説明

X線検査装置

【課題】観察位置を表示するために用いる被検査物の全体像を得るためにオペレータが撮影開始等の操作を行う必要がなく、使用の利便性を向上させたX線検査装置を提供する。
【解決手段】被検査物Wが観察ステージ3上に搭載されたことを検知する検知手段5bを備え、その搭載の検知により、CCDカメラ6により被検査物Wの外観の全景像を撮影して、実際の検査時における刻々の観察位置の表示のためのマップとして用いることで、検査に先立って被検査物Wの全景像を撮影するための操作をオペレータが行うことを不要とし、同時に、撮影を忘れることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品等の検査対象物にX線を照射して得られるX線透過情報を用いて検査を行うX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物にX線を照射して得られるX線透視像を用いて、その検査対象物の欠陥の有無等を検査するX線検査装置においては、一般に、図6に模式的に示すように、X線発生装置51に対向してX線検出器52を配置し、これらの間に被検査物Wを搭載して移動可能な観察ステージ53を配置した構成を採る。X線発生装置51はコーンビーム状のX線を発生し、X線検出器52は2次元検出器である。
【0003】
このような構成において、X線発生装置51から放射状に広がるX線を2次元のX線検出器52で受光する関係上、原理的にX線検出器52の大きさ以上の視野を持つことはできず、一般的には一度に観察できる領域は狭く、被検査物Wの一部領域のみが観察できることが多く、被検査物W上での観察位置を把握することが難しいという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、従来、図7に例示するように、実際の検査に先立って被検査物Wの部分画像P1,P2,P3・・を逐次撮影した後に合成して被検査物Wの全体のX線画像、つまり全景画像P0を作成し、これをマップとして用いて、検査時における刻々の観察位置Vを重畳表示したり(例えば特許文献1および2参照)、あるいは広範囲を撮影可能な可視光カメラによって被検査物全体の外観像を撮影し(例えば特許文献3参照)、同様にその外観像をマップとして用いて、X線による刻々の観察位置を重畳表示するといった対策が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−028812号公報
【特許文献2】特開2004−037386号公報
【特許文献3】特開2006−343193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、観察位置を表示するために用いる合成された被検査物のX線全景画像、あるいは光学カメラによる被検査物全体の外観像を得るためには、従来、オペレータが撮影開始の操作を行う手間がかかる。また、被検査物の全体像を部分X線像を合成することにより得る場合、一度に撮影できる領域が狭く相当数の部分画像を撮影する必要があることから、撮影開始位置に観察ステージを移動させるオペレータ操作が必要となる場合が多い。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、観察位置を表示するために用いる被検査物の全体像を得るためにオペレータが撮影開始等の操作を行う必要をなくし、使用の利便性を向上させることのできるX線検査装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のX線検査装置は、互いに対向配置されたX線発生装置とX線検出器の間に、被検査物を搭載する観察ステージが配置されているとともに、上記X線検出器の出力に基づいて被検査物のX線透視像を表示する透視像表示手段と、上記観察ステージを移動させて被検査物の観察位置を変化させる移動機構と、あらかじめ撮影された被検査物の全景像もしくはその一部の像を記憶し、その像を用いて被検査物の刻々の観察位置を表示する観察位置表示手段を備えたX線検査装置において、被検査物が上記観察ステージに搭載されたことを検知する検知手段を有し、その搭載の検知により自動的に上記観察位置表示手段で用いる像を撮影することによって特徴づけられる(請求項1)。
【0009】
ここで、本発明においては、上記X線発生装置、X線検出器、および観察ステージが、被検査物を出し入れするための扉を有する防護箱内に収容され、上記検知手段は、その扉の開閉をもって被検査物の搭載を検知する構成(請求項2)を採用することができる。
【0010】
また、本発明においては、観察ステージ上の被検査物を撮影する光学カメラを備え、上記観察位置表示手段で用いる像は、当該光学カメラで撮影した被検査物の外観像とする構成(請求項3)を採用することができる。
【0011】
更に、本発明においては、上記検知手段による検知により、上記観察位置表示手段で用いる像を撮影するための条件が自動的に設定される構成(請求項4)を好適に採用することができる。
【0012】
更にまた、本発明においては、上記移動機構は、被検査物を搭載する際にあらかじめ設定されている位置に上記観察ステージを自動的に位置決めするとともに、その位置で上記観察位置表示手段で用いる像が撮影される構成(請求項5)を採用することが望ましい。
【0013】
本発明において、観察位置表示手段で用いる画像は、被検査物の全景像のほか、その一部の像であってもよい。すなわち、検査すべき領域が被検査物の一部である場合には、マップとして用いる像は、その一部領域のみが現れていれば足り、本発明において全景像もしくはその一部の像とは、このことに立脚している。
【0014】
本発明は、被検査物が観察ステージに搭載されたことを検知し、その検知により自動的に観察位置を表示するための全景像ないしはその一部の像の撮影を行うことで、実際の検査の前にオペレータがマップに使用する像の撮影のための操作を不要とするものである。
【0015】
被検査物の搭載を検知する手段としては感圧センサや遮光センサなどの各種センサを用いてもよいし、請求項2に係る発明のように、X線発生装置からのX線が外部に漏洩することを防止するための防護箱の扉の開閉により検知することもできる。
【0016】
マップとして用いる像は、請求項3に係る発明のように可視光を用いて撮影した像、つまり光学カメラで撮影した像とすることで視野を大きくとれるが、前記した特許文献1,2のようにX線による部分画像を合成した像であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検査物を観察ステージに搭載することにより、その搭載が検知され、観察位置を表示するために用いる被検査物の全景像もしくはその一部の像の撮影を自動的に行うので、従来のようにオペレータが撮影開始のための操作を行う手間が不要となるとともに、その撮影が自動的に行われることから、オペレータが被検査物の全景像等の撮影を忘れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式図と主要なシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において検査作業を開始する際の動作手順を表すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における検査作業を開始する際の動作の一部を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態における検査作業を開始する際の動作の一部を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態における検査作業を開始する際の動作の一部を示す模式図である。
【図6】従来のX線検査装置の一般的構成を表す模式図である。
【図7】従来のX線検査装置における観察位置を表す表示方法の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の構成図である。X線発生装置1はコーンビーム状のX線を鉛直上方に向けて発生し、このX線発生装置1の上方に対向するように2次元のX線検出器2が配置されている。そして、これらの間に、被検査物を搭載するための観察ステージ3が配置されている。この観察ステージ3は、移動機構4の駆動により3軸方向に移動する。
【0020】
以上のX線発生装置1、X線検出器2および観察ステージ3は、X線防護箱5内に収容されており、X線が外部に漏洩することを防止している。このX線防護箱5には扉5aが設けられており、被検査物の観察テーブル3上への搭載、観察テーブル3上からの取り出しは、この扉5aを介して行われる。この扉5aには、例えば近接スイッチやリミットスイッチ等からなる開閉検知センサ5bが設けられている。
【0021】
X線検出器2に隣接して、CCDカメラ6が配置されている。このCCDカメラ6は、観察ステージ3が扉5aの開口部に近接した後述する特定の位置に到来した状態で、その直上に位置し、その観察ステージ3上の被検査物の全体像を撮影することができる。
【0022】
X線検出器2およびCCDカメラ6の出力は、それぞれの画像取り込み回路7,8を介してそれぞれ制御部9に取り込まれる。この制御部9は、また、前記した開閉検知センサ5bによる検知信号も取り込むとともに、観察テーブル3の移動機構4に対する駆動制御信号を供給し、更に、CCDカメラ6に対して撮影指令信号を供給する。
【0023】
制御部9はコンピュータとその周辺機器を主体として構成され、検査対象物のX線透視画像や、後述する観察位置を表す画像を表示するための表示器10と、マウスやキーボードおよびジョイスティック等からなり、制御部9に対して各種指令を与えたり設定等を行うための操作部11が接続されている。
【0024】
さて、この実施の形態においては、制御部9のコンピュータにインストールされたプログラムに基づき、以下に示すように、観察ステージ3を扉5aに近い規定位置に呼び出す機能と、扉5aの開閉を通じて被検査物が観察ステージ3上に搭載されたことを検知して自動的にCCDカメラ6により被検査物の全体像を撮影して記憶する機能を有している。
【0025】
以下、被検査物を観察ステージ3上に搭載して検査作業を開始するときの動作手順について、図2に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0026】
まず、オペレータが操作部11を操作して作業を開始する旨の指令を与えると、図3に示すように、観察ステージ3が扉5aによる開口部分の直近のあらかじめ設定されている特定の位置に自動的に移動する。次いで、図4に示すように、オペレータが扉5aを開け、観察ステージ3上に被検査物Wを搭載した後、図5に示すように扉5aを閉じると、開閉検知センサ5bの出力によりその旨が検知され、自動的にCCDカメラ6により被検査物Wが撮影される。前記したように、CCDカメラ6は、観察ステージ3が扉5aによる開口部分に近接した特定の位置にあるときにその直上に配置されて、観察ステージ3上の被検査物Wの全体像を撮影することができ、その撮影された映像は制御部9のメモリに記憶され、以降の実際の透視検査作業において、その全体像が、刻々の観察位置を表すためのマップとして、刻々のX線透視像とは別に表示器10に表示される。
【0027】
以上の実施の形態において特に注目すべき点は、オペレータはマップとして用いる被検査物Wの全体像の撮影のための操作を特に行う必要がなく、被検査物Wを観察ステージ3上に搭載して扉5aを閉じるだけで、自動的に被検査物Wの全体像が撮影される点である。これにより、その撮影のための操作にかかる手間を省くことができると同時に、オペレータが被検査物Wの全体像を撮影する操作を忘れてしまうことを防止することができるという効果を期待できる。また、被検査物Wを観察ステージ3上に載せて扉5aを閉じたときに、瞬時に被検査物Wの全体像が撮影されるため、画像撮影に要する時間を最低限に短くすることができるという利点もある。
【0028】
なお、以上の実施の形態においては、刻々の観察位置を表示するためにマップとして用いる被検査物の全体像を、CCDカメラによって撮影した例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、被検査物の部分的なX線透視像を逐次撮影してこれらを合成することによって全景像とし、これをマップとして用いることもできる。この場合、被検査物を観察ステージ上に載せた後に防護箱の扉を閉じることにより、これを検知して自動的に部分透視像の撮影の初期位置に移動して撮影を開始するように構成すればよい。
【符号の説明】
【0029】
1 X線発生装置
2 X線検出器
3 観察ステージ
4 移動機構
5 X線防護箱
5a 扉
5b 開閉検知センサ
6 CCDカメラ
7,8 画像データ取り込み回路
9 制御部
10 表示器
11 操作部
W 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置されたX線発生装置とX線検出器の間に、被検査物を搭載する観察ステージが配置されているとともに、上記X線検出器の出力に基づいて被検査物のX線透視像を表示する透視像表示手段と、上記観察ステージを移動させて被検査物の観察位置を変化させる移動機構と、あらかじめ撮影された被検査物の全景像もしくはその一部の像を記憶し、その像を用いて被検査物の刻々の観察位置を表示する観察位置表示手段を備えたX線検査装置において、
被検査物が上記観察ステージに搭載されたことを検知する検知手段を有し、その搭載の検知により自動的に上記観察位置表示手段で用いる像を撮影することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
上記X線発生装置、X線検出器、および観察ステージが、被検査物を出し入れするための扉を有する防護箱内に収容され、上記検知手段は、その扉の開閉をもって被検査物の搭載を検知することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
観察ステージ上の被検査物を撮影する光学カメラを備え、上記観察位置表示手段で用いる像は、当該光学カメラで撮影した被検査物の外観像であることを特徴とする請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
上記検知手段による検知により、上記観察位置表示手段で用いる像を撮影するための条件が自動的に設定されることを特徴とする請求項1、2または3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
上記移動機構は、被検査物を搭載する際にあらかじめ設定されている位置に上記観察ステージを自動的に位置決めするとともに、その位置で上記観察位置表示手段で用いる像が撮影されることを特徴とする請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−163870(P2011−163870A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25780(P2010−25780)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】