説明

VEGF共調節ケモカイン−1発現のアンチセンス変調

VEGF共調節ケモカイン−1(VCC−1)の発現を変調させるためのアンチセンス化合物、組成物、及び方法を提供する。この組成物は、VCC−1をコードする核酸へ標的指向するアンチセンス化合物、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。VCC−1発現の変調及びVCC−1の発現に関連した疾患の治療にこれらの化合物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法(U.S.C.)35条119項の下で、本明細書における記載のように参照によりそのまま組み込まれる、2002年8月19日出願の米国仮特許出願第60/404,484号に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、VEGF共調節ケモカイン(Co-regulated chemokine)−1(VCC−1)の発現を変調させるための組成物及び方法を提供する。特に、本発明は、VEGF共調節ケモカイン−1をコードする核酸と特異的にハイブリダイズ可能なアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドに関する。こうしたオリゴヌクレオチドは、VEGF共調節ケモカイン−1の発現を変調させることが示された。
【背景技術】
【0003】
血管新生は、既存の血管及び毛細血管からの新たな毛細血管の増殖であり、創傷治癒、胚発生、固形腫瘍の増殖といった多数のプロセスにきわめて重要である。新血管形成において、内皮細胞は、移動、伸張、増殖、及び方向定位を行って、内腔形成、基底膜の再確立、そして最終的には他の血管との融着をもたらす(Patan S. et al., (2000), J. Neurooncol. 50: 1-15)。
【0004】
サイトカインは、細胞表面受容体へ結合して多様な細胞の活性を変調させる小さなタンパク質である。VCC−1は、タンパク質のN末端付近の保存されたCys−Xaa−Cys配列により命名された、サイトカインのサブファミリーであるCXCケモカインであるらしい。ファミリーメンバーは、2つの追加の保存システイン残基も含有し、ほぼ70〜130アミノ酸の大きさである。それらは、放出前に切断される20〜25アミノ酸のリーダー配列がある、分泌タンパク質である。ケモカインの特徴的な三次元折り畳みは、保存されたシステイン1及びシステイン2の間とシステイン3及びシステイン4の間に形成されるジスルフィド結合によって安定化する(Baggiolini, M., 2001 J. Int. Med. 250: 91-104 に概説される)。
【0005】
既知のCXCケモカインには、インターロイキン−8(IL−8)、γ−インターフェロン誘導性タンパク質10(IP−10)、血小板因子4(PF4)、γ−インターフェロンにより誘導されるモノカイン(MIG)、上皮好中球活性化タンパク質(ENA−78)、増殖関連腫瘍遺伝子ペプチド(GRO)GRO−α、GRO−β及びGRO−γ、等がある。これらのタンパク質は、好中球の活性化、化学走性の誘導、血管新生及び腫瘍形成の誘導、並びに血管新生及び腫瘍形成の阻害が含まれる、多種多様な活性に仲介する(Belperio, J. A., et al., 2000 J. Leuk. Bio. 68: 1-8)。
【0006】
ケモカインの生物学的効果は、いずれも細胞表面受容体との相互作用を介して発揮される。これまでに6種のCXCケモカイン受容体(CXCR)が同定されている(Horuk et al., 2001 Cytokine Growth Factor Rev. 12: 313-335 に概説される)。CXCRは、ヘテロ三量体のGタンパク質を介してシグナル伝達するヘビ状(serpentine)タンパク質のスーパーファミリーのメンバーである。これらのタンパク質は、多数のケモカインと高いアフィニティーで結合する能力を保有することが示された。
【0007】
血管新生の調節は、少なくとも一部は血管抑制(angiostatic)ケモカインと血管新生ケモカインにより制御される。IL−8は、内皮細胞の化学走性及び増殖活性を in vitro で仲介することが示された(Strieter R. M., et al., 1992, Am. J. Pathol. 141: 1279-1284 及び Koch, A. E., et al., 1992 Science 258: 1798-1801)。対照的に、IP−10、MIG、及びPF4は、in vitro と in vivo の両方で血管抑制特性を有することが見出された(Maione, T. E., et al., 1990, Science 247: 77-79; Strieter R. M., et al., 1995, Biochem. Biophys. Res. Commun. 210(1): 51-57; 及び Arenberg, DA, et al., 1997 Methods Enzymol 283: 190-220)。
【0008】
腫瘍増殖は血管新生に依存しているので、CXCケモカインは腫瘍の増殖及び転移にある役割を担うことになる。腫瘍形成及び増殖を変調させる血管新生ケモカインの最も明瞭な例は、in vitro における足場非依存性増殖の表現型及びヌードマウス中 in vivo で腫瘍を形成する能力をもたらす、ヒトメラニン細胞におけるGRO−α、β及びγの過剰発現により示された(Luan, J., et al., 1997, J. Leukoc. Bio. 62: 588-597 及び Owen, J. D., et al., 1997 Int. J. Cancer 73: 94-103)。さらに、IL−8とENA−78の両方の非小細胞肺癌(NSCLC)における発現は、いずれも腫瘍血管新生に関連していた(Yatsunami, J., et al., 1997, Cancer Lett. 120: 101-108 及び Arenberg, DA, et al., 1998 J. Clin. Invest. 102: 465-472)。
【0009】
他のCXCケモカインは、腫瘍細胞増殖を阻害するか、又は腫瘍細胞の壊死を誘導するらしい。バーキット腫瘍を皮下に埋め込んだヌードマウスに組換えMIGを毎日接種した。これにより、血管損傷を伴う腫瘍壊死が一貫して引き起こされた(Sgadari, C., et al., 1997 Blood 89(8): 2635-)。IP−10で処置した、バーキット腫瘍を担うヌードマウスでも同じことが見られた(Sgadari, C., et al., 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93: 13791-13796)。NSCLC腫瘍を担い、MIGで処置されたSCIDマウスも、増殖阻害、転移数の減少、及び腫瘍由来の血管密度の減少を示す(Addison, C. L., et al., 2000 Hum. Gene Ther. 11: 247-261)。
【0010】
アンチセンス技術は、特定の遺伝子産物の発現を抑えるのに有効な手段として登場し、それ故に、VCC−1発現の変調へのいくつかの治療、診断、及び研究上の応用に特に有用であることが判明するかもしれない。
【0011】
発明の要約
本発明は、VCC−1をコードする核酸へ標的指向して、VCC−1の発現を変調させるアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドへ向けられる。本発明のアンチセンス化合物を含んでなる医薬組成物や他の組成物も提供される。さらに提供されるのは、本発明の1以上のアンチセンス化合物又は組成物と細胞又は組織を接触させることを含んでなる、前記組織又は細胞におけるVCC−1の発現を変調させる方法である。さらに提供されるのは、本発明の1以上のアンチセンス化合物又は組成物の治療又は予防有効量を投与することによって、VCC−1の発現に関連した疾患又は状態を有するか又はそれに罹りやすいことが疑われる動物、特にヒトを治療する方法である。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、VCC−1をコードする核酸分子の機能を変調させること、最終的にはVCC−1の産生量を変調させることに使用のために、オリゴマーのアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドを利用する。VCC−1をコードする1以上の核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物を提供することによって、このことを達成する。本明細書に使用する用語「標的核酸」及び「VCC−1をコードする核酸」には、VCC−1をコードするDNA、そのようなDNAより転写されるRNA(プレmRNA及びmRNAが含まれる)、並びにそのようなRNAに由来するcDNAも含まれる。オリゴマー化合物のその標的核酸との特異的なハイブリダイゼーションは、その核酸の正常な機能に干渉する。標的核酸の機能をそれへ特異的にハイブリダイズする化合物によって変調させることは、一般に「アンチセンス」と呼ばれる。干渉されるDNAの機能には、複製と転写が含まれる。干渉されるRNAの機能には、例えば、タンパク質翻訳の部位へのRNAの転位、RNAからタンパク質の翻訳、1以上のmRNA種を産生するRNAのスプライシング、並びにRNAが関与するか又はそれにより促進される可能性がある触媒活性といった、すべての生命機能が含まれる。標的核酸の機能へのこうした干渉の全体効果は、VCC−1の発現の変調である。本発明の文脈において、「変調(modulation)」は、遺伝子の発現における増加(刺激)又は減少(阻害)のいずれかを意味する。本発明の文脈では、阻害が遺伝子発現の変調の好ましい形態であり、mRNAがその好ましい標的である。
【0013】
特定の核酸をアンチセンスに標的指向させることが好ましい。アンチセンス化合物をある特定の核酸へ「標的指向する」ことは、本発明の文脈において、多工程の方法である。この方法は、通常、その機能を変調させるべき核酸配列の同定から始まる。これは、例えば、その発現が特別な障害又は病態に関連づけられる細胞の遺伝子(又はその遺伝子から転写されるmRNA)であっても、感染病原体由来の核酸分子であってもよい。本発明において、標的は、VCC−1をコードする核酸分子である。標的指向の方法には、所望の効果、例えばこのタンパク質の発現の検出又は変調が生じるように、アンチセンス相互作用が起こるためのこの遺伝子内の単数若しくは複数の部位の決定をすることも含まれる。本発明の文脈では、好ましい遺伝子内部位は、遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始又は終止コドンが含まれる領域である。当該技術分野で知られているように、翻訳開始コドンは、典型的には5’−AUG(転写されたmRNA分子において;対応するDNA分子においては5’−ATG)であるので、翻訳開始コドンはまた「AUGコドン」、「開始コドン」又は「AUG開始コドン」とも呼ばれる。少数の遺伝子は、5’−GUG、5’−UUG又は5’−CUGのRNA配列を有する翻訳開始コドンを有し、5’−AUA、5’−ACG及び5’−CUGは in vivo で機能することが示されている。従って、用語「翻訳開始コドン」及び「開始コドン」には、それぞれの場合で開始のアミノ酸が通常メチオニン(真核生物において)又はホルミルメチオニン(原核生物において)であっても、多くのコドン配列が含まれる場合がある。当該技術分野では、真核生物と原核生物の遺伝子が2種以上の代替可能な開始コドンを有する場合があり、特定の細胞種又は組織において、又は特定の条件セットの下ではそのうちの1つが翻訳開始に選好的に利用され得ることも知られている。本発明の文脈において、「開始コドン」及び「翻訳開始コドン」は、そのようなコドンの配列に拘らず、VCC−1をコードする遺伝子より転写されるmRNA分子の翻訳を開始させるのに in vivo で使用される単数若しくは複数のコドンを意味する。
【0014】
当該技術分野では、遺伝子の翻訳終止コドン(又は「停止コドン」)が、3種の配列、即ち5’−UAA、5’−UAG及び5’−UGA(対応するDNA配列は、それぞれ5’−TAA、5’−TAG及び5’−TGAである)の1つを有し得ることも知られている。用語「開始コドン領域」及び「翻訳開始コドン領域」は、翻訳開始コドンより両方向(即ち、5’又は3’)にある約25〜約50個のコンティグ(contiguous)ヌクレオチドが含まれるようなmRNA又は遺伝子の部分を意味する。同様に、用語「停止コドン領域」及び「翻訳終止コドン領域」は、翻訳終止コドンから両方向(即ち、5’又は3’)にある約25〜約50個のコンティグヌクレオチドが含まれるようなmRNA又は遺伝子の部分を意味する。
【0015】
オープンリーディングフレーム(ORF)又は「コード領域」は、当該技術分野では翻訳開始コドンと翻訳終止コドンの間の領域を意味することが知られているが、有効に標的指向され得る領域でもある。他の標的領域には、5’非翻訳領域(5’UTR)[当該技術分野では、翻訳開始コドンより5’方向にあるmRNAの部分であり、従って、mRNAの5’キャップ部位と翻訳開始コドンとの間のヌクレオチド、又は遺伝子上の対応するヌクレオチドが含まれる部分を意味する]、及び3’非翻訳領域(3’UTR)[当該技術分野では、翻訳終止コドンより3’方向にあるmRNAの部分であり、従って、mRNAの翻訳終止コドンと3’端との間のヌクレオチド、又は遺伝子上の対応するヌクレオチドが含まれる部分を意味する]が含まれる。mRNAの5’キャップは、mRNAの5’末端残基に5’−5’三リン酸連結を介して結合したN7−メチル化グアノシン残基を含む。mRNAの5’キャップ領域には、この5’キャップ構造そのものだけでなく、このキャップに隣接した最初の50個のヌクレオチドも含まれると考えられる。5’キャップ領域も好ましい標的領域であってよい。
【0016】
真核mRNA転写物のなかには直接翻訳されるものもあるが、多くは、翻訳される前に転写物より切除される、「イントロン」として知られる1以上の領域を含有する。残りの(従って、翻訳される)領域は「エクソン」として知られ、一緒にスプライスされて連続したmRNA配列を形成する。mRNAのスプライス部位、即ちイントロン−エクソン連結部も好ましい標的領域であってよく、異常なスプライシングが疾患に関連している可能性があるか、又は特別なmRNAスプライス産物の過剰産生が疾患に関連している可能性がある状況では、特に有用である。再配置や欠失による異常な融合連結部も好ましい標的である。イントロンもまた、有効であり得ることが見出され、故に、例えばDNA又はプレmRNAへの標的指向したアンチセンス化合物に好ましい標的領域である。
【0017】
1以上の標的部位を同定したならば、この標的に対して十分相補的である、即ち十分強くて十分な特異性をもってハイブリダイズして所望の効果をもたらすオリゴヌクレオチドを選択する。
【0018】
本発明の文脈において、「ハイブリダイゼーション」は、ワトソン−クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン型の水素結合であり得る、相補的なヌクレオシド又はヌクレオチド塩基間の水素結合を意味する。例えば、アデニンとチミンは相補的なヌクレオ塩基であり、水素結合の形成を介して対合する。本明細書に使用される「相補的」は、2つのヌクレオチド間の正確な対合の能力を意味する。例えば、オリゴヌクレオチドのある位置にあるヌクレオチドがDNA又はRNA分子の同じ位置にあるヌクレオチドと水素結合することが可能であるならば、このオリゴヌクレオチドとDNA又はRNAはその位置で互いに相補的であると考えられる。オリゴヌクレオチドとDNA又はRNAが互いに相補的であるのは、各分子中の十分な数の対応位置が互いに水素結合し得るヌクレオチドによって占められているときである。このように、「特異的にハイブリダイズ可能」及び「相補的」とは、オリゴヌクレオチドとDNA又はRNA標的との間に安定で特異的な結合が起こるほど十分な度合いの相補性又は正確な対合を示すために使用する用語である。当該技術分野では、アンチセンス化合物の配列は、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸の配列に対して100%相補的である必要はないと理解されている。アンチセンス化合物が特異的にハイブリダイズ可能であるのは、標的DNA又はRNA分子に対するこの化合物の結合が標的DNA又はRNAの正常機能に干渉して有用性の損失を引き起こすとき、そして特異的な結合が所望される条件、即ち in vivo アッセイ又は治療処置の場合や in vitro アッセイの場合の生理学的条件、つまりそのようなアッセイを実施する条件の下で、非標的配列に対するアンチセンス化合物の非特異的な結合を回避するのに十分な程度の相補性があるときである。
【0019】
アンチセンス化合物は、研究試薬及び診断薬として通常使用される。例えば、ごく強い特異性をもって遺伝子発現を阻害することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、特別な遺伝子の機能を解明するために、当業者によってしばしば使用される。アンチセンス化合物はまた、例えばある生物学的経路の様々なメンバーの諸機能を区別するためにも使用される。故に、アンチセンス変調は研究使用にも利用されている。
【0020】
アンチセンスの特異性及び感度はまた、当業者によって治療上の使用にも利用されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物及びヒトの病態の治療において治療用成分として利用されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドはヒトに対して安全かつ有効に投与され、数多くの臨床試験が現在進行している。このように、オリゴヌクレオチドは、細胞、組織及び動物、特にヒトの治療の治療方式に有用であるように組立て得る有用な治療モダリティーであり得ることが確立されている。本発明の文脈において、用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)又はそれらの模倣体のオリゴマー又はポリマーを意味する。この用語には、天然に存在するヌクレオ塩基、糖及びヌクレオシド間(骨格)連結の共有結合からなるオリゴヌクレオチド、並びに同様に機能する天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドも含まれる。そのような修飾又は置換オリゴヌクレオチドがネイティブな形態よりしばしば好ましいのは、例えば、強められた細胞取込み、核酸標的に対する強められたアフィニティー、及びヌクレアーゼ存在下での高められた安定性のような、望ましい特性のためである。
【0021】
本明細書に記載の心臓血管系、血管新生、及び内皮のアッセイにおいて活性を有するような、及び/又はその遺伝子産物が心臓血管系へ局在化していることが見出されているような、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、真正糖尿病のような、血管に影響を及ぼす全身障害を含む多様な心臓血管系、内皮、及び血管新生の障害において治療的使用法を有する可能性がある。その治療有用性には、動脈、毛細血管、静脈、及び/又はリンパ管の疾患が含まれる可能性がある。ここでの治療の例には、筋肉消耗疾患を治療すること、骨粗鬆症を治療すること、インプラント固定を支援してインプラント周囲の細胞の増殖を刺激して、企図される部位へのその付着を促進すること、適用可能ならば、組織又は血清中のIGF安定性を高めること、並びにIGF受容体への結合を高めること(IGFは、ヒト骨髄赤血球系及び顆粒球前駆細胞の増殖を in vitro で高めることが示されているので)が含まれる。
【0022】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、創傷治癒又は肺線維症の間の過剰な結合組織の産生を、VCC−1がそのような産生を促進するならば、阻害するために使用することができる。これには、急性心筋梗塞及び心不全の治療が含まれる場合がある。
【0023】
さらに、本発明は、根底にある原因に拘らず、治療有効量のVCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することによる心肥大の治療を提供する。
心肥大の治療は、心筋梗塞、高血圧、肥大性心筋症、及び弁膜性逆流が含まれる多種多様な病理学的状態より生じる可能性がある、その様々な段階のどこでも実施してよい。この治療は、その根底にある心臓障害に拘らず、心筋の構造的損傷を伴うか又は伴わない、心肥大の進行のすべての段階へ拡張される。
【0024】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、血管新生を制限するか又は予防することが所望される障害の治療に有用であろう。そのような障害の例には、血管腫のような血管腫瘍、腫瘍血管新生、糖尿病性網膜症又は未熟幼児網膜症又は黄斑変性及び増殖性硝子体症に関連した網膜、脈絡膜、又は角膜における新血管形成、慢性関節リウマチ、クローン病、アテローム性動脈硬化症、卵巣過剰刺激、乾癬、新血管形成に関連した子宮内膜症、バルーン血管形成術に後続する再狭窄、焼焦組織過剰産生(例えば、術後に生じるケロイドに見られるもの)、心筋梗塞後の線維症、又は肺線維症に関連した線維症病巣が含まれる。
【0025】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドが血管関連の薬物標的指向に有用なものとして、又は障害の治療又は予防の治療標的として役立つ可能性がある、特定の種類の疾患を以下に記載する。
【0026】
アテローム性動脈硬化症は、脂質の蓄積、平滑筋細胞の増殖、及び動脈壁内での線維組織の形成による、脈管内膜の肥厚化プラークの動脈中での蓄積を特徴とする疾患である。この疾患は、あらゆる臓器中の大、中、小動脈に影響を及ぼす可能性がある。内皮及び血管平滑筋細胞の機能の変化は、これらプラークの蓄積及び退縮を変調させるのに重要な役割を担うことが知られている。
【0027】
高血圧は、全身動脈、肺動脈、又は門脈静脈の系における上昇血圧を特徴とする。上昇血圧は、損傷した内皮機能及び/又は血管新患より生じるか又はそれをもたらす可能性がある。
【0028】
炎症性脈管炎には、巨細胞動脈炎、高安動脈炎、結節性多発動脈炎(微小血管障害型が含まれる)、川崎病、微視的多発動脈炎、ウェジナー肉芽腫症、及び、多様な101種の感染症に関連した血管障害(ヘノッホ−シェーンライン紫斑病が含まれる)が含まれる。これらの疾患では、改変した内皮細胞の機能が重要であることが示されている。レイノー疾患とレイノー現象は、寒気に曝された四肢を介した循環の異常な間欠性損傷を特徴とする。この疾患でも、改変した内皮細胞の機能が重要であることが示されている。
【0029】
脈瘤は、改変した内皮細胞及び/又は血管平滑筋細胞に関連した、動脈又は静脈の樹状構造の小嚢状又は紡錘状の拡張症である。
動脈再狭窄(動脈壁の再狭窄)は、内皮及び血管平滑筋の細胞の機能改変及び増殖の結果として、血管形成術後に生じる場合がある。
【0030】
血栓性静脈炎とリンパ管炎は、改変した内皮細胞機能より生じる、及び/又はそれをもたらす場合がある、静脈及びリンパ管それぞれの炎症性障害である。同様に、リンパ管浮腫は、内皮細胞機能より生じる損傷したリンパ管の関与する状態である。
【0031】
良性及び悪性の血管腫瘍のファミリーは、血管系の細胞要素の異常な増殖及び成長を特徴とする。例えば、リンパ管腫はリンパ系の良性腫瘍であり、通常は新生児に起こる、リンパ管の先天性でしばしば嚢胞性の形成異常である。
【0032】
嚢胞性腫瘍は、近隣の組織中へ増殖する傾向がある。嚢胞性腫瘍は、通常、頚部及び腋窩部において起こる。それらはまた、四肢の柔組織に起こる場合もある。その主症状は、結合組織に囲まれたリンパ管及びリンパ球が拡張して、時に矩形の構造となることである。
【0033】
リンパ管腫は、不適切に結合した胚性リンパ管又はその不足により引き起こされると仮定されている。その結果は、損傷した局部リンパ漏洩である。
VCC−1アンチセンスアンタゴニストの別の使用は、腫瘍の増殖及び/又は転移を可能にする腫瘍の血管形成が伴う、腫瘍血管新生の予防である。このプロセスは、新たな血管の成長に依存する。腫瘍血管新生を伴う新生物及び関連状態の例には、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、結直腸癌、肝臓癌、卵巣癌、卵胞膜細胞腫、男性胚細胞腫、頚部癌、子宮内膜癌、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、頭頚部癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、肝芽腫、カポシ肉腫、黒色腫、皮膚癌、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、膵臓癌、網膜芽腫、星状細胞腫、膠芽腫、シュワン細胞腫、乏突起膠芽腫、髄芽腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫、尿道癌、甲状腺癌、ウィルムス腫瘍、腎細胞癌、前立腺癌、母斑症に関連した異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連したもののような)、及びメイグス症候群が含まれる。
【0034】
創傷治癒及び組織修復のような外傷の治癒もVCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドの標的指向される使用である。新血管の形成及び退縮は、組織の治癒及び修復に必須である。このカテゴリーには、骨、軟骨、腱、靭帯、及び/又は神経組織の増殖又は退縮、並びに熱傷、切開、及び潰瘍の処置における、創傷治癒と組織修復及び置換が含まれる。
【0035】
骨が正常に形成されない環境において軟骨及び/又は骨の成長を引き起こすVCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドには、ヒトや他の動物における骨折や軟骨の損傷若しくは欠損の治癒における応用がある。VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを利用するそのような調製物には、閉鎖並びに開放骨折の抑制と、人工関節の改善固定における予防的な使用があるかもしれない。骨形成剤により引き起こされる de novo 骨形成は、先天性、外傷誘発性、又は腫瘍切除誘発性の頭蓋と顔の欠損の修復へ貢献し、また美容整形術にも有用である。
【0036】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、臓器(例えば、膵臓、肝臓、小腸、腎臓、皮膚、又は内皮が含まれる)、筋肉(平滑筋、骨格筋、又は心筋)、及び血管(血管内皮が含まれる)組織のような他の組織の産生又は再生の活性、又はそのような組織を含んでなる細胞の増殖を促進する活性を明示し得ることが期待される。所望される効果の一部は、正常組織が再生することを可能にする、線維性瘢痕形成の阻害又は変調による場合がある。
【0037】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、腸の保護又は再生と、肺又は肝臓の線維症、様々な組織における再灌流損傷、並びに全身性のサイトカイン損傷に由来する状態の治療にも有用であるかもしれない。また、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、上記に記載の組織の前駆体組織若しくは細胞からの分化を促進するか又は阻害すること、又は上記の組織の増殖を阻害することに有用であるかもしれない。
【0038】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、歯周疾患の治療や他の歯修復法に使用してもよい。そのような薬剤は、骨形成細胞を誘引する、骨形成細胞の増殖を刺激する、又は骨形成細胞の前駆体の分化を誘導する環境をもたらす可能性がある。VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、骨及び/又は軟骨修復の刺激によるか、又は、炎症又は炎症プロセスにより仲介される組織破壊(コラゲナーゼ活性、破骨細胞活性、等)のプロセスを遮断することによるように、骨粗鬆症又は骨関節炎の治療に有用であるかもしれない。これは、骨の代謝及び成長の調節に血管が重要な役割を担うからである。
【0039】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドが貢献する可能性がある別の組織再生活性のカテゴリーは、腱/靭帯形成である。腱/靭帯様組織や他の組織の形成を、そのような組織が正常には形成されない環境において引き起こすタンパク質には、ヒトや他の動物における腱又は靭帯の裂傷、変形、及び他の腱又は靭帯欠損症を治癒することに適用がある。そのような調製物は、腱又は靭帯組織への損傷を予防することにおける予防的使用、並びに腱又は靭帯の骨や他の組織への固定改善と腱又は靭帯組織への欠損の修復における使用を有するかもしれない。VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドの組成物により引き起こされる de novo 腱/靭帯様組織形成は、先天性、外傷誘発性、又は他の起源の他の腱又は靭帯欠損の修復に貢献し、腱又は靭帯の付着又は修復のための美容整形外科にも有用である。本明細書に記載の組成物は、腱又は靭帯形成細胞を誘引する、腱又は靭帯形成細胞の増殖を刺激する、腱又は靭帯形成細胞の前駆体の分化を誘導する、又は腱/靭帯細胞又は前駆体の増殖を誘導する環境を ex vivo で提供し、次いで in vivo で組織修復をもたらす可能性がある。本明細書の組成物は、腱炎、手根管症候群、及び他の腱又は靭帯欠損症の治療にも有用であるかもしれない。この組成物には、当該技術分野でよく知られているように、適切なマトリックス及び/又は封鎖剤を担体として含めてよい。
【0040】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、心肥大の患者へ、この状態の進行を妨げ、突然死(無症候性患者の死が含まれる)を回避するために予防的に投与してもよい。このような予防療法は、塊状左心室心肥大(成人では35mm以上の最大壁厚、又は小児ではそれに匹敵する値)と診断された患者の症例、又は心臓に対する血行力学的負荷が特に強い事例において特に保証される。
【0041】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、肥大性心筋症と診断された患者の実質的な割合で発症する、心房細動の管理にも有用であるかもしれない。さらなる適応症には、狭心症、急性心筋梗塞のような心筋梗塞、並びに鬱血性心不全のような心不全が含まれる。追加の非新生物状態には、乾癬、糖尿病と他の増殖性網膜症(未熟児網膜症が含まれる)、水晶体後線維増殖症、血管新生性緑内障、甲状腺過形成(グレイヴス病が含まれる)、角膜や他の組織の移植、慢性炎症、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、腹水、心膜滲出液(心膜炎に関連したもののような)、及び胸膜滲出液が含まれる。
【0042】
上記に照らして、内皮細胞の機能、増殖、及び/又は形態を改変するか又はそれに影響を及ぼすことが示されている、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、上記に注目した障害の多く又はすべての病因及び病態形成において重要な役割を担う可能性があり、そのものとして、上記プロセスを亢進させるか又は阻害するための治療標的として、又はこれらの障害の血管に関連した薬物標的指向のために役立つ可能性がある。
【0043】
組合せ療法
問題の障害を予防するか又は治療することにおけるVCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性は、その目的に有効である別の薬剤と、同じ組成物においてか又は別々の組成物としてのいずれかで、連続してか又は組み合わせてこの有効成分を投与することによって改善される可能性がある。例えば、心肥大の治療には、VCC−1アンチセンス療法薬を、既知の心筋細胞肥大因子の阻害剤、例えば、フェニレフリンのような共アドレナリン作用アゴニストの阻害剤;BOSENTANTM及びMOXONODINTMのようなエンドセリン−1阻害剤;CT−1への阻害剤(米国特許第5,679,545号);LIFへの阻害剤;ACE阻害剤;des−アスパラギン酸−アンジオテンシンI阻害剤(米国特許第5,773,415号)、及びアンジオテンシンII阻害剤の投与と組み合わせることができる。
【0044】
高血圧に関連した心肥大の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、P−アドレナリン作用性受容体遮断剤(例えば、プロプラノロール、チモロール、テルタロロール、カルテオロール、ナドロール、ベタキソロール、ペンブトロール、アセトブトロール、アテノロール、メトプロロール、又はカルベジロール);ACE阻害剤(例えば、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、ホシノプリル、又はリシノプリル);利尿剤(例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチルクロロチアジド、ベンズチアジド、ジクロルフェナミド、アセタゾラミド、又はインダパミド);及び/又はカルシウムチャネルブロッカー(例えば、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、又はニカルジピン)と組み合わせて投与してよい。本明細書においてその一般名により確認される治療薬剤を含んでなる医薬組成物は、市販されていて、投与量、投与法、副作用、禁忌、等についての製造業者の説明書に従って投与するべきである。例えば、「医師必携(Physician's Desk Reference)」(メディカル・エコノミクス・データ・プロダクション(Medical Economics Data Production)社、Montvale, N. J., 1997)第51版、を参照のこと。肥大性心筋症の治療に好ましい組合せ療法の候補薬は、P−アドレナリン作用性遮断薬(例えば、プロプラノロール、チモロール、テルタロロール、カルテオロール、ナドロール、ベタキソロール、ペンブトロール、アセトブトロール、アテノロール、メトプロロール、又はカルベジロール)、ベラパミル、ジフェジピン、又はジルチアゼムである。高血圧に関連した肥大症の治療には、カルシウムチャネルブロッカー(例えば、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、又はニカルジピン);P−アドレナリン作用性遮断剤;利尿剤(例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチルクロチアジド、ベンズチアジド、ジクロルフェナミド、アセタゾラミド、又はインダパミド);及び/又はACE阻害剤(例えば、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、ホシノプリル、又はリシノプリル)を使用する、降圧薬療法の使用が必要とされる場合がある。
【0045】
他の適応症には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、問題の骨及び/又は軟骨の欠損、創傷、又は組織の治療に有益な他の薬剤と組み合わせてよい。これらの薬剤には、EGF、PDGF、TGF、IGF、FGF、及びCTGFのような様々な増殖因子が含まれる。
【0046】
さらに、癌を治療するために使用するVCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、上記に確認されるような細胞傷害剤、化学療法剤、又は増殖阻害剤と組み合わせてよい。また、癌の治療では、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、放射線照射、又は放射活性物質投与を伴ってもまたはいなくてもよく、放射線治療と連続して、又は組み合わせて好適に投与される。
【0047】
VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドと組み合わせて投与される治療薬剤の有効量は、医師又は獣医師の判断によるものとなる。投与量の投与及び調整は、治療する状態の最高の管理を達成するために行われる。例えば、高血圧の治療では、これらの量は、理想的には、利尿剤又はジギタリス製剤の使用、高血圧又は低血圧のような状態、腎障害、等を考慮する。用量は、使用する治療薬剤のタイプや治療される患者の特性といったような要因にさらに依存する。典型的には、利用する量は、所与の治療薬剤がVCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを伴わずに投与される場合に使用されるのと同じ用量であろう。
【0048】
乳癌の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、化学療法剤と一緒のトラスツツマブ(Herceptin)、パクリタキセル、ドセタキセル、エピルビシン、ミトザントロン、トポテカン、カペシタビン、ビノレルビン、チオテパ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、カルボプラチン又はシスプラチン、プリカマイシン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、トレミフィン、又はプロゲスチンと組み合わせて投与することができる。
【0049】
急性リンパ球性白血病の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、ドキソルビシン、シタラビン、シクロホスファミド、エトポシド、テニポシド、アロプリノール、又は自己骨髄移植と組み合わせて投与することができる。
【0050】
急性骨髄球性及び骨髄単球性白血病の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、ジェムツツマブ、オゾガマイシン(Mylotarg)、ミトザントロン、イダルビシン、エトポシド、メルカプトプリン、チオグアニン、アザシチジン、アムサクリン、メトトレキセート、ドキソルビシン、トレチノイン、アロプリノール、ロイカフェレーシス、プレドニゾン、又は急性前骨髄球性白血病に対する三酸化ヒ素と組み合わせて投与することができる。
【0051】
慢性骨髄球性白血病の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、ブスルファン、メルカプトプリン、チオグアニン、シタラビン、プリカマイシン、メルファラン、自己骨髄移植、又はアロプリノールと組み合わせて投与することができる。
【0052】
慢性リンパ球性白血病の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン;CdA)、同種骨髄移植、アンドロゲン、又はアロプリノールと組み合わせて投与することができる。
【0053】
多発性骨髄腫の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、エトポシド、シタラビン、α−インターフェロン、デキサメタゾン、又は自己骨髄移植と組み合わせて投与することができる。
【0054】
肺癌(小細胞及び非小細胞)の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、マイトマイシン、イホスファミド、パクリタキセル、イリノテカン、又は放射線療法と組み合わせて投与することができる。
【0055】
結腸及び直腸癌の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、カペシタビン、メトトレキセート、マイトマイシン、カルムスチン、シスプラチン、イリノテカン、又はフロクスウリジンと組み合わせて投与することができる。
【0056】
腎臓の癌の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、α−インターフェロン、プロゲスチン、注入用FUDR、又はフルオロウラシルと組み合わせて投与することができる。
【0057】
前立腺癌の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、ケトコナゾール、ドキソルビシン、アミノグルテチミド、プロゲスチン、シクロホスファミド、シスプラチン、ビンブラスチン、エトポシド、スラミン、PC−SPES、又はリン酸エストラムスチンと組み合わせて投与することができる。
【0058】
黒色腫の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、チオテパ、シスプラチン、パクリタキセル、タモキシフェン、又はビンクリスチンと組み合わせて投与することができる。
【0059】
卵巣癌の治療には、VCC−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを、限定されないが、ドセタキセル、ドキソルビシン、トポテカン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、又はリポソーム・ドキソルビシンと組み合わせて投与することができる。
【0060】
アンチセンスオリゴヌクレオチドがアンチセンス化合物の好ましい形態であるが、本発明には、以下に記載するようなオリゴヌクレオチド模倣体が限定されずに含まれる、他のオリゴマーアンチセンス化合物も含まれる。本発明によるアンチセンス化合物は、好ましくは約8〜約30のヌクレオ塩基(即ち、約8〜約30の連結ヌクレオシド)を含む。特に好ましいアンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、なおより好ましくは、約12〜約25のヌクレオ塩基を含んでなるものである。当該技術分野で知られているように、ヌクレオシドは塩基−糖の組合せである。ヌクレオシドの塩基部分は、通常、複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の最も一般的な2つのクラスは、プリンとピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基がさらに含まれるヌクレオシドである。ペントフラノシル糖が含まれるヌクレオシドでは、リン酸基は、糖の2’、3’又は5’ヒドロキシル部分のいずれかへ連結することができる。オリゴヌクレオチドを形成するときは、リン酸基により隣接ヌクレオシドが互いに共有結合されて、直鎖のポリマー化合物を形成する。次いで、この直鎖ポリマー構造の両端は、さらに結合して環状構造を形成する場合があるが、開いた直鎖の構造が概して好ましい。オリゴヌクレオチド構造の内部では、リン酸基がオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格を形成すると一般に言われる。RNAとDNAの正常なI連結又は骨格は、3’−5’ホスホジエステル連結である。
【0061】
本発明に有用な好ましいアンチセンス化合物の特定の例には、修飾骨格又は非天然のヌクレオシド間連結を含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。本明細書において定義されるように、修飾骨格を有するオリゴヌクレオチドには、骨格にリン原子を保持するものと、骨格にリン原子を有さないものが含まれる。本明細書の目的からすれば、そして当該技術分野で時々参照されるように、そのヌクレオシド間骨格にリン原子を有さない修飾オリゴヌクレオチドもオリゴヌクレオシドであるとみなしてよい。
【0062】
好ましい修飾オリゴヌクレオチド骨格には、例えば、正常な3’−5’連結を有する、ホスホロチオエート、キラルなホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネート及びキラルなホスホネートが含まれるメチルや他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホロアミデート及びアミノアルキルホスホロアミデートが含まれるホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及びボラノホスフェート、上記の2’−5’連結類似体、及びヌクレオシド単位の隣接対が3’−5’から5’−3’へ、又は2’−5’から5’−2’へ連結している逆の極性を有するものが含まれる。様々な塩、混合塩、及び遊離酸の型も含まれる。
【0063】
上記のリン含有連結の製法を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、U.S.3,687,808;4,469,863;4,476,301;5,023,243;5,177,196;5,188,897;5,264,423;5,276,019;5,278,302;5,286,717;5,321,131;5,399,676;5,405,939;5,453,496;5,455,233;5,466,677;5,476,925;5,519,126;5,536,821;5,541,306;5,550,111;5,563,253;5,571,799;5,587,361;及び5,625,050号が含まれ、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
リン原子がそこに含まれない、好ましい修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキル又はシクロアルキルのヌクレオシド間連結、ヘテロ原子とアルキル又はシクロアルキルの混合したヌクレオシド間連結、又は1以上の短鎖ヘテロ原子又は複素環式ヌクレオシド間連結により形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ連結(ヌクレオシドの糖部分より一部形成される)を有するもの;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド及びスルホンの骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホネート及びスルホンアミド骨格;アミド骨格;及びN、O、S及びCH成分の混合部分を有する他の骨格が含まれる。
【0065】
上記オリゴヌクレオシドの製法を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、U.S.5,034,506;5,166,315;5,185,444;5,214,134;5,216,141;5,235,033;5,264,562;5,264,564;5,405,938;5,434,257;5,466,677;5,470,967;5,489,677;5,541,307;5,561,225;5,596,086;5,602,240;5,610,289;5,602,240;5,608,046;5,610,289;5,618,704;5,623,070;5,663,312;5,633,360;5,677,437;及び5,677,439号が含まれ、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣体では、糖とヌクレオシド間連結の両方、即ちヌクレオシド単位の骨格を新規な基で置換する。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つのそのようなオリゴマー化合物は、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されたオリゴヌクレオチド模倣体であり、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格がアミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格に置き換わっている。ヌクレオ塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子へ直接的又は間接的に結合する。PNA化合物の製法を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、U.S.5,539,082;5,714,331;及び5,719,262号が含まれ、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる。PNA化合物に関するさらなる教示は、Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497-1500 に見出すことができる。
【0067】
本発明の最も好ましい態様は、ホスホロチオエート骨格のあるオリゴヌクレオチドとヘテロ原子骨格のあるオリゴヌクレオシドであり、特に、上記に参照した米国特許第5,489,677号の−CH−NH−O−CH−、−CH−N(CH)−O−CH−[メチレン(メチルイミノ)又はMMI骨格として知られる]、−CH−O−N(CH)−CH−、−CH−N(CH)−N(CH)−CH−及び−O−N(CH)−CH−CH−[ここでネイティブなホスホジエステル骨格は、−O−P−O−CH−と表される]と、上記に参照した米国特許第5,602,240号のアミド骨格のあるものである。また好ましいのは、上記参照の米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドである。
【0068】
修飾オリゴヌクレオチドは、1以上の置換糖部分も含有してよい。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の1つを含む:OH;F;O、S又はN−アルキル;O、S又はN−アルケニル;O、S又はN−アルキニル;又はO−アルキル−O−アルキル(ここで、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、置換又は未置換のC〜C10アルキル、又はC〜C10アルケニル及びアルキニルであり得る)。特に好ましいのは、O[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH及びO(CHON[(CHCHである(ここでn及びmは、1〜約10である)。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の1つを含む:C〜C10、(低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリール又はO−アラルキル)、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、挿入剤、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善する基、又はオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善する基、並びに、同様の特性を有する他の置換基。好ましい修飾には、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CHCHOCH、2’−O−(2−メトキシエチル)又は2’−MOEとしても知られる)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、即ちアルコキシアルコキシ基が含まれる。さらに好ましい修飾には、以下の実施例に記載される、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、即ち2’−DMAOEとしても知られるO(CHON(CH基と、やはり以下の実施例に記載される、2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野において、2’−O−ジメチルアミノエトキシエチル又は2’−DMAEOEとしても知られる)、即ち2’−O−CH−O−CH−N(CHが含まれる。
【0069】
他の好ましい修飾には、2’−メトキシ(2’−O−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCHCHCHNH)及び2’−フルオロ(2’−F)が含まれる。同様の修飾は、オリゴヌクレオチドの他の部位、特に3’末端ヌクレオチド上又は2’−5’連結オリゴヌクレオチド中の糖の3’位と5’末端ヌクレオチドの5’位で行なってよい。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模倣体を有してよい。そのような修飾糖構造の製法を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、U.S.4,981,957;5,118,800;5,319,080;5,359,044;5,393,878;5,446,137;5,466,786;5,514,785;5,519,134;5,567,811;5,576,427;5,591,722;5,597,909;5,610,300;5,627,053;5,639,873;5,646,265;5,658,873;5,670,633;及び5,700,920号が含まれ、これらのいずれも参照により本明細書にそのまま組み込まれる。
【0070】
オリゴヌクレオチドには、ヌクレオ塩基(当該技術分野では単に「塩基」と呼ばれることが多い)の修飾又は置換も含まれる場合がある。本明細書に使用されるように、「未修飾」又は「天然の」ヌクレオ塩基には、プリン塩基のアデニン(A)及びグアニン(G)とピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)が含まれる。修飾ヌクレオ塩基には、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6−メチルや他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2−プロピルや他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニルウラシル及びシトシン、6−アゾウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルや他の8位置換アデニン及びグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルや他の5位置換ウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン及び7−メチルアデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニン、並びに3−デアザグアニン及び3−デアザアデニンといった、他の合成及び天然のヌクレオ塩基が含まれる。さらなるヌクレオ塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、「ポリマー科学・工学事典(The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering)」858-859 頁, Kroschwitz, J. I.(監修)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(1990)に開示されるもの、Englisch et al.「応用化学(Angewandte Chemie)」国際版(International Edition),1991, 30, 613 に開示されるもの、並びに、Sanghvi, Y. S.「第15章:アンチセンスの研究と応用(Chapter 15, Antisense Research and Applications)」289-302 頁, Crooke, S. T. and Lebleu, B.(監修)CRCプレス(1993)に開示されるものが含まれる。これらヌクレオ塩基のあるものは本発明のオリゴマー化合物の結合アフィニティーを高めるのに特に有用である。これらには、5位置換ピリミジン、6−アザピリミジン、及び、N−2、N−6及びO−6位置換プリンが含まれ、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル及び5−プロピニルシトシンが含まれる。5−メチルシトシンの置換は核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃高めることが示され(Sanghvi, Y. S., Crooke, S. T., and Lebleu, B.(監修)「アンチセンスの研究と応用(Antisense Research and Applications)」CRCプレス、ボカラトン(1993),276-278 頁)、現行では好ましい塩基置換であり、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせるときは特により好ましい。
【0071】
上記の注目すべき修飾ヌクレオ塩基、並びに他の修飾ヌクレオ塩基のいくつかの製法を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、上記に注目したU.S.3,687,808号、並びにU.S.4,845,205;5,130,302;5,134,066;5,175,273;5,367,066;5,432,272;5,457,187;5,459,255;5,484,908;5,502,177;5,525,711;5,552,540;5,587,469;5,594,121;5,596,091;5,614,617;5,750,692;及び5,681,941号が含まれ、そのいずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布又は細胞内取込みを亢進する1以上の部分又はコンジュゲートをオリゴヌクレオチドへ化学的に連結することを伴う。そのような部分には、限定されないが、コレステロール部分のような脂質部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1989, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1994, 4, 1053-1060)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N. Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306-309;Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪族の鎖、例えばドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10, 1111-1118;Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327-330;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えばジヘキサデシル−rac−グリセロール又は1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホン酸トリエチルアンモニウム(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654;Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229-237)、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923-937)が含まれる。
【0073】
このようなオリゴヌクレオチドコンジュゲートの製法を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、U.S.4,828,979;4,948,882;5,218,105;5,525,465;5,541,313;5,545,730;5,552,538;5,578,717;5,580,731;5,591,584;5,109,124;5,118,802;5,138,045;5,414,077;5,486,603;5,512,439;5,578,718;5,608,046;4,587,044;4,605,735;4,667,025;4,762,779;4,789,737;4,824,941;4,835,263;4,876,335;4,904,582;4,958,013;5,082,830;5,112,963;5,214,136;5,082,830;5,112,963;5,214,136;5,245,022;5,254,469;5,258,506;5,262,536;5,272,250;5,292,873;5,317,098;5,371,241;5,391,723;5,416,203;5,451,463;5,510,475;5,512,667;5,514,785;5,565,552;5,567,810;5,574,142;5,585,481;5,587,371;5,595,726;5,597,696;5,599,923;5,599,928;及び5,688,941号が含まれ、そのいずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
所与の化合物のすべての位置が一様に修飾される必要はなく、実のところ、上記の1より多い修飾をある単一化合物中に、又はオリゴヌクレオチド内の単一ヌクレオシドにさえ取り込めばよい。本発明には、キメラ化合物であるアンチセンス化合物も含まれる。「キメラ」アンチセンス化合物又は「キメラ」は、本発明の文脈において、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位(即ち、オリゴヌクレオチド化合物の場合はヌクレオチド)からなる、2以上の化学的に別個の領域を含有するアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。典型的には、これらオリゴヌクレオチドは、増加したヌクレアーゼ分解抵抗性、増加した細胞内取込み、及び/又は標的核酸への増加した結合アフィニティーをオリゴヌクレオチドへ与えるようにオリゴヌクレオチドを修飾する、少なくとも1つの領域を含有する。オリゴヌクレオチドの追加の領域は、RNA:DNA又はRNA:RNAハイブリッドを切断することが可能な酵素の基質として役立つ場合がある。例を挙げると、RNアーゼHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。故に、RNアーゼHの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それにより遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の効率を大いに高める。結果として、キメラオリゴヌクレオチドを使用するときにより短いオリゴヌクレオチドを用いれば、同一の標的領域へハイブリダイズするホスホロチオエート・デオキシオリゴヌクレオチドと比較して、同等な結果をしばしば得ることができる。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動によって、そして必要ならば、当該技術分野で知られている関連した核酸ハイブリダイゼーション技術によって定型的に検出することができる。
【0075】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、2以上のオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、上記のようなオリゴヌクレオシド及び/又はオリゴヌクレオチド模倣体の複合構造として形成される場合がある。そのような化合物は、当該技術分野ではハイブリッド又はギャップマーと呼ばれている。そのようなハイブリッド構造の製法を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、U.S.5,013,830;5,149,797;5,220,007;5,256,775;5,366,878;5,403,711;5,491,133;5,565,350;5,623,065;5,652,355;5,652,356;及び5,700,922号が含まれ、このうちあるものは本出願とともに共有され、そのいずれも参照により本明細書にそのまま組み込まれる。
【0076】
本発明に従って使用するアンチセンス化合物は、固相合成のよく知られた技術により簡便かつ定型的に作製することができる。そのような合成用の装置は、例えばアプライド・バイオシステムズ(カリフォルニア州フォスターシティ)が含まれる、ベンダー数社により販売されている。当該技術分野で知られているそのような合成用の他のどの手段も、追加的に又は代替的に利用してよい。同様の技術を使用して、ホスホロチオエート及びアルキル化誘導体のようなオリゴヌクレオチドを製造することもよく知られている。
【0077】
本発明のアンチセンス化合物は in vitro で合成され、生物学的起源のアンチセンス組成物も、アンチセンス分子のin vivo 合成を指令するように設計された遺伝子ベクター構築体も含まれない。本発明の化合物はまた、取込み、分布及び/又は吸収を促進するために、例えばリポソーム、受容体標的指向分子、経口、直腸、局所又は他の製剤といった他の分子、分子構造、又は化合物の混合物と混合、被包、コンジュゲートさせるか、他のやり方で会合させてよい。そのような取込み、分布及び/又は吸収を促進する製剤の製法を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、U.S.5,108,921;5,354,844;5,416,016;5,459,127;5,521,291;5,543,158;5,547,932;5,583,020;5,591,721;4,426,330;4,534,899;5,013,556;5,108,921;5,213,804;5,227,170;5,264,221;5,356,633;5,395,619;5,416,016;5,417,978;5,462,854;5,469,854;5,512,295;5,527,528;5,534,259;5,543,152;5,556,948;5,580,575;及び5,595,756号が含まれ、そのいずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
本発明のアンチセンス化合物には、ヒトが含まれる動物への投与時に、生物学的に活性な代謝物又はその残基を(直接的又は間接的に)提供することが可能である、あらゆる製剤的に許容される塩、エステル、又はそのようなエステルの塩、又はあらゆる他の化合物が含まれる。従って、例えば、本開示は、本発明の化合物のプロドラッグと製剤的に許容される塩、そのようなプロドラッグの製剤的に許容される塩、並びに他の生物学的同等物へも引用される。
【0079】
用語「プロドラッグ」は、生体又はその細胞の内部で、内因性の酵素や他の化学品及び/又は条件の作用により活性型(即ち、薬物)へ変換される不活性型で製造される治療薬剤を示す。特に、本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグバージョンは、Gosselin et al.へのWO93/24510(1993年12月9日公開)又は Imbach et al.へのWO94/26764に開示される方法に従って、SATE[(S−アセチル−2−チオエチル)リン酸塩]誘導体として製造する。
【0080】
用語「製剤的に許容される塩」は、本発明の化合物の生理学的及び製剤的に許容される塩、即ち、親化合物の所望される生物学的活性を保持し、所望されない毒性学的効果をそれへ与えない塩を意味する。
【0081】
製剤的に許容される塩基付加塩は、アルカリ及びアルカリ土類金属又は有機アミンのような金属又はアミンとともに形成される。カチオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、等である。好適なアミンの例は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、及びプロカインである(例えば、Berge et al.「製剤塩(Pharmaceutical Salts)」J. of Pharma Sci. 1977, 66: 119 を参照のこと)。前記酸性化合物の塩基付加塩は、従来のやり方で塩を産生するために、十分量の所望される塩基と遊離酸型を接触させることによって製造する。遊離酸型は、従来のやり方で酸とこの塩型を接触させて遊離酸を単離することによって再生することができる。遊離酸型は、極性溶媒における溶解度といった、ある種の物理的性質においてそれぞれの塩型とやや異なるが、他の点では、本発明の目的にとって、その塩はそれぞれの遊離酸と同等である。本明細書に使用されるように、「医薬付加塩」には、本発明の組成物の成分の1つの酸型の製剤的に許容される塩が含まれる。これにはアミンの有機又は無機酸塩が含まれる。好ましい酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、及びリン酸塩である。他の好適な製剤的に許容される塩は当業者によく知られていて、例えば塩酸、臭酸、硫酸又はリン酸といった無機酸;有機の、カルボン酸、スルホン酸、スルホ又はホスホ酸、又はN−置換スルファミン酸(例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エムボン酸、ニコチン酸又はイソニコチン酸);及び、天然のタンパク質合成に関わる20種のα−アミノ酸のようなアミノ酸(例えば、グルタミン酸又はアスパラギン酸);さらに、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、2又は3−ホスホグリセリン酸塩、グルコース−6−リン酸塩、N−シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成とともに);又はアスコルビン酸のような他の酸性有機化合物とのような、多種多様な無機酸及び有機酸の塩基性塩が含まれる。製剤的に許容される化合物の塩はまた、製剤的に許容されるカチオンで製造してもよい。製剤的に許容される好適なカチオンは当業者によく知られていて、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、及び4級アンモニウムのカチオンが含まれる。炭酸塩又は炭酸水素塩も可能である。
【0082】
オリゴヌクレオチドについて、製剤的に許容される塩の好ましい例には、限定されないが、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、スペルミン及びスペルミジンのようなポリアミン、等のようなカチオンとともに形成される塩;(b)無機酸、例えば塩酸、臭酸、硫酸、リン酸、硝酸、等とともに形成される酸付加塩;(c)例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸、等のような有機酸とともに形成される塩;及び(d)塩素、臭素、及びヨウ素のような元素アニオンより形成される塩が含まれる。
【0083】
本発明のアンチセンス化合物は、診断薬、治療薬、予防法、及び研究試薬やキットとして利用することができる。治療薬について言えば、VCC−1の発現を変調させることによって治療することができる疾患又は障害を有する疑いのある動物、好ましくはヒトを本発明によるアンチセンス化合物を投与することによって治療する。本発明の化合物は、有効量のアンチセンス化合物を好適な製剤的に許容される希釈剤又は担体へ加えることによって医薬組成物において利用することができる。本発明のアンチセンス化合物及び方法の使用は、例えば感染、炎症、又は腫瘍形成を例えば予防するか又は遅延するために、予防的に有用であるかもしれない。
【0084】
本発明のアンチセンス化合物が研究や診断薬に有用であるのは、これら化合物がVCC−1をコードする核酸へハイブリダイズするので、そのことを利用して、サンドイッチ法や他のアッセイを容易に構築し得るからである。VCC−1をコードする核酸と本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、当該技術分野で知られている手段により検出することができる。そのような手段には、酵素のオリゴヌクレオチドへのコンジュゲーション、オリゴヌクレオチドの放射標識化、又は他の好適な検出手段が含まれる場合がある。そのような検出手段を使用して試料中のVCC−1のレベルを検出するキットも製造することができる。
【0085】
本発明には、本発明のアンチセンス化合物が含まれる医薬組成物及び製剤も含まれる。本発明の医薬組成物は、局所又は全身治療のどちらが所望されるかということや処置される部位に依存して、いくつかの方法で投与することができる。投与は、局所投与(眼への投与、膣及び直腸への送達が含まれる粘膜への投与が含まれる)でも、肺への投与(ネブライザーによることが含まれる、粉末又はエアゾールの吸入又は通気による)でも、気管内、鼻腔内、表皮内及び経皮、経口又は非経口でもよい。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内の注射又は注入、又は頭蓋内、例えば鞘内又は脳室内の投与が含まれる。少なくとも1つの2’−O−メトキシエチル修飾のあるオリゴヌクレオチドは、経口投与に特に有用であると考えられている。
【0086】
局所投与用の医薬組成物及び製剤には、経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、スプレー剤、液剤、及び散剤を含めてよい。慣用の製剤用担体、水性、粉末又は油状の基剤、濃化剤、等が必要であるか又は所望される場合がある。被覆されたコンドーム、グラブ、等も有用であり得る。
【0087】
経口投与用の組成物及び製剤には、散剤又は顆粒剤、懸濁液剤、水又は非水性媒体に溶けた溶液剤、カプセル剤、サシェ剤(sachets)、又は錠剤が含まれる。濃化剤、芳香剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤、又は結合剤が望ましい場合もある。
【0088】
非経口、鞘内又は脳室内投与用の組成物及び製剤には、無菌の水溶液剤が含まれる場合があり、これは、緩衝剤、希釈剤、並びに、限定されないが、浸透エンハンサー、担体化合物や他の製剤的に許容される担体又は賦形剤といった他の好適な添加剤も含有してよい。
【0089】
本発明の医薬組成物には、限定されないが、溶液剤、乳剤、及びリポソーム含有製剤が含まれる。これら組成物は多様な成分より産生してよく、それには、限定されないが、予調製(preformed)液剤、自己乳化性の固形剤、及び自己乳化性の半固形剤が含まれる。
【0090】
本発明の医薬製剤は、簡便にも単位剤形で提示してよく、製薬業界でよく知られた慣用技術に従って調製することができる。そのような技術には、医薬用の担体又は賦形剤と有効成分を複合する工程が含まれる。一般に、この製剤は、液状担体か又は微細化した固形担体、又はその両方と均一かつ緊密に有効成分を複合すること、そしてその後、必要ならばその生成物を成型することによって調製する。
【0091】
本発明の組成物は、限定されないが、錠剤、カプセル剤、液体シロップ剤、軟ゲル剤、坐剤、及び浣腸剤のような多くの可能な剤形のいずれへ製剤化してもよい。本発明の組成物はまた、水性、非水性又は混合の媒体中の懸濁液剤として製剤化してもよい。水性懸濁液剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランが含まれる、懸濁液剤の粘度を高める物質をさらに含有してよい。懸濁液剤は、安定化剤も含有してよい。
【0092】
本発明の1つの態様において、医薬組成物はフォームとして製剤化して、使用することができる。医薬フォームには、限定されないが、乳剤、マイクロエマルジョン、クリーム剤、ゼリー剤、及びリポソーム剤のような製剤が含まれる。上記の諸製剤は性質において基本的に似ているが、最終産物の成分及びコンシステンシーにおいて異なる。そのような組成物及び製剤の製法については製薬及び製剤技術分野の当業者に概ね知られていて、本発明の組成物の製剤化に適用することができる。
【0093】
乳剤:本発明の組成物は乳剤として調製及び製剤化することができる。乳剤は、典型的には、一方の液体が別の液体に、直径0.1μmを通常越える液滴の形態で分散した異種成分系である(Idson,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、199 頁中;Rosoff,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、245 頁中;Block,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第2巻、335 頁中;Higuchi et al.「レミントン製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」マック・パブリッシング社、ペンシルヴェニア州イーストン(1985)301 頁中)。乳剤は、しばしば、緊密に混合して互いに分散している2種の混合し得ない液相を含んでなる二相系である。一般に、乳剤は油中水型(w/o)又は水中油型(o/w)のいずれでもよい。水相が細分されて多量の油相の中へ微小の液滴として分散している場合、生じる組成物は油中水型(w/o)乳剤と呼ばれる。あるいは、油相が細分されて多量の水相の中へ微小の液滴として分散している場合、生じる組成物は水中油型(w/o)乳剤と呼ばれる。乳剤は、分散相及び有効成分に加えて追加の成分を含有してよく、これは水相、油相のいずれの溶液としても、それ自身が分離した相としても、存在してよい。乳化剤、安定化剤、色素、及び抗酸化剤のような医薬賦形剤も、必要に応じ、乳剤中に存在してよい。医薬乳剤はまた、例えば、油中水中油型(o/w/o)及び水中油中水型(w/o/w)乳剤の場合のように、2より多い相からなる多相乳剤であってよい。そのような複合製剤は、単純な二相乳剤が提供しないある種の利点をしばしば提供する。o/w乳剤の各油滴が小さい水滴を包む多相乳剤は、w/o/w乳剤を構成する。同様に、油性の連続層の中で安定化した水球に油滴が包まれている系は、o/w/o乳剤を提供する。
【0094】
乳剤は、熱力学的安定性がほとんどないか、又はまったくないことを特徴とする。しばしば、乳剤の分散相又は不連続相は、外部相や連続相へ十分分散し、乳化剤の手段又は製剤の粘性によりこの形態で維持される。乳剤の諸相のいずれかは、乳剤形式の軟膏基剤及びクリーム剤の場合のように、半固体でも固体でもよい。乳剤を安定化させる他の手段は、乳剤のいずれかの相へ取り込むことができる乳化剤の使用を伴う。乳化剤は概ね4種のカテゴリーへ分類し得る:合成界面活性剤、天然に存在する乳化剤、吸収基剤、及び微分散固形物である(Idson,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、199 頁中)。
【0095】
界面活性剤としても知られる合成界面活性剤は、乳剤の製剤化において広汎な応用可能性が見出されていて、文献に解説されている(Rieger,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、285 頁中;Idson,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、199 頁中)。界面活性剤は、典型的には両親媒性であり、親水性と疎水性の部分を含む。界面活性剤の疎水性に対する親水性の比率は親水性/親油性バランス(HLB)と呼ばれ、製剤の調製において界面活性剤を分類して選択するときの貴重なツールとなる。界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性といった、親水基の性質に基づいて異なるクラスへ分類することができる(Rieger,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、285 頁中)。
【0096】
乳剤製剤に使用される天然に存在する乳化剤には、ラノリン、ミツロウ、ホスファチド、レシチン、及びアラビアゴムが含まれる。吸収基剤は、無水ラノリン及び親水ワセリンのように、水に浸っても、w/o乳剤を形成しても、その半固体コンシステンシーを保持するような親水性を保有する。微分割固形物も、特に界面活性剤との組合せや粘稠な調製物において、良好な乳化剤として使用されている。これには、重金属水酸化物のような極性の無機固形物、ベントナイト、アッタプルガイト(attapulgite)、ヘクトライト、カオリン、モントモリロナイト(montmorillonite)、ケイ酸アルミニウムコロイド及びケイ酸マグネシウムアルミニウムコロイドのような非膨潤性の粘土、色素、及び炭素又はトリステアリン酸グリセリルのような非極性固形物が含まれる。
【0097】
乳剤製剤には多種多様な非乳化材料も含まれ、乳剤の諸特性に貢献する。これには、脂肪、オイル、ロウ、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、湿潤剤、親水性コロイド、保存剤、及び抗酸化剤が含まれる(Block,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、335 頁中;Idson,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、199 頁中)。
【0098】
親水性コロイド又はヒドロコロイドには、多糖(例えば、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアーゴム、カラヤゴム、及びトラガカント)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシプロピルセルロース)、及び合成ポリマー(例えば、カルボマー、セルロースエーテル、及びカルボキシビニルポリマー)のような天然に存在するゴムや合成ポリマーが含まれる。これらは水に分散するか又は膨潤してコロイド溶液を形成し、分散相の液滴の周囲に強い界面膜を形成し、外部相の粘度を高めることによって乳剤を安定化させる。
【0099】
乳剤は、炭水化物、タンパク質、ステロール、及びホスファチドといった、微生物の増殖を容易に支援し得るいくつかの成分をしばしば含有するので、上記製剤は、保存剤をしばしば取り込む。乳剤製剤に含まれる通常使用される保存剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p−ヒドロキシ安息香酸のエステル、及びホウ酸が含まれる。抗酸化剤もまた製剤の劣化を防ぐためによく乳剤製剤へ加えられる。使用する抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンのようなフリーラジカル捕捉剤でも、アスコルビン酸及びメタ重亜硫酸ナトリウムのような還元剤やクエン酸、酒石酸及びレシチンのような抗酸化相乗剤でもよい。
【0100】
皮膚、経口及び非経口の経路を介した乳剤製剤の適用とそれらの製造の方法については文献に概説されている(Idson,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、199 頁中)。経口送達用の乳剤製剤は、製剤化の容易さ、吸収からの効力、及びバイオアベイラビリティの観点のために、きわめて広く使用されている(Rosoff,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、245 頁中;Idson,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、199 頁中)。鉱油ベースの緩下剤、脂溶性ビタミン製剤、及び高脂肪栄養調製剤は、通常、o/w乳剤として経口投与されている材料の1つである。
【0101】
本発明の1つの態様において、オリゴヌクレオチド及び核酸の組成物をマイクロエマルジョンとして製剤化する。マイクロエマルジョンは、水、オイル、及び両親媒性化合物の系として定義することが可能であり、光学的に単等方性で熱力学的に安定な液体溶液剤である(Rosoff,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、245 頁中)。典型的には、マイクロエマルジョンは、先ず界面活性剤の水溶液にオイルを分散させてから、十分量の第四成分、一般的には中鎖長のアルコールを加えて透明な系とすることによって調製する系である。故に、マイクロエマルジョンは、界面活性分子の界面膜により安定化している、2種の混和しない液体の熱力学的に安定で、等方的に澄明な分散液としても記載された(Leung and Shah,「薬物の制御放出:ポリマーと集塊系(Controlled Release of Drugs: Polymers and Aggregate Systems)」 Rosoff, M.(監修)(1989)VCHパブリッシャーズ、ニューヨーク、1852-5 頁中)。通常、マイクロエマルジョンは、オイル、水、界面活性剤、界面活性助剤(cosurfactant)及び電解質が含まれる、3〜5種の成分の組合せにより調製する。マイクロエマルジョンが油中水型(w/o)であるか又は水中油型(o/w)のいずれであるかは、使用するオイル及び界面活性剤の性質と、界面活性分子の極性ヘッド及び炭化水素テールの構造及び幾何学的パッキングに依存する(Scott,「レミントン製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」マック・パブリッシング社、ペンシルヴェニア州イーストン(1985)271 頁中)。
【0102】
相図を利用する現象的アプローチは詳しく研究され、マイクロエマルジョンを製剤化する方法に関する包括的な知識を当業者へもたらしてきた(Rosoff,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、245 頁中;Block,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、335 頁中)。慣用の乳剤と比べると、マイクロエマルジョンは、自発的に形成される熱力学的に安定な液滴の製剤中に水に不溶性の薬物を可溶化するという利点を提供する。
【0103】
マイクロエマルジョンの調製に使用する界面活性剤には、限定されないが、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、モノラウリン酸テトラグリセロール(ML310)、モノオレイン酸テトラグリセロール(MO310)、モノオレイン酸ヘキサグリセロール(PO310)、ペンタオレイン酸ヘキサグリセロール(PO500)、モノカプリン酸デカグリセロール(MCA750)、モノオレイン酸デカグリセロール(MO750)、セスキオレイン酸デカグリセロール(SO750)、デカオレイン酸デカグリセロール(DAO750)の単独又は界面活性助剤との組合せが含まれる。通常はエタノール、1−プロパノール及び1−ブタノールのような短鎖アルコールである界面活性助剤は、界面膜中へ浸透し、その結果、界面活性分子間に生じた隙間のために無秩序な膜を創出することによって界面の流動性を高めることに役立つ。しかしながら、マイクロエマルジョンは、界面活性助剤を使用せずに調製することができ、アルコールを含まない自己乳化性マイクロエマルジョン系が当該技術分野で知られている。水相は、典型的には、限定されないが、水、薬物の水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、及びエチレングリコールの誘導体であり得る。油相には、限定されないが、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8〜C12)モノ、ジ及びトリグリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8〜C10グリセリド、植物油及びシリコーン油のような材料が含まれる場合がある。
【0104】
マイクロエマルジョンは、薬物の可溶化と薬物吸収の増加という観点から特に興味深い。脂質ベースのマイクロエマルジョン(o/wとw/oの両方)は、ペプチドが含まれる薬物の経口バイオアベイラビリティを亢進させると提唱されている(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385-1390;Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol., 1993, 13, 205)。マイクロエマルジョンは、薬物可溶化の改善、酵素的加水分解からの薬物の保護、膜の流動性及び透過性における界面活性剤誘発性の改変による薬物吸収の可能な亢進、調製の容易さ、固形剤形に優る経口投与の容易さ、臨床効力の改善、並びに毒性の減少といった種々の利点を提供する(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385;Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85, 138-143)。しばしば、マイクロエマルジョンは、その諸成分が周囲温度で一緒にされると自発的に形成される場合がある。これは、熱に弱い薬物、ペプチド又はオリゴヌクレオチドを製剤化するときに特に有利であるかもしれない。マイクロエマルジョンはまた、化粧品と医薬品の応用のいずれにおいても、有効成分の経皮送達に効果的である。本発明のマイクロエマルジョンの組成物及び製剤は、オリゴヌクレオチド及び核酸の胃腸管からの全身吸収の増加を促進するばかりでなく、胃腸管、膣、頬腔、及び他の投与領域内におけるオリゴヌクレオチド及び核酸の局所的な細胞内取込みを改善する可能性がある。
【0105】
本発明のマイクロエマルジョンは、製剤の特性を改善し、本発明のオリゴヌクレオチド及び核酸の吸収を亢進するために、モノステアリン酸ソルビタン(Grill 3)、Labrasol、及び浸透エンハンサーのような追加成分及び添加剤も含有してよい。本発明のマイクロエマルジョンに使用する浸透エンハンサーは、5つの広いカテゴリー(界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、及び非キレート非界面活性剤)の1つに属するものとして分類することができる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92)。上記クラスのそれぞれについては上記に論じた。
【0106】
リポソーム:
これまで研究されてきて薬物の製剤化に使用されている、マイクロエマルジョン以外の多くの組織化された界面活性構造がある。これには、単層、ミセル、二層、及び小胞が含まれる。リポソームのような小胞が多大な関心を惹いてきたのは、薬物送達の観点からそれらが提供するその特異性と作用時間のためである。本発明中において使用する用語「リポソーム」は、球状の二層(群)に配置された両親媒性の脂質からなる小胞を意味する。
【0107】
リポソームは、親油性材料と水性内部より形成される膜を有する単層又は多層の小胞である。水性部分が送達される組成物を含有する。カチオン性リポソームは細胞壁へ融合することが可能である利点を保有する。非カチオン性リポソームは、細胞壁と効率的には融合し得ないが、in vivo でマクロファージにより取り込まれる。
【0108】
哺乳動物のインタクトな皮膚を通過するためには、脂質小胞は、適切な経皮勾配の影響下で、それぞれ直径50nm未満の連続した微細な空孔を通過しなければならない。故に、きわめて変形しやすくて、そのような微細空孔を通過することができるリポソームを使用することが望ましい。
【0109】
リポソームのさらなる利点には以下が含まれる:天然のリン脂質より得られるリポソームは生体適合性であり、生物分解性である;リポソームは広範囲の水溶性及び脂溶性薬物を取り込むことができる;リポソームはその内部コンパートメント中の被包薬物を代謝及び分解から保護することができる(Rosoff,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」Lieberman, Rieger and Banker (監修)(1988)マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、245 頁中)。リポソーム製剤の調製における重要な考察事項は、脂質表面の電荷、小胞のサイズ、及びリポソームの水分量である。
【0110】
リポソームは、有効成分の作用部位への輸送及び送達に有用である。リポソーム膜が生体膜と構造的に似ているので、リポソームを組織へ適用するとき、リポソームは細胞膜と合体し始める。リポソームと細胞の合体が進行するにつれて、リポソームの中身は細胞のなかへ入り、そこで有効薬剤が作用する場合がある。
【0111】
リポソーム製剤は、多くの薬物の送達形式として詳細な研究の焦点となってきた。局所投与についてはリポソームが他の製剤に優るいくつかの利点を提示するという証拠が増えつつある。そのような利点には、投与薬物の高い全身吸収に関連した副作用の軽減、投与薬物の所望の標的における蓄積の増加、並びに、親水性と疎水性、両方の多様な薬物を皮膚へ投与する能力が含まれる。
【0112】
いくつかの報告論文は、高分子量DNAが含まれる種々の薬剤を皮膚へ送達するリポソームの能力を詳しく述べている。鎮痛薬、抗体、ホルモン、及び高分子量DNAが含まれる化合物群が皮膚へ投与されている。この適用の大部分では、上部表皮を標的指向した。
【0113】
リポソームは2つのクラスに大別される。カチオン性リポソームは陽電荷のリポソームであり、陰電荷のDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成する。陽電荷のDNA/リポソーム複合体は陰電荷の細胞表面へ結合し、エンドソームのなかに内部化される。リポソームは、エンドソーム内の酸性pHにより破壊され、その中身を細胞の細胞質へ放出する(Wang et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987, 147, 980-985)。
【0114】
pH感受性であるか又は陰電荷であるリポソームは、DNAと複合するというよりそれを捕捉する。DNAと脂質はいずれも似たように荷電しているので、複合体形成よりは反発が起こるものである。それでも、あるDNAはこれらリポソームの水性内部の内側に捕捉される。pH感受性リポソームは、チミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを培養中の細胞単層へ送達するために使用された。この外来遺伝子の発現が標的細胞において検出された(Zhou et al., Journal of Controlled Release, 1992, 19, 269-274)。
【0115】
リポソーム組成物の1つの主要タイプには、天然に由来するホスファチジルコリン以外のリン脂質が含まれる。例えば、中性のリポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)又はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)より形成することができる。アニオン性リポソーム組成物が一般にジミリストイルホスファチジルグリセロールより形成されるのに対し、アニオン性の融合産生(fusogenic)リポソームは主にジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)より形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、例えば、大豆のPCや卵のPCのようなホスファチジルコリン(PC)より形成される。別のタイプは、リン脂質及び/又はホスファチジルコリン及び/又はコレステロールの混合物より形成される。
【0116】
いくつかの研究でリポソーム性薬物製剤の皮膚への局所送達が評価されている。インターフェロン含有リポソームをモルモットの皮膚へ適用すると皮膚ヘルペス潰瘍の低下を生じたが、他の手段(例えば、溶液剤又は乳剤として)を介したインターフェロンの送達は無効であった(Weiner et al., Journal of Drug Targeting, 1992, 2, 405-410)。さらに、追加の研究では、水系を使用するインターフェロンの投与に対してリポソーム製剤の一部として投与したインターフェロンの効力が試験され、リポソーム製剤が水系の投与に優ると結論された(du Plessis et al., Antiviral Research, 1992, 18, 259-265)。
【0117】
非イオン性のリポソーム系(特に非イオン性界面活性剤及びコレステロールを含んでなる系)も、薬物の皮膚への送達におけるその有用性を判定するために試験された。NovasomeTMI(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)及びNovasomeTMII(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含んでなる非イオン性リポソーム製剤を使用して、シクロスポリン−Aをマウス皮膚の真皮へ送達した。結果は、そのような非イオン性リポソーム系が皮膚の様々な層へのシクロスポリン−Aの沈着を促進するのに有効であることを示した(Hu et al., S. T. P. Pharma. Sci., 1994, 4, 6, 466)。
【0118】
リポソームにはまた、「立体的に安定した」リポソームが含まれるが、この用語は、本明細書に使用されるように、1以上の特化した脂質を含んでなるリポソームを意味し、これがリポソームに取り込まれると、そのような特化した脂質を欠いているリポソームに比べて循環寿命の亢進をもたらす。立体的に安定したリポソームの例は、リポソームの小胞を形成する脂質部分の一部が(A)モノシアロガングリオシドGM1のような1以上の糖脂質を含むか、又は(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分のような1以上の親水性ポリマーで誘導されるものである。特定の理論に縛られることを望まないが、少なくとも、ガングリオシド、スフィンゴミエリン、又はPEG−誘導化脂質を含有する立体的に安定したリポソームについては、これらの立体的に安定したリポソームの循環半減期が亢進することは、細網内皮系(RES)の細胞への取込みの低下に由来すると当該技術分野では考えられている(Allen et al., FEBS Letters, 1987, 223, 42;Wu et al., Cancer Research, 1993, 53, 3765)。
【0119】
1以上の糖脂質を含んでなる様々なリポソームが当該技術分野で知られている。Papahadjopoulos et al.(Ann. N. Y. Acad. Sci., 1987, 507, 64)は、モノシアロガングリオシドGM1、硫酸ガラクトセレブロシド、及びホスファチジルイノシトールがリポソームの血中半減期を改善させる能力について報告した。上記の知見は、Gabizon et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 1988, 85, 6949)により詳しく解釈された。米国特許第4,837,028号及びWO88/04924(いずれも Allen et al., へ)は、(1)スフィンゴミエリン及び(2)ガングリオシドG又は硫酸ガラクトセレブロシドエステルを含んでなるリポソームを開示する。米国特許第5,543,152号(Webb et al.)は、スフィンゴミエリンを含んでなるリポソームを開示する。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含んでなるリポソームがWO97/13499(Lim et al.)に開示されている。
【0120】
1以上の親水性ポリマーで誘導した脂質を含んでなる多くのリポソームとその調製法は、当該技術分野で知られている。Sunamoto et al.(Bull. Chem. Soc. Jpn., 1980, 53, 2778)は、PEG部分を含有する非イオン性界面活性剤である2C1215Gを含んでなるリポソームについて記載した。Illum et al.(FEBS Lett., 1984, 167, 79)は、高分子グリコールでポリスチレン粒子を親水コーティングすると血中半減期が有意に増すことに注目した。ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)のカルボキシル基を付けることにより修飾した合成リン脂質が Sears(米国特許第4,426,330号及び4,534,899号)に記載されている。Klibanov et al.(FEBS Lett., 1990, 268, 235)は、PEG又はステアリン酸PEGで誘導したホスファチジルエタノールアミン(PE)を含んでなるリポソームが血液循環半減期の有意な増加を有することを実証する実験について記載した。Blume et al.(Biochimica et Biophysica Acta, 1990, 1029, 91)は、そのような観察事実を他のPEG誘導化リン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)及びPEGの組合せより形成される、DSPE−PEG)へ拡張した。共有結合したPEG部分をその外部表面に有するリポソームがヨーロッパ特許第EP0 445 131 B1号とFisherへのWO90/04384に記載されている。PEGで誘導したPEを1〜20モル%含有するリポソーム組成物とその使用の方法が Woodle et al.(米国特許第5,013,556号及び5,356,633号)と Martin et al.(米国特許第5,213,804号及びヨーロッパ特許第EP 0 496 813 B1号)により記載されている。他のいくつかの脂質−ポリマーコンジュゲートを含んでなるリポソームがWO91/05545及び米国特許第5,225,212号(いずれも Martin et al. へ)とWO94/20073(Zalipsky et al.)に開示されている。PEG修飾セラミド脂質を含んでなるリポソームがWO96/10391(Choi et al.)に記載されている。米国特許第5,540,935号(Miyazaki et al.)及び5,556,948号(Tagawa et al.)は、その表面上の官能基部分でさらに誘導化し得るPEG含有リポソームについて記載する。
【0121】
核酸を含んでなる限定数のリポソームが当該技術分野で知られている。Thierry et al. へのWO96/40062は、高分子量の核酸をリポソームに被包化する方法を開示する。Tagawa et al. への米国特許第5,264,221号はタンパク質に結合したリポソームを開示し、そのようなリポソームの中身にアンチセンスRNAが含まれる可能性があることを主張する。Rahman et al. への米国特許第5,665,710号は、オリゴデオキシヌクレオチドをリポソームに被包化する特定の方法を記載する。Love et al. へのWO97/04787は、raf遺伝子へ標的指向したアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでなるリポソームを開示する。
【0122】
トランスファーソーム(transfersome)はさらに別のタイプのリポソームであり、きわめて変形しやすい脂質の集塊であって、薬物送達運搬体の魅力的な候補である。トランスファーソームは脂質の液滴として記載される場合があり、きわめて変形しやいので、その液滴より小さい空孔を容易に貫通することができる。トランスファーソームはそれを使用する環境に適合している、例えば、それらは自己最適化し(皮膚の空孔の形状に適合する)、自己修復し、断片化せずにその標的に頻繁に到達し、しばしば自己負荷性(self-loading)である。トランスファーソームを作製するには、界面境界活性化剤、通常は界面活性剤を標準的なリポソーム組成物へ加えることが可能である。トランスファーソームは、血清アルブミンを皮膚へ送達するのに使用されたことがある。トランスファーソーム仲介性の血清アルブミンの送達は、血清アルブミンを含有する溶液剤の皮下注射と同じくらい有効であることが示された。
【0123】
界面活性剤は乳剤(マイクロエマルジョンが含まれる)やリポソームのような製剤に広く応用されている。天然と合成の両方の多種多様なタイプの界面活性剤の性質を分類して順位づける最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)の使用によるものである。親水基(「ヘッド」としても知られる)の性質は、製剤に使用される様々な界面活性剤を分類するための最も有用な手段を提供する(Rieger,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、1988、285 頁中)。
【0124】
界面活性分子がイオン化されていなければ、それは非イオン性界面活性剤として分類される。非イオン性界面活性剤は医薬品及び化粧品に広く応用され、広範囲のpH値にわたり使用可能である。一般に、そのHLB値は、その構造に依存して、2〜約18に及ぶ。非イオン性界面活性剤には、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、及びエトキシル化エステルのような非イオン性エステルが含まれる。脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、及びエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーのような非イオン性のアルカノールアミド及びエーテルもこのクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も一般的なメンバーである。
【0125】
界面活性分子が水に溶けるか又は分散するときに陰電荷を担うならば、この界面活性剤はアニオン性として分類される。アニオン性界面活性剤には、石けんのようなカルボキシレート、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、硫酸アルキル及び硫酸エトキシル化アルキルのような硫酸のエステル、アルキルベンゼンスルホネートのようなスルホネート、イセチオン酸アシル、タウリン酸及びスルホコハク酸アシル、及びリン酸エステルが含まれる。アニオン性界面活性剤クラスの最も重要なメンバーは、硫酸アルキルと石けんである。
【0126】
界面活性分子が水に溶けるか又は分散するときに陽電荷を担うならば、この界面活性剤はカチオン性として分類される。カチオン性界面活性剤には、4級アンモニウム塩とエトキシル化アミンが含まれる。4級アンモニウム塩がこのクラスで最も使用されるメンバーである。
【0127】
界面活性分子が陽電荷か陰電荷のどちらもを担う能力を有するならば、この界面活性剤は両親媒性として分類される。両親媒性界面活性剤には、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N−アルキルベタイン、及びホスファチドが含まれる。
【0128】
医薬品、製剤及び乳剤における界面活性剤の使用が概説されている(Rieger,「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」マルセルデッカー社、ニューヨーク州ニューヨーク、1988、285 頁中)。
【0129】
浸透エンハンサー:
1つの態様において、本発明は、核酸、特にオリゴヌクレオチドの動物の皮膚への効率的な送達をもたらす様々な浸透エンハンサーを利用する。ほとんどの薬物は、イオン化型と非イオン化型の両方で溶液中に存在する。しかしながら、通常、細胞膜を容易に通過するのは脂溶性又は親油性の薬物だけである。通過される膜を浸透エンハンサーで処理すれば、非親油性の薬物でも細胞膜を通過し得ることが発見された。非親油性薬物の細胞膜通過の拡散を助けることに加えて、浸透エンハンサーは親油性薬物の透過性も高める。
【0130】
浸透エンハンサーは5つの広いカテゴリー、即ち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、及び非キレート非界面活性剤の1つに属するものとして分類することができる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92)。上記の浸透エンハンサー群のそれぞれにつき、以下により詳しく記載する。
【0131】
界面活性剤:本発明に関連すると、界面活性剤(又は「界面活性薬剤」)は、水溶液に溶けるときに、溶液の表面張力、又は水溶液と別の液体間の界面張力を低下させ、その結果、粘膜を介したオリゴヌクレオチドの吸収を高める化学物質(entities)である。胆汁酸塩及び脂肪酸に加え、これらの浸透エンハンサーには、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル及びポリオキシエチレン−20−セチルエーテル(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92);及びFC−43のようなペルフルオロケミカル乳剤(Takahashi et al., J. Pharm. Pharmacol., 1988, 40, 252)が含まれる。
【0132】
脂肪酸:浸透エンハンサーとして作用する様々な脂肪酸とその誘導体には、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n−デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1−モノオレオイル−rac−グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール−1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、それらのC1−10アルキル(例えば、メチル、イソプロピル及びt−ブチル)エステル、及びそれらのモノ及びジグリセリド(即ち、オレエート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレエート、等)が含まれる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92;Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7:1-33;El-Hariri et al., J. Pharm. Pharmacol., 1992, 44, 651-654)。
【0133】
胆汁酸塩:胆汁の生理学的役割には、脂質及び脂溶性ビタミンの分散及び吸収の促進が含まれる(Brunton, 38 章「グッドマン・ギルマンの薬理書(Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics)」第9版、Hardman et al.(監修)マックグローヒル、ニューヨーク、1996, 934-935 頁中)。様々な天然の胆汁酸塩とその合成誘導体が浸透エンハンサーとして作用する。このように、用語「胆汁酸塩」には、天然に存在する胆汁のあらゆる成分、並びにそのあらゆる合成誘導体が含まれる。本発明の胆汁酸塩には、例えば、コール酸(又はその製剤的に許容されるナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリコール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ−24,25−ジヒドロフシジン酸ナトリウム(STDHF)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム及びポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(POE)が含まれる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, 92 頁;Swinyard, 39 章「レミントン製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」第18版、Gennaro(監修)、マック・パブリッシング社、ペンシルヴェニア州イーストン(1990)782-783 頁中;Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33;Yamamoto et al., J. Pharm. Exp. Ther., 1992, 263, 25;Yamashita et al., J. Pharm. Sci., 1990, 79, 579-583)。
【0134】
キレート剤:キレート剤は、本発明に関連して使用されるように、金属イオンと複合体を形成することによってそれを溶液から除去し、その結果、粘膜を介したオリゴヌクレオチドの吸収を高める化合物として定義することができる。本発明における浸透エンハンサーとしての使用に関して言えば、キレート剤は、DNアーゼ阻害剤としても役立つという追加の利点を有する。これは、ほとんどの特性決定されたDNAヌクレアーゼが触媒作用のために2価金属イオンを必要とするので、キレート剤により阻害されるためである(Jarrett, J. Chromatogr., 1993, 618, 315-339)。本発明のキレート剤には、限定されないが、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸塩及びホモバニレート)、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス−9、及びβ−ジケトンのN−アミノアシル誘導体(エナミン)が含まれる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, 92 頁;Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33;Buur et al., J. Control Rel., 1990, 14, 43-51)。
【0135】
非キレート非界面活性剤:本明細書に使用されるように、非キレート非界面活性剤の浸透亢進化合物は、キレート剤としても界面活性剤としてもさしたる活性を示さないが、それでも消化管粘膜を介したオリゴヌクレオチドの吸収を高める化合物として定義される(Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33)。このクラスの浸透エンハンサーには、例えば、不飽和の環式尿素、1−アルキル及び1−アルケニルアザシクロ−アルカノン誘導体(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, 92 頁);及び、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシン及びフェニルブタゾンのような非ステロイド性抗炎症剤(Yamashita et al., J. Pharm. Pharmacol., 1987, 39, 621-626)が含まれる。
【0136】
オリゴヌクレオチドの細胞レベルでの取込みを高める薬剤も本発明の薬物や他の組成物へ加えてよい。例えば、リポフェクチン(Junichi et al., 米国特許第5,705,188号)のようなカチオン性脂質、カチオン性グリセロール誘導体、及びポリリジン(Lollo et al., PCT出願WO97/30731)のようなポリカチオン性分子も、オリゴヌクレオチドの細胞取込みを高めることが知られている。
【0137】
エチレングリコールやプロピレングリコールのようなグリコール、2−ピロールのようなピロール、アゾン、並びにリモネン及びメントンのようなテルペンが含まれる他の薬剤も、投与する核酸の浸透を高めるために利用してよい。
【0138】
担体:
本発明のある組成物は、製剤中に担体化合物も取り込む。本明細書に使用する「担体化合物」又は「担体」は、不活性である(即ち、それ自身は生物学的活性を保有しない)が、例えば生物学的に活性のある核酸を分解するか又はその循環からの除去を促進することによって、生物学的活性を有する核酸のバイオアベイラビリティを低下させる in vivo プロセスにより核酸として認知される核酸又はその類似体を意味する場合がある。核酸及び担体化合物の同時投与は、典型的には後者の物質が過剰であるが、肝臓、腎臓又は他の循環外レザバーにおいて回収される核酸の量の実質的な低下をもたらす場合があり、これは恐らく共通の受容体に対する担体化合物と核酸の競合によるものであろう。例えば、部分ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの肝臓組織における回収は、それがポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジン酸又は4−アセトアミド−4’−イソチオシアノ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸と同時投与されるとき、低下する場合がある(Miyao et al., Antisense Res. Dev., 1995, 5, 115-121;Takakura et al., Antisense & Nucl. Acid Drug Dev., 1996, 6, 177-183)。
【0139】
賦形剤
担体化合物とは対照的に、「医薬担体」又は「賦形剤」は、製剤的に許容される溶媒、懸濁剤、又は1以上の核酸を動物へ送達するための他の薬理学的に不活性な担体である。賦形剤は、液体でも固体でもよく、計画された投与の方法に基づいて、所与の医薬組成物の核酸や他の成分と組み合わせたときに、所望される大きさ、コンシステンシー、等をもたらすように選択する。典型的な医薬担体には、限定されないが、結合剤(例、ゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、等);充填剤(例、乳糖や他の糖、微結晶性セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート又はリン酸水素カルシウム、等);滑沢剤(例、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化シリコン、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、水素添加植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、等);崩壊剤(例、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、等);及び、湿潤剤(例、ラウリル硫酸ナトリウム、等)が含まれる。
【0140】
核酸とは有害に反応しない、非腸管外投与に適した製剤的に許容される有機又は無機の賦形剤も本発明の組成物を製剤化するために使用してよい。製剤的に許容される好適な担体には、限定されないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、等が含まれる。
【0141】
核酸の局所投与用の製剤には、滅菌及び非滅菌の水溶液剤、アルコールのような一般溶媒中の非水性溶液剤、又は液体又は固体のオイル基剤中の核酸の溶液剤が含まれる場合がある。これら溶液剤は、緩衝液、希釈剤、及び他の好適な添加剤も含有してよい。核酸とは有害に反応しない、非腸管外投与に適した製剤的に許容される有機又は無機の賦形剤も使用してよい。
【0142】
製剤的に許容される好適な賦形剤には、限定されないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、等が含まれる。
【0143】
他の成分:
本発明の組成物は、医薬組成物に慣用的に見出される他の付加成分を、その現行技術で確立された使用レベルで、追加的に含有してよい。従って、例えば、本組成物は、例えば止痒剤、収斂薬、局所麻酔剤又は抗炎症剤のような適合性のある追加の医薬活性材料を含有しても、着色剤、芳香剤、保存剤,抗酸化剤、混濁剤、濃化剤及び安定化剤のような、本発明の組成物の様々な剤形を物理的に製剤化するのに有用な追加の材料を含有してもよい。しかしながら、そのような材料は、添加したときに、本発明の組成物の成分の生物学的活性に不当に干渉してはならない。製剤は、滅菌して、所望されるならば、製剤の核酸とは有害に反応しない助剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、着色剤、芳香剤及び/又は芳香性物質、等と混合してよい。
【0144】
水性懸濁液剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランが含まれる、懸濁液剤の粘度を高める物質を含有してよい。この懸濁液剤は、安定化剤も含有してよい。
【0145】
本発明のある態様は、(a)1以上のアンチセンス化合物、及び(b)非アンチセンス機序によって機能する1以上の他の化学療法剤を含有する医薬組成物を提供する。そのような化学療法剤の例には、限定されないが、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン(CA)、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロキシウリジン(5−FUdR)、メトトレキセート(MTX)、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、テニポシド、シスプラチン及びジエチルスチルベストロール(DES)のような抗癌剤が含まれる。一般論としては、「メルクマニュアル(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy)」第15版、Berkow et al.(監修)(1987)、ニュージャージー州ラーウェイ、1206-1228 頁を参考のこと。非ステロイド抗炎症薬及びコルチコステロイドが限定せずに含まれる抗炎症薬と、リビビリン、ビダラビン、アシクロビル及びガンシクロビルが限定されずに含まれる抗ウイルス薬も、本発明の組成物に組み合わせてよい。一般論としては、「メルクマニュアル(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy)」第15版、Berkow et al.(監修)(1987)、ニュージャージー州ラーウェイ、2499-2506 頁及び46-49 頁をそれぞれ参照のこと。他の非アンチセンス化学療法剤も本発明の範囲内にある。2以上の組合せ化合物は、一緒に使用しても、連続的に使用してもよい。
【0146】
別の関連した態様において、本発明の組成物は、第一の核酸へ標的指向する1以上のアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドと、第二の核酸標的へ標的指向する追加のアンチセンス化合物を含有してよい。アンチセンス化合物の数多の例が当該技術分野で知られている。2以上の組合せ化合物は、一緒に使用しても、連続的に使用してもよい。
【0147】
治療用組成物の製剤化とその後続の投与は、当業者の技術の範囲内にあると考えられる。投薬は、治療される病態の重症度と応答性に依存し、治療のクールは数日から数ヶ月、又は治癒がもたらされるか、又は病態の減衰が達成されるまで続く。最適な投薬スケジュールは、患者の体内における薬物蓄積の測定値より算出することができる。当業者は、最適投与量、投薬方法、及び反復率を容易に決定することができる。最適投与量は個々のオリゴヌクレオチドの相対効力に応じて変動する場合があるが、一般には in vitro 及び in vivo の動物モデルにおいて有効と判定されたEC50に基づいて推定することができる。一般に、投与量は体重1kgあたり0.01μg〜100gであり、1日、1週、1月又は1年につき1回又はそれ以上与えても、2〜20年に1回だけ投与してもよい。当業者は、体液又は組織中の薬物の測定滞留時間及び濃度に基づいて投薬の反復率を容易に推定することができる。治療がうまくいけば、患者に維持療法を実施させ、病態の再発を予防することが望ましい場合があり、ここでオリゴヌクレオチドは、1日1回又は数回〜20年に1回まで、体重1kgあたり0.01μg〜100gに及ぶ維持用量で投与する。
【0148】
本発明をその好ましい態様のあるものに準じて具体的に記載してきたが、以下の実施例は、本発明を例示するためにのみ役立ち、それを制限することを企図していない。
実施例
【実施例1】
【0149】
オリゴヌクレオチド合成用ヌクレオシドホスホロアミダイト:デオキシ及び2’−アルコキシアミダイト
2’−デオキシ及び2’−メトキシ−β−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイトは市販品より入手可能である(例えば、ケムジーンズ(Chemgenes)、マサチューセッツ州ニーダム、又はグレン・リサーチ社、バージニア州スターリング)。他の2’−O−アルコキシ置換ヌクレオシドアミダイトは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,506,351号に記載のように製造する。2’−アルコキシアミダイトを使用して合成するオリゴヌクレオチドについては、未修飾オリゴデオキシヌクレオチドの標準サイクルを利用するが、テトラゾール及び塩基のパルス送達後の待ち工程は360秒に高める。
【0150】
5−メチル−2’−デオキシシチジン(5−Me−C)ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドは、市販のホスホロアミダイト(グレン・リサーチ社、バージニア州スターリング、又はケムジーンズ、マサチューセッツ州ニーダム)を使用する公知の方法により合成する[Sanghvi, et. al., Nucleic Acids Research, 1993, 21, 3197-3203]。
【0151】
2’−フルオロアミダイト
2’−フルオロデオキシアデノシンアミダイト
2’−フルオロ−オリゴヌクレオチドは、先述[Kawasaki et al., J. Med. Chem., 1993, 36, 831-841]のように、そして参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,670,633号のように合成する。簡略に言うと、市販の9−β−D−アラビノフラノシルアデニンを出発材料として利用し、文献の手順の改変によって2’−β−トリチル基のS2置換により2’−α−フルオロ原子を導入して、保護化ヌクレオシドN6−ベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロアデノシンを合成する。このようにして、N6−ベンゾイル−9−β−D−アラビノフラノシルアデニンを、中等度の収率で3’,5’−ジテトラヒドロピラニル(THP)中間体として選択的に保護化する。THP及びN6−ベンゾイル基の脱保護は、標準的な方法を使用して達成し、標準法を使用して5’−ジメトキシトリチル(DMT)−及び5’−DMT−3’−ホスホロアミダイト中間体を得る。
【0152】
2’−フルオロデオキシグアノシン
2’−デオキシ−2’−フルオログアノシンの合成は、テトライソプロピルジシロキサニル(TPDS)保護化9−β−D−アラビノフラノシルグアニンを出発材料として使用して達成し、中間体のジイソブチリルアラビノフラノシルグアノシンへ変換する。TPDS基の脱保護に続き、THPでヒドロキシル基を保護して、ジイソブチリルジ−THP保護化アラビノフラノシルグアニンを得る。選択的なO−脱アシル化及びトリフル化(triflation)に続き、粗生成物をフッ化物で処理してから、THP基を脱保護する。標準法を使用して、5’−DMT−及び5’−DMT−3’−ホスホロアミダイトを得る。
【0153】
2’−フルオロウリジン
2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの合成は、2,2’−無水−1−β−D−アラビノフラノシルウラシルを70%フッ化水素−ピリジンで処理する、文献の手順の改変により達成する。標準法を使用して、5’−DMT及び5’−DMT−3’ホスホロアミダイトを得る。
【0154】
2’−フルオロデオキシシチジン
2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンのアミノ化により2’−デオキシ−2’−フルオロシチジンを合成し、それに続く選択的な保護化により、N4−ベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロシチジンを得る。標準法を使用して、5’−DMT及び5’−DMT−3’ホスホロアミダイトを得る。
【0155】
2’−O−(2−メトキシエチル)修飾アミダイト
2’−O−メトキシエチル置換ヌクレオシドアミダイトは、下記のように、あるいは代わりにMartin, P., Helvetica Chimica.Acta, 1995, 78,486-504 の方法に従って製造する。
【0156】
2,2’−無水−[1−(β−D−アラビノフラノシル)−5−メチルウリジン]
5−メチルウリジン(リボシルチミン、ヤマサ、銚子、日本の市販品)(72.0g,0.279M)、炭酸ジフェニル(90.0g,0.420M)及び重炭酸ナトリウム(2.0g,0.024M)をDMF(300mL)へ加える。この混合物を撹拌しながら加熱して還流させ、発生する二酸化炭素ガスを制御されたやり方で放出させる。1時間後、やや黒ずんだ溶液を減圧下で濃縮する。結果として得たシロップを、撹拌しながらジエチルエーテル(2.5L)へ注ぐ。生成物はゴムを形成する。エーテルをデカントし、残渣を最少量のメタノール(約400mL)に溶かす。この溶液を新鮮なエーテル(2.5L)へ注ぐと、堅いゴムを生じる。エーテルをデカントし、このゴムを真空オーブン(60℃,1mmHg,24時間)中で乾燥させて固形物を得て、これを粉砕し淡褐色の粉末にする。この材料をそのまま以後の反応に使用して(又は、酢酸エチル中のメタノール(10〜25%)勾配液を使用するカラムクロマトグラフィーによってさらに精製してよい)、白い固形物を得る。
【0157】
2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン
2,2’−無水−5−メチルウリジン(195g,0.81M)、トリス(2−メトキシエチル)ホウ酸エステル(231g,0.98M)及び2−メトキシエタノール(1.2L)を2Lのステンレススチール圧力容器へ加え、160℃に予熱した油浴中に置く。155〜160℃で48時間加熱した後で、この容器を開き、この溶液を蒸発乾固させ、MeOH(200mL)で摩砕する。残渣を温アセトン(1L)に懸濁する。不溶性の塩を濾過し、アセトン(150mL)で洗浄し、濾液を蒸発させる。残渣(280g)をCHCN(600mL)に溶かし、蒸発させる。0.5% EtNHを含有するCHCl/アセトン/MeOH(20:5:3)にシリカゲルカラム(3kg)を充填する。先の残渣をCHCl(250mL)に溶かし、カラムへのロードに先立ってシリカ(150g)に吸着させる。充填溶媒で生成物を溶出させて、表題生成物を得る。低純度分画を再処理することによって、追加の材料を入手することができる。
【0158】
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン
2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン(160g,0.506M)をピリジン(250mL)と共蒸発させ、乾燥残渣をピリジン(1.3L)に溶かす。塩化ジメトキシトリチルの第一アリコート(94.3g,0.278M)を加え、この混合物を室温で1時間撹拌する。塩化ジメトキシトリチルの第二アリコート(94.3g,0.278M)を加え、この反応物をさらに1時間撹拌する。次いで、メタノール(170mL)を加えて反応を止める。溶媒を蒸発させて、CHCN(200mL)で摩砕する。残渣をCHCl(1.5L)に溶かし、2x500mLの飽和NaHCOと2x500mLの飽和NaClで抽出する。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過して、蒸発させる。0.5% EtNHを含有するEtOAc/ヘキサン/アセトン(5:5:1)で充填して溶出させる3.5kgのシリカゲルカラムでこの残渣を精製する。純粋な分画を蒸発させて、表題生成物を得る。
【0159】
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン(106g,0.167M)、DMF/ピリジン(562mLのDMFと188mLのピリジンより調製する、3:1混合物を750mL)及び無水酢酸(24.38mL,0.258M)を合わせて室温で24時間撹拌する。最初にTLC試料をMeOHの添加で不活性化(quench)することによって、TLCにより反応をモニターする。TLCにより判定される、反応の完了時にMeOH(50mL)を加え、この混合物を35℃で蒸発させる。残渣をCHCl(800mL)に溶かし、2x200mLの飽和重炭酸ナトリウムと2x200mLの飽和NaClで抽出する。水層を200mLのCHClで戻し抽出する。合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、残渣とする。この残渣を3.5kgのシリカゲルカラムで精製し、EtOAc/ヘキサン(4:1)を使用して溶出させる。純粋な生成物の分画を蒸発させて、表題化合物を得る。
【0160】
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチル−4−トリアゾールウリジン
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン(96g,0.144M)をCHCN(700mL)に溶かすことによって第一の溶液を調製し、取って置く。トリアゾール(90g,1.3M)のCHCN(1L)溶液へトリエチルアミン(189mL,1.44M)を加え、−5℃へ冷やし、オーバーヘッド撹拌子を使用して0.5時間撹拌する。0〜10℃に維持した撹拌溶液へPOClを30分の時間にわたり滴下して、生じる混合物をさらに2時間撹拌する。後者の溶液へ第一の溶液を45分の時間にわたり滴下する。生じる反応混合物を冷室に一晩保存する。反応混合物より塩を濾過し、溶液を蒸発させる。残渣をEtOAc(1L)に溶かし、不溶性の固形物を濾過により除去する。濾過物を1x300mLのNaHCOと2x300mLの飽和NaClで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させる。残渣をEtOAcで摩砕し、表題化合物を得る。
【0161】
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチル−4−トリアゾールウリジン(103g,0.141M)のジオキサン(500mL)及びNHOH(30mL)中溶液を室温で2時間撹拌する。このジオキサン溶液を蒸発させ、残渣をMeOH(2x200mL)と共沸混合させる。残渣をMeOH(300mL)に溶かし、2リットルのステンレススチール加圧容器へ移す。NHガスで飽和したMeOH(400mL)を加え、容器を100℃で2時間加熱する(TLCは完全な変換を示した)。容器の中身を蒸発乾固させ、残渣をEtOAc(500mL)に溶かし、飽和NaCl(200mL)で1回洗浄する。有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させて、表題化合物を得る。
【0162】
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン(85g,0.134M)をDMF(800mL)に溶かし、無水安息香酸(37.2g,0.165M)を撹拌しながら加える。3時間撹拌した後で、TLCはこの反応がほぼ95%完了していることを示した。溶媒を蒸発させ、残渣をMeOH(200mL)と共沸混合させる。残渣をCHCl(700mL)に溶かし、飽和NaHCO(2x300mL)と飽和NaCl(2x300mL)で抽出し、MgSOで乾燥させ、蒸発させて残渣を得る。この残渣を、0.5% EtNHを含有するEtOAc/ヘキサン(1:1)を溶出溶媒として使用する1.5kgシリカカラムでクロマトグラフ処理する。純粋な生成物分画を蒸発させて、表題化合物を得る。
【0163】
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン−3’−アミダイト
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン(74g,0.10M)をCHCl(1L)に溶かす。テトラゾールジイソプロピルアミン(7.1g)と2−シアノエトキシ−テトラ(イソプロピル)亜リン酸塩(40.5mL,0.123M)を窒素雰囲気下、撹拌しながら加える。生じる混合物を室温で20時間撹拌する(TLCは反応が95%完了していることを示した)。反応混合物を飽和NaHCO(1x300mL)と飽和NaCl(3x300mL)で抽出する。水性の洗液をCHCl(300mL)で戻し抽出し、抽出物を合わせ、MgSOで乾燥させ、濃縮する。得られた残渣を、EtOAc/ヘキサン(3:1)を溶出溶媒として使用する1.5kgのシリカゲルカラムでクロマトグラフ処理する。純粋な分画を合わせて、表題化合物を得る。
【0164】
2’−O−(アミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイト及び2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイト
2’−(ジメチルアミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト
2’−(ジメチルアミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト[当該技術分野では2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトとしても知られる]は、以下のパラグラフに記載のように製造する。アデノシン、シチジン及びグアノシンヌクレオシドアミダイトはチミジン(5−メチルウリジン)と同様に製造するが、但し、環外アミンは、アデノシン及びシチジンの場合はベンゾイル部分で、グアノシンの場合はイソブチリルで保護する。
【0165】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−O−2’−無水−5−メチルウリジン
−2’−無水−5−メチルウリジン(Pro.Bio.Sint.,Varese,イタリア、100.0g,0.4’6ミリモル)、ジメチルアミノピリジン(0.66g,0.013当量、0.0054ミリモル)をアルゴン雰囲気下に機械的に撹拌しながら周囲温度で乾燥ピリジン(500ml)に溶かす。tert−ブチルジフェニルクロロシラン(125.8g,119.0mL,1.1当量、0.458ミリモル)を1ポーションで加える。この反応物を周囲温度で16時間撹拌する。TLC(Rf 0.22,酢酸エチル)は完全な反応を示した。この溶液を減圧で濃縮して、濃厚なオイルとする。これをジクロロメタン(1L)と飽和重炭酸ナトリウム(2x1L)及び塩水(1L)の間に分配する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧で濃縮して、濃厚なオイルとする。このオイルを酢酸エチル及びエチルエーテルの1:1混合物(600mL)に溶かし、この溶液を−10℃へ冷やす。生じる結晶性の生成物を濾過により採取し、エチルエーテル(3x200mL)で洗浄し、乾燥(40℃,1mmHg,24時間)させて白い固形物とする。
【0166】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルウリジン
2Lのステンレススチール製、固定式(unstirred)加圧反応器にテトラヒドロフラン中のボラン(1.0M,2.0当量、622mL)を加える。換気フードにおいて手動で撹拌しながら、エチレングリコール(350mL,過剰)を、初めは慎重に、水素ガスの発生が静まるまで加える。5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−O−2’−無水−5−メチルウリジン(149g,0.3’1モル)と重炭酸ナトリウム(0.074g,0.003当量)を手動撹下で加える。この反応器を密封し、160℃の内部温度に達するまで油浴で加熱してから、16時間維持する(気圧<100psig)。この反応容器を周囲温度まで冷やしてから開放する。TLC(Rf 0.67:所望の生成物、Rf 0.82:ara−Tの副生成物、酢酸エチル)は、生成物への約70%の変換を示した。さらなる副生成物の形成を避けるために、この反応を止め、減圧(10〜1mmHg)で温水浴(40〜100℃)により、より極端な条件を使用して、エチレングリコールを除去して濃縮する[あるいは、低沸点溶媒を除去したら、残る溶液を酢酸エチルと水との間に分画してよい。生成物は有機相にある]。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル2kg,1:1〜4:1の酢酸エチル−ヘキサン勾配液)により残渣を精製する。適切な分画を集め、ストリッピングして、乾燥させて白色のカリカリとしたフォームとして、出発材料が混在した生成物と、純粋な再使用可能な出発材料を得る。
【0167】
2’−O−[(2−フタルイミドキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジン
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルウリジン(20g,36.98ミリモル)をトリフェニルホスフィン(11.63g,44.36ミリモル)及びN−ヒドロキシフタルイミド(7.24g,44.36ミリモル)と混合する。次いで、高真空下に40℃で2日間、Pで乾燥させる。この反応混合物にアルゴンを通し、乾燥THF(369.8mL,アルドリッチ、密封ボトル)を加えて澄明な溶液を得る。この反応混合物へアゾジカルボン酸ジエチル(6.98mL,44.36ミリモル)を滴下する。添加の速度は、生じる深赤の発色が消えたらすぐに次の一滴を加えるように維持する。この添加が完了した後で、この反応物を4時間撹拌する。そのときまでに、TLC(酢酸エチル:ヘキサン、60:40)は、反応の完了を示した。真空において溶媒を蒸発させる。得られる残渣をフラッシュカラムにかけ、酢酸エチル:ヘキサン(60:40)で溶出させて、2’−O−[(2−フタルイミドキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジンを白いフォームとして得る。
【0168】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルムアドキシイミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジン
2’−O−[(2−フタルイミドキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジン(3.1g,4.5ミリモル)を乾燥CHCl(4.5mL)に溶かし、メチルヒドラジン(300mL,4.64ミリモル)を−10℃〜0℃で滴下する。1時間後、この混合物を濾過し、濾過物を氷冷CHClで洗浄し、合わせた有機相を水、塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させる。この溶液を濃縮して、2’−O−(アミノオキシエチル)チミジンを得て、次いでこれをMeOH(67.5mL)に溶かす。これへホルムアルデヒド(20%水溶液(w/w)、1.1当量)を加え、生じる混合物を1時間撹拌する。溶媒を真空で除去し、残渣をクロマトグラフ処理して、5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルムアドキシイミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジンを白いフォームとして得る。
【0169】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジン
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルムアドキシイミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジン(1.77g,3.12ミリモル)を乾燥MeOH中1M p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)溶液(30.6mL)に溶かす。この溶液へ不活性雰囲気下に10℃で水素化シアノホウ素ナトリウム(0.39g,6.13ミリモル)を加える。この反応混合物を10℃で10分間撹拌する。その後、この反応容器を氷浴から外し、室温で2時間撹拌して、反応をTLC(CHCl中5% MeOH)によりモニターする。NaHCO水溶液(5%,10mL)を加え、酢酸エチル(2x20mL)で抽出する。酢酸エチル相を無水NaSOで乾燥させ、蒸発乾固させる。MeOH中の1M PPTSの溶液(30.6mL)に残渣を溶かす。ホルムアルデヒド(20%(w/w),30mL,3.37ミリモル)を加え、この反応混合物を室温で10分間撹拌する。反応混合物を氷浴で10℃へ冷やし、シアノホウ水素化ナトリウム(0.39g,6.13ミリモル)を加え、反応混合物を10℃で10分間撹拌する。10分後、反応混合物を氷浴から取り出し、室温で2時間撹拌する。この反応混合物へ5% NaHCO溶液(25mL)を加え、酢酸エチル(2x25mL)で抽出する。酢酸エチル層を無水NaSOで乾燥させ、蒸発乾固させる。得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、CHCl中5% MeOHで溶出させて、5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジンを白いフォームとして得る。
【0170】
2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン
トリエチルアミントリヒドロフルオリド(3.91mL,24.0ミリモル)を乾燥THF及びトリエチルアミン(1.67mL,12ミリモル、乾燥品、KOH上に保存)に溶かす。次いで、このトリエチルアミン−2HFの混合物を5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジン(1.40g,2.4ミリモル)へ加え、室温で24時間撹拌する。反応はTLC(CHCl中5% MeOH)によりモニターする。溶媒を真空で除去し、残渣をフラッシュカラムにかけ、CHCl中10% MeOHで溶出させて、2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジンを得る。
【0171】
5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン
2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(750mg,2.17ミリモル)を、高真空下に40℃で一晩、Pで乾燥させる。次いで、これを無水ピリジン(20mL)と共蒸発させる。得られる残渣をアルゴン雰囲気下にピリジン(11mL)に溶かす。この混合物へ4−ジメチルアミノピリジン(26.5mg,2.60ミリモル)、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(880mg,2.60ミリモル)を加え、この反応混合物を出発物質がすべて消失するまで室温で撹拌する。ピリジンを真空で除去し、残渣をクロマトグラフ処理し、CHCl中10% MeOH(数滴のピリジンを含有する)で溶出させて、5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジンを得る。
【0172】
5’−O−DMT−2’−O−(2−N,N−ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト]
5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(1.08g,1.67ミリモル)をトルエン(20mL)と共蒸発させる。この残渣へN,N−ジイソプロピルアミンテトラゾニド(0.29g,1.67ミリモル)を加え、高真空下に40℃で一晩、P20で乾燥させる。次いで、この反応混合物を無水アセトニトリル(8.4mL)に溶かし、2−シアノエチル−N,N,N,N−テトライソプロピルホスホロアミダイト(2.12mL,6.08ミリモル)を加える。この反応混合物を不活性雰囲気下に周囲温度で4時間撹拌する。反応の進行はTLC(へキサン:酢酸エチル、1:1)によりモニターする。溶媒を蒸発させてから、残渣を酢酸エチル(70mL)に溶かし、5% NaHCO水溶液(40mL)で洗浄する。酢酸エチル層を無水NaSOで乾燥させて、濃縮する。得られる残渣をクロマトグラフ処理し(溶出液:酢酸エチル)、5’−O−DMT−2’−O−(2−N,N−ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト]をフォームとして得る。
【0173】
2’−(アミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト
2’−(アミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト[当該技術分野では2’−O−(アミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトとしても知られる]は、以下のパラグラフに記載のように製造する。アデノシン、シチジン及びチミジンのヌクレオシドアミダイトも同様に製造する。
【0174】
N2−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト]
2’−O−アミノオキシエチルグアノシン類似体は、ジアミノプリンリボシドの選択的2’−O−アルキル化により得ることができる。数グラム量のジアミノプリンリボシドはScheringAG(ベルリン)より購入して、微量の3’−O−異性体を含む2’−O−(2−エチルアセチル)ジアミノプリンリボシドを提供することができる。2’−O−(2−エチルアセチル)ジアミノプリンリボシドは、アデノシンデアミナーゼでの処理により分解して2’−O−(2−エチルアセチル)グアノシンへ変換することができる(McGee, D. P. C., Cook, P. D., Guinosso, C. J., WO94/02501 A1 940203)。標準的な保護法により、2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシン及び2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンが提供され、還元して2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンを得ることができる。従来のように、ヒドロキシル基を光延(Mitsunobu)反応によりN−ヒドロキシフタルイミドに置き換えて、この保護化ヌクレオシドを通常のように亜リン酸塩化して、2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト]を得ることができる。
【0175】
2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’−DMAEOE)ヌクレオシドアミダイト
2’−ジメチルアミノエトキシエトキシヌクレオシドアミダイト(当該技術分野では、2’−O−ジメチルアミノエトキシエチル、即ち、2’−O−CH−O−CH−N(CH、又は2’−DMAEOEヌクレオシドアミダイトとしても知られる)は、以下のように製造する。他のヌクレオシドアミダイトも同様に製造する。
【0176】
2’−O−[2−(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン
2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシエタノール(アルドリッチ、6.66g,50ミリモル)を、100mLボンベにおいて撹拌しながら、ボランのテトラヒドロフラン溶液(1M,10mL,10ミリモル)へゆっくり加える。この固形物が溶けるときに水素ガスが発生する。O−2’−無水−5−メチルウリジン(1.2g,5ミリモル)と重炭酸ナトリウム(2.5mg)を加え、このボンベを密封し、油浴に入れ、155℃で26時間加熱する。ボンベを室温へ冷やし、開放する。粗製溶液を濃縮し、残渣を水(200mL)とヘキサン(200mL)の間に分配する。過剰のフェノールをヘキサン層へ抽出する。水層を酢酸エチル(3x200mL)で抽出し、合わせた有機層を水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濃縮する。メタノール/塩化メチレン(1:20)(2%トリエチルアミンを有する)を溶出液として使用するシリカゲルで残渣をカラム処理する。このカラム分画を濃縮すると無色の固形物を生じ、これを採取して表題化合物を白い固形物として得る。
【0177】
5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2−(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン
無水ピリジン(8mL)中の0.5g(1.3ミリモル)の2’−O−[2−(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジンへ、トリエチルアミン(0.36mL)と塩化ジメトキシトリチル(DMT−Cl,0.87g,2当量)を加え、1時間撹拌する。この反応混合物を水(200mL)へ注ぎ、CHCl(2x200mL)で抽出する。合わせたCHCl層を飽和NaHCO溶液に続いて飽和NaCl溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒の蒸発に続き、MeOH:CHCl:EtN(20:1,v/v,1%トリエチルアミン入り)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより、表題化合物を得る。
【0178】
5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2−(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン−3’−O−(シアノエチル−N,N−ジイソプロピル)ホスホロアミダイト
CHCl(20mL)に溶かした5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2−(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン(2.17g,3ミリモル)の溶液へアルゴン雰囲気下にジイソプロピルアミノテトラゾリド(0.6g)と2−シアノエトキシ−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト(1.1mL,2当量)を加える。この反応混合物を一晩撹拌し、溶媒を蒸発させる。生じる残渣を、酢酸エチルを溶出液とするシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得る。
【実施例2】
【0179】
オリゴヌクレオチド合成
未置換及び置換ホスホジエステル(P=O)オリゴヌクレオチドは、ヨウ素酸化による標準的なホスホロアミダイト化学を使用して、自動DNA合成機(アプライド・バイオシステムズ、モデル380B)で合成する。
【0180】
ホスホロチオエート(P=S)は、亜リン酸連結の段階的チオエート化(thiation)のために標準酸化ボトルを3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシドの0.2Mアセトニトリル溶液に置き換えることを除けば、ホスホジエステルオリゴヌクレオチドと同様に合成する。チオエート化の待ち工程を68秒まで延ばし、次いでキャッピング工程に移る。CPGカラムからの切断と、濃水酸化アンモニウムにおける55℃(18時間)での脱ブロックの後で、2.5倍量のエタノールで0.5M NaCl溶液より2回沈殿させることによって、オリゴヌクレオチドを精製する。オリゴヌクレオチドのホスフィン酸塩は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,508,270号に記載のように製造する。
【0181】
アルキルホスホン酸オリゴヌクレオチドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,469,863号に記載のように製造する。
3’−デオキシ−3’−メチレンホスホン酸オリゴヌクレオチドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,610,289号又は米国特許第5,625,050号に記載のように製造する。
【0182】
ホスホロアミダイトオリゴヌクレオチドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,256,775号又は第5,366,878号に記載のように製造する。
アルキルホスホノチオエートオリゴヌクレオチドは、参照により本明細書に組み込まれるWO94/17093及びWO94/02499に記載のように製造する。
【0183】
3’−デオキシ−3’−アミノホスホロアミダイトオリゴヌクレオチドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,476,925号に記載のように製造する。
ホスホトリエステルオリゴヌクレオチドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,023,243号に記載のように製造する。
【0184】
ボラノリン酸オリゴヌクレオチドは、いずれも参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,130,302号及び第5,177,198号に記載のように製造する。
【実施例3】
【0185】
オリゴヌクレオシド合成
メチレンメチルイミノ連結オリゴヌクレオシド(MMI連結オリゴヌクレオシドとしても認められる)、メチレンジメチルヒドラゾ連結オリゴヌクレオシド(MDH連結オリゴヌクレオシドとしても認められる)、及びメチレンカルボニルアミノ連結オリゴヌクレオシド(アミド−3連結オリゴヌクレオシドとしても認められる)、及びメチレンアミノカルボニル連結オリゴヌクレオシド(アミド−4連結オリゴヌクレオシドとしても認められる)、並びに、混合骨格化合物(例えば交替的なMMIとP=O又はP=S連結を有する)は、いずれも参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,378,825号;第5,386,023号;第5,489,677号;5,602,240号;及び第5,610,289号に記載のように製造する。
【0186】
ホルムアセタール及びチオホルムアセタール連結オリゴヌクレオシドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,264,562号及び5,264,564号に記載のように製造する。
【0187】
酸化エチレン連結オリゴヌクレオシドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,223,618号に記載のように製造する。
【実施例4】
【0188】
PNA合成
ペプチド核酸(PNA)は、「ペプチド核酸(PNA):合成、特性、及び潜在応用(Peptide Nucleic Acids (PNA) : Synthesis, Properties and Potential Applications)」Bioorganic & Medicinal Chemistry, 1996, 4, 523 に参照される様々な手順のいずれかに従って製造する。これらはまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,539,082号;5,700,922号;及び第5,719,262号に従って製造してもよい。
【実施例5】
【0189】
キメラオリゴヌクレオチドの合成
本発明のキメラオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド又は混合オリゴヌクレオチド/オリゴヌクレオシドは、いくつかの異なるタイプであり得る。これには、連結ヌクレオシドの「ギャップ」切片(segment)が連結ヌクレオシドの5’及び3’「ウィング」切片の間に位置する第一のタイプと、「ギャップ」切片がオリゴマー化合物の3’又は5’末端のいずれかに位置する第二の「オープンエンド」タイプが含まれる。第一のタイプのオリゴヌクレオチドは、当該技術分野において「ギャップマー」又はギャップのあるオリゴヌクレオチドとしても知られる。第二のタイプのオリゴヌクレオチドは、当該技術分野において「ヘミマー(hemimers)」又は「ウィングマー(wingmers)」としても知られる。
【0190】
[2’−O−Me]−[2’−デオキシ]−[2’−O−Me]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
2’−O−アルキルホスホロチオエートを有するキメラオリゴヌクレオチド及び2’−デオキシホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの切片は、上記のようにアプライド・バイオシステムズの自動DNA合成機、Model 380Bを用いて合成する。この自動合成機を使用して、DNA部分は2’−デオキシ−5’−ジメトキシトリチル−3’−O−ホスホロアミダイト、5’及び3’ウィングは5’−ジメトキシトリチル−2’−O−メチル−3’−O−ホスホロアミダイトのオリゴヌクレオチドを合成する。テトラゾール及び塩基の送達後の待ち工程を600秒に高めることによって標準合成サイクルを改変して、RNAについては4回、2’−O−メチルについては2回繰り返す。完全保護化オリゴヌクレオチドを支持体より切断し、3:1アンモニア水/エタノール中において室温で一晩リン酸基を脱保護化してから、凍結乾固させる。次いで、メタノール性アンモニアにおける室温で24時間の処理を行ってすべての塩基を脱保護し、試料を再び凍結乾固させる。ペレットをTHF中1M TBAFにて室温で24時間再懸濁して、2’位を脱保護する。次いでこの反応を1M TEAAで止めてから、試料を真空回転(rotovac)により1/2容量まで減少させた後で、G25サイズ排除カラムで脱塩する。次いで、回収したオリゴについて、分光測定により収量を、毛管電気泳動と質量分析法によって純度を分析する。
【0191】
[2’−O−(2−メトキシエチル)]−[2’−デオキシ]−[2’−O−(メトキシエチル)]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
[2’−O−(2−メトキシエチル)]−[2’−デオキシ]−[2’−O−(メトキシエチル)]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、2’−O−メチルキメラオリゴヌクレオチドについての上記手順と同じように製造し、ホロチオエートオリゴヌクレオチドの置換は2’−O−メチルアミダイトについての2’−O−(メトキシエチル)アミダイトについての上記手順と同じように製造する。
【0192】
[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]−[2’−デオキシホスホロチオエート]−[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]キメラオリゴヌクレオチド
[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]−[2’−デオキシホスホロチオエート]−[2’−O−(メトキシエチル)ホスホジエステル]キメラオリゴヌクレオチドは、2’−O−(メトキシエチル)アミダイトを2’−O−メチルアミダイトに置き換えて、2’−O−メチルキメラオリゴヌクレオチドについての上記手順と同じように製造する。ヨウ素での酸化によりキメラ構造のウィング部分内にホスホジエステルのヌクレオチド間連結を産生し、3,H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシド(Beaucage試薬)を利用する硫化により中央ギャップにホスホロチオエートのヌクレオチド間連結を産生する。
【0193】
他のキメラオリゴヌクレオチド、キメラオリゴヌクレオシド、及び混合キメラオリゴヌクレオチド/オリゴヌクレオシドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,623,065号に従って合成する。
【実施例6】
【0194】
オリゴヌクレオチドの単離
制御孔ガラスカラム(アプライド・バイオシステムズ)からの切断と濃水酸化アンモニウムにおける55℃で18時間の脱ブロッキングの後で、2.5倍量のエタノールで0.5M NaClから2回の沈殿によりオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオシドを精製する。合成したオリゴヌクレオチドを変性ゲル上のポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析し、少なくとも85%は完全な長さの材料であることを判定する。合成において得られるホスホロチオエート及びホスホジエステルの連結の相対量を31P核磁気共鳴分光法によって定期的にチェックし、試験によっては、Chiang et al.,J.Biol.Chem. 1991, 266, 18162-18171 に記載のように、オリゴヌクレオチドをHPLCにより精製する。
【実施例7】
【0195】
オリゴヌクレオチド合成−96穴プレートフォーマット
オリゴヌクレオチドは、標準96穴フォーマットにおいて96の配列を同時に組み立てることが可能な自動合成機で固相P(III)ホスホロアミダイト化学を介して合成する。ホスホジエステルのヌクレオチド間連結は、水性ヨウ素を用いた酸化によって提供される。ホスホロチオエートのヌクレオチド間連結は、無水アセトニトリル中の3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシド(Beaucage試薬)を利用する硫化により産生する。塩基が保護されたβ−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイトの標準品は市販ベンダー(例えば、PE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティ、又はファルマシア、ニュージャージー州ピスカタウェイ)より購入することができる。非標準ヌクレオシドは、既知の文献又は特許の方法により合成する。それらは塩基保護化β−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイトとして利用する。
【0196】
オリゴヌクレオチドを支持体より切断し、上昇温度(55〜60℃)で12〜16時間、濃NHOHで脱保護化してから、遊離した生成物を真空で乾燥させる。次いで、乾燥した生成物を滅菌水に再懸濁して、これよりすべての分析及び試験プレート試料を、次いでロボットピペッターを利用して希釈する、マスタープレートを得る。
【実施例8】
【0197】
オリゴヌクレオチド解析−96穴プレートフォーマット
各ウェル中のオリゴヌクレオチドの濃度を、試料の希釈とUV吸収分光法により評価する。各生成物の全長の完成度を96穴フォーマット(ベックマン P/ACETM MDQ)で、又は個別に製造した試料については、市販のCE装置(例、ベックマン P/ACETM 5000,ABI 270)のいずれかにおいて、毛管電気泳動法(CE)により評価する。塩基と骨格の組成は、エレクトロスプレー質量分析法を利用する化合物の質量分析によって確認する。すべてのアッセイ試験プレートは、単数/複数チャンネルロボットピペッターを使用してマスタープレートより希釈する。プレート上の化合物の少なくとも85%が少なくとも85%完全な長さであれば、そのプレートは許容されると判定する。
【実施例9】
【0198】
細胞培養とオリゴヌクレオチド処理
標的核酸の発現に対するアンチセンス化合物の効果は、標的核酸が測定可能レベルで存在していれば、多種多様な細胞型のいずれでも試験することができる。これは、例えばPCR又はノーザンブロット解析を使用して定型的に判定することができる。以下の6種の細胞型を説明の目的に提供するが、選択した細胞型において標的が発現されていれば、他の細胞型も定形的に使用してよい。これは、当該技術分野における定型的な方法、例えば、ノーザンブロット解析、リボヌクレアーゼ保護化アッセイ、又はRT−PCRにより容易に決定することができる。
【0199】
T−24細胞:
ヒトの移行細胞である膀胱癌細胞系、T−24は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(マナッサス、バージニア州)より入手する。T−24細胞は、10%ウシ胎仔血清(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)、ペニシリン100単位/mL、及びストレプトマイシン100マイクログラム/mL(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)を補充した完全マッコイ5A基底培地(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)において定型的に培養する。細胞は、90%の集密度に達したとき、トリプシン処理と希釈をし、定型的に継代培養する。RT−PCR解析における使用には、7000細胞/ウェルの密度で細胞を96穴プレート(Falcon−Primaria #3872)へ播く。
【0200】
ノーザンブロッティングや他の解析には、100mmや他の標準組織培養プレート上に細胞を播いて、適量の培地とオリゴヌクレオチドを使用して、同様に処理してよい。
A549細胞:
ヒト肺癌細胞系、A549は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(バージニア州マナッサス)より入手することができる。A549細胞は、10%ウシ胎仔血清(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)、ペニシリン100単位/mL、及びストレプトマイシン100μg/mL(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)を補充したDMEM基底培地(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)において定型的に培養する。細胞は、90%の集密度に達したとき、トリプシン処理と希釈をし、定型的に継代培養する。
【0201】
NHDF細胞:
ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NHDF)は、クローンティクス・コーポレーション(メリーランド州ウォーカーズビル)より入手することができる。NHDFは、サプライヤーにより推奨されるように補充した線維芽細胞増殖培地(クローンティクス・コーポレーション、メリーランド州ウォーカーズビル)において定型的に維持する。サプライヤーにより推奨されるように、10回までの継代培養で細胞を維持する。
【0202】
HEK細胞:
ヒト胚ケラチノサイト(HEK)は、クローンティクス・コーポレーション(メリーランド州ウォーカーズビル)より入手することができる。HEKは、サプライヤーの推奨のように製剤化したケラチノサイト増殖培地(クローンティクス・コーポレーション、メリーランド州ウォーカーズビル)において定型的に維持する。サプライヤーの推奨のように、10回までの継代培養で細胞を維持する。
【0203】
MCF−7細胞:
ヒト乳癌細胞系、MCF−7は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(バージニア州マナッサス)より入手する。MCF−7細胞は、10%ウシ胎仔血清(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)を補充したDMEM低グルコース培地(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)において定型的に培養する。細胞は、90%の集密度に達したとき、トリプシン処理と希釈をし、定型的に継代培養する。RT−PCR解析における使用には、7000細胞/ウェルの密度で細胞を96穴プレート(ファルコン−プリマリア #3872)へ播く。
【0204】
ノーザンブロッティングや他の解析には、100mmや他の標準組織培養プレート上に細胞を播いて、適量の培地とオリゴヌクレオチドを使用して、同様に処理してよい。
LA4細胞:
マウス肺上皮細胞系、LA4は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(バージニア州マナッサス)より入手する。LA4細胞は、15%ウシ胎仔血清(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)を補充したF12K培地(ギブコ/ライフテクノロジーズ、メリーランド州ゲーサーズバーグ)において定型的に培養する。細胞は、90%の集密度に達したとき、トリプシン処理と希釈をし、定型的に継代培養する。RT−PCR解析における使用には、3000〜6000細胞/ウェルの密度で細胞を96穴プレート(ファルコン−プリマリア #3872)へ播く。
【0205】
ノーザンブロッティングや他の解析には、100mmや他の標準組織培養プレート上に細胞を播いて、適量の培地とオリゴヌクレオチドを使用して、同様に処理してよい。
アンチセンス化合物での処理:
細胞が80%の集密度に達したとき、それをオリゴヌクレオチドで処理する。96穴プレートで増殖した細胞については、200μLのOpti−MEMTM−1減血清培地(ギブコBRL)でウェルを1回洗浄してから、LIPOFECTINTM(ギブコBRL)3.75μg/mL含有Opti−MEMTM−1の130μLと所望濃度のオリゴヌクレオチドで処理する。4〜7時間の処理の後、この培地を新鮮な培地に取り替える。オリゴヌクレオチド処理の16〜24時間後に細胞を採取する。
【0206】
使用するオリゴヌクレオチドの濃度は、細胞系ごとに変動する。特定の細胞系に最適なオリゴヌクレオチドの濃度を決定するために、ある範囲の濃度のポジティブコントロールオリゴヌクレオチドで細胞を処理する。
【実施例10】
【0207】
VCC−1発現のオリゴヌクレオチド阻害の解析
VCC−1発現のアンチセンス変調は、当該技術分野で知られている様々なやり方でアッセイすることができる。例えば、ノーザンブロット解析、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、又はリアルタイムPCR(RT−PCR)によって、VCC−1のmRNAレベルを定量することができる。現時点で好ましいのは、リアルタイム定量的PCRである。RNA解析は、全細胞RNA又はポリ(A)+mRNAに基づいて実施することができる。RNA単離の方法は、例えば、Ausubel, F. M. et al.「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第1巻 4.1.1-4.2.9 及び 4.5.1-4.5.3 頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(1993)に教示されている。ノーザンブロット解析は当該技術分野において定型的であり、例えば、Ausubel, F. M. et al.「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第1巻 4.2.1-4.2.9 頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(1996)に教示されている。リアルタイム定量的(PCR)は、市販のABI PRISMTM 7700配列検出システム(PE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティより入手可能、製造業者の指示書に従って使用する)を使用して、簡便に達成することができる。定量的PCR解析に先立って、測定する標的遺伝子に特異的なプライマー−プローブのセットについて、GAPDH増幅反応で「多重反応する(multiplexed)」能力を評価する。多重反応においては、標的遺伝子と内部標準遺伝子GAPDHの両方を単一試料中で同時に増幅する。この解析では、未処理細胞より単離したmRNAを系列希釈する。GAPDHのみ、標的遺伝子のみ(「単一反応(single−plexing)」)、又は両方(多重反応)に特異的なプライマー−プローブセットの存在下に各希釈物を増幅する。PCR増幅に続いて、GAPDH及び標的mRNAのシグナルを希釈の関数とする標準曲線を単一反応の試料と多重反応の試料の両方より作成する。多重反応試料より生じるGAPDH及び標的のシグナルの傾き及び相関係数の両方が、単一反応試料より生じるその対応値の10%以内に入れば、その標的に特異的なプライマー−プローブのセットを多重反応可能であるとみなす。他のPCRの方法も当該技術分野で知られている。
【0208】
VCC−1のタンパク質のレベルは、免疫沈降法、ウェスタンブロット解析(イムノブロッティング)、ELISA又は蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)のような当該技術分野でよく知られている様々なやり方で定量することができる。VCC−1へ向けられた抗体は、MSRSの抗体カタログ(Aerie・コーポレーション、ミシガン州バーミンガム)のような様々な供給元から確認して入手しても、慣用の抗体産生法により調製してもよい。ポリクローナル抗血清の調製法は、例えば、Ausubel, F. M. et al.「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第2巻 11.12.1-11.12.9 頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(1997)に教示されている。モノクローナル抗体の調製は、例えば、Ausubel, F. M. et al.「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第2巻 11.4.1-11.11.5 頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(1997)に教示されている。
【0209】
免疫沈降法は当該技術分野の標準法であり、例えば、Ausubel, F. M. et al.「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第2巻 10.16.1-10.16.11 頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(1998)に見出すことができる。ウェスタンブロット(イムノブロット)解析は当該技術分野の標準法であり、例えば、Ausubel, F. M. et al.「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第2巻 10.8.1-10.8.21 頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(1997)に見出すことができる。酵素結合性免疫吸着剤検定(ELISA)は当該技術分野の標準法であり、例えば、Ausubel, F. M. et al.「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第2巻 11.2.1-11.2.22 頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(1991)に見出すことができる。
【実施例11】
【0210】
ポリ(A)+mRNAの単離
ポリ(A)+mRNAは、Miura et al., Clin. Chem., 1996, 42, 1758-1764 に従って単離する。ポリ(A)+mRNA単離の他の方法は、例えば、Ausubel, F. M. et al.「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第1巻 4.5.1-4.5.3 頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(1993)に教示されている。簡略に言うと、96穴プレートで増殖した細胞について、増殖培地を細胞より除去し、各ウェルを200μLの冷PBSで洗浄する。60μLのリーシス(lysis)緩衝液(10mM トリス−HCl(pH7.6),1mM EDTA,0.5M NaCl,0.5% NP−40,20mM バナジル−リボヌクレオシド複合体)を各ウェルへ加え、プレートを穏やかに揺り動かしてから、室温で5分間インキュベートする。オリゴd(T)でコートした96穴プレート(AGCT社、カリフォルニア州アーヴィン)へ55μLの溶解液を移す。プレートを室温で60分間インキュベートし、200μLの洗浄緩衝液(10mM トリス−HCl(pH7.6),1mM EDTA,0.3M NaCl)で3回洗浄する。最終洗浄の後で、プレートをペーパータオルに吸い取らせて過剰な洗浄緩衝液を除去してから、5分間空気乾燥させる。70℃へ予熱した60pLの溶出緩衝液(5mM トリス−HCl,pH7.6)を各ウェルへ加え、プレートを90℃のホットプレート上で5分間インキュベートしてから、この溶出液を新鮮な96穴プレートへ移す。
【0211】
100mmや他の標準プレート上で増殖した細胞は、すべての溶液の適量を使用して、同様に処理してよい。
【実施例12】
【0212】
全RNAの単離
キアジェン(Qiagen)社(カリフォルニア州バレンシア)より購入するRNEASY 96TMのキット及び緩衝液を使用し、製造業者の推奨手順に従って全mRNAを単離する。簡略に言うと、96穴プレートで増殖した細胞について、増殖培地を細胞より除去し、各ウェルを200μLの冷PBSで洗浄する。100μLのBuffer RLTを各ウェルへ加え、プレートを20秒間激しく揺り動かす。次いで、100μLの70%エタノールを各ウェルへ加え、吸ったり出したりのピペッティング操作を3回することによって中身を混合する。次いで、排液回収トレイが付いて真空源とつながっているQIAVACTMマニホルドを取り付けたRNEASY 96TM穴プレートへ試料を移す。真空を15秒かける。RNEASY 96TMプレートの各ウェルへ1mLのBuffer RW1を加え、再び真空を15秒かける。次いで、RNEASY 96TMプレートの各ウェルへ1mLのBuffer RPEを加え、真空を15秒の時間の間かける。次いでBuffer RPEの洗浄を繰り返し、真空をさらに10分間かける。次いでQIAVACTMマニホルドよりプレートを取り出し、ペーパータオルで吸い取って乾燥させる。次いで、1.2mL回収管を含有する回収管ラックが付いたQIAVACTMマニホルドへプレートを再び付ける。水60μLを各ウェルへピペッティングし、1分インキュベートし、次いで真空を30秒かけることによってRNAを溶出させる。さらに水60μLを用いて溶出工程を繰り返す。
【0213】
この反復的なピペッティング及び溶出の工程は、QIAGEN Bio−Robot 9604(キアジェン社、カリフォルニア州バレンシア)を使用して自動化することができる。本質的には、細胞を培養プレート上で溶解した後で、プレートをロボットデッキへ移し、ここでピペッティング、DNアーゼ処理、及び溶出の工程を行う。
【実施例13】
【0214】
VCC−1 mRNAレベルのリアルタイム定量的PCR解析
ABI PRISMTM 7700配列検出システム(PE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用するリアルタイム定量的PCRによって、製造業者の指示書に従ってVCC−1 mRNAレベルの定量を決定する。これは封管の、非ゲルベースの蛍光検出システムであり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物のリアルタイムでのハイスループット定量を可能にする。PCRが完了した後で増幅産物を定量する標準PCRとは反対に、リアルタイム定量的PCRの産物は、蓄積すると同時に定量される。このことは、前進及び逆進PCRプライマーの間で特異的にアニールし、2種の蛍光色素を含有するオリゴヌクレオチドプローブをPCR反応に含めることによって達成される。プローブの5’端へレポーター色素(例、JOE又はFAMTM、又はVIC;オペロン・テクノロジー社、カリフォルニア州アラメダ又はPE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティのいずれかより入手する)を付け、プローブの3’端へはクエンチャー(quencher)色素(例、TAMRA;オペロン・テクノロジー社、カリフォルニア州アラメダ又はPE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティのいずれかより入手する)を付ける。プローブと色素がインタクトであるとき、3’クエンチャー色素が近傍にあるためにレポーター色素の放出が抑制される。増幅の間、プローブの標的配列へのアニーリングにより、Taqポリメラーゼの5’−エクソヌクレアーゼ活性により切断され得る基質が創出される。PCR増幅サイクルの伸張期の間、Taqポリメラーゼによるプローブの切断により、プローブの残り部分から(同時にクエンチャー部分からも)レポーター色素が放出され、配列特異的な蛍光シグナルが産生される。各サイクルで、それぞれのプローブから追加のレポーター色素分子を切断し、ABI PRISMTM 7700配列検出システムに組込まれたレーザー光により一定間隔で蛍光強度をモニターする。それぞれのアッセイにおいて、未処理対照試料からのmRNAの系列希釈を含有する一連の並行反応より標準曲線を作成し、これを使用して、試験試料のアンチセンスオリゴヌクレオチド処理後の阻害率を定量する。
【0215】
PCR試薬は、PE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティより入手した。RT−PCR反応は、25μLのポリ(A)mRNA溶液を含有する96穴プレートへ25μLのPCRカクテル(1xTAQMANTM緩衝液A,5.5MM MgCl,各300μMのdATP,dCTP及びdGTP,600μMのdUTP,各100nMの前進プライマー、逆進プライマー及びプローブ、20単位のRNアーゼ阻害剤、1.25単位のAMPLITAQ GOLDTM、及び12.5単位のMuLV逆転写酵素)を加えることにより行った。RT反応は、48℃で30分間のインキュベーションにより行った。95℃で10分間のインキュベーションでAMPLITAQ GOLDTMを活性化した後で、40サイクルの2工程PCRプロトコールを以下のように実行した:95℃、15秒間(変性化)に続く60℃、1.5分間(アニーリング/伸張)。
【0216】
ヒトVCC−1に対するプローブ及びプライマーは、公知の配列情報(GenBank登録番号 XM_058945,図1として本明細書に組み込まれる)を使用して、ヒトVCC−1配列へハイブリダイズするように設計した。ヒトVCC−1では、PCRプライマーは以下の通りであった:
前進プライマー:CGACAGTTGCGATGAAAGTTCT(配列番号:1100)
逆進プライマー:AGAGACCATGGACATCAGCATTAG(配列番号:1101)。そして、PCRプローブは、FAMTM−TCTCTTCCCTCCTCCTGTTGCTGCC(配列番号:1102)−TAMRAであり、ここで、FAMTM(PE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティ)は蛍光レポーター色素であり、TAMRA(PE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティ)はクエンチャー色素である。ヒトのシクロフィリンでは、PCRプライマーは以下の通りであった:
前進プライマー:CCCACCGTGTTCTTCGACAT(配列番号:1103) 逆進プライマー:TTTCTGCTGTCTTTGGGACCTT(配列番号:1104)。そして、PCRプローブは、5’JOE−CGCGTCTCCTTTGAGCTGTTTGCA(配列番号:1105)−TAMRA3’であり、ここで、JOE(PE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティ)は蛍光レポーター色素であり、TAMRA(PE−アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティ)はクエンチャー色素である。
【実施例14】
【0217】
2’−MOEウィング及びデオキシギャップを有するキメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドによるヒトVCC−1発現のアンチセンス阻害
本発明により、公知の配列(XM_058945,図1として本明細書に組み込まれる)を使用して、ヒトVCC−1 RNAの様々な領域へ標的指向するように一連のオリゴヌクレオチドを設計する。このオリゴヌクレオチドを表1〜35に示す。「位置」は、このオリゴヌクレオチドが結合する特別な標的配列の最初の(5’末端)ヌクレオチドの番号を示す。各オリゴについて示す変数は、David H. Mathews, Michael Zuker, and Douglas H. Turner による「RNA構造3.7(RNAstructure 3.7)」を使用して予測した。この変数は、自由エネルギー(反応が起きる時に放出されるエネルギー。この数字がより負であるほど、反応がより起こりやすい。自由エネルギーの単位は、いずれもkcal/モルである)又は融解温度(ポリ核酸の2つのアニール鎖が分離するときの温度。この温度が高いほど、2つの鎖間のアフィニティーが大きい)のいずれかとして記載する。高いアフィニティーで結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計するときは、標的RNA鎖及びアンチセンスオリゴマーの構造を考察することが望ましい。具体的に言うと、緊密に結合する(表では、「二本鎖形成」と記載する)オリゴマーでは、それは、自己構造(表では、その自由エネルギーを「標的構造」と記載する)をほとんど有さない標的RNAのストレッチに相補的であるべきである。また、このオリゴマーは、分子内(表では、その自由エネルギーを「分子内オリゴ」と記載する)又は二分子の(表では、その自由エネルギーを「分子間オリゴ」と記載する)いずれの自己構造もほとんど有してはならない。どの自己構造を壊しても、結合ペナルティになる。表1〜35の化合物はいずれもいずれも長さ20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、10個の2’−デオキシヌクレオチドからなる中央の「ギャップ」領域と、その両側(5’及び3’方向)に隣接する4個のヌクレオチド「ウィング」より構成される。ウィングは2’−メトキシエチル(2’−MOE)ヌクレオチドからなる。ヌクレオシド間(骨格)連結は、オリゴヌクレオチド全体でホスホロチオエート(P=S)である。2’−MOEウィング中のシチジン残基は、5−メチルシチジンである。シチジン残基は、いずれも5−メチルシチジンである。
【0218】
【表1】

【0219】
【表2】

【0220】
【表3】

【0221】
【表4】

【0222】
【表5】

【0223】
【表6】

【0224】
【表7】

【0225】
【表8】

【0226】
【表9】

【0227】
【表10】

【0228】
【表11】

【0229】
【表12】

【0230】
【表13】

【0231】
【表14】

【0232】
【表15】

【0233】
【表16】

【0234】
【表17】

【0235】
【表18】

【0236】
【表19】

【0237】
【表20】

【0238】
【表21】

【0239】
【表22】

【0240】
【表23】

【0241】
【表24】

【0242】
【表25】

【0243】
【表26】

【0244】
【表27】

【0245】
【表28】

【0246】
【表29】

【0247】
【表30】

【0248】
【表31】

【0249】
【表32】

【0250】
【表33】

【0251】
【表34】

【0252】
【表35】

【実施例15】
【0253】
VCC−1タンパク質レベルのウェスタンブロット解析
ウェスタンブロット解析(イムノブロット解析)は標準法を使用して行う。オリゴヌクレオチド処理の16〜20時間後に細胞を採取し、PBSで1回洗浄し、Laemmli緩衝液(100uL/ウェル)に懸濁させ、5分間煮沸して、16% SDS−PAGEゲルにロードする。150Vで1.5時間ゲルを泳動し、ウェスタンブロッティング用の膜へ移す。VCC−1に対する適切な一次抗体、並びにこの一次抗体種に対する放射標識又は蛍光標識の二次抗体を使用する。PHOSPHORIMAGERTM(モレキュラーダイナミクス、カリフォルニア州サニーヴェール)を使用してバンドを視覚化する。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】図1は、cDNA配列とそれよりコードされるVCC−1タンパク質の配列を示す。
【配列表】
































































































































































































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
VCC−1をコードする核酸分子へ標的指向する8〜30ヌクレオ塩基の長さのアンチセンス化合物であって、VCC−1と特異的にハイブリダイズしてVCC−1の発現を阻害する、前記アンチセンス化合物。
【請求項2】
アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1のアンチセンス化合物。
【請求項3】
配列番号1〜配列番号1099の少なくとも8つのコンティグ塩基からなる群より選択される核酸配列を含んでなる、請求項2のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号1〜配列番号1099からなる群より選択される核酸配列を含んでなる、請求項2のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間連結を含む、請求項2、3、又は4のアンチセンス化合物。
【請求項6】
修飾ヌクレオシド間連結がホスホロチオエート連結である、請求項5のアンチセンス化合物。
【請求項7】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾糖部分を含む、請求項2、3、又は4のアンチセンス化合物。
【請求項8】
修飾糖部分が2’−O−メトキシエチル糖部分である、請求項7のアンチセンス化合物。
【請求項9】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾ヌクレオ塩基を含む、請求項2、3、又は4のアンチセンス化合物。
【請求項10】
修飾ヌクレオ塩基が5−メチルシトシンである、請求項9のアンチセンス化合物。
【請求項11】
アンチセンスオリゴヌクレオチドがキメラオリゴヌクレオチドである、請求項2、3、又は4のアンチセンス化合物。
【請求項12】
請求項1のアンチセンス化合物と製剤的に許容される担体又は希釈剤とを含んでなる組成物。
【請求項13】
コロイド分散系をさらに含んでなる、請求項12の組成物。
【請求項14】
アンチセンス化合物がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項13の組成物。
【請求項15】
VCC−1の発現を細胞又は組織において阻害する方法であって、VCC−1の発現が阻害されるように、請求項1のアンチセンス化合物と前記細胞又は組織を接触させることを含んでなる、前記方法。
【請求項16】
VCC−1に関連した疾患又は状態を有するヒトを治療する方法であって、VCC−1の発現が阻害されるように、請求項1のアンチセンス化合物の治療又は予防有効量を前記動物へ投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項17】
疾患又は状態が糖尿病である、請求項16の方法。
【請求項18】
疾患又は状態が免疫障害である、請求項16の方法。
【請求項19】
疾患又は状態が心臓血管障害である、請求項16の方法。
【請求項20】
疾患又は状態が神経障害である、請求項16の方法。
【請求項21】
疾患又は状態が虚血/再灌流損傷である、請求項16の方法。
【請求項22】
疾患又は状態があらゆる形態の癌である、請求項16の方法。
【請求項23】
疾患又は状態が血管新生障害である、請求項16の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−507809(P2006−507809A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−529561(P2004−529561)
【出願日】平成15年8月19日(2003.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/025891
【国際公開番号】WO2004/016224
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(502427323)ファルマシア・コーポレーション (67)
【Fターム(参考)】