説明

X線コンピュータ断層撮影装置

【課題】スキャン条件をより好適に設定することができるX線コンピュータ断層撮影装置を提供すること。
【解決手段】複数の条件項目を含むスキャン条件に従って、被検体の撮影対象部位に対するX線によるスキャンと前記スキャンにより収集された投影データに基づく画像データの再構成とを実行するX線コンピュータ断層撮影装置は、画像ノイズの指標に関する所望値を入力する入力器39と、画像ノイズの指標に関する基準値を有するサンプル画像に関するデータを記憶する記憶装置35と、画像ノイズの指標に関する所望値に対して、スキャン条件の推奨値を関連付け、入力された画像ノイズの指標に関する所望値と画像ノイズの指標に関する基準値とに基づいてサンプル画像に関するデータから入力された画像ノイズの指標の所望値に対応する模擬画像データを生成する模擬画像生成部42と、生成された模擬画像データ及び関連付けられたスキャン条件の推奨値を表示するディスプレイ38とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、X線コンピュータ断層撮影装置は、X線が被検体内で受けた吸収量に基づいて臓器等の組織のX線吸収率を水のそれを基準としたCT値という指標として計算(再構成)することによって画像(断層像)を得るものである。再構成した画像には画像ノイズが不可避である。画像ノイズは、典型的には均質ファントム像のCT値のばらつきを標準偏差として定義し、通常、画像SDと略称される。
【0003】
画像SDは、スキャン条件の中の撮影スライス厚、管電圧、管電流等の複数の条件項目と、被検体とに応じて決まる。再構成した画像を観察して診断を下すには、例えば画像上の微小な陰影がノイズなのか、腫瘍なのかを区別するために、その画像が有する画像SDを考慮する必要がある。換言すると、検査対象の腫瘍をノイズと識別できる適正値に画像SDがなるように、撮影スライス厚、管電圧、管電流等のスキャン条件項目を設定する必要がある。
【0004】
しかし、特開平11−235334号公報のように、撮影スライス厚、管電圧、管電流等の多くの条件項目を入力するだけでは、画像SDの値を把握することは容易ではない。さらに、仮に、画像SDを把握できたとしても、その画像SDの値に対して、どの程度のノイズが現れるのかについて認識することは多くの経験及び知識を要するものであり容易なことではない。そのためスキャン条件を好適に設定することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−235334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、スキャン条件をより好適に設定することができるX線コンピュータ断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面は、複数の条件項目を含むスキャン条件に従って、被検体の撮影対象部位に対するX線によるスキャンと前記スキャンにより収集された投影データに基づく画像データの再構成とを実行するX線コンピュータ断層撮影装置において、画像ノイズの指標に関する所望値を入力する手段と、像ノイズの指標に関する基準値を有するサンプル画像に関するデータを記憶する記憶手段と、記画像ノイズの指標に関する所望値に対して、スキャン条件の推奨値を関連付ける手段と、前記入力された画像ノイズの指標に関する所望値と、前記画像ノイズの指標に関する基準値とに基づいて、前記サンプル画像に関するデータから前記入力された画像ノイズの指標の所望値に対応する模擬画像データを生成する模擬画像データ生成手段と、前記生成された模擬画像データ、及び前記関連付けられたスキャン条件の推奨値を表示する手段とを具備する。
本発明の第2局面は、複数の条件項目を含むスキャン条件に従って、被検体の撮影対象部位に対するX線によるスキャンと前記スキャンにより収集された投影データに基づく画像データの再構成とを実行するX線コンピュータ断層撮影装置において、画像ノイズの指標に関する基準値を有するサンプル画像データを記憶する記憶手段と、画像ノイズの指標に関する所望値と、前記画像ノイズの指標に関する基準値とに基づいて、前記サンプル画像データから前記画像ノイズの指標の所望値に対応する模擬画像データを生成する模擬画像データ生成手段と、記画像ノイズの指標に関する所望値に対して、スキャン条件の推奨値を関連付ける手段と、前記生成された模擬画像データ、及び前記関連付けられたスキャン条件の推奨値を表示する手段とを具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スキャン条件をより好適に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態によるX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態の動作手順の一例を示す流れ図。
【図3】図2のS2の段階で表示されるスキャンプラン設定画面の一例を示す図。
【図4】図2のS5の段階で表示される画像SD確認画面の一例を示す図。
【図5】図2のS9の段階における画像SD計算処理の補足説明図。
【図6】図2のS10の段階における2つのサンプル画像に対する重み係数の決定方法の一例を示す図。
【図7】図2のS11の段階で表示される模擬画像表示画面の一例を示す図。
【図8】本発明の実施形態による画像ノイズシミュレーション装置による表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明によるX線コンピュータ断層撮影装置の実施形態を説明する。なお、X線コンピュータ断層撮影装置には、X線管とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。また、1スライスの断層像データを再構成するには、被検体の周囲1周、約360°分の投影データが、またハーフスキャン法でも180°+ビュー角分の投影データが必要とされる。いずれの再構成方式にも本発明を適用可能である。ここでは、前者を例に説明する。また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。X線検出素子としては、それらのいずれの方式を採用してもよいが、ここでは、前者の間接変換形として説明する。また、近年では、X線管とX線検出器との複数のペアを回転フレームに搭載したいわゆる多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本発明では、従来からの一管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であっても、多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型として説明する。
【0011】
図1は本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示している。架台1は、X線管10とX線検出器23を有する。X線管10とX線検出器23は、円環形状の回転フレーム12に相互に対向する向きで搭載される。回転フレーム12は、架台駆動装置25によりZ軸を中心として回転される。回転フレーム12の中央部分は開口され、その開口部に、寝台2の天板2a上に載置された被検体Pが挿入される。X線管10と開口部との間には、ビームピッチ(撮影スライス厚ともいう)に応じてX線の照射幅を変化させるためのスリット22が配置される。寝台2には天板2aをその長軸(回転軸と平行)の方向に関して移動するための天板駆動部2bが装備されている。
【0012】
X線管10の陰極陽極間には高電圧発生器21から管電圧が印加され、またX線管10のフィラメントには高電圧発生器21からフィラメント電流が供給される。管電圧の印加及びフィラメント電流の供給によりX線が発生される。高速連続回転を実現するために、X線管10と高電圧発生器21との間はスリップリングを介して電気的に接続されている。
【0013】
X線検出器23は、シングルスライスタイプ又はマルチスライスタイプの検出器である。X線検出器23は、シングルスライスタイプであれば、例えば0.5mm×0.5mmの正方の受光面を有する複数のX線検出素子が例えば916個チャンネル方向Yに一列に配列された素子列を有する。X線検出器23は、マルチスライスタイプであれば、素子列がスライス方向Zに例えば40列並設されてなる。
【0014】
一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれているデータ収集装置24は、検出器23からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は架台外部の計算機ユニット3に取り込まれる。計算機ユニット3の前処理ユニット34は、データ収集装置26から出力される生データに対して感度補正等の補正処理を施して投影データを出力する。この投影データは計算機システム3のデータ記憶装置35に送られ記憶される。
【0015】
計算機システム3は、前処理ユニット34及びデータ記憶装置35とともに、システムコントローラ32、キーボードやマウス等を備えた入力器39、ディスプレイ38、表示プロセッサ37、スキャンコントローラ33、再構成ユニット36、スキャンプラン設定支援システム40、画像SD計算部41、模擬画像生成部42、画像SDシュミレータ43から構成される。再構成ユニット36は、データ記憶装置35に記憶されている投影データに基づいて、画像(断層画像)データを再構成する。データ記憶装置35は、前処理ユニット34で生成された投影データ、再構成ユニット36で再構成された断層画像データを記憶すると共に、模擬画像生成部42において模擬画像データを生成するために用いられるサンプル画像データを予め記憶する。
【0016】
サンプル画像データは、人体の内部組成を忠実に再現したファントム又はサンプル画像としての使用を承諾した被検体を実際にスキャンして得た画像データであって、当該スキャン時のスキャン条件に対応する所定の画像SD(このサンプル画像が有する画像SDを基準画像SDという)を有している。模擬画像生成部42は、スキャンプラン設定支援システム40で設定されたスキャン条件等に基づいて画像SD計算部41で計算された画像SDと、サンプル画像データが有する基準画像SDとに基づいて、画像SD計算部41で計算された画像SDに相当する程度のノイズを有する画像データ(模擬画像データ)をサンプル画像データから生成する。模擬画像データをサンプル画像データから生成するのに要する処理時間は、画像SDに基づいてサンプル投影データを加工し、模擬画像データを再構成するのに要する処理時間よりも、非常に短縮することができる。それによりスキャン条件の設定に際して、画像SDを実際の画像上で確認する作業及びそのスキャン条件の修正作業を現実的なものとすることができる。以下、模擬画像データをサンプル画像データから生成する処理をスキャン条件の設定処理と共に説明する。
【0017】
図2には、本実施形態において、スキャン条件の設定処理の中で模擬画像データをサンプル画像データから生成する処理を適用する場合の典型的な流れを示している。まず、S1において、被検体の全身又は一部分に関するスキャノグラムが撮影される。スキャノグラム撮影は、周知の通り、例えばX線管10が天板2a上の被検体に正対するゼロ°の角度で回転フレーム12を固定し、また天板2aを被検体とともに一定速度で連続的に移動させながら、被検体に対してX線を連続的に照射し、被検体を透過したX線をX線検出器23で所定の周期で繰り返し検出することにより行われる。これによりX線平面像と同様の画像データ、すなわちスキャノグラムデータを発生することができる。
【0018】
次に、スキャン条件が設定されるが、その設定は、スキャンプラン設定支援システム40の支援の上でなされる。スキャンプラン設定支援システム40は、操作者によるスキャン条件の設定を対話形式でもって容易にするために必要な機能を備えている。例えば、患者情報、検査目的、検査対象部位等の事項を入力すると、スキャンプラン設定支援システム40は、それに応じた少なくとも1つのスキャン条件の候補を作成し、提示する。
【0019】
図3には、スキャンプラン設定支援システム40により構築されたスキャン条件設定支援画面が示されている。スキャン条件設定支援画面には、患者情報、ガントリ情報、スキャノグラムとともに、それらの下部にスキャン条件の候補リストが表示される。スキャン条件に含まれる主な条件項目としては、スキャンモード(シングルスライススキャン、マルチスライススキャン、ヘリカルスキャン)、撮影範囲、管電圧、管電流、X線管10が一回転するのに要する時間を表すスキャン速度、ヘリカルスキャン時のX線ビーム幅に対するX線管10の一回転あたりの天板移動距離の割合を表すビームピッチ、ヘリカルスキャン時のX線管10の一回転あたりの天板移動距離を表す寝台速度、撮影スライス厚、再構成関数、画像スライス厚、撮影領域の直径を表すS−FOV、再構成領域の直径を表すD−FOV等が含まれる。放射線技師は、提示されたスキャン条件の候補の中から所望の候補を選択し、また必要に応じて所望の条件項目の候補値を修正することにより、スキャン条件を少ない手間でもって設定することができる。
【0020】
スキャン条件設定支援画面には、「画像SD確認」と記されたボタンが含まれる。S3において、「画像SD確認」ボタンがクリックされたとき、画像SDシミュレータ43が起動する。画像SDシミュレータ43は、スキャンプラン設定支援システム40から、設定されたスキャンプランデータを取り込み、またデータ記憶装置35からスキャノグラムデータを取り込む(S4)。画像SDシミュレータ43は、取り込んだスキャンプランデータ及びスキャノグラムデータから図4に示す画像SD確認画面を構築し、表示する(S5)。
【0021】
図4に示すように、画像SD確認画面には、左上のスキャノグラム表示領域、右上の模擬画像表示領域、撮影部位表示欄、体厚表示欄、水等価厚表示欄、撮影範囲表示欄、撮影時間表示欄、スキャンモード表示欄、被曝低減表示欄、撮影スライス厚表示欄、画像スライス厚表示欄、FOV表示欄、ビームピッチ(Pitch)表示欄、寝台速度表示欄、再構成関数(関数)表示欄、管電圧(kV)表示欄、管電流(mA)表示欄、スキャン速度表示欄、画像SD表示欄、線量(CTDI、DLP)表示欄、ウインドウレベル/ウインドウワイズ表示欄が含まれる。これら表示欄のうち、体厚表示欄、水等価厚表示欄、画像SD表示欄を除く表示欄には、初期的に、スキャンプランデータに含まれる対応項目の部位名又は数値が挿入される。
【0022】
体厚は、画像SD確認画面上で入力器39を介して数値入力される。又は、体厚は、画像SDシミュレータ43によりスキャノグラムデータから計算される。水等価厚は、入力された又は計算された体厚から画像SDシミュレータ43により計算される。または水等価厚は、画像SDシミュレータ43により直接、スキャノグラムデータから計算される。体厚から水等価厚を計算する方法としては、様々な方法があり、任意の方法を採用すればよい。体厚から水等価厚を計算する方法の一例としては、直径既知の円柱形水ファントムに関する事前収集したスキャノグラムの画素値に対する当該被検体に関するスキャノグラム内の画素値の比率に基づいて、水ファントムの直径から当該被検体の水等価厚を推定する方法がある。誤差低減のために、実際的には、直径既知の円柱形水ファントムに関するスキャノグラム内の局所領域の画素値積算に対する当該被検体に関するスキャノグラム内の同サイズの局所領域の画素値積算の比率の平方根を、水ファントムの直径に乗算することにより、当該被検体の水等価厚を推定する。
【0023】
画像SD確認画面には「模擬画像表示」と記されたボタンが含まれる。S7において「模擬画像表示」ボタンがクリックされたとき、画像SDシミュレータ43の制御のもとで、データ記憶装置35からも模擬画像生成部42にサンプル画像データが取り込まれる(S8)。実際には、データ記憶装置35には、複数の部位各々に対して複数、ここでは2枚のサンプル画像に関するデータが関連付けられている。同じ部位に関連付けられている2枚のサンプル画像は、異なる画像SDを有する。一方のサンプル画像(第1のサンプル画像)は、例えば2.0の画像SD(第1の基準画像SD)を有し、他方のサンプル画像(第2のサンプル画像)は、例えば50.0の画像SD(第2の基準画像SD)を有している。周知のとおり、画像SDはその値が小さいほど、画質が高く、値が高いほど、画質が低い性質を有している。
【0024】
次に、S9において、画像SD計算部41は、スキャンプランの中の特定の条件項目の設定値と、計算された水等価厚とに基づいて、画像のノイズに関する指標としての画像SDを計算する。画像SDの計算方法としては、様々な方法があり、任意の方法を採用すればよい。例えば以下の方法で画像SDが計算される。
【0025】
この方法は、画像SDを、撮影スライス厚、管電圧、管電流、再構成関数、ビームピッチ、水等価厚に基づいて求める。水等価厚に対する画像SDの関係は、スキャン条件の全ての条件項目を基準値に固定した状態で、直径の異なった複数種類(例えば5種類)の水ファントムを順番にスキャンし、それぞれの画像の画像SDを求め、図5(a)に示すように、水ファントム厚と画像SDとの関係を、指数近似式で求める。その近似式データはデータ記憶装置35に事前に記憶されている。撮影スライス厚に対する画像SDの関係は、スキャン条件の他の条件項目を基準値に固定した状態で、特定の水ファントムに対して撮影スライス厚を変えながらスキャンを繰り返し、それぞれの画像の画像SDを求めて、図5(b)に示すように、近似式で求められる。その近似式のデータはデータ記憶装置35に事前に記憶される。管電圧に対する画像SDの関係は、スキャン条件の他の条件項目を基準値に固定した状態で、特定の水ファントムに対して管電圧を変えながらスキャンを繰り返し、それぞれの画像の画像SDを求めて、図5(c)に示すように、近似式で求められる。その近似式のデータはデータ記憶装置35に事前に記憶される。管電流に対する画像SDの関係は、スキャン条件の他の条件項目を基準値に固定した状態で、特定の水ファントムに対して管電流を変えながらスキャンを繰り返し、それぞれの画像の画像SDを求めて、図5(d)に示すように、近似式で求められる。その近似式のデータはデータ記憶装置35に事前に記憶される。ビームピッチに対する画像SDの関係は、スキャン条件の他の条件項目を基準値に固定した状態で、特定の水ファントムに対してビームピッチを変えながらヘリカルスキャンを繰り返し、それぞれの画像の画像SDを求めて、近似式で求められる。その近似式のデータはデータ記憶装置35に事前に記憶される。再構成関数に対する画像SDの関係は、スキャン条件の全ての条件項目を基準値に固定した状態で、特定の水ファントムに対してスキャンを1回実行し、再構成関数を変えながら画像再構成を繰り返し、それぞれの画像の画像SDを求めて、近似式で求められる。その近似式のデータはデータ記憶装置35に事前に記憶される。
【0026】
画像SD計算部41は、これら5種類(ヘリカルスキャン時には6種類)の近似式データから、スキャンプラン設定支援システム40上で設定されたスキャン条件の対応する条件項目(撮影スライス厚、管電圧、管電流、ビームピッチ、再構成関数)の各設定値、被検体の撮影対象部位の体厚それぞれに対応する画像SD値を特定し、特定した画像SDの値をそれぞれの正規化係数で正規化した値を掛け算することで、当該スキャン条件項目の設定値で被検体の撮影対象部位をスキャンし、それにより得た投影データから当該選択された再構成関数を使って再構成した場合、その画像が有する画像SDの値を計算、実際には推定する。
【0027】
次に、S10において、画像SD計算部41で計算された画像SDに基づいて、その画像SD対応する程度のノイズを有する画像(模擬画像)が模擬画像生成部42によりサンプル画像データから生成される。模擬画像生成部42は、データ記憶装置35から取り込んだ撮影対象部位に関連付けられた画像SDが相違する2種類のサンプル画像データを、第1,第2の基準画像SDの間の区間に対する計算した画像SDの位置に応じて、2種類のサンプル画像データを補間することにより、模擬画像データを生成する。補間処理は、周知の通り、第1,第2のサンプル画像の対応する位置の画素値に対して第1,第2の重み係数をそれぞれ乗算して、加算する処理である。合計が1.0になるように、第1,第2の重み係数それぞれの値が決定される。その決定方法としては、第1,第2の基準画像SDの間の距離に対する第1基準画像SDと計算画像SDとの間の距離の比を、第1サンプル画像に対して乗算する第1の重み係数として決定し、第1,第2の基準画像SDの間の距離に対する第2基準画像SDと計算画像SDとの間の距離の比を、第2サンプル画像に対して乗算する第2の重み係数として決定するいわゆる単純距離補間処理に準じて決定してもよいし、図6に示すように、所定の多次関数に応じて決定するようにしてもよい。
【0028】
このように基準画像SDが相違する2種類のサンプル画像データから模擬画像データを生成することで、その処理時間を短縮することができる。なお、上述では模擬画像データを2種類のサンプル画像データから生成する例を説明したが、2.0等の高画質に対応する基準画像SDを有する1種類のサンプル画像データに対して、その基準画像SDと計算した画像SDとの比に応じた程度のノイズを加えることにより模擬画像データを生成するようにしてもよいし、逆に50.0等の低画質に対応する基準画像SDを有する1種類のサンプル画像データに対して、その基準画像SDと計算した画像SDとの比に応じた程度でノイズリダクションをかけることにより模擬画像データを生成するようにしてもよいし、さらに3種類以上の基準画像SDを有する3種類以上のサンプル画像データから、それらの基準画像SDと計算した画像SDとの比に応じた重み係数で補間することにより模擬画像データを生成するようにしてもよい。
【0029】
次に、画像SDシミュレータ43では、画像SD計算部41で計算された画像SD及び模擬画像生成部42で生成された模擬画像を含む図7に例示する画像SD確認画面を構築して、表示する(S11)。
【0030】
放射線技師は、入力器39を介して必要に応じて、撮影スライス厚、管電圧、管電流、再構成関数、ビームピッチの各設定値を修正する(S12)。修正後、S13において「模擬画像表示」ボタンがクリックされたとき、S9に戻り、画像SD計算部41により、修正されたスキャン条件項目の修正値と、スキャンプランの中の修正されていないスキャン条件項目の設定値と、計算された水等価厚とに基づいて、画像SDが再計算される。そして、S10、S11において、画像SD計算部41で再計算された画像SDに基づいて模擬画像生成部42により同じサンプル画像データから、再計算された画像SDに対応する模擬画像データが短時間のうちに生成され、表示される。
【0031】
その結果を見て、放射線技師は、必要に応じて、撮影スライス厚、管電圧、管電流、再構成関数、ビームピッチの値を再修正する(S12)。S8乃至S13の処理を何度か繰り返し、放射線技師は、画像SD及びその画像SDに応じたノイズの程度を模擬画像上で視認しながら、撮影スライス厚、管電圧、管電流、再構成関数、ビームピッチを最適値に近似させることができる。最適値とは、検査対象の腫瘍等がノイズに埋もれることなく明瞭に確認でき、しかも被曝を最小限に抑えることに対応する値として定義される。
【0032】
画像SD確認画面内の「反映」と記されたボタンがクリックされたとき(S14)、画像シミュレータ43の制御のもとで、撮影スライス厚、管電圧、管電流、再構成関数、ビームピッチに関する修正値データがスキャンプラン設定支援システム40に供給される(S15)。スキャンプラン設定支援システム40は、供給された撮影スライス厚、管電圧、管電流、再構成関数、ビームピッチに関する修正値にスキャンプランの対応項目の値を置き換える。図3の「確定」ボタンのクリックにより、画像SD確認画面上で修正された撮影スライス厚、管電圧、管電流、再構成関数、ビームピッチに関する修正値がスキャン条件の設定値として確定される。図7の「閉じる」ボタンのクリックにより、画像SD確認画面が閉じる(S16)。
【0033】
なお、上述のサンプル画像データを記憶するデータ記憶装置35、画像SD計算部41、模擬画像生成部42、表示プロセッサ37、ディスプレイ38、入力器39からなる画像ノイズシミュレーション装置としてX線コンピュータ断層撮影装置とは独立して設けるようにしてもよい。図8に示すように、画像SDシミュレーション画面が表示される。このシミュレーション画面上で、体厚、水等価厚、スキャンモード、被曝低減のオン/オフ、撮影スライス厚、画像スライス厚、FOV、ビームピッチ、寝台速度、再構成関数、管電圧、管電流、スキャン速度を任意の値に設定し、「模擬画像表示」ボタンをクリックすることで、その設定値に応じた画像SD及びその画像SDに対応するノイズレベルを有する模擬画像がほぼ即時的に表示される。画面内の左上領域に表示されたスキャノグラムのボディマーク上で頭部、胸部、腹部、下肢部を選択することにより、その選択した部位の模擬画像にがほぼ即時的に切り替わる。画像ノイズシミュレーション装置の用途としては、画像ノイズシミュレーション機能を装備していないX線コンピュータ断層撮影装置のコンソールに近接して配置することで、それを装備した最新鋭機と同等に、画像ノイズシミュレーションの支援を受けてスキャン条件を最適値に近似させることができる。また、画像ノイズシミュレーション装置を、経験の浅い意思や放射線技師の教習用機器として活用することも可能である。その他、X線コンピュータ断層撮影装置と物理的に分離されていることから、画像ノイズシミュレーション装置を様々なシーンで活用することが可能である。
【0034】
なお、上述の説明では、スキャン条件や撮影部位を入力すると、それに応じた画像SDが計算され、計算された画像SDに対応する模擬画像が生成され表示されるものであった。しかし、撮影部位とともに、医師や技師等が所望する画像SDの値を直接的に入力すると、上述したと同様に、サンプル画像データの画像SD基準値と入力された画像SDの所望値とに基づいて、入力された撮影部位に対応するサンプル画像データから、入力された画像SDに対応する模擬画像が生成され表示されるようにしてもよい。さらに、複数の撮影部位及び画像SDに対して、スキャン条件に関する複数の推奨値を関連付けてデータ記憶装置35に記憶させておき、入力された撮影部位及び入力された画像SDに対応するスキャン条件の推奨値を、模擬画像とともに表示するようにしてもよい。
【0035】
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、スキャン条件をより好適に設定することができるX線コンピュータ断層撮影装置の分野に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0037】
1…架台、2…寝台、3…計算機ユニット、10…X線管、12…回転フレーム、21…高電圧発生器、22…スリット、23…X線検出器、24…データ収集装置(DAS)、25…架台駆動装置、32…システムコントローラ、33…スキャンコントローラ、34…前処理ユニット、35…データ記憶装置、36…再構成ユニット、37…表示プロセッサ、38…ディスプレイ、39…入力器、40…スキャンプラン設定支援システム、41…画像SD計算部、42…サンプル画像生成部、43…画像SDシュミレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の条件項目を含むスキャン条件に従って、被検体の撮影対象部位に対するX線によるスキャンと前記スキャンにより収集された投影データに基づく画像データの再構成とを実行するX線コンピュータ断層撮影装置において、
画像ノイズの指標に関する所望値を入力する手段と、
画像ノイズの指標に関する基準値を有するサンプル画像に関するデータを記憶する記憶手段と、
前記画像ノイズの指標に関する所望値に対して、スキャン条件の推奨値を関連付ける手段と、
前記入力された画像ノイズの指標に関する所望値と、前記画像ノイズの指標に関する基準値とに基づいて、前記サンプル画像に関するデータから前記入力された画像ノイズの指標の所望値に対応する模擬画像データを生成する模擬画像データ生成手段と、
前記生成された模擬画像データ、及び前記関連付けられたスキャン条件の推奨値を表示する手段とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
複数の条件項目を含むスキャン条件に従って、被検体の撮影対象部位に対するX線によるスキャンと前記スキャンにより収集された投影データに基づく画像データの再構成とを実行するX線コンピュータ断層撮影装置において、
画像ノイズの指標に関する基準値を有するサンプル画像データを記憶する記憶手段と、
画像ノイズの指標に関する所望値と、前記画像ノイズの指標に関する基準値とに基づいて、前記サンプル画像データから前記画像ノイズの指標の所望値に対応する模擬画像データを生成する模擬画像データ生成手段と、
前記画像ノイズの指標に関する所望値に対して、スキャン条件の推奨値を関連付ける手段と、
前記生成された模擬画像データ、及び前記関連付けられたスキャン条件の推奨値を表示する手段とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記スキャン条件は、画像スライス厚、管電圧、管電流、再構成関数及びビームピッチを含むことを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−22869(P2010−22869A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253435(P2009−253435)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【分割の表示】特願2003−131613(P2003−131613)の分割
【原出願日】平成15年5月9日(2003.5.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】