説明

X線撮影装置

【課題】 狭い視野のX線検出器を用いて広い領域のX線透過データを得ることができ、しかも、X線の照射角度の変化に起因する像の歪みが発生することのないX線撮影装置を提供する。
【解決手段】 X線検出器2を、X線発生装置1からのX線光軸Lに直交する平面上で移動させる検出器移動機構5を設け、その検出器移動機構5によりX線検出器2を複数の位置に移動させた状態で、それぞれ取り込んだX線透過データを用いることにより、拡張された透視領域での被写体のX線像を構築する。このデータの取り込み時に、X線発生装置1と被写体Wとを相対的に移動させないため、被写体Wに対するX線照射角は変化せず、従ってその照射角の変化に伴う像の歪みが生じず、そのための補正演算が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は産業用のX線撮影装置に関し、具体的には、被写体のX線透視像を得るためのX線透視装置のほか、被写体の断層像を得るためのX線CT装置をも含むX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工業製品等を非破壊のもとに観察する方法として、従来、X線透視装置やX線CT装置などのX線撮影装置を用いる方法が知られている。X線透視装置においては、図6に模式的に示すように、X線源61とX線検出器62とを対向配置するとともに、その間に被写体Wを保持するためのテーブル等の保持部63を配置した構成を採る(例えば特許文献1参照)。また、X線CT装置においては、図7に模式的に示すように、同じくX線源71とX線検出器72とを対向配置するとともに、その間に被写体Wを保持してX線光軸Lに直交する回転軸Rを中心とした回転を与えるための回転テーブル73を配置した構成を採る(例えば特許文献2参照)。
【0003】
これらの装置においては、X線源から発生したX線を被写体Wを透過させた後にX線検出器に入射させ、そのX線検出器の各画素出力であるX線透過データ、つまり各画素の濃淡情報を取り込む。X線透視装置ではそのX線検出器62の各画素の濃淡情報を当該各画素の位置に対応させて、表示器の表示画素の濃淡を決定して表示器に表示することによって被写体のX線透視像を構築する。
【0004】
一方、X線CT装置においては、回転テーブル73を駆動することによって被写体Wに回転軸Rを中心とする回転を与え、微小回転角度ごとにX線検出器72からのX線透過データを取り込み、通常は360°分のX線透過データを再構成演算することにより、回転軸Rに直交する平面で被写体をスライスした断層像を構築する。
【0005】
これらの装置における撮影倍率、つまり拡大率は、X線源(焦点)と被写体Wとの距離(SOD)と、X線源(焦点)とX線検出器との距離(SID)の比によって定まる。このような撮影倍率を自由に選択できるように、これらの装置においては、通常、保持部63ないしは回転テーブル73をX線光軸Lに沿った方向に移動させ、あるいはX線検出器62ないしは72を同方向に移動させ、更にはX線源61ないしは71を同方向に移動させる駆動機構を備えている。加えて、X線透視装置においては、保持部63をX線光軸Lに直交する平面上で移動させる移動機構を設けることにより、被写体Wの要観察部(注目部位)を透視像上の中心に位置させることができるようになっている。また、X線CT装置においては、回転テーブル73の上に、被写体Wを保持ないしは搭載して、X線光軸Lに直交する平面に沿って移動する移動テーブルを配置し、この移動テーブルの駆動により被写体Wを回転軸Rに対して移動させることにより、被写体Wの注目部位を中心とした断層像を得ることができるように構成されたものが多い。
【0006】
ところで、X線検出器には様々なタイプのものがあるが、いずれも、決まった視野および画素数を有し、その出力は、最終的には各画素の濃度値で表されるデジタルデータとなり、1回の撮影動作により得られるX線透視領域は、X線検出器の視野によって一意的に決まる。
【0007】
X線検出器の視野よりも大きな領域のX線透視像を得る装置として、X線光軸に直交する平面上で保持部を自動的に移動させることにより、被写体の複数の部分画像を撮影し、その各部分画像を繋ぎ合わせて広い視野の被写体の全体透視像を構築する装置が知られている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−170226号公報
【特許文献2】特開2004−184122号公報
【特許文献3】特開2004−37386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
広い視野を得るために被写体をX線源とX線検出器の間で移動させる方法は、図8に模式的に示すように、被写体Wの移動前後のX線透過データにおいて、被写体Wの同じ位置Wpに対するX線源61からのX線の照射角度が変化し、これらの移動前後で取り込んだX線検出器62からのX線透過データを単純に合成するだけでは像に歪みが発生するため、補正演算を要するという問題がある。
【0009】
また、例えば比較的大きな面積の板状の被写体等をX線撮影する場合、被写体を移動させることが困難な場合があり、このような場合には被写体の移動による視野の拡張を実現することができないという問題がある。
【0010】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、狭い視野のX線検出器を用いて広い領域のX線透過データを得ることができ、しかも、X線の照射角の変化に起因する像の歪みが発生することのないX線撮影装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の課題は、上記のような比較的大きな面積の板状の被写体等、何らかの理由により被写体を移動させることが困難な場合でも、広い領域のX線透過データを得ることのできるX線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明のX線撮影装置は、上記した主たる課題および他の課題の双方を解決するものであって、互いに対向配置されたX線源とX線検出器の間に、被写体を保持する保持部が配置されているとともに、その保持部に保持された被写体にX線を照射して上記X線検出器の出力を取り込む撮影動作により得られるX線透過データを用いて、被写体のX線像を構築する画像形成手段を備えたX線撮影装置において、上記X線検出器を、上記X線源からのX線光軸に直交する平面上で移動させる検出器移動機構を備え、上記X線画像形成手段は、その検出器移動機構によりX線検出器を移動させた複数の位置でそれぞれ取り込んだX線透過データを用いることにより、拡張された透視領域での被写体のX線像構築することによって特徴づけられる。
【0013】
ここで、請求項1に係る発明においては、X線検出器をフラットパネル型のX線検出器とする構成(請求項2)を好適に採用することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明のX線撮影装置は、上記した他の課題を解決するものであって、上記検出器移動機構に代えて、上記X線源を、当該X線源からのX線光軸に直交する平面上で移動させるX線源移動機構を設け、上記X線画像形成手段は、そのX線源移動機構によりX線源を移動させた複数の位置でそれぞれ取り込んだX線透過データを用いることにより、拡張された透視領域での被写体のX線像構築することによって特徴づけられる。
【0015】
そして、以上の各発明において、上記画像形成手段が上記X線透過データを用いて被写体のX線透過像を形成する手段である場合、つまり上記した各発明をX線透視装置に適用する場合には、画像形成手段は、上記複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを合成して1枚のX線透過像を形成する(請求項4)。
【0016】
一方、請求項1〜3に係る発明において、上記保持部に保持された被写体に上記X線光軸に直交する回転軸を中心とした回転を与える回転駆動手段を備えるとともに、上記撮影動作が、X線を照射しつつ被写体を回転させ、その微小回転角度ごとにX線透過データを取り込む動作であり、上記画像形成手段が、その撮影動作により取り込んだX線透過データを再構成して上記回転軸に直交する被写体の断層像を構築する手段である場合、つまり請求項1〜3に係る発明をX線CT装置に適用する場合には、上記画像形成手段は、上記複数の位置においてそれぞれ被写体を回転させて取り込むことにより得られるX線透過データを用いることにより拡張された断層視野の断層像を構築する(請求項5)。
【0017】
本発明は、被写体を移動させずに、X線検出器およびX線源のうちのいずれかを、X線源からのX線光軸に直交する平面上で移動させることにより、X線検出器の視野を実質的に拡張するものであり、X線検出器を移動させる場合には、前記した主たる課題および他の課題を解決することができ、X線源を移動させる場合には他の課題を解決することができる。
【0018】
すなわち、請求項1に係る発明において、X線検出器をX線光軸に直交する平面上で移動させ、複数の位置においてX線透過データを取り込めば、被写体を移動させることなく、実質的に視野を拡張することができる。しかも、X線源(焦点)と被写体との相対的位置関係は不変であるため、X線照射角の相違による像の歪みも生じない。
【0019】
請求項1に係る発明におけるX線検出器の種類は特に限定されるものではないが、イメージインテンシファイアとCCDを組み合わせたX線検出器を用いた場合には、イメージインテンシファイアへの入射位置の相違に起因する歪みが生じ、その補正が必要となるのに対し、請求項2に係る発明のようにフラットパネル型のX線検出器(FPD)を用いると、その歪みも生じない。
【0020】
一方、請求項3に係る発明では、X線源を当該X線源からのX線光軸に直交する平面上で移動させ、その複数の位置においてX線透過データを取り込む。この手法によっても被写体を移動させることなく実質的に視野を拡張することができる。この場合、X線源の移動前後において当該X線源と被写体との相対的位置関係が変化するため、移動前後で採取したX線透過データの合成に際しては、X線照射角の変化に起因する像の歪みの補正演算が必要である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、視野の小さい安価なX線検出器を用いて、被写体を移動させることなく広い領域のX線透過データを得ることができ、なおかつ、X線の照射角度の変化に起因する像の歪みが生じず、その歪みのための補正演算が不要なX線透視装置もしくはX線CT装置が得られる。そして、請求項2に係る発明のようにX線検出器としてFPDを用いれば、検出器に起因する歪みも生じず、その補正演算をも不要とすることができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、被写体を移動させることなく広い透視領域を得ることができ、特に、例えば比較的大面積の板状の被写体など、移動させることが困難な被写体の広い視野でのX線撮影が可能となX線透視装置もしくはX線CT装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1はX線透視装置の実施の形態の構成図であり、機械的構成を表す模式図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【0024】
X線発生装置1はその焦点1aからコーン状のX線を出力する。このX線発生装置1に対向して2次元の検出面を持つX線検出器2が配置されている。このX線検出器2はFPDである。これらのX線発生装置1とX線検出器2の間に、被写体Wを保持する被写体保持部3が配置されている。
【0025】
この被写体保持部3は、保持部移動機構4によりX線光軸Lの方向(z軸方向)と、そのz軸方向に直交する平面上で互いに直交するx,y軸方向の合計3軸方向に移動させることができる。この保持部移動機構4の駆動による被写体保持部3のz軸方向への移動によりSODが変化し、撮影倍率を変化させることができ、また、x,y軸方向への移動により、被写体W上での撮影領域を変化させることができる。
【0026】
この実施の形態における機構上の特徴は、X線検出器2をX線光軸Lに直交する平面上、つまりx,y軸方向に移動させる検出器移動機構5を備えている点である。この検出器移動機構5により、X線検出器2をx,y軸方向への有効幅の数倍の距離だけこれらの各方向に移動させることかできる。
【0027】
X線検出器2からの各画素出力、つまりX線透過データは、キャプチャーボード等の画像データ取り込み回路10を介してパーソナルコンピュータ11に取り込まれて記憶される。パーソナルコンピュータ11では、その記憶したX線透過データを用いて後述するように被写体WのX線透視像を形成し、表示器12に表示する。
【0028】
パーソナルコンピュータ11には、また、マウスやキーボード、ジョイスティック等の操作部13が接続されているとともに、上記した保持部移動機構4および検出器移動機構5に対してそれぞれの駆動信号を供給するための保持部移動機構駆動回路14および検出器移動機構駆動回路15が接続されており、これらの駆動回路14,15はこのパーソナルコンピュータ11の制御下に置かれている。そして、操作部13の操作により、保持部移動機構4を駆動して被写体保持部3をx,y,z軸方向に随意に移動させることができるとともに、同じく操作部13の操作により検出器移動機構5を駆動してX線検出器2をy,z軸方向に随意に移動させることができる。
【0029】
以上の実施の形態により広い視野のもとに被写体WのX線透視像を得る場合には、被写体保持部3を適宜に移動させて撮影倍率等を決定した後、図2にz軸方向から見た模式図を例示するように、検出器移動機構5を駆動してX線検出器5のx,y軸方向への位置をA1〜A4に変化させて位置決めし、その各位置においてX線透過データを取り込む。この例では、移動前後でX線検出器2の視野が一辺において規定量だけ重畳するように位置決めしている。パーソナルコンピュータ11では、このA1〜A4で示される各視野で取り込んだX線透過データを、重畳部分が画像上で重なり合うように合成して1枚のX線透過像を構築し、表示器12に表示する。
【0030】
このようにして得られるX線透過像は、実際のX線検出器2の視野の略4倍の視野を持つX線検出器を用いて撮影したX線透過像と実質的に同等の像となり、狭い視野のX線検出器2を用いて広い視野のX線透過像を得ることができる。しかも、X線検出器2の移動前後において被写体Wに対するX線の照射角は変化しないので、被写体Wを移動させる場合のように合成に際して照射角の変化に基づく歪みの補正を行う必要がない。そして、X線検出器2としてFPDを用いることによって、X線検出器2へのX線の入射位置に起因する歪みも生じず、その補正演算をも行う必要がなくなる。
【0031】
ここで、以上の実施の形態においては、X線検出器2の移動前後における視野がその一辺において互いに重畳するように当該X線検出器2の移動量を設定したが、移動前後における視野がその一辺において互いに接するように移動させてもよく、更には、移動前後における視野が互いに離隔するように移動させてもよい。この場合、合成後のX線透視像は連続的でなく、部分的に空白の部分が存在する状態となるものの、離散的ではあるが広い視野の透視像が得られる。
【0032】
次に請求項3に係る発明の実施の形態について述べる。図3にその要部機械的構成を表す模式図を示す。この例において、互いに対向配置されたX線発生装置1およびX線検出器2の間に被写体Wを保持するための被写体保持部3を配置している点は先の例と同等であるが、この例の特徴は、X線発生装置1をX線光軸L(z軸)に直交する平面上、つまりx,y軸方向に移動させるX線源移動機構6を備えている点である。
【0033】
この例において、図示のようにX線発生装置1を移動させる前後において、それぞれX線検出器2の各画素出力を取り込み、合成して1枚のX線透視像を構築することにより、被写体Wを移動させることなく広い視野のX線透視像を得ることができる。このX線発生装置1を移動させる場合においても、図示のようにX線検出器2の受光面上で被写体WのX線透視像が部分的に重複するようにX線発生装置1を移動させるほか、先の例と同様に互いに隣接するように、あるいは移動前後で被写体WのX線透視像が互いに離隔しているような移動のさせ方でもよい。そして、この例のようにX線発生装置1を移動させる場合には、X線発生装置1の移動前後において被写体Wの照射角が変化するため、その補正演算が必要であるが、何らかの理由により被写体Wを移動させることが困難である場合に、広い視野を得る必要のある場合には有効である。
【0034】
次に、請求項1に係る発明をX線CT装置に適用した実施の形態について説明する。
図4はその実施の形態の構成図であり、機械的構成を表す模式図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図で、図5には機械的構成の模式的平面図を示す。
【0035】
X線発生装置21とX線検出器22が対向配置されており、これらの間に被写体Wを保持して回転を与えるための回転テーブル23が配置されている。X線発生装置21は、この例においても焦点21aからコーン状にX線を発生する。また、X線検出器22についても、図1の例と同様に2次元の検出面を持つFPDである。
【0036】
回転テーブル23の回転軸Rは、X線発生装置21からのX線光軸(x軸方向)に直交するz軸方向に沿っている。回転テーブル23は、テーブル移動機構24により、X線光軸方向であるx軸方向と、そのx軸方向に直交するy,z軸方向に移動させることができるようになっている。
【0037】
この例における特徴は、X線検出器22を、X線光軸Lに直交するy,z軸方向に移動させるための検出器移動機構25を備えている点である。
【0038】
回転テーブル23は回転テーブル駆動回路31からの駆動信号により回転し、また、テーブル移動機構24および検出器移動機構25は、それぞれテーブル移動機構駆動回路32および検出器移動機構駆動回路33からの信号によって駆動制御される。これらの回転テーブル駆動回路31、テーブル移動機構駆動回路32および検出器移動機構駆動回路33はパーソナルコンピュータ34の制御下に置かれている。このパーソナルコンピュータ34には、断層像再構成演算装置35が接続されているとともに、マウスやキーボード、あるいはジョイスティック等からなる操作部36と、断層像等を表示するための表示器37が接続されている。
【0039】
次に、以上の実施の形態の動作を使用方法とともに説明する。CT撮影を行うに当たっては、操作部36の操作によりテーブル移動機構34を駆動して回転テーブル23を適宜に位置決めして撮影倍率や注目領域等を設定した後、例えば、まず、図4、図5に示すように、X線検出器22のy軸方向有効幅の中心がX線光軸L上に位置した状態(図4においてA1で示す位置に位置決めした状態)で、被写体WにX線を照射しながら、回転テーブル23を回転させ、0°〜360°までの微小回転角度ごとにX線透過データを断層像再構成演算装置35に取り込む。
【0040】
次に、検出器移動機構25を駆動してX線検出器22をy軸方向一定の向きに移動させる。その移動量は任意であるが、大きな視野を得ようとする場合には、図4にA2で示される位置にまで、つまりX線検出器2のy軸方向有効幅と同等もしくは若干短い距離だけ移動させる。そして、その状態で、上記と同様に被写体WにX線を照射しながら、回転テーブル23を回転させ、0°〜360°までの微小回転角度ごとにX線透過データを断層像再構成演算装置35に取り込む。
【0041】
更に、検出器移動機構25を駆動してX線検出器22をy軸方向に上記とは逆向きに移動させ、図4にA3で示される位置に位置決めした状態で、同様にして被写体WにX線を照射しながら、回転テーブル23を回転させ、0°〜360°までの微小回転角度ごとにX線透過データを断層像再構成演算装置35に取り込む。
【0042】
断層像再構成演算装置35では、以上の各回のCT撮影により得られた0°〜360°のX線透過データを、同一角度ごとに、互いに重複する部分が透視像上で重なり合うように合成し、その合成後のX線透過データを再構成して、被写体Wの断層像を構築する。このような手法によれば、X線検出器22のy軸方向有効幅の3倍の同方向有効幅を持つX線検出器を用いてCT撮影を行った場合と同等の視野(スキャン幅)を持つ断層像を得ることかできる。
【0043】
また、z軸方向に長い被写体の撮影に際しては、X線検出器22を上記と同様にz軸方向に移動させ、その各移動位置においてCT撮影して得たX線透過データを合成して断層像を再構成することにより、X線検出器22のz軸方向への実際の有効幅よりも大きな有効幅を持つX線検出器を用いてCT撮影した場合と同等の視野を持つ断層像を得ることができ、z軸方向に長い被写体の3次元像構築するのに有効である。勿論、X線検出器22をy軸方向並びにz軸方向の双方に移動させ、これらの各位置においてCT撮影して得たX線透データを、同様に合成して断層像を再構成することもできる。
【0044】
以上のようなCT撮影においては、被写体WとX線発生装置21を移動させずにX線検出器22を移動させるが故に、X線透視装置に適用した場合と同様に、被写体Wに対するX線の照射角が変化しないため、X線検出器22の各位置において採取したX線透過データを、照射角の変化に起因して発生する歪みの補正演算を行うことなく合成して再構成演算に供することができる。
【0045】
ここで、z軸方向への視野を増大させる他の構成として、X線発生装置21をz軸方向に移動させる機構を設けてもよい。この場合、上記した例と同様に、X線発生装置21のz軸方向の複数の位置に位置決めし、その各位置においてCT撮影して得られるX線透過データを上記と同様に合成し、その合成されたX線透過データを用いて断層像を構築すればよいのであるが、このようにX線発生装置21を移動させると、被写体Wに対するX線の照射角が変化して像の歪みが生じるため、被写体Wを移動させる場合と同様の補正演算が必要となる。しかしながら、被写体Wをz軸方向に移動させることが困難である場合、例えば装置のカバーとの干渉によりz軸方向に長い被写体のz軸方向への移動が不可能である場合などにおいて、被写体の3次元像を得る必要がある場合等において有効である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明をX線透視装置に適用した実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図2】本発明の実施の形態による撮影動作の説明図である。
【図3】請求項3に係る発明の実施の形態の要部機械的構成を表す模式図である。
【図4】本発明をX線CT装置に適用した実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式的平面図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図5】図4の実施の形態の機械的構成の模式的正面図である。
【図6】従来のX線透視装置の基本的構成例を示す模式図である。
【図7】従来のX線CT装置の基本的構成例を示す模式図である。
【図8】従来のX線撮影装置において広い視野を得るために被写体を移動させる方法において生じるX線の照射角度が変化の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1,21 X線発生装置
1a,21a 焦点
2,22 X線検出器
3 被写体保持部
4 保持部移動機構
5 検出器移動機構
10 画像データ取り込み回路
11 パーソナルコンピュータ
12 表示器
13 操作部
14 保持部移動機構駆動回路
15 検出器移動機構駆動回路
23 回転テーブル
24 テーブル移動機構
25 検出器移動機構
31 回転テーブル駆動回路
32 テーブル移動機構駆動回路
33 検出器移動機構駆動回路
34 パーソナルコンピュータ
35 断層像再構成演算装置
36 操作部
37 表示器
L X線光軸
R 回転軸
W 被写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置されたX線源とX線検出器の間に、被写体を保持する保持部が配置されているとともに、その保持部に保持された被写体にX線を照射して上記X線検出器の出力を取り込む撮影動作により得られるX線透過データを用いて、被写体のX線像を構築する画像形成手段を備えたX線撮影装置において、
上記X線検出器を、上記X線源からのX線光軸に直交する平面上で移動させる検出器移動機構を備え、上記X線画像形成手段は、その検出器移動機構によりX線検出器を移動させた複数の位置でそれぞれ取り込んだX線透過データを用いることにより、拡張された透視領域での被写体のX線像を構築することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
上記X線検出器がフラットパネル型のX線検出器であることを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
互いに対向配置されたX線源とX線検出器の間に、被写体を保持する保持部が配置されているとともに、その保持部に保持された被写体にX線を照射して上記X線検出器の出力を取り込む撮影動作により得られるX線透過データを用いて、被写体のX線像を構築する画像形成手段を備えたX線撮影装置において、
上記X線源を、当該X線源からのX線光軸に直交する平面上で移動させるX線源移動機構を備え、上記X線画像形成手段は、そのX線源移動機構によりX線源を移動させた複数の位置でそれぞれ取り込んだX線透過データを用いることにより、拡張された透視領域での被写体のX線像を構築することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項4】
上記画像形成手段が、上記X線透過データを用いて被写体のX線透過像を形成する手段であり、上記複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを合成して1枚のX線透過像を形成することを特徴とする請求項1,2または3に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
上記保持部に保持された被写体に上記X線光軸に直交する回転軸を中心とした回転を与える回転駆動手段を備えるとともに、上記撮影動作が、X線を照射しつつ被写体を回転させ、その微小回転角度ごとにX線透過データを取り込む動作であり、上記画像形成手段が、その撮影動作により取り込んだX線透過データを再構成して上記回転軸に直交する被写体の断層像を構築する手段であって、上記複数の位置においてそれぞれ被写体を回転させて取り込むことにより得られるX線透過データを用いることにより拡張された断層視野の断層像を構築することを特徴とする請求項1、2または3に記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−322799(P2006−322799A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145905(P2005−145905)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】