説明

X線診断装置

【課題】回転撮影等において、被験者又は/及び術者に対するX線曝射量を低減することの可能なX線診断装置を提供する。
【解決手段】X線診断装置100は、被検体150に対しX線を照射すると共に被検体150を透過したX線を検出して投影データを生成するX線撮影部1と、前記投影データに基づいて画像データを再構成する画像再構成部6aと、得られた画像データを表示する表示部7aと、X線撮影部1のX線発生部2及びX線平面検出部3を保持し被検体150の周囲で所定方向に移動あるいは回動させる保持部8と、被検体150を載置した天板を所定方向へ移動させる寝台部9を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線診断装置に関し、特に三次元立体画像を形成して表示するX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置などを使用した医用画像技術は、急速な進歩を遂げている。循環器分野の診断においては、被検体の撮影目的部位に造影剤を注入する前に撮影した画像、すなわち、マスク像と、造影剤を注入した後に撮影した画像、すなわち、コントラスト像の濃度値を引算処理(サブトラクション)することで、造影剤が存在する部分のみを抽出した画像、すなわち、サブトラクション像を得る手法が実施されている。
【0003】
このサブトラクション像を得るために行われる撮影のことを、一般に、“DSA(デジタル・サブトラクト・アンギオ)撮影”と称している。このDSA撮影には、X線発生部とX線検出部を保持する保持装置を回転させながら撮影を行う回転DSA撮影等がある。
【0004】
また、回転DSA画像からCT同様の原理により、三次元画像に再構成する3D−DSA機能が開発されて以来、X線装置による3D技術が急速な進歩を遂げている。その中で、造影剤を使用せず、CTライクな断層像などが得られる回転撮影法が注目を集めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−275792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
X線診断装置による回転撮影にて得られるCTライクな画像は、CT画像に比べて低コントラスト分解能が劣るため、更なる高画質化が求められている。
【0007】
かかる高画質画像を得るため、回転撮影等においては、撮影フレーム数を多くする必要があった。特にCTライクな画像を得る回転撮影法では、400〜600プロジェクションの撮影画像が必要となる。このため、被検者又は及び術者へのX線曝射量が増加するという問題が存在した。
【0008】
上述の特許文献1のように、X線絞りを制御することで、被検者等への不必要なX線曝射量の低減を図る方法が考えられるが、撮影フレーム数の増加によるX線曝射量の増加に対応するには、不十分であった。また、回転撮影においては、高速回転するアーム等の保持装置と被検者等との干渉(衝突)を避けるため、X線発生部とX線検出部との間の距離(SIDと称する)を広くする必要がある。SIDが広がると、X線検出部におけるX線入射線量を確保するため、被検者への照射X線量を増加させる必要があり、X線曝射量が増加する問題が存在した。
【0009】
本発明の目的は、回転撮影等において、被検者又は/及び術者に対するX線曝射量を低減することのできるX線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明のX線診断装置は、被検体にX線を照射するX線発生部と、前記被検体を挟んで前記X線発生部と対向して配置されたX線平面検出部とが取り付けられた保持部を前記被検体の周囲で回動させて、前記被検体を透過したX線量に基づいて前記被検体の三次元画像又は断層像を再構成する画像再構成部と、を備えるX線診断装置であって、前記保持部の回動に連動して、保持部回動中に、前記X線平面検出部を移動させて前記X線発生部とX線平面検出部の検出面との距離を変えるためのX線平面検出部移動機構部と、前記X線平面検出部の移動に基づいて、照射X線量を調整するX線制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項5に係る本発明のX線診断装置は、被検体にX線を照射するX線発生部と、前記被検体を挟んで前記X線発生部と対向して配置されたX線平面検出部とが取り付けられた保持部を前記被検体の周囲で回動させて、前記被検体を透過したX線量に基づいて前記被検体の断層像を再構成する画像再構成部と、を備えるX線診断装置であって、前記保持部の回動に連動して、保持部回動中に、前記X線平面検出部を移動させるためのX線平面検出部移動機構部と、前記X線平面検出部の移動に基づいて、照射X線量を調整するX線制御部と、前記X線平面検出部の位置情報と前記被検体の位置情報を検出する位置情報検出部と、前記X線平面検出部及び被検体の位置情報に基づいて前記被検体の周囲に干渉領域を設定する干渉領域設定部と、前記干渉領域の領域情報と前記X線平面検出部の位置情報と前記被検体の位置情報との比較により前記X線平面検出部が前記干渉領域に到達したか否かを判定する位置情報比較部と、前記位置情報比較部の判定結果に基づいて前記X線平面検出部移動機構部の移動を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転撮影等の際、X線発生部とX線検出部とが取り付けられた保持部の回動に連動して、保持部の回動中に、前記X線検出部をスライド移動させてSIDを減少させることが可能となるので、SIDに連動したX線条件制御により被検者等のX線曝射量を総合的に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるX線診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるX線診断装置が備えるX線撮影部の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるX線診断装置が備える保持部、X線平面検出部及び天板移動機構部に設けられた機構駆動部を示す概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における保持部の回動に伴うX線平面検出部の移動軌跡を概略的に示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるX線診断装置が備える保持部の回動角度とX線平面検出部のスライド移動量との関係を示す概略図である。
【図6】X線平面検出部と保持部の回動角度の関係の一例を示す概略図である。
【図7】本実施形態におけるX線平面検出部のスライド移動によるX線発生量(mAs値)の調整手順を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態におけるX線平面検出部のスライド移動に基づく画像変更率の調整手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態におけるX線診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図10】本実施形態におけるX線平面検出部と被検体との干渉防止手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のX線診断装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
まず、本発明のX線診断装置の第1の実施形態を図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明のX線診断装置の第1の実施形態の全体構成を示すブロック図である。図1に示すようにX線診断装置100は、被検体150に対しX線を照射すると共に被検体150を透過したX線を検出して投影データを生成するX線撮影部1と、前記投影データに画像処理をする画像処理部6と、前記投影データに基づいて画像データを再構成する画像再構成部6aと、得られた画像データを表示する表示部7aと、X線撮影部1のX線発生部2及びX線平面検出部3を保持し被検体150の周囲で所定方向に移動あるいは回動させる保持部8と、被検体150を載置した天板を所定方向へ移動させる寝台部9を備えている。
【0017】
更に、X線診断装置100は、保持部8及び寝台部9の各々に設けられた後記の各種移動機構部に対し駆動信号を供給する機構駆動部10と、被検体情報の入力、X線照射条件を含むX線撮影条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行う入力部14と、前記各ユニットを統括的に制御して被検体150に対し安全かつ効率のよいX線撮影を可能にするシステム制御部16を備えている。
【0018】
X線診断装置100は、保持部回動角度検出部104、X線平面検出部スライド移動機構部105、X線平面検出部スライド移動量検出部106、X線量算出部107、回動角度−スライド移動量変換テーブル108とを備えている。保持部回動角度検出部104において、検出された保持部8の回動角度と、X線平面検出部スライド移動量検出部106において検出されたスライド移動量についてのデータが前記回動角度−スライド移動量変換テーブル108に送信され、それに基づいて、X線平面検出部3のスライド移動量等を調整するように、X線平面検出部スライド移動機構部105に指示が出される。
【0019】
前記したX線平面検出部3のスライド移動量の調整により、X線量算出部107にSID(Source Image Distance)の変化に基づくX線量(mAs値)の調整を行うべく、X線量算出部107を経て、X線撮影部1におけるX線制御部51に指示が出される。なお、SIDとは、X線管21の焦点とX線平面検出部3との間の距離をいう。
【0020】
X線撮影部1は、図1に示すようにX線発生部2、X線平面検出部3、投影データ生成部4、高電圧発生部5及びX線制御部51を備え、被検体150を透過したX線量に基づいて投影データを生成する機能を有している。
【0021】
図2は、X線撮影部1が有する前記の各ユニットの具体的構成を示したものである。X線発生部2は、被検体150に対しX線を照射するX線管21と、X線管21から放射されたX線に対してX線錘(コーンビーム)を形成するX線絞り器22を備えている。X線管21は、X線を発生する真空管であり、陰極(フィラメント)より放出された電子を高電圧によって加速させてタングステン陽極に衝突させX線を発生させる。X線管21は、高電圧発生部5により発生された高電圧の印加を受けて所定強度のX線を発生する。
【0022】
なお、X線管21に印加される高電圧の電圧値や電流値は、ユーザーインターフェイス(図示しない)等を用いて術者等が設定することもできるし、自動的に設定されるように構成することもできる。X線絞り器22は、X線管21と被検体150の間に位置し、X線管21から照射されたX線ビームを所定の照射視野のサイズに絞り込む機能を有している。X線絞り器22は、タングステンやモリブデン等のX線を吸収する素材で組成された板状の絞り羽根を四方に配置して構成されたものも好ましく使用される。絞り羽根は、その端面が、隣接する羽根の端面に対して互いに直交するように配置されており、絞り羽根の内側の端面で形成される開口は矩形状となっているものも使用される。
【0023】
一方、X線平面検出部3は、X線管21により発生されたX線を検出し、その検出結果を電荷に変換する。かかるX線平面検出部3には、X線を直接電荷に変換するものと、光に変換した後、電荷に変換するものがある。本実施の形態においては、前者を例に説明するが、後者のものであってもよい。すなわち、本実施の形態におけるX線平面検出部3は、被検体150を透過したX線を電荷に変換して蓄積する平面検出器31(FPD)と、この平面検出器31に蓄積された電荷を読み出すための駆動パルスを生成するゲートドライバ32を備えている。
【0024】
平面検出器31は、微小な検出素子を二次元的に配列して構成され、各々の検出素子は、X線を感知し入射X線量に応じて電荷を生成する光電膜と、この光電膜に発生した電荷を蓄積する電荷蓄積コンデンサと、電荷蓄積コンデンサに蓄積された電荷を所定のタイミングで読み出す薄膜トランジスタ(TFT)(何れも図示せず)を備えている。そして、蓄積された電荷はゲートドライバ32が供給する駆動パルスによって順次読み出される。
【0025】
次に、投影データ生成部4は、平面検出器31から行単位もしくは列単位でパラレルに読み出された電荷を電圧に変換する電荷・電圧変換器41と、この電荷・電圧変換器41の出力をデジタル信号に変換するA/D変換器42と、デジタル変換されたパラレル信号を時系列的なシリアル信号に変換するパラレル・シリアル変換器43を備えている。
【0026】
高電圧発生部5は、X線管21の陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生させる高電圧発生器52と、システム制御部16から供給される指示信号に従い、高電圧発生器52における管電流、管電圧、照射時間、照射タイミング等のX線照射条件を制御するX線制御部51を備えている。
【0027】
図1へ戻って、画像処理部6について説明する。画像処理部6は、図示しない投影データ記憶部と画像データ演算部を備え、前記投影データ記憶部は、X線撮影部1の投影データ生成部4から供給される時系列的な投影データを順次保存して二次元投影データを生成する。一方、前記画像データ演算部は、前記投影データ記憶部にて生成された二次元投影データに対し、フィルタリング処理等の画像処理を実施して画像データを生成し、更に、得られた複数の画像データに対し合成処理や引算(サブトラクション)処理等を行う。
【0028】
また、画像再構成部6aは、画像再構成前に後述するSIDの変化に伴う、投影データから再構成画像の変更率(拡大率・縮小率)の調整及びmAs値の変更率に伴う画像レベルの補正を行った上で、三次元画像や断層像を生成する。
【0029】
表示部7aは、図示しない表示データ生成部とデータ変換部とモニタを備えている。前記表示データ生成部は、画像再構成部6aの画像データ演算部から供給される画像データに対して種々の三次元画像表示法にてモニタに表示する。
【0030】
図3は、機構駆動部10が有する各ユニットの具体的構成を示したものである。機構駆動部10は、保持部8を回転させるために設けられた保持部回動機構に対して駆動信号を供給する保持部回動機構駆動部101と、X線平面検出部をX線管21方向へスライド移動させるために設けられたX線平面検出部スライド移動機構部105と、被検体150を載置した天板を所望の方向へ移動させるために寝台部9に設けられた移動機構部に対し駆動信号を供給する天板移動機構駆動部102とを制御する機構駆動制御部103を備えている。
【0031】
図4は、本発明の第1の実施形態における保持部の回動に伴うX線平面検出部の移動軌跡を概略的に示す模式図である。従来軌道が略円軌道であるのに対し、本実施形態においては、略部分楕円軌道をとる。
【0032】
図5は、本発明の第1の実施形態における保持部回動角度とX線平面検出部3のスライド移動量を模式的に示した概略図である。ここで、保持部回動角度とは、保持部8と天板の間に挟まれる角度をいう。X線平面検出部3が天板の側面に位置する状態を0度とする。本発明の第1の実施形態においては、保持部8の回動角度が大きくなるにつれて、X線平面検出部3のスライド移動量を多くし、中心部(X線平面検出部3が天板の側面に位置する状態を0度として、時計方向に回動している場合の回動角度:90度)でスライド移動量が最大となり、中心部を経由してからは、次第にスライド移動量が徐々に元の状態に戻っている。
【0033】
図6は、X線平面検出部3の軌道と保持部8の回動角度の関係の一例を示す概略図である。図6において、X線平面検出部3は、下記式に示される略部分楕円を軌跡を描いて移動する。また、SIDについても下記式に示される。
/a+Y/b=1
SID=(acos(Θ)+b2sin(Θ))1/2
a:楕円の長軸径
b:楕円の端軸径
Θ:保持部8の回動角度
【0034】
次に、入力部14は、キーボード、トラックボール、ジョイステック、マウス等の入力デバイスや表示パネルを備えたインターラクティブなインターフェイスである。かかる入力部14は、被検体情報の入力、X線撮影条件の設定、保持部8及び寝台部9の移動/回動を指示する指示信号や各種コマンド信号の入力等を行う。
【0035】
次に、図1のシステム制御部16について説明する。システム制御部16は、X線診断装置の各部の制御(特に、X線制御部51、高電圧発生部5、X線発生部2、機構駆動制御部103、表示部7a、画像処理部6、投影データ生成部4、X線平面検出部3)の制御や、各種の演算処理を実行する。システム制御部16は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサや、所定のコンピュータプログラムを格納するとともに各種データを記憶する記憶装置(メモリやハードディスクドライブ等)などを含んで構成されている。マイクロプロセッサは、このコンピュータプログラムを実行することにより、この実施形態に関わる制御や演算処理を行うようになっている。入力部14にて入力もしくは設定された前記の各種データは前記記憶装置に保存される。そして、前記CPUは、これらの各種データに基づいてX線診断装置100の各ユニットを統括的に制御する。
【0036】
本実施形態のX線診断装置は、前記X線平面検出部3のスライド移動に基づいて、照射X線量を調整するX線制御部51を備えている。本実施形態においては、前記X線平面検出部3のスライド移動に基づいて、照射X線量を調整するX線制御部51を備えることが重要である。すなわち、X線平面検出部3をスライド移動させることにより、SIDが変化する。それに伴い距離の2乗分の1の割合で照射X線量が変化する。同一のX線条件(管電圧、管電流、パルス幅)であれば、保持部8の回動角度が同一のとき、X線平面検出部3のスライド移動によって当該X線平面検出部3が被検体側に近づくと、X線平面検出部3への入射X線量は増加する。例えば、保持部8の回動角度を同一として、SIDを120cmから100cmに変化させて回転撮影を行うと、SIDを120cmに固定した場合と比較して、1.44倍の入射X線量となる。
【0037】
したがって、X線制御部51により、X線平面検出部3への入射X線量を1/1.44倍に減少させても良好な画質を得るために必要な目標線量を確保することができる。このように、入射X線量を減少させることができるので、被検体や術者に対するX線曝射量を低減させることができる。
【0038】
本実施形態においては、例えば、図6においては、保持部8の回動角度(Θ)に応じて、回動角度0度のときのmAs値を基準にすると下記式で調整することができる。
mAs値=mAs値(角度0度)×(h(Θ)/SID)
h(Θ):保持部回動角度Θ度のSID
SID:保持部回動角度0度のSID
【0039】
図7は、本実施形態におけるX線平面検出部3のスライド移動によるX線発生量(mAs値)の調整手順を示すフローチャートである。
【0040】
保持部回動角度検出部104は保持部8の回動角度を検出する(ステップS1)。回動角度−スライド移動量変換テーブル108は、保持部回動角度検出部104からの回動角度データをX線平面検出部のスライド移動量に変換する。X線平面検出部スライド移動機構部105は、かかる回動角度−スライド移動量変換テーブル108で変換されたスライド移動量データに基づき、X線平面検出部3をスライド移動させる(ステップS2)。
【0041】
X線平面検出部スライド移動量検出部106は、X線平面検出部3のスライド移動量を検出する(ステップS3)。検出されたスライド移動量データは前記回動角度−スライド移動量変換テーブル108に送られ、スライド移動量が所定値に達しない場合、調整が行われる。
【0042】
X線量算出部107(mAs値算出部)は、前記X線平面検出部3のスライド移動量毎にX線発生量(mAs値)を算出する(ステップS4)。なお、X線発生量(mAs値)は、X線平面検出部3のスライド移動量が最大となって、X線平面検出部3とX線発生部2との距離(SID)が最小となった場合に最小となるようになればよく、適宜、スライド移動量に応じて調整するのが好ましい。
【0043】
X線制御部51は、ステップS4で算出されたX線量(mAs値)データに基づき、X線発生部2にX線を発生させ、被検体150にX線を照射する(ステップS5)。
【0044】
回転撮影中の撮影画像から三次元画像へ再構成する際、幾何学的な拡大・縮小率を同一にすることが必要となる。本実施形態においては、前記X線平面検出部3のスライド移動に基づいて、SIDが変化するので、投影データから再構成画像への画像変更率(拡大・縮小率)も幾何学的に変化する。かかる変更率(拡大・縮小率)に基づいて、画像再構成前に投影データから再構成画像の拡大・縮小率を調整することが行われる。画像処理部6は、X線平面検出部3のスライド移動によるデータ収集を行う(ステップS6)。また、三次元画像へ再構成する際、同一入射線量の画像で計算をする必要があるためmAs値の変更分に基づいて画像レベルに補正をかける。かかるデータを基礎に、画像再構成部6aは、スライド移動距離に基づく画像変更率(拡大・縮小率)の調整及び画像レベルの補正を行って、画像再構成をする(ステップS7)。
【0045】
X線平面検出部3のスライド移動によるデータ収集から画像再構成までの手順を示すフローチャートを図8に示す。ステップS20では、X線平面検出部3のスライド移動量のデータを収集する。ステップS21では、スライド移動距離とデータの対応付けを行う。ステップS22では、スライド移動距離に基づく画像拡大率の補正を行う。ステップ23では、mAs値の変更分に基づいて画像レベルの補正を行う。
【0046】
<第2の実施形態>
次に、本発明のX線診断装置の第2の実施形態を図面を用いて説明する。
【0047】
図9は、本発明のX線診断装置の第2の実施形態の全体構成を示すブロック図である。
なお、本実施の形態においては、第1の実施形態と共通する部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態の構成に加えて、被検体の体格に応じて、X線平面検出部3が被検体と干渉(接触)しないように前記X線平面検出部の移動を制御するものである。その他の構成、作用、効果は第1の実施形態のX線診断装置と同じである。
【0049】
図9に示すように、第2の実施形態に係るX線診断装置100は、第1の実施形態の構成に加えて、X線平面検出部3及び被検体150の位置情報を検出する位置情報検出部11と、X線平面検出部3及び被検体150の位置情報に基づいてX線平面検出部3の被検体150に対する干渉の可能性を判定する干渉判定部12とを備えている。
【0050】
位置情報検出部11は、エンコーダーやポジションセンサ等の位置検出センサにより構成されている。かかる位置情報検出部11は、X線平面検出部3の現在位置、被検体150の現在位置等を検出し、位置情報として干渉判定部12に送信する。干渉判定部12は、干渉領域設定部122及び位置情報比較部123から構成されている。干渉領域設定部122は、位置情報検出部11によって検出されたX線平面検出部3の位置情報と、被検体150の体重、身長等の身体情報から、前記X線平面検出部3と被検体150が接触する可能性を有する干渉領域を設定する。
【0051】
位置情報比較部123は、干渉領域設定部122から供給される干渉領域の領域情報と、位置情報検出部11から供給される前記X線平面検出部3と被検体150の位置情報とを比較し、前記X線平面検出部3が干渉領域に到達したか否かを検出することによって、被検体150に対する干渉可能性の有無を判定する。そして、干渉可能性が有りと判定した場合、その判定結果は、システム制御部16を介して機構駆動部10の機構駆動制御部103へ送られ、X線平面検出部3を干渉領域から外側に移動させるようにX線平面検出部スライド移動機構部105を制御する。
【0052】
図10は、本実施形態におけるX線平面検出部3と被検体との干渉防止手順を示すフローチャートである。位置情報検出部11は、X線平面検出部3及び被検体150の位置情報を検出する。干渉領域設定部122は、位置情報検出部11によって検出されたX線平面検出部3の位置情報と、被検体150の体重、身長等の身体情報から、前記X線平面検出部3と被検体150が接触する可能性を有する干渉領域を設定する(ステップS31)。干渉領域データに基づき、X線平面検出部3が被検体と干渉しないようにX線平面検出部3をスライド移動する(ステップS32)。X線平面検出部3と被検体との間の距離を検出する(ステップS33)。位置情報比較部123は、ステップS33で検出された距離データに基づいて干渉領域侵入か否かを判定する(ステップS34)。干渉領域に侵入と判定されたとき(YES)は、X線平面検出部3は、X線平面検出部スライド移動機構部105により変更移動がなされる(ステップS35)。干渉領域へ非侵入と判定されたとき(NO)は、再度、X線平面検出部3と被検体150との間の距離を検出するステップS33に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明は、回転撮影等に使用される装置に有用であり、特に、撮影フレーム数が多い場合に適している。
【符号の説明】
【0054】
1 X線撮影部
2 X線発生部
21 X線管
22 X線絞り器
3 X線平面検出部
31 平面検出器
32 ゲートドライバ
4 投影データ生成部
41 電荷・電圧変換器
42 A/D変換器
43 パラレル・シリアル変換器
5 高電圧発生部
51 X線制御部
52 高電圧発生器
6 画像処理部
6a 画像再構成部
7a 表示部
8 保持部
9 寝台部
10 機構駆動部
101 保持部回動機構駆動部
102 天板移動機構駆動部
103 機構駆動制御部
104 保持部回動角度検出部
105 X線平面検出部スライド移動機構部
106 X線平面検出部スライド移動量検出部
107 X線量算出部(mAs値算出部)
108 回動角度−スライド移動量変換テーブル
11 位置情報検出部
12 干渉判定部
122 干渉領域設定部
123 位置情報比較部
14 入力部
16 システム制御部
100 X線診断装置
150 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線発生部と、前記被検体を挟んで前記X線発生部と対向して配置されたX線平面検出部とが取り付けられた保持部を前記被検体の周囲で回動させて、前記被検体を透過したX線量に基づいて前記被検体の三次元画像又は断層像を再構成する画像再構成部と、を備えるX線診断装置であって、
前記保持部の回動に連動して、保持部回動中に、前記X線平面検出部を移動させて前記X線発生部とX線平面検出部の検出面との距離を変えるためのX線平面検出部移動機構部と、
前記X線平面検出部の移動に基づいて、照射X線量を調整するX線制御部と、
を備えたことを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記X線平面検出部の移動に基づいて、前記X線発生部におけるX線管の管電流値(mA)とパルス幅(s)の積の値を調整することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記X線平面検出部の移動に基づいて、再構成画像の拡大・縮小率を調整することを特徴とする請求項1または2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記X線平面検出部が略部分楕円軌道を伴って移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項5】
被検体にX線を照射するX線発生部と、前記被検体を挟んで前記X線発生部と対向して配置されたX線平面検出部とが取り付けられた保持部を前記被検体の周囲で回動させて、前記被検体を透過したX線量に基づいて前記被検体の断層像を再構成する画像再構成部と、を備えるX線診断装置であって、
前記保持部の回動に連動して、保持部回動中に、前記X線平面検出部を移動させるためのX線平面検出部移動機構部と、
前記X線平面検出部の移動に基づいて、照射X線量を調整するX線制御部と、
前記X線平面検出部の位置情報と前記被検体の位置情報を検出する位置情報検出部と、
前記X線平面検出部及び被検体の位置情報に基づいて前記被検体の周囲に干渉領域を設定する干渉領域設定部と、
前記干渉領域の領域情報と前記X線平面検出部の位置情報と前記被検体の位置情報との比較により前記X線平面検出部が前記干渉領域に到達したか否かを判定する位置情報比較部と、
前記位置情報比較部の判定結果に基づいて前記X線平面検出部移動機構部の移動を制御することを特徴とするX線診断装置。
【請求項6】
前記X線平面検出部の移動に基づいて、前記X線発生部におけるX線管の管電流値(mA)とパルス幅(s)の積の値(mAs)を調整することを特徴とする請求項5に記載のX線診断装置。
【請求項7】
回転撮影収集画像に対して、三次元再構成計算前に画像レベルに対して、前記X線管の管電流値(mA)とパルス幅(s)の積の値(mAs)値の変化分に応じた画像レベル補正をかけることを特徴とする請求項6に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記X線平面検出部の移動に基づいて、再構成画像の拡大・縮小率を調整することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記X線平面検出部が略部分楕円軌道を伴って移動することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のX線診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−143067(P2011−143067A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6293(P2010−6293)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】