説明

X線画像診断装置

【課題】Cアームを含む撮影ユニットにより生じる操作者にとってのブラインド領域を視認可能にし、該ブラインド領域に起因する危険性及び不都合を低減させるX線画像診断装置を提供すること。
【解決手段】X線画像診断装置を次のように構成する。検査室内の風景及びX線画像診断装置の操作者を撮影する風景・操作者撮影手段13と、風景・操作者撮影手段13により取得された映像に基づいて操作者の位置情報を算出し、操作者の位置情報とCアームの位置情報とに基づいて、操作者の位置を視点とした場合のCアームに起因するブラインド領域を特定し、風景・操作者撮影手段13により取得された映像のうちブラインド領域として特定した領域に相当する映像を抽出し、この抽出した映像を表示手段15に表示させる処理回路17と、をX線画像診断装置100に具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像診断装置は、近年ではカテーテルを用いた血管造影検査やIVR(InterVentional Radiology)の発展に伴い、循環器分野を中心に進歩を遂げている。循環器領域におけるX線画像診断は、心血管系をはじめとして全身の動静脈の診断及び治療を対象としており、血管内に造影剤を注入した状態で撮影することが多い。
【0003】
循環器領域用のX線画像診断装置では、通常、X線発生部、X線検出部、及びX線発生部とX線検出部とを支持するCアーム等から成る撮影ユニットを移動させ、天板上に載置された被検体に対して最適な角度からの撮影を可能にしている。また、X線検出部を被検体における撮影部位近傍に移動させて最適な位置からの撮影を可能にしている。
【0004】
しかしながら、このようなX線画像診断装置では、上述したように撮影ユニットを被検体近傍で移動させることに起因して、撮影ユニットが被検体に衝突してしまう危険性が存在する。このような問題を克服する為に、様々な技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には次のような技術が開示されている。すなわち、特許文献1に開示されている画像診断装置は、天板上に載置された被検体にX線を照射するX線発生部と、X線発生部からのX線を検出してX線投影データを生成するX線検出部と、Cアームを移動するCアーム回動・移動機構と、X線検出部で生成されたX線投影データから画像データを生成する画像データ生成部と、画像データ生成部で生成された画像データを用いて被検体の外形寸法を算出する画像データ演算部と、画像データ演算部で算出された外形寸法に干渉回避距離を加算した値から干渉回避領域データを生成する干渉回避領域データ生成部と、を備え、干渉回避領域データに基づいて、撮影ユニットが干渉回避領域内に入ったときに、その撮影ユニットの移動速度を減速する。
【0006】
この特許文献1に開示されている技術によれば、撮影ユニットを安全に移動することが可能なX線画像診断装置及び移動制御方法が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−148866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示されている技術は、上述したように被検体及びその近傍に位置する物体と撮影ユニットとの接触を回避する為の技術である。つまり、特許文献1に開示されている技術は、撮影ユニットにより生じるブラインド領域に起因する全ての危険性(例えば、被検体台周囲に配置されているモニタやキャスタ台車等と、Cアームを含む撮影ユニットとの衝突)を低減させる為の技術ではない。換言すれば、特許文献1に開示されている技術は、撮影ユニットにより生じるブラインド領域に起因する不都合全般を解決し得る技術ではない。
【0009】
本発明は、前記の事情に鑑みて為されたものであり、Cアームを含む撮影ユニットにより生じる操作者にとってのブラインド領域を視認可能にし、該ブラインド領域に起因する危険性及び不都合を低減させるX線画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の本発明によるX線画像診断装置は、
Cアームを具備するX線画像診断装置であって、
少なくとも当該X線画像診断装置が設置された検査室内の風景、及び当該X線画像診断装置の操作者を撮影する風景・操作者撮影手段と、
前記風景・操作者撮影手段による撮影で取得された映像に基づいて前記操作者の位置情報を算出する位置情報算出手段と、
前記位置情報算出手段により算出された前記操作者の位置情報と、前記Cアームの位置情報と、に基づいて、前記操作者の位置を視点とした場合の前記Cアームに起因するブラインド領域を特定するブラインド領域特定手段と、
前記風景・操作者撮影手段による撮影で取得された映像のうち、前記ブラインド領域特定手段によって特定されたブラインド領域に相当する映像を抽出する映像抽出手段と、
前記映像抽出手段により抽出された映像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Cアームを含む撮影ユニットにより生じる操作者にとってのブラインド領域を視認可能にし、該ブラインド領域に起因する危険性及び不都合を低減させるX線画像診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線画像診断装置の一構成例を示す上面図(当該X線画像診断装置が設置された検査室を天井側から診た図)。
【図2】本発明の一実施形態に係るX線画像診断装置の一システム構成例を示す図。
【図3】装置本体の一構成例を示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るX線画像診断装置の一構成例を示す上面図(当該X線画像診断装置が設置された検査室を天井側から診た図)である。図2は、本一実施形態に係るX線画像診断装置の一システム構成例を示す図である。
【0015】
本一実施形態に係るX線画像診断装置100は、Cアーム11を含む装置本体50と、風景・操作者撮影手段13と、表示手段15と、処理回路17と、を具備する。
【0016】
前記装置本体50は、Cアーム11を含む撮影ユニット等から成る一般的なX線画像診断装置本体である。この装置本体50については、後に図3を参照して説明する。
【0017】
前記風景・操作者撮影手段13は、当該X線画像診断装置100が設置された検査室内の風景(少なくとも操作者にとってブラインド領域と成り得る領域の風景)、及び当該X線画像診断装置100の操作者20を撮影する為の撮影手段(例えばTVカメラ等)である。詳細には、風景・操作者撮影手段13は、例えば図1に示すように検査室の四隅等に設置され、検査室全体を撮影することが可能なように設置されている。この風景・操作者撮影手段13による撮影で取得された映像は、処理回路17に出力される。
【0018】
なお、風景・操作者撮影手段13は、少なくとも操作者20にとってCアーム11によりブラインド領域と成り得る領域を撮影できればよい。また、前記風景・操作者撮影手段13の台数としては、少なくともブラインド領域に成り得る領域を全て撮影可能な台数であれば何台でもよい。
【0019】
前記表示手段15は、Cアーム11に設けられたモニタである。本一実施形態に係るX線画像診断装置100では、Cアーム11によりブラインド領域となる領域の映像を、操作者にとって視認可能なように表示手段15に表示させる。
【0020】
具体的には、前記表示手段15としては、例えばLCDモニタ等を挙げることができる。また、前記表示手段15として、例えば有機ELパネルのようなフレキシブルな(柔軟な)形態の表示手段を使用すると、Cアーム11の外形に対してより馴染んだ表示手段とすることができる。
【0021】
なお、例えばプロジェクタ等の映像投影装置を検査室内に(例えば前記表示手段15の配置位置に)配置し、Cアーム11によりブラインド領域となる領域の映像を投影することで操作者に提示しても勿論よい。
【0022】
前記処理回路17は、後述する本一実施形態に係るX線画像診断装置100に特有の処理を行う。
【0023】
図3は、前記装置本体50の一構成例を示す外観図である。
【0024】
図3に示すように、装置本体50は、X線管1aと、検出器2aと、保持装置3と、天板5と、寝台6と、操作部7と、表示装置10と、表示パネル9と、制御部(不図示)と、を具備する。
【0025】
前記X線管1aは、被検体に対してX線を曝射する。
【0026】
前記検出器2aは、このX線管1aより曝射され、被検体を透過してきたX線を検出する。
【0027】
前記保持装置3は、X線管1a及び検出器2aを保持すると共に三次元的に移動させる。
【0028】
前記天板5は、被検体を載置する部材である。
【0029】
前記寝台6は、天板5を水平方向及び垂直方向に平行移動させる。
【0030】
前記操作部7は、寝台6に設けられ保持装置3及び当該寝台6に備えられた駆動手段を駆動させ、X線管1a、検出器2a及び天板5のそれぞれを所定の位置に移動させる操作を行う為の操作部である。
【0031】
前記表示パネル9は、表示装置10に設けられ、X線管1aから曝射されるX線量或いは保持装置3及び天板5の現在位置等を表示する。
【0032】
前記表示装置10は、検出器2aからの検出結果に基づいて再構成されたX線画像を表示するモニタを有する表示装置である。
【0033】
前記制御部(不図示)は、当該X線画像診断装置の各部構成要素の制御を行う制御部(不図示)である。
【0034】
以下、本一実施形態に係るX線画像診断装置100の処理回路17による処理について詳細に説明する。
【0035】
(処理1)
風景・操作者撮影手段13は、当該X線画像診断装置100が設置された検査室内の風景(少なくとも操作者にとってブラインド領域と成り得る領域の風景)、及び当該X線画像診断装置100の操作者20を撮影する。この撮影により取得された映像は、処理回路17に出力される。
【0036】
(処理2)
処理回路17は、前記(処理1)により取得された映像に基づいて、操作者20の位置情報(検査室内における二次元(床面)上の位置情報(必須)、検査室床面から前記操作者の頭部までの高さを示す高さ情報(必須ではない))を算出する。
【0037】
また、処理回路17は、装置本体50の制御部(不図示)から、Cアーム11の位置情報を取得する。
【0038】
(処理3)
処理回路17は、前記(処理2)で取得した操作者20の位置情報と、Cアーム11の位置情報と、に基づいて、操作者20の位置を視点とした場合のCアーム11に起因するブラインド領域を特定する。
【0039】
(処理4)
処理回路17は、前記(処理1)により取得された映像のうち、前記(処理3)によって特定したブラインド領域に相当する映像(Cアーム11が存在しないと想定した場合の操作者20から観た風景を示す映像)を抽出する。
【0040】
(処理5)
処理回路17は、前記(処理4)により抽出した映像を、表示手段15に表示させる。
【0041】
以上説明したように、本一実施形態に係るX線画像診断装置100によれば、Cアーム11を含む撮影ユニットにより生じる操作者にとってのブラインド領域を視認可能にし、該ブラインド領域に起因する危険性及び不都合を低減させるX線画像診断装置を提供することができる。
【0042】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0043】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示した複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0044】
1a…X線管、 2a…検出器、 3…保持装置、 5…天板、 6…寝台、 7…操作部、 9…表示パネル、 10…表示装置、 11…Cアーム、 13…風景・操作者撮影手段、 15…表示手段、 17…処理回路、 20…操作者、 50…装置本体、 100…X線画像診断装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cアームを具備するX線画像診断装置であって、
少なくとも当該X線画像診断装置が設置された検査室内の風景、及び当該X線画像診断装置の操作者を撮影する風景・操作者撮影手段と、
前記風景・操作者撮影手段による撮影で取得された映像に基づいて前記操作者の位置情報を算出する位置情報算出手段と、
前記位置情報算出手段により算出された前記操作者の位置情報と、前記Cアームの位置情報と、に基づいて、前記操作者の位置を視点とした場合の前記Cアームに起因するブラインド領域を特定するブラインド領域特定手段と、
前記風景・操作者撮影手段による撮影で取得された映像のうち、前記ブラインド領域特定手段によって特定されたブラインド領域に相当する映像を抽出する映像抽出手段と、
前記映像抽出手段により抽出された映像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とするX線画像診断装置。
【請求項2】
前記風景・操作者撮影手段は、少なくとも前記操作者にとって前記Cアームに起因してブラインド領域と成り得る領域を撮影することを特徴とする請求項1に記載のX線画像診断装置。
【請求項3】
前記操作者の位置情報とは、前記検査室内における床面上の前記操作者の位置情報であることを特徴とする請求項1に記載のX線画像診断装置。
【請求項4】
前記操作者の位置情報とは、前記検査室内における床面上の前記操作者の位置情報、及び検査室床面から前記操作者の頭部までの高さを示す高さ情報であることを特徴とする請求項1に記載のX線画像診断装置。
【請求項5】
前記映像抽出手段により抽出される映像は、前記Cアームが存在しないと想定した場合に前記操作者から観た前記検査室内の風景を示す映像であることを特徴とする請求項1に記載のX線画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−253108(P2010−253108A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107984(P2009−107984)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】