説明

X線CT装置、医用画像処理装置、医用画像処理プログラム

【課題】観察対象となる器官を撮像した画像から他の要因を除去する場合に、該観察対象となる器官に対して影響を与えることなく効率良く他の要因を除去することを課題とする。
【解決手段】利用者がSVR画像上で指定した位置を含む連結領域を連結領域抽出部35gにより抽出した後、局所膨張部35hは、この連結領域に近接する膨張対象領域内の各膨張対象画素のうちそのCT値が閾値範囲内にあるものだけを膨張領域として特定して連結領域抽出部35gに通知し、通知を受けた連結領域抽出部35gが連結領域に膨張領域を加えた領域を連結領域とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体にX線を照射するとともに該被検体を透過したX線を検出して画像データを生成し、生成した画像データを表示するX線CT装置、医用画像処理装置、医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被検体に対してX線を照射し、この被検体を透過したX線のデータから投影画像を作成して表示するX線CT装置が知られている。かかるX線CT装置を用いて疾患のある血管を観察しようとする場合には、血管の状況をより良く視認できるようにするために、あらかじめ造影剤を投与した被検体の血管部位を撮像して造影血管の投影画像を画像表示部上に表示することになる。
【0003】
ところが、一般的に被検体内の血管は骨に沿って所在することが多いため、造影血管の投影画像内には、被検体の造影血管だけではなく骨部分が含まれることが多く、この骨部分が造影血管の状況を観察するうえでの阻害要因となっている。造影血管のCT値と骨のCT値は比較的近い値であるため、血管と骨が隣接する場合や表示角度によって血管と骨が重なる場合には、造影血管を観察するためのMIP(Maximum Intensity Projection)画像内に骨部分が画像化されて映り込むためである。
【0004】
このため、かかる造影血管の投影画像から骨部分を除外するいわゆる骨抜き作業と呼ばれる従来技術が知られている。この骨抜き作業では、まず造影血管を撮像した画像データから骨抜き作業用のSVR(Shaded Volume Rendering)画像データを作成し、このSVR画像データのCT値の閾値や不透明度(Opacity)を変えて適宜骨部分と造影血管部分を区別しつつ骨抜き作業を行うことになる。
【0005】
具体的には、まずSVR画像データ上のCT値の閾値又は不透明度を高く設定して骨を形成する硬骨のみを表示するとともに、この硬骨の連結領域を抽出して削除することで、硬骨部分を造影血管及び軟骨部分から分離する。その後、CT値の閾値又は不透明度を低く設定して軟骨が表示される状態で軟骨部分を領域抽出して削除することになる。なお、利用者により指定されたCT値の閾値又は不透明度を満たす画素で形成される画像データの領域は既存領域(又は現存領域)と呼ばれている。
【0006】
このように、かかる骨抜き作業では、一般的には硬骨部分を除去した後に軟骨部分を領域抽出することになるが、この軟骨部分は海綿状であり各部位に点在するため、各軟骨部分の領域抽出と削除の繰返作業に多大の労力を要しているのが実情である。
【0007】
このため、かかる軟骨を効率良く除去するための従来技術が知られており、例えば特許文献1には、利用者が除去対象となる硬骨を選択すると、該硬骨の領域を膨張処理(Dilate)して該硬骨に覆われた軟骨部分を硬骨と同時に除去し、もって軟骨の除去にかかる作業労力を低減する技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−68457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のものは、造影血管と骨が離れているような場合に効率的に軟骨部分を除去できるものの、造影血管と骨が近接又は連接している場合には骨抜き作業によって軟骨とともに観察対象である造影血管の一部についても除去されてしまうという問題がある。
【0010】
図11は、X線CT装置における従来の骨抜き技術による問題点を説明するための説明図である。骨の内部に所在する軟骨及び軟組織の周囲は硬骨で覆われているため、この骨に血管が近接した場合には、硬骨の一方側(図中に示す硬骨の下方)に軟骨が点在し、その逆側(図中に示す硬骨の上方)に造影血管が所在することになる。
【0011】
かかる状況下で硬骨の連結領域を膨張処理すると、連結領域は図中の下方に位置する軟骨側に膨張するだけでなく、図中の上方に位置する造影血管側にも膨張する。このため、同図のように造影血管が硬骨に隣接するような場合には、硬骨の連結領域を膨張させた領域が造影血管部分に浸食し、結果的に造影血管の一部が硬骨の除去時に除去されてしまう結果となる。
【0012】
そもそも、骨抜き作業とは、軟骨を効率良く除去するための作業であるので、上記特許文献1を用いて観察対象となる造影血管を除去したのでは、骨抜き作業の意味をなさなくなる。このため、実際問題として、造影血管が骨と近接しているような場合には、上記特許文献1に代表される膨張処理を行うことができず、従来通り利用者が手作業で軟骨領域を指定して軟骨を除去せざるを得ないのが実情である。
【0013】
以上のことから、造影血管を撮像した画像から骨抜き作業を行う場合に、観察対象となる造影血管の欠落を招くことなく、いかに効率良く軟骨部分を除去するかが重要な課題となっている。なお、かかる課題は、造影血管を観察対象として骨抜き作業を行う場合のみならず、造影血管以外の器官を観察対象として他の要因を除去する場合にも同様に生ずる課題である。
【0014】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、観察対象となる器官を撮像した画像から他の要因を除去する場合に、該観察対象となる器官の欠落を招くことなく効率良く他の要因を除去することができるX線CT装置、医用画像処理装置、医用画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、被検体にX線を照射するとともに該被検体を透過したX線を検出して画像データを生成し、生成した画像データを所定の表示部に表示するX線CT装置であって、前記表示部上で任意に指示される画像上の指示位置を含む連結領域を抽出する連結領域抽出手段と、前記連結領域抽出手段により抽出された連結領域に隣接する膨張対象領域を形成する各膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲内である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部とし、該膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲外である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部でないとして膨張領域を特定する膨張領域特定手段と、前記膨張領域特定手段により特定された膨張領域を前記連結領域抽出手段により抽出された連結領域とともに前記画像データから削除して該画像データを更新する更新手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6記載の本発明は、被検体を透過したX線の検出データから画像データを生成し、生成した画像データを所定の表示部に表示する医用画像処理装置であって、前記表示部上で任意に指示される画像上の指示位置を含む連結領域を抽出する連結領域抽出手段と、前記連結領域抽出手段により抽出された連結領域に隣接する膨張対象領域を形成する各膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲内である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部とし、該膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲外である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部でないとして膨張領域を特定する膨張領域特定手段と、前記膨張領域特定手段により特定された膨張領域を前記連結領域抽出手段により抽出された連結領域とともに前記画像データから削除して該画像データを更新する更新手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項7記載の本発明は、被検体を透過したX線の検出データから画像データを生成し、生成した画像データを所定の表示部に表示する医用画像処理プログラムであって、前記表示部上で任意に指示される画像上の指示位置を含む連結領域を抽出する連結領域抽出手順と、前記連結領域抽出手順により抽出された連結領域に隣接する膨張対象領域を形成する各膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲内である場合には該膨張対象画素を膨張領域の一部とし、該膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲外である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部でないとして膨張領域を特定する膨張領域特定手順と、前記膨張領域特定手順により特定された膨張領域を前記連結領域抽出手順により抽出された連結領域とともに前記画像データから削除して該画像データを更新する更新手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、6または7記載の本発明によれば、観察対象となる器官を撮像した画像から他の要因を除去する場合に、該観察対象となる器官の欠落を招くことなく効率良く他の要因を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るX線CT装置、医用画像処理装置、医用画像処理プログラムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では造影血管を観察対象とし、造影血管に影響を及ぼすことなく硬骨を膨張して軟骨部分の一部を硬骨とともに除去する場合について示すこととする。
【実施例1】
【0020】
まず、本実施例1に係るX線CT装置による膨張処理の概念について説明する。図1は、本実施例1に係るX線CT装置による膨張処理の概念を説明するための説明図である。なお、実際の膨張処理は2次元または3次元で行われるが、以下では説明の便宜上2次元での膨張処理について説明することとする。
【0021】
図1(a)は、硬骨と造影血管との間にCT値の低い領域が介在している場合の膨張処理の概念を示す図であり、同図(b)は、硬骨と造影血管とが連接している場合の膨張処理の概念を示す図である。ここでは、硬骨のCT値が300〜400であり、軟骨のCT値が50〜300であり、造影血管のCT値が約350であるものとする。
【0022】
すでに図11を用いて説明したように、従来の骨抜き作業では、硬骨から軟骨側と造影血管側の両方に膨張処理が行われるため、この膨張領域に含まれる軟骨部分だけではなく膨張領域に含まれる造影血管部分についても硬骨の連結領域として硬骨とともに除去されてしまうという問題があった。
【0023】
そこで、本実施例1では、硬骨から軟骨側へは膨張処理するが、造影血管側への膨張処理を抑制し、もって観察対象である造影血管の一部を除去することなく、軟骨部分のみを硬骨の連結領域として硬骨とともに除去することとしている。具体的には、処理対象となる画素のCT値が所定の下限値(例えば「50」)と所定の上限値(例えば「300」)の閾値範囲内(50〜300)である場合には該画素を膨張処理対象とするが、この画素のCT値がこの閾値範囲内でない場合には該画素を膨張処理対象としない。なお、ここで言う閾値範囲とは、膨張処理対象とすべきか否かを判定するための閾値範囲であり、従来技術の欄で説明した既存領域を特定するための閾値とは関係がない。
【0024】
例えば、図1(a)に示す場合には、図示した硬骨が指定されて硬骨の連結領域が定まると、この硬骨の連結領域より図中の下方に位置する軟骨の方向と図中の上方に位置する造影血管の方向が膨張可能領域となる。そして、軟骨を形成する画素のCT値は、50〜300という閾値範囲内であるので、かかる軟骨を形成する各画素は膨張処理の対象となり、最終的にこの膨張領域に含まれる軟骨部分は硬骨の連結領域として硬骨とともに削除される。
【0025】
その一方で、硬骨と造影血管との間には、CT値が0〜49の領域が介在しており、この領域を形成する各画素のCT値は上記閾値範囲の範囲外であるため、この領域を形成する各画素は膨張処理対象とならず、造影血管側には膨張処理は行われない。
【0026】
以上のことから、図1(a)中に示した硬骨の下方にのみ膨張領域が形成され、この膨張領域に含まれる軟骨部分が硬骨の連結領域として硬骨とともに削除されるが、図1(a)中に示した硬骨の上方には膨張領域が形成されないため、造影血管の一部が硬骨の連結領域として硬骨とともに削除されることはない。
【0027】
また、図1(b)に示す場合には、同図(a)と同様に図示した硬骨が指定されて硬骨の連結領域が定まると、この硬骨の連結領域より図中の下方に位置する軟骨の方向と図中の上方に位置する造影血管の方向が膨張可能領域となる。そして、軟骨を形成する画素のCT値は、50〜300という閾値範囲内であるので、かかる軟骨を形成する各画素は膨張処理の対象となり、最終的にこの膨張領域に含まれる軟骨部分は硬骨の連結領域として硬骨とともに削除される。
【0028】
その一方で、硬骨が連接する造影血管のCT値350は、閾値範囲の上限値300を超えるため、この造影血管を形成する各画素は膨張処理対象とならず、造影血管側には膨張処理は行われない。
【0029】
以上のことから、図1(b)中に示した硬骨の下方にのみ膨張領域が形成され、この膨張領域に含まれる軟骨部分が硬骨の連結領域として硬骨とともに削除されるが、図1(b)中に示した硬骨の上方には膨張領域が形成されないため、造影血管の一部が硬骨の連結領域として硬骨とともに削除されることはない。
【0030】
このように、本実施例1では、膨張可能領域内に所在する各画素のCT値が所定の閾値範囲(例えば50〜300)内であるか否かを調べ、閾値範囲内である場合には膨張処理を行うが、閾値範囲外である場合には膨張処理を行わないようにし、もって造影血管の一部を除去することなく硬骨とともに軟骨部分を除去し得ることとしている。
【0031】
ところで、ここでは説明の便宜上、造影血管のCT値が350であることとしたが、実際には、造影血管の周辺部分ではCT値が200程度となってしまうケースも多い。このような場合には、閾値範囲の上限値を200以下に設定することにより、造影血管の一部が閾値範囲内であることを理由に硬骨の連結領域として硬骨とともに除去される事態を防ぐことができる。なお、かかる場合に、軟骨を形成する各画素のうちのCT値が200を超える画素を硬骨とともに除去できなくなるが、軟骨を除去するよりも造影血管の除去を防ぐ方が優先度が高い。
【0032】
次に、本実施例1に係るX線CT装置の構成について説明する。図2は、本実施例1に係るX線CT装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、このX線CT装置20は、スキャンユニット部21及びコンソール部22からなる。
【0033】
スキャンユニット部21は、被検体PにX線を照射するとともに該被検体Pを透過したX線投影データを収集してコンソール部22に出力する装置であり、X線管23と、高電圧発生装置24と、X線検出器25と、データ収集部26(DAS;Data Acquisition System)とを有する。
【0034】
X線管23は、被検体Pに対して照射するX線を発生する装置であり、X線検出器25は、被検体Pを透過したX線を検出する装置である。なお、X線管23とX線検出器25は、高速で且つ連続的に回転する図示しない回転リング上の被検体Pを挟んで互いに対向する位置に搭載される。
【0035】
高電圧発生装置24は、コンソール部22からの制御信号によりX線管23に管電流や管電圧を供給してX線を発生させる装置である。データ収集部26は、X線検出器25で検出されたX線検出信号をデジタル化する装置であり、該デジタル化されたデータは、生データとしてコンソール部22に対して出力される。
【0036】
コンソール部22は、スキャンユニット部21から入力された生データから被検体Pの画像を作成して表示する装置であり、画像処理装置27と、画像表示部28と、入力部29とを有する。画像表示部28は、液晶パネルやディスプレイ等の表示デバイスであり、後述する画像処理装置27によって作成された画像などが表示される。入力部29は、キーボードやマウス等の入力デバイスであり、既存領域を特定するための閾値、膨張範囲を規制するための閾値範囲並びにコンソール部22に対する指示等を入力する際に利用される。
【0037】
画像処理装置27は、スキャンユニット部21により収集された生データを処理して被検体Pの画像データを作成する装置であり、特に画像データを作成する際に、硬骨から軟骨側へのみ膨張処理を行ってこの膨張領域に所在する軟骨部分を連結領域として硬骨とともに除去するとともに観察対象である造影血管については膨張処理の対象外として除去されない画像を作成する。この画像処理装置27は、制御部30と、前処理部31と、メモリ部32と、再構成部33と、記憶装置34と、画像表示制御部35とを有する。
【0038】
制御部30は、画像処理装置27の中枢として全体を制御する制御部である。前処理部31は、スキャンユニット部21から出力された生データを入力するとともに、この生データに補正処理等を行って投影データを生成する処理部である。メモリ部32は、RAM(Random Access Memory)等の記憶デバイスであり、ここには前処理部31によって生成された投影データが一時記憶される。
【0039】
再構成部33は、メモリ部32に一時記憶された投影データから画像データを再構成する処理部である。記憶装置34は、ハードディスク装置等の記憶デバイスであり、ここには再構成部33により再構成された画像データやスキャンユニット部21から入力した生データが記憶される。
【0040】
画像表示制御部35は、記憶装置34から画像データを読み込み、入力部29を介して利用者によって指定されたCT値の閾値又は不透明度に基づいて既存領域を特定し、特定した既存領域の画像を作成して診断画像として画像表示部28上に表示制御する。また、この画像表示制御部35は、既存領域から連結領域を抽出し、抽出した連結領域を膨張処理した膨張領域を連結領域の一部として連結領域とともに削除して既存領域を更新する処理を行う。
【0041】
ここで、この画像表示制御部35は、利用者に指定された硬骨の連結領域を膨張処理する際に、軟骨方向へ膨張処理を行って連結領域を拡張するが、造影血管方向へは膨張処理を行わないこととしている。具体的には、入力部29を介して利用者により指定された膨張処理用の閾値範囲内であれば膨張処理を行ってその膨張領域を連結領域の一部とするが、閾値範囲外である場合には膨張処理の対象とはしない。なお、ここで言う膨張処理用の閾値範囲は、すでに説明した既存領域を求めるための閾値とは関係がない。
【0042】
例えば、硬骨のCT値が300〜400であり、軟骨のCT値が50〜300であり、造影血管のCT値が約350である場合には、閾値の上限値を300、閾値の下限値を50に設定して閾値範囲を50〜300とし、造影血管並びに造影血管と硬骨の間に介在する領域(例えば、CT値が0〜49)は膨張処理の対象としないことになる。
【0043】
次に、図2に示した画像表示制御部35の内部構成について説明する。図3は、図2に示した画像表示制御部35の内部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この画像表示制御部35は、SVR用データ管理部35aと、MIP用データ管理部35bと、MIP画像データ生成部35cと、SVR画像表示制御部35dと、MIP画像表示制御部35eと、連結領域指定受付部35fと、連結領域抽出部35gと、局所膨張部35hと、膨張閾値設定部35iと、MIP用連結領域削除部35jと、連結領域抽出確定部35kと、SVR用連結領域削除部35lとを有する。
【0044】
SVR用データ管理部35aは、利用者が骨抜き作業を行う際に参照されるSVR画像データの既存領域を管理する管理部である。利用者は、画像表示部28上に表示されたSVR画像の既存領域を参照しながら骨の領域を削除することになる。
【0045】
MIP用データ管理部35bは、利用者が造影血管を観察する際に利用されるMIP画像データの既存領域を管理する管理部である。利用者は、画像表示部28上に表示されたMIP画像の既存領域により造影血管を観察することになる。
【0046】
MIP画像データ生成部35cは、SVR用データ管理部35aにより管理されたSVR画像データが更新された際に、更新されたSVR画像データに対応するMIP画像データを生成してMIP用データ管理部35bに出力する処理部である。
【0047】
SVR画像表示制御部35dは、SVR用データ管理部35aにより管理されたSVR画像データを画像表示部28の表示用メモリに展開する等して既存領域のSVR画像を画像表示部28に表示制御する制御部であり、MIP画像表示制御部35eは、MIP用データ管理部35bにより管理されたMIP画像データを画像表示部28の表示用メモリに展開する等して既存領域のMIP画像を画像表示部28に表示制御する制御部である。
【0048】
連結領域指定受付部35fは、利用者が連結領域を特定するためにSVR画像上で指定した位置の位置情報を受け付け、受け付けた位置情報をSVR用データ管理部35aに受け渡す処理部であり、SVR用データ管理部35aでは、この連結領域指定受付部35fから受け取った位置情報を連結領域抽出部35gに受け渡す。具体的には、まず最初に硬骨の連結領域を作成する必要があるため、利用者によってSVR画像上の硬骨の一部が指定され、該指定された位置情報が受け付けられることになる。
【0049】
連結領域抽出部35gは、SVR用データ管理部35aから受け取った位置情報を用いて既存領域から連結領域を抽出する処理部であり、抽出した連結領域をSVR用データ管理部35a及びMIP用データ管理部35bに受け渡す。例えば、SVR用データ管理部35aから受け取った位置情報が硬骨の一部をなす場合には、硬骨の連結領域が抽出されることになる。
【0050】
局所膨張部35hは、膨張閾値設定部35iで設定された閾値範囲(CT値の下限値〜上限値)に基づいて連結領域を膨張する膨張領域を特定する処理部である。この局所膨張部35hは、まず既存領域上の連結領域から所定画素数連接する膨張の対象となる領域(以下、「膨張対象領域」)を求めるとともに、求めた膨張対象領域を形成する各画素を膨張領域に含めるべきか否かを上記閾値範囲に基づいて判定し、最終的に特定した膨張領域を連結領域抽出部35gに通知する。なお、膨張領域を局所膨張部35hから受け取った連結領域抽出部35gは、膨張領域を連結領域に加えて新たな連結領域とする。
【0051】
例えば、図4に示すようなCT値が350の硬骨の連結領域が存在する場合には、この連結領域に隣接する上下、左右、斜めの画素が各画素が膨張対象領域となる。そして、この膨張対象領域内の各画素(以下「膨張対象画素」と言う)のCT値が例えば閾値範囲50〜300内である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部であると判定し、該膨張対象画素のCT値が閾値範囲内でない場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部ではないと判定する。ただし、各膨張対象画素が膨張領域の一部であるためには、該膨張対象画素が連結領域に連接しているか又は該膨張対象画素の連結領域側に連接する膨張対象画素が膨張領域の一部である必要がある。膨張領域は、連結領域から膨張した領域だからである。
【0052】
図4中に示した硬骨の上部に位置するCT値40の膨張対象画素は、そのCT値が閾値範囲内(50〜300)ではないので膨張領域の一部ではないと判定され、図4中に示した硬骨の下部に位置するCT値300の画素は、そのCT値が閾値範囲内(50〜300)であり、かつ、連結領域と連接しているので膨張領域の一部であると判定されることになる。
【0053】
この局所膨張部35hが、かかる膨張処理を行うことにより、硬骨の連結領域に隣接する膨張対象画素であっても、そのCT値が閾値範囲内でない場合には、膨張領域の一部とはされない。このため、図1(a)及び(b)に示したように、硬骨の連結領域の上部と下部にそれぞれ膨張対象領域が存在する場合に、硬骨の下部に存在する膨張対象領域内の各膨張対象画素についてはそのCT値が閾値範囲内であるので膨張領域の一部であると判定されるが、硬骨の上部に存在する膨張対象領域内の各膨張対象画素についてはそのCT値が閾値範囲外であるので膨張領域の一部でないと判定され、結果的に硬骨の下部にのみ膨張領域が形成されることになる。
【0054】
膨張閾値設定部35iは、局所膨張部35hにおいて膨張対象画素が膨張領域の一部であるか否かを判定する際に用いるCT値の上限値及び下限値を受け付けて閾値範囲(CT値の下限値〜上限値)を設定する処理部である。かかる閾値をなす上限値及び下限値は、硬骨の連結領域を膨張処理する場合に、造影血管方向には膨張させずに軟骨方向にだけ膨張させる経験的な値とする必要がある。
【0055】
MIP用連結領域削除部35jは、連結領域抽出部35gにより抽出された連結領域をMIP画像データの既存領域から削除処理する処理部であり、この削除処理されたMIP画像データによりMIP用データ管理部35bにおいて管理されたMIP画像データの既存領域が更新される。
【0056】
連結領域抽出確定部35kは、連結領域抽出部35gにより抽出された連結領域をSVR画像データの既存領域から削除する確認操作を利用者から受け付けてSVR用データ管理部35aに通知する処理部である。連結領域抽出確定部35kから連結領域の削除確認通知を受け取ったSVR用データ管理部35aは、SVR用連結領域削除部35lに対して連結領域の削除処理を指示する。
【0057】
すなわち、連結領域抽出部35gによって連結領域が抽出されるとMIP画像データからは連結領域が削除され、利用者はMIP画像上で連結領域の削除が適当であるか否かを判定する。そして、利用者が、連結領域の削除が適切であると判定して連結領域削除の確認を行うと、SVR画像データから連結領域が削除されることになる。
【0058】
SVR用連結領域削除部35lは、SVR用データ管理部35aからの指示に基づいて連結領域をSVR画像データの既存領域から削除処理する処理部であり、連結領域が削除処理されたSVR画像データによりSVR用データ管理部35aにおいて管理されるSVR画像データの既存領域が更新される。
【0059】
次に、図3に示した画像表示制御部35による画像表示制御手順について説明する。図5は、図3に示した画像表示制御部35による画像表示制御手順を示すフローチャートである。同図に示すように、この画像表示制御部35では、再構成された画像データを読み込んでSVR画像データを作成し(ステップS101)、SVR画像表示制御部35dにより画像表示部28上にSVR画像を表示制御する(ステップS102)。
【0060】
また、MIP画像データ生成部35cが、SVR画像データからMIP画像データを作成してMIP用データ管理部35bに受け渡し、MIP画像表示制御部35eが画像表示部28上にMIP画像を表示する(ステップS103)。
【0061】
そして、SVR用データ管理部35aが、利用者から既存領域を抽出するための閾値を受け付け、CT値が閾値以上の領域を既存領域として抽出する(ステップS104)。この際、画像表示部28に表示されるSVR画像及びMIP画像は、既存領域を対象として再表示される。
【0062】
そして、利用者がSVR画像上で連結対象の位置を指示したならば、連結領域指定受付部35fがこの位置情報を受け付け(ステップS105)、連結領域抽出部35gにおいてこの位置情報をもとに連結領域を抽出し(ステップS106)、MIP用データ管理部35b及びSVR用データ管理部35aに通知する。
【0063】
かかる連結領域の通知を受けたMIP用データ管理部35bは、MIP用連結領域削除部35jに対して連結領域の削除指示を行い、この削除指示を受けたMIP用連結領域削除部35jは、MIP画像データから連結領域を削除処理する(ステップS107)。一方、連結領域の通知を受けたSVR用データ管理部35aは、SVR画像表示制御部35dに対して連結領域を受け渡し、この連結領域を受け付けたSVR画像表示制御部35dは、画像表示部28上に連結領域のSVR画像を表示する(ステップS108)。
【0064】
その後、連結領域抽出部35gは、利用者から連結領域を膨張処理するか否かについての指示を受け付け、膨張処理を行う旨の指示を受け付けた場合には(ステップS109肯定)には、膨張閾値設定部35iにおいて利用者から受け付けたCT値を膨張閾値範囲として設定する(ステップS110)。
【0065】
その後、局所膨張部35hは、膨張対象領域内の各膨張対象画素のCT値が膨張閾値範囲内のものを膨張領域の一部とする処理を行って膨張領域を特定し(ステップS111)、特定した膨張領域を連結領域抽出部35gに通知する。かかる膨張領域を通知された連結領域抽出部35gは、この膨張領域を連結領域に加えた新たな連結領域をMIP用データ管理部35b及びSVR用データ管理部35aに通知する。
【0066】
かかる連結領域を通知されたMIP用データ管理部35bは、連結領域を削除するようMIP用連結領域削除部35jに指示し、この指示を受け付けたMIP用連結領域削除部35jは、MIP画像データから連結領域を削除処理する(ステップS112)。また、連結領域を通知されたSVR用データ管理部35aは、かかる新たな連結領域を表示するようSVR画像表示制御部35dに指示し、この指示を受け付けたSVR画像表示制御部35dは、この新たな連結領域のSVR画像を画像表示部28上に表示する(ステップS113)。その後、ステップS109に移行して連結領域を膨張処理するか否かを再度利用者に問い合わせる。
【0067】
そして、利用者から膨張処理を行わない旨の指示を受け付けた場合には(ステップS109否定)、利用者に対して連結領域を削除するか否かを問い合わせ、該利用者から連結領域の削除指示を受け付けたならば(ステップS114肯定)、SVR用連結領域削除部35lがSVR画像データから連結領域を削除した後(ステップS115)、ステップS102に移行する。一方、利用者から連結領域の削除指示がない場合には(ステップS114否定)、ステップS104に移行して新たな既存領域を抽出する。
【0068】
このように、局所膨張部35hが膨張対象領域内の各膨張対象画素を膨張領域の一部であるか否かを膨張閾値範囲を利用して特定することで、例えば硬骨の連結領域を膨張させる場合に軟骨方向のみを膨張領域としつつ造影血管方向を膨張領域外とし、もって観察対象である造影血管への悪影響の発生を未然に防止することができる。
【0069】
次に、図3に示した局所膨張部35hによる局所膨張処理手順(図5のステップS111に対応)について説明する。図6は、図3に示した局所膨張部35hによる局所膨張処理手順を示すフローチャートである。
【0070】
図6に示すように、局所膨張部35hは、膨張対象領域を形成する膨張対象画素を一つ選択し(ステップS201)、選択した膨張対象画素が、該膨張対象画素のCT値が閾値範囲内であるか否かを判定する(ステップS202)。
【0071】
その結果、該膨張対象画素のCT値が閾値範囲内である場合には(ステップS202肯定)、該膨張対象画素を膨張領域の一部であると判定し(ステップS203)、該膨張対象画素のCT値が閾値範囲外である場合には(ステップS202否定)、該膨張対象画素を膨張領域の一部でないと判定する(ステップS204)。これにより、閾値範囲内にない造影血管部分等の観察対象を膨張領域として取り扱う事態を防ぐ。
【0072】
そして、未処理の膨張対象画素がある場合には(ステップS205肯定)、ステップS201に移行して同様の処理を繰り返し、膨張対象領域内の全ての膨張対象画素に対する処理を終えたならば(ステップS205否定)、得られた膨張領域を連結領域抽出部35gに通知して(ステップS206)、処理を終了する。
【0073】
上記一連の処理を行うことにより、図1(a)及び(b)に示したように、硬骨の連結領域の上部及び下部に膨張対象領域が存在するが、そのうち造影血管側に所在する膨張対象領域内の各膨張対象画素を膨張領域の一部とせず、軟骨側に所在する膨張対象領域内の各膨張対象画素のみを膨張領域の一部とみなし、もって膨張処理による造影血管への影響を防ぎつつ硬骨ととともに軟骨を効率良く除去することができる。
【0074】
図7は、図6に示した膨張処理による効果を説明するための説明図である。同図に示すように、従来の膨張処理を行った場合には、図中に示した硬骨の連結領域の膨張処理によって軟骨のみならず観察対象である造影血管の一部が硬骨とともに削除されていることが分かる。
【0075】
これに対して、図6に示した膨張処理を行うと、図中に示した硬骨の連結領域の膨張処理によって観察対象である造影血管が削除されていない。その理由は、すでに繰り返し説明したように、各膨張対象画素のCT値が閾値範囲内であるか否かを調べ、閾値範囲外である軟骨方向の膨張対象画素は膨張領域とみなされないためである。
【0076】
上述してきたように、本実施例1では、利用者がSVR画像上で指定した位置を含む連結領域を連結領域抽出部35gにより抽出した後、局所膨張部35hは、この連結領域に近接する膨張対象領域内の各膨張対象画素のうちそのCT値が閾値範囲内にあるものだけを膨張領域として特定して連結領域抽出部35gに通知し、通知を受けた連結領域抽出部35gが連結領域に膨張領域を加えた領域を連結領域とするよう構成したので、観察対象である造影血管等の器官のCT値が閾値範囲外となるよう閾値範囲を形成する上限値及び下限値を設定することにより、連結領域からの膨張領域に観察対象を含めないようにし、もって観察対象の劣化を招くことなく効率良く骨抜き作業を行うことができる。
【実施例2】
【0077】
ところで、上記実施例1のものは、軟骨を形成する画素のCT値が50〜300であり、造影血管を形成する画素のCT値が約350であるケースのように両者が区別可能な場合に極めて有効であるが、例えば造影血管を形成する画素のCT値が約250〜350であるケースでは、造影血管を形成する画素のCT値が軟骨を形成する画素のCT値とその範囲が重複してしまう。かかる場合に実施例1をそのまま適用すると、観察対象への影響を防ぐために閾値範囲を50〜250程度に設定せざるを得ず、軟骨を形成する画素のうちそのCT値が250以下のものしか硬骨とともに削除することができなくなる。
【0078】
しかしながら、骨抜き作業とは、軟骨を硬骨とともに効率良く除去するための技術であるので、より効率良く硬骨とともに軟骨を除去することが望まれる。そこで、本実施例2では、観察対象である造影血管を形成する画素のCT値と軟骨を形成する画素のCT値が重複する場合であっても、より多くの軟骨を硬骨とともに効率良く除去する技術について説明する。
【0079】
なお、本実施例2に係るX線CT装置の全体構成図は図2に示したものと同様のものとなり、画像表示制御部35の内部構成についても図3に示したものと同様のものとなり、コンソール部22のハードウエア構成についても図5に示したものと同様のものとなる。このため、以下では、実施例1と異なる部分である概念説明及び局所膨張部(本実施例2に係る局所膨張部を「局所膨張部35h’」と記載する)の処理手順を中心に説明することとする。
【0080】
図8及び図9は、本実施例2に係る局所膨張部35h’による局所膨張処理の概念を説明するための説明図である。ここでは、軟骨を形成する画素のCT値が50〜300であり、造影血管を形成する画素のCT値が250〜350である場合を示すこととする。
【0081】
硬骨の連結領域の周囲に所在する膨張対象領域を形成する各膨張対象画素のCT値が250に満たない場合には、かかる膨張対象画素が造影血管の一部である可能性は低く軟骨の一部である可能性が高いため、実施例1において説明した膨張閾値範囲50〜250を用いることにより、この膨張対象画素を膨張領域の一部と判定して、硬骨とともに削除することができる。
【0082】
しかしながら、かかる膨張対象画素のCT値が250〜300である場合には、この膨張対象画素が造影血管の一部であるのか軟骨の一部であるのかを区別できない。かかる膨張対象画素のCT値は、造影血管を形成する画素のCT値の範囲250〜350に属するだけではなく、軟骨を形成する画素のCT値の範囲50〜300にも属するためである。
【0083】
このため、本実施例2では、各膨張対象画素のCT値が250〜300の重複範囲内である場合に、個々の膨張対象画素のCT値のみで膨張領域の一部であるか否か(言い換えると軟骨の一部であるか否か)を判定するのではなく、個々の膨張対象画素から膨張方向に連接する他の画素のCT値をも用いて該膨張対象画素が膨張領域の一部であるか否かを判定することとしている。
【0084】
具体的には、図9に示したCT値が260である膨張対象画素については、この膨張対象画素から膨張方向に連接するn個の画素のCT値を参照し、各画素のCT値が膨張方向に向けて増加傾向にあれば、該膨張対象画素を膨張領域の一部であるとは判定せず、各画素のCT値が膨張方向に向けて増加傾向になければ、該膨張対象画素を膨張領域の一部と判定することとしている。
【0085】
このような判定を行う理由は、造影血管を形成する画素のうち、その中心部に所在する画素のCT値は約350と比較的高く、その周辺部に所在する画素のCT値は250程度と比較的低くなるという特性があるからである。すなわち、硬骨を形成する連結領域の近傍に造影血管が所在している場合には、この連結領域に隣接する膨張対象画素のCT値は比較的低く、この膨張対象画素から膨張方向に進むにつれてそのCT値は順次高くなると考えられるため、「膨張方向に向けてCT値が増加傾向にあるか否か」という指標を採用できるのである。
【0086】
このため、図9に示すように、硬骨の連結領域の上部に位置するCT値が260の膨張対象画素については、その膨張方向に連接する画素列の各CT値が増加傾向にあるため、膨張領域の一部ではないと判定される。つまり、かかる膨張対象画素は、造影血管を形成する画素であるとみなして削除対象とされないので、観察対象となる造影血管を削除する悪影響を防止することができることになる。
【0087】
その一方で、図9に示した硬骨の連結領域の下部に位置するCT値が260の膨張対象画素については、その膨張方向に連接する画素列の各CT値が減少傾向にあるため、膨張領域の一部であると判定される。つまり、かかる膨張対象画素は、軟骨を形成する画素であるとみなして削除対象とされるので、軟骨を効率良く硬骨とともに削除することができることになる。
【0088】
このように、本実施例2によれば、造影血管のCT値の範囲と軟骨のCT値の範囲が重複している場合であっても、造影血管を形成する画素のCT値を削除することなく、軟骨を形成する画素のCT値のみを効率良く削除することができる。
【0089】
次に、本実施例2に係る局所膨張部35h’による局所膨張処理手順について説明する。図10は、本実施例2に係る局所膨張部35h’による局所膨張処理手順を示すフローチャートである。
【0090】
図10に示すように、局所膨張部35h’は、膨張対象領域を形成する膨張対象画素を一つ選択し(ステップS301)、該膨張対象画素のCT値が閾値範囲内であるか否かを判定する(ステップS302)。
【0091】
その結果、該膨張対象画素のCT値が閾値範囲内でない場合には(ステップS302否定)、該膨張対象画素を膨張領域の一部でないと判定し(ステップS306)、該膨張対象画素のCT値が閾値範囲内である場合には(ステップS302肯定)、さらに膨張対象画素のCT値が重複範囲内であるか否かを判定する(ステップS303)。ここで言う重複範囲とは、軟骨を形成する画素のCT値の範囲内であり、かつ、造影血管を形成する画素のCT値の範囲内である範囲を指す。例えば、軟骨を形成する画素のCT値の範囲が50〜300であり、造影血管を形成する画素のCT値の範囲が250〜350である場合には、250〜300が重複範囲となる。
【0092】
そして、膨張対象画素のCT値が重複範囲内でない場合には(ステップS303否定)、該膨張対象画素を膨張領域の一部であると判定し(ステップS305)、膨張対象画素のCT値が重複範囲内である場合には(ステップS303肯定)、この膨張対象画素から膨張方向にN画素連接する画素列の各CT値が増加傾向にあるか否かを確認し(ステップS304)、各CT値が増加傾向である場合には(ステップS304肯定)、該膨張対象画素を膨張領域の一部でないと判定する(ステップS306)。各CT値が増加傾向にある場合には、該膨張対象画素が造影血管部分等の観察対象を形成する画素である可能性が高いためである。
【0093】
これに対して、各CT値が増加傾向にない場合には(ステップS304否定)、該膨張対象画素が造影血管部分等の観察対象を形成する画素ではないとみなされ、該膨張対象画素を膨張領域の一部であると判定する(ステップS305)。海綿状の軟骨部分は、造影血管のようにその中心部に近い程CT値が高いという特性を有さず、むしろ位置関係とは無関係にCT値がばらつくという特性があるためである。
【0094】
そして、未処理の膨張対象画素がある場合には(ステップS307肯定)、ステップS301に移行して同様の処理を繰り返し、膨張対象領域内の全ての膨張対象画素に対する処理を終えたならば(ステップS307否定)、処理を終了する。
【0095】
上述してきたように、本実施例2では、各膨張対象画素から膨張方向に連接するn個の画素のCT値を参照し、各画素のCT値が膨張方向に向けて増加傾向にあれば、該膨張対象画素を膨張領域の一部であるとは判定せず、各画素のCT値が膨張方向に向けて増加傾向になければ、該膨張対象画素を膨張領域の一部と判定するよう構成したので、造影血管と軟骨のCT値の範囲が重複する場合であっても、その軟骨部分のみを硬骨とともに削除することができる。
【0096】
なお、本実施例2では、各膨張対象画素から膨張方向に連接するn個の画素のCT値が増加傾向にあるか否かを判定の基準とすることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、n個連接する画素の両端に位置する画素のCT値を比較し、その膨張方向側に所在する画素のCT値が他方のCT値よりも所定数以上大きいか否かを判定の基準とすることもできる。造影血管の周辺部を形成する画素のCT値よりも膨張方向側に所在する画素すなわち造影血管の中心部に近い画素のCT値の方が高いという特性があるからである。また、n個連接する画素の各CT値の平均値が膨張対象画素のCT値よりも大きいか否かを判定の基準とすることもできる。n個連接する画素の各CT値は、それぞれ造影血管の周辺部を形成する膨張対象画素のCT値よりも大きいことから、その平均値についても膨張対象画素のCT値よりも大きくなるからである。
【0097】
また、本実施例2では、各膨張対象画素のCT値が実施例1に示した膨張閾値範囲内である場合には膨張方向に連接するn個の画素の増加傾向を考慮することなく膨張領域の一部であるか否かを判定することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、実施例1に示した膨張閾値範囲内の判定を行わずに、全膨張対象画素について膨張方向に連接するn個の画素の増加傾向を考慮した判定を行うこともできる。
【0098】
また、上記実施例1及び2では、硬骨を連結領域として膨張処理する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、硬骨以外の他の器官を連結領域として膨張処理する場合にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
この発明は、造影血管等の観察対象となる器官を撮像した画像から硬骨及び軟骨等の他の要因を除去する際に、該観察対象である器官の一部を除去することなく、効率良く他の要因を除去する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本実施例1に係るX線CT装置による膨張処理の概念を説明するための説明図である。
【図2】本実施例1に係るX線CT装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図2に示した画像表示制御部の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図3に示した局所膨張部による膨張領域判定の判定要領を説明するための説明図である。
【図5】図3に示した画像表示制御部による画像表示制御手順を示すフローチャートである。
【図6】図3に示した局所膨張部による局所膨張処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図6に示した膨張処理による効果を説明するための説明図である。
【図8】本実施例2に係る局所膨張部による局所膨張処理の概念を説明するための説明図(1)である。
【図9】本実施例2に係る局所膨張部による局所膨張処理の概念を説明するための説明図(2)である。
【図10】本実施例2に係る局所膨張部による局所膨張処理手順を示すフローチャートである。
【図11】X線CT装置における従来の骨抜き技術による問題点を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0101】
20 X線CT装置
21 スキャンユニット部
22 コンソール部
23 X線管
24 高電圧発生装置
25 X線検出器
26 データ収集部
27 画像処理装置
28 画像表示部
29 入力部
30 制御部
31 前処理部
32 メモリ部
33 再構成部
34 記憶装置
35 画像表示制御部
35a SVR用データ管理部
35b MIP用データ管理部
35c MIP画像データ生成部
35d SVR画像表示制御部
35e MIP画像表示制御部
35f 連結領域指定受付部
35g 連結領域抽出部
35h 局所膨張部
35i 膨張閾値設定部
35j MIP用連結領域削除部
35k 連結領域抽出確定部
35l SVR用連結領域削除部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するとともに該被検体を透過したX線を検出して画像データを生成し、生成した画像データを所定の表示部に表示するX線CT装置であって、
前記表示部上で任意に指示される画像上の指示位置を含む連結領域を抽出する連結領域抽出手段と、
前記連結領域抽出手段により抽出された連結領域に隣接する膨張対象領域を形成する各膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲内である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部とし、該膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲外である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部でないとして膨張領域を特定する膨張領域特定手段と、
前記膨張領域特定手段により特定された膨張領域を前記連結領域抽出手段により抽出された連結領域とともに前記画像データから削除して該画像データを更新する更新手段と
を備えたことを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記膨張領域特定手段は、観察対象となる器官が造影血管であり、削除対象となる器官が骨である場合に、前記造影血管を形成する画素が取り得る最小の画素値以下の値を前記膨張閾値範囲の上限値として、各膨張対象画素が膨張領域の一部であるか否かを判定して膨張領域を特定することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記膨張領域特定手段は、前記骨の一部をなす軟骨部分を形成する画素が取り得る最小の画素値を前記膨張閾値範囲の下限値として、各膨張対象画素が膨張領域の一部であるか否かを判定して膨張領域を特定することを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記膨張領域特定手段は、各膨張対象画素の持つ画素値が所定の閾値範囲内である場合には、該膨張対象画素から膨張方向に連接する複数画素の画素値に基づいて当該膨張対象画素が膨張領域の一部であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記膨張領域特定手段は、前記膨張対象画素から膨張方向に連接する複数画素の持つ画素値が増加傾向にある場合には当該膨張対象画素を膨張領域の一部ではないと判定し、複数画素の持つ画素値が増加傾向にない場合には当該膨張対象画素を膨張領域の一部と判定することを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
被検体を透過したX線の検出データから画像データを生成し、生成した画像データを所定の表示部に表示する医用画像処理装置であって、
前記表示部上で任意に指示される画像上の指示位置を含む連結領域を抽出する連結領域抽出手段と、
前記連結領域抽出手段により抽出された連結領域に隣接する膨張対象領域を形成する各膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲内である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部とし、該膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲外である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部でないとして膨張領域を特定する膨張領域特定手段と、
前記膨張領域特定手段により特定された膨張領域を前記連結領域抽出手段により抽出された連結領域とともに前記画像データから削除して該画像データを更新する更新手段と
を備えたことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項7】
被検体を透過したX線の検出データから画像データを生成し、生成した画像データを所定の表示部に表示する医用画像処理プログラムであって、
前記表示部上で任意に指示される画像上の指示位置を含む連結領域を抽出する連結領域抽出手順と、
前記連結領域抽出手順により抽出された連結領域に隣接する膨張対象領域を形成する各膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲内である場合には該膨張対象画素を膨張領域の一部とし、該膨張対象画素の持つ画素値が所定の膨張閾値範囲外である場合には、該膨張対象画素を膨張領域の一部でないとして膨張領域を特定する膨張領域特定手順と、
前記膨張領域特定手順により特定された膨張領域を前記連結領域抽出手順により抽出された連結領域とともに前記画像データから削除して該画像データを更新する更新手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする医用画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−93243(P2008−93243A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279862(P2006−279862)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】