説明

VLA−4アンタゴニスト

式Iの化合物は、VLA−4のアンタゴニストであり、これらは、細胞接着及び細胞接着介在病態の阻害又は防御において有用である。これらの化合物は、医薬組成物に処方することができ、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む炎症性腸疾患、多発性硬化症、喘息及び関節リウマチの治療における使用に適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の置換N−[N−(シアノフェニル)スルホニル−プロリル]−フェニルアラニン誘導体は、VLA−4インテグリンのアンタゴニストであり、VLA−4結合及び細胞接着及び活性化が介在する疾病の、治療、予防及び抑制において有用である。さらに、本発明の化合物は、経口投与後に、VLA−4を担う細胞の顕著な受容体占有を示し、1日1回、2回又は3回の経口投与に適している。本発明はまた、このような化合物を含有する組成物及びこのような化合物を使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VLA−4(「最晩期抗原−4」;CD49d/CD29;又はαβ)は、樹状細胞及び大食細胞様細胞など、血小板及び成熟好中球を除く全ての白血球上で発現されるインテグリンであり、これらの細胞種の、細胞−細胞相互作用及び細胞−マトリックス相互作用の重要な介在物質である。VLA−4のリガンドには、血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、フィブロネクチン(FN)のCS−1ドメイン及びマトリックスタンパク質、オステオポンチンなどがある。喘息、多発性硬化症、炎症性腸疾患及び関節リウマチを含む疾患の、いくつかの動物モデルにおいて、抗α抗体の中和又はVLA−4とそのリガンドとの間の相互作用を阻害するペプチドの遮断が、予防及び治療の両方で有効であることが示されている。αに対するヒト化モノクローナル抗体、ナタリズマブ(Antegren(R)、Elan/Biogen)は、多発性硬化症(D.H.Millerら、New England Journal of Medicine,348,15(2003))及びクローン病(S.Ghoshら、New England Journao of Medicine,348,23(2003))の治療において有効であることが示されている。喘息、関節炎、多発性硬化症及びクローン病の治療に対する早期臨床試験においても、いくつかのVLA−4アンタゴニストがある。
【0003】
ナタリズマブを用いた早期臨床試験において、リンパ球増加症(VLA−4機能の遮断に対する代理マーカー)及び>80%受容体占有が観察された。小分子VLA−4アンタゴニストが、皮下投与後、多発性硬化症の動物モデルであるラットの実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)アッセイにおいて機能的活性を示すことが報告された(D.R.Leoneら、J.Pharmacol.Exper.Therap.,305,1150(2003))。この化合物は、リンパ球増加症を誘導し、解離速度(オフ速度(off−rate))が低く、その結果、VLA−4を担う細胞において顕著で持続的な占有を生じさせることが示された。受容体占有、リンパ球増加症と、本明細書中で述べられるEAEモデルでの有効性との間には正の相関があった。Jurkat細胞においてVLA−4からの解離(off−rate)が遅いことが示される一連のイソニコチノイル−L−アミノフェニルアラニン誘導体が、G.Dohertyら、Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters,13,1891(2003)で報告された。しかし、この化合物は、薬物動態特性が非常に悪いという特徴をさらに有しており、例えば、経口でのバイオアベイラビリティーが低く、血漿クリアランスが中程度から高度であり、半減期が短く、そのため、経口投与に不適切である。本発明の化合物は、経口投与が可能であるよう十分な時間にわたり、受容体占有を達成し維持できる、VLA−4の強力なアンタゴニストである。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、式Iの化合物:
【0005】
【化3】

又は医薬適合性のそれらの塩(式中、
Aは、N又はN−Oであり;
X及びYは、ハロゲン、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから独立に選択され;
は、(1)水素、(2)C1−10アルキル、(3)−(C1−10アルキル)−アリール、(4)−(C1−10アルキル)−O−C1−10アルキル、(5)−(C1−10アルキル)−OC(O)−C1−10アルキル、(6)−(C1−10アルキル)−OC(O)−アリール、(7)−(C1−10アルキル)−OC(O)O−C1−10アルキル及び(8)−(C1−10アルキル)N(C1−3アルキル)(ここで、アルキルは、Rから独立に選択される1個から3個の置換基で場合によっては置換され、アリールは、Rから独立に選択される1個から3個の置換基で場合によっては置換される。)から選択され;
は、水素又はメチルであり;
及びRは、(1)水素、(2)−NR、(3)−NRS(O)、(4)−NRC(O)R、(5)−NRC(O)OR及び(6)−NRC(O)NRから独立に選択され、ただし、R及びRは、両方ともが水素であることはなく;
は、(1)−OR、(2)−NRS(O)、(3)−NO、(4)ハロゲン、(5)−S(O)、(6)−SR、(7)−S(O)OR、(8)−S(O)NR、(9)−NR、(10)−O(CRNR、(11)−C(O)R、(12)−CO、(13)−CO(CRCONR、(14)−OC(O)R、(15)−CN、(16)−C(O)NR、(17)−NRC(O)R、(18)−OC(O)NR、(19)−NRC(O)OR、(20)−NRC(O)NR、(21)−CR(N−OR)、(22)CF、(23)−OCF、(24)C3−8シクロアルキル及び(25)ヘテロシクリル(ここで、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから独立に選択される、1個から3個の基で場合によっては置換される。)から選択され;
は、(1)Rから選択される基、(2)C1−10アルキル、(3)C2−10アルケニル、(4)C2−10アルキニル、(5)アリール及び(6)−(C1−10アルキル)−アリール(ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールは、Rから独立に選択される基から選択される1個から3個の置換基で場合によっては置換される。)から選択され;
は、(1)ハロゲン、(2)アミノ、(3)カルボキシ、(4)C1−4アルキル、(5)C1−4アルコキシ、(6)アリール、(7)−(C1−4アルキル)−アリール、(8)ヒドロキシ、(9)CF、(10)OC(O)C1−4アルキル、(11)OC(O)NR又は(12)アリールオキシであり;
及びRは、水素、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、Cy及び−(C1−10アルキル)−Cy(ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル及びCyは、Rから独立に選択される1から4個の置換基で場合によっては置換される。)から独立に選択されるか;又は、
及びRは、それらが結合する原子と一緒に、O、S及びN−Rから独立に選択される0個から2個のさらなるヘテロ原子を含有する、4から7員の複素環を形成し、該複素環は、C3−8炭素環と場合によっては縮合されるか、又は、C1−10アルキルから独立に選択される1個から4個の基で場合によっては置換され;
及びRは、水素、C1−10アルキル、Cy及び−(C1−10アルキル)−Cyから独立に選択されるか;又は、
及びRは、それらが結合する炭素と一緒に、酸素、イオウ及び窒素から独立に選択される0個から2個のヘテロ原子を含有する、5から7員の環を形成し;
は、R及び−C(O)Rから選択され;
Cyは、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールから選択され;
mは、1又は2である。)を提供する。
【0006】
式Iのある実施形態において、X及びYの1つはハロゲンであり、他方は、ハロゲン、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから選択される。この実施形態のあるサブセットにおいて、X及びYの1つはクロロであり、他方は、クロロ又はメトキシである。別のサブセットにおいて、X及びYは、それぞれクロロである。
【0007】
式Iの別の実施形態において、Rは、水素、C1−4アルキル、−(C1−4アルキル)OC(O)−C1−4アルキル又は−(C1−4アルキル)OC(O)−C1−4アルキルである。あるサブセットにおいて、Rは、水素であり、別のサブセットにおいて、Rは、C1−4アルキルである。
【0008】
式Iの別の実施形態において、Rは、水素であり、Rは、NRである。この実施形態のあるサブセットにおいて、Rは、水素である。この実施形態の第二のサブセットにおいて、Rは、水素であり、Rは、C1−10アルキル及びシクロアルキルから選択される。第三のサブセットにおいて、R及びRは、それらが結合する原子と一緒に、さらなるヘテロ原子を含有せず、C1−4アルキルから独立に選択される1個又は2個の基で場合によっては置換される、4から7員の複素環を形成する。Rの例には、1−アゼチジニル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、2−メチル−1−ピペリジニル、3−メチル−1−ピペリジニル、4−メチル−1−ピペリジニル、3,5−ジメチル−1−ピペリジニル、3,3−ジメチル−1−ピペリジニル、4,4−ジメチル−1−ピペリジニル、オクタヒドロキノリン−1−イル、2−アザビシクロ[2.2.2]オクト−2−イル、tert−ブチルアミノ及びシクロブチルアミノが含まれる。
【0009】
式Iの別の実施形態において、Rは、NRであり、Rは、水素である。この実施形態のあるサブセットにおいて、Rは、水素である。この実施形態のあるサブセット、この実施形態の第二のサブセットにおいて、Rは、水素であり、Rは、C1−10アルキル及びシクロアルキルから選択される。Rの例には、tert−ブチルアミノ及びシクロブチルアミノが含まれる。
【0010】
式Iのある実施形態は、式Ia:
【0011】
【化4】

の化合物又は医薬適合性のそれらの塩(式中、
Aは、N又はN−Oであり;
は、水素、C1−10アルキル、−(C1−4アルキル)−アリール、−(C1−4アルキル)−O−C1−4アルキル及び−(C1−4アルキル)−OC(O)−C1−4アルキルから選択され;
及びRの1つは、NRであり、他方は、水素である。)を提供する。
【0012】
式Iaのある実施形態は、Rが水素であり、Rが、t−ブチル又はシクロブチルであるか、又は、R及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒に、さらなるヘテロ原子を含有せず、C1−4アルキルから独立に選択される1個又は2個の基で場合によっては置換される複素環を形成する、化合物である。
【0013】
式Iaの別の実施形態は、Rが水素であり、Rが、C1−4アルキルから独立に選択される1個又は2個の基で場合によっては置換されるピペリジン−1−イルであり、Rが、水素又はC1−4アルキルである、化合物である。
【0014】
式Iの代表的な化合物には、これらに限定されないが、
N−{N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−4(R)−シクロブチルアミノ−(L)−プロリル}−4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−(L)−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
N−{N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−3(S)−tert−ブチルアミノ−(L)−プロリル}−4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−(L)−フェニルアラニン及びその、エチル、ピバロイルオキシメチル及び1−(エトキシカルボニルオキシ)エチルエステル;
N−{N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−4(R)−アゼチジニル−(L)−プロリル}−4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)アミノ]−(L)−フェニルアラニン、エチルエステル
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(ピペリジン−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(2−メチルピペリジン−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(3−メチルピペリジン−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(4−メチルピペリジン−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(3,5−ジメチルピペリジン−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(3,3−ジメチルピペリジン−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(4,4−ジメチルピペリジン−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(オクタヒドロキノリン−1(2H)−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロ−イソニコチノイル)アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(オクタヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロ−イソニコチノイル)アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのエチルエステル;
(4R)−4−(2−アザビシクロ[2.2.2]オクト−2−イル)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロ−イソニコチノイル)アミノ]−L−フェニルアラニン及びそのメチルエステル;及び医薬適合性のそれらの塩が含まれる。
【0015】
別の局面において本発明は、哺乳動物に式Iの化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における、細胞接着が介在する、疾病、疾患、状態又は症候の、予防又は治療のための方法を提供する。この局面には、哺乳動物における、細胞接着が介在する、疾病、疾患、状態又は症候の治療に対する医薬品の製造における式Iの化合物の使用が含まれる。ある実施形態において、前記疾病及び疾患は、喘息、アレルギー性鼻炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、臓器移植、急性白血病及び鎌形赤血球性貧血から選択される。別の実施形態において、本方法は、ウマにおける細胞性肺気腫の、予防又は治療を提供する。さらに別の実施形態において、本方法は、イヌにおける関節炎の、予防又は治療を提供する。別の局面において、本発明は式Iの化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるVLA−4の作用を阻止するための方法を提供する。この局面には、哺乳動物における、VLA−4の作用を阻止するための医薬品の製造における式Iの化合物の使用が含まれる。
【0016】
本発明の別の局面は、式Iの化合物と、医薬適合性の担体と、を含有する、医薬組成物を提供する。
【0017】
「アルキル」ならびにアルコキシ、アルカノイルなどの接頭語「アルク」を有する他の基は、直鎖もしくは分枝鎖又はそれらの組み合わせであり得る炭素鎖を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどが含まれる。
【0018】
「アルケニル」とは、直鎖もしくは分枝鎖又はそれらの組み合わせであり得る、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する炭素鎖を意味する。アルケニルの例には、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニルなどが含まれる。
【0019】
「アルキニル」とは、直鎖もしくは分枝鎖又はそれらの組み合わせであり得る、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する炭素鎖を意味する。アルキニルの例には、エチニル、プロパルギル、3−メチル−1−ペンチニル、2−ヘプチニルなどが含まれる。
【0020】
「シクロアルキル」とは、それぞれが3個から10個の炭素原子を有する、単環式又は二環式の飽和炭素環を意味する。この用語には、結合点が非芳香族部分にある、アリール基に縮合した単環式環も含まれる。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、テトラヒドロナフチル、デカヒドロナフチル、インダニルなどが含まれる。
【0021】
「アリール」とは、炭素原子のみを含有する、単環式又は二環式の芳香環を意味する。この用語には、結合点が芳香族部分にある、単環式シクロアルキル基又は単環式ヘテロシクリル基に縮合したアリール基も含まれる。アリールの例には、フェニル、ナフチル、インダニル、インデニル、テトラヒドロナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾピラニル、1,4−ベンゾジオキサニルなどが含まれる。
【0022】
「ヘテロアリール」とは、各環が5個から6個の原子を有する、N、O及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、単環式又は二環式の芳香環を意味する。ヘテロアリールの例には、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、フロ(2,3−b)ピリジル、キノリル、インドリル、イソキノリルなどが含まれる。
【0023】
「ヘテロシクリル」とは、N、S及びOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有しており、各環が3個から10個の原子を有し、結合点が炭素又は窒素であり得る、単環式又は二環式の飽和環を意味する。この用語には、結合点が非芳香族部分にある、アリール基又はヘテロアリール基に縮合した単環式複素環も含まれる。「ヘテロシクリル」の例には、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、2,3−ジヒドロフロ(2,3−b)ピリジル、ベンゾオキサジニル、テトラヒドロヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロインドリルなどが含まれる。この用語には、窒素を介して結合する、2−もしくは4−ピリドン又はN−置換−(1H,3H)−ピリミジン−2,4−ジオン(N−置換ウラシル)などの非芳香族の部分不飽和単環式環も含まれる。
【0024】
「ハロゲン」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれる。
【0025】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
式Iの化合物は、1又は複数の不斉中心を含有し、したがって、これらの化合物は、ラセミ体及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして生じ得る。本発明は、式Iの化合物のこのような異性体総てを包含するものとする。
【0026】
本明細書に記載の化合物の中には、オレフィン二重結合を含有するものがあり、別段の指定がない限り、これらの化合物は、E及びZの両方の幾何異性体を含むものとする。
【0027】
本明細書に記載の化合物の中には、互変異性体と呼ばれる、水素が異なった位置で結合した化合物として存在し得るものがある。このような例は、ケト−エノール互変異性体として知られる、ケトン及びそのエノール型であり得る。個々の互変異性体及びそれらの混合物は、式Iの化合物に包含される。
【0028】
式Iの化合物は、例えば、MeOHもしくはEtOAc又はそれらの混合液などの適切な溶媒からの分別結晶によって、鏡像異性体のジアステレオマー対に分離することができる。このようにして得られる鏡像異性体対は、例えば分割剤として光学活性アミンを使用することにより、又はキラルHPLCカラムにおいて、など、従来の手段によって、個々の立体異性体に分離することができる。
【0029】
あるいは、一般式I又はIaの化合物の鏡像異性体を、光学的に純粋な出発物質又は立体配置が既知である試薬を用いる立体特異的合成により得ることができる。
【0030】

「医薬適合性の塩」という用語は、無機もしくは有機塩基及び無機もしくは有機酸を含む、医薬適合性の非毒性の塩基又は酸から調製される塩を指す。無機塩基由来の塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが含まれる。特に好ましいものは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩である。医薬適合性の有機非毒性塩基由来の塩には、1級、2級及び3級アミン、置換アミン(天然の置換アミンを含む。)、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂などが含まれ、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどがある。
【0031】
本発明の化合物が塩基性の場合、無機酸もしくは有機酸などの医薬適合性の非毒性酸から塩を調製し得る。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。特に好ましいものは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。
【0032】
本明細書中で使用する場合、式Iに対する言及には、医薬適合性の塩も含まれることを理解されたい。
【0033】
有用性
式Iの化合物が、VLA−4インテグリンの作用に対する拮抗能を有することから、これらの化合物は、VLA−4がそれぞれの各種リガンドに結合することで誘発される、症候、疾患又は疾病を予防又は退行させる上で有用である。このように、これらのアンタゴニストは、細胞の活性化、移動、増殖及び分化を含む細胞接着プロセスを阻害する。従って、本発明の別の局面は、式Iの化合物の有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、VLA−4結合ならびに細胞接着及び活性化が介在する疾病又は疾患又は症候の治療(予防、緩和、改善もしくは抑制を含む。)のための方法を提供する。このような疾病、疾患、状態又は症候は、例えば、(1)多発性硬化症、(2)喘息、(3)アレルギー性鼻炎、(4)アレルギー性結膜炎、(5)慢性閉塞性肺疾患を含む炎症性肺疾患、(6)関節リウマチ、(7)敗血症性関節炎、(8)I型糖尿病、(9)臓器移植拒絶、(10)再狭窄、(11)自家骨髄移植、(12)ウィルス感染の炎症性続発症、(13)心筋炎、(14)潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む炎症性腸疾患、(15)ある種の中毒性腎炎及び免疫に基づく腎炎、(16)接触皮膚過敏症、(17)乾癬、(18)腫瘍転移、(19)アテローム性動脈硬化症、(20)鎌形赤血球性貧血、(21)ある種の急性白血病、(22)各種メラノーマ、癌腫及び肉腫(多発性骨髄腫を含む。);(23)急性呼吸窮迫症候群;(24)ブドウ膜炎;(25)循環性ショック及び(26)肝炎である。これらの疾患は、ヒトにおいて、ならびに動物において起こり得、動物疾患は、異なる病名で知られている場合がある;例えば、細胞性肺気腫は、ウマにおける気道閉塞性疾患であり、COPD又は再発性気道閉塞性疾患としても多岐にわたり知られている。式Iの化合物は、ヒト、ならびにウマ、ネコ及びイヌなどの非ヒト動物でのVLA−4介在疾患の治療において有用である。
【0034】
これらの疾病又は疾患における本発明の化合物の用途は、文献で報告されている動物疾患モデルで示すことができる。以下は、そのような動物疾患モデルの例である。i)多発性硬化症に類似するニューロン性脱髄のモデルである実験アレルギー性脳脊髄炎(例えば、T.Yednockら、Nature,356,63(1993)及びE.Keszthelyiら、Neurology,47,1053(1996)参照);ii)喘息の様々な相のモデルとしての、ヒツジ及びモルモットにおける気管支反応亢進(例えば、W.M.Abrahamら、J.Clin.Invest.93,776(1993)及びA.A.Y.Milne及びP.P.Piper,Eur.J.Pharmacol.,282,243(1995)参照);iii)炎症性関節炎モデルとしてのラットにおけるアジュバント誘発関節炎(C.Barbadilloら、Arthr.Rheuma.(Suppl.),36,95(1993)及びD.Seiffge,J.Rheumatol.,23,12(1996)参照);iv)NODマウスにおける養子自己免疫糖尿病(J.L.Baronら、J.Clin.Invest.,93,1700(1994)、A.Jakubowskiら、J.Immunol.,155、938(1995)及びX.D.Yangら、Diabetes.46,1542(1997)を参照。);v)臓器移植のモデルとしてのマウスにおける心臓異型移植生存率(M.Isobeら、Transplant.Proc.,26,867(1994)及びS.Molossiら、J.Clin Invest.,95,2601(1995)参照。);vi)炎症性腸疾患の一形態であるヒト潰瘍性大腸炎に類似の、ワタボウシタマリンでの自発慢性大腸炎(D.K.Podolskyら、J.Clin.Invest.,92,372(1993)参照。);vii)皮膚アレルギー反応のモデルとしての接触過敏モデル(T.A.Ferguson及びT.S.Kupper,J.Immunol.,150.1172(1993)及びP.L.Chisholmら、Eur.J.Immunol.,23,682(1993)参照。);viii)急性腎毒性腎炎(M.S.Mulliganら、J.Clin.Invest.,91,577(1993)参照。);ix)腫瘍転移(例えば、M.Edward,Curr.Opin.Oncol.,7,185(1995)参照。);x)実験的自己免疫甲状腺炎(R.W.MucMurrayら、Autoimmunity.23,9(1996)参照);xi)ラットでの動脈閉塞後の虚血性組織損傷(F.Squadritoら、Eur.J.Pharmacol.,318,153(1996)参照);xii)アレルギー応答を弱めるVLA−4抗体による、IL−4及びIL−5を含むTH2 T細胞サイトカイン産生の阻害(J.Clinical Investigation 100,3083(1997);xiii)霊長類及びマウスにおいて、VLA−4インテグリンに対する抗体が、長期の再増殖細胞を動員し、サイトカイン誘導性動員を拡大させる(Blood,90 4779−4788(1997);xiv)鎌形網状赤血球はVCAM−1に接着する(Blood,85 268−274(1995)及びBlood 88 4348-4358(1996);xv)ケモカイン間質細胞由来因子1は、CS−1/フィブロネクチン及びVCAM−1への、VLA−4インテグリン介在の多発性骨髄腫細胞接着を調節する(Blood,97、346−351 2001)。
【0035】
用量の範囲
式Iの化合物の予防用量又は治療用量の大きさは、当然のことながら、治療対象の状態の性質及び重症度、ならびに、特定の式Iの化合物及びその投与経路に依存して変化する。この用量はさらに、個々の患者の年齢、体重及び反応によっても変化する。一般に、1日用量範囲は、単回投与又は分割投与で、哺乳動物の体重1kg当たり約0.001mgから約100mg、好ましくは0.01mgから約50mg/kg、最も好ましくは0.1から10mg/kgである。一方、上記の範囲外の用量を用いる必要がある場合もある。
【0036】
静脈投与用組成物を用いる場合、適切な用量範囲は、式Iの化合物 約0.01mgから約25mg(好ましくは0.1mgから約10mg)/kg体重/日である。
【0037】
経口投与のための組成物が用いられる場合、適切な用量範囲は、式Iの化合物 約0.01mgから約100mg/kg体重/日、好ましくは、約0.1mgから約10mg/kg体重である。
【0038】
舌下投与のための組成物を用いる使用の場合、適切な用量範囲は、式Iの化合物 0.01mgから約25mg(好ましくは0.1mgから約5mg)/kg体重/日である。
【0039】
喘息の治療の場合、式Iの化合物は、1日1回、2回、3回などで、経口/吸入/舌下/などにより、約0.1mg/kgから約100mg/kg、好ましくは約1mg/kgから10mg/kgの用量で使用し得る。この量を、単回1日用量で、又は1日に2回もしくは3回に分けて投与し得る。
【0040】
多発性硬化症の治療の場合、式Iの化合物は、1日1回、2回、3回などで、経口/吸入/舌下/などにより、約0.1mg/kgから約100mg/kg、好ましくは約1mg/kgから10mg/kgの用量で使用し得る。この量を、単回1日用量で、又は1日に2回もしくは3回に分けて投与し得る。
【0041】
炎症性腸疾患の治療の場合、式Iの化合物は、1日1回、2回、3回などで、経口/吸入/舌下/などにより、約0.1mg/kgから約100mg/kg、好ましくは、約1mg/kgから10mg/kgの用量で使用し得る。この量を、単回1日用量で、又は1日に2回もしくは3回に分けて投与し得る。
【0042】
関節リウマチの治療の場合、式Iの化合物は、1日1回、2回、3回などで、経口/吸入/舌下/などにより、約0.1mg/kgから約100mg/kg、好ましくは、約1mg/kgから10mg/kgの用量で使用し得る。この量を、単回1日用量で、又は1日に2回もしくは3回に分けて投与し得る。
【0043】
医薬組成物
本発明の別の局面は、式Iの化合物及び医薬適合性の担体を含有する医薬組成物を提供する。医薬組成物における場合「組成物」という用語は、有効成分及び担体を構成する不活性成分(医薬適合性の賦形剤)を含有する生成物、ならびにいずれか2種類以上の成分の組み合わせ、複合体化もしくは凝集、又は1もしくは複数の成分の解離、又は1もしくは複数の成分の他の種類の反応もしくは相互作用によって、直接もしくは間接的に生じる生成物を包含するものとする。したがって、本発明の医薬組成物は、式Iの化合物、さらなる有効成分及び医薬適合性の賦形剤を混合することで得られるあらゆる組成物を包含する。
【0044】
哺乳動物、特にヒトに対して、本発明の化合物の有効用量を与えるために、適切な投与経路を用い得る。例えば、経口、舌下、直腸、局所、非経口、眼球、肺、経鼻などの投与を用い得る。剤形には、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、液剤、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどが含まれる。
【0045】
本発明の医薬組成物は、有効成分としての式Iの化合物又は該化合物の医薬適合性の塩を含有し、医薬適合性の担体及び、場合によっては他の治療成分を含有することもできる。「医薬適合性の塩」という用語は、無機塩基又は無機酸及び有機塩基又は有機酸などの医薬適合性の非毒性塩基又は非毒性酸から調製される塩を指す。
【0046】
本組成物には、経口、舌下、直腸、局所投与、非経口投与(皮下投与、筋肉内投与及び静脈内投与など)、眼球投与(点眼)、肺投与(吸入)又は経鼻投与に適切な組成物が含まれるが、特定の場合に対して最適である経路は、治療対象の状態の性質及び重症度、ならびに有効成分の性質に依存する。これらの組成物は、都合よく、単位製剤で提供され、製薬業界で公知のあらゆる方法によって調製することができる。
【0047】
吸入による投与の場合、本発明の化合物は、都合よく、加圧パック又は噴霧器から出るエアロゾル噴霧剤の形で送達させる。本化合物は、処方可能な粉剤として送達することができ、この粉末組成物は、通気粉剤吸入装置を用いて吸入させ得る。吸入に好ましい投与システムは、フルオロカーボン又は炭化水素などの適切な推進剤中での式Iの化合物の懸濁液もしくは溶液として処方し得る用量計量吸入(MDI)エアロゾル、ならびに、さらなる賦形剤を添加した、又は添加しない、式Iの化合物の乾燥粉剤として処方することができる乾燥粉剤吸入(DPI)エアロゾルである。
【0048】
式Iの化合物の適切な局所処方には、経皮装置、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、散布剤などが含まれる。
【0049】
実際の使用においては、式Iの化合物を、従来の医薬品配合法に従って、医薬担体と十分に混和した有効成分として組み合わせることができる。担体は、例えば経口又は非経口(静脈内投与など)などの投与に望ましい剤型に応じて、各種形態のものとすることができる。経口剤形の組成物を調製する場合、例えば懸濁液、エリキシル剤及び液剤などの液体経口製剤の場合には、例えば水、グリコール、油、アルコール、香味料、保存剤、着色剤などの通常の医薬媒体のいずれかを、又は、例えば粉剤、カプセル及び錠剤などの経口固体製剤の場合には、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を用いることができ、液体製剤より固体製剤が好ましい。投与し易いことから、錠剤及びカプセルが最も有利な経口単位製剤であり、その場合は、固体医薬用担体を明らかに用いる。必要に応じて、錠剤を、標準的な水系もしくは非水系の方法でコーティングすることができる
上記のような一般的な製剤以外に、米国特許3,845,770号、同3,916,899号、同3,536,809号、同3,598,123号、同3,630,200号及び同4,008,719号に記載のような徐放手段及び/又は投与装置によって、式Iの化合物を投与することもできる。
【0050】
経口投与に適切な本発明の医薬組成物は、それぞれが有効成分所定量を含有する、カプセル、カシェ剤又は錠剤などの別個の単位として;粉剤もしくは顆粒として;又は水性液体中の、液剤もしくは懸濁液、非水系液体、水中油型乳濁液又は油中水型乳濁液として提供され得る。このような組成物は、製薬のあらゆる方法により調製することができるが、いずれの方法も、有効成分と、1又は複数の必要な成分を構成する担体と、を組み合わせる段階を含む。通常、本組成物は、有効成分と、液体担体もしくは細かく粉砕した固体担体又はその両方と、を均一かつ十分に混合し、その後必要に応じて、所望の形に成形することで調製する。例えば錠剤は、場合によっては1又は複数の補助成分とともに、圧縮又は成形によって調製することができる。圧縮錠は、適切な機械で、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤と場合によっては混合して、粉末又は顆粒などの自由流動形態の有効成分を圧縮することにより調製し得る。成形錠は、適切な機械で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を成形することにより調製し得る。望ましくは各錠剤は、有効成分 約1mgから約500mgを含有し、各カシェ剤又はカプセルは、有効成分 約1mgから約500mgを含有する。
【0051】
以下に、式Iの化合物に対する代表的な医薬剤形の例を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
併用療法
式Iの化合物は、式Iの化合物が有用である疾患又は状態の治療/予防/抑制又は改善で使用される他の薬剤と併用することができる。このような他の薬剤は、それらの薬剤に通常使用される経路及び量で、式Iの化合物と同時投与、又は連続投与することができる。式Iの化合物を1又は複数の他の薬剤と同時に使用する場合、式Iの化合物に加えてこのような他の薬剤を含有する医薬組成物が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物に加えて、1又は複数の他の有効成分を含有するものが含まれる。別個に投与するか、又は同じ医薬組成物中で投与する、式Iの化合物と併用することができる他の有効成分の例には、これらに限定されないが、(a)米国特許5,510,332号、WO97/03094、WO97/02289、WO96/40781、WO96/22966、WO96/20216、WO96/01644、WO96/06108、WO95/15973及びWO96/31206に記載のものなど、他のVLA−4アンタゴニストならびにナタリズマブ;(b)ベクロメタゾン、メチルプレドニソロン、ベタメタゾン、プレドニソン、デキサメタゾン及びヒドロコルチゾンなどのステロイド;(c)シクロスポリン、タクロリマス、ラパマイシン及び他のFK−506タイプの免疫抑制剤などの免疫抑制剤;(d)ブロモフェニラミン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェニルヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミン、ピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェクソフェナジン、デスカルボエトキシロラタジンなどの抗ヒスタミン(H1−ヒスタミンアンタゴニスト);(e)β2−アゴニスト薬(テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテロール、ビトルテロール、サルメテロール及びピルブテロール)、テオフィリン、クロモリンナトリウム、アトロピン、臭化イプラトロピウム、ロイコトリエンアンタゴニスト(ザフィルルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、イラルカスト、ポビルカスト、SKB−106,203)、ロイコトリエン生合成阻害剤(ジロートン、BAY−1005)などの非ステロイド系抗喘息薬;(f)プロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸及びチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナック、フェンクロズ酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナック、イソキセパック、オキシピナック(oxpinac)、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン及びゾメピラク)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸及びトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサール及びフルフェニサール)、オキシカム(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム及びテノキシカム)、サリチル酸(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)及びピラゾロン(アパゾン、ベズピペリロン(bezpiperylon)、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)などの非ステロイド系抗炎症剤(NSAID);(g)セレコキシブ、ロフェコキシブ及びパレコキシブなどのシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤;(h)ホスホジエステラーゼIV型(PDE−IV)の阻害剤;(i)ケモカイン受容体、特にCCR−1、CCR−2及びCCR−3のアンタゴニスト;(j)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン及び他のスタチン)、捕捉剤(コレスチラミン及びコレスチポール)、ニコチン酸、フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベンザフィブレート)及びプロブコールなどのコレステロール低下剤;(k)インスリン、スルホニル尿素、ビグアナイド類(メトホルミン)、α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース)及びグリタゾン(トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、BRL49653など)などの抗糖尿病薬;(l)インターフェロンβ(インターフェロンβ−1a、インターフェロンβ−1b)の製剤;(m)ムスカリンアンタゴニスト(イプラトロピウム及びチラトロピウム)などの抗コリン作動薬;(n)プレドニゾロン、グラチラマー、デオキシアデノシン、ミトキサントロン、メトトレキセート及びシクロホスファミドを含む、多発性硬化症に対する最新の治療;(o)p38キナーゼ阻害剤;(p)5−アミノサリチル酸及びそのプロドラッグ、アザチオプリン及び6−メルカプトプリンなどの代謝拮抗剤ならびに細胞毒性癌化学療法薬などの他の化合物などが含まれる。
【0054】
第2の有効成分に対する式Iの化合物の重量比は変動し得、各成分の有効用量に依存する。通常は、それぞれの有効用量を用いる。したがって、例えば、式Iの化合物をNSAIDと併用する場合、式Iの化合物の、NSAIDに対する重量比は、通常、約1000:1から約1:1000、好ましくは約200:1から約1:200の範囲である。式Iの化合物及び他の有効成分の併用も、一般に、上述の範囲内であるが、各場合について、各有効成分の有効用量を用いるべきである。
【0055】
下記のスキーム及び実施例で使用され得る略称には次のものが含まれる:
4−DMAP:4−ジメチルアミノピリジン;
AcCN:アセトニトリル;
BOC:tert−ブトキシカルボニル;
BOC−ON:2−(tert−ブトキシカルボニルオキシイミノ)−2−フェニルアセトニトリル;
BOP:ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート;
食塩水(brine):NaCl飽和溶液;
DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン;
DMF:ジメチルホルムアミド;
DMSO:ジメチルスルホキシド;
Et:エチル;
EtOAc:酢酸エチル;
EtOH:エタノール;
g又はgm:グラム;
h又はhr:時間;
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;
HBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;
HOAc:酢酸;
HOAt:1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール;
HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール;
HPLC:高速液体クロマトグラフィー;
in vacuo(真空):ロータリーエバポレーション;
Me:メチル;
MeOH:メタノール;
mg:ミリグラム;
MHz:メガヘルツ;
min:分;
mL:ミリリットル;
mmol:ミリモル;
MS又はms:質量スペクトラム;
MSCl:塩化メタンスルホニル;
Ph:フェニル;
PhP:トリフェニルホスフィン;
PyBOP:(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート;
rt:室温;
TEA:トリエチルアミン;
TFA:トリフルオロ酢酸;
THF:テトラヒドロフラン。
【0056】
添付のスキームで説明する手順により、本発明の化合物を調製し得る。スキーム1において、置換ピリジル−4−カルボン酸誘導体Aを塩化チオニルで処理して、カルボン酸クロリド誘導体とし、次に、これを4−アミノ−(L)−フェニルアラニン誘導体と反応させて、アミドBを得る。BにおけるN−BOC−保護基を強酸(TFA又はHCl)で除去して、遊離のアミンCを得る。
【0057】
【化5】

【0058】
スキーム2において、適切に置換された(L)−プロリンエステルD(R’=H)を、塩基存在下(DIPEA又はNaCO)で、3−シアノ−ベンゼンスルホニルクロリドLを用いてスルホニル化し、スルホンアミドEを得て、エステル保護基を含有している場合は、水酸化物でこれを処理し、遊離酸を得る。アミンC及び酸Eを、適切なカップリング剤(例えば、PyBOP、HBTU/HOAt、又は、Eは、対応する酸塩化物に最初に変換され得る。)存在下で一緒に反応させて、アミドFを得る。あるいは、LiOHなどの塩基で処理することにより、プロリンエステルD(R’=BOC)を対応する酸へと加水分解する。次に、上述のように、この酸をCとカップリングさせ、BOC基を除去した後、Mを得る。次に、塩基存在下で、Lを用いてアミンMをスルホニル化し、Fを得る。Fにおけるエステルを、水酸化物(Rがn−又はi−アルキルである場合)又はTFAもしくはHCl(RがTtert−ブチルである場合)を用いて加水分解し、対応する酸を得ることができる。
【0059】
【化6】

【0060】
生物学的評価
式Iの化合物は、VLA−4を担う細胞において顕著で持続的な受容体占有を示す、VLA−4の強力なアンタゴニストである。ジャルカット(Jurkat)細胞におけるVLA−4からの試験化合物の解離速度は、G.Dohertyら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,13,1891(2003)で述べられる方法により測定し得る。このアッセイにおいて、本発明の化合物は、3時間より大きい、解離の半減期を有し(t1/2>3時間)、このことから、それらがVLA−4の密接な阻害剤であることが分かる。
【0061】
ラット及びイヌにおける経口投与後のVLA−4受容体占有は、D.R.Leoneら、J.Pharmacol.Exper.Therap.,305,1150(2003)で述べられる方法により測定され得る。経口投与後、本発明の化合物は、持続的で顕著な受容体占有を示した(>50%)。
【0062】
本発明の化合物は、以下の実施例において詳述する手段により、調製することができる。提供する実施例は、本発明の説明であり、その範囲を何ら限定するものではない。
【0063】
(参考実施例1)
4-((3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)アミノ)−(L)−フェニルアラニン、エチルエステル、HCl
【0064】
【化7】

【0065】
段階A:窒素下、0℃の、無水エタノール 500mLに、塩化チオニル(21mL、0.29mol)を5分間にわたり添加し、この透明な溶液を0℃にて10分間撹拌し、次いで、rtで30分間撹拌した。4−ニトロ−L−フェニルアラニン(50.2g、0.24mol)を一度に添加し、この混合物を一晩還流させた。得られた混合物を真空濃縮し、白色の固体として4−ニトロ−L−フェニルアラニン、エチルエステル、HCl(60g)を得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ8.21(d,2H),7.54(d,2H),4.39(dd,1H),4.22(q,2H),3.24−3.40(m,2H),1.22(t,3H)。
【0066】
段階B:窒素下の、塩化メチレン(1.5L)中の段階Aの化合物の懸濁液(60g、0.22mol)に、TEA(31mL)を添加した。10分間rtで撹拌した後、ジ−t−ブチルジカルボネート(49g、0.22mol)及び4−DMAP(0.1g)を添加し、その反応混合物をrtで一晩撹拌し、1N HCl(2x200mL)、HO(2x200mL)及び食塩水(1x250mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、N−BOC−4−ニトロ−L−フェニルアラニン、エチルエステル(78g)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ8.14(d,2H),7.28(d,2H),4.30−4.65(m,1H),4.15(q,2H),3.00−3.30(m,2H),1.35(s,9H),1.20(t,3H)。
【0067】
段階C:無水エタノール(300mL)中の段階Bの化合物(78.3g、0.22mol)の溶液に、窒素をパージし、10% 炭素担持パラジウム(1.0g)を添加した。40から50psiで1時間水素添加した後、この反応混合物をCeliteを介して濾過し、そのケーキをEtOH、次いで、EtOAcで洗浄した。この濾過液を濃縮して、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより、4:1から1:1 EtOAc/ヘキサンで溶出して残渣を精製し、N−BOC−4−アミノ−L−フェニルアラニン、エチルエステル(60g)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ6.90(d,2H),6.63(d,2H),4.20−4.50(m,1H),4.14(q,2H),3.76−3.00(m,2H),1.36(s,9H),1.20(t,3H)。
【0068】
段階D:窒素をフラッシュした500mL丸底フラスコに、3,5−ジクロロイソニコチン酸(46.5g、0.24mol)、CHCl(150mL)、DMF(0.5mL)及び塩化チオニル(20mL、33.9g、0.28mol)を入れた。スラリーを5時間還流させた後、さらなる塩化チオニル(5mL、0.70mol)及びCHCl(100mL)を添加し、この反応混合物をさらに45分間還流させ、濃縮して、残渣をトルエンと共沸させ、未精製の塩化アシルを得て、これをすぐに使用した。未精製の塩化アシルをCHCl(150mL)に溶解し、0℃にて5分間にわたり、CHCl(400mL)中の、段階Cの化合物(60g、0.20mol)及び4−メチルモルホリン(44mL、0.40mol)に添加した。0℃にて1時間撹拌した後、希NaHCO水溶液で反応を停止させた。有機層を分離し、CHCl(500mL)で水層を抽出した。この有機層を合わせ、無水MgSO上で乾燥させ、真空濃縮し、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより、4:1から3:2 EtOAc/ヘキサンで溶出して、残渣を精製し、N−BOC−4−((3’,5’−ジクロロ−イソニコチノイル)アミノ)−L−フェニルアラニン、エチルエステル(95g)を得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ8.60(s,2H),7.54(d,2H),7.20(d,2H),4.20−4.36(m,1H),4.10(q,2H),3.02−3.12(m,1H),2.82−2.92(m,1H),1.34/1.30(s,9H),1.20(t,3H)。
【0069】
段階E:EtOAc(1.2L)中の段階Dの化合物(95g、0.197mol)の溶液を、塩化水素ガス流でrtにて2時間にわたり処理した。得られた黄色の懸濁液をヘキサン(250mL)で希釈し、0℃に冷却し、濾過した。そのケーキをヘキサンで洗浄し、真空乾燥させ、黄色の固体として表題化合物を得た(80g)。H NMR(400MHz,CDOD)δ8.64(s,2H),7.66(d,2H),7.30(d,2H),4.28(dd,1H),4.25(q,2H),3.20(q,2H),1.26(t,3H)。
【0070】
(参考実施例2)
N−BOC−cis−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル
【0071】
【化8】

【0072】
段階A.trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン(72.8g、0.56mol)、2.5M NaOH(480mL、1.20mol、2.18eq)、THF(100mL)及びジ−tert−ブチルジカルボネート(128g、0.58mol、1.07eq)の混合物を、室温にて一晩撹拌した。得られた白色の懸濁液を0℃に冷却し、濃HCl(105mL、1.26mol、2.29eq)で酸性化し、CHCl(1x1L、3x0.5L)及び酢酸エチル(2x1L)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、粘性のある油状物質として、N−BOC−trans−4−ヒドロキシ−L−プロリンを得た(146.3g)。未精製の生成物(144.5g、理論 0.56mol)、ヨウ化メチル(100mL、1.6mol、2.90eq)、炭酸カリウム(110g、0.8mol、1.42eq)及びアセトン(2.5L)を合わせ、この混合物を4時間還流させた。この反応物を室温まで冷まし、一晩撹拌した。この混合物を濾過し、そのケーキをアセトンで洗浄した。この濾過液を濃縮して、少量のCHClを含有するEtOAcにその残渣を溶解し、食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、白色のスラリーを得た。このスラリーにヘキサンをフラッシュし、0℃に冷却し、濾過した。そのケーキを乾燥させ、白色の固体として、N−BOC−trans−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル 121.7gを得た。
【0073】
段階B.段階Aの化合物(144.5g、0.59mol)、トリフェニルホスフィン(200g、0.76mol、1.29eq)、p−ニトロ安息香酸(150g、0.9mol、1.52eq)及びTHF(2.5L)を混合し、0℃に冷却した。ジエチルジアゾジカルボキシレート(120mL、0.76mol、1.29eq)を10分間にわたり添加した。この反応は30℃まで発熱し、これを室温まで冷却し、一晩撹拌した。この反応物を濃縮して、残渣をエーテル(1L)で希釈し、得られた懸濁液を濾過した。この濾過液を再び濃縮し、CHClに再溶解し、クロマトグラフィーにかけた(シリカ、直線的勾配 CHClから5%EtOAc/CHCl)。生成物留分を合わせ、濃縮した。濃縮物に、エーテル、次にヘキサンをフラッシュし、白色のスラリーを得て、これを濾過し、乾燥させ、表題化合物 218.7gを白色の固体として得た。
【0074】
(参考実施例3)
メチル(4S)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−ヒドロキシプロリネート
【0075】
【化9】

【0076】
メチル(4S)−4−ヒドロキシプロリネート(52.0g、0.286mol)を500mL CHClに溶解し、0℃に冷却した。トリエチルアミン(83.6mL、0.600mol)を添加し、続いて、ゆっくりと3−シアノベンゼンスルホニルクロリド(55.0、0.273mol)を添加した。この反応混合物を室温にて一晩撹拌した。水を添加し、水層をCHClで3回抽出した。合わせた有機層を1N HCl、HO、1N NaOH及び食塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濃縮して、粘性のある残渣を得た。酢酸エチル(300mL)を添加し、残渣を完全に溶解させた。その溶液がわずかに混濁するまで、ヘキサン およそ100mLをゆっくりと添加した。次に、この混合物を一晩撹拌し、生成物を沈殿させた。この固体を濾過し、30% EtOAc/ヘキサンで2回リンスし、灰白色の粉末として所望する生成物を得た(66.2g、78%)。H NMR(CDCl,500MHz)δ8.20−8.18(m,1H),8.15−8.12(m,1H),7.92−7.89(m,1H),7.72(t,1H),4.51−4.47(m,1H),4.42(br s,1H),3.74(s,3H),3.53−3.49(m,1H),3.46−3.43(m,1H),3.39(br s,1H),2.29−2.25(m,1H),2.21−2.02(m,1H)。MS(ESI)C1314Sに対する計算値 310.3、観察 m/e 311.2(MH)。
【0077】
(実施例1)
N−{N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−4(R)−シクロブチルアミノ−(L)−プロリル}−4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−(L)−フェニルアラニン
【0078】
【化10】

【0079】
段階A:−20℃の、塩化メチレン(800mL)中の、N−BOC−cis−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル(60g、0.25mol)及びDIPEA(100mL、0.57mol)の溶液に、トリフルオロエタンスルホン酸無水物を45分間にわたり添加した。−20℃でさらに45分間撹拌した後、シクロブチルアミン(55g、0.78mol)を一度に添加し、その反応物をrtに一晩温めた。1N NaOH(250mL)及びNaHCO飽和水溶液(250mL)で反応を停止させた。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより、CHClからEtOAcから5% MeOH/EtOAcで溶出して残渣を精製し、N−BOC−4(R)−シクロブチルアミノ−L−プロリン、メチルエステル(77g)を得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ4.8(br s,1H),4.24−4.32(m,1H),3.67/3.68(s,3H),3.56−3.64(m,1H),3.1−3.38(m,3H),2.12−2.21(m,2H),2.00−2.12(m,2H),1.54−1.82(m,4H),1.36/1.43(s,9H)。
【0080】
段階B:CHCN(350mL)及び水(150mL)中の、段階Aの化合物(77g、0.25mol)の溶液に、LiOH一水和物(21g、0.50mol)を添加し、その懸濁液をrtで一晩撹拌した。その反応混合物を、CHCNで総体積 1Lになるまで希釈し、0℃に冷却し、濾過し、この濾過液を、N−BOC−4(R)−シクロブチルアミノ−(L)−プロリンのリチウム塩の溶液として得た。上述の濾過液の一部(484mL、0.22M、0.11mol)を濃縮して、その残渣に、水(1L)、CHCl(1L)、EDC(20.8g、0.11mol)、HOBt(14.6g、0.11mol)及び、水(1L)中の4−((3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)アミノ)−(L)−フェニルアラニンエチルエステルHCl(39g、0.090mol)の溶液を添加した。この二相性の混合物を激しく4時間撹拌した。有機層を分離し、水層をCHCl(0.5L)で抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより、EtOAcからEtOAc/MeOH/NHOH(98:1:1)で溶出して残渣を精製し、N−[N−BOC−4(R)−シクロブチルアミノ−(L)−プロリル]−4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)アミノ]−(L)−フェニルアラニン、エチルエステル(48g)を得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ8.64(s,2H),7.57(d,2H),7.20−7.30(m,2H),4.80(br s,1H),4.58−4.70(m,1H),4.08−4.30(m,3H),3.56−3.64(m,1H),2.90−3.30(m,5H),3.00−3.08(m,1H),1.5−2.2(m,8H),1.22(br s,9H),1.2(t,3H)。
【0081】
段階C:エタノール(300mL)中の段階Bの化合物の溶液に、ジオキサン中の4M HCl(250mL)を添加した。rtで一晩撹拌した後、透明な黄色の溶液を濃縮して、残渣をエーテル(1L)で摩砕した。得られた懸濁液をrtにて2時間撹拌し、沈殿を濾過により回収した。そのケーキをエーテルで洗浄し、乾燥させ、N−[4(R)−シクロブチルアミノ−(L)−プロリル]−4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)アミノ]−(L)−フェニルアラニン、エチルエステル、HCl(45.6g)を得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ8.86(d,1H),8.62(s,2H),7.58(d,2H),7.26(d,2H),4.80(br s,1H),4.70(m,1H),4.64(dd,1H),4.15(q,2H),3.80−3.95(m,3H),3.5(dd,1H),3.24(dd,1H),3.00(dd,1H),2.50−2.70(m,2H),2.20−2.40(m,4H),1.8−2.0(m,2H),1.22(t,3H)。
【0082】
段階D:0℃の、THF(80mL)及び塩化メチレン(80mL)中の、段階Cの化合物(18g、30mmol)、3−シアノベンゼンスルホニルクロリド(6.0g、30mmol)、4−DMAP(50mg)の懸濁液に、DIPEA(21mL、0.12mol)を添加した。この反応混合物をrtまで3時間にわたり温め、得られた混合物を濃縮した。残渣をEtOAc(400mL)に溶解し、1N NaOH及び食塩水で洗浄し、乾燥するまで濃縮した。MeOH/EtOAc(0から3%)中の2N アンモニアを用いて、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製し、N−{N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−4(R)−シクロブチルアミノ−(L)−プロリル}−4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)アミノ]−(L)−フェニルアラニン、エチルエステル(18g)を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ8.64(s,2H),8.19(m,1H),8.00−8.04(m,2H),7.72(dd,1H),7.63(d,2H),7.32(d,2H),4.70(dd,1H),4.28(dd,1H),4.20(q,2H),3.60(dd,1H),3.30(m,1H),3.25(dd,1H),3.10(m,1H),3.06(dd,1H),3.08(dd,1H),2.07−2.14(m,2H),1.98(m,1H),1.75(m,1H),1.60−1.66(m,4H),1.27(t,3H)。LC−MS:C33H34Cl2N6O6Sに対する計算値 712、観察 m/e 713(M+H)(2.8分)。
【0083】
エタノール 100mL中の、上記化合物(5.6g)の試料に、メタンスルホン酸(1.1eq)を添加した。次に、その溶液が混濁するまでエーテルを添加した。rtで6時間撹拌した後、結晶を濾過により回収し、上記エステルのメタンスルホン酸塩を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ8.64(s,2H),8.30(s,1H),8.02(dd,1H),7.82(d,1H),7.64−7.71(m,3H),7.36(d,2H),4.63(dd,1H),4.56(dd,1H),4.18(m,2H),3.88(m,1H),3.76−3.83(m,2H),3.44(dd,1H),3.24(dd,1H),3.04(dd,1H),2.70(s,3H),2.30−2.38(m,3H),2.13−2.24(m,3H)1.90−1.96(m,2H),1.26(t,3H)。LC−MS:C33H34Cl2N6O6Sに対する計算値 712、観察 m/e 713(M+H)(2.9分)。
【0084】
段階E:AcCN 80mL及び水 40mL中の、段階Dの化合物(遊離アミン、23g、32mmol)の溶液に、LiOH一水和物(2.7g、65mmol)を添加した。rtにて2時間撹拌した後、ギ酸水溶液(98%、2.4mL、65mmol)で反応を停止させた。この反応物を水(20mL)で希釈し、rtで一晩撹拌した。形成された結晶を濾過により回収し、表題化合物(18g)を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ8.63(s,2H),8.15(s,1H),8.00(dd,1H),7.88(dd,1H),7.69(t,1H),7.62(d,2H),7.36(d,2H),4.44−4.50(m,2H),3.68−3.73(m,1H),3.62−3.66(m,1H),3.50−3.58(m,1H),3.20−3.29(m,2H),3.12(dd,1H),2.20−2.32(m,3H),1.92−2.00(m,3H),1.76−1.84(m,2H)。LC−MS:C3130ClSに対する計算値 684、観察 m/e 685(M+H)(2.6分)。
【0085】
水及びAcCN(3:1) 20mL中の上記化合物(1.2g)の試料に、メタンスルホン酸(1.1eq)を添加した。この混合物を凍結乾燥させ、固形残渣をAcCN中で結晶化させ、メタンスルホン酸塩として表題化合物を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ8.64(s,2H),8.54(br d,1H),8.08(s,1H),8.00(br d,1H),7.76(br d,1H),7.66(d,2H),7.65(t,1H),7.38(d,2H),4.64(br d,1H),4.56(m,1H),3.90−3.73(m,3H),3.44(dd,1H),3.28(dd,1H),3.00(dd,1H),2.70(s,3H),2.39−2.30(m,3H),2.24−2.12(m,3H),1.96−1.89(m,2H)。LC−MS:C3130ClSに対する計算値 684、実測 m/e 685(M+H)(2.6分)。
【0086】
(実施例2)
N−{N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−3(S)−tert−ブチルアミノ−(L)−プロリル}−4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−(L)−フェニルアラニン(R=H)、エチルエステル(R=CHCH)、ピバロイルオキシメチルエステル(R=−CHOC(O)C(CH)及び1−(エトキシカルボニルオキシ)エチルエステル(R=−CH(CH)OC(O)OCHCH
【0087】
【化11】

【0088】
段階A:0℃の、水 500mL中の(3S)−ヒドロキシ−(L)−プロリン(Acros、20g、0.15mol)及び炭酸ナトリウム(26g、0.25mol)の溶液に、粉末化した3−シアノベンゼンスルホニルクロリド(25g、0.12mol)を添加した。rtで一晩撹拌した後、その反応混合物を濃HClで酸性化し(pH=3)、生成物をEtOAc(3x100mL)で抽出した。その有機抽出物を乾燥させ(MgSO)、濾過し、乾燥するまで濃縮した。次に、残渣を塩化メチレン(100mL)及びMeOH(100mL)に溶解し、0℃にて、黄色が持続するまで、トリメチルシリルジアゾメタン(エーテル中2M)を添加した。rtにて15分間撹拌した後、その混合物を乾燥するまで濃縮して、N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−3(S)−ヒドロキシ−(L)−プロリン、メチルエステル(31.5g)を得た。LC−MS:C1314Sに対する計算値 310、実測 m/e 311(M+H)(2.3分)。
【0089】
段階B:0℃にて、EtOAc 200mL中の、段階Aの化合物(31.5g、0.10mol)の溶液に、TEA(20mL、0.14mol)及びMsCl(9.5mL、0.12mol)を添加した。0℃にて20分間撹拌した後、重炭酸ナトリウム水溶液 100mLで反応を停止させた。15分間撹拌した後、その反応混合物をEtOAc(300mL)と重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)との間で分配した。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、乾燥するまで濃縮して、N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−3(S)−メタンスルホニルオキシ−(L)−プロリン、メチルエステル(40g)を得た。LC−MS:C14H16N2O7Sに対する計算値 388、実測 m/e 389(M+H)(2.7分)。
【0090】
段階C:AcCN 300mL中の段階Bの化合物(39.5g、0.10mol)の溶液に、TEA(35mL、0.25mol)を添加した。75℃にて4時間加熱した後、その反応混合物をrtに冷却し、濃縮した。残渣をEtOAc(600mL)に溶解し、1N NaOH水溶液及び食塩水で洗浄し、乾燥するまで濃縮して、N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−2,3−デヒドロプロリン、メチルエステル(28g)を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ8.22(s,1H),8.17(d,1H),8.05(d,1H),7.80(t,1H),6.35(t,1H),3.98(t,2H),3.81(s,3H),2.14(td,2H),8.63(s,2H)。LC−MS:C13H12N2O4Sに対する計算値 292、実測 m/e 293(M+H)(2.7分)。
【0091】
段階D:シクロヘキサン 225mL及びtert−ブタノール 75mL中の段階Cの化合物(26.4g、90mmol)の懸濁液に、tert−ブチルアミン(95mL、0.90mol)を添加した。50℃にて48時間加熱した後、その反応混合物をrtに冷却し、濃縮した。固形残渣をヘキサンで摩砕し、濾過により回収し、ラセミ混合物としてN−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−3−tert−ブチルアミノプロリン、メチルエステル(29g)を得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ8.24(br s,1H),8.16(br d,1H),8.03(br d,1H),7.80(dd,1H),3.99(d,1H),3.75(s,3H),3.45−3.55(m,2H),3.33(m,1H),2.17(m,1H),1.62(m,1H),0.97(s,9H)。LC−MS:C17H23N3O4Sに対する計算値 365、実測 m/e 366(M+H)(1.9分)。
【0092】
上記のラセミ体の試料(46g、0.13mol)及び(1R)−(10)−カンファスルホン酸(29g、0.13mol)を、熱したAcCN(210mL)に溶解した。rtに冷却した後、結晶を濾過により回収し、これをAcCN中で再結晶化させ、(1R)−(10)−カンファスルホン酸塩として、1種類の純粋な鏡像異性体 12.4gを得た。この(1R)−(10)−カンファスルホン酸塩をEtOAc及び2N NaOH水溶液とともに撹拌することにより、遊離塩基の純粋な(3S)鏡像異性体を得て、その後、有機層を濃縮した。LC−MS:C17H23N3O4Sに対する計算値 365、実測 m/e 366(M+H)(1.9分)。
【0093】
段階E:AcCN/水(2.5:1)100mL中の段階Dの純粋な(35)鏡像異性体(6.7g、18mmol)の溶液に、LiOH一水和物(2.0g、46mol)を添加した。rtで2.5時間撹拌した後、2N HCl水溶液(23mL、46mmol)を添加することにより、この反応を停止させ、この反応混合物を凍結乾燥させ、未精製のリチウム塩を得て、これをさらに精製せずに使用した。ドライDMF 70mL中の未精製のリチウム塩の懸濁液に、4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)アミノ]−(L)−フェニルアラニンエチルエステル塩酸塩(8.0g、19mmol)、PyBOP(11g、22mmol)及びN−メチルモルホリン(6.0mL、55mmol)を添加した。rtにて2.5時間撹拌した後、その反応混合物をEtOAc(250mL)で希釈し、水(150mLx2)及び食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム無水物上で乾燥させ、濾過し、乾燥するまで濃縮した。残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、表題化合物のエチルエステルを得た(R=CHCH、7.5g)。AcCN中での再結晶化により、エチルエステルの結晶を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ8.63(s,2H),8.23(br s,1H),8.10(br d,1H),8.03(br d,1H),7.77(t,1H),7.62(d,2H),7.32(d,2H),4.78(m,1H),4.22(q,2H),3.81(d,1H),3.44(m,2H),3.30−3.22(m,2H),3.12(dd,1H),1.83(m,1H),1.43(m,1H),1.31(t,3H),0.91(s,9H)。LC−MS:C33H36Cl2N6O6Sに対する計算値 714、実測 m/e 715(M+H)(2.9分)。
【0094】
段階F:AcCN 12mL及び水 6mL中の、段階Eのエチルエステル(2.0g、2.8mmol)の溶液に、NaOH(1N、7mL、7.0mmol)を添加し、その反応混合物をrtで20分間撹拌した。2N HClでpH=5にして反応を停止させ、THF/EtOAc(1:3 v/v) 200mLで希釈した。この混合物を水(50mL)で洗浄し、濃縮して、有機溶媒を除去し、残渣を凍結乾燥させ、表題酸化合物を得た(R=H、1.9g)。H NMR(500MHz,CDOD):δ8.64(s,2H),8.20(br s,1H),7.99(br d,2H),7.72(t,1H),7.59(d,2H),7.38(d,2H),4.55(m,1H),4.21(br s,1H),3.69−3.61(m,2H),3.39(m,2H),3.25(dd,1H),3.08(dd,1H),2.17(m,1H),1.72(m,1H),1.18(s,9H)。LC−MS:C31H32Cl2N6O6Sに対する計算値 686、実測 m/e 687(M+H)(2.7分)。
【0095】
ピバロイルメチルエステル(R=−CHOC(O)C(CH
NaOH 1当量での処理と、それに続く凍結乾燥により、段階Fの酸の試料を、ナトリウム塩に変換した。0.5mL DMSO中の、このようにして得たナトリウム塩(0.10g、0.14mmol)の懸濁液に、クロロエチルピバレート(0.050mL、0.35mmol)を添加し、その反応混合物をrtで3時間撹拌し、TEA(0.1mL)、AcCN(0.5mL)及び水(0.5mL)で希釈し、逆相HPLCにより、水中40から90%のAcCN(0.1% TEA含有)で溶出して精製し、ある程度の不純物を含有する表題化合物のピバロイルオキシメチルエステルを得た。キラルパックADカラムでのHPLCによるさらなる精製を行い、ヘプタン中35% イソプロピルアルコールで溶出して、表題化合物のピバロイルオキシメチルエステルを得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ8.62(s,2H),8.22(br s,1H),8.03(br d,1H),8.00(br d,1H),7.75(t,1H),7.62(d,2H),7.32(d,2H),5.85(d,1H),5.77(d,1H),4.78(dd,1H),3.80(d,1H),3.50−3.40(m,2H),3.30−3.22(m,2H),3.10(dd,1H),1.92(m,1H),1.43(m,1H),1.20(s,9H),0.89(s,9H)。LC−MS:C37H42Cl2N6O8Sに対する計算値 800、実測 m/e 801(M+H)(3.1分)。
【0096】
1−(エトキシカルボニルオキシ)エチルエステル(R=−CH(CH)OC(O)OCHCH
このエステルは、クロロメチルピルベートの代わりに、1−クロロエチルエチルカルボネートを用いて、ピバロイルメチルエステルに対する上述のものと同じ手段に従い調製した。LC−MS:C36H40Cl2N6O9Sに対する計算値 802、実測 m/e 803(M+H)(3.2分)。
【0097】
(実施例3)
N−{N−[(3−シアノベンゼン)スルホニル]−4(R)−アゼチジニル−(L)−プロリル}−4−[(3’,5’−ジクロロイソニコチノイル)アミノ]−(L)−フェニルアラニン、エチルエステル
【0098】
【化12】

【0099】
実施例1、段階AからDで述べた方法に従い、段階Aでシクロブチルアミンの代わりにアゼチジンを用いて、表題化合物を調製した。H NMR(500MHz,CDOD):δ8.62(s,2H),8.22(br s,1H),8.03(br d,2H),7.75(t,1H),7.62(d,2H),7.32(d,2H),4.73(dd,1H),4.24(dd,1H),4.18(q,2H),3.42(dd,1H),3.23(dd,1H),3.08(d,1H),3.06(dd,1H),2.97(m,2H),2.88(m,2H),2.82(m,1H),1.85−1.75(m,3H),1.74−1.68(1H)。LC−MS:C32H32Cl2N6O6Sに対する計算値 698、実測 m/e 699(M+H)(3.1分)。
【0100】
(実施例4)
(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(ピペリジニウム−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)アミノ]−L−フェニルアラニン トリフルオロ酢酸塩
【0101】
【化13】

【0102】
段階A:参考実施例3の化合物(3.0g、9.67mmol)を、100mL CHClに溶解した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.23mL、24.22mmol)を添加し、N下でその反応混合物を−78℃に冷却した。トリフルオロエタンスルホン酸無水物(2.28mL、13.55mmol)をこの溶液に10分間にわたり滴下添加した。この混合物を−78℃で1時間撹拌し、次に、30分にわたり、−30℃にゆっくりと温めた。ピペリジン(1.91mL、19.31mmol)を5分間にわたり滴下添加し、この溶液を室温まで温め、一晩撹拌した。50mL HOをこの溶液に添加した。水層をCHClで3回抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、メチル(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(ピペリジン−1−イル)プロリネート(3.61g、99%)を橙色の油状物質として得て、これを15mL アセトニトリル及び5mL 水に溶解した。水酸化リチウム(1.00g、23.84mmol)を添加し、この反応混合物を室温にて1時間撹拌した。LCMSにより、出発物質が残っていないことが示されたので、この反応混合物を23.84 mL 1N HCl(23.84mmol)で中和した。この溶液をアセトン−ドライアイス浴中で凍結させ、16時間凍結乾燥させ、未精製の(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(ピペリジン−1−イル)プロリンを得て、これをさらに精製せずに、次の反応において直接使用した。MS(ESI)C1721Sに対する計算値 363.4、実測 m/e 364.2(MH)。
【0103】
段階B:段階Aの化合物(9.56mmol)を25mL DMF中で懸濁した。(2S)−3−{4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]フェニル}−1−エトキシ−1−オキソプロパン−2−アミニウムクロリド(3.99g、9.53mmol)、HATU(3.99g、10.49mmol)及びN−メチルモルホリン(2.62mL、23.83mmol)を添加し、この反応混合物を24時間室温で撹拌した。激しく撹拌しながら、この懸濁液を100mL HOに滴下添加した。沈殿をすぐに濾過し、HOで3回洗浄した。淡黄色の粉末を真空乾燥させ、次いで、逆相HPLCで精製して、エチル(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(ピペリジニウム−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)アミノ]−L−フェニルアラニナートトリフルオロ酢酸塩(4.42g、55%)を白色の綿毛状の固体として得た。H NMR(MeOD,500MHz)δ8.63(s,2H),8.49(d,1H),8.15(s,1H),8.04−8.01(m,1H),7.91−7.87(m,1H),7.71(t,1H),7.64(d,2H),7.34(d,2H),4.63−4.57(m,2H),4.18(q,2H),3.96−3.93(m,2H),3.49−3.44(m,3H),3.25−3.20(m,1H),3.06−2.97(m,3H),2.40−2.37(m,1H),2.20−2.16(m,1H),1.98−1.93(m,2H),1.80−1.78(m,1H),1.70−1.66(m,2H),1.54−1.50(m,1H),1.25(t,3H)。MS(ESI)C3436ClSに対する計算値 727.7、実測 m/e 727.2(M)。
【0104】
段階C:段階Bの化合物(0.100g、0.14mmol)を、1.5mL アセトニトリル及び0.5mL HOに溶解した。水酸化リチウム(0.014g、0.33mmol)を添加し、この反応混合物を室温にて1時間撹拌した。LCMSにより、出発物質が残っていないことが示されたので、この反応混合物をトリフルオロ酢酸(0.03mL、0.33mmol)で中和した。分取逆相HPLCによりその溶液を精製して、表題化合物(0.043g、45%)を綿毛状の白色の固体として得た。H NMR(MeOD,500MHz)δ8.63(s,2H),8.45(d,1H),8.13(s,1H),8.01(d,1H),7.82(d,1H),7.69−7.61(m,3H),7.36(d,2H),4.65−4.57(m,2H),3.98−3.88(m,3H),3.50−3.44(m,3H),3.31−3.25(m,1H),3.04−2.98(m,2H),2.47−2.41(m,1H),2.23−2.15(m,1H),2.12−1.44(m,7H)。MS(ESI)C3232ClSに対する計算値 699.6、実測 m/e 699.1(M)。
【0105】
(実施例4A)
エチル(4R)−1−[(3−シアノフェニル)スルホニル]−4−(ピペリジニウム−1−イル)−L−プロリル−4−[(3,5−ジクロロイソニコチノイル)−アミノ]−L−フェニルアラニナート、ならびにHCl塩及びメタンスルホン酸塩
実施例4、段階Bの淡黄色の未精製の粉末を、順相シリカクロマトグラフィーにより、EtOAc(1% NHOH)、次いでEtOAc(1% NHOH)/MeOH=99/1で溶出して精製し、化合物遊離塩基を白色の固体として得た。
【0106】
表題化合物遊離塩基(200mg、0.28mmol)を、EtOAcに溶解した。塩酸(ジオキサン中4N、100μL)を滴下添加し、室温にて30分間撹拌した。得られた沈殿を濾過し、ジエチルエーテル(3x)で洗浄し、高真空下で乾燥させ、表題化合物 HCl塩を白色の固体として得た。
【0107】
表題化合物遊離塩基(5.7g、7.8mmol)を、EtOH(200mL)に溶解した。メタンスルホン酸(570μL)を滴下添加し、ジエチルエーテル(200mL)を添加した。この反応混合物を室温にて4時間撹拌した。得られた沈殿を濾過し、ジエチルエーテル(3x)で洗浄し、高真空下で乾燥させ、表題化合物メタンスルホン酸塩を白色の固体として得た。
【0108】
トリフルオロ酢酸塩としての次の化合物は、実施例4で述べた手段を用いて調製した:
【0109】
【化14】

【0110】
【表2】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

又は医薬適合性のそれらの塩(式中、
Aは、N又はN−Oであり;
X及びYは、ハロゲン、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから独立に選択され;
は、(1)水素、(2)C1−10アルキル、(3)−(C1−10アルキル)−アリール、(4)−(C1−10アルキル)−O−C1−10アルキル、(5)−(C1−10アルキル)−OC(O)−C1−10アルキル、(6)−(C1−10アルキル)−OC(O)−アリール、(7)−(C1−10アルキル)−OC(O)O−C1−10アルキル及び(8)−(C1−10アルキル)N(C1−3アルキル)(ここで、アルキルは、Rから独立に選択される1個から3個の置換基で場合によっては置換され、アリールは、Rから独立に選択される1個から3個の置換基で場合によっては置換される。)から選択され;
は、水素又はメチルであり;
及びRは、(1)水素、(2)−NR、(3)−NRS(O)、(4)−NRC(O)R、(5)−NRC(O)OR及び(6)−NRC(O)NRから独立に選択され、ただし、R及びRは、両方ともが水素であることはなく;
は、(1)−OR、(2)−NRS(O)、(3)−NO、(4)ハロゲン、(5)−S(O)、(6)−SR、(7)−S(O)OR、(8)−S(O)NR、(9)−NR、(10)−O(CRNR、(11)−C(O)R、(12)−CO、(13)−CO(CRCONR、(14)−OC(O)R、(15)−CN、(16)−C(O)NR、(17)−NRC(O)R、(18)−OC(O)NR、(19)−NRC(O)OR、(20)−NRC(O)NR、(21)−CR(N−OR)、(22)CF、(23)−OCF、(24)C3−8シクロアルキル及び(25)ヘテロシクリル(ここで、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから独立に選択される1個から3個の基で場合によっては置換される。)から選択され;
は、(1)Rから選択される基、(2)C1−10アルキル、(3)C2−10アルケニル、(4)C2−10アルキニル、(5)アリール及び(6)−(C1−10アルキル)−アリール(ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールは、Rから独立に選択される基から選択される1個から3個の置換基で場合によっては置換される。)から選択され;
は、(1)ハロゲン、(2)アミノ、(3)カルボキシ、(4)C1−4アルキル、(5)C1−4アルコキシ、(6)アリール、(7)−(C1−4アルキル)−アリール、(8)ヒドロキシ、(9)CF、(10)OC(O)C1−4アルキル、(11)OC(O)NR又は(12)アリールオキシであり;
及びRは、水素、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、Cy及び−(C1−10アルキル)−Cy(ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル及びCyは、Rから独立に選択される1から4個の置換基で場合によっては置換される。)から独立に選択されるか;又は、
及びRは、それらが結合する原子と一緒に、O、S及びN−Rから独立に選択される0個から2個のさらなるヘテロ原子を含有する、4から7員の複素環を形成し、該複素環は、C3−8炭素環と場合によっては縮合されるか、又は、C1−10アルキルから独立に選択される1個から4個の基で場合によっては置換され;
及びRは、水素、C1−10アルキル、Cy及び−(C1−10アルキル)−Cyから独立に選択されるか;又は、
及びRは、それらが結合する炭素と一緒に、酸素、イオウ及び窒素から独立に選択される0個から2個のヘテロ原子を含有する、5から7員の環を形成し;
は、R及び−C(O)Rから選択され;
Cyは、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールから選択され;
mは、1又は2である。)。
【請求項2】
X及びYの1つが、ハロゲンであり、他方が、ハロゲン、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、水素、C1−4アルキル、−(C1−4アルキル)OC(O)−C1−4アルキル又は−(C1−4アルキル)OC(O)−C1−4アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、水素であり、Rが、NRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、NRであり、Rが、水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式Ia:
【化2】

を有する請求項1に記載の化合物又は医薬適合性のそれらの塩(式中、
Aは、N又はNであり;
は、水素、C1−10アルキル、−(C1−4アルキル)−アリール、−(C1−4アルキル)−O−C1−4アルキル及び−(C1−4アルキル)−OC(O)−C1−4アルキルから選択され;
及びRの1つは、NRであり、他方は、水素である。)。
【請求項7】
が、水素であり、Rが、t−ブチル又はシクロブチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が水素であり、R及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒に、さらなるヘテロ原子を含有しておらず、C1−4アルキルから独立に選択される1個又は2個の基で場合によっては置換される、4から7員の複素環を形成する、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物又は医薬適合性のそれらの塩の治療的有効量と、医薬適合性の担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項10】
細胞接着により媒介される疾患の治療もしくは予防用医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物又は医薬適合性のそれらの塩の使用。
【請求項11】
前記疾患が、喘息、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、鎌形赤血球性貧血、白血病及び関節リウマチから選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記疾患が、ウマにおける細胞性肺気腫である、請求項9に記載の使用。

【公表番号】特表2007−528397(P2007−528397A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502882(P2007−502882)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/007252
【国際公開番号】WO2005/087760
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】