説明

TNFα及びIL−1βの阻害剤としてのアンドログラフォライド及びそのアナログ

【課題】アンドログラフォライド及びそのアナログ、並びにその使用。
【解決手段】TNFα又はIL−1βの発現抑制方法、より詳細には、本願明細書に記載のR及びRにより定義された化合物を用いた前記方法を提供する。また、本発明は、前記に類する化合物を用いた炎症性消化管疾患の治療方法を提供することに関する。更に本発明は、前記化合物及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物、更に前記の疾病を治療するための薬剤の生産のための前記組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連した出願とのクロスリファレンス)
35 USCセクション119(e)に準拠し、本出願は、2004年3月11日に出願されたアメリカ仮出願シリアル番号60/552,329に対する優先権を主張し、その内容を本願に援用する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子(TNFα)は、単核のサイトカインであり、単球及びマクロファージによって主として生産される。それは以下のような様々な生物学的活性、すなわち、(1)癌細胞を殺す又は癌細胞の増殖を阻害する、(2)好中球の食作用を促進する、(3)過酸化物の生産を上方制御する、(4)感染した病原体を殺す、活性を有する。
【0003】
TNFαは、その発現に関連した疾病を治療するための有力なターゲットとなる。これらの疾病には、リウマチ様関節炎、変形性関節症、脊椎関節症、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、慢性心不全、糖尿病、全身性エリテマトーデス、強皮症、サルコイドーシス、多発性筋炎/デルマト筋炎、乾癬、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、パーキンソン病、AIDS痴呆症、アルツハイマー病、うつ病、敗血症、壊疽性膿皮症、ヘマト敗血症、敗血性ショック、ベーチェット症候群、移植片対宿主病、ブドウ膜炎、ヴェグナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、慢性閉塞性肺疾患、喘息、急性膵炎、歯周病、悪液質、癌、中枢神経系損傷、ウィルス性呼吸器疾患、及び肥満、等が含まれ、またそれらに限定されない(非特許文献1から25)。
【0004】
インターロイキン−1ベータ(IL−1β)は、単球マクロファージ及び樹状細胞などの細胞によって分泌されるサイトカインであり、広範囲の免疫及び炎症応答を仲介する。IL−1βの発現を調節することは、リウマチ様関節炎、ヘマト敗血症、歯周病、慢性心不全、多発性筋炎/デルマト筋炎、急性膵炎、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、変形性関節症、細菌感染、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、ブドウ膜炎、中枢神経系損傷、ウィルス性呼吸器疾患、喘息、うつ病、及び強皮症などの様々な疾病の治療につながる(非特許文献3、18、19、22、23及び24、並びに非特許文献26から39)。
【特許文献1】米国特許第3,989,816号明細書
【特許文献2】米国特許第4,444,762号明細書
【非特許文献1】Ogata H,Hibi Tら、Curr Phann Des.2003;9(14):1107−13
【非特許文献2】Moller DRら、J Intern Med.2003 Jan;253(1):31−40
【非特許文献3】Taylor PCら、Curr Pharm Des.2003;9(14):1095−106
【非特許文献4】Wilkinson Nら、Arch Dis Child.2003 Mar;88(3):186−91
【非特許文献5】Nishimura Fら、J Periodontal.2003 Jan;74(1):97−102
【非特許文献6】Weinberg JMら、Cutis.2003 Jan;71(1):41−5
【非特許文献7】Burnham Eら、Crit Care Med.2001 Mar;29(3):690−1
【非特許文献8】Sack Mら、Pharmacol Ther.2002 Apr−May;94(1−2):123−35
【非特許文献9】Barnes PJら、Annu Rev Pharmacol Toxicol.2002;42:81−98
【非特許文献10】Mageed RAら、Lupus.2002;11(12):850−5
【非特許文献11】Tsimberidou AMら、Expert Rev Anticancer Ther.2002 Jun;2(3):277−86
【非特許文献12】Muller Tら、Curr Opin Investig Drugs.2002 Dec;3(12):1763−7
【非特許文献13】Calandra Tら、Curr Clin Top Infect Dis.2002;22:1−23
【非特許文献14】Girolomoni Gら、Curr Opin Investig Drugs.2002 Nov;3(11):1590−5
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【非特許文献16】Braun Jら、Best Pract Res Clin Rheumatol.2002 Sep;16(4):631−51
【非特許文献17】Barnes PJら、Novartis Found Symp.2001;234:255−67;discussion 267−72
【非特許文献18】Brady Mら、Baillieres Best Pract Res Clin Gastroenterol.1999 JuI;13(2):265−89
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【非特許文献20】Mariette X.Rev Prat.2003 Mar 1;53(5):507−11
【非特許文献21】Sharma Rら、Int J Cardiol.2002 Sep;85(1):161−71
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【非特許文献24】Leonard BEら、Int J Dev Neurosci.2001 Jun;19(3):305−12
【非特許文献25】Hays SJら、Curr Pharm Des.1998 Aug;4(4):335−48
【非特許文献26】Dellinger RPら、Clin Infect Dis.2003 May 15;36(10):1259−65
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【非特許文献28】Diwan Aら、Curr MoI Med. 2003 Mar;3(2):161−82
【非特許文献29】Lundberg IEら、Rheum Dis Clin North Am.2002 Nov;28(4):799−822
【非特許文献30】Makhija Rら、J Hepatobiliary Pancreat Surg.2002;9(4):401−10
【非特許文献31】Chung KFら、Eur Respir J Suppl.2001 Dec;34:50s−59s
【非特許文献32】Hallegua DSら、Ann Rheum Dis.2002 Nov;61(11):960−7
【非特許文献33】Mrak RE、Griffin WSら、Neurobiol Aging.2001 Nov−Dec;22(6):903−8
【非特許文献34】Van der Meer JWら、Ann N Y Acad Sci.1998 Sep 29;856:243−51
【非特許文献35】Rameshwar Pら、Acta Haematol.2003;109(1):1−10
【非特許文献36】de Kozak Yら、Int Rev Immunol.2002 Mar−Jun;21(2−3):231−53
【非特許文献37】Stirling RGら、Br Med Bull 2000;56(4):1037−53
【非特許文献38】Allan SMら、Ann N YAcad Sci.2000;917:84−93
【非特許文献39】Cafagna Dら、Minerva Med.1998 May;89(5):153−61
【非特許文献40】Balmain Aら、J Chem.Soc.Perkin.Trans.11973:1247−1251
【非特許文献41】R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989)
【非特許文献42】T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley and Sons(1999)
【非特許文献43】L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994)
【非特許文献44】L.Paquette, ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)
【非特許文献45】Hogaboam CM.,European Journal of Pharmacology,1996,309:261−269
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アンドログラフォライド及びそのアナログが、TNFα及びIL−1βの両方の発現を阻害し、更にはアンドログラフォライドが、マウスにおいて、DNBSに誘導される大腸炎を軽減させるという、驚くべき発見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、有効量の式Iの化合物の1つ又は2つ以上と、TNFα又はIL−1βとを接触させることによって、TNFα又はIL−1βの発現を阻害する方法に関する。
【0007】
【化1】

(ここで、Rが水素、アルキル基、アリール基、シクリル基、又はヘテロシクリル基であり;
が下記のもの、すなわち、
【化2】

のいずれかであり、その中のR’が水素、アルキル基、シクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ハロ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、及びR’’が水素、アルキル基、シクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はハロ基である。)
【0008】
式Iに関係して、化合物の1つの部分集合は、Rが水素、そしてRが下記のもの、すなわち、
【化3】

のいずれかであり、その中のR’が水素又はヒドロキシ基であり、R’’が水素である構造式によって特徴付けられる。
【0009】
下記に、上記の方法を実践するのに使用されうる、望ましい4つの化合物を示す。
【化4】

【0010】
本発明の別の態様は、TNFα又はIL−1βに関連した疾病、すなわち、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、慢性心不全、糖尿病、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎/デルマト筋炎、乾癬、急性骨髄性白血病、AIDS痴呆症、ヘマト敗血症、敗血性ショック、移植片対宿主病、ブドウ膜炎、喘息、急性膵炎、又は歯周病などの治療の方法に関する。その方法は、式Iの化合物、例えば、上に示した4つの望ましい化合物のいずれかの1つ又は2つ以上を、治療の必要がある被験者に有効量投与することを含む。
【0011】
また式Iの化合物及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物、更に上記の疾病のいずれかを治療するための薬剤の生産のための前記組成物の使用も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0012】
本願における「アルキル」という用語は、1から10の炭素原子を含む直鎖又は枝分かれした炭化水素のことを指す。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基及びt−ブチル基が含まれるが、それらに限定されない。「アルコキシ」という用語は、−O−アルキルのことを指す。
【0013】
「アリール」という用語は、それぞれの環が1から4の置換基を含み得る、炭素数6の単環性、炭素数10の二環性、炭素数14の三環性の芳香族環化合物のことを指す。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基及びアントラセニル基が含まれるが、それらに限定されない。
【0014】
「シクリル」という用語は、3から12の炭素を有する飽和及び部分的に不飽和の環状炭化水素基のことを指す。シクリル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチルが含まれるが、それらに限定されない。
【0015】
「ヘテロアリール」という用語は、1つ又は2つ以上のヘテロ原子(O、N、又はSなど)を有する、芳香族の5から8原子の単環性、8から12原子の二環性、又は11から14原子の三環性の環状化合物のことを指す。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、ベンジミダゾリル基、ピリミジニル基、チエニル基、キノリニル基、インドリル基及びチアゾリルが含まれる。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基のことを指す。
【0016】
「ヘテロシクリル」という用語は、1つ又は2つ以上のヘテロ原子(O、N、又はSなど)を有する非芳香族性の5から8原子の単環性、8から12原子の二環性、又は11から14原子の三環性の環状のことを指す。ヘテロシクリル基の例としては、ピペラジニル基、ピロリジニル基、ジオキサニル基、モルフォリニル基、テトラヒドロフラニル基、グルコシル基、マンノシル基、ガラクトシル基、フルクトシル基、イノシトリル基、ソルボシル基、タロシル基、アルトロシル基、アロシル基、イドシル基、ラムノシル基、アラビノシル基、キシロシル基、リボシル基及びキシルロシル基を含まれるが、それらに限定されない。
【0017】
本願で言及されるアルキル基、シクリル基、ヘテロシクリル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアルコキシ基は、置換及び非置換の両方を含む。置換基の例としては、ハロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、アルコキシカルボニル基、アミド基、カルボキシ基、アルカンスルホニル基、アルキルカルボニル基、カルバミド基、カルバミル基、カルボキシル基、チオウレイド基、チオシアネート基、スルホナミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキロキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、シクリル基及びヘテロシクリル基が含まれるが、それらに限定されない。なお、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキロキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、シクリル基及びヘテロシクリル基はさらに置換され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の1つ又は2つ以上の実施態様は、下記の記載において示される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、それらの記載及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0019】
上記の化合物の中で、アンドログラフォライド及びその数種類のアナログは、Andrographis paniculataから単離することができる(例えば、非特許文献40を参照)。アンドログラフォライドはまた市販されている。また、他の化合物は、アンドログラフォライド及びその天然に生じるアナログから、単純な化学的変換によって合成することができる。前記合成の工程において、保護基を用いた手法が適用され得る。すなわち、目的の化合物を合成する際に有用な、化学的な変換及び保護基を用いた手法(保護及び脱保護)は、公知の技術であり、例えば特許文献41から44、及びそれらの改訂物中に記載された内容が挙げられる。
【0020】
上記の化合物としては、適用可能な範囲で、その医薬的に許容可能な塩及びプロドラッグが含まれる。そのような塩は、上記の化合物においてプラスに帯電したイオン性官能基(例えば、アンモニウムイオン)とマイナスに帯電した対イオン(例えば、塩素、臭素、又はヨウ素)との間で形成され得る。同様に、上記の化合物におけるマイナスに帯電したイオン性官能基はまた、プラスに帯電した対イオンと塩を形成し得る。プロドラッグの例としては、エステル、及び被験者への投与において上記の化合物を与えることができる他の医薬的に許容可能な化合物が含まれる。
【0021】
更に、上記の化合物は、1つ又は2つ以上の二重結合、及び1つ又は2つ以上の不斉中心を有する。それらは、ラセミ体、ラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、又はシス−、トランス−、E−若しくはZ−の二重結合異性体として生じうる。
【0022】
本発明の1つの態様は、TNFα又はIL−1βの発現を阻害するための方法である。その方法は、有効量の上記の化合物の1つ又は2つ以上と、TNFα又はIL−1βとを接触させることを含む。「有効量」という用語は、目的の効果を与えるために必要な化合物の量である。有効量は、当業者によって認識されるように、投与の経路、賦形剤の使用、及び他の薬剤との併用の可能性などに依存して変化しうる。
【0023】
上記の化合物は、TNFα又はIL−1βの発現を阻害するため、それらはTNFα又はIL−1βの過剰発現によって引き起こされた疾病を治療するために使用され得る。したがって、TNFα又はIL−1βの過剰発現に関連した疾病、すなわち、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、慢性心不全、糖尿病、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎/デルマト筋炎、乾癬、急性骨髄性白血病、AIDS痴呆症、ヘマト敗血症、敗血性ショック、移植片対宿主病、ブドウ膜炎、喘息、急性膵炎、又は歯周病などの治療の方法もまた、本発明の範囲に含まれる。その方法は、上記の化合物の1つの有効量を、治療の必要がある被験者に投与することを含む。「治療」という用語は、疾病、疾病の症候、又は疾病に向かう傾向を治療し、治癒させ、軽減させ、苦痛の除去をし、改変し、改善し、改良し、好転させ、又は影響を与えることを目的とした、上記の疾病、疾病の症候、又は疾病に向かう傾向の1つを有する被験者に対して、前記化合物を含む組成物の適用又は投与のことを指す。
【0024】
本発明の治療方法を実施するために、上記の化合物の1つ又は2つ以上は医薬的に許容可能な担体と混合され、そしてその後、吸入スプレーによって又は埋め込まれたリザーバを介して、経口的に、直腸に、非経口的に投与される。本願で使用される「非経口的」という用語は、皮下の、皮内の、静脈内の、関節内の、動脈内の、滑液内の、胸骨内の、外皮内の、病班内の、及び頭蓋内の注射又は注入方法が含まれる。
【0025】
経口投与のための組成物としては、錠剤、カプセル、乳濁及び水性の懸濁液、分散液、及び溶液など、いずれかの経口的に許容可能な投与法が含まれるが、それらに限定されない。錠剤のために一般的に使用される担体としては、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの平滑剤も通常の場合と同様に錠剤へ添加することができる。カプセルの形態における経口投与のために有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液又は乳液の状態で経口的に投与される場合、前記活性成分は、乳化剤又は懸濁溶媒と共に油性層において懸濁又は溶解させることができる。必要であれば甘味料、香味料、又は着色料を添加することも可能である。
【0026】
無菌の注射可能な組成物(例えば、水性又は油性の懸濁液)は、適切な分散又は湿潤剤(例えば、Tween 80など)、及び懸濁剤を用いて、公知の手法に従って製剤化することができる。前記の無菌の注射可能な調製物はまた、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液として、無毒の非経口投与用の希釈剤又は溶液中において、無菌の注射可能な溶液又は懸濁液として調製可能である。前記の用途に適した媒体及び溶媒としては、マンニトール、水、リンガー溶液及び生理食塩水が使用可能である。更に、無菌の不揮発性オイルが、溶媒又は懸濁媒体として通常採用される(例えば、合成品のモノ−又はジ−グリセリド)。オレイン酸などの脂肪酸、及びそのグリセリド誘導体は、オリーヴオイル又はヒマシオイルなど、特にそのポリオキシエチレン化されたタイプにおいて、天然由来かつ医薬的に許容されるオイルとして、注射可能な調製物として有用である。また、これらのオイル溶液又は懸濁液には長鎖のアルコール系希釈剤又は分散剤、カルボキシメチルセルロース又は他の同様の分散剤を含ませることができる。
【0027】
吸入用組成物は、公知の技術に従って医薬的な製剤形態として調製され、例えばベンジルアルコール、又は他の適切な防腐剤、生体利用効率を向上させる吸着促進剤、フッ化炭素、及び/又は公知の可溶化剤又は分散剤を伴った生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0028】
1つ又は2つ以上の活性化合物は、直腸に投与され得る。1つの例として、座薬の基材と前記活性な化合物を含む座薬である。適切な座薬の基材としては、例えば、天然又は合成のトリグリセライド、又はパラフィン炭化水素が挙げられる。別の例として、前記活性化合物及び基材を含むゼラチン直腸カプセルである。使用可能な基材の素材としては、例えば、液体のトリグリセライド、ポリエチレングリコール、又はパラフィン炭化水素が挙げられる。
【0029】
皮膚に適用される組成物として、オイル、クリーム、ローション、軟膏などの形態に製剤されうる。この組成物のための適切な担体としては、植物性又は鉱物性のオイル、白色のワセリン(白色の柔軟なパラフィン)、分枝鎖の脂質又はオイル、動物性脂質、及び高分子量のアルコール(C12より大きい)などが挙げられる。好ましい担体は、前記活性成分が可溶性となるものである。また、もし必要ならば、乳化剤、安定剤、湿潤剤及び抗酸化剤を着色剤又は香料と同様に含めることも可能である。更に、経皮的な浸透を促進する促進剤を、これらの剤形の中に配合することも可能である。そのような促進剤の例は、例えば特許文献1及び2に見出すことができる。
【0030】
クリームは、鉱物性オイル、自身で乳化する蜜ろう、及び水の混合物から製剤され、そこではアーモンドオイルなどの少量のオイルに溶解した活性成分の混合物が混合されているのが望ましい。そのようなクリームの例としては、約40重量部の水、約20重量部の蜜ろう、約40重量部の鉱物性オイル、及び約1重量部のアーモンドオイルを含むものが挙げられる。
【0031】
軟膏は、アーモンドオイルなどの植物性オイル中において、活性成分の溶液を温かく柔軟なパラフィンと混合し、更にその混合物を冷却することによって、製剤することができる。そのような軟膏の例としては、約30重量%のアーモンドオイルと約70重量%の白色の柔軟なパラフィンを含むものが挙げられる。
【0032】
医薬組成物における担体は、製剤の活性成分と相性が良いという意味で「許容可能」でなくてはならず(及び好ましくは、それを安定化させる能力を持ち)、そして治療される被験者に対して有害でないものでなければならない。例えば、シクロデキストリンなどの可溶化剤(特異的な、より可溶性の複合体を活性化合物と形成する)は、活性化合物の運搬のための医薬的な賦形剤として用いることができる。他の担体の例としては、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、及びD&C Yellow #10が挙げられる。
【0033】
適切なin vitro検定により、上記のどの化合物がTNFα又はIL−1βの発現を阻害する活性を有するかを、予備的に評価することができる。前記の予備的なスクリーニングにおいて高い活性を示す化合物は、さらにin vivo検定においてスクリーニングされうる。例えば、テスト化合物が炎症性腸疾患を有する動物(例えば、モデルマウス)に対して投与し、その治療効果がその後利用できる。その結果に基づいて、適切な投与量の範囲及び投与の経路を決定することができる。
【0034】
さらなる労力もなく、上記の記載により本発明が適切に実施可能になると思われる。それゆえ、以下の具体的な実施例は単に実例として解釈され、いずれかの方法において開示されたもの以外のいかなる態様をも決して除外するものではない。特許文献を含めて、本願にて引用された全ての刊行物は、その全体において、参考のためにこの明細書において援用される。
【実施例1】
【0035】
(In vitro検定)
4つのテスト化合物、アンドログラフォライド(中国葯品生物制品検定所)、ネオアンドログラフォライド(中国薬科大学)、14−デオキシ−11,12−デハイドロジェン−アンドログラフォライド(中国薬科大学)、及び14−デオキシ−アンドログラフォライド(中国薬科大学)をそれぞれジメチルスルホキシドに溶解し、テスト溶液を調製した。
【0036】
Ficoll−Paque Plus試薬(アマシャム・バイオサイエンス)を用い、そのプロトコルに従って、末梢血単球(PBMC)を新鮮な血液から単離した。得られた細胞を、1×10細胞/mlの濃度で、10%のウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地中に懸濁し、96ウェルプレートに分注した(それぞれのウェル中に全体で1×10細胞)。各反応は3つのウェルを用いて行った。
【0037】
テスト溶液10μlをウェルに添加した(テスト化合物の最終濃度は0.1、0.3、1、3、10、及び30μg/ml)。Dexamethason(CalBiochem、最終濃度は10μM)をポジティヴコントロールとして用いた。培地10μlをネガティヴコントロールとして用いた。プレートを37℃、5%CO濃度の条件下にて15分間インキュベートした。100μg/mlのリポポリサッカライド(LPS)10μlをネガティヴコントロール以外の全てのウェルに添加した後、プレートを37℃、5%CO濃度の条件下にて一晩インキュベートした。
【0038】
そのプレートを1000rpmで15分間遠心分離し、上清を回収した。TNFα及びIL−1βの濃度を、TNFα ELISA(酵素免疫定量法)キット及びIL−1β ELISAキット(Jingmei Bioengineer Technology)を用いて測定した。
【0039】
阻害率(Inhibition Ratio(%))は以下のように計算した。
【数1】

ここで、Ctest compound(テスト化合物)はテスト化合物及びLPSで処理したPBMC細胞における、TNFα又はIL−1βの濃度であり、CLPSはLPS及びDexamethasonで処理したPBMC細胞におけるTNFα又はIL−1βの濃度であり、そしてCControl(コントロール)はLPS又はテスト化合物で処理しなかったPBMC細胞におけるTNFα又はIL−1βの濃度である。
【0040】
以上の検定の結果、4つの化合物全てがTNFα及びIL−1β両方の発現を顕著に阻害することを示した。
【実施例2】
【0041】
(In vivo検定)
雄のWistarラット(170から190g、中国科学院動物センター、上海)を、制御された環境において飼育し(ゲージ当たり7から8匹のラット)、通常の齧歯類用の餌及び水を与えた。非特許文献45に記載された手順に従い、前記ラットに末梢の大腸炎を誘導させた。簡潔に述べると、ラットを1%のナトリウムペントバルビタールで麻酔させ、30%エタノール(v/v)0.25ml中に溶解した2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸(DNBS)を、PE 50配管を介して大腸(肛門から8cmの位置)へと導入することにより行った。コントロール群(ブランクコントロール)においては、30%エタノール(v/v)を、DNBSエタノール溶液の代わりに導入した。
【0042】
続いて、アンドログラフォライド(10mg/kg、腹腔内投与)を、前記DNBS処理したラット群に、大腸炎誘導の24時間前及び2時間前、並びにその後5日間、1日1回投与した。
【0043】
前記ラットの体重を毎日測定した。全てのラットを、大腸炎誘導の6日後に屠殺し、結腸、脾臓及び胸腺を除去し、それらの重量を測定した。結腸の重量/体重の比率、脾臓の重量/体重の比率、及び胸腺の重量/体重の比率をそれぞれ計算した。
【0044】
肛門管の正確に2cm上の結腸組織のサンプルを調製し、バッファーにより中性に調製された10%ホルマリン溶液を用いて固定し、パラフィン中に包埋し、切片を調製し、ヘマトキシリン/エオシンで染色した。得られたサンプルを、損傷の重症度を評価するために顕微鏡下で観察した。
【0045】
DNBSのみを与えられたラットは、重度の下痢症状、一様の体重減少及び結腸重量/体重の比率の著しい増加を現した。一方6日間のアンドログラフォライド(10mg/kg)での治療により、不良症候群の軽減、結腸重量/体重の比率を減少が観察された。
【0046】
顕微鏡での観察により、DNBSを投与されアンドログラフォライドを投与されなかったラットの結腸が、その腸管壁の全ての層における全層性の炎症が観察された。また、顕微鏡での観察により、炎症細胞の著しい浸透、上皮細胞の欠失、つぎはぎのような潰瘍形成、及び観察された結腸組織におけるムチンを生産する杯状細胞の顕著な欠乏なども観察された。一方、DNBSを投与され、かつアンドログラフォライドで処理されたラットの結腸においては、炎症の重度が顕著な軽減が観察された。すなわちこれらの結腸においては、腸管壁に光沢があり、また周辺の組織への吸着も観察されなかった。アンドログラフォライドは効果的に症状を緩和し、またDNBSによって誘導された大腸炎さえも治療した。
【0047】
(他の実施態様)
本願明細書にて開示された内容の全ては、どのような組み合わせも可能である。本願明細書に公開された各内容はまた、同一の、均等な、又は同様の目的を果たす別の内容によって置き換えることが可能である。したがって、特別に断りのない限り、公開された各内容は、均等又は同様の内容を含む包括的な技術思想の単なる一例である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上記の記載から、当業者は本発明の本質的な内容を容易に確かめることができ、そしてその技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び修正を行い、様々な用途及び条件に本発明を適用させることができる。例えば、アンドログラフォライドと構造的に類似した化合物が作られ、TNFα又はIL−1βの発現に対する阻害活性についてスクリーニングされ、そしてTNFα又はIL−1βに関連した疾病を治療し、そして本発明の実践のために使用されうる。したがって、他の実施例もまた、特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFαの発現抑制方法であり、TNFαを有効量の下記の式に記載の化合物と接触させることを含むことを特徴とする、方法。

(ここで、Rは水素、アルキル基、アリール基、シクリル基、又はヘテロシクリル基であり;
は下記の式、すなわち

のいずれかであり、ここでR’は水素、アルキル基、シクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ハロ基、アミノ基、又は水酸基であり、R’’は水素、アルキル基、シクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基又はハロ基である。)
【請求項2】
がHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であり、Rが下記の式である、方法。

【請求項4】
請求項3に記載の方法であり、R’が水素又は水酸基であり、R’’が水素である、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であり、前記化合物がアンドログラフォライドである、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であり、前記化合物が14−デオキシアンドログラフォライドである、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であり、前記化合物が14−デオキシ−11,12−デヒドロ−アンドログラフォライドである、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であり、前記化合物がネオアンドログラフォライドである、方法。
【請求項9】
IL−1βの発現抑制方法であり、IL−1βを有効量の下記の式に記載の化合物と接触させることを含むことを特徴とする、方法。

(ここで、Rは水素、アルキル基、アリール基、シクリル基、又はヘテロシクリル基であり;
は下記の式、すなわち

のいずれかであり、ここでR’は水素、アルキル基、シクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ハロ基、アミノ基、又は水酸基であり、R’’は水素、アルキル基、シクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基又はハロ基である。)
【請求項10】
がHである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であり、Rが下記の式である、方法。

【請求項12】
請求項11に記載の方法であり、R’が水素又は水酸基であり、R’’が水素である、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であり、前記化合物がアンドログラフォライドである、方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法であり、前記化合物が14−デオキシアンドログラフォライドである、方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法であり、前記化合物が14−デオキシ−11,12−デヒドロ−アンドログラフォライドである、方法。
【請求項16】
請求項9に記載の方法であり、前記化合物がネオアンドログラフォライドである、方法。
【請求項17】
炎症性消化管疾患の治療方法であり、有効量の下記の式に記載の化合物を被験者に投与することを含むことを特徴とする、方法。

(ここで、Rは水素、アルキル基、アリール基、シクリル基、又はヘテロシクリル基であり;
は下記の式、すなわち

のいずれかであり、ここでR’は水素、アルキル基、シクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ハロ基、アミノ基、又は水酸基であり、R’’は水素、アルキル基、シクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基又はハロ基である。)
【請求項18】
がHである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であり、Rが下記の式である、方法。

【請求項20】
請求項19に記載の方法であり、R’が水素又は水酸基であり、R’’が水素である、方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法であり、前記化合物がアンドログラフォライドである、方法。
【請求項22】
請求項17に記載の方法であり、前記化合物が14−デオキシアンドログラフォライドである、方法。
【請求項23】
請求項17に記載の方法であり、前記化合物が14−デオキシ−11,12−デヒドロ−アンドログラフォライドである、方法。
【請求項24】
請求項17に記載の方法であり、前記化合物がネオアンドログラフォライドである、方法。
【請求項25】
請求項17に記載の方法であり、炎症性消化管疾患がクローン病である、方法。
【請求項26】
請求項17に記載の方法であり、炎症性消化管疾患が潰瘍性大腸炎である、方法。

【公表番号】特表2007−528421(P2007−528421A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503085(P2007−503085)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008317
【国際公開番号】WO2005/087223
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506305447)ハッチソン メディファーマ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】