説明

X線検査装置

【課題】検査対象物の良否を判定するとともに、階級選別に使用できるX線検査装置を得る。
【解決手段】質量推定部83は、X線検出部6によって検出された透過X線量に基づいて検査対象物8の質量を推定する。質量階級判定部84は、質量推定部83から入力されたデータS1に基づいて、検査対象物8がどの質量階級に属しているかどうか判定、又は、検査対象物8の質量が前記所定範囲内における前記質量階級に属しないものである場合、検査対象物8を異常なものと判定する。画像作成部85は、X線検出部6によって検出された透過X線のX線量に基づいてX線透過画像を作成する。形状判定部86は、検査対象物8の形状の正常/異常を判定する。不良判定部87は、質量階級判定部84又は形状判定部86による各判定結果が異常である場合などに、検査対象物8が不良品であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物にX線を照射し、検査対象物を透過したX線を検出することにより、検査対象物の質量を推定できるものであるとともに、該質量に基づいて検査対象物の選別が可能なX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検査対象物における物理量を測定し、該検査対象物の良否を判定するX線検査装置が公知となっている。例えば、下記特許文献1には、X線源と、X線検出部と、データ処理部と、表示部とを備えたX線検査装置であって、X線検出部からの検出情報のうち一部を抽出して少なくともX線画像の背景に相当する部分を除いた物理量測定領域のX線画像をデータ処理部のX線画像生成部に生成させる領域抽出処理部と、この領域抽出処理部で抽出された検出情報に基づいてワークWの大きさ又は質量に対応する物理量を算出する質量算出部と、物理量測定領域のX線画像と質量算出部で算出された物理量を示すグラフ表示要素とを関連付けて表示部に表示させる表示データ生成部と、を設けたものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−308467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年においては、検査対象物における物理量を測定し、該検査対象物の良否を判定することができるだけでなく、さらに踏み込んで該検査対象物の階級を選別できるX線検査装置が所望されていた。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、検査対象物の良否を判定することができるだけでなく、階級選別に使用できるX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、検査対象物に対してX線を照射するX線照射部と、前記X線照射部から照射されて前記検査対象物を透過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部によって検出されたX線量に基づいて前記検査対象物の質量を推定する質量推定部と、前記質量推定部によって推定された前記検査対象物の質量が、予め設定された所定範囲内における質量階級のうちどの階級に属するものであるかを判定する質量階級判定部と、を備えているものである。
【0007】
上記(1)の構成によれば、推定された検査対象物の質量の階級によって検査対象物の階級選別をするのに使用可能なX線検査装置を提供できる。
【0008】
(2) 上記(1)のX線検査装置においては、前記検査対象物の質量が前記所定範囲内における前記質量階級に属しないものである場合、前記質量階級判定部において、前記検査対象物を異常なものと判定するものであってもよい。
【0009】
上記(2)の構成によれば、前記質量階級に属しない異常な検査対象物を選別するのに使用可能なX線検査装置を提供できる。
【0010】
(3) 上記(1)又は(2)のX線検査装置においては、前記X線照射部が、前記検査対象物ごとにX線を同方向に2ヵ所以上又は2方向以上から照射するものであり、前記質量推定部が、前記X線検出部によって検出されたX線量に基づいて前記検査対象物の実用部分の質量を推定するものであり、前記質量階級判定部が、前記質量推定部によって推定された前記検査対象物の実用部分の質量に基づいて、予め設定された所定範囲内における質量階級のうちどの階級に属するものであるかを判定するものであってもよい。
【0011】
上記(3)の構成によれば、前記検査対象物の実用部分の質量を推定できるので、該推定された質量に基づいて前記検査対象物を階級選別するのに使用可能なX線検査装置を提供できる。
【0012】
(4) 上記(1)〜(3)のX線検査装置においては、前記X線検出部によって検出されたX線量に基づいてX線透過画像を作成する画像作成部と、前記X線透過画像に基づいて前記検査対象物の形状の正常/異常を判定する形状判定部と、を備えていることが好ましい。
【0013】
上記(4)の構成によれば、検査対象物について、質量による階級選別だけでなく、形状によって良品と不良品とに選別するのに使用可能なX線検査装置を提供できる。
【0014】
(5) 上記(4)のX線検査装置においては、前記検査対象物が青果物であって、前記形状判定部が、前記X線透過画像に基づいて前記検査対象物における種子の有無を判定するものであることが好ましい。
【0015】
上記(5)の構成によれば、前記検査対象物において種子の無いものと有るものとに選別するのに使用可能なX線検査装置を提供できる。つまり、付加価値のある「種子の無い」商品を容易に選別するのに用いることができる。
【0016】
(6) 上記(1)〜(4)のX線検査装置においては、前記検査対象物が、貝類又は殻を剥いたゆで卵であることが好ましい。これにより、中身に価値がある商品について、階級選別するのに使用可能なX線検査装置を提供できる。
【0017】
(7) 上記(1)〜(6)のX線検査装置においては、前記X線検出部によって検出されたX線量に基づいて前記検査対象物における異物の有無を判定する異物判定部を備えていることが好ましい。これにより、食用でない異物などが入っている前記検査対象物を容易に選別するのに使用可能なX線検査装置を提供できる。
【0018】
(8) 上記(1)の本発明のX線検査装置においては、前記検査対象物について下記(a)の振り分けを行う振り分け部を備えているものであってもよい。
(a)前記検査対象物が前記質量階級のうちいずれか1つに属していると前記質量階級判定部によって判定された場合に、前記検査対象物を該当する前記質量階級に振り分ける。
【0019】
上記(8)の構成によれば、前記検査対象物を階級ごとに振り分けるX線検査装置を提供できる。
【0020】
(9) 上記(2)の本発明のX線検査装置においては、前記検査対象物について下記(b)の振り分けを行う振り分け部を備えているものであってもよい。
(b)前記検査対象物が異常なものであると前記質量階級判定部によって判定された場合に、前記検査対象物を不良品として振り分ける。
【0021】
上記(9)の構成によれば、所定の階級の範囲に該当しないと判定された不良品を振り分けるX線検査装置を提供できる。
【0022】
(10) 上記(4)の本発明のX線検査装置においては、前記検査対象物について下記(c)の振り分けを行う振り分け部を備えているものであってもよい。
(c)前記形状判定部が、異常と判定した場合に、前記検査対象物を不良品として振り分ける。
【0023】
(11) 上記(5)の本発明のX線検査装置においては、前記検査対象物について下記(d)の振り分けを行う振り分け部を備えているものであってもよい。
(d)前記形状判定部が、前記検査対象物に種子有りと判定した場合に、前記検査対象物を不良品として振り分ける。
【0024】
(12) 上記(7)の本発明のX線検査装置においては、前記検査対象物について下記(e)の振り分けを行う振り分け部を備えているものであってもよい。
(e)前記異物判定部が、前記検査対象物に異物有りと判定した場合に、前記検査対象物を不良品として振り分ける。
【0025】
上記(10)〜(12)の構成によれば、形状に不備があるもの、種子が含まれているもの、又は異物のあるものを不良品として振り分けて除去することが可能なX線検査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係るX線検査装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るX線検査装置の概略構成図である。図1において、矢印(黒)は各コンベアの流れ及び物品の流れ方向を示し、矢印(点線)はリジェクタの一部を構成する板部材の動作状態を模式的に示すものである。図2は、図1のX線検査装置におけるX線検査部の全体構成を模式的に示す正面図である。図3は、図2のX線検査部におけるシールドボックスの内部構成を示す斜視図である。図4は、図3に示したコンベアの構成を説明するための斜視分解図である。図5は、図1のX線検査装置の振り分け部におけるリジェクタの構成を示す断面図である。図6は、X線検査部10の機能構成を示すブロック図である。図7は、コンピュータ7による検査機能を示すブロック図である。
【0027】
図1に示したX線検査装置1000は、X線検査部10と、コンベア20、30、40と、ガイド部材50、51と、フィーダ52a、52b、52c、52d、52e、52f、52gと、箱53a、53b、53c、53d、53e、53f、53gと、不良品回収箱54と、リジェクタ60(図1には一部分のみ図示)とを備えている。また、X線検査装置1000は、X線検査部10及びコンベア20と同様の構成が、コンベア30の長さ方向に沿って、さらに2列設けられている。
【0028】
X線検査部10は、上部筐体1、シールドボックス2、及び下部筐体3を備えている。上部筐体1には、タッチパネル機能付きのモニタ、つまり表示・入力部4が設けられている。また、シールドボックス2内には、X線照射部5とX線検出部6とが設けられているとともに、シールドボックス2内を貫通するようにコンベア20が配設されている。X線照射部5は、コンベア20上の検査対象物8に対してX線を照射する。X線検出部6は、コンベア20の間に設けられており、X線照射部5から照射されて検査対象物8を透過したX線を検出する。シールドボックス2は、X線が外部に漏洩することを防止する機能を有する。下部筐体3内には、X線検査部10の動作制御及びデータ処理を行うためのコンピュータ7が配設されている。なお、検査対象物8の例としては、食品(青果物、貝類、殻を剥いたゆで卵、キノコ類など)等が挙げられるが、これに限られない。
【0029】
コンベア20は、シールドボックス2内及びコンベア30上を通過するように、X線検査部10からコンベア40の端部にかけて配設されている。また、コンベア20は、図3及び図4に示すように、凹部21aを表面に有したプレート21と、プレート21を裏面側から固定支持する支持部22aを有したチェーンベルト22とを備えている。なお、図4において、チェーンベルト22を手前側にしか図示していないが、実際には、奥手側にもプレート21中央部を中心として対称的に設けられている。また、チェーンベルト22は、図示しない2つのチェーンスプロケットに架けられ張設されている。前記チェーンスプロケットのそれぞれは、図示しないモータに接続されており、回転することによって、チェーンベルト22を駆動させることができるようになっている。
【0030】
コンベア30は、コンベア20の搬送方向に対して略垂直方向、且つフィーダ52a、52c、52e、52g(長さが短いタイプのもの)及びフィーダ52b、52d、52f(長さが長いタイプのもの)へ向かう方向に、検査対象物8を搬送するものである。コンベア30の上には、複数のガイド部材50が搬送方向に沿って吊設されており、選別された各検査対象物8を各フィーダ52a〜52gに導くレーン31〜37が形成されている。
【0031】
コンベア40は、コンベア30に並設されており、コンベア30の搬送方向と同じ方向に検査対象物8を搬送するものである。コンベア30の上には、2つのガイド部材51が搬送方向に沿って吊設されており、不良品とされた検査対象物8を不良品回収箱54に導くことができるようになっている。
【0032】
リジェクタ60は、板部材61、62と、コンピュータ7からの命令により板部材61、62のそれぞれを図5に示した矢印方向に往復移動させることが自在であって、天板63に設けられた駆動部64、65とを有しているものである。なお、板部材61、62は、天板63に設けられたスリット(図示せず)を介して、駆動部64、65に吊設されている。なお、コンベア20、30、ガイド部材50、51、及びリジェクタ60は、振り分け部70(図6)の一部を構成しているものである。
【0033】
コンピュータ7は、図6に示すように、CPU71と、CPU71によって参照可能な、ROMやRAM等のメモリ72とを備えている。コンピュータ7には、X線照射部5、X線検出部6、表示・入力部4、及び振り分け部70が接続されている。また、コンピュータ7は、図7に示すように、異物判定部80、質量検査部81、及び形状検査部82を備えている。異物判定部80は、検査対象物8内に異物が混入しているか否かを検査するものである。質量検査部81は、検査対象物8の質量が目標範囲内(許容範囲内)であるか否かを検査するものであり、形状検査部82は、検査対象物8に割れや欠けが生じていないか等を検査するものである。なお、図6に示したメモリ72内に格納されている検査プログラムをCPU71が実行することによって、図7に示した各検査機能が実現される。以下、異物判定部80、質量検査部81、及び形状検査部82について詳述する。
【0034】
まず、異物判定部80について説明する。図3を参照して、X線照射部5から照射されて検査対象物8を透過したX線(透過X線)は、複数のX線検出素子6aを有するX線検出部6によって検出される。ここで、検査対象物8内に異物が混入していない場合は、複数のX線検出素子6aによって検出される透過X線の強度分布は、ほぼ一定である。一方、検査対象物8内に異物が混入している場合は、異物の混入箇所においてX線の透過量が減少するため、異物の混入箇所に対応して、透過X線の強度分布に負のピークが発生する。したがって、異物判定部80は、X線検出部6から送信されたX線検出データに基づいて、透過X線の強度分布にピークが発生しているか否かを判定することによって、検査対象物8への異物の混入の有無を判定する。異物が混入していると判定された検査対象物8は、後述の質量検査部81及び形状検査部82による各検査が行われることなく、図6に示した振り分け部70によって不良品として振り分けられる。
【0035】
図8は、図7に示した質量検査部81及び形状検査部82の機能構成を示すブロック図である。質量検査部81は質量推定部83と質量階級判定部84とを備えており、形状検査部82は画像作成部85と形状判定部86とを備えている。また、質量階級判定部84及び形状判定部86は、不良判定部87に接続されている。
【0036】
質量推定部83は、図2に示したX線検出部6によって検出された透過X線のX線量に基づいて検査対象物8の質量を推定し、推定質量Mに関するデータS1を出力する。詳細には以下の通りである。図3を参照して、X線照射部5から照射されて検査対象物8を透過した透過X線のX線量が、X線検出部6によって検出される。具体的には、X線検出部6が備える各X線検出素子6aが、透過X線の明るさI0をそれぞれ検出する。ここで、各X線検出素子6aは、例えば、最高輝度の白を「255」、最低輝度の黒を「0」とする256階調の検出階調数で、明るさI0をそれぞれ検出する。図8に示した質量推定部83は、明るさI0に関する検出値を各X線検出素子6aから入力し、質量を推定するための以下の式(1)に基づいて、明るさI0から推定質量mを算出する。
【0037】
m=ct=−c/μ×ln(I/I0)=−αln(I/I0)
・・・(1)
ここで、cは物質の厚さを質量に変換するための係数、tは物質の厚さ、Iは物質がないときの明るさ、I0は物質を透過したときの明るさ、μは線吸収係数である。また、αはc/μで与えられるパラメータであり、質量が判明している複数のサンプルを用いた事前の検査によって、検査対象物8の種類毎に適切な値が予め求められて、その値が図6に示したメモリ72に記憶されている。
【0038】
質量推定部83は、上記の式(1)に基づいて、各画素(つまり各X線検出素子6a)毎に、明るさI0を推定質量mに換算する。そして、コンベア20によって検査対象物8が搬送されつつ、X線検出素子6aによる明るさI0の検出と、明るさI0から推定質量mへの換算とが繰り返し実行される。これにより、検査対象物8の全画素に対応する推定質量mがそれぞれ求められ、これら全ての推定質量mを合計することにより、検査対象物8の全体の推定質量Mが求められる。
【0039】
質量階級判定部84は、質量推定部83から入力されたデータS1に基づいて、(1)検査対象物8がどの質量階級(所定範囲内において予め検査対象物8の種類ごとに設定されているものであって、例えば、6段階に分級したもの)に属しているかどうか判定、又は、(2)検査対象物8の質量が前記所定範囲内における前記質量階級に属しないものである場合、検査対象物8を異常なものと判定し、その判定結果に関するデータS2を出力する。より具体的に説明すると、以下のようになる。質量階級ごとの目標範囲(許容範囲)の上限値及び下限値が、検査対象物8の種類毎に予め設定されて、図6に示したメモリ72に記憶されている。質量階級判定部84は、データS1で表される推定質量Mと、上記の各質量階級の上限値及び下限値とを比較し、推定質量Mがいずれかの質量階級の上限値以下かつ下限値以上に該当する場合は、その検査対象物8の質量はその該当する質量階級であると判定する。一方、推定質量Mがどの質量階級にも属さない場合は、その検査対象物8の質量は異常であると判定する。
【0040】
画像作成部85は、図2に示したX線検出部6によって検出された透過X線のX線量に基づいてX線透過画像を作成し、そのX線透過画像に関する画像データS3を出力する。具体的には、上記の通り、X線検出部6が備える各X線検出素子6aは、例えば、最高輝度の白を「255」、最低輝度の黒を「0」とする256階調の検出階調数で、明るさI0をそれぞれ検出する。これにより、1ライン分に相当する検査対象物8の画像データが作成される。そして、コンベア20によって検査対象物8が搬送されつつ、各X線検出素子6aによる明るさI0の検出が、各ライン毎に繰り返し実行される。これにより、検査対象物8の全画素の明るさI0がそれぞれ求められ、検査対象物8全体のX線透過画像(画像データS3)が作成される。
【0041】
形状判定部86は、画像作成部85から入力された画像データS3に基づいて検査対象物8の形状の正常/異常を判定し、その判定結果に関するデータS4を出力する。一例として、良品の周囲長の上限値及び下限値に関するデータが、図3に示したメモリ72に予め記憶されている。そして、形状判定部86は、画像データS3で表される検査対象物8のX線透過画像からエッジを抽出し、抽出したエッジの合計長と、上記の上限値及び下限値とを比較する。形状判定部86は、エッジの合計長が上限値以下かつ下限値以上である場合は、その検査対象物8の形状は正常であると判定し、一方、エッジの合計長が上限値より大きい又は下限値より小さい場合は、その検査対象物8の形状は異常であると判定する。例えば検査対象物8に割れが生じている場合、エッジの合計長は長くなるため、エッジの合計長が上記の上限値より大きくなることにより、割れが生じている検査対象物8を発見することができる。
【0042】
他の例として、良品の上面積の上限値及び下限値に関するデータが、図3に示したメモリ72に予め記憶されている。そして、形状判定部86は、画像データS3で表されるX線透過画像から検査対象物8の上面積を求め、求めた上面積の値と、上記の上限値及び下限値とを比較する。形状判定部86は、上面積の値が上限値以下かつ下限値以上である場合は、その検査対象物8の形状は正常であると判定し、一方、上面積の値が上限値より大きい又は下限値より小さい場合は、その検査対象物8の形状は異常であると判定する。例えば検査対象物8に欠けが生じている場合、上面積が小さくなるため、上面積の値が上記の下限値より小さくなることにより、欠けが生じている検査対象物8を発見することができる。
【0043】
さらに他の例として、良品の輪郭形状に関するテンプレート画像の画像データが、図3に示したメモリ72に予め記憶されている。そして、形状判定部86は、画像データS3で表される検査対象物8のX線透過画像内において、上記のテンプレート画像を用いたテンプレートマッチング処理を行う。形状判定部86は、検査対象物8とテンプレート画像との類似度が所定レベル以上である場合は、その検査対象物8の形状は正常であると判定し、一方、類似度が所定レベルより低い場合は、その検査対象物8の形状は異常であると判定する。例えば検査対象物8に割れや欠けが生じている場合、良品の輪郭形状との差異が大きくなるため、類似度が上記の所定レベルより低くなることにより、割れや欠けが生じている検査対象物8を発見することができる。
【0044】
また別の例として、所定形状の良品の大きさに関するテンプレート画像の画像データが、図3に示したメモリ72に予め記憶されている。そして、形状判定部86は、画像データS3で表される検査対象物8のX線透過画像内において、上記のテンプレート画像を用いたテンプレートマッチング処理を行う。形状判定部86は、検査対象物8とテンプレート画像との類似度が所定レベル以上である場合は、その検査対象物8の大きさは正常であると判定し、一方、類似度が所定レベルより低い場合は、その検査対象物8の大きさは異常であると判定する。例えば検査対象物8が大きすぎる又は小さすぎる場合、所定形状の良品の大きさとの差異が大きくなるため、類似度が上記の所定レベルより低くなることにより、大きさの差が大幅に生じている検査対象物8を発見することができる。
【0045】
さらに別の例として、良品の濃淡パターン(濃淡ピーク・濃淡偏差など)に関するテンプレート画像の画像データが、図3に示したメモリ72に予め記憶されている。そして、形状判定部86は、画像データS3で表される検査対象物8のX線透過画像内において、上記のテンプレート画像を用いたテンプレートマッチング処理を行う。具体的には、まず、全体領域もしくは所定領域内の画像よりも狭い上記のテンプレート画像と個々の検査対象物8のX線透過画像とを比較して、類似性を判断する。そして、領域内に基準画像と類似もしくは合致するものがいくつあるのかをカウントする。形状判定部86は、検査対象物8とテンプレート画像との類似度が所定レベル以上である場合は、その検査対象物8の形状は正常であると判定し、一方、類似度が所定レベルより低い場合は、その検査対象物8の形状は異常であると判定する。例えば検査対象物8に割れや欠けが生じている場合、良品の濃淡パターンとの差異が大きくなるため、類似度が上記の所定レベルより低くなることにより、割れや欠けが生じている検査対象物8を発見することができる。
【0046】
不良判定部87においては、質量階級判定部84からデータS2(判定された質量階級/異常)が入力され、形状判定部86からデータS4(形状の正常/異常)が入力される。そして、データS2,S4に基づき、質量階級判定部84及び形状判定部86による各判定結果の少なくとも一方が異常である場合に、検査対象物8が不良品であると判定する。具体的には、質量階級判定部84による判定結果が異常である場合に、該当する検査対象物8を図1及び図5に示したリジェクタ60によってコンベア40上に押し出して、コンベア20上から除去する。特に、プレート21それぞれの表面に個別番号を付けておき、該個別番号をCCDカメラなどの画像認識手段によって認識することによってコンピュータ7に各プレート21の位置を常時把握させておいて、所定の質量階級であると判定された検査対象物8が載っているプレート21が、図1におけるレーン31の上にコンベア20によって搬送されてきたときに、コンピュータ7の命令によってリジェクタ60を駆動させることによって、コンベア20上から除去し、選別する。質量階級判定部84による判定結果がいずれかの質量階級に該当している場合には、リジェクタ60によって、上記と同様に、プレート21の個別番号及び位置の情報を用いて、コンベア30上の質量階級別のレーン(図1におけるレーン32〜37のいずれか1つのレーン)に各検査対象物8を押し出して振り分ける。また、形状判定部86による判定結果が異常である場合には、リジェクタ60によって、上記と同様に、プレート21の個別番号及び位置情報を用いて、コンベア40上に押し出して、コンベア20上から除去する。このようにして振り分けられた各検査対象物8は、箱53a、53b、53c、53d、53e、53f、53g、又は不良品回収箱54のいずれか1つへ搬送される。なお、不良判定部87による判定結果は、図2に示した表示・入力部4に表示されるようになっている。
【0047】
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。すなわち、推定された検査対象物8の質量の階級によって検査対象物8の階級選別をすることができるX線検査装置1000を提供できる。
【0048】
また、質量階級判定部84において、検査対象物8を異常なものと判定することができるので、質量階級に属しない異常な検査対象物8を選別することができるX線検査装置1000を提供できる。
【0049】
さらに、画像作成部85及び形状判定部86を有しているので、形状によって検査対象物8を良品と不良品とに選別可能なX線検査装置1000を提供できる。
【0050】
加えて、異物判定部80を有しているので、食用でない異物などが入っていても容易に選別することが可能なX線検査装置を提供できる。
【0051】
また、振り分け部70を有しているので、検査対象物8が質量階級のうちいずれか1つに属していると質量階級判定部84によって判定された場合に、該検査対象物8を該当する質量階級(具体的には、レーン32〜37のうち該当するレーン)に振り分けたり、検査対象物8が異常なものであると質量階級判定部84によって判定された場合に、該検査対象物8を不良品としてコンベア40上に振り分けたりすることができる。また、振り分け部70によって、形状判定部86が検査対象物8の形状を異常と判定した場合に、検査対象物8を不良品としてコンベア40上に振り分けることもできるし、異物判定部80が検査対象物8に異物有りと判定した場合に、該検査対象物8を不良品としてレーン31に振り分けることもできる。
【0052】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態又は変形例に限定されるものではない。例えば、上記実施形態におけるX線照射部5は一方向にX線を照射するだけのものであったが、検査対象物8ごとにX線を同方向に2ヵ所以上又は2方向以上から照射するX線照射部とするとともに、質量推定部83をX線検出部6によって検出されたX線量に基づいて検査対象物8の実用部分の質量をも推定するものに変更し、さらに、質量階級判定部84を、前記変更した質量推定部によって推定された前記検査対象物8の実用部分の質量に基づいて、予め検査対象物8の種類ごとに設定された所定範囲内における質量階級のうちどの階級に属するものであるかを判定するものとしてもよい。これにより、中身を見ることができない検査対象物8の価値ある実用部分についての質量階級選別が可能となる。ここで、検査対象物8の実用部分としては、例えば、青果物又は貝類の食用部分、殻付き卵の黄身、殻を剥いたゆで卵の黄身、阿古屋貝の中で生成される真珠、冷凍カニ爪の食用部分などが挙げられるが、これらに限られない。
【0053】
また、検査対象物8が青果物などである場合、形状判定部86が、X線透過画像に基づいて検査対象物8における種子の有無を判定するものであってもよい。さらに、形状判定部86が「検査対象物8に種子有り」と判定した場合、振り分け部70によって該検査対象物8を不良品として振り分けるようにしてもよい。これにより、検査対象物8において種子の無いものと有るものとに選別できる。つまり、付加価値のある「種子の無い」商品を容易に選別できることになる。
【0054】
また、リジェクタ60の代わりに、エア吸引式のリジェクタとして、該当する検査対象物8を吸着して、目標とするレーンに移動させることとしてもよい。
【0055】
また、プレート21の搬送方向両端部にガイドを設けて、リジェクタ60によって目標とするレールへ押し出す際に、目標としないレールに誤って搬送されないように補助してもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、形状判定部86を設けたものとしているが、必ずしも必要ない。例えば、形状による選別を必要としない場合には、設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係るX線検査装置の概略構成図である。
【図2】図1のX線検査装置におけるX線検査部の全体構成を模式的に示す正面図である。
【図3】図2のX線検査部におけるシールドボックスの内部構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示したコンベアの構成を説明するための斜視分解図である。
【図5】図1のX線検査装置の振り分け部におけるリジェクタの構成を示す断面図である。
【図6】図1に示したX線検査部の機能構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示したコンピュータによる検査機能を示すブロック図である。
【図8】図7に示した質量検査部及び形状検査部における機能構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
1 上部筐体
2 シールドボックス
3 下部筐体
4 表示・入力部
5 X線照射部
6 X線検出部
6a X線検出素子
7 コンピュータ
8 検査対象物
10 X線検査部
20、30、40 コンベア
21 プレート
21a 凹部
22 チェーンベルト
22a 支持部
31、32、33、34、35、36、37 レーン
50、51 ガイド部材
52a、52b、52c、52d、52e、52f、52g フィーダ
53a、53b、53c、53d、53e、53f、53g 箱
54 不良品回収箱
60 リジェクタ
61、62 板部材
63 天板
64、65 駆動部
70 振り分け部
71 CPU
72 メモリ
80 異物判定部
81 質量検査部
82 形状検査部
83 質量推定部
84 質量階級判定部
85 画像作成部
86 形状判定部
87 不良判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に対してX線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部から照射されて前記検査対象物を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部によって検出されたX線量に基づいて前記検査対象物の質量を推定する質量推定部と、
前記質量推定部によって推定された前記検査対象物の質量が、予め設定された所定範囲内における質量階級のうちどの階級に属するものであるかを判定する質量階級判定部と、を備えていることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記検査対象物の質量が前記所定範囲内における前記質量階級に属しないものである場合、前記質量階級判定部において、前記検査対象物を異常なものと判定することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線照射部が、前記検査対象物ごとにX線を同方向に2ヵ所以上又は2方向以上から照射するものであり、
前記質量推定部が、前記X線検出部によって検出されたX線量に基づいて前記検査対象物の実用部分の質量を推定するものであり、
前記質量階級判定部が、前記質量推定部によって推定された前記検査対象物の実用部分の質量に基づいて、予め設定された所定範囲内における質量階級のうちどの階級に属するものであるかを判定するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線検出部によって検出されたX線量に基づいてX線透過画像を作成する画像作成部と、
前記X線透過画像に基づいて前記検査対象物の形状の正常/異常を判定する形状判定部と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記検査対象物が青果物であって、
前記形状判定部が、前記X線透過画像に基づいて前記検査対象物における種子の有無を判定するものであることを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記検査対象物が、貝類又は殻を剥いたゆで卵であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記X線検出部によって検出されたX線量に基づいて前記検査対象物における異物の有無を判定する異物判定部を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記検査対象物について下記(a)の振り分けを行う振り分け部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
(a)前記検査対象物が前記質量階級のうちいずれか1つに属していると前記質量階級判定部によって判定された場合に、前記検査対象物を該当する前記質量階級に振り分ける。
【請求項9】
前記検査対象物について下記(b)の振り分けを行う振り分け部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。
(b)前記検査対象物が異常な質量であると前記質量階級判定部によって判定された場合に、前記検査対象物を不良品として振り分ける。
【請求項10】
前記検査対象物について下記(c)の振り分けを行う振り分け部を備えていることを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
(c)前記形状判定部が、異常と判定した場合に、前記検査対象物を不良品として振り分ける。
【請求項11】
前記検査対象物について下記(d)の振り分けを行う振り分け部を備えていることを特徴とする請求項5に記載のX線検査装置。
(d)前記形状判定部が、前記検査対象物に種子有りと判定した場合に、前記検査対象物を不良品として振り分ける。
【請求項12】
前記検査対象物について下記(e)の振り分けを行う振り分け部を備えていることを特徴とする請求項7に記載のX線検査装置。
(e)前記異物判定部が、前記検査対象物に異物有りと判定した場合に、前記検査対象物を不良品として振り分ける。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−145135(P2010−145135A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320096(P2008−320096)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】