説明

VoIPデータ処理機能付き通信装置およびシステム

【課題】従来型のアナログデータを、音声以外のデータを想定する必要もなく、すべて受信したデータを録音している。近年のインタネットの発達でIPデータとしてインタネットを介して受信されるデータでは音声以外の種々のデータが混在しているため、受信するデータが音声以外のものもあるインタネットを介して受信するIPデータを扱う場合、対応できないという問題があった。
【解決手段】そこで、インタネットやLANを介して受信したIPデータから音声データだけを分離する手段を有し、分離した音声データを記憶する手段を有し、外部装置からのメッセージに応じて、記憶した音声データを読み取り該当外部装置に送信する手段を有する通信装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野は、インタネットなどを介して受信されるIPデータから、音声データ(以降VoIPデータと呼ぶ)を分離、記録、再生などする通信装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の電話システムでは音声情報は一般的にはアナログで扱われており、交換機などの録音機能で音声を記録している。近年、通信ネットワークがIP化され、IP電話などの導入も進み、IP化された情報で音声情報も扱われている。IP化された音声情報を記録することは従来のアナログ情報で扱われている音声情報を記録する方法とは異なるものとなる。
【0003】
特許文献1では、INDS回線を通じて受信した音声データをすべて録音する方法を取っている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−16708号公報「コールセンタシステム」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コールセンタなどで扱うデータは、従来型のアナログデータ、あるいはISDN回線を通じて受信されたデジタルデータであり、前記特許文献1のように音声以外のデータを想定する必要もなく、すべて受信したデータを録音している。ところで、近年のインタネットの発達でIPデータとしてインタネットを介して受信されるデータでは音声以外の種々のデータが混在しているため、前記公知例では、受信するデータが音声以外のものもあるインタネットを介して受信するIPデータを扱う場合、対応できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば、インタネットやLANを介して受信したIPデータから音声データだけを分離する手段を有し、分離した音声データを送信する手段を有する通信装置を提供する。
【0007】
また例えば、インタネットやLANを介して受信したIPデータから音声データだけを分離する手段を有し、分離した音声データを記憶する手段を有し、外部装置からのメッセージに応じて、記憶した音声データを読み取り該当外部装置に送信する手段を有する通信装置を提供する。
【0008】
また例えば、前記記憶している音声データの一覧表を表示する手段を有し、表示された音声データの一覧表から再生を行う音声データを選択する手段を有し、選択された音声データを音声として出力する手段を有する再生装置からなるシステムを提供する。
【0009】
すわなち、インタネットなどを介して受信される大量のIPデータの中から、音声データを分離、記録、再生などする機能を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
インタネットを介して受信されるデータは、ルータやスイッチと呼ばれる通信装置が受信する。近年IP電話など音声をIPデータで扱う装置が普及しており、インタネットの種々のIPデータにVoIPデータも混在している。これを分離する機能を入り口にある通信装置で実現することは効果的である。
【0011】
音声データは、インタネットメールメッセージや文書ファイルデータとは異なり、品質を保持するためリアルタイムの処理を必要とされることもあり、VoIPデータを他のIPデータと分離することは品質保持にも有効である。
【0012】
また、膨大なIPデータをすべて保管することは現実上メモリ量などの問題から不適切であり、必要な音声データを分離して保管することは記憶容量の節約の意味でも有効である。
【0013】
コールセンタ、警察、官公庁、病院、消防署など、入力されたデータを保持し再確認する必要のある機関では、確認などのための再生機能が不可欠であり、内容検証のために効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施に好適な実施形態の例を、図面を用いて説明する。但し、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
図1は、VoIPデータ処理機能付き通信装置およびシステムの1形態を示すブロック図である。
【0016】
101はVoIPデータ処理機能付き通信装置およびシステムであり、VoIPデータ処理機能付き通信装置102、VoIPデータ記憶装置106、VoIPデータ再生装置107を含む。
VoIPデータ処理機能付き通信装置102において、データ複製部103は、インタネットやLAN(ローカルエリアネットワーク)からのデータを受信する。データ複製部103は、受信されたデータと同一のデータを複製する。データ複製部103で複製されたデータは、VoIPデータフィルター部104に送信される。データ複製部103で受信されたデータは、データ転送部105に転送される。このデータ複製部103で実施されている機能はミラーリング機能と呼ばれる。ここで、ミラーリング機能により複製されたデータの一方をデータ転送部105から宛先(例えばIP電話)への経路に転送し、他方を後述するVoIPデータフィルター部104に送信することで、フィルター部での処理による音声の遅延を防止することができる。
【0017】
VoIPデータフィルター部104では、受信したデータからVoIPデータを分離する。ここで扱われるデータは、IPパケットデータと呼ばれ、図2に示すデータ形式になっている。IPパケットデータは、一般的に20バイトで構成されるIPヘッダのあとに、UDPデータあるいはTCPデータが接続されている。UDPデータの先頭の8バイトはUDPヘッダと呼ばれ、それぞれ2バイトの送信元ポート番号、あて先ポート番号、パケット長、UDPチェックサムで構成される。TCPデータの先頭のTCPヘッダは24バイトで構成され、先頭の4バイトとはUDPヘッダと同様にそれぞれ2バイトの送信元ポート番号、あて先ポート番号で構成される。
【0018】
VoIPデータは一般的にはトランスポート層のデータ形式ではUDPデータとして扱われ、リアルタイム処理を必要とするためRTPプロトコルを利用する。そのため12バイトで構成されるRTPヘッダがUDPヘッダのあと接続される。RTPプロトコルを利用するためには、ポート番号が決められており、UDP/RTPを利用するためのポート番号は5004から5059が一般的である。
【0019】
そのため、VoIPデータフィルター部104では、受信したIPパケットデータのUDPヘッダの1バイト目から4バイト目のデータを確認する。これらのそれぞれ2バイトのデータを判読し、ポート番号が5004から5059であればUDP/RTPを利用していると判断され、VoIPデータとみなす。VoIPデータであれば、該当IPパケットデータをVoIPデータ記憶装置106に送信する。VoIPデータ以外のデータは破棄する。
【0020】
データ転送部105において、データ複製部103から受信されたデータは、データの送信先となるアドレスをデータから読み取り、VoIPデータ処理機能付き通信装置102のそれぞれのデータのあて先アドレスに応じた出力インタフェースから送信される。この機能は、ルーティング機能と呼ばれ、ルータ、スイッチと呼ばれる装置で実施されており、本明細書では図3を用いて概説する。
【0021】
図3は、本発明のVoIPデータ処理機能付き通信装置102が実行する動作例を示すタイムチャートである。
【0022】
データ複製部103はネットワークからのデータを受信し、受信したパケットデータと同一パケットデータを複製し、複製したパケットデータをVoIPデータフィルター部104に、受信したパケットデータはデータ転送部105に送信する。
【0023】
データ転送部105では、データ複製部103から受け取ったパケットデータのIPヘッダのあて先アドレスを読み取る。ルーティングテーブルと呼ばれる通信装置にあらかじめ設定されされているあて先アドレスと出力インタフェースの表を参照し、読み取ったアドレスに該当する出力インタフェースにパケットデータを送信する。
【0024】
VoIPデータフィルター部104は、UDPヘッダの最初の1バイト目から4バイト目までの2つのポート番号を確認し、ポート番号が5004から5059であればUDP/RTPを利用していると判断され、VoIPデータとみなし、VoIPデータ記憶装置105に送信される。
【0025】
図1において、VoIPデータ記憶装置106は、インタネットあるいはLANを介してアクセス可能である。VoIPデータフィルター部104から受信したVoIPデータは、図2の形式でVoIPデータ記憶装置106にそのまま記録される。VoIPデータ記憶装置106は、NAS(ネットワークアクセスストレージあるいはネットワークアタッチトストレージ)と呼ばれる装置などが利用でき大量のデータを記録可能である。VoIPデータ記憶装置106は、図1のようにデータ管理部108とデータ記憶部109からなる。データ管理部108は、VoIPデータフィルター部104からのデータを受信し、データ記憶部109に格納する。また、VoIPデータ再生装置107からの要請を確認し、必要なデータをデータ記憶部109から取り出し、VoIPデータ再生装置107に送信する。
【0026】
VoIPデータ再生装置107は、図1に示すようにデータ再生部110とデータ表示部111と再生指示部112、音声出力部113からなる。VoIPデータ再生装置107は、パーソナルコンピュータやワークステーションが利用でき、それらコンピュータの主演算装置がデータ再生部110、ディスプレイがデータ表示部111、キーボードが再生指示部112、スピーカーが音声出力部113に対応する。データ再生部110では、再生指示部112から入力された再生を行うVoIPデータを受信し、データ記憶部106に送信する。再生を行うデータの指定方法として、タイムスタンプや発信元のIPアドレスなどを指定することができる。たとえば、パケットデータが作成された日時は、図2に示すRTPヘッダのタイムスタンプに記載されている。また、IPヘッダは20バイトで構成されるが、13バイト目から16バイト目までは発信元とあて先のIPドレスが記載されている。これらを利用して、発信元やあて先のIPアドレスを元に要求することができる。
【0027】
データ記憶部106では、再生指示部112から入力しデータ再生部110から送信されたメッセージをデータ管理部108で受信し、再生指示部112の要求に応じたVoIPデータをデータ記憶部109から取り出し、VoIPデータ再生装置107に送信する。VoIPデータ再生装置107は、VoIPデータ記憶装置106から受信したデータを、データ再生部110で受信し、データ表示部111に表示する。パケットのタイムスタンプ日、送信元のIPアドレスなどを表形式で表示できる。
【0028】
データ表示部111に表示情報を元に、再生を行うデータを再生指示部112を利用して指定する。指定されたデータは、音声出力部113から音声で出力される。
【0029】
VoIPデータ再生装置107のデータ再生部110とデータ表示部111と再生指示部112と音声出力部113の処理内容は、種々可能であるが詳述は省略する。
【0030】
なお、本実施例では、インタネットあるいはLANを介して接続可能な形態を説明しているが、VoIPデータを記憶する手段が通信装置に内蔵される場合、VoIPデータ再生装置107に直接接続される場合なども適用可能である。
【実施例2】
【0031】
図4は、VoIPデータ処理機能付き通信装置およびシステムの、VoIPデータを記憶する手段を通信装置に内蔵した一実施例を示す。前記VoIPデータフィルター部104で分離されたVoIPデータは、データ管理部114に送信され、データ記憶部115に記録される。
【0032】
データ管理部114は、VoIPデータ再生装置107からの要求に対応し、必要なデータをデータ記憶部115から読み取り、VoIPデータ再生装置107に送信する。VoIPデータ再生装置107では、データ管理部114から送信されたデータを利用し、前記方法により音声に再生することができる。
【0033】
なお、VoIPデータ記憶装置106とVoIPデータ再生装置107は、本発明の実施例ではそれぞれ1箇所に設置した場合を述べているが、VoIPデータ記憶装置106とVoIPデータ再生装置107を複数箇所に設置することも可能であり、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0034】
また、VoIPデータ記憶装置106とVoIPデータ再生装置107は、VoIPデータ処理機能付き通信装置102とインタネットを介して設置することも可能であり、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0035】
このように、本発明のVoIPデータ処理機能付き通信装置およびシステムにおいて、IPデータで入力される種々のデータの中からVoIPデータを分離し、記憶し、再生できる機能を実現できる。
【0036】
インタネット時代の新しい音声保管再生の仕組みとして、コールセンタ、警察、官公庁、病院、消防署など、入力されたデータを保持し再確認する必要のある機関では、確認などのための再生機能が不可欠であり、内容検証のために効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】VoIPデータ処理機能付き通信装置およびシステムの一例を示すブロック図である。
【図2】パケットデータの一例を示すデータ形式である。
【図3】VoIPデータ処理機能付き通信装置102が実行する動作例を示すタイムチャートである。
【図4】VoIPデータ処理機能付き通信装置およびシステムの一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
101:VoIPデータ処理機能付き通信装置およびシステム
102:VoIPデータ処理機能付き通信装置
103:データ複製部
104:VoIPデータフィルター部
105:データ転送部
106:VoIPデータ記憶装置
107:VoIPデータ再生装置
108:データ管理部
109:データ記憶部
110:データ再生部
111:データ表示部
112:再生指示部
113:音声出力部
114:データ管理部
115:データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットプロトコルに基づくデータパケットを受信する受信部と、
前記受信部で受信したデータパケットを複製する複製部と、
前記パケット複製部で複製されたデータパケットの転送先を検索して、検索した転送先へ送信する転送部と、
前記パケット複製部で複製されたデータパケットからVoIPデータパケットを抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出されたVoIPデータパケットを記憶する記憶部とを有することを特徴とする通信処理システム。
【請求項2】
請求項1のVoIPデータ管理システムであって、
前記記憶部に記憶したVoIPデータパケットの再生を指示する再生指示部と、
前記記憶部に記憶したVoIPデータを選択可能に表示する表示部とを有することを特徴とする通信処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−208577(P2007−208577A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24055(P2006−24055)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(504411166)アラクサラネットワークス株式会社 (315)
【Fターム(参考)】