説明

X線撮像装置およびX線撮像方法

【課題】 屈折コントラスト法の問題点を解決することができるX線撮像装置およびX線撮像方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 被検知物によるX線の位相変化情報を取得するX線撮像装置であり、X線発生手段101から発生したX線を空間的に分割する分割素子103を有する。分割素子103により分割されたX線の入射位置に応じてX線の透過量が連続的に変化する減衰素子204、404が複数配列された減衰手段105を有する。さらに、減衰手段105により減衰されたX線の強度を検出するための強度検出手段106を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線を用いたX線撮像装置、およびX線撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を用いた非破壊検査法は工業利用から医療利用まで幅広い分野で用いられている。
例えば、X線は波長が約1pm〜10nm(10−12〜10−8m)程度の電磁波であり、このうち波長の短いX線(約2keV〜)を硬X線、波長の長いX線(約0.1keV〜2keV)を軟X線という。
X線による吸収能の違いを用いた吸収コントラスト法ではX線の透過能の高さを利用し、鉄鋼材料などの内部亀裂検査や手荷物検査などのセキュリティ分野の用途として実用化されている。
【0003】
一方、X線の吸収によるコントラストが形成されにくい低密度差の被検知物に対しては、被検知物によるX線の位相変化を検出するX線位相イメージングが有効である。このようなX線位相イメージングを用いた方法は、高分子材料の相分離構造体のイメージングや医療等への応用が検討されている。
各種X線位相イメージングにおいて、特許文献1に示された屈折コントラスト法は、X線の被検知物による位相変化による屈折効果を利用した方法である。
この屈折コントラスト法は、微焦点のX線源を用い、被検知物と検出器の距離を離して撮像される。この屈折コントラスト法によれば、X線の被検知物による屈折効果から被検知物の輪郭が強調されて検出される。
【0004】
また、屈折コントラスト法は屈折効果を利用するため、多くのX線位相イメージング手法の場合と異なりシンクロトロン放射光のような干渉性の高いX線を必ずしも必要としないという特徴がある。
【0005】
一方、特許文献2では検出器の画素のエッヂ部分にX線を遮蔽するマスクを設置した撮像装置が開示されている。被検知物がない状態において、遮蔽マスクの一部にX線が照射するようにセッティングを行えば、被検知物による屈折効果により生じたX線の位置変化を強度変化として検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−102215号公報
【特許文献2】国際公開2008/029107号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された屈折コントラスト法では、X線の被検知物による屈折効果における屈折角が非常に小さいため、輪郭強調した像を得るには検知物と検出器の距離を十分に離す必要性がある。そのため、屈折コントラスト法では、装置の大型化を招くという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、屈折コントラスト法の問題点を解決することができるX線撮像装置およびX線撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るX線撮像装置は、被検知物によるX線の位相変化情報を取得するX線撮像装置であって、X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子と、前記分割素子により分割されたX線が入射する減衰素子が複数配列された減衰手段と、前記減衰手段により減衰されたX線の強度を検出するための強度検出手段とを有し、前記減衰素子は、前記X線の入射位置に応じてX線の透過量が連続的に変化するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、他の本発明に係るX線撮像装置は、X線を発生するX線発生手段と、被検知物を透過した際に生じるX線の強度分布の変化に応じてX線の透過量が連続的に変化する吸収能勾配を有した減衰素子が複数配列された減衰手段と、前記減衰手段により減衰されたX線の強度を検出するための強度検出手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るX線撮像装置に用いるX線撮像方法は、空間的にX線を分割する工程と、前記空間的に分割されたX線が入射する減衰素子が複数配列された減衰手段を用いて、前記被検知物によるX線の位相変化情報を前記減衰素子を透過したX線の強度から取得する工程を有し、前記減衰素子は、X線の入射位置に応じてX線の透過量が連続的に変化するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、他の本発明に係るX線撮像装置に用いるX線撮像方法は、被検知物を透過した際に生じるX線の強度分布の変化に応じてX線の透過量が連続的に変化する吸収能勾配を有した減衰素子が複数配列された減衰手段を用いて、前記減衰素子を透過したX線の強度分布の変化を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、屈折コントラスト法の問題点を解決できるX線撮像装置およびX線撮像方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1におけるX線撮像装置の構成例を説明する図。
【図2】本発明の実施形態1における減衰手段の一部分について説明する模式図。
【図3】本発明の実施形態2におけるX線撮像装置の構成例を説明する図。
【図4】本発明の実施形態2における減衰手段の一部分について説明する模式図。
【図5】本発明の実施形態2における演算処理の方法について説明するフロー図。
【図6】本発明の実施形態3における実施形態2の減衰手段の代わりに、別の形態による減衰手段を用いた構成例について説明する模式図。
【図7】本発明の実施形態4における減衰手段および減衰素子を説明する図。
【図8】光路長変化が対数関数型の場合と線型の場合を比較する図。
【図9】光路長変化が対数関数型の場合と線型の場合を比較する図。
【図10】実施形態4における減衰手段を説明する図。
【図11】本発明の実施形態5におけるコンピューテッドトモグラフィ(CT)による構成例を説明する装置の概略図。
【図12】本発明の実施形態5における演算処理の方法について説明するフロー図。
【図13】本発明の実施例1におけるX線撮像装置の構成例を説明する図。
【図14】本発明の実施例2におけるX線撮像装置の構成例を説明する図。
【図15】物質によってX線が屈折される様子を説明する図。
【図16】特許文献2の課題を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態では、吸収能勾配(透過能勾配)を有する減衰素子を複数配列した減衰手段を用いて屈折効果によるX線の強度分布変化またはX線の位置変化情報を取得する。
ここで、吸収能勾配(透過能勾配)を有する減衰素子とは、X線の強度分布変化またはX線の入射位置に応じてX線の吸収量(透過量)が連続的に変化する素子のことをいう。この減衰素子は、連続的または段階的に形状を変化させることにより構成することができる。また、単位体積当たりのX線の吸収量(透過量)を連続的または段階的に変化させることにより構成することもできる。なお、本明細書では、「連続的」との用語は「段階的」の概念を含むものとして取り扱うこともある。
【0016】
以下、本発明に係るX線撮像装置およびX線撮像方法に関する具体的な実施形態について説明する。
【0017】
(実施形態1)
実施形態1においては、X線の位相変化から像を得るX線撮像装置の構成例について説明する。
【0018】
図15は、物質を透過した際に生じるX線の屈折を模式的に示したものである。物質に対するX線の屈折率は1より若干小さい値を有する。
そのため、図15に示すような場合、X線1501と1507において、物質1502を透過したX線1507は物質1502の外側(図15では上側)に向かって屈折する。
この際、物質1502を透過したX線は、物質1502の外側を進行してきたX線1501と重なるため強度が増す。一方、屈折したX線の物質に対する入射位置の延長線上の部分は、X線が弱くなる。この結果、得られる透過X線強度分布1503は、図15に示すように、物質1502の輪郭が強調された分布を持つ。
【0019】
ここで、X線の屈折角θは非常に小さい値であるため、検出器の画素サイズを考慮すると、物質と検出器の距離を遠ざけないと、輪郭強調を検出することが難しい。そのため、上記特許文献1に記載した屈折コントラスト法では、被検知物と検出器とを十分に離して配置し、像を拡大する必要があるため、装置の大型化を招く。
【0020】
つまり、被検知物と検出器までの距離が短いと、検出器1504の画素1505のサイズが透過X線強度分布1503の強弱パターンよりも大きくなり、1画素内で強弱の強度が打ち消し合うことになる。これにより、輪郭が強調された像を得ることができなくなる。
【0021】
そこで、本実施形態では、被検知物と検出器の距離を短くした場合であっても、X線強度の強弱パターンを検出するために、吸収能勾配を有する減衰手段を用いることを特徴とする。
【0022】
図1に、本実施形態におけるX線撮像装置の構成例を説明する図を示す。
【0023】
X線発生手段としてのX線源101から発生したX線は、被検知物104によって位相が変化し、その結果、屈折する。屈折したX線は減衰手段105に入射する。減衰手段105を透過したX線は強度検出手段としての検出器106によりそれぞれのX線の強度が検出される。検出器106により得たX線に関する情報はモニタ等の表示手段108に出力される。
被検知物104としては、人体、人体以外としては無機材料、無機有機複合材料が挙げられる。なお、被検知物104を移動する移動手段(不図示)を別途設けてもよい。この移動手段により、被検知物104を適宜移動することができるため、被検知物104の特定個所についての像を得ることができる。
【0024】
検出器106は、間接型、直接型を問わず種々のX線検出器を用いることができる。例えばX線フラットパネル検出器、X線CCDカメラや直接変換型X線2次元検出器などから選択される。
検出器106は減衰手段105と近接していてもよいし、一定の間隔を隔てて配置してもよい。また、減衰手段105を検出器106の中に組み込んでも良い。
なお、単色X線を用いる場合には、X線源101と被検知物104との間に単色化手段102を配置してもよい。単色化手段102としては、スリットと組み合わせたモノクロメータやX線多層膜ミラーなどを用いることができる。
【0025】
つぎに、減衰手段105について、更に説明する。図2に、減衰手段105の一部分について説明する模式図を示す。減衰手段203を構成する減衰素子204は入射するX線に対して垂直方向に厚みが変化している三角柱形状を有している。
【0026】
このように構成することにより、X方向に減衰素子204内における透過X線の光路長が変化する。すなわち、減衰素子204は、X線の強度分布あるいはX線の入射位置によりX線の吸収量(透過量)が変化する吸収能勾配を有している。なお、減衰素子204は、板状の部材を加工することにより構成してもよい。
符号201は被検知物204がない状態での減衰素子204に入射する基準X線強度分布を示し、符号202は被検知物204がある状態での屈折によって変化した減衰素子204へ入射するX線の強度分布である。
【0027】
検出器1画素に入るX線の強度は、どのような強度分布を持っていても積分強度が同じであれば、検出するX線強度は同じとなる。しかし、X方向に透過X線強度が連続的に変化する減衰素子204を設置することにより、被検知物104によってX線が屈折することによる強度分布変化を透過X線強度変化に変換することができる。
【0028】
例えば、図2において、符号202の強め合っている箇所が図よりも上方向にシフトすれば、透過X線の強度は増加する。一方、符号202の強めあっている箇所が図よりも下方向にシフトすれば透過X線の強度は減少する。このため、被検知物104がない状態で検出したX線強度と、被検知物104がある状態で検出したX線強度を比較することにより、微小な屈折の効果をX線強度分布として検出することができる。
【0029】
このような構成により、検出器106の1画素内の微小な強度分布変化も検出できることから被検知物104と検出器106の距離を長く取る必要性がなく、装置の小型化が可能となる。また、被検知物104と検出器106の距離を長くする構成を選択すれば、より微小な屈折による強度分布変化を検出することも出来る。
さらに、この手法によれば、位相変化の検出にX線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がない。
【0030】
なお、上記では、同一の実効的な線吸収係数を有し、かつ連続的に形状が変化した減衰素子について説明したが、該減衰素子は、ある方向においてX線の吸収量(透過量)が変化するような吸収能勾配を有していればよい。例えば、後述する図4のように入射するX線に対して垂直方向に密度が連続的に変化している減衰素子も本実施形態のX線撮像装置に用いることが可能である。
【0031】
また、減衰素子の吸収能勾配は図2に示すように連続的である必要はなく、階段状(ステップ状)に吸収量(透過量)が変化している場合も含まれる。例えば、段階的に形状が変化していてもよいし、段階的に密度が変化していてもよい。
【0032】
また、X線強度分布の変化を得るためには減衰素子の吸収能勾配の方向が一方向以上であっても構わない。例えば、同一の減衰素子内で、X方向とY方向に吸収能勾配を有するように構成すれば、2次元方向の位相勾配を計測することも可能である。このような形状としては、例えばピラミッド型や円錐型などがある。
【0033】
また、同一の減衰素子内だけでなく、X方向の勾配を有した第1の減衰素子と、Y方向の勾配を有した第2の減衰素子を交互に面内に有した減衰素子を用いて2次元方向の位相勾配を計測することも可能である。
さらに、X方向の勾配とY方向の勾配を有した減衰素子を積層化してもよい。すなわち、第1層目にはX方向の吸収勾配を有した減衰手段を設け、第2層目にはY方向の吸収勾配を有した減衰手段を設けてもよい。
【0034】
また、減衰手段105からの散乱X線による像の不明瞭化を軽減するために、減衰手段105と検出器106の間にレントゲン撮影に用いられるグリッドを配置しても良い。
【0035】
(実施形態2:分割素子を設ける構成例)
実施形態2においては、X線の位相変化情報としての位相像を得ることのできるX線撮像装置および方法について説明する。本実施形態は、X線を分割する素子を設ける点において、実施形態1とは異なる。
【0036】
上記特許文献2に開示されている撮像装置は、X線を分割する光学素子を用いるとともに、検出器の画素のエッヂ部分にX線を遮蔽するマスクを設けている。図16に特許文献2における検出器部分の一例を示す。図16(a)は検出器をX線の入射方向から見た図であり、図16(b)はX線の入射方向に対して垂直方向から見た図である。
【0037】
検出器の画素1601のエッジ部分にX線を遮蔽するためのマスク1602が設置されている。入射X線1603はマスク1602の一部にかかるように各画素に入射される。このような配置で被検知物に対してX線を入射すると、屈折効果により画素1601上での各入射X線1603の位置が変化する。この位置変化によりマスク1602で遮蔽されるX線の強度が変化する。そのため、X線の強度変化を検出することにより、屈折効果を測定することができる。
【0038】
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、X線を遮蔽するマスク1602を設けているため、入射X線1603の照射領域がマスク1602内に収まってしまった場合、X線の位置変化を正確に検出することができないという問題点がある。また入射X線1603のマスク1602内に収まっている領域内のみでの位置変化に対してはX線の強度変化を検出することができないという問題点がある。すなわち、特許文献2に記載の方法は、不感領域が存在するという課題がある。
【0039】
そこで、実施形態2では、特許文献1に記載の屈折コントラスト法よりも小型化が可能であり、かつ、特許文献2に記載の方法よりも不感領域の少ない装置および方法について説明する。
【0040】
図3に、本実施形態におけるX線撮像装置の構成例を説明する図を示す。
X線発生手段としてのX線源301から発生されたX線は、分割素子303により空間的に分割される。すなわち、分割素子303は、特許文献2に記載されている複数のアパーチャを有するサンプルマスクとして機能するものであって、この分割素子303を透過したX線はX線の束となる。分割素子303は、ラインアンドスペースによるスリットアレイ形状を備えたものであっても、2次元的に配列された穴を有しているものであっても良い。
【0041】
また、分割素子303に設けられたスリットはX線を透過する形態であれば、光学素子の基板を貫通していなくとも良い。分割素子303の材料としては、X線の吸収率が高いPt、Au、Pb、Ta、Wなどから選択される。あるいは、これらの材料を含む化合物であっても良い。
【0042】
分割素子303により分割されたX線の検出器306位置でのラインアンドスペースの周期は、検出器306の画素サイズ以上である。すなわち、強度検出手段を構成する画素の大きさは、分割素子303により分割されたX線の空間的な周期以下である。
分割素子303により空間的に分割されたX線は、被検知物304によって屈折される。屈折したそれぞれのX線は減衰手段305に入射する。減衰手段305を透過したX線は検出器306によりそれぞれのX線の強度が検出される。検出器306により得たX線に関する情報は演算手段307により数的処理がなされ、モニタ等の表示手段308に出力される。
【0043】
なお、単色化手段302、被検知物304、該被検知物304を移動する移動手段、検出器306、グリッド等に関しては、実施形態1と同様のものを用いることができる。
【0044】
つぎに、減衰手段305について、更に説明する。
図4に、減衰手段305の一部分について説明する模式図を示す。
基準X線401は、被検知物304の存在しない状態での分割されたX線を示し、減衰素子404のX方向における中心に入射されることが好ましい。X線402は被検知物304の存在によって屈折したX線を示している。減衰手段403は、減衰素子404を複数配列して構成されている。
図4の右側に示すように減衰素子404はX方向(入射するX線に対して垂直方向)に連続的な密度分布がある。つまり、図4の減衰素子404の密度変化はX線の吸収の度合いを変化させ、密度が高い方がよりX線を通さない。すなわち、減衰素子404におけるX線の入射位置の変化量に応じて、X線の吸収量(透過量)が連続的に変化するような吸収能勾配を有している。
減衰素子204を透過した基準X線201の強度は、次の式(1)によって表される。
【0045】
【数1】

【0046】
は分割素子303によって空間的に分割されたX線の強度、μ/ρは減衰素子404の実効的な質量吸収係数、ρは基準X線401が減衰素子404内の透過した部分における減衰素子404の密度、Lは減衰素子404の厚さである。
【0047】
一方、被検知物304によって屈折したX線402の減衰素子404透過後の強度は、次の式(2)で表される。
【0048】
【数2】

【0049】
Aは被検知物304によるX線の透過率を示し、ρ’はX線402が減衰素子404内の透過した部分における減衰素子404の密度を示している。上記式(1)と式(2)から基準X線401とX線402の減衰素子404内の透過した部分の位置変化を示す減衰素子404の密度差は、次の式(3)により表される。
【0050】
【数3】

【0051】
X線に対して被検知物304の吸収効果が極めて小さい場合にAは1になり、吸収の効果が無視できない場合は減衰手段305がない状態での撮像によりAを求めることができる。
一方、X線吸収体の密度分布は既知であるため、上記式(3)が示す密度差から、減衰手段305上での位置変化量(d)を得ることができる。
つまり、基準X線401とX線402の検出強度の関係から、被検知物304での屈折による微量の位置変化量を得ることができる。
【0052】
つぎに、本実施形態における演算処理の方法について説明する。
図5に、演算処理のフロー図を示す。
まず、第1のステップであるS100において、減衰手段305を透過した各X線の強度情報を取得する。
【0053】
次に、第2のステップであるS101において、演算手段307を用いて、各X線のスリット周期方向に垂直方向の各画素の強度情報から基準X線401に対する位置変化量(d)を演算して算出する。
位置変化量(d)は、式(3)を使用することにより求めることができる。すなわち、X線吸収体の密度分布は既知であるため、上記式(3)が示す密度差から、減衰手段305上での位置変化量(d)を得ることができる。
あるいは、透過X線強度と位置変化量(d)の対応関係をデータテーブルとして演算手段307などに格納しておき、測定強度からデータテーブルを参照して位置変化量(d)を求めても良い。このデータテーブルは、各減衰素子404について減衰手段305もしくは分割素子303を移動させ減衰素子404の各位置における透過X線強度を検出することにより作成することができる。また、データテーブルの作成にあたっては、分割素子303を移動させる代わりに分割素子303のスリット幅と同等の幅を持つ単スリットを用いて減衰素子404の各位置における透過X線強度を検出しても構わない。
【0054】
次に、第3のステップであるS102において、各X線の屈折角(Δθ)を算出する。位置変化量(d)と、被検知物304−減衰手段305間距離(Z)を用いて各X線の屈折角(Δθ)は、次の式(4)を用いることにより得られる。
【0055】
【数4】

【0056】
また、屈折角度(Δθ)と微分位相(dφ/dx)とは式(5)の関係がある。
【0057】
【数5】

【0058】
λはX線の波長であり連続X線を用いる場合は実効波長を意味する。
【0059】
次に、第4のステップであるS103において、上記式(5)を用いて各X線のスリット周期方向に垂直方向の各画素の微分位相(dφ/dx)を演算して微分位相情報を取得する。
【0060】
次に、第5のステップであるS104において、上記演算結果から得られた各微分位相(dφ/dx)をX方向に積分することによって位相情報(φ)を取得する。なお、S105のステップにおいては、この様に算出された微分位相像および位相像は表示手段108によって表示することができる。
【0061】
上記の構成によれば、微小なX線の位置変化を検出できるため、被検知物304と検出器306の距離を短くすることができる。すなわち、特許文献1に記載の屈折コントラスト法に比べて装置の小型化が可能となる。また、分割素子303を用いることにより、微分位相量、位相量を定量化することができる。また、X線の遮蔽領域の無い透過型の減衰手段305を用いるため不感領域が存在しない。
【0062】
なお、被検知物304と検出器306の距離を長くする構成を選択すれば、より微小な屈折によるX線位置変化を測定することが出来る。
また、位相変化の検出にX線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がない。
【0063】
(実施形態3)
実施形態3においては、実施形態2の減衰手段とは異なる形態による減衰手段を用いたX線撮像装置の構成例について説明する。本実施形態の装置の基本構成は実施形態2で説明した図3と同じである。
【0064】
図6に、実施形態3の構成例について説明する模式図を示す。
【0065】
基準X線601は被検知物604の存在しない状態での分割されたX線を示す。この基準X線601は、減衰素子604のX方向における中心に入射されることが好ましい。X線602は被検知物304の存在によって屈折したX線を示している。
図6に示すように、減衰手段603は、三角柱状の減衰素子604を並べた構造体により構成することができる。この減衰素子604は、同一の実効的な線吸収係数を有し、かつ入射するX線に対して垂直方向に厚みが連続的に変化している。
減衰素子604は三角柱形状なのでX方向に減衰素子604内における透過X線の光路長が変化する。すなわち、X方向に対するX線の入射位置に応じてX線の吸収量(透過量)が変化する。
【0066】
減衰素子604を透過した基準X線601の強度は、次の式(6)によって表される。
【0067】
【数6】

【0068】
は分割素子303によって空間的に分割されたX線の強度、μは減衰素子604の実効的な線吸収係数、lは基準X線601の減衰素子604内の光路長である。
【0069】
一方、被検知物304によって屈折したX線602の減衰素子604透過後の強度は、次の式(7)で表される。
【0070】
【数7】

【0071】
Aは被検知物304によるX線の透過率を示し、lはX線602の減衰素子604内の光路長を示している。
【0072】
上記式(6)、式(7)と減衰素子604の頂角(α)から減衰手段305上での位置変化量(d)は、次の式(8)で表すことができる。
【0073】
【数8】

【0074】
X線に対して被検知物304の吸収効果が極めて小さい場合Aは1になり、吸収の効果が無視できない場合は減衰手段305がない状態での撮像によりAを求めることができる。
【0075】
つまり、基準X線601とX線602の検出強度の関係から、被検知物304での屈折による微量の位置変化量(d)を得ることができる。
【0076】
また、減衰素子604を三角柱にすることにより、位置変化量(d)は減衰素子604のどの位置を使用しても、基準X線601とX線602の比をもとに決めることができる。
【0077】
減衰手段305を透過したX線は検出器306により検出される。この検出されたデータを実施形態2と同様の演算手段307を用いて、スリット周期方向に垂直方向の各画素の微分位相(dφ/dx)および位相(φ)を算出する。そして、微分位相像および位相像を表示手段308によって表示することができる。
【0078】
また、式(8)を用いなくてもその検出強度と位置変化量(d)の関係についてデータテーブルを作り、そのテーブルを参照して、実際に測定における強度情報から位置変化量(d)を求めても良い。このデータテーブルは、各減衰素子604について減衰手段305もしくは分割素子303を移動させ透過X線強度を検出することにより作成することができる。また、データテーブルの作成にあたっては、分割素子303を移動させる代わりに分割素子303のスリット幅と同等の幅を持つ単スリットを用いて減衰素子604の各位置における透過X線強度を検出しても構わない。
【0079】
このような構成により、微小なX線の位置変化を検出できるため、被検知物304と検出器306の距離を長く取る必要性がなく装置の小型化ができる。また、X線の遮蔽領域の無い透過型の減衰手段305を用いるため不感領域が存在しない。
なお、被検知物304と検出器306の距離を長くする構成を選択すれば、より微小な屈折によるX線の位置変化を検出することが出来る。
【0080】
また、位相変化の検出にX線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がない。
【0081】
(実施形態4:湾曲形状を有する減衰素子)
実施形態4においては、実施形態3とは異なる形状を有する減衰素子について説明する。
【0082】
図7(a)に実施形態4に係る減衰手段の構成例を示す。また、図7(b)に減衰手段を構成する減衰素子の構成例を示す。
【0083】
減衰素子は、屈折X線702の基準X線701からの位置変化に対し、連続的に変化する形状を持っていれば、位置変化を強度変化として検出器305により検出できる。しかし、屈折X線の位置変化に対する光路長変化が線形である場合は、その位置変化に対し検出するX線強度が指数関数的に激しく変化し、有効に位置変化を検出できる範囲が小さくなる。そこで、本実施形態では、屈折X線の位置変化に対する光路長変化が線形にならず、その二階微分値の値が正となる形状について説明する。
【0084】
図7(b)に減衰素子703を拡大した模式図を示す。図7(b)では、屈折によるX線の位置変化方向をX軸方向に、これと直行するX線の光路方向にy軸方向にとっている。
【0085】
被検知物を透過したX線は、屈折によりその位置が図7(b)の基準X線709から屈折X線705へΔxだけ変化する(符号704)。ここで、減衰素子703は、符号706で示した屈折X線が減衰素子703を透過する光路長t(x)について、その入射位置変化による二階微分値dt(x)/dxが正となるような形状を持つ。特にその光路長706の変化が対数関数型である場合、以下の式(9)で表される。
t(x)=AR・s{1−ln(x+1)/ln(s+1)} (式9)
ここで、sは減衰素子703のx軸方向の長さ、ARは減衰素子703の縦横比である。上記sは図7(b)において符号707で示されている。ここで縦横比ARは、符号708で示したy軸方向の長さLを用いて、以下の式(10)で表される。
AR=L/s (式10)
またs(符号707)は、減衰手段とX線検出手段が近接する場合は、X線検出手段の分解能の整数倍の値をとる。一方、近接しない場合はX線発生手段から見た減衰素子703の検出手段の検出面への投影が、X線検出手段の分解能の整数倍の値をとるように調整される。
【0086】
ところで、光路長706の変化が線型である場合には、この光路長t(x)は以下の式(11)で表される。
t(x)=AR(s−x) (式11)
なお、この光路長t(x)の二階微分値は零である。
【0087】
検出器で測定されるX線の強度I(x)は、検出器のダイナミックレンジDRを用いて、以下の式(12)で表される。
I(x)=DR・exp(−t(x)/lex) (式12)
ここでlexは、減衰素子703に用いる材料のX線に対する消衰距離である。さらに、減衰素子703の光路長変化が対数関数型である場合は、検出器で測定されるX線の強度I(x)は以下の式(13)で表される。
I(x)=DR・exp[‐AR・s{1−ln(x+1)/ln(s+1)}/lex
=DR・e−a(x+1) (式13)
ここでa,bは、以下の式(14)および式(15)で表される。
a=AR・s/lex (式14)
b=a/1n(s+1)=AR・s/(lex・1n(s+1)) (式15)
減衰素子703の縦横比や材料を選定し、bを1に近づくように調整すると、検出器での検出される強度変化は線型となる。このように強度変化を線型とすれば、強度変化が指数関数的に急激に変化するに比べ、検出する強度変化を緩やかにできる。
【0088】
次に、減衰素子703の光路長706の変化が対数関数型(強度変化が線型)である場合と、光路長の変化が線型(強度変化が指数関数的であるもの)である場合の比較を行う。
【0089】
なお、以下の計算において、X線発生手段から発生するX線としては、Moの特性X線としている。減衰素子703のx軸方向の長さs(符号707)およびダイナミックレンジDRは、それぞれ検出器306の分解能とダイナミックレンジに依存する。ここでは、検出器としてX線フラットパネル検出器を用いるとし、s=100μm、DR=5000cps、検出の積算時間1秒とする。
【0090】
減衰素子703について、位置変化に対し十分な強度変化を得るために素子の両端で100倍程度の強度変化を見込み、さらにARを加工可能な値として1程度に設定する。すなわち、lex=−1n(1/100)/(AR・s)より、消衰距離lexが22μm程度である材料を選択すればよい。このような材料として例えば、lex=22.8μmであるCuを減衰素子の材料として選択することができる。
【0091】
ここで、測定強度I(x)に対しその統計誤差であるI(x)の平方根よりも、I(x)の微分値の方が大きい範囲を位置変化の検出が有効である範囲(有効検出範囲)であるとする。X軸方向の長さsに対する有効検出範囲の割合をeffとする。したがって、減衰素子703の全検出領域で位置変化の検出が有効であれば、eff=1である。
【0092】
図8に、減衰素子703の光路長706の変化が対数関数型(式(9))と線型(式(11))である場合の、縦横比ARに対するeffの変化を示す。
【0093】
この図より、光路長変化が対数関数型である場合、縦横比ARを1.5から2.5程度に設定すれば、eff=1を達成することが分かる。一方、光路長変化が線型である場合には、縦横比ARを調整してもeff=0.5程度までしか向上できないことも分かる。
【0094】
図9(a)に縦横比ARが1.5であり光路長706の変化が対数関数型である場合の測定強度変化と、縦横比ARが0.85であり光路長706の変化が線型である場合の測定強度変化を示す。
【0095】
また、図9(b)に、図9(a)で示した強度変化の微分値と平方根(統計誤差)を示した。これらの図より、対数関数型は縦横比が線型より測定強度変化が緩やかであること、また、素子の全領域で測定強度変化の微分値が統計誤差を上回っていること、すなわちeffが1であることが分かる。
【0096】
光路長706の変化が対数関数型である場合、縦横比ARを1に固定したときであっても消衰距離lexを1.4程度に調整すればeff=1を達成できる。
【0097】
なお、消衰距離lexの調整はCuのような純金属によらなくてもよく、合金や混合物を選択することで調整してもよい。合金の場合は固溶体であることが望ましいが、材料が相分離する場合にもその微視構造がx軸方向の長さsや屈折したX線の断面サイズに比べ十分小さければよい。純金属、合金、混合物などの場合には、多孔構造をとることにより密度を変化させ消衰距離lexを調整してもよい。この場合も、孔のサイズはX軸方向の長さs(符号707)や屈折X線702の断面サイズに比べ十分小さいことが望ましい。
【0098】
また、図10に示すように、シリンドリカル面を対向させることにより減衰素子を構成してもよい。例えば、Cuで形成されたX線減衰部1001は、支持基板1002により固定されている。この支持基板1002は、X線の吸収を無視できる厚さまで加工された樹脂製の部材により構成してもよい。図10に示す減衰手段における隣り合う減衰素子間では、基準X線1003の調整位置からの同一方向の屈折X線の位置ずれは逆センスの強度変化として検出される。この減衰素子においても光路長変化の二階微分値は正となる。
【0099】
(実施形態5:コンピューテッドトモグラフィ)
実施形態5においては、コンピューテッドトモグラフィ(CT)の原理を用いて、3次元的な位相分布を得る装置の構成例について説明する。
【0100】
図11に、本実施形態におけるCT装置の構成例を説明する概略図を示す。
図11において、1101はX線源、1103は分割素子、1104は被検知物、1105は減衰手段、1106はX線検出器、1107は演算手段、1108は表示手段である。
【0101】
本実施形態におけるCT装置は、X線源1101、分割素子1103、減衰手段1105とX線検出器1106は、被検知物1104のまわりを同期させて移動させる可動手段により、移動可能に構成されている。
【0102】
また、分割素子1103により空間的に分割されたX線は被検知物1104に照射され、透過X線は減衰手段1105に入射する。
【0103】
減衰手段1105により、分割されたX線の被検知物1104での屈折による微量の位置変化量を得ることができる。減衰手段1105を透過したX線はX線検出器1106により検出される。
【0104】
この撮像を分割素子1103、減衰手段1105とX線検出器1106は、被検知物1104のまわりを同期させて移動させて行うことにより被検知物1104の投影データを得る。場合によっては分割素子1103、減衰手段1105とX線検出器1106を固定し、被検知物1104を回転させて投影データを得ても構わない。
【0105】
つぎに、本実施形態における演算処理の方法について説明する。
【0106】
図12に、演算処理のフロー図を示す。
【0107】
まず、第1のステップであるS200において、減衰手段1105を透過した各X線の強度情報を取得する。
次に、第2のステップであるS201において、各X線の強度情報から基準X線に対する位置変化量(d)を算出する。
次に、第3のステップであるS202において、位置変化量(d)と被検知物1104−減衰手段1105間の距離(Z)を用いて、各X線の屈折角(Δθ)を求める。
次に、第4のステップであるS203において、屈折角(Δθ)から各X線の微分位相(dφ/dx)を算出する。
次に、第5のステップであるS204において、得られた各微分位相(dφ/dx)をX方向に積分することによって位相(φ)を算出する。
【0108】
これらの一連のS201からS204の作業を、全投影データについて繰り返し処理する。
次に、第6のステップであるS205において、全投影データにおける位相像からコンピューテッドトモグラフィにおける画像再構成法(たとえばフィルタ逆投影法など)により、断層像を得る。
なお、S206のステップにおいては、断層像を表示手段1108によって表示することができる。
【0109】
このような構成により、装置の小型化ができ、かつ、X線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がなく、このCT装置を利用することにより、非破壊的に被検知物の3次元像を得ることができる。
【実施例】
【0110】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0111】
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用したX線撮像装置の構成例について説明する。
【0112】
図13に、本実施例の構成例について説明する図を示す。
図13において、1301はX線源、1302はモノクロメータ、1303は分割素子、1304は被検知物、1305は減衰手段、1306はX線検出器、1307は演算手段、1308は表示手段である。
【0113】
本実施例において、X線発生手段としては、X線源1301に示すMoターゲットの回転対陰極型のX線発生装置を用いる。
X線の単色化手段としては高配向性熱分解黒鉛(HOPG:Highly Oriented Pyrolytic Graphite)のモノクロメータ1302を用いMoの特性X線部分を抽出する。
モノクロメータ1302により単色化されたX線はX線源から100cm離れた位置に配置した分割素子1303により空間的に分割される。
【0114】
この分割素子1303としては、厚さ100μmのWにスリット幅40μmのスリットを並べたものを用いた。スリット周期は減衰手段1305上で150μmである。
【0115】
なお、W以外にも、Au、Pb、Ta、Ptなどの材料を使用することも可能である。
【0116】
分割素子1303により分割されたX線を被検知物1304に照射する。被検知物1304を透過したX線は被検知物1304から50cm離れた位置にある、減衰手段1305に入射する。
減衰手段1305はNiの三角柱を厚さ1mmのカーボン基板上に並べた構造を有し、その周期は150μmで三角柱の高さは75μmである。
分割素子1303によって分割されたX線は三角柱の周期方向の中心に入射するように配置されている。
減衰手段1305に近接した検出手段としてのX線検出器1306により、減衰手段1305を透過したX線強度を検出する。
X線検出器1306は画素サイズ50μm×50μmのフラットパネル検出器を用い、三角柱の周期方向3画素のX線強度値を足し合わせて1つの減衰素子に対するX線強度とした。
【0117】
被検知物1304の存在しない状態での同様の撮影を行ったときの各X線の強度との変化から、演算手段1307を用いて各X線の位置変化量(d)を事前に測定していた減衰手段の各位置でのX線透過率データのデータベースを用いて算出し、式(4)を用いてスリット周期方向に垂直方向の各画素の屈折角(Δθ)を算出する。
【0118】
屈折角(Δθ)から式(5)を用いて微分位相量を算出し、各X線から求めた微分位相量を空間的に積分することにより位相分布像を求める。
演算手段1307によって得られて、X線微分位相像、X線位相像は表示手段1308としてのPCモニタに表示される。
【0119】
[実施例2]
以下に、本発明の実施例2におけるX線撮像装置の構成例について説明する。
【0120】
図14に、本実施例の構成例について説明する図を示す。
図14において、1401はX線源、1404は被検知物、1405は減衰手段、1406はX線検出器、1408は表示手段である。
【0121】
本実施例において、X線発生手段としては、X線源1401に示すMoターゲットの回転対陰極型のX線発生装置を用いる。
X線源1401から発生したX線はX線源1401から100cm離れた位置に配置した被検知物1404に照射する。被検知物1404を透過したX線は被検知物1404から50cm離れた位置にある、減衰手段1405に入射する。
減衰手段1005はNiの三角柱を厚さ1mmのカーボン基板上に並べた構造を有し、その周期は150μmで三角柱の高さはは75μmである。
減衰手段1405に隣接した検出手段としてのX線検出器1406により、減衰手段1405を透過したX線強度を検出する。
X線検出器1406は画素サイズ50μm×50μmのフラットパネル検出器を用いて撮像した。
【0122】
被検知物1404の存在しない状態での同様の撮影を行ったときの像からの数学的な処理によって求めた像を表示手段1408としてのPCモニタに表示される。
【符号の説明】
【0123】
301 X線源
302 単色化手段
303 分割素子
304 被検知物
305 減衰手段
306 検出器
307 演算手段
308 表示手段
401 基準X線
402 X線
403 減衰手段
404 減衰素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知物によるX線の位相変化情報を取得するX線撮像装置において、
X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子と、
前記分割素子により分割されたX線が入射する減衰素子が複数配列された減衰手段と、
前記減衰手段により減衰されたX線の強度を検出するための強度検出手段とを有し、
前記減衰素子は、前記X線の入射位置に応じてX線の透過量が連続的に変化するように構成されていることを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記強度検出手段により検出されたX線の強度情報から、前記被検知物の微分位相像または位相像を演算する演算手段を有することを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記減衰素子は、入射するX線に対して垂直方向に厚みが連続的に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記減衰素子は、三角柱状により構成されていることを特徴とする請求項3に記載のX線撮像装置。
【請求項5】
前記減衰素子は、入射するX線に対して垂直方向に密度が連続的に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載のX線撮像装置。
【請求項6】
前記減衰素子は、該減衰素子における光路長について、X線の入射位置変化による二階微分値が正となる形状を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
【請求項7】
前記X線発生手段と、前記分割素子と、前記減衰手段と、前記強度検出手段と、を同期させて移動させる移動手段を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
【請求項8】
X線撮像装置に用いるX線撮像方法において、
空間的にX線を分割する工程と、
前記空間的に分割されたX線が入射する減衰素子が複数配列された減衰手段を用いて、前記被検知物によるX線の位相変化情報を前記減衰素子を透過したX線の強度から取得する工程を有し、
前記減衰素子は、X線の入射位置に応じてX線の透過量が連続的に変化するように構成されていることを特徴とするX線撮像方法。
【請求項9】
X線撮像装置において、
X線を発生するX線発生手段と、
被検知物を透過した際に生じるX線の強度分布の変化に応じてX線の透過量が連続的に変化する吸収能勾配を有した減衰素子が複数配列された減衰手段と、
前記減衰手段により減衰されたX線の強度を検出するための強度検出手段とを有することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項10】
X線撮像装置に用いるX線撮像方法において、
被検知物を透過した際に生じるX線の強度分布の変化に応じてX線の透過量が連続的に変化する吸収能勾配を有した減衰素子が複数配列された減衰手段を用いて、前記減衰素子を透過したX線の強度分布の変化を検出することを特徴とするX線撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−11039(P2011−11039A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215757(P2009−215757)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】