説明

X線画像撮影装置及び撮影方法

【課題】X線管とX線センサの位置関係を確認し、この位置関係によりX線発生装置を制御する。
【解決手段】S101で静止画撮影を実施する。曝射されたX線がX線センサに照射され、電気信号に変換されデジタルデータとして取り込まれる。S102で静止画撮影結果から照射野認識を行い、S103で位置判定を行い、S102で抽出したX線照射領域TがX線センサ内に納まっているかを判定する。領域Tが全てX線センサ内に納まっていればS104で連続撮影が許可され、S105で連続撮影を開始する。領域TがX線センサの外にはみ出していれば初期状態に戻る。
S106で照射野認識を実行し、続いてS107で位置判定を行う。領域Tが全てX線センサ内に納まっていればS108に、領域TがX線センサの外にはみ出していればS109で停止処理を行う。S108でX線透視撮影中の判断をし、透視撮影が継続中であればS106に、透視撮影が終了していれば撮影を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影の動作を制限する機能を備えたX線画像撮影装置及び撮影方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院などではX線撮影装置として、増感紙とX線写真フイルムを組み合わせたフイルムスクリーンシステムが良く使われている。この方法によれば、被写体を通過したX線は増感紙によってX線の強度に比例した可視光に変換され、X線写真フイルムを感光させ、X線画像をフイルム上に形成する。このフイルムをシャーカステンと呼ばれる観察装置を用いることで読影作業を行っている。また特許文献1のように、イメージインテンシファイアを用いてX線透視像をCRTに表示する透視撮影を行うX線TV装置も医用現場では広く利用されている。
【0003】
近年では、FPD(Flat Panel Detector)を用いた高分解能の固体X線検出器が提案されている。これにより、特許文献2のようにX線源とX線センサの間に被写体を配置し、被写体を透過したX線量を電気信号に変換することで、被写体のX線像をデジタルデータとして得る方法が実現されている。
【0004】
また、最近では特許文献3のように、センサ部を携帯型として撮影が行えるカセッテタイプのX線画像撮影装置も実用化されている。
【0005】
一方、非特許文献1のように、カセッテタイプのセンサを用いてX線透視を行う場合には、X線照射野の受像面に対する一致がJIS規格などで規定されている。更に、特許文献4のようにX線発生装置側から平面センサに電磁波を発信することにより、撮影位置を決定する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−064081号公報
【特許文献2】特許第3066944号公報
【特許文献3】特開2004−73354号公報
【特許文献4】特許第3624106号公報
【非特許文献1】「JISハンドブック2005放射線(能)」、C0601−1−3 医用電気機器 日本規格工業会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9はX線平面検出器とX線照射領域との関係を示す模式図である。カセッテタイプの平面検出器1を用いてX線透視を行う場合には、所定の位置に平面検出器1を配置し、この平面検出器1上に被写体を配置させてX線撮影を行う。その際に、X線管から発するX線の照射領域と平面検出器1の関係は、平面検出器1の直交する2つの主軸に沿ったX線照射領域Tの境界と、平面検出器1の対応する境界とのずれは、X線管の焦点と平面検出器1間の距離の3%を越えてはならないとされている。また、両主軸上のずれの総和は、X線管の焦点と平面検出器1間の距離の4%を越えてはならないとされている。
【0008】
平面検出器1、X線照射領域Tは、平面検出器1の主軸AyとX線照射領域Tとのずれx1、x2と、平面検出器1の主軸AxとX線照射領域Tとのずれy1、y2は次の式を満たす必要がある。なお、DはX線管の焦点から平面検出器1までの距離を表している。
|x1|+|x2|≦0.03・D
|y1|+|y2|≦0.03・D
|x1|+|x2|+|y1|+|y2|≦0.04・D
【0009】
しかし、特許文献4に開示する発明では、センサ位置の検出は可能であるが、X線撮影を制御する手段がないため、X線源と平面検出器の位置関係が全く合致していない場合であっても、X線の曝射ができるという問題がある。
【0010】
また、特許文献3に開示の発明も同様にX線撮影を制御する手段がなく、更に、X線源と平面検出器の位置関係は考慮されておらず、X線が全く平面検出器を照射しない位置関係であっても透視用X線を照射するという問題がある。
【0011】
また、当初は全てのX線が平面検出器に照射される位置関係にあるとしても、その後に何らかの理由によりX線が平面検出器に全く当たらず、X線が漏洩するような位置関係となっても、透視用X線を出射し続けるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、平面検出器に対するX線の位置関係を認識してX線撮影動作を制御するX線画像撮影装置及び撮影方法撮影方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係るX線画像撮影装置の技術的特徴は、X線を照射するためのX線源と、該X線源から照射されたX線を平面検出器で検出することによりX線画像を形成するX線撮影装置であって、X線照射領域を認識する照射野認識手段と、該照射野認識手段で認識した前記X線照射領域を基に前記X線源と前記平面検出器の位置関係を判定する位置判定手段と、該位置判定手段で判定した結果に基づいてX線撮影動作を制御する制御手段とを有することにある。
【0014】
また、本発明に係るX線画像撮影撮影方法の技術的特徴は、X線源からX線を照射する工程と、照射されたX線を平面検出器で検出することによりX線画像を形成する工程と、X線を照射したX線照射領域を認識する工程と、認識した前記X線照射領域を基に前記X線源と前記平面検出器の位置関係を判定する工程と、判定した結果に基づいてX線撮影動作を制御する工程とを備えることにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るX線画像撮影装置及び撮影方法によれば、X線源と平面検出器の位置関係が全ての照射X線が平面検出器を照射する位置にあることを確保し場合にのみ透視撮影を行うことが可能となる。また、X線透視中にX線が平面検出器を全く照射せず、X線が漏洩する場合には自動的にX線照射を停止することにより、不要なX線の照射や被曝を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を図1〜図8に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は回診車に搭載したX線画像撮影装置のシステム構成図である。移動可能な回診車11は、X線源から成るX線発生部12、平面検出器であるX線センサ13、表示部14、フットペダル15を備え、一般的なX線撮影を行うための構成を有している。
【0018】
X線発生部12はX線管、X線絞りなどのX線を発生するための機構を備え、X線センサ13はX線発生部12によって照射されたX線を受光し、画像信号を取得する検出器である。表示部14はCRTや液晶ディスプレイなどの一般的なモニタによって構成され、画像データやGUI(グラフィカルユーザインタフェース)などを画面に表示し、フットペダル15はX線の照射や停止を指示するための入力装置である。
【0019】
なお、X線撮影装置にはフットペダル15の他に図示しないキーボード、マウスなどの一般的な入力装置も含まれており、ユーザによる操作を入力できる機構を備えている。また、回診車11の筐体中には、X線撮影装置を制御するための制御装置が内蔵されている。
【0020】
図2はブロック回路構成図であり、回診車11の筐体中に配置された制御部21には、X線発生部12、X線センサ13、照射野認識部22、位置判定部23が接続されている。照射野認識部22、位置判定部23は制御部21と同様に回診車11の筐体内に配置され、制御部21、照射野認識部22、位置判定部23は、図示しないCPU(中央処理装置)のプログラムの実行による機能するようになっている。なお、CPUはLSIやASIC等でも構成することができる。
【0021】
図3はX線撮影装置の動作フローチャート図である。先ず、ステップS101で制御部21の制御により静止画撮影を実施する。静止画撮影では、X線発生部12から曝射されたX線が被写体を通ってX線センサ13に照射され、X線センサ13により電気信号に変換されデジタルデータとして取り込まれる。静止画撮影は1枚の画像を意味しており、照射野認識が行える程度の画像が得られれば充分である。従って、X線の照射条件は通常静止画撮影の条件を用いてもよいし、透視時の条件を用いても問題はない。
【0022】
次に、ステップS102で静止画撮影結果から照射野認識を行う。照射野認識処理は制御部21の制御により照射野認識部22で行われる。照射野認識とは、X線センサ13に照射されるX線照射領域Tを画像解析処理することによって抽出する公知の技術であり、この照射野認識を行うことにより、X線センサ13上に照射されるX線の領域を知ることができる。
【0023】
なお、一般にX線照射領域はX線発生装置の条件によって様々に変更可能となっている。図4はX線発生装置であるX線発生部12の模式図であり、通常のX線発生部12の出射側には開口部が設けられ、照射角度θはこの開口部により予め決定されている。開口部にはX線絞り24が設けられており、このX線絞り24の開閉、位置調整によって、X線照射領域Tを自在に変更可能なようになっている。従って、X線絞り24の調整によりX線照射のターゲット角度やX線照射領域Tの形状を様々に変化させることができる。X線照射領域Tの形状はX線絞り24の形状によって、四角形のみならず、六角形や八角形や円形のものもあり得る。
【0024】
次に、ステップS103で位置判定を行う。位置判定は制御部21の制御により位置判定部23で行われ、ステップS102で抽出したX線照射領域TがX線センサ13内に納まっているかを判定する。具体的には、X線センサ13の周囲の辺とX線照射領域Tの周囲の辺が何れも交差しない場合は、X線センサ13に照射されるX線照射領域TがX線センサ13内に包含されていると判定する。
【0025】
図5はX線照射領域TがX線センサ13内に包含される場合の例であり、X線センサ13の周囲の辺とX線照射領域Tの周囲の辺が何れも交差していない。なお、X線がX線センサ13を全く照射しなかった場合は、照射野認識部22はX線照射領域Tを認識できずエラーとなる。
【0026】
一方、図6に示すように、X線センサ13の周囲の辺とX線照射領域Tの周囲の辺の何れかが交差する場合は、X線センサ13に照射されるX線照射領域TがX線センサ13内に包含されていないと判定する。X線センサ13とX線照射領域Tが重なっているため、X線センサ13の周囲の辺とX線照射領域Tの周囲の辺が交差している。
【0027】
また、位置判定を行う他の方法としては、ステップS102で抽出したX線照射領域Tの周囲の辺とX線センサ13の周囲の辺が一致する辺がない場合に、X線照射領域TがX線センサ13内に納まっていると判定する。X線照射領域Tの周囲の辺とX線センサ13の周囲の辺が一致する辺がある場合に、X線照射領域TがX線センサ13内に納まっていないと判定する。
【0028】
このように、位置判定の結果、X線照射領域Tが全てX線センサ13内に納まっていればステップS104に、X線照射領域TがX線センサ13の外にはみ出していれば初期状態に戻る。
【0029】
次に、ステップS104で制御部21によりX線透視撮影許可を行い、GUIでユーザが透視モードを選択できるようにする方法や、制御部21が外部から透視要求があった場合に、正常に透視動作を行う方法などがある。
【0030】
ここでX線透視撮影とは、X線を連続して被写体に照射し、被写体を透過したX線をX線センサ13で電気信号に変換し、連続的にモニタ表示することで、動きのある像をリアルタイムで確認するための撮影である。ここでは、連続的に撮影される撮影手技全般を指し、透視撮影の他にもシネ撮影やDSAと呼ばれる造影差分撮影なども含まれる。X線透視撮影許可と同時に、X線発生部12やX線センサ13が移動しないようにロックを掛けてもよい。
【0031】
次に、ステップS105でX線透視撮影を開始する。透視撮影は制御部21の制御の基で、X線発生部12で連続的に曝射したX線をX線センサ13で順次に取り込み表示する。
【0032】
次に、ステップS106で照射野認識を実行する。照射野認識は制御部21の制御により照射野認識部22により行われる。ここでの照射野認識の処理自体はステップS102で行われた処理と同様であるが、処理を施す画像がステップS102では静止画像であるが、本ステップS106では透視画像の1フレームを利用して照射野認識を行う。ここで、照射野認識を行う画像は撮影フレームレートに応じて変更可能であり、全フレームに対して処理してもよいし、或る一定時間毎に処理をするようにしてもよい。
【0033】
続いて、ステップS107で位置判定を行う。位置判定は制御部21の制御により位置判定部23で判定され、この判定方法はステップS103と同じ処理である。位置判定の結果、X線照射領域Tが全てX線センサ13内に納まっていればステップS108に、X線照射領域TがX線センサ13の外にはみ出していればステップS109の処理を行う。
【0034】
ステップS108でX線透視撮影中の判断をする。透視中の判断は例えばフットペダル15などの曝射指示部が曝射指示状態である場合に透視中であるとし、或いはX線発生部12がX線を照射中は透視中であると云える。何れにしても、これらの情報は制御部21が制御しているため判断可能である。ここで、透視撮影が継続中であればステップS106に、透視撮影が終了していれば撮影を終了する。
【0035】
ステップS109では、透視撮影を停止する。透視撮影の停止は制御部21がX線発生部12に曝射の停止指示を行うことで停止する。この他にも、X線センサ13の透視画像読み取り動作の停止なども行われる。
【実施例2】
【0036】
図7は実施例2の動作フローチャート図であり、実施例1の図3と同じステップ番号は同一の処理を示している。実施例2は実施例1を繰り返し行う場合で、ステップS201でX線透視許可確認を行う。透視許可の確認は制御部21で行われる処理であり、透視撮影許可状態かどうかを確認する。確認した結果、透視撮影許可状態であればステップS105の処理に移動し、透視撮影不可状態であればステップS101の処理に移行する。
【0037】
ステップS106以降の処理は実施例1と同様であるが、ステップS109で透視撮影を停止した後に、ステップS202で透視撮影許可を解除する。透視撮影許可の解除は制御部21で行われ、例えばGUIでユーザが透視撮影モードを選択できないようにする方法や、制御部21が外部から透視撮影の要求を受信した場合であっても、透視撮影動作を行わないようにする方法などがある。
【実施例3】
【0038】
実施例1、2における位置判定方法では、X線センサ13の周囲の辺とX線照射領域Tの周囲の辺を用いて判定を行った。本実施例3では、X線センサ13の周囲の辺を用いる代りに、X線センサ13の内側にある閾値によりマージン幅を設定し、X線センサ13よりも僅かに内側の辺を用いて判定を行う。
【0039】
図8は実施例3の位置判定の説明図であり、X線センサ13の内側の一定距離に設けた四角形BをX線センサ13の周囲の辺の代りに位置判定に利用する。例えば、四角形BはX線センサ13の周囲から概略1cmほど内側に設定されている。なお、上述の撮影方法のプログラムは、ディスク、フロッピなどの記憶媒体に記憶させてX線画像撮影装置に供給することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1のX線画像撮影装置のシステム構成図である。
【図2】ブロック回路構成図である。
【図3】実施例1の動作フローチャート図である。
【図4】X線発生部の模式図である。
【図5】X線照射領域がX線センサ内に包含されている状態の説明図である。
【図6】X線照射領域がX線センサ内に包含されない状態の説明図である。
【図7】実施例2の動作フローチャート図である。
【図8】実施例3の位置判定用四角形の説明図である。
【図9】X線照射領域とセンサ面の不一致の場合の説明図である。
【符号の説明】
【0041】
11 回診車
12 X線発生部
13 X線センサ
14 表示部
15 フットペダル
21 制御部
22 照射野認識部
23 位置判定部
24 X線絞り
T X線照射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するためのX線源と、該X線源から照射されたX線を平面検出器で検出することによりX線画像を形成するX線撮影装置であって、X線照射領域を認識する照射野認識手段と、該照射野認識手段で認識した前記X線照射領域を基に前記X線源と前記平面検出器の位置関係を判定する位置判定手段と、該位置判定手段で判定した結果に基づいてX線撮影動作を制御する制御手段とを有することを特徴とするX線画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は前記位置判定の結果に基づいて、X線透視撮影を可能とする状態に制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は前記位置判定の結果に基づいて、X線透視撮影中にX線透視撮影を停止することを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項4】
前記位置判定手段は、認識した前記X線照射領域が前記平面検出器の面に包含されているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項5】
前記位置判定手段は、認識した前記X線照射領域の位置判定を、前記平面検出器の或る一定距離だけ内側に設定された領域を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項6】
X線源からX線を照射する工程と、照射されたX線を平面検出器で検出することによりX線画像を形成する工程と、X線を照射したX線照射領域を認識する工程と、認識した前記X線照射領域を基に前記X線源と前記平面検出器の位置関係を判定する工程と、判定した結果に基づいてX線撮影動作を制御する工程とを備えることを特徴とするX線画像撮影方法。
【請求項7】
請求項6の撮影方法を実施するためのプログラムを記憶した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−253(P2009−253A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163353(P2007−163353)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】