説明

TMC125の噴霧乾燥された調製物の調製方法

本発明は、水溶性ポリマー中の抗−HIV化合物エトラビリン(TMC125)の固体分散系中に微結晶性セルロースを含んでなる噴霧乾燥された粉末の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性ポリマー中の抗−HIV化合物エトラビリン(etravirine)(TMC125)の固体分散系中に微結晶性セルロースを含んでなる噴霧乾燥された粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中における溶解性が劣った製薬学的作用剤(agents)が、低いバイオアベイラビリティーを有する問題に苦しむことは周知である。「バイオアベイラビリティー」により、製薬学的作用剤が投与後に生理学的活性の部位において吸収されるか又は利用可能になる程度及び速度を意味する。低いバイオアベイラビリティーを有する製薬学的作用剤の1つの結果は、患者に投与される作用剤の量(又は投薬量)がより高い必要があることである。しかしながら、投薬量の増加は、必要な剤形(例えば丸剤、錠剤、カプセルなど)の寸法及び/又は数の増加に導く。投与される必要がある剤形の数又は体積は、通常「丸剤負荷量(pill burden)」と呼ばれる。
【0003】
高い丸剤負荷量は、患者が各投薬量を摂取するより多くの時間を費やす必要があるばかりでなく、多数の又は大きな体積の丸剤を保存及び/又は輸送しなければならないというような、多くの理由のために望ましくない。高い丸剤負荷量は、患者がそれらの投薬量全部を摂取せず、それにより処方された投薬量管理に従い損なう危険も増加させる。これは、処置の有効性を低下させると同様に、疾患を引き起こす生物又はウイルスを製薬学的作用剤に耐性にもし得る。高い丸剤負荷量に伴う問題は、患者が複数の異なる型の製薬学的作用剤の組合せを摂取しなければならない場合に増大する。そのような患者の群の1つの例は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して処置されている患者の群である。抗−HIV処置は、典型的には複数の異なる製薬学的作用剤の組み合わせの投与を含む。
【0004】
溶解性の劣った活性作用剤のバイオアベイラビリティーを、それらを非晶質形態に転換することにより向上させることができることは既知である。典型的には、製薬学的作用剤がより結晶性であるほどそのバイオアベイラビリティーは低いか、あるいは製薬学的作用剤が結晶性でないほどそのバイオアベイラビリティーは高く、結晶度の低下はバイオアベイラビリティーに正の効果を有する。
【0005】
活性成分を非晶質形態に転換する1つの方法は、それを水溶性ポリマー中の固体分散系の形態で与えることによる。種々の型の固体分散系が存在する。固体分散系の1つの型は、製薬学的作用剤が分子的に、ポリマー全体に実質的に均一に分散している型である。これは一般に「固溶体」と記述される。固体分散系の他の型は、ポリマー全体に分散された結晶性又は半−結晶性製薬学的作用剤の島又はクラスターが存在する型である。固体分散系のさらに別の型は、ポリマー全体に分散された非晶質形態における製薬学的作用剤の島又はクラスターが存在する型である。上記の型の2つもしくはそれより多くの混合物を含んでなる個体分散系、例えば製薬学的作用剤が結晶性又は半−結晶性である領域あるいは非晶質形態における作用剤の島又はクラスターが存在する領域を有する固溶体もあり得る。すべてのこれらの型は下記で一般に「固体分散系」と称される。
【0006】
製薬学的作用剤の固体分散系の調製のための複数の方法が存在する。1つの方法は、作用剤及び水溶性ポリマーを、両者が溶解性である溶媒中に溶解し、溶媒を単純に蒸発させることにある。得られる分散系を、例えば磨砕し、得られる粉末を場合によりさらなる賦形剤の添加の後に、例えば錠剤に圧縮するか又はカプセル中に充填することにより所望の
製薬学的剤形に転換することにより、さらに加工することができる。
【0007】
さらに別の方法は、作用剤及びポリマーを溶融又は可塑化し、得られる溶融物を続いて冷却することにより、水溶性の劣った製薬学的作用剤を水溶性ポリマー中に導入することを含む溶融押出である。溶融物の急速な冷却は、典型的には固溶体を生む。典型的な溶融押出法は、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0008】
Wuersterコーティング法は、噴霧室の底から導入される温もしくは熱気流を用いて、室内で担体ビーズを渦巻かせることを含む。次いでポリマー及び製薬学的作用剤の溶液を室内に底から噴霧する。この方法で、渦巻くビーズが溶液の層でコーティングされ、溶媒が蒸発する時にポリマー中の製薬学的作用剤の固体分散系が担体ビーズ上の層として形成される。この方法の性質は、それがバッチプロセスとして操作され、従って製造の間に、コーティングされたビーズを取り除き、コーティングされていないビーズを室に入れる間の有意な停止時間があることを意味する。担体ビーズの寸法ならびに気流及び温度、蒸発時間、室の型、圧力及び湿度、噴霧速度のような噴霧条件は、固体分散系形成に影響する。
【0009】
他の方法は、水溶性ポリマー及び水溶性の劣った製薬学的作用剤を、両成分を溶解することができる溶媒中に溶解する噴霧乾燥法を含む。得られる溶液を噴霧−乾燥室内に、室の上、横又は底から(通常上から)熱気流中に液滴において噴霧するか又は霧散させる。溶液の液滴から溶媒を蒸発させ、得られる粉末形態における乾燥固体分散系を、例えばサイクロン中で集める。溶液の噴霧及び乾燥は複数の方法で行なうことができ、それは調製される個体分散系の性質を決定する。例えば非常に速い溶媒の蒸発速度、いわゆる「フラッシュ蒸発」があるように室内の条件を選ぶことができ、それは低い結晶度を有するか又は結晶性を有していない、すなわち高度に非晶質である粉末における製薬学的作用剤を生ずる。
【0010】
噴霧−乾燥は、それが大規模で適用可能な連続法(バッチ法と反対に)である故に、魅力的である。製薬学的作用剤の噴霧−乾燥された固体分散系の調製のための典型的な方法は、特許文献1に記載されている。
【0011】
劣った水溶性及び付随する低いバイオアベイラビリティーをこうむる化合物は、「TMC125」として既知のNNRTIであり、それはエトラビリン(Etravirine)又はR165335とも呼ばれる化合物4−[[6−アミノ−5−ブロモ−2−[(4−シアノフェニル)アミノ]−4−ピリミジニル]オキシ]−3,5−ジメチルベンゾニトリルである。TMC125を式(I):
【0012】
【化1】

により示すことができる。この化合物、その性質、その製造のための複数の合成法ならびに標準的な製薬学的調製物は、特許文献3に記載されている。現在、後期臨床的開発中であるTMC125は、野生型HIVに対してのみでなく、突然変異した多くの変異体に対
しても顕著な活性を示す。例えば噴霧−乾燥により、TMC125を固体分散系に転換することは、そのバイオアベイラビリティーを向上させる。
【0013】
しかしながら、この噴霧−乾燥法から得られる粉末は、それが多量のガスを含有する点で、ふわふわしている。従って、得られるふわふわした粉末は、典型的には約0.1g/mlの領域内の低い密度を有する。これは、粉末を圧縮するのが困難であることを意味し、それは続く錠剤、丸剤又はカプセルのような剤形へのその調製の間の問題である。例えば噴霧−乾燥により製造される粉末を錠剤形態に調製するために、粉末の密度を増加させるためにそれをローラー−圧縮するか又は重い金属塊で処理する(slugged)予備−圧縮段階が通常必要である。
【0014】
従って、向上したバイオアベイラビリティーを有するTMC125の噴霧−乾燥された固体分散系の向上した形態を生むための方法が必要である。さらに、製薬学的調製物又は製薬学的剤形、例えば錠剤、丸剤又はカプセルに容易に転換することができ、追加の賦形剤の添加の必要性が限られているTMC125の固体分散系を与える必要がある。
【特許文献1】国際公開第01/22938号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/23362号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/27825号パンフレット
【発明の開示】
【0015】
今回、噴霧乾燥される混合物に「MCC」とも呼ばれる微結晶性セルロースを加えることにより、TMC125の溶解分布(dissolution profile)を向上させることができることが見出された。特に、TMC125活性成分の固体分散系からの水性媒体中における溶解速度が向上し、より高い薬剤(drug)の濃度を生ずる。これは、TMC125活性成分のより高い血漿レベル及びより迅速な効果の発現(onset)を生ずることができる。
【0016】
本発明は、粉末形態におけるTMC125の固体分散系の調製方法を提供するか、あるいはまた本発明は:
(a)微結晶性セルロースならびに水溶性ポリマーとTMC125の溶液の供給混合物を準備し;
(b)霧散(atomizing)手段を介して噴霧−乾燥室中に供給混合物を液滴として導入することにより、段階(a)からの供給混合物を噴霧−乾燥して製薬学的作用剤とポリマーの固体分散系を形成する
段階を含んでなる、固体製薬学的粉末の製造方法を提供する。
【0017】
1つの態様において、乾燥室中に導入される液滴は、加熱された乾燥ガスに暴露される。
【0018】
さらに別の側面において、本発明は、上記又は下記で規定される方法により得ることができる粉末形態におけるTMC125の固体分散系を提供する。
【0019】
さらに別の側面において、上記又は下記で規定される方法により調製されるか又は得られ得る粉末形態におけるTMC125の固体分散系及びさらに別の賦形剤を含んでなる製薬学的調製物を提供する。製薬学的調製物は、好ましくは錠剤、カプセル、サッシェ、丸剤、散剤分包、座薬などのような単位剤形に転換される。従って本発明はさらに、上記又は下記で規定される粉末形態におけるTMC125の固体分散系を含んでなる固体剤形を
提供する。
【0020】
本発明の方法は、MCCなしで噴霧−乾燥された粉末と比べ、比較的高い密度を有する固体を与える。本発明の方法により調製されるTMC125の固体分散系の密度は、約0.05g/ml〜1g/ml、特に約0.1〜0.7g/mlの範囲内であることができる。
【0021】
理論に縛られるわけではないが、微結晶性セルロースは小さい内部担体として働き、それは供給混合物の液滴内に位置し、そこからポリマーと製薬学的作用剤の固体分散系が形成されると仮定される。本方法の利点は、調製されるTMC125の固体分散系がより容易に錠剤又はカプセルのような剤形に調製され得ることであり、それは続く調製法において必要な予備−圧縮がより少ないか、又は必要でさえないことを意味する。TMC125の固体分散系の高密度は、得られる剤形の寸法の縮小を生じ、それにより丸剤負荷量を減少させる。
【0022】
本発明の方法により調製される固体分散系中のTMC125活性作用剤は、好ましくは高度に非晶質であり、すなわちそれは低い程度の結晶度を有するか又は結晶性を有していない。「非晶質」により、製薬学的作用剤が非−結晶状態にあることを意味する。これの利点は、得られる固体分散系及びそれに由来する剤形中の製薬学的作用剤のバイオアベイラビリティーが向上するということであり、それは投与する必要のある活性作用剤の量を減少させ、それにより丸剤負荷量も減少させる効果を有する。
【0023】
好ましくは、TMC125の固体分散系中の製薬学的作用剤の結晶度は、X−線粉末回折(XRPD)により特性化され得るとおり、約10%もしくはそれ未満、約9%もしくはそれ未満、約8%もしくはそれ未満、約7%もしくはそれ未満、約6%もしくはそれ未満、約5%もしくはそれ未満、約4%もしくはそれ未満、約3%もしくはそれ未満、約2%もしくはそれ未満、約1%もしくはそれ未満、約0.5%もしくはそれ未満又は約0.1%もしくはそれ未満である。
【0024】
本発明の方法により調製される固体分散系は、典型的には約10μm〜約150μm又は約15μm〜約100μm、特に約20μm〜約80μm又は30μm〜約50μmの範囲内、好ましくは約40μmの平均有効粒度(particle size)を有する粒子を含む。本明細書で用いられる場合、平均有効粒度という用語は、当該技術分野における熟練者に既知のその通常の意味を有し、当該技術分野において既知の粒度測定法、例えば沈降フィールドフローフラクショネーション、光子相関分光分析(photon correlation spectroscopy)、レーザー回折又はディスク遠心分離(disk centrifugation)により測定され得る。本明細書で言及される平均有効粒度を、粒子の重量分布と関連付けることができる。その場合、「約150μmの平均有効粒度」により、粒子の重量の少なくとも50%が50μmの有効平均より小さい粒度を有する粒子から成ることを意味し、言及される他の有効粒度に同じことが当てはまる。同様のやり方で、平均有効粒度を粒子の体積分布と関連付けることができるが、通常これは平均有効粒度に関する値と同じか又は大体同じ値を生ずるであろう。
【0025】
本発明の方法により調製される粒子のいわゆる「スパン」は、約3より低い、特に約2.5より低いことができ、好ましくは、スパンは約2である。通常、スパンは約1より低くはないであろう。本明細書で用いられる場合、「スパン」という用語は式(D90−D10)/D50により定義され、ここでD90は、等しいか又はより小さい直径の粒子が全粒子の合計重量の90%を構成する粒子の直径に相当する粒径であり、且つここでD50及びD10は全粒子の合計重量のそれぞれ50及び10%に関する直径である。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「TMC125」という用語は、塩基形態ならびにそのいずれかの製薬学的に許容され得る酸付加塩を含むものとする。上記で言及した製薬学的に許容され得る付加塩は、式(I)の化合物が形成することができる治療的に活性な無−毒性の酸付加塩の形態を含むものとする。後者は、塩基形態を無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸、臭化水素酸など;硫酸;硝酸;リン酸など;あるいは有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシ−プロパン酸、2−オキソプロパン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸などのような適した酸を用いて処理することにより、簡単に得られ得る。逆にアルカリを用いる処理により、塩の形態を遊離の塩基形態に転換することができる。付加塩という用語は、式(I)の化合物が形成することができる水和物及び溶媒付加形態も含む。そのような形態の例は、例えば水和物、アルコラートなどである。
【0027】
噴霧乾燥された生成物中のTMC125の量は、TMC125、水溶性ポリマー、MCC及び場合による賦形剤を含んでなる噴霧乾燥された生成物の合計重量に対して約10重量%〜約50重量%、特に約15重量%〜約40重量%又は約20重量%〜約30重量%又は約20重量%〜約25重量%の範囲であることができる。供給混合物中のTMC125の量は、これらのパーセンテージに基づいて且つ用いられる溶媒の量に基づいて計算され得る。
【0028】
用いられ得る微結晶性セルロース(MCC)は、製薬学的作用剤及び水溶性ポリマーの溶液中に混合される場合に、得られる供給混合物がアトマイザーを目詰まり又は閉塞させることなく霧散手段を介して噴霧−乾燥室中に通過できるように選ばれる平均粒度を有する。従って、MCCの寸法は噴霧−乾燥室上に設けられる霧散手段の特定の寸法により制限される。例えば霧散手段がノズルである場合、ノズル内腔の寸法は用いられ得るMCCの寸法範囲に影響するであろう。MCCの平均粒度は約5μm〜50μm、特に10μm〜30μmの範囲内、例えば20μmであることができる。
【0029】
用いることができる微結晶性セルロースは、FMC BioPolymerから入手可能なAvicelTMシリーズの製品、特にAvicel PH 105TM(20μm)、Avicel PH 101TM(50μm)、Avicel PH 301TM(50μm);
JRS Pharmaから入手可能な微結晶性セルロース製品、特にVivapurTM
105(20μm)、VivapurTM 101(50μm)、EmcocelTM
SP 15(15μm)、EmcocelTM 50M 105(50μm)、ProsolvTM SMCC 50(50μm);
DMVから入手可能な微結晶性セルロース製品、特にPharmacelTM 105(20μm)、PharmacelTM 101(50μm);
Blanverから入手可能な微結晶性セルロース製品、特にTabulose(Microcel)TM101(50μm)、Tabulose(Microcel)TM103(50μm);
Asahi Kasei Corporationから入手可能な微結晶性セルロース製品、例えばCeolusTM PH−F20JP(20μm)、CeolusTM PH−101(50μm)、CeolusTM PH−301(50μm)、CeolusTM KG−802(50μm)
を含む。
【0030】
特に好ましい微結晶性セルロースは、Avicel PH 105(R)(20μm)
である。
【0031】
噴霧乾燥された生成物中のMCCの量は、TMC125、水溶性ポリマー、MCC及び場合による賦形剤を含んでなる噴霧乾燥された生成物の合計重量に対して約5重量%〜約25重量%、特に約7.5重量%〜約20重量%又は約10重量%〜約15重量%又は約10重量%〜約12.5重量%の範囲内であることができる。噴霧乾燥された生成物中のMCC対TMC125の量の重量比は、これらのパーセンテージに基づいて計算することができ、特に約2:1〜約1:5、特に約1:1〜1:7の範囲内、好ましくは約1:2であることができる。供給混合物中のMCCの量は、これらのパーセンテージ及び用いられる溶媒の量に基づいて計算され得る。得られる固体の製薬学的組成物中の製薬学的作用剤の濃度を可能な限り高く保つのが望ましいという観点から、MCCの濃度は、好ましくは可能な限り低く保たれる。
【0032】
微結晶性セルロースを用いる利点は、得られる固体の製薬学的組成物の密度を向上させる他に、それが噴霧−乾燥されたTMC125の固体分散系及びそれに由来する製薬学的組成物の流動性、圧縮性、崩壊性及び溶解性を向上させるようにも働くことができることである。
【0033】
本発明の方法において用いるのに適した水溶性ポリマーは、製薬学的に許容され得且つ製薬学的作用剤に対して実質的に非反応性である。適したポリマーにはセルロース系ポリマー、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(又はHPMC、例えばHPMC 2910 15mPa.s;HPMC 2910 5mPa.s)、例えばHPMC 2910、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、例えばHP 50、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート(HPCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート(HPMCAP)、メチルセルロースアセテートフタレート(MCAP)及びそれらの混合物、例えばヒドロキシプロピルセルロースとエチルセルロースの混合物が含まれる。適したポリマーにはポリビニルピロリドン、酢酸ビニルと共重合したポリビニルピロリドンであるコポリビドン(PVPCoVA、PVP−VAと呼ばれることもある)及びアミノアルキルメタクリレートコポリマー、例えばEudragit E(R) 100(Roehm GmbH,Germany)も含まれる。
【0034】
興味深い水溶性ポリマーにはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン又はコポリビドンが含まれる。特に好ましいヒドロキシプロピルメチルセルロースはHPMC 2910 5mPa.sである。特に好ましいポリビニルピロリドンはPVP K12、PVP K29−32、例えばPVP K30、PVP K90であり、特に好ましいコポリビドンはPVP−co−VA64(PVPCoVA、PVP−VAと呼ばれることもある)である。
【0035】
1つの態様において、ポリマーは500D〜2MDの範囲内の分子量を有する。ポリマーは、20℃における2%水溶液中で1〜15,000mPa.sの見掛粘度を有することができる。
【0036】
固体分散系粒子中の水溶性ポリマーは、20℃で2%(w/v)において水溶液中に溶解される場合に、1〜5000mPa.s、特に1〜700mPa.s、さらに特定的に1〜100mPa.sの見掛粘度を有するポリマーである。
【0037】
該HPMCは、それを水溶性とするのに十分なヒドロキシプロピル及びメトキシ基を含有する。約0.8〜約2.5のメトキシ置換度及び約0.05〜約3.0のヒドロキシプロピルモル置換を有するHPMCは、一般に水溶性である。メトキシ置換度は、セルロース分子の無水グルコース単位当たりに存在するメチルエーテル基の平均数を指す。ヒドロキシプロピルモル置換は、セルロース分子の各無水グルコース単位と反応したプロピレンオキシドの平均モル数を指す。好ましいHPMCは、ヒプロメロース 2910 15mPa.s又はヒプロメロース 2910 5mPa.s、特にヒプロメロース 2910
15mPa.sである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、ヒプロメロースに関する合衆国採択名(United States Adopted Name)である(Martindale,The Extra Pharmacopoeia,29th edition,1435頁を参照されたい)。4個の数字「2910」において、最初の2個の数字はメトキシ基の大体のパーセンテージを示し、第3及び第4の数字はヒドロキシプロポキシル基の大体のパーセンテージ組成を示す;15mPa.s又は5mPa.sは、20℃における2%水溶液の見掛粘度を示す値である。
【0038】
用いることができるビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーには、ビニルピロリドン対酢酸ビニルのモノマーのモル比が約1.2であるか、又はビニルピロリドン対酢酸ビニルのモノマーの質量比が約3:2であるコポリマーが含まれる。そのようなコポリマーは商業的に入手可能であり、コポビドン又はコポリビドンとして既知であり、KolimaTM又はKollidon VA 64TMの商標の下に販売されている。これらのポリマーの分子量は約45〜約70kDの範囲内であることができる。粘度測定から得られるK−値は、約25〜約35の範囲内であることができ、特にK値は約28であることができる。
【0039】
用いることができるポリビニルピロリドンポリマーは、ポビドン(PVP)として既知であり、商業的に入手可能である。それらは約30kD〜約360kDの範囲内である分子量を有することができる。例はBASFによりKolidonTMの商品名の下に販売されているPVP製品、例えばPVP K25(Mw=29.000)、PVP K30(Mw=40.000)及びPVP K90(Mw=360.000)である。
【0040】
噴霧乾燥された生成物中の水溶性ポリマーの量は、TMC125、水溶性ポリマー、MCC及び場合による賦形剤を含んでなる噴霧乾燥された生成物の合計重量に対して約30重量%〜約75重量%、特に約40重量%〜約75重量%又は約50重量%〜約75重量%又は約60重量%〜約70重量%の範囲内であることができる。供給混合物中の水溶性ポリマーの量は、これらのパーセンテージ及び用いられる溶媒の量に基づいて計算され得る。
【0041】
典型的には、水溶性ポリマー対TMC125の重量:重量比は、約10:1〜約1:10、特に約10:1〜約1:1、より特定的に約5:1〜約1:1、好ましくは約3:1〜約1:1の範囲内、例えば約3:1の比である。水溶性ポリマー対製薬学的作用剤の比は、得られる固体の製薬学的組成物中の製薬学的作用剤の結晶度に影響すると思われる。しかしながら、得られる製薬学的組成物中の製薬学的作用剤の量を最大にするために、製薬学的作用剤に対するポリマーの量を減少させるのも望ましい。
【0042】
本発明の方法において用いられる溶媒は、TMC125に関して不活性であり、且つTMC125及び水溶性ポリマーを溶解することができるがMCCを溶解しないいずれの溶媒であることもできる。適した溶媒にはアセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、エタノール(無水又は水性)、メタノール及びそれらの組み合わせが含まれる。ポリマーがHPMCである場合、溶媒は、好ましくはジクロロメタンとエタノールの
混合物、より好ましくは9:1の重量比におけるジクロロメタンとエタノールの混合物であり、特に後者が無水エタノールである混合物である。ポリマーがポリビニルピロリドン又はコポリビドンである場合、溶媒は、好ましくはアセトンである。供給混合物中に存在する溶媒の量は、TMC125及び水溶性ポリマーが溶解され、且つ供給混合物が、それが噴霧されるのに十分に低い粘度を有するような量であろう。1つの態様において、供給混合物中の溶媒の量は少なくとも80%、特に少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%であり、パーセンテージは供給混合物の合計重量に対する溶媒の重量を表す。
【0043】
本発明の方法において用いることができる供給混合物の例は:
(i)14.57gのジクロロメタン エクストラピュア及び1.619gのエタノール96%(v/v)中の200mgのTMC125、200mgのHPMC 2910 5mPa.s、100mgの微結晶性セルロース(Avicel PH 105(R));(ii)14.57gのジクロロメタン エクストラピュア及び1.619gのエタノール96%(v/v)中の200mgのTMC125、400mgのHPMC 2910 5mPa.s、100mgの微結晶性セルロース(Avicel PH 105(R));
(iii)14.57gのジクロロメタン エクストラピュア及び1.619gのエタノール96%(v/v)中の200mgのTMC125、600mgのHPMC 2910
5mPa.s、100mgの微結晶性セルロース(Avicel PH 105(R));
(iv)16.19gのジクロロメタン エクストラピュア及び1.8gの無水エタノール中の222mgのTMC125、667mgのHPMC 2910 5mPa.s、111mgの微結晶性セルロース(Avicel PH 105(R));
を含んでなるものである。
【0044】
挙げた量を約1〜約10の範囲内である率で倍増することにより、上記の供給混合物をスケールアップすることができる。実験室規模の調製においては、約1〜約1000の範囲内の率で量を倍増することができる。中もしくは大規模調製のために、この率は約500〜約10の範囲内、例えば約10、約2.10、約5.10又は約10であることができる。
【0045】
溶媒は、噴霧−乾燥段階により供給混合物の液滴から除去される。好ましくは、溶媒は150℃かもしくはそれより低い、好ましくは100℃かもしくはそれより低い沸点を有して揮発性である。溶媒は、噴霧−乾燥段階の間に供給混合物の液滴から実質的に完全に除去されねばならない。
【0046】
乾燥ガスはいずれのガスであることもできる。好ましくは、ガスは空気又は不活性ガス、例えば窒素、窒素が濃縮された空気又はアルゴンである。噴霧−乾燥室のガス入口における乾燥ガスの温度は、典型的には約60℃〜約300℃である。
【0047】
適した噴霧乾燥機にはNiro製薬学的噴霧乾燥機モデル、例えばMobile Minor、PSD−1、PSD−2、PSD−3、PSD−4及びSD−12.5−N(Niro A/S,Soeburg,Denmark)ならびにBuechi P290又はP190が含まれる。
【0048】
本発明の方法で用いるための典型的な噴霧−乾燥装置は、噴霧−乾燥室、噴霧−乾燥室中に供給混合物を液滴の形態で導入するための霧散手段、入口を介して噴霧−乾燥室中に流入する加熱乾燥ガスの源ならびに加熱乾燥ガスのための出口を含む。噴霧−乾燥装置は、製造される固体製薬学的粉末を集めるための手段も含む。
【0049】
噴霧−乾燥装置は、出口を出る加熱乾燥ガスが室内にそれぞれフィードバックされるか、又はフィードバックされない閉鎖又は開放サイクル配置を有することができる。あるいはまた、噴霧−乾燥装置は、有機溶媒が再循環される閉鎖サイクル配置を有することもできる。経済性のために、しかし特に環境的理由のために、閉鎖サイクル配置が好ましい。
【0050】
霧散手段は、好ましくは供給混合物を噴霧−乾燥室中に霧散させ、特定の液滴寸法範囲を有する供給混合物の液滴を生むことができる回転アトマイザー、空気圧ノズル又は高圧ノズルを含む。霧散手段は、好ましくは高圧ノズルである。
【0051】
適した回転アトマイザーには、供給混合物を霧散させるための霧散車輪(atomization wheel)に動力を供給する高圧圧縮空気源、例えば6バール圧縮空気源から運転されるエアタービン駆動装置を有するものが含まれる。霧散車輪は羽根付きである(vaned)ことができる。好ましくは、回転アトマイザーは、生ずる液滴が乾燥して室の下部に落ちるように、噴霧−乾燥室の上部に、例えば室の屋根に位置する。典型的には、回転アトマイザーは約20〜約225μm、特に約40〜約120μmの範囲内の寸法を有する液滴を生じ、粒度は車輪の周速に依存する。
【0052】
適した空気圧ノズル(二−流体ノズル(two−fluid nozzles)を含む)は、噴霧−乾燥室の上部に、例えば室の屋根に位置し、且ついわゆる「共−流モード(co−current mode)」で運転されるものを含む。霧散は圧縮空気を用いて行なわれ、空気−液体比は約0.5−1.0:1から約5:1、特に約1:1から約3:1の範囲内である。供給混合物及び霧散ガスは、別々にノズルヘッドに通過し、そこで霧散が起こる。空気圧ノズルにより生ずる液滴の寸法は運転パラメーターに依存し、約5〜125μm、特に約20〜50μmの範囲内であることができる。
【0053】
いわゆる「向−流(counter−current)モード」で運転される二−流体ノズルを本発明の方法で用いることもできる。これらのノズルは、それらが乾燥室の下部に位置し、液滴を上方に噴霧することを除いて、共−流モードにおける二−流体ノズルと類似のやり方で運転される。典型的には、向−流二−流体ノズルは、乾燥されると約15〜約80μmの範囲内の寸法を有する粒子を生ずる液滴を形成する。向−流モードにおける二−流体ノズルは、固体の製薬学的粉末の成分が熱に敏感でない場合に特に有用であり、それは、噴霧−乾燥室における液滴/粉末の滞留時間が一般に共−流モードにおけるより長いからである。
【0054】
本発明における使用のために好ましいアトマイザーの型は、液体供給材料が加圧下でノズルにポンプ輸送される高圧ノズルである。圧力エネルギーは運動エネルギーに転換され、供給材料はノズルのオリフィスから高速フィルムとして流出し、それはフィルムが不安定なために容易に霧(spray)に崩壊する。供給材料は、渦巻き挿入物(swirl insert)又は渦巻き室を用いてノズル内で回転させられ、ノズルのオリフィスから出現するコーン形の霧パターンを生ずる。渦巻き挿入物、渦巻き室及びオリフィスの寸法は、圧力の変動と一緒になって、供給速度及び霧の特性に及ぶ制御を与える。高圧ノズルにより形成される液滴の寸法は運転パラメーターに依存し、約5〜125μm、特に約20〜50μmの範囲内であることができる。
【0055】
本発明の方法において用いるための適した霧散手段を、所望の液滴寸法に依存して選択することができる。後者は複数の因子、例えば供給混合物の粘度及び温度、所望の流量(flow rate)ならびに供給混合物をポンプ輸送するために許容される最大圧力に依存する。従って霧散手段は、特定の粘度を有し、特定の流量で噴霧−乾燥室に入れられる供給混合物に関して、所望の平均液滴寸法を得ることができるように選ばれる。一般に、ノズルが大きすぎると、所望の流量で運転される場合にそれは大きすぎる寸法の液滴を与え、この効果は供給混合物の粘度が高いほど増幅されるであろう。非常に大きな液滴に伴う問題は、溶媒蒸発の速度がより遅い傾向があることであり、それはより高度に結晶性の製薬学的作用剤を有する生成物の形成に導き得る。他方、小さすぎるノズルの使用は、許容され得る流量で噴霧−乾燥室中に供給混合物をポンプ輸送するために許容され得ない高圧を必要とし得る。
【0056】
加熱乾燥ガスの温度、乾燥ガス流量、乾燥ガスの相対湿度、霧散圧力、ノズル内腔直径の寸法及び噴霧−乾燥室への供給混合物の導入の速度のような種々の噴霧−乾燥パラメーターは、製薬学的粉末の収量、残留溶媒の量ならびに液滴寸法のような性質に影響し得る。所望の性質を有する噴霧−乾燥された粉末を得るために、用いられている特定の噴霧−乾燥室に依存してこれらのパラメーターを最適化することができる。
【0057】
場合により、供給混合物中にさらに別の賦形剤が含まれることができる。そのような賦形剤は、供給混合物又は得られる固体の製薬学的組成物の性質、例えば取り扱い性又は加工性を向上させるために含まれることができる。供給混合物に賦形剤が加えられるか否かにかかわらず、それは明らかに噴霧−乾燥された固体分散系中にそれらを導入させしめるが、所望の剤形への調製の間に、賦形剤を得られる固体の噴霧−乾燥された分散系と混合することもできる。噴霧−乾燥された固体分散系を、最終的な剤形の性質に依存して、さらに別の加工段階に供することができる。例えば製薬学的組成物を後−乾燥プロセスに供することができるか、あるいはそれは錠剤化又はカプセル封入の前に金属塊処理(slugging)又はローラー圧縮を経ることができる。
【0058】
本発明の方法を用いて調製される噴霧−乾燥された固体分散系を、製薬学的調製物に調製することができる。後者は、本発明の方法により調製される噴霧−乾燥された固体分散系及び担体を含み、担体は1種もしくはそれより多い製薬学的に許容され得る賦形剤を含むことができる。後者には界面活性剤、可溶化剤、崩壊剤、顔料、風味料、充填剤、滑沢剤、グライダント(glidants)、防腐剤、増粘剤、緩衝剤及びpH修飾剤が含まれる。典型的な界面活性剤にはラウリル硫酸ナトリウム、Cremophor RH 40、Vitamin E TPGS及びポリソルベート、例えばTween 20TMが含まれる。典型的なpH修飾剤は、クエン酸又はコハク酸のような酸、塩基あるいは緩衝剤である。
【0059】
製薬学的調製物を、今度は適した剤形に転換することができる。典型的な剤形には、経口的投与のための剤形、例えば錠剤、カプセル、懸濁剤及びパスティル(pastilles)ならびに直腸的又は膣的投与のための剤形、例えばゲル剤、座薬又はペースト(pastes)剤が含まれる。剤形が即時放出を意図するか又は制御放出を意図するかに依存して、即時放出製品のための崩壊剤の導入又は制御放出製品のための腸溶層を用いる剤形のコーティングのようなさらなる加工段階が必要であり得る。適した崩壊剤には微結晶性セルロース、デンプン、ナトリウムデンプングリコレート及び架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋PVPが含まれる。
【0060】
本発明は、水溶性ポリマー中の抗−HIV化合物エトラビリン(TMC125)の固体分散系中に微結晶性セルロースを含んでなる固体の製薬学的粉末あるいは噴霧−乾燥された粉末にも関する。本発明はさらに、水溶性ポリマー中の抗−HIV化合物エトラビリン(TMC125)の固体分散系中に微結晶性セルロースを含んでなる固体の製薬学的粉末あるいは噴霧−乾燥された粉末を含有する製薬学的調製物又は製薬学的剤形を提供する。
【0061】
本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は「完全に」を排除せず、例えばYを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないことができる。必要なら、本発明の定義から「実質的に」という用語を省くことができる。数値と連結された「約」とい
う用語は、数値の関係におけるその通常の意味を有するものとする。必要なら、「約」という用語を数値±10%又は±5%又は±2%又は±1%により置き換えることができる。本明細書で引用したすべての文書は、引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【実施例】
【0062】
実施例
1)MCCを用いる及び用いない噴霧−乾燥された粉末の製造
●TMC125:HPMC(1:3)
MCCを用いない調製物の供給混合物は、540kgのジクロロメタン及び60kgの無水エタノール(99.9%)中に8.64kgのTMC125、25.0kgのHPMC 2910 5mPa.sを含有した。この供給混合物を次いで下記の表に示す条件下で、共−流モードにおける高圧ノズルを介してSD−12.5−N、閉鎖サイクル噴霧−乾燥室に入れた。
【0063】
【表1】

【0064】
得られる固体の製薬学的組成物をサイクロンから集め、真空下で高められた温度において後−乾燥し、残留溶媒のレベルを低下させた。乾燥された粉末を篩別して、45〜100μmの粒度を有する粉末画分を保留し、続いて溶解試験に供した。
●TMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)
【0065】
【表2】

【0066】
TMC125及びポリマーを溶媒中に溶解し、微結晶性セルロースを加えることにより、噴霧−乾燥された調製物のための供給混合物を調製した。用いられるポリマーの型、溶媒及び成分の量を、上記で言及した第4の好ましい供給材料の下に挙げる。次いで供給混合物を上記の表に示される条件下で、共−流モードにおける高圧ノズルを介し、SD−12.5−N、閉鎖サイクル噴霧−乾燥室に入れた。得られる固体の製薬学的組成物をサイクロンから集め、真空下で高められた温度において後−乾燥し、残留溶媒のレベルを低下させた。乾燥された粉末を篩別して、45〜100μmの粒度を有する粉末画分を保留し、続いて溶解試験に供した。
【0067】
2)溶解試験+HPLC分析の記述
2.1)溶解試験
●採取される試料の重量:200mg
●溶解媒体:750ml FeSSIF+250ml 0.01M HCl
●溶解法:100RPM,5分毎に試料を集めた,実験時間 180分
●温度:37℃
【0068】
断食状態を模した腸管液(Fasted State Simulated Intestinal Fluid)(FaSSIF)の調製
3ミリモル/lのタウロコール酸ナトリウム(NaTC)及び0.75ミリモル/lのレシチンを含有し、6.50のpH及び270ミリオスモル/kgの容量オスモル濃度を有するFassifを以下の通りに調製した:
【0069】
ブランクFaSSIFの調製:
5リットルの脱イオン水中に1.74gのNaOH(ペレット)、19.77gのNaHPO.HO(又は17.19gの無水NaHPO)及び30.93gのNaClを溶解した。1N NaOH又は1N HClを用いて、pHを正確に6.5に調整した。
【0070】
FaSSIFの調製:
1.500mlのブランクFaSSIF中に3.3gのタウロコール酸ナトリウム(NaTC)を溶解した。
2.約12mlの塩化メチレン中に1.18gのレシチンを溶解した。
3.レシチン溶液をタウロコール酸ナトリウム溶液に加え、エマルションを形成した。
4.真空下に40℃において塩化メチレンを除去した(例えば回転蒸発器を用いて)。徐々に真空を構成することにより、回転蒸発器のフラスコから泡が出るのを避けるように注意した。これは、感知し得る塩化メチレンの臭いを有していないほとんど透明なミセル溶液を生じた。
5.室温に冷ました後、ブランクFaSSIFを用いて体積を2リットルに調整した。
より大きい体積のFaSSIFの調製のために(6リットルまで)、NaTCの量を倍増させることができ、それでもこれを500mlのブランクFaSSIFに溶解する。それに従ってレシチン及び塩化メチレンの量を調整する。
【0071】
2.2)HPLC分析
カラム:503mm 内径,Xterra MS−C18,5Mm粒度
溶離モード:アイソクラチック
流量:0.5ml/分
移動相:35%A及び65%B
A:リン酸0.5%
B:アセトニトリル
検出:260nmにおけるUV
注入体積:100μl
実験時間:3分
カラム温度:35℃
0.1mlの濾過された試料を溶解媒体から集め、0.9mlの35/65 リン酸(0.5%)/アセトニトリル中で希釈した。次いで試料を直接注入し、分析した。すべての試料を二重に分析し、再現性に関して調べた。各分析に関し、20μl〜25μlの濃度範囲で2つの標準を作り、二重に分析した。HPLCからのAUCデータを集め、計算し、Microsoft Excelにおいてプロッティングした。
【0072】
3)溶解の結果
図1における溶解の結果は、調製の直後(保存なし)の噴霧乾燥された粉末を用いる溶解試験から得られた。
【0073】
図1中の「TMC」はTMC125を指す。
【0074】
図1に示される溶解分布から、MCCを含有する調製物を用いる場合の溶解の全体的速度は、MCCを含有しない調製物の速度と比較して有意により速いことがわかる。これに%放出maxにおける増加も伴う。
【0075】
4)MCCを用いる及び用いない噴霧−乾燥された粉末の安定性
約300mgの各調製物(TMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)を10mlのアンプル中に装填し、飽和塩溶液を含有する25℃におけるデシケーター中に装入し、以下の相対湿度雰囲気を与えた:
●22%RH
●43%RH
●59%RH
●91%RH
【0076】
装入の前に、デシケーターを48時間放置して平衡化させた。それぞれの時点に個々の試料をデシケーターから取り出し、粉末x−線回折(結晶性を調べるため)ならびにポリマーマトリックスからの活性物質(active)の放出速度論を調べるための溶解試験を用いて調べた。
【0077】
高められたRHで保存された両方の調製試料の場合に、2週間の保存の後に%放出maxにおける有意な減少が見られたが、MCC−含有調製物の溶解分布は常にMCCを含有しない調製物の分布より高かった。これは、MCCの正の効果がストレス安定性条件の間にまだ存在したことを示す。
図1:2つの寸法分別された試料、すなわち粒度分別された(45<x<100μm)TMC125:HPMC(1:3)及び粒度分別された(45<x<100μm)TMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)の、得られる溶解放出速度論。
図2−9:種々の相対湿度における2週間又は4週間の安定性保存の後のTMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)(乾燥された)の試料に関して得られた溶解分布。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】2つの寸法分別された試料、すなわち粒度分別された(45<x<100μm)TMC125:HPMC(1:3)及び粒度分別された(45<x<100μm)TMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)の、得られる溶解放出速度論を示すグラフ。
【図2】22%の相対湿度における2週間の安定性保存の後のTMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)(乾燥された)の試料に関して得られた溶解分布を示すグラフ。
【図3】43%の相対湿度における2週間の安定性保存の後のTMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)(乾燥された)の試料に関して得られた溶解分布を示すグラフ。
【図4】59%の相対湿度における2週間の安定性保存の後のTMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)(乾燥された)の試料に関して得られた溶解分布を示すグラフ。
【図5】91%の相対湿度における2週間の安定性保存の後のTMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)(乾燥された)の試料に関して得られた溶解分布を示すグラフ。
【図6】22%の相対湿度における4週間の安定性保存の後のTMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)(乾燥された)の試料に関して得られた溶解分布を示すグラフ。
【図7】43%の相対湿度における4週間の安定性保存の後のTMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)(乾燥された)の試料に関して得られた溶解分布を示すグラフ。
【図8】59%の相対湿度における4週間の安定性保存の後のTMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)(乾燥された)の試料に関して得られた溶解分布を示すグラフ。
【図9】91%の相対湿度における4週間の安定性保存の後のTMC125:HPMC(1:3)及びTMC125:HPMC:MCC(1:3:0.5)(乾燥された)の試料に関して得られた溶解分布を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)微結晶性セルロースならびに水溶性ポリマーとTMC125の溶液の供給混合物を準備し;
(b)霧散手段を介して噴霧−乾燥室中に供給混合物を液滴として導入することにより、段階(a)からの供給混合物を噴霧−乾燥して製薬学的作用剤とポリマーの固体分散系を形成する
段階を含んでなる、固体製薬学的粉末の製造方法。
【請求項2】
微結晶性セルロースが5〜50μm、特に10〜30μmの平均有効粒度を有する請求項1の方法。
【請求項3】
水溶性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びコポリビドンから選ばれる請求項1〜2のいずれかの方法。
【請求項4】
ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項3の方法。
【請求項5】
ポリマー対製薬学的作用剤の比が10:1〜1:1の範囲内、特に5:1〜1:1の範囲内である請求項1〜4のいずれかの方法。
【請求項6】
MCC対TMC125の比が1:1〜1:3の範囲内、特に約1:2である請求項5の方法。
【請求項7】
溶媒がアセトン、ジクロロメタン、エタノール、メタノール及びそれらの組み合わせから選ばれる請求項1〜6のいずれかの方法。
【請求項8】
霧散手段が高圧ノズルを含む請求項1〜7のいずれかの方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの方法により得ることができる粉末形態におけるTMC125の固体分散系。
【請求項10】
請求項9で定義される粉末及びさらなる賦形剤を含んでなる製薬学的調製物。
【請求項11】
請求項9で定義される粉末及びさらなる賦形剤を含んでなる固体剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−539804(P2009−539804A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513696(P2009−513696)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055607
【国際公開番号】WO2007/141308
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】