説明

VEGF−D突然変異体およびそれらの使用

本発明は、ダイマーインターフェースにおいて1種もしくはそれ以上のアミノ酸突然変異を含むVEGF-Dタンパク質、および治療での、特に、血管新生の促進でのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、VEGF受容体でのその活性を増加させるVEGF-Dの修飾、および治療でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血管内皮成長因子(VEGF)は、胚発生の間、血管新生およびリンパ管形成を誘導し、成体期には血管系を維持する、重要な成長因子と考えられている。それらの異常な発現はまた、いくつかの病的状態、例えば、癌および網膜症で見出される。VEGF-Aは、VEGF-B、-C、-Dおよび胎盤性成長因子PIGFならびにOrfウイルス由来VEGF-Eタンパク質およびヘビ毒からの複数のホモログを含む関連成長因子の巨大なファミリーに属する。ヒトでの内在性VEGFタンパク質ファミリーメンバーは、mRNAのオルタナティブスプライシングまたはタンパク質分解性切断の結果として、いくつかのアイソフォームで存在する。これらの変異型の血管新生効果は、3つの主要なVEGF受容体、ニューロピリンのようなコレセプター、へパラン硫酸プロテオグリカンおよび細胞外マトリクスの他の構成要素に対する異なる特異性および親和性のために、かなり変化する。
【0003】
VEGFR-2は、血管新生を制御する最も重要な受容体であり、それは、主に、内皮細胞で発現している。哺乳類VEGFR-2リガンドは、VEGF-A、VEGF-CおよびVEGF-Dを含む。VEGFR-2に加えて、VEGF-Cおよび-Dは、リンパ管形成を仲介する受容体であるVEGFR-3のリガンドであり、それ故に、リンパ管血管系の形成に参加する。VEGF-Aはまた、胚発生の間、主に、非シグナル伝達デコイ受容体として機能するVEGFR-1に結合する。成体において、この受容体は、マクロファージおよび単球のような炎症細胞の遊走を仲介することが知られているが、血管新生におけるその役割については、まだ論争中である。
【0004】
血管新生レギュレーターとしての重要性のために、VEGFファミリーメンバーは、異なる病的状態で血管新生過程を調整するための潜在的な治療薬として提案されている(Ylae-Herttuala 2003)。インビボ研究では、VEGFを、組み換えタンパク質として直接に、もしくは遺伝子治療ベクターを用いて組織に導入することにより、血管新生を誘導することが行われている(Markkanen 2005)。いくつかの研究からの結果は、VEGFファミリーメンバーがインビボで強い血管新生活性を有し、それらは、下肢虚血および冠動脈疾患のような状態のための潜在的に有用な治療薬であることを示している。これらの因子の中で、VEGF-Dの成熟型(VEGF-DΔNΔC、下記を参照)およびVEGF-Aの成熟型は、治療的血管新生を誘導するのに最も有望であることが見出されている。
【0005】
VEGFは、血小板由来成長因子(PDGF)と構造類似性を有しており、それらは、一緒になって、VEGF/PDGFファミリーとして分類され、より巨大なシステインノット成長因子スーパーファミリーに属する。ファミリーメンバーは、多くの細胞外タンパク質で見出され、多くの種間で保存されている、システインノットモチーフを共有する。システインノットタンパク質の特徴は、それらが3つのジスルフィド結合により結合した逆平行βシートの保存的構造を含むことである。一般的には、システインノット成長因子は、ダイマーを形成し、それは、VEGF/PDGFファミリーの場合には、しばしば、サブユニット間ジスルフィド結合により結合している。
【0006】
VEGF受容体は、受容体型タンパク質チロシンキナーゼに属し、二量体化により活性化される。VEGFR活性化のために、リガンドの二量体化は、不可欠である。1つのVEGF-Aダイマーは、その両端から2つの別々の受容体モノマーに結合し、受容体二量体化を生じ、その結果、細胞内チロシンキナーゼ活性を誘導する。遊離もしくはVEGF受容体との複合体での、VEGFファミリーメンバーのいくつかの実験的解像(solved)3D構造によると、それらはすべて、極めて類似した三次構造を有しており、おそらくは、同様のメカニズムにより受容体活性化を誘導する。
【0007】
VEGFファミリーにおいて、VEGF-CおよびVEGF-Dは、それら自身のサブファミリーに小分類され得て、それは、他のVEGFと比較したときのそれらのより高度な一次配列類似性により反映される。下記を含むいくつかの特徴が存在する: 1) それらは、リンパ管形成仲介受容体であるVEGFR-3に結合する唯一のVEGFであり; 2) VEGF-A、-BおよびPLGFとは対照的に、VEGF-CおよびVEGF-Dは、長いタンパク質前駆体として発現する。これらの形態は、弱い受容体結合親和性を有しており、より活性な成長因子に変換されるために、VEGF-CおよびVEGF-Dは、それらのN末端およびC末端からタンパク質分解的に切断され; 3) ファミリーの他のメンバーとは対照的に、VEGF-Dの成熟タンパク質分解性切断型であるVEGF-DΔNΔCは、主に、非共有結合ダイマーもしくはモノマーとして存在し、わずかに、共有的に結合したジスルフィド結合により結合したダイマーとして存在することが見出されている。これらの研究はまた、VEGF-DΔNΔCのモノマー画分がまた、ダイマー画分と比較して、非常に弱い活性のみを有することを示している。主要なダイマーの非共有的性質は、他のVEGFファミリー成長因子でサブユニット間結合を形成するシステイン残基がVEGF-Dタンパク質に保存されているので、いくらか驚きである。
【0008】
システインノット構造に関与するVEGF-Aのシステインは、タンパク質の構造および機能についてそれらの重要性を調べるために、以前の研究で突然変異が導入されている。サブユニット間ジスルフィド結合は、これらのシステインをアラニンで突然変異させたVEGF-Aがその生物学的活性を失ったので、その生物学的機能のために必要であることが見出されている。保存システインのうちの1つ(Cys156)がセリンに変換されたVEGF-C突然変異体は、完全にそのVEGFR-2活性化能力を失ったが、なおVEGFR-3を活性化できる。VEGF-CおよびVEGF-Dの成熟型はまた、提案されたサブユニット間ジスルフィド結合形成システイン残基の近くに位置する不対システイン残基を含む。最近、C. elegans由来のpvf-1遺伝子が、ヒトVEGFR-1および-2を活性化し、また部分的に共有結合したダイマーであるVEGF/PDGFホモログをコードすることが示されている。このタンパク質はまた、VEGF-CおよびVEGF-Dのように、ダイマーインターフェース上に不対システインを有する。
【発明の概要】
【0009】
発明の要約
本発明は、他のVEGF中のサブユニット間ジスルフィド架橋形成に関与するシステイン、およびVEGF-Dの不対インターフェースシステイン残基を、タンパク質スキャフォールドとして成熟VEGF-D型のVEGF-DΔNΔCを用いて、各々別々にアラニンに突然変異させた研究に基づくものである(Achen 1998, Stacker 1999)。VEGF-Dは、より活性化するためにタンパク質分解的に切断さるが、このタンパク質分解性切断型は、主に、非共有結合ダイマーもしくはモノマーとして存在する。成熟VEGF-DであるVEGF-DΔNΔCの共有結合二量体の増加は、突然変異誘発によりVEGF-Dのダイマー形成インターフェースを改変することで達成され得ることが見出された。また、さまざまな異なるアミノ酸を用いたVEGF-DΔNΔCタンパク質中のCys25の置換は、共有結合ダイマーの形成を増加させ、またVEGF受容体でのタンパク質の活性を著しく増大させることが見出された。本発明は、VEGF受容体活性化のために、VEGFリガンドの共有結合二量体化が有益であるとの理解に基づく。したがって、本発明は、1種もしくはそれ以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されており、それによりダイマーインターフェースが改変されたという点で修飾されているVEGF-Dタンパク質である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、VEGF-DΔNΔCアミノ酸配列と哺乳類VEGFファミリーメンバーのVEGF相同性ドメイン配列のアライメントを示す。VEGF-DΔNΔC配列中のシステイン残基および突然変異システイン残基は、強調している。
【図2】図2は、VEGF-DΔNΔCの相同性モデル上の突然変異システイン残基の位置を示す。突然変異システインアミノ酸残基は、VEGF-DΔNΔC配列中のそれらの位置にしたがって命名されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい態様の説明
本発明は、1種もしくはそれ以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されており、それによりダイマーインターフェースが改変されたという点で修飾されているVEGF-Dタンパク質である。この意義は、VEGF-Dタンパク質のダイマーインターフェースに影響を与える任意のアミノ酸、すなわち、VEGF-Dダイマー形成のために重要なアミノ酸の突然変異を包含する。ダイマーインターフェースは、二量体化するとき、他のVEGF-Dタンパク質と結合するVEGF-Dタンパク質上の領域である。好ましくは、ダイマーインターフェースの立体構造は、改変されている。これは、タンパク質三次元構造に影響を与える突然変異により生じ得る。突然変異したアミノ酸は、タンパク質が二量体化するとき、他のアミノ酸と結合するアミノ酸であり得る。ダイマーインターフェースを改変し得るアミノ酸の例は、VEGF-DΔNΔCのCys25である。
【0012】
本発明のVEGF-Dタンパク質は、突然変異を含んでおり、その結果、該タンパク質の二量体化特性は、野生型タンパク質と比較して改変される。好ましくは、本発明のVEGF-D突然変異体は、野生型VEGF-Dよりも、より高いダイマー:モノマー比率を有する。したがって、本発明において、VEGF-Dタンパク質は、モノマー、ダイマーもしくはその混合物として存在し得る。好ましくは、VEGF-Dタンパク質は、実質的にダイマーとして存在する。
【0013】
タンパク質分解性切断型VEGF-DであるVEGF-DΔNΔCの配列は、配列番号1として示される。好ましい態様において、本発明は、1種もしくはそれ以上のCys残基が他のアミノ酸で置換されたVEGF-DΔNΔC(配列番号1)タンパク質を含む。この突然変異は、野生型VEGF-DΔNΔCと比較して、ダイマー:モノマー比率を増加させ得る。好ましい態様において、該配列の25番目のアミノ酸(Cys25)は、他のアミノ酸で置換されている。好ましくは、アミノ酸は、Leu、Ile、Val、Ala、Ser、Phe、TrpおよびAsnから選択される。より好ましくは、アミノ酸は、Leu、IleおよびValから選択される。
【0014】
本発明のVEGF-Dタンパク質または本発明のVEGFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、血管新生の促進用医薬の製造のために使用され得る。血管新生の促進は、体内組織の多くの疾患の処置もしくは予防において有用であり得る。体内組織は、血管、例えば、冠動脈もしくは冠静脈、またはリンパ管であり得る。体内組織はまた、器官、例えば、眼、耳、肺、腎臓、筋肉、心筋、脳、卵巣、前立腺、子宮、胎盤および皮膚であり得る。器官および他の組織はまた、患者に移植され得て; 例えば、患者は、移植腎もしくは動脈もしくは静脈移植血管を受け得る。
【0015】
本発明のVEGF-Dタンパク質または上記した発現ベクターは、創傷の処置において有用であり得る。さらなる態様において、それらは、虚血もしくは冠動脈疾患の処置もしくは予防において有用である。他の態様において、それらは、神経学的障害の処置において有用である。
【0016】
治療的使用のために、本発明のペプチドを、当業者に既知の手順により、当業者に既知の構成要素を用いて、製剤および投与し得る。ペプチドの適当な用量は、通常の要因、例えば、処置される対象の状態、化合物の有効性、投与経路などを考慮して、当業者により選択され得る。適当な投与経路は、経口、静脈、腹腔内、筋肉内、経鼻および皮下を含む。
【0017】
下記の試験は、本発明を例示するものである。
【実施例】
【0018】
構築体のクローン化およびウイルス作製
この試験で使用されるVEGF-DΔNΔC遺伝子は、野生型VEGF-D配列からのヌクレオチド277-603(アミノ酸93-201に対応する)を含む。本明細書で使用される番号は、図1で示されたVEGF-DΔNΔC配列に基づく。N末端IL-3シグナル配列をコードする配列およびFlag-タグおよびC末端6xHisをコードする配列を、VEGF-DΔNΔC配列と融合させる。突然変異体VEGF-DΔNΔCタンパク質をコードするプラスミドは、鋳型としてpEntry-VEGF-DΔNΔCプラスミドを用いて、quickchange部位特異的突然変異誘発法により作製された。ヒトVEGF-A121 cDNAを、BP反応を用いて、pDonr201ベクター(Invitrogen)にクローン化した。次いで、Entryクローンのコード配列を、LR反応を用いて、pBVboostFG系ベクターにクローン化した(Laitinen 2005)。組み換えバキュロウイルスは、以前記載されたとおり、作製された。
【0019】
昆虫細胞培養でのタンパク質発現および精製
組み換えタンパク質を、High Five細胞に感染させた組み換えバキュロウイルス中で、振とう培養で72時間、発現させた(MOI 5)。タンパク質を、BD Talon Metal Affinity Resin (BD Biosciences Clontech)を用いて、精製培養培地から精製した。3 mlの樹脂を、室温で2時間、培地中で撹拌し、樹脂を集め、クロマトグラフィーカラムに移動させた。洗浄は、300mM NaClを含有する30mlの50mMリン酸ナトリウム、pH 7,0を用いて行われた。組み換えタンパク質を、50mM HEPES、20mM NaCl、200 mMイミダゾール、pH7.4を用いて溶出した。タンパク質を、50mM HEPES、20mM NaCl、pH7.4で透析し、イミダゾールを除去した。タンパク質濃度は、基準としてBSAを用いて、DCタンパク質アッセイキット(BioRad)により測定され、測定されたタンパク質濃度は、SDS-PAGEにより検証された。組み換えヒトVEGF-A165は、R&D Systemsから購入された。
【0020】
哺乳類細胞でのタンパク質発現
293T細胞を、FugeneHDトランスフェクション試薬(Roche)を用いて、製造者の指示にしたがい、pBVboostFGシステムベクターにより一過的にトランスフェクトした。条件培地を、トランスフェクションの52h-72h後に集めた。培地中のVEGF-Dタンパク質のレベルを、R&D systemsからのヒトVEGF-Dイムノアッセイにより定量した。
【0021】
SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティング
精製タンパク質を、変性および非変性条件でSDS-PAGEにより解析し、ゲルは、Silver Snap Stain KitII (Pierce)またはPage Blue Protein Staining Solution (Fermentas)で染色された。あるいは、タンパク質を、ニトロセルロース膜に移し、VEGF-Dモノクローナル抗体(MAB286, R&D Systems)を用いて検出した。
【0022】
インビトロ試験
Ba/F3-R2 (Achen 1998)およびBa/F3-R3 (Achen 2000)細胞生存アッセイを、96ウェルプレートにウェルあたり18000細胞を播種し、連続希釈での組み換えタンパク質もしくは一過的にトランスフェクトした293T細胞からの条件培地を加えることにより行った。細胞生存を、48時間後に定量した。20 μlのCell Titer Blue Reagent (Promega)を各ウェルに加えて; プレートを、37℃で2時間、インキュベートした。蛍光は、Wallac Victor2 1420 Multilabel Counter (Perkin Elmer Biosystems)を用いて読み取られた。
【0023】
結果
組み換えVEGF-DΔNΔCタンパク質の産生: VEGF-Dの成熟型であるVEGF-DΔNΔCの可能性のある分子間ジスルフィド結合形成システイン(Cys44およびCys53)および不対システイン残基(Cys25)を、各々別々に、アラニン残基で置換した。構築体は、VEGF-DΔNΔC25A、VEGF-DΔNΔC44AおよびVEGF-DΔNΔC53Aと命名された。組み換えタンパク質を、BVboostFGバキュロウイルス発現系を用いて、High Five昆虫細胞株で産生させ、固定化金属親和性クロマトグラフィーを用いて、培養培地から精製した。すべての構築体は、ウエスタンブロッティングにより検出されたとおり、発現および精製が成功した。しかしながら、VEGF-DΔNΔC44Aタンパク質は、おそらく分解もしくは凝集および透析カセットへの非特異的結合のために、下記の透析の間繰り返し失われた。また、このタンパク質の発現レベルは、他のVEGFタンパク質よりも低いので、この突然変異は、タンパク質フォールディングを妨害するか、もしくは安定性を減少させ得る。ヒトVEGF-A121組み換えタンパク質は、コントロールとしての使用のために、同様に、産生および精製された。
【0024】
共有結合ダイマー形成: VEGF-DΔNΔC、VEGF-DΔNΔC25AおよびVEGF-DΔNΔC53Aの共有結合ダイマーを形成する能力を、非還元条件下でのSDS-PAGEにより評価した。VEGF-DΔNΔCは、部分的に共有結合ダイマーを形成することが見出され、一方で、VEGF-DΔNΔC25Aは、野生型と比較して、増加した量の共有結合ダイマーを形成した。予期したとおり、VEGF-DΔNΔC53Aの共有結合ダイマー形成は、妨害された。
【0025】
突然変異Gly51→CysまたはCys25→Leuを含むVEGF-Dタンパク質; 突然変異Arg22→LeuおよびCys25→Leuを含むVEGF-D; ならびに突然変異Arg22→IIeおよびCys25→Leuを含むVEGF-Dはすべて、VEGF-DΔNΔCと比較して、増加したダイマー:モノマー比率を示した。予期したとおり、VEGF-Dダイマーインターフェースにおける特定の修飾は、タンパク質の多量体化状態を明らかに改変し得る。
【0026】
インビトロでの活性測定: 精製化VEGF-DΔNΔC、VEGF-DΔNΔC25AおよびVEGF-DΔNΔC53Aの生物学的活性を、VEGFR-2/EpoRもしくはVEGFR-3/EpoRキメラ受容体を発現する細胞を用いて、Ba/F3細胞生存アッセイにより測定した。両アッセイで、VEGF-DΔNΔC53A突然変異体は、そのVEGF受容体活性化能力を完全に失っており、一方で、VEGF-DΔNΔC25A突然変異体は、野生型VEGF-DΔNΔCと比較して、約10倍高い活性を有することが見出された。昆虫細胞培地から精製したタンパク質および一過的にトランスフェクトした293T細胞からの条件培地は、同様の活性を有することが見出され、これは、VEGF-DΔNΔC25A突然変異体の活性の増加が、産生系には依存しないことを示した。
【0027】
どのアミノ酸がVEGF-DΔNΔC中のCys25を置換するのに最も適当であり得るかを調べるために、Cys25が異なるアミノ酸で置換されたいくつかの突然変異体型を作製した。アミノ酸は、異なる化学的特性にわたるように選択された。293T細胞の一過的トランスフェクションを、条件培地を産生するために使用し、タンパク質の活性を、VEGFR-2/EpoRもしくはVEGFR-3/EpoRキメラ受容体を発現するBa/F3細胞を用いて、細胞生存アッセイで測定した。各タンパク質を、3つの異なる濃度(10、100および1000 ng/ml)で解析した。Cys25が疎水性アミノ酸(Leu、Ile、Val)で置換されたいくつかの突然変異体型が、最も高いVEGFR-2およびVEGFR-3二量体化活性を有するものであることが見出された。野生型VEGF-DΔNΔCと比較して、増加した活性はまた、Cys25がアミノ酸(Ala、Ser、Phe、TrpおよびAsn)で置換されたときに見られた。Cys25のGlyでの置換により、成長因子の不活性化が生じた。
【0028】
結果は、VEGFファミリーの他のメンバー内でジスルフィド架橋を形成する保存的システインがVEGF-DΔNΔCの機能のために重要であることを示す。より重要なことに、また、VEGF-DΔNΔCのダイマーインターフェースからの不対システイン(Cys25)を除去することは、実際に、血管内皮成長因子受容体2および受容体3を活性化するという意味で、VEGF-DΔNΔCタンパク質の活性を改善することが見出された。したがって、これらのVEGF-DΔNΔCの新規Cys25突然変異体は、その野生型よりも有効な治療的血管新生のメディエーターであることが証明され、組み換えタンパク質として使用されるか、もしくは遺伝子治療で投与され得る。例えば、本発明のVEGF-Dタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、遺伝子治療で使用され得る。
【0029】
参照表
Achen et al (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 95, 548-553
Markkanen et al (2005) Cardiovasc. Res. 65, 656-664
Laitinen et al (2005) Nucleic Acids Res. 33, e42
Airenne et al (2003) Nucleic Acids Res. 31, e101
Stacker et al (1999) J. Biol. Chem. 274(45): 32127-32136

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種もしくはそれ以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されており、それによりダイマーインターフェースが改変されたという点で修飾されている、VEGF-Dタンパク質。
【請求項2】
1種もしくはそれ以上のアミノ酸がCysを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
修飾化VEGF-DΔNΔC(配列番号1)である、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
VEGF-DΔNΔCのCys25残基が他のアミノ酸で置換された、請求項3に記載のタンパク質。
【請求項5】
他のアミノ酸がLeu、Ile、Val、Ala、Ser、Phe、TrpまたはAsnである、請求項1から4のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項6】
他のアミノ酸がLeu、IleまたはValである、請求項5に記載のタンパク質。
【請求項7】
実質的にダイマーとして存在する、請求項1から6のいずれか1項に記載のVEGF-Dタンパク質。
【請求項8】
治療での使用のための、請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項9】
血管新生の促進のための、請求項1から8のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項10】
虚血もしくは冠動脈疾患の予防もしくは処置のための、請求項8または9に記載のタンパク質。
【請求項11】
血管新生の促進用医薬の製造のための、請求項1から8のいずれか1項に記載のタンパク質の使用。
【請求項12】
虚血もしくは冠動脈疾患の予防もしくは処置のための、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
遺伝子治療での使用のための、請求項1から7のいずれか1項に記載のVEGFタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項14】
血管新生の促進での使用のための、請求項13に記載の発現ベクター。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−527627(P2010−527627A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509898(P2010−509898)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001873
【国際公開番号】WO2008/146023
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(500175668)アーク・セラピューティックス・リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Ark Therapeutics Limited
【Fターム(参考)】