X線診断装置及び制御プログラム
【課題】X線画像データの観察下で行なうカテーテル治療に有効な支援データを生成する。
【解決手段】被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置のデータ生成部は、前記画像データに基づいてカテーテル先端部を検出するカテーテル先端検出部と、前記カテーテル先端検出部の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記カテーテル先端部の位置情報を移動軌跡情報として保存する先端位置情報記憶部と、前記移動軌跡情報を現在の前記画像データ上に重畳してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成部とを備える。
【解決手段】被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置のデータ生成部は、前記画像データに基づいてカテーテル先端部を検出するカテーテル先端検出部と、前記カテーテル先端検出部の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記カテーテル先端部の位置情報を移動軌跡情報として保存する先端位置情報記憶部と、前記移動軌跡情報を現在の前記画像データ上に重畳してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線画像データの観察下で行なうカテーテル治療に有効な支援データを生成することが可能なX線診断装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置やX線CT装置等を用いた医用画像診断は、コンピュータ技術の発展に伴って急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。特に、カテーテル手技の発展に伴って進歩を遂げている循環器領域のX線画像診断は、心血管系をはじめ全身の動静脈を対象として広く用いられている。
【0003】
循環器領域の診断を目的としたX線診断装置は、X線発生部及びX線検出部(以下では、これらを纏めて撮像系と呼ぶ。)、撮像系を保持するCアーム等の保持部、患者を載置する天板等を備え、上述の天板や保持部に取り付けられた撮像系を所望の方向へ移動させることにより当該患者の治療対象部位に対し最適な方向からのX線撮影を可能にしている。
【0004】
一方、上述のX線撮影によって生成された画像データの観察下で行なうカテーテル治療の1つとして心筋表面に存在する刺激伝導路を高周波電流によって焼灼することにより不整脈等の治療を行なうカテーテルアブレーションがある。
【0005】
不整脈等の治療を目的としたカテーテルアブレーションでは、先ず、リング状多極電極を有する計測用カテーテルの先端部を心腔内に挿入して、例えば、心筋表面の肺静脈開口部に発生する心筋電位を計測することにより不整脈を誘起する左房−肺静脈間刺激伝導路(以下では、治療対象部位と呼ぶ。)の位置を特定し、次いで、上述の心腔内に挿入された治療用カテーテルの先端部によって前記治療対象部位を焼灼することにより不整脈を根治治療する方法が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−106633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
治療用カテーテルの先端部を心筋表面あるいはその近傍に存在する治療対象部位に接触させ、前記先端部に設けられたチップを介して前記治療対象部位に高周波電流を供給することにより焼灼を行なう上述のカテーテルアブレーションでは、計測用カテーテルによってその位置が特定された治療対象部位に対する治療用カテーテル先端部の配置は、略リアルタイムで表示される前記画像データの観察下で行なわれてきた。
【0008】
しかしながら、心腔内に挿入された治療用カテーテルの表示が要求される当該X線撮影では、造影剤の使用により心筋表面を常に鮮明に描出することは困難であり、従って、心臓の拍動に伴って移動する診断対象部位に対し治療用カレーテルの先端部を正確に配置することは極めて困難であるという問題点を有していた。
【0009】
本開示は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、X線画像データの観察下で心筋等に対するカテーテル治療を行なう際、治療対象部位あるいはその近傍の好適な位置に配置された状態で予め検出された前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテル先端部の位置情報(移動軌跡情報)を前記治療対象部位の治療を目的とする治療用カテーテルが示された支援データ生成モードの画像データに重畳して表示することにより治療対象部位に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを容易に把握することが可能なX線診断装置及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示のX線診断装置は、被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置であって、前記画像データに基づいて、カテーテル先端部を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を保存する記憶手段と、前記移動軌跡情報を、現在の前記画像データ上に重畳してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成手段と、前記カテーテル治療支援データを表示する表示手段とを備えたことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態におけるX線診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態のX線診断装置が備えるX線撮影部の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態のX線診断装置が備えるデータ生成部の具体的な構成を示すブロック図。
【図4】本実施形態のデータ生成部が備えるカテーテル先端検出部の具体的な構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態の支援データ生成部において生成されるカテーテル治療支援データの具体例を示す図。
【図6】本実施形態の先端位置情報記憶部に保存される計測用カテーテルの先端位置情報を説明するための図。
【図7】本実施形態の支援データ生成モードにおいて設定されるX線照射領域を説明するための図。
【図8】本実施形態における計測用カテーテルの先端位置情報検出/保存手順を示すフローチャート。
【図9】本実施形態におけるカテーテル治療支援データの生成手順を示すフローチャート。
【図10】本実施形態の変形例におけるデータ生成部の具体的な構成を示すブロック図。
【図11】本実施形態の変形例におけるカテーテル先端部の位置ズレ検出を説明するための図。
【図12】本実施形態の変形例における計測用カテーテルの先端軌跡データ生成/保存手順を示すフローチャート。
【図13】本実施形態の変形例におけるカテーテル治療支援データの生成手順を示すフローチャート。
【図14】他の実施形態において生成されたカテーテル治療支援データの具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。
【0013】
(実施形態)
本実施形態におけるX線診断装置では、先ず、患者の心臓内に挿入された心筋電位計測用カテーテル(以下では、計測用カテーテルと呼ぶ。)を用いて心筋電位を計測することにより治療対象部位の位置を特定し、この治療対象部位に計測用カテーテルの先端部を配置した状態で所定心拍周期における参照データ収集モードのX線撮影を行なうことにより心拍時相を付帯情報とする計測用カテーテルの先端位置情報(先端移動軌跡情報)を収集する。
【0014】
次いで、治療対象部位の焼灼治療を目的として当該患者の心臓内に挿入された治療用カテーテルの先端部を前記治療対象部位の近傍に配置した状態で支援データ生成モードのX線撮影と心電波形の計測を行ない、このとき得られた画像データの心拍時相と同一あるいは最も近接した心拍時相において収集された計測用カテーテルの先端位置情報を上述の画像データに重畳することにより焼灼治療に有効なカテーテル治療支援データを生成する。
【0015】
尚、本実施形態では、心筋表面の治療対象部位に対し治療用カテーテルを用いた焼灼治療を行なうことにより不整脈を除去する場合について述べるが、治療用カテーテルを用いた治療は上述に限定されない。
【0016】
本実施形態におけるX線診断装置の構成と機能につき図1乃至図7を用いて説明する。尚、図1は、本実施形態におけるX線診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2及び図3は、このX線診断装置が備えるX線撮影部及びデータ生成部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すX線診断装置100は、不整脈を有した患者300の治療対象部位を含む撮影領域に対し参照データ収集モード及び支援データ生成モードのX線を照射し、前記撮影領域を透過したX線を検出して投影データを生成するX線撮影部1と、上述のX線照射及びX線検出を行なう撮像系を保持する図示しない保持部と、患者300を載置する天板6と、撮像系が取り付けられた保持部や患者300を載置した天板6、更には、後述のX線発生部2に設けられた可動絞り器22を所望の位置へ移動させる移動機構部7と、X線撮影部1から出力された参照データ収集モード及び支援データ生成モードの投影データを用いて画像データを生成する画像データ生成部8と、計測用カテーテルの先端部が治療対象部位あるいはその近傍の好適な位置に配置された状態で収集された参照データ収集モードの画像データに基づいて計測用カテーテルの先端位置情報を検出し、治療用カテーテルが挿入された患者300に対する支援データ生成モードのX線撮影によって収集された画像データに計測用カテーテルの先端位置情報を重畳してカテーテル治療支援データを生成するデータ生成部9を備え、更に、データ生成部9において生成されたカテーテル治療支援データや後述の警告信号生成部98において生成された警告信号等を表示する表示部10と、患者情報の入力、参照データ収集モード及び支援データ生成モードの選択、各モードにおけるX線撮影条件や画像データ生成条件の設定、カテーテル治療支援データの生成条件や表示条件の設定、各種指示信号の入力等を行なう入力部11と、X線診断装置100が有する上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部12と、患者300の心電波形や心筋電位を計測する生体信号計測部13を備えている。
【0018】
X線撮影部1は、図1に示すように撮像系を構成するX線発生部2及びX線検出部3と、投影データ生成部4と、高電圧発生部5を備え、患者300の撮影領域に対してX線を照射する機能と前記撮影領域を透過したX線に基づいて投影データを生成する機能を有している。
【0019】
図2は、X線撮影部1に設けられた上述の各ユニットの具体的な構成を示すブロック図であり、X線発生部2は、患者300の撮影領域に対してX線を照射するX線管21と、X線管21から放射されたX線に対して所定範囲のX線錘(コーンビーム)を形成する可動絞り器22を備えている。X線管21は、X線を発生する真空管であり、加熱された陰極(フィラメント)から生ずる熱電子を高電圧発生部5から供給される直流高電圧により加速させてタングステン陽極に衝突させX線を発生させる。
【0020】
一方、可動絞り器22は、患者300に対する被曝線量の低減と画像データの画質向上を目的として用いられ、X線管21から放射されたX線を所定の照射領域に絞りこむ絞り羽根(上羽根)、絞り羽根に連動して移動することにより散乱線や漏れ線量を低減する下羽根及び吸収量が少ない媒質を透過したX線を選択的に低減させてハレーションを防止する補償フィルタ(何れも図示せず)を有している。
【0021】
特に、本実施形態における支援データ生成モードのX線照射範囲は、参照データ収集モードにて検出された計測用カテーテルの先端位置情報に基づいてその位置が制御された可動絞り器22の絞り羽根によって決定され、このX線照射範囲を計測用カテーテルの先端部に近接した治療対象部位に限定することにより患者300に対する被曝線量を低減することが可能となる。
【0022】
一方、X線検出部3には、イメージインテンシファイア及びX線TVを用いる方法と平面検出器を用いる方法があり、平面検出器には、X線を直接電荷に変換する方式と、一旦光に変換した後電荷に変換する方式とがある。ここでは、X線を直接電荷に変換することが可能な平面検出器を有するX線検出部3について述べるが、これに限定されない。
【0023】
即ち、本実施形態のX線検出部3は、図2に示すように患者300を透過したX線を検出する平面検出器31と、この平面検出器31において検出されたX線を信号電荷として読み出すための駆動信号を供給するゲートドライバ32を有している。
【0024】
平面検出器31は、微小な検出素子を列方向及びライン方向に2次元配列して構成され、検出素子の各々は、X線を感知し入射X線量に応じて信号電荷を発生する光電膜と、この光電膜に発生した信号電荷を蓄積する電荷蓄積コンデンサと、電荷蓄積コンデンサに蓄積された信号電荷を所定のタイミングで読み出すTFT(薄膜トランジスタ)(何れも図示せず)を備えている。
【0025】
投影データ生成部4は、上述の平面検出器31から、例えば、ライン方向単位でパラレルに読み出された信号電荷を電圧に変換する電荷・電圧変換器41と、電荷・電圧変換器41の出力をデジタル信号(投影データのデータ要素)に変換するA/D変換器42と、デジタル変換された上述のデータ要素を時系列的なデータ要素に変換するパラレル・シリアル変換器43を備えている。そして、パラレル・シリアル変換器43から出力された時系列的なデータ要素は、画像データ生成部8へ供給される。
【0026】
一方、高電圧発生部5は、X線管21の陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生する高電圧発生器52と、システム制御部12から供給される参照データ収集モード及び支援データ生成モードのX線照射条件に基づいて高電圧発生器52における管電流、管電圧、印加時間、印加タイミング、X線照射の繰り返し周波数等を制御するX線制御部51を備えている。特に、本実施形態では、参照データ収集モードのX線照射繰返し周波数を支援データ生成モードのX線照射繰返し周波数より高く設定することが可能であり、参照データ収集モードのX線照射繰返し周波数を高くし画像データのフレームレートを高めることにより心臓の拍動に伴って周期的に変化する計測用カテーテルの先端位置情報を正確に検出することができる。
【0027】
図1へ戻って、移動機構部7は、X線発生部2及びX線検出部3(撮像系)が取り付けられた図示しない保持部を患者300の周囲で回動あるいは移動させる保持部移動機構71と、天板6を患者300の体軸方向(図1のz方向)及び体軸と直交する方向(図1のx方向及びy方向)へ移動させる天板移動機構72と、X線発生部2に設けられた可動絞り器22の絞り羽根を所定の位置へ移動させる絞り移動機構73と、保持部移動機構71、天板移動機構72及び絞り移動機構73を制御する移動機構制御部74を備えている。
【0028】
そして、移動機構制御部74は、入力部11からシステム制御部12を介して供給される撮像系移動指示信号に基づいて生成した移動制御信号を保持部移動機構71へ供給し、撮像系が取り付けられた保持部を患者300の周囲で回動あるいは移動させることによりX線撮影の撮影位置及び撮影方向を設定する。
【0029】
同様にして、移動機構制御部74は、入力部11からシステム制御部12を介して供給される天板移動指示信号に基づいて生成した移動制御信号を天板移動機構72へ供給し、天板6を患者300の体軸方向あるいは体軸と直交する方向へ平行移動させることにより撮影領域の中心を設定する。
【0030】
更に、移動機構制御部74は、データ生成部9の先端位置情報記憶部92からシステム制御部12を介して供給される計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて生成した移動制御信号を絞り移動機構73へ供給し、X線発生部2の可動絞り器22に設けられた複数の絞り羽根を所定の位置へ移動させることにより支援データ生成モードのX線照射領域を計測用カテーテルの先端部に近接した治療対象部位に限定させる。
【0031】
一方、画像データ生成部8は、図示しない投影データ記憶部を有し、この投影データ記憶部には、参照データ収集モード及び支援データ生成モードのX線撮影において投影データ生成部4のパラレル・シリアル変換器43から時系列的に出力された投影データのデータ要素が検出素子のライン方向及び列方向に対応させて順次保存され2次元の画像データが生成される。
【0032】
次に、データ生成部9の具体的な構成と機能につき、図3乃至図5を用いて説明する。尚、図3は、データ生成部9の構成を示すブロック図であり、図4は、データ生成部9が備えるカテーテル先端検出部91の具体的な構成を示すブロック図である。
【0033】
データ生成部9は、図3に示すようにカテーテル先端検出部91、先端位置情報記憶部92、先端位置情報抽出部93、画像データ記憶部94、画像処理部95及び支援データ生成部96を備え、更に、位置ズレ検出部97、警告信号生成部98及び心拍時相設定部99を備えている。
【0034】
カテーテル先端検出部91は、例えば、図4に示すように平滑化処理部911、輪郭抽出部912及びマッチング処理部913を有し、平滑化処理部911は、参照データ収集モード及び支援データ生成モードのX線撮影において画像データ生成部8から供給される画像データに対しスムージング(平滑化)を目的としたフィルタリング処理を行なって不要なノイズ成分を除去する。一方、輪郭抽出部912は、平滑化された上述の画像データに対し輪郭強調を目的としたフィルタリング処理等を行なって参照データ収集モードの画像データに示された計測用カテーテルあるいは支援データ生成モードの画像データに示された治療用カテーテルの輪郭を抽出する。
【0035】
マッチング処理部913は、テンプレートデータ保管部913aと演算処理部913bを備え、テンプレートデータ保管部913aには、各種カテーテルの先端形状を示す3次元のテンプレートデータがカテーテル識別情報を付帯情報として予め保管されている。一方、演算処理部913bは、テンプレートデータ保管部913aに保管されている各種テンプレートデータの中から、参照データ収集モードにおいて用いられた計測用カテーテル及び支援データ生成モードにおいて用いられた治療用カテーテルに対応するテンプレートデータを上述のカテーテル識別情報に基づいて読み出し、得られたテンプレートデータと輪郭抽出部912から供給された輪郭抽出後の画像データとのパターンマッチング処理により計測用カテーテル及び治療用カテーテルの先端位置情報(先端移動軌跡情報)を検出する。
【0036】
尚、上述のパターンマッチング処理において異なる複数の位置情報が検出された場合、既に検出された隣接する心拍時相の先端位置情報に最も近接した位置情報を当該心拍時相における計測用カテーテル及び治療用カテーテルの先端位置情報として選択することが望ましい。
【0037】
そして、参照データ収集モードの所定心拍周期(例えば、1心拍周期)において収集された時系列的な画像データに基づく計測用カテーテルの先端位置情報(先端移動軌跡情報)は、後述の心拍時相設定部99から供給される患者300の心拍時相情報と共に図3の先端位置情報記憶部92に保存される。即ち、先端位置情報記憶部92には、参照データ収集モードのX線照射周期と等しい時間間隔の心拍時相にて時系列的に検出された計測用カテーテルの先端位置情報(先端移動軌跡情報)が心拍時相を付帯情報として順次保存される。
【0038】
この場合、先端位置情報記憶部92には、生体信号計測部13が備える後述の心筋電位計測部131において計測された心筋電位が供給され、予め設定された閾値αより大きな心筋電位が連続して計測される所定心拍周期(1心拍周期)の先端位置情報のみが心拍時相と共に保存され、心筋電位が閾値αより小さな期間(即ち、計測用カテーテルの先端部が治療対象部位あるいは心筋に接触していない期間)にて検出された先端位置情報は排除される。
【0039】
一方、支援データ生成モードの画像データに基づいて検出された治療用カテーテルの先端位置情報は位置ズレ検出部97へ供給され、計測用カテーテル先端部と治療用カテーテル先端部との位置ズレ検出に用いられる。
【0040】
次に、図3の先端位置情報抽出部93は、支援データ生成モードにおいて心拍時相設定部99から供給される患者300の心拍時相情報を受信し、この心拍時相と同一あるいは最も近接する参照データ収集モードの心拍時相にて検出された計測用カテーテルの先端位置情報を先端位置情報記憶部92に保存されている各種先端位置情報の中から抽出する。
【0041】
一方、画像データ記憶部94は、支援データ生成モードにおいて画像データ生成部8から供給される画像データを一旦保存し、画像処理部95は、画像データ記憶部94に保存された画像データに対しノイズ低減や輪郭強調等を目的とした画像処理を略リアルタイムで行なう。そして、処理後の画像データは、画像データ記憶部94に再度保存される。
【0042】
支援データ生成部96は、図示しないデータ加算部を備え、画像データ記憶部94から供給された支援データ生成モードの画像データに先端位置情報抽出部93から供給された参照データ収集モードにおける計測用カテーテルの先端位置情報を重畳することによってカテーテル治療支援データを生成する。即ち、前記データ加算部は、支援データ生成モードにおいて画像データ記憶部94から供給された画像処理後の画像データを受信する。次いで、先端位置情報抽出部93が先端位置情報記憶部92に保存されている各種先端位置情報の中から抽出した前記画像データの収集時における患者300の心拍時相(以下では、説明を簡単にするために画像データの心拍時相と呼ぶ。)と同一あるいは最も近接した心拍時相を付帯情報とする計測用カテーテルの先端位置情報を支援データ生成モードの画像データに重畳することによってカテーテル治療支援データを生成する。
【0043】
図5は、上述の支援データ生成部96によって生成されたカテーテル治療支援データの具体例を示したものであり、上述のように、このカテーテル治療支援データは、心筋電位計測部131としてその先端部に計測用電極を有した計測用カテーテルF1及びF2と焼灼用電極をその先端部に有した治療用カテーテルF3が示された支援データ生成モードの画像データに、先端位置情報記憶部92から抽出された前記画像データの心拍時相に対応する計測用カテーテルの先端位置情報Axを重畳することによって生成されている。
【0044】
図3へ戻って、データ生成部9の位置ズレ検出部97は、図示しない距離計測部を備え、支援データ生成モードにおいて上述のカテーテル治療支援データが生成される際、画像データ生成部8から略リアルタイムで供給される支援データ生成モードの画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した治療用カテーテルの先端位置情報と、先端位置情報抽出部93から供給された前記画像データの心拍時相と同一あるいは最も近接した心拍時相を付帯情報とする計測用カテーテルの先端位置情報とに基づき、同一心拍時相における計測用カテーテル先端部と治療用カテーテル先端部の位置ズレを検出する。例えば、前記距離計測部は、支援データ生成モードにおいてカテーテル先端検出部91から供給された治療用カテーテルの先端部位置座標と先端位置情報抽出部93から供給された計測用カテーテルの先端部位置座標に基づいてカテーテル先端部間の距離を計測する。
【0045】
警告信号生成部98は、図示しないデータ比較部と警告文言作成部を有し、データ比較部は、位置ズレ検出部97から供給された位置ズレ検出結果と予め設定された閾値βとを比較する。そして、同一心拍時相における計測用カテーテルの先端部と治療用カテーテルの先端部との位置ズレが閾値βより大きい場合、警告文言作成部は、例えば、「治療用カテーテルの先端部は、治療対象部位から離れているため再設定して下さい。」等の警告文言を所定フォーマットで作成する。
【0046】
一方、心拍時相設定部99は、生体信号計測部13が備える心電波形計測部132から供給される当該患者の心電波形に基づいて参照データ収集モード及び支援データ生成モードにおける心拍時相を設定する。具体的には、先ず、心電波形計測部132から供給される心電波形のR波を検出し、次いで、時間方向に隣接する2つのR波の間隔(R−R間隔)を所定の時間間隔Δτで分割することによって心拍時相(例えば、後述の心拍時相P1乃至PN)を設定する。そして、参照データ収集モードにおいて設定された心拍時相は、先端位置情報記憶部92へ供給され、支援データ生成モードにおいて設定された心拍時相は、先端位置情報抽出部93へ供給される。
【0047】
次に、図1に示す表示部10は、図示しない表示データ生成部、データ変換部及びモニタを備え、表示データ生成部は、データ生成部9の支援データ生成部96において生成されたカテーテル治療支援データを所定の表示フォーマットに変換し、更に、警告信号生成部98から供給された警告文言(警告信号)や患者情報等を必要に応じて付加し表示データを生成する。次いで、データ変換部は、表示データ生成部が生成した表示データに対してD/A変換やテレビフォーマット変換等の変換処理を行ないモニタに表示する。
【0048】
尚、上述の表示データを構成する計測用カテーテルの先端位置情報を、この先端位置情報が重畳された支援データ生成モードの画像データと異なる色調、明度、透明度等を用いて表示することにより治療用カテーテル先端部との位置関係が明確になり、許容できない位置ズレが発生した場合の治療用カテーテル先端部の位置ズレ補正を容易に行なうことが可能となる。
【0049】
入力部11は、表示パネルやキーボード、トラックボール、ジョイスティック、マウスなどの入力デバイスを備えたインタラクティブなインターフェースであり、患者情報の入力、参照データ収集モード及び支援データ生成モードの選択、各モードのX線照射条件を含むX線撮影条件や画像データ生成条件の設定、カテーテル治療支援データの生成条件や表示条件の設定、閾値α及び閾値βの設定、各種指示信号の入力等を上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なう。
【0050】
システム制御部12は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部11において入力/設定/選択された各種情報は上述の記憶回路に保存される。そして、CPUは、これらの情報に基づいてX線診断装置100が有する上述の各ユニットを統括的に制御し、参照データ収集モード及び支援データ生成モードにおける画像データの生成、参照データ収集モードの画像データに基づいた計測用カテーテル先端位置情報の検出及び治療用カテーテルが示された支援データ生成モードの画像データと上述の計測用カテーテル先端位置情報との合成によるカテーテル治療支援データの生成を実行させる。
【0051】
生体信号計測部13は、図3に示すように、心筋の治療対象部位に配置される計測用カテーテルの先端部に装着され、参照データ収集モードにおいて前記治療対象部位が発生する心筋電位を計測する心筋電位計測部131と、参照データ収集モード及び支援データ生成モードにおける患者300の心電波形を計測する心電波形計測部132を備えている。
【0052】
心筋電位計測部131は、心筋表面の電位を計測する計測用電極(図5参照)を有し、心筋電位の計測を目的として患者300の心臓内に挿入される計測用カテーテルの先端部に設けられている。そして、この心筋電位計測部131を用いて治療対象部位に発生する心筋電位を計測することにより治療対象部位の位置を特定することが可能となり、このとき計測される心筋電位が閾値αより大きな振幅を有した所定心拍周期(1心拍周期)における計測用カテーテルの先端位置情報が先端位置情報記憶部92において保存される。
【0053】
一方、心電波形計測部132は、患者300の体表面に装着され心電波形を計測する計測用電極と、この計測用電極が計測した心電波形を所定の振幅に増幅する増幅回路と、増幅された心電波形をデジタル信号に変換するA/D変換器(何れも図示せず)を備えている。
【0054】
次に、参照データ収集モードにおいて計測される上述の心筋電位及び心電波形とこれらの計測データに基づいて先端位置情報記憶部92に保存される計測用カテーテルの先端位置情報につき図6を用いて説明する。図6(a)は、生体信号計測部13の心電波形計測部132によって計測された患者300の心電波形Ec、図6(b)は、この心電波形Ecに基づいて心拍時相設定部99が検出したR波及びR−R間隔Tr、図6(c)は、心拍時相設定部99が上述のR−R間隔Trの各々を時間間隔Δτで分割することによって設定した心拍時相P1乃至PNを示しており、図6(d)は、生体信号計測部13の心筋電位計測部131によって計測された患者300の治療対象部位における心筋電位Fcと閾値αを示している。
【0055】
この場合、先端位置情報記憶部92には、参照データ収集モードの心筋電位Fcが予め設定された閾値αより大きな時刻t3以降の所定心拍周期(例えば、期間[t3−t4]の1心拍周期)にてカテーテル先端検出部91が検出した心拍時相P1乃至PNにおける計測用カテーテルの先端位置情報が前記心拍時相を付帯情報として保存される。
【0056】
次に、支援データ生成モードのX線撮影において設定されるX線照射領域につき図7を用いて説明する。但し、図7に示したHaは、参照データ収集モードのX線撮影におけるX線照射領域であり、Hbは、支援データ生成モードのX線撮影におけるX線照射領域を示している。
【0057】
図5に示したカテーテル治療支援データは、参照データ収集モードのX線撮影におけるX線照射領域と同等のX線照射領域を有する支援データ生成モードのX線撮影によって収集された画像データに基づくものであるが、本実施形態では、既に述べたように支援データ生成モードのX線照射領域を治療対象部位の周囲に限定することが可能である。
【0058】
この場合、移動機構部7の移動機構制御部73は、データ生成部9の先端位置情報記憶部92からシステム制御部12を介して供給される計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて生成した移動制御信号を絞り移動機構73へ供給する。次いで、この移動制御信号を受信した絞り移動機構73は、X線発生部2の可動絞り器22に備えられた複数からなる絞り羽根の各々を所定の位置へ移動させることにより、例えば、心拍時相P1乃至PNの治療対象部位に配置された計測用カテーテル先端部を示す閉曲線R0が含まれた比較的狭い領域Hbに対し支援データ生成モードのX線照射領域が設定される。
【0059】
(先端位置情報の検出/保存手順)
次に、本実施形態の参照データ収集モードにおける計測用カテーテルの先端位置情報検出/保存手順につき図8のフローチャートを用いて説明する。
【0060】
参照データ収集モードのX線撮影に先立ち、X線診断装置100の操作者は、入力部11において患者情報の入力、参照データ収集モード及び支援データ生成モードにおけるX線撮影条件及び画像データ生成条件の設定、閾値α及び閾値βの設定、カテーテル治療支援データ生成条件の設定、参照データ収集モードの選択等を行ない(図8のステップS1)、天板6に載置された患者300の所定部位に心電波形計測部132の計測用電極を装着することにより心電波形の計測を開始する(図8のステップS2)。このとき、入力部11において入力/選択/設定された各種の情報は、システム制御部12が備える記憶回路に保存される。
【0061】
次いで、操作者は、入力部11においてX線撮影開始指示信号を入力し(図8のステップS3)、この指示信号がシステム制御部12へ供給されることにより参照データ収集モードにおける時系列的な画像データの生成とこれらの画像データに基づく計測用カテーテル先端位置情報の検出が開始される。
【0062】
即ち、入力部11において入力された上述のX線撮影開始指示信号を受信したシステム制御部12は、自己の記憶回路に保存されたX線撮影条件に含まれている参照データ収集モードのX線照射条件とX線発生のための指示信号を高電圧発生部5のX線制御部51へ供給し、この指示信号を受信したX線制御部51は、前記X線照射条件に基づいて高電圧発生器52を制御しX線発生部2のX線管21に高電圧を印加する。そして、高電圧が印可されたX線管21は、患者300の治療対象部位を含む撮影領域に対して参照データ収集モードのX線照射を開始し、撮影領域を透過したX線は、その後方に設けられたX線検出部3の平面検出器31によって検出される。
【0063】
このとき、平面検出器31において2次元配列された検出素子の光電膜は、上述の撮影領域を透過したX線を受信してそのX線透過量に比例した信号電荷を電荷蓄積コンデンサに蓄積する。所定期間のX線照射が終了すると、システム制御部12からクロックパルスが供給されたゲートドライバ32は、平面検出器31のTFTに対して駆動パルスを供給し電荷蓄積コンデンサに蓄積された信号電荷を順次読み出す。
【0064】
そして、読み出された上述の信号電荷は、投影データ生成部4の電荷・電圧変換器41において電圧に変換され、更に、A/D変換器42においてデジタル信号に変換された後パラレル・シリアル変換器43のバッファメモリに1ライン分の投影データとして一旦保存される。次いで、パラレル・シリアル変換器43は、自己のバッファメモリに保存された投影データをライン単位でシリアルに読み出し、画像データ生成部8の投影データ記憶部に順次保存して2次元の画像データを生成する。そして、得られた画像データは表示部10のモニタに表示される(図8のステップS4)。
【0065】
一方、操作者は、表示部10に表示された画像データの観察下で治療用カテーテルと共に患者300の心臓内に挿入した計測用カテーテルの先端部を心筋表面に沿って順次移動させながらこの心筋表面に発生している心筋電位を前記先端部に設けられた心筋電位計測部131の計測用カテーテルによって計測する(図8のステップS5及びステップS6)。そして、計測された心筋電位の振幅が所定心拍周期(1心拍周期)の期間、予め設定された閾値αより大きな値を示す位置(治療対照部位)に計測用カテーテルの先端部を配置する。
【0066】
そして、心筋電位の計測結果に基づいた計測用カテーテル先端部の配置が終了したならば、データ生成部9の心拍時相設定部99は、心電波形計測部132から供給された心電波形に基づいて参照データ収集モードにおける患者300の心拍時相P1を設定し(図8のステップS7)、設定された心拍時相P1の情報は先端位置情報記憶部92へ供給される。
【0067】
一方、X線撮影部1に備えられた各ユニットは、上述のステップS4と同様の手順によって参照データ収集モードにおける心拍時相P1の画像データを生成し(図8のステップS8)、データ生成部9のカテーテル先端検出部91は、画像データ生成部8から供給された心拍時相P1の画像データに対し平滑化処理や輪郭強調処理、更には、テンプレートデータを用いたマッチング処理等を行なって計測用カテーテルの先端位置情報を検出する(図8のステップS9)。
【0068】
そして、心拍時相P1の画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した計測用カテーテルの先端位置情報は、心拍時相設定部99から供給される心拍時相P1を付帯情報として先端位置情報記憶部92に保存される(図8のステップS10)。
【0069】
心拍時相P1における計測用カテーテル先端位置情報の保存が終了したならば、同様の手順によって心拍時相設定部99は心電波形計測部132から供給される患者300の心電波形に基づいて心拍時相P2乃至PNを検出し、カテーテル先端検出部91は、X線撮影部1及び画像データ生成部8によって得られた心拍時相P2乃至PNの画像データを用いて計測用カテーテルの先端位置情報を検出する。そして、得られた上述の先端位置情報は、心拍時相P2乃至PNを付帯情報として先端位置情報記憶部92に順次保存される(図8のステップS7乃至ステップS10)。
【0070】
但し、先端位置情報記憶部92には、既に、図6において述べたように、閾値αより大きな振幅を有する心筋電位が計測されている、例えば、期間[t3−t4]の1心拍周期にて得られた計測用カテーテルの先端位置情報のみが上述の心拍時相P1乃至PNを付帯情報として保存される。
【0071】
(カテーテル治療支援データの生成手順)
次に、本実施形態の支援データ生成モードにおけるカテーテル治療支援データの生成手順につき図9のフローチャートを用いて説明する。
【0072】
図8に示した手順により計測用カテーテル先端位置情報の検出と保存が終了したならば、操作者は、入力部11において支援データ生成モードを選択し(図9のステップS11)、更に、支援データ生成モードのX線撮影を開始するための指示信号を入力する(図9のステップS12)。そして、この指示信号がシステム制御部12へ供給されることにより支援データ生成モードにおける心拍時相Pxの画像データが生成される。
【0073】
即ち、入力部11から上述のX線撮影開始指示信号を受信したシステム制御部12は、自己の記憶回路に保存されたX線撮影条件に含まれている支援データ生成モードのX線照射条件とX線発生のための指示信号をX線撮影部1へ供給し、この指示信号を受信したX線撮影部1は、図8のステップS4と同様の手順によって生成した投影データを画像データ生成部8の投影データ記憶部に保存して2次元の画像データを生成する(図9のステップS13)。そして、画像処理部95において所定の画像処理が行なわれた前記画像データは、データ生成部9の画像データ記憶部94に一旦保存される。
【0074】
一方、データ生成部9の心拍時相設定部99は、上述の画像データの生成と並行して心電波形計測部132から供給される患者300の心電波形を受信し、この心電波形に基づいて前記画像データの生成時における心拍時相(画像データの心拍時相)Pxを設定する(図9のステップS14)。
【0075】
次いで、先端位置情報抽出部93は、心拍時相設定部99から供給された心拍時相Pxの情報を受信し、この心拍時相Pxに対応する(即ち、心拍時相Pxと同一の心拍時相あるいは最も近接した心拍時相において検出された)計測用カテーテルの先端位置情報を先端位置情報記憶部92に保存されている各種先端位置情報の中から抽出する(図9のステップS15)。
【0076】
次に、支援データ生成部96は、画像データ記憶部94から読み出した支援データ生成モードの画像データに先端位置情報抽出部93から供給された心拍時相Pxに対応する計測用カテーテルの先端位置情報を重畳することによってカテーテル治療支援データを生成する。そして、得られたカテーテル治療支援データを表示部10のモニタに表示する(図9のステップS16)。
【0077】
一方、カテーテル先端検出部91は、支援データ生成モードにおいて画像データ生成部8から供給された心拍時相Pxの画像データに対し平滑化処理、輪郭強調処理、パターンマッチング処理等を行なうことにより該画像データに示された治療用カテーテルの先端位置情報を検出する(図9のステップS17)。
【0078】
一方、位置ズレ検出部97は、画像データ生成部8から略リアルタイムで供給された心拍時相Pxの画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した治療用カテーテルの先端位置情報と、先端位置情報抽出部93から供給された前記画像データの心拍時相Pxに対応する計測用カテーテルの先端位置情報とに基づいて心拍時相Pxにおける治療用カテーテル先端部と計測用カテーテル先端部との位置ズレを検出する(図9のステップS18)。
【0079】
次に、警告信号生成部98は、位置ズレ検出部97から供給された位置ズレ検出結果と予め設定された閾値βとを比較し(図9のステップS19)、カテーテル先端部の位置ズレが閾値βより大きい場合、所定フォーマットの警告文言(警告信号)を作成して表示部10のモニタに表示する(図9のステップS20)。
【0080】
一方、表示部10に表示された警告文言を観察したX線診断装置100の操作者は、上述のステップS16において表示部10に表示されたカテーテル治療支援データに示されている支援データ生成モードの画像データと参照データ収集モードにおいて検出され前記画像データに重畳されている計測用カテーテルの先端位置情報を参照しながら治療用カテーテルの先端部を治療対象部位へ移動させる(図9のステップS21)。
【0081】
そして、心拍時相Pxにおけるカテーテル治療支援データの生成と表示が行なわれ、警告文言の作成及び表示と治療用カテーテル先端部の移動が必要に応じて行なわれたならば、同様の手順により、他の心拍時相にて収集された支援データ生成モードの画像データに基づくカテーテル治療支援データの生成/表示、警告文言の作成/表示、治療用カテーテル先端部の移動が順次行なわれ(図9のステップS13乃至ステップS21)、更に、得られたカテーテル治療支援データに基づくカテーテル治療が患者300の治療対象部位に対して行なわれる。
【0082】
(変形例)
次に、本実施形態のX線診断装置100が備えるデータ生成部9の変形例について説明する。この変形例におけるデータ生成部は、心筋電位の計測により治療対象部位の特定を行なう計測用カテーテルの先端部を前記治療対象部位に配置した状態で所定心拍周期の心拍時相P1乃至PNにおける参照データ収集モードのX線撮影を行なうことにより時系列的な画像データを生成し、これら画像データの各々に示された計測用カテーテルの先端位置情報を検出することによって先端軌跡データを生成する。
【0083】
次いで、治療対象部位の焼灼治療を目的として上述の計測用カテーテルと共に当該患者の心臓内に挿入された治療用カテーテルの先端部を前記治療対象部位の近傍に配置した状態で支援データ生成モードのX線撮影を行ない、このとき得られた画像データに上述の計測用カテーテル先端軌跡データを重畳することにより焼灼治療に有効なカテーテル治療支援データを生成する。
【0084】
本変形例におけるデータ生成部の構成と機能につき図10を用いて説明する。尚、上記データ生成部の構成を示す図10のブロック図において、図3に示したデータ生成部9の各ユニットと同一の構成及び機能を有するユニットは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
【0085】
図10に示す本変形例のデータ生成部9aは、上述の実施形態と略同一の構成と機能を有するカテーテル先端検出部91、先端位置情報記憶部92、画像データ記憶部94、画像処理部95及び心拍時相設定部99を備え、更に、先端位置情報記憶部92から読み出した先端位置情報に基づいて計測用カテーテル先端部の移動軌跡データ(以下では、先端軌跡データと呼ぶ。)を生成する先端軌跡データ生成・記憶部90と、得られた計測用カテーテルの先端軌跡データと支援データ生成モードの画像データを合成してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成部96aと、支援データ生成モードの画像データに示された治療用カテーテルの先端位置情報と上述の計測用カテーテルの先端軌跡データとに基づいて計測用カテーテル先端部(即ち、治療対象部位)に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを検出する位置ズレ検出部97aと、この位置ズレと所定の閾値γとの比較結果に基づいて警告信号を生成する警告信号生成部98aを備えている。
【0086】
先端軌跡データ生成・記憶部90は、図示しない軌跡データ生成部と軌跡データ記憶部を備え、軌跡データ生成部は、カテーテル先端検出部91において検出され心拍時相P1乃至PNを付帯情報として先端位置情報記憶部92に保存された計測用カテーテルの先端位置情報を読み出し、例えば、曲線あるいは閉ループによって示された先端軌跡データを生成する。そして、得られた計測用カテーテルの先端軌跡データは、軌跡データ記憶部に保存される。
【0087】
次に、支援データ生成部96aは、図示しないデータ加算部を備え、画像データ記憶部94から略リアルタイムで供給される支援データ生成モードの画像データに先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ記憶部から供給される計測用カテーテルの先端軌跡データを重畳することによってカテーテル治療支援データを生成する。
【0088】
一方、位置ズレ検出部97aは、図示しない距離計測部を備え、支援データ生成モードにおいて上述のカテーテル治療支援データが生成される際、画像データ生成部8から略リアルタイムで供給される支援データ生成モードの画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した治療用カテーテルの先端位置情報と、先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ記憶部から供給される計測用カテーテルの先端軌跡データとに基づき、計測用カテーテル先端部(治療対象部位)に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを検出する。
【0089】
図11は、位置ズレ検出部97aによって行なわれるカテーテル先端部の位置ズレ検出を説明するための図であり、閉ループR0は、参照データ収集モードの心拍時相P1乃至PNにおける計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて先端軌跡データ生成・記憶部90が生成した先端軌跡データを示している。又、B1、B2、B3、・・・BNは、カテーテル先端検出部91が検出した支援データ生成モードの心拍時相P1、P2、P3、・・・PNにおける治療用カテーテルの先端位置情報を示している。
【0090】
このような治療用カテーテルの先端位置情報B1乃至BNと計測用カテーテルの先端軌跡データR0がカテーテル先端検出部91及び先端軌跡データ生成・記憶部90から供給された位置ズレ検出部97aの距離計測部は、先ず、先端位置情報B1に最も近接した閉ループR0上のC1を検出し、次いで、B1とC1の距離D1を計測する。更に、同様の手順によって、先端位置情報B2、B3、・・・BNに最も接近した閉ループR0上のC2、C3、・・・CNを検出し、B2とC2の距離D2、B3とC3の距離D3、・・・BNとCNの距離DNを順次計測する。
【0091】
次に、図10に示した警告信号生成部98aは、図示しないデータ比較部と警告文言作成部を有し、データ比較部は、位置ズレ検出部97aから供給された距離D1乃至DNと予め設定された閾値γとを比較する。そして、距離D1乃至DNの中の連続する計測値が所定回数連続して閾値γより大きい場合、警告文言作成部は、所定の警告文言(警告信号)を作成し表示部10へ供給する。
【0092】
なお、距離の計測は、上述の手法に限られるものではない。例えば、計測用カテーテルの先端位置情報と、治療用カテーテルの先端位置情報とは、必ずしもその心拍時相が一致しない場合がある。このような場合、例えば、位置ズレ検出部97aの距離計測部は、患者の心拍時相情報に基づいて、治療用カテーテルの先端位置情報B1乃至BNと、計測用カテーテルの先端位置情報C1乃至CNとの位置関係を、より精度良く検出してもよい。例えば、治療用カテーテルの先端位置情報B2は、心拍時相P1とP2との中間点の心拍時相で検出されたとする。この場合、距離計測部は、計測用カテーテルの先端位置情報C1乃至CNに付帯された心拍時相P1乃至PNに基づいて、閉ループR0上で、先端位置情報B2の心拍時相に対応する位置を検出する。上述の例の場合、例えば、対応する位置は、C1とC2との中間点の位置になる。そして、距離計測部は、治療用カテーテルの先端位置情報B2と、C1とC2との中間点の位置との距離を計測すればよい。かかる場合、データ比較部が比較に用いる閾値は、精度の向上に起因して、より小さい値を用いることもできる。
【0093】
(先端軌跡データの生成/保存手順)
次に、本変形例の参照データ収集モードにおける先端軌跡データの生成/保存手順につき図12のフローチャートを用いて説明する。尚、先端軌跡データの生成/保存手順を示す図12のフローチャートにおいて、図8に示した先端位置情報検出/保存手順のステップと同一のステップは同一の符号を付加し説明を省略する。
【0094】
即ち、図8のステップS1乃至ステップS10と同一の手順により心拍時相P1乃至PNにおける計測用カテーテル先端位置情報の検出と保存が終了したならば、データ生成部9aが備える先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ生成部は、先端位置情報記憶部92に保存された心拍時相P1乃至PNにおける計測用カテーテルの先端位置情報を読み出し、直線状あるいは閉ループによって示された先端軌跡データを生成する。そして、得られた計測用カテーテルの先端軌跡データを先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ記憶部に保存する(図12のステップS30)。
【0095】
(カテーテル治療支援データの生成手順)
次に、本変形例の支援データ生成モードにおけるカテーテル治療支援データの生成手順につき図13のフローチャートを用いて説明する。尚、カテーテル治療支援データの生成手順を示す図13のフローチャートにおいて、図9に示したカテーテル治療支援データの生成手順のステップと同一のステップは同一の符号を付加し説明を省略する。
【0096】
即ち、図9のステップS11乃至S14と同一の手順により、支援データ生成モードにおける心拍時相Pxの設定とこの心拍時相Pxにおける画像データの生成が終了したならば、データ生成部9aの支援データ生成部96aは、先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ記憶部に保存されている計測用カテーテルの先端軌跡データを読み出す(図13のステップS15a)。次いで、画像データ記憶部94から略リアルタイムで供給される支援データ生成モードの画像データに前記計測用カテーテルの先端軌跡データを重畳することによってカテーテル治療支援データを生成し、得られたカテーテル治療支援データを表示部10のモニタに表示する(図13のステップS16a)。
【0097】
一方、カテーテル先端検出部91は、支援データ生成モードにて画像データ生成部8から供給される時系列的な画像データに対し所定の画像処理を行なうことによりこれらの画像データに示された治療用カテーテルの先端位置情報を検出する(図13のステップS17)。
【0098】
そして、位置ズレ検出部97aは、画像データ生成部8から略リアルタイムで時系列的に供給される支援データ生成モードの画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した複数心拍時相における治療用カテーテルの先端位置情報と、先端軌跡データ生成・記憶部90から供給された計測用カテーテルの先端軌跡データとの距離(位置ズレ)を検出する(図13のステップS18a)。
【0099】
次いで、警告信号生成部98aは、位置ズレ検出部97aから供給された位置ズレと予め設定された閾値γとを比較する(図13のステップS19a)。そして、位置ズレの値が所定回数連続して閾値γより大きい場合、所定の警告文言(警告信号)を作成し表示部10に表示する(図13のステップS20)。
【0100】
一方、表示部10に表示された警告文言を観察したX線診断装置100の操作者は、上述のステップS16aにおいて表示されたカテーテル治療支援データに示されている画像データとこの画像データに重畳されている計測用カテーテルの先端軌跡データとに基づき、治療用カテーテルの先端部を治療対象部位に近接した位置へ移動させる(図13のステップS21)。
【0101】
尚、図13のステップS13に示した画像データの生成におけるX線撮影のX線照射領域は、先端軌跡データ生成・記憶部90から供給される計測用カテーテルの先端軌跡データに基づいて設定され、支援データ生成モードのX線照射領域を参照データ収集モードのX線照射領域より狭く設定することにより、カテーテル治療時の患者300に対する被曝線量を低減することが可能となる。
【0102】
以上述べた本開示の実施形態及びその変形例によれば、X線画像データの観察下で心筋等に対するカテーテル治療を行なう際、治療対象部位あるいはその近傍の好適な位置に配置された状態で予め検出された前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテル先端部の位置情報(移動軌跡情報)を前記治療対象部位の治療を目的とする治療用カテーテルが示された支援データ生成モードの画像データに重畳して表示することにより計測用カテーテル先端部(即ち、治療対象部位)に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを容易に把握することができる。このため当該治療対象部位に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレ補正が容易となり安全かつ確実なカテーテル治療を行なうことが可能となる。
【0103】
又、X線発生部の可動絞り器が備える絞り羽根の配置を計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて制御しX線撮影の照射範囲を計測用カテーテル先端部の近傍に存在する治療対象部位に限定することにより、患者に対する被曝線量を低減することができる。
【0104】
更に、計測用カテーテル先端部(治療対象部位)に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレが大きい場合、所定フォーマットで作成した警告文言(警告信号)を表示することにより治療用カテーテル先端部の位置ズレ補正を確実に行なうことができる。
【0105】
一方、上述の変形例によれば、所定心拍周期にて検出された複数からなる計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて先端軌跡データを生成し、得られた先端軌跡データを治療用カテーテルが示された支援データ生成モードの画像データに重畳して表示することにより、心臓の拍動に伴う治療対象部位の移動方向や移動範囲等に関する情報を正確に捉えることが可能となり、治療用カテーテル先端部の位置ズレ補正が更に容易となる。
【0106】
以上、本開示の実施形態及びその変形例について述べてきたが、本開示は、上述の実施形態及びその変形例に限定されるものではなく更に変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施形態では、心筋表面の治療対象部位に対し治療用カテーテルを用いた焼灼治療を行なうことにより不整脈を除去する場合について述べたが治療用カテーテルを用いた治療は上述に限定されない。
【0107】
又、上述の実施形態では、支援データ生成モードの画像データに対し該画像データの心拍時相と同一あるいは最も近接した心拍時相において計測された計測用カテーテルの先端位置情報を重畳し、上述の変形例では、1心拍周期にて計測された複数からなる計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて生成した先端軌跡データを前記画像データに重畳する場合について述べたが、上述の先端位置情報と先端軌跡データを支援データ生成モードの画像データに重畳してもよい。この方法によれば、所定心拍周期における治療対象部位の移動方向や移動範囲の把握と当該心拍時相における治療対象部位と治療用カテーテル先端部との位置関係の把握を容易に行なうことが可能となる。尚、計測用カテーテルの先端位置情報が計測される期間は1心拍周期に限定されるものではなく、複数心拍周期であっても構わない。
【0108】
更に、参照データ収集モードのX線照射繰り返し周波数を支援データ生成モードのX線照射繰り返し周波数より高く設定することにより正確な計測用カテーテルの先端位置情報を検出する場合について述べたが、例えば、支援データ生成モードのX線照射繰り返し周波数と同等のX線照射繰り返し周波数によって検出された計測用カテーテルの先端位置情報を補間処理することにより連続性に優れた先端位置情報を収集してもよい。
【0109】
一方、上述の実施形態及びその変形例によれば、支援データ生成モードの画像データに1つの先端位置情報あるいは1つの先端軌跡データを重畳して表示する場合について述べたが、複数の先端位置情報あるいは複数の先端軌跡データを重畳して表示してもよい。この場合、複数からなる先端位置情報あるいは先端軌跡データの各々を異なる色相、明度、透明度等を用いて表示することにより支援データ生成モードの画像データに示された治療用カテーテル先端部との対応付けが容易となる。
【0110】
又、治療用カテーテル先端部と計測用カテーテル先端部の位置ズレに基づいて生成した警告文言と支援データ生成モードの画像データとを同一の表示部10に表示する場合について述べたが、前記警告文言を別途設けられた表示部に表示してもよく、入力部11の表示パネル等に表示してもよい。又、警告信号生成部98が生成する警告信号は、上述の警告文言に限定されるものではなく、例えば、ランプの点滅信号や音声信号等であっても構わない。
【0111】
更に、独立した計測用カテーテルと治療用カテーテルを用いて治療対象部位の位置計測と治療を行なう場合について述べたが、計測用カテーテルと治療用カテーテルは一体化して構成されていてもよい。又、心筋電位計測部131及び心電波形計測部132を備えたX線診断装置100について述べたが、心筋電位計測部131や心電波形計測部132は、X線診断装置100と独立して設けられていてもよい。
【0112】
尚、本実施形態に係るX線診断装置100に含まれるデータ生成部9等は、例えば、CPU、RAM、磁気記憶装置、入力装置、表示装置等で構成されるコンピュータをハードウェアとして用いることでも実現することができる。例えば、データ生成部9を制御するシステム制御部12は、上記のコンピュータに搭載されたCPU等のプロセッサに所定の制御プログラムを実行させることにより各種機能を実現することができる。この場合、上述の制御プログラムをコンピュータに予めインストールしてもよく、又、コンピュータ読み取りが可能な記憶媒体への保存あるいはネットワークを介して配布された制御プログラムのコンピュータへのインストールであっても構わない。
【0113】
又、上述の実施形態は、バイプレーン型のX線診断装置にも同様に適用することができる。一般に、バイプレーン型のX線診断装置には、同時に2方向からの撮像を可能にするために、天板上に仰向けに載置された患者に対してその正面から撮像する正面系撮像システムと、側面から撮像する側面系撮像システムとの2系統の撮像システムが装備される。正面系撮像システムは、例えば、床置きされたスタンドに支えられたCアームと、このCアームの両端に取り付けられたX線発生部及びX線検出部とを有する。一方、側面系撮像システムは、例えば、天井から吊り下げられたΩアームと、このΩアームの両端に設けられた昇降機構と、この昇降機構に支持されたX線発生部及びX線検出部とを有する。
【0114】
例えば、支援データ生成部は、2系統の撮像システムそれぞれに関して供給された支援データ生成モードの画像データに、計測用カテーテルの先端位置情報又は先端軌跡データを重畳することによって、各系統のカテーテル治療支援データを生成する。また、表示部は、各カテーテル治療支援データから表示データを生成し、モニタに表示する。図14は、他の実施形態において生成されたカテーテル治療支援データの具体例を示す。図14においては、先端軌跡データが重畳されたカテーテル治療支援データを表示する例を示す。なお、図14においては、その他の情報(警告文言や患者情報等)や、一部カテーテルの情報を省略して示すが、表示部は、これらの情報を表示してもよい。このように、上述した実施形態をバイプレーン型のX線診断装置に適用した場合には、少なくとも2方向分のカテーテル治療支援データを提供することができ、奥行方向等の情報も提供することができる。このため、観察者は、より精度良く、治療対象部位に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを把握することができる。
【0115】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
9、9a…データ生成部
91…カテーテル先端検出部
911…平滑化処理部
912…輪郭抽出部
913…マッチング処理部
913a…テンプレートデータ保管部
913b…演算処理部
92…先端位置情報記憶部
93…先端位置情報抽出部
94…画像データ記憶部
95…画像処理部
96、96a…支援データ生成部
97、97a…位置ズレ検出部
98、98a…警告信号生成部
99…心拍時相設定部
90…先端軌跡データ生成・記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線画像データの観察下で行なうカテーテル治療に有効な支援データを生成することが可能なX線診断装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置やX線CT装置等を用いた医用画像診断は、コンピュータ技術の発展に伴って急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。特に、カテーテル手技の発展に伴って進歩を遂げている循環器領域のX線画像診断は、心血管系をはじめ全身の動静脈を対象として広く用いられている。
【0003】
循環器領域の診断を目的としたX線診断装置は、X線発生部及びX線検出部(以下では、これらを纏めて撮像系と呼ぶ。)、撮像系を保持するCアーム等の保持部、患者を載置する天板等を備え、上述の天板や保持部に取り付けられた撮像系を所望の方向へ移動させることにより当該患者の治療対象部位に対し最適な方向からのX線撮影を可能にしている。
【0004】
一方、上述のX線撮影によって生成された画像データの観察下で行なうカテーテル治療の1つとして心筋表面に存在する刺激伝導路を高周波電流によって焼灼することにより不整脈等の治療を行なうカテーテルアブレーションがある。
【0005】
不整脈等の治療を目的としたカテーテルアブレーションでは、先ず、リング状多極電極を有する計測用カテーテルの先端部を心腔内に挿入して、例えば、心筋表面の肺静脈開口部に発生する心筋電位を計測することにより不整脈を誘起する左房−肺静脈間刺激伝導路(以下では、治療対象部位と呼ぶ。)の位置を特定し、次いで、上述の心腔内に挿入された治療用カテーテルの先端部によって前記治療対象部位を焼灼することにより不整脈を根治治療する方法が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−106633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
治療用カテーテルの先端部を心筋表面あるいはその近傍に存在する治療対象部位に接触させ、前記先端部に設けられたチップを介して前記治療対象部位に高周波電流を供給することにより焼灼を行なう上述のカテーテルアブレーションでは、計測用カテーテルによってその位置が特定された治療対象部位に対する治療用カテーテル先端部の配置は、略リアルタイムで表示される前記画像データの観察下で行なわれてきた。
【0008】
しかしながら、心腔内に挿入された治療用カテーテルの表示が要求される当該X線撮影では、造影剤の使用により心筋表面を常に鮮明に描出することは困難であり、従って、心臓の拍動に伴って移動する診断対象部位に対し治療用カレーテルの先端部を正確に配置することは極めて困難であるという問題点を有していた。
【0009】
本開示は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、X線画像データの観察下で心筋等に対するカテーテル治療を行なう際、治療対象部位あるいはその近傍の好適な位置に配置された状態で予め検出された前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテル先端部の位置情報(移動軌跡情報)を前記治療対象部位の治療を目的とする治療用カテーテルが示された支援データ生成モードの画像データに重畳して表示することにより治療対象部位に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを容易に把握することが可能なX線診断装置及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示のX線診断装置は、被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置であって、前記画像データに基づいて、カテーテル先端部を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を保存する記憶手段と、前記移動軌跡情報を、現在の前記画像データ上に重畳してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成手段と、前記カテーテル治療支援データを表示する表示手段とを備えたことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態におけるX線診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態のX線診断装置が備えるX線撮影部の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態のX線診断装置が備えるデータ生成部の具体的な構成を示すブロック図。
【図4】本実施形態のデータ生成部が備えるカテーテル先端検出部の具体的な構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態の支援データ生成部において生成されるカテーテル治療支援データの具体例を示す図。
【図6】本実施形態の先端位置情報記憶部に保存される計測用カテーテルの先端位置情報を説明するための図。
【図7】本実施形態の支援データ生成モードにおいて設定されるX線照射領域を説明するための図。
【図8】本実施形態における計測用カテーテルの先端位置情報検出/保存手順を示すフローチャート。
【図9】本実施形態におけるカテーテル治療支援データの生成手順を示すフローチャート。
【図10】本実施形態の変形例におけるデータ生成部の具体的な構成を示すブロック図。
【図11】本実施形態の変形例におけるカテーテル先端部の位置ズレ検出を説明するための図。
【図12】本実施形態の変形例における計測用カテーテルの先端軌跡データ生成/保存手順を示すフローチャート。
【図13】本実施形態の変形例におけるカテーテル治療支援データの生成手順を示すフローチャート。
【図14】他の実施形態において生成されたカテーテル治療支援データの具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。
【0013】
(実施形態)
本実施形態におけるX線診断装置では、先ず、患者の心臓内に挿入された心筋電位計測用カテーテル(以下では、計測用カテーテルと呼ぶ。)を用いて心筋電位を計測することにより治療対象部位の位置を特定し、この治療対象部位に計測用カテーテルの先端部を配置した状態で所定心拍周期における参照データ収集モードのX線撮影を行なうことにより心拍時相を付帯情報とする計測用カテーテルの先端位置情報(先端移動軌跡情報)を収集する。
【0014】
次いで、治療対象部位の焼灼治療を目的として当該患者の心臓内に挿入された治療用カテーテルの先端部を前記治療対象部位の近傍に配置した状態で支援データ生成モードのX線撮影と心電波形の計測を行ない、このとき得られた画像データの心拍時相と同一あるいは最も近接した心拍時相において収集された計測用カテーテルの先端位置情報を上述の画像データに重畳することにより焼灼治療に有効なカテーテル治療支援データを生成する。
【0015】
尚、本実施形態では、心筋表面の治療対象部位に対し治療用カテーテルを用いた焼灼治療を行なうことにより不整脈を除去する場合について述べるが、治療用カテーテルを用いた治療は上述に限定されない。
【0016】
本実施形態におけるX線診断装置の構成と機能につき図1乃至図7を用いて説明する。尚、図1は、本実施形態におけるX線診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2及び図3は、このX線診断装置が備えるX線撮影部及びデータ生成部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すX線診断装置100は、不整脈を有した患者300の治療対象部位を含む撮影領域に対し参照データ収集モード及び支援データ生成モードのX線を照射し、前記撮影領域を透過したX線を検出して投影データを生成するX線撮影部1と、上述のX線照射及びX線検出を行なう撮像系を保持する図示しない保持部と、患者300を載置する天板6と、撮像系が取り付けられた保持部や患者300を載置した天板6、更には、後述のX線発生部2に設けられた可動絞り器22を所望の位置へ移動させる移動機構部7と、X線撮影部1から出力された参照データ収集モード及び支援データ生成モードの投影データを用いて画像データを生成する画像データ生成部8と、計測用カテーテルの先端部が治療対象部位あるいはその近傍の好適な位置に配置された状態で収集された参照データ収集モードの画像データに基づいて計測用カテーテルの先端位置情報を検出し、治療用カテーテルが挿入された患者300に対する支援データ生成モードのX線撮影によって収集された画像データに計測用カテーテルの先端位置情報を重畳してカテーテル治療支援データを生成するデータ生成部9を備え、更に、データ生成部9において生成されたカテーテル治療支援データや後述の警告信号生成部98において生成された警告信号等を表示する表示部10と、患者情報の入力、参照データ収集モード及び支援データ生成モードの選択、各モードにおけるX線撮影条件や画像データ生成条件の設定、カテーテル治療支援データの生成条件や表示条件の設定、各種指示信号の入力等を行なう入力部11と、X線診断装置100が有する上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部12と、患者300の心電波形や心筋電位を計測する生体信号計測部13を備えている。
【0018】
X線撮影部1は、図1に示すように撮像系を構成するX線発生部2及びX線検出部3と、投影データ生成部4と、高電圧発生部5を備え、患者300の撮影領域に対してX線を照射する機能と前記撮影領域を透過したX線に基づいて投影データを生成する機能を有している。
【0019】
図2は、X線撮影部1に設けられた上述の各ユニットの具体的な構成を示すブロック図であり、X線発生部2は、患者300の撮影領域に対してX線を照射するX線管21と、X線管21から放射されたX線に対して所定範囲のX線錘(コーンビーム)を形成する可動絞り器22を備えている。X線管21は、X線を発生する真空管であり、加熱された陰極(フィラメント)から生ずる熱電子を高電圧発生部5から供給される直流高電圧により加速させてタングステン陽極に衝突させX線を発生させる。
【0020】
一方、可動絞り器22は、患者300に対する被曝線量の低減と画像データの画質向上を目的として用いられ、X線管21から放射されたX線を所定の照射領域に絞りこむ絞り羽根(上羽根)、絞り羽根に連動して移動することにより散乱線や漏れ線量を低減する下羽根及び吸収量が少ない媒質を透過したX線を選択的に低減させてハレーションを防止する補償フィルタ(何れも図示せず)を有している。
【0021】
特に、本実施形態における支援データ生成モードのX線照射範囲は、参照データ収集モードにて検出された計測用カテーテルの先端位置情報に基づいてその位置が制御された可動絞り器22の絞り羽根によって決定され、このX線照射範囲を計測用カテーテルの先端部に近接した治療対象部位に限定することにより患者300に対する被曝線量を低減することが可能となる。
【0022】
一方、X線検出部3には、イメージインテンシファイア及びX線TVを用いる方法と平面検出器を用いる方法があり、平面検出器には、X線を直接電荷に変換する方式と、一旦光に変換した後電荷に変換する方式とがある。ここでは、X線を直接電荷に変換することが可能な平面検出器を有するX線検出部3について述べるが、これに限定されない。
【0023】
即ち、本実施形態のX線検出部3は、図2に示すように患者300を透過したX線を検出する平面検出器31と、この平面検出器31において検出されたX線を信号電荷として読み出すための駆動信号を供給するゲートドライバ32を有している。
【0024】
平面検出器31は、微小な検出素子を列方向及びライン方向に2次元配列して構成され、検出素子の各々は、X線を感知し入射X線量に応じて信号電荷を発生する光電膜と、この光電膜に発生した信号電荷を蓄積する電荷蓄積コンデンサと、電荷蓄積コンデンサに蓄積された信号電荷を所定のタイミングで読み出すTFT(薄膜トランジスタ)(何れも図示せず)を備えている。
【0025】
投影データ生成部4は、上述の平面検出器31から、例えば、ライン方向単位でパラレルに読み出された信号電荷を電圧に変換する電荷・電圧変換器41と、電荷・電圧変換器41の出力をデジタル信号(投影データのデータ要素)に変換するA/D変換器42と、デジタル変換された上述のデータ要素を時系列的なデータ要素に変換するパラレル・シリアル変換器43を備えている。そして、パラレル・シリアル変換器43から出力された時系列的なデータ要素は、画像データ生成部8へ供給される。
【0026】
一方、高電圧発生部5は、X線管21の陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生する高電圧発生器52と、システム制御部12から供給される参照データ収集モード及び支援データ生成モードのX線照射条件に基づいて高電圧発生器52における管電流、管電圧、印加時間、印加タイミング、X線照射の繰り返し周波数等を制御するX線制御部51を備えている。特に、本実施形態では、参照データ収集モードのX線照射繰返し周波数を支援データ生成モードのX線照射繰返し周波数より高く設定することが可能であり、参照データ収集モードのX線照射繰返し周波数を高くし画像データのフレームレートを高めることにより心臓の拍動に伴って周期的に変化する計測用カテーテルの先端位置情報を正確に検出することができる。
【0027】
図1へ戻って、移動機構部7は、X線発生部2及びX線検出部3(撮像系)が取り付けられた図示しない保持部を患者300の周囲で回動あるいは移動させる保持部移動機構71と、天板6を患者300の体軸方向(図1のz方向)及び体軸と直交する方向(図1のx方向及びy方向)へ移動させる天板移動機構72と、X線発生部2に設けられた可動絞り器22の絞り羽根を所定の位置へ移動させる絞り移動機構73と、保持部移動機構71、天板移動機構72及び絞り移動機構73を制御する移動機構制御部74を備えている。
【0028】
そして、移動機構制御部74は、入力部11からシステム制御部12を介して供給される撮像系移動指示信号に基づいて生成した移動制御信号を保持部移動機構71へ供給し、撮像系が取り付けられた保持部を患者300の周囲で回動あるいは移動させることによりX線撮影の撮影位置及び撮影方向を設定する。
【0029】
同様にして、移動機構制御部74は、入力部11からシステム制御部12を介して供給される天板移動指示信号に基づいて生成した移動制御信号を天板移動機構72へ供給し、天板6を患者300の体軸方向あるいは体軸と直交する方向へ平行移動させることにより撮影領域の中心を設定する。
【0030】
更に、移動機構制御部74は、データ生成部9の先端位置情報記憶部92からシステム制御部12を介して供給される計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて生成した移動制御信号を絞り移動機構73へ供給し、X線発生部2の可動絞り器22に設けられた複数の絞り羽根を所定の位置へ移動させることにより支援データ生成モードのX線照射領域を計測用カテーテルの先端部に近接した治療対象部位に限定させる。
【0031】
一方、画像データ生成部8は、図示しない投影データ記憶部を有し、この投影データ記憶部には、参照データ収集モード及び支援データ生成モードのX線撮影において投影データ生成部4のパラレル・シリアル変換器43から時系列的に出力された投影データのデータ要素が検出素子のライン方向及び列方向に対応させて順次保存され2次元の画像データが生成される。
【0032】
次に、データ生成部9の具体的な構成と機能につき、図3乃至図5を用いて説明する。尚、図3は、データ生成部9の構成を示すブロック図であり、図4は、データ生成部9が備えるカテーテル先端検出部91の具体的な構成を示すブロック図である。
【0033】
データ生成部9は、図3に示すようにカテーテル先端検出部91、先端位置情報記憶部92、先端位置情報抽出部93、画像データ記憶部94、画像処理部95及び支援データ生成部96を備え、更に、位置ズレ検出部97、警告信号生成部98及び心拍時相設定部99を備えている。
【0034】
カテーテル先端検出部91は、例えば、図4に示すように平滑化処理部911、輪郭抽出部912及びマッチング処理部913を有し、平滑化処理部911は、参照データ収集モード及び支援データ生成モードのX線撮影において画像データ生成部8から供給される画像データに対しスムージング(平滑化)を目的としたフィルタリング処理を行なって不要なノイズ成分を除去する。一方、輪郭抽出部912は、平滑化された上述の画像データに対し輪郭強調を目的としたフィルタリング処理等を行なって参照データ収集モードの画像データに示された計測用カテーテルあるいは支援データ生成モードの画像データに示された治療用カテーテルの輪郭を抽出する。
【0035】
マッチング処理部913は、テンプレートデータ保管部913aと演算処理部913bを備え、テンプレートデータ保管部913aには、各種カテーテルの先端形状を示す3次元のテンプレートデータがカテーテル識別情報を付帯情報として予め保管されている。一方、演算処理部913bは、テンプレートデータ保管部913aに保管されている各種テンプレートデータの中から、参照データ収集モードにおいて用いられた計測用カテーテル及び支援データ生成モードにおいて用いられた治療用カテーテルに対応するテンプレートデータを上述のカテーテル識別情報に基づいて読み出し、得られたテンプレートデータと輪郭抽出部912から供給された輪郭抽出後の画像データとのパターンマッチング処理により計測用カテーテル及び治療用カテーテルの先端位置情報(先端移動軌跡情報)を検出する。
【0036】
尚、上述のパターンマッチング処理において異なる複数の位置情報が検出された場合、既に検出された隣接する心拍時相の先端位置情報に最も近接した位置情報を当該心拍時相における計測用カテーテル及び治療用カテーテルの先端位置情報として選択することが望ましい。
【0037】
そして、参照データ収集モードの所定心拍周期(例えば、1心拍周期)において収集された時系列的な画像データに基づく計測用カテーテルの先端位置情報(先端移動軌跡情報)は、後述の心拍時相設定部99から供給される患者300の心拍時相情報と共に図3の先端位置情報記憶部92に保存される。即ち、先端位置情報記憶部92には、参照データ収集モードのX線照射周期と等しい時間間隔の心拍時相にて時系列的に検出された計測用カテーテルの先端位置情報(先端移動軌跡情報)が心拍時相を付帯情報として順次保存される。
【0038】
この場合、先端位置情報記憶部92には、生体信号計測部13が備える後述の心筋電位計測部131において計測された心筋電位が供給され、予め設定された閾値αより大きな心筋電位が連続して計測される所定心拍周期(1心拍周期)の先端位置情報のみが心拍時相と共に保存され、心筋電位が閾値αより小さな期間(即ち、計測用カテーテルの先端部が治療対象部位あるいは心筋に接触していない期間)にて検出された先端位置情報は排除される。
【0039】
一方、支援データ生成モードの画像データに基づいて検出された治療用カテーテルの先端位置情報は位置ズレ検出部97へ供給され、計測用カテーテル先端部と治療用カテーテル先端部との位置ズレ検出に用いられる。
【0040】
次に、図3の先端位置情報抽出部93は、支援データ生成モードにおいて心拍時相設定部99から供給される患者300の心拍時相情報を受信し、この心拍時相と同一あるいは最も近接する参照データ収集モードの心拍時相にて検出された計測用カテーテルの先端位置情報を先端位置情報記憶部92に保存されている各種先端位置情報の中から抽出する。
【0041】
一方、画像データ記憶部94は、支援データ生成モードにおいて画像データ生成部8から供給される画像データを一旦保存し、画像処理部95は、画像データ記憶部94に保存された画像データに対しノイズ低減や輪郭強調等を目的とした画像処理を略リアルタイムで行なう。そして、処理後の画像データは、画像データ記憶部94に再度保存される。
【0042】
支援データ生成部96は、図示しないデータ加算部を備え、画像データ記憶部94から供給された支援データ生成モードの画像データに先端位置情報抽出部93から供給された参照データ収集モードにおける計測用カテーテルの先端位置情報を重畳することによってカテーテル治療支援データを生成する。即ち、前記データ加算部は、支援データ生成モードにおいて画像データ記憶部94から供給された画像処理後の画像データを受信する。次いで、先端位置情報抽出部93が先端位置情報記憶部92に保存されている各種先端位置情報の中から抽出した前記画像データの収集時における患者300の心拍時相(以下では、説明を簡単にするために画像データの心拍時相と呼ぶ。)と同一あるいは最も近接した心拍時相を付帯情報とする計測用カテーテルの先端位置情報を支援データ生成モードの画像データに重畳することによってカテーテル治療支援データを生成する。
【0043】
図5は、上述の支援データ生成部96によって生成されたカテーテル治療支援データの具体例を示したものであり、上述のように、このカテーテル治療支援データは、心筋電位計測部131としてその先端部に計測用電極を有した計測用カテーテルF1及びF2と焼灼用電極をその先端部に有した治療用カテーテルF3が示された支援データ生成モードの画像データに、先端位置情報記憶部92から抽出された前記画像データの心拍時相に対応する計測用カテーテルの先端位置情報Axを重畳することによって生成されている。
【0044】
図3へ戻って、データ生成部9の位置ズレ検出部97は、図示しない距離計測部を備え、支援データ生成モードにおいて上述のカテーテル治療支援データが生成される際、画像データ生成部8から略リアルタイムで供給される支援データ生成モードの画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した治療用カテーテルの先端位置情報と、先端位置情報抽出部93から供給された前記画像データの心拍時相と同一あるいは最も近接した心拍時相を付帯情報とする計測用カテーテルの先端位置情報とに基づき、同一心拍時相における計測用カテーテル先端部と治療用カテーテル先端部の位置ズレを検出する。例えば、前記距離計測部は、支援データ生成モードにおいてカテーテル先端検出部91から供給された治療用カテーテルの先端部位置座標と先端位置情報抽出部93から供給された計測用カテーテルの先端部位置座標に基づいてカテーテル先端部間の距離を計測する。
【0045】
警告信号生成部98は、図示しないデータ比較部と警告文言作成部を有し、データ比較部は、位置ズレ検出部97から供給された位置ズレ検出結果と予め設定された閾値βとを比較する。そして、同一心拍時相における計測用カテーテルの先端部と治療用カテーテルの先端部との位置ズレが閾値βより大きい場合、警告文言作成部は、例えば、「治療用カテーテルの先端部は、治療対象部位から離れているため再設定して下さい。」等の警告文言を所定フォーマットで作成する。
【0046】
一方、心拍時相設定部99は、生体信号計測部13が備える心電波形計測部132から供給される当該患者の心電波形に基づいて参照データ収集モード及び支援データ生成モードにおける心拍時相を設定する。具体的には、先ず、心電波形計測部132から供給される心電波形のR波を検出し、次いで、時間方向に隣接する2つのR波の間隔(R−R間隔)を所定の時間間隔Δτで分割することによって心拍時相(例えば、後述の心拍時相P1乃至PN)を設定する。そして、参照データ収集モードにおいて設定された心拍時相は、先端位置情報記憶部92へ供給され、支援データ生成モードにおいて設定された心拍時相は、先端位置情報抽出部93へ供給される。
【0047】
次に、図1に示す表示部10は、図示しない表示データ生成部、データ変換部及びモニタを備え、表示データ生成部は、データ生成部9の支援データ生成部96において生成されたカテーテル治療支援データを所定の表示フォーマットに変換し、更に、警告信号生成部98から供給された警告文言(警告信号)や患者情報等を必要に応じて付加し表示データを生成する。次いで、データ変換部は、表示データ生成部が生成した表示データに対してD/A変換やテレビフォーマット変換等の変換処理を行ないモニタに表示する。
【0048】
尚、上述の表示データを構成する計測用カテーテルの先端位置情報を、この先端位置情報が重畳された支援データ生成モードの画像データと異なる色調、明度、透明度等を用いて表示することにより治療用カテーテル先端部との位置関係が明確になり、許容できない位置ズレが発生した場合の治療用カテーテル先端部の位置ズレ補正を容易に行なうことが可能となる。
【0049】
入力部11は、表示パネルやキーボード、トラックボール、ジョイスティック、マウスなどの入力デバイスを備えたインタラクティブなインターフェースであり、患者情報の入力、参照データ収集モード及び支援データ生成モードの選択、各モードのX線照射条件を含むX線撮影条件や画像データ生成条件の設定、カテーテル治療支援データの生成条件や表示条件の設定、閾値α及び閾値βの設定、各種指示信号の入力等を上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なう。
【0050】
システム制御部12は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部11において入力/設定/選択された各種情報は上述の記憶回路に保存される。そして、CPUは、これらの情報に基づいてX線診断装置100が有する上述の各ユニットを統括的に制御し、参照データ収集モード及び支援データ生成モードにおける画像データの生成、参照データ収集モードの画像データに基づいた計測用カテーテル先端位置情報の検出及び治療用カテーテルが示された支援データ生成モードの画像データと上述の計測用カテーテル先端位置情報との合成によるカテーテル治療支援データの生成を実行させる。
【0051】
生体信号計測部13は、図3に示すように、心筋の治療対象部位に配置される計測用カテーテルの先端部に装着され、参照データ収集モードにおいて前記治療対象部位が発生する心筋電位を計測する心筋電位計測部131と、参照データ収集モード及び支援データ生成モードにおける患者300の心電波形を計測する心電波形計測部132を備えている。
【0052】
心筋電位計測部131は、心筋表面の電位を計測する計測用電極(図5参照)を有し、心筋電位の計測を目的として患者300の心臓内に挿入される計測用カテーテルの先端部に設けられている。そして、この心筋電位計測部131を用いて治療対象部位に発生する心筋電位を計測することにより治療対象部位の位置を特定することが可能となり、このとき計測される心筋電位が閾値αより大きな振幅を有した所定心拍周期(1心拍周期)における計測用カテーテルの先端位置情報が先端位置情報記憶部92において保存される。
【0053】
一方、心電波形計測部132は、患者300の体表面に装着され心電波形を計測する計測用電極と、この計測用電極が計測した心電波形を所定の振幅に増幅する増幅回路と、増幅された心電波形をデジタル信号に変換するA/D変換器(何れも図示せず)を備えている。
【0054】
次に、参照データ収集モードにおいて計測される上述の心筋電位及び心電波形とこれらの計測データに基づいて先端位置情報記憶部92に保存される計測用カテーテルの先端位置情報につき図6を用いて説明する。図6(a)は、生体信号計測部13の心電波形計測部132によって計測された患者300の心電波形Ec、図6(b)は、この心電波形Ecに基づいて心拍時相設定部99が検出したR波及びR−R間隔Tr、図6(c)は、心拍時相設定部99が上述のR−R間隔Trの各々を時間間隔Δτで分割することによって設定した心拍時相P1乃至PNを示しており、図6(d)は、生体信号計測部13の心筋電位計測部131によって計測された患者300の治療対象部位における心筋電位Fcと閾値αを示している。
【0055】
この場合、先端位置情報記憶部92には、参照データ収集モードの心筋電位Fcが予め設定された閾値αより大きな時刻t3以降の所定心拍周期(例えば、期間[t3−t4]の1心拍周期)にてカテーテル先端検出部91が検出した心拍時相P1乃至PNにおける計測用カテーテルの先端位置情報が前記心拍時相を付帯情報として保存される。
【0056】
次に、支援データ生成モードのX線撮影において設定されるX線照射領域につき図7を用いて説明する。但し、図7に示したHaは、参照データ収集モードのX線撮影におけるX線照射領域であり、Hbは、支援データ生成モードのX線撮影におけるX線照射領域を示している。
【0057】
図5に示したカテーテル治療支援データは、参照データ収集モードのX線撮影におけるX線照射領域と同等のX線照射領域を有する支援データ生成モードのX線撮影によって収集された画像データに基づくものであるが、本実施形態では、既に述べたように支援データ生成モードのX線照射領域を治療対象部位の周囲に限定することが可能である。
【0058】
この場合、移動機構部7の移動機構制御部73は、データ生成部9の先端位置情報記憶部92からシステム制御部12を介して供給される計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて生成した移動制御信号を絞り移動機構73へ供給する。次いで、この移動制御信号を受信した絞り移動機構73は、X線発生部2の可動絞り器22に備えられた複数からなる絞り羽根の各々を所定の位置へ移動させることにより、例えば、心拍時相P1乃至PNの治療対象部位に配置された計測用カテーテル先端部を示す閉曲線R0が含まれた比較的狭い領域Hbに対し支援データ生成モードのX線照射領域が設定される。
【0059】
(先端位置情報の検出/保存手順)
次に、本実施形態の参照データ収集モードにおける計測用カテーテルの先端位置情報検出/保存手順につき図8のフローチャートを用いて説明する。
【0060】
参照データ収集モードのX線撮影に先立ち、X線診断装置100の操作者は、入力部11において患者情報の入力、参照データ収集モード及び支援データ生成モードにおけるX線撮影条件及び画像データ生成条件の設定、閾値α及び閾値βの設定、カテーテル治療支援データ生成条件の設定、参照データ収集モードの選択等を行ない(図8のステップS1)、天板6に載置された患者300の所定部位に心電波形計測部132の計測用電極を装着することにより心電波形の計測を開始する(図8のステップS2)。このとき、入力部11において入力/選択/設定された各種の情報は、システム制御部12が備える記憶回路に保存される。
【0061】
次いで、操作者は、入力部11においてX線撮影開始指示信号を入力し(図8のステップS3)、この指示信号がシステム制御部12へ供給されることにより参照データ収集モードにおける時系列的な画像データの生成とこれらの画像データに基づく計測用カテーテル先端位置情報の検出が開始される。
【0062】
即ち、入力部11において入力された上述のX線撮影開始指示信号を受信したシステム制御部12は、自己の記憶回路に保存されたX線撮影条件に含まれている参照データ収集モードのX線照射条件とX線発生のための指示信号を高電圧発生部5のX線制御部51へ供給し、この指示信号を受信したX線制御部51は、前記X線照射条件に基づいて高電圧発生器52を制御しX線発生部2のX線管21に高電圧を印加する。そして、高電圧が印可されたX線管21は、患者300の治療対象部位を含む撮影領域に対して参照データ収集モードのX線照射を開始し、撮影領域を透過したX線は、その後方に設けられたX線検出部3の平面検出器31によって検出される。
【0063】
このとき、平面検出器31において2次元配列された検出素子の光電膜は、上述の撮影領域を透過したX線を受信してそのX線透過量に比例した信号電荷を電荷蓄積コンデンサに蓄積する。所定期間のX線照射が終了すると、システム制御部12からクロックパルスが供給されたゲートドライバ32は、平面検出器31のTFTに対して駆動パルスを供給し電荷蓄積コンデンサに蓄積された信号電荷を順次読み出す。
【0064】
そして、読み出された上述の信号電荷は、投影データ生成部4の電荷・電圧変換器41において電圧に変換され、更に、A/D変換器42においてデジタル信号に変換された後パラレル・シリアル変換器43のバッファメモリに1ライン分の投影データとして一旦保存される。次いで、パラレル・シリアル変換器43は、自己のバッファメモリに保存された投影データをライン単位でシリアルに読み出し、画像データ生成部8の投影データ記憶部に順次保存して2次元の画像データを生成する。そして、得られた画像データは表示部10のモニタに表示される(図8のステップS4)。
【0065】
一方、操作者は、表示部10に表示された画像データの観察下で治療用カテーテルと共に患者300の心臓内に挿入した計測用カテーテルの先端部を心筋表面に沿って順次移動させながらこの心筋表面に発生している心筋電位を前記先端部に設けられた心筋電位計測部131の計測用カテーテルによって計測する(図8のステップS5及びステップS6)。そして、計測された心筋電位の振幅が所定心拍周期(1心拍周期)の期間、予め設定された閾値αより大きな値を示す位置(治療対照部位)に計測用カテーテルの先端部を配置する。
【0066】
そして、心筋電位の計測結果に基づいた計測用カテーテル先端部の配置が終了したならば、データ生成部9の心拍時相設定部99は、心電波形計測部132から供給された心電波形に基づいて参照データ収集モードにおける患者300の心拍時相P1を設定し(図8のステップS7)、設定された心拍時相P1の情報は先端位置情報記憶部92へ供給される。
【0067】
一方、X線撮影部1に備えられた各ユニットは、上述のステップS4と同様の手順によって参照データ収集モードにおける心拍時相P1の画像データを生成し(図8のステップS8)、データ生成部9のカテーテル先端検出部91は、画像データ生成部8から供給された心拍時相P1の画像データに対し平滑化処理や輪郭強調処理、更には、テンプレートデータを用いたマッチング処理等を行なって計測用カテーテルの先端位置情報を検出する(図8のステップS9)。
【0068】
そして、心拍時相P1の画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した計測用カテーテルの先端位置情報は、心拍時相設定部99から供給される心拍時相P1を付帯情報として先端位置情報記憶部92に保存される(図8のステップS10)。
【0069】
心拍時相P1における計測用カテーテル先端位置情報の保存が終了したならば、同様の手順によって心拍時相設定部99は心電波形計測部132から供給される患者300の心電波形に基づいて心拍時相P2乃至PNを検出し、カテーテル先端検出部91は、X線撮影部1及び画像データ生成部8によって得られた心拍時相P2乃至PNの画像データを用いて計測用カテーテルの先端位置情報を検出する。そして、得られた上述の先端位置情報は、心拍時相P2乃至PNを付帯情報として先端位置情報記憶部92に順次保存される(図8のステップS7乃至ステップS10)。
【0070】
但し、先端位置情報記憶部92には、既に、図6において述べたように、閾値αより大きな振幅を有する心筋電位が計測されている、例えば、期間[t3−t4]の1心拍周期にて得られた計測用カテーテルの先端位置情報のみが上述の心拍時相P1乃至PNを付帯情報として保存される。
【0071】
(カテーテル治療支援データの生成手順)
次に、本実施形態の支援データ生成モードにおけるカテーテル治療支援データの生成手順につき図9のフローチャートを用いて説明する。
【0072】
図8に示した手順により計測用カテーテル先端位置情報の検出と保存が終了したならば、操作者は、入力部11において支援データ生成モードを選択し(図9のステップS11)、更に、支援データ生成モードのX線撮影を開始するための指示信号を入力する(図9のステップS12)。そして、この指示信号がシステム制御部12へ供給されることにより支援データ生成モードにおける心拍時相Pxの画像データが生成される。
【0073】
即ち、入力部11から上述のX線撮影開始指示信号を受信したシステム制御部12は、自己の記憶回路に保存されたX線撮影条件に含まれている支援データ生成モードのX線照射条件とX線発生のための指示信号をX線撮影部1へ供給し、この指示信号を受信したX線撮影部1は、図8のステップS4と同様の手順によって生成した投影データを画像データ生成部8の投影データ記憶部に保存して2次元の画像データを生成する(図9のステップS13)。そして、画像処理部95において所定の画像処理が行なわれた前記画像データは、データ生成部9の画像データ記憶部94に一旦保存される。
【0074】
一方、データ生成部9の心拍時相設定部99は、上述の画像データの生成と並行して心電波形計測部132から供給される患者300の心電波形を受信し、この心電波形に基づいて前記画像データの生成時における心拍時相(画像データの心拍時相)Pxを設定する(図9のステップS14)。
【0075】
次いで、先端位置情報抽出部93は、心拍時相設定部99から供給された心拍時相Pxの情報を受信し、この心拍時相Pxに対応する(即ち、心拍時相Pxと同一の心拍時相あるいは最も近接した心拍時相において検出された)計測用カテーテルの先端位置情報を先端位置情報記憶部92に保存されている各種先端位置情報の中から抽出する(図9のステップS15)。
【0076】
次に、支援データ生成部96は、画像データ記憶部94から読み出した支援データ生成モードの画像データに先端位置情報抽出部93から供給された心拍時相Pxに対応する計測用カテーテルの先端位置情報を重畳することによってカテーテル治療支援データを生成する。そして、得られたカテーテル治療支援データを表示部10のモニタに表示する(図9のステップS16)。
【0077】
一方、カテーテル先端検出部91は、支援データ生成モードにおいて画像データ生成部8から供給された心拍時相Pxの画像データに対し平滑化処理、輪郭強調処理、パターンマッチング処理等を行なうことにより該画像データに示された治療用カテーテルの先端位置情報を検出する(図9のステップS17)。
【0078】
一方、位置ズレ検出部97は、画像データ生成部8から略リアルタイムで供給された心拍時相Pxの画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した治療用カテーテルの先端位置情報と、先端位置情報抽出部93から供給された前記画像データの心拍時相Pxに対応する計測用カテーテルの先端位置情報とに基づいて心拍時相Pxにおける治療用カテーテル先端部と計測用カテーテル先端部との位置ズレを検出する(図9のステップS18)。
【0079】
次に、警告信号生成部98は、位置ズレ検出部97から供給された位置ズレ検出結果と予め設定された閾値βとを比較し(図9のステップS19)、カテーテル先端部の位置ズレが閾値βより大きい場合、所定フォーマットの警告文言(警告信号)を作成して表示部10のモニタに表示する(図9のステップS20)。
【0080】
一方、表示部10に表示された警告文言を観察したX線診断装置100の操作者は、上述のステップS16において表示部10に表示されたカテーテル治療支援データに示されている支援データ生成モードの画像データと参照データ収集モードにおいて検出され前記画像データに重畳されている計測用カテーテルの先端位置情報を参照しながら治療用カテーテルの先端部を治療対象部位へ移動させる(図9のステップS21)。
【0081】
そして、心拍時相Pxにおけるカテーテル治療支援データの生成と表示が行なわれ、警告文言の作成及び表示と治療用カテーテル先端部の移動が必要に応じて行なわれたならば、同様の手順により、他の心拍時相にて収集された支援データ生成モードの画像データに基づくカテーテル治療支援データの生成/表示、警告文言の作成/表示、治療用カテーテル先端部の移動が順次行なわれ(図9のステップS13乃至ステップS21)、更に、得られたカテーテル治療支援データに基づくカテーテル治療が患者300の治療対象部位に対して行なわれる。
【0082】
(変形例)
次に、本実施形態のX線診断装置100が備えるデータ生成部9の変形例について説明する。この変形例におけるデータ生成部は、心筋電位の計測により治療対象部位の特定を行なう計測用カテーテルの先端部を前記治療対象部位に配置した状態で所定心拍周期の心拍時相P1乃至PNにおける参照データ収集モードのX線撮影を行なうことにより時系列的な画像データを生成し、これら画像データの各々に示された計測用カテーテルの先端位置情報を検出することによって先端軌跡データを生成する。
【0083】
次いで、治療対象部位の焼灼治療を目的として上述の計測用カテーテルと共に当該患者の心臓内に挿入された治療用カテーテルの先端部を前記治療対象部位の近傍に配置した状態で支援データ生成モードのX線撮影を行ない、このとき得られた画像データに上述の計測用カテーテル先端軌跡データを重畳することにより焼灼治療に有効なカテーテル治療支援データを生成する。
【0084】
本変形例におけるデータ生成部の構成と機能につき図10を用いて説明する。尚、上記データ生成部の構成を示す図10のブロック図において、図3に示したデータ生成部9の各ユニットと同一の構成及び機能を有するユニットは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
【0085】
図10に示す本変形例のデータ生成部9aは、上述の実施形態と略同一の構成と機能を有するカテーテル先端検出部91、先端位置情報記憶部92、画像データ記憶部94、画像処理部95及び心拍時相設定部99を備え、更に、先端位置情報記憶部92から読み出した先端位置情報に基づいて計測用カテーテル先端部の移動軌跡データ(以下では、先端軌跡データと呼ぶ。)を生成する先端軌跡データ生成・記憶部90と、得られた計測用カテーテルの先端軌跡データと支援データ生成モードの画像データを合成してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成部96aと、支援データ生成モードの画像データに示された治療用カテーテルの先端位置情報と上述の計測用カテーテルの先端軌跡データとに基づいて計測用カテーテル先端部(即ち、治療対象部位)に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを検出する位置ズレ検出部97aと、この位置ズレと所定の閾値γとの比較結果に基づいて警告信号を生成する警告信号生成部98aを備えている。
【0086】
先端軌跡データ生成・記憶部90は、図示しない軌跡データ生成部と軌跡データ記憶部を備え、軌跡データ生成部は、カテーテル先端検出部91において検出され心拍時相P1乃至PNを付帯情報として先端位置情報記憶部92に保存された計測用カテーテルの先端位置情報を読み出し、例えば、曲線あるいは閉ループによって示された先端軌跡データを生成する。そして、得られた計測用カテーテルの先端軌跡データは、軌跡データ記憶部に保存される。
【0087】
次に、支援データ生成部96aは、図示しないデータ加算部を備え、画像データ記憶部94から略リアルタイムで供給される支援データ生成モードの画像データに先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ記憶部から供給される計測用カテーテルの先端軌跡データを重畳することによってカテーテル治療支援データを生成する。
【0088】
一方、位置ズレ検出部97aは、図示しない距離計測部を備え、支援データ生成モードにおいて上述のカテーテル治療支援データが生成される際、画像データ生成部8から略リアルタイムで供給される支援データ生成モードの画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した治療用カテーテルの先端位置情報と、先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ記憶部から供給される計測用カテーテルの先端軌跡データとに基づき、計測用カテーテル先端部(治療対象部位)に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを検出する。
【0089】
図11は、位置ズレ検出部97aによって行なわれるカテーテル先端部の位置ズレ検出を説明するための図であり、閉ループR0は、参照データ収集モードの心拍時相P1乃至PNにおける計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて先端軌跡データ生成・記憶部90が生成した先端軌跡データを示している。又、B1、B2、B3、・・・BNは、カテーテル先端検出部91が検出した支援データ生成モードの心拍時相P1、P2、P3、・・・PNにおける治療用カテーテルの先端位置情報を示している。
【0090】
このような治療用カテーテルの先端位置情報B1乃至BNと計測用カテーテルの先端軌跡データR0がカテーテル先端検出部91及び先端軌跡データ生成・記憶部90から供給された位置ズレ検出部97aの距離計測部は、先ず、先端位置情報B1に最も近接した閉ループR0上のC1を検出し、次いで、B1とC1の距離D1を計測する。更に、同様の手順によって、先端位置情報B2、B3、・・・BNに最も接近した閉ループR0上のC2、C3、・・・CNを検出し、B2とC2の距離D2、B3とC3の距離D3、・・・BNとCNの距離DNを順次計測する。
【0091】
次に、図10に示した警告信号生成部98aは、図示しないデータ比較部と警告文言作成部を有し、データ比較部は、位置ズレ検出部97aから供給された距離D1乃至DNと予め設定された閾値γとを比較する。そして、距離D1乃至DNの中の連続する計測値が所定回数連続して閾値γより大きい場合、警告文言作成部は、所定の警告文言(警告信号)を作成し表示部10へ供給する。
【0092】
なお、距離の計測は、上述の手法に限られるものではない。例えば、計測用カテーテルの先端位置情報と、治療用カテーテルの先端位置情報とは、必ずしもその心拍時相が一致しない場合がある。このような場合、例えば、位置ズレ検出部97aの距離計測部は、患者の心拍時相情報に基づいて、治療用カテーテルの先端位置情報B1乃至BNと、計測用カテーテルの先端位置情報C1乃至CNとの位置関係を、より精度良く検出してもよい。例えば、治療用カテーテルの先端位置情報B2は、心拍時相P1とP2との中間点の心拍時相で検出されたとする。この場合、距離計測部は、計測用カテーテルの先端位置情報C1乃至CNに付帯された心拍時相P1乃至PNに基づいて、閉ループR0上で、先端位置情報B2の心拍時相に対応する位置を検出する。上述の例の場合、例えば、対応する位置は、C1とC2との中間点の位置になる。そして、距離計測部は、治療用カテーテルの先端位置情報B2と、C1とC2との中間点の位置との距離を計測すればよい。かかる場合、データ比較部が比較に用いる閾値は、精度の向上に起因して、より小さい値を用いることもできる。
【0093】
(先端軌跡データの生成/保存手順)
次に、本変形例の参照データ収集モードにおける先端軌跡データの生成/保存手順につき図12のフローチャートを用いて説明する。尚、先端軌跡データの生成/保存手順を示す図12のフローチャートにおいて、図8に示した先端位置情報検出/保存手順のステップと同一のステップは同一の符号を付加し説明を省略する。
【0094】
即ち、図8のステップS1乃至ステップS10と同一の手順により心拍時相P1乃至PNにおける計測用カテーテル先端位置情報の検出と保存が終了したならば、データ生成部9aが備える先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ生成部は、先端位置情報記憶部92に保存された心拍時相P1乃至PNにおける計測用カテーテルの先端位置情報を読み出し、直線状あるいは閉ループによって示された先端軌跡データを生成する。そして、得られた計測用カテーテルの先端軌跡データを先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ記憶部に保存する(図12のステップS30)。
【0095】
(カテーテル治療支援データの生成手順)
次に、本変形例の支援データ生成モードにおけるカテーテル治療支援データの生成手順につき図13のフローチャートを用いて説明する。尚、カテーテル治療支援データの生成手順を示す図13のフローチャートにおいて、図9に示したカテーテル治療支援データの生成手順のステップと同一のステップは同一の符号を付加し説明を省略する。
【0096】
即ち、図9のステップS11乃至S14と同一の手順により、支援データ生成モードにおける心拍時相Pxの設定とこの心拍時相Pxにおける画像データの生成が終了したならば、データ生成部9aの支援データ生成部96aは、先端軌跡データ生成・記憶部90の軌跡データ記憶部に保存されている計測用カテーテルの先端軌跡データを読み出す(図13のステップS15a)。次いで、画像データ記憶部94から略リアルタイムで供給される支援データ生成モードの画像データに前記計測用カテーテルの先端軌跡データを重畳することによってカテーテル治療支援データを生成し、得られたカテーテル治療支援データを表示部10のモニタに表示する(図13のステップS16a)。
【0097】
一方、カテーテル先端検出部91は、支援データ生成モードにて画像データ生成部8から供給される時系列的な画像データに対し所定の画像処理を行なうことによりこれらの画像データに示された治療用カテーテルの先端位置情報を検出する(図13のステップS17)。
【0098】
そして、位置ズレ検出部97aは、画像データ生成部8から略リアルタイムで時系列的に供給される支援データ生成モードの画像データに基づいてカテーテル先端検出部91が検出した複数心拍時相における治療用カテーテルの先端位置情報と、先端軌跡データ生成・記憶部90から供給された計測用カテーテルの先端軌跡データとの距離(位置ズレ)を検出する(図13のステップS18a)。
【0099】
次いで、警告信号生成部98aは、位置ズレ検出部97aから供給された位置ズレと予め設定された閾値γとを比較する(図13のステップS19a)。そして、位置ズレの値が所定回数連続して閾値γより大きい場合、所定の警告文言(警告信号)を作成し表示部10に表示する(図13のステップS20)。
【0100】
一方、表示部10に表示された警告文言を観察したX線診断装置100の操作者は、上述のステップS16aにおいて表示されたカテーテル治療支援データに示されている画像データとこの画像データに重畳されている計測用カテーテルの先端軌跡データとに基づき、治療用カテーテルの先端部を治療対象部位に近接した位置へ移動させる(図13のステップS21)。
【0101】
尚、図13のステップS13に示した画像データの生成におけるX線撮影のX線照射領域は、先端軌跡データ生成・記憶部90から供給される計測用カテーテルの先端軌跡データに基づいて設定され、支援データ生成モードのX線照射領域を参照データ収集モードのX線照射領域より狭く設定することにより、カテーテル治療時の患者300に対する被曝線量を低減することが可能となる。
【0102】
以上述べた本開示の実施形態及びその変形例によれば、X線画像データの観察下で心筋等に対するカテーテル治療を行なう際、治療対象部位あるいはその近傍の好適な位置に配置された状態で予め検出された前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテル先端部の位置情報(移動軌跡情報)を前記治療対象部位の治療を目的とする治療用カテーテルが示された支援データ生成モードの画像データに重畳して表示することにより計測用カテーテル先端部(即ち、治療対象部位)に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを容易に把握することができる。このため当該治療対象部位に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレ補正が容易となり安全かつ確実なカテーテル治療を行なうことが可能となる。
【0103】
又、X線発生部の可動絞り器が備える絞り羽根の配置を計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて制御しX線撮影の照射範囲を計測用カテーテル先端部の近傍に存在する治療対象部位に限定することにより、患者に対する被曝線量を低減することができる。
【0104】
更に、計測用カテーテル先端部(治療対象部位)に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレが大きい場合、所定フォーマットで作成した警告文言(警告信号)を表示することにより治療用カテーテル先端部の位置ズレ補正を確実に行なうことができる。
【0105】
一方、上述の変形例によれば、所定心拍周期にて検出された複数からなる計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて先端軌跡データを生成し、得られた先端軌跡データを治療用カテーテルが示された支援データ生成モードの画像データに重畳して表示することにより、心臓の拍動に伴う治療対象部位の移動方向や移動範囲等に関する情報を正確に捉えることが可能となり、治療用カテーテル先端部の位置ズレ補正が更に容易となる。
【0106】
以上、本開示の実施形態及びその変形例について述べてきたが、本開示は、上述の実施形態及びその変形例に限定されるものではなく更に変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施形態では、心筋表面の治療対象部位に対し治療用カテーテルを用いた焼灼治療を行なうことにより不整脈を除去する場合について述べたが治療用カテーテルを用いた治療は上述に限定されない。
【0107】
又、上述の実施形態では、支援データ生成モードの画像データに対し該画像データの心拍時相と同一あるいは最も近接した心拍時相において計測された計測用カテーテルの先端位置情報を重畳し、上述の変形例では、1心拍周期にて計測された複数からなる計測用カテーテルの先端位置情報に基づいて生成した先端軌跡データを前記画像データに重畳する場合について述べたが、上述の先端位置情報と先端軌跡データを支援データ生成モードの画像データに重畳してもよい。この方法によれば、所定心拍周期における治療対象部位の移動方向や移動範囲の把握と当該心拍時相における治療対象部位と治療用カテーテル先端部との位置関係の把握を容易に行なうことが可能となる。尚、計測用カテーテルの先端位置情報が計測される期間は1心拍周期に限定されるものではなく、複数心拍周期であっても構わない。
【0108】
更に、参照データ収集モードのX線照射繰り返し周波数を支援データ生成モードのX線照射繰り返し周波数より高く設定することにより正確な計測用カテーテルの先端位置情報を検出する場合について述べたが、例えば、支援データ生成モードのX線照射繰り返し周波数と同等のX線照射繰り返し周波数によって検出された計測用カテーテルの先端位置情報を補間処理することにより連続性に優れた先端位置情報を収集してもよい。
【0109】
一方、上述の実施形態及びその変形例によれば、支援データ生成モードの画像データに1つの先端位置情報あるいは1つの先端軌跡データを重畳して表示する場合について述べたが、複数の先端位置情報あるいは複数の先端軌跡データを重畳して表示してもよい。この場合、複数からなる先端位置情報あるいは先端軌跡データの各々を異なる色相、明度、透明度等を用いて表示することにより支援データ生成モードの画像データに示された治療用カテーテル先端部との対応付けが容易となる。
【0110】
又、治療用カテーテル先端部と計測用カテーテル先端部の位置ズレに基づいて生成した警告文言と支援データ生成モードの画像データとを同一の表示部10に表示する場合について述べたが、前記警告文言を別途設けられた表示部に表示してもよく、入力部11の表示パネル等に表示してもよい。又、警告信号生成部98が生成する警告信号は、上述の警告文言に限定されるものではなく、例えば、ランプの点滅信号や音声信号等であっても構わない。
【0111】
更に、独立した計測用カテーテルと治療用カテーテルを用いて治療対象部位の位置計測と治療を行なう場合について述べたが、計測用カテーテルと治療用カテーテルは一体化して構成されていてもよい。又、心筋電位計測部131及び心電波形計測部132を備えたX線診断装置100について述べたが、心筋電位計測部131や心電波形計測部132は、X線診断装置100と独立して設けられていてもよい。
【0112】
尚、本実施形態に係るX線診断装置100に含まれるデータ生成部9等は、例えば、CPU、RAM、磁気記憶装置、入力装置、表示装置等で構成されるコンピュータをハードウェアとして用いることでも実現することができる。例えば、データ生成部9を制御するシステム制御部12は、上記のコンピュータに搭載されたCPU等のプロセッサに所定の制御プログラムを実行させることにより各種機能を実現することができる。この場合、上述の制御プログラムをコンピュータに予めインストールしてもよく、又、コンピュータ読み取りが可能な記憶媒体への保存あるいはネットワークを介して配布された制御プログラムのコンピュータへのインストールであっても構わない。
【0113】
又、上述の実施形態は、バイプレーン型のX線診断装置にも同様に適用することができる。一般に、バイプレーン型のX線診断装置には、同時に2方向からの撮像を可能にするために、天板上に仰向けに載置された患者に対してその正面から撮像する正面系撮像システムと、側面から撮像する側面系撮像システムとの2系統の撮像システムが装備される。正面系撮像システムは、例えば、床置きされたスタンドに支えられたCアームと、このCアームの両端に取り付けられたX線発生部及びX線検出部とを有する。一方、側面系撮像システムは、例えば、天井から吊り下げられたΩアームと、このΩアームの両端に設けられた昇降機構と、この昇降機構に支持されたX線発生部及びX線検出部とを有する。
【0114】
例えば、支援データ生成部は、2系統の撮像システムそれぞれに関して供給された支援データ生成モードの画像データに、計測用カテーテルの先端位置情報又は先端軌跡データを重畳することによって、各系統のカテーテル治療支援データを生成する。また、表示部は、各カテーテル治療支援データから表示データを生成し、モニタに表示する。図14は、他の実施形態において生成されたカテーテル治療支援データの具体例を示す。図14においては、先端軌跡データが重畳されたカテーテル治療支援データを表示する例を示す。なお、図14においては、その他の情報(警告文言や患者情報等)や、一部カテーテルの情報を省略して示すが、表示部は、これらの情報を表示してもよい。このように、上述した実施形態をバイプレーン型のX線診断装置に適用した場合には、少なくとも2方向分のカテーテル治療支援データを提供することができ、奥行方向等の情報も提供することができる。このため、観察者は、より精度良く、治療対象部位に対する治療用カテーテル先端部の位置ズレを把握することができる。
【0115】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
9、9a…データ生成部
91…カテーテル先端検出部
911…平滑化処理部
912…輪郭抽出部
913…マッチング処理部
913a…テンプレートデータ保管部
913b…演算処理部
92…先端位置情報記憶部
93…先端位置情報抽出部
94…画像データ記憶部
95…画像処理部
96、96a…支援データ生成部
97、97a…位置ズレ検出部
98、98a…警告信号生成部
99…心拍時相設定部
90…先端軌跡データ生成・記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置において、
前記画像データに基づいて、カテーテル先端部を検出する検出部と、
前記検出手段の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を保存する記憶部と、
前記移動軌跡情報を、現在の前記画像データ上に重畳してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成部と、
前記カテーテル治療支援データを表示する表示部とを
備える、X線診断装置。
【請求項2】
前記支援データ生成部は、前記画像データに対応した心拍時相を付帯情報とする前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を前記記憶部に保存された各種移動軌跡情報の中から抽出する抽出部と、抽出された前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を前記画像データに重畳して前記カテーテル治療支援データを生成するデータ合成部とを備える、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記患者から収集された所定心拍周期の心電波形に基づいて前記心拍時相を設定する心拍時相設定部を備え、前記記憶部は、前記心拍時相の各々における前記カテーテル先端部の移動軌跡情報に前記心拍時相を付加して保存する、請求項2記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記治療対象部位から収集された心筋電位が所定閾値より大きな値を呈する期間において検出された所定心拍周期における前記移動軌跡情報を保存する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテルと前記治療対象部位の治療を行なう治療用カテーテルとの位置ズレを前記検出部によって検出されたカテーテル先端部の位置情報に基づいて検出する位置ズレ検出部と、前記位置ズレの検出結果に基づいて警告信号を生成する警告信号生成部とを備える、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテルの先端部位置情報を検出する参照データ収集モード及び前記カテーテル治療支援データを生成する支援データ生成モードにおけるX線照射繰り返し周波数を制御するX線制御部を備え、前記X線制御部は、前記参照データ収集モードのX線照射繰り返し周波数を前記支援データ生成モードのX線照射繰り返し周波数より高く設定する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記移動軌跡情報をこの移動軌跡情報が重畳される前記画像データと異なる色調、明度あるいは透明度の何れかを用いて表示する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項8】
可動絞り器に設けられた絞り羽根の移動を制御する絞り移動機構を備え、前記絞り移動機構は、前記計測用カテーテルの先端部位置情報に基づいて前記絞り羽根を所定の位置へ移動させることにより前記支援データ生成モードにおけるX線照射範囲を設定する、請求項6記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記X線診断装置は、2方向から同時に撮像可能なバイプレーン型のX線診断装置であって、
前記表示部は、2方向の画像データそれぞれに前記移動軌跡情報を重畳したカテーテル支援データそれぞれを表示する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項10】
被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを撮影するX線診断装置において、
前記画像データに基づいて、心筋電位の計測用カテーテルの先端部を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記先端部の位置情報を記憶する記憶部と、
前記位置情報に基づいて、前記画像データに対して前記先端部の位置を表す画像を重畳したカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成部と、
前記カテーテル治療支援データを表示する表示部と
を備える、X線診断装置。
【請求項11】
前記支援データ生成部は、前記画像データに対応した心拍時相を付帯情報とする前記先端部の位置情報を前記記憶部に保存された位置情報の中から抽出する抽出部と、抽出された前記先端部の位置情報を前記画像データに重畳して前記カテーテル治療支援データを生成するデータ合成部とを備える、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項12】
前記患者から収集された所定心拍周期の心電波形に基づいて前記心拍時相を設定する心拍時相設定部を備え、前記記憶部は、前記心拍時相の各々における前記先端部の位置情報に前記心拍時相を付加して保存する、請求項11記載のX線診断装置。
【請求項13】
前記記憶部は、前記治療対象部位から収集された心筋電位が所定閾値より大きな値を呈する期間において検出された所定心拍周期における前記位置情報を保存する、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項14】
前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテルと前記治療対象部位の治療を行なう治療用カテーテルとの位置ズレを前記検出部によって検出された先端部の位置情報に基づいて検出する位置ズレ検出部と、前記位置ズレの検出結果に基づいて警告信号を生成する警告信号生成部とを備える、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項15】
前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテルの先端部位置情報を検出する参照データ収集モード及び前記カテーテル治療支援データを生成する支援データ生成モードにおけるX線照射繰り返し周波数を制御するX線制御部を備え、前記X線制御部は、前記参照データ収集モードのX線照射繰り返し周波数を前記支援データ生成モードのX線照射繰り返し周波数より高く設定する、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項16】
可動絞り器に設けられた絞り羽根の移動を制御する絞り移動機構を備え、前記絞り移動機構は、前記計測用カテーテルの先端部位置情報に基づいて前記絞り羽根を所定の位置へ移動させることにより前記支援データ生成モードにおけるX線照射範囲を設定する、請求項15記載のX線診断装置。
【請求項17】
前記X線診断装置は、2方向から同時に撮像可能なバイプレーン型のX線診断装置であって、
前記表示部は、2方向の画像データそれぞれに前記移動軌跡情報を重畳したカテーテル支援データそれぞれを表示する、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項18】
被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置に対し、
前記画像データに基づいて、カテーテル先端部を検出する検出機能と、
前記カテーテル先端部の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を保存する記憶機能と、
前記移動軌跡情報を、現在の前記画像データ上に重畳してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成機能と、
前記カテーテル治療支援データを表示する表示機能を
実行させる、制御プログラム。
【請求項19】
被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置に対し、
前記画像データに基づいて、心筋電位の計測用カテーテルの先端部を検出する検出機能と、
前記検出部の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記先端部の位置情報を記憶する記憶機能と、
前記位置情報に基づいて、前記画像データに対して前記先端部の位置を表す画像を重畳したカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成機能と、
前記カテーテル治療支援データを表示する表示機能を
実行させる、制御プログラム。
【請求項1】
被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置において、
前記画像データに基づいて、カテーテル先端部を検出する検出部と、
前記検出手段の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を保存する記憶部と、
前記移動軌跡情報を、現在の前記画像データ上に重畳してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成部と、
前記カテーテル治療支援データを表示する表示部とを
備える、X線診断装置。
【請求項2】
前記支援データ生成部は、前記画像データに対応した心拍時相を付帯情報とする前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を前記記憶部に保存された各種移動軌跡情報の中から抽出する抽出部と、抽出された前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を前記画像データに重畳して前記カテーテル治療支援データを生成するデータ合成部とを備える、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記患者から収集された所定心拍周期の心電波形に基づいて前記心拍時相を設定する心拍時相設定部を備え、前記記憶部は、前記心拍時相の各々における前記カテーテル先端部の移動軌跡情報に前記心拍時相を付加して保存する、請求項2記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記治療対象部位から収集された心筋電位が所定閾値より大きな値を呈する期間において検出された所定心拍周期における前記移動軌跡情報を保存する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテルと前記治療対象部位の治療を行なう治療用カテーテルとの位置ズレを前記検出部によって検出されたカテーテル先端部の位置情報に基づいて検出する位置ズレ検出部と、前記位置ズレの検出結果に基づいて警告信号を生成する警告信号生成部とを備える、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテルの先端部位置情報を検出する参照データ収集モード及び前記カテーテル治療支援データを生成する支援データ生成モードにおけるX線照射繰り返し周波数を制御するX線制御部を備え、前記X線制御部は、前記参照データ収集モードのX線照射繰り返し周波数を前記支援データ生成モードのX線照射繰り返し周波数より高く設定する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記移動軌跡情報をこの移動軌跡情報が重畳される前記画像データと異なる色調、明度あるいは透明度の何れかを用いて表示する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項8】
可動絞り器に設けられた絞り羽根の移動を制御する絞り移動機構を備え、前記絞り移動機構は、前記計測用カテーテルの先端部位置情報に基づいて前記絞り羽根を所定の位置へ移動させることにより前記支援データ生成モードにおけるX線照射範囲を設定する、請求項6記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記X線診断装置は、2方向から同時に撮像可能なバイプレーン型のX線診断装置であって、
前記表示部は、2方向の画像データそれぞれに前記移動軌跡情報を重畳したカテーテル支援データそれぞれを表示する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項10】
被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを撮影するX線診断装置において、
前記画像データに基づいて、心筋電位の計測用カテーテルの先端部を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記先端部の位置情報を記憶する記憶部と、
前記位置情報に基づいて、前記画像データに対して前記先端部の位置を表す画像を重畳したカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成部と、
前記カテーテル治療支援データを表示する表示部と
を備える、X線診断装置。
【請求項11】
前記支援データ生成部は、前記画像データに対応した心拍時相を付帯情報とする前記先端部の位置情報を前記記憶部に保存された位置情報の中から抽出する抽出部と、抽出された前記先端部の位置情報を前記画像データに重畳して前記カテーテル治療支援データを生成するデータ合成部とを備える、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項12】
前記患者から収集された所定心拍周期の心電波形に基づいて前記心拍時相を設定する心拍時相設定部を備え、前記記憶部は、前記心拍時相の各々における前記先端部の位置情報に前記心拍時相を付加して保存する、請求項11記載のX線診断装置。
【請求項13】
前記記憶部は、前記治療対象部位から収集された心筋電位が所定閾値より大きな値を呈する期間において検出された所定心拍周期における前記位置情報を保存する、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項14】
前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテルと前記治療対象部位の治療を行なう治療用カテーテルとの位置ズレを前記検出部によって検出された先端部の位置情報に基づいて検出する位置ズレ検出部と、前記位置ズレの検出結果に基づいて警告信号を生成する警告信号生成部とを備える、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項15】
前記治療対象部位の位置を特定する計測用カテーテルの先端部位置情報を検出する参照データ収集モード及び前記カテーテル治療支援データを生成する支援データ生成モードにおけるX線照射繰り返し周波数を制御するX線制御部を備え、前記X線制御部は、前記参照データ収集モードのX線照射繰り返し周波数を前記支援データ生成モードのX線照射繰り返し周波数より高く設定する、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項16】
可動絞り器に設けられた絞り羽根の移動を制御する絞り移動機構を備え、前記絞り移動機構は、前記計測用カテーテルの先端部位置情報に基づいて前記絞り羽根を所定の位置へ移動させることにより前記支援データ生成モードにおけるX線照射範囲を設定する、請求項15記載のX線診断装置。
【請求項17】
前記X線診断装置は、2方向から同時に撮像可能なバイプレーン型のX線診断装置であって、
前記表示部は、2方向の画像データそれぞれに前記移動軌跡情報を重畳したカテーテル支援データそれぞれを表示する、請求項10記載のX線診断装置。
【請求項18】
被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置に対し、
前記画像データに基づいて、カテーテル先端部を検出する検出機能と、
前記カテーテル先端部の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記カテーテル先端部の移動軌跡情報を保存する記憶機能と、
前記移動軌跡情報を、現在の前記画像データ上に重畳してカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成機能と、
前記カテーテル治療支援データを表示する表示機能を
実行させる、制御プログラム。
【請求項19】
被検体の治療対象部位に対するX線を照射して、透過X線の画像データを表示するX線診断装置に対し、
前記画像データに基づいて、心筋電位の計測用カテーテルの先端部を検出する検出機能と、
前記検出部の検出結果に基づいた少なくとも1心拍分の前記先端部の位置情報を記憶する記憶機能と、
前記位置情報に基づいて、前記画像データに対して前記先端部の位置を表す画像を重畳したカテーテル治療支援データを生成する支援データ生成機能と、
前記カテーテル治療支援データを表示する表示機能を
実行させる、制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図7】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図7】
【図14】
【公開番号】特開2013−46750(P2013−46750A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161683(P2012−161683)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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