説明

USB接続機器に用いる入力保護回路

【課題】USB接続機器の入力保護回路において、突入電流抑制および過電流保護機能を兼ね備えた状態で、入出力間の電圧降下が低い回路方式を提供する。
【解決手段】入出力間に接続されたスイッチ手段51と、スイッチ手段51と並列に接続されたヒューズ抵抗52と、出力電圧を平滑する平滑コンデンサ55と、出力電流に基づいて電流検出信号を生成する電流検出回路54と、スイッチ手段51を制御する制御回路53とを備え、制御回路53は、入力電圧が供給されてから所定時間後にスイッチ手段51をオンに切り替え、電流検出回路53が過電流を検出した際にスイッチ手段51をオフに切り替える。
【効果】入出力間の電圧降下を抑えることができるため、回路系全体の効率の低下を抑えることができる。突入電流を抑制できるため、平滑コンデンサの容量を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はUSB(Universal Serial Bus)接続機器の入力保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチ出力タイプのUSBホスト装置が多くなっている。図1は2出力タイプのUSBホスト装置11と、USBホスト装置11に接続されたUSB接続機器12を表すものである。一般にUSBホスト装置11には、接続するUSB接続機器12に必要以上に電流が流れないように、過電流保護回路13が設けられている。
【0003】
USB出力は、電圧4.75〜5.25V、電流500mAに規定されている。このため、2出力のUSBホスト装置11では、例えば、各出力電流の合計Iohが1600mA程度を超えないように過電流保護が行われる。しかし、1出力だけを使用する場合、USB接続機器12に対して最大で1600mAまで電流が供給されることになる。同様に、3出力のUSBホスト装置では、過電流保護が2400mA程度となる。この場合、USB接続機器12側で電流を制限しなければ、第1のUSB出力端子14やUSB接続機器12の入力端子15、ケーブル16などで想定外の発熱が発生し危険である。そのため、USB接続機器12側にも過電流保護回路17を設ける必要がある。
【0004】
直流電源に使用される過電流保護回路として、例えば、特許文献1が知られている。
【0005】
図2に過電流保護回路の一例を示す。入力端子21と出力端子22との間には、P型MOSFET23と電流検出抵抗24が直列に接続されている。また、入力端子21とGND端子25との間には、分圧抵抗26と27が直列に接続されている。分圧抵抗26と27の接続点には、MOSFET23のゲートが接続されている。また、MOSFET23と電流検出抵抗24との間には、平滑コンデンサ28の一端が接続されており、平滑コンデンサ28の他端はGND端子25に接続されている。また、電流検出抵抗24の両端とGND端子25との間には、それぞれ分圧抵抗29と30の直列回路および31と32の直列回路が接続されている。
【0006】
この分圧抵抗29〜32は、電流検出抵抗24の両端の電圧降下を検出し、この検出信号はコンパレータ33に供給されている。コンパレータ33の出力は、直列に接続された抵抗34、35を介して入力端子21に接続されている。抵抗34と35の接続点には、PNP型のトランジスタ36のベースが接続されている。また、トランジスタ36のエミッタが入力端子21に接続され、トランジスタ36のコレクタがMOSFET23のゲートに接続されている。
【0007】
入力電圧Vinが供給されると、MOSFET23のゲート−ソース間に入力電圧Vinを分圧抵抗26と27により分圧した電圧が印加される。すると、MOSFET23はオンとなり、入出力間が接続される。電流検出抵抗24に流れる電流が所定値を超えると、コンパレータ33の出力がローとなり、トランジスタ36はオンに切り替わる。すると、MOSFET23がオフとなり、入力端子21と出力端子22との間に流れる電流が遮断される。このように、電流検出抵抗24に流れる電流を検知し、過電流を検知したときに入出力間の回路を遮断することで機器を保護している。
【0008】
また、過電流保護を行うための別の手段として、ヒューズを用いる方法がある。ヒューズを用いた過電流保護回路を図3に示す。入力端子21と出力端子22との間には、ヒューズ41が接続されている。また、出力端子22とGND端子25との間には、平滑コンデンサ28が接続されている。入出力間に接続されているヒューズ41に過電流が流れるとヒューズ41が溶断し、入力端子21と出力端子22との間が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−136734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
USB出力は電流500mAに規定されている。一般に、ヒューズ定格値は機器の定常電流の約1.5〜2倍を目安とされており、図3の回路では一例として、ヒューズ41には750mAクラスのものを使用したとする。750mAクラスのヒューズでは、直流抵抗が0.5Ω程度ある。ヒューズに500mAの電流が流れた場合、ヒューズ41における電圧降下は0.25Vとなるため、その分、出力電圧Voutが降下してしまう。
【0011】
また、図1のように、図2もしくは図3に示した過電流保護回路17を備えたUSB接続機器12を2出力のUSBホスト装置11と接続する。このときの、各部の電圧、電流波形を図4に示す。
【0012】
時刻TにてUSBホスト装置11にUSB接続機器12を接続し、USB接続機器12に電圧Vinを供給する。すると、入力電流Iinが一瞬ではあるが大きな値になり、期間t1において電流が流れる。これは、図2もしくは図3に示した平滑コンデンサ28に突入電流が流れ込むためである。このとき、USB接続機器12が接続されていない第2のUSB出力端子18側の電圧Vin2は、突入電流の影響で一瞬電圧低下を起こしてしまう。
【0013】
これらの問題を防止する手段として、図5に示すように突入電流を抑えるための抵抗42を使用することが考えられる。図5の回路は、図3に示した過電流保護回路13の入力端子21とヒューズ41間に抵抗42を接続したものである。しかし、突入電流を抑えるために抵抗42を接続すると、入出力間の電圧降下が増加するため、出力電圧Voutがさらに降下してしまう。
【0014】
また、他の手段として、突入電流が流れる時間を短くするために、平滑コンデンサ28の容量を極端に小さくすることが考えられる。ここで、平滑コンデンサ28の容量を極端に小さくした場合の各部の電圧、電流波形を図6に示す。平滑コンデンサ28の容量を小さくすると、突入電流が流れる期間t2が短くなり、第2のUSB端子18の出力側19の電圧Vin2の低下を小さくすることができる。しかし、平滑コンデンサ28の容量を小さくすると、出力電圧Voutのリプル分が増加するため、特性上好ましくない。
【0015】
本発明は以上の問題を考慮してなされたものであり、USB接続機器の入力保護回路において、突入電流抑制および過電流保護機能を兼ね備えた状態で、入出力間の電圧降下を抑えた回路方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、このような目的を達成するために、USB接続機器に用いられる入力保護回路であって、入出力間に接続されたスイッチ手段と、該スイッチ手段と並列に接続されたヒューズ抵抗と、出力電圧を平滑する平滑コンデンサと、出力電流に基づいて電流検出信号を生成する電流検出回路と、該スイッチ手段を制御するための制御回路とを備え、該制御回路は、入力電圧が供給されてから所定時間後に該スイッチ手段をオンに切り替え、該電流検出回路が過電流を検出した際に供給される該電流検出信号に応じて該スイッチ手段をオフに切り替えることを特徴とする。
【0017】
また本発明の前記制御回路は、前記平滑コンデンサ電圧に基づいて遅延信号を生成する時定数回路を有し、該遅延信号に応じて前記スイッチ手段をオンに切り替えることを特徴とする。
【0018】
また本発明の前記制御回路は、前記入力電圧に基づいて遅延信号を生成する時定数回路を有し、該遅延信号に応じて前記スイッチ手段をオンに切り替えることを特徴とする。
記載の入力保護回路。
【0019】
また本発明の前記スイッチ手段にMOSFETを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、突入電流抑制と、過電流保護機能を兼ね備え、さらに入出力間の電圧降下を抑えたUSB接続機器の入力保護回路を得ることができる。保護回路の入出力間における電圧降下を抑えることができるため、回路系全体の効率の低下を抑えることができる。特に、使用する電圧がミニマム4.5V以上のUSB接続機器に適する。また、突入電流を抑制できるため、平滑コンデンサの容量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】2出力タイプのUSBホスト装置に接続したUSB接続機器を表す
【図2】従来の過電流保護回路の第1の例
【図3】従来の過電流保護回路の第2の例
【図4】従来の過電流保護回路の第1または第2の例における各部の電圧電流波形
【図5】従来の過電流保護回路の第3の例
【図6】従来の過電流保護回路の第3の例における各部の電圧電流波形
【図7】本発明の入力保護回路の第1の実施形態
【図8】本発明の入力保護回路の第2の実施形態
【発明を実施するための形態】
【0022】
図7は、本発明に係る入力保護回路の第1の実施形態を示す。図7に示す入力保護回路は、スイッチ手段51、ヒューズ抵抗52、電流検出回路53、制御回路54、平滑コンデンサ55とを備える。
【0023】
入力端子21には、スイッチ手段51の一端が接続されている。スイッチ手段51の他端と出力端子22との間には、電流検出回路53が接続されている。また、ヒューズ抵抗52がスイッチ手段51と並列に接続されている。また、スイッチ手段51の他端と電流検出回路53との間には、平滑コンデンサ55の一端が接続されており、平滑コンデンサ55の他端にはGND端子25が接続されている。制御回路54には、平滑コンデンサ55の電圧Vcと電流検出回路53の出力信号が供給されている。そして、電流検出回路で検出された出力信号に応じてスイッチ手段51のオンオフが切り替わるように、制御回路54が構成されている。
【0024】
本実施形態ではスイッチ手段51として、オン抵抗の低いP型MOSFET61を用いている。図7のように、MOSFET61のソースは入力端子21に接続され、MOSFET61のドレインは電流検出回路53に接続されている。制御回路54の出力信号はMOSFET61のゲートに供給されている。
【0025】
次に、電流検出回路53の具体的な構成を説明する。電流検出回路53は、電流検出抵抗71、分圧抵抗72〜75、コンパレータ76、ツェナーダイオード77、コンデンサ78とを備える。
【0026】
電流検出抵抗71は、MOSFET61のドレインと出力端子22との間に接続されている。電流検出抵抗71の一端には、分圧抵抗72と73との直列回路の一端が接続されている。分圧抵抗72と73との直列回路の他端には、ツェナーダイオード77のカソードが接続されている。また、電流検出抵抗71の他端には、分圧抵抗74と75との直列回路の一端が接続されている。分圧抵抗74と75との直列回路の他端には、ツェナーダイオード77のカソードが接続されている。ツェナーダイオード77のアノードは、GND端子25に接続されている。また、ツェナーダイオード77で発生するノイズを除去するため、コンデンサ78がツェナーダイオード77と並列に接続されている。このようにして、電流検出抵抗71の両端の電圧は、分圧抵抗72と73との直列回路と分圧抵抗74と75との直列回路により分圧され、コンパレータ76に供給される。
【0027】
電流検出抵抗71の電圧降下が所定値以下の場合には、コンパレータ76の出力はローとなる。また、電流検出抵抗71の電圧降下が所定値に達すると、コンパレータ76の出力はハイとなる。このように、電流検出抵抗71に流れる電流が所定値を超えるとコンパレータ76の出力が反転する。コンパレータ76の出力は、制御回路54へと供給される。この所定値は、ツェナーダイオード77のツェナー電圧および分圧抵抗72〜75の各抵抗値により任意に設定できる。
【0028】
次に、制御回路54の具体的な構成を説明する。制御回路54は分圧抵抗81、82、NPN型のトランジスタ83、抵抗84、85、コンデンサ86、NPN型のデジタルトランジスタ87とを備える。
【0029】
分圧抵抗81、82、トランジスタ83は、入力端子21とGND端子25との間に直列に接続されている。分圧抵抗81と82の接続点には、MOSFET61のゲートが接続されている。トランジスタ83が導通していないときには、MOSFET61のゲート−ソース間には電圧が印加されないため、MOSFET61はオフとなる。また、トランジスタ83が導通しているときには、分圧抵抗81、82によって入力電圧Vinを分圧した電圧がMOSFET61のゲートに印加されるため、MOSFET61はオンとなる。すると、入出力間のインピーダンスが低くなる。このように、トランジスタ83のオンオフを切り替えることで、MOSFET61がオンオフ制御される。
【0030】
また、直列に接続された抵抗84、85、コンデンサ86は、平滑コンデンサ55と並列に接続されている。コンデンサ86は抵抗84、85を介して充電される。そのため、抵抗84、85の値もしくはコンデンサ86の容量が大きいほどコンデンサ86の充電に要する時間が長くなる。このように、抵抗84、85、コンデンサ86より時定数回路が構成されている。コンデンサ86に充電される電圧はトランジスタ83のベースに印加されている。トランジスタ83のベース電圧Vbは、抵抗84と抵抗85およびコンデンサ86によって設定される時定数に応じて徐々に上昇し、トランジスタ83のしきい値電圧を越えるとトランジスタ83がオンとなり、MOSFET61が導通する。
【0031】
このように、抵抗84、85、コンデンサ86より入力電圧Viが供給されてからMOSFET61がオンとなるまでのタイミングは、抵抗84、85およびコンデンサ86によって設定される。
【0032】
また、デジタルトランジスタ87のコレクタは、抵抗84と85との間に接続されており、デジタルトランジスタ87のエミッタはGND端子25に接続されている。また、デジタルトランジスタ87のベースには、電流検出回路53内のコンパレータ76の出力が供給されている。
【0033】
電流検出回路53が過電流を検出するとコンパレータ76の出力がハイとなる。すると、デジタルトランジスタ87はオンとなり、コンデンサ86に充電されている電荷が放電され、トランジスタ83はオフとなる。すると、MOSFET61もオフに切り替わり、ヒューズ抵抗52を介して電流が流れるようになる。そして、ヒューズ抵抗52に定格以上の電流が流れるなどして発熱すると内蔵ヒューズが切れ、入出力間が切り離される。過電流が流れた際にはこのようにして回路保護される。
【0034】
このように、本実施形態では、入力電圧Vinが供給されてから所定時間が経過するまで、MOSFET61はオフ状態を維持するように制御回路54によって制御される。この所定時間は、時定数回路内の抵抗84、85およびコンデンサ86のパラメータによって設定される。MOSFET61がオフの期間、インピーダンスが高いヒューズ抵抗52を介して平滑コンデンサ55が充電されるため、突入電流を十分に抑制することができる。また、突入電流を抑制できるので、大容量の平滑コンデンサ55を使用することができ、出力電圧Voutに含まれるリプル電圧をより低減することができる。
【0035】
入力電圧Vinが供給されてから所定時間が経過すると、制御回路54はMOSFET61をオンに切り替える。すると、インピーダンスの高いヒューズ抵抗52には電流が流れなくなり、オン抵抗の低いMOSFET61を通して出力電流が流れる。ここで、例えばMOSFET61のオン抵抗が0.05Ωとすると、USBの定格電流500mAが流れる場合でも、MOSFET61における電圧降下が0.025Vと非常に小さい値になる。また、電流検出回路53内の電流検出抵抗71を0.05Ωとすると、電流検出抵抗71での電圧降下は0.025Vとなる。すると、入力端子21と出力端子25との間の電圧降下は0.05Vと非常に小さくすることができる。このように、定常動作時においては、入出力間の電圧降下を小さく抑えることができるため、回路系全体の効率の低下を抑えることができる。
【0036】
USB出力に規定されている電圧の下限値4.75Vが入力電圧Vinであるとしても、出力電圧は約4.70Vとなる。従来では、突入電流を保護するために入出力間の電圧降下が大きくなっていたが、本発明に係る入力保護回路では入出力間の電圧降下が小さく、用いる電圧がミニマム4.5V以上のUSB接続機器などにも適する。
【0037】
また、電流検出回路53が過電流を検出したときには、制御回路54はMOSFET61をオフに切り替えるよう動作する。これにより、入出力間の電流経路がMOSFET61からヒューズ抵抗52に切り替わり、入出力間はインピーダンスが高いヒューズ抵抗52を介して接続される。そして、ヒューズ抵抗52の定格を上回る出力電流が流れ続けると、抵抗が発熱し内蔵ヒューズが溶断し、入出力間が遮断される。このようにして、機器を過電流から保護することができる。
【0038】
次に、第2の実施形態について説明する。図8は、本発明に係る入力保護回路の第2の実施形態を示す。ここで、図7に示す入力保護回路と同一の要素については同一の符号を記し、その説明を省略する。
【0039】
図8に示す入力保護回路は、図7に示す入力保護回路と電流検出回路53、制御回路54の構成が異なる。電流検出回路53’は、電流検出抵抗71’をGND側に設け、電流検出をマイナス側で行うようにしたものである。また、制御回路54’内の時定数回路をスイッチ手段51の前段部に接続したものである。また、スイッチ手段51はPNP型のデジタルトランジスタ87’によって制御されるようにしたものである。
【0040】
まず、電流検出回路53’の具体的な構成を説明する。電流検出回路53’は、電流検出抵抗71’、分圧抵抗72’〜75’、コンパレータ76’、ツェナーダイオード77’、コンデンサ78’ 、抵抗79とを備える。
【0041】
電流検出抵抗71’はGND側に設けられている。電流検出抵抗71’の一端には、分圧抵抗72’と73’との直列回路の一端が接続されている。分圧抵抗72’と73’との直列回路の他端には、ツェナーダイオード77’のカソードが接続されている。また、電流検出抵抗71’の他端には、分圧抵抗74’と75’との直列回路の一端が接続されている。分圧抵抗74’と75’との直列回路の他端には、ツェナーダイオード77’のカソードが接続されている。ツェナーダイオード77’のアノードは、GND端子25に接続されている。また、ツェナーダイオード77’で発生するノイズを除去するため、コンデンサ78’がツェナーダイオード77’と並列に接続されている。また、ツェナーダイオード77’のカソードと入力端子21との間には、ツェナーダイオード77’に流れる電流を制限するための抵抗79が接続されている。このようにして、電流検出抵抗71’の両端の電圧は分圧抵抗72’と73’との直列回路と分圧抵抗74’と75’との直列回路により分圧され、コンパレータ76’に供給される。電流検出抵抗71’に流れる電流が所定値を超えると、コンパレータ76’の出力が反転する。コンパレータ76’の出力は制御回路54’へと供給される。この所定値は、ツェナーダイオード77’のツェナー電圧および分圧抵抗72’〜75’の各抵抗値により任意に設定できる。
【0042】
次に、制御回路54’の具体的な構成を説明する。制御回路54’は、分圧抵抗81’、82’、NPN型のトランジスタ83’、抵抗84’、コンデンサ86’、PNP型のデジタルトランジスタ87’とを備える。
【0043】
分圧抵抗81’、82’、トランジスタ83’は、入力端子21とGND端子25との間に直列に接続されている。分圧抵抗81’と82’の接続点には、MOSFET61のゲートが接続されている。トランジスタ83’が導通していないときには、MOSFET61のゲート−ソース間には電圧が印加されないため、MOSFET61はオフとなる。また、トランジスタ83’が導通しているときには、MOSFET61はオンとなる。
【0044】
また、直列に接続された抵抗84’、コンデンサ86’は、入力端子21とGND端子25との間に接続されている。コンデンサ86’は抵抗84’を介して充電される。そのため、抵抗84’の値もしくはコンデンサ86’の容量が大きいほどコンデンサ86’の充電に要する時間が長くなる。このように、抵抗84’とコンデンサ86’より時定数回路が構成されている。コンデンサ86’に充電される電圧はトランジスタ83’のベースに印加されている。トランジスタ83’のベース電圧Vbは、抵抗84’およびコンデンサ86’によって設定される時定数に応じて徐々に上昇し、トランジスタ83’のしきい値電圧を越えるとトランジスタ83’がオンとなり、MOSFET61が導通する。
【0045】
このように、入力電圧Viが供給されてからMOSFET61がオンとなるまでのタイミングは、抵抗84’およびコンデンサ86’によって設定される。
【0046】
また、デジタルトランジスタ87’のコレクタは、MOSFET61のゲートに接続されており、デジタルトランジスタ87’のエミッタは入力端子21に接続されている。また、デジタルトランジスタ87’のベースには、電流検出回路53’内のコンパレータ76’の出力が供給されている。
【0047】
電流検出回路53’が過電流を検出するとコンパレータ76’の出力がローとなる。すると、デジタルトランジスタ87’はオンとなり、MOSFET61のゲート−ソース間が接続される。するとMOSFET61はオフに切り替わり、ヒューズ抵抗52を介して電流が流れるようになる。そして、ヒューズ抵抗52に定格以上の電流が流れるなどして発熱すると内蔵ヒューズが切れ、入出力間が切り離される。
【0048】
このようにして入出力間が遮断されると、出力電流は流れなくなり、電流検出回路53’内のコンパレータ76’の出力はローからハイに切り替わる。すると、デジタルトランジスタ87’はオフに切り替わる。抵抗84’とコンデンサ86’より構成されている時定数回路は、MOSFET61の前段部に構成されているため、トランジスタ83’は導通したままである。そのため、MOSFET61のゲート−ソース間には、分圧抵抗81’、82’によって入力電圧Vinを分圧した電圧が印加される。よって、MOSFET61はオンとなる。このようにして再び入出力間が接続された後、出力電流が所定値を越えて電流検出回路53’が過電流を検出すると、MOSFET61はオフに切り替わり、再度入出力間が切り離される。ヒューズ抵抗52の内蔵ヒューズが溶断した後は、このような動作が繰り返される。
【0049】
このように、ヒューズ抵抗52内の内蔵ヒューズが切れた後にも過電流が流れる場合、MOSFET61が間欠動作することで一定値以上の電流は流れなくなる。本実施形態では、このようにして過電流に対する保護がなされる。
【0050】
また、第1の実施形態と同様に、入力電圧Vinが供給されてから所定時間が経過するまでは、インピーダンスが高いヒューズ抵抗52を介して平滑コンデンサ55が充電される。そのため、突入電流を十分に抑制することができる。そして、入力電圧Vinが供給されてから所定時間が経過すると、オン抵抗の低いMOSFET61を通して出力電流が流れる。よって、入出力間の電圧降下を小さく抑えることができる。
【0051】
第1の実施形態と第2の実施形態とを比較して過電流が流れたときの保護動作が異なるのは、時定数回路の接続位置が異なるためである。第1の実施形態において、抵抗84、85、コンデンサ86からなる時定数回路は、スイッチ手段51の後段に接続されている。この場合、過電流が流れてヒューズ抵抗52の内蔵ヒューズが切れた後は、スイッチ手段51はオフ状態を維持し、出力電流が再び流れることはない。それに対し、第2の実施形態において、抵抗84’、コンデンサ86’からなる時定数回路は、スイッチ手段51の前段に接続されている。この場合、過電流が流れてヒューズ抵抗52の内蔵ヒューズが切れた後は、スイッチ手段51が間欠動作する。これにより、一定値以上の出力電流は流れなくなり、過電流から回路を保護する。よって、USB接続機器12に本発明に係る入力保護回路を用いることで、USBホスト装置11側で過電流保護を行わなくとも、各機器間の接続端子やケーブル16などで過度な発熱が生じることもなくなる。
【0052】
ヒューズ抵抗52を単なる抵抗に置き換えた場合にも突入電流を抑えることはできる。しかし、過電流が流れた際に入出力間に接続されているスイッチ手段51をオフにしても、この抵抗部で発熱してしまうため危険である。本発明のようにヒューズ抵抗52を用いることでこのような問題はなくなる。また、電流検出回路53が過電流を検出してスイッチ手段51をオフに切り替えるときの電流値より、ヒューズ抵抗52が切れるときの電流値すなわちヒューズ抵抗52の定格電流を小さくする。例えば、ヒューズ抵抗52の定格電流をUSB出力の規定電流と同じ程度に設定しておく。すると、過電流が流れてスイッチ手段51をオフに切り替わった際に、内蔵ヒューズは確実に溶断され、回路や接続端子などで過度な発熱が発生することはなくなる。
【0053】
以上説明したように、本発明に係る入力保護回路によれば、突入電流抑制と過電流保護機能を兼ね備えた状態で入出力間の電圧降下の低い入力保護回路を提供することができる。
【0054】
なお、突入電流のピーク値を抑制するため、ヒューズ抵抗52の抵抗値を大きい値に選定し、スイッチ手段51と並列に接続する構成としてもよい。
【0055】
上記第1の実施形態では、電流検出回路53が過電流を検出したとき、NPN型のデジタルトランジスタ87によりトランジスタ83を制御し、MOSFET61をオフに切り替えている。また、上記第2の実施形態では、電流検出回路53’が過電流を検出したとき、PNP型のデジタルトランジスタ87’によりMOSFET61のゲート−ソース間の電圧を制御し、MOSFET61をオフに切り替えている。本発明はこれらの実施形態に限ることはなく、電流検出回路が過電流を検出したとき、MOSFET61をオフに切り替えるように制御回路を構成すればよい。
【0056】
上記第1の実施形態における電流検出回路53ではプラス側、上記第2の実施形態における電流検出回路53’ではマイナス側で電流検出を行った。本発明はこれらの実施形態に限ることはなく、出力電流が所定値より大きくなったとき、スイッチ手段51をオフにするための信号を制御回路に供給するよう電流検出回路を構成すればよい。
【符号の説明】
【0057】
21 入力端子
22 出力端子
25 GND端子
51 スイッチ手段
52 ヒューズ抵抗
53、53’ 電流検出回路
54、54’ 制御回路
55 平滑コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
USB接続機器に用いられる入力保護回路であって、
入出力間に接続されたスイッチ手段と、該スイッチ手段と並列に接続されたヒューズ抵抗と、出力電圧を平滑する平滑コンデンサと、出力電流に基づいて電流検出信号を生成する電流検出回路と、該スイッチ手段を制御するための制御回路とを備え、
該制御回路は、入力電圧が供給されてから所定時間後に該スイッチ手段をオンに切り替え、該電流検出回路が過電流を検出した際に供給される該電流検出信号に応じて該スイッチ手段をオフに切り替えることを特徴とする入力保護回路。
【請求項2】
前記制御回路は、平滑コンデンサ電圧に基づいて遅延信号を生成する時定数回路を有し、該遅延信号に応じて前記スイッチ手段をオンに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の入力保護回路。
【請求項3】
前記制御回路は、前記入力電圧に基づいて遅延信号を生成する時定数回路を有し、該遅延信号に応じて前記スイッチ手段をオンに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の入力保護回路。
【請求項4】
前記スイッチ手段にMOSFETを用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の入力保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−101512(P2011−101512A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254733(P2009−254733)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】