説明

X線検出器及びそれを備えた表面分析装置

【課題】真空引きや大気圧への開放(リーク)に対して破損しにくく丈夫なX線検出器及びそれを備えた表面分析装置を提供する。
【解決手段】開口部11aとガス導入口11bとガス排出口11cとを有する検出器筐体11と、開口部14aを有する窓枠14と、検出器筐体11と窓枠14とで挟持されることにより、検出器筐体11の開口部11aと窓枠14の開口部14aとの間に配置され、特性X線を透過する樹脂製の平板形状の窓材12と、検出器筐体11の内部に配置され、電流を測定する芯線13とを備え、真空引きと大気圧への開放とが可能な試料分析室の内部に配置されるX線検出器10であって、特性X線を透過しない金属製の第一メッシュ17a、第二メッシュ17bとを備え、検出器筐体11の開口部11aと窓枠14の開口部14aとの間には、第一メッシュ17aと窓材12と第二メッシュ17bとをこの順で挟持されるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出器筐体の内部に軟X線(特性X線)によって電離放電を起こすガスを充填させ、芯線によって放電電流を測定することでX線の強度を検出するタイプのX線検出器及びそれを備えた表面分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線等の粒子線やX線等の電磁波を励起線として試料表面に照射し、そこから放出される種々の粒子や軟X線を検出して画像化する表面分析装置として、様々な種類の装置が実用化されている。例えば、電子線マイクロアナライザ(EPMA:「電子線プローブ微小部分析装置」ともいう)では、微小径に集束させた電子線を励起線として試料表面に照射する。電子線が照射された試料表面上の分析位置からは試料表面に含まれる元素に特有のエネルギーを有する軟X線が発生するため、この軟X線を検出してそのエネルギー及び強度を分析することにより、試料表面上の分析位置に存在する元素の同定や定量を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来のEPMAの要部の構成を示す構成図である。
EPMA150は、試料準備室60と、試料分析室70と、試料分析室70と試料準備室60との間に設けられ開閉可能なゲート80とを有する。
試料分析室70の内部には、電子線(励起線)Eを試料S表面上の分析位置に照射する電子銃(照射手段)72と、軟X線Pの強度を検出するX線検出器110と、電子線Eが照射された試料S表面上の分析位置から放出された軟X線PをX線検出器110に導くX線分光湾曲結晶73とが配置されている。また、試料分析室70の内部は、真空引きや大気圧への開放(リーク)ができる機構(図示せず)になっている。よって、試料分析室70の内部は、測定中には軟X線Pや電子線Eを通す必要があるので、真空に保持されるようになっている。
【0004】
試料準備室60の内部には、試料Sと試料台61とが配置される。そして、試料Sは、例えば円柱形状をしており、試料台61に保持されるようになっている。
また、試料準備室60の内部は、ゲート80を閉じることにより、試料分析室70の内部の真空を破ることなく試料Sと試料台61とを入れ替えできるように、試料準備室60の内部とは独立して真空引きや大気圧への開放(リーク)ができる機構(図示せず)になっている。よって、試料準備室60の内部は、測定中には軟X線Pや電子線Eを通す必要があるので、ゲート80を開けて、真空に保持される一方、試料Sと試料台61との入れ替え中には、ゲート80を閉じることにより、大気圧に保持されるようになっている。
【0005】
このようなEPMA150によれば、測定を行う際には、試料準備室60の内部に試料Sと試料台61とを配置した後、試料分析室70の内部と試料準備室60の内部とを真空に保持する。そして、電子銃72から発生した電子線Eは、試料S表面上に絞られて当てられる。これにより、電子線Eによって励起されると試料元素特有の軟X線Pが発生する。発生した軟X線Pは、X線分光湾曲結晶73によってX線検出器110に集光されることになる。
ここで、EPMA150において、軽元素の軟X線Pによる分析には、ガスフロー型の軟X線検出器(以下「FPC」と呼ぶ)が使われている(例えば、非特許文献1参照)。図6は、従来のガスフロー型の軟X線検出器の一例を示す断面図であり、図7は、図6に示す軟X線検出器を分解した断面図である。
【0006】
X線検出器110は、長方形の開口部11aとガス導入口11bとガス排出口11cとを有する検出器筐体11と、長方形の開口部14aを有する円板状の窓枠14と、ポリプロピレン製の円板状の窓材12と、芯線と呼ばれる針金(タングステン線)13と、ニッケル製の円板状のメッシュ17とを備える。
検出器筐体11は、左側壁の中央部に長方形の開口部11aが形成され、右側壁の下部にガス導入口11bが形成され、右側壁の上部にガス排出口11cが形成されている。そして、針金13は、検出器筐体11の内部で左側壁と右側壁との間に配置されている。
【0007】
検出器筐体11の開口部11aと、窓枠14の開口部14aとの間には、ポリプロピレン製の窓材12が挟持されるように配置されている。このとき、検出器筐体11の開口部11aが形成された左側壁の外側面に対して、窓枠14の内側面を円環形状のゴム製パッキン15を介して、ゴム製パッキン15の外側で複数本のネジ16を用いて固定している。これにより、検出器筐体11の開口部11aと窓枠14の開口部14aとの間に配置された窓材12で、軟X線Pをできるだけ強度を落とさずに透過させるとともに、不活性ガス等を透過させないようにしている。
【0008】
また、検出器筐体11のガス導入口11bから不活性ガス(あるいは不活性ガスとメタンガスとの混合気体)を検出器筐体11の内部に導入するとともに、検出器筐体11のガス排出口11cから不活性ガスを検出器筐体11の外部に排出することができる機構になっている。これにより、検出器筐体11の内部に軟X線Pの照射によって電離する不活性ガスを流すと、不活性ガスの電離に起因して発生する電流を針金13で測定することでX線の強度を検出することができるようになっている。
【0009】
このようなX線検出器110によれば、測定者はEPMA150で測定を行う際には、検出器筐体11の内部に不活性ガスを流しておき、軟X線Pを窓材12を介して検出器筐体11の内部に入射させる。その結果、入射した軟X線Pは検出器筐体11の内部の不活性ガスを電離させ、電離した光電子とイオンとがさらに新たな電離(なだれ現象)を起こし、次々と増殖する。また、針金13には、高電圧をかけておく。これにより、検出器筐体11の内部で生じる電流を針金13で拾い、流れる電流値の大きさを測定することでX線の強度を検出する。
【0010】
ところで、このようなX線検出器110の窓材12は、臭素、炭素、窒素のKα線に代表される軽元素の軟X線Pをできるだけ強度を落とさずに透過させるため、窓材12の厚みを極力薄くする必要がある。一方、検出器筐体11の内部には、不活性ガスが流れているので、検出器筐体11の内部は、大気圧に近い圧力に置かれるが、試料分析室70の内部は真空に保持されているので、検出器筐体11の外部は、真空に置かれる。したがって、窓材12は、検出器筐体11の内部から検出器筐体11の外部に向かう圧力を受ける。よって、窓材12は、検出器筐体11の内部と外部との圧力差を保持するために、充分な強度を有する必要もある。
【0011】
そこで、窓材12の厚みを極力薄くするとともに検出器筐体11の内部と外部との圧力差を保持するという機能をできるだけ高い次元で満足させるため、ニッケル製のメッシュ17が用いられている。具体的には、検出器筐体11の開口部11aと、窓枠14の開口部14aとの間には、ポリプロピレン製の窓材12とニッケル製のメッシュ17とが開口部11aからこの順で挟持されるように配置されている。これにより、メッシュ17を支えとして膜厚1μm以下の引き伸ばしたポリプロピレン製の窓材12を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−58159号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】電子線マイクロアナリシス、副島啓義著 日刊工業出版、昭和62年2月28日発行、61頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、EPMA150においては、通常の測定時には、試料分析室70の内部を大気圧に戻すことはないが、試料分析室70の内部の電子銃72やX線分光湾曲結晶73の駆動機構(図示せず)やX線検出器110等の故障修理やメンテナンスを行う際には、試料分析室70の内部を大気圧に開放(リーク)することになる。このとき、膜厚1μm以下のポリプロピレン製の窓材12は、検出器筐体11の外部から検出器筐体11の内部に向かう圧力を受ける。特に試料分析室70の内部を急激に大気圧に戻した場合、局所的に内側に大きな力が働くため、ポリプロピレン製の窓材12が破損することがあった。
そこで、本発明は、真空引きや大気圧への開放(リーク)に対しても破損しにくい丈夫なX線検出器及びそれを備えた表面分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するためになされた本発明のX線検出器は、開口部とガス導入口とガス排出口とを有する検出器筐体と、開口部を有する窓枠と、前記検出器筐体と窓枠とで挟持されることにより、前記検出器筐体の開口部と窓枠の開口部との間に配置され、特性X線を透過する樹脂製の平板形状の窓材と、前記検出器筐体の内部に配置され、電流を測定する芯線とを備え、真空引きと大気圧への開放とが可能な試料分析室の内部に配置されるX線検出器であって、前記特性X線を透過しない金属製の第一メッシュと、前記特性X線を透過しない金属製の第二メッシュとを備え、前記検出器筐体の開口部と窓枠の開口部との間には、第一メッシュと窓材と第二メッシュとがこの順で挟持されるように配置されているようにしている。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明のX線検出器によれば、樹脂製の窓材の内側と外側とに金属製のメッシュを配置するため、試料分析室の内部を大気圧に戻すときに、検出器筐体の外部から内部にかかる圧力に対抗して、樹脂製の窓材を支えることも可能になる。これにより、樹脂製の窓材は破れなくなる。また、従来のX線検出器では、樹脂製の窓材は破れやすいため、大気圧に戻すのにかなり時間をかけていたのに対し、短い時間で大気圧に戻すことが可能となり、故障修理やメンテナンスを行う作業能率も向上する。
【0017】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明のX線検出器は、前記第一メッシュと第二メッシュとは、同じ大きさの目を有し、前記第一メッシュの目と第二メッシュの目とを貫通する少なくとも2本のピンが配置されているようにしてもよい。
本発明のX線検出器によれば、第一メッシュの目と第二メッシュの目との位置合わせが容易にできる。
【0018】
そして、本発明の表面分析装置は、試料準備室と、試料分析室と、当該試料分析室と試料準備室との間に設けられ開閉可能なゲートとを有する表面分析装置であって、前記試料準備室の内部には、試料が配置されるとともに、前記試料分析室の内部には、励起線を試料表面上に照射する照射手段と、前記励起線が照射された試料表面上から放出された特性X線を検出する上述したようなX線検出器とが配置されているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係るEPMAの要部の構成を示す構成図。
【図2】実施形態に係るガスフロー型の軟X線検出器の一例を分解した断面図。
【図3】実施形態に係るガスフロー型の軟X線検出器の他の一例を分解した断面図。
【図4】図3に示す軟X線検出器の側面図。
【図5】従来のEPMAの要部の構成を示す構成図。
【図6】従来のガスフロー型の軟X線検出器の一例を示す断面図。
【図7】図6に示す軟X線検出器を分解した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0021】
<実施形態1>
図1は、実施形態に係るEPMAの要部の構成を示す構成図であり、図2は、ガスフロー型の軟X線検出器の一例を分解した断面図である。なお、EPMA150と同様のものについては、同じ符号を付している。
EPMA50は、試料準備室60と、試料分析室70と、試料分析室70と試料準備室60との間に設けられ開閉可能なゲート80とを有する。
試料分析室70の内部には、電子線(励起線)Eを試料S表面上の分析位置に照射する電子銃(照射手段)72と、軟X線Pの強度を検出するX線検出器10と、電子線Eが照射された試料S表面上の分析位置から放出された軟X線PをX線検出器10に導くX線分光湾曲結晶73とが配置されている。
【0022】
X線検出器10は、長方形の開口部11aとガス導入口11bとガス排出口11cとを有する検出器筐体11と、長方形の開口部14aを有する円板状の窓枠14と、ポリプロピレン製の円板状の窓材12と、芯線と呼ばれる針金(タングステン線)13と、ニッケル製の円板状の第一メッシュ17aと、ニッケル製の円板状の第二メッシュ17bとを備える。
第一メッシュ17aと第二メッシュ17bとは、同じものであり、その目は四角形である。
【0023】
検出器筐体11の開口部11aと、窓枠14の開口部14aとの間には、ニッケル製の第一メッシュ17aとポリプロピレン製の窓材12とニッケル製の第二メッシュ17bとが開口部11aからこの順で挟持されるように配置されている。このとき、検出器筐体11の開口部11aが形成された左側壁の外側面に対して、窓枠14の内側面を円環形状のゴム製パッキン15を介して、ゴム製パッキン15の外側で複数本のネジ16で固定している。なお、第一メッシュ17aの目と第二メッシュ17bの目とは位置合わせされている。これにより、検出器筐体11の開口部11aと窓枠14の開口部14aとの間に配置された窓材12で、軟X線Pをできるだけ強度を落とさずに透過させるとともに、不活性ガス等を透過させないようにしている。
【0024】
このようなEPMA50によれば、測定を行う際には、検出器筐体11の内部に不活性ガスを流しておく。そして、試料準備室60の内部に試料Sと試料台61とを配置した後、試料分析室70の内部と試料準備室60の内部とを真空に保持する。このとき、ポリプロピレン製の窓材12の外側にニッケル製の第一メッシュ17aを配置しているため、試料分析室60の内部を真空にしても、検出器筐体11の内部から外部にかかる圧力に対抗して、ポリプロピレン製の窓材12を第一メッシュ17aで支えることが可能になっている。
そして、電子銃72から発生した電子線Eは、試料S表面上に絞られて当てられる。これにより、電子線Eによって励起されると試料元素特有の軟X線Pが発生する。発生した軟X線Pは、X線分光湾曲結晶73によってX線検出器10に集光されることになる。その結果、入射した軟X線Pは検出器筐体11の内部の不活性ガスを電離させ、電離した光電子とイオンとがさらに新たな電離(なだれ現象)を起こし、次々と増殖する。また、針金13には、高電圧をかけておく。これにより、検出器筐体11の内部で生じる電流を針金13で拾い、流れる電流値の大きさを測定することでX線の強度を検出する。
【0025】
また、試料分析室70の内部の電子銃72やX線分光湾曲結晶73の駆動機構やX線検出器10等の故障修理やメンテナンスを行う際には、試料分析室70の内部を大気圧に開放(リーク)する。このとき、ポリプロピレン製の窓材12の内側にニッケル製の第二メッシュ17bを配置しているため、試料分析室60の内部を大気圧に戻すときに、特に試料分析室70の内部を急激に大気圧に戻した場合でも、検出器筐体11の外部から内部にかかる圧力に対抗して、ポリプロピレン製の窓材12を第二メッシュ17bで支えることが可能になっている。また、従来のX線検出器110では、大気圧に戻す際にポリプロピレン製の窓材12を破らないよう、かなり時間をかけていたのに対し、短い時間で大気圧に戻すことが可能となり、故障修理やメンテナンスを行う作業能率が向上する。
【0026】
<実施形態2>
図3は、実施形態に係るガスフロー型の軟X線検出器の他の一例を分解した断面図であり、図4は、図3に示す軟X線検出器の側面図である。なお、実施形態1に係るX線検出器10と同様のものについては、同じ符号を付している。
X線検出器20は、長方形の開口部11aとガス導入口11bとガス排出口11cとを有する検出器筐体11と、長方形の開口部14aを有する円板状の窓枠14と、ポリプロピレン製の円板状の窓材12と、芯線と呼ばれる針金(タングステン線)13と、ニッケル製の円板状の第一メッシュ17aと、ニッケル製の円板状の第二メッシュ17bと、4本のピン18とを備える。
第一メッシュ17aと第二メッシュ17bとは、同じものであり、その目は四角形である。また、ピン18は円柱体であり、円柱体の直径は、目の縦又は横の大きさと同じになっている。
【0027】
検出器筐体11の開口部11aと、窓枠14の開口部14aとの間には、ニッケル製の第一メッシュ17aとポリプロピレン製の窓材12とニッケル製の第二メッシュ17bとが開口部11aからこの順で挟持されるように配置されている。このとき、検出器筐体11の開口部11aが形成された左側壁の外側面に対して、窓枠14の開口部14aの内側面を円環形状のゴム製パッキン15を介して、ゴム製パッキン15の外側で複数本のネジ16で固定している。なお、第一メッシュ17aの1個の目と第二メッシュ17bの1個の目とをそれぞれ貫通する4本のピン18が、ゴム製パッキン15の外側で配置されることにより、第一メッシュ17aの目と第二メッシュ17bの目とは位置合わせされている。これにより、検出器筐体11の開口部11aと窓枠14の開口部14aとの間に配置された窓材12で、軟X線Pをできるだけ強度を落とさずに透過させるとともに、不活性ガス等を透過させないようにしている。
【0028】
このようなEPMA50によれば、測定を行う際には、検出器筐体11の内部に不活性ガスを流しておく。そして、試料準備室60の内部に試料Sと試料台61とを配置した後、試料分析室70の内部と試料準備室60の内部とを真空に保持する。このとき、ポリプロピレン製の窓材12の外側にニッケル製の第一メッシュ17aを配置しているため、試料分析室60の内部を真空にしても、検出器筐体11の内部から外部にかかる圧力に対抗して、ポリプロピレン製の窓材12を第一メッシュ17aで支えることが可能になっている。
そして、電子銃72から発生した電子線Eは、試料S表面上に絞られて当てられる。これにより、電子線Eによって励起されると試料元素特有の軟X線Pが発生する。発生した軟X線Pは、X線分光湾曲結晶73によってX線検出器20に集光されることになる。その結果、入射した軟X線Pは検出器筐体11の内部の不活性ガスを電離させ、電離した光電子とイオンとがさらに新たな電離(なだれ現象)を起こし、次々と増殖する。また、針金13には、高電圧をかけておく。これにより、検出器筐体11の内部で生じる電流を針金13で拾い、流れる電流値の大きさを測定することでX線の強度を検出する。
【0029】
また、試料分析室70の内部の電子銃72やX線分光湾曲結晶73の駆動機構やX線検出器20等の故障修理やメンテナンスを行う際には、試料分析室70の内部を大気圧に開放(リーク)する。このとき、ポリプロピレン製の窓材12の内側に金属製のメッシュ17bを配置しているため、試料分析室60の内部を大気圧に戻すときに、特に試料分析室70の内部を急激に大気圧に戻した場合でも、検出器筐体11の外部から内部にかかる圧力に対抗して、ポリプロピレン製の窓材12を第二メッシュ17bで支えることが可能になっている。また、従来のX線検出器110では、ポリプロピレン製の窓材12は、破れないように大気圧へ戻すのにかなり時間をかけていたのに対し、短い時間で大気圧に戻すことが可能となり、故障修理やメンテナンスを行う作業能率が向上する。
【0030】
<他の実施形態>
(1)上述したX線検出器10では、ニッケル製の第一メッシュ17aやニッケル製の第二メッシュ17bとしたが、もちろん、メッシュはニッケルに限定されるものではなく、他の素材でも構わない。
(2)上述したX線検出器10では、ポリプロピレン製の窓材12としたが、もちろん、窓材はポリプロピレンに限定されるものではなく、X線透過特性とガス遮断性とに優れていれば、他の素材でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、検出器筐体の内部に軟X線によって電離放電を起こすガスを充填させ、芯線によって放電電流を測定することでX線の強度を検出するタイプのX線検出器等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0032】
10 X線検出器
11 検出器筐体
11a 開口部
11b ガス導入口
11c ガス排出口
12 窓材
13 芯線
14 窓枠
14a 開口部
17a 第一メッシュ
17b 第二メッシュ
60 試料分析室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部とガス導入口とガス排出口とを有する検出器筐体と、
開口部を有する窓枠と、
前記検出器筐体と窓枠とで挟持されることにより、前記検出器筐体の開口部と窓枠の開口部との間に配置され、特性X線を透過する樹脂製の平板形状の窓材と、
前記検出器筐体の内部に配置され、電流を測定する芯線とを備え、
真空引きと大気圧への開放とが可能な試料分析室の内部に配置されるX線検出器であって、
前記特性X線を透過しない金属製の第一メッシュと、前記特性X線を透過しない金属製の第二メッシュとを備え、
前記検出器筐体の開口部と窓枠の開口部との間には、第一メッシュと窓材と第二メッシュとがこの順で挟持されるように配置されていることを特徴とするX線検出器。
【請求項2】
前記第一メッシュと第二メッシュとは、同じ大きさの目を有し、
前記第一メッシュの目と第二メッシュの目とを貫通する少なくとも2本のピンが配置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線検出器。
【請求項3】
試料準備室と、試料分析室と、当該試料分析室と試料準備室との間に設けられ開閉可能なゲートとを有する表面分析装置であって、
前記試料準備室の内部には、試料が配置されるとともに、
前記試料分析室の内部には、励起線を試料表面上に照射する照射手段と、
前記励起線が照射された試料表面上から放出された特性X線を検出する請求項1又は請求項2に記載のX線検出器とが配置されていることを特徴とする表面分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−88284(P2012−88284A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237666(P2010−237666)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】