説明

X線センサーと、このX線センサーを用いたX線診断装置

【課題】本発明は、X線センサーのフレームレートを速くすることを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、一面側がX線入射面、他面側を電子ビーム入射面とし、X線入射面側には薄膜状電極18を有する光電変換膜12と、電子ビーム26を光電変換膜12に照射する電子源16とを備え、電子源16は、走査ラインごとに選択して照射する複数の電子ビーム26を有するとともに、光電変換膜12は、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置に導電性の帯状の電子入射電極22を設け、X線入射面側の薄膜状電極18は、前記電子入射電極22にほぼ直交した複数の帯状に分割した構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、X線センサーと、このX線センサーを用いたX線診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のX線センサーの構成は、一面側がX線入射面、他面側を電子ビーム入射面とし、X線入射面側には薄膜状電極を有する光電変換膜と、この光電変換膜の電子ビーム入射面側に対向して設けられ、電子ビームを光電変換膜に照射する電子源とを備えたものとなっていた。
【0003】
前記光電変換膜のX線入射面側よりX線が入射すると、薄膜状電極の近傍の膜内に、入射X線量に応じた電子・正孔が生成される。このうち正孔は薄膜状電極を介して光電変換膜に印加された電界によって加速され、新たな電子/正孔対を生成する衝突イオン化を繰り返すことでアバランシェ増倍される。これによって、光変換膜層の電子源側には、入射X線の強度に応じて生成、増倍された正孔の2次パターンが形成される。
【0004】
これら光変換膜層の正孔に対して、電子源から電子ビームが放射され、光変換膜層を画素ごとに走査していく。このときに、正孔と電子ビームの電子が結合したときに流れる電流を、薄膜状電極を介して取り出すことで、X線の強度に応じた映像情報を得ることができる(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5892222号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のX線センサーの課題は、1枚のX線画像を生成するフレームレートが遅いことであった。
【0007】
前述したように、従来のX線センサーの構成においては、X線の強度に応じた映像情報を取り出す場合には、電子源は、光変換膜層を画素ごとに走査していき、そのときに流れる電流を、薄膜状電極を介して取り出すことで、X線の強度に応じた映像情報を得ていた。
【0008】
この場合には、1枚の映像情報を取り出す際には、1枚の映像の画素の数の走査回数が必要となってくるので、その結果、フレームレートが遅くなってしまうのであった。
【0009】
そこで本発明は、X線センサーのフレームレートを速くすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そしてこの目的を達成するために本発明のX線センサーは、一面側がX線入射面、他面側を電子ビーム入射面とし、X線入射面側には薄膜状電極を有する光電変換膜と、電子ビームを光電変換膜に照射する電子源とを備え、前記電子源は、走査ラインごとに選択して照射する複数の電子ビームを有するとともに、前記光電変換膜は、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置に導電性の帯状の電子入射電極を設け、X線入射面側の薄膜状電極は、前記電子入射電極にほぼ直交した複数の帯状に分割した構成としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のX線センサーは、一面側がX線入射面、他面側を電子ビーム入射面とし、X線入射面側には薄膜状電極を有する光電変換膜と、電子ビームを光電変換膜に照射する電子源とを備え、前記電子源は、走査ラインごとに選択して照射する複数の電子ビームを有するとともに、前記光電変換膜は、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置に導電性の帯状の電子入射電極を設け、X線入射面側の薄膜状電極は、前記電子入射電極にほぼ直交した複数の帯状に分割した構成としたものであるので、X線センサーのフレームレートを速くすることができる。
【0012】
すなわち、光電変換膜は、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置に導電性の帯状の電子入射電極を設け、この電子入射電極に対して、電子源は、電子ビームを選択して照射することで、ラインごとの走査を行うことが可能となる。
【0013】
次に、光電変換膜のX線入射面側の薄膜状電極は、前記電子入射電極にほぼ直交した複数の帯状に分割したので、この複数の薄膜状電極の電流値を走査ラインごとに同時に読み取ることで、走査ラインと薄膜状電極が直交した位置に対応した複数の画素に対応したX線感度を同時に読み取ることができることとなり、その結果、走査回数、電流値読み取り回数ともに低減できるので、X線センサーのフレームレートを速くすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態にかかるX線診断装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態にかかるX線診断装置のブロック図
【図3】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの外観を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの断面図
【図5】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの主要部の断面図
【図6】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの制御ブロック図
【図7】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの主要部の断面図
【図8】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの主要部の断面図
【図9】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明にかかるX線センサー、およびそのX線センサーを用いたX線診断装置の実施の一形態について、添付図面を交えて説明する。なお添付図面は、理解を容易にするために模式的な図を示している。
【0016】
まず、この実施の形態にかかるX線診断装置の全体構成について、図1および図2を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態にかかるX線診断装置の構成図である。図1に示すように、X線診断装置は、X線源1と、X線源1から所定の間隔をおいて対向配置されるX線センサー2とを備え、X線源1から放射したX線を撮像対象者3に照射し、その撮像対象者3を透過したX線をX線センサー2に入射させることにより、撮像対象者3の内部の状態を可視化するものである。
【0018】
具体的には、側面視したときの形状が略半円状のアーム4の一端にX線源1が設けられ、アーム4の他端にX線センサー2が設けられている。このようにしてX線源1とX線センサー2が所定の間隔をおいて対向配置されている。したがってアーム4によって、ベッド5に横たわった撮像対象者3を挟んでX線源1とX線センサー2とを対向配置させることができるので、X線源1から照射されて撮像対象者3を透過したX線を、X線センサー2で検出することができる。
【0019】
アーム4は、装置本体6に回動自在に取り付けられている。装置本体6は、アーム4を回動させる駆動装置(図示せず)を内蔵している。このようにすることで、撮像対象者3の内部の状態を様々な角度から可視化することが可能となる。
【0020】
図2は本発明の実施の形態にかかるX線診断装置のブロック図である。
【0021】
図2に示すように、X線源1はX線制御部7に接続されており、X線制御部7はコントローラ8に接続されている。コントローラ8は、X線診断装置全体の動作を統括的に制御するものである。X線制御部7は、コントローラ8からの指令信号に従って、X線源1によるX線の照射動作やX線の照射量を制御する。
【0022】
X線センサー2は画像処理部9に接続されている。画像処理部9は、X線センサー2から取り出された電気信号(光電変換信号)を検出して画像処理する。画像処理部9により処理された信号はコントローラ8に送信される。コントローラ8は、X線センサー2が検出したX線の光量(強度)に基づく画像、すなわち撮像対象者3の内部の状態を表示する画像をモニタ10に映し出す。
【0023】
またX線センサー2は、電子源制御部11にも接続されている。この電子源制御部11もコントローラ8に接続されている。電子源制御部11は、コントローラ8からの指令信号に従って、後述する電子源による電子線の照射動作や電子線の照射量を制御する。
【0024】
装置本体6に内蔵されているアーム4を回動させる駆動装置(図示せず)は移動制御部13に接続されており、移動制御部13はコントローラ8に接続されている。移動制御部13は、コントローラ8からの指令信号に従って、アーム4の回動動作を制御する。
【0025】
コントローラ8には、さらに入力部14が接続されている。コントローラ8は、入力部14から入力された指令に従って、X線診断装置全体の動作を統括的に制御する。
【0026】
続いて、この実施の形態にかかるX線センサー2について、図3ないし図6を用いて説明する。図3は本発明の実施の形態にかかるX線センサー2の外観を示す斜視図であり、図4は本発明の実施の形態にかかるX線センサー2の断面図であり、図5は本発明の実施の形態にかかるX線センサー2の光電変換膜であるターゲット部12の断面図であり、図6は本発明の実施の形態にかかるX線センサー2の制御ブロック図である。
【0027】
以下、X線センサー2の光電変換膜については、ターゲット部と称して説明を行う。
【0028】
図3および図4に示すように、X線センサー2は、平面視したときの形状が矩形状の取り付け基板15を備える。また図4に示すように、取り付け基板15の主面上には、同じく矩形状の電子源16が設けられており、その電子源16の上部には、ターゲット部12が配置されている。
【0029】
図5にターゲット部12の構成図を示す。ターゲット部12は、X線入射面となったX線透過性基板17と、このX線透過性基板17のX線入射面の裏面側に順次設けた薄膜状電極18、正孔注入阻止層19、電荷増倍機能を持つ光導電性の光変換膜層20、電子注入阻止層21、電子入射電極22とにより構成されている。
【0030】
ターゲット部12の光変換膜層20は、a−Se(アモルファスセレン)を主成分として構成されている。また、薄膜状電極18と、CeO2(酸化セリウム)より形成された正孔注入阻止層19と、光変換膜層20との接合により、外部からの正孔注入が阻止され、また、Sb2S3(三硫化アンチモン)やSi3N4(窒化ケイ素)より形成された電子注入阻止層21と、光変換膜層20との接合により、外部からの電子注入が阻止される構造となっている。
【0031】
X線透過性基板17は、図4に示すように、図5の電子注入阻止層21が電子源16に向くように、取り付け基板15に対して対向配置される。これにより、電子源16は電子注入阻止層21側の面に向けて電子線を照射することができる。
【0032】
そして、ターゲット部12と電子源16は、X線の照射エネルギーを光電変換可能とするために、図3に示すように、本体ケース2a内に真空密封された状態で構成されている。
【0033】
次に図6を用いて、X線センサー2の動作について説明する。
【0034】
まず、ターゲット部12の薄膜状電極18は、10kV程度の電源24に接続される。
【0035】
また、電子源16は、10〜80V程度の電源25に接続されている。
【0036】
この状態において、ターゲット部12のX線入射面側(図6の上方)よりX線23が入射すると、ターゲット部12の電子源16側(図6の下方)の光変換膜層20には、入射X線の強度に応じて生成、増倍された正孔の2次パターンが形成される。
【0037】
次に、この正孔の2次パターンを電流値として読み取るために、電子源16の電子ビーム26からターゲット部12の下面に設けられた電子入射電極22に向けて、ラインごとに走査して、電子を放出することになる。
【0038】
ここで、図6を用いて、電子入射電極22、および、薄膜状電極18の構成について説明する。
【0039】
まず、電子入射電極22は、アルミニウム等の導電性の金属で形成されたものであり、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置(図6の手前から奥行き方向)に、22a、22b、22eのように、所定間隔をおいて配置された帯状に設けられている。また、X線入射面側の薄膜状電極18は、18a、18b、18cのように電子入射電極22にほぼ直交した、複数の帯状に分割(所定間隔をおいて配置)した構成となっている。
【0040】
このような構成において、電子源16の電子ビーム26は、電子入射電極22に向けて、ラインごとに走査して、電子を放出していく。
【0041】
図6においては、まず電子ビーム26eから電子が放出され、この電子は電子入射電極22eに入射し、この電子入射電極22e上方近傍の膜内に生成された正孔と、電子入射電極22eより入射した電子が結合したときに流れる電流を、薄膜状電極18より読み出している。より具体的には、薄膜状電極18aより読み取った電流値は、電子入射電極22eと薄膜状電極18aが直交する画素27aの入射X線の強度に相当する電流値となり、薄膜状電極18bより読み取った電流値は、電子入射電極22eと薄膜状電極18bが直交する画素27bの入射X線の強度に相当する電流値となり、薄膜状電極18cより読み取った電流値は、電子入射電極22eと薄膜状電極18cが直交する画素27cの入射X線の強度に相当する電流値となる。
【0042】
それぞれの薄膜状電極18a、18b、18cには、電流読み取り部28が設けられた構成となっており、制御部29は、電子源16の複数の電子ビーム26を電子ビーム26a、電子ビーム26bの順に、走査ラインごとに選択して照射するよう制御するとともに、選択された走査ラインに対応して、薄膜状電極18に設けた電流読み取り部28から読み取ることにより、画素の入射X線の強度を読み取ることが可能となる。
【0043】
さらに詳細な説明をするために、図7、図8を用いて説明する。
【0044】
図7、図8にターゲット部12と電子源16の断面構造の模式図を示す。
【0045】
図7は、図6を正面より見た断面構造の模式図であり、図8は、図6を左側面より見た断面構造の模式図である。
【0046】
図7に示すように、ターゲット部12は、X線入射面となったX線透過性基板17と、このX線透過性基板17のX線入射面の裏面側に順次設けた薄膜状電極18と、CeO2(酸化セリウム)より形成された正孔注入阻止層19、a−Se(アモルファスセレン)で形成され、電荷増倍機能を持つ光導電性の光変換膜層20と、Sb2S3(三硫化アンチモン)やSi3N4(窒化ケイ素)より形成された電子注入阻止層21と、アルミニウムで形成された電子入射電極22と、より構成されている。
【0047】
電子入射電極22は、アルミニウム等の導電性の金属で形成されたものであり、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置(図7の手前から奥行き方向)に、22a、22b、・・・22fのように所定間隔離した帯状に設けられている。それぞれの電極間隔の長さAは、ほぼ100um程度である。これら電子入射電極22に対向した位置に、電子源16の電子ビーム26が設けられており、それぞれの電子ビームの間隔は、電子入射電極22の電極間隔Aと同様に、ほぼ100um程度となっている。
【0048】
また、電子源16と、ターゲット部12の間隔Bは、ほぼ400um程度となっている。
【0049】
また、図8に示すように、X線入射面側の薄膜状電極18は、18a、18b、18cのように電子入射電極22にほぼ直交した複数の帯状に分割した構成となっており、この薄膜状電極の間隔Cは、ほぼ100um程度である。
【0050】
なお、薄膜状電極の分割は、イオンドープ法によって、電極分割される。
【0051】
このような構成において、ターゲット部12と電子源16の構成による動作について説明する。
【0052】
ターゲット部12のX線23のX線入射面となったX線透過性基板17側よりX線が入射すると、薄膜状電極18の近傍の光変換膜層20の膜内に、入射X線量に応じた電子・正孔が生成される。このうち正孔は薄膜状電極18を介して光変換膜層20に印加された電界によって加速され、新たな電子/正孔対を生成する衝突イオン化を繰り返すことでアバランシェ増倍される。
【0053】
これによって、光変換膜層20の電子源16側には、入射X線の強度に応じて生成、増倍された正孔の2次パターンが形成される。
【0054】
これら光変換膜層20の正孔に対して、電子源16から電子ビームが放射され、光変換膜層20をラインごとに走査していく。
【0055】
図7においては、まず、電子入射電極22aに対応したラインに対して、電子ビーム26aが選択され、電子を電子入射電極22aに放射していく。
【0056】
図8においては、電子ビーム26aから放射された電子は、電子入射電極22aに拡がり、その電子は光変換膜層20の下面に形成された正孔の2次パターンと結合し、その上方に位置する薄膜状電極18a〜18fに対して、X線の強度に応じた電流が流れることになる。この電流を薄膜状電極18a〜18fからそれぞれ取り出すことで、電子入射電極22aに対応したラインに対する画素の入射X線強度を測定することができる。
【0057】
この走査を電子ビーム26aから電子ビーム26fまで繰り返すことで、電子入射電極22と薄膜状電極18によりマトリクス状に位置づけられる画素の入射X線強度を測定することができ、それを1枚の画像とするとX線画像となるのである。
【0058】
このように、ターゲット部12は、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置に導電性の帯状の電子入射電極22を設け、この電子入射電極22に対して、電子源16は、電子ビーム26を選択して照射することで、ラインごとの走査を行うことが可能となり、次に、ターゲット部12のX線入射面側の薄膜状電極18は、電子入射電極22にほぼ直交した複数の帯状に分割したので、この複数の薄膜状電極18の電流値を走査ラインごとに同時に読み取ることで、走査ラインと薄膜状電極18が直交した位置に対応した複数の画素に対応したX線感度を同時に読み取ることができることとなり、その結果、走査回数、電流値読み取り回数ともに低減できるので、X線センサーのフレームレートを速くすることができるのである。
【0059】
また、電子ビームの走査ラインに対応した位置に導電性の帯状の電子入射電極22を設け、この電子入射電極22に対するラインに対して、電子ビームを設け、この電子ビームによってラインに生成された正孔に対して電子を放射することができるので、画素ごとに電子ビームを設ける場合と比較して、少ない電子ビーム数で電子源16を構成できる。
【0060】
この場合には、電子ビームの数を低減できるので、電子ビームの感度ばらつきも低減できることとなる。
【0061】
なお、図6から図8に示した電子源16は、電子ビームを一次配列したライン構成となっているが、図9に示したように、1本の電子入射電極22に対して、複数の電子ビームを配する構成も可能である。このような構成にすることで、1つの電子ビームの電子放射量を低減することが可能となるので、電子源16の設計許容度を広げることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態における光変換膜層20は、感度層により構成されているが、さらには、X線入射面より順に、緩和層、正孔トラップ層、感度層より構成しても良い。
【0063】
正孔トラップ層は、X線や可視光などの照射によって発生した正孔をトラップする層であり、緩和層と正孔トラップ層が設けられているのは、正孔注入阻止層などにキズや膜厚ムラが発生している場合でも、それによる白キズの発生を抑えることができるようにするためである。
【0064】
なお、光変換膜層20の電荷増倍機能は、感度層によるものであり、光変換膜層20の構成要素としては、感度層のみで構成しても良い。
【0065】
ここで、薄膜状電極18には酸化インジウム・スズ(ITO)や酸化スズ、Si等半導体基板などが使用される。また、正孔注入阻止層19には酸化セリウム(CeO)が、緩和層には非晶質セレン(a−Se)が、正孔トラップ層には非晶質セレン(a−Se)とフッ化リチウム(LiF)が、感度層には非晶質セレン(a−Se)が、電子注入阻止層21には硫化アンチモン(Sb)やSi3N4(窒化ケイ素)がそれぞれ使用される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明のX線センサーは、一面側がX線入射面、他面側を電子ビーム入射面とし、X線入射面側には薄膜状電極を有する光電変換膜と、電子ビームを光電変換膜に照射する電子源とを備え、前記電子源は、走査ラインごとに選択して照射する複数の電子ビームを有するとともに、前記光電変換膜は、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置に導電性の帯状の電子入射電極を設け、X線入射面側の薄膜状電極は、前記電子入射電極にほぼ直交した複数の帯状に分割した構成としたものであるので、X線センサーのフレームレートを速くすることができる。
【0067】
すなわち、光電変換膜は、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置に導電性の帯状の電子入射電極を設け、この電子入射電極に対して、電子源は、電子ビームを選択して照射することで、ラインごとの走査を行うことが可能となる。
【0068】
次に、光電変換膜のX線入射面側の薄膜状電極は、前記電子入射電極にほぼ直交した複数の帯状に分割したので、この複数の薄膜状電極の電流値を走査ラインごとに同時に読み取ることで、走査ラインと薄膜状電極が直交した位置に対応した複数の画素に対応したX線感度を同時に読み取ることができることとなり、その結果、走査回数、電流値読み取り回数ともに低減できるので、X線センサーのフレームレートを速くすることができるのである。
【0069】
したがって、X線センサーやX線診断装置への適用が大いに期待されるものである。
【符号の説明】
【0070】
1 X線源
2 X線センサー
3 撮像対象者
4 アーム
5 ベッド
6 装置本体
7 X線制御部
8 コントローラ
9 画像処理部
10 モニタ
11 電子源制御部
12 ターゲット部(光電変換膜)
13 移動制御部
14 入力部
15 取り付け基板
16 電子源
17 X線透過性基板
18 薄膜状電極
18a、18b、18c、18d、18e、18f 薄膜状電極
19 正孔注入阻止層
20 光変換膜層
21 電子注入阻止層
22 電子入射電極
22a、22b、22c、22d、22e、22f 電子入射電極
23 X線
24 電源
25 電源
26 電子ビーム
26a、26b、26c、26d、26e、26f 電子ビーム
27a、27b、27c 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側がX線入射面、他面側を電子ビーム入射面とし、X線入射面側には薄膜状電極を有する光電変換膜と、電子ビームを光電変換膜に照射する電子源とを備え、前記電子源は、走査ラインごとに選択して照射する複数の電子ビームを有するとともに、前記光電変換膜は、電子ビーム入射面上の電子ビームの走査ラインに対応した位置に導電性の帯状の電子入射電極を設け、X線入射面側の薄膜状電極は、前記電子入射電極にほぼ直交した複数の帯状に分割した構成としたX線センサー。
【請求項2】
前記光電変換膜の、複数の帯状に分割された、それぞれの薄膜状電極には、電流読み取り部が設けられた構成とした請求項1に記載のX線センサー。
【請求項3】
前記光電変換膜は、電子源の複数の電子ビームを、走査ラインごとに選択して照射するよう制御するとともに、選択された走査ラインに対応して、前記薄膜状電極に設けた電流読み取り部から読み取る制御部を設けた請求項2に記載のX線センサー。
【請求項4】
前記光電変換膜は、X線入射面側より、X線透過性基板と、このX線透過性基板のX線入射面の裏面側に順次設けた薄膜状電極、正孔注入阻止層、光変換膜層、電子注入阻止層、電子入射電極、より構成した請求項1から3のいずれか一つに記載のX線センサー。
【請求項5】
X線源と、このX線源に所定間隔おいて対向配置したX線センサーとを備え、
前記X線センサーとして、請求項1から4のいずれか一つに記載のX線センサーを用いたX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−88373(P2013−88373A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231400(P2011−231400)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】