説明

X線診断装置

【課題】作業を軽減することができるX線診断装置を提供する。
【解決手段】被検体Pが載置される天板11を長手方向、起倒方向及び上下方向に移動可能に支持する天板支持体12と、被検体PにX線を照射するX線管24及び被検体Pを透過したX線を検出するX線検出器26を移動可能に支持するアーム23と、アーム23に対して被検体Pが位置決めされた天板11及びアーム23の撮影位置T1,T3並びにアーム23の退避位置T2を記憶する位置記憶部43とを備え、アーム23が退避位置T2で停止している場合、撮影位置T3の天板11をこの天板11の撮影位置T3に関連付けて位置記憶部43に記憶された撮影位置T1におけるアーム23のアイソソセンタC位置に対応する被検体Pの部位の上下方向における位置を維持するように、起倒方向及び上下方向へ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線を照射し、被検体を透過したX線を検出する撮影ユニットを撮影可能な位置から移動して退避させることができるX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、近年ではカテーテルを用いた血管造影検査やIVR(Interventional Radiology)の発展に伴い、循環器分野を中心に進歩を遂げている。この循環器用のX線診断装置は、外科手術と組み合わせたステントグラフト治療等への適用など高度なIVRシステムとしての適用範囲が拡大している。
【0003】
ところで、循環器用のX線診断装置は、X線照射部及びX線検出部を両端部の近傍に保持するアームからなる撮影部、並びに被検体が載置される天板を長手方向、上下方向及び起倒方向に移動可能に支持する寝台部を備えている。そして、被検体の関心部位が照射野から外れないようにアームや天板を移動して、様々な角度からの撮影を可能にしている。
【0004】
この撮影部及び寝台部は、外科治療等が可能な設備を整えた検査室内に設置される。そして、撮影部を使用しないとき、外科治療の邪魔にならないように寝台部から離間して退避させた後、外科治療を行いやすいように天板を起倒方向へ移動させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4269307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、撮影部を退避させた後に天板を起倒方向へ移動させると、関心部位が撮影時の高さからずれてしまうため、天板の高さの調整を行う必要があり、外科治療等の作業を行う操作者を煩わせている。
【0007】
実施形態は、上記問題点を解決するためになされたもので、作業を軽減することができるX線診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、実施形態のX線診断装置は、被検体が載置される天板及びこの天板を長手方向、起倒方向及び上下方向へ移動可能に支持する天板支持体と、前記天板上に載置された前記被検体にX線を照射するX線管、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器、並びに前記X線管及び前記X線検出器を前記天板支持体に対して遠近方向へ移動可能に保持するアームと、前記被検体にX線の照射が可能な前記アームの撮影位置及び前記天板の撮影位置を関連付けて記憶する位置記憶部と、前記アームが前記天板支持体から遠方へ移動して、前記天板上の前記被検体にX線の照射が不可能な退避位置で停止している場合、前記被検体が載置された前記撮影位置の前記天板を、この天板の撮影位置に関連付けて前記位置記憶部に記憶された撮影位置の前記アームの所定の位置に対応する前記被検体の部位の少なくとも上下方向における位置を維持するように、起倒方向及び上下方向へ移動させる機構制御部とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施形態に係る寝台部、移動機構部及び位置検出部の構成の詳細を示すブロック図。
【図3】実施形態に係る寝台部及び撮影部の配置並びに移動方向を示す図。
【図4】実施形態に係るX線診断装置の動作を示すフローチャート。
【図5】実施形態に係る治療位置で停止した天板の一例を示す図。
【図6】実施形態に係る天板を治療位置で停止させるための制御を説明するための図。
【図7】実施形態に係る天板を治療位置で停止させるための制御を説明するための図。
【図8】実施形態に係る治療位置で停止した天板の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、X線診断装置の構成を示したブロック図である。このX線診断装置100は、被検体Pが移動可能に載置される寝台部10と、寝台部10に載置された被検体PにX線を照射して撮影を行う撮影部20と、寝台部10及び撮影部20の各ユニットを移動する移動機構部30と、移動機構部30により移動されるユニットの位置を検出する位置検出部40と、撮影部20のX線照射に必要な高電圧を発生する高電圧発生部50とを備えている。
【0012】
また、X線診断装置100は、撮影部20における撮影により生成されるX線投影データから画像データの生成を行なう画像データ生成部60と、画像データ生成部60で生成された画像データを表示する表示部70と、X線照射条件、X線を照射する被検体Pの撮影部位等を含む検査情報を設定するための入力、種々のコマンドの入力等を行う操作部80と、撮影部20、移動機構部30、位置検出部40、高電圧発生部50及び画像データ生成部60を統括して制御するシステム制御部90とを備えている。
【0013】
寝台部10は、被検体Pが載置される天板11と、天板11を長手方向、起倒方向及び上下方向へ移動可能に支持する天板支持体12とを備えている。
【0014】
撮影部20は、寝台部10の天板11上に載置された被検体PにX線を照射するX線照射部21、X線照射部21からのX線照射により被検体Pを透過したX線を検出してX線投影データを生成するX線検出部22、並びにX線照射部21及びX線検出部22を寝台部10に対して遠近方向へ移動可能に保持するアーム23を備えている。
【0015】
X線照射部21は、X線を発生するX線管24、及びX線管24から発して被検体Pに照射するX線の照射範囲を制限するX線管24と被検体Pの間に配置されたX線絞り器25を備えている。また、X線検出部22は、X線照射部21に対向して配置され、被検体Pを透過したX線を検出して電気信号に変換するX線検出器26及びX線検出器26で変換された電気信号を処理してX線投影データを生成する信号処理部27を備えている。
【0016】
アーム23は、寝台部10に近づく方向及び寝台部10から遠ざかる方向へ移動可能に、且つ、回動可能にX線照射部21及びX線検出部22を保持している。
【0017】
移動機構部30は、寝台部10における天板11の長手方向、起倒方向及び上下方向への移動を行う天板移動機構31と、撮影部20におけるアーム23の遠近方向への移動及び回動を行うアーム移動機構32と、位置検出部40により検出される天板11及びアーム23の位置に基づいて天板移動機構31及びアーム移動機構32を制御する機構制御部33とを備えている。
【0018】
位置検出部40は、寝台部10の天板11の長手方向、起倒方向及び上下方向における位置を検出する天板位置検出器41と、撮影部20のアーム23の遠近方向及び回動方向における位置を検出するアーム位置検出器42と、天板位置検出器41により検出された天板11の位置及びアーム位置検出器42に検出されたアーム23の位置を記憶する位置記憶部43とを備えている。
【0019】
高電圧発生部50は、撮影部20におけるX線照射部21のX線管24に高電圧を供給する高電圧発生器及びこの高電圧発生器を制御するX線制御部を備え、システム制御部90から供給される管電圧や管電流を含むX線照射条件に基づいて、透視用のX線や透視用よりも高エネルギーの撮影用のX線を発生させるための高電圧をX線管24に供給する。
【0020】
画像データ生成部60は、撮影部20におけるX線検出部22の信号処理部27よりライン単位で出力されるX線投影データから画像データを生成し、生成した画像データを表示部70に出力する。
【0021】
表示部70は、液晶パネル或いはCRTのモニターを備え、画像データ生成部60で生成された画像データを表示する。
【0022】
操作部80は、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、マウスなどの入力デバイスや表示パネル、更には、各種スイッチ等を備えたインターラクティブなインターフェースであり、撮影条件を設定するための入力を行う。また、被検体Pの検査や外科治療を行う頭部、胸部、腹部等の検査部位や、被検体Pの年齢や身長等の検査情報を設定するための入力を行う。また、寝台部10の天板11や撮影部20のアーム23を移動させる入力等を行う。
【0023】
システム制御部90は、CPUと記憶回路を備え、操作部80から入力される検査情報等の入力情報を一旦記憶した後、これらの入力情報に基づいて、撮影部20、移動機構部30、位置検出部40、高電圧発生部50及び画像データ生成部60の制御を行なう。
【0024】
次に、図1乃至図3を参照して、寝台部10、移動機構部30及び位置検出部40の構成、並びに移動機構部30により移動される寝台部10及び撮影部20の移動方向について詳細に説明する。
【0025】
図2は、寝台部10、移動機構部30及び位置検出部40の構成の詳細を示したブロック図である。この寝台部10の天板支持体12は、天板11を長手方向へ移動可能に支持する第1の支持体121と、第1の支持体121を回動可能に支持する第2の支持体122と、第2の支持体122を上下方向へ移動可能に支持する第3の支持体123とを備えている。
【0026】
移動機構部30の天板移動機構31は寝台部10に配置され、寝台部10の天板11を長手方向へ移動する長手駆動機構311、天板11を起倒方向へ移動する起倒駆動機構312、及び天板11を上下方向へ移動する上下駆動機構313を備えている。
【0027】
図3は、寝台部10及び撮影部20の配置並びに移動方向を示した図である。
移動機構部30における天板移動機構31の長手駆動機構311は、寝台部10における天板支持体12の第1の支持体121に配置され、天板11を長手方向である矢印L1方向及びL1方向とは反対方向の矢印L2方向へ移動する。
【0028】
また、起倒駆動機構312は、天板支持体12の第2の支持体122に配置され、第1の支持体121を回動駆動する。この回動駆動により、天板11を短手方向に平行な軸を回動軸として回動する方向を起倒方向として、矢印R1方向及びR1方向とは反対方向の矢印R2方向へ移動する。
【0029】
更に、上下駆動機構313は、天板支持体12の第3の支持体123に配置され、第2の支持体122を上下駆動することにより、天板11を下方向である矢印L3方向及び上方向である矢印L4方向へ移動する。
【0030】
アーム移動機構32は、撮影部20のアーム23を遠近方向である矢印L5方向及びこの方向とは反対方向である矢印L6方向へ移動する。そして、寝台部10に近づく方向であるL5方向へ移動して、天板11上の被検体Pの検査部位である関心部位RにX線の照射が可能な位置である撮影位置T1で停止させる。また、X線の照射が停止されているとき、アーム23を寝台部10から遠ざかる方向であるL6方向へ移動して、撮影部20が天板11から離間して天板11上の被検体Pの関心部位RにX線の照射が不可能な位置である退避位置T2で停止させる。
【0031】
また、アーム移動機構32は、撮影部20により撮影が行われるとき、X線照射部21のX線管24焦点とX線検出部22におけるX線検出器26の検出面中心とを結ぶ照射軸とアーム23の回動軸を通る直線の交点であるアイソセンタCを中心としてアーム23を回動移動する。
【0032】
図2に示した位置検出部40の天板位置検出器41は、移動機構部30の天板移動機構31に配置され、寝台部10の天板11の長手方向における位置を検出する長手位置検出器411、天板11の起倒方向における位置を検出する起倒位置検出器412、及び天板11の上下方向における位置を検出する上下位置検出器413により構成される。
【0033】
長手位置検出器411は、天板移動機構31の長手駆動機構311に配置され、寝台部10における天板支持体12の第1の支持体121に対して天板11が長手方向に移動しているときの位置(長手移動位置)を検出する。そして、検出した長手移動位置を移動機構部30の機構制御部33に出力する。
【0034】
また、長手位置検出器411は、図3に示すように、撮影部20の撮影位置T1におけるアーム23のアイソセンタCに被検体Pの関心部位Rを位置合わせすることによりアーム23に対して被検体Pが位置決めされ、関心部位RにX線の照射が可能な天板11の撮影位置T3における長手方向の位置(長手撮影位置)を検出する。そして、検出した長手撮影位置を位置記憶部43に出力する。
【0035】
起倒位置検出器412は、天板移動機構31の起倒駆動機構312に配置され、第2の支持体122に対して第1の支持体121が駆動されているときの角度を検出することにより、天板11が起倒方向へ移動しているときの位置(起倒移動位置)を検出する。そして、検出した起倒移動位置を機構制御部33に出力する。
【0036】
また、起倒位置検出器412は、撮影位置T1のアーム23に対して被検体Pが位置決めされたときの天板11の撮影位置T3における起倒方向の位置(起倒撮影位置)を検出し、検出した起倒撮影位置を位置記憶部43に出力する。
【0037】
上下位置検出器413は、天板移動機構31の上下駆動機構313に配置され、第3の支持体123に対して第2の支持体122が駆動されているときの位置を検出することにより、天板11が上下方向に移動しているときの位置(上下移動位置)を検出する。そして、検出した上下移動位置を機構制御部33に出力する。
【0038】
また、上下位置検出器413は、撮影位置T1のアーム23に対して被検体Pが位置決めされたときの天板11の撮影位置T3における上下方向の位置(上下撮影位置)を検出し、検出した上下撮影位置を位置記憶部43に出力する。
【0039】
アーム位置検出器42は、移動機構部30のアーム移動機構32に配置され、アーム23がL5方向及びL6方向へ移動しているときの位置を検出し、検出した位置を機構制御部33に出力する。また、アーム23の撮影位置T1及び退避位置T2を検出して位置記憶部43に出力する。
【0040】
位置記憶部43は、アーム位置検出器42により検出されるアーム23の撮影位置T1と、この撮影位置T1における天板位置検出器41の長手位置検出器411、起倒位置検出器412及び上下位置検出器413により検出される長手撮影位置、起倒撮影位置及び上下撮影位置からなる天板11の撮影位置T3とを関連付けて時系列的に記憶する。また、アーム位置検出器42により検出される退避位置T2を時系列的に記憶する。
【0041】
以下、図1乃至図6を参照して、X線診断装置100の動作の一例を説明する。
図4は、X線診断装置100の動作を示したフローチャートである。撮影部20のアーム23は、X線照射部21が下端部に位置し、X線検出部22が上端部に位置する角度で、退避位置T2で停止している。寝台部10の天板11上に被検体Pが載置される。そして、被検体Pの例えば外科治療を行うために、操作部80から検査開始の入力が行われると、X線診断装置100は、動作を開始する(ステップS1)。
【0042】
システム制御部90は、撮影部20、移動機構部30、位置検出部40、高電圧発生部50、及び画像データ生成部60に検査を指示する。そして、操作部80からアーム23を退避位置T2から撮影位置T1へ移動させる入力が行われると、アーム移動機構32は、アーム23をL5方向へ移動して撮影位置T1で停止させる。次いで、被検体Pの関心部位Rの外科治療を行うために撮影部20で撮影が可能な位置へ天板11を移動させる入力が操作部80から行われると、天板移動機構31は、天板11を移動して撮影位置T1のアイソセンタCに被検体Pの関心部位Rを位置合わせすることにより、関心部位RにX線の照射が可能な撮影位置T3で天板11を停止させる。位置記憶部43は、アーム位置検出器42及び天板位置検出器41により検出されるアーム23及び天板11の1回目に停止した撮影位置T1,T3を記憶する(ステップS2)。
【0043】
次に、操作部80から例えば透視開始の入力が行われると、高電圧発生部50は、透視用のX線を発生させるための高電圧をX線照射部21に供給する。X線照射部21は、撮影位置T3の天板11上に載置された被検体PにX線を照射する。X線検出部22は、被検体Pを透過したX線を検出してX線投影データを生成する。画像データ生成部60は、X線検出部22で生成されたX線投影データから画像データを生成する。表示部70は、画像データ生成部60で生成された画像データを表示する。
【0044】
検査開始の入力が行われた後の外科治療中において、操作部80から例えば複数回に亘って天板11を複数の撮影位置T3へ移動させる入力が行われると、天板移動機構31が天板11を移動することにより、位置記憶部43は、1回目の撮影位置T1に関連付けて天板位置検出器41により複数回に亘って検出される天板11の撮影位置T3を記憶する(ステップS3)。
【0045】
次に、撮影を一旦中止して外科治療を行うために、操作部80から透視停止の入力が行われた後にアーム23を退避位置T2へ移動させる入力が行われると、アーム移動機構32は、アーム23を撮影位置T1からL6方向へ移動して退避位置T2で停止させる。アーム23が退避位置T2で停止した後、位置記憶部43は、アーム位置検出器42により検出される退避位置T2を記憶する(ステップS4)。
【0046】
次いで、被検体Pの起倒方向における位置を変更するために、天板11を起倒方向へ移動させ、所望の治療位置で停止させるための入力が操作部80から行われると、機構制御部33は、起倒方向へ移動させる入力に応じて、被検体Pの検査中に位置記憶部43に記憶された撮影位置T1,T3及び退避位置T2、並びに天板位置検出器41から出力される天板11の位置に基づいて、天板移動機構31を制御する。
【0047】
そして、アーム23が退避位置T2で停止している場合、被検体Pが載置された撮影位置T3の天板11を、この天板11の撮影位置T3に関連付けて位置記憶部43に記憶された撮影位置T1におけるアーム23のアイソソセンタC位置に対応する被検体Pの部位の上下方向における位置を維持するように、起倒方向及び上下方向へ移動させる。そして、治療位置で停止させる(ステップS5)。
【0048】
なお、位置記憶部43に複数の撮影位置T1が記憶されている場合、最新の撮影位置T1におけるアーム23のアイソソセンタC位置に対応する被検体Pの部位の上下方向における位置を維持するように、撮影位置T3の天板11を起倒方向及び上下方向へ移動させるように実施してもよい。
【0049】
図5は、治療位置で停止した天板11の一例を示した図である。この天板11は、位置記憶部43に記憶された最新の撮影位置T3から例えばR1方向へ角度θ1移動され、被検体Pの関心部位Rが最新の撮影位置T1のアイソセンタCと同じ高さとなる治療位置T4で停止している。
【0050】
ここで、図5に示した撮影位置T3の天板11をR1方向へ移動して治療位置T4で停止させる機構制御部33の制御の詳細について説明する。
操作部80から検査開始の入力が行なわれる前、又は検査終了の入力が行われた後の待機中に、天板11をR1方向へ角度θ1移動させる入力が行われると、図6に示すように、天板移動機構31の起倒駆動機構312が第1の支持体121を回動駆動することにより、撮影位置T1のアイソセンタCから離れた位置に配置される天板11を短手方向に平行な軸を回動軸として回動する。この回転により、天板11をR1方向へ移動する。このため、被検体Pの関心部位RがL4方向へ距離H1移動した位置で停止することになる。
【0051】
従って、機構制御部33は、天板11をR1方向へ移動させる入力に応じて、天板11を一定の速度でR1方向及びL3方向へ移動させる。また、R1方向へ移動させるタイミングと同じタイミングでL3方向へ移動させる。更に、R1方向へ角度θ1移動させる時間と同じ時間をかけてL3方向へ距離H1移動させる。そして、治療位置T4で停止させる。
【0052】
このように、位置記憶部43に撮影位置T1,T3及び退避位置T2を記憶させることにより、アーム23を退避位置T2へ移動させた後の天板11を起倒方向に移動させる入力に応じて、撮影位置T3における被検体Pの関心部位Rの高さをほぼ一定に保った状態で、天板11を起倒方向に移動させることができる。これにより、天板11を上下方向に移動させて高さの調整を行う入力を必要としないため、X線診断装置100の操作者の作業を軽減することができる。
【0053】
なお、被検体Pの検査中に位置記憶部43に同じ撮影位置T3が複数含まれている場合、停止した回数が最も多い撮影位置T3へ天板11を移動し、移動した撮影位置T3における天板11を起倒方向及び上下方向へ移動させ、治療位置で停止させるように実施してもよい。
【0054】
また、操作部80から入力された検査情報を位置記憶部43に記憶させ、検査情報に含まれる検査部位、年齢、身長等に基づいて被検体Pの関心部位Rに当たる位置を決定し、決定した位置の高さを変えることなく、天板11を起倒方向に移動させるように実施してもよい。
【0055】
撮影を再開するために、操作部80からアーム23を撮影位置T1へ移動させる入力が行われると、機構制御部33は、位置記憶部43に記憶された最新の撮影位置T1に関連する最新の撮影位置T3に基づいて、天板移動機構31を制御する。そして、アーム23を撮影位置T1へ移動させる入力に応じて、位置記憶部43に記憶された最新の撮影位置T1のアーム23に対して位置決めされたときの被検体Pの関心部位Rの上下方向に対する位置を維持するように、治療位置T4の天板11を起倒方向及び上下方向へ移動させ、位置記憶部43に記憶された最新の撮影位置T1に対応する最新の撮影位置T3で停止させる(図4のステップS6)。
【0056】
ここでは、機構制御部33は、アーム23を撮影位置T1へ移動させる入力に応じて、図5に示した治療位置T4の天板11を一定の速度でR2方向及びL4方向へ移動させる。また、R2方向へ移動させるタイミングと同じタイミングでL4方向へ移動させる。更に、R2方向へ角度θ1移動させる時間と同じ時間をかけてL4方向へ距離H1移動させ、図5に示した撮影位置T3で停止させる。位置記憶部43は、天板位置検出器41により検出される位置に基づいて撮影位置T3を記憶する。
【0057】
天板11が撮影位置T3で停止した後、アーム移動機構32は、アーム23を退避位置T2からL5方向へ移動して撮影位置T1で停止させる。アーム23が撮影位置T1で停止した後、位置記憶部43は、アーム位置検出器42により検出される位置に基づいて撮影位置T1を記憶する。
【0058】
このように、検査中において、退避位置T2のアーム23を撮影位置T1へ戻す場合、撮影位置T1におけるアーム23に対して位置決めされたときの最新の撮影位置T3へ天板11を移動させることができる。
【0059】
次に、操作部80から例えば透視開始の入力が行われ、外科治療が終了して透視停止の入力が行われる。次いで、アーム23を退避位置T2へ移動させる入力が行われると、アーム移動機構32は、アーム23を撮影位置T1からL6方向へ移動して退避位置T2で停止させる。
【0060】
そして、操作部80から検査終了の入力が行われると、システム制御部90が撮影部20、移動機構部30、位置検出部40、高電圧発生部50、及び画像データ生成部60に検査の終了を指示することにより、X線診断装置100は動作を終了する(図4のステップS7)。
【0061】
以上述べた実施形態によれば、位置記憶部43に撮影位置T1,T3及び退避位置T2を記憶させることにより、アーム23を退避位置T2へ移動させた後の天板11を起倒方向に移動させる入力に応じて、天板11を起倒方向及び上下方向へ移動させることにより、撮影位置T3における被検体Pの関心部位Rの高さをほぼ一定に保った状態で天板11を起倒方向へ移動させることができる。また、検査中に退避位置T2のアーム23を撮影位置T1へ戻す場合、最新の撮影位置T1におけるアーム23に対して位置決めされたときの最新の撮影位置T3へ天板11を移動させることができる。
【0062】
これにより、天板11を上下方向に移動させて高さの調整を行う入力を必要としないため、操作者の作業を軽減することができる。
【0063】
なお、上記実施形態に限定されるものではなく、図4のステップS5において、起倒方向へ移動させる入力に応じて、位置記憶部43に記憶された最新の撮影位置T1におけるアーム23に対して位置決めされた被検体Pの関心部位Rの上下方向及びアーム23の遠近方向における位置を維持するように、位置記憶部43に記憶された最新の撮影位置T3における天板11を起倒方向、上下方向及び長手方向へ移動させるように実施してもよい。
【0064】
この場合、待機中に天板11をR1方向へ角度θ1移動させる入力が操作部80から行われると、図7に示すように、R1方向へ角度θ1移動した位置で停止する天板11の長手方向に平行な関心部位Rを通る直線P1と、アイソセンタCを通る上下方向に延びた直線C1との交点DがアイソセンタCからL4方向へ距離H1よりも長い距離H2移動した位置で停止することになる。また、直線P1上の交点Dと関心部位R間は距離H3となる。
【0065】
従って、機構制御部33は、天板11をR1方向へ移動させる入力に応じて、天板11を一定の速度でR1方向、L3方向及びL1方向へ移動させる。また、R1方向へ移動させるタイミングと同じタイミングでL3方向及びL1方向へ移動させる。更に、R1方向へ角度θ1移動させる時間と同じ時間をかけてL3方向へ距離H1移動させると共にL1方向へ距離H3移動させる。そして、図8に示すように、撮影位置T1のアイソセンタCと関心部位Rの上下方向及びアーム23の遠近方向における位置が同じになる治療位置T5で停止させる。
【0066】
このように、位置記憶部43に撮影位置T1,T3及び退避位置T2を記憶させることにより、アーム23を退避位置T2へ移動した後の天板11を起倒方向に移動させる入力に応じて、天板11を起倒方向、上下方向及び長手方向へ移動させることにより、最新の撮影位置T3における天板11上の被検体Pの関心部位Rの高さをほぼ一定に保った状態で天板11を移動させることができる。これにより、天板11を上下方向に移動させて高さの調整を行う入力を必要としないため、操作者の作業を軽減することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
10 寝台部
11 天板
12 天板支持体
20 撮影部
21 X線照射部
22 X線検出部
30 移動機構部
31 天板移動機構
32 アーム移動機構
33 機構制御部
40 位置検出部
41 天板位置検出器
42 アーム位置検出器
43 位置記憶部
50 高電圧発生部
60 画像データ生成部
70 表示部
80 操作部
90 システム制御部
100 X線診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が載置される天板及びこの天板を長手方向、起倒方向及び上下方向へ移動可能に支持する天板支持体と、
前記天板上に載置された前記被検体にX線を照射するX線管、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器、並びに前記X線管及び前記X線検出器を前記天板支持体に対して遠近方向へ移動可能に保持するアームと、
前記被検体にX線の照射が可能な前記アームの撮影位置及び前記天板の撮影位置を関連付けて記憶する位置記憶部と、
前記アームが前記天板支持体から遠方へ移動して、前記天板上の前記被検体にX線の照射が不可能な退避位置で停止している場合、前記被検体が載置された前記撮影位置の前記天板を、この天板の撮影位置に関連付けて前記位置記憶部に記憶された撮影位置の前記アームの所定の位置に対応する前記被検体の部位の少なくとも上下方向における位置を維持するように、起倒方向及び上下方向へ移動させる機構制御部とを
備えたことを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記機構制御部は、前記被検体の部位の上下方向及び前記アームの遠近方向における位置を維持するように、起倒方向、上下方向及び長手方向へ移動させることを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記アームが前記退避位置で停止している場合の前記天板の撮影位置は、前記位置記憶部に記憶された撮影位置の内の最新の位置であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記アームが前記退避位置で停止している場合の前記天板の撮影位置は、前記位置記憶部に記憶された複数の撮影位置の内の停止した回数が最も多い撮影位置であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記機構制御部は、前記退避位置で停止している前記アームの前記撮影位置への移動に応じて、前記アームが前記撮影位置へ移動される前に、前記位置記憶部に記憶された最新の撮影位置へ前記天板を移動させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239769(P2012−239769A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115238(P2011−115238)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】