X線異物検出装置
【課題】使用時に冷却空気が筐体内に供給されるX線異物検出装置において、筐体内の圧力が上昇せず、内部の熱を効率的に排出でき、清掃時に筐体内へ水分が浸入しないようにする。
【解決手段】X線異物検出装置1では、温度センサ14で検出した筐体3内の温度が所定温度以上である時、制御手段10が制御弁13を開として筐体3内にボルテックスチューブ11で冷却空気を供給し、X線発生手段7を冷却する。同時にアクチュエータ20が作動されて扉16が駆動され、筐体3の排気口15が開放される。筐体内の圧力上昇が抑えられ、排気によって冷却効率が向上する。不使用時にはアクチュエータは作動せず扉が排気口を閉止するので清掃時に内部に水が入ることはない。
【解決手段】X線異物検出装置1では、温度センサ14で検出した筐体3内の温度が所定温度以上である時、制御手段10が制御弁13を開として筐体3内にボルテックスチューブ11で冷却空気を供給し、X線発生手段7を冷却する。同時にアクチュエータ20が作動されて扉16が駆動され、筐体3の排気口15が開放される。筐体内の圧力上昇が抑えられ、排気によって冷却効率が向上する。不使用時にはアクチュエータは作動せず扉が排気口を閉止するので清掃時に内部に水が入ることはない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却空気が筐体内に供給されるX線異物検出装置に係り、特に冷却空気の供給による筐体内の圧力上昇が解消可能であると同時に、清掃時には筐体の防水構造を確実に維持できるサニタリー性に優れた構成とされたX線異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線異物検出装置は、X線遮蔽構造の筐体の内部に、被検査物にX線を照射するX線発生手段と、この被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段とを有しており、被検査物にX線を照射して透過したX線を検知することにより、被検査物物の内部に異物があるか否かを検出することができる。
【0003】
X線異物検出装置のX線発生手段はX線発生におけるエネルギー効率が良好とは言えず、入力エネルギーの98%が不要な熱として放出される。このため、X線異物検出装置では、X線発生手段からの熱によって筐体内の温度が上昇し、X線検出手段を含む電子部品の仕様温度(例えば40℃)を越えてしまうことがある。かかる場合にはX線異物検出に支障が生じてしまうため、筐体内を冷却して温度を下げる必要がある。
【0004】
また、このようなX線異物検出装置を食品の異物検査に使用することがあるが、X線異物検出装置が設置される食品の製造ラインの環境温度が相当高い場合には、空気を循環させて熱を奪う単なる空冷方式では、X線異物検出装置を効果的に冷却することは困難である。また、X線異物検出装置が設置された食品の製造ラインが、比較的高い湿度や殺菌性の塩素系ガス等の雰囲気下にある場合には、かかる環境条件が食品の検査環境としては良好であるとしても、X線異物検出装置のような金属製の装置類にとっては腐蝕性雰囲気であるため、かかる雰囲気内の空気を当該装置の空冷に使用することは好ましくない。
【0005】
そこで、このような利用条件下では、X線異物検出装置の冷却は単なる空冷によるのではなく、冷却空気を供給することによって温度を低下させる手法を利用する必要がある。具体的には、工業用エアコンを使用する方法と、空気源から供給された圧縮空気を高温の空気と低温の空気とに分離する機能を備えたボルテックスチューブを用い、低温の空気をX線異物検出装置の筐体に供給する方法と、温度管理された圧縮空気をのみを供給する方法等が知られていた。
【0006】
図14は、工業用エアコンをX線異物検出装置に設けて、その筐体の内部を冷却する例を示したものである。X線異物検出装置100の筐体101の背面側に設けられたエアコン102は、仕切壁103によってX線異物検出装置100の筐体101に通じる領域と外気に通じる領域とに分けられたケーシング104を有しており、このケーシング104内において仕切壁103にラジエター105が設けられた構成となっている。図14中矢印で示すように、このラジエター105よりも外側では外気が循環し、ラジエター105よりも内側ではX線異物検出装置100の筐体101内の空気である内気が循環し、内気の熱をラジエター105で外気に交換して伝達して放出することにより、筐体101内を冷却している。
【0007】
図15は、ボルテックスチューブ111が取り付けられたX線異物検出装置110の例を示したものである。ボルテックスチューブは、圧縮空気を高温空気と低温空気とに分離する機能を有しており、電機制御盤内の冷却や機械加工における冷却など各種産業分野で利用されている。
【0008】
詳細は図示しないが、一般的なボルテックスチューブは、円筒状の渦流管を有しており、その一端部は低温空気出口とされ、他端部にはバルブを介して高温空気出口が設けられている。そして、低温空気出口の近傍には圧縮空気を接線方向から当該渦流管内に流入させるノズルが設けられている。このノズルから渦流管内に圧縮空気を送り込めば、渦流管の内壁に遠心力によって押さえつけられながら高温空気出口へ向けて高圧の空気の回転渦流が進み、高温空気はバルブから放出されるが、バルブによって外部に排出されない空気流は進行方向を反転し、内側の低圧な流れとなって低温空気出口に向かい、低温空気出口から出てゆく。ここで、外から供給された前記圧縮空気が高温空気と低温空気とに分離されて排出されるのは、渦流管内において外側の流場と内側の流場との間でエネルギ−交換(熱交換)が行なわれることによる。なお、圧縮空気の温度と低温空気の温度の差は一例として−55℃に達する。
【0009】
圧縮空気を供給されたボルテックスチューブ111から送り出される低温空気は、X線異物検出装置110の筐体112内に送り込まれて冷却に使用され、ボルテックスチューブ111から送り出される高温空気はX線異物検出装置110の外部の環境に放出される。なお、X線異物検出装置は、清掃時等に外部から水が浸入しないようにするために一般に防水構造とされているが、完全な気密構造ではないため、筐体の隙間から内部の空気が外に漏れ、筐体の内部の圧力は冷却空気を供給しない場合の筐体内の圧力よりも高いある値で平衡する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、X線異物検出装置ではX線発生手段が大量の熱を発生するために筐体内の温度を下げる手段を講じる必要がある。しかしながら、図14を参照して説明したエアコン一体型のX線異物検出装置100の構造は、空気の取入口や排出口があるために清掃しにくくサニタリー性がよくないのでメンテナンスの点を考慮すると採用しにくい。
【0011】
そこで、図15を参照して説明したように、ボルテックスチューブ111によって冷却空気をX線異物検出装置110の筐体112内に導入する構造を採用することが考えられるが、その場合には前述したように筐体の内部の圧力は冷却空気を供給しない場合の筐体内の圧力よりも高い値となるため、次のような問題点が生じる。
【0012】
図16に示すように、X線異物検出装置110の筐体112の前面には開口115が形成されており、この開口115には操作用のタッチパネル116が取り付けられ、さらに透明な可撓性の操作シート117が開口115とタッチパネル116を覆って筐体112の前面側に取り付けられている。操作時には、筐体112の外側から操作シート117を介してタッチパネル116を押圧操作する。
【0013】
ところが、前述のようにボルテックスチューブ111からの冷却空気を筐体112内に導入するX線異物検出装置110では、筐体112内の圧力が高くなってしまうために、図14中に想像線で示すように操作シート117が外に向けて膨らんでしまい、タッチパネル116による操作に支障が生じるという問題があった。
【0014】
なお、サニタリー性を考慮してエアコンをX線異物検出装置の外部に別体として設け、エアコンから導いた冷却空気をダクトで導いてX線異物検出装置の筐体の内部に導入する構造も考えられるが、その場合にも図15で示したボルテックスチューブで冷気を供給するタイプのX線異物検出装置と同様、筐体の内圧が上昇して図16に示したように操作シートが外に向けて膨らみ、タッチパネルによる操作に支障が生じるという同様の問題が生じてしまう。
【0015】
また、いずれの冷却構造を採用するにしても、冷気を筐体内に導入しただけでは冷却効率が低下するため、冷却効率を向上させるために筐体内部の熱を外部に排出する必要がある。そのためには、筐体に排気口を設ける必要があるが、開放されたままの排気口では筐体内部の機器類に対する防水性に問題が生じ、また前述した外部腐蝕環境から筐体内部の機器類を保護する必要もある。
【0016】
そこで本発明は、冷却空気が筐体内に供給されるX線異物検出装置において、装置の使用時に冷却空気を供給しても筐体内の圧力が上昇せず、筐体内部の熱を効率的に排出でき、また清掃時には筐体の防水機能が発揮されて筐体内への水分の浸入を確実に防止できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
請求項1に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51,61は、
筐体3,33と、前記筐体3,33内に設けられて被検査物にX線を照射するX線発生手段7と、前記筐体3,33内に設けられて被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段8と、前記X線発生手段7を冷却するために前記筐体3,33の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段11とを備えたX線異物検出装置において、
前記筐体3,33の内部から空気を排出するために前記筐体3,33に設けられた排気口15と、
前記排気口15に開閉自在に設けられた扉16と、
前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給している場合には前記排気口が開放され、前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給していない場合には前記排気口が閉止されるように前記扉を開閉させる開閉手段20,35,42,52,10,25と、
を有することを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51は、請求項1に記載されたX線異物検出装置において、
筐体3,33と、前記筐体3,33内に設けられて被検査物にX線を照射するX線発生手段7と、前記筐体3,33内に設けられて被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段8と、前記X線発生手段7を冷却するために前記筐体3,33の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段11とを備えたX線異物検出装置において、
前記筐体3,33の内部から空気を排出するために前記筐体3,33に設けられた排気口15と、
前記排気口15に開閉自在に設けられた扉16と、
前記扉16を駆動して前記排気口15を開閉する開閉手段としてのアクチュエータ20,35,42,52と、
前記冷却空気供給手段11が前記筐体3,33内に冷却空気を供給している場合には前記排気口15が開放され、前記冷却空気供給手段11が前記筐体3,33内に冷却空気を供給していない場合には前記排気口15が閉止されるように前記アクチュエータ20,35,42,52を制御する開閉手段としての制御手段10と、
を有することを特徴としている。
【0019】
請求項3に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51は、請求項2記載のX線異物検出装置において、
前記冷却空気供給手段11による前記筐体3,33への冷却空気の供給が、前記筐体3,33の内部の状態を示す指標に基づいて行なわれ、
前記制御手段10は、前記指標に基づいて前記アクチュエータ20,35,42,52を制御することを特徴としている。
【0020】
請求項4に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51は、請求項3記載のX線異物検出装置において、
前記指標は、前記X線発生手段7の運転状態と前記筐体3,33の内部状態の少なくともいずれか一方であることを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51は、請求項2乃至4のいずれか一つに記載のX線異物検出装置において、
動力源が遮断された場合には前記扉16が前記排気口15を閉止するように前記扉16を付勢する手段を備えたことを特徴としている。
【0022】
請求項6に記載されたX線異物検出装置31,31’は、請求項2乃至5のいずれか一つに記載のX線異物検出装置において、
前記冷却空気供給手段11が、圧縮空気供給手段12から供給された圧縮空気を高温の空気と低温の空気とに分離する機能を備えて前記低温の空気を前記筐体3,33に供給するボルテックスチューブ11であり、前記アクチュエータ35が前記圧縮空気供給手段12からの圧縮空気を利用して作動するエアシリンダ35であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1乃至2に記載されたX線異物検出装置によれば、冷却空気供給手段が筐体内に冷却空気を供給している場合には、開閉手段(制御手段及びアクチュエータ)が排気口を開放するので、筐体の内部へ冷気が供給されると、筐体内の空気は排気口から外へ放出される。このため、筐体内の圧力上昇が避けられるとともに、筐体内の冷却が効率的に行なわれる。また、冷却空気供給手段が筐体内に冷却空気を供給していない場合、すなわち装置が作動されておらず冷却が必要ない場合には、開閉手段(制御手段及びアクチュエータ)が排気口を閉止するので筐体の密閉性が保たれ、装置の停止時に行なう清掃において筐体内に水が浸入するおぞれがない。
【0024】
請求項3に記載されたX線異物検出装置によれば、冷却空気供給手段は筐体の内部の状態を示す指標に基づいて筐体へ冷却空気を供給しており、制御手段も該指標に基づいてアクチュエータを制御しているので、筐体の内部の状態を示す指標に基づいて適時に行なわれる冷却空気の供給に対応してアクチュエータによる排気口の開閉操作も適時に制御される。
【0025】
請求項4に記載されたX線異物検出装置によれば、前記指標としては、X線異物検出装置のX線発生手段の運転状態を示す指標を用いるか、X線異物検出装置の筐体の内部状態を示す指標を用いるか、又はこれら両指標を用いることにより、筐体内が冷却すべき状態にあるか否かを確実に識別することができるので、冷却空気供給手段が筐体内に冷却空気を供給している状態では排気口を開放し、冷却空気供給手段が筐体内に冷却空気を供給していない状態では排気口を閉止させるような制御を確実に行なうことができる。
【0026】
請求項5に記載されたX線異物検出装置によれば、扉を閉止方向に付勢する手段が備えられているので、動力源が遮断された場合には排気口は付勢手段に付勢された扉によって確実に閉止される。
【0027】
請求項6に記載されたX線異物検出装置によれば、ボルテックスチューブが、空気源から供給された圧縮空気を高温の空気と低温の空気に分離し、低温の空気を筐体に供給することにより筐体内を冷却しているとき、この圧縮空気によって作動するエアシリンダが扉を駆動して筐体の開口を確実に開放させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
(1)第1実施形態(図1〜図5)
図1に示す本例のX線異物検出装置1は、支持脚2によって床面上に設置されるX線遮蔽構造の筐体3を有している。筐体3には、前面が開放されるとともに、左右両側面が貫通した被検査物の搬送領域S(空間)が設けられており、この搬送領域Sに左右方向に被検査物を搬送する搬送手段4が設置されている。搬送領域Sの開放された前面側は開閉可能なカバー5によって覆われており、また搬送領域Sの左右両側面には搬送手段4の上側を遮蔽する遮蔽部材6が設けられている。そして図3に示すように、搬送手段4は制御手段10によって制御される。
【0029】
従って、被検査物をX線異物検出装置1の搬送手段4の左側から供給すれば、被検査物は搬送手段4に搬送され、入口側の遮蔽部材6を通過して筐体3内の搬送領域Sに入り、搬送領域Sを搬送されて出口側の遮蔽部材6を通過し、筐体3の外に搬出される。
【0030】
図2は、筐体3から、搬送手段4とカバー5と左右両側面の遮蔽部材6を取り外した状態を示す右側面図である。同図に示すように、筐体3の上部内には被検査物にX線を照射するX線発生手段7がX線を下方に向けて照射するように設けられており、筐体3の下部内には被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段8が設けられている。そして、図3に示すように、X線発生手段7は、図示しない制御パネル等からの指示入力を受けた制御手段10によって制御され、搬送領域S内を搬送手段4で搬送されている被検査物にX線を照射する。またX線検出手段8がX線を受けて出力する出力信号は、制御手段10に入力されて異物検出のために必要な処理が行なわれる。
【0031】
従って、図2には示さない搬送手段4によって搬送領域Sを被検査物が搬送されている間、X線発生手段7からX線が照射されると、図示しない被検査物を透過したX線がX線検出手段8に検出されるので、その出力信号から被検査物に異物が混入しているか否かを制御手段10にて判断・検知することができる。
【0032】
図1乃至図3に示すように、本例のX線異物検出装置1は、X線発生手段7やX線検出手段8等を冷却するために、筐体3の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段としてのボルテックスチューブ11を備えている。ボルテックスチューブ11は、「背景技術」の項で説明したものと同一であり、圧縮空気の供給を受け、これを高温空気と低温空気とに分離し、X線異物検出装置1の筐体3の内部に低温空気を冷却空気として供給する装置である。なお、高温空気はX線異物検出装置1の筐体3の外に放出される。
【0033】
図3に示すように、ボルテックスチューブ11は圧縮空気供給手段12から制御弁13を介して圧縮空気の供給を受ける。この制御弁13は制御手段10によって開閉を制御されるように構成されている。本例では、制御弁13を開としてボルテックスチューブ11に圧縮空気を供給し、ボルテックスチューブ11から筐体3へ冷却空気を供給する制御と、制御弁13を閉としてボルテックスチューブ11への圧縮空気の供給を遮断し、ボルテックスチューブ11から筐体3への冷却空気の供給を停止する制御は、筐体3の内部の状態を示す指標に基づいて行なわれる。本例における該指標とは筐体3内の環境指標、具体的には温度であり、図3に示すように筐体3内の所定位置に設置された温度センサ14によって検出される。温度センサ14からの温度信号が制御手段10に送られると、制御手段10はその温度を予め定められた基準値と比較し、これを越えていると判断した場合には制御弁13を開放して筐体3内へ冷却空気を供給し、筐体3内の温度が基準値を下回った場合には制御弁13を閉止して筐体3内への冷却空気の供給を停止する。
【0034】
このように筐体3内の温度を温度センサ14で測定してボルテックスチューブ11による冷却空気の供給を制御してもよいが、その他の制御のための指標として、X線発生手段7の運転状態を利用しても良い。すなわち、筐体3内に冷却空気を供給する必要が生じるのは、X線発生手段7が運転状態にあって熱が発生している場合であるから、制御手段10がX線発生手段7を作動させている場合には制御弁13を開とし、X線発生手段7が停止している場合には制御弁13を閉とするものとすれば、温度センサ14を用いることなく同様の作用効果が得られる。
【0035】
図2、図4及び図5に示すように、本例のX線異物検出装置1は、筐体3の内部から空気を排出するために筐体3の背面上部に矩形の排気口15が開口形成されている。この排気口には扉16が図示しないヒンジ等によって開閉自在に設けられている。また、筐体3の内部には、扉16を駆動して排気口15を開閉するための開閉手段であるアクチュエータ20が設けられている。アクチュエータ20の作動原理は問わないが、電気で作動するソレノイドでもよいし、前記ボルテックスチューブ11に与えられる圧縮空気を選択的に与えることにより作動するエアシリンダ等でもよい。
【0036】
図4及び図5に示すように、このアクチュエータ20は、その基部が筐体3の天板内面に回動可能に連結され、その作動ロッド21の先端が扉16の内面に回動可能に連結されており、作動ロッド21の伸縮によって扉16を開閉することができる。なお、アクチュエータ20に作動指令を与えて作動ロッド21が伸展した時に扉16が開かれ、作動指令がなくなって作動ロッド21の作動力が失われた時には、アクチュエータ20のシリンダに内蔵され、又はシリンダ外に設置された図示しない弾性部材(ばね等)の復帰付勢手段によって扉16が閉止されるように構成してもよい。
【0037】
図3に示すように、制御手段10は、アクチュエータ20を作動させて排気口15を開閉させるための開閉手段であり、ボルテックスチューブ11が筐体3内に冷却空気を供給している場合にはアクチュエータ20を作動して扉16を駆動し、排気口15を開放する。また、ボルテックスチューブ11が筐体3内に冷却空気を供給していない場合にはアクチュエータ20を作動して扉16を駆動し、排気口15を閉止する。もちろん、前述したように、アクチュエータ20の作動は扉16を開く方向のみに働き、アクチュエータ20が作動停止した場合には復帰付勢手段で扉16が閉止されるようにした場合には、アクチュエータ20で扉16を駆動して排気口15を閉止する制御は不要である。
【0038】
以上の構成によれば、制御手段10がX線発生手段7を作動させて異物検出作業が行なわれている場合には、X線発生手段7からの発熱によって筐体3内の温度が上昇する。筐体3内の温度を検出する温度センサ14からの信号により、制御手段10は筐体3内の温度を判断し、これが基準値を越えている場合には制御弁13を開とし、ボルテックスチューブ11から筐体3内に冷却空気を供給させる。このようにボルテックスチューブ11から筐体3内に冷却空気を供給している場合には、制御手段10は、ボルテックスチューブ11による冷却動作とアクチュエータ20の動作とを連動させ、これによって扉16を駆動し、排気口15を開放させる。排気口15が開放されると、筐体3内の空気が外に流出するので、筐体3内の圧力は低下し、タッチパネルの操作シートが外に膨らんでタッチパネルによる操作に支障が生じるといった不都合は回避される。また、筐体3内の空気を排出することによって冷却効率が向上し、筐体3内のX線発生手段7やX線検出手段8等の冷却が速やかに行われる。
【0039】
X線発生手段7が停止しており、異物検出作業が行なわれていない場合や、使用状態によってX線発生手段7からの発熱が少なく、筐体3内の温度が基準値よりも小さいためにボルテックスチューブ11が働いていない場合には、アクチュエータ20は作動せず、排気口15は扉16で閉止されたままである。
【0040】
X線異物検出装置1の清掃は装置が停止している時に行なうが、X線異物検出装置1が停止している場合は、上述したように筐体3の排気口15は、アクチュエータ20の動力又は付勢復帰手段の付勢力によって駆動される扉16によって必ず閉止されるので、水を用いて装置全体を清掃しても水が排気口15から筐体3内に入る等の不都合は生じず、サニタリー性に優れている。
【0041】
本例では、制御手段10がアクチュエータ20を制御する際の指標として筐体3内の内部状態である温度を例示したが、その他の手法として、筐体3内の圧力を検知し、一定以上の圧力である場合にアクチュエータ20を作動して排気口15を開放するようにしてもよい。また、指標としてX線発生手段7の運転状態を利用する場合は、制御手段10が装置の運転のために保持しているX線の出力条件、X線発生時間、X線発生手段7のON/OFF信号等、種々の信号乃至情報を使用することができる。
【0042】
また、本例のアクチュエータ20は、制御手段10からの指令によって作動するソレノイド等の駆動手段として説明したが、前述したようにアクチュエータ20としてエアシリンダを用いる場合には、図3中に一点鎖線で示すように、制御弁13からボルテックスチューブ11に供給される圧縮空気の一部がエアシリンダ(アクチュエータ20)に供給されるように構成してもよい。このような構成によれば、制御弁13が開いてボルテックスチューブ11に圧縮空気が供給されている冷却時には、エアシリンダ(アクチュエータ20)にも圧縮空気が供給され、エアシリンダ(アクチュエータ20)が作動して排気口15が自動的に開放される。
【0043】
(2)第2実施形態(図6〜図10)
図6〜図9に示した第2実施形態のX線異物検出装置31は、特に説明する他は第1実施形態の装置と同様の構造を備えており、X線異物検出装置31の筐体33内部における冷却空気の流れの一例について説明するためのものである。
【0044】
図6、図7及び図9に示すように、筐体33の背面側には、図示しない機器等を収納することを主たる目的として、外付け筐体34が設けられている。前記ボルテックスチューブ11は、該外付け筐体34に取り付けられており、また筐体33の排気口15を開閉する扉16を作動させるための開閉手段であるアクチュエータとしてのエアシリンダ35は、外付け筐体33の上面と扉16の外面との間に取り付けられている。
【0045】
図6(b)及び図7(b)に示すように、外付け筐体33の内部に開口するボルテックスチューブ11の冷気排気口15には、案内チューブ36の一端が接続連通されている。案内チューブ36は筐体3内で冷却空気を所望の位置に導くための管であり、本例では、該案内チューブ36の開放された他端は、筐体3の上部の正面側から見てX線発生手段7の右側に配置されている。
【0046】
図6〜図8に示すように、筐体33の上部の中央には、前述したX線発生手段7が設けられている。詳細は図示しないが、X線発生手段7の上部には放熱フィンが設けられている。また、X線発生手段7の右側には上向きに空気を送る第1ファン37が設けられ、X線発生手段7の左側には下向きに空気を送る第2ファン38が設けられている。図6(b)及び図7(b)に示すように、第1ファン37の入口には、前記案内チューブ36の開放された他端が配置されている。図6(b)、図7(b)及び図8に示すように、第1ファン37の出口と第2ファン38の入口は、送風ダクト39で連結され、この送風ダクト39内でX線発生手段7の放熱フィンが冷却されるようになっている。そして、図6(b)及び図7(b)に示すように、第2ファン38の出口は、排出ダクト40を介して筐体33の排気口15に連結されている。
【0047】
X線発生手段7の作動中、X線発生手段7を冷却するために、ボルテックスチューブ11の冷気排気口からは筐体3内に冷却空気が供給されている。この冷却空気は、図6〜図8から分かるように、案内チューブ36を介して第1ファン37の入口に導かれ、送風ダクト39内を強制的に送られる間にX線発生手段7を冷却し、温度が上昇した排気となり、第2ファン38により排出ダクト40から排気口15を経て筐体33外に排出される。また、図9中に矢印にて示すように、この排気は扉16に突き当たって上方に向けて排出されるので、近隣に配置された他の機器等に温排気が直接吹き付けられることは避けられる。
【0048】
本例では、筐体33内に供給された冷却空気をX線発生手段7に導いて冷却していたが、同様の構造でX線検出手段8に冷却空気を導いて冷却し、X線検出手段8を含む電子部品の仕様温度(例えば40℃)が確実に守られるようにしてもよい。
【0049】
図10は、第2実施形態の変形例を示す図である。この変形例では、扉16の上縁部が筐体33に図示しないヒンジ等によって回動可能に連結されており、外部筐体34の上に取り付けられたエアシリンダ35のロッドの先端が該扉16の外面に回動可能に取り付けられており、エアシリンダ35の作動により扉16の下縁部が揺動して排気口15を開閉するようになっている。このような構成であれば、扉16が外方に揺動して排気口15が開いた状態の時であっても、扉16は排気口15を覆った状態にあるので、上方から落下する異物や塵埃等が扉16で受け止められて排気口15から筐体33内に入り込む可能性が低い。
【0050】
(3)第3実施形態(図11)
図10に示した第3実施形態のX線異物検出装置41は、扉16を駆動する開閉手段であるアクチュエータとしてモータ42を用いた第1の例を示すものである。詳細は図示しないが、歯車減速機構を介して回転軸を回転させるモータ42が筐体3の内壁に取り付けられており、その回転軸と扉16の内面とが、リンク機構43を介して連結されている。モータ42が駆動されることにより、扉16が揺動して筐体3の排気口15を開閉することができる。その他の構成は、先述した第1乃至第2実施形態と同様である。
【0051】
(4)第4実施形態(図12)
図11に示した第4実施形態のX線異物検出装置51は、扉16を駆動する開閉手段であるアクチュエータとしてモータ52を用いた第2の例を示すものである。所定位置に配置されたボールねじ53を回動させるモータ52が筐体3の内壁に取り付けられており、そのボールねじ53にはナット部材54がボールねじ53の回動に伴って移動するように設けられている。ナット部材54と扉16の内面とは、リンク機構55によって連結されている。モータ52が駆動されるとボールねじ53が回動し、ボールねじ53に沿ってナット部材54が移動するので、リンク機構55が作動して扉16が外方に揺動し、筐体3の排気口15を開閉することができる。その他の構成は、先述した第1乃至第2実施形態と同様である。
【0052】
(5)第5実施形態(図13)
以上説明した実施形態では、筐体の排気口に設けられた扉を開閉する開閉手段として、エアシリンダやモータ等のアクチュエータと、このアクチュエータを駆動制御する制御手段が用いられていた。図13に示すように、本例のX線異物検出装置61では、筐体3の排気口15に設けられた扉16を開閉する開閉手段として、ばね25が用いられている。ばね25は、筐体3の内部に設けられた取り付け部26と、ヒンジで筐体3に連結された扉16の上縁付近の内面との間を結合しており、筐体3内に冷却空気が導かれていない状態では、適当な付勢力により扉16で排気口15を常時閉止している。筐体3内に冷却空気が導かれている状態では、筐体3内の圧力が高まり、ばね25の付勢力に抗して内部圧力が扉16を外方に向けて揺動させるので、排気口15が開放されて筐体3内の空気を外部に排気することができる。本例によれば、アクチュエータや制御手段等の複雑な機器類が不要であり、簡単な構成で冷却時のみ排気口15を開放して筐体3内の空気を外に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は第1実施形態のX線異物検出装置の斜視図である。
【図2】図2は第1実施形態のX線異物検出装置の側面図である。
【図3】図3は第1実施形態のX線異物検出装置のブロック図である。
【図4】図4は第1実施形態のX線異物検出装置において扉の閉止状態を示す断面図及び斜視図である。
【図5】図5は第1実施形態のX線異物検出装置において扉の開放状態を示す断面図及び斜視図である。
【図6】図6は第2実施形態のX線異物検出装置における後方からの斜視図(a)と筐体3内部の冷却空気流通経路を示す後方からの透視図(b)である。
【図7】図7は第2実施形態のX線異物検出装置における前面のパネルを取り外した前方からの斜視図(a)と筐体3内部の冷却空気流通経路を示す前方からの透視図(b)である。
【図8】図8は第2実施形態のX線異物検出装置における筐体内部の冷却空気流通経路を示す正面図である。
【図9】図9は第2実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造を示す側面図である。
【図10】図10は第2実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造の変形例を示す側面図である。
【図11】図11は第3実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造を示す側面図である。
【図12】図12は第4実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造を示す側面図である。
【図13】図13は第5実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造を示す側面図である。
【図14】図14はエアコンが取り付けられた従来のX線異物検出装置の模式的構造図である。
【図15】図15はボルテックスチューブが取り付けられた従来のX線異物検出装置1の模式的構造図である。
【図16】図16はボルテックスチューブが取り付けられた従来のX線異物検出装置1における問題点を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1,31,31’,41,51,61…X線異物検出装置
3,33…筐体
7…X線発生手段
8…X線検出手段
10…開閉手段としての制御手段
11…冷却空気供給手段としてのボルテックスチューブ
12…圧縮空気供給手段
13…制御弁
14…温度センサ
15…排気口
16…扉
20…開閉手段としてのアクチュエータ
25…開閉手段としてのばね
35…開閉手段であるアクチュエータとしてのエアシリンダ
42…開閉手段であるアクチュエータとしてのモータ
52…開閉手段であるアクチュエータとしてのモータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却空気が筐体内に供給されるX線異物検出装置に係り、特に冷却空気の供給による筐体内の圧力上昇が解消可能であると同時に、清掃時には筐体の防水構造を確実に維持できるサニタリー性に優れた構成とされたX線異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線異物検出装置は、X線遮蔽構造の筐体の内部に、被検査物にX線を照射するX線発生手段と、この被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段とを有しており、被検査物にX線を照射して透過したX線を検知することにより、被検査物物の内部に異物があるか否かを検出することができる。
【0003】
X線異物検出装置のX線発生手段はX線発生におけるエネルギー効率が良好とは言えず、入力エネルギーの98%が不要な熱として放出される。このため、X線異物検出装置では、X線発生手段からの熱によって筐体内の温度が上昇し、X線検出手段を含む電子部品の仕様温度(例えば40℃)を越えてしまうことがある。かかる場合にはX線異物検出に支障が生じてしまうため、筐体内を冷却して温度を下げる必要がある。
【0004】
また、このようなX線異物検出装置を食品の異物検査に使用することがあるが、X線異物検出装置が設置される食品の製造ラインの環境温度が相当高い場合には、空気を循環させて熱を奪う単なる空冷方式では、X線異物検出装置を効果的に冷却することは困難である。また、X線異物検出装置が設置された食品の製造ラインが、比較的高い湿度や殺菌性の塩素系ガス等の雰囲気下にある場合には、かかる環境条件が食品の検査環境としては良好であるとしても、X線異物検出装置のような金属製の装置類にとっては腐蝕性雰囲気であるため、かかる雰囲気内の空気を当該装置の空冷に使用することは好ましくない。
【0005】
そこで、このような利用条件下では、X線異物検出装置の冷却は単なる空冷によるのではなく、冷却空気を供給することによって温度を低下させる手法を利用する必要がある。具体的には、工業用エアコンを使用する方法と、空気源から供給された圧縮空気を高温の空気と低温の空気とに分離する機能を備えたボルテックスチューブを用い、低温の空気をX線異物検出装置の筐体に供給する方法と、温度管理された圧縮空気をのみを供給する方法等が知られていた。
【0006】
図14は、工業用エアコンをX線異物検出装置に設けて、その筐体の内部を冷却する例を示したものである。X線異物検出装置100の筐体101の背面側に設けられたエアコン102は、仕切壁103によってX線異物検出装置100の筐体101に通じる領域と外気に通じる領域とに分けられたケーシング104を有しており、このケーシング104内において仕切壁103にラジエター105が設けられた構成となっている。図14中矢印で示すように、このラジエター105よりも外側では外気が循環し、ラジエター105よりも内側ではX線異物検出装置100の筐体101内の空気である内気が循環し、内気の熱をラジエター105で外気に交換して伝達して放出することにより、筐体101内を冷却している。
【0007】
図15は、ボルテックスチューブ111が取り付けられたX線異物検出装置110の例を示したものである。ボルテックスチューブは、圧縮空気を高温空気と低温空気とに分離する機能を有しており、電機制御盤内の冷却や機械加工における冷却など各種産業分野で利用されている。
【0008】
詳細は図示しないが、一般的なボルテックスチューブは、円筒状の渦流管を有しており、その一端部は低温空気出口とされ、他端部にはバルブを介して高温空気出口が設けられている。そして、低温空気出口の近傍には圧縮空気を接線方向から当該渦流管内に流入させるノズルが設けられている。このノズルから渦流管内に圧縮空気を送り込めば、渦流管の内壁に遠心力によって押さえつけられながら高温空気出口へ向けて高圧の空気の回転渦流が進み、高温空気はバルブから放出されるが、バルブによって外部に排出されない空気流は進行方向を反転し、内側の低圧な流れとなって低温空気出口に向かい、低温空気出口から出てゆく。ここで、外から供給された前記圧縮空気が高温空気と低温空気とに分離されて排出されるのは、渦流管内において外側の流場と内側の流場との間でエネルギ−交換(熱交換)が行なわれることによる。なお、圧縮空気の温度と低温空気の温度の差は一例として−55℃に達する。
【0009】
圧縮空気を供給されたボルテックスチューブ111から送り出される低温空気は、X線異物検出装置110の筐体112内に送り込まれて冷却に使用され、ボルテックスチューブ111から送り出される高温空気はX線異物検出装置110の外部の環境に放出される。なお、X線異物検出装置は、清掃時等に外部から水が浸入しないようにするために一般に防水構造とされているが、完全な気密構造ではないため、筐体の隙間から内部の空気が外に漏れ、筐体の内部の圧力は冷却空気を供給しない場合の筐体内の圧力よりも高いある値で平衡する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、X線異物検出装置ではX線発生手段が大量の熱を発生するために筐体内の温度を下げる手段を講じる必要がある。しかしながら、図14を参照して説明したエアコン一体型のX線異物検出装置100の構造は、空気の取入口や排出口があるために清掃しにくくサニタリー性がよくないのでメンテナンスの点を考慮すると採用しにくい。
【0011】
そこで、図15を参照して説明したように、ボルテックスチューブ111によって冷却空気をX線異物検出装置110の筐体112内に導入する構造を採用することが考えられるが、その場合には前述したように筐体の内部の圧力は冷却空気を供給しない場合の筐体内の圧力よりも高い値となるため、次のような問題点が生じる。
【0012】
図16に示すように、X線異物検出装置110の筐体112の前面には開口115が形成されており、この開口115には操作用のタッチパネル116が取り付けられ、さらに透明な可撓性の操作シート117が開口115とタッチパネル116を覆って筐体112の前面側に取り付けられている。操作時には、筐体112の外側から操作シート117を介してタッチパネル116を押圧操作する。
【0013】
ところが、前述のようにボルテックスチューブ111からの冷却空気を筐体112内に導入するX線異物検出装置110では、筐体112内の圧力が高くなってしまうために、図14中に想像線で示すように操作シート117が外に向けて膨らんでしまい、タッチパネル116による操作に支障が生じるという問題があった。
【0014】
なお、サニタリー性を考慮してエアコンをX線異物検出装置の外部に別体として設け、エアコンから導いた冷却空気をダクトで導いてX線異物検出装置の筐体の内部に導入する構造も考えられるが、その場合にも図15で示したボルテックスチューブで冷気を供給するタイプのX線異物検出装置と同様、筐体の内圧が上昇して図16に示したように操作シートが外に向けて膨らみ、タッチパネルによる操作に支障が生じるという同様の問題が生じてしまう。
【0015】
また、いずれの冷却構造を採用するにしても、冷気を筐体内に導入しただけでは冷却効率が低下するため、冷却効率を向上させるために筐体内部の熱を外部に排出する必要がある。そのためには、筐体に排気口を設ける必要があるが、開放されたままの排気口では筐体内部の機器類に対する防水性に問題が生じ、また前述した外部腐蝕環境から筐体内部の機器類を保護する必要もある。
【0016】
そこで本発明は、冷却空気が筐体内に供給されるX線異物検出装置において、装置の使用時に冷却空気を供給しても筐体内の圧力が上昇せず、筐体内部の熱を効率的に排出でき、また清掃時には筐体の防水機能が発揮されて筐体内への水分の浸入を確実に防止できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
請求項1に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51,61は、
筐体3,33と、前記筐体3,33内に設けられて被検査物にX線を照射するX線発生手段7と、前記筐体3,33内に設けられて被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段8と、前記X線発生手段7を冷却するために前記筐体3,33の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段11とを備えたX線異物検出装置において、
前記筐体3,33の内部から空気を排出するために前記筐体3,33に設けられた排気口15と、
前記排気口15に開閉自在に設けられた扉16と、
前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給している場合には前記排気口が開放され、前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給していない場合には前記排気口が閉止されるように前記扉を開閉させる開閉手段20,35,42,52,10,25と、
を有することを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51は、請求項1に記載されたX線異物検出装置において、
筐体3,33と、前記筐体3,33内に設けられて被検査物にX線を照射するX線発生手段7と、前記筐体3,33内に設けられて被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段8と、前記X線発生手段7を冷却するために前記筐体3,33の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段11とを備えたX線異物検出装置において、
前記筐体3,33の内部から空気を排出するために前記筐体3,33に設けられた排気口15と、
前記排気口15に開閉自在に設けられた扉16と、
前記扉16を駆動して前記排気口15を開閉する開閉手段としてのアクチュエータ20,35,42,52と、
前記冷却空気供給手段11が前記筐体3,33内に冷却空気を供給している場合には前記排気口15が開放され、前記冷却空気供給手段11が前記筐体3,33内に冷却空気を供給していない場合には前記排気口15が閉止されるように前記アクチュエータ20,35,42,52を制御する開閉手段としての制御手段10と、
を有することを特徴としている。
【0019】
請求項3に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51は、請求項2記載のX線異物検出装置において、
前記冷却空気供給手段11による前記筐体3,33への冷却空気の供給が、前記筐体3,33の内部の状態を示す指標に基づいて行なわれ、
前記制御手段10は、前記指標に基づいて前記アクチュエータ20,35,42,52を制御することを特徴としている。
【0020】
請求項4に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51は、請求項3記載のX線異物検出装置において、
前記指標は、前記X線発生手段7の運転状態と前記筐体3,33の内部状態の少なくともいずれか一方であることを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載されたX線異物検出装置1,31,31’,41,51は、請求項2乃至4のいずれか一つに記載のX線異物検出装置において、
動力源が遮断された場合には前記扉16が前記排気口15を閉止するように前記扉16を付勢する手段を備えたことを特徴としている。
【0022】
請求項6に記載されたX線異物検出装置31,31’は、請求項2乃至5のいずれか一つに記載のX線異物検出装置において、
前記冷却空気供給手段11が、圧縮空気供給手段12から供給された圧縮空気を高温の空気と低温の空気とに分離する機能を備えて前記低温の空気を前記筐体3,33に供給するボルテックスチューブ11であり、前記アクチュエータ35が前記圧縮空気供給手段12からの圧縮空気を利用して作動するエアシリンダ35であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1乃至2に記載されたX線異物検出装置によれば、冷却空気供給手段が筐体内に冷却空気を供給している場合には、開閉手段(制御手段及びアクチュエータ)が排気口を開放するので、筐体の内部へ冷気が供給されると、筐体内の空気は排気口から外へ放出される。このため、筐体内の圧力上昇が避けられるとともに、筐体内の冷却が効率的に行なわれる。また、冷却空気供給手段が筐体内に冷却空気を供給していない場合、すなわち装置が作動されておらず冷却が必要ない場合には、開閉手段(制御手段及びアクチュエータ)が排気口を閉止するので筐体の密閉性が保たれ、装置の停止時に行なう清掃において筐体内に水が浸入するおぞれがない。
【0024】
請求項3に記載されたX線異物検出装置によれば、冷却空気供給手段は筐体の内部の状態を示す指標に基づいて筐体へ冷却空気を供給しており、制御手段も該指標に基づいてアクチュエータを制御しているので、筐体の内部の状態を示す指標に基づいて適時に行なわれる冷却空気の供給に対応してアクチュエータによる排気口の開閉操作も適時に制御される。
【0025】
請求項4に記載されたX線異物検出装置によれば、前記指標としては、X線異物検出装置のX線発生手段の運転状態を示す指標を用いるか、X線異物検出装置の筐体の内部状態を示す指標を用いるか、又はこれら両指標を用いることにより、筐体内が冷却すべき状態にあるか否かを確実に識別することができるので、冷却空気供給手段が筐体内に冷却空気を供給している状態では排気口を開放し、冷却空気供給手段が筐体内に冷却空気を供給していない状態では排気口を閉止させるような制御を確実に行なうことができる。
【0026】
請求項5に記載されたX線異物検出装置によれば、扉を閉止方向に付勢する手段が備えられているので、動力源が遮断された場合には排気口は付勢手段に付勢された扉によって確実に閉止される。
【0027】
請求項6に記載されたX線異物検出装置によれば、ボルテックスチューブが、空気源から供給された圧縮空気を高温の空気と低温の空気に分離し、低温の空気を筐体に供給することにより筐体内を冷却しているとき、この圧縮空気によって作動するエアシリンダが扉を駆動して筐体の開口を確実に開放させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
(1)第1実施形態(図1〜図5)
図1に示す本例のX線異物検出装置1は、支持脚2によって床面上に設置されるX線遮蔽構造の筐体3を有している。筐体3には、前面が開放されるとともに、左右両側面が貫通した被検査物の搬送領域S(空間)が設けられており、この搬送領域Sに左右方向に被検査物を搬送する搬送手段4が設置されている。搬送領域Sの開放された前面側は開閉可能なカバー5によって覆われており、また搬送領域Sの左右両側面には搬送手段4の上側を遮蔽する遮蔽部材6が設けられている。そして図3に示すように、搬送手段4は制御手段10によって制御される。
【0029】
従って、被検査物をX線異物検出装置1の搬送手段4の左側から供給すれば、被検査物は搬送手段4に搬送され、入口側の遮蔽部材6を通過して筐体3内の搬送領域Sに入り、搬送領域Sを搬送されて出口側の遮蔽部材6を通過し、筐体3の外に搬出される。
【0030】
図2は、筐体3から、搬送手段4とカバー5と左右両側面の遮蔽部材6を取り外した状態を示す右側面図である。同図に示すように、筐体3の上部内には被検査物にX線を照射するX線発生手段7がX線を下方に向けて照射するように設けられており、筐体3の下部内には被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段8が設けられている。そして、図3に示すように、X線発生手段7は、図示しない制御パネル等からの指示入力を受けた制御手段10によって制御され、搬送領域S内を搬送手段4で搬送されている被検査物にX線を照射する。またX線検出手段8がX線を受けて出力する出力信号は、制御手段10に入力されて異物検出のために必要な処理が行なわれる。
【0031】
従って、図2には示さない搬送手段4によって搬送領域Sを被検査物が搬送されている間、X線発生手段7からX線が照射されると、図示しない被検査物を透過したX線がX線検出手段8に検出されるので、その出力信号から被検査物に異物が混入しているか否かを制御手段10にて判断・検知することができる。
【0032】
図1乃至図3に示すように、本例のX線異物検出装置1は、X線発生手段7やX線検出手段8等を冷却するために、筐体3の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段としてのボルテックスチューブ11を備えている。ボルテックスチューブ11は、「背景技術」の項で説明したものと同一であり、圧縮空気の供給を受け、これを高温空気と低温空気とに分離し、X線異物検出装置1の筐体3の内部に低温空気を冷却空気として供給する装置である。なお、高温空気はX線異物検出装置1の筐体3の外に放出される。
【0033】
図3に示すように、ボルテックスチューブ11は圧縮空気供給手段12から制御弁13を介して圧縮空気の供給を受ける。この制御弁13は制御手段10によって開閉を制御されるように構成されている。本例では、制御弁13を開としてボルテックスチューブ11に圧縮空気を供給し、ボルテックスチューブ11から筐体3へ冷却空気を供給する制御と、制御弁13を閉としてボルテックスチューブ11への圧縮空気の供給を遮断し、ボルテックスチューブ11から筐体3への冷却空気の供給を停止する制御は、筐体3の内部の状態を示す指標に基づいて行なわれる。本例における該指標とは筐体3内の環境指標、具体的には温度であり、図3に示すように筐体3内の所定位置に設置された温度センサ14によって検出される。温度センサ14からの温度信号が制御手段10に送られると、制御手段10はその温度を予め定められた基準値と比較し、これを越えていると判断した場合には制御弁13を開放して筐体3内へ冷却空気を供給し、筐体3内の温度が基準値を下回った場合には制御弁13を閉止して筐体3内への冷却空気の供給を停止する。
【0034】
このように筐体3内の温度を温度センサ14で測定してボルテックスチューブ11による冷却空気の供給を制御してもよいが、その他の制御のための指標として、X線発生手段7の運転状態を利用しても良い。すなわち、筐体3内に冷却空気を供給する必要が生じるのは、X線発生手段7が運転状態にあって熱が発生している場合であるから、制御手段10がX線発生手段7を作動させている場合には制御弁13を開とし、X線発生手段7が停止している場合には制御弁13を閉とするものとすれば、温度センサ14を用いることなく同様の作用効果が得られる。
【0035】
図2、図4及び図5に示すように、本例のX線異物検出装置1は、筐体3の内部から空気を排出するために筐体3の背面上部に矩形の排気口15が開口形成されている。この排気口には扉16が図示しないヒンジ等によって開閉自在に設けられている。また、筐体3の内部には、扉16を駆動して排気口15を開閉するための開閉手段であるアクチュエータ20が設けられている。アクチュエータ20の作動原理は問わないが、電気で作動するソレノイドでもよいし、前記ボルテックスチューブ11に与えられる圧縮空気を選択的に与えることにより作動するエアシリンダ等でもよい。
【0036】
図4及び図5に示すように、このアクチュエータ20は、その基部が筐体3の天板内面に回動可能に連結され、その作動ロッド21の先端が扉16の内面に回動可能に連結されており、作動ロッド21の伸縮によって扉16を開閉することができる。なお、アクチュエータ20に作動指令を与えて作動ロッド21が伸展した時に扉16が開かれ、作動指令がなくなって作動ロッド21の作動力が失われた時には、アクチュエータ20のシリンダに内蔵され、又はシリンダ外に設置された図示しない弾性部材(ばね等)の復帰付勢手段によって扉16が閉止されるように構成してもよい。
【0037】
図3に示すように、制御手段10は、アクチュエータ20を作動させて排気口15を開閉させるための開閉手段であり、ボルテックスチューブ11が筐体3内に冷却空気を供給している場合にはアクチュエータ20を作動して扉16を駆動し、排気口15を開放する。また、ボルテックスチューブ11が筐体3内に冷却空気を供給していない場合にはアクチュエータ20を作動して扉16を駆動し、排気口15を閉止する。もちろん、前述したように、アクチュエータ20の作動は扉16を開く方向のみに働き、アクチュエータ20が作動停止した場合には復帰付勢手段で扉16が閉止されるようにした場合には、アクチュエータ20で扉16を駆動して排気口15を閉止する制御は不要である。
【0038】
以上の構成によれば、制御手段10がX線発生手段7を作動させて異物検出作業が行なわれている場合には、X線発生手段7からの発熱によって筐体3内の温度が上昇する。筐体3内の温度を検出する温度センサ14からの信号により、制御手段10は筐体3内の温度を判断し、これが基準値を越えている場合には制御弁13を開とし、ボルテックスチューブ11から筐体3内に冷却空気を供給させる。このようにボルテックスチューブ11から筐体3内に冷却空気を供給している場合には、制御手段10は、ボルテックスチューブ11による冷却動作とアクチュエータ20の動作とを連動させ、これによって扉16を駆動し、排気口15を開放させる。排気口15が開放されると、筐体3内の空気が外に流出するので、筐体3内の圧力は低下し、タッチパネルの操作シートが外に膨らんでタッチパネルによる操作に支障が生じるといった不都合は回避される。また、筐体3内の空気を排出することによって冷却効率が向上し、筐体3内のX線発生手段7やX線検出手段8等の冷却が速やかに行われる。
【0039】
X線発生手段7が停止しており、異物検出作業が行なわれていない場合や、使用状態によってX線発生手段7からの発熱が少なく、筐体3内の温度が基準値よりも小さいためにボルテックスチューブ11が働いていない場合には、アクチュエータ20は作動せず、排気口15は扉16で閉止されたままである。
【0040】
X線異物検出装置1の清掃は装置が停止している時に行なうが、X線異物検出装置1が停止している場合は、上述したように筐体3の排気口15は、アクチュエータ20の動力又は付勢復帰手段の付勢力によって駆動される扉16によって必ず閉止されるので、水を用いて装置全体を清掃しても水が排気口15から筐体3内に入る等の不都合は生じず、サニタリー性に優れている。
【0041】
本例では、制御手段10がアクチュエータ20を制御する際の指標として筐体3内の内部状態である温度を例示したが、その他の手法として、筐体3内の圧力を検知し、一定以上の圧力である場合にアクチュエータ20を作動して排気口15を開放するようにしてもよい。また、指標としてX線発生手段7の運転状態を利用する場合は、制御手段10が装置の運転のために保持しているX線の出力条件、X線発生時間、X線発生手段7のON/OFF信号等、種々の信号乃至情報を使用することができる。
【0042】
また、本例のアクチュエータ20は、制御手段10からの指令によって作動するソレノイド等の駆動手段として説明したが、前述したようにアクチュエータ20としてエアシリンダを用いる場合には、図3中に一点鎖線で示すように、制御弁13からボルテックスチューブ11に供給される圧縮空気の一部がエアシリンダ(アクチュエータ20)に供給されるように構成してもよい。このような構成によれば、制御弁13が開いてボルテックスチューブ11に圧縮空気が供給されている冷却時には、エアシリンダ(アクチュエータ20)にも圧縮空気が供給され、エアシリンダ(アクチュエータ20)が作動して排気口15が自動的に開放される。
【0043】
(2)第2実施形態(図6〜図10)
図6〜図9に示した第2実施形態のX線異物検出装置31は、特に説明する他は第1実施形態の装置と同様の構造を備えており、X線異物検出装置31の筐体33内部における冷却空気の流れの一例について説明するためのものである。
【0044】
図6、図7及び図9に示すように、筐体33の背面側には、図示しない機器等を収納することを主たる目的として、外付け筐体34が設けられている。前記ボルテックスチューブ11は、該外付け筐体34に取り付けられており、また筐体33の排気口15を開閉する扉16を作動させるための開閉手段であるアクチュエータとしてのエアシリンダ35は、外付け筐体33の上面と扉16の外面との間に取り付けられている。
【0045】
図6(b)及び図7(b)に示すように、外付け筐体33の内部に開口するボルテックスチューブ11の冷気排気口15には、案内チューブ36の一端が接続連通されている。案内チューブ36は筐体3内で冷却空気を所望の位置に導くための管であり、本例では、該案内チューブ36の開放された他端は、筐体3の上部の正面側から見てX線発生手段7の右側に配置されている。
【0046】
図6〜図8に示すように、筐体33の上部の中央には、前述したX線発生手段7が設けられている。詳細は図示しないが、X線発生手段7の上部には放熱フィンが設けられている。また、X線発生手段7の右側には上向きに空気を送る第1ファン37が設けられ、X線発生手段7の左側には下向きに空気を送る第2ファン38が設けられている。図6(b)及び図7(b)に示すように、第1ファン37の入口には、前記案内チューブ36の開放された他端が配置されている。図6(b)、図7(b)及び図8に示すように、第1ファン37の出口と第2ファン38の入口は、送風ダクト39で連結され、この送風ダクト39内でX線発生手段7の放熱フィンが冷却されるようになっている。そして、図6(b)及び図7(b)に示すように、第2ファン38の出口は、排出ダクト40を介して筐体33の排気口15に連結されている。
【0047】
X線発生手段7の作動中、X線発生手段7を冷却するために、ボルテックスチューブ11の冷気排気口からは筐体3内に冷却空気が供給されている。この冷却空気は、図6〜図8から分かるように、案内チューブ36を介して第1ファン37の入口に導かれ、送風ダクト39内を強制的に送られる間にX線発生手段7を冷却し、温度が上昇した排気となり、第2ファン38により排出ダクト40から排気口15を経て筐体33外に排出される。また、図9中に矢印にて示すように、この排気は扉16に突き当たって上方に向けて排出されるので、近隣に配置された他の機器等に温排気が直接吹き付けられることは避けられる。
【0048】
本例では、筐体33内に供給された冷却空気をX線発生手段7に導いて冷却していたが、同様の構造でX線検出手段8に冷却空気を導いて冷却し、X線検出手段8を含む電子部品の仕様温度(例えば40℃)が確実に守られるようにしてもよい。
【0049】
図10は、第2実施形態の変形例を示す図である。この変形例では、扉16の上縁部が筐体33に図示しないヒンジ等によって回動可能に連結されており、外部筐体34の上に取り付けられたエアシリンダ35のロッドの先端が該扉16の外面に回動可能に取り付けられており、エアシリンダ35の作動により扉16の下縁部が揺動して排気口15を開閉するようになっている。このような構成であれば、扉16が外方に揺動して排気口15が開いた状態の時であっても、扉16は排気口15を覆った状態にあるので、上方から落下する異物や塵埃等が扉16で受け止められて排気口15から筐体33内に入り込む可能性が低い。
【0050】
(3)第3実施形態(図11)
図10に示した第3実施形態のX線異物検出装置41は、扉16を駆動する開閉手段であるアクチュエータとしてモータ42を用いた第1の例を示すものである。詳細は図示しないが、歯車減速機構を介して回転軸を回転させるモータ42が筐体3の内壁に取り付けられており、その回転軸と扉16の内面とが、リンク機構43を介して連結されている。モータ42が駆動されることにより、扉16が揺動して筐体3の排気口15を開閉することができる。その他の構成は、先述した第1乃至第2実施形態と同様である。
【0051】
(4)第4実施形態(図12)
図11に示した第4実施形態のX線異物検出装置51は、扉16を駆動する開閉手段であるアクチュエータとしてモータ52を用いた第2の例を示すものである。所定位置に配置されたボールねじ53を回動させるモータ52が筐体3の内壁に取り付けられており、そのボールねじ53にはナット部材54がボールねじ53の回動に伴って移動するように設けられている。ナット部材54と扉16の内面とは、リンク機構55によって連結されている。モータ52が駆動されるとボールねじ53が回動し、ボールねじ53に沿ってナット部材54が移動するので、リンク機構55が作動して扉16が外方に揺動し、筐体3の排気口15を開閉することができる。その他の構成は、先述した第1乃至第2実施形態と同様である。
【0052】
(5)第5実施形態(図13)
以上説明した実施形態では、筐体の排気口に設けられた扉を開閉する開閉手段として、エアシリンダやモータ等のアクチュエータと、このアクチュエータを駆動制御する制御手段が用いられていた。図13に示すように、本例のX線異物検出装置61では、筐体3の排気口15に設けられた扉16を開閉する開閉手段として、ばね25が用いられている。ばね25は、筐体3の内部に設けられた取り付け部26と、ヒンジで筐体3に連結された扉16の上縁付近の内面との間を結合しており、筐体3内に冷却空気が導かれていない状態では、適当な付勢力により扉16で排気口15を常時閉止している。筐体3内に冷却空気が導かれている状態では、筐体3内の圧力が高まり、ばね25の付勢力に抗して内部圧力が扉16を外方に向けて揺動させるので、排気口15が開放されて筐体3内の空気を外部に排気することができる。本例によれば、アクチュエータや制御手段等の複雑な機器類が不要であり、簡単な構成で冷却時のみ排気口15を開放して筐体3内の空気を外に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は第1実施形態のX線異物検出装置の斜視図である。
【図2】図2は第1実施形態のX線異物検出装置の側面図である。
【図3】図3は第1実施形態のX線異物検出装置のブロック図である。
【図4】図4は第1実施形態のX線異物検出装置において扉の閉止状態を示す断面図及び斜視図である。
【図5】図5は第1実施形態のX線異物検出装置において扉の開放状態を示す断面図及び斜視図である。
【図6】図6は第2実施形態のX線異物検出装置における後方からの斜視図(a)と筐体3内部の冷却空気流通経路を示す後方からの透視図(b)である。
【図7】図7は第2実施形態のX線異物検出装置における前面のパネルを取り外した前方からの斜視図(a)と筐体3内部の冷却空気流通経路を示す前方からの透視図(b)である。
【図8】図8は第2実施形態のX線異物検出装置における筐体内部の冷却空気流通経路を示す正面図である。
【図9】図9は第2実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造を示す側面図である。
【図10】図10は第2実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造の変形例を示す側面図である。
【図11】図11は第3実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造を示す側面図である。
【図12】図12は第4実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造を示す側面図である。
【図13】図13は第5実施形態のX線異物検出装置における扉の開閉構造を示す側面図である。
【図14】図14はエアコンが取り付けられた従来のX線異物検出装置の模式的構造図である。
【図15】図15はボルテックスチューブが取り付けられた従来のX線異物検出装置1の模式的構造図である。
【図16】図16はボルテックスチューブが取り付けられた従来のX線異物検出装置1における問題点を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1,31,31’,41,51,61…X線異物検出装置
3,33…筐体
7…X線発生手段
8…X線検出手段
10…開閉手段としての制御手段
11…冷却空気供給手段としてのボルテックスチューブ
12…圧縮空気供給手段
13…制御弁
14…温度センサ
15…排気口
16…扉
20…開閉手段としてのアクチュエータ
25…開閉手段としてのばね
35…開閉手段であるアクチュエータとしてのエアシリンダ
42…開閉手段であるアクチュエータとしてのモータ
52…開閉手段であるアクチュエータとしてのモータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(3,33)と、前記筐体内に設けられて被検査物にX線を照射するX線発生手段(7)と、前記筐体内に設けられて被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段(8)と、前記X線発生手段を冷却するために前記筐体の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段(11)とを備えたX線異物検出装置において、
前記筐体の内部から空気を排出するために前記筐体に設けられた排気口(15)と、
前記排気口に開閉自在に設けられた扉(16)と、
前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給している場合には前記排気口が開放され、前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給していない場合には前記排気口が閉止されるように前記扉を開閉させる開閉手段(20,35,42,52,10,25)と、
を有することを特徴とするX線異物検出装置(1,31,31’,41,51,61)。
【請求項2】
筐体(3,33)と、前記筐体内に設けられて被検査物にX線を照射するX線発生手段(7)と、前記筐体内に設けられて被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段(8)と、前記X線発生手段を冷却するために前記筐体の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段(11)とを備えたX線異物検出装置において、
前記筐体の内部から空気を排出するために前記筐体に設けられた排気口(15)と、
前記排気口に開閉自在に設けられた扉(16)と、
前記扉を駆動して前記排気口を開閉する開閉手段としてのアクチュエータ(20,35,42,52)と、
前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給している場合には前記排気口が開放され、前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給していない場合には前記排気口が閉止されるように前記アクチュエータを制御する開閉手段としての制御手段(10)と、
を有することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置(1,31,31’,41,51)。
【請求項3】
前記冷却空気供給手段(11)による前記筐体(3,33)への冷却空気の供給が、前記筐体の内部の状態を示す指標に基づいて行なわれ、
前記制御手段(10)は、前記指標に基づいて前記アクチュエータ(20,35,42,52)を制御することを特徴とする請求項2記載のX線異物検出装置(1,31,31’,41,51)。
【請求項4】
前記指標は、前記X線発生手段(7)の運転状態と前記筐体(3,33)の内部状態の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項3記載のX線異物検出装置(1,31,31’,41,51)。
【請求項5】
動力源が遮断された場合には前記扉(16)が前記排気口(15)を閉止するように前記扉を付勢する手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一つに記載のX線異物検出装置(1,31,31’,41,51)。
【請求項6】
前記冷却空気供給手段(11)が、圧縮空気供給手段(12)から送られた圧縮空気を高温の空気と低温の空気とに分離する機能を備えて前記低温の空気を前記筐体に供給するボルテックスチューブ(11)であり、前記アクチュエータ(35)が前記圧縮空気供給手段からの圧縮空気を利用して作動するエアシリンダ(35)であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一つに記載のX線異物検出装置(31,31’)。
【請求項1】
筐体(3,33)と、前記筐体内に設けられて被検査物にX線を照射するX線発生手段(7)と、前記筐体内に設けられて被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段(8)と、前記X線発生手段を冷却するために前記筐体の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段(11)とを備えたX線異物検出装置において、
前記筐体の内部から空気を排出するために前記筐体に設けられた排気口(15)と、
前記排気口に開閉自在に設けられた扉(16)と、
前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給している場合には前記排気口が開放され、前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給していない場合には前記排気口が閉止されるように前記扉を開閉させる開閉手段(20,35,42,52,10,25)と、
を有することを特徴とするX線異物検出装置(1,31,31’,41,51,61)。
【請求項2】
筐体(3,33)と、前記筐体内に設けられて被検査物にX線を照射するX線発生手段(7)と、前記筐体内に設けられて被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段(8)と、前記X線発生手段を冷却するために前記筐体の内部に冷却空気を供給する冷却空気供給手段(11)とを備えたX線異物検出装置において、
前記筐体の内部から空気を排出するために前記筐体に設けられた排気口(15)と、
前記排気口に開閉自在に設けられた扉(16)と、
前記扉を駆動して前記排気口を開閉する開閉手段としてのアクチュエータ(20,35,42,52)と、
前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給している場合には前記排気口が開放され、前記冷却空気供給手段が前記筐体内に冷却空気を供給していない場合には前記排気口が閉止されるように前記アクチュエータを制御する開閉手段としての制御手段(10)と、
を有することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置(1,31,31’,41,51)。
【請求項3】
前記冷却空気供給手段(11)による前記筐体(3,33)への冷却空気の供給が、前記筐体の内部の状態を示す指標に基づいて行なわれ、
前記制御手段(10)は、前記指標に基づいて前記アクチュエータ(20,35,42,52)を制御することを特徴とする請求項2記載のX線異物検出装置(1,31,31’,41,51)。
【請求項4】
前記指標は、前記X線発生手段(7)の運転状態と前記筐体(3,33)の内部状態の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項3記載のX線異物検出装置(1,31,31’,41,51)。
【請求項5】
動力源が遮断された場合には前記扉(16)が前記排気口(15)を閉止するように前記扉を付勢する手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一つに記載のX線異物検出装置(1,31,31’,41,51)。
【請求項6】
前記冷却空気供給手段(11)が、圧縮空気供給手段(12)から送られた圧縮空気を高温の空気と低温の空気とに分離する機能を備えて前記低温の空気を前記筐体に供給するボルテックスチューブ(11)であり、前記アクチュエータ(35)が前記圧縮空気供給手段からの圧縮空気を利用して作動するエアシリンダ(35)であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一つに記載のX線異物検出装置(31,31’)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−300379(P2009−300379A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158101(P2008−158101)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】
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