説明

X線コンピュータ断層撮影装置

【課題】心電同期スキャンに関するスキャン効率の向上。
【解決手段】入力部32は、特定の心拍位相に由来するトリガー信号を心電計から繰り返し入力する。RR期間判定部40は、繰り返し入力されたトリガー信号のうちの最新のトリガー信号の入力時点と1回前に入力されたトリガー信号の入力時点との間の期間が、予め設定された第1の閾値以上であるか否かを最新のトリガー信号の入力毎に判定する。スキャン制御部44は、期間が第1の閾値以上であると判定された場合、X線の発生を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置におけるスキャン方式の一つに、心電計からの信号に同期して心臓をスキャンする方式(すなわち、心電同期スキャン)がある。心電同期スキャンにおいて、最適な時間分解能を得るため、予め設定された拍動数(いわゆるビート数)分の期間だけスキャンが行われる。ビート数は、スキャン前に計測された被検体の心拍数(単位時間あたりの拍動数)等に応じて決定される。スキャン前よりも心拍数が低下し、1回の拍動(ビート:beat)で再構成可能な投影データが収集される場合がある。しかし、スキャン時間が経過しなければスキャンが終了しない。従って、再構成に利用されない不要なX線曝射がされたことになる。また、予定スキャン時間を短く設定すると、スキャン時に設定時よりも心拍数が増した場合、再構成に必要十分な投影データが収集される前にスキャンが終了してしまうことになり、スキャン時間を長めに設定せざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009―254893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、目的は、心電同期スキャンに関するスキャン効率を向上することが可能なX線コンピュータ断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、X線を発生するX線管と、前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線管と前記X線検出器とを回転可能に支持する支持機構と、前記被検体の心臓の心拍周期のうちの特定の心拍位相に由来するトリガー信号を心電計から繰り返し入力する入力部と、前記繰り返し入力されたトリガー信号のうちの最新のトリガー信号の入力時点と前記最新のトリガー信号の1回前に入力されたトリガー信号の入力時点との間の期間が、予め設定された第1の閾値以上であるか否かを前記最新のトリガー信号の入力毎に判定するRR期間判定部と、前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記X線管からのX線の発生を終了する制御部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図2】標準的な心電同期スキャンのシーケンスを示す図。
【図3】図1のシステム制御部により行われる心電同期スキャンの典型的な流れを示す図。
【図4】図3の心電同期スキャンを模式的に説明するための図。
【図5】図3の心電同期スキャンを模式的に説明するための他の図。
【図6】第2実施形態に係るシステム制御部により行われる心電同期スキャンの典型的な流れを示す図。
【図7】第3実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図8】第3実施形態に係る、各X線曝射モードでの曝射期間と再構成利用範囲と再構成位相との時間関係を示す図。
【図9】図7の有効ビート判定部により判定される有効ビート条件を示す図。
【図10】図7のシステム制御部により行われる心電同期スキャンの典型的な流れを示す図。
【図11】図8の管電流変調曝射モード時におけるステップSB6の典型的な流れを示す図。
【図12】第4実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図13】図12のシステム制御部の制御のもとに行われる心電同期スキャンの典型的な流れを示す図。
【図14】第4実施形態に係る心電同期スキャンを模式的に示す図。
【図15】図12の再構成部により利用される、投影データのステータス情報を説明するための図。
【図16】図12のスキャン条件設定部により利用される、有効ビート数の目標数とスキャン条件とを入力とし閾値を出力とするテーブルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と呼ぶことにする。)を説明する。
【0008】
X線CT装置には、X線管とX線検出器とが1体となって被検体の周囲を回転するROTATE/ROTATEタイプや、リング状に多数の検出素子が配列され、X線管のみが被検体の周囲を回転するSTATIONARY/ROTATEタイプ等様々なタイプがあるが、いずれのタイプにも本実施形態は適用可能である。ここでは、ROTATE/ROTATEタイプとして説明する。
【0009】
また、本実施形態に係るX線CT装置によるスキャン方式は、心電同期スキャンを対象とする。従って本実施形態に係るスキャン対象は、被検体の心臓である。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るX線CT装置の構成を示す図である。図1に示すようにX線CT装置は、スキャン機構10と画像処理装置30とを装備する。
【0011】
スキャン機構10は、円環又は円板状の回転フレーム12を搭載する。回転フレーム12は、X線管14とX線検出器16とを、回転フレーム12の中心軸Z回りに回転可能に支持している。回転フレーム12は、回転駆動部18に接続されている。回転駆動部18は、画像処理装置30内のスキャン制御部44による制御に従って回転フレーム12を回転し、X線管14とX線検出器16とをZ軸回りに回転する。
【0012】
回転フレーム14の開口の内部には、FOV(field of view)が設定される。回転フレーム14の開口には、被検体Pが載置された天板20が挿入される。典型的には、被検体Pの体軸がZ軸に一致するように、被検体Pは、天板20に載置される。
【0013】
X線管14は、高電圧発生部22から高電圧の印加と電流の供給とを受けてX線を発生する。高電圧発生部22は、スキャン制御部44による制御に従ってX線管14に高電圧を印加する。より詳細には、X線管14は、陽極と陰極とを搭載している。陽極と陰極との間には、高電圧発生部22からの管電圧が印加される。陰極は、高電圧発生部22からのフィラメント電流の供給を受けて加熱し、熱電子を放出する。放出された熱電子は、管電圧により陽極に衝突する。陽極への熱電子の衝突によりX線が発生する。熱電子が陽極に衝突することによりX線管14に管電流が流れる。発生されるX線の強度は、管電流に比例する。管電流は、フィラメント電流を調整することにより制御される。なお、X線管14は、陰極と陽極との間にグリッドを設けるタイプのものであってもよい。この場合、高電圧発生部22からグリッドへ印加する電圧により管電流が制御される。これらのフィラメント電流を調整する制御手段やグリッドの電圧を制御する制御手段などの管電流を調整する構成要素は、管電流制御部と呼ばれる。
【0014】
X線検出器16は、X線管14から発生され被検体Pを透過したX線を検出し、検出されたX線の強度に応じた電気信号を生成する。X線検出器16には、データ収集回路(DAS:data acquisition system)24が接続されている。
【0015】
データ収集回路24は、スキャン制御部44による制御に従ってX線検出器16から電気信号を読み出す。データ収集回路24は、読み出された電気信号を増幅し、増幅された電気信号をデジタル変換することによって、デジタル信号である投影データ(生データ)を生成する。生成された投影データは、画像処理装置30に供給される。
【0016】
画像処理装置30には、無線又は有線等を介して心電計28が接続されている。心電計28は、被検体Pに装着される。心電計28は、被検体Pの心臓の拍動に伴う活動電位を記録し、活動電位の時間変化を示す心電波形を生成する。この際、心電計28は、心電波形をモニタリングし、心拍周期のうちの特定の位相に由来するトリガー信号を繰り返し発生する。例えば、特定の位相は、R波の位相に規定される。R波の位相に由来するトリガー信号をRトリガーと呼ぶことにする。発生されたRトリガーは、心電計28により画像処理装置30に供給される。なお、本実施形態において特定の位相は、R波の位相に限定されず如何なる位相であってもよい。
【0017】
図1に示すように、画像処理装置30は、入力部32、前処理部34、スキャン条件設定部36、RR期間算出部38、RR期間判定部40、時間判定部42、スキャン制御部44、再構成部46、表示部48、操作部50、記憶部52、及びシステム制御部54を有する。
【0018】
入力部32は、心電計28からRトリガーを繰り返し入力する。この際、入力部32は、Rトリガーの入力時点を記録する。
【0019】
前処理部34は、データ収集回路24から供給された投影データに対数変換や感度補正等の前処理を施す。前処理された投影データは、記憶部52に記憶される。
【0020】
スキャン条件設定部36は、心電同期スキャンのスキャン条件を設定する。スキャン条件としては、例えば、スキャンの終了の判断に関わる条件である。このようなスキャン条件としては、例えば、予定スキャン時間が挙げられる。予定スキャン時間は、スキャン期間の上限である。予定スキャン時間は、例えば、被検体Pへの過剰な被曝を防止するために設定される。例えば、予定スキャン時間の下限は、再構成対象の位相における画像の再構成に必要十分な投影データを確実に収集可能な時間に設定される。スキャン条件設定部36は、心電同期スキャン前において心電計28により計測された被検体Pの心拍数(単位時間あたりの拍動数(ビート数))に基づいて予定スキャン時間を算出する。より具体的には、予定スキャン時間は、ビート数単位で規定される。予定スキャン時間は、ある心拍数でのビート数により規定される。この心拍数は、例えば、心電同期スキャン前に心電計28により計測された被検体Pの心拍数に基づく統計値に設定される。統計値は、例えば、最大値や平均値、中間値に設定される。以下、予定スキャン時間を規定するためのビート数を予定ビート数と呼ぶことにする。また、スキャン開始から終了までの実際のビート数を撮像ビート数と呼ぶことにする。
【0021】
RR期間算出部38は、入力部32に繰り返し入力されるRトリガーのうちの最新のRトリガーの入力時点と、一回前に入力部32に入力されたRトリガーの入力時点との間の期間を、最新のRトリガーの入力毎に算出する。以下、時間的に隣り合う2つのRトリガーの入力時点間をRR期間と呼ぶことにする。
【0022】
RR期間判定部40は、最新のRR期間と閾値Tとを比較し、最新のRR期間が閾値T以上であるか否かを判定する。閾値Tは、少なくとも1セットの画像データを再構成するために必要な投影データを収集可能な時間に設定されてもよい。このような閾値Tとしては、例えば、心拍数65bpmでの1ビート期間に設定される。1ビート期間は、1回の拍動に要する時間間隔であり、例えばRR期間である。
【0023】
時間判定部42は、心電同期スキャンの開始時点からの経過時間と予定スキャン時間とを比較し、スキャン経過時間が予定スキャン時間を超えたか否かを判定する。以下、心電同期スキャンの開始時点からの経過時間をスキャン経過時間と呼ぶことにする。時間判定部42は、心電同期スキャンの開始時点からスキャン経過時間をリアルタイムに計測している。例えば、時間判定部42は、RR期間判定部40により最新のRR期間が閾値T以上でないと判定された場合、スキャン経過時間が予定スキャン時間を超えたか否かを判定する。
【0024】
スキャン制御部44は、スキャンのために回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。具体的には、スキャン制御部44は、RR期間判定部40により最新のRR期間が閾値T以上であると判定された場合、または、時間判定部42によりスキャン経過時間が予定スキャン時間以上であると判定された場合、スキャンが終了するように回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。また、スキャン制御部44は、時間判定部42によりスキャン経過時間が予定スキャン時間以上でないと判定された場合、スキャンが継続するように回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。
【0025】
再構成部46は、収集された投影データに基づいて被検体Pに関する画像データを再構成する。画像データは、記憶部52に記憶される。
【0026】
表示部48は、画像データに対応する表示画像を表示機器に表示する。また、表示部48は、心電同期スキャンのスキャン計画のための設定画面を表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0027】
操作部50は、入力機器を介して操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、スイッチ等が利用可能である。
【0028】
記憶部52は、前処理された投影データや画像データを記憶する。また、記憶部52は、本実施形態に係るX線CT装置の制御プログラムを記憶している。この制御プログラムは、心電同期スキャンを行うためのX線CT装置の制御機能をシステム制御部54に実行させるためのものである。
【0029】
システム制御部54は、本実施形態に係るX線CT装置の中枢として機能する。システム制御部54は、記憶部52に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って各部を制御する。
【0030】
次に第1実施形態に係るX線CT装置の詳細について説明する。
【0031】
まず、心電同期スキャンに係る画像再構成法について説明する。心電同期スキャンは、動きの速い心臓を対象としている。従って、画像データの時間分解能が重要である。心電同期スキャンにおいて利用されている再構成法として、主にハーフ再構成法が知られている。
【0032】
ハーフ再構成法は、回転フレーム12が180°+α(ファン角)のビュー範囲を回転する間に収集された投影データセットに基づいて1セットの画像データを再構成する方法である。ハーフ再構成は、1心拍のうちの比較的心臓の動きが遅い期間(例えば、拡張中期。以下、比較的心臓の動きが遅い期間を安定期間と呼ぶことにする。)に180°+αのビュー範囲分の投影データが収集可能な場合に好適である。ハーフ再構成法においては、回転フレーム12が180°+αのビュー範囲を回転するのに要する時間が、再構成される画像データの時間分解能に規定される。
【0033】
ハーフ再構成法よりも時間分解能を向上させることを目的とした方法にセグメント再構成法がある。セグメント再構成法では、180°+αのビュー範囲を複数のセグメントに区分する。次に、連続する又は離間する複数の心拍に亘って、複数のセグメントにそれぞれ対応する複数の投影データセットが収集される。そして、複数の投影データセットに基づいて1セットの画像データが再構成される。このように、セグメント再構成法は、1心拍のうちの安定期間に180°+αのビュー範囲分の投影データを収集可能でない場合に好適である。セグメント再構成法においては、最短では、回転フレーム12が(180°+α)/セグメント数のビュー範囲を回転するのに要する時間が時間分解能に規定される。
【0034】
なお、本実施形態に係る再構成法は、360°のビュー範囲の投影データを収集するフル再構成法にも適用可能である。この360°のビュー範囲の投影データを収集する場合にも、ハーフ再構成法と同様に、セグメント再構成法が適用可能である。
【0035】
次に図2を参照しながら、本実施形態に係る心電同期スキャンの基本的なシーケンスについて説明する。図2は、心電同期スキャンのスキャンシーケンスを示す図である。なお、図2においては、予定ビート数が2に設定されているとする。すなわち、操作者は、被検体の心拍数が比較的速く、1回のビートでは再構成に必要十分な投影データを収集できないと想定している。また、X線は連続的に発生されるものとする。
【0036】
まず、入力部32は、X線発生開始前から心電計28からRトリガーを繰り返し入力している。そして所定のRトリガー(第1のRトリガー)の入力時点からの経過時間が規定の曝射待ち期間を超えることを契機としてスキャン制御部44は、X線の発生を開始させるために高電圧発生部22を制御する。高電圧発生部22は、スキャン制御部44による制御のもとX線管14に管電圧を印加し、フィラメント電流を供給する。管電圧の印加とフィラメント電流の供給とを受けてX線管14は、X線を発生する。曝射待ち期間は、第1のRトリガーの入力時点から実際にX線管14からX線が発生されるまでの時間に規定される。後述するように、スキャンは、次のRトリガー(第2のRトリガー)の入力時点から開始される。従って、曝射待ち期間は、第2のRトリガーの入力時点までにはX線管14からX線が発生されるように設定される。実際には、X線が発生開始時からエネルギーが安定しているわけではないので、曝射待ち期間は、例えば、RR期間よりも短い期間に設定される。
【0037】
次のRトリガー(第2のRトリガー)の入力時点にスキャン制御部44は、スキャンを開始する。スキャン中においてスキャン制御部44は、回転駆動部18を制御して回転フレーム12を繰り返し回転させ、データ収集回路24を制御して投影データ(生データ)を繰り返し収集する。そしてスキャン制御部44は、スキャン経過時間が予定スキャン時間を超えることを契機としてスキャンを終了する。例えば、スキャン制御部44は、X線の発生を終了するために高電圧発生部22を制御する。高電圧発生部22は、スキャン制御部44による制御のもとX線管14への管電圧の印加とフィラメント電流の供給とを停止する。これによりX線管14は、X線の発生を終了する。なお、X線発生前から回転フレーム14の回転やデータ収集回路24による投影データの収集が行われても良い。
【0038】
スキャン中、図2に示すように、被検体Pの心拍数が、1回のビートのみで再構成に必要十分な投影データを収集可能なまでに低下する場合がある。図2でいえば、第2のRトリガーの入力時点と第3のRトリガーの入力時点との間のRR期間において、十分な投影データが収集される場合がある。この場合、スキャン開始後に初めて入力されたRトリガー(第3のRトリガー)の入力時点から予定スキャン時間の終了時点までにされたX線曝射は、画像再構成に寄与しないことになる。
【0039】
第1実施形態に係るX線CT装置は、再構成に必要十分な収集データが収集されたと判断した場合、予定スキャン時間が満了する前にスキャンを終了する。
【0040】
図3は、第1実施形態に係るシステム制御部54の制御のもとに行われる心電同期スキャンの典型的な流れを示す図である。
【0041】
なお第1実施形態に係る心電同期スキャンは、如何なるX線曝射モードにも適用可能である。例えば、X線曝射モードは、連続曝射モード、管電流変調曝射モード、ON/OFF変調曝射(間欠曝射)モードの3つが挙げられる。連続曝射モードにおいて高電圧発生部22は、X線管14を流れる管電流が一定になるようにX線管14にフィラメント電流を供給し、管電圧を印可する。すなわち、連続曝射モードにおいては、一定のエネルギーのX線が連続的に発生される。管電流変調曝射モードにおいて高電圧発生部22は、管電流が第1の管電流値と第2の管電流値とに交互に切り替わるようにX線管14にフィラメント電流を供給し、管電圧を印可する。第1の管電流値は、十分な画質が得られる値に設定される。第2の管電流値は、第1の管電流値よりも低い値に設定される。すなわち、管電流変調曝射モードにおいては、標準的なエネルギーのX線と低エネルギーのX線とが交互に発生される。ON/OFF変調曝射モードにおいて高電圧発生部22は、X線の発生と停止とが交互に切り替わるようにX線管14にフィラメント電流を供給し、管電圧を印可する。
【0042】
図3に示すように、スキャンの開始前において、システム制御部54は、スキャンを開始するためのRトリガー(例えば、図2の第2のRトリガー)の入力部32への入力を待機している(ステップSA1)。なお、ステップSA1の前段階において、図2と同様に、このRトリガーの入力前においてX線発生のトリガーとなるRトリガー(図2の第1のRトリガー)が入力部32に入力されているものとする。
【0043】
ステップSA1においてRトリガーが入力されると(ステップSA1:YES)、システム制御部54は、スキャンを開始するためにスキャン制御部44を制御する(ステップSA2)。ステップSA1においてスキャン制御部44は、図2に示すように、このRトリガーの入力部32への入力に同期してスキャンを開始する。ここで、スキャンとは、画像データ再構成のための投影データを収集するためにX線の発生、回転フレーム12の回転、及び投影データの収集を行うことである。具体的には、スキャン制御部44は、Rトリガーの入力に基づいて高電圧発生部22を制御し、X線管14からX線を発生させる。また、スキャン制御部44は、Rトリガーの入力に基づいて回転駆動部18を制御し、回転フレーム12を回転させる。また、スキャン制御部44は、第2のRトリガーの入力に基づいてデータ収集回路24を制御し、投影データ(生データ)を収集する。収集された投影データは、記憶部52に記憶される。入力部32は、ステップSA1において入力されたRトリガーの入力時点をスキャン開始時点として記録する。また、時間判定部42は、後述のステップSA6のために、スキャン開始時点からのスキャン経過時間を計測する。
【0044】
ステップSA2が行われるとシステム制御部54は、入力部32を介して心電計からRトリガーが入力されることを待機している(ステップSA3)。
【0045】
ステップSA3においてRトリガーが入力されるとシステム制御部54は、RR期間算出部38に算出処理を行わせる(ステップSA4)。ステップSA4においてRR期間算出部38は、最新のRトリガーの入力時点と1回前のRトリガーの入力時点とに基づいて最新のRR期間を算出する。初回のステップSA4において、最新のRトリガーは、ステップSA3において入力されたRトリガーであり、1回前のRトリガーは、ステップSA1において入力されたRトリガーである。2回目以降のステップSA4においては、最新のRトリガーは、最新のステップSA3において入力されたRトリガーであり、1回前のRトリガーは、最新のステップSA3の1回前のステップSA3において入力されたRトリガーである。具体的には、RR期間算出部38は、最新のRトリガーの入力時点と1回前のRトリガーの入力時点との差分に基づいて最新のRR期間を算出する。
【0046】
ステップSA4が行われるとシステム制御部54は、RR期間判定部40に判定処理を行わせる(ステップSA5)。ステップSA5においてRR期間判定部40は、最新のRR期間と閾値Tとを比較し、最新のRR期間が閾値T以上であるか否かを判定する。
【0047】
ステップSA5において最新のRR期間が閾値T以上でないと判定された場合(ステップSA5:NO)、システム制御部54は、時間判定部42に判定処理を行わせる(ステップSA6)。ステップSA6において時間判定部42は、スキャン経過時間と予定スキャン時間とを比較し、スキャン経過時間が予定スキャン時間を超えたか否かを判定する。
【0048】
ステップSA6においてスキャン経過時間が予定スキャン時間を超えていないと判定された場合(ステップSA6:NO)、システム制御部54は、スキャンを継続するために、ステップSA3に戻る。なお、ステップSA6における判定処理は、次のRトリガーが入力されるまで繰り返し行われる。
【0049】
ステップSA5において最新のRR期間が閾値T以上であると判定された場合(ステップSA5:YES)、または、ステップSA6においてスキャン経過時間が予定スキャン時間を超えていると判定された場合(ステップSA6:YES)、システム制御部54は、スキャン制御部44に終了処理を行わせる(ステップSA7)。ステップSA7においてスキャン制御部44は、スキャンを終了するために、回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。スキャン制御部44による制御に従って高電圧発生部22は、X線管14への高電圧の印加とフィラメント電流の供給とを停止する。これによりX線管14からのX線の発生が終了する。また、回転駆動部18は、スキャン制御部44による制御に従って、回転フレーム12の回転を終了する。また、データ収集回路24は、スキャン制御部44による制御に従って投影データの収集を終了する。なお、スキャン経過時間が予定スキャン時間を超えた直後に、スキャンの終了処理が行われなくても良い。例えば、経過時間が予定スキャン時間を超えた時点から所定のマージン時間経過後に、スキャンの終了処理が行われても良い。マージン時間を設けることにより、再構成に必要な投影データを収集できないという事態の発生を防止することができる。
【0050】
ステップSA7が行われると第1実施形態に係る心電同期スキャンが終了する。
【0051】
上述のように、ステップSA3において、最新のRR期間が閾値T以上であるか否かが判定されている。閾値Tは、少なくとも1セットの画像データを再構成するために必要な投影データを収集可能な時間に設定される。従って、最新のRR期間が閾値T以上であることは、最新の1ビート期間において、画像再構成に必要十分な投影データが収集されていると推定される。従って、ステップSA5において最新のRR期間が閾値T以上であると判定された場合、スキャンが終了される。例えば、図4に示すように、1回目のビート期間(1回目のRトリガーの入力時点と2回目のRトリガーの入力時点との間の期間)に関するRR期間が閾値T以上である場合、2回目のRトリガーの入力とともにスキャンが終了される。この場合、スキャン経過時間が予定スキャン時間よりも短縮される。換言すれば、スキャン期間中の実際のRR期間に応じて撮影ビート数が減少される。従って、画像再構成に寄与しないX線被曝を避けることができ、被検体Pへの被曝を低減することが出来る。また、1回のスキャン時間を短縮することができるので検査スループットが向上する。
【0052】
一方、最新のRR期間が閾値T以上でない場合、最新の1ビート期間において、画像再構成に必要十分な投影データが収集されていないと推定される。従って、ステップSA5において最新のRR期間が閾値T以上でないと判定された場合、スキャンが終了されるべきではない。この場合、ステップSA6において、スキャン経過時間が予定スキャン時間を超えるか否かが判定される。上述のように予定スキャン時間は、閾値Tよりも長く、少なくとも1セットの画像データを再構成に必要十分な投影データを確実に収集可能な時間に設定されている。ステップSA6においてスキャン経過時間が予定スキャン時間を超えないと判定された場合、まだ、必要十分な投影データが収集されていないので、スキャンが継続されるべきである。従って、この場合、スキャンを継続するためにステップSA3に戻り、再び、最新のRトリガーの入力が待機される。一方、ステップSA6においてスキャン経過時間が予定スキャン時間を超えたと判定された場合、最新のRR期間が閾値T以上でなくとも、必要十分な投影データが収集されていると推定される。この場合、スキャンが終了される。例えば、図5に示すように、予定ビート数が2の場合を考える。1回目のビート期間に関するRR期間と2回目のビート期間に関するRR期間とが閾値T以上である場合、スキャン経過時間が予定スキャン時間に到達した時点でスキャンが終了される。この場合、スキャン経過時間は、予定スキャン時間に略一致する。すなわち、予定通りスキャンが行われたといえる。
【0053】
このようにして、ステップSA5において最新のRR期間が閾値T以上であると判定されるまで、または、ステップSA6においてスキャン経過時間が予定スキャン時間を超えると判定されるまで、ステップSA3からSA6が繰り返される。画像再構成に必要な投影データが収集されたことが最新のRR期間または経過時間により推定されるまで、ステップSA3からSA6が繰り返される。そしてステップSA5のRR期間条件、または、ステップSA6のスキャン時間条件が満足された場合、ステップSA7においてスキャンが終了される。
【0054】
スキャンが終了されると、再構成部46は、スキャン期間に収集された投影データに基づいて画像データを再構成する。1ビート期間分のみスキャンが行われた場合、再構成部46は、ハーフ再構成を実行し、複数ビート期間分スキャンが行われた場合、セグメント再構成を行う。具体的には、ハーフ再構成の場合、再構成部46は、1ビート期間に収集された投影データにハーフ再構成処理を実行し、被検体Pに関する画像データを発生する。セグメント再構成の場合、再構成部46は、各ビート期間において収集された投影データにセグメント再構成処理を実行し、被検体Pに関する画像データを発生する。発生された画像データに対応する表示画像は、表示部48に表示される。
【0055】
上記説明により、第1実施形態に係る心電同期スキャンにより、ALARP(as low as reasonably practicable)の被曝、すなわち、できるだけ少ない被曝を実現することができる。また、第1実施形態に係る心電同期スキャンによれば、スキャン時にRR期間が標準の心拍数に基づくRR期間よりも長くなった場合(心拍数が標準の心拍数よりも低くなった場合)、実際の経過時間が予定スキャン時間を経過していなくても、最新のRトリガーの入力時点においてスキャンが終了される。すなわち、スキャン計画時において操作者は、被曝量を気にせずに予定スキャン時間を長めに設定することができる。従ってスキャン計画を簡便に行うことができる。また、第1実施形態に係る心電同期スキャンにおいてセグメント再構成法ではなくハーフ再構成法で画像データを再構成したい場合、予定スキャン時間を長めに設定することで、最新のRR期間が閾値Tを超えるまでスキャンを継続することができる。
【0056】
かくして第1実施形態に係るX線CT装置によれば、心電同期スキャンに関するスキャン効率を向上することが可能となる。
【0057】
(第2実施形態)
第1実施形態においてスキャン制御部44は、RR期間が閾値以上でない場合であっても、時間判定部42によりスキャン経過時間が予定スキャン時間以上であればスキャンを終了させるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。スキャン制御部44は、予定スキャン時間とは異なる他のスキャン条件に従ってスキャンを終了させるタイミングを決定しても良い。他のスキャン条件としては、例えば、X線の予定曝射時間が挙げられる。第2実施形態に係るスキャン制御部44は、RR期間が閾値以上でなく、且つ、1検査におけるX線の合計曝射時間が予定曝射時間以上であればスキャンを終了させる。以下、第2実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置について説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0058】
第2実施形態に係るスキャン条件設定部36は、例えば、ユーザによる操作部50を介した指示に従って、X線の予定曝射時間を設定する。予定曝射時間は、被検体PへのX線の合計曝射時間の上限に規定される。予定曝射時間は、例えば、被検体への過剰な被曝を防止するために設定される。予定曝射時間の下限は、再構成対象の位相における画像の再構成に必要十分な投影データを確実に収集可能な時間に設定される。
【0059】
第2実施形態に係る時間判定部42は、X線管14からの実際のX線の合計曝射時間と予定曝射時間とを比較し、X線曝射時間が予定曝射時間を超えたか否かを判定する。時間判定部42は、X線曝射の開始から合計曝射時間を計測している。例えば、時間判定部42は、RR期間判定部40により最新のRR期間が閾値T以上でないと判定された場合、合計曝射時間が予定曝射時間を超えたか否かを判定する。
【0060】
第2実施形態に係るスキャン制御部44は、RR期間判定部40により最新のRR期間が閾値T以上であると判定された場合、または、時間判定部42により合計曝射時間が予定曝射時間以上であると判定された場合、スキャンが終了するように回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。また、スキャン制御部44は、時間判定部42により合計曝射時間が予定曝射時間以上でないと判定された場合、スキャンが継続するように回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。
【0061】
次に第2実施形態に係るシステム制御部54の制御のもとに行われる心電同期スキャンについて説明する。図6は、第2実施形態に係るシステム制御部54の制御のもとに行われる心電同期スキャンの典型的な流れを示す図である。なお、図3の心電同期スキャンにおけるステップと同様の処理内容のステップは、同一符号を付し、説明を省略する。
【0062】
図6に示すように、ステップSA5において最新のRR期間が閾値T以上でないと判定された場合(ステップSA5:NO)、システム制御部54は、時間判定部42に判定処理を行わせる(ステップSD6)。ステップSD6において時間判定部42は、合計曝射時間と予定曝射時間とを比較し、合計曝射時間が予定曝射時間を超えたか否かを判定する。
【0063】
ステップSD6において合計曝射時間が予定曝射時間を超えていないと判定された場合(ステップSD6:NO)、システム制御部54は、スキャンを継続するために、ステップSA3に戻る。なお、ステップSD6における判定処理は、次のRトリガーが入力されるまで繰り返し行われる。
【0064】
ステップSA5において最新のRR期間が閾値T以上であると判定された場合(ステップSA5:YES)、または、ステップSD6において合計曝射時間が予定曝射時間を超えていると判定された場合(ステップSD6:YES)、システム制御部54は、スキャン制御部44に終了処理を行わせる(ステップSA7)。なお、合計曝射時間が予定曝射時間を超えた直後に、スキャンの終了処理が行われなくても良い。例えば、合計曝射時間が予定曝射時間を超えた時点から所定のマージン時間経過後に、スキャンの終了処理が行われても良い。マージン時間を設けることにより、再構成に必要な投影データを収集できないという事態の発生を防止することができる。
【0065】
ステップSA7が行われると第2実施形態に係る心電同期スキャンが終了する。
【0066】
上述のように第2実施形態に係るX線CT装置は、RR期間が閾値以上でない場合であっても、合計曝射時間が上限値を上回ることを契機としてスキャンを強制的に終了させることができる。従って、被検体の過剰な被曝を防止することができる。
【0067】
かくして第2実施形態に係るX線CT装置によれば、心電同期スキャンに関するスキャン効率を向上することが可能となる。
【0068】
なお、上述のように時間判定部42の判定対象は、第1実施形態の場合がスキャン経過時間であり、第2実施形態の場合が曝射合計時間であるとした。時間判定部42の判定対象は、ユーザにより操作部50を介して、スキャン経過時間または曝射合計時間に任意に選択可能である。
【0069】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態においては、最新のRR期間が閾値T以上である場合、スキャンが終了される。第3実施形態においては、最新のRR期間が閾値T以上である場合、再構成に実質的に利用可能な投影データが収集されたか否かが判定される。そして、再構成に実質的に利用可能な投影データが収集されている場合にスキャンが終了される。以下、第3実施形態に係るX線CT装置について説明する。なお以下の説明において、第1及び2実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0070】
図7は、第3実施形態に係るX線CT装置の構成を示す図である。図7に示すように、第3実施形態に係るX線CT装置は、さらに、有効ビート判定部56を有する。
【0071】
有効ビート判定部56は、RR期間判定部40により最新のRR期間が閾値T以上であると判定された場合、有効ビート条件を満足するか否かを判定する。有効ビート条件は、最新の1ビート期間において、再構成に実質的に利用可能な投影データが収集されたか否かに規定される。有効ビート条件を満足する場合、そのビートは、有効ビート判定部56により有効であると認定される。一方、有効ビート条件を満足しない場合、そのビートは、有効ビート判定部56により無効であると認定される。
【0072】
時間判定部42は、有効ビート判定部56により有効ビート条件を満足しないと判定された場合、スキャン経過時間が予定スキャン時間に到達したか否か、または、合計曝射時間が予定曝射時間に到達したか否かを判定する。
【0073】
スキャン制御部44は、有効ビート判定部56により有効ビート条件が満足されると判定された場合、または、時間判定部42によりスキャン経過時間が予定スキャン時間を超えたと判定された場合(あるいは、合計曝射時間が予定曝射時間を超えたと判定された場合)、スキャンを終了するように回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。また、スキャン制御部44は、有効ビート判定部56により有効ビート条件が満足されないと判定され、かつ、時間判定部42によりスキャン経過時間が予定スキャン時間を超えていないと判定された場合(あるいは、合計曝射時間が予定曝射時間を超えていないと判定された場合)、スキャンを継続するように回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。
【0074】
次に第3実施形態に係る心電同期スキャンについて詳細に説明する。
【0075】
心電同期スキャンにおいては、再構成対象の位相(以下、再構成位相)がスキャン条件設定部36により設定される。再構成位相における画像データを再構成するためには、例えば、再構成位相を含む時間範囲(以下、再構成利用範囲)における実質的に利用可能な投影データが収集されるようにスキャンが実行される。例えば、再構成利用範囲は、再構成位相を中心に±5%の時間範囲に設定される。再構成利用範囲は、典型的には、心臓の動きが比較的小さい期間に設定される。
【0076】
図8は、各X線曝射モードでの曝射期間と再構成利用範囲と再構成位相との時間関係を示す図である。例えば、図8に示すように、再構成位相は75%に設定され、再構成利用範囲は70%から80%に設定されているものとする。
【0077】
連続曝射モードにおいては、X線の発生終了指示がなされるまで、一定の管電流値を有する管電流でX線が曝射される。この管電流値は、再構成に実質的に利用可能な投影データを発生可能なX線のエネルギー値に対応する。すなわち、連続曝射モードにおいては、再構成利用範囲に収集される投影データは、必然的に再構成に実質的に利用可能である。なお再構成に実質的に利用可能な投影データとは、十分な画質を有する画像データを生成可能な投影データである。
【0078】
管電流変調曝射モードにおいては、基本的には、低管電流値を有する管電流でX線が連続的に発生されている。そして、Rトリガーの入力時点t0から待ち期間だけ経過したことを契機として低管電流値から高管電流値に切り換えられるように設定されている。図8の場合、時刻t1において、低管電流値から高管電流値に切り換えられる。低管電流値は、再構成に実質的に利用可能な投影データを発生不可能なX線のエネルギー値に対応する。高管電流値は、再構成に実質的に利用可能な投影データを発生可能なX線のエネルギー値に対応する。画質向上のため、高管電流値でのX線に由来する投影データに基づいて画像データが再構成されると良い。従って高管電流曝射時間は、再構成利用範囲を含むように設定される。切り替え時刻t1から高管電流曝射時間だけ経過したことを契機として高管電流から低管電流に切り換えられる。図8の場合、時刻t2において、高管電流値から低管電流値に切り換えられる。例えば、高管電流曝射時間は、再構成利用範囲分の期間に設定される。例えば、再構成利用範囲が70%から80%までの場合、70%から80%までの10%分の期間に高管電流曝射時間が設定される。
【0079】
ON/OFF変調曝射モードにおいては、基本的には、X線が発生されていない。そして、Rトリガーの入力時点t0から待ち期間だけ経過したことを契機としてX線発生がONに切り換えられるように設定されている。切り換え時刻t1から曝射時間だけ経過したことを契機としてX線発生がOFFに切り換えられる。曝射時間は、例えば、再構成利用範囲分の期間に設定される。例えば、再構成利用範囲が70%から80%までの場合、70%から80%までの10%分を含む期間に曝射時間が設定される。
【0080】
実際には、計画時に利用される標準の心拍数とスキャン時の実際の心拍数とは異なる。実際のRR期間が閾値Tより小さい場合、第1及び2実施形態において説明したように、スキャンが継続される。一方、実際のRR期間が閾値Tより大きい場合、第1及び2実施形態においては、X線の発生が終了されていた。しかしながら、実際のRR期間が閾値Tより大きい場合であっても、管電流変調曝射モードやON/OFF変調曝射モードによっては、再構成位相の画像データの再構成に実質的に利用可能であり必要十分な投影データが収集されていない場合がある。
【0081】
図9は、X線曝射モード毎の有効ビート条件を示す図である。図9に示すように、連続曝射モードにおいては、有効ビート条件は設定されない。すなわち、最新のRR期間が閾値T以上である場合、無条件で有効ビート条件が満足され、X線の発生が終了される。管電流変調曝射モードとON/OFF変調曝射モードとの場合、有効ビート条件が設定される。管電流変調曝射モードにおいて、再構成位相において高管電流でX線が曝射されていない場合、再構成位相の画像データが劣化してしまう。従って、管電流変調曝射モードの有効ビート条件は、再構成位相において高管電流でX線が曝射されたか否かに設定される。ON/OFF変調曝射モードの場合、再構成位相においてX線が曝射されていない場合、再構成位相の画像データが劣化してしまう。従ってON/OFF変調曝射モードの終了条件は、再構成位相においてX線が曝射されたか否かに設定される。
【0082】
図10は、第3実施形態に係るシステム制御部54の制御のもとに行われる心電同期スキャンの典型的な流れを示す図である。なお、図3及び6の心電同期スキャンにおけるステップと同様の処理内容のステップは、同一符号を付し、説明を省略する。
【0083】
ステップSA5において最新のRR期間が閾値T以上であると判定された場合(ステップSA5:YES)、システム制御部54は、有効ビート判定部56に判定処理を行わせる(ステップSB6)。ステップSB6において有効ビート判定部56は、X線曝射モードに応じた有効ビート条件を満足するか否か、換言すれば、再構成位相の画像データの再構成に実質的に利用可能で必要十分な投影データが収集されたか否かを判定する。
【0084】
上述のように、X線曝射モードが連続曝射モードの場合、有効ビート判定部56は、終了条件を満足すると判定する。管電流変調曝射モードの場合、有効ビート判定部56は、予め設定された再構成位相において高管電流でX線曝射が行われたか否かを判定する。ON/OFF変調曝射モードの場合、有効ビート判定部56は、予め設定された再構成位相においてX線曝射が行われたか否かを判定する。以下、管電流変調曝射モード時におけるステップSB6の具体的な処理について説明する。
【0085】
図11は、管電流変調曝射モード時におけるステップSB6の典型的な流れを示す図である。図11に示すように、まず、有効ビート判定部56は、ステップSB6.4の処理を時間[ms]で行うか、位相[%]で行うかを確認する(ステップSB6.1)。例えば、再構成位相が時間で規定されている場合、ステップSB6.4の処理は時間で行われ、再構成位相が位相で規定されている場合、ステップSB6.4の処理は位相で行われる。
【0086】
ステップSB6.1において時間で行うことが確認された場合、有効ビート判定部56は、時間[ms]を単位とする開始位相[ms]と終了位相[ms]とを算出する。開始位相[ms]は、高管電流曝射開始時間Thsと再構成時間Trと含む下記の(1)式により規定され、終了位相[ms]は、高管電流曝射終了時間Theと再構成時間Trとを含む下記の(2)式により規定される。
【0087】
開始位相[ms]=Ths+Tr/2 ・・・(1)
終了位相[ms]=The−Tr/2 ・・・(2)
一方、ステップSB6.1において位相で行うことが確認された場合、有効ビート判定部56は、位相[%]を単位とする開始位相[%]と終了位相[%]とを算出する(ステップSB6.3)。開始位相[%]は、開始位相[ms]は、高管電流曝射開始時間Thsと再構成時間TrとRR期間Trrと含む下記の(3)式により規定され、終了位相[ms]は、高管電流曝射終了時間Theと再構成時間TrとRR期間Trrとを含む下記の(4)式により規定される。
【0088】
開始位相[%]=((Ths+Tr/2)/Trr)×100 ・・・(3)
終了位相[%]=((The−Tr/2)/Trr)×100 ・・・(4)
なお、ステップSB6.2の処理時点が1回前のRトリガーの入力時点より後に行われている場合、(1)及び(3)式の高管電流曝射開始時間Thsは、正の値に設定される。ステップSB6.2の処理時点が1回前のRトリガーの入力時点より前に行われている場合、(1)及び(3)式の高管電流曝射開始時間Thsは、負の値に設定される。ステップSB6.2の処理時点において高管電流曝射が終了していない場合、(2)及び(4)式の高管電流曝射終了時間Theは、最新のRトリガーの入力時点、または、高管電流曝射の終了予定時間に設定される。
【0089】
ステップSB6.2またはSB6.3が行われた場合、有効ビート判定部56は、再構成位相において高管電流でX線曝射が行われたか否かを判定する(ステップSB6.4)。具体的には、有効ビート判定部56は、終了位相が再構成位相以上、かつ、開始位相が再構成位相以下であるか否かを判定する。終了位相が再構成位相以上、かつ、開始位相が再構成位相以下である場合、再構成位相において高管電流でX線曝射が行われたと判定される。終了位相が再構成位相以上、かつ、開始位相が再構成位相以下でない場合、再構成位相において高管電流でX線曝射が行われていないと判定される。
【0090】
ステップSB6.4において、再構成位相において高管電流でX線曝射が行われていないと判定された場合(ステップSB6.4:NO)、図10のステップSB7に進む。この場合、システム制御部54は、時間判定部42に判定処理を行わせる(ステップSB7)。時間判定部42は、ステップSA6またはステップSD6と同様に、スキャン経過時間が予定スキャン時間を超えたか否か、または、合計曝射時間が予定曝射時間を超えたか否かを判定する。
【0091】
ステップSB7においてスキャン経過時間が予定スキャン時間を超えていないと判定された場合、または、合計曝射時間が予定曝射時間を超えていないと判定された場合(ステップSB7:NO)、システム制御部54は、スキャンを継続するために、図10のステップSA3に戻る。なお、ステップSB6における判定処理は、次のRトリガーが入力されるまで繰り返し行われる。
【0092】
図11のステップSB6.4において、再構成位相において高管電流でX線曝射が行われたと判定された場合(ステップSB6.4:YES)、または、図9のステップSB7においてスキャン経過時間が予定スキャン時間を超えていると判定された場合、または、合計曝射時間が予定曝射時間を超えていると判定された場合(ステップSB7:YES)、システム制御部54は、スキャン制御部44に終了処理を行わせる(ステップSB8)。ステップSB8においてスキャン制御部44は、ステップSA7と同様に、スキャンを終了するために回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。
【0093】
ステップSB8が行われると第3実施形態に係る心電同期スキャンが終了する。
【0094】
上述のように、RR期間が閾値T以上の場合、ステップSB6において、ビート毎(RR期間毎)に有効ビート条件を満足するか否かが判定される。有効ビート条件を満足している場合、そのビート(RR期間)は有効ビートであると認定される。この場合、そのビートにおいて、再構成位相の画像データの再構成に実質的に利用可能で必要十分な投影データが収集されたと推定される。従って、スキャンは終了される。一方、有効ビート条件が満足されない場合、そのビート(RR期間)は有効ビートでない、すなわち、無効ビートであると認定される。この場合、そのビートのRR期間が閾値T以上であっても、再構成位相の画像データの再構成に実質的に利用可能で必要十分な投影データが収集されていないと推定される。従って、スキャンは継続される。従って、第3実施形態によれば、第1及び2実施形態に比してより確実に、再構成位相の画像データの再構成に実質的に利用可能で必要十分な投影データを収集することができる。従って、第3実施形態に係るX線CT装置は、第1実施形態に係るX線CT装置に比して、スキャン効率が向上する。
【0095】
かくして第3実施形態に係るX線CT装置によれば、心電同期スキャンに関するスキャン効率を向上することが可能となる。
【0096】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るX線CT装置は、主にセグメント再構成法を対象とする。第4実施形態に係るX線CT装置は、ビート毎に有効ビート条件を満足するビートの数(有効ビート数)を計数する。そして有効ビート数が目標数あるいは上限値に達した場合、スキャンを終了する。以下、第4実施形態に係るX線CT装置について説明する。なお以下の説明において、第1、第2、及び第3実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0097】
図12は、第4実施形態に係るX線CT装置の構成を示す図である。図12に示すように、第4実施形態に係るX線CT装置は、さらに、計数部58と有効ビート数判定部60とを備える。
【0098】
RR期間判定部40は、最新のRR期間と閾値Tnとを比較し、最新のRR期間が閾値Tn以上であるか否かを判定する。閾値Tnは、再構成処理に関するセグメント数n毎に設定されている。閾値Tnと後述の有効ビート数の目標数Btnとは、相互に関連する。なお、閾値Tnは、操作者からの操作部50を介した指示に従って任意に設定可能である。
【0099】
計数部58は、有効ビート条件を満足するビートの数(有効ビート数)をセグメント数n毎に計数する。上述のように、有効ビート条件は、再構成位相の画像データの再構成に実質的に利用可能な必要十分の投影データが収集されたか否かに規定される。
【0100】
有効ビート数判定部60は、有効ビート数が目標数Btnに達したか否かを判定する。目標数Btnは、セグメント再構成法におけるセグメント数nに対応する。なお、ハーフ再構成法又はフル再構成法を意図している場合、目標数は1に設定されると良い。例えば、目標数Btnがnの場合、閾値Tnは、セグメント数nのセグメント再構成法において、各セグメントに必要十分な投影データを収集可能な時間間隔に設定される。なお目標数Btnに応じて閾値Tnが決定されなくてもよい。例えば、各RR期間が満足する閾値Tnに応じて目標数Btnが決定されてもよい。なお、目標数は、予め操作部50を介した操作者からの指示に従ってスキャン条件設定部36により設定されてもよい。有効ビート数が目標数に達していないと判定された場合、有効ビート数判定部60は、有効ビート数が上限値に到達したか否かを判定する。上限値は、セグメント再構成におけるビート数の上限値である。
【0101】
スキャン制御部44は、有効ビート数が目標数に達したと判定された場合、または、有効ビート数が目標値に達していないと判定され、かつ、経過時間が予定スキャン時間を超えたと判定された場合(あるいは、合計曝射時間が予定曝射時間を超えたと判定された場合)、X線管14からのX線の発生を終了するように高電圧発生部22を制御する。また、スキャン制御部44は、有効ビート数が目標数に達していないと判定され、かつ、ビート数が上限値に達していないと判定された場合、X線管14からのX線の発生を継続するように高電圧発生部22を制御する。また、スキャン制御部44は、スキャン経過時間が予定スキャン時間を越えていないと判定された場合(あるいは、合計曝射時間が予定曝射時間を超えていないと判定された場合)、X線管14からのX線の発生を継続するように高電圧発生部22を制御する。
【0102】
以下、第4実施形態に係る心電同期スキャンについて説明する、
図13は、第4実施形態に係るシステム制御部54の制御のもとに行われる心電同期スキャンの典型的な流れを示す図である。なお、図3及び6の心電同期スキャンにおけるステップと同様の処理内容のステップは、同一符号を付し、説明を省略する。
【0103】
ステップSA2においてスキャンが開始されるとシステム制御部54は、計数部58に設定処理を行わせる(ステップSC3)。ステップSC3において計数部58は、ビートカウンタmを初期値(例えば、1)に設定する。ビートカウンタmは、設定ビート数を示す。
【0104】
ステップSC3が行われるとシステム制御部54は、入力部32を介して心電計28からRトリガーが入力されることを待機している(ステップSC4)。
【0105】
ステップSC4においてRトリガーが入力されるとシステム制御部54は、RR期間算出部38に算出処理を行わせる(ステップSC5)。ステップSC5においてRR期間算出部38は、ステップSA4と同様の方法により、最新のRトリガーの入力時点と1回前のRトリガーの入力時点とに基づいて最新のRR期間を算出する。
【0106】
ステップSC5が行われるとシステム制御部54は、RR期間判定部40に判定処理を行わせる(ステップSC6)。ステップSC6においてRR期間判定部40は、最新のRR期間と閾値Tnとを比較し、最新のRR期間が閾値Tn以上であるか否かを閾値Tn毎に判定する。なおn=1〜mである。
【0107】
ステップSC6において最新のRR期間が閾値Tn以上でないと判定された場合(ステップSC6:NO)、システム制御部54は、有効ビート判定部56に判定処理を行わせる(ステップSC7)。ステップSC7において有効ビート判定部56は、ステップSB6と同様の方法により、X線曝射モードに応じた有効ビート条件を満足するか否かを判定する。有効ビート条件を満足すると判定された場合、最新のビート(最新のRR期間)は、有効ビートであると認定され、有効ビート条件を満足しないと判定された場合、最新のビート(最新のRR期間)は、無効ビートであると認定される。
【0108】
ステップSC7において有効ビート条件を満足すると判定された場合(ステップSC7:YES)、システム制御部54は、計数部58に計数処理を行わせる(ステップSC8)。ステップSC8において計数部58は、有効ビート数BNnを1増加させる(BNn=BNn+1)。なお、心電同期スキャンの開始時においては、有効ビート数BNnは0に設定されている。
【0109】
ステップSC8が行われるとシステム制御部54は、有効ビート数判定部60に第1の判定処理を行わせる(ステップSC9)。ステップSC9において有効ビート数判定部60は、有効ビート数BNnが目標数Btnに達したか否かをn毎に判定する。
【0110】
ステップSC9において有効ビート数BNnが目標数Btnに達していないと判定された場合(ステップSC9:NO)、システム制御部54は、有効ビート数判定部60に第2の判定処理を行わせる(ステップSC10)。ステップSC10において有効ビート数判定部60は、ビートカウンタmが上限値maxに達したか否かを判定する。
【0111】
ステップSC10においてビートカウンタmが上限値maxに達していないと判定された場合(ステップSC10:NO)、計数部58に増加処理を行わせる(ステップSC11)。ステップSC11において計数部58は、ビートカウンタmを1増加させる。
【0112】
ステップSC11が行われるとシステム制御部54は、ステップSC4に進む。そしてステップSC9において有効ビート数BNnが目標数Btnに達したと判定されるまで、あるいは、ステップSC10においてビートカウンタmが上限値maxに達したと判定されるまで、ステップSC4からステップSC10が繰り返される。
【0113】
ステップSC10においてビートカウンタmが上限値maxに達したと判定された場合(ステップSC10:YES)、システム制御部54は、時間判定部42に判定処理を行わせる(ステップSC12)。ステップSC12において時間判定部42は、ステップSA6やSD6と同様の方法により、スキャン経過時間が予定スキャン時間を越えたか否か、あるいは、合計曝射時間が予定曝射時間を超えたか否かを判定する。
【0114】
ステップSC12においてスキャン経過時間が予定スキャン時間を越えていないと判定された場合、あるいは、合計曝射時間が予定曝射時間を超えていないと判定された場合(ステップSC12:NO)、システム制御部54は、ステップSC3に進む。そして、ステップSC9において有効ビート数BNnが目標数Btnに達したと判定されるまで、あるいは、ステップSC12においてスキャン経過時間が予定スキャン時間を越えたと判定されるまで(あるいは、合計曝射時間が予定曝射時間を超えたと判定されるまで)、ステップSC4からステップSC12が繰り返される。
【0115】
ステップSC9において有効ビート数BNnが目標数Btnに達したと判定された場合(ステップSC9:YES)、または、ステップSC12において経過時間が予定スキャン時間を越えたと判定された場合(あるいは、合計曝射時間が予定曝射時間を超えたと判定された場合)(ステップSC12:YES)、システム制御部54は、スキャン制御部44に終了処理を行わせる(ステップSC13)。ステップS13においてスキャン制御部44は、ステップSA7やSB8と同様の方法により、スキャンを終了するために回転駆動部18、高電圧発生部22、及びデータ収集回路24を制御する。
【0116】
ステップSC13が行われると第4実施形態に係る心電同期スキャンが終了する。
【0117】
上述のように、ステップSC7において、ビート毎(RR期間毎)に有効ビート条件を満足するか否かがセグメント数n毎に判定される。有効ビート条件を満足している場合、そのビートは有効ビートであると認定され、ステップSC8において有効ビート数BNnが1増加される。一方、有効ビート条件を満足していない場合、そのビートは有効ビートでないと認定される。有効ビート条件を満足する場合、ステップSC9において、有効ビート数BNnが目標数Btnに達したか否かがセグメント数n毎に判定される。有効ビート数BNnが目標数Btnに達した場合、セグメント再構成に必要十分な投影データが収集されたことを意味する。従って、この場合、ステップSC13においてスキャンが終了される。有効ビート数BNnが目標数Btnに達していない場合、セグメント再構成に実質的に利用可能で必要十分な投影データが収集されていないことを意味する。従って、この場合、スキャンが継続される。しかし、有効ビート数BNnが目標数Btnに達していない場合であっても、ビート数が上限値に達し、かつ、経過時間が予定スキャン時間に達した場合(あるいは、合計曝射時間が予定曝射時間に達した場合)、被検体Pへの過剰な被曝を防止するため、スキャンが終了される。
【0118】
心電同期スキャンが終了すると再構成部46は、収集された投影データにセグメント再構成処理を施し、画像データを発生する。再構成に利用される投影データは、有効ビートにおいて収集された投影データである。利用する投影データは、例えば、投影データのステータス情報に基づいて再構成部45により自動的に選択される。
【0119】
以下、図14と図15とを参照しながら、ステータス情報を利用した再構成について具体的に説明する。図14は、第3実施形態に係る心電同期スキャンを模式的に示す図である。図14においては、連続曝射モードであり、予定ビート数が3であるとする。なお、閾値T1≧閾値T2≧閾値T3の関係にある。1ビート目においては、RR期間は、閾値T1より小さく、閾値T2より大きいとする。従って、1ビート目は、ハーフ再構成に関する有効ビート条件を満足せず、セグメント数2に関する有効ビート条件を満足し、セグメント数3に関する有効ビート条件を満足する。この場合、BN1=0、BN2=1、BN3=1となる。1ビート目において、BN=0<1、BN2=1<2、BN3=1<3なので、スキャンは継続される。2ビート目もRR期間は、閾値T1より小さく、閾値T2より大きいとする。従って、2ビート目は、ハーフ再構成に関する有効ビート条件を満足せず、セグメント数2に関する有効ビート条件を満足し、セグメント数3に関する有効ビート条件を満足する。この場合、BN1=0、BN2=2、BN3=2となる。2ビート目において、BN=0<1、BN2=2≧2、BN3=2<3なので、セグメント数2に関する有効ビート条件が満足される。従って、撮像ビート数が予定ビート数3に到達する前に、スキャンが終了される。
【0120】
図15は、投影データのステータス情報の一例を示す図である。ステータス情報は、ビート番号と有効ビートであるか否かの情報とを含む。記憶部52は、収集データをビート番号と有効ビートであるか否かの情報とを関連付けて記憶している。再構成部45は、記憶部52に記憶されている投影データのうちの、有効ビートである旨の情報に関連付けられた投影データを選択する。図14の場合、1ビート目の投影データと2ビート目の投影データとが選択される。また、例えば、2ビート目が無効ビートである場合、1ビート目の投影データと3ビート目の投影データとが選択されるとよい。再構成部45は、選択された投影データを記憶部52から読み出し、読み出された投影データに基づいて画像データを再構成する。このように、再構成に利用する投影データが自動的に選択されるので、第3実施形態に係るX線CT装置は、再構成時における操作者の操作時間を短縮することができる。
【0121】
なお上記の説明において閾値Tnは、有効ビート数の目標数Btnとスキャン条件とに応じてスキャン条件設定部36により決定されてもよい。この場合、スキャン条件は、回転フレーム12の回転速度、再構成法、及びスキャン対象を含む。スキャン対象は、例えば、被検体Pの心臓が不整脈であるか否か等の心臓の病状を含む。
【0122】
図16は、有効ビート数の目標数Btnとスキャン条件とを入力とし閾値Tnを出力とするテーブルの一例を示す図である。例えば、スキャン条件1で目標数Btnが1の場合、スキャン条件設定部36は、上記のテーブルにスキャン条件1と目標数Btnとを入力する。上記のテーブルは、スキャン条件1と目標数Btnとに関連付けられた閾値T1=1100msを出力する。そしてスキャン条件設定部36は、閾値T1を1100msに設定する。このように、閾値Tnを目標数Btnとスキャン条件とに従ってテーブルを利用して決定することにより、閾値Tnの決定が簡便になり、スキャン計画時における操作者の負担が軽減される。
【0123】
かくして第3実施形態に係るX線CT装置によれば、心電同期スキャンに関するスキャン効率を向上することが可能となる。
【0124】
(変形例1)
第3及び4実施形態においては、RR期間判定部40により閾値TあるいはTnが最新のRR期間より大きいと判定された場合に有効ビート判定部56により、再構成に実質的に利用可能な投影データが収集されたか否かが判定されるとした。しかしながら、本実施形態は、これに限定されない。例えば、最新のRトリガーが入力される毎に、RR期間判定部40による判定を行わずに、有効ビート判定部56は、再構成に実質的に利用可能な投影データが収集されたか否かを判定してもよい。スキャン制御部44は、実質的に利用可能な投影データが収集されていないと判定された場合、X線管14からのX線の発生を継続し、実質的に利用可能な投影データが収集されたと判定された場合、X線管14からのX線の発生を終了するように高電圧発生部22を制御する。
【0125】
かくして変形例1に係るX線CT装置によれば、心電同期スキャンに関するスキャン効率を向上することが可能となる。
【0126】
(変形例2)
上述の実施形態において時間判定部42の判定対象は、スキャン経過時間または曝射合計時間であるとした。しかしながら、時間判定部42の判定対象は、スキャン経過時間と曝射合計時間との組み合わせでも良い。この場合、図3(あるいは図6)の心電同期スキャンの流れにおいて、スキャン経過時間が予定スキャン時間を超えたか否かの判定処理(ステップSA6)と曝射合計時間が予定曝射時間を超えたか否かの判定処理(ステップSD6)とが組み込まれる。ステップSA6とステップSD6との順番は特に限定されない。例えば、曝射合計時間が予定曝射時間を超えていないと判定された場合、スキャン経過時間が予定スキャン時間を超えたか否かが判定されると良い。すなわち、スキャン経過時間と曝射合計時間との何れか一方が予定時間を超えた場合、被曝量低減等のため、スキャンが終了される。
【0127】
かくして変形例2に係るX線CT装置によれば、心電同期スキャンに関するスキャン効率を向上することが可能となる。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0129】
10…スキャン機構、12…回転フレーム、14…X線管、16…X線検出器、18…回転駆動部、20…天板、22…高電圧発生部、24…データ収集回路、28…心電計、30…画像処理装置、32…入力部、34…前処理部、36…スキャン条件設定部、38…RR期間算出部、40…RR期間判定部、42…時間判定部、44…スキャン制御部、46…再構成部、48…表示部、50…操作部、52…記憶部、54…システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線管と前記X線検出器とを回転可能に支持する支持機構と、
前記被検体の心臓の心拍周期のうちの特定の心拍位相に由来するトリガー信号を心電計から繰り返し入力する入力部と、
前記繰り返し入力されたトリガー信号のうちの最新のトリガー信号の入力時点と前記最新のトリガー信号の1回前に入力されたトリガー信号の入力時点との間の期間が、予め設定された第1の閾値以上であるか否かを前記最新のトリガー信号の入力毎に判定するRR期間判定部と、
前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記X線管からのX線の発生を終了する制御部と、
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
スキャンの開始時点からの経過時間が、予め設定された予定スキャン時間を示す第2の閾値を超えたか否かを判定する経過時間判定部、をさらに備え、
前記制御部は、前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、または、前記経過時間が前記第2の閾値を越えたと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を終了し、前記経過時間が前記第2の閾値を越えていないと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を継続する、
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、予め設定された再構成対象位相の画像再構成に実質的に利用可能な投影データが収集されたか否かを判定する条件判定部をさらに備え、
前記経過時間判定部は、前記実質的に利用可能な投影データが収集されていないと判定された場合、前記経過時間が前記第2の閾値を超えたか否かを判定し、
前記制御部は、前記実質的に利用可能な投影データが収集されたと判定された場合、または、前記実質的に利用可能な投影データが収集されていないと判定され、かつ、前記経過時間が前記第2の閾値を越えたと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を終了し、前記実質的に利用可能な投影データが収集されていないと判定され、かつ、前記経過時間が前記第2の閾値を越えていないと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を継続する、
請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記条件判定部は、前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記実質的に利用可能な投影データが収集されたと判定する、請求項3記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記X線管を流れる管電流が第1の電流値と前記第1の電流値よりも低い第2の電流値とに交互に切り替わるように管電流を制御する管電流制御部、をさらに備え、
前記条件判定部は、前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記管電流が前記第1の電流値を有する第1期間に前記再構成対象位相が含まれているか否かを判定し、
前記制御部は、前記第1期間に前記再構成対象位相が含まれていると判定された場合、または、前記第1期間に前記再構成対象位相が含まれていないと判定され、かつ、前記経過時間が前記第2の閾値を越えたと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を終了し、前記第1期間に前記再構成対象位相が含まれていないと判定され、かつ、前記経過時間が前記第2の閾値を越えていないと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を継続する、
請求項3記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記X線の発生と停止とが交互に切り替わるように管電流を制御する管電流制御部、をさらに備え、
前記条件判定部は、前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記X線が発生されている曝射期間に前記再構成対象位相が含まれているか否かを判定し、
前記制御部は、前記曝射期間に前記再構成対象位相が含まれていると判定された場合、または、前記曝射期間に前記再構成対象位相が含まれていないと判定され、かつ、前記経過時間が前記第2の閾値を越えたと判定された場合、前記X線の発生を終了し、前記曝射期間に前記再構成対象位相が含まれていないと判定され、かつ、前記経過時間が前記第2の閾値を越えていないと判定された場合、前記X線の発生と停止との交互の切り替えを継続する、
請求項3記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された、または、前記実質的に利用可能な投影データが収集されたと判定された拍動数を計数する計数部と、
前記計数された拍動数が予め設定された目標数に達したか否かを判定する有効数判定部と、をさらに備え、
前記経過時間判定部は、前記拍動数が前記目標数に達していないと判定された場合、前記経過時間が前記第2の閾値を超えたか否かを判定し、
前記制御部は、前記拍動数が前記目標数に達したと判定された場合、または、前記拍動数が前記目標数に達していないと判定され、かつ、前記経過時間が前記第2の閾値を超えたと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を終了し、前記拍動数が前記目標数に達したと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を継続する、
請求項3記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記第2の閾値は、ユーザからの指示に従って設定される、請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記X線管からのX線の合計曝射時間が、予め設定された予定曝射時間を示す第2の閾値を超えたか否かを判定する曝射時間判定部、をさらに備え、
前記制御部は、前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、または、前記合計曝射時間が前記第2の閾値を越えたと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を終了し、前記合計曝射時間が前記第2の閾値を越えていないと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を継続する、
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、予め設定された再構成対象位相の画像再構成に実質的に利用可能な投影データが収集されたか否かを判定する条件判定部をさらに備え、
前記制御部は、前記実質的に利用可能な投影データが収集されたと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を終了する、
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記期間が前記第1の閾値以上であると判定された、または、前記実質的に利用可能な投影データが収集されたと判定された拍動数を計数する計数部と、
前記計数された拍動数が予め設定された目標数に達したか否かを判定する有効数判定部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記拍動数が前記目標数に達したと判定された場合、前記X線管からのX線の発生を終了する、
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記第1の閾値は、予め計測された前記被検体の一回の拍動の期間に基づいて設定される、請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
心臓の心電情報に基づいて、心臓の特定時相に対応する画像データを再構成するX線診断装置において、
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線管と前記X線検出器とを回転可能に支持する支持機構と、
前記X線検出器の出力に基づいて投影データを収集する投影データ収集部と、
心電情報を収集する心電情報収集部と、
前記心電情報とX線の曝射情報とに基づいて、画像再構成に必要な投影データが前記投影データ収集部により収集されたか否かを判定する判定部と、
前記判定部により収集されていないと判定された場合、スキャンを継続し、前記判定部により収集されたと判定された場合、スキャンを中止する制御部と、
X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項14】
スキャンの終了の判断に関わるスキャン条件を設定する設定部をさらに備え、
前記制御部は、前記判定部により収集されたと判定された場合、前記スキャン条件が満足される前にスキャンを中止する、
請求項13記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項15】
前記判定部は、所定の再構成対象位相における画像データの再構成に必要な投影データが前記投影データ収集部により収集されたか否かを判定する、
請求項13記載のX線コンピュータ断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−34861(P2013−34861A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157539(P2012−157539)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】