説明

X線遮蔽装置及びそれを用いたX線異物検出システム

【課題】 機長の増大を抑えるとともに、被検査物の形状にかかわらず被検査物が転倒することなく安定して搬送できるX線遮蔽装置及びそれを用いたX線異物検出システムを提供する。
【解決手段】 X線遮蔽装置2は、搬送コンベア21とX線遮蔽カバー22とからなるX線遮蔽トンネル20と、搬送コンベア21の始端から中途にわたって設けられ、被検査物を斜め方向に案内する第1の案内部材25と、搬送コンベア21の中途から終端にわたって設けられ、被検査物を斜め方向に案内する第2の案内部材26と、X線遮蔽トンネル20の長手方向の中程に、X線遮蔽トンネル20の幅方向の一端側から幅方向の中程まで延びて設けられ、X線を遮蔽する第1の遮蔽板23と、X線遮蔽トンネル20の長手方向の一端側に、X線遮蔽トンネル20の幅方向の他端側から幅方向の中程まで延びて設けられ、X線を遮蔽する第2の遮蔽板24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線異物検出装置の搬入口と搬出口の外側に配置されるX線遮蔽装置及びそれを用いたX線異物検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品等の生産ラインにおいて、食品等の被検査物に対し異物が混入していないかを検査するために、X線異物検出装置が用いられている。
【0003】
従来のX線異物検出装置では、例えば、筐体の搬入口から搬出口まで被検査物を水平方向に搬送するコンベアが設けられ、筐体内をコンベアで搬送しながら被検査物にX線を照射して、被検査物内の異物を検出するように構成されている。そして、筐体の搬入口及び搬出口から外部へのX線の漏洩を防止するために、例えば鉛を含有するゴム材質のもので形成されたゴムのれんを搬送方向に複数枚設けた構成のものがある。
【0004】
また、特許文献1には、上記ゴムのれんを用いずに、筐体の搬入口から搬出口までに傾斜を変えた3つのコンベアを搬送方向に並べて配した構成が開示されている。3つのコンベアのうち中央のコンベアは、搬入口及び搬出口より高い位置で被検査物を水平に搬送し、両側のコンベアのうちの一方のコンベアは、搬入口からそれより高い位置の中央のコンベアへ被検査物を搬送するために上り勾配を有するように傾斜して配置され、他方のコンベアは、中央のコンベアから搬送されてきた被検査物をその中央のコンベアより低い位置の搬出口へ搬送するために下り勾配を有するように傾斜して配置されている。この場合、X線の照射が中央のコンベア上の被検査物に対して行われ、中央のコンベアを搬入口及び搬出口より高い位置に配置することにより、X線の外部漏洩を防止するように構成されている。
【0005】
また、特許文献2には、X線異物検出装置の内部に、垂直方向に立設された壁装置を配置し、この壁装置によって、コンベアで搬送される被検査物をコンベアの搬送方向に対して斜め方向に案内するとともに、X線を遮蔽して外部への漏洩を防止するようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−250992号公報
【特許文献2】特開2003−166952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のゴムのれんを用いたX線異物検出装置では、例えば被検査物が軽量のものや背の高いものの場合には、被検査物がゴムのれんに引っかかって停止したり、転倒しやすくなり、安定な搬送を行えないという問題がある。そこで、ゴムのれんを設けずに、X線異物検出装置の筐体の搬入口及び搬出口のそれぞれの外側に、被検査物を搬送するコンベアをX線を遮蔽する遮蔽カバーで覆って構成されたX線遮蔽装置を配置したシステムがある。このシステムでは、X線の減衰距離を稼ぐために、X線遮蔽装置の機長(装置の長さ)が長くなるという問題がある。さらに、そのようなX線遮蔽装置をX線異物検出装置の両側に配置するため、システム全体の機長も増大するという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の構成では、3つのコンベアのうち両側のコンベアが傾斜して配置されているため、被検査物が例えば背の高いものの場合には、被検査物が転倒しやすく、安定な搬送を行えないという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の構成においても、被検査物の形状によっては、被検査物が不安定な状態で搬送され、安定な搬送を行えないという問題がある。すなわち、垂直方向に立設された壁装置によって被検査物が案内されるため、被検査物が例えば背の高いカップ麺のように、下面(底面)より上面の方が広い逆円錐台のような形状の場合には、上面の縁の部分が壁装置に接触して案内されるので、被検査物が不安定な状態となって転倒しやすくなる。したがって、適用される被検査物の形状が限られるという問題がある。
【0010】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、機長の増大を抑え、かつX線の外部漏洩を防止できるとともに、被検査物の形状にかかわらず被検査物が転倒することなく安定した状態で搬送することができるX線遮蔽装置及びそれを用いたX線異物検出システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のX線遮蔽装置は、X線を遮蔽する筐体の搬入口から搬入される被検査物を前記筐体の搬出口まで搬送する搬送装置を有し、前記搬送装置により前記筐体内を搬送中の被検査物にX線を照射し、被検査物に対し異物の有無の検査を行うX線異物検出装置の前記筐体の搬入口または搬出口の外側に設けられるX線遮蔽装置であって、被検査物を始端から終端に向かう一水平方向に搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアの両側側方及び上方を覆うように設けられX線を遮蔽するX線遮蔽カバーとからなるX線遮蔽トンネルと、前記搬送コンベアの前記始端から前記始端と前記終端との間の中途にわたって、前記搬送コンベアの幅方向の一端から他端の方向へ斜めに延びて設けられ、前記搬送コンベアによって搬送される被検査物を搬送方向に対し斜め方向に案内する第1の案内部材と、前記搬送コンベアの前記始端と前記終端との間の中途から前記終端にわたって、前記搬送コンベアの幅方向の前記他端から前記一端の方向へ斜めに延びて設けられ、前記搬送コンベアによって搬送される被検査物を搬送方向に対し斜め方向に案内する第2の案内部材と、前記X線遮蔽トンネル内であって前記X線遮蔽トンネルの長手方向の一端と他端との間の中途に、前記X線遮蔽トンネルの幅方向の一端側から幅方向の一端と他端との間の中途まで延びて、かつ前記搬送コンベアに近接して立設され、X線を遮蔽する第1の遮蔽板と、前記X線遮蔽トンネル内であって前記X線遮蔽トンネルの長手方向の一端側に、前記X線遮蔽トンネルの幅方向の他端側から幅方向の一端と他端との間の中途まで延びて、かつ前記搬送コンベアに近接して立設され、X線を遮蔽する第2の遮蔽板とを備えている。
【0012】
この構成によれば、X線遮蔽トンネル内を通過するX線の一部が第1の遮蔽板によって遮蔽され、この第1の遮蔽板によって遮蔽されなかったX線が第2の遮蔽板によって遮蔽される。このような第1及び第2の遮蔽板を設けることによって、機長(装置の長さ)の増大を抑え、かつX線の外部漏洩を防止できる。また、第1及び第2の案内部材を、被検査物の形状に応じて配設することが可能であり、それにより被検査物の形状にかかわらず被検査物が転倒することなく安定した状態で搬送することが可能になる。
【0013】
また、前記第1及び第2の遮蔽板の各々は、前記搬送コンベアの搬送方向と直交するように配置されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1及び第2の各遮蔽板を小面積の遮蔽板で構成することができる。
【0015】
また、前記第1及び第2の案内部材の各々は、被検査物の側面が前記第1及び第2の案内部材に沿って被検査物が案内されるように配設されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、被検査物の側面形状に応じた第1及び第2の案内部材を用い、その案内部材を被検査物の側面が沿った状態で被検査物が案内されるように配設することにより、被検査物の形状にかかわらず被検査物を安定した状態で搬送することが可能になる。
【0017】
また、前記第1及び第2の案内部材の各々は、被検査物の側面が前記第1及び第2の案内部材に沿って被検査物が案内されるように配設された複数の板状部材からなるものでもよい。
【0018】
この構成によれば、第1及び第2の案内部材の各々が複数の板状部材で構成され、被検査物はその側面が複数の各板状部材と面接触あるいは線接触した状態で案内されるため、例えば、被検査物の背が高く、その側面が傾斜面であっても被検査物を安定した状態で搬送することが可能になる。
【0019】
また、前記第1及び第2の案内部材の各々は、被検査物の側面が前記第1及び第2の案内部材に沿って被検査物が案内されるように配設された複数の棒状部材からなるものでもよい。
【0020】
この構成によれば、第1及び第2の案内部材の各々が複数の棒状部材で構成され、被検査物はその側面が複数の各棒状部材と線接触あるいは点接触した状態で案内されるため、例えば、被検査物の背が高く、その側面が傾斜面や曲面等のどのような形状であっても被検査物を安定した状態で搬送することが可能になる。
【0021】
また、本発明のX線異物検出システムは、X線を遮蔽する筐体の搬入口から搬入される被検査物を前記筐体の搬出口まで搬送する搬送装置を有し、前記搬送装置により前記筐体内を搬送中の被検査物にX線を照射し、被検査物に対し異物の有無の検査を行うX線異物検出装置と、前記搬入口の外側に設けられ、前記搬送装置へ被検査物を搬送する搬入側装置と、前記搬出口の外側に設けられ、前記搬送装置から受けとった被検査物を搬送する搬出側装置とを備え、前記搬入側装置には、上記本発明のX線遮蔽装置であって、第2の遮蔽板がX線遮蔽トンネルの入口側に配置された前記X線遮蔽装置を用い、前記搬出側装置には、上記本発明のX線遮蔽装置であって、第2の遮蔽板がX線遮蔽トンネルの出口側に配置された前記X線遮蔽装置を用いている。
【0022】
この構成によれば、上記本発明のX線遮蔽装置を用いているので、本発明のX線遮蔽装置によって得られる効果を得ることができる。また、X線異物検出システム全体の機長の増大も抑えられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以上に説明した構成を有し、機長の増大を抑え、かつX線の外部漏洩を防止できるとともに、被検査物の形状にかかわらず被検査物が転倒することなく安定した状態で搬送することができるX線遮蔽装置及びそれを用いたX線異物検出システムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明の実施形態のX線遮蔽装置を用いたX線異物検出システムを上から見た平面図であり、(b)は、同X線異物検出システムの正面図であり、(c)は、同X線異物検出システムにおいて被検査物の搬入側に設置されたX線遮蔽装置を搬入側から見た図であり、(d)は、同X線異物検出システムにおいて被検査物の搬出側に設置されたX線遮蔽装置を搬出側から見た図である。
【図2】(a)〜(e)は、それぞれ被検査物及び案内部材の一例を示す図である。
【図3】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の実施形態における遮蔽板等の配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0026】
(実施形態)
図1(a)は、本発明の実施形態のX線遮蔽装置を用いたX線異物検出システムを上から見た平面図である。図1(b)は、同X線異物検出システムの正面図である。図1(c)は、同X線異物検出システムにおいて被検査物の搬入側に設置されたX線遮蔽装置2を図1(b)の矢印a方向から見た図であり、図1(d)は、同X線異物検出システムにおいて被検査物の搬出側に設置されたX線遮蔽装置3を図1(b)の矢印b方向から見た図である。
【0027】
本実施形態におけるX線異物検出システムは、X線異物検出装置1と、その両側に配置されたX線遮蔽装置2,3とを備えている。
【0028】
X線異物検出装置1は、X線を遮蔽する筐体11内に、図1(a)の矢印cで示す水平方向に被検査物を搬送する搬送コンベア12と、X線を照射するX線照射器13と、X線を検出する例えばX線ラインセンサからなるX線検出器14と、マイクロコンピュータ等によって構成される制御装置16とを備えている。さらに、筐体11の前面側に、画面に透過X線画像等を表示するとともにX線異物検出装置を操作するための操作表示器15を備えている。搬送コンベア12とX線照射器13とX線検出器14と操作表示器15とは、制御装置16によって制御される。また、X線遮蔽装置2,3の搬送コンベア21,31も制御装置16によって制御される。
【0029】
このX線異物検出装置1の筐体11には、被検査物の搬入口E及び搬出口Lとなる例えば矩形の開口が形成されている。
【0030】
搬送コンベア12は、被検査物を筐体11の搬入口Eから搬出口Lまで水平方向に搬送し、その搬入端部と搬出端部とが筐体11から突出するように配設されている。この搬送コンベア12の搬入端部及び搬出端部は、それぞれ被検査物の搬入口E及び搬出口Lとなる開口の下方に、その開口と連続して筐体11に設けられた開口から突出している。
【0031】
X線照射器13は、筐体11内の上部に配置され、下方に向けてスリットを介してX線を照射する。スリットを介したX線は、搬送コンベア12上では、所定の幅及び長さを有するライン状のX線照射領域Aに照射される。
【0032】
X線検出器14は、被検査物Wが搬送コンベア12で搬送されてX線照射領域Aを通過する際に、被検査物Wを透過するX線を検出し、その検出信号であるX線透過信号を制御装置16へ出力する。
【0033】
制御装置16では、X線検出器14から入力されるX線透過信号を画像処理して透過X線画像データを生成する。さらに、制御装置16では生成した透過X線画像データに基づいて被検査物に異物が含まれるか否かの判定を行い、異物が含まれない場合はその被検査物を良品と判定し、含まれる場合には不良品と判定する。また、制御装置16は、操作表示器15の画面に透過X線画像を表示させるとともに、良品か不良品かの判定結果等を表示させる。
【0034】
次に本実施形態のX線遮蔽装置2,3について説明する。一方のX線遮蔽装置2は、被検査物の搬入側すなわちX線異物検出装置1の被検査物の搬入口Eの外側に設置されている。このX線遮蔽装置2は、X線異物検出装置1の搬送コンベア12と同じ水平方向に被検査物を搬送する搬送コンベア21と、この搬送コンベア21を覆うように配設されX線を遮蔽するX線遮蔽カバー22と、このX線遮蔽カバー22に図示しない取付手段によって取り付けられX線を遮蔽する遮蔽板23,24と、同X線遮蔽カバー22に図示しない取付手段によって取り付けられ被検査物を案内する案内部材25,26と、X線遮蔽カバー22とX線異物検出装置1の筐体11とを連結するX線遮蔽カバー27とを備えている。搬送コンベア21及びX線遮蔽カバー22は、4本の脚部28によって支持されている。また、X線遮蔽カバー27は、X線遮蔽カバー22と筐体11との隙間からX線が外部へ漏洩しないように設けられている。
【0035】
X線遮蔽カバー22は、搬送コンベア21の両側側方及び上方を覆うように断面U字形状であり、図1(c)に示すように、搬送コンベア21の幅方向に対向する2つの側面部22a、22bと、この2つの側面部22a、22bの上端を連結する上面部22cとを有する。
【0036】
搬送コンベア21とX線遮蔽カバー22とでX線遮蔽トンネル20が構成され、このX線遮蔽トンネル20内に遮蔽板23,24と案内部材25,26とが配設されている。
【0037】
案内部材25は、搬送コンベア21の始端(搬送始端)から、始端と終端(搬送終端)との間の中途にかけて、搬送コンベア21の幅方向の一端から他端の方向へ斜めに延びて設けられ、搬送コンベア21によって搬送される被検査物を搬送コンベア21の搬送方向に対し斜め方向に案内するためのもので、例えば細長い板状部材で構成されている。
【0038】
また、案内部材26は、搬送コンベア21の始端と終端との間の中途から終端にかけて、搬送コンベア21の幅方向の他端から一端の方向へ斜めに延びて設けられ、搬送コンベア21によって搬送される被検査物を搬送コンベア21の搬送方向に対し斜め方向に案内するためのもので、例えば細長い板状部材で構成されている。
【0039】
遮蔽板23は、X線遮蔽トンネル20の長手方向の一端と他端との間の中途に、X線遮蔽トンネル20の幅方向の一端側から幅方向の一端と他端との間の中途まで延びて、かつ搬送コンベア21に近接して立設され、X線遮蔽トンネル20内を通過するX線の一部を遮蔽するように設けられている。遮蔽板23の一方の側端部及び上端部はX線遮蔽カバー22の側面部22a及び上面部22cと隙間無く接続されている。
【0040】
また、遮蔽板24は、X線遮蔽トンネル20の長手方向の一端側(入口側)に、X線遮蔽トンネル20の幅方向の他端側から幅方向の一端と他端との間の中途まで延びて、かつ搬送コンベア21に近接して立設され、X線遮蔽トンネル20内を通過し遮蔽板23によって遮蔽されなかったX線を遮蔽するように設けられている。遮蔽板24の一方の側端部及び上端部はX線遮蔽カバー22の側面部22b及び上面部22cと隙間無く接続されている。
【0041】
これら遮蔽板23、24は、X線照射領域Aを通過する被検査物に反射されて、搬入口Eから筐体11の外部へ漏れるX線を遮蔽するように配設されている。
【0042】
他方のX線遮蔽装置3は、被検査物の搬出側すなわちX線異物検出装置1の被検査物の搬出口Lの外側に設置されている。このX線遮蔽装置3は、X線異物検出装置1の搬送コンベア12と同じ水平方向に被検査物を搬送する搬送コンベア31と、この搬送コンベア31を覆うように配設されX線を遮蔽するX線遮蔽カバー32と、このX線遮蔽カバー32に図示しない取付手段によって取り付けられX線を遮蔽する遮蔽板33,34と、同X線遮蔽カバー32に図示しない取付手段によって取り付けられ被検査物を案内する案内部材35,36と、X線遮蔽カバー32とX線異物検出装置1の筐体11とを連結するX線遮蔽カバー37とを備えている。搬送コンベア31及びX線遮蔽カバー32は、4本の脚部38によって支持されている。また、X線遮蔽カバー37は、X線遮蔽カバー32と筐体11との隙間からX線が外部へ漏洩しないように設けられている。
【0043】
X線遮蔽カバー32は、搬送コンベア31の両側側方及び上方を覆うように断面U字形状であり、図1(d)に示すように、搬送コンベア31の幅方向に対向する2つの側面部32a、32bと、この2つの側面部32a、32bの上端を連結する上面部32cとを有する。
【0044】
搬送コンベア31とX線遮蔽カバー32とでX線遮蔽トンネル30が構成され、このX線遮蔽トンネル30内に遮蔽板33,34と案内部材35,36とが配設されている。
【0045】
案内部材35,36は、搬入側のX線遮蔽装置2の案内部材25,26と同様のものであり、同様に配設されている。
【0046】
また、遮蔽板33も、搬入側のX線遮蔽装置2の遮蔽板23と同様のものであり、同様に配設されている。すなわち、遮蔽板33は、X線遮蔽トンネル30の長手方向の一端と他端との間の中途に、X線遮蔽トンネル30の幅方向の一端側から幅方向の一端と他端との間の中途まで延びて、かつ搬送コンベア31に近接して立設され、X線遮蔽トンネル30内を通過するX線の一部を遮蔽するように設けられている。遮蔽板33の一方の側端部及び上端部はX線遮蔽カバー32の側面部32a及び上面部32cと隙間無く接続されている。
【0047】
一方、搬入側のX線遮蔽装置2の遮蔽板24がX線遮蔽トンネル20の入口側(搬送コンベア21の始端側)に配設されているのに対し、搬出側のX線遮蔽装置3の遮蔽板34はX線遮蔽トンネル30の出口側(搬送コンベア31の終端側)に配設されている。すなわち、遮蔽板34は、X線遮蔽トンネル30の長手方向の一端側(出口側)に、X線遮蔽トンネル30の幅方向の他端側から幅方向の一端と他端との間の中途まで延びて、かつ搬送コンベア31に近接して立設され、X線遮蔽トンネル30内を通過し遮蔽板33によって遮蔽されなかったX線を遮蔽するように設けられている。遮蔽板34の一方の側端部及び上端部はX線遮蔽カバー32の側面部32b及び上面部32cと隙間無く接続されている。
【0048】
これら遮蔽板33、34は、X線照射領域Aを通過する被検査物に反射されて、搬出口Lから筐体11の外部へ漏れるX線を遮蔽するように配設されている。
【0049】
X線遮蔽カバー22、27、32、37及び遮蔽板23,24,33,34は、例えばステンレス鋼板を用いて作製されている。また、案内部材25,26,35,36は、X線の遮蔽効果がないものでもよく、ここでは、例えばアクリル樹脂等の樹脂製のものを用いているが、例えばステンレス製のものでも構わない。
【0050】
各搬送コンベア21,31の搬送方向は、搬送コンベア12の搬送方向と同じ矢印cで示される水平方向である。また、各搬送コンベア12,21,31はベルトコンベアで構成されている。
【0051】
被検査物Wは、図1(a)に示すように、図示しない前段の外部の搬送装置によって搬送コンベア21上へ搬送されてくると、搬送コンベア21上を、まず案内部材25に沿って斜めに搬送され、さらに案内部材26に沿って斜めに搬送されて搬送コンベア12上へ搬送される。そして搬送コンベア12上を搬送方向と同方向に搬送されて搬送コンベア31上へ搬送される。そして搬送コンベア31上を、まず案内部材35に沿って斜めに搬送され、さらに案内部材36に沿って斜めに搬送されて図示しない後段の外部の搬送装置へ渡される。
【0052】
搬入側のX線遮蔽装置2において、案内部材25は、遮蔽板24を避けて搬送コンベア21の始端へ搬送されてきた被検査物Wが遮蔽板23を避けて案内されるように設けられ、案内部材26は被検査物Wが搬入口Eへ案内されるように設けられている。被計量物Wが案内部材25,26に沿ってスムーズに案内されるためには、図1(a)のように、遮蔽板23を、X線遮蔽トンネル20の長手方向の一端と他端との間の中央あるいは中央付近に配設し、遮蔽板24を、X線遮蔽トンネル20の入口あるいは入口付近に配設することが好ましい。また、搬出側のX線遮蔽装置3において、案内部材35は被検査物Wが遮蔽板33を避けて案内されるように設けられ、案内部材36は被検査物Wが遮蔽板34を避けて搬送コンベア31の終端へ案内されるように設けられている。被計量物Wが案内部材35,36に沿ってスムーズに案内されるためには、図1(a)のように、遮蔽板33を、X線遮蔽トンネル30の長手方向の一端と他端との間の中央あるいは中央付近に配設し、遮蔽板34を、X線遮蔽トンネル30の出口あるいは出口付近に配設することが好ましい。
【0053】
図2(a)〜(e)は、それぞれ被検査物W及び案内部材25,26,35,36の一例を示す図である。図2(a)〜(e)において、紙面と垂直な方向が被検査物の案内方向であり、各案内部材40〜45は被検査物の案内方向に延びて配設されている。
【0054】
図2(a)の場合、比較的背の低い安定感のある被検査物W0であり、案内部材40として、図1に示す案内部材25,26,35,36と同様の板状のものを用いている。
【0055】
図2(b)、(c)の場合、被検査物W1が例えばアルミ缶に入ったジュース等の飲料水あるいはアルコール飲料等の背の高い円柱状のものであり、図2(b)では、2本の幅の狭い板状部材を案内部材41として用い、図2(c)では、3本の細い棒状部材を案内部材42として用いている。
【0056】
図2(d)の場合、被検査物W2が例えばカップ麺等の逆円錐台形状のものであり、2本の細い棒状部材を案内部材43として用いている。
【0057】
図2(e)の場合、被検査物W3が徳利形状のものであり、2本の細い棒状部材を案内部材44として用いている。
【0058】
なお、背の高い被検査物であっても、被検査物W1、W2のように側面の断面が直線状である場合には、小さなローラコンベアを案内部材45(図2(d)参照)として用い、被検査物の側面に沿うように配置してもよい。
【0059】
本実施形態では、被検査物の形状、特に被検査物の側面形状に応じた案内部材を用い、その案内部材を被検査物の側面が沿った状態で被検査物が案内されるように配設することにより、様々な形状の被検査物に対応することができる。すなわち、本実施形態では、被検査物の側面と面接触、線接触あるいは点接触した状態で被検査物を案内するように、被検査物の側面形状に適した案内部材を選択し配設することにより、被検査物が転倒することなく、安定した状態で被検査物を案内することが可能である。
【0060】
なお、図2(a)のように背の低い被検査物であれば、案内部材40を鉛直方向に立った状態として設けても被検査物を案内することが可能であるが、案内部材40を被検査物W0の側面に沿うように配設することにより、より安定した状態で被検査物を案内することが可能である。また、図2(a)のように背の低い被検査物であれば、板状の案内部材40に代えて、1本の棒状部材を案内部材として被検査物W0の側面に沿うように配設してもよい。図2(b)〜(e)のように、板状部材あるいは棒状部材を複数配設して案内部材を構成することにより、背の高い被検査物であっても、安定した状態で被検査物を案内することができる。
【0061】
次に、図3(a)〜(d)はそれぞれ、本実施形態における遮蔽板等の配置の一例を示す図である。
【0062】
図3(a)は、図1に示された構成と同様の場合であり、X線照射領域Aに照射され、被検査物の搬入側へ反射されたX線は、例えば矢印X1〜X4の方向に進行する。矢印X1、X2の方向に進行するX線は、遮蔽板23が無ければ外部へ漏洩するが、ここでは遮蔽板23が有るので漏洩しない。また、矢印X4の方向に進行するX線は、遮蔽板24が無ければ外部へ漏洩するが、ここでは遮蔽板24が有るので漏洩しない。また、矢印X3の方向に進行するX線は、X線異物検出装置1の搬入口Eが、例えば図3(b)のように広い場合には、外部へ漏洩するが、ここでは、筐体11に遮蔽されて漏洩しない。したがって、X線照射領域Aから被検査物の搬入側へ進行するX線の外部漏洩を防止することができる。
【0063】
また、X線照射領域Aから被検査物の搬出側へ反射されたX線は、例えば矢印X5〜X8の方向に進行する。矢印X5、X6の方向に進行するX線は、遮蔽板33が無ければ外部へ漏洩するが、ここでは遮蔽板33が有るので漏洩しない。また、矢印X8の方向に進行するX線は、遮蔽板34が無ければ外部へ漏洩するが、ここでは遮蔽板34が有るので漏洩しない。また、矢印X7の方向に進行するX線は、X線異物検出装置1の搬出口Lが、例えば図3(b)のように広い場合には、外部へ漏洩するが、ここでは、筐体11に遮蔽されて漏洩しない。したがって、X線照射領域Aから被検査物の搬出側へ進行するX線の外部漏洩を防止することができる。
【0064】
また、X線異物検出装置1の搬入口E及び搬出口Lの幅が広く、矢印X3、X7の方向に進行するX線が筐体11によって遮蔽されない場合には、例えば図3(b)のように遮蔽板23,33を少し前面側へ延設して遮蔽するようにしてもよい。あるいは、他方の遮蔽板24,34を少し背面側へ延設して遮蔽するようにしてもよい。また、他の方法として、図3(c)のように、遮蔽板24,34等と同様の遮蔽板51、52を配設し、矢印X3、X7の方向に進行するX線を遮蔽するようにしてもよい。遮蔽板51は、X線遮蔽トンネル20の出口側に設けられ、遮蔽板52は、X線遮蔽トンネル30の入口側に設けられている。
【0065】
要するに、X線遮蔽装置2,3には、X線異物検出装置1の搬入口E及び搬出口Lから漏洩されるX線を遮蔽し、外部へ漏洩されないように遮蔽板を配設すればよい。すなわち、搬入側のX線遮蔽装置2では、X線遮蔽トンネル20の入口から見て、搬入口Eを介してX線照射領域Aが見通せないように遮蔽板が配設されていればよく、搬出側のX線遮蔽装置3では、X線遮蔽トンネル30の出口から見て、搬出口Lを介してX線照射領域Aが見通せないように遮蔽板が配設されていればよい。
【0066】
なお、既存のX線異物検出装置には、例えば図3(b)のように、筐体11に幅の広い搬入口E及び搬出口Lが設けられ、その搬入口E及び搬出口Lの全面に、X線を遮蔽するために例えば鉛を含有するゴム材質のもので形成されたゴムのれんが配設され、ゴムのれんを押しのけて被検査物が搬送されるように構成されたものがある。図3(b)及び図3(c)の場合、X線異物検出装置1として、上記既存のX線異物検出装置から全てのゴムのれんを取り除くことにより、既存のX線異物検出装置を流用することができる。また、図3(a)の場合、必ずしも筐体11に設けられた開口によって搬入口E及び搬出口Lが形成されていなくてもよく、上記既存のX線異物検出装置から、図3(a)における搬入口E及び搬出口Lに対応する部分のゴムのれんを取り除いて、その取り除いた部分を搬入口E及び搬出口Lとすることにより、既存のX線異物検出装置を流用することができる。この場合、被検査物はゴムのれんに接触することなく、搬送される。
【0067】
なお、本実施形態では、例えば遮蔽板23,24、33,34を、それぞれX線遮蔽カバー22、32の一方または他方の側面から、搬送コンベア21、31の搬送方向に対し垂直方向に延びるように設けているが、例えば、図3(d)のように、搬送コンベア21,31の搬送方向に対し斜め方向に延びるように設けても構わない。但し、搬送コンベア21、31の搬送方向に対し垂直方向に延びるように設けた方が、遮蔽板の面積を小さくできる。
【0068】
本実施形態によれば、X線遮蔽装置2,3のそれぞれに少なくとも2つの遮蔽板を備えることにより、X線遮蔽装置2,3の機長の増大を抑えてX線の外部漏洩を防止することができる。また、被検査物の形状に応じた案内部材を設けることにより、被検査物の形状にかかわらず被検査物を安定した状態で搬送することができる。また、X線遮蔽装置2,3の機長の増大が抑えられるので、X線異物検出装置1を含むX線異物検出システム全体としての機長の増大も抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、機長の増大を抑え、かつX線の外部漏洩を防止できるとともに、被検査物の形状にかかわらず被検査物が転倒することなく安定した状態で搬送することができるX線遮蔽装置及びそれを用いたX線異物検出システム等として有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 X線異物検出装置
2,3 X線遮蔽装置
11 筐体
12 搬送コンベア
13 X線照射器
14 X線検出器
20,30 X線遮蔽トンネル
21,31 搬送コンベア
22,32 X線遮蔽カバー
23,24,33,34,51,52 遮蔽板
25,26,35,36,40〜45 案内部材
E 搬入口
L 搬出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を遮蔽する筐体の搬入口から搬入される被検査物を前記筐体の搬出口まで搬送する搬送装置を有し、前記搬送装置により前記筐体内を搬送中の被検査物にX線を照射し、被検査物に対し異物の有無の検査を行うX線異物検出装置の前記筐体の搬入口または搬出口の外側に設けられるX線遮蔽装置であって、
被検査物を始端から終端に向かう一水平方向に搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアの両側側方及び上方を覆うように設けられX線を遮蔽するX線遮蔽カバーとからなるX線遮蔽トンネルと、
前記搬送コンベアの前記始端から前記始端と前記終端との間の中途にわたって、前記搬送コンベアの幅方向の一端から他端の方向へ斜めに延びて設けられ、前記搬送コンベアによって搬送される被検査物を搬送方向に対し斜め方向に案内する第1の案内部材と、
前記搬送コンベアの前記始端と前記終端との間の中途から前記終端にわたって、前記搬送コンベアの幅方向の前記他端から前記一端の方向へ斜めに延びて設けられ、前記搬送コンベアによって搬送される被検査物を搬送方向に対し斜め方向に案内する第2の案内部材と、
前記X線遮蔽トンネル内であって前記X線遮蔽トンネルの長手方向の一端と他端との間の中途に、前記X線遮蔽トンネルの幅方向の一端側から幅方向の一端と他端との間の中途まで延びて、かつ前記搬送コンベアに近接して立設され、X線を遮蔽する第1の遮蔽板と、
前記X線遮蔽トンネル内であって前記X線遮蔽トンネルの長手方向の一端側に、前記X線遮蔽トンネルの幅方向の他端側から幅方向の一端と他端との間の中途まで延びて、かつ前記搬送コンベアに近接して立設され、X線を遮蔽する第2の遮蔽板と
を備えたX線遮蔽装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の遮蔽板の各々は、前記搬送コンベアの搬送方向と直交するように配置された、請求項1に記載のX線遮蔽装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の案内部材の各々は、被検査物の側面が前記第1及び第2の案内部材に沿って被検査物が案内されるように配設された、請求項1に記載のX線遮蔽装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の案内部材の各々は、被検査物の側面が前記第1及び第2の案内部材に沿って被検査物が案内されるように配設された複数の板状部材からなる、請求項1に記載のX線遮蔽装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の案内部材の各々は、被検査物の側面が前記第1及び第2の案内部材に沿って被検査物が案内されるように配設された複数の棒状部材からなる、請求項1に記載のX線遮蔽装置。
【請求項6】
X線を遮蔽する筐体の搬入口から搬入される被検査物を前記筐体の搬出口まで搬送する搬送装置を有し、前記搬送装置により前記筐体内を搬送中の被検査物にX線を照射し、被検査物に対し異物の有無の検査を行うX線異物検出装置と、
前記搬入口の外側に設けられ、前記搬送装置へ被検査物を搬送する搬入側装置と、
前記搬出口の外側に設けられ、前記搬送装置から受けとった被検査物を搬送する搬出側装置とを備え、
前記搬入側装置には、請求項1〜5のいずれかに記載のX線遮蔽装置であって、第2の遮蔽板がX線遮蔽トンネルの入口側に配置された前記X線遮蔽装置を用い、
前記搬出側装置には、請求項1〜5のいずれかに記載のX線遮蔽装置であって、第2の遮蔽板がX線遮蔽トンネルの出口側に配置された前記X線遮蔽装置を用いた、X線異物検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−102745(P2011−102745A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257518(P2009−257518)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】