOGペプチドは、アミノ酸の141番〜144番目の配列を包含していない。加えて、MOGペプチドレパートリーは、8種のペプチドを除外した。結果として40種のペプチドが、タンパク質の93.6%をカバーする。カバーできなかった領域は、アミノ酸の69番〜80番目および141番〜144番目のみである。MOGペプチドの一覧表は、薄灰色で強調表示された不使用のペプチドと並んで表6に示され、網掛けで影をつけられた箇所は生産不能であった。
【0057】
【表6−1】

【0058】
【表6−2】

ペプチドを、ほとんどの場合、95%超の純度で完全長のMBP、PLPおよびMOGに対して合成した。合成可能であるすべてのペプチドは、その後の実験において評価された。合計16種のペプチドは、固相ペプチド合成法(SPPS:Solid−Phase Peptide Synthesis)によって合成不可能である。これら16種のペプチドは、3種のタンパク質(全タンパク量の2.6%)について特異的である全長18個のアミノ酸に及んだ。生産不可能なすべてのペプチドは、実際hydrophicであった。
【0059】
(実施例4)
エピトープ分析アッセイ
実施例2のペプチドは、患者の血液中のミエリン反応性T細胞を同定するため、in vitroでのPBMC刺激アッセイでテストした。末梢血単核球(PBMCs)を、全血より分離、洗浄、カウントし、合計4枚の96穴プレートに、1穴当たり細胞250,000個を播種した。2種の重複する16マーペプチドのミエリンペプチド混合物を、プレート毎に培地のみのコントロール穴の3穴とPBMCsの3穴に加え、それからインキュベートした。インキュベーションの2日後に、インターロイキン2(IL−2:Interleukin−2)を20U/ml加えた。5日目に、プレートを放射性同位元素(放射性チミジン)で標識し、6時間後に採取した。このアッセイにおいて、放射性チミジンを取り込んだ細胞は、T細胞受容体−ペプチド−MHC複合体で急速に活性化し誘発されるT細胞の代表である。コントロールおよび実験細胞より比較的多くの放射性チミジンを取り込んでいるT細胞は、より高度に活性化されたT細胞であり、より迅速に増殖する。
【0060】
刺激指数(SI)は、4枚のプレートすべてに比例配分した培地のみのコントロール穴中の1分間あたりの(CPM)平均をペプチドで刺激した穴の平均CPMで放射性標識数で割ることによって、それぞれのペプチド混合物に対して決定された。少なくとも3枚のSIは、陽性であると見なされた。図1は一人のMS患者由来のEAA例である。MOGm15で刺激した穴は非常に高い反応性であるのに、ペプチド混合物のうち7種は、わずかな反応性であった。図2〜4は、患者48人中のペプチド混合物に対する反応の頻度を示す。
【0061】
(実施例5)
HLA分析
実施例2で記述したように、EAAによって同定された活性ペプチドを、患者のHLA表現型と比較した。http://www.imtech.res.in/raghava/propred/(Singh,H.およびG.P.S.Raghava,ProPred:HLA−DR結合の予測サイト)で閲覧利用可能なクラスIIの結合領域を予測するためのアルゴリズムを、患者のDRB1_0801、DRB1_1501およびDRB5_0101のHLA−DRハプロタイプに基づくMOGの結合領域を予測するため用いた。
【0062】
図5は、患者の3種のHLA対立遺伝子のためのMOGタンパク質内部のProPred結合予測を示す。黄色い残基がグルーブ内部でフィットするその他残基を表す時、赤いアミノ酸残基は、HLAグルーブ内部で結合するための予測されたアンカー残基を表す。その結果、これら残基は、この患者由来のT細胞に対する刺激性エピトープの候補であると予測される。
【0063】
明黄色の囲みは、10のSIを与えるペプチド混合物MOGm15に含められる配列を包囲する。HLA対立遺伝子のうち3種すべてと結合すると予測されるこれらペプチド内部に配列がある。2種の対立遺伝子に対して、2種の予測された結合エピトープおよびこれら配列内に3番目の部分がある。これら配列の予測した結合が、特定の範囲をEAアッセイで得られた結果と相関させるが、予測されていない刺激性ペプチドがある。
【0064】
これら結果は、EAAが患者特有の刺激性ペプチドを同定するため、優れた予測結果を提供する工程を示す。EAAの優越性は、HLA発現変異体のために強化された。HLA−AおよびB遺伝子のための血清学と分子タイピング間の比較検査は、血清学的試薬では検出されないがDNAタイピング試薬で検出される対立遺伝子を発見した。これらHLA発現変異体は、細胞表面上に発現しないか、またはごく少量発現する。HLA変異体を同定する必要がないので、EAAはソフトウェア画面より優れている。
【0065】
(実施例6)
ワクチンの産生
ワクチンに使用するため、EAAによって同定された患者−特有のペプチドを、ミエリン−反応性T細胞の産生および増大に利用可能かどうか判定するためテストした。500mlの血液袋を、ワクチンの産生培養を始めるため患者から得た。バルク培養を、最適なペプチドとともにAIM V培地で開始した。48時間のインキュベーション後、rIL−2を20U/ml加えた。7日後、培養物をPBMCsおよびペプチドで再度刺激した。培地を、X Vivo15培養液中100U/mlのrIL2と2%のAB血清へ変更した。培養物を養い、必要に応じて1〜4日おきに分割した。さらに7日後、培養物をAPCsおよびペプチドでもう一度刺激した。培養物を持続的に養い、必要に応じて1〜4日おきに分割した。さらに7〜14日後、培養物は、少なくとも100×10個の細胞数に増大した。その細胞を10×10個の細胞数の一定分量に分割し、凍結した。
【0066】
(実施例7)
TCR V分析
実施例6で産生したワクチンを、選択的に増大させたT細胞がT細胞の特定亜群を持っていたかどうか判定するためテストした。T細胞亜群の富化を、可変のT細胞受容体ベータ鎖の使用法(Vβ:Variable beta chain usage)で分析することによって評価した。24の異なる周知のベータ鎖可変(Vβ)領域群を、特有の蛍光で標識したモノクローナル抗体およびフローサイトメトリーを使って評価した。T細胞の特定亜群がペプチドの刺激によって選択的に増大するならば、亜群は増大し、増加はVベータ群の1つを表す細胞の割合で検出されるはずである。
【0067】
T細胞受容体(TCR:T Cell Receptor)Vベータ分析を、実施例6で記述されるように産生したワクチンの産生中の約18日後に実行した。T細胞株を、この患者に対する元のEAA中4.6のSIを産生したペプチド混合物MBPm10で患者のPBMCsを刺激することによって産生した。図6は、ペプチド混合物MBPm10が4.6のSIを産生したことを示す。この混合物を、培養中この患者由来のPBMCsの刺激のために用いた。
【0068】
図7は、ベースライン時の細胞で、PBMCsで、およびこの同一患者のためのMBPm10ペプチドでT細胞培養の18日目に実行したVベータ分析を示す。ベースラインには、PBMCsにおけるTCR Vベータ鎖使用法の典型的に比較的均等な分布がある。しかしながら、MBPm10で培養中に刺激した18日後、培養中の細胞の現在45%を占めるVベータ5〜6陽性T細胞が、MBPm10ペプチド混合物での刺激に焦点を合わせたことを示すか、またはこの患者のPBMCs中のT細胞亜群を選択的に増大できることを示している。
【0069】
(実施例8)
成長分析
より迅速に拡大およびT細胞を刺激するため、EAAで選択されたペプチドの刺激能力をテストした。細胞増殖曲線を、異なる2つの刺激性ペプチド混合物で分析した。図8に示されるEAA CPMデータは、4.7のSIで患者のMBPm19中、強い反応性混合物を示す。同じアッセイからの第2のプレートは、17.9の高いSIでPLPm33中、その他の反応性混合物を示す。これら2種のペプチド混合物を、その後、T細胞株の産生のためにこの患者由来のPBMCsの刺激に使用した。
【0070】
EAA−同定したペプチドの成長分析を図9に示す。PLPm33刺激細胞を、ペプチド混合物で3回刺激することによって20日間で1500万個のPBMCsから2億個のT細胞へ増大した。それらはまた、21日目にペプチドで再度刺激を加えた後、1500万個のPBMCsから2億1700万個のT細胞まで増大したが、MBPm19刺激細胞は、迅速に増大するのにより時間がかかった。それらを培養開始日から27日目に採取した。この過程は、MBP、PLPおよびMOG由来の免疫優性ペプチドだけを使用する過去の産生方法より6倍短い過程を表す。
【0071】
その他MS患者のため、合計8.25×106個のPBMCsを、刺激状態ごとに最初にシードした。培養中21日目、ペプチド(PHAを使用していない)による合計3回の刺激の後、細胞株の1つは142×106個の細胞に増大し、一方、その他の細胞株は95×106個のT細胞に増大した。図10は、ペプチド混合物PLPm27で刺激している間、9日目から16日目に成長した培養物として生じたことに焦点をあわせるTCR Vベータを示す。Vベータ鎖5−5を使用するT細胞亜群は、大部分のその他のVベータT細胞亜群を犠牲にして増大する。
【0072】
(実施例9)
ミエリンMRTCの観察
EAAを、T細胞ワクチン接種の後、ミエリン反応性T細胞(MRTC)特異性を評価するため用いた。拡散しているエピトープを検出し、当初生じた新規エピトープを含むミエリンタンパク質への免疫攻撃を重点とした広がりもテストした。図11は、3種ワクチンシリーズの最初の再処置を受けた患者由来のMRTC発生頻度データの一部を示す。最初のワクチンシリーズの後52週目で、患者のMRTCsは、1000万個のPBMCsにつき合計29個のMRTCをリバウンドした。優先的T細胞頻度分析(TCFA:T Cell Frequency Analysis)は、28週目で、1000万個のPBMCs中4個のMRTCだけを示した。
【0073】
新規ワクチンを、最初のワクチンシリーズと同一手順で調製し、処置を再開した。患者は4週目および8週目に追加接種を受け、そして、MRTCs数が1000万個のPBMCs中6個に減少した。15週後、24週目に、特にMBP反応性T細胞が再発し、患者のMRTCが開始された。
【0074】
図12は、全長MBPペプチドに対する患者の24週目のT細胞反応を示す。ペプチド周辺の囲みは、TCFAで過去に使用された2種の免疫優性MBP配列を含有する。見られるように、MBPペプチド2種に対し未だ反応性があり、TCFAでも見られるように、MBPに対する反応性の増加が原因かもしれない。
【0075】
図13および14は、それぞれ、全長のPLPおよびMOGタンパク質のペプチドに対する患者の24週目のT細胞反応を示す。ペプチド周辺の囲みは、TCFAで過去に使用された2種の免疫優性PLPおよびMOG配列を含有する。示されるように、PLPの3つの領域およびMOGの2つの領域は、EAAで強い反応を示す。この分析を、6種の新しく同定した反応性ペプチド混合物を使用している患者のための新規ワクチンの産生に用いた。
【0076】
(実施例10)
EAA分析1の要約
図15〜17は、8人のMS患者の、それぞれ、MBP、PLPおよびMOGペプチド反応パターンを示す。赤い線は、3のSIカットオフで陽性を示す。過去に使用されたMBP、PLPおよびMOGの2つの免疫優性ペプチドを、囲みで同定した。図15で示されるように、2つの免疫優性MBPペプチドを含まないMBPm19中にエピトープがある。PLPのため、図16は、免疫優性PLPペプチドを内部に含まれていない3カ所の別の免疫反応領域があることを指す。最も高い免疫反応は、PLPタンパク質配列の末端で3領域のすべての中にあった。MOGのため、図17は、タンパク質の膜貫通と隣接する細胞内部が過去に使用された免疫優性MOGペプチドよりはるかに免疫的活性が強いことを指す。
【0077】
図18〜20は、EAアッセイを使用してテストした合計15人のMS患者由来のサンプルに対し平均的SIsを示す。見られるように、MBPのC末端に対して、わずかに増加した反応が見られた。同じデータがPLPタンパク質を分析するとき、このタンパク質のC末端で、再び、免疫優性部分が非常に明白である。MOGタンパク質に対する反応の分析は、タンパク質のC末端領域と同様、膜貫通領域において免疫優性部分を示す。これらをもとに、データは、より効率的な手法で、より効果的なワクチンを産生するため、T細胞ワクチンの使用に対してMS患者由来のミエリン反応性T細胞を同定するのにミエリンタンパク質内部由来のその他ペプチドエピトープを含むことが重要であることを示している。
【0078】
MSにおいて、エピトープの拡散またはシフトのパターンの知識は、進行する組織破壊を防ぐペプチド−特有のT細胞ワクチン接種治療法を考案するために使用され得る。患者が分析される3つのミエリンタンパク質内部で「新しい」エピトープに対する反応を発現する時、および発現するならば、結果として起こるEAAは、判定に使用され得る。新たに同定された反応ペプチドは、後続のワクチンのためT細胞株の産生に使用され得る。
【0079】
(実施例11)
EAA分析2の要約
EAAを54人の被験体に実行した。被験体は、健常人(N=12)、Tovaxinの用量漸増臨床試験に登録されたMS患者(N=16)、Tovaxinの繰り返しワクチン接種臨床試験(拡張試験)に登録されたMS患者(N=13)および採血のみの臨床試験(方法開発)に登録されたMS患者(N=13)を含む。表4は、ミエリンペプチド混合物に対する被験体の反応を示す。それぞれ、表5〜7は、MBP、PLPおよびMOGペプチド混合物に対する被験体の反応を示す。図21〜23は、実施例1のワクチンの産生に使用された免疫優性ペプチドの場所を示す囲みとともにミエリンペプチド混合物に対する被験体の反応を示す。
【0080】
【表7】

テストされた13人すべての被験体は、MS治療の認証された免疫修復を受けていた。
調製されたTovaxinは、6人の患者にのみワクチン接種された。
陰性であった2つのサンプルは、凍結保存細胞からセットアップされた。
Tovaxin未接種;これらの患者は、過去にMBP由来のみのペプチドで調製されたワクチンのワクチン接種を受けたことがある。
【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【0083】
【表10】

少なくとも1つのミエリンペプチド混合物の反応が、健常人被験体12人のうち7人を含む、テストした54人の被験体のうち42人に見られた(78%)。被験体が反応したペプチド混合物の数は、0〜11の範囲であった。陽反応性は、3.0の最小SIから21.1の最大SIの範囲であった。
【0084】
反応パターンで示すように、テストされた被験体の過半数は、実施例1でワクチンの調製に使用した6種の免疫優性ペプチドの外側にある3種のミエリンタンパク質領域のペプチド配列に対する反応T細胞を有した。テストした被験体の41パーセントは、MBP(MBP83〜99およびMBP151〜170)の免疫優性ペプチドに反応した。テストした31%の被験体だけが、PLP免疫優性ペプチド(PLP30〜49およびPLP180〜199)に反応した。テストした11%の被験体だけが、MOG免疫優性ペプチド配列(MOG1〜17およびMOG19〜39)に反応した。
【0085】
最初に現れる反応パターンは、PLPおよびMOGペプチドよりさらに反応するペプチド配列MBP83〜99を同定する過去の研究と一致する。しかしながら、一般に、MBPペプチドに対する反応は、PLPおよびMOGペプチドに対して見られる反応より低く;テストされたすべての被験体の30%は、PLPペプチドでの65%およびMOGペプチドでの61%とは対照的に、1種以上のMBPペプチドに対して反応した。下記の表11は、被験体に対して反応したタンパク質ごとの平均ペプチド数を示す。
【0086】
【表11】

MD=被験体の採血方法開発
H.S.=被験体の健常人
DES=患者の用量漸増(ワクチンを接種したおよび未接種の両方)
EXT=患者の拡張試験。
【0087】
MOGタンパク質の場合、過去の研究は、タンパク質の細胞外の一部に重点を置いた。MOGは、アミノ酸残基1〜122個を含む免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、細胞膜部分およびアミノ酸残基123〜218個から成り立つ細胞内部分を含む。上記の結果は、アミノ酸113〜132個(MOGm15)の細胞内膣おいて、細胞膜配列の範囲内または隣接の範囲を越えてタンパク質の一部に高水準の反応を示す。興味深いことに、実施例1のワクチンで、前にワクチン接種を受けている拡張試験患者のすべて(100%)は、MOGの細胞内部分に免疫反応を示した。これはテストされたその他の被験体全員と対照的であり、49%のみがMOGペプチドに対する何らかの反応を示した。
【0088】
低刺激指数によるミエリン反応T細胞株の成長
以下は、3.0未満のSIおよび特に2.0以下で増殖するミエリン−反応性T細胞の能力を実証する。上記のアルゴリズムを使用して、1.3に限りなく低い統計的に優位なSIsを観察し、そしてそれ故、抗原に応答して増殖可能である。この能力を立証するため、2人の患者にまたがる5種の細胞株が、SI<2.0で示された。結果を、ペプチド抗原刺激およびT細胞成長因子だけで細胞株の成長を指す、表12および図24に示す。
【0089】
被験体1042のPBMCをEAAで実行し、および1.8のSIによるPLPm18、2.5のSIによるPLPm26および2.5のSIによるPLPm28を包含する2種のペプチド混合物は、陽性だった。細胞は以下に示すように通常のプロトコルごとに抗原刺激を受け、そして14、19、26、33および35日後に採取された。被験体1014のPBMCをEAAで実行し、および1.7のSIのMBPm14、1.7のSIのPLPm17、2.2のSIのPLPm28および1.9のSIのMOGm6を包含する4種の混合物は、陽性だった。被験体1014のための細胞は、以下に示すように抗原性刺激を受け、そして14、19、26、33および35日後に採取された。
【0090】
PBMCsを、ACD−1抗凝固剤中の静脈穿刺を通して得られる末梢血から密度勾配遠心分離によって分離した。PBMCsを、24穴プレートで1穴当たり2.5E+06個の細胞を播種した。EAAで同定された16マーペプチド型の抗原を、最終濃度で20ug/mlになるように加えた。インターロイキン−2(IL−2:InterLuekin−2)を開始48時間後に最終濃度で100U/mlになるように加え、そしてIL−2をそれぞれの給餌またはウェルの分割によって同一濃度になるまで加えた。抗原提示細胞(3500ラドで放射線照射したAPCs−自家PBMCs)の存在下でペプチドの再刺激を、7、14および21日目に行った。インターロイキン−15(IL−15:InterLuekin−15)を、開始14日後に最終濃度で5ng/ml〜20ng/ml(特定ロット)になるまで加え、そして残りの培養期間続けた。細胞株を35日目ですべて採取し、そして3.0〜8.2倍の増大を達成した。
【0091】
【表12】

図24は、抗原に応答して成長できた<2.0のSIsであるミエリンペプチド混合物に反応する被験体1042および1014由来の5種のT細胞株を示す。したがって、低いSIsを提示するT細胞株は、ミエリン抗原に応答して大きくなることができる。
【0092】
(実施例12)
ミエリン反応ペプチドのEAA分析
実施例3のペプチドを、次の通り429EAAs臨床試験でテストした。分散評価法またはCPM分散法を用いて、429アッセイのうち合計162(37.8%は、SIs陽性を示した。ワクチン前のEEAsは、368アッセイのうち150陽性(40.8%)を示す再発寛容型のMS患者(RRMS:Relapse Remitting Multiple Sclerosis)、および19アッセイのうち8陽性(42.1%)を示す最初のエピソードからなる症候群(CIS:Clinically Isolated Syndrome)とともに387アッセイのうち158陽性(40.8%)を示す。
【0093】
スクリーニング受診被験体のうち、合計312のうち144アッセイは、249人の被験体で陽性だった(それぞれ46.2%および57.8%)。これらのうち、PRMS患者は、238人の被験体において301アッセイのうち136陽性を示し(それぞれ45.2%と57.1%)およびCIS患者は、11アッセイのうち8陽性を示した(72.7%)。
【0094】
達成の間、89アッセイのうち14(15.7%)は陽性であり、そのうちPRMS患者は84アッセイのうち14陽性(16.7%)を示し、およびCIS患者は、5アッセイのうち0陽性(0%)を示した。EAAsの投与開始時は、31アッセイのうち6陽性(19.4%)であり、PRMS患者は28アッセイのうち6陽性(21.4%)を示し、CIS患者は3アッセイのうち0陽性(0%)を示した。
【0095】
ワクチン後EAAsは、42アッセイのうち4陽性(9.5%)を示し、そのうちPRMS患者は37アッセイのうち3陽性(8.1%)を示し、およびCIS患者は5アッセイのうち1陽性(20.0%)を示した。
【0096】
4週目、EEAsは21アッセイのうち2陽性(9.5%)を示し、そのうちPRMS患者は19アッセイのうち1陽性(5.3%)を示し、CIS患者は、2アッセイのうち1陽性(50.0%)を示した。8週目、EAAsは16アッセイのうち2陽性(12.5%)を示し、そのうちPRMS患者は14アッセイのうち2陽性(14.3%)を示し、CIS患者は2アッセイのうち0陽性(0%)を示した。12週目、EAAsは5アッセイのうち0陽性(0%)を示し、そのうちPRMS患者は4アッセイのうち0陽性(0%)を示し、CISは1アッセイのうち0陽性(0%)を示した。
【0097】
(実施例13)
EAA臨床試験
6ヶ月にわたって、研究を臨床試験の基準値を満たしている120人の被験体に対して行った。被験体は、再発寛容型多発性硬化症(PR−MS;n=114)、または0〜5.5の総合障害度評価尺度(EDSS)による危険性の高い最初のエピソードからなる症候群(CIS;n=6)、0〜10年の疾患の診断、年齢18〜55歳、MSおよび陽性EAAを連想させるMRI基準値を有した。
【0098】
先に述べた被験体の個体群を、上記記載の分散評価方法およびCPM分散法を用いたEAAによって評価し、そしてワクチン産生にふさわしいとみなした。ワクチンを生産する120回の試みのうち、輸送失敗(血液が定まった基準値の範囲内で授受できなかった)が2回、培養の汚染による失敗が1回および収穫量当たりの低い細胞量に達した5サンプルがあった。残り112被験体のうち、89人の被験体にワクチンが無事発生し、22人がいまだ産生中(適格なサンプルの98.9%、完了されたサンプル92.5%)である。このことから、陽性EAAを、本願明細書において開示された方法による治療用量のワクチン生産能力の前兆と見なした。
【0099】
T細胞株が増殖するための従来の方法は以下を含む:
1.PBMCsの単離
2.24穴プレートに2.5E+06個の細胞/穴でPBMCsを播種すること
3.2ペプチド/穴に20ug/ml/ペプチドで抗原を添加すること
4.48時間後(および採取までを含んだ)に、IL−2(10〜200IU/ml)を添加すること
5.7、14および21日目に、3500ラド(前に記載のように1.0E+06個)の放射線照射したAPCsおよび抗原(同一抗原/同一濃度)で再刺激すること
6.14日目(および採取までを含んだ)に、IL−15(1〜50ng/ml)を添加すること
7.細胞が十分な個数に生育しなかったなら、35日目に、成長を刺激するマイトジェン、スーパー抗原または抗体を添加する可能性。
【0100】
この研究の間、免疫優性のいくつかのエピトープがMS被験体の個体群中に発見された。これらのエピトープのいくつかは、新規である。我々の試験中、スクリーニングを受診した被験体の大多数が反応を示したペプチドがある。これら免疫優性領域のいくつかは、過去の文献に記述されていない。表13〜15に興味深いエピトープを羅列した。
【0101】
【表13−1】

【0102】
【表13−2】

【0103】
【表14】

【0104】
【表15】

図25〜27は、この臨床試験の結果を示す。図25A〜Hは429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。アッセイは日付順に並ぶ。陽性ペプチド混合物を、薄灰色で示す。陽性と判明したペプチド混合物は、独特および予測不能であったことを示す。
【0105】
図26は65アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。アッセイは日付順に並ぶ。陽性ペプチド混合物を、薄灰色で示す。陽性と判明したペプチド混合物は、独特および予測不能であったことを示す。陽性混合物の数は、単一被験体において0〜19まで変動した。
【0106】
図27は、4人の被験体における経時的なエピトープシフトを指すEAA分析の結果を示す。被験体1は、最初、MOGm4、MOGm5とMOGm6の周りでの反応、およびMOGm21、MOGm22とMOGm23へ移動による反応で微変異を示した。これら2つが重複することに注目する。被験体2は、さらに0時間から新しいペプチドへの反応が増すが、時間の経過とともに反応する同一ペプチドを示した。被験体3は、PLPからMOGへの反応の重要な変異を示し、および被験体4は、1つの部分(C−末端PLP)からその他の部分(N−末端MOG)への段階的な変異で、反応の多数の中心点を示した。また、同一患者において、最後の2つの時点での、MOG中心部への長期かつ短期の反応、およびMBPへの最終的な反応が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】MOGペプチド混合物に対する一人の患者のT細胞反応のEAA分析を示す。
【図2】被験体48人由来のT細胞のうちでMBPペプチド混合物に対する反応の頻度を示す。
【図3】被験体48人由来のT細胞のうちでPLPペプチド混合物に対する反応の頻度を示す。
【図4】被験体48人由来のT細胞のうちでMOGペプチド混合物に対する反応の頻度を示す。
【図5】患者の3種のHLA対立遺伝子のためのMOGタンパク質内部のProPred結合予測を示す。黄色い残基がグルーブ内部でフィットするその他の残基を表す時、赤いアミノ酸残基は、HLAグルーブ内部で結合するための予測されたアンカー残基を表す。
【図6】MBPペプチド混合物に対する一人の患者のT細胞反応のEAA分析を示す。
【図7】ベースライン時および一人の患者のT細胞を使用してMBPm10ペプチドでの刺激の18日後のTCR Vベータ鎖発現の割合を示す。
【図8】ミエリンペプチド混合物に対する一人の患者のT細胞反応のEAA分析を示す。
【図9】図8に示されるように、EAA分析によって2つのミエリンペプチドに対して強い反応を提示されたT細胞の成長を示す。
【図10】ペプチド混合物PLPm27で刺激している間、9日目から16日目に成長した培養物として一人の患者のT細胞株に生じたTCR Vベータ増殖巣を示す。
【図11】3種のミエリン−反応性T細胞ワクチンシリーズの最初の再処置を受けた患者由来のミエリン−反応性T細胞発生頻度データの一部を示す。
【図12】全長MBPを範囲とするペプチドに対する患者の24週目のT細胞反応を示す。棒グラフの周りの囲みは、T細胞頻度分析(TCFA)で過去に使用された2種の免疫優性MBP配列を含有するペプチドを指す。
【図13】全長のPLPを範囲とするペプチドに対する患者の24週目のT細胞反応を示す。棒グラフの周りの囲みは、TCFAで過去に使用された2種の免疫優性PLP配列を含有するペプチドを指す。
【図14】全長のMOGを範囲とするペプチドに対する患者の24週目のT細胞反応を示す。棒グラフの周りの囲みは、TCFAで過去に使用された2種の免疫優性MOG配列を含有するペプチドを指す。
【図15】8人の患者のMBPペプチド反応パターンを示す。水平な赤い線は、3のSIカットオフを示す。棒グラフの周りの囲みは、過去に使用された免疫優性ペプチドを指す。
【図16】8人の患者のPLPペプチド反応パターンを示す。水平な赤い線は、3のSIカットオフを示す。棒グラフの周りの囲みは、過去に使用された免疫優性ペプチドを指す。
【図17】8人の患者のMOGペプチド反応パターンを示す。水平な赤い線は、3のSIカットオフを示す。棒グラフの周りの囲みは、過去に使用された免疫優性ペプチドを指す。
【図18】EAAを用いてテストした合計15人のMS患者由来のサンプルに対しMBPに反した平均的SIsを示す。棒グラフの周りの囲みは、免疫優性ペプチドを指す。
【図19】EAAを用いてテストした合計15人のMS患者由来のサンプルに対しPLPに反した平均SIsを示す。棒グラフの周りの囲みは、免疫優性ペプチドを指す。
【図20】EAAを用いてテストした合計15人のMS患者由来のサンプルに対しMOGに反した平均SIsを示す。棒グラフの周りの囲みは、免疫優性ペプチドを指す。
【図21】被験体54人のうちでMBPペプチドに対する反応の頻度を示す。被験体は、健常人(「Norm」)、採血のみ(「MD」)、繰り返しワクチン接種研究に登録された(「Ext」)、または用量漸増試験に登録された(「DES」)方である。棒グラフの周りの囲みは、実施例1のワクチン産生に使用された免疫優性ペプチドの位置を指す。
【図22】被験体54人のうちでPLPペプチドに対する反応の頻度を示す。被験体は、健常人(「Norm」)、採血のみ(「MD」)、繰り返しワクチン接種研究に登録された(「Ext」)、または用量漸増試験に登録された(「DES」)方である。棒グラフの周りの囲みは、実施例1のワクチン産生に使用された免疫優性ペプチドの位置を指す。
【図23】被験体54人のうちでMBPペプチドに対する反応の頻度を示す。被験体は、健常人(「Norm」)、採血のみ(「MD」)、繰り返しワクチン接種研究に登録された(「Ext」)、または用量漸増試験に登録された(「DES」)方である。棒グラフの周りの囲みは、実施例1のワクチン産生に使用された免疫優性ペプチドの位置を指す。
【図24】2.0未満の刺激指数を提示した5種のミエリン−反応性T細胞の増殖曲線を示す。T細胞は、二人の患者から単離した。
【図25A】429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。患者それぞれのためのアッセイは、実行された日付順にリストされている。陽性ペプチド混合物は、薄灰色で示される。
【図25B】429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。患者それぞれのためのアッセイは、実行された日付順にリストされている。陽性ペプチド混合物は、薄灰色で示される。
【図25C】429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。患者それぞれのためのアッセイは、実行された日付順にリストされている。陽性ペプチド混合物は、薄灰色で示される。
【図25D】429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。患者それぞれのためのアッセイは、実行された日付順にリストされている。陽性ペプチド混合物は、薄灰色で示される。
【図25E】429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。患者それぞれのためのアッセイは、実行された日付順にリストされている。陽性ペプチド混合物は、薄灰色で示される。
【図25F】429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。患者それぞれのためのアッセイは、実行された日付順にリストされている。陽性ペプチド混合物は、薄灰色で示される。
【図25G】429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。患者それぞれのためのアッセイは、実行された日付順にリストされている。陽性ペプチド混合物は、薄灰色で示される。
【図25H】429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。患者それぞれのためのアッセイは、実行された日付順にリストされている。陽性ペプチド混合物は、薄灰色で示される。
【図26】65アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。患者それぞれのためのアッセイは、実行された日付順にリストされている。陽性ペプチド混合物は、薄灰色で示される。
【図27】4人の被験体における経時的なエピトープシフトを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己反応性T細胞に対するポリペプチド抗原中のエピトープを同定する方法であって:
(a)宿主から単離したT細胞を含むサンプルを提供する工程;
(b)該サンプルの複数の部分に一種以上の異なるペプチドを添加する工程であって、該ペプチドの配列が、該ポリペプチド抗原の配列の一部を集合的に含む、工程;および
(c)活性化した自己反応性T細胞を含む該サンプルの一部を同定する工程、
を含み、(c)によって同定された自己反応性T細胞を活性化するペプチドが該エピトープを含む、方法。
【請求項2】
前記ペプチドの配列が、前記ポリペプチド抗原の完全な配列を集合的に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチド抗原がMBP、PLP、MOGまたはその組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記異なるペプチドが重複する8〜12個または4〜19個のアミノ酸の配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記異なるペプチドが約12〜16個または8〜20個のアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
活性化した自己反応性T細胞を含む前記サンプルの刺激指数が所定値を超えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
T細胞ワクチンを調製する方法であって、該方法は:
(a)患者から単離したT細胞を含むサンプルを提供する工程;
(b)一種以上の異なるペプチドと該T細胞とを接触させ、それによって自己反応性T細胞が活性化される工程;
(c)活性化された自己反応性T細胞を増殖させる工程;および
(d)該自己反応性T細胞を弱毒化する工程;
を含み、該一種以上の異なるペプチドは、所定値を超えた刺激指数で自己反応性T細胞を刺激することができる抗原性ポリペプチドのエピトープすべてを含む、方法。
【請求項8】
前記抗原性ポリペプチドが、MBP、PLP、MOGまたはその組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
T細胞ワクチンを調製する方法であって、該方法は:
(a)患者から単離したT細胞を含むサンプルを提供する工程;
(b)請求項1に記載の方法で同定したエピトープを含む一種以上の異なるペプチドと該T細胞とを接触させ、それによって自己反応性T細胞が活性化される工程;
(c)活性化された自己反応性T細胞を増殖させる工程;および
(d)該自己反応性T細胞を弱毒化する工程;
を含み、該一種以上の異なるペプチドは、所定値を超えた刺激指数で自己反応性T細胞を刺激することができる抗原性ポリペプチドのエピトープすべてを含む、方法。
【請求項10】
T細胞介在疾患においてエピトープシフトを検出する方法であって、該方法は:
(a)請求項1に記載の方法にしたがって自己反応性抗原のエピトープを同定する工程;および
(b)対照におけるエピトープと(a)のエピトープとを比較する工程
を含み、該エピトープが異なるならば、エピトープシフトが生じている、方法。
【請求項11】
エピトープシフトを診断する方法であって、該方法は:
(a)請求項10に記載の方法にしたがってエピトープシフトを検出する工程、
を含み、エピトープシフトの検出がエピトープシフトの生じていることを示す、方法。
【請求項12】
エピトープシフトをモニタリングする方法であって、該方法は:
(a)請求項10に記載の方法にしたがってエピトープシフトを検出する工程;および
(b)以前の時間と該エピトープとを比較する工程、
を含み、該エピトープが異なるならば、エピトープシフトが生じている、方法。
【請求項13】
抗原性ポリペプチドに対して特異的であるT細胞を含むT細胞ワクチンであって、所定値を超す刺激指数を生成することができる該抗原性ポリペプチドのエピトープそれぞれが、該ワクチンに存在する自己反応性T細胞によって認識される、T細胞ワクチン。
【請求項14】
前記抗原性ポリペプチドが、MBP、PLP、MOGまたはその組み合わせである、請求項13に記載のT細胞ワクチン。
【請求項15】
前記ワクチンに存在する前記自己反応性T細胞が、所定値未満の刺激指数を生成することのできる前記抗原性ポリペプチドの前記エピトープを認識するT細胞を50%未満含む、請求項13に記載のT細胞ワクチン。
【請求項16】
前記ワクチンに存在する前記自己反応性T細胞が、以下:CD3、CD4、CD8、CD25、TCRαβ、TCRγδ、HSP60またはその組み合わせのうちの1つから選択した細胞マーカーに対し陽性である、請求項13に記載のT細胞ワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図25E】
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【図25F】
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【図25G】
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【図25H】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2009−536036(P2009−536036A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510114(P2009−510114)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/068304
【国際公開番号】WO2007/131210
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508328958)
【Fターム(参考)】