TTK、URLC10、またはKOC1ポリペプチドを発現する肺癌に対するペプチドワクチン
【課題】肺癌組織の腫瘍細胞で特異的に上方制御され、腫瘍細胞を殺す事において有用性のあるTTK、URLC10、およびKOC1由来の免疫原性ペプチドの提供。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を含むペプチド、および1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されている上記のアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞誘導能をもつペプチドを取得した。該ペプチドを含む、腫瘍の処置または予防のための薬物を開発した。該ペプチドはまた、ワクチンとして用いることもできる。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を含むペプチド、および1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されている上記のアミノ酸配列を含み、かつ細胞傷害性T細胞誘導能をもつペプチドを取得した。該ペプチドを含む、腫瘍の処置または予防のための薬物を開発した。該ペプチドはまた、ワクチンとして用いることもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物科学の分野、より具体的には、癌治療の分野に関する。特に、本発明は、癌ワクチンとして非常に効果的である新規なペプチド、ならびにこれらのペプチドを含む腫瘍を処置および予防するための薬物に関する。なお、本出願は、2005年2月25日に出願された米国仮出願第60/656,857号の恩典を主張し、その内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
背景技術
肺癌は、最も一般的な致死性ヒト腫瘍の一つである。肺癌の発生および進行に関連した多くの遺伝子変化が報告されている。遺伝子変化は、予後の努力、および転移リスクまたは特定の処置に対する応答の予測を助けることができる。(Mitsudomi T et al., (2000) Clin Cancer Res 6:4055-63; Niklinski et al., (2001) Lung Cancer. 34 Suppl 2:S53-8; Watine J. (2000) Bmj 320:379-80)。非小細胞肺癌(NSCLC)は、肺腫瘍の80%近くを占める、肺癌の群を抜いて最も多く見られる型である(Society, A.C. Cancer Facts and Figures 2001, 2001)。10年全生存率は、集学的治療(multi-modality therapy)における最近の進歩にもかかわらず、NSCLCの大部分が末期まで診断されないため、10%程度のままである(Fry, W.A. et al., (1999) Cancer. 86:1867-76)。白金をベースとした化学療法措置は、NSCLCの処置のための参考標準とみなされているが、これらの薬物は、進行したNSCLC患者の生存を約6週間延長することができるだけである(Non-small Cell Lung Cancer Collaborative Group, (1995) BMJ. 311:899-909)。チロシンキナーゼ阻害剤を含む多数の標的治療が、この疾患について研究されている。しかしながら、今までに有望な結果が得られたのは限られた数の患者においてのみであり、一部のレシピエントは重篤な有害反応に苦しんでいる(Kris MG, et al., (2002) Proc Am Soc Clin Oncol. 21:292a(A1166))。
【0003】
CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、MHCクラスI分子上に提示された腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープペプチドを認識し、腫瘍細胞を溶解することが実証されている。MAGEファミリーがTAAの最初の例として発見されて以来、多くの他のTAAが免疫学的アプローチを用いて発見されている(Boon T. (1993) Int J Cancer 54:177-80; Boon T. et al., (1996) J Exp Med 183:725-9; van der Bruggen P et al., (1991) Science 254:1643-47; Brichard V et al., (1993) J Exp Med 178:489-95; Kawakami Y et al., (1994) J Exp Med 180:347-52)。それらの一部は、現在免疫療法の標的として臨床開発中である。これまで発見されたTAAは、MAGE(van der Bruggen P et al., (1991) Science 254:1643-7)、gp100(Kawakami Y et al., (1994) J Exp Med 180:347-52)、SART(Shichijo S et al., (1998) J Exp Med 187:277-88)、およびNY-ESO-1(Chen Y.T. et al., (1997) Proc. Natl. Acd. Sci. USA, 94:1914-8)を含む。他方、腫瘍細胞においていくらか特異的に過剰発現していることが実証された特定の遺伝子産物は、細胞性免疫応答を誘導する標的として認識されることが示されている。そのような遺伝子産物は、p53(Umano Y et al., (2001) Br J Cancer, 84:1052-7)、HER2/neu(Tanaka H et al., (2001) Br J Cancer, 84:94-9)、CEA(Nukaya I et al., (1999) Int. J. Cancer 80, 92-7)などを含む。
【0004】
TAAに関する基礎的および臨床的な研究における著しい進歩にもかかわらず(Rosenberg SA et al., (1998) Nature Med, 4:321-7; Mukherji B. et al., (1995) Proc Natl Acad Sci USA, 92:8078-82; Hu X et al., (1996) Cancer Res, 56:2479-83)、肺癌のような腺癌の処置に適した候補TAAの非常に限られた数のみが利用可能である。癌細胞に豊富に発現されており、その発現が癌細胞に限定されているTAAは、免疫療法の標的として有望な候補であると思われる。
【0005】
特定の健康なドナー由来のペプチド刺激による末梢血単核細胞(PBMC)は、ペプチドに応答して有意なレベルのIFN-γを産生するが、HLA-A24またはHLA-A0201拘束性様式で腫瘍細胞に対して細胞傷害性をめったに発揮しないことが、51Cr放出アッセイにおいて繰り返し示されている(Kawano K et al., (2000) Cancer Res 60:3550-8; Nishizaka et al., (2000) Cancer Res 60: 4830-7; Tamura et al., (2001) Jpn J Cancer Res 92:762-7)。しかしながら、HLA-A24およびHLA-A0201の両方は、日本人集団および白人集団において一般的なHLA対立遺伝子である(Date Y et al., (1996) Tissue Antigens 47:93-101; Kondo A et al., (1995) J Immunol 155:4307-12; Kubo RT et al., (1994) J Immunol 152:3913-24; Imanishi et al., Proceeding of the eleventh International Histocompatibility Workshop and Conference Oxford University Press, Oxford, 1065 (1992); Williams F et al., (1997) Tissue Antigen 49:129)。従って、これらのHLA対立遺伝子により提示される癌の抗原性ペプチドは、日本人および白人の患者での癌の処置に特に有用でありうる。さらに、インビトロでの低親和性CTLの誘導は通常、これらのCTLを効果的に活性化する抗原提示細胞(APC)上に高レベルの特定のペプチド/MHC複合体を生じる高濃度でのペプチドの使用に起因することが知られている(Alexander-Miller et al., (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93:4102-7)。
【0006】
cDNAマイクロアレイ技術における最近の発達により、正常細胞と比較した悪性細胞の遺伝子発現の包括的なプロファイルの構築が可能になった(Okabe, H. et al., (2001) Cancer Res., 61, 2129-37; Lin YM. et al., (2002) Oncogene, 21:4120-8; Hasegawa S. et al., (2002) Cancer Res 62:7012-7)。このアプローチにより、癌細胞の複雑な性質および発癌の機構の理解が可能になり、かつ腫瘍において発現の調節が解除されている遺伝子の同定が促進される(Bienz M. et al., (2000) Cell 103, 311-320)。肺癌において一般的に上方制御されていると確認された転写物の中で、TTK(TTKプロテインキナーゼ;GenBankアクセッション番号NM_003318; SEQ ID NO:1、2)、URLC10(異なって発現されるCO16遺伝子についてのcDNA;GenBankアクセッション番号AB105187; SEQ ID NO:3、4)、およびKOC1(IGF II mRNA結合タンパク質3;GenBankアクセッション番号NM_006547; SEQ ID NO:5、6)は、本発明者らにとって特に関心があり、分析された症例の80%より多くにおいて、肺癌組織の腫瘍細胞で特異的に上方制御されている。対照的に、ノーザンブロット分析により、これらの遺伝子産物が正常な重要臓器において見出されないことが実証された(WO2004/031413参照、その全内容は本明細書に参照により組み入れられている)。従って、TTK、URLC10、およびKOC1由来の免疫原性ペプチドは、これらの抗原を発現する腫瘍細胞を殺す事において有用性を見出しうる。本発明は、これらおよび他の必要性に取り組む。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
3つの遺伝子、すなわちTTK(TTKプロテインキナーゼ)、URLC10(異なって発現されるCO16遺伝子についてのcDNA)、およびKOC1(IGF II mRNA結合タンパク質3)が、肺癌において上方制御されることが確認されている。該遺伝子は、23,040個の遺伝子を含むゲノムワイドcDNAマイクロアレイでの遺伝子発現プロファイリングを用いて同定された。上記で考察されているように、TTK、URLC10、およびKOC1の発現は、肺癌をもつ患者の80%より多くにおいて腫瘍細胞で特異的に上方制御されているが、他の正常な重要臓器においては存在しない。
【0008】
本発明は、対応する分子に特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘発するこれらの遺伝子(TTK、URLC10、およびKOC1)の遺伝子産物のエピトープペプチドの同定に、少なくとも一部、基づいている。下記で詳細に考察されているように、健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)は、TTK、URLC10、またはKOC1由来のHLA-A*2402結合性候補ペプチドを用いて刺激された。CTLクローンは、その後、候補ペプチドのそれぞれがパルスされたHLA-A24陽性標的細胞に対する特異的な細胞傷害性に関して確立された。CTLクローンのさらなる分析により、ペプチドをパルスした標的細胞だけでなく、TTK、URLC10、またはKOC1を内因的に発現させる腫瘍細胞に対する強力な細胞傷害活性が示された。さらに、非放射性標的阻害アッセイおよび抗体ブロッキングアッセイの両方により、CTL細胞クローンはMHCクラスI-ペプチド複合体を特異的に認識したことが明らかにされた。これらの結果により、これらのペプチドが、TTK、URLC10、またはKOC1を発現させる肺癌細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導することができるHLA-A24拘束性エピトープペプチドであることが実証されている。
【0009】
従って、本発明は、本発明のTTKポリペプチド、URLC10ポリペプチド、およびKOC1ポリペプチドを被検体に投与する段階を含む、被検体において肺癌を処置または予防するための方法を提供する。抗腫瘍免疫は、これらのポリペプチドの投与により誘導される。従って、本発明は、TTKポリペプチド、URLC10ポリペプチド、およびKOC1ポリペプチドを被検体に投与する段階を含む被検体において抗腫瘍免疫を誘導するための方法、加えて、TTKポリペプチド、URLC10ポリペプチド、およびKOC1ポリペプチドを含む肺癌を処置または予防するための薬学的組成物を提供する。
【0010】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、添付の図および実施例と併せて以下の詳細な説明を読むことでより完全に明らかになると思われる。しかしながら、本発明の前述の概要および以下の詳細な説明の両方は、好ましい態様であり、本発明または本発明の他の代替態様を限定しないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】TTK-567により産生されたCTLクローンがペプチドに特異的な細胞傷害性をもつことを示すグラフである。具体的には、CTLクローンは、TTK-567を用いてパルスした標的細胞(A24LCL)に対して高い細胞傷害活性を示したが、ペプチドをパルスしなかった同じ標的細胞(A24LCL)に対しては有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図2】URLC10-177により産生されたCTLクローンがペプチドに特異的な細胞傷害性をもつことを示すグラフである。具体的には、CTLクローンは、URLC10-177を用いてパルスした標的細胞(A24LCL)に対して高い細胞傷害活性を示したが、ペプチドをパルスしなかった同じ標的細胞(A24LCL)に対しては有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図3】KOC1-508により産生されたCTLクローンがペプチドに特異的な細胞傷害性をもつことを示すグラフである。具体的には、CTLクローンは、KOC1-508を用いてパルスした標的細胞(A24LCL)に対して高い細胞傷害活性を示したが、ペプチドを用いてパルスしなかった同じ標的細胞(A24LCL)に対しては有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図4】TTK-567により産生されたCTLクローンが、HLA拘束性様式において、TTKを内因的に発現する腫瘍細胞を認識し、かつ溶解することを示すグラフである。TTKおよびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性は、TTK-567により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。TTKを内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、PC9細胞を用いた。CTLクローンは、TTKおよびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、TTKを発現するがHLA-A24を発現しないPC9細胞に対しては、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図5】URLC10-177により産生されたCTLクローンが、HLA拘束性様式において、URLC10を内因的に発現する腫瘍細胞を認識し、かつ溶解することを示すグラフである。URLC10およびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性は、URLC10-177により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。URLC10を内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、TE13細胞を用いた。CTLクローンは、URLC10およびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、URLC10を発現するがHLA-A24を発現しないTE13細胞に対しては、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図6】KOC1-508により産生されたCTLクローンが、HLA拘束性様式において、KOC1を内因的に発現する腫瘍細胞を認識し、かつ溶解することを示すグラフである。KOC1およびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性は、KOC1-508により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。KOC1を内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、PC9細胞を用いた。CTLクローンは、KOC1およびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、KOC1を発現するがHLA-A24を発現しないPC9細胞に対しては、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図7】TTK-567により産生されたCTLクローンが、HLA-A24拘束性様式でTTK-567を特異的に認識することを示すグラフである。Na251CrO4により標識されたTE1細胞は放射性標的として調製し、一方TTK-567ペプチドをパルスしたA24LCL細胞は非放射性標的(阻害剤)として用いた。E/T比は20に固定した。TE1細胞に対するTTK-567 CTLクローンの細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により阻害された。
【図8】URLC10-177により産生されたCTLクローンが、HLA-A24拘束性様式でURLC10を特異的に認識することを示すグラフである。Na251CrO4により標識されたTE1細胞は放射性標的として調製し、一方URLC10-177ペプチドをパルスしたA24LCL細胞は非放射性標的(阻害剤)として用いた。E/T比は20に固定した。TE1に対するURLC10-177 CTLクローンの細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により阻害された。
【図9】KOC1-508により産生されたCTLクローンが、HLA-A24拘束性様式でKOC1を特異的に認識することを示すグラフである。Na251CrO4により標識されたTE1細胞は放射性標的として調製し、一方KOC1-508ペプチドをパルスしたA24LCL細胞は非放射性標的(阻害剤)として用いた。E/T比率は20に固定した。TE1細胞に対するKOC1-508 CTLクローンの細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により阻害された。
【図10】TTK-567により産生されたCTLクローンの細胞傷害活性が、HLAクラスIまたはCD8のT細胞表面抗原を認識する抗体により特異的にブロックされることを示すグラフである。CTLクローンの細胞傷害性の特異性は、抗体ブロッキングアッセイにより確認した。TE1細胞はそれぞれモノクローナル抗体と共培養し、標的として用いた。CTL活性は、HLAクラスIまたはCD8を認識する抗体の添加により明らかにブロックされ、かつHLAクラスIIまたはCD4に対する抗体の添加の影響をわずかに受けた。しかしながら該CTL活性は、アイソタイプが一致する対照抗体の添加では全く阻害されなかった。
【図11】URLC10-177により産生されたCTLクローンの細胞傷害活性が、HLAクラスIまたはCD8のT細胞表面抗原を認識する抗体により特異的にブロックされることを示すグラフである。CTLクローンの細胞傷害性の特異性は、抗体ブロッキングアッセイにより確認した。TE1細胞はそれぞれモノクローナル抗体と共培養し、標的として用いた。CTL活性は、HLAクラスIまたはCD8を認識する抗体の添加により明らかにブロックされ、かつHLAクラスIIまたはCD4に対する抗体の添加の影響をわずかに受けた。しかしながら該CTL活性は、アイソタイプが一致する対照抗体の添加では全く阻害されなかった。
【図12】KOC1-508により産生されたCTLクローンの細胞傷害活性が、HLAクラスIまたはCD8のT細胞表面抗原を認識する抗体により特異的にブロックされることを示すグラフである。CTLクローンの細胞傷害性の特異性は、抗体ブロッキングアッセイにより確認した。TE1細胞はそれぞれモノクローナル抗体と共培養し、標的として用いた。CTL活性は、HLAクラスIまたはCD8を認識する抗体の添加により明らかにブロックされ、かつHLAクラスIIまたはCD4に対する抗体の添加の影響をわずかに受けた。しかしながら該CTL活性は、アイソタイプが一致する対照抗体の添加では全く阻害されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書に用いられる場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単語は、他に明確な指示がない限り「少なくとも1つ」を意味する。
【0013】
他に定義がない限り、本明細書に用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味をもつ。
【0014】
新しいTAA、特に、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導するTAAの同定により、様々な型の癌におけるペプチドワクチン接種ストラテジーの臨床での応用のさらなる進歩が保証される(Boon T et al., (1996) J Exp Med 183:725-9; van der Bruggen P et al., (1991) Science 254:1643-7; Brichard V et al., (1993) J Exp Med 178:489-95; Kawakami Y et al., (1994) J Exp Med 180:347-52; Shichijo S et al., (1998) J Exp Med 187:277-88; Chen YT et al., (1997) Proc. Natl. Acd. Sci. USA, 94:1914-8; Harris CC, (1996) J Natl Cancer Inst 88:1442-5; Butterfield LH et al., (1999) Cancer Res 59:3134-42; Vissers JL et al., (1999) Cancer Res 59:5554-9; van der Burg SH et al., (1996) J. Immunol 156:3308-14; Tanaka F et al., (1997) Cancer Res 57:4465-8; Fujie T et al., (1999) Int J Cancer 80:169-72; Kikuchi M et al., (1999) Int J Cancer 81:459-66; Oiso M et al., (1999) Int J Cancer 81:387-94)。上記のように、TTK、URLC10、およびKOC1は、以前に、cDNAマイクロアレイ技術を用いることにより、肺癌で過剰発現していることが確認された。WO2004/031413に考察されているように、TTKは、S_TKcドメインをコードする。TTK遺伝子によりコードされたタンパク質は、セリン、トレオニン、およびチロシンに基づくタンパク質をリン酸化し、そのようなリン酸化は細胞増殖に関連している可能性が高い(Mills GB et al., (1992) J Biol Chem 267:16000-6; Schmandt R et al., (1994) J Immunol. 152(1):96-105; Stucke VM et al., (2002) EMBO J. 21(7):1723-32)。KOC1は、インスリン様成長因子2(IGF2)mRNA結合タンパク質3(IMP-3)をコードする。IMP-3タンパク質は、4つのKHドメインに加えて、2つの機能的RNA認識モチーフ(RRM)を含む。該タンパク質は、ヒト6.0-kbインスリン様成長因子II(IGF2)リーダー-3 mRNAの5'UTRと特異的に結合し、IGF2産生の生理的制御におけるIMP-3の役割を示唆している。(Nielsen, J. et al., (1999) Molec. Cell. Biol. 19:1262-1270)。IMP-3はまた、膵臓癌において過剰発現していた(Mueller-Pillasch, F. et al., (1997) Oncogene 14:2729-2733)。
【0015】
以前の実験は、TTK、URLC10、およびKOC1が肺癌において過剰発現し、正常組織において最小限の発現を示すことを実証した。さらに、これらの遺伝子は、細胞増殖に関連した重要な機能をもつことが示された(WO2004/031413参照)。
【0016】
本発明において、TTK、URLC10、またはKOC1由来のペプチドは、日本人および白人集団に一般的に見出されるHLA対立遺伝子であるHLA-A24により拘束されるTAAエピトープであることが示されている。具体的には、HLA-A24へのそれらの結合親和性を用いて、TTK、URLC10、またはKOC1由来のHLA-A24結合ペプチドの候補が同定された。これらのペプチドを負荷された樹状細胞(DC)によるT細胞のインビトロ刺激後、CTLは、TTK-567(SYRNEIAYL(SEQ ID No.8))、URLC10-177(RYCNLEGPPI(SEQ ID No.67))、およびKOC1-508(KTVNELQNL(SEQ ID No.89))を用いて成功裡に確立された。これらのCTLは、ペプチドをパルスしたA24LCL細胞に対して強力な細胞傷害活性を示した。さらに、これらの細胞由来のCTLクローンはまた、TTK、URLC10、またはKOC1を内因的に過剰発現させるHLA-A24陽性肺癌細胞株に対して特異的な細胞傷害性を示した。しかしながら、これらのCTLクローンは、HLA-A24または標的TAAのいずれかの発現を欠く細胞株に対して細胞傷害活性を示さなかった。これらのCTLクローンの特異的な細胞傷害活性は、非放射性標的により有意に阻害された。これらの結果は、TTK、URLC10、およびKOC1が、肺癌細胞のTAAとして有用であること、ならびにTTK-567、KOC1-508、およびURLC10-177がHLA-A24により拘束される各TAAのエピトープペプチドであることを実証している。これらの抗原はほとんどの肺癌において過剰発現し、腫瘍細胞増殖と関連しているため、肺癌に対する免疫療法の標的として有用である。
【0017】
従って、本発明はさらに、被検体において肺癌を処置または予防する方法であって、約40アミノ酸未満、しばしば、約20アミノ酸未満、通常は約15アミノ酸未満であり、かつSEQ ID NO:8、67、または89のアミノ酸配列を含む免疫原性ペプチドをそれを必要としている被検体に投与する段階を含む方法を提供する。あるいは、免疫原性ペプチドは、結果として生じる変異体ペプチドが免疫原性活性(すなわち、肺癌細胞に特異的なCTLを誘導する能力)を保持するとの条件で、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されている、SEQ ID NO:8、67、または89の配列を含みうる。置換、除去、または付加される残基の数は、一般的に、5アミノ酸またはそれ未満、好ましくは4アミノ酸またはそれ未満、より好ましくは3アミノ酸またはそれ未満、よりいっそう好ましくは1アミノ酸もしくは2アミノ酸である。
【0018】
変異体ペプチド(すなわち、本来のアミノ酸配列に対して、1個、2個、または数個のアミノ酸残基の置換、除去、または付加を行うことにより改変されたアミノ酸配列を含むペプチド)は、本来の生物活性を保持することが知られている(Mark DF et al., (1984) Proc Natl Acad Sci USA 81:5662-6; Zoller MJ and Smith M, (1982) Nucleic Acids Res 10:6487-500; Dalbadie-McFarland G et al., (1982) Proc Natl Acad Sci USA 79:6409-13)。本発明の文脈おいて、アミノ酸改変は、結果的に、本来のアミノ酸側鎖の性質を保存する(保存的アミノ酸置換として知られる過程)。アミノ酸側鎖の性質の例は、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、および共通して、以下の官能基または特性を有する側鎖である:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシ基含有側鎖(S、T、Y);イオウ原子含有側鎖(C、M);カルボン酸およびアミド含有側鎖(D、N、E、Q);塩基含有側鎖(R、K、H);ならびに芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)。ただし、括弧でくくられた文字は、アミノ酸の一文字記号を示す。
【0019】
好ましい態様において、免疫原性ペプチドは、ノナペプチド(9-mer)またはデカペプチド(10-mer)である。
【0020】
本発明はさらに、被検体において肺癌に対する抗腫瘍免疫を誘導する方法であって、本発明の免疫原性ペプチド、すなわちSEQ ID NO:8、67、もしくは89のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、除去、または付加を含む)を含むペプチドをそれを必要としている被検体に投与する段階を含む方法を提供する。
【0021】
本発明の文脈において、被検体は、好ましくは哺乳動物である。例示的な哺乳動物は、限定されるわけではないが、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシを含む。
【0022】
本発明において、ペプチドは、インビボまたはエクスビボで被検体に投与することができる。さらに、本発明はまた、肺癌を処置または予防するための免疫原性組成物を製造するためのSEQ ID NO:8、67、および89のアミノ酸配列(ならびにそれらの変異体)を含むペプチドから選択されるノナペプチドまたはデカペプチドの使用を提供する。
【0023】
TTK-567、KOC1-508、およびURLC10-177の相同性分析により、それらが、いかなる公知のヒト遺伝子産物由来のペプチドとも有意な相同性をもたないことが実証されている。従って、これらの分子に対する免疫療法での未知のまたは望ましくない免疫応答の可能性は、著しく低減される。
【0024】
HLA抗原に関して、日本人集団内で高く発現されているA-24型の使用は、効果的な結果を得るのに有利であり、A-2402のようなサブタイプの使用はよりいっそう好ましい。典型的には、臨床では、処置を必要とする患者のHLA抗原の型は前もって調べられ、これにより該抗原に対する高レベルの結合親和性をもつペプチド、または抗原提示による細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能をもつペプチドの適切な選択が可能になる。さらに、高い結合親和性およびCTL誘導能を示すペプチドを得るために、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、除去、または付加が、天然に存在するTTK、URLC10、およびKOC1の部分的ペプチドのアミノ酸配列に基づいて行われうる。本明細書において、「数個の」という用語は、5個またはそれ未満、より好ましくは3個またはそれ未満を指す。さらに、天然で示されるペプチドに加えて、HLA抗原への結合により示されるペプチドの配列の規則性は既知であるため(Kubo RT, et al., (1994) J. Immunol., 152, 3913-24; Rammensee HG, et al., (1995) Immunogenetics. 41:178-228; Kondo A, et al., (1995) J. Immunol. 155:4307-12)、そのような規則性に基づいた改変を、本発明の免疫原性ペプチドに対して行うことができる。例えば、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンで置換されている、高いHLA-24結合親和性を示すペプチドは、有利に用いられうる。同様に、C末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンで置換されているペプチドもまた、有利に用いられうる。
【0025】
しかしながら、ペプチド配列が、異なる機能をもつ内因性または外因性のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一である場合、特定の物質に対する自己免疫異常またはアレルギー症状のような副作用が引き起こされうる。それゆえに、免疫原性配列が公知のタンパク質のアミノ酸配列に一致する状況は避けることが好ましい。この状況は、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を行うことにより避けられうる。相同性検索で、1個、2個、または数個のアミノ酸が異なるペプチドが存在しないことが確認される場合、例えば、HLA抗原との結合親和性を増加させる、および/またはCTL誘導能を増加させる上記のアミノ酸配列の改変による危険性が避けられうる。
【0026】
上記のようなHLA抗原に対する高い結合親和性をもつペプチドは、癌ワクチンとして大いに効果的であることが期待されるが、高い結合親和性の存在を指標とし、それに応じて選択される候補ペプチドは、実際のCTL誘導能の存在について調べる必要がある。CTL誘導能は、ヒトMHC抗原を有する抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞)、またはより具体的には、ヒト末梢血単核白血球由来の樹状細胞を誘導し、関心の対象のペプチドによる刺激後、CD8陽性細胞と混合し、標的細胞に対する細胞傷害活性を測定することにより確認されうる。反応系として、ヒトHLA抗原を発現させるように作製されたトランスジェニック動物(例えば、BenMohamed L, et al., (2000) Hum. Immunol. 61(8):764-79 Related Articles, Books, Linkoutに記載)が用いられうる。例えば、標的細胞は、51Crなどで放射標識することができ、細胞傷害活性は、標的細胞から放出された放射能から計算することができる。あるいは該標的細胞は、固定化ペプチドを有する抗原提示細胞の存在下でCTLにより産生および放出されたIFN-γを測定し、抗IFN-γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻害ゾーンを可視化することにより調べることができる。
【0027】
上記のようにペプチドのCTL誘導能を調べた結果として、HLA抗原に対する高い結合親和性をもつペプチドは必ずしも高い誘導能をもつとは限らないことが発見された。しかしながら、SYRNEIAYL(SEQ ID NO:8)、RYCNLEGPPI(SEQ ID NO:67)、KTVNELQNL(SEQ ID NO:89)により示されたアミノ酸配列を含むペプチドから選択されたノナペプチドまたはデカペプチドは、特に高いCTL誘導能を示した。
【0028】
上記のように、本発明は、細胞傷害性T細胞誘導能をもつペプチド、すなわち、SEQ ID NO:8、67、もしくは89のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されているアミノ酸配列)を含むペプチドを提供する。SEQ ID NO:8、67、89に示される9アミノ酸もしくは10アミノ酸を含むアミノ酸配列またはそれらの変異体は、別の内因性タンパク質と関連したアミノ酸配列と一致しないことが好ましい。特に、N末端から2番目のアミノ酸におけるフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンへのアミノ酸置換、またはC末端アミノ酸におけるフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンへのアミノ酸置換、ならびにN末端および/もしくはC末端における1〜2アミノ酸のアミノ酸付加が、好ましい例である。
【0029】
本発明のペプチドは、周知の技術を用いて調製してもよい。例えば、該ペプチドは、組換えDNA技術または化学合成のいずれかを用いて、合成的に調製することができる。本発明のペプチドは、個々に、または2つもしくはそれ以上のペプチドを含むより長いポリペプチドとして、合成されうる。本発明のペプチドは、好ましくは単離される、すなわち、他の天然に存在する宿主細胞タンパク質およびそれらの断片を実質的に含まない。
【0030】
本発明のペプチドは、改変が本明細書に記載されているようなペプチドの生物活性を破壊しない限りにおいて、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化のような改変を含みうる。他の改変は、例えば、ペプチドの血清半減期を増加させるために用いることができるD-アミノ酸または他のアミノ酸模倣体の取り込みを含む。
【0031】
本発明のペプチドは、インビボでCTLを誘導しうる癌ワクチンとして用いる本発明のペプチドの2つまたはそれ以上を含む組み合わせとして調製することができる。該ペプチドは、カクテルであってもよく、または標準的な技術を用いて互いに結合させてもよい。例えば、該ペプチドは、単一のポリペプチド配列として発現しうる。組み合わせにおける該ペプチドは、同じまたは異なりうる。本発明のペプチドを投与することにより、ペプチドは、抗原提示細胞のHLA抗原上において高密度で提示され、続いて、示されたペプチドとHLA抗原の間で形成された複合体に対して特異的に反応するCTLを誘導する。あるいは、被検体から樹状細胞を取り出すことにより得られた、本発明のペプチドをその細胞表面上に固定化している抗原提示細胞が、本発明のペプチドにより刺激されうる。それぞれの被検体へのこれらの細胞の再投与はCTLを誘導し、その結果、標的細胞に対する攻撃性を増加させることができる。
【0032】
より具体的には、本発明は、本発明のペプチドを1つまたは複数含む、腫瘍を処置するための、または腫瘍の増殖、転移などを予防するための薬物を提供する。本発明のペプチドは、肺癌のような腫瘍の処置において特に有用である。
【0033】
本発明のペプチドは、通常の製剤方法により製剤した薬学的組成物として被検体へ直接投与することができる。そのような場合、本発明のペプチドに加えて、薬物に通常用いられる担体、賦形剤などを、特別な制限なしに、必要に応じて含むことができる。本発明の免疫原性組成物は、肺癌を含む様々な腫瘍の処置および予防のために用いられうる。
【0034】
活性成分として本発明のペプチドを1つまたは複数含む、腫瘍の処置および/または予防のための免疫原性組成物はさらに、細胞性免疫を効果的に確立するためにアジュバントを含むことができる。あるいは、該組成物は抗腫瘍剤のような他の活性成分と共に投与されうる。適切な製剤には顆粒も含まれる。適切なアジュバントは、文献(Johnson AG. (1994) Clin. Microbiol. Rev., 7:277-89)に記載されている。例示的なアジュバントは、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびミョウバンを含むが、これに限定されない。さらに、リポソーム製剤、薬物が直径数μmのビーズへ結合している顆粒製剤、および脂質が前記ペプチドに結合している製剤が、便利に用いられうる。投与の方法は、経口投与、皮内注射、皮下注射、静脈内注射などであってもよく、全身投与または標的腫瘍の付近への局所的投与を含みうる。本発明のペプチドの用量は、処置すべき疾患、患者の年齢、体重、投与の方法などにより適切に調整することができる。用量は、普通、0.001mg〜1000mg、好ましくは0.01mg〜100mg、より好ましくは0.1mg〜10mgであり、好ましくは数日に1回から数ヶ月に1回投与されるが、当業者は適切な用量および投与の方法を容易に選択することができ、これらのパラメーターの選択および最適化は、十分に通常の技術の範囲内である。
【0035】
本発明はさらに、本発明のペプチドとHLA抗原の間で形成された複合体をその表面上に提示するエキソソームと呼ばれる細胞内小胞を提供する。エキソソームは、例えば、国際公開第平11-510507号および第2000-512161号の公開された日本語翻訳文に詳細に記載された方法を用いることにより調製することができ、好ましくは、処置および/または予防の標的である被検体から得られた抗原提示細胞を用いて調製される。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様に、癌ワクチンとして接種することができる。
【0036】
用いられるHLA抗原の型は、処置および/または予防を必要とする被検体のHLA抗原の型と一致しなければならない。例えば、日本人集団においては、HLA-A24、特にHLA-A2402が多くの場合適切である。
【0037】
いくつかの態様において、本発明のワクチン組成物は、細胞傷害性Tリンパ球を初回抗原刺激する構成要素を含む。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLを初回抗原刺激する能力がある作用物質として同定されている。例えば、パルミチン酸残基は、リシン残基のε-アミノ基およびα-アミノ基に付着し、その後、本発明の免疫原性ペプチドに連結することができる。脂質化ペプチドは、その後、ミセルまたは粒子に入れる、リポソームに取り込ませる、またはアジュバント中に乳化するかのいずれかで、直接投与することができる。CTL応答の脂質初回抗原刺激のもう一つの例として、適切なペプチドに共有結合的に付着している場合、トリパルミトイル-S-グリセリルシステイニルセリル-セリン(P3CSS)のような大腸菌(E. coli)リポタンパク質を、CTLを初回抗原刺激するために用いることができる(例えば、Deres K, et al., (1989) Nature 342:561-4参照)。
【0038】
本発明の免疫原性組成物はまた、本明細書に開示された免疫原性ペプチドの1つまたは複数をコードする核酸を含みうる。例えば、Wolff JA et al., (1990) Science 247:1465-8; 米国特許第5,580,859号;第5,589,466号;第5,804,566号;第5,739,118号;第5,736,524号;第5,679,647号;およびWO 98/04720を参照。DNAに基づいた送達技術の例は、「裸のDNA」、促進化(ブピビカイン(bupivicaine)、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性送達を含む(例えば、米国特許第5,922,687号参照)。
【0039】
本発明の免疫原性ペプチドはまた、ウイルスベクターまたは細菌ベクターにより発現させることができる。適切な発現ベクターの例は、ワクシニアまたは鶏痘のような弱毒性ウイルス宿主を含む。このアプローチは、例えば、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させうるベクターとしてのワクシニアウイルスの使用を含む。宿主への導入により、組換えワクシニアウイルスは、免疫原性ペプチドを発現させ、それにより、免疫応答を誘発する。免疫化プロトコールにおいて有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。もう一つの適したベクターは、BCG(カルメット・ゲラン菌(Bacille Calmette Guerin))である。BCGベクターは、Stover CK, et al., (1991) Nature 31:456-60に記載されている。治療的投与または免疫化に有用な幅広い種類の他のベクター、例えば、アデノおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、解毒化炭疽毒素ベクターなどが、当技術分野において公知である。例えば、Shata MT, et al., (2000) Mol. Med. Today 6:66-71; Shedlock DJ and Weiner DB., et al., (2000) J. Leukoc. Biol. 68:793-806;およびHipp JD, et al., (2000) In Vivo 14:571-85を参照。
【0040】
本発明はまた、本発明の1つまたは複数のペプチドを用いて抗原提示細胞を誘導する方法を提供する。抗原提示細胞は、末梢血単球から樹状細胞を誘導し、その後それらを、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで本発明の1つまたは複数のペプチドと接触させる(刺激する)ことにより誘導することができる。本発明のペプチドを被検体へ投与する場合、本発明のペプチドを自身に固定化している抗原提示細胞を、被検体の身体において誘導する。あるいは、本発明のペプチドを抗原提示細胞へ固定化した後、細胞をワクチンとして被検体に投与することができる。例えば、エクスビボ投与は以下の段階を含みうる:
a:被検体から抗原提示細胞を収集する段階、および
b:段階aの抗原提示細胞を本発明のペプチドと接触させる段階。
【0041】
段階bにより得られた抗原提示細胞は、被検体へワクチンとして投与することができる。
【0042】
本発明はまた、高レベルの細胞傷害性T細胞誘導能をもつ抗原提示細胞を誘導するための方法であって、インビトロで、本発明の1つまたは複数のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を抗原提示細胞へ移入する段階を含む方法を提供する。導入された遺伝子は、DNAまたはRNAの形をとりうる。導入の方法について、特別な制限なしに、リポフェクション、エレクトロポレーション、およびリン酸カルシウム法のような、当分野において通常行われる様々な方法が適切に用いられうる。より具体的には、トランスフェクションは、Reeves ME, et al., (1996) Cancer Res., 56:5672-7; Butterfield LH, et al., (1998) J. Immunol., 161:5607-13; Boczkowski D, et al., (1996) J Exp. Med., 184:465-72; 国際公開第2000-509281号の公開された日本語翻訳文に記載されているように行われうる。遺伝子を抗原提示細胞へ移入することにより、遺伝子は、細胞において転写、翻訳などを受け、その後、得られたタンパク質は、MHCクラスIまたはクラスIIによりプロセシングされ、提示経路を通って進み、部分的ペプチドを提示する。
【0043】
本発明はさらに、本発明の1つまたは複数のペプチドを用いてCTLを誘導するための方法を提供する。本発明のペプチドが被検体に投与される場合、CTLは、被検体の身体において誘導され、腫瘍組織における肺癌細胞を標的とする免疫系の強さは、それにより増強される。あるいは、本発明のペプチドは、被検体由来の抗原提示細胞およびCD8陽性細胞または末梢血単核白血球がインビトロで本発明の1つまたは複数のペプチドと接触させられ(刺激され)、CTLを誘導した後、細胞が被検体へ戻される、エクスビボ治療方法との関連において用いられうる。例えば、方法は以下の段階を含みうる:
a:被検体から抗原提示細胞を収集する段階、
b:段階aの抗原提示細胞を本発明のペプチドと接触させる段階、
c:細胞傷害性T細胞を誘導するために、段階bの抗原提示細胞をCD8+ T細胞と混合し共培養する段階、および
d:段階cの共培養物からCD8+ T細胞を収集する段階。
【0044】
段階dにより得られた細胞傷害活性をもつCD8+ T細胞は、ワクチンとして被検体に投与することができる。
【0045】
本発明はさらに、本発明のペプチドを用いて誘導される単離された細胞傷害性T細胞を提供する。本発明の1つまたは複数のペプチドを提示する抗原提示細胞での刺激により誘導された細胞傷害性T細胞は、好ましくは、処置および/または予防の標的である被検体由来であり、単独で、または本発明の1つもしくは複数のペプチドまたは抗腫瘍活性をもつエキソソームを含む他の薬物と組み合わせて投与することができる。得られた細胞傷害性T細胞は、本発明のペプチド、または好ましくは誘導に用いられたものと同じペプチドを提示する標的細胞に対して特異的である。標的細胞は、TTK、URLC10、およびKOC1を内因的に発現させる細胞、またはTTK、URLC10、およびKOC1遺伝子がトランスフェクションされている細胞でありうる。これらのペプチドによる刺激により本発明のペプチドを細胞表面上に提示する細胞もまた、攻撃の標的になりうる。
【0046】
本発明はまた、HLA抗原と本発明の1つまたは複数のペプチドとの間で形成された複合体を提示する抗原提示細胞を提供する。本発明のペプチドまたはそのようなペプチドをコードするヌクレオチドとの接触を通して得られた抗原提示細胞は、好ましくは、処置および/または予防の対象である被検体に由来し、単独で、または本発明のペプチド、エキソソーム、もしくは細胞傷害性T細胞を含む他の薬物と組み合わせて、ワクチンとして投与することができる。
【0047】
本発明との関連において、「ワクチン」という用語(免疫原性組成物とも呼ばれる)は、動物への接種により、抗腫瘍免疫を誘導する、または肺癌を抑制する物質を指す。本発明により、SEQ ID NO:8、67、または89のアミノ酸配列を含むポリペプチドが、TTK、URLC10、またはKOC1を発現する肺癌細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導しうるHLA-A24拘束性エピトープペプチドであると示唆された。従って、本発明はまた、SEQ ID NO:8、67、もしくは89のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、除去、または付加を含む)を含むポリペプチドを用いて抗腫瘍免疫を誘導する方法を含む。一般的に、抗腫瘍免疫は、以下のような免疫応答を含む:
− TTK、URLC10、またはKOC1を発現する細胞を含む腫瘍に対する細胞傷害性リンパ球の誘導、
− TTK、URLC10、またはKOC1を発現する細胞を含む腫瘍を認識する抗体の誘導、および
− 抗腫瘍性サイトカイン産生の誘導。
【0048】
それゆえに、特定のペプチドが動物への接種によりこれらの免疫応答のいずれか1つを誘導する場合、そのペプチドは、抗腫瘍免疫誘導効果をもつと決定される。ペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、インビボまたはインビトロで、ペプチドに対する宿主における免疫系の応答を観察することにより、検出することができる。
【0049】
例えば、細胞傷害性Tリンパ球の誘導を検出するための方法は周知である。生体に侵入する異物は、抗原提示細胞(APC)の作用により、T細胞およびB細胞へ提示される。抗原特異的な様式でAPCにより提示された抗原に対して応答するT細胞は、抗原による刺激により、細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球またはCTLとも呼ばれる)へ分化し、その後増殖する;この過程は、本明細書では、T細胞の「活性化」と呼ばれる。それゆえに、特定のペプチドによるCTL誘導は、APCによりペプチドをT細胞へ提示させ、CTLの誘導を検出することにより評価することができる。さらに、APCは、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球、およびNK細胞を活性化する効果を有する。CD4+ T細胞はまた抗腫瘍免疫において重要であるため、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価することができる。
【0050】
樹状細胞(DC)をAPCとして用いるCTLの誘導作用を評価するための方法は、当技術分野において周知である。DCは、APC中で最も強いCTL誘導作用をもつ代表的なAPCである。この方法では、試験ポリペプチドを最初にDCに接触させ、その後、該DCをT細胞と接触させる。DCとの接触後の、対象となる細胞に対する細胞傷害性効果をもつT細胞の検出は、試験ポリペプチドが細胞傷害性T細胞を誘導する活性をもつことを示している。腫瘍に対するCTLの活性は、例えば、51Cr標識腫瘍細胞の溶解を指標として用いて検出することができる。あるいは、3H-チミジン取り込み活性またはLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞損傷の程度を評価することは周知である。
【0051】
DCとは別に、末梢血単核細胞(PBMC)もまた、APCとして用いられうる。CTLの誘導は、GM-CSFおよびIL-4の存在下でPBMCを培養することにより増強されることが報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびIL-7の存在下でPBMCを培養することにより誘導されることが示されている。
【0052】
これらの方法によりCTL誘導活性を有することが確認された試験ポリペプチドは、DC活性効果およびその後のCTL誘導活性をもつポリペプチドである。それゆえに、腫瘍細胞に対してCTLを誘導するポリペプチドは、肺癌に対するワクチンとして有用である。さらに、ポリペプチドと接触させることにより肺癌に対してCTLを誘導する能力を獲得したAPCは、肺癌に対するワクチンとして有用である。さらに、APCによるポリペプチド抗原の提示によって細胞傷害性を獲得したCTLもまた、肺癌に対するワクチンとして利用できる。APCおよびCTLによる抗腫瘍免疫を用いる肺癌についてのそのような治療方法は、細胞免疫療法と呼ばれる。
【0053】
一般的に、細胞免疫療法のためにポリペプチドを用いる場合、CTL誘導の効率は、異なる構造をもつ複数のポリペプチドを組み合わせ、それらをDCと接触させることにより、増加させることができる。それゆえに、タンパク質断片でDCを刺激する場合、複数の型の断片の混合物を用いることが有利である。
【0054】
ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導はさらに、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することにより確認することができる。例えば、ポリペプチドに対する抗体が、ポリペプチドで免疫された実験動物において誘導される場合、ならびに、腫瘍細胞の成長、増殖、および/または転移がそれらの抗体により抑制される場合、ポリペプチドは抗腫瘍免疫を誘導すると決定される。
【0055】
抗腫瘍免疫は、本発明のワクチンを投与することにより誘導することができ、抗腫瘍免疫の誘導は、肺癌の処置および予防を可能にする。肺癌に対する治療または肺癌の発症の予防は、肺癌細胞の成長の阻害、肺癌細胞の退縮、および肺癌細胞の発生の抑制を含みうる。肺癌をもつ個体の死亡率の減少、血液中の肺癌マーカーの減少、肺癌に伴う検出可能な症状の軽減などもまた、肺癌の治療または予防に含まれる。そのような治療的または予防的効果は、肺癌に対するワクチンの治療的または予防的効果がワクチン投与なしの対照と比較される場合に統計学的に有意であること、例えば5%またはそれ未満の有意レベルで観察されることが好ましい。例えば、スチューデントt検定、マン-ホイットニーU検定、またはANOVAが、統計学的有意性を決定するために用いられうる。
【0056】
免疫学的活性をもつ上記のペプチド、またはそのようなペプチドをコードするポリヌクレオチドもしくはベクターは、アジュバントと組み合わせられうる。アジュバントは、免疫学的活性をもつペプチドと共に(または連続的に)投与される場合、ペプチドに対する免疫応答を増強する化合物を指す。適切なアジュバントの例は、コレラ毒素、サルモネラ毒素、ミョウバンなどを含むが、それらに限定されない。さらに、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体と適切に組み合わせられうる。そのような担体の例は、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液などである。さらに、ワクチンは、必要に応じて、安定剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤などを含みうる。ワクチンは、全身的にまたは局所的に投与される。ワクチン投与は、単回投与により行われるか、または複数回投与により追加免疫されうる。
【0057】
本発明のワクチンとしてAPCまたはCTLを用いる場合、肺癌は、例えば、エクスビボ方法により処置または予防することができる。より具体的には、処置または予防を受ける被検体のPBMCを収集し、エクスビボで本発明のペプチドと接触させる。APCまたはCTLの誘導後、細胞を被検体に投与する。APCはまた、ペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMCへ導入することにより誘導することができる。インビトロで誘導されたAPCまたはCTLは、投与の前にクローニングすることができる。標的細胞を損傷する高い活性をもつ細胞をクローニングするおよび増殖させることにより、細胞免疫療法をより効果的に行うことができる。さらに、この様式で単離されたAPCおよびCTLは、細胞が由来している個体に対する細胞免疫療法だけでなく、他の個体における類似した型の疾患に対する細胞免疫療法にも用いられうる。
【0058】
本発明の局面は、以下の実施例において説明され、その実施例は、本発明を例証するため、および同じものの作製および使用において当業者を援助するためにのみ示される。本実施例は、いかなる形であれ本発明の範囲を別に限定することを意図していない。
【0059】
本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において用いることができるが、適切な方法および材料は以下に記載されている。
【0060】
実施例
本発明は以下の実施例により例証されるが、それらに限定されない。
【0061】
材料および方法
細胞株
A24LCL細胞(HLA-A24/24)およびEHM(HLA-A3/3)、ヒトBリンパ芽球様細胞株は、Takara Shuzo Co., Ltd.(Otsu, Japan)から寄贈された。A24LCL細胞は、ペプチド媒介性細胞傷害性アッセイに用いた。肺癌細胞株TE1(HLA-A2402+)、TE13(HLA-A2402-)、およびPC9(HLA-A2402-)は、ATCCから購入した。肺癌細胞株におけるTTK、URLC10、およびKOC1の発現レベルは、cDNAマイクロアレイおよびRT-PCRにより測定され、TE1における3つの遺伝子すべての強い発現、PC9におけるTTKおよびKOC1の発現、ならびにTE13におけるURLC10の発現が明らかにされた(データ非呈示)。
【0062】
TTK、URLC10、およびKOC1に由来するペプチド候補の選択
HLA-A24分子に結合するTTK、URLC10、またはKOC1由来の9-merおよび10-merペプチドを、結合予測ソフトウェア「BIMAS」(http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken_parker_comboform)(Parker KC, et al., (1994) J Immunol. 152(1):163-75; Kuzushima K, et al., (2001) Blood. 98(6):1872-81)により予測した。該ペプチドを標準的な固相合成法によるMimotopes(San Diego, LA)により合成し、逆相HPLCにより精製した。ペプチドの純度(>90%)および同一性はそれぞれ分析的HPLCおよび質量分析法により測定した。ペプチドを、20mg/mlでジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、-80℃で保存した。
【0063】
インビトロCTL誘導
単球由来樹状細胞(DC)を、HLA上に提示されるペプチドに対するCTL応答を誘導するための抗原提示細胞(APC)として用いた。DCは、他で記載されているように(Nukaya I et al., (1999) Int. J. Cancer 80, 92-7, Tsai V et al., (1997) J. Immunol 158:1796-802)、インビトロで作製した。簡単に述べると、正常なボランティア(HLA-A*2402)からFicoll-Paque(Pharmacia)溶液により単離された末梢血単核細胞(PBMC)を、それらを単球画分について濃縮するために、プラスチック組織培養フラスコ(Becton Dickinson)への粘着性により分離した。単球の濃縮集団を、2%加熱不活性化自己血清(AS)を含むAIM-V(Invitrogen)における1000U/mlのGM-CSF(Kirin Brewery Companyより提供)および1000U/mlのIL-4(Genzyme)の存在下で培養した。培養7日後、サイトカイン産生DCを、AIM-Vにおいて20℃で4時間、3μg/mlのβ2-ミクログロブリンの存在下で、20μg/mlのHLA-A24結合ペプチドを用いてパルスした。続いてこれらのペプチドをパルスしたDCを、その後、照射し(5500rad)、Dynabeads M-450 CD8(Dynal)およびDETACHa BEAD(商標)(Dynal)でのポジティブ選択により得られた自己CD8+ T細胞と1:20の比で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)に配置した;各ウェルには、1.5×104個のペプチドをパルスしたDC、3×105個のCD8+ T細胞、および0.5mlのAIM-V/2%ASにおける10ng/mlのIL-7(Genzyme)を入れた。3日後、これらの培養物に、IL-2(CHIRON)を20IU/mlの最終濃度まで追加した。7日目および14日目に、T細胞を、自己ペプチドをパルスしたDCでさらに再刺激した。DCは、上記と同じ方法により毎回調製した。細胞傷害性は、21日目における3回目のペプチド刺激後に、ペプチドをパルスしたA24LCL細胞に対して試験した。
【0064】
CTL増殖手順
CTLを、Riddell SR, et al.(Walter EA et al., (1995) N Engl J Med 333:1038-44; Riddel et al., (1996) Nature Med. 2:216-23)により記載された方法と類似の方法を用いた培養で増殖させた。合計5×104個のCTLを、40ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下で、25×106個の照射(3300rad)されたPBMCおよび5×106個の照射(8000rad)されたEHM細胞を含む25mlのAIM-V/5%ASに再懸濁した。培養の開始から1日後、120IU/mlのIL-2を培養物に加えた。培養物に、5日目、8日目、および11日目に30IU/mlのIL-2を含む新鮮なAIM-V/5%ASを供給した。
【0065】
CTLクローンの確立
希釈は、96ウェルの丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)において0.3個、1個、および3個のCTL/ウェルをもつように行なった。CTLを、7×104細胞/ウェルの同種異系PBMC、1×104細胞/ウェルのEHM、30ng/mlの抗CD3抗体、および125U/mlのIL-2と共に、合計150μl/ウェルの5%AS含有AIM-Vにおいて、培養した。10日後、50μl/ウェルのIL-2を、IL-2が最終濃度において125U/mlになるように培地へ加えた。CTLの細胞傷害活性を14日目に試験し、CTLクローンを上記と同じ方法を用いて増殖させた。
【0066】
細胞傷害性アッセイ
標的細胞を、100μCiのNa251CrO4で、CO2インキュベーター(Perkin Elmer Life Sciences)において37℃で1時間標識した。ペプチドをパルスした標的を、標識前に、細胞を20μg/mlのペプチドと37℃で16時間インキュベートすることにより調製した。標識した標的細胞をすすぎ、丸底マイクロタイタープレートにおいて、最終容量を0.2mlとしてエフェクター細胞と混合した。プレートを、細胞対細胞の接触を増加させるために遠心分離し(800×gで4分間)、CO2インキュベーター内に37℃で配置した。4時間のインキュベーション後、0.1mlの上清を各ウェルから収集し、放射能をガンマカウンターで測定した。
【0067】
特定の細胞傷害性のパーセンテージは、以下の式により特定の51Cr放出のパーセンテージを計算することにより決定した:
{(試験試料放出のcpm−自然放出のcpm)/(最大放出のcpm−自然放出のcpm)}×100
【0068】
自然放出は、エフェクター細胞の非存在下で標的細胞のみをインキュベートすることにより測定し、最大放出は、標的細胞を1N HClとインキュベートすることにより得た。すべての測定は2度ずつ行ない、平均値の標準誤差は一貫して平均値の10%未満であった。
【0069】
抗原特異性は、51Cr標識腫瘍細胞の認識について競合する、ペプチドを用いてパルスした(20μg/ml、37℃で16時間)、またはパルスしていない非標識A24LCL細胞を利用した非放射性標的阻害アッセイにより確認された。
【0070】
モノクローナル抗体(mAb)(マウス抗MHC-クラスI mAb、抗MHC-クラスII mAb、抗CD8 mAb、および抗CD4 mAb)を用いた細胞傷害性のブロッキングアッセイを、HLA拘束様式を確認するために行なった。抗マウスIgG1 mAb、抗マウスIgG2a mAbをアイソタイプとして用いた。
【0071】
結果
TTK、URLC10、またはKOC1由来のHLA-A24結合ペプチドの予測
表1は、TTK(GenBankアクセッション番号NM_003318;SEQ ID No.1、2)についてのHLA-A*2402結合ペプチドを結合親和性の順に示す。表1AはTTK由来の9-merペプチドを示し、表1BはTTK由来の10-merペプチドを示す。表2は、URLC10(GenBankアクセッション番号AB105187;SEQ ID No.3、4)についてのHLA-A*2402結合ペプチドを結合親和性の順に示す。表2AはURLC10由来の9-merペプチドを示し、表2BはURLC10由来の10-merペプチドを示す。表3はKOC1(GenBankアクセッション番号NM_006547;SEQ ID No.5、6)についてのHLA-A*2402結合ペプチドを結合親和性の順に示す。表3AはKOC1由来の9-merペプチドを示し、表3BはKOC1由来の10-merペプチドを示す。
【0072】
(表1A) TTK由来のHLA-A24結合性9-merペプチド
開始位置は、TTKのN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。
【0073】
(表1B) TTK由来のHLA-A24結合性10-merペプチド
開始位置は、TTKのN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
【0074】
(表2A) URLC10由来のHLA-A24結合性9-merペプチド
開始位置は、URLC10のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。
【0075】
(表2B) URLC10由来のHLA-A24結合性10-merペプチド
開始位置は、URLC10のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。N.S.は「合成されていない」を示す。
【0076】
(表3A) KOC1由来のHLA-A24結合性9-merペプチド
開始位置は、KOC1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。
【0077】
(表3B) KOC1由来のHLA-A24結合性10-merペプチド
開始位置は、KOC1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。
【0078】
予測されたペプチドを用いるT細胞の刺激
TTK、URLC10、またはKOC1由来のペプチドについてのCTLを、上記の「材料および方法」の段落に記載された方法で作製した。結果として得られた、検出可能な細胞傷害活性を示すCTLを増殖させ、ペプチドをパルスしていない標的に対する活性と比較して、ペプチドをパルスした標的に対してより高い細胞傷害活性を示すCTLクローンを確立した。
【0079】
HLA-A24結合ペプチドTTK-567(SYRNEIAYL(SEQ ID No.8))(図1)、URLC10-177(RYCNLEGPPI(SEQ ID No.67))(図2)、またはKOC1-508(KTVNELQNL(SEQ ID No.89))(図3)により刺激されたCTLクローンは、いかなるペプチドもパルスしていない標的に対していかなる有意な細胞傷害活性も示すことなく、ペプチドをパルスした標的に対して強力な細胞傷害活性を示した。
【0080】
TTK、URLC10、またはKOC1を内因的に発現する肺癌細胞株に対する細胞傷害活性
上記の確立されたCTLクローンを、TTK、URLC10、またはKOC1を内因的に発現する腫瘍細胞を認識し、殺すそれらの能力について調べた。TTKおよびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性を、TTK-567により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。TTKを内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、PC9細胞を用いた。CTLクローンは、TTKおよびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、TTKを発現するがHLA-A24を発現しないPC9細胞に対して、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった(図4)。URLC10およびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性を、URLC10-177により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。URLC10を内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、TE13細胞を用いた。CTLクローンは、URLC10およびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、URLC10を発現するがHLA-A24を発現しないTE13細胞に対して、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった(図5)。KOC1およびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性を、KOC1-508により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。KOC1を内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、PC9細胞を用いた。CTLクローンは、KOC1およびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、KOC1を発現するがHLA-A24を発現しないPC9細胞に対して、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった(図6)。
【0081】
上記のCTLクローンは、TTK、URLC10、およびKOC1、ならびにHLA-A24を発現する細胞株であるTE1肺癌細胞株に対して、強力な細胞傷害活性を示した。他方、TTK-567またはKOC1-508に対するCTLクローンは、TTKおよびKOC1を発現するがHLA-A24を発現しない細胞株であるPC9肺癌細胞株に対して、細胞傷害活性を示さなかった;同様に、URLC10-177に対して産生されたCTLクローンは、URLC10を発現するがHLA-A24を発現しない細胞株であるTE13肺癌細胞株に対して、細胞傷害活性を示さなかった。これらのCTLクローンはまた、HLA-A24を発現するがTTK、URLC10、またはKOC1を発現しない細胞であるA24LCL細胞に対して、細胞傷害活性を示さない(図1、2、および3)。これらの結果は、TTK-567、URLC10-177、およびKOC1-508が、天然で、HLA-A24分子と共に腫瘍細胞表面に発現され、CTLにより認識されたことを明らかに実証している。
【0082】
非放射性標的阻害アッセイ
非放射性標的阻害アッセイを、上記の「材料および方法」の段落に記載されているように、CTLクローンの特異性を確認するために行なった。Na251CrO4により標識されたTE1細胞を放射性標的として調製し、一方TTK-567ペプチドをパルスしたA24LCL細胞を非放射性標的(阻害剤)として用いた。TTK-567 CTLクローンのTE1細胞に対する細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により特異的に阻害された(図7)。URLC10に関して、Na251CrO4により標識されたTE1細胞を放射性標的として調製し、一方URLC10-177ペプチドをパルスしたA24LCL細胞を非放射性標的(阻害剤)として用いた。URLC10-177 CTLクローンのTE1に対する細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により特異的に阻害された(図8)。上記のように、Na251CrO4により標識されたTE1細胞を放射性標的として調製し、一方KOC1-508ペプチドをパルスしたA24LCL細胞を非放射性標的(阻害剤)として用いた。E/T比は20に固定した。KOC1-508 CTLクローンのTE1細胞に対する細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により特異的に阻害された(図9)。標的TE1細胞に対する特異的な細胞傷害性は、ペプチドをパルスした非放射性標的が様々な比率でアッセイに添加された場合有意に阻害されたが、非放射性標的の添加では全く阻害されなかった。これらの結果は、E/T比が20での特異的な溶解阻害のパーセンテージとして示された。
【0083】
T細胞表面抗原に結合する抗体によるCTL活性のブロッキング
観察される殺活性が細胞傷害性T細胞により媒介されているかどうかを見るために、CTLの機能に関連したT細胞表面抗原を認識する抗体を用いて、抗体の殺活性への効果を調べた。CTL活性は、図10に示されたTTK-567 CTLクローン、図11におけるURLC10-177 CTLクローン、および図12におけるKOC1-508 CTLクローンのように、HLAクラスIおよびCD8を認識する抗体の添加により明らかにブロックされたが、HLAクラスIIまたはCD4に対する抗体の添加の影響はほとんど受けない。これらの結果は、肺癌細胞に対するCTLクローンの細胞傷害活性がHLAクラスI拘束性およびCD8媒介性の細胞傷害活性であることを示している。
【0084】
抗原ペプチドの相同性分析
TTK-567、URLC10-177、またはKOC1-508に対して確立されたCTLクローンは強力な細胞傷害活性を示した。従って、TTK-567、URLC10-177、またはKOC1-508の配列が、ヒト免疫系を感作することが知られている他の分子由来のペプチドと相同的である可能性がある。この可能性を排除するために、相同性分析を、BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)(Altschul SF, et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-402; Altschul SF et al., (1990) J Mol. biol. 215(3):403-10)を用いて、該ペプチド配列をクエリとして行ない、有意な相同性をもつ配列がないことが明らかになった。これらの結果は、TTK-567、URLC10-177、およびKOC1-508の配列が独特であり、該ペプチドが、関連していない分子のいずれに対しても、意図していない免疫学的応答を生じる可能性がほとんどないことを示している。
【0085】
考察
新しいTAA、特に、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導するTAAの同定により、様々な型の癌においてペプチドワクチン接種ストラテジーの臨床での応用のさらなる進歩が保証される(Boon T. et al., (1996) J Exp Med 183:725-9; van der Bruggen P et al., (1991) Science 254:1643-7; Brichard V et al., (1993) J Exp Med 178:489-95; Kawakami Y et al., (1994) J Exp Med 180:347-52; Shichijo S et al., (1998) J Exp Med 187:277-88; Chen Y.T. et al., (1997) Proc. Natl. Acd. Sci. USA, 94:1914-8; Harris CC, (1996) J Natl Cancer Inst 88:1442-5; Butterfield LH et al., (1999) Cancer Res 59:3134-42; Vissers JL et al., (1999) Cancer Res 59:5554-9; van der Burg SH et al., (1996) J. Immunol 156:3308-14; Tanaka F et al., (1997) Cancer Res 57:4465-8; Fujie T et al., (1999) Int J Cancer 80:169-72; Kikuchi M et al., (1999) Int J Cancer 81:459-66; Oiso M et al., (1999) Int J Cancer 81:387-94)。
【0086】
cDNAマイクロアレイ技術は、悪性細胞の遺伝子発現の包括的プロファイルを明らかにすることができ(Okabe H. et al., (2001) Cancer Res., 61, 2129-37; Lin Y-M. et al., (2002) Oncogene, 21:4120-8; Hasegawa S. et al., (2002) Cancer Res 62:7012-7)、潜在的なTAAの同定に有用性を見出す。肺癌において上方制御されている転写物の中で、3つの新規なヒト遺伝子はそれぞれTTK、URLC10、およびKOC1と名付けられており、これらの技術を用いて同定された。
【0087】
上記で実証されているように、TTK、URLC10、およびKOC1は、肺癌において過剰発現し、正常組織においては最小限の発現を示す。さらに、これらの遺伝子は、細胞増殖に関連した重要な機能をもつことが示されている(WO2004/031413参照)。従って、TTK、URLC10、およびKOC1由来のペプチドは、TAAエピトープとして働き、その結果、癌細胞に対して有意かつ特異的な免疫応答を誘導するために用いることができる。
【0088】
従って、TTK、URLC10、およびKOC1は新規なTAAであるため、これらのエピトープペプチドを用いる癌ワクチンは、肺癌または前記の分子を発現する他の癌に対する免疫療法用物質として有用でありうる。
【0089】
産業上の利用可能性
本発明は、新しいTAA、特に、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導するTAAを同定している。そのようなTAAにより、肺癌におけるペプチドワクチン接種ストラテジーの臨床での応用のさらなる進歩が保証される。
【0090】
本明細書に引用されたすべての特許、特許出願、および刊行物は、参照により組み入れられている。
【0091】
本発明は、詳細にかつその特定の態様に関して記載されているが、前述の説明は事実上例示的および説明的なものであり、本発明およびその好ましい態様の例証が意図されていることが理解されるべきである。日常的な実験を通して、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更および改変がそこに成されうることを容易に認識すると思われる。従って、本発明は上記説明によってではなく、特許請求の範囲およびそれに相当する物によって定義されることが意図される。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物科学の分野、より具体的には、癌治療の分野に関する。特に、本発明は、癌ワクチンとして非常に効果的である新規なペプチド、ならびにこれらのペプチドを含む腫瘍を処置および予防するための薬物に関する。なお、本出願は、2005年2月25日に出願された米国仮出願第60/656,857号の恩典を主張し、その内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
背景技術
肺癌は、最も一般的な致死性ヒト腫瘍の一つである。肺癌の発生および進行に関連した多くの遺伝子変化が報告されている。遺伝子変化は、予後の努力、および転移リスクまたは特定の処置に対する応答の予測を助けることができる。(Mitsudomi T et al., (2000) Clin Cancer Res 6:4055-63; Niklinski et al., (2001) Lung Cancer. 34 Suppl 2:S53-8; Watine J. (2000) Bmj 320:379-80)。非小細胞肺癌(NSCLC)は、肺腫瘍の80%近くを占める、肺癌の群を抜いて最も多く見られる型である(Society, A.C. Cancer Facts and Figures 2001, 2001)。10年全生存率は、集学的治療(multi-modality therapy)における最近の進歩にもかかわらず、NSCLCの大部分が末期まで診断されないため、10%程度のままである(Fry, W.A. et al., (1999) Cancer. 86:1867-76)。白金をベースとした化学療法措置は、NSCLCの処置のための参考標準とみなされているが、これらの薬物は、進行したNSCLC患者の生存を約6週間延長することができるだけである(Non-small Cell Lung Cancer Collaborative Group, (1995) BMJ. 311:899-909)。チロシンキナーゼ阻害剤を含む多数の標的治療が、この疾患について研究されている。しかしながら、今までに有望な結果が得られたのは限られた数の患者においてのみであり、一部のレシピエントは重篤な有害反応に苦しんでいる(Kris MG, et al., (2002) Proc Am Soc Clin Oncol. 21:292a(A1166))。
【0003】
CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、MHCクラスI分子上に提示された腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープペプチドを認識し、腫瘍細胞を溶解することが実証されている。MAGEファミリーがTAAの最初の例として発見されて以来、多くの他のTAAが免疫学的アプローチを用いて発見されている(Boon T. (1993) Int J Cancer 54:177-80; Boon T. et al., (1996) J Exp Med 183:725-9; van der Bruggen P et al., (1991) Science 254:1643-47; Brichard V et al., (1993) J Exp Med 178:489-95; Kawakami Y et al., (1994) J Exp Med 180:347-52)。それらの一部は、現在免疫療法の標的として臨床開発中である。これまで発見されたTAAは、MAGE(van der Bruggen P et al., (1991) Science 254:1643-7)、gp100(Kawakami Y et al., (1994) J Exp Med 180:347-52)、SART(Shichijo S et al., (1998) J Exp Med 187:277-88)、およびNY-ESO-1(Chen Y.T. et al., (1997) Proc. Natl. Acd. Sci. USA, 94:1914-8)を含む。他方、腫瘍細胞においていくらか特異的に過剰発現していることが実証された特定の遺伝子産物は、細胞性免疫応答を誘導する標的として認識されることが示されている。そのような遺伝子産物は、p53(Umano Y et al., (2001) Br J Cancer, 84:1052-7)、HER2/neu(Tanaka H et al., (2001) Br J Cancer, 84:94-9)、CEA(Nukaya I et al., (1999) Int. J. Cancer 80, 92-7)などを含む。
【0004】
TAAに関する基礎的および臨床的な研究における著しい進歩にもかかわらず(Rosenberg SA et al., (1998) Nature Med, 4:321-7; Mukherji B. et al., (1995) Proc Natl Acad Sci USA, 92:8078-82; Hu X et al., (1996) Cancer Res, 56:2479-83)、肺癌のような腺癌の処置に適した候補TAAの非常に限られた数のみが利用可能である。癌細胞に豊富に発現されており、その発現が癌細胞に限定されているTAAは、免疫療法の標的として有望な候補であると思われる。
【0005】
特定の健康なドナー由来のペプチド刺激による末梢血単核細胞(PBMC)は、ペプチドに応答して有意なレベルのIFN-γを産生するが、HLA-A24またはHLA-A0201拘束性様式で腫瘍細胞に対して細胞傷害性をめったに発揮しないことが、51Cr放出アッセイにおいて繰り返し示されている(Kawano K et al., (2000) Cancer Res 60:3550-8; Nishizaka et al., (2000) Cancer Res 60: 4830-7; Tamura et al., (2001) Jpn J Cancer Res 92:762-7)。しかしながら、HLA-A24およびHLA-A0201の両方は、日本人集団および白人集団において一般的なHLA対立遺伝子である(Date Y et al., (1996) Tissue Antigens 47:93-101; Kondo A et al., (1995) J Immunol 155:4307-12; Kubo RT et al., (1994) J Immunol 152:3913-24; Imanishi et al., Proceeding of the eleventh International Histocompatibility Workshop and Conference Oxford University Press, Oxford, 1065 (1992); Williams F et al., (1997) Tissue Antigen 49:129)。従って、これらのHLA対立遺伝子により提示される癌の抗原性ペプチドは、日本人および白人の患者での癌の処置に特に有用でありうる。さらに、インビトロでの低親和性CTLの誘導は通常、これらのCTLを効果的に活性化する抗原提示細胞(APC)上に高レベルの特定のペプチド/MHC複合体を生じる高濃度でのペプチドの使用に起因することが知られている(Alexander-Miller et al., (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93:4102-7)。
【0006】
cDNAマイクロアレイ技術における最近の発達により、正常細胞と比較した悪性細胞の遺伝子発現の包括的なプロファイルの構築が可能になった(Okabe, H. et al., (2001) Cancer Res., 61, 2129-37; Lin YM. et al., (2002) Oncogene, 21:4120-8; Hasegawa S. et al., (2002) Cancer Res 62:7012-7)。このアプローチにより、癌細胞の複雑な性質および発癌の機構の理解が可能になり、かつ腫瘍において発現の調節が解除されている遺伝子の同定が促進される(Bienz M. et al., (2000) Cell 103, 311-320)。肺癌において一般的に上方制御されていると確認された転写物の中で、TTK(TTKプロテインキナーゼ;GenBankアクセッション番号NM_003318; SEQ ID NO:1、2)、URLC10(異なって発現されるCO16遺伝子についてのcDNA;GenBankアクセッション番号AB105187; SEQ ID NO:3、4)、およびKOC1(IGF II mRNA結合タンパク質3;GenBankアクセッション番号NM_006547; SEQ ID NO:5、6)は、本発明者らにとって特に関心があり、分析された症例の80%より多くにおいて、肺癌組織の腫瘍細胞で特異的に上方制御されている。対照的に、ノーザンブロット分析により、これらの遺伝子産物が正常な重要臓器において見出されないことが実証された(WO2004/031413参照、その全内容は本明細書に参照により組み入れられている)。従って、TTK、URLC10、およびKOC1由来の免疫原性ペプチドは、これらの抗原を発現する腫瘍細胞を殺す事において有用性を見出しうる。本発明は、これらおよび他の必要性に取り組む。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
3つの遺伝子、すなわちTTK(TTKプロテインキナーゼ)、URLC10(異なって発現されるCO16遺伝子についてのcDNA)、およびKOC1(IGF II mRNA結合タンパク質3)が、肺癌において上方制御されることが確認されている。該遺伝子は、23,040個の遺伝子を含むゲノムワイドcDNAマイクロアレイでの遺伝子発現プロファイリングを用いて同定された。上記で考察されているように、TTK、URLC10、およびKOC1の発現は、肺癌をもつ患者の80%より多くにおいて腫瘍細胞で特異的に上方制御されているが、他の正常な重要臓器においては存在しない。
【0008】
本発明は、対応する分子に特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘発するこれらの遺伝子(TTK、URLC10、およびKOC1)の遺伝子産物のエピトープペプチドの同定に、少なくとも一部、基づいている。下記で詳細に考察されているように、健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)は、TTK、URLC10、またはKOC1由来のHLA-A*2402結合性候補ペプチドを用いて刺激された。CTLクローンは、その後、候補ペプチドのそれぞれがパルスされたHLA-A24陽性標的細胞に対する特異的な細胞傷害性に関して確立された。CTLクローンのさらなる分析により、ペプチドをパルスした標的細胞だけでなく、TTK、URLC10、またはKOC1を内因的に発現させる腫瘍細胞に対する強力な細胞傷害活性が示された。さらに、非放射性標的阻害アッセイおよび抗体ブロッキングアッセイの両方により、CTL細胞クローンはMHCクラスI-ペプチド複合体を特異的に認識したことが明らかにされた。これらの結果により、これらのペプチドが、TTK、URLC10、またはKOC1を発現させる肺癌細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導することができるHLA-A24拘束性エピトープペプチドであることが実証されている。
【0009】
従って、本発明は、本発明のTTKポリペプチド、URLC10ポリペプチド、およびKOC1ポリペプチドを被検体に投与する段階を含む、被検体において肺癌を処置または予防するための方法を提供する。抗腫瘍免疫は、これらのポリペプチドの投与により誘導される。従って、本発明は、TTKポリペプチド、URLC10ポリペプチド、およびKOC1ポリペプチドを被検体に投与する段階を含む被検体において抗腫瘍免疫を誘導するための方法、加えて、TTKポリペプチド、URLC10ポリペプチド、およびKOC1ポリペプチドを含む肺癌を処置または予防するための薬学的組成物を提供する。
【0010】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、添付の図および実施例と併せて以下の詳細な説明を読むことでより完全に明らかになると思われる。しかしながら、本発明の前述の概要および以下の詳細な説明の両方は、好ましい態様であり、本発明または本発明の他の代替態様を限定しないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】TTK-567により産生されたCTLクローンがペプチドに特異的な細胞傷害性をもつことを示すグラフである。具体的には、CTLクローンは、TTK-567を用いてパルスした標的細胞(A24LCL)に対して高い細胞傷害活性を示したが、ペプチドをパルスしなかった同じ標的細胞(A24LCL)に対しては有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図2】URLC10-177により産生されたCTLクローンがペプチドに特異的な細胞傷害性をもつことを示すグラフである。具体的には、CTLクローンは、URLC10-177を用いてパルスした標的細胞(A24LCL)に対して高い細胞傷害活性を示したが、ペプチドをパルスしなかった同じ標的細胞(A24LCL)に対しては有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図3】KOC1-508により産生されたCTLクローンがペプチドに特異的な細胞傷害性をもつことを示すグラフである。具体的には、CTLクローンは、KOC1-508を用いてパルスした標的細胞(A24LCL)に対して高い細胞傷害活性を示したが、ペプチドを用いてパルスしなかった同じ標的細胞(A24LCL)に対しては有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図4】TTK-567により産生されたCTLクローンが、HLA拘束性様式において、TTKを内因的に発現する腫瘍細胞を認識し、かつ溶解することを示すグラフである。TTKおよびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性は、TTK-567により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。TTKを内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、PC9細胞を用いた。CTLクローンは、TTKおよびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、TTKを発現するがHLA-A24を発現しないPC9細胞に対しては、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図5】URLC10-177により産生されたCTLクローンが、HLA拘束性様式において、URLC10を内因的に発現する腫瘍細胞を認識し、かつ溶解することを示すグラフである。URLC10およびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性は、URLC10-177により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。URLC10を内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、TE13細胞を用いた。CTLクローンは、URLC10およびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、URLC10を発現するがHLA-A24を発現しないTE13細胞に対しては、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図6】KOC1-508により産生されたCTLクローンが、HLA拘束性様式において、KOC1を内因的に発現する腫瘍細胞を認識し、かつ溶解することを示すグラフである。KOC1およびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性は、KOC1-508により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。KOC1を内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、PC9細胞を用いた。CTLクローンは、KOC1およびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、KOC1を発現するがHLA-A24を発現しないPC9細胞に対しては、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図7】TTK-567により産生されたCTLクローンが、HLA-A24拘束性様式でTTK-567を特異的に認識することを示すグラフである。Na251CrO4により標識されたTE1細胞は放射性標的として調製し、一方TTK-567ペプチドをパルスしたA24LCL細胞は非放射性標的(阻害剤)として用いた。E/T比は20に固定した。TE1細胞に対するTTK-567 CTLクローンの細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により阻害された。
【図8】URLC10-177により産生されたCTLクローンが、HLA-A24拘束性様式でURLC10を特異的に認識することを示すグラフである。Na251CrO4により標識されたTE1細胞は放射性標的として調製し、一方URLC10-177ペプチドをパルスしたA24LCL細胞は非放射性標的(阻害剤)として用いた。E/T比は20に固定した。TE1に対するURLC10-177 CTLクローンの細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により阻害された。
【図9】KOC1-508により産生されたCTLクローンが、HLA-A24拘束性様式でKOC1を特異的に認識することを示すグラフである。Na251CrO4により標識されたTE1細胞は放射性標的として調製し、一方KOC1-508ペプチドをパルスしたA24LCL細胞は非放射性標的(阻害剤)として用いた。E/T比率は20に固定した。TE1細胞に対するKOC1-508 CTLクローンの細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により阻害された。
【図10】TTK-567により産生されたCTLクローンの細胞傷害活性が、HLAクラスIまたはCD8のT細胞表面抗原を認識する抗体により特異的にブロックされることを示すグラフである。CTLクローンの細胞傷害性の特異性は、抗体ブロッキングアッセイにより確認した。TE1細胞はそれぞれモノクローナル抗体と共培養し、標的として用いた。CTL活性は、HLAクラスIまたはCD8を認識する抗体の添加により明らかにブロックされ、かつHLAクラスIIまたはCD4に対する抗体の添加の影響をわずかに受けた。しかしながら該CTL活性は、アイソタイプが一致する対照抗体の添加では全く阻害されなかった。
【図11】URLC10-177により産生されたCTLクローンの細胞傷害活性が、HLAクラスIまたはCD8のT細胞表面抗原を認識する抗体により特異的にブロックされることを示すグラフである。CTLクローンの細胞傷害性の特異性は、抗体ブロッキングアッセイにより確認した。TE1細胞はそれぞれモノクローナル抗体と共培養し、標的として用いた。CTL活性は、HLAクラスIまたはCD8を認識する抗体の添加により明らかにブロックされ、かつHLAクラスIIまたはCD4に対する抗体の添加の影響をわずかに受けた。しかしながら該CTL活性は、アイソタイプが一致する対照抗体の添加では全く阻害されなかった。
【図12】KOC1-508により産生されたCTLクローンの細胞傷害活性が、HLAクラスIまたはCD8のT細胞表面抗原を認識する抗体により特異的にブロックされることを示すグラフである。CTLクローンの細胞傷害性の特異性は、抗体ブロッキングアッセイにより確認した。TE1細胞はそれぞれモノクローナル抗体と共培養し、標的として用いた。CTL活性は、HLAクラスIまたはCD8を認識する抗体の添加により明らかにブロックされ、かつHLAクラスIIまたはCD4に対する抗体の添加の影響をわずかに受けた。しかしながら該CTL活性は、アイソタイプが一致する対照抗体の添加では全く阻害されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書に用いられる場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単語は、他に明確な指示がない限り「少なくとも1つ」を意味する。
【0013】
他に定義がない限り、本明細書に用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味をもつ。
【0014】
新しいTAA、特に、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導するTAAの同定により、様々な型の癌におけるペプチドワクチン接種ストラテジーの臨床での応用のさらなる進歩が保証される(Boon T et al., (1996) J Exp Med 183:725-9; van der Bruggen P et al., (1991) Science 254:1643-7; Brichard V et al., (1993) J Exp Med 178:489-95; Kawakami Y et al., (1994) J Exp Med 180:347-52; Shichijo S et al., (1998) J Exp Med 187:277-88; Chen YT et al., (1997) Proc. Natl. Acd. Sci. USA, 94:1914-8; Harris CC, (1996) J Natl Cancer Inst 88:1442-5; Butterfield LH et al., (1999) Cancer Res 59:3134-42; Vissers JL et al., (1999) Cancer Res 59:5554-9; van der Burg SH et al., (1996) J. Immunol 156:3308-14; Tanaka F et al., (1997) Cancer Res 57:4465-8; Fujie T et al., (1999) Int J Cancer 80:169-72; Kikuchi M et al., (1999) Int J Cancer 81:459-66; Oiso M et al., (1999) Int J Cancer 81:387-94)。上記のように、TTK、URLC10、およびKOC1は、以前に、cDNAマイクロアレイ技術を用いることにより、肺癌で過剰発現していることが確認された。WO2004/031413に考察されているように、TTKは、S_TKcドメインをコードする。TTK遺伝子によりコードされたタンパク質は、セリン、トレオニン、およびチロシンに基づくタンパク質をリン酸化し、そのようなリン酸化は細胞増殖に関連している可能性が高い(Mills GB et al., (1992) J Biol Chem 267:16000-6; Schmandt R et al., (1994) J Immunol. 152(1):96-105; Stucke VM et al., (2002) EMBO J. 21(7):1723-32)。KOC1は、インスリン様成長因子2(IGF2)mRNA結合タンパク質3(IMP-3)をコードする。IMP-3タンパク質は、4つのKHドメインに加えて、2つの機能的RNA認識モチーフ(RRM)を含む。該タンパク質は、ヒト6.0-kbインスリン様成長因子II(IGF2)リーダー-3 mRNAの5'UTRと特異的に結合し、IGF2産生の生理的制御におけるIMP-3の役割を示唆している。(Nielsen, J. et al., (1999) Molec. Cell. Biol. 19:1262-1270)。IMP-3はまた、膵臓癌において過剰発現していた(Mueller-Pillasch, F. et al., (1997) Oncogene 14:2729-2733)。
【0015】
以前の実験は、TTK、URLC10、およびKOC1が肺癌において過剰発現し、正常組織において最小限の発現を示すことを実証した。さらに、これらの遺伝子は、細胞増殖に関連した重要な機能をもつことが示された(WO2004/031413参照)。
【0016】
本発明において、TTK、URLC10、またはKOC1由来のペプチドは、日本人および白人集団に一般的に見出されるHLA対立遺伝子であるHLA-A24により拘束されるTAAエピトープであることが示されている。具体的には、HLA-A24へのそれらの結合親和性を用いて、TTK、URLC10、またはKOC1由来のHLA-A24結合ペプチドの候補が同定された。これらのペプチドを負荷された樹状細胞(DC)によるT細胞のインビトロ刺激後、CTLは、TTK-567(SYRNEIAYL(SEQ ID No.8))、URLC10-177(RYCNLEGPPI(SEQ ID No.67))、およびKOC1-508(KTVNELQNL(SEQ ID No.89))を用いて成功裡に確立された。これらのCTLは、ペプチドをパルスしたA24LCL細胞に対して強力な細胞傷害活性を示した。さらに、これらの細胞由来のCTLクローンはまた、TTK、URLC10、またはKOC1を内因的に過剰発現させるHLA-A24陽性肺癌細胞株に対して特異的な細胞傷害性を示した。しかしながら、これらのCTLクローンは、HLA-A24または標的TAAのいずれかの発現を欠く細胞株に対して細胞傷害活性を示さなかった。これらのCTLクローンの特異的な細胞傷害活性は、非放射性標的により有意に阻害された。これらの結果は、TTK、URLC10、およびKOC1が、肺癌細胞のTAAとして有用であること、ならびにTTK-567、KOC1-508、およびURLC10-177がHLA-A24により拘束される各TAAのエピトープペプチドであることを実証している。これらの抗原はほとんどの肺癌において過剰発現し、腫瘍細胞増殖と関連しているため、肺癌に対する免疫療法の標的として有用である。
【0017】
従って、本発明はさらに、被検体において肺癌を処置または予防する方法であって、約40アミノ酸未満、しばしば、約20アミノ酸未満、通常は約15アミノ酸未満であり、かつSEQ ID NO:8、67、または89のアミノ酸配列を含む免疫原性ペプチドをそれを必要としている被検体に投与する段階を含む方法を提供する。あるいは、免疫原性ペプチドは、結果として生じる変異体ペプチドが免疫原性活性(すなわち、肺癌細胞に特異的なCTLを誘導する能力)を保持するとの条件で、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されている、SEQ ID NO:8、67、または89の配列を含みうる。置換、除去、または付加される残基の数は、一般的に、5アミノ酸またはそれ未満、好ましくは4アミノ酸またはそれ未満、より好ましくは3アミノ酸またはそれ未満、よりいっそう好ましくは1アミノ酸もしくは2アミノ酸である。
【0018】
変異体ペプチド(すなわち、本来のアミノ酸配列に対して、1個、2個、または数個のアミノ酸残基の置換、除去、または付加を行うことにより改変されたアミノ酸配列を含むペプチド)は、本来の生物活性を保持することが知られている(Mark DF et al., (1984) Proc Natl Acad Sci USA 81:5662-6; Zoller MJ and Smith M, (1982) Nucleic Acids Res 10:6487-500; Dalbadie-McFarland G et al., (1982) Proc Natl Acad Sci USA 79:6409-13)。本発明の文脈おいて、アミノ酸改変は、結果的に、本来のアミノ酸側鎖の性質を保存する(保存的アミノ酸置換として知られる過程)。アミノ酸側鎖の性質の例は、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、および共通して、以下の官能基または特性を有する側鎖である:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシ基含有側鎖(S、T、Y);イオウ原子含有側鎖(C、M);カルボン酸およびアミド含有側鎖(D、N、E、Q);塩基含有側鎖(R、K、H);ならびに芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)。ただし、括弧でくくられた文字は、アミノ酸の一文字記号を示す。
【0019】
好ましい態様において、免疫原性ペプチドは、ノナペプチド(9-mer)またはデカペプチド(10-mer)である。
【0020】
本発明はさらに、被検体において肺癌に対する抗腫瘍免疫を誘導する方法であって、本発明の免疫原性ペプチド、すなわちSEQ ID NO:8、67、もしくは89のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、除去、または付加を含む)を含むペプチドをそれを必要としている被検体に投与する段階を含む方法を提供する。
【0021】
本発明の文脈において、被検体は、好ましくは哺乳動物である。例示的な哺乳動物は、限定されるわけではないが、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシを含む。
【0022】
本発明において、ペプチドは、インビボまたはエクスビボで被検体に投与することができる。さらに、本発明はまた、肺癌を処置または予防するための免疫原性組成物を製造するためのSEQ ID NO:8、67、および89のアミノ酸配列(ならびにそれらの変異体)を含むペプチドから選択されるノナペプチドまたはデカペプチドの使用を提供する。
【0023】
TTK-567、KOC1-508、およびURLC10-177の相同性分析により、それらが、いかなる公知のヒト遺伝子産物由来のペプチドとも有意な相同性をもたないことが実証されている。従って、これらの分子に対する免疫療法での未知のまたは望ましくない免疫応答の可能性は、著しく低減される。
【0024】
HLA抗原に関して、日本人集団内で高く発現されているA-24型の使用は、効果的な結果を得るのに有利であり、A-2402のようなサブタイプの使用はよりいっそう好ましい。典型的には、臨床では、処置を必要とする患者のHLA抗原の型は前もって調べられ、これにより該抗原に対する高レベルの結合親和性をもつペプチド、または抗原提示による細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能をもつペプチドの適切な選択が可能になる。さらに、高い結合親和性およびCTL誘導能を示すペプチドを得るために、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、除去、または付加が、天然に存在するTTK、URLC10、およびKOC1の部分的ペプチドのアミノ酸配列に基づいて行われうる。本明細書において、「数個の」という用語は、5個またはそれ未満、より好ましくは3個またはそれ未満を指す。さらに、天然で示されるペプチドに加えて、HLA抗原への結合により示されるペプチドの配列の規則性は既知であるため(Kubo RT, et al., (1994) J. Immunol., 152, 3913-24; Rammensee HG, et al., (1995) Immunogenetics. 41:178-228; Kondo A, et al., (1995) J. Immunol. 155:4307-12)、そのような規則性に基づいた改変を、本発明の免疫原性ペプチドに対して行うことができる。例えば、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンで置換されている、高いHLA-24結合親和性を示すペプチドは、有利に用いられうる。同様に、C末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンで置換されているペプチドもまた、有利に用いられうる。
【0025】
しかしながら、ペプチド配列が、異なる機能をもつ内因性または外因性のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一である場合、特定の物質に対する自己免疫異常またはアレルギー症状のような副作用が引き起こされうる。それゆえに、免疫原性配列が公知のタンパク質のアミノ酸配列に一致する状況は避けることが好ましい。この状況は、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を行うことにより避けられうる。相同性検索で、1個、2個、または数個のアミノ酸が異なるペプチドが存在しないことが確認される場合、例えば、HLA抗原との結合親和性を増加させる、および/またはCTL誘導能を増加させる上記のアミノ酸配列の改変による危険性が避けられうる。
【0026】
上記のようなHLA抗原に対する高い結合親和性をもつペプチドは、癌ワクチンとして大いに効果的であることが期待されるが、高い結合親和性の存在を指標とし、それに応じて選択される候補ペプチドは、実際のCTL誘導能の存在について調べる必要がある。CTL誘導能は、ヒトMHC抗原を有する抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞)、またはより具体的には、ヒト末梢血単核白血球由来の樹状細胞を誘導し、関心の対象のペプチドによる刺激後、CD8陽性細胞と混合し、標的細胞に対する細胞傷害活性を測定することにより確認されうる。反応系として、ヒトHLA抗原を発現させるように作製されたトランスジェニック動物(例えば、BenMohamed L, et al., (2000) Hum. Immunol. 61(8):764-79 Related Articles, Books, Linkoutに記載)が用いられうる。例えば、標的細胞は、51Crなどで放射標識することができ、細胞傷害活性は、標的細胞から放出された放射能から計算することができる。あるいは該標的細胞は、固定化ペプチドを有する抗原提示細胞の存在下でCTLにより産生および放出されたIFN-γを測定し、抗IFN-γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻害ゾーンを可視化することにより調べることができる。
【0027】
上記のようにペプチドのCTL誘導能を調べた結果として、HLA抗原に対する高い結合親和性をもつペプチドは必ずしも高い誘導能をもつとは限らないことが発見された。しかしながら、SYRNEIAYL(SEQ ID NO:8)、RYCNLEGPPI(SEQ ID NO:67)、KTVNELQNL(SEQ ID NO:89)により示されたアミノ酸配列を含むペプチドから選択されたノナペプチドまたはデカペプチドは、特に高いCTL誘導能を示した。
【0028】
上記のように、本発明は、細胞傷害性T細胞誘導能をもつペプチド、すなわち、SEQ ID NO:8、67、もしくは89のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されているアミノ酸配列)を含むペプチドを提供する。SEQ ID NO:8、67、89に示される9アミノ酸もしくは10アミノ酸を含むアミノ酸配列またはそれらの変異体は、別の内因性タンパク質と関連したアミノ酸配列と一致しないことが好ましい。特に、N末端から2番目のアミノ酸におけるフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンへのアミノ酸置換、またはC末端アミノ酸におけるフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンへのアミノ酸置換、ならびにN末端および/もしくはC末端における1〜2アミノ酸のアミノ酸付加が、好ましい例である。
【0029】
本発明のペプチドは、周知の技術を用いて調製してもよい。例えば、該ペプチドは、組換えDNA技術または化学合成のいずれかを用いて、合成的に調製することができる。本発明のペプチドは、個々に、または2つもしくはそれ以上のペプチドを含むより長いポリペプチドとして、合成されうる。本発明のペプチドは、好ましくは単離される、すなわち、他の天然に存在する宿主細胞タンパク質およびそれらの断片を実質的に含まない。
【0030】
本発明のペプチドは、改変が本明細書に記載されているようなペプチドの生物活性を破壊しない限りにおいて、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化のような改変を含みうる。他の改変は、例えば、ペプチドの血清半減期を増加させるために用いることができるD-アミノ酸または他のアミノ酸模倣体の取り込みを含む。
【0031】
本発明のペプチドは、インビボでCTLを誘導しうる癌ワクチンとして用いる本発明のペプチドの2つまたはそれ以上を含む組み合わせとして調製することができる。該ペプチドは、カクテルであってもよく、または標準的な技術を用いて互いに結合させてもよい。例えば、該ペプチドは、単一のポリペプチド配列として発現しうる。組み合わせにおける該ペプチドは、同じまたは異なりうる。本発明のペプチドを投与することにより、ペプチドは、抗原提示細胞のHLA抗原上において高密度で提示され、続いて、示されたペプチドとHLA抗原の間で形成された複合体に対して特異的に反応するCTLを誘導する。あるいは、被検体から樹状細胞を取り出すことにより得られた、本発明のペプチドをその細胞表面上に固定化している抗原提示細胞が、本発明のペプチドにより刺激されうる。それぞれの被検体へのこれらの細胞の再投与はCTLを誘導し、その結果、標的細胞に対する攻撃性を増加させることができる。
【0032】
より具体的には、本発明は、本発明のペプチドを1つまたは複数含む、腫瘍を処置するための、または腫瘍の増殖、転移などを予防するための薬物を提供する。本発明のペプチドは、肺癌のような腫瘍の処置において特に有用である。
【0033】
本発明のペプチドは、通常の製剤方法により製剤した薬学的組成物として被検体へ直接投与することができる。そのような場合、本発明のペプチドに加えて、薬物に通常用いられる担体、賦形剤などを、特別な制限なしに、必要に応じて含むことができる。本発明の免疫原性組成物は、肺癌を含む様々な腫瘍の処置および予防のために用いられうる。
【0034】
活性成分として本発明のペプチドを1つまたは複数含む、腫瘍の処置および/または予防のための免疫原性組成物はさらに、細胞性免疫を効果的に確立するためにアジュバントを含むことができる。あるいは、該組成物は抗腫瘍剤のような他の活性成分と共に投与されうる。適切な製剤には顆粒も含まれる。適切なアジュバントは、文献(Johnson AG. (1994) Clin. Microbiol. Rev., 7:277-89)に記載されている。例示的なアジュバントは、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびミョウバンを含むが、これに限定されない。さらに、リポソーム製剤、薬物が直径数μmのビーズへ結合している顆粒製剤、および脂質が前記ペプチドに結合している製剤が、便利に用いられうる。投与の方法は、経口投与、皮内注射、皮下注射、静脈内注射などであってもよく、全身投与または標的腫瘍の付近への局所的投与を含みうる。本発明のペプチドの用量は、処置すべき疾患、患者の年齢、体重、投与の方法などにより適切に調整することができる。用量は、普通、0.001mg〜1000mg、好ましくは0.01mg〜100mg、より好ましくは0.1mg〜10mgであり、好ましくは数日に1回から数ヶ月に1回投与されるが、当業者は適切な用量および投与の方法を容易に選択することができ、これらのパラメーターの選択および最適化は、十分に通常の技術の範囲内である。
【0035】
本発明はさらに、本発明のペプチドとHLA抗原の間で形成された複合体をその表面上に提示するエキソソームと呼ばれる細胞内小胞を提供する。エキソソームは、例えば、国際公開第平11-510507号および第2000-512161号の公開された日本語翻訳文に詳細に記載された方法を用いることにより調製することができ、好ましくは、処置および/または予防の標的である被検体から得られた抗原提示細胞を用いて調製される。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様に、癌ワクチンとして接種することができる。
【0036】
用いられるHLA抗原の型は、処置および/または予防を必要とする被検体のHLA抗原の型と一致しなければならない。例えば、日本人集団においては、HLA-A24、特にHLA-A2402が多くの場合適切である。
【0037】
いくつかの態様において、本発明のワクチン組成物は、細胞傷害性Tリンパ球を初回抗原刺激する構成要素を含む。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLを初回抗原刺激する能力がある作用物質として同定されている。例えば、パルミチン酸残基は、リシン残基のε-アミノ基およびα-アミノ基に付着し、その後、本発明の免疫原性ペプチドに連結することができる。脂質化ペプチドは、その後、ミセルまたは粒子に入れる、リポソームに取り込ませる、またはアジュバント中に乳化するかのいずれかで、直接投与することができる。CTL応答の脂質初回抗原刺激のもう一つの例として、適切なペプチドに共有結合的に付着している場合、トリパルミトイル-S-グリセリルシステイニルセリル-セリン(P3CSS)のような大腸菌(E. coli)リポタンパク質を、CTLを初回抗原刺激するために用いることができる(例えば、Deres K, et al., (1989) Nature 342:561-4参照)。
【0038】
本発明の免疫原性組成物はまた、本明細書に開示された免疫原性ペプチドの1つまたは複数をコードする核酸を含みうる。例えば、Wolff JA et al., (1990) Science 247:1465-8; 米国特許第5,580,859号;第5,589,466号;第5,804,566号;第5,739,118号;第5,736,524号;第5,679,647号;およびWO 98/04720を参照。DNAに基づいた送達技術の例は、「裸のDNA」、促進化(ブピビカイン(bupivicaine)、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性送達を含む(例えば、米国特許第5,922,687号参照)。
【0039】
本発明の免疫原性ペプチドはまた、ウイルスベクターまたは細菌ベクターにより発現させることができる。適切な発現ベクターの例は、ワクシニアまたは鶏痘のような弱毒性ウイルス宿主を含む。このアプローチは、例えば、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させうるベクターとしてのワクシニアウイルスの使用を含む。宿主への導入により、組換えワクシニアウイルスは、免疫原性ペプチドを発現させ、それにより、免疫応答を誘発する。免疫化プロトコールにおいて有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。もう一つの適したベクターは、BCG(カルメット・ゲラン菌(Bacille Calmette Guerin))である。BCGベクターは、Stover CK, et al., (1991) Nature 31:456-60に記載されている。治療的投与または免疫化に有用な幅広い種類の他のベクター、例えば、アデノおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、解毒化炭疽毒素ベクターなどが、当技術分野において公知である。例えば、Shata MT, et al., (2000) Mol. Med. Today 6:66-71; Shedlock DJ and Weiner DB., et al., (2000) J. Leukoc. Biol. 68:793-806;およびHipp JD, et al., (2000) In Vivo 14:571-85を参照。
【0040】
本発明はまた、本発明の1つまたは複数のペプチドを用いて抗原提示細胞を誘導する方法を提供する。抗原提示細胞は、末梢血単球から樹状細胞を誘導し、その後それらを、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで本発明の1つまたは複数のペプチドと接触させる(刺激する)ことにより誘導することができる。本発明のペプチドを被検体へ投与する場合、本発明のペプチドを自身に固定化している抗原提示細胞を、被検体の身体において誘導する。あるいは、本発明のペプチドを抗原提示細胞へ固定化した後、細胞をワクチンとして被検体に投与することができる。例えば、エクスビボ投与は以下の段階を含みうる:
a:被検体から抗原提示細胞を収集する段階、および
b:段階aの抗原提示細胞を本発明のペプチドと接触させる段階。
【0041】
段階bにより得られた抗原提示細胞は、被検体へワクチンとして投与することができる。
【0042】
本発明はまた、高レベルの細胞傷害性T細胞誘導能をもつ抗原提示細胞を誘導するための方法であって、インビトロで、本発明の1つまたは複数のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を抗原提示細胞へ移入する段階を含む方法を提供する。導入された遺伝子は、DNAまたはRNAの形をとりうる。導入の方法について、特別な制限なしに、リポフェクション、エレクトロポレーション、およびリン酸カルシウム法のような、当分野において通常行われる様々な方法が適切に用いられうる。より具体的には、トランスフェクションは、Reeves ME, et al., (1996) Cancer Res., 56:5672-7; Butterfield LH, et al., (1998) J. Immunol., 161:5607-13; Boczkowski D, et al., (1996) J Exp. Med., 184:465-72; 国際公開第2000-509281号の公開された日本語翻訳文に記載されているように行われうる。遺伝子を抗原提示細胞へ移入することにより、遺伝子は、細胞において転写、翻訳などを受け、その後、得られたタンパク質は、MHCクラスIまたはクラスIIによりプロセシングされ、提示経路を通って進み、部分的ペプチドを提示する。
【0043】
本発明はさらに、本発明の1つまたは複数のペプチドを用いてCTLを誘導するための方法を提供する。本発明のペプチドが被検体に投与される場合、CTLは、被検体の身体において誘導され、腫瘍組織における肺癌細胞を標的とする免疫系の強さは、それにより増強される。あるいは、本発明のペプチドは、被検体由来の抗原提示細胞およびCD8陽性細胞または末梢血単核白血球がインビトロで本発明の1つまたは複数のペプチドと接触させられ(刺激され)、CTLを誘導した後、細胞が被検体へ戻される、エクスビボ治療方法との関連において用いられうる。例えば、方法は以下の段階を含みうる:
a:被検体から抗原提示細胞を収集する段階、
b:段階aの抗原提示細胞を本発明のペプチドと接触させる段階、
c:細胞傷害性T細胞を誘導するために、段階bの抗原提示細胞をCD8+ T細胞と混合し共培養する段階、および
d:段階cの共培養物からCD8+ T細胞を収集する段階。
【0044】
段階dにより得られた細胞傷害活性をもつCD8+ T細胞は、ワクチンとして被検体に投与することができる。
【0045】
本発明はさらに、本発明のペプチドを用いて誘導される単離された細胞傷害性T細胞を提供する。本発明の1つまたは複数のペプチドを提示する抗原提示細胞での刺激により誘導された細胞傷害性T細胞は、好ましくは、処置および/または予防の標的である被検体由来であり、単独で、または本発明の1つもしくは複数のペプチドまたは抗腫瘍活性をもつエキソソームを含む他の薬物と組み合わせて投与することができる。得られた細胞傷害性T細胞は、本発明のペプチド、または好ましくは誘導に用いられたものと同じペプチドを提示する標的細胞に対して特異的である。標的細胞は、TTK、URLC10、およびKOC1を内因的に発現させる細胞、またはTTK、URLC10、およびKOC1遺伝子がトランスフェクションされている細胞でありうる。これらのペプチドによる刺激により本発明のペプチドを細胞表面上に提示する細胞もまた、攻撃の標的になりうる。
【0046】
本発明はまた、HLA抗原と本発明の1つまたは複数のペプチドとの間で形成された複合体を提示する抗原提示細胞を提供する。本発明のペプチドまたはそのようなペプチドをコードするヌクレオチドとの接触を通して得られた抗原提示細胞は、好ましくは、処置および/または予防の対象である被検体に由来し、単独で、または本発明のペプチド、エキソソーム、もしくは細胞傷害性T細胞を含む他の薬物と組み合わせて、ワクチンとして投与することができる。
【0047】
本発明との関連において、「ワクチン」という用語(免疫原性組成物とも呼ばれる)は、動物への接種により、抗腫瘍免疫を誘導する、または肺癌を抑制する物質を指す。本発明により、SEQ ID NO:8、67、または89のアミノ酸配列を含むポリペプチドが、TTK、URLC10、またはKOC1を発現する肺癌細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導しうるHLA-A24拘束性エピトープペプチドであると示唆された。従って、本発明はまた、SEQ ID NO:8、67、もしくは89のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、除去、または付加を含む)を含むポリペプチドを用いて抗腫瘍免疫を誘導する方法を含む。一般的に、抗腫瘍免疫は、以下のような免疫応答を含む:
− TTK、URLC10、またはKOC1を発現する細胞を含む腫瘍に対する細胞傷害性リンパ球の誘導、
− TTK、URLC10、またはKOC1を発現する細胞を含む腫瘍を認識する抗体の誘導、および
− 抗腫瘍性サイトカイン産生の誘導。
【0048】
それゆえに、特定のペプチドが動物への接種によりこれらの免疫応答のいずれか1つを誘導する場合、そのペプチドは、抗腫瘍免疫誘導効果をもつと決定される。ペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、インビボまたはインビトロで、ペプチドに対する宿主における免疫系の応答を観察することにより、検出することができる。
【0049】
例えば、細胞傷害性Tリンパ球の誘導を検出するための方法は周知である。生体に侵入する異物は、抗原提示細胞(APC)の作用により、T細胞およびB細胞へ提示される。抗原特異的な様式でAPCにより提示された抗原に対して応答するT細胞は、抗原による刺激により、細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球またはCTLとも呼ばれる)へ分化し、その後増殖する;この過程は、本明細書では、T細胞の「活性化」と呼ばれる。それゆえに、特定のペプチドによるCTL誘導は、APCによりペプチドをT細胞へ提示させ、CTLの誘導を検出することにより評価することができる。さらに、APCは、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球、およびNK細胞を活性化する効果を有する。CD4+ T細胞はまた抗腫瘍免疫において重要であるため、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価することができる。
【0050】
樹状細胞(DC)をAPCとして用いるCTLの誘導作用を評価するための方法は、当技術分野において周知である。DCは、APC中で最も強いCTL誘導作用をもつ代表的なAPCである。この方法では、試験ポリペプチドを最初にDCに接触させ、その後、該DCをT細胞と接触させる。DCとの接触後の、対象となる細胞に対する細胞傷害性効果をもつT細胞の検出は、試験ポリペプチドが細胞傷害性T細胞を誘導する活性をもつことを示している。腫瘍に対するCTLの活性は、例えば、51Cr標識腫瘍細胞の溶解を指標として用いて検出することができる。あるいは、3H-チミジン取り込み活性またはLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞損傷の程度を評価することは周知である。
【0051】
DCとは別に、末梢血単核細胞(PBMC)もまた、APCとして用いられうる。CTLの誘導は、GM-CSFおよびIL-4の存在下でPBMCを培養することにより増強されることが報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびIL-7の存在下でPBMCを培養することにより誘導されることが示されている。
【0052】
これらの方法によりCTL誘導活性を有することが確認された試験ポリペプチドは、DC活性効果およびその後のCTL誘導活性をもつポリペプチドである。それゆえに、腫瘍細胞に対してCTLを誘導するポリペプチドは、肺癌に対するワクチンとして有用である。さらに、ポリペプチドと接触させることにより肺癌に対してCTLを誘導する能力を獲得したAPCは、肺癌に対するワクチンとして有用である。さらに、APCによるポリペプチド抗原の提示によって細胞傷害性を獲得したCTLもまた、肺癌に対するワクチンとして利用できる。APCおよびCTLによる抗腫瘍免疫を用いる肺癌についてのそのような治療方法は、細胞免疫療法と呼ばれる。
【0053】
一般的に、細胞免疫療法のためにポリペプチドを用いる場合、CTL誘導の効率は、異なる構造をもつ複数のポリペプチドを組み合わせ、それらをDCと接触させることにより、増加させることができる。それゆえに、タンパク質断片でDCを刺激する場合、複数の型の断片の混合物を用いることが有利である。
【0054】
ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導はさらに、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することにより確認することができる。例えば、ポリペプチドに対する抗体が、ポリペプチドで免疫された実験動物において誘導される場合、ならびに、腫瘍細胞の成長、増殖、および/または転移がそれらの抗体により抑制される場合、ポリペプチドは抗腫瘍免疫を誘導すると決定される。
【0055】
抗腫瘍免疫は、本発明のワクチンを投与することにより誘導することができ、抗腫瘍免疫の誘導は、肺癌の処置および予防を可能にする。肺癌に対する治療または肺癌の発症の予防は、肺癌細胞の成長の阻害、肺癌細胞の退縮、および肺癌細胞の発生の抑制を含みうる。肺癌をもつ個体の死亡率の減少、血液中の肺癌マーカーの減少、肺癌に伴う検出可能な症状の軽減などもまた、肺癌の治療または予防に含まれる。そのような治療的または予防的効果は、肺癌に対するワクチンの治療的または予防的効果がワクチン投与なしの対照と比較される場合に統計学的に有意であること、例えば5%またはそれ未満の有意レベルで観察されることが好ましい。例えば、スチューデントt検定、マン-ホイットニーU検定、またはANOVAが、統計学的有意性を決定するために用いられうる。
【0056】
免疫学的活性をもつ上記のペプチド、またはそのようなペプチドをコードするポリヌクレオチドもしくはベクターは、アジュバントと組み合わせられうる。アジュバントは、免疫学的活性をもつペプチドと共に(または連続的に)投与される場合、ペプチドに対する免疫応答を増強する化合物を指す。適切なアジュバントの例は、コレラ毒素、サルモネラ毒素、ミョウバンなどを含むが、それらに限定されない。さらに、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体と適切に組み合わせられうる。そのような担体の例は、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液などである。さらに、ワクチンは、必要に応じて、安定剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤などを含みうる。ワクチンは、全身的にまたは局所的に投与される。ワクチン投与は、単回投与により行われるか、または複数回投与により追加免疫されうる。
【0057】
本発明のワクチンとしてAPCまたはCTLを用いる場合、肺癌は、例えば、エクスビボ方法により処置または予防することができる。より具体的には、処置または予防を受ける被検体のPBMCを収集し、エクスビボで本発明のペプチドと接触させる。APCまたはCTLの誘導後、細胞を被検体に投与する。APCはまた、ペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMCへ導入することにより誘導することができる。インビトロで誘導されたAPCまたはCTLは、投与の前にクローニングすることができる。標的細胞を損傷する高い活性をもつ細胞をクローニングするおよび増殖させることにより、細胞免疫療法をより効果的に行うことができる。さらに、この様式で単離されたAPCおよびCTLは、細胞が由来している個体に対する細胞免疫療法だけでなく、他の個体における類似した型の疾患に対する細胞免疫療法にも用いられうる。
【0058】
本発明の局面は、以下の実施例において説明され、その実施例は、本発明を例証するため、および同じものの作製および使用において当業者を援助するためにのみ示される。本実施例は、いかなる形であれ本発明の範囲を別に限定することを意図していない。
【0059】
本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において用いることができるが、適切な方法および材料は以下に記載されている。
【0060】
実施例
本発明は以下の実施例により例証されるが、それらに限定されない。
【0061】
材料および方法
細胞株
A24LCL細胞(HLA-A24/24)およびEHM(HLA-A3/3)、ヒトBリンパ芽球様細胞株は、Takara Shuzo Co., Ltd.(Otsu, Japan)から寄贈された。A24LCL細胞は、ペプチド媒介性細胞傷害性アッセイに用いた。肺癌細胞株TE1(HLA-A2402+)、TE13(HLA-A2402-)、およびPC9(HLA-A2402-)は、ATCCから購入した。肺癌細胞株におけるTTK、URLC10、およびKOC1の発現レベルは、cDNAマイクロアレイおよびRT-PCRにより測定され、TE1における3つの遺伝子すべての強い発現、PC9におけるTTKおよびKOC1の発現、ならびにTE13におけるURLC10の発現が明らかにされた(データ非呈示)。
【0062】
TTK、URLC10、およびKOC1に由来するペプチド候補の選択
HLA-A24分子に結合するTTK、URLC10、またはKOC1由来の9-merおよび10-merペプチドを、結合予測ソフトウェア「BIMAS」(http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken_parker_comboform)(Parker KC, et al., (1994) J Immunol. 152(1):163-75; Kuzushima K, et al., (2001) Blood. 98(6):1872-81)により予測した。該ペプチドを標準的な固相合成法によるMimotopes(San Diego, LA)により合成し、逆相HPLCにより精製した。ペプチドの純度(>90%)および同一性はそれぞれ分析的HPLCおよび質量分析法により測定した。ペプチドを、20mg/mlでジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、-80℃で保存した。
【0063】
インビトロCTL誘導
単球由来樹状細胞(DC)を、HLA上に提示されるペプチドに対するCTL応答を誘導するための抗原提示細胞(APC)として用いた。DCは、他で記載されているように(Nukaya I et al., (1999) Int. J. Cancer 80, 92-7, Tsai V et al., (1997) J. Immunol 158:1796-802)、インビトロで作製した。簡単に述べると、正常なボランティア(HLA-A*2402)からFicoll-Paque(Pharmacia)溶液により単離された末梢血単核細胞(PBMC)を、それらを単球画分について濃縮するために、プラスチック組織培養フラスコ(Becton Dickinson)への粘着性により分離した。単球の濃縮集団を、2%加熱不活性化自己血清(AS)を含むAIM-V(Invitrogen)における1000U/mlのGM-CSF(Kirin Brewery Companyより提供)および1000U/mlのIL-4(Genzyme)の存在下で培養した。培養7日後、サイトカイン産生DCを、AIM-Vにおいて20℃で4時間、3μg/mlのβ2-ミクログロブリンの存在下で、20μg/mlのHLA-A24結合ペプチドを用いてパルスした。続いてこれらのペプチドをパルスしたDCを、その後、照射し(5500rad)、Dynabeads M-450 CD8(Dynal)およびDETACHa BEAD(商標)(Dynal)でのポジティブ選択により得られた自己CD8+ T細胞と1:20の比で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)に配置した;各ウェルには、1.5×104個のペプチドをパルスしたDC、3×105個のCD8+ T細胞、および0.5mlのAIM-V/2%ASにおける10ng/mlのIL-7(Genzyme)を入れた。3日後、これらの培養物に、IL-2(CHIRON)を20IU/mlの最終濃度まで追加した。7日目および14日目に、T細胞を、自己ペプチドをパルスしたDCでさらに再刺激した。DCは、上記と同じ方法により毎回調製した。細胞傷害性は、21日目における3回目のペプチド刺激後に、ペプチドをパルスしたA24LCL細胞に対して試験した。
【0064】
CTL増殖手順
CTLを、Riddell SR, et al.(Walter EA et al., (1995) N Engl J Med 333:1038-44; Riddel et al., (1996) Nature Med. 2:216-23)により記載された方法と類似の方法を用いた培養で増殖させた。合計5×104個のCTLを、40ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下で、25×106個の照射(3300rad)されたPBMCおよび5×106個の照射(8000rad)されたEHM細胞を含む25mlのAIM-V/5%ASに再懸濁した。培養の開始から1日後、120IU/mlのIL-2を培養物に加えた。培養物に、5日目、8日目、および11日目に30IU/mlのIL-2を含む新鮮なAIM-V/5%ASを供給した。
【0065】
CTLクローンの確立
希釈は、96ウェルの丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)において0.3個、1個、および3個のCTL/ウェルをもつように行なった。CTLを、7×104細胞/ウェルの同種異系PBMC、1×104細胞/ウェルのEHM、30ng/mlの抗CD3抗体、および125U/mlのIL-2と共に、合計150μl/ウェルの5%AS含有AIM-Vにおいて、培養した。10日後、50μl/ウェルのIL-2を、IL-2が最終濃度において125U/mlになるように培地へ加えた。CTLの細胞傷害活性を14日目に試験し、CTLクローンを上記と同じ方法を用いて増殖させた。
【0066】
細胞傷害性アッセイ
標的細胞を、100μCiのNa251CrO4で、CO2インキュベーター(Perkin Elmer Life Sciences)において37℃で1時間標識した。ペプチドをパルスした標的を、標識前に、細胞を20μg/mlのペプチドと37℃で16時間インキュベートすることにより調製した。標識した標的細胞をすすぎ、丸底マイクロタイタープレートにおいて、最終容量を0.2mlとしてエフェクター細胞と混合した。プレートを、細胞対細胞の接触を増加させるために遠心分離し(800×gで4分間)、CO2インキュベーター内に37℃で配置した。4時間のインキュベーション後、0.1mlの上清を各ウェルから収集し、放射能をガンマカウンターで測定した。
【0067】
特定の細胞傷害性のパーセンテージは、以下の式により特定の51Cr放出のパーセンテージを計算することにより決定した:
{(試験試料放出のcpm−自然放出のcpm)/(最大放出のcpm−自然放出のcpm)}×100
【0068】
自然放出は、エフェクター細胞の非存在下で標的細胞のみをインキュベートすることにより測定し、最大放出は、標的細胞を1N HClとインキュベートすることにより得た。すべての測定は2度ずつ行ない、平均値の標準誤差は一貫して平均値の10%未満であった。
【0069】
抗原特異性は、51Cr標識腫瘍細胞の認識について競合する、ペプチドを用いてパルスした(20μg/ml、37℃で16時間)、またはパルスしていない非標識A24LCL細胞を利用した非放射性標的阻害アッセイにより確認された。
【0070】
モノクローナル抗体(mAb)(マウス抗MHC-クラスI mAb、抗MHC-クラスII mAb、抗CD8 mAb、および抗CD4 mAb)を用いた細胞傷害性のブロッキングアッセイを、HLA拘束様式を確認するために行なった。抗マウスIgG1 mAb、抗マウスIgG2a mAbをアイソタイプとして用いた。
【0071】
結果
TTK、URLC10、またはKOC1由来のHLA-A24結合ペプチドの予測
表1は、TTK(GenBankアクセッション番号NM_003318;SEQ ID No.1、2)についてのHLA-A*2402結合ペプチドを結合親和性の順に示す。表1AはTTK由来の9-merペプチドを示し、表1BはTTK由来の10-merペプチドを示す。表2は、URLC10(GenBankアクセッション番号AB105187;SEQ ID No.3、4)についてのHLA-A*2402結合ペプチドを結合親和性の順に示す。表2AはURLC10由来の9-merペプチドを示し、表2BはURLC10由来の10-merペプチドを示す。表3はKOC1(GenBankアクセッション番号NM_006547;SEQ ID No.5、6)についてのHLA-A*2402結合ペプチドを結合親和性の順に示す。表3AはKOC1由来の9-merペプチドを示し、表3BはKOC1由来の10-merペプチドを示す。
【0072】
(表1A) TTK由来のHLA-A24結合性9-merペプチド
開始位置は、TTKのN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。
【0073】
(表1B) TTK由来のHLA-A24結合性10-merペプチド
開始位置は、TTKのN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
【0074】
(表2A) URLC10由来のHLA-A24結合性9-merペプチド
開始位置は、URLC10のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。
【0075】
(表2B) URLC10由来のHLA-A24結合性10-merペプチド
開始位置は、URLC10のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。N.S.は「合成されていない」を示す。
【0076】
(表3A) KOC1由来のHLA-A24結合性9-merペプチド
開始位置は、KOC1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。
【0077】
(表3B) KOC1由来のHLA-A24結合性10-merペプチド
開始位置は、KOC1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、「材料および方法」に記載された「BIMAS」から導かれる。
N.D.は「行われていない」を示す。
【0078】
予測されたペプチドを用いるT細胞の刺激
TTK、URLC10、またはKOC1由来のペプチドについてのCTLを、上記の「材料および方法」の段落に記載された方法で作製した。結果として得られた、検出可能な細胞傷害活性を示すCTLを増殖させ、ペプチドをパルスしていない標的に対する活性と比較して、ペプチドをパルスした標的に対してより高い細胞傷害活性を示すCTLクローンを確立した。
【0079】
HLA-A24結合ペプチドTTK-567(SYRNEIAYL(SEQ ID No.8))(図1)、URLC10-177(RYCNLEGPPI(SEQ ID No.67))(図2)、またはKOC1-508(KTVNELQNL(SEQ ID No.89))(図3)により刺激されたCTLクローンは、いかなるペプチドもパルスしていない標的に対していかなる有意な細胞傷害活性も示すことなく、ペプチドをパルスした標的に対して強力な細胞傷害活性を示した。
【0080】
TTK、URLC10、またはKOC1を内因的に発現する肺癌細胞株に対する細胞傷害活性
上記の確立されたCTLクローンを、TTK、URLC10、またはKOC1を内因的に発現する腫瘍細胞を認識し、殺すそれらの能力について調べた。TTKおよびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性を、TTK-567により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。TTKを内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、PC9細胞を用いた。CTLクローンは、TTKおよびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、TTKを発現するがHLA-A24を発現しないPC9細胞に対して、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった(図4)。URLC10およびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性を、URLC10-177により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。URLC10を内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、TE13細胞を用いた。CTLクローンは、URLC10およびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、URLC10を発現するがHLA-A24を発現しないTE13細胞に対して、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった(図5)。KOC1およびHLA-A24を内因的に発現するTE1細胞に対する細胞傷害活性を、KOC1-508により産生されたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。KOC1を内因的に発現するがHLA-A24を発現しない標的細胞として、PC9細胞を用いた。CTLクローンは、KOC1およびHLA-A24の両方を発現するTE1細胞に対して、高い細胞傷害活性を示した。他方、KOC1を発現するがHLA-A24を発現しないPC9細胞に対して、CTLクローンは有意な細胞傷害活性を示さなかった(図6)。
【0081】
上記のCTLクローンは、TTK、URLC10、およびKOC1、ならびにHLA-A24を発現する細胞株であるTE1肺癌細胞株に対して、強力な細胞傷害活性を示した。他方、TTK-567またはKOC1-508に対するCTLクローンは、TTKおよびKOC1を発現するがHLA-A24を発現しない細胞株であるPC9肺癌細胞株に対して、細胞傷害活性を示さなかった;同様に、URLC10-177に対して産生されたCTLクローンは、URLC10を発現するがHLA-A24を発現しない細胞株であるTE13肺癌細胞株に対して、細胞傷害活性を示さなかった。これらのCTLクローンはまた、HLA-A24を発現するがTTK、URLC10、またはKOC1を発現しない細胞であるA24LCL細胞に対して、細胞傷害活性を示さない(図1、2、および3)。これらの結果は、TTK-567、URLC10-177、およびKOC1-508が、天然で、HLA-A24分子と共に腫瘍細胞表面に発現され、CTLにより認識されたことを明らかに実証している。
【0082】
非放射性標的阻害アッセイ
非放射性標的阻害アッセイを、上記の「材料および方法」の段落に記載されているように、CTLクローンの特異性を確認するために行なった。Na251CrO4により標識されたTE1細胞を放射性標的として調製し、一方TTK-567ペプチドをパルスしたA24LCL細胞を非放射性標的(阻害剤)として用いた。TTK-567 CTLクローンのTE1細胞に対する細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により特異的に阻害された(図7)。URLC10に関して、Na251CrO4により標識されたTE1細胞を放射性標的として調製し、一方URLC10-177ペプチドをパルスしたA24LCL細胞を非放射性標的(阻害剤)として用いた。URLC10-177 CTLクローンのTE1に対する細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により特異的に阻害された(図8)。上記のように、Na251CrO4により標識されたTE1細胞を放射性標的として調製し、一方KOC1-508ペプチドをパルスしたA24LCL細胞を非放射性標的(阻害剤)として用いた。E/T比は20に固定した。KOC1-508 CTLクローンのTE1細胞に対する細胞傷害活性は、同一のペプチドを用いてパルスしたA24LCL細胞の添加により特異的に阻害された(図9)。標的TE1細胞に対する特異的な細胞傷害性は、ペプチドをパルスした非放射性標的が様々な比率でアッセイに添加された場合有意に阻害されたが、非放射性標的の添加では全く阻害されなかった。これらの結果は、E/T比が20での特異的な溶解阻害のパーセンテージとして示された。
【0083】
T細胞表面抗原に結合する抗体によるCTL活性のブロッキング
観察される殺活性が細胞傷害性T細胞により媒介されているかどうかを見るために、CTLの機能に関連したT細胞表面抗原を認識する抗体を用いて、抗体の殺活性への効果を調べた。CTL活性は、図10に示されたTTK-567 CTLクローン、図11におけるURLC10-177 CTLクローン、および図12におけるKOC1-508 CTLクローンのように、HLAクラスIおよびCD8を認識する抗体の添加により明らかにブロックされたが、HLAクラスIIまたはCD4に対する抗体の添加の影響はほとんど受けない。これらの結果は、肺癌細胞に対するCTLクローンの細胞傷害活性がHLAクラスI拘束性およびCD8媒介性の細胞傷害活性であることを示している。
【0084】
抗原ペプチドの相同性分析
TTK-567、URLC10-177、またはKOC1-508に対して確立されたCTLクローンは強力な細胞傷害活性を示した。従って、TTK-567、URLC10-177、またはKOC1-508の配列が、ヒト免疫系を感作することが知られている他の分子由来のペプチドと相同的である可能性がある。この可能性を排除するために、相同性分析を、BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)(Altschul SF, et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-402; Altschul SF et al., (1990) J Mol. biol. 215(3):403-10)を用いて、該ペプチド配列をクエリとして行ない、有意な相同性をもつ配列がないことが明らかになった。これらの結果は、TTK-567、URLC10-177、およびKOC1-508の配列が独特であり、該ペプチドが、関連していない分子のいずれに対しても、意図していない免疫学的応答を生じる可能性がほとんどないことを示している。
【0085】
考察
新しいTAA、特に、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導するTAAの同定により、様々な型の癌においてペプチドワクチン接種ストラテジーの臨床での応用のさらなる進歩が保証される(Boon T. et al., (1996) J Exp Med 183:725-9; van der Bruggen P et al., (1991) Science 254:1643-7; Brichard V et al., (1993) J Exp Med 178:489-95; Kawakami Y et al., (1994) J Exp Med 180:347-52; Shichijo S et al., (1998) J Exp Med 187:277-88; Chen Y.T. et al., (1997) Proc. Natl. Acd. Sci. USA, 94:1914-8; Harris CC, (1996) J Natl Cancer Inst 88:1442-5; Butterfield LH et al., (1999) Cancer Res 59:3134-42; Vissers JL et al., (1999) Cancer Res 59:5554-9; van der Burg SH et al., (1996) J. Immunol 156:3308-14; Tanaka F et al., (1997) Cancer Res 57:4465-8; Fujie T et al., (1999) Int J Cancer 80:169-72; Kikuchi M et al., (1999) Int J Cancer 81:459-66; Oiso M et al., (1999) Int J Cancer 81:387-94)。
【0086】
cDNAマイクロアレイ技術は、悪性細胞の遺伝子発現の包括的プロファイルを明らかにすることができ(Okabe H. et al., (2001) Cancer Res., 61, 2129-37; Lin Y-M. et al., (2002) Oncogene, 21:4120-8; Hasegawa S. et al., (2002) Cancer Res 62:7012-7)、潜在的なTAAの同定に有用性を見出す。肺癌において上方制御されている転写物の中で、3つの新規なヒト遺伝子はそれぞれTTK、URLC10、およびKOC1と名付けられており、これらの技術を用いて同定された。
【0087】
上記で実証されているように、TTK、URLC10、およびKOC1は、肺癌において過剰発現し、正常組織においては最小限の発現を示す。さらに、これらの遺伝子は、細胞増殖に関連した重要な機能をもつことが示されている(WO2004/031413参照)。従って、TTK、URLC10、およびKOC1由来のペプチドは、TAAエピトープとして働き、その結果、癌細胞に対して有意かつ特異的な免疫応答を誘導するために用いることができる。
【0088】
従って、TTK、URLC10、およびKOC1は新規なTAAであるため、これらのエピトープペプチドを用いる癌ワクチンは、肺癌または前記の分子を発現する他の癌に対する免疫療法用物質として有用でありうる。
【0089】
産業上の利用可能性
本発明は、新しいTAA、特に、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導するTAAを同定している。そのようなTAAにより、肺癌におけるペプチドワクチン接種ストラテジーの臨床での応用のさらなる進歩が保証される。
【0090】
本明細書に引用されたすべての特許、特許出願、および刊行物は、参照により組み入れられている。
【0091】
本発明は、詳細にかつその特定の態様に関して記載されているが、前述の説明は事実上例示的および説明的なものであり、本発明およびその好ましい態様の例証が意図されていることが理解されるべきである。日常的な実験を通して、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更および改変がそこに成されうることを容易に認識すると思われる。従って、本発明は上記説明によってではなく、特許請求の範囲およびそれに相当する物によって定義されることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:8、67、および89のアミノ酸配列を含むペプチドからなる群より選択される、約15アミノ酸未満の単離されたペプチド。
【請求項2】
SEQ ID NO:8、67、および89からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されている、細胞傷害性T細胞誘導能をもつペプチド。
【請求項3】
N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンである、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
C末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンである、請求項2記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1または2記載の1つまたは複数のペプチドを含む、肺癌を処置または予防するための薬学的組成物。
【請求項6】
請求項1または2記載のペプチドおよびHLA抗原を含む複合体をその表面上に提示するエキソソーム。
【請求項7】
HLA抗原がHLA-A24である、請求項6記載のエキソソーム。
【請求項8】
HLA抗原がHLA-A2402である、請求項7記載のエキソソーム。
【請求項9】
抗原提示細胞を請求項1または2記載のペプチドと接触させる段階を含む、高い細胞傷害性T細胞誘導能をもつ抗原提示細胞を誘導する方法。
【請求項10】
T細胞を請求項1または2記載のペプチドと接触させることにより、細胞傷害性T細胞を誘導する方法。
【請求項11】
請求項1または2記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を抗原提示細胞へ移入する段階を含む、高い細胞傷害性T細胞誘導能をもつ抗原提示細胞を誘導する方法。
【請求項12】
T細胞を請求項1または2記載のペプチドと接触させることにより誘導される、単離された細胞傷害性T細胞。
【請求項13】
HLA抗原と、請求項1または2記載のペプチドの間で形成された複合体を含む、抗原提示細胞。
【請求項14】
請求項9記載の方法により誘導された、請求項13記載の抗原提示細胞。
【請求項15】
活性成分として請求項1または2記載のペプチドを含む、肺癌細胞の増殖を阻害するためのワクチン。
【請求項16】
HLA抗原がHLA-A24である被検体への投与のために製剤化された、請求項15記載のワクチン。
【請求項17】
肺癌細胞の増殖を抑制する能力がある、請求項15記載のワクチン。
【請求項18】
請求項1もしくは2記載のペプチド、その免疫学的活性断片、または該ペプチドもしくは免疫学的活性断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを被検体に投与する段階を含む、被検体において肺癌を処置または予防する方法。
【請求項1】
SEQ ID NO:8、67、および89のアミノ酸配列を含むペプチドからなる群より選択される、約15アミノ酸未満の単離されたペプチド。
【請求項2】
SEQ ID NO:8、67、および89からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されている、細胞傷害性T細胞誘導能をもつペプチド。
【請求項3】
N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンである、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
C末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンである、請求項2記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1または2記載の1つまたは複数のペプチドを含む、肺癌を処置または予防するための薬学的組成物。
【請求項6】
請求項1または2記載のペプチドおよびHLA抗原を含む複合体をその表面上に提示するエキソソーム。
【請求項7】
HLA抗原がHLA-A24である、請求項6記載のエキソソーム。
【請求項8】
HLA抗原がHLA-A2402である、請求項7記載のエキソソーム。
【請求項9】
抗原提示細胞を請求項1または2記載のペプチドと接触させる段階を含む、高い細胞傷害性T細胞誘導能をもつ抗原提示細胞を誘導する方法。
【請求項10】
T細胞を請求項1または2記載のペプチドと接触させることにより、細胞傷害性T細胞を誘導する方法。
【請求項11】
請求項1または2記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を抗原提示細胞へ移入する段階を含む、高い細胞傷害性T細胞誘導能をもつ抗原提示細胞を誘導する方法。
【請求項12】
T細胞を請求項1または2記載のペプチドと接触させることにより誘導される、単離された細胞傷害性T細胞。
【請求項13】
HLA抗原と、請求項1または2記載のペプチドの間で形成された複合体を含む、抗原提示細胞。
【請求項14】
請求項9記載の方法により誘導された、請求項13記載の抗原提示細胞。
【請求項15】
活性成分として請求項1または2記載のペプチドを含む、肺癌細胞の増殖を阻害するためのワクチン。
【請求項16】
HLA抗原がHLA-A24である被検体への投与のために製剤化された、請求項15記載のワクチン。
【請求項17】
肺癌細胞の増殖を抑制する能力がある、請求項15記載のワクチン。
【請求項18】
請求項1もしくは2記載のペプチド、その免疫学的活性断片、または該ペプチドもしくは免疫学的活性断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを被検体に投与する段階を含む、被検体において肺癌を処置または予防する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−143924(P2010−143924A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295766(P2009−295766)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2009−58798(P2009−58798)の分割
【原出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2009−58798(P2009−58798)の分割
【原出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】
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