説明

X線CT装置

【課題】X線照射出力を所望の投影角度範囲において所定のレベルより低くするスキャンにより被曝線量が低減される領域について、その被曝線量の低減度を直接的に知ることを可能にする。
【解決手段】X線管の管電流をmA低減投影角度範囲Rθ_odmにおいて所定のレベルより低くするスキャンにより被曝低減がなされる扇領域505について、mA低減投影角度範囲Rθ_odmの角度幅ΔθとmA低減率αとを基にその被曝低減率βを推定し、その被曝低減率βに関する情報508を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体をX線CTスキャン(scan)する際に、X線照射出力を変調して被検体の一部のX線被曝線量を低減するX線CT(Computed Tomography)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体をX線CTスキャンする際に、体軸方向の所定の範囲における所定の投影角度範囲(スキャンの回転方向における範囲)において、X線照射出力を通常レベルよりも小さくすることにより、被検体の一部、例えば体表面近くに存在する放射線感受性の高い部位の被曝線量を低減するX線CT装置が提案されている(例えば、特許文献1、要約等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−321587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のX線CT装置では、通常、スキャン計画時において、X線照射出力を低減する投影角度範囲とその低減度を、操作者の操作に応じて設定したり、操作者に向けて表示したりすることが想定される。
【0005】
一方、操作者の関心は、上記投影角度範囲に対するX線照射出力の低減度よりも、その投影角度範囲で規定される部分的な領域に対する被曝線量の低減度にある場合が多い。
【0006】
しかしながら、被検体の被曝線量の推定・算出については、従来、CTDI値やDLP値など、被検体のスライス面全体を単位にした算出手法が用いられている。すなわち、所定の投影角度範囲で規定される部分的な特定領域に対する被曝線量の算定手法は確立されていない。そのため、操作者は、その特定領域に対する被曝線量の低減度を直接的には知ることができず、X線照射出力が低減される投影角度範囲とその低減度とから、自身の経験を基に推測している。
【0007】
このような事情により、X線照射出力を所望の投影角度範囲において所定のレベルより低くするスキャンにより被曝線量が低減される領域について、その被曝線量の低減度を直接的に知ることができるX線CT装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点の発明は、被検体をスキャンする際に、所望の体軸方向範囲における所望の投影角度範囲において、X線照射出力を所定のレベルから所望の出力低減度で低減するX線CT装置であって、前記投影角度範囲の角度幅と前記出力低減度とに基づいて、撮像視野を表す円領域の円周上における前記投影角度範囲に対応する円弧と該円領域の中心とを含む扇領域に対する被曝低減度を推定する推定手段と、前記推定された被曝低減度を表す情報を表示する表示手段とを備えたX線CT装置を提供する。
【0009】
第2の観点の発明は、前記推定手段が、1回転分の角度に対する前記角度幅の割合と前記出力低減度とを乗算して成る値に基づいて、前記被曝低減度を推定する上記第1の観点のX線CT装置を提供する。
【0010】
第3の観点の発明は、前記表示手段が、前記投影角度範囲を幾何学的に示す画像と前記被曝低減度を表す画像とを対応付けて表示する上記第1の観点または第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0011】
第4の観点の発明は、前記表示手段が、前記扇領域を表す画像を、前記被曝低減度の大きさに応じた色または模様で表示する上記第1の観点または第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0012】
第5の観点の発明は、前記表示手段が、前記被検体の予備的なスキャンにより得られたスカウト像上で前記体軸方向範囲を幾何学的に示す画像を、前記被曝低減度の大きさに応じた色または模様で表示する上記第1の観点または第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0013】
第6の観点の発明は、前記表示手段が、投影角度を示す軸上で前記投影角度範囲を幾何学的に示す画像を、前記被曝低減度の大きさに応じた色または模様で表示する上記第1の観点、第2の観点または第5の観点のX線CT装置を提供する。
【0014】
第7の観点の発明は、前記表示手段が、前記被検体の予備的なスキャンにより得られた、前記体軸方向範囲内のスライスの断層像と、前記扇領域を表す画像とを重ねて表示する上記第1の観点または第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0015】
第8の観点の発明は、前記表示手段が、被曝線量測定用のファントムを表すファントム像と、前記扇領域を表す画像とを重ねて表示する上記第1の観点または第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0016】
第9の観点の発明は、前記表示手段が、前記被検体の予備的なスキャンにより得られたスカウト像上で前記体軸方向範囲を幾何学的に示す画像と、前記被検体の体軸方向における前記被曝低減度または該被曝低減度によって定まる被曝度の変化を幾何学的に示す画像とを表示する上記第1の観点または第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0017】
第10の観点の発明は、前記表示手段が、横軸を投影角度とし、縦軸を前記扇領域の被曝度とする座標空間において、前記投影角度範囲の開始および終了の投影角度に対応するそれぞれの位置に縦長の図形を表す画像を表示するとともに、前記被曝度の推定値に対応する位置に横長の図形を表す画像を表示する上記第1の観点または第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0018】
第11の観点の発明は、前記表示手段により表示された画像に対する操作者による変更または操作を受け付け、該画像の変更または操作に基づいて、前記投影角度範囲および前記出力低減度のうち少なくとも一方を調整する調整手段をさらに備えている上記第3の観点から第10の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0019】
第12の観点の発明は、前記所定のレベルが、CT自動露出機構により決定される上記第1の観点から第11の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0020】
ここで、「投影角度」とは、X線管のX線焦点の回転角度位置であり、ビュー(view)角度あるいはガントリ(gantry)角度ともいう。
【0021】
また、「所定のレベル」とは、被検体の一部のX線被曝量を意図的に低減させるような条件を含まないスキャン条件によるX線照射出力のレベルである。例えば、スキャン計画時に通常設定されるX線管の管電圧および管電流により定まるX線照射出力や、CT自動露出機構により決定される体軸方向の各位置における各投影角度でのX線照射出力などである。なお、上記被検体の一部は、例えば、放射線感受性の高い部位であり、具体的には、眼球、甲状腺、乳腺などが考えられる。
【0022】
「範囲を幾何学的に示す画像」とは、その範囲が視覚的に分かるように表現された画像であり、例えば、その範囲の境界位置に設けられる補助線、矢印、その範囲を覆うように設けられる網掛けなどを考えることができる。
【0023】
なお、X線照射出力は、X線管の管電圧が一定である場合には、X線管の管電流に依存する。
【0024】
ここで、「撮像視野」とは、X線源とX線検出器とを含むデータ(data)収集系の幾何学的な構造に基づいて定まる画像再構成可能な領域であり、いわゆるSFOV(Scan Field Of View)である。
【0025】
ここで、「スカウト像」とは、主にスキャン計画に用いられる画像であり、本スキャンの前に行われる予備的なスキャンによって得られる画像である。「予備的なスキャン」としては、例えば、X線管の回転角度位置すなわち投影角度を一定にした状態で、被検体および走査ガントリの少なくとも一方を体軸方向に移動させながら、本スキャンよりも低線量のX線ビーム(beam)を被検体に照射して投影データを収集するスキャンを考えることができる。また例えば、本スキャンよりも非常に低い線量のX線ビームによるヘリカルスキャン(helical
scan)を考えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のX線CT装置によれば、X線照射出力を所望の投影角度範囲において所定のレベルより低くするスキャンにより被曝線量が低減される領域について、X線照射出力を低減する投影角度範囲の角度幅とその出力低減度とを基にその被曝線量の低減度を推定し、その被曝線量の低減度に関する情報を表示するので、その被曝線量の低減度を直接的に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】発明の実施形態に係るX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】発明の実施形態に係るX線CT装置における処理の流れを示すフローチャート(flow chart)である。
【図3】本スキャンz方向範囲の設定例を示す図である。
【図4】mA低減z方向範囲の設定例を示す図である。
【図5】mA低減投影角度範囲を説明するための図である。
【図6】撮影部位とmA低減投影角度範囲およびmA低減率との対応関係の一例を示す図である。
【図7】被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第一例を示す図である。
【図8】被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第二例を示す図である。
【図9】被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第三例を示す図である。
【図10】被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第四例を示す図である。
【図11】被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第五例を示す図である。
【図12】被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第六例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0029】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態によるX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
【0030】
X線CT装置100は、操作コンソール(console)1と、撮影テーブル10と、走査ガントリ20とを具備している。
【0031】
操作コンソール1は、操作者からの入力を受け付ける入力装置2と、被検体の撮影を行うための各部の制御や画像を生成するためのデータ処理などを行う中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ6と、プログラム(program)やデータなどを記憶する記憶装置7とを具備している。
【0032】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の開口部Bに入れ出しするクレードル(cradle)12を具備している。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の水平直線移動方向をz方向、鉛直方向をy方向、z方向およびy方向に垂直な水平方向をx方向とする。
【0033】
走査ガントリ20は、回転部15と、回転部15を回転可能に支持する本体部20aとを有する。回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線ビーム81をコリメート(collimate)して整形するコリメータ(collimator)23と、被検体40を透過したX線ビーム81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力を投影データに変換して収集するDAS(Data Acquisition System)(データ収集装置ともいう)25と、X線コントローラ22,コリメータ23,DAS25の制御を行う回転部コントローラ26とが搭載される。本体部20aは、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10と通信する制御コントローラ29を具備する。回転部15と本体部20aとは、スリップリング(slip ring)30を介して電気的に接続されている。
【0034】
なお、中央処理装置3およびモニタ6は、本発明における表示手段の一例である。また、中央処理装置3は、本発明における調整手段および推定手段の一例である。
【0035】
これより、第一実施形態に係るX線CT装置における処理の流れについて説明する。
【0036】
図2は、第一実施形態に係るX線CT装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【0037】
ステップ(step)S1では、操作者の操作に応じて撮影部位の選択を行う。撮影部位の選択候補としては、例えば、頭部、首部、胸部、腰腹部、脚部等が考えられる。
【0038】
ステップS2では、被検体40の予備的なスキャンを行って被検体の投影データである予備スキャンデータを収集し、この予備スキャンデータを基にスカウト像を生成する。予備的なスキャンとしては、例えば、X線管21を被検体40の真上、真下、真横等に位置させて、X線管21を被検体40に対してz方向に相対移動させながらX線81を照射し、投影データを収集する方法が考えられる。また例えば、本スキャンより低線量のX線を用いて被検体40のヘリカルスキャンを行って投影データを収集する方法が考えられる。なお、本例では、後者の方法を採用し、スカウト像として、少なくとも被検体40の正面像を表す画像を再構成する。
【0039】
ステップS3では、いわゆるCT自動露出機構により、予備スキャンデータに基づいて本スキャン時における管電流の変調曲線(以下、mA曲線という)を求める。本例では、被検体の各z位置での断層像を所望のノイズレベル(SD値)で得ることができるよう、本スキャン時に、X線管21の管電流を、X線管21のz方向位置またはz方向位置および投影角度位置に応じて変化させる。mA曲線は、このような管電流の変調を行う場合における、管電流のz方向またはz方向および投影角度方向における変調曲線である。本例では、X線管21の管電流を変調させるが、もちろん固定値であってもよい。なお、mA曲線は、本発明における「所定のレベル」の一例である。
【0040】
ステップS4では、本スキャンを行うz方向の範囲(以下、本スキャンz方向範囲という)を設定する。
【0041】
図3に、本スキャンz方向範囲の設定例を示す。例えば、図3に示すように、スキャン計画画面61を表示する。スキャン計画画面61には、被検体40の正面像を表すスカウト像41を表示する。操作者は、スカウト像41上で本スキャンのz方向開始位置とz方向終了位置とを指定することにより、本スキャンz方向範囲Δz_scanを設定する。
【0042】
ステップS5では、本スキャン時にX線管21の管電流をmA曲線のレベルから低減するz方向の範囲(以下、mA低減z方向範囲という)を設定する。
【0043】
図4に、mA低減z方向範囲の設定例を示す。例えば、図4に示すように、スカウト像41上には、略矩形状である第1の図形501が半透明に表示される。第1の図形501が占めるz方向の範囲は、mA低減z方向範囲Rz_odmを表している。操作者は、その第1の図形501のz方向の位置および範囲を調整することにより、mA低減z方向範囲Rz_odmを設定する。mA低減z方向範囲Rz_odmは、例えば、放射線感受性の高い部位を覆うように設定する。図4に示す例では、撮影部位は胸部であり、放射線感受性の高い乳腺部分を覆うようにmA低減z方向範囲Rz_odmが設定されている。
【0044】
ステップS6では、本スキャン時にX線管21の管電流を低減する投影角度範囲(以下、mA低減投影角度範囲という)と、管電流を低減する時のmA曲線に対する管電流の低減率(以下、mA低減率という)とを読み出す。
【0045】
図5に、mA低減投影角度範囲Rθ_odmを説明するための図を示す。mA低減投影角度範囲Rθ_odmは、図5に示すように、mA低減開始投影角度θsからmA低減終了投影角度θeまでの範囲である。X線管21は、本スキャン時に、被検体40の周りをその円軌道21cに沿って回転する。X線管21が、mA低減z方向範囲Rz_odm内に位置し、かつ、mA低減投影角度範囲Rθ_odm内に位置するとき、その管電流を、設定されているmA低減率αで低減する。
【0046】
本例では、撮影部位ごとに、その撮影部位に含まれる放射線感受性の高い部位の位置や大きさ等を考慮して、撮影部位と、その撮影部位に適したmA低減投影角度範囲およびmA低減率との対応関係を予め求め、記憶させておく。そして、当該対応関係を参照し、選択された撮影部位に応じたmA低減投影角度範囲およびmA低減率を読み出す。
【0047】
図6に、撮影部位とmA低減投影角度範囲およびmA低減率との対応関係の一例を示す。この例では、例えば、撮影部位として胸部が選択された場合、X線管21が被検体40の真上に位置するときを投影角度0°として、mA低減開始投影角度θs=−75°、mA低減終了投影角度θe=+75°、mA低減率α=30%が読み出される。
【0048】
ステップS7では、撮像視野SFOVのうち、X線管21の管電流の低減により主に被曝低減が成される領域(以下、被曝低減領域という)に対する被曝低減率を推定する。
【0049】
図5に示すように、被曝低減領域は、撮像視野SFOVを表す円領域の円周上でmA低減投影角度範囲Rθ_odmに対応する円弧503と、アイソセンタ(iso-center)ISOに対応するその円領域の中心504とを含む扇領域505として定めることができる。
【0050】
被曝低減領域に対する被曝低減率βは、mA低減投影角度範囲Rθ_odmの角度幅Δθと、mA低減率αとに基づいて推定することができる。本例では、次式に従って、被曝低減率βの推定値を算出する。
【0051】
β=a0・α+a1・Δθ/360°+a2・α・Δθ/360° …(数式1)
ここで、βは被曝低減率、a0,a1,a2は係数、αはmA低減率、ΔθはmA低減投影角度範囲Rz_odmの角度幅である。
【0052】
この式は、次のような考えに基づいて導き出されたものである。ある個所での被曝線量(CTDI値)は、X線管21の管電流とX線81の照射時間との積に比例する。また、mA低減投影角度範囲Rθ_odmの角度幅Δθは、X線81の線量が低減された照射時間に比例する。そうすると、mA低減投影角度範囲Rθ_odmに対応する円弧503とアイソセンタISOに対応する円領域の中心504とで規定される扇領域505となる被曝低減領域では、その被曝低減分を、mA低減率αと角度幅Δθの2つの因子を用いて表現することができる。これら2つの因子による項のうち、被曝低減率への寄与率が高いと考えられる項だけを残して簡略化すると、上記の数式が得られる。
【0053】
なお、係数a0,a1,a2の値は、プローブ等による線量の実測値と上記の数式による線量の計算値との比較に基づくフィッティング(fitting)の状況によって異なる。経験的には、それぞれ、−10000<a0<+10000、−10000<a1<+10000、0<a2<10の値を取る。なお、これまでの実験やシミュレーション等からすると、被曝低減率βは、mA低減率αと角度幅Δθとを乗算して成る値を含む項による寄与率が大きいことが分かっている。そこで、簡易的には、係数a0,a1をゼロとしてもよい。これにより、より簡易的に被曝低減率βを求めることができる。
【0054】
ステップS8では、被曝低減領域に対する被曝低減率の推定値に関する情報(以下、被曝低減率情報という)を表示する。
【0055】
図7に、被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第一例を示す。第一例に係るスキャン計画画面61では、被検体40のスカウト像41と、mA低減z方向範囲Δz_odmを表す第1の図形501とを重ねて表示する。また、その横には、撮像視野(SFOV)を円領域502で表し、mA低減投影角度範囲Δθ_odmをその円領域502の円周上の円弧503で表し、被曝低減領域をその円領域502のうちの扇領域505で表した第1の画像506と、被検体40の断層像を模した模擬断層像507とを重ねて表示する。さらに、被曝低減領域に対する被曝低減率βの推定値を示すテキスト情報508を、被曝低減領域を表す扇領域505の近傍に表示する。被曝低減領域を表す扇領域505は、その被曝低減領域に対する被曝低減率βの大きさに応じた色で表示される。スキャン計画画面61には、図7に示すように、被曝低減率とその色との対応関係を示す案内図509が表示されている。本例では、被曝低減率として取り得る数値範囲を複数の範囲に分け、案内図509は、被曝低減率の各範囲の代表値とその範囲に対応する色で着色されたブロックとを対応付けて並べた構成である。本例では、被曝低減率として取り得る0〜25%を5%刻みで5つの範囲に分け、各範囲の代表値を5%,10%,15%,20%,25%とし、それぞれの範囲に対応する色を、緑,青,橙,黄,桃としている。
【0056】
なお、被曝低減領域を表す扇領域505は、その被曝低減率βの推定値に応じてその模様を変えて表示するようにしてもよい。
【0057】
操作者は、このようなスキャン計画画面を見ることで、現時点で設定されている被曝低減領域の場所と、その領域に対して推定される被曝低減率とを把握することができ、被曝低減に関して所望の設定が成されているかを確認することができる。
【0058】
ステップS9では、mA低減投影角度範囲Rθ_odmおよびmA低減率αを調整する。この調整は、スキャン計画画面61に表示されている画像をグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)にて操作・変更することにより行われる。
【0059】
操作者は、被曝低減領域を表す扇領域505の輪郭を形成する直線505a,505bの角度位置を変更することにより、mA低減開始投影角度θsおよびmA低減終了投影角度θeを調整する。また、操作者は、案内図509において、所望の被曝低減率のブロックを押下して選択する。すると、現時点での被曝低減領域に対する被曝低減率βがその選択された被曝低減率となるよう、数式1を基にmA低減率が逆算して求められる。そして、求められたmA低減率がmA低減投影角度範囲Rθ_odmにおけるmA低減率αとして設定される。被曝低減率βの推定値を示すテキスト情報508も新たな情報に更新される。
【0060】
ステップS10では、スキャン条件の確定を行う。操作者が、確定操作を行うと、現時点で設定されている、本スキャンz方向範囲Rz_scan、mA低減z方向範囲Rz_odm、mA低減投影角度範囲Rθ_odm、mA低減率αなどを含むスキャン条件が確定する。スキャン条件を再調整したい場合には、ステップS4に戻る。
【0061】
ステップS11では、確定したスキャン条件に従って、mA低減付きの本スキャンを実行する。
【0062】
ステップS12では、本スキャンによって得られた被検体の断層像を表示する。
【0063】
本例によれば、X線管21の管電流をmA低減投影角度範囲において所定のレベルより低くするスキャンにより被曝低減がなされる領域について、mA低減投影角度範囲の角度幅とmA低減率とを基にその被曝低減率を推定し、その被曝低減率に関する情報を表示するので、その被曝低減率を直接的に知ることができる。また、操作者は、関心の高い被曝低減率をベースに、mA低減率を間接的に調整することができる。
【0064】
(第二実施形態)
図8に、被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第二例を示す。第二例に係るスキャン計画画面62では、スカウト像41と、第1の図形501と、案内図509とを表示する。第1の図形501は、案内図509が示している被曝低減率と色との対応関係に基づき、被曝低減領域に対する被曝低減率βの推定値に応じた色で表示される。案内図509が占める横方向の範囲は、投影角度θと対応している。案内図509上には、mA低減開始投影角度θsに対応する縦長の第1の補助線511と、mA低減終了投影角度θeに対応する縦長の第2の補助線512とが表示されている。つまり、第1の図形501の色で被曝低減領域に対する被曝低減率βの推定値を大よそ知ることができ、また、第1および第2の補助線511,512の位置により、mA低減投影角度範囲Rθ_odmを把握することができる。
【0065】
mA低減率αの調整は、案内図509において、所望の被曝低減率のブロックを押下して選択することで間接的に行うことができる。また、mA低減投影角度範囲Rθ_odmの調整は、第1および第2の補助線511,512の位置を変更することで行うことができる。
【0066】
本例によれば、第一例と同様に、被曝低減領域に対する被曝低減率βの推定値と、mA低減投影角度範囲Rθ_odmとを容易に把握することができる。また、そのような把握をしながら、mA低減率αを、より関心の高い被曝低減率をベースに調整したり、mA低減投影角度範囲Rθ_odmを調整したりすることができる。
【0067】
(第三実施形態)
図9に、被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第三例を示す。本例では、被検体40の予備スキャンデータを基に、mA低減z方向範囲Rz_odm内のスライスSL1の実断層像513を再構成する。第三例に係るスキャン計画画面63では、その実断層像513と、mA低減投影角度範囲Rθ_odmを撮像視野SFOVの円領域502における円周上の円弧503で表した第1の画像506とを重ねて表示する。また、被曝低減領域を表す扇領域505の近傍にまたはその上に重ねて、被曝低減率βの推定値を示すテキスト情報508を表示する。
【0068】
mA低減率αの調整は、被曝低減率情報を、所望の被曝低減率に書き換えることで間接的に行うことができる。また、mA低減投影角度範囲Rθ_odmの調整は、扇領域505の輪郭を形成する第1および第2の直線505a,505bの角度位置を変更することで行うことができる。
【0069】
本例によれば、被検体40と、設定されているmA低減投影角度範囲Rθ_odmとの位置関係を正確に把握することができる。また、そのような把握をしながら、mA低減率αを、より関心の高い被曝低減率をベースに調整したり、mA低減投影角度範囲Rθ_odmを調整したりすることができる。
【0070】
(第四実施形態)
図10に、被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第四例を示す。第四例に係るスキャン計画画面64では、被曝線量測定用のCTDIファントムを表すファントム像514と、mA低減投影角度範囲を撮像視野SFOVの円領域502における円周上の円弧503で表し、被曝低減領域をその円領域502における扇領域505で表した第1の画像506とを重ねて表示する。また、被曝低減領域を表す扇領域505の近傍にまたはその上に重ねて、被曝低減率βの推定値を示すテキスト情報508を表示する。
【0071】
mA低減率αの調整は、テキスト情報508を、所望の被曝低減率に書き換えることで行うことができる。また、mA低減投影角度範囲Rθ_odmの調整は、扇領域505の輪郭を形成する第1および第2の直線505a,505bの角度位置を変更することで行うことができる。
【0072】
本例によれば、ファントムを用いて被曝線量を測定している状況を想像しながら、被曝低減領域Qに対する被曝低減率βを把握することができる。また、そのような把握をしながら、mA低減率を、より関心の高い被曝低減率をベースに調整したり、mA低減投影角度範囲Rθ_odmを調整したりすることができる。
【0073】
(第五実施形態)
図11に、被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第五例を示す。第五例に係るスキャン計画画面65では、スカウト像41と、第1の図形501と、z方向における被曝率γの変化を幾何学的に示すグラフ515とを、z方向の座標を共通にして表示する。被曝率γは、X線管21の管電流を低減しない場合、すなわち、ここではmA曲線の通りに変調させた場合の被曝線量を100%とするものである。つまり、被曝率γ=100%−被曝低減率βである。
【0074】
mA低減率αの調整は、グラフ515を変更することで間接的に行うことができる。
【0075】
本例によれば、z方向において、被検体40のどの範囲がどの程度の被曝率でスキャンされるかを直感的に把握することができる。また、そのような把握をしながら、mA低減率αを、より感心の高い被曝率をベースに調整することができる。
【0076】
(第六実施形態)
図12に、被曝低減率情報が表示されたスキャン計画画面の第六例を示す。第六例に係るスキャン計画画面66では、横軸を投影角度θ、縦軸を被曝率γとする座標空間520において、mA低減開始投影角度θsに対応する座標に縦長に配される第1のバー516と、mA低減終了投影角度θeに対応する座標に縦長に配される第2のバー517と、第1および第2のバーの間に、被曝率γに対応する座標に横長に配される第3のバー518とを表示する。
【0077】
mA低減率αの調整は、第3のバー518を縦方向にスライドさせることで間接的に行うことができる。また、mA低減投影角度範囲Rθ_odmの調整は、第1および第2のバー516,517を横方向にスライドさせることで行うことができる。
【0078】
本例によれば、これらの第1〜第3のバーを見るだけで、mA低減投影角度範囲Rθ_odmおよび被曝率γを直感的に把握することができる。また、そのような把握をしながら、mA低減率αを、より感心の高い被曝率をベースに調整したり、mA低減投影角度範囲Rθ_odmを調整したりすることができる。
【0079】
なお、発明の実施形態は、上記に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
【0080】
また、上記の実施形態は、いずれもX線CT装置に係るものであるが、本発明は、X線CT装置とPETまたはSPECTとを組み合わせたPET−CT装置やSPECT−CT装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 操作コンソール
2 入力装置
3 中央処理装置
5 データ収集バッファ
6 モニタ
7 記憶装置
10 撮影テーブル
12 クレードル
15 回転部
20 走査ガントリ
21 X線管
22 X線コントローラ
23 コリメータ
24 X線検出器
25 DAS
26 回転部コントローラ
29 制御コントローラ
30 スリップリング
40 被検体
41 スカウト像
501 第1の図形
502 円領域
503 円弧
504 円領域の中心
505 扇領域
505a 第1の直線
505b 第2の直線
506 第1の画像
507 模擬断層像
508 テキスト情報
509 案内図
511 第1の補助線
512 第2の補助線
513 実断層像
514 ファントム像
515 グラフ
516 第1のバー
517 第2のバー
518 第3のバー
61 第一例に係るスキャン計画画面
62 第二例に係るスキャン計画画面
63 第三例に係るスキャン計画画面
64 第四例に係るスキャン計画画面
65 第五例に係るスキャン計画画面
66 第六例に係るスキャン計画画面
81 X線
100 X線CT装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体をスキャンする際に、所望の体軸方向範囲における所望の投影角度範囲において、X線照射出力を所定のレベルから所望の出力低減度で低減するX線CT装置であって、
前記投影角度範囲の角度幅と前記出力低減度とに基づいて、撮像視野を表す円領域の円周上における前記投影角度範囲に対応する円弧と該円領域の中心とを含む扇領域に対する被曝低減度を推定する推定手段と、
前記推定された被曝低減度を表す情報を表示する表示手段とを備えたX線CT装置。
【請求項2】
前記推定手段は、1回転分の角度に対する前記角度幅の割合と前記出力低減度とを乗算して成る値に基づいて、前記被曝低減度を推定する請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記投影角度範囲を幾何学的に示す画像と前記被曝低減度を表す画像とを対応付けて表示する請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記扇領域を表す画像を、前記被曝低減度の大きさに応じた色または模様で表示する請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記被検体の予備的なスキャンにより得られたスカウト像上で前記体軸方向範囲を幾何学的に示す画像を、前記被曝低減度の大きさに応じた色または模様で表示する請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記表示手段は、投影角度を示す軸上で前記投影角度範囲を幾何学的に示す画像を、前記被曝低減度の大きさに応じた色または模様で表示する請求項1、請求項2または請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記被検体の予備的なスキャンにより得られた、前記体軸方向範囲内のスライスの断層像と、前記扇領域を表す画像とを重ねて表示する請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記表示手段は、被曝線量測定用のファントムを表すファントム像と、前記扇領域を表す画像とを重ねて表示する請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記表示手段は、前記被検体の予備的なスキャンにより得られたスカウト像上で前記体軸方向範囲を幾何学的に示す画像と、前記被検体の体軸方向における前記被曝低減度または該被曝低減度によって定まる被曝度の変化を幾何学的に示す画像とを表示する請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記表示手段は、横軸を投影角度とし、縦軸を前記扇領域の被曝度とする座標空間において、前記投影角度範囲の開始および終了の投影角度に対応するそれぞれの位置に縦長の図形を表す画像を表示するとともに、前記被曝度の推定値に対応する位置に横長の図形を表す画像を表示する請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記表示手段により表示された画像に対する操作者による変更または操作を受け付け、該画像の変更または操作に基づいて、前記投影角度範囲および前記出力低減度のうち少なくとも一方を調整する調整手段をさらに備えている請求項3から請求項10のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記所定のレベルは、CT自動露出機構により決定される請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−245126(P2012−245126A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118540(P2011−118540)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】