説明

X線撮影装置

【課題】 被検者が移動した場合においても、過剰な被曝を防止し、また、速やかに再撮影を行うことが可能なX線撮影装置を提供する。
【解決手段】 X線撮影時に、超音波センサによりX線照射部3と被検者9との距離を測定する。そして、X線照射部30と被検者9との距離の測定値の変化量が、設定値LX以上となったときには、X線撮影を停止するとともに、表示部14にエラー表示を行う。また、X線照射部3と被検者9との距離の測定値の変化量が、設定値LXより大きいLY以上となったときには、移動機構4によるX線照射部3の移動を緊急停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線照射部と、X線検出器と、X線照射部を移動させる移動機構とを備え、被検者における断層面に向けて照射され被検者を通過したX線を検出することによりX線断層撮影を行うX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなX線撮影装置は、例えば特許文献1に記載されているように、被検者における撮影すべき断層面を中心にX線照射部を移動させることにより、その断層面に焦点を絞り、その他の断層面をぼかして撮影して、必要な断層面の画像を得るものである。
【0003】
また、このようなX線撮影装置においては、適切なX線の線量でX線撮影を実行するために、被検者の体厚に応じてX線管の管電圧や管電流時間積等の撮影条件を変更する必要がある。ここで、X線管を有するX線照射部とX線検出器を有する撮影台との距離は、一般的に、ポテンショメータ等により測定される。一方、被検者の体表面とX線管との距離は、従来、X線照射部に取り付けられたメジャーを利用して測定している。そして、それらの距離から、被検者の体厚を計算し、計算された体厚に応じてX線管の管電圧や管電流時間積等の撮影条件を変更していた。また、特許文献2に記載されたように、X線照射部に超音波センサを付設し、この超音波センサによる測定値に基づいて、被検者の体厚を測定するX線撮影装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−21328号公報
【特許文献2】特開2006−149426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したX線断層撮影を行うX線撮影装置においては、断層撮影から断層画像を得るまでには、一定の時間を要する。一方、断層撮影中に被検者が移動したときには、撮影した画像にブレが生じ、適正な断層画像が得られない。例えば、立位撮影台を使用してX線撮影を行う場合、被検者がバランスを崩して動いてしまい、適正な画像が得られない場合がある。また、臥位撮影台を使用してX線撮影を行う場合に、被検者が急に立ち上がってしまう場合もある。
【0006】
このように、被検者が移動してしまった場合においても、それに気づかずに撮影を継続した場合には、被検者に余分な被曝が生ずることになる。また、再撮影を行う場合にも、余分な時間がかかってしまうという問題も生ずる。さらには、被検者がバランスを崩す等により大きく移動してしまった場合には、この被検者が断層撮影のために移動しているX線照射部に衝突する危険性もある。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、被検者が移動した場合においても、過剰な被曝を防止し、また、速やかに再撮影を行うことが可能なX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、X線照射部と、X線検出器と、前記X線照射部を移動させる移動機構とを備え、被検者における断層面に向けて照射され被検者を通過したX線を検出することによりX線断層撮影を行うX線撮影装置であって、X線撮影時に、前記X線照射部と前記被検者との距離を測定する距離計と、前記距離計による前記X線照射部と前記被検者との距離の測定値の変化量が、予め設定した設定値LX以上となったときに、X線撮影を停止させる制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御部は、前記距離計による前記X線照射部と前記被検者との距離の測定値の変化量が前記設定値LX以上となったときに、表示部にエラー表示を行う。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記制御部は、前記距離計による前記X線照射部と前記被検者との距離の測定値の変化量が前記設定値LXより大きいLY以上となったときに、前記移動機構によるX線照射部の移動を停止させる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、前記距離計によるX線撮影時の前記X線照射部と前記被検者との距離の測定値と、X線撮影条件とに基づいて、前記被検者に対するX線の入射線量を計算する計算手段を備える。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、被検者が移動した場合に速やかにX線撮影を中止することができ、被検者に対する過剰な被曝を防止することが可能となる。このとき、被検者の体厚を測定するために従来より使用されている距離計を利用して被検者の移動を測定することから、被検者の移動を測定するために新たに特別な測定装置を設置する必要がない。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、エラー表示によって、被検者の移動によりX線撮影を中止したことを認識することができ、その後速やかに再撮影を行うことが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、移動機構によりX線照射部の移動を停止させることにより、被検者がX線断層撮影のために移動するX線照射部に衝突することを防止することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、被検者の移動に伴うX線の入射線量の変化を考慮して入射線量の計算を行うことができ、正確な入射線量を算出することが可能となる。このとき、入射線量の計算に従来より使用されている距離計を利用することから、被検者との距離を測定するために新たに特別な測定装置を設置する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係るX線撮影装置を使用してX線撮影を行う様子を示す説明図である。
【図2】X線検出部2の側面概要図である。
【図3】X線照射部3および移動機構4の側面図である。
【図4】移動機構4の平面図である。
【図5】移動機構4の斜視図である。
【図6】この発明に係るX線撮影装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【図7】この発明に係るX線撮影装置によるX線撮影動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るX線撮影装置を使用してX線撮影を行う様子を示す説明図である。
【0018】
このX線撮影装置は、撮影室外に設置されハンドスイッチ11、操作パネル12およびテーブル13上に設置された表示部14を備えた操作部1を有する。また、このX線撮影装置は、ケーシング21に対して昇降するフラットパネルディテクタ20と衝立19とを有するX線検出部2と、X線管30を有するX線照射部3と、このX線照射部3を移動させる移動機構4とを備える。これらのX線検出部2、X線照射部3および移動機構4は、撮影室内に設置されている。
【0019】
このX線撮影装置は、移動機構4の作用により、X線照射部3を昇降および揺動させながら被検者9における断層面91に向けてX線を照射し、被検者9を通過したX線をX線照射部3と同期して昇降移動するフラットパネルディテクタ20により検出することで、被検者9のX線断層撮影を行うものである。
【0020】
図2は、X線検出部2の側面概要図である。
【0021】
このX線検出部2は、立位撮影台を構成するものであり、X線検出器としてのフラットパネルディテクタ20を備える。このフラットパネルディテクタ20は、図示しないガイド部材に案内されることにより、ケーシング21に対して昇降可能となっている。また、このフラットパネルディテクタ20は、プーリ26に巻回されたワイヤ28の一端に連結されている。このワイヤ28の他端は、カウンターウエイト23と連結されている。ケーシング21にはブラケット29を介して昇降モータ24が固定されている。プーリ26は、昇降モータ24の回転軸に付設された駆動プーリ25とベルト27を介して接続されている。このため、フラットパネルディテクタ20は、昇降モータ24の駆動により昇降する。そして、フラットパネルディテクタ20の上下位置は、ポテンショメータ22により検出される。フラットパネルディテクタ20の昇降位置のX線照射部3側には、被検者9とフラットパネルディテクタ20との干渉を防止するための衝立19が設置されている。
【0022】
図3は、X線照射部3および移動機構4の側面図である。
【0023】
この図に示すように、X線照射部3は、X線を照射するX線管30と、X線管30から照射されたX線の照射範囲を制限するコリメータ31と、操作ハンドル32とを備える。このX線照射部3は、揺動モータ42の駆動により、移動機構4の下端部に配設された軸41を中心に揺動可能となっている。そして、このX線照射部3は、移動機構4の駆動により昇降可能となっている。
【0024】
このX線照射部3には、X線撮影時に、X線管30と被検者9の体表面との距離を測定する距離計としての超音波センサ33が付設されている。この超音波センサ33は、超音波を発信する発信部と、この発信部から発信され被検者9の体表面で反射した超音波を受信する受信部とを備える。この超音波センサ33においては、発信部から発信された超音波は空気中を放射状に伝播し、被検者9の体表面で反射して受信部に戻ってくる。このときの発信から受信までの時間と、空気中の超音波の伝播速度とから、被検者9と超音波センサ33との距離を測定することが可能となる。
【0025】
次に、X線照射部3を昇降移動させる移動機構4の構成について説明する。図4は、移動機構4の平面図であり、図5は、移動機構4の斜視図である。なお、図4においては、バランスバネ53の図示を省略している。
【0026】
図3乃至図5を参照して、この移動機構4は、支持枠43と、X線照射部3を懸垂保持するワイヤ44と、支持枠43の所定位置に設けられた第1定滑車45、第2定滑車46および第3定滑車47と、支持枠43に対して軸71を中心に揺動可能に取り付けられた左右一対の揺動アーム49と、この揺動アーム49に回転可能に取り付けられた動滑車48とを備える。
【0027】
ワイヤ44の両端は、揺動アーム49に設けた固定部50(図5参照)に固定されている。そして、このワイヤ44は、動滑車48と第1、第2、第3定滑車45、46、47に順次巻回された上で、その中央部がX線照射部3に連結された懸垂部61に固定されている。これにより、X線照射部3は、懸垂部61を介してワイヤ44により懸垂保持される。また、X線照射部3は、筒状で伸縮可能な取付具62を介して支持枠43に取り付けられている。さらに、この支持枠43自体は、天井に設けられた図示しない走行レール上を走行可能となっている。そして、X線照射部3とフラットパネルディテクタ20との距離は、ポテンショメータ59(図1(a)参照)により検出されている。
【0028】
第1定滑車45は、X線照射部3の直上部に一対設けられ、X線照射部3を上下動させる力を水平方向への力に変えるべく構成されている。第2定滑車46は、左右の支持枠付近に水平方向を向いて設けられ、ワイヤ44を支持枠43と平行に配置させる作用を奏する。第3定滑車47は鉛直方向を向いて左右対称に配設され、支持枠43を貫通する駆動軸63に固定されている。この駆動軸63の一端は、ブラケット64を介して支持枠43に固定された駆動モータ65と連結されている。また、この駆動軸63の他端は、ブラケット66を介して支持枠43に固定されたブレーキ機構67と連結されている。
【0029】
また、この移動機構4は、バランスバネ53を備える。このバランスバネ53は圧縮バネであり、その一端は、円板55と当接している。そして、この円板55は、支持枠43に固定された軸54を中心に回動するバネ取付部材56に対して、ナット57により固定されている。また、このバランスバネ53の他端は、リテーナ52内に収納されており、このリテーナ52はバネ連結部51を介して、左右一対の揺動アーム49に揺動可能に連結されている。
【0030】
この揺動アーム49は、その一端部を支持枠43に軸71を介して取り付けられるとともに、他端部に上述した動滑車48を回転可能に固定している。そして、上述したワイヤ44は、動滑車48と第3定滑車47との間で巻回されている。このため、動滑車48は、X線照射部3が下降すると上方に移動し、X線照射部3が上昇すると下方に移動する構成となっている。
【0031】
そして、上述したバランスバネ53は、その弾性力が常にX線照射部3を引き上げる方向に揺動アーム49に作用し、X線照射部3の自重とバランスさせる構成を有する。すなわち、X線照射部3の上下運動に伴い、リテーナ52はバネ連結部51を中心に回転し、前記バネ取付部材56は、このバネ連結部51に連動して軸54を中心に回転する。このとき、リテーナ52はX線照射部3が下方に移動するにつれて円板55に接近し、バランスバネ53を圧縮する。圧縮されたバランスバネ53は、リテーナ52およびバネ連結部51を介して、揺動アーム49がX線照射部3を上昇させる方向に揺動させるべく作用する。
【0032】
このような構成を有する移動機構においては、駆動モータ65の駆動により駆動軸63を回転させることで、X線照射部3を昇降することが可能となる。そして、X線照射部3を緊急停止させるためには、ブレーキ機構67の作用により駆動軸63の回転を停止させる。
【0033】
図6は、この発明に係るX線撮影装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【0034】
このX線撮影装置は、論理演算を実行するCPUを備え、装置全体を制御する制御部80と、予め設定したデータをテーブルとして保持し、あるいは、その他のデータを一時的に記憶するデータ記憶部81とを備える。この制御部80は、フラットパネルディテクタ20を昇降駆動するための昇降モータ24と、X線照射部3を揺動駆動するための揺動モータ42と、X線照射部3を昇降駆動するための駆動モータ65と、ブレーキ機構67と接続されている。また、この制御部80は、上述したハンドスイッチ11、操作パネル12、表示部14、超音波センサ33およびポテンショメータ22、59と接続されている。さらに、この制御部80は、フラットパネルディテクタ20と、X線管30に付与する管電圧および管電流を制御してX線管30を駆動するX線管駆動部39とも接続されている。
【0035】
次に、上述したX線撮影装置によるX線撮影動作について説明する。図7は、この発明に係るX線撮影装置によるX線撮影動作を示すフローチャートである。
【0036】
X線撮影を行うときには、最初に、被検者9の体厚を測定する(ステップS1)。この体厚の測定は、図1および図6に示すポテンショメータ59により測定したX線照射部3とフラットパネルディテクタ20との距離と、図3および図6に示す超音波センサ33により測定した被検者9と超音波センサ33との距離L0とを利用して制御部80により演算される。演算後の被検者9の体厚のデータは、データ記憶部81に記憶される。
【0037】
次に、X線照射条件を設定する(ステップS2)。このX線照射条件は、先に測定した被検者9の体厚や、撮影すべき部位、撮影すべき断層面、X線の照射角度等に基づいて設定される。オペレータは、図1および図6に示す操作パネル12を使用して、必要なデータを入力し、あるいは、データ記憶部81から必要なデータを読み出すことにより、X線照射条件を設定する。
【0038】
この状態において、オペレータがハンドスイッチ11を操作して撮影開始準備を行うと、超音波センサ33による被検者9と超音波センサ33との距離の測定を開始する(ステップS3)。この距離の測定は、X線撮影が終了するまで継続される。ここで、撮影開始時における被検者9と超音波センサ33との距離は、図1(a)に示すように、L0となっている。
【0039】
そして、オペレータがハンドスイッチ11の撮影開始ボタンを押圧すると、X線断層撮影が開始される(ステップS4)。このときには、図3乃至図6に示す駆動モータ65の駆動によりX線照射部3が昇降するとともに、図3および図6に示す揺動モータ42の駆動によりX線照射部3が揺動する。これにより、図1(a)に示すように、X線管30から照射されたX線は、被検者9における断層面91における断層中心を常に照射する。また、図1(a)に示すように、X線照射部3の移動と同期して、図2および図6に示す昇降モータ24の駆動によりフラットパネルディテクタ20を昇降させることにより、移動するX線管30から照射され被検者9を通過したX線をフラットパネルディテクタ20により検出する。
【0040】
X線断層撮影の実行中には、超音波センサ33により、被検者9と超音波センサ33との距離L1が常に測定されており、撮影開始時における被検者9と超音波センサ33との距離L0と現在の距離L1との差、すなわち距離の変化量が常に演算されている。そして、この変化量が予め設定した設定値LX以上となるか否かは、常に監視されている(ステップS5)。この設定値LXは、例えば、ゼロまたは、それに近い値である。すなわち、設定値LXは、被検者9がX線照射部3に近づいた場合に、すぐにそれを検出できる値となるように設定されている。
【0041】
被検者9がX線照射部3に近づくことがなく、距離の変化量が設定値LX以下であれば、そのまま撮影が継続される(ステップS6)。一方、例えば図1(b)に示すように、被検者9がX線照射部3に近づいて距離の変化量が設定値LXを越えた場合には、制御部80がX線管駆動部39に指令を送信し、X線管30からのX線の照射が停止され、X線撮影が停止される(ステップS7)。これにより、被検者9に対する不要な被曝を防止することができる。
【0042】
そして、制御部80は、超音波センサ33による測定値から、撮影開始時における被検者9と超音波センサ33との距離L0と現在の距離L1との距離の変化量が、予め設定した設定値LY以上であるか否かを判断する(ステップS8)。距離の変化量が設定値LY以上であれば、制御部80は図4および図6に示すブレーキ機構67に指令を出し、ブレーキ機構67により駆動軸63の回転を停止させることで、X線照射部3を急停止させる。これにより、被検者9が移動するX線照射部3と衝突することを防止することができる。なお、この設定値LYは、被検者9が急に移動したとしても移動中のX線照射部3との衝突を未然に防止できる、前記設定値LXより大きな距離であり、例えば、10cm程度の距離である。
【0043】
そして、制御部80は、図1および図6に示す表示部14にエラー表示を行う(ステップS10)。このエラー表示は、X線撮影を中止した旨の表示と、緊急停止を行った場合にはその旨の表示とを含む。これにより、オペレータは、撮影が中止されたことを瞬時に認識することが可能となる。このため、すぐに再撮影の準備を開始することが可能となる。
【0044】
次に、被検者9に照射された放射線量が計算される(ステップS11)。この放射線量の計算は、X線管30に付与された管電圧および管電流と被検者9と超音波センサ33との距離との関係を、X線照射時における各時間毎に積算することにより計算される。すなわち、予め、X線管30に付与する管電圧と管電流とを変化させたときのX線量を電離箱式線量計で測定することにより、そのときのX線撮影条件に応じた放射線量は実験的に測定されている。そして、そのときの被検者9に入射する放射線量は、X線管30との距離に依存することから、放射線量の計算には被検者9と超音波センサ33との距離、すなわち、被検者9とX線管30との距離が利用される。なお、この計算を行うときには、例えば、特開2003−203797号公報に記載されたように、照射距離、計測値情報、固有値情報および照射面積を利用して面積線量を計算するようにしてもよい。計算された放射線量は、図1および図6に示す表示部14に表示される。
【0045】
以上のように、この発明に係るX線照射装置によれば、被検者9の体厚測定用の超音波センサ33を利用して被検者9の移動を監視することにより、被検者9が移動した場合に速やかにX線撮影を中止することができ、被検者9に対する過剰な被曝を防止することが可能となる。また、X線撮影の中止が、すぐに表示部14に表示されることから、オペレータがX線撮影を中止したことを認識することができ、その後速やかに再撮影を行うことが可能となる。さらに、被検者9の移動量が設定値LY以上になれば、X線照射部3の昇降動作を緊急停止させることにより、被検者9が昇降するX線照射部3に衝突することを防止することが可能となる。
【0046】
また、この発明に係るX線照射装置によれば、被検者9の体厚測定用の超音波センサ33を利用して被検者9とX線管30との距離を常に測定することにより、X線管30に付与された管電圧および管電流と被検者9と超音波センサ33との距離とをX線撮影時における各時間毎に積算して、被検者9に対する入射線量を正確に計算することが可能となる。このため、被検者9がX線管30に接近して大きな線量の被曝を受けた場合にも、それを正確に計算することが可能となる。
【0047】
なお、上述した実施形態においては、距離の変化量が設定値LY以上となったときに、図4および図6に示すブレーキ機構67により駆動軸63の回転を停止させることで、X線照射部3の昇降動作を急停止させている。これは、X線照射部3の昇降動作が、移動量が大きく被検者と衝突した場合に最も危険であるためである。より安全を期するため、揺動モータ42によるX線照射部3の揺動動作も、昇降動作と同様、ブレーキ機構等により緊急停止させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 操作部
2 X線検出部
3 X線照射部
4 移動機構
9 被検者
11 ハンドスイッチ
12 操作パネル
14 表示部
19 衝立
20 フラットパネルディテクタ
21 ケーシング
22 ポテンショメータ
24 昇降モータ
30 X線管
31 コリメータ
33 超音波センサ
39 X線管駆動部
42 揺動モータ
44 ワイヤ
59 ポテンショメータ
61 懸垂部
62 取付具
65 駆動モータ
67 ブレーキ機構
80 制御部
81 データ記憶部
91 断層面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線照射部と、X線検出器と、前記X線照射部を移動させる移動機構とを備え、被検者における断層面に向けて照射され被検者を通過したX線を検出することによりX線断層撮影を行うX線撮影装置であって、
X線撮影時に、前記X線照射部と前記被検者との距離を測定する距離計と、
前記距離計による前記X線照射部と前記被検者との距離の測定値の変化量が、予め設定した設定値LX以上となったときに、X線撮影を停止させる制御部と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記制御部は、前記距離計による前記X線照射部と前記被検者との距離の測定値の変化量が前記設定値LX以上となったときに、表示部にエラー表示を行うX線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記制御部は、前記距離計による前記X線照射部と前記被検者との距離の測定値の変化量が前記設定値LXより大きいLY以上となったときに、前記移動機構によるX線照射部の移動を停止させるX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記距離計によるX線撮影時の前記X線照射部と前記被検者との距離の測定値と、X線撮影条件とに基づいて、前記被検者に対するX線の入射線量を計算する計算手段を備えるX線撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−253013(P2010−253013A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106036(P2009−106036)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】