説明

X線画像出力装置、X線画像出力方法およびX線画像出力プログラム

【課題】簡易かつ高速に良否判定を行うことが困難であった。
【解決手段】X線によって検査対象を検査するにあたり、X線を複数の検査対象品に照射して複数の方向から撮影した複数のX線画像を取得し、上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行して検査対象品の3次元画像を取得し、上記3次元画像に基づいて上記複数の検査対象品のそれぞれについて複数の断面画像を作成し、所定の出力部において、上記複数の検査対象品の配置に対応した位置に当該複数の断面画像を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線画像出力装置、X線画像出力方法およびX線画像出力プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検査対象品にX線を照射し、得られた透過像を分析することによって当該検査対象品の良否判定等が行われていた(例えば、特許文献1参照。)。この文献においては、ある平面に配置された複数のバンプの透過像に基づいてその平面に平行な断面像(水平断面)を表示する。さらに、この断面像で直線上に並んでいる複数のバンプを選択し、選択したバンプの断面像(垂直断面)を表示する。
【特許文献1】特開2004−228163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来のX線検査装置においては、良否判定を行う際に選択すべき項目が多く、簡易かつ高速に良否判定を行うことが困難であった。
すなわち、上記従来のX線検査装置においては、上述の水平断面に基づいて不良品の候補を抽出した後、さらに上述の垂直断面を参照して不良品であるか否かを判別する。しかし、BGA(Ball Grid Array)のバンプなど、検査対象品が多数である場合には、異なる複数の位置に不良品の候補が存在し得る。この場合、不良品の候補を選択し、垂直断面に切り替え、良否を判定した後、さらに水平断面の表示に戻り、再度候補の選択を繰り返すという作業を逐一行うのは非常に煩雑である。また、上記BGAのバンプのように検査対象品が多数であると、水平断面で抽出した不良品の候補と垂直断面における検査対象品の像とを一致させることが困難であり、誤認の原因となってしまう。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、多数の検査対象品が存在する場合であっても簡単かつ確実に良否判定を実行可能なX線画像出力装置、X線画像出力方法およびX線画像出力プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明では、複数の方向から複数の検査対象品を撮影して複数のX線画像を取得する。この結果、各X線画像においては、複数の検査対象の像が記録されているので、各X線画像を利用して再構成演算を行えば複数の検査対象品の3次元画像を取得することができる。この3次元画像を利用すれば複数の検査対象品のそれぞれについて断面画像を取得することができるので、本発明では、各検査対象品について複数の断面画像を取得し、所定の出力部に出力する。
【0005】
このとき、各検査対象品の配置に対応した位置に断面画像を出力する。すなわち、検査対象品をある方向へ切断した状態の断面画像と他の方向へ切断した状態の断面画像とを各検査対象品の配置に対応した位置に出力する。従って、各断面画像とその検査対象品との対応関係を確実に把握しながら多数の検査対象品について複数の断面画像を確認可能であり、多数の検査対象品が存在する場合であっても簡単かつ確実に良否判定を行うことができる。
【0006】
X線画像取得手段においては、X線の出力範囲内に複数の検査対象品を配置し、透過したX線を検出器によって撮影したX線画像を取得する。ここで、X線画像を取得するためには、X線源からのX線を検査対象品に対して照射することができればよい。X線検査装置の構造を簡易な構造とし、可動部を少なくして検査の高速化を図るためには、所定の立体角の範囲にX線を出力することができるX線源を採用するのが好ましい。このようなX線源としては、例えば、透過型開放管を採用可能である。すなわち、透過型開放管においては、薄いターゲットに衝突した電子によってX線が発生し、X線が当該ターゲットを透過して外部に出力される際にほぼ全方位(立体角2π)が出力範囲になる。
【0007】
むろん、ほとんどの場合、検査対象について撮像するための照射範囲として立体角2πは必要なく、少なくとも複数の撮影位置に配設された検出面を含む立体角でX線を照射するX線源を採用すればよい。また、X線画像取得手段においては、複数の方向から検査対象品を撮影することができればよいので、単一または複数の検出器を回転させてもよいし、複数の位置に検出器を配置してもよい。
【0008】
検出器としては、2次元的に配置したCCDによってX線の強度を計測するセンサ等を採用可能である。むろん、3次元画像を取得するための構成は以上の構成に限定されない。例えば、x−y平面に垂直なz方向に移動可能なステージやx軸,y軸,z軸を中心に回転可能なステージによって、検出器を固定しながら複数の方向から検査対象品を撮影してもよい。また、3次元画像取得手段においては、複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行することができればよく、例えば、フィルタ補正逆投影法などを採用可能である。
【0009】
断面画像出力手段は、複数の断面画像を作成し、当該複数の断面画像を各検査対象品の配置に対応した位置に出力することができればよい。この出力を行う所定の出力部は、画像の出力を行うことができればよく、各種ディスプレイを採用可能であるが、むろん印刷等の出力を行ってもよい。なお、複数の断面画像は、予め決められた複数の平面によって検査対象品を切断した場合の断面画像であればよいが、この平面内に複数の検査対象品が含まれるように平面の切断位置を決定することが好ましい。
【0010】
また、断面画像は複数であればよく、2つ、すなわち、2つの平面で検査対象品を切断した場合の画像であってもよいし、3つ以上の平面で検査対象品を切断した場合の画像であってもよい。なお、前者であれば、互いに直交する平面を切断面として採用することが好ましい。
【0011】
本発明においては、複数の検査対象品について3次元画像を作成することができればよいので、複数の検査対象品が配置されている限りにおいて種々の配置に本発明を適用することができる。例えば、検査対象品が3次元的に配置、すなわち、ある平面上に複数の検査対象品が配置され、他の平面上に複数の検査対象品が配置されて複数の層に検査対象品であるバンプが配置されているパッケージに適用可能である。
【0012】
検査対象品の好ましい配置例としては、請求項2のように、複数の検査対象品が所定の平面上に配置されている例が挙げられる。例えば、チップの下面に複数の半田バンプが形成されているBGAがこの例に相当する。この例において、当該所定の平面における検査対象品の配置と上記所定の出力部における出力位置とを対応させて上記複数の断面画像を出力すると、実際の検査対象品とその断面とが直感的に対応付けられるので、非常にわかりやすい出力を行うことが可能である。
【0013】
さらに、各位置において複数の断面画像を出力するので、複数の断面画像を出力したとしても、各断面画像がいずれの検査対象品の断面画像であるのかが極めて明快に示されることとなり、非常に簡単に検査対象品の良否を判定することが可能になる。また、検査対象品と断面画像との対応を誤認することもなくなり、各検査対象品について確実に良否判定を行うことが可能である。
【0014】
さらに、複数の検査対象品が所定の平面上に配置されている構成において、請求項3のように、当該所定の平面に略平行な第1断面と当該第1断面に略垂直な第2断面とについて断面画像を作成し、出力する構成を採用することが好ましい。すなわち、第1断面は、複数の検査対象品が配置される平面に略平行であるため、この断面であれば、全ての検査対象を共通の平面で切断した断面となり、複数の検査対象品について出力する断面として好適である。さらに、検査対象品の良否を判定するために第1断面と異なる第2断面を出力するので、第2断面では第1断面で得られなかった情報をできるだけ多く示すことが好ましく、第1断面に略垂直な第2断面であれば、第1断面で得られなかった情報をできるだけ多く示すことができる。
【0015】
さらに、請求項4のように、上記第1断面を出力した後に上記第2断面を出力する構成としてもよい。この構成においては、まず第1断面に基づいて良否判定を行い、全て良品であれば、第2断面を出力することなく良否判定を終了することができる。また、第1断面に基づく良否判定によって不良品の候補が抽出された場合には、さらに第2断面に基づく良否判定を行うことで、より確実に良否判定を行うことが可能である。
【0016】
さらに、良否判定を行う際によりわかりやすい出力を行うために、請求項5のように、第1断面を出力しているときに不良品の候補となる検査対象品の指示を受け付け、第2断面を出力しているときに当該指示された検査対象品が不良品の候補であることを示す出力を行う構成を採用してもよい。この構成によれば、不良品の候補がより明確に出力され、確実に誤認を防止することができる。
【0017】
なお、不良品の候補となる検査対象品の指示を受け付ける際には、種々の態様を採用可能である。例えば、目視によって良否判定を行うのであれば、操作入力機器によって不良品の候補を指定するように構成し、当該指定された検査対象品を示すデータ(例えば、検査対象品の位置を示す座標や検査対象品に予め付与した番号など)を取得すればよい。また、不良品の候補であることを示す出力としては、種々の出力を採用可能であり、例えば、検査対象品を囲む線や検査対象品を示す矢印など、所定のマーカを設定してもよいし、不良品の候補については着色したり、輝度を明るくすることなどが可能である。むろん、このとき、不良の候補以外の検査対象品について、少なくとも検査対象品が存在することを示す簡易出力とする構成、例えば、輝度を低下させたり、検査対象品が存在する位置のみを示すなどの構成を採用してもよい。
【0018】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法においても本発明を適用可能である。その一例として、請求項6にかかる発明は、請求項1に対応した方法を実現する構成としてある。むろん、その実質的な動作については上述した装置の場合と同様である。また、請求項2〜請求項5に対応した方法も構成可能である。以上のようなX線画像出力装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
【0019】
発明の思想の具現化例として上記方法を制御するためのソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアあるいはソフトウェアを記録した記録媒体上においても当然に存在し、利用される。その一例として、請求項7にかかる発明は、請求項1に対応した機能をソフトウェアで実現する構成としてある。むろん、請求項2〜請求項5に対応したソフトウェアも構成可能である。
【0020】
また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。その他、供給装置として通信回線を利用して行う場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の構成:
(2)X線検査処理:
(2−1)断面出力処理:
(3)他の実施形態:
【0022】
(1)本発明の構成:
図1は本発明にかかるX線画像出力装置を備えたX線検査装置10の概略ブロック図である。同図において、このX線検査装置10は、X線発生器11とX−Yステージ12とX線検出器13aと搬送装置14とを備えており、各部をCPU25によって制御する。すなわち、X線検査装置10はCPU25を含む制御系としてX線制御機構21とステージ制御機構22と画像取得機構23と搬送機構24とCPU25と入力部26と出力部27とメモリ28とを備えている。この構成において、CPU25は、メモリ28に記録された図示しないプログラムを実行し、各部を制御し、また所定の演算処理を実施することができる。
【0023】
メモリ28はデータを蓄積可能な記憶媒体であり、予め検査位置データ28aと撮像条件データ28bとが記録されている。検査位置データ28aは、検査対象品の位置を示すデータであり、本実施形態においては、基板上に配設された検査対象のバンプをX線検出器13aの視野に配設するためのデータである。すなわち、本実施形態においては、基板上に規則的に並べられたバンプを検査対象品としている。撮像条件データ28bは、X線発生器11にてX線を発生させる際の条件を示すデータであり、X線管に対する印加電圧,撮像時間等を含む。
【0024】
また、メモリ28には、CPU25の処理過程で生成される各種データを記憶することが可能である。例えば、上記X線検出器13aによって取得したX線画像を示すX線画像データ28cや、当該X線画像データ28cに基づいて再構成演算を行った3次元画像データ28dを記憶することができる。なお、メモリ28はデータを蓄積可能であればよく、RAMやHDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
【0025】
X線制御機構21は、上記撮像条件データ28bを参照し、X線発生器11を制御して所定のX線を発生させることができる。X線発生器11は、いわゆる透過型開放管であり、X線の出力位置である焦点Fからほぼ全方位、すなわち、立体角2πの範囲にX線を出力する。
【0026】
ステージ制御機構22はX−Yステージ12と接続されており、上記検査位置データ28aに基づいて同X−Yステージ12を制御する。また、搬送機構24は、搬送装置14を制御して基板12aをX−Yステージ12に搬送する。すなわち、搬送装置14によって一方向に基板12aを搬送し、X−Yステージ12において基板12a上のバンプを検査し、搬送装置14にて検査後の基板12aを搬送する処理を連続的に実施できるように構成されている。
【0027】
本実施形態において、検査対象品はバンプであり、バンプが配設された基板をX−Yステージ12上に載置して良否判定を行う。なお、上述のように検査位置データ28aは検査対象のバンプをX線検出器13aの視野に配設するためのデータであり、ステージ制御機構22は、バンプの検査に際してバンプがX線検出器13aの視野に含まれるようにX−Yステージ12を制御する。
【0028】
画像取得機構23はX線検出器13aに接続されており、同X線検出器13aが出力する検出値によって検査対象品のX線画像を取得する。取得したX線画像は、X線画像データ28cとしてメモリ28に記憶される。本実施形態におけるX線検出器13aは、2次元的に分布したセンサを備えており、検出したX線からX線の2次元分布を示すX線画像データを生成することができる。
【0029】
X線検出器13aはアームを介して回転機構13bに接続されており、X線検出器13aは、X線発生器11の焦点Fから鉛直上方に延ばした軸Aを中心に半径Rの円周上を回転可能である。この回転機構13bは、画像取得機構23のθ制御部23aによって制御される。また、X線発生器11の焦点FからX線検出器13aにおける検出面の中心に対して延ばした直線と、当該検出面とが直交するように検出面が配向されている。
【0030】
出力部27は上記X線画像や3次元画像から生成した断面画像等を出力するディスプレイであり、入力部26は利用者の入力を受け付ける操作入力機器(例えば、キーボードやマウス等)である。すなわち、利用者は入力部26を介して種々の入力を実行し、CPU25の処理によって得られる種々の演算結果やX線画像、3次元画像から生成した断面画像を適宜切り替えて出力部27に出力することができる。本実施形態においては、利用者が当該出力部27に出力された3次元画像を視認して良否判定を行う構成を採用しているが、むろん、3次元画像に基づいて自動で良否判定を行ってもよい。
【0031】
CPU25は、メモリ28に蓄積された各種制御プログラムに従って所定の演算処理を実行可能であり、検査対象品の検査を行うために、図1に示す搬送制御部25aとX線制御部25bとステージ制御部25cと画像取得部25dとX線画像出力部25eとにおける演算を実行する。搬送制御部25aは、搬送機構24を制御して、適切なタイミングで基板12aをX−Yステージ12に供給し、また、適切なタイミングで搬送装置14を駆動して検査済みの基板12aをX−Yステージ12から取り除く。
【0032】
X線制御部25bは、上記撮像条件データ28bを取得し、上記X線制御機構21を制御して所定のX線をX線発生器11から出力させる。ステージ制御部25cは、上記検査位置データ28aを取得し、バンプを逐次X線検出器13aの視野内に配置するための座標値を算出し、ステージ制御機構22に供給する。この結果、ステージ制御機構22は、この座標値がX線検出器13aのいずれかの視野に含まれるようにX−Yステージ12を移動させる。
【0033】
画像取得部25dは、画像取得機構23のθ制御部23aに指示を行い、X線検出器13aを回転させる。また、画像取得機構23が取得するX線画像データ28cをメモリ28に記録する。上記X線画像データ28cは、複数の角度によってバンプを撮影して得られるデータである。なお、画像取得部25dにおいては、上記複数の角度のピッチを適宜調整可能であり、高精度の良否判定に十分な撮影回数となるようにピッチを狭くしてもよいし、代表的な複数の角度で撮影し、間の角度におけるX線画像は補間で取得してもよい。X線画像出力部25eは、当該X線画像データ28cに基づいて所定の演算処理を行い、3次元画像データ28dを生成し、当該3次元画像データ28dに基づいて検査対象品の断面画像を出力部27に出力する。
【0034】
(2)X線検査処理:
本実施形態においては、上述の構成において図2に示すフローチャートに従って検査対象品の良否判定を行う。本実施形態においては、多数の基板12aを搬送装置14によって搬送し、逐次X−Yステージ12上で基板12a上のバンプを検査する。このため、検査に際しては、まずステップS100にて搬送制御部25aが搬送機構24に指示を出し、搬送装置14によって検査対象の基板12aをX−Yステージ12上に搬送する。
【0035】
次に、検査対象となるバンプをX線検出器13aの視野内に移動させてX線画像を取得するため、変数nを"0"に初期化する(ステップS105)。続いて、画像取得部25dはθ制御部23aに指示を行い、回転機構13bを駆動して予め決められた回転位置にX線検出器13aを移動させる(ステップS110)。本実施形態においては、回転角θをθ=(n/N)×360°と定義しており、θ=0°におけるX線検出器13aの配置は予め決めてある。
【0036】
また、上記変数nは最大値をNとする整数である。従って、X線検出器13aは360°/Nずつ回転することになる。N+1は、X線画像を撮影する回転位置の数であり、要求される検査速度と検査精度および検査対象品の外形(軸対称性)から決定すればよい。例えば、バンプのように軸対称の外形を有する検査対象品については、N=3程度(90°ピッチ、4カ所で撮影)でも充分であり、N=3程度にすることによって検査を非常に高速に実施可能である。
【0037】
X線検出器13aの回転動作を行うと、当該回転後の検出器の視野内に検査対象であるバンプが含まれるようにX−Yステージ12を移動させる(ステップS115)。このとき、ステージ制御部25cは上記検査位置データ28aを参照し、座標(xi,yi)がX線検出器13aの視野中心となるようにステージ制御機構22に指示する。この結果、ステージ制御機構22はX−Yステージ12を移動させ、座標(xi,yi)をX線検出器13aの視野中心に配置する。
【0038】
すなわち、座標(xi,yi)は、バンプをX線検出器13aの視野内に移動させるために予め基板12a上に設定された座標であり、X線検出器13aが上記回転角θに配設されているときの視野中心は、X線検出器13aとX線発生器11の焦点Fとの相対関係から取得することができる。そこで、座標(xi,yi)をX線検出器13aの視野内に移動させることで、バンプの透過像がX線検出器13aで取得されるように基板12aの位置を制御することができる。
【0039】
図3,図4は、この例を説明するための図であり、座標系およびX線検出器13a、X線発生器11の位置関係を示す図である。これらの図においては、X−Yステージ12による移動平面をx−y平面とし、この平面に垂直な方向をz方向としている。図3は、z−x平面を眺めた図であり、図4はx−y平面を眺めた図である。
【0040】
図3に示すように、X線検出器13aの検出面は、その中心と焦点Fとを結ぶ直線lに対して垂直になるように配向されている。すなわち、軸Aに対して傾斜され、x−y平面と検出面とに対して所定の角度(傾斜角)αが与えられている。上記直線lは、X線検出器13aの視野中心に相当するので、X線検出器13aの回転角θから図4に示すように視野領域FOVを特定することができる。
【0041】
すなわち、上記直線lと上記x−y平面との交点を含む所定の領域がX線検出器13aの視野領域FOVとなるので、図4に示す例のように変数nが0〜3であることを想定すれば、図4に破線の矩形で示すように、視野領域FOV1〜4を特定することができる。そこで、上記ステージ制御機構22は図4の各矩形における中心と座標(xi,yi)とが一致するように、X−Yステージ12を移動させることになる。
【0042】
なお、図4においては、中心Oから−y方向に延ばした直線をθ=0とし、時計回りの回転角がθであり、θ=0°,90°,180°,270°の視野領域をそれぞれFOV1〜FOV4としている。むろん、ステップS115においては、X線検出器13aの視野内に検査対象となるバンプを配設することができる限りにおいて種々の制御手法を採用可能である。
【0043】
ステップS115にて、座標(xi,yi)をX線検出器13aの視野中心に配置したら、X線制御部25bおよび画像取得部25dの制御により、X線検出器13aにて回転角θのX線画像Pθnを撮影する(ステップS120)。すなわち、X線制御部25bは、上記撮像条件データ28bを取得し、当該撮像条件データ28bに示される条件でX線を出力するようにX線制御機構21に対して指示を行う。この結果、X線発生器11が立体角2πの範囲でX線を出力するので、画像取得部25dはX線検出器13aが検出したX線画像を取得する。
【0044】
ステップS120にて回転角θのX線画像Pθnを撮影すると、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS125)、最大値Nに達していると判別されなければ変数nをインクリメントして(ステップS130)、ステップS110以降の処理を繰り返す。ステップS125にて変数nが最大値Nに達していると判別されたときには必要な回数の撮影が終了しているので、X線画像出力部25eは良否判定に使用する画像データを生成する。すなわち、X線画像Pθ0〜PθNを用いて3次元画像の再構成演算を行い(ステップS135)、3次元画像データ28dとしてメモリ28に記録する。
【0045】
再構成演算は、バンプの3次元構造を再構成することができれば良く、種々の処理を採用可能である。例えば、フィルタ補正逆投影法を採用可能である。この処理においては、まず、X線画像Pθ0〜PθNのいずれかに対してフーリエ変換を実施し、フーリエ変換で得られた結果に対して周波数空間でフィルタ補正関数を乗じる。さらに、この結果に対して逆フーリエ変換を実施することで、フィルタ補正を行った画像を取得する。なお、このフィルタ補正関数は、画像のエッジを強調するための関数等を採用可能である。
【0046】
続いて、フィルタ補正後の画像を、それが投影された軌跡に沿って3次元空間へ逆投影する。すなわち、X線検出器13aの検出面におけるある位置の像に対応する軌跡は、X線発生器11の焦点Fとこの位置とを結ぶ直線であるので、この直線上に上記画像を逆投影する。以上の逆投影をX線画像Pθ0〜PθNの全てについて行うと、3次元空間上でバンプが存在する部分のX線吸収係数分布が強調され、バンプの3次元形状を示す3次元画像データ28dが得られる。そこで、X線画像出力部25eは、3次元画像データ28dを参照し、良否判定のため、出力部27にバンプの断面画像を出力する(ステップS140)。
【0047】
(2−1)断面出力処理:
次に、上記ステップS140における断面出力処理の詳細な例を説明する。図5は、断面出力処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態においては、最初にバンプの水平断面画像(上記x−y平面に平行な断面の画像)を出力部27に出力し、利用者の要求に応じて垂直断面画像を出力するように構成されている。このために、まず、X線画像出力部25eは、上記ステップS135にて生成した3次元画像データ28dに基づいて予め決められた位置(z方向の位置)にて水平方向に切断した画像を生成し、複数のバンプの水平断面画像を一枚の画像として出力部27に出力させる(ステップS200)。
【0048】
図6(A)は、出力部27にて出力される水平断面画像の例を示している。同図6(A)に示すように、水平断面画像は各バンプの水平断面画像であるとともにバンプ毎の水平断面画像は水平面上に並んでおり、かつ、各位置はバンプの実際の配置に対応した位置となっている。すなわち、各バンプは半導体チップと基板との間に配置されるとともに、半導体チップの下部にてx−y平面上でその中心位置が略直交格子を形成するように配置されている。そこで、出力部27にて出力される水平断面画像においては、各バンプの水平画像が各バンプの配置に対応した位置に埋め込まれ、各バンプの配置のとおりに並べられる。
【0049】
この結果、出力部27において出力された水平断面画像を視認する利用者は、極めて容易に各断面画像とバンプとの対応を把握することができる。本実施形態において、利用者は当該水平断面画像を視認して各バンプの良否判定を行う。従って、仮に不良品が発見されたときに、その不良がいずれのバンプであるのかを容易に特定することができる。
【0050】
また、当該水平断面画像を視認することによって、良品あるいは不良品であることを判定しづらいバンプが存在したときには、さらに、垂直断面画像を出力することによって詳細な良否判定を行うことが可能である。このために、本実施形態においては、X線画像出力部25eが上記水平断面画像を出力している画面において、垂直断面画像の出力を実行させるか否かを指示するUI(User Interface)用のアイコンが表示されており、X線画像出力部25eは、このUIにて垂直断面画像の出力を行う指示がなされたか否かを判別している(ステップS210)。
【0051】
同ステップS210にて、垂直断面画像の出力を行う指示がなされたと判別されないときには、検査対象となっているバンプの良否判定を終了し、図2に示すフローに復帰して他の検査対象品の検査を行う。ステップS210にて垂直断面画像の出力を行う指示がなされたと判別されたとき、X線画像出力部25eは、垂直断面を生成する際の切断角度の指定を受け付ける(ステップS220)。
【0052】
切断角度は、z軸に平行な回転軸に対して定義されており、例えば、各バンプの中心位置を通り、z軸に平行な回転軸を定義するとともにy軸に平行な方向を0度として切断角度として定義すればよい。すなわち、本実施形態においては、ステップS220にて切断角度の指定を受け付けることにより、任意の切断角度における垂直断面画像を出力できるように構成している。
なお、切断角度に関しては、検査時の指定と予め設定記憶した切断角度による指定の選択が行えるものとする。
また、切断角度の指定は、1つの切断角度だけではなく、例えば45度ごとの切断角度のように複数の切断角度による設定が行えるものとする。
【0053】
切断角度の指定を受け付けると、各バンプの回転中心を定義するため、上記水平断面画像において各バンプの中心位置を算出する(ステップS230)。すなわち、各バンプの水平断面は、図6(A)に示すように略円形であり、この円形における中心位置を算出する。例えば、水平断面画像において各バンプの重心位置(面積重心やバンプの画像の周縁部からの距離の和が最小となる点など)を算出する。
なお、上記において、個々のバンプの面積が総パンプ面積の平均値に満たないバンプの中心位置については、バンプ間の平均値を基準として隣接するバンプから中心位置を算出するものとする。
【0054】
バンプの中心位置を定義できれば、当該中心位置と上記切断角度とに基づいて各バンプの切断面を定義することができるので、上記3次元画像データ28dに基づいて各切断面における垂直断面画像を生成する(ステップS240)。なお、生成する垂直断面画像は、バンプ間の最大表示画素数の80%にバンプの縮尺を変換した画像を生成する。このようにして各バンプにおける垂直断面画像を生成したら、X線画像出力部25eは、当該垂直断面画像を各バンプにおける中心位置に埋め込んだ一枚の画像を生成し、上記出力部27にて出力させる(ステップS250)。なお、この時、複数の切断角度がステップS220で指定された場合には、複数の切断角度による垂直断面画像が順次出力される。
【0055】
図6(B)は、出力部27にて出力される垂直断面画像の例を示している。同図6(B)に示すように、垂直断面画像は各バンプの垂直断面画像であるとともにバンプ毎の垂直断面画像は各バンプが並ぶx−y平面上の位置に対応した位置に配置されている。また、ここでは、ある直線上に並ぶバンプのみならず、x方向,y方向の双方に並ぶバンプの位置に対応させてその断面画像を出力している。従って、出力部27において出力された垂直断面画像を視認する利用者は、極めて容易に各断面画像とバンプとの対応を把握することができる。
【0056】
そこで、この出力を視認して各バンプの良否判定を行えば、仮に不良品が発見されたときに、その不良がいずれのバンプであるのかを容易に特定することができる。従って、多数の検査対象品が存在する場合であっても簡単かつ確実に良否判定を行うことができる。さらに、特定の位置におけるバンプの良否を上記水平断面画像と合わせて総合的に判断することができ、高精度に良否判定を行うことができる。
なお、バンプの中心位置を算出する方法としては、上記の他、設計上のバンプ位置情報を適用し、水平断面画像上の代表バンプの中心位置から全てのバンプの中心位置を算出するなど、種々の方法を採用することが可能である。
【0057】
(3)他の実施形態:
本発明においては、複数の検査対象品のそれぞれについて複数の断面画像を作成し、当該複数の検査対象品の配置に対応した位置に複数の断面画像を出力することによって簡単かつ確実に良否判定を行うことができる限りにおいて、種々の構成を採用可能である。例えば、水平断面画像と垂直断面画像とを切り替えて表示することが必須というわけではなく、出力部27においてはじめから同じ画面上に水平断面画像と垂直断面画像とを出力する構成を採用してもよい。
【0058】
また、図7に示すように、水平断面画像に基づいて良否を確定することが困難な場合に、不良品の候補であることを示すマークを出力する構成を採用してもよい。例えば、マウス等のポインタによって不良品の候補を指示できるように構成し、この指示がなされた不良品にはマークを対応付けて出力する(図7(A)では白い矩形によってマークを出力している)。
【0059】
次に、図7(B)に示すように垂直断面画像を出力する際に、同じバンプに対してマークを対応付けて出力する(図7(B)においてもこのマークを白い矩形によって出力している)。この結果、不良品の候補となっているバンプの画像を極めて容易に特定することができ、詳細な良否判定を極めて容易に実施することが可能になる。むろん、このマークは図7に示す矩形に限定されないし、不良品の候補に対してマークを付して出力を行う他、不良品の候補以外を目立たなくする出力(輝度を低下させるなど)を行う構成や、マークしたバンプの垂直断面画像のみを回転させる方法等を採用してもよい。
【0060】
さらに、上記図5に示すフローのように、水平断面画像を出力した後に垂直断面画像を出力することが必須というわけではなく、先に垂直断面画像を出力し、後に水平断面画像を出力する構成としてもよい。さらに、上記実施形態のように、利用者自身が画像に基づいて良否を判定する構成が必須というわけではなく、水平断面画像と垂直断面画像とのいずれかまたは双方に基づいて画像処理を行うことにより、自動で良否判定を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。
【図2】X線検査処理のフローチャートである。
【図3】X線検査装置の構成を座標系とともに説明する説明図である。
【図4】視野領域の例を示す図である。
【図5】断面出力処理のフローチャートである。
【図6】断面出力例を示す図である。
【図7】断面出力例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10…X線検査装置
11…X線発生器
12…X−Yステージ
12a…基板
13a…X線検出器
13b…回転機構
14…搬送装置
21…X線制御機構
22…ステージ制御機構
23…画像取得機構
23a…θ制御部
24…搬送機構
25…CPU
25a…搬送制御部
25b…X線制御部
25c…ステージ制御部
25d…画像取得部
25e…X線画像出力部
26…入力部
27…出力部
28…メモリ
28a…検査位置データ
28b…撮像条件データ
28c…X線画像データ
28d…3次元画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を複数の検査対象品に照射して複数の方向から撮影した複数のX線画像を取得するX線画像取得手段と、
上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行して検査対象品の3次元画像を取得する3次元画像取得手段と、
上記3次元画像に基づいて上記複数の検査対象品のそれぞれについて複数の断面画像を作成し、所定の出力部において、上記複数の検査対象品の配置に対応した位置に当該複数の断面画像を出力する断面画像出力手段とを備えることを特徴とするX線画像出力装置。
【請求項2】
上記複数の検査対象品は所定の平面上に配置され、上記断面画像出力手段は当該所定の平面上の配置と上記所定の出力部における出力位置とを対応させて上記複数の断面画像を出力することを特徴とする上記請求項1に記載のX線画像出力装置。
【請求項3】
上記断面画像出力手段は、上記所定の平面と略平行な第1断面と当該第1断面に略垂直な第2断面との断面画像を作成することを特徴とする上記請求項2に記載のX線画像出力装置。
【請求項4】
上記断面画像出力手段は、上記第1断面を出力した後に上記第2断面を出力することを特徴とする請求項3に記載のX線画像出力装置。
【請求項5】
上記断面画像出力手段は、上記第1断面を出力しているときに不良品の候補となる検査対象品の指示を受け付け、上記第2断面を出力しているときに当該指示された検査対象品が不良品の候補であることを示す出力を行うことを特徴とする上記請求項3または請求項4のいずれかに記載のX線画像出力装置。
【請求項6】
X線によって検査対象を検査するX線画像出力方法であって、
X線を複数の検査対象品に照射して複数の方向から撮影した複数のX線画像を取得するX線画像取得工程と、
上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行して検査対象品の3次元画像を取得する3次元画像取得工程と、
上記3次元画像に基づいて上記複数の検査対象品のそれぞれについて複数の断面画像を作成し、所定の出力部において、上記複数の検査対象品の配置に対応した位置に当該複数の断面画像を出力する断面画像出力工程とを備えることを特徴とするX線画像出力方法。
【請求項7】
X線によって検査対象を検査するX線画像出力プログラムであって、
X線を複数の検査対象品に照射して複数の方向から撮影した複数のX線画像を取得するX線画像取得機能と、
上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行して検査対象品の3次元画像を取得する3次元画像取得機能と、
上記3次元画像に基づいて上記複数の検査対象品のそれぞれについて複数の断面画像を作成し、所定の出力部において、上記複数の検査対象品の配置に対応した位置に当該複数の断面画像を出力する断面画像出力機能とをコンピュータに実現させることを特徴とするX線画像出力プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−121082(P2007−121082A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312862(P2005−312862)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】