説明

[3−(4−{2−ブチル−1−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−フェニル]−1H−イミダゾール−4−イル}−フェノキシ)−プロピル]−ジエチルアミンの結晶形態

本発明は、RAGE仲介疾患の処置に有用な[3−(4−{2−ブチル−1−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−フェニル]−1H−イミダゾール−4−イル}−フェノキシ)−プロピル]−ジエチルアミン(“化合物I”)の結晶形態に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引照
本出願は、35 USC 119(e)のもとで、米国仮特許出願No.60/921,964、2007年4月5日出願、および米国仮特許出願No.60/925,786、2007年4月23日出願、に基づく優先権を主張し、それらの開示内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、[3−(4−{2−ブチル−1−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−フェニル]−1H−イミダゾール−4−イル}−フェノキシ)−プロピル]−ジエチルアミン(“化合物I”)の結晶形態および療法薬としてのそれの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
終末糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycation Endproducts(RAGE))は、免疫グロブリンスーパーファミリーの細胞表面分子のメンバーである。種々の組織および臓器においてRAGEが活性化されると、多数の病態生理学的結果が生じる。RAGEは、下記を含めた多様な状態に関係することが指摘されている:急性および慢性の炎症(Hofmann et al., Cell 97:889-901 (1999))、糖尿病後期合併症の発症、たとえば血管透過性の増大(Wautier et al., J. Clin. Invest. 97:238-243 (1995))、腎障害(Teillet et al., J. Am. Soc. Nephrol. 11: 1488-1497 (2000))、アテローム性硬化症(Vlassara et. al., The Finnish Medical Society DUODECIM, Ann. Med. 28:419-426 (1996))、および網膜障害(Hammes et al., Diabetologia 42:603-607 (1999))。RAGEは、アルツハイマー病(Yan et al., Nature 382: 685-691, (1996))、勃起機能不全、ならびに腫瘍の浸潤および転移(Taguchi et al., Nature 405: 354-357, (2000))に関係することも指摘されている。
【0004】
終末糖化産物(AGE)、S100/カルグラヌリン(calgranulin)/EN−RAGE、β−アミロイド、CML(Nε−カルボキシメチルリジン)、およびアンホテリシンなどのリガンドがRAGEに結合すると多様な遺伝子の発現が改変されることが示された。たとえば、多くの細胞タイプにおいて、RAGEとそれのリガンドの相互作用により酸化的ストレスが発生し、その結果、フリーラジカル感受性転写因子NF−κBが活性化され、NF−κBにより調節されるサイトカインIL−1β、TNF−αなどの遺伝子が活性化される。さらに、他の幾つかの調節経路、たとえばp21rasを伴う経路も活性化される。
【0005】
MAPキナーゼであるERK1およびERK2は、RAGEへのAGEその他のリガンドの結合によって活性化されることが示された。事実、RAGE自体の転写が少なくとも部分的にNF−κBにより調節される。こうして、リガンド結合により開始される正のフィードバックループによって、上向きの、しばしば有害な変動が活発になる。したがって、RAGEに対する過剰濃度のAGEその他のリガンドがもたらす病態生理学的変化をダウンレギュレートするために、RAGEへの生理的リガンドの結合に拮抗することが本発明者らの目標である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hofmann et al., Cell 97:889-901 (1999)
【非特許文献2】Wautier et al., J. Clin. Invest. 97:238-243 (1995)
【非特許文献3】Teillet et al., J. Am. Soc. Nephrol. 11: 1488- 1497 (2000)
【非特許文献4】Vlassara et. al., The Finnish Medical Society DUODECIM, Ann. Med. 28:419-426 (1996)
【非特許文献5】Hammes et al., Diabetologia 42:603-607 (1999)
【非特許文献6】Yan et al., Nature 382: 685-691, (1996)
【非特許文献7】Taguchi et al., Nature 405: 354-357, (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、RAGEへの生理的リガンドの結合に拮抗する化合物および医薬組成物の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[3−(4−{2−ブチル−1−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−フェニル]−1H−イミダゾール−4−イル}−フェノキシ)−プロピル]−ジエチルアミン(“化合物I”)の製造、ならびに終末糖化産物受容体(RAGE)のアンタゴニストとしてのそれの使用および多様な病的状態の処置におけるそれの使用が、米国特許公開No.2004−0082542および米国特許公開No.2005−0026811に記載されており、それらの全体を本明細書に援用する。そのような疾患または病的状態には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:急性および慢性の炎症、アミロイド症、アルツハイマー病、癌、腫瘍の浸潤および転移、腎不全、または自己免疫関連の炎症、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、乾癬、多発性硬化症、低酸素症、卒中、心臓発作、出血性ショック、敗血症、臓器移植、糖尿病後期合併症の発症、たとえば血管透過性の増大、糖尿病性腎障害、糖尿病性網膜障害、糖尿病性足潰瘍、心血管合併症、糖尿病性神経障害、創傷治癒障害、勃起機能不全、ならびに骨粗鬆症。化合物Iおよびその製造が米国特許公開No.2004−0082542の実施例406に例示されている。
【0009】
1観点において本発明は、化合物Iの多型形態を提供する。1態様において本発明は、化合物Iの第1多型である形態Iを提供する。他の態様において本発明は、化合物Iの第2多型である形態IIを提供する。他の観点において本発明は、化合物Iの多型を製造するための方法を提供する。
【0010】
他の観点において本発明は、化合物Iの1以上の多型形態を含む医薬組成物を提供する。
他の観点において本発明は、化合物Iの1以上の多型形態を含む医薬組成物を調製するための方法を提供する。
【0011】
他の観点において本発明は、1以上のRAGE仲介疾患を処置する方法であって、化合物Iの1以上の多型形態をその必要がある対象に投与すること含む方法を提供する。本発明の処置方法の態様は、療法有効量の化合物Iの1以上の多型を含む医薬組成物を投与することを含むことができる。
【0012】
本発明のこれらおよび他の態様を、以下の本発明の詳細な記述にさらに詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、形態Iの粉末X線粉末回折パターンである。
【図2】図2は、形態IIの粉末X線粉末回折パターンである。
【図3】図3は、形態IのSSNMRスペクトルである。
【図4】図4は、形態IIのSSNMRスペクトルである。
【図5】図5は、形態IのFT−IRスペクトルである。
【図6】図6は、形態IIのFT−IRスペクトルである。
【図7】図7は、形態Iのラマンスペクトルである。
【図8】図8は、形態IIのラマンスペクトルである。
【図9】図9は、形態Iの多型の熱重量分析である。
【図10】図10は、形態IIの多型の熱重量分析である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
広義の本発明について述べる数値範囲およびパラメーターは概括的なものにすぎないが、具体例中に述べた数値は可能な限り厳密に報告されている。しかし、いずれの数値も本来、それらの検査測定それぞれにみられる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含む。さらに、本明細書に開示するすべての範囲は、それに含まれるすべての下位範囲(subrange)をすべて包含すると理解すべきである。たとえば“1〜10”の表示範囲は、最小数値1と最大数値10の間(およびそれらの数値を含む)のすべての下位範囲、すなわち、最小数値1またはそれより上、たとえば1〜6.1で始まり、最大数値10またはそれ未満、たとえば5.5〜10で終わる、すべての下位範囲を含むとみなすべきである。さらに、“本明細書に援用する”という表現はいずれも、それの全体を援用すると理解すべきである。
【0015】
重量パーセントとは、組成物中の1成分の特定の重量をその組成物中のすべての成分の総重量で割ることを意味する。重量%は、重量/重量パーセントまたは%(重量/重量)または質量パーセント(percent by massまたはmass percent)と互換性をもって使用でき、それらとほぼ同じものを意味する。液体溶質を用いる場合、容量/容量パーセントまたは%(vol/vol)または容量パーセントを用いる方がしばしば実用的であり、それらはすべて同義語であるとみなされる。ppm(百万分率)、ppb(10億分率)、pph(百分率)は、質量ではなく量(quantity)を基準とするパーセントを示すためにしばしば用いられる(すなわち、より多数の原子または分子(それが気体、液体または固体のいずれであっても)を含む組成物中の特定のタイプの原子または特定のタイプの分子の量を、全組成物中の原子または分子の総量で割る)。用いられる他の用語は、溶液のリットル当たりのモル数であるモル濃度、および溶液のキログラム当たりのモル数である重量モル濃度である。他の濃度単位はモル分率であり、これは特定の成分のモル数を溶液の全成分の総モル数で割ったものである。モルパーセントはモル分率に関連し、モル分率に100を掛けたものである。
【0016】
さらに、本明細書中で用いる単数形“a”、“an”および“the”には、明白かつ決定的に1つの対象に限定されない限り、複数の対象が含まれることを認識すべきである。
【0017】
用語“RAGE仲介疾患”は、本明細書中で、下記を含む1以上の状態、疾患または病的状態を表わすために用いられるが、これらに限定されない:下記を含めた急性および慢性の炎症:皮膚の炎症、たとえば乾癬、リウマチ性関節炎、アトピー性皮膚炎、ならびに肺の炎症、たとえば喘息および慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、糖尿病関連の合併症、腎不全、糖尿病関連の高脂血性アテローム性硬化症、神経細胞毒性、再狭窄、ダウン症候群、頭部外傷関連の認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイド症、下記を含めた自己免疫疾患:自己免疫に関連する、または臓器、組織もしくは細胞の移植に関連する炎症、創傷治癒障害、歯周疾患、神経障害、神経変性、血管透過性、腎障害、アテローム性硬化症、網膜障害、アルツハイマー病、勃起機能不全、腫瘍の浸潤および/または転移、骨粗鬆症、ならびに糖尿病後期合併症の発症、たとえば血管透過性の増大、腎障害、網膜障害および神経障害。化合物Iの多型形態を含む医薬組成物を用いて、対象においてRAGEに拮抗することもできる。
【0018】
用語“療法有効量”は、本明細書中で、目的とする対象の療法応答を誘発する化合物Iの多型の量を表わすために用いられる。1態様において、療法応答はRAGEに拮抗するものであってもよい。
【0019】
本発明に用いる、第2多型形態を“実質的に含まない”第1多型形態には、第2形態の完全な不存在、または通常の分析方法では容易に検出できない量の第2形態が含まれる。そのような通常の分析方法には、本発明の形態Iおよび形態IIの特性を解明するために用いられる分析方法が含まれる:DSC、固相13C NMR、ラマン、X線粉末回折、中間IR(たとえばFT−IR)および近IR。1態様において、1以上の通常の分析方法では容易に検出できない多型形態の量は、5重量パーセント未満である。他の態様において、1以上の通常の分析方法では容易に検出できない多型形態の量は、3重量パーセント未満である。他の態様において、1以上の通常の分析方法では容易に検出できない多型形態の量は、2重量パーセント未満である。他の態様において、1以上の通常の分析方法では容易に検出できない多型形態の量は、1重量パーセント未満である。他の態様において、1以上の通常の分析方法では容易に検出できない多型形態の量は、0.5重量パーセント未満である。
【0020】
他の態様において、化合物Iおよび投与の量または血中濃度は、アミロイド症の回復に十分なレベルで十分な時間、RAGEの生物学的機能を阻害するのに十分なものであってよい。
【0021】
療法有効量は、対象において一日当たり100mg未満の用量レベルの化合物を投与することにより達成できる。他の態様において、投与量レベルは一日当たり1mgより多量の化合物である。他の態様において、投与量レベルは一日当たり5、10または20mgの化合物である。
【0022】
本明細書中で用いる用語“処置”は、対象が罹患しているある状態または障害についての完全な処置範囲を表わし、その障害から生じる1以上の症状の軽減または改善からその障害の発症または進行の遅延までが含まれる。
【0023】
1観点において、本発明は化合物Iの多型形態を提供する。
1態様において本発明は、149.7および141.0ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0024】
他の態様において本発明は、153.0、149.7、141.0、27.6および13.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0025】
他の態様において本発明は、157.9、153.0、149.7、141.0、131.4、33.8、27.6および13.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0026】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして16.5および26.8にX線粉末回折ピークを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
他の態様において本発明は、2θ°で表わして13.1、16.5、22.4および26.8にX線粉末回折ピークを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0027】
他の態様において本発明は、149.7および141.0ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有し、かつ1016および1223cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0028】
他の態様において本発明は、149.7および141.0ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有し、かつ335および787cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0029】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして16.5および26.8にX線粉末回折ピークを有し、かつ1016および1223cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0030】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして16.5および26.8にX線粉末回折ピークを有し、かつ335および787cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0031】
他の態様において本発明は、149.7および141.0ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有し、かつ697、870、1016および1223cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0032】
他の態様において本発明は、149.7および141.0ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有し、かつ266、293、335、653、787および1497cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0033】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして16.5および26.8にX線粉末回折ピークを有し、かつ697、870、1016および1223cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0034】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして16.5および26.8にX線粉末回折ピークを有し、かつ266、293、335、653、787および1497cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0035】
他の態様において本発明は、335および787cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
他の態様において本発明は、266、293、335、653、787および1497cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態Iを提供する。
【0036】
他の態様において本発明は、実質的に形態IIを含まない、化合物Iの形態Iを提供する。
他の態様において本発明は、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99重量%、またはそれ以上の形態Iを含む結晶形態であってよい、化合物Iの形態を提供する。
【0037】
他の態様において本発明は、153.6、140.1および119.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
他の態様において本発明は、153.6、149.0、140.1、119.9および28.6ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0038】
他の態様において本発明は、153.6、149.0、140.1、123.2、121.6、119.9および28.6ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0039】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして18.8および20.1にX線粉末回折ピークを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
他の態様において本発明は、153.6、140.1および119.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有し、かつ816、1046および1178cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0040】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして18.8および20.1にX線粉末回折ピークを有し、かつ816、1046および1178cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0041】
他の態様において本発明は、153.6、140.1および119.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有し、かつ300および1180cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0042】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして18.8および20.1にX線粉末回折ピークを有し、かつ300および1180cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0043】
他の態様において本発明は、153.6、140.1および119.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有し、かつ660、707、735、816、969、1024、1046、1135および1178cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0044】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして18.8および20.1にX線粉末回折ピークを有し、かつ660、707、735、816、969、1024、1046、1135および1178cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0045】
他の態様において本発明は、153.6、140.1および119.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有し、かつ257、300、326、590、646、1180、1348および1370cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0046】
他の態様において本発明は、2θ°で表わして18.8および20.1にX線粉末回折ピークを有し、かつ257、300、326、590、646、1180、1348および1370cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0047】
他の態様において本発明は、300および1180cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
他の態様において本発明は、257、300、326、590、646、1180、1348および1370cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物Iの形態IIを提供する。
【0048】
他の態様において本発明は、実質的に形態Iを含まない、化合物Iの形態IIを提供する。
他の態様において本発明は、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99重量%、またはそれ以上の形態IIを含む結晶形態であってよい、化合物Iの形態を提供する。
【0049】
他の態様において本発明は、形態Iと形態IIの混合物を含む結晶形態であってよい化合物Iの形態を提供する。形態Iと形態IIの重量比は、それぞれ9:1〜1:9であってもよい。他の態様において、形態Iと形態IIの重量比は9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8または1:9である。
【0050】
本明細書に開示するすべての態様について、ピーク位置再現性は2θ°(XRPD)、ppm(13C固相NMR)、およびcm−1(IRおよびラマン)の数値に関連する。したがって、本明細書に開示するすべてのピークが、開示したもの±各分析技術に付随するピーク位置再現性の数値をもつことは理解されるであろう。XRPDピーク位置再現性は、2θ°で表わして±0.2である。13C NMRピーク位置再現性は、±0.2ppmである。IRピーク位置再現性は、±2cm−1である。ラマンピーク位置再現性は、±2cm−1である。
【0051】
化合物Iおよびその製造は、米国特許公開No.2004−0082542、実施例406に例示されている。化合物Iを製造するための他の方法を後記の実施例のセクションに記載する。
【0052】
他の観点において本発明は、化合物Iの多型を製造するための方法を提供する。ある態様において、化合物Iの多型を製造するための方法は下記を含む:化合物Iを液相が形成されるまで部分真空中で、ある期間加熱し;化合物Iを液相が形成される温度より低温に冷却する。ある態様においては、化合物Iを約70℃に加熱する。他の態様においては、化合物Iを室温に冷却する。他の態様において、この方法により製造される多型は形態Iである。他の態様においては、化合物Iをヘキサンから沈殿させ、次いで酢酸エチルに溶解し、続いて液相が形成される温度より高温に加熱することにより酢酸エチルを除去する。
【0053】
他の態様において本発明は、化合物Iの多型を製造するための、下記を含む方法を提供する:化合物Iを、アルコール系溶媒を含む溶媒系に溶解し、化合物Iが溶媒系から沈殿するような沈殿溶媒を溶媒系に添加し、そして沈殿を溶媒系から回収する。アルコール系溶媒は、1〜8個の炭素原子および少なくとも1つの−OH基をもつ溶媒であり、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、sec−ブチルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、および多価アルコール、たとえばエチレングリコール、ならびにその混合物が含まれるが、これらに限定されない。ある態様において、アルコール系溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、およびその混合物からなる群から選択される。他の態様において、沈殿溶媒系は水を含む。他の態様において、この方法により製造される多型は形態IIである。他の態様において、溶解する工程は溶媒系を加熱することを含む。溶媒系を、周囲温度より高く最高で還流温度を含む温度に加熱することができる。
【0054】
他の態様において、沈殿を溶媒系から回収する工程は、溶媒系を冷却することを含む。溶媒系を約0℃より低温に冷却することができる。他の態様において、この方法はさらに、採集した沈殿を部分真空中で、ある温度に、ある期間、加熱する工程を含むことができ、その際この温度は液相が形成される温度を超えない。
【0055】
化学的変換または分解が起きていないことを保証するために、それぞれの多型の純度をHPLCにより確認し、次いでそれの物理化学的特性、たとえばDSC、X線粉末回折、赤外スペクトル、ラマンスペクトル、および/または固相13C NMRにより、特性解明することができる。
【0056】
他の観点において本発明は、化合物Iの1以上の多型形態を含む医薬組成物を提供する。1態様において、医薬組成物は化合物Iの形態I、および医薬的に許容できる賦形剤、希釈剤、キャリヤー、またはその混合物を含む。他の態様において、医薬組成物は化合物Iの形態II、および医薬的に許容できる賦形剤、希釈剤、キャリヤー、またはその混合物を含む。他の態様において、医薬組成物は化合物Iの形態Iおよび形態II、ならびに医薬的に許容できる賦形剤、希釈剤、キャリヤー、またはその混合物を含む。
【0057】
他の観点において本発明は、化合物Iの形態Iおよび/または形態IIを含む医薬組成物を調製する方法をも提供する。1態様において、医薬組成物を調製する方法は、化合物Iの形態Iを、医薬的に許容できる賦形剤、希釈剤、キャリヤー、またはその混合物と組み合わせることを含む。他の態様において、医薬組成物を調製するための方法は、化合物Iの形態IIを、医薬的に許容できる賦形剤、希釈剤、キャリヤー、またはその混合物と組み合わせることを含む。他の態様において、医薬組成物を調製するための方法は、化合物Iの形態Iおよび形態IIを、医薬的に許容できる賦形剤、希釈剤、キャリヤー、またはその混合物と組み合わせることを含む。
【0058】
化合物Iの形態I、形態II、またはその混合物を含む本発明の医薬組成物は、経口使用に適切な剤形、たとえば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、分散性の散剤もしくは顆粒剤、または硬もしくは軟カプセル剤であってもよい。経口使用のための組成物はいずれか既知の方法に従って調製でき、そのような組成物は、医薬的に洗練された美味な製剤を得るために、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1種類以上の物質を含有することができる。
【0059】
錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、分散性の散剤もしくは顆粒剤、または硬もしくは軟カプセル剤は、化合物Iの1種類以上の多型を、そのような錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、分散性の散剤もしくは顆粒剤、または硬もしくは軟カプセル剤の加工に適切な無毒性の医薬的に許容できる賦形剤と混合して含有することができる。これらの賦形剤は、たとえば不活性希釈剤、たとえば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、微結晶性セルロース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;造粒剤および崩壊剤、たとえばコーンスターチ、クロスカルメロースナトリウム、またはアルギン酸;結合剤、たとえばデンプン、ゼラチンまたはアラビアゴム;ならびに滑沢剤または流動促進剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、コロイド状二酸化ケイ素またはタルクであってもよい。硬ゼラチンカプセル剤は、化合物Iの1種類以上の多型を不活性の固体状の賦形剤、希釈剤、キャリヤー、またはその混合物と組み合わせたものを収容することができる。
【0060】
“医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤または賦形剤”は、生物活性物質を哺乳動物、たとえばヒトに送達するために当技術分野で一般に許容されている媒質である。そのようなキャリヤーは、一般に当業者が容易に決定および説明しうる範囲の多数の要因に従って配合される。限定ではないが、これらには、配合される有効薬剤のタイプおよび性質;その薬剤を含有する組成物を投与される対象;意図する組成物の投与経路;ならびに標的とする適応症が含まれる。医薬的に許容できるキャリヤーおよび賦形剤には、水性および非水性の両方の液体媒質、ならびに多様な固体および半固体の剤形が含まれる。そのようなキャリヤーは、有効薬剤のほかに多種多様な成分および添加剤を含有することができ、そのような追加成分は、有効薬剤の安定化など当業者に周知であるさまざまな理由で配合物中に含有される。医薬的に許容できる適切なキャリヤー、およびそれらの選択に伴う要因についての記載は、容易に入手できる多様な情報源、たとえばRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, ペンシルベニア州イーストン 1985中にみられ、その内容を本明細書に援用する。
【0061】
他の態様において本発明は、療法有効量の化合物Iを含む医薬組成物であって、療法有効量の化合物IがRAGE仲介障害の治療に十分な量を構成する組成物を提供する。他の態様において本発明は、療法有効量の化合物Iを含む医薬組成物であって、療法有効量の化合物IがRAGE仲介障害の予防に十分な量を構成する組成物をも提供する。他の態様において、医薬組成物は療法有効量の化合物Iの形態Iを含むことができる。他の態様において、医薬組成物は療法有効量の化合物Iの形態IIを含むことができる。他の態様において、医薬組成物は療法有効量の化合物Iの形態Iと形態IIの混合物を含むことができる。
【0062】
他の観点において本発明は、RAGE仲介疾患を処置する方法であって、化合物Iの1以上の多型形態をその必要がある対象に投与すること含む方法を提供する。この方法は、療法有効量の化合物Iを含む医薬組成物をその必要がある対象に投与することを含むことができる。
【0063】
本発明の医薬組成物は、一日当たり100mg未満の化合物の用量レベルで投与することができる。他の態様において、投与量レベルは一日当たり1mgより多量の化合物である。キャリヤー物質と組み合わせて単一剤形を製造しうる有効成分の量は、処置されるホストおよび個々の投与様式に応じて異なるであろう。たとえば限定ではない一例において、ヒトに経口投与するための投与単位剤形、たとえば錠剤またはカプセル剤は、100mg未満の化合物Iを適切かつ好都合な量のキャリヤー物質と共に含有することができる。他の態様において、投与量レベルは一日当たり1mgより多量の化合物である。他の態様において、投与量レベルは一日当たり5、10または20mgの化合物である。
【0064】
投与量は、処置される対象の具体的な臨床状態に基づいて医師が個別化することができる。したがって、個々のいずれかの対象についての具体的な投与量レベルが多様な要因に依存することは理解されるであろう;これには、使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排出速度、薬剤の組合わせ、および療法を受ける特定の疾患の重症度が含まれる。
【実施例】
【0065】
分析法
X線粉末回折分析
形態IおよびIIのX線粉末回折パターン分析は、Bruker D5000回折計により銅放射線(波長:1.54056Å)を用いて実施された。管電圧およびアンペア数をそれぞれ40kVおよび40mAに設定した。拡散および散乱スリットを1mmに設定し、受信スリットを0.6mmに設定した。回折線をKevex PSI検出器で検出した。2.4°/分(1秒/0.04°のステップ)で3.0°から40°の2θまでのθ−2θ連続走査を用いた。アルミナ基準物質を分析して、計測器整合を検査した。データを収集し、Bruker axisソフトウェア、バージョン7.0を用いて分析した。試料はそれらを石英製ホルダーに入れることにより用意された。Eva Application 7.0.0.1ソフトウェアを用いてXRPDスペクトルを視覚化および評価した。ピーク検索を行なうまでXRPDデータファイル(.raw)を処理しなかった。一般に、閾値1および幅値0.3を用いて、予備ピーク割り当てを行なった。自動割り当ての出力を視覚検査して有効性を確認し、必要ならば手動で調整を行なった。
【0066】
XRPDピーク位置再現性は、2θ°で表わして±0.2である。
固相核磁気共鳴分光分析
13C SSNMR法:約80mgの試料を4mmのZrOスピナーに密に充填した。低い温度(公称270K;回転による摩擦熱を補償するため)および圧力で、広径Bruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計内に配置したBruker−Biospin 4mm BL三重共鳴CPMASプローブによりスペクトルを収集した。回転サイドバンドの強度を最小限に抑えるために、試料をマジックアングルに配置し、15.0kHzで回転させた。適切な信号−対−ノイズ比が得られるように走査数を調整した。
【0067】
13C固相スペクトルをプロトンデカップリング交差分極マジックアングルスピニング実験(proton decoupled cross-polarization magic angle spinning experiment(CPMAS))により収集した。約90kHzのプロトンデカップリング磁界を付与した。2ミリ秒の交差分極接触時間を用いた。各試料につき最低330の走査を収集した。リサイクル遅れを約1.5T1Hに調整した。結晶質アダマンタンの外部基準物質を用いてスペクトルの基準とし、それのアップフィールド共鳴を29.5ppmに設定した。
【0068】
13C NMRピーク位置再現性は±0.2ppmである。
IR分光分析
計測器法:KBrビームスプリッターおよびd−TGS KBr検出器を備えたThermoNicolet Magna 560 FT−IR分光計を用いて、IRスペクトルを取得した。Specac Golden Gate Mk II単反射ダイヤモンドATRアクセサリーをサンプリングに用いた。解像度4cm−1において同時走査100でスペクトルを収集した。収集範囲は4000〜650cm−1であった。Happ−Genzelアポダイゼイションを用いた。ATR手法には追加の試料調製が不必要である。ThermoNicolet Omnic 6.0aソフトウェアピークピッキングアルゴリズムを用いてピークを同定した。一般に閾値0および感度値90を用いて予備ピーク割り当てを行なった。自動割り当ての出力を視覚検査して有効性を確認した。必要と思われた場合、手動調整を行なった。適切ならば、さらに3200〜2600cm−1、2400〜1800cm−1および1800〜650cm−1におけるピークを感度100で割り当てた。これらの設定は、解像されないショルダーが分離ピークとして同定されないように選択された。
【0069】
IRピーク位置再現性は±2cm−1である。
ラマン分光分析
計測器法:1064nm NdYAGレーザーおよびInGaAs検出器を備えたThermoNicolet 960 FT−ラマン分光計を用いて、ラマンスペクトルを収集した。試料をNMR管内で分析した。レーザーパワー1Wおよび同時走査100を用いてスペクトルを収集した。収集範囲は3700〜100cm−1であった。ThermoNicolet Omnic 6.0aソフトウェアピークピッキングアルゴリズムを用いてピークを同定した。一般に閾値0および感度値90を用いて予備ピーク割り当てを行なった。自動割り当ての出力を視覚検査して有効性を確認した。必要と思われた場合、手動調整を行なった。適切ならば、さらに3300〜2500cm−1および1700〜100cm−1におけるピークを感度100で割り当てた。これらの設定は、解像されないショルダーが分離ピークとして同定されないように選択された。すべてのスペクトルを解像度4cm−1およびHapp−Genzelアポダイゼイションを用いて記録した。ポリスチレンを用いて波長目盛定めを行なった。
【0070】
ラマンピーク位置再現性は±2cm−1である。
熱重量分析(TGA)
TGAは、TA Instruments 2950熱重量分析計を用いて実施された。検量基準物質はニッケルおよびAlumel(商標)であった。試料をアルミニウム製試料皿に入れ、TG炉に装入した。試料をまず25℃で平衡化し、次いで窒素流下に加熱速度10℃/分で最終温度350℃まで加熱した。
【0071】
示差走査熱量測定
DSC法A:DSCは、TA Instruments 2920示差走査熱量測定器を用いて実施できる。試料をアルミニウム製DSC皿に入れ、重量を精確に記録する。皿を蓋で覆い、次いでクリンプさせる。この試料セルを25℃で平衡化し、窒素パージ下に速度10℃/分で最終温度250℃まで加熱する。インジウム金属を検量基準物質として用いる。報告した温度は最大転位におけるものである。
【0072】
DSC法B:DSCは、Mettler AT 261示差走査熱量測定器を用いて実施することもできる。DSC法Bのために、試料をアルミニウム製DSC皿に入れ、重量を正確に記録する。皿を蓋で覆い、次いでクリンプさせる。この試料を25℃で平衡化し、窒素パージ下に速度10℃/分で最終温度150℃まで加熱する。報告した温度は最大転位におけるものである。
【0073】
化合物Iの製造
4−アセトキシアセトフェノン(1.0当量)のジクロロメタン中における溶液に、氷浴上で臭素(1.05当量)を添加した。臭素は0℃で徐々に添加された。氷浴を取り除き、反応が完了するまで周囲温度で撹拌を続けた(HPLCでモニターした)。反応混合物を真空濃縮すると4−アセトキシ−α−ブロモアセトフェノンが得られ、これをさらに精製せずに用いた。
【0074】
4−アセトキシ−α−ブロモアセトフェノン(1.0当量)および炭酸水素ナトリウム(1.9当量)のメタノール/ジクロロメタン(8/1)中における溶液に、室温で4−クロロフェノキシアニリン(1.0当量)を添加した。反応が完了した後(HPLCにより確認)、混合物を濾過し、得られたアミノアセトフェノン誘導体(黄色固体)をメタノールで洗浄し、真空乾燥した。次いでアミノアセトフェノン誘導体を水、続いてメタノールで洗浄し、30〜60℃で真空乾燥した。
【0075】
アミノアセトフェノン誘導体(1.0当量)、トリエチルアミン(2.0当量)のジクロロメタン中における溶液に、氷浴上で塩化バレリル(1.5当量)を添加した。反応をHPLCによりモニターした。反応が完了した後、混合物を室温に高め、溶媒を真空下で除去した。酢酸エチルを添加してN−(4−クロロフェノキシフェニル)−N−(4−アセトキシベンゾイルメチル)−n−ペンタンアミド生成物を溶解し、溶液を濾過した。酢酸エチルを真空中で除去すると生成物が黄色液体として得られ、これをさらに精製せずに用いた。
【0076】
N−(4−クロロフェノキシフェニル)−N−(4−アセトキシベンゾイルメチル)−n−ペンタンアミド(1.0当量)の酢酸および酢酸アンモニウム中における溶液を、100〜110℃で加熱した。反応が完了した後(HPLCにより確認)、混合物を冷却し、冷却した水に添加した。生じた固体を濾過し、水で洗浄し、風乾し、次いでジエチルエーテル、続いて酢酸エチルで洗浄し、風乾し、最後に30〜60℃で真空乾燥して、4−{1−[4−(4−クロロフェノキシ)フェニル]−2−(1−ブチル)−1H−イミダゾール−4−イル}フェノールを得た。
【0077】
最終工程において、4−(1−[4−(4−クロロフェノキシ)フェニル]−2−(1−ブチル)−1H−イミダゾール−4−イル)フェノールを3−ジエチルアミノ−1−クロロプロパンで炭酸カリウムの存在下にアルキル化することにより、化合物Iを合成した。
【0078】
3−ジエチルアミノ−1−クロロプロパンは、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール(1.0当量)をクロロホルム中で塩化チオニル(2.0当量)と反応させることにより合成された。生成物をジエチルエーテル中に抽出し、溶媒を真空下で除去し、蒸留により精製した。
【0079】
4−(1−[4−(4−クロロフェノキシ)フェニル]−2−(1−ブチル)−1H−イミダゾール−4−イル)フェノール(1.0当量)および3−ジエチルアミノ−1−クロロプロパン(1.05当量)を、アセトン中で炭酸カリウム(1.5当量)の存在下に還流した。反応が完了した後(HPLCにより確認)、混合物を室温に冷却し、濾過した。濾過した溶液を真空濃縮し、化合物Iをヘキサンで沈殿させ、濾過し、真空乾燥させることができる。生成物を下記によってさらに精製することができる:酢酸エチルに溶解し、炭酸ナトリウム溶液、続いて塩化ナトリウム溶液で洗浄する。次いで有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させることができる。次いで酢酸エチルを真空下で除去し、化合物Iを液相が形成される温度より高いかまたは低い温度で真空乾燥させることができる。
【0080】
濾過した溶液をアセトン/ヘキサンから沈殿させることもできる。採集した沈殿を次いでメタノールに溶解し、水の添加により沈殿させ、続いて濾過し、液相が形成される温度より低い温度で真空乾燥させることができる。
【0081】
形態I
化合物Iの形態Iは、下記の方法に従って製造することができる。
3kgロットの化合物Iを、実施例Bに記載した合成により製造した;その際、最終工程は、化合物Iをヘキサンから沈殿させ、次いで酢酸エチルに溶解し、その後、残留する酢酸エチルを真空中で70℃において除去することを伴う。この温度で液相が形成される。この液相化合物Iを、乾燥および溶媒除去用のトレイに注入した。室温に冷却した時点で、固体化合物Iを細かく砕き、乳鉢と乳棒で摩砕して形態Iを得た。
【0082】
形態Iを、X線粉末回折(XRPD)、赤外分光分析、固相13C NMR、ラマン分光分析、示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析により特性解明した。
結晶形態Iは、Bruker D5000回折計によりCuKα線を用いて測定して、2θ°で表わした相対強度≧3.4%の相対強度をもつ下記のX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0083】
【表1−1】

【0084】
【表1−2】

【0085】
相対強度は結晶のサイズおよび形態に応じて変化する可能性がある。
形態Iについての2θ°の代表的な数値は13.1、16.5、22.4および26.8である。形態Iについての2θ°の特に代表的な数値は16.5および26.8である。
【0086】
結晶形態Iは、下記の13C固相NMRシフトを特徴とする:
【0087】
【表2】

【0088】
(a)29.5ppmにおける固相アダマンタンの外部試料を基準とした;
(b)ピーク高さとして定義。強度はCPMAS実験パラメーターの実際の設定および試料の熱履歴に応じて変動する可能性がある。CPMAS強度は必ずしも定量的ではない。
【0089】
形態Iについての代表的な13C NMR化学シフトは下記のものである:
【0090】
【表3】

【0091】
形態Iは、下記のFT−IRピークを特徴とする:
【0092】
【表4−1】

【0093】
【表4−2】

【0094】
形態Iについての代表的なFT−IRピークは下記のものである:
【0095】
【表5】

【0096】
形態Iは、下記のラマンピークを特徴とする:
【0097】
【表6−1】

【0098】
【表6−2】

【0099】
形態Iについての特に代表的なラマンピークは下記のものである:
【0100】
【表7】

【0101】
熱重量分析は、図9に示すように、25℃から250℃までで約0.1%wt/wt以下の無視できる減量を示した。
傾斜速度10℃/分でDSC法Aおよび試料サイズ5.31mgを用いて、形態Iの第1バッチのDSCプロフィールは60.1℃に吸熱ピークを示した。
【0102】
傾斜速度10℃/分でDSC法Bおよび試料サイズ4.86mgを用いて、形態Iの第2バッチのDSCプロフィールは62.8℃に吸熱ピークを示した。
形態II
化合物Iの形態IIは、下記の方法に従って製造することができる。
【0103】
形態IIは下記により製造された;化合物I(2g)を1mLのメタノールに溶解した。この溶液に3mLの蒸留水を添加し、水を添加すると直ちに沈殿がみられた。この溶液を室温に一夜保持した。固体を濾過し、約4時間、真空乾燥した。固体をさらにGenevac真空オーブン内において2ミリバール、40℃で60時間乾燥させて、形態II(1.7g)を得た。
【0104】
形態IIは下記によっても製造された;化合物I(2g)を6mLのアセトンに溶解し、この溶液を20分間加熱した。アセトンを蒸発により可能な限り除去した。この残留物に2mLの試薬用アルコール(90%のエタノール、5%のメタノールおよび5%のイソプロパノール)を添加し、続いて6mLの水を添加した。水を添加すると直ちに沈殿がみられた。この溶液をフリーザー内に一夜保持した。固体化合物Iを濾過し、水で洗浄し、Genevac真空オーブン内において2ミリバール、35℃で80時間乾燥させた。生じた固体化合物Iの一部(200mg)を液相が形成されるまで加熱し、さらに60℃で6時間乾燥させて、形態IIを得た。
【0105】
形態IIは下記によっても製造された;化合物I(30g)を30mLのアセトンに溶解し、この溶液を20分間加熱した。アセトンを蒸発により可能な限り除去した。この残留物に30mLの試薬用アルコールを添加し、続いて90mLの水を添加した。水を添加すると直ちに沈殿がみられた。この溶液を室温に30時間保持した。固体化合物Iを濾過し、約4時間真空乾燥し、Genevac真空オーブン内において2ミリバール、40℃で100時間乾燥させて、形態II(26.0g)を得た。
【0106】
形態IIは下記によっても製造された;化合物I(2g)を1mLのメタノールに溶解し、この溶液を氷浴中で冷却した。この溶液に、撹拌しながら3mLの蒸留水を徐々に添加した。撹拌を室温でさらに数時間続けた。固体化合物Iを濾過し、真空オーブン内において50℃で36時間乾燥させて、形態II(1.7g)を得た。
【0107】
形態IIを、X線粉末回折(XRPD)、赤外分光分析、固相13C NMR、ラマン分光分析、示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析により特性解明した。
結晶形態IIは、Bruker D5000回折計によりCuKα線を用いて測定して、2θ°で表わした相対強度≧6.0%の相対強度をもつ下記のX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0108】
【表8−1】

【0109】
【表8−2】

【0110】
相対強度は結晶のサイズおよび形態に応じて変化する可能性がある。
形態IIについての2θ°の代表的な数値は18.8および20.1である。
形態IIは、下記の13C固相NMR化学シフトを特徴とする:
【0111】
【表9】

【0112】
(a)29.5ppmにおける固相アダマンタンの外部試料を基準とした;
(b)ピーク高さとして定義。強度はCPMAS実験パラメーターの実際の設定および試料の熱履歴に応じて変動する可能性がある。CPMAS強度は必ずしも定量的ではない。
【0113】
形態IIについての代表的な13C NMR化学シフトは下記のものである:
【0114】
【表10】

【0115】
形態IIは、下記のFT−IRピークを特徴とする:
【0116】
【表11−1】

【0117】
【表11−2】

【0118】
形態IIについての代表的なFT−IRピークは下記のものである:
【0119】
【表12】

【0120】
形態IIは、下記のラマンピークを特徴とする:
【0121】
【表13−1】

【0122】
【表13−2】

【0123】
形態IIについての特に代表的なラマンピークは下記のものである:
【0124】
【表14】

【0125】
熱重量分析は、図10に示すように、25℃から250℃までで約0.1%wt/wt以下の無視できる減量を示した。
傾斜速度10℃/分でDSC法Aおよび試料サイズ4.87mgを用いて、形態IIの第1バッチのDSCプロフィールは58.9℃に吸熱ピークを示した。
【0126】
傾斜速度10℃/分でDSC法Bおよび試料サイズ6.38mgを用いて、形態IIの第2バッチのDSCプロフィールは62.5℃に吸熱ピークを示した。
本発明の多様な目的を満たすための本発明の多様な態様を記載した。これらの態様は本発明の原理の説明にすぎないことを認識すべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなくその多数の改変および適用を当業者は容易になしうるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
149.7および141.0ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、化合物I、形態Iの多型。
【請求項2】
153.0、149.7、141.0、27.6および13.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、請求項1に記載の多型。
【請求項3】
157.9、153.0、149.7、141.0、131.4、33.8、27.6および13.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、請求項2に記載の多型。
【請求項4】
1016および1223cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、請求項1に記載の多型。
【請求項5】
697、870、1016および1223cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、請求項4に記載の多型。
【請求項6】
335および787cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項1に記載の多型。
【請求項7】
266、293、335、653、787および1497cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項6に記載の多型。
【請求項8】
2θ°で表わして16.5および26.8にX線粉末回折ピークを有する、化合物I、形態Iの多型。
【請求項9】
2θ°で表わして13.1、16.5、22.4および26.8にX線粉末回折ピークを有する、請求項8に記載の多型。
【請求項10】
1016および1223cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、請求項8に記載の多型。
【請求項11】
697、870、1016および1223cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、請求項10に記載の多型。
【請求項12】
335および787cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項8に記載の多型。
【請求項13】
266、293、335、653、787および1497cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項12に記載の多型。
【請求項14】
335および787cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物I、形態Iの多型。
【請求項15】
266、293、335、653、787および1497cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項14に記載の多型。
【請求項16】
実質的に形態IIを含まない、請求項1、8または14に記載の多型。
【請求項17】
50重量%以上の請求項1、8または14の化合物Iの形態Iを含む、化合物Iの形態。
【請求項18】
少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99重量%の形態Iを含む、請求項17に記載の化合物Iの形態。
【請求項19】
形態が結晶質である、請求項17に記載の化合物Iの形態。
【請求項20】
153.6、140.1および119.9ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、化合物I、形態IIの多型。
【請求項21】
153.6、149.0、140.1、119.9および28.6ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、請求項20に記載の多型。
【請求項22】
153.6、149.0、140.1、123.2、121.6、119.9および28.6ppmにピークを含む固相13C NMRスペクトルを有する、請求項21に記載の多型。
【請求項23】
816、1046および1178cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、請求項20に記載の多型。
【請求項24】
660、707、735、816、969、1024、1046、1135および1178cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、請求項23に記載の多型。
【請求項25】
300および1180cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項20に記載の多型。
【請求項26】
257、300、326、590、646、1180、1348および1370cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項25に記載の多型。
【請求項27】
2θ°で表わして18.8および20.1にX線粉末回折ピークを有する、化合物I、形態IIの多型。
【請求項28】
816、1046および1178cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、請求項27に記載の多型。
【請求項29】
660、707、735、816、969、1024、1046、1135および1178cm−1にピークを含むIRスペクトルを有する、請求項28に記載の多型。
【請求項30】
300および1180cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項27に記載の多型。
【請求項31】
257、300、326、590、646、1180、1348および1370cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項30に記載の多型。
【請求項32】
300および1180cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、化合物I、形態IIの多型。
【請求項33】
257、300、326、590、646、1180、1348および1370cm−1にピークを含むラマンスペクトルを有する、請求項32に記載の多型。
【請求項34】
実質的に形態Iを含まない、請求項20、27または32に記載の多型。
【請求項35】
50重量%以上の請求項20、28または32の化合物Iの形態IIを含む、化合物Iの形態。
【請求項36】
少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99重量%の形態IIを含む、請求項35に記載の化合物Iの形態。
【請求項37】
形態が結晶質である、請求項35に記載の化合物Iの形態。
【請求項38】
形態Iと形態IIの混合物を含み、形態Iと形態IIの重量比がそれぞれ9:1〜1:9である化合物Iの形態。
【請求項39】
形態Iと形態IIの重量比がそれぞれ9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8または1:9である、請求項38に記載の化合物Iの形態。
【請求項40】
化合物Iの多型を製造する方法であって、化合物Iを液相が形成されるまで部分真空中で、ある期間加熱し;そして化合物Iを液相が形成される温度より低温に冷却することを含む方法。
【請求項41】
化合物Iを約70℃に加熱する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
化合物Iの多型が形態Iである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
化合物Iの多型を製造する方法であって、
(a)化合物Iを、アルコール系溶媒を含む溶媒系に溶解し;
(b)化合物Iが溶媒系から沈殿するような沈殿溶媒を溶媒系に添加し;そして
(c)沈殿を溶媒系から回収する
ことを含む方法。
【請求項44】
アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびその混合物からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
沈殿溶媒が水を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
化合物Iの多型が形態IIである、請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−523559(P2010−523559A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502079(P2010−502079)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/003325
【国際公開番号】WO2008/123914
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(502031821)トランス テック ファーマ,インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】TRANSTECH PHARMA,INC.
【住所又は居所原語表記】4170 Mendenhall Oaks Parkway,Suite 110 High Point,NC 27265 U.S.A.
【Fターム(参考)】