説明

kremenおよび/またはwntの異常発現に関連する疾患の診断および治療用組成物

【課題】異常なWntシグナルカスケードに関連する疾患の診断および治療のための手段を提供すること。
【解決手段】(a)Kremen1および/またはkremen2ポリペプチドとスクリーニング対象の化合物とを接触させる工程;および
(b)化合物が該ポリペプチドの活性に影響するか否か、または前記ポリペプチドと化合物との結合が生じるか否かを測定する工程
を含む、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドに対する結合パートナーを同定することに基づく、wntシグナルカスケードを調節する化合物の同定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レセプターKremen1および/またはKremen2をコードする遺伝子の異常発現に関連する疾患、例えば、腫瘍、腎臓、骨および眼の疾患、脂質ならびにグルコース代謝および肥満の診断ならびに治療に有用な組成物に関する。本発明はまた、(a)Kremen1および/または2をコードする遺伝子の発現または(b)Kremen1および/または2レセプターの活性を改変することができる化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Wntシグナルカスケードは、例えば、ショウジョウバエ、ツメガエルおよびマウスにおいて示されるように、胚形成の間、および成体における細胞の生存、増殖および分化の調節に関して重要な役割を果たす(NusseおよびVarmus, Cell 69 (1992), 1073-1087)。Wnt遺伝子は、「縮れ(frizzled)」と呼ばれるWntレセプターを介して十分に特徴付けられたシグナルカスケードを活性化する分泌糖タンパク質をコードする。縮れに加えて、Wntは、低密度タンパク質レセプター関連タンパク質(LRP)ファミリーのメンバー、LRP5およびLRP6からなるコレセプターを使用し、そのシグナルを伝達する(Zorn, Curr.Biol. 11 (2001), R592-595)。LRPは、種々の疾患において重要な役割を果たす。本出願に最も関連して、最近の研究では、タンパク質の新規ファミリー、Dkk(「Dickkopf」)が、Wntのインヒビターとして作用することが同定され得た。DKK1は、WntコレセプターLRP 5/6(Zorn, Curr.Biol. 11(2001), R592-595)に結合し、阻害し、したがってLRP5/6関連疾患を診断および/または処置するための重要なツールを提供しうる(WO02092015)。このシグナルカスケードのエフェクターの他の顕著なメンバーはβ-カテニンおよびAPC腫瘍サプレッサー遺伝子である(MillerおよびMoon, Genes Dev. 10 (1996), 2527-2539)。
【0003】
Wntシグナル伝達カスケードおよびその成分は、その活性を調節することを望ましくする種々の疾患において重要な役割を果たす:
i)癌
腫瘍形成は、遺伝子の変化および環境因子が細胞増殖および分化を調節する細胞プロセスの規制を解くと考えられる複雑な多段階プロセスを表す。いくらかの研究により、異常なWntシグナルカスケードが大腸癌、乳癌および黒色腫の発生に関連することが示されている(Pfeifer, Science, 275 (1997), 1752-1753; Polakis, Genes Dev. 14 (2000), 1837-1851)。Wntシグナルカスケードのタンパク質をコードする最初の遺伝子int-1は、マウス乳腺癌ウイルス(MMTV)から単離され、オンコジーンであることが示され得た。したがって、Wntシグナルの下流のWntシグナルカスケード、例えば、β-カテニンおよびAPCのWntおよび/または成分の活性の異常調節は腫瘍形成に関与することが十分に立証されている。
【0004】
ii)骨疾患
Wntシグナルは骨形成を促進する(例えば、Yang, Development, 130 (2003), 1003-15; Fischer, J.Biol.Chem. 277 (2002) 30870-30878)。この見解に一致して、Dkk1阻害に対する耐性を導くWntレセプターLRP5の機能獲得変異は、高度に骨疾患を引き起こす(Boydenら、346 (2002) N Engl J Med, 1513-21.; Littleら、70 (2002) Am J Hum Genet, 11-9)。逆に、LRP5の相互作用変異は、ヒトにおいて骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群を導く(Katoら、157 (2002) J Cell Biol, 303-14.; Gongら、107 (2001) Cell, 513-23)。
【0005】
iii)眼疾患
WntレセプターLRP5の不活性化変異は、ヒトにおいて偽神経膠腫を導き、マウスにおいて眼先天性異常を導く(Katoら、157 (2002) J Cell Biol 303-314; Gongら、107 (2001) Cell, 513-523)。
【0006】
iv)腎臓
異常Wntシグナル伝達は、腎臓線維症(Surendran, Am J Physiol Renal Physiol 282 (2002) 431-441)および腎多嚢胞病(Saadi-Kheddouci, Oncogene 20 (2001) 5972-5981)に関連する。
【0007】
v)脂質およびグルコース代謝、肥満
マウスのLRP5欠陥症は、キロミクロン残留の肝臓クリアランスの低下のために、高脂肪食餌を与えたマウスにおいて血漿コレステロールレベルの増大を導く。さらに、通常の食餌を与えた場合、LRP5-欠損マウスは、顕著なグルコース耐性の障害を示す(Fujinoら、100 (2003) Proc Natl Acad Sci USA, 229-234)。マウスへのLRP5アンタゴニストDkk1の投与は、種々の細胞株においてグルコース取り込みを減少させ、脂肪沈積を減少させる(WO02/066509)。
【0008】
したがって、上記から、dkkによるWnt/LRPシグナル伝達および拮抗効果が種々のヒト疾患に関連することは明らかである。dkkファミリーのインヒビターによるWnt/LRPシグナルカスケードの調節の機構については殆ど知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、調節から外れた(dis-regulated)シグナルカスケードに関連する疾患の治療または診断の手段は利用可能でなかった。したがって、信頼できる診断分子マーカーの使用は、異常なWntシグナルカスケードに関連する疾患の分子基礎の理解に役立ちうる。かかるマーカーはまた、上記に詳述されるように、Wntシグナルカスケード依存性疾患の治療に、および処置のための新規治療手段の開発に有用であることが期待されうる。
【0010】
したがって、本発明の基礎となる技術的課題は、異常なWntシグナルカスケードに関連する疾患の診断および治療のための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題の解決法は、特許請求の範囲に特徴付けられる態様を提供することにより達成される。本発明を得る実験の間に、2つの遺伝子、kremen1および2が、ポリペプチドDkk1およびDkk2(これら自身はWntレセプターLRP5およびLRP6のモジュレーターである)に対する高い親和性をともなって結合する産物として同定され得た。この結合は生理学的関連性があることが示され得た。なぜなら、dkk1ならびにkremen1および2での細胞の共トランスフェクションがWntシグナルカスケードの活性化の相乗的阻害を生じるからである。これらのデータは、Kremen(1および2)がDkkポリペプチドのレセプターと見なされ得ること、およびKremenの生物学的機能がDkkポリペプチドを介するWnt-LRPシグナルカスケードの阻害を媒介することを示す。得られたデータは、kremenの発現が非常に広範であり、Kremenをコードする遺伝子が種々の生物学的機能に関することの証拠を提供する。したがって、Kremenは、腫瘍抑制、骨形成、コレステロールおよびグルコース代謝(糖尿病を含む)、肥満、腎臓病および眼疾患が挙げられるがこれらに限定されないWnt-LRP媒介疾患の診断および治療の開発に有用である。例えば、kremenの発現の増大および/またはポリペプチド自身の活性の刺激によるWntシグナルカスケードの阻害が治療効果を有しうることが予想されうる。同様に、例えば、kremenの発現を減少することにより、および/またはポリペプチド自身の活性を抑制することによるWntシグナルカスケードの活性化が治療効果を有しうることが予想されうる。他方で、Kremenレセプター(またはそれをコードする遺伝子)は、治療に有用な化合物の同定を可能にする薬物標的と見なされうる。
【0012】
本発明の要旨は、
〔1〕(a)Kremen1および/またはkremen2ポリペプチドとスクリーニング対象の化合物とを接触させる工程;および
(b)化合物が該ポリペプチドの活性に影響するか否か、または前記ポリペプチドと化合物との結合が生じるか否かを測定する工程
を含む、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドに対する結合パートナーを同定することに基づく、wntシグナルカスケードを調節する化合物の同定方法、
〔2〕(a)Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドとともに候補化合物をインキュベートする工程;
(b)生物学的活性をアッセイする工程、および
(c)該ポリペプチドの生物学的活性が変化したか否かを測定する工程
を含む、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドのアクチベーター/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニストとしてwntシグナルカスケードを調節する化合物の同定方法、
〔3〕候補化合物またはスクリーニング対象の化合物が、Kremen1および/またはKremen2を認識する抗体である、〔1〕または〔2〕記載の方法、
〔4〕候補化合物またはスクリーニング対象の化合物が小分子である、〔1〕または〔2〕記載の方法、
〔5〕候補化合物またはスクリーニング対象の化合物が核酸である、〔1〕または〔2〕記載の方法、
〔6〕スクリーニングがKremen1および/またはKremen2を発現する細胞を含む、〔1〕〜〔5〕いずれか記載の使用、
〔7〕アッセイが細胞無含有調製物を使用して実施される、〔1〕〜〔5〕いずれか記載の使用、
〔8〕Dkk1/Dkk2、LRP5/LRP6およびフリズルド(frizzled)を含むWntシグナルカスケードの阻害のための医薬組成物の調製のための、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドに特異的に結合し得る〔2〕の方法によって得られ得る少なくとも1つのインヒビター/アンタゴニストの使用、
〔9〕医薬組成物が、癌、骨疾患、眼疾患、腎臓障害、脂質およびグルコース代謝、肥満の治療のためのものである、〔8〕記載の使用、
〔10〕医薬組成物が、腫瘍形成の治療のためのものである、〔9〕記載の使用、
〔11〕医薬組成物が、大腸癌、乳癌または黒色腫の治療のためのものである、〔9〕または〔10〕記載の使用、
〔12〕医薬組成物が、高度な骨疾患または骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群の治療のためのものである、〔9〕記載の使用、
〔13〕医薬組成物が、偽神経膠腫の治療のためのものである、〔9〕記載の使用、
〔14〕医薬組成物が、腎臓線維症または腎多嚢胞病の治療のためのものである、〔9〕記載の使用、
〔15〕インヒビター/アンタゴニストが、Kremen1および/またはKremen2を認識する抗体である、〔9〕記載の使用
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、異常なWntシグナルカスケードに関連する疾患の診断および治療のための手段が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、(a)図1に示されるKremen1をコードするヌクレオチド配列および/または図2に示されるKreme2をコードするヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つの核酸分子、または(b)Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドに特異的に結合することができる少なくとも1つのリガンドを含有する診断組成物に関する。
【0015】
本明細書中で使用される用語「Kremen1ポリペプチド」および「Kremen2ポリペプチド」は、図1および/または2に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドだけでなく、1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失および/または置換のためにアミノ酸配列において異なり、Kremen1および/またはKremen2レセプターの少なくとも1つの生物学的活性、例えば、リガンド結合後のシグナル伝達の能力を示すポリペプチドをも言う。好ましくは、関連するポリペプチドは、そのアミノ酸配列が図1または2に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に少なくとも40%の同一性、詳細には少なくとも65%の、好ましくは少なくとも80%の、特に好ましくは少なくとも90%の同一性を示すポリペプチドを示すものである。
【0016】
プローブとして有用な核酸分子は、DNAおよびRNA分子の両方であり得、好ましくはそれらは一本鎖DNA分子である。それらは、天然の供給源から単離されうるか、または公知の方法に従って合成されうる。
【0017】
ハイブリダイゼーションプローブとして核酸分子が使用され得、これは、例えば、図1および2それぞれに示されるヌクレオチド配列、またはこれらの配列の一部に正確に、または基本的に相補的であるヌクレオチド配列を有する。ハイブリダイゼーションプローブとして使用される断片は、従来の合成方法により産生される合成断片でありうる。
【0018】
本明細書中で使用される用語「ハイブリダイズ」は、従来のハイブリダイゼーション条件下、好ましくは、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されるようなストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションに関する。しかし、ある場合には、ハイブリダイズする核酸分子はまた、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件において検出されうる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーおよびシグナル検出の変化は、主として、ホルムアミド濃度(より低いホルムアミド濃度はより低いストリンジェンシーを生じる)、塩条件、または温度の操作により達成される。例えば、より低いストリンジェンシー濃度は、6X SSPE(20X SSPE=3M NaCl;9.2M NaH2PO4;0.02M EDTA, pH7.4)、0.5%SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNA、続いて1XSSPE、0.1%SDSを用いて50℃で洗浄する。さらに、なおより低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントハイブリダイゼーション後に行われる洗浄は、より高い塩濃度(例えば、5XSSC)で行われうる。上記条件の変化は、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑制するために使用される別のブロッキング試薬を含めること、および/または置換することにより達成されうる。特定のブロッキング試薬を含めることは、適合性の問題のために上記のハイブリダイゼーション条件の変更を必要としうる。
【0019】
用語「リガンド」は、本明細書で使用される場合、Kremen 1および/またはKremen 2に特異的に結合することができ、したがって、レセプター分子のレベルの測定を可能にする任意の分子をいう。かかる分子の例としては、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質または小分子が挙げられる。該分子は、Kremenの天然のリガンド、すなわちDkk1またはDkk2であり得るか、または該リガンドに密接に関連し得る、例えば、該リガンドの断片もしくは天然基質、リガンド、構造的もしくは機能的摸倣物であり得る;例えば、Coligan, Current Protocols in Immunology 1(2) (1991); 第5章を参照のこと。いずれの場合でも、分子は、公知の技術を用いて単離され得るか、または合理的に設計され得る;以下参照。
【0020】
好ましくは、リガンドは抗体である。用語「抗体」は、好ましくは、異なるエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体ならびに別個のモノクローナル抗体調製物から本質的になる抗体に関する。モノクローナル抗体は、当業者に周知の方法(例えば、Kohlerら, Nature 256 (1975), 495参照)により、Kremen 1またはKremen 2の断片を含有する抗原から作製される。本明細書で使用される場合、用語「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(Mab)は、Kremenに特異的に結合することができるインタクトな分子および抗体断片(例えば、FabおよびF(ab’)2断片など)を包含することが意図される。FabおよびF(ab’)2断片は、インタクトな抗体のFc断片を欠き、循環からより速やかに排除され、インタクトな抗体よりも低い非特異的組織結合を有し得る。(Wahlら, J. Nucl. Med. 24: 316-325 (1983))。したがって、これらの断片、およびFABのまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物が好ましい。さらに、本発明の抗体としては、キメラ抗体、単鎖抗体およびヒト化抗体が挙げられる。
【0021】
ある目的、例えば、診断方法のためには、プローブもしくはリガンドとして使用される核酸分子、例えば抗体は、例えば放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光性化合物、金属キレートまたは酵素により、検出可能に標識され得る。
【0022】
核酸分子は、例えば、以下に記載の診断アッセイにおけるプローブまたはプライマーとして使用され得、mRNAレベルを測定することによる、または改変された、例えば破壊された活性を伴うポリペプチド分子をもたらすか、もしくは改変された発現をもたらす、コード領域もしくは調節領域内の変異の測定によるKremen 1および2の発現の解析を可能にする。好ましくは、核酸分子は、少なくとも10、特に少なくとも15、特に好ましくは少なくとも50のヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドである。本発明のこれらの核酸分子はまた、例えば、PCR反応のプライマーとして使用され得る。
【0023】
本発明はまた、(a)Kremen 1および/またはKremen 2の異常な発現および/または(b)Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドの異常な活性に関連する疾患の診断のための診断用組成物の調製のための上記の核酸分子またはリガンドの使用に関する。
【0024】
好ましい態様において、核酸分子がハイブリダイズする標的はmRNAである。
【0025】
本発明はまた、
(a)生物学的試料中の(a)Kremen 1および/またはKremen 2の発現の量および/または(b)生物学的に活性なKremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドの量を測定する工程、および
(b)(a)Kremen 1および/またはKremen 2の異常な発現および/または(b)Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドの異常な活性に関連する疾患またはかかる疾患を発症するリスクを、対照と比較したときの(a)Kremen 1および/またはKremen 2の改変された発現の量および/または(b)生物学的に活性なKremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドの改変された活性もしくは量に基づいて診断する工程
を含む、被験体において(a)Kremen 1および/またはKremen 2の異常な発現および/または(b)Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドの異常な活性もしくは量に関連する疾患を診断する方法を提供する。
【0026】
好適なアッセイ形式は、当業者に周知であり、また、以下に記載する。ヒトKremen 1および2タンパク質を発現する好適な陽性対照試料は、例えばHEK 293細胞である。
【0027】
例えば生物学的液体または組織中のKremen 1または2ポリペプチドまたは対応するmRNAは、インサイチュー、例えばインサイチューハイブリダイゼーションにより直接検出され得るか、またはプローブと接触させる前に当業者に公知の一般的な方法により、他の細胞成分から単離され得る。検出方法としては、ノーザンブロット解析、RNAアーゼ保護、インサイチュー法、例えばインサイチューハイブリダイゼーション、インビトロ増幅法(PCR、LCR、QRNAレプリカーゼまたはRNA転写/増幅(TAS、3SR)、欧州特許公開公報第0 237 362 B1号に開示されたリバースドットブロット(reverse dot blot))、イムノアッセイ、ウェスタンブロットおよび当業者に公知の他の検出アッセイが挙げられる。
【0028】
診断用組成物のプローブ(例えば、特異的抗体または特異的オリゴヌクレオチド)は、検出可能に標識され得る。好ましい態様では、該診断用組成物は、抗Kremen 1抗体または抗Kremen 2抗体を含み、当該技術分野で周知の技術を用いて、例えばELISAによる診断を可能にし、固体支持体、例えばポリスチレンマイクロタイター皿もしくはニトロセルロース紙に結合した抗体を含む。あるいはまた、該診断用組成物は、RIAに基づくものであり、放射性同位体で標識された該抗体を含む。好適な抗体アッセイ標識は当該技術分野で公知であり、グルコースオキシダーゼなどの酵素標識、およびヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)などの放射性同位体、およびテクネチウムローダミン、およびビオチンが挙げられる。生物学的試料中Kremenレベルをアッセイすることに加え、ポリペプチドはまた、画像形成によりインビボで検出され得る。タンパク質のインビボ画像形成のための抗体標識またはマーカーとしては、X線撮影法、NMRまたはESRにより検出可能なものが挙げられる。X線撮影法に好適な標識としては、検出可能な放射線を放出するが、被験体に過剰に有害でないバリウムまたはセシウムなどの放射性同位体が挙げられる。NMRまたはESRに好適なマーカーとしては、関連するハイブリドーマのための栄養分の標識により抗体内に取り込まれ得る、ジューテリウムなどの、検出可能な特徴的なスピンを伴うものが挙げられる。放射性同位体(例えば、131I、112In、99mTc)、放射線不透過性物質または核磁気共鳴により検出可能な物質などの適切な検出可能な画像形成部分で標識されているタンパク質特異的抗体または断片は、(例えば、非経口的、皮下または腹腔内に)哺乳動物に導入される。当該技術分野においては、被験体の体格および使用される画像形成システムにより、診断用画像を形成するのに必要とされる画像形成部分の量が決定されることが理解される。放射性同位体部分の場合において、ヒト被験体では、注入される放射能の量は、通常、99mTc約5〜20ミリキュリー範囲である。次いで、標識された抗体または抗体断片は、細胞の特定のKremenポリペプチドを含む位置に優先的に蓄積される。インビボ腫瘍画像形成は、例えば、S.W. Burchielら, 「放射性標識された抗体およびその断片の免疫薬物動態(“Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments”)」に記載されている。(Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer, S.W. BurchielおよびB.A. Rhodes編、Masson Publishing Inc. (1982)の第13章)。
【0029】
さらなる局面において、本発明は、
(a)Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドをスクリーニング対象の化合物と接触させる工程、および
(b)化合物がポリペプチドの活性に影響するか否かを調べる工程
を含む、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドへの結合パートナーを同定するための方法に関する。
【0030】
本発明はまた、
(a)候補結合化合物をKremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドとインキュベートする工程、および
(b)結合が生じたか否かを調べる工程
を含む、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドに結合する化合物を同定するための方法を含む。
【0031】
Kremen 1または2ポリペプチドは、Kremen 1または2に結合するタンパク質もしくは他の化合物またはKremen 1または2が結合するタンパク質もしくは他の化合物をスクリーニングするために使用され得る。Kremen 1または2と分子との結合は、結合したKremen 1もしくはKremen 2または分子の活性を、活性化(アゴニスト)、増加、阻害(アンタゴニスト)または減少し得る。かかる分子の例としては、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えばリガンド)または小分子が挙げられる。
【0032】
好ましくは、該分子は、Kremen 1もしくは2の天然リガンド、例えば該リガンドの断片、または天然基質、リガンド、構造的もしくは機能的模倣物に密接に関連する;例えば、Coligan, Current Protocols in Immunology 1(2) (1991); 第5章を参照のこと。
【0033】
好ましくは、これらの分子のスクリーニングは、分泌されたタンパク質として、または細胞膜上にKremen 1および/またはを発現する適切な細胞の作製を伴う。好ましい細胞としては、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエまたは大腸菌由来の細胞が挙げられる。Kremen 1および/または2を発現する細胞(または発現されたポリペプチドを含有する細胞膜)は、次いで、好ましくは、潜在的に該分子を含有する試験化合物と接触させ、Kremen 1および/または2の結合、刺激または活性の阻害を観察する。
【0034】
該アッセイは、Kremen 1および/または2への候補化合物の結合を簡便に試験し得、ここで、結合は、標識により、または標識された競合物との競合を伴うアッセイにおいて検出される。さらに、該アッセイは、候補化合物がKremen 1および/またはKremen 2への結合により発生するシグナルを生じるか否かを試験し得る。Kremen 1および/または2の活性を解析するのに好適なアッセイとしては、図4に示すような、dkk1がKremen 1および/または2と相乗作用してWnt1-誘導シグナルを阻害する、トランスフェクトされたHEK 293細胞におけるWnt-誘導性ルシフェラーゼレポーターアッセイが挙げられる。
【0035】
あるいはまた、該アッセイは、細胞無含有調製物、固体支持体に固定されたポリペプチド/分子、化学物質ライブラリー、または天然産物混合物を用いて行われ得る。また、該アッセイは、単に候補化合物を、Kremen 1および/またはKremen 2を含む溶液と接触させる工程、Kremen/分子の活性または結合を測定する工程、およびKremen/分子の活性または結合を標準と比較する工程を含み得る。
【0036】
好ましくは、ELISAアッセイにより、試料(例えば、生物学的試料)中におけるKremen 1および/またはKremen 2のレベルまたは活性を、モノクローナルまたはポリクローナル抗体を用いて測定し得る。該抗体は、Kremen 1および/またはKremen 2への直接もしくは間接的な結合によるか、または基質に対してKremen 1および/またはKremen 2と競合することによるかのいずれかで、Kremen 1および/またはKremen 2のレベルまたは活性を測定し得る。これらの上記のアッセイのすべてが、診断用または予後用マーカーとして使用され得る。これらのアッセイを用いて見出された分子は、Kremen 1および/またはKremen 2分子を調節、好ましくは活性化することにより、患者において疾患を処置するため、または特定の結果(例えば、腫瘍の排除、再生プロセスの補助など)をもたらすために使用され得る。さらに、該アッセイは、適当に操作された細胞または組織からのKremen 1および/またはKremen 2の産生を阻害または増強し得る薬剤を見出し得る。
【0037】
さらに、本発明は、
(a)候補化合物をKremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドとインキュベートする工程、
(b)生物学的活性をアッセイする工程、および
(c)該ポリペプチドの生物学的活性が改変されたか否かを調べる工程
を含む、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドのアクチベータ/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニストを同定する方法を含む。
【0038】
好適なアッセイとしては、Kremen 1またはKremen 2と組換えDkk1タンパク質とLRP6組換え細胞外ドメインとの三元複合体の形成の解析が挙げられる。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、
(a)Kremen 1および/もしくはKremen 2ポリペプチドまたは該ポリペプチドを発現する細胞、ならびに任意に対応するリガンドを、スクリーニング対象の薬物候補への結合に応答して検出可能なシグナルを提供し得る成分の存在下で、接触させる工程、および
(b)シグナルの存在もしくは非存在または発生したシグナルの増加を調べる工程、ここでシグナルの存在またはシグナルの増加は、推定薬物を示す、
を含む、
(a)Kremen 1および/またはKremen 2の異常な発現および/または(b)Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドの異常な活性もしくは量に関連する疾患の治療のための薬物候補を同定して得る方法に関する。
【0040】
Kremen 1および/または2の活性を解析するのに好適なアッセイとしては、
図4に示すような、dkk1がKremen 1および/または2と相乗作用してWnt1-誘導シグナルを阻害する、トランスフェクトされたHEK 293細胞におけるWnt-誘導性ルシフェラーゼレポーターアッセイが挙げられる。
【0041】
薬物候補は、単一の化合物であっても、複数の化合物であってもよい。本発明の方法において、用語「複数の化合物」は、同一であっても同一でなくてもよい複数の物質と理解されるべきである。
【0042】
該化合物または複数の化合物は、化学的に合成されたもの、微生物により産生されたもの、および/または例えば試料、例えば、植物、動物または微生物などからの細胞抽出物に含有されたものであり得る。さらにまた、該化合物は、当該技術分野において公知であり得るが、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドを抑制または活性化し得ることが、これまで知られていないものである。反応混合物は、細胞無含有抽出物であり得るか、または細胞もしくは組織培養物を含有し得る。本発明の方法に好適な設備は、当業者に公知であり、例えば、Albertsら, Molecular Biology of the Cell, 第3版 (1994)およびその添付の実施例に一般的に記載されている。複数の化合物は、例えば、反応混合物、培養培地に添加され得るか、細胞内に注入され得るか、またはそれ以外ではトランスジェニック動物に適用される。本発明の方法で使用され得る細胞または組織は、好ましくは、宿主細胞、哺乳動物細胞または非ヒトトランスジェニック動物である。
【0043】
化合物または複数の化合物を含有する試料が本発明の方法において同定された場合、該化合物は、次いで、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドを抑制または活性化しえる化合物を含有すると同定された元の試料から単離し得るか、または、例えば、複数の異なる化合物からなる場合は、試料あたりの異なる化合物の数が低減されるように元の試料をさらに細分し、元の試料の細分化を反復し得る。試料の複雑さに依存して、上記工程は、好ましくは、本発明の方法により同定された試料が限られた数または単一の物質を含むまで数回行われ得る。好ましくは該試料は、類似した化学的および/または物理的特性を有する物質を含有し、最も好ましくは該物質は同一である。
【0044】
標的に対して特異的親和性を有する化合物を同定するための大ライブラリーを作製およびスクリーニングするいくつかの方法が当業者に公知である。これらの方法としては、無作為化ペプチドがファージによりディスプレーされ、固定されたレセプターに対するアフィニティカラムクロマトグラフィーによりスクリーニングされるファージディスプレー法が挙げられる;例えば、国際公開公報第91/17271号、国際公開公報第92/01047号、米国特許公開公報第5,223,409 A号を参照のこと。別のアプローチにおいて、チップ上に固定されたポポリマーのコンビナトリアルライブラリーを、フォトリソグラフィーを用いて合成する;例えば、米国特許公開公報第5,143,854 A号、国際公開公報第90/15070号、国際公開公報第92/10092号を参照のこと。固定されたポリマーを、標識されたレセプターと接触させ、標識についてスキャンしてレセプターに結合したポリマーを同定する。Kremen 1および/または2ポリペプチドの結合性リガンド、したがって、おそらくインヒビターおよびアクチベーターを同定するために使用され得る連続セルロース膜上でのペプチドライブラリーの合成およびスクリーニングは、例えば、Kramer, Methods Mol. Biol.87 (1998), 25-39に記載されている。この方法はまた、例えば、Kremen 1および/または2ポリペプチドの結合部位および認識モチーフを決定するために使用され得る。同様の様式で、Dnakシャペロンの基質特異性およびヒトインターロイキン-6とそのレセプターとの間の接触部位を測定した;それぞれRudiger, EMBO J. 16 (1997), 1501-1507およびWeiergraber, FEBS Lett. 379 (1996), 122-126を参照のこと。さらにまた、上記方法は、Kremen 1および/または2ポリペプチドに由来する結合スーパートープの構築のために使用され得る。類似のアプローチが、抗p24 (HIV-1)モノクローナル抗体のペプチド抗原について成功裡に記載された;Kramer, Cell 91 (1997), 799-809参照のこと。クラスター化アミノ酸ペプチドライブラリーを用いたペプチド−抗体相互作用のフィンガープリント解析に対する一般的な経路は、Kramer, Mol. Immunol. 32 (1995), 459-465に記載された。また、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドのアンタゴニストは、Doring, Mol. Immunol. 31 (1994), 1059-1067に記載の方法に従ってKremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体から誘導および同定され得る。
【0045】
これらの方法はすべて、本発明の方法に従って、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドのアクチベータ/アゴニストおよびインヒビター/アンタゴニストを同定するために使用され得る。
【0046】
かかるアクチベータまたはインヒビターの基本構造のために種々の供給源が使用され得、例えば、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチド模倣アナログが含まれる。Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチド模倣アナログまたはその生物学的に活性な断片は、例えば、該生物学的活性に必須であることが期待されるアミノ酸を、例えば、立体異性体、すなわちD-アミノ酸に置き換えることにより作製し得る;例えば、Tsukada, J. Med. Chem. 40 (1997), 3534-3541を参照のこと。さらにまた、断片が生物学的活性アナログの設計に使用される場合、プロ模倣成分は、ペプチド内に取り込まれ、元のポリペプチドの一部を除去した際に失われたであろうプロペプチドのコンホメーションの少なくとも一部を再確立する;例えば、Nachman, Regul. Pept. 57 (1995), 359-370を参照のこと。さらにまた、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドは、該ポリペプチドのリガンド、基質または結合パートナーに結合するか、またはそれらとして天然のポリペプチドと同じくらい有効に機能する合成の化学ペプチドを同定するために使用され得る;例えば、Engleman, J. Clin. Invest. 99 (1997), 2284-2292を参照のこと。例えば、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドのフォールディング模倣および構造モチーフのコンピュータによる再設計は、適切なコンピュータプログラムを用いて行ない得る(Olszewski, Proteins 25 (1996), 286-299; Hoffman, Comput. Appl. Biosci. 11 (1995), 675-679)。タンパク質フォールディングのコンピュータモデル作製は、詳細なペプチドおよびタンパク質モデルのコンホメーションおよびエネルギー解析に使用され得る(Monge, J. Mol. Biol. 247 (1995), 995-1012; Renof, Adv. Exp. Med. Biol.376 (1995), 37-45)。特に、相補ペプチド配列のコンピュータ補助サーチによるKremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドおよびそのリガンドまたは他の相互作用性タンパク質の相互作用部位の同定には、適切なプログラムが使用され得る(Fassina, Immnomethods 5 (1994), 114-120。タンパク質およびペプチドの設計のためのさらに適切なコンピュータシステムは、先行技術、例えば、Berry, Biochem. Soc. Trans. 22 (1994), 1033-1036; Wodak, Ann. N. Y. Acad. Sci. 501 (1987), 1-13; Pabo, Biochemistry 25 (1986), 5987-5991に記載されている。上記コンピュータ解析から得られる結果は、例えば、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドまたはその断片のペプチド模倣物の調製に使用され得る。該タンパク質の天然アミノ酸配列のかかる偽ペプチドアナログは、非常に効率的に親タンパク質を模倣し得る(Benkirane, J. Biol. Chem. 271 (1996), 33218-33224)。例えば、容易に利用可能なアキラルωアミノ酸残基のKremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドまたはその断片への取り込みは、脂肪族鎖のポリメチレン単位によるアミノ酸置換をもたらし、それにより、ペプチド模倣物の構築のための簡便なストラテジーを提供する(Banerjee, Biopolymers 39 (1996), 769-777)。他の系における小ペプチドホルモンの超活性ペプチド模倣物アナログは、先行技術に記載されている(Zhang, Biochem, Biophys. Res. Commun. 224 (1996), 327-331)。Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドの適切なペプチド模倣物はまた、連続的なアミドアルキル化および得られた化合物の、例えば、その結合および免疫学的特性に関する試験によるペプチド模倣物コンビナトリアルライブラリーの合成により同定され得る。ペプチド模倣物コンビナトリアルライブラリーの作製および使用のための方法は、先行技術、例えば、Ostresh, Methods n Enzymology 267 (1996), 220-234およびDorner, Bioorg. Med. Chem, 4 (1996), 709-715に記載されている。さらにまた、Kremen 1および/またはKremen 2ポリペプチドの三次元および/または結晶学的構造は、該ポリペプチドの生物学的活性を有するペプチド模倣物インヒビターの設計に使用され得る(Rose, Biochemistry 35 (1996), 12933-12944; Rutenber, Bioorg. Med. Chem, 4 (1996), 1545-1558)。
【0047】
また、たとえば、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドに対する基質またはリガンドとして作用し得る小有機化合物の模倣体を設計し、合成し、評価することができることは、当業者に周知である。たとえば、ハパロシンのD−グルコース模倣体は細胞毒性において多剤耐性補助関連タンパク質をアンタゴナイズする際にハパロシンと類似の能力を発現したことが記載されている;Dinh, J. Med. Chem. 41(1998), 981-987 を参照。
【0048】
Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドをコードする核酸分子は、また、アクチベーターおよびインヒビターに対する標的としての機能も果たし得る。アクチベーターは、たとえば、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドをコードする遺伝子のmRNAに結合し、それによりmRNAの未変性コンホメーションを安定にして転写および/または翻訳を促進する(たとえば、Tatタンパク質がHIV-RNAに作用するような方法で)タンパク質を含み得る。さらに、化合物が細胞成長または細胞死の遅延を生じている細胞の内部で結合する、確定したまたは未確定の標的RNA分子の構造を模倣したRNA断片などの核酸分子を同定するための方法が文献に記載されている;たとえばWO98/18947号およびそこに挙げられた参考文献を参照。これらの核酸分子は、薬学的に重要な未知の化合物を同定し、疾患を治療する際の使用のための未知のRNA標的を同定するのに使用され得る。これらの方法および組成物は、新規性についてまたは核酸分子によりコードされるポリペプチドの発現レベルを改変するのに有用な化合物を同定するためのスクリーニングに使用され得る。あるいは、たとえば、結合部位を模倣するRNA断片の立体配座構造は、合理的な薬剤設計に使用されて、それらを標的により頻繁に結合させることができる。かかる方法論は、核磁気共鳴(NMR)であり、これは薬剤およびRNAの立体配座構造を同定するのに有用である。また、他の方法は、たとえば、WO95/35367号、US-A-5,322,933号に記載のような、RNA断片の結晶構造が推論され、コンピュータプログラムが新規の結合化合物を設計するのに利用される薬剤設計方法である。
【0049】
本発明の方法にしたがって試験され、同定され得る化合物は、発現ライブラリー、たとえば、cDNA発現ライブラリー、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、低有機化合物、ホルモン、ペプチド模倣物、PNAなどであり得る(Milner, Nature Medicine 1 (1995), 879-880; Hupp, Cell 83(1995), 237-245; Gibbs, Cell 79(1994), 193-198および上記に挙げた参考文献)。さらに、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドの推測されるレギュレータをコードするおよび/またはKremen1および/またはKremen2ポリペプチドの上流または下流でその機能を発揮する(excert)遺伝子が、たとえば、当該分野に公知の遺伝子ターゲティングベクターを用いる、たとえば、挿入変異を用いて同定され得る。かかる化合物は、また、公知のインヒビターまたはアクチベーターの機能誘導体またはアナログであり得る。かかる有用な化合物は、たとえば、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドあるいはそれをコードする遺伝子の調節配列に結合する相互作用因子であり得る。相互作用因子の同定は、当該分野の標準的な方法を用いて行われ得る(たとえば、Sambrookを参照、上記)。タンパク質がタンパク質自身または調節配列に結合するかどうかを決定するために、標準的な天然のゲルシフト分析が行われ得る。タンパク質または調節配列に結合する相互作用因子を同定する目的で、タンパク質または調節配列を標準的なタンパク質精製方法における親和性のある試薬として、または発現ライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用され得る。また、前記のKremen1および/またはKremen2ポリペプチドと相互作用するポリペプチドをコードする核酸分子の同定は、たとえば、いわゆる、酵母「ツーハイブリッドシステム」の使用によりScofield(Science 274 (1996), 2063-2065)に記載されるように達成され得る。このシステムでは、Kremen1またはKremen2ポリペプチドあるいはそのより小さい部分は、GAL4転写因子のDNA結合ドメインに連結される。この融合ポリペプチドを発現し、適当なプロモーター(これはGAL4転写因子により認識される)により駆動されるlacZレポーター遺伝子を含む酵母株は、活性化ドメインに融合される植物性タンパク質またはそのペプチドを発現するcDNAのライブラリーで形質転換される。したがって、cDNAの一つによりコードされるペプチドがKremen1および/またはKremen2ポリペプチドのペプチドを含む融合ペプチドと相互作用することができる場合、その複合体はレポーター遺伝子の発現を指向し得る。このようにして、Kremen1およびKremen2をそれぞれコードする核酸分子、ならびにコードされたペプチドは、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドと相互作用するペプチドおよびタンパク質を同定するのに使用され得る。
【0050】
相互作用因子が一度同定されれば、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドへの結合の調整あるいはその発現の調節は、たとえば、Kremen1またはKremen2ポリペプチドへの相互作用因子の結合に対するインヒビターをスクリーニングすることから始めて、実行することができる。Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドの活性化または発現は、次いで、相互作用因子(またはそのインヒビター)あるいはそれをコードする遺伝子を、たとえば発現ベクターに適用することにより、動物において達成することができる。また、相互作用因子の活性型がダイマーである場合、相互作用因子の優性ネガティブ変異体をその活性を阻害するために作製することができる。さらに相互作用因子の同定に際して、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドの制御に関与する遺伝子の活性化(たとえば、シグナル伝達)または抑制を導くシグナルカスケードのさらなる成分が同定され得る。これらの成分の活性化の調節は、次いで、動物でのタンパク質分解の代謝を調節するさらなる薬剤および方法を開発するために追跡され得る。したがって、本発明は、また、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドのアクチベーターまたはインヒビターの同定用の前記ツーハイブリッドシステムの使用に関する。
【0051】
前記方法により単離された化合物は、また、アナログ化合物開発用のリード化合物として役立つ。アナログは、実質的にリード化合物と同じ方法で、重要な官能基をKremen1および/またはKremen2ポリペプチドあるいはそのリガンドに提示することができる、安定化された電気的な立体配座および分子構造を有しているはずである。特に、アナログ化合物は、結合領域に類似している空間的な電気的特性を有しているが、リード化合物よりも低分子であり得、しばしば約2kD未満、好ましくは約1kD未満の分子量を有する。アナログ化合物の同定は、首尾一貫した領域(self-consistent field)(SCF)の分析、配置間相互作用(CI)分析、および正常な様式動力学分析などの技術の使用により行われ得る。これらの技術を実行するためのコンピュータプログラムは入手できる;たとえば、レイン(Rein)、レセプターリガンド相互作用のコンピュータ補助モデリング(Alan Liss, New York, 1989)。化学的誘導体およびアナログの調製方法は、当業者に周知であり、たとえば、Beilstein, Handbook of Organic Chemistry, Springer編 New York Inc., 175 フィフス アベニュー、New York, N.Y. 10010 U.S.A.およびOrganic Synthesis, Wiley, New York, USAに記載されている。さらに、かかる誘導体およびアナログは、当該分野に公知の方法にしたがって、それらの作用について試験され得る;上記も参照。さらに、ペプチド模倣物および/または適当な誘導体およびアナログの設計を支援するコンピュータをたとえば、前記方法にしたがって使用することができる。
【0052】
記載された化合物が一度同定されて得られれば、治療に許容できる形で提供されることが好ましい。
【0053】
したがって、本発明は、また、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドをコードする核酸分子、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドそのもの、組み換えベクター(たとえば、以下を参照)、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドの抗体、アクチベーター/アゴニスト、インヒビター/アンタゴニストおよび/または結合パートナーならびに薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤または担体を含む医薬組成物に関する。
【0054】
好ましくは、治療目的で、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドは、図1および2に示される核酸配列の使用により組み換え的に作製される。組み換え発現用の適当なベクターは、当業者に公知である。好ましくは、それらは、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージおよび遺伝子工学の分野で通常使用される他のベクターである。本発明での使用に適当なベクターには、哺乳動物細胞での発現用のT7系発現ベクターおよび昆虫細胞での発現用のバキュロウイルス由来ベクターが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の核酸分子は、翻訳され得る原核細胞および/または真核細胞のmRNAの転写および合成を保証する本発明の組み換えベクターで調節因子に作動可能に連結される。転写されるヌクレオチド配列は、T7、メタロチオネインIまたはポリヘドリンプロモーターのようなプロモーターに作動可能に連結され得る。組み換え発現に使用される宿主細胞は、原核細胞または真核細胞、たとえば、哺乳動物細胞、細菌細胞、昆虫細胞または酵母細胞である。ポリペプチドは、培養細胞および/または培養培地から単離される。組み換え的に作製されたポリペプチドの単離および精製は、予備クロマトグラフィーならびにたとえば、抗Kremen1またはKremen2抗体を用いる親和性および免疫学的分離を含む、日常的な手法により実行され得る、あるいはSmithとJohnson, Gene 67; 31-40(1988)に記載のワンステップ法により実質的に精製され得る。
【0055】
適当な医薬担体などの例は、当該分野で周知であり、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルションなどのエマルション、種々のタイプの湿潤剤、滅菌溶液などが含まれる。かかる担体は、従来法により製剤化され得、適当な用量で被験体に投与され得る。適当な組成物の投与は、異なる方法により、たとえば、静脈、腹膜内、皮下、筋肉内、局所または皮内投与により、達成され得る。投与経路は、もちろん、疾患の性質、医薬組成物に含まれる化合物の種類に依存する。投薬計画は、主治医および他の臨床要因により決定される。医学分野でよく知られているように、任意の患者の用量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、性別、投与される特定の化合物、投与時間およびその経路、腫瘍などの疾患の種類およびその段階、身体全体の健康、ならびに同時に投与される他の薬剤を含む多くの因子に依存する。
【0056】
Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドをコードする核酸分子の送達は、直接適用によりまたは、好ましくはこれらの化合物を含むキメラウイルスなどの組み換え発現ベクターまたはコロイド状分散システムを用いることにより、達成され得る。標的部位への直接適用は、たとえば、コロイド状分散システムのように弾道(ballistic)送達により、または動脈中の部位へのカテーテルにより行われ得る。上記核酸分子の送達に使用され得るコロイド状分散システムは、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズおよび油中水エマルション(混合)を含む脂質系システム、ミセル、リポソームおよびリポプレックス(lipoplex)を含む。好ましいコロイド状システムは、リポソームである。器官特異的または細胞特異的リポソームは、所望の組織のみへの送達を達成するために使用され得る。リポソームのターゲッティングは、一般に公知の方法により当業者により行われ得る。このターゲッティングは、受動的ターゲッティング(洞様毛細血管を含む器官のRESの細胞に分布するというリポソームの生来の性向を利用する)または能動的ターゲッテッング(たとえば、周知の方法により、特定のリガンド、たとえば、抗体、レセプター、糖類、糖脂質、タンパク質などにリポソームを連結することによる)を含む。本発明において、モノクローナル抗体は、特定の組織、たとえば、腫瘍に対して、特定の細胞表面リガンドを介してリポソームを標的化するのに好適に使用される。
【0057】
遺伝子療法に有用な好ましい組み換えベクターは、ウイルスベクター、たとえば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアであり、より好ましくはレトロウイルスなどのRNAウイルスである。さらにより好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスまたはトリレトロウイルの誘導体である。本発明に使用され得るかかるレトロウイルスベクターの例は:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺癌ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)である。最も好ましくは、マウスベクターに比べてより広い宿主の範囲を示す、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)などの非ヒト霊長類レトロウイルスベクターが使用される。組み換えレトロウイルスは欠陥性であるので、感染特性を生じるためには補助が必要とされる。かかる補助は、たとえば、LTR内の調節配列の制御下で、レトロウイルスのすべての構造遺伝子をコードするプラスミドを含むヘルパー細胞系を使用することにより提供され得る。適当なヘルパー細胞系は、当業者に周知である。かかるベクターは、形質導入された細胞が同定され得るように、選択マーカーをコードする遺伝子をさらに含み得る。さらに、レトロウイルスベクターは、それらが標的特異的になるような方法において修飾され得る。これは、たとえば、糖、糖脂質、またはタンパク質、好ましくは抗体をコードするポリヌクレオチドを挿入することにより、達成され得る。当業者は、標的特異的ベクターを生じるさらなる方法を知っている。
【0058】
インビトロまたはインビボ遺伝子療法用のさらに適当なベクターおよび方法は、文献に記載され、当業者に公知である;たとえばWO94/29469号またはWO97/00957号を参照。
【0059】
標的器官、たとえば治療予定の腫瘍でのみ発現を達成するために、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドをコードする核酸分子が組織特異的プロモーターに連結されて、遺伝子療法に使用され得る。かかるプロモーターは、当業者に周知である(たとえば、Zimmermannら、(1994)Neuron 12, 11-24; Vidalら;(1990) EMBO J. 9, 833-840; Mayfordら、(1995), Cell 81, 891-904; Pinkertら、(1987) Genes & Dev. 1, 268-76)。
【0060】
本発明は、また、(a)Wntシグナルカスケードに含まれるkremen1、kremen2および/または遺伝子の異常な発現、および/または(b)Wntシグナルカスケードに含まれるKremen1、Kremen2および/またはポリペプチドの異常な活性化に関連する疾患の治療用の医薬組成物の調製用の本発明の前記化合物の使用に関する。好ましい態様において、かかる疾患は腫瘍であり、好ましくは乳癌、結腸癌または黒色腫である。
【0061】
最後に、本発明は、患者の再生プロセス(たとえば、筋肉、毛髪などのような組織の成長)をサポートするのに有用なWntシグナルカスケードを阻害するための医薬組成物調製用のKremen1および/またはKremen2の生物学的活性を有するポリペプチド、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチド、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドのアクチベーター/アゴニスト、あるいは該ポリペプチドの結合パートナーをコードするヌクレオチド分子の使用に関する。
【0062】
本発明を以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0063】
実施例1
Kremen1および2をそれぞれコードするcDNAの単離
発現ベクターpCMV-SPORT2(Gibco BRL)のマウス13.5日齢胚cDNAライブラリーを用いて、約250個のクローンのプールを調製し、各プールからプラスミドDNAを、FuGENE6(Roche)を用いて24ウェルプレート中の293T細胞内に一時的にトランスフェクトした。48時間後、細胞を1nM Dkk1-アルカリホスファターゼ(Dkk1-AP)融合タンパク質を含む培地でインキュベートし(Maoら、Nature 411(2001) 321-325)、AP組織化学について処理した。1500個のプールから、2つの陽性のプールを同定し、単一のクローンを兄妹選別により単離した。配列分析は、それらがmkremen2の独立した分離物を表すことを示した。完全長マウスkremen1クローンは、公開されたヌクレオチド配列データを用いるPCRにより同じライブラリーから単離された(Nakamuraら、Biochim. Biophys. Acta 1518(2001)、63-72)。mkremen1およびmkremen2のオープンリーディングフレームは、pCS2+にクローン化され、pCS2-mkrm1およびpCS2-mkrm2を生じた。シグナルペプチドの後にフラッグエピトープを挿入することによりpCS-flag-mkrm2を構築し、鋳型として使用することにより、PCRによりpCS-flag-mkrm2ΔWSCを得た。
【0064】
実施例2
Dkk1およびDkk2へのKremen1および2の結合は、高い親和性を示し、生理的に重要である。
結合アッセイについて、示したように、293T細胞をmkrm1またはmkrm2でトランスフェクト(T)し、組み換えDkk1アルカリホスファターゼ融合タンパク質(Dkk1-AP)またはアルカリホスファターゼ(AP)でインキュベートし、結合AP活性について染色した。その結果を図3に示す。
【0065】
図4に示すように、293T細胞におけるルシフェラーゼWntレポーターアッセイは、記載したように少なくとも3回96ウェルプレートで行った(Wuら、Curr Biol 10(2000), 1611-1614)。ルシフェラーゼ活性を、市販キット(Clonetech)を用いるレニラ(Renilla)活性に対して正規化した。Xdkk1=ゼノプスdkk1(Glinkaら、Nature 391, (1998)357-362); mkrm1,2=マウスkremen1、2; wnt=マウスwnt1;fz=マウスフリズルド8;lrp6=ヒトlrp6(Tamaiら、Nature 407 (2000) 530-535); WntルシフェラーゼレポーターTOP-FLASH(Korinekら、Science 275(1997)1784-1787)。
【0066】
図3に示すように、DKKアルカリホスファターゼ融合タンパク質のKremen2およびKremen1への結合は、それぞれ、高い親和性を示す。さらにDKK1およびDKK2のみがKremenに結合するがDKK3には結合しないということが示され得る。
【0067】
さらなる実験において、293個の腎臓細胞を、示した遺伝子を有するまたは有しないWntレポーター(TOP-FLASH)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクトの2日後、発現したルシフェラーゼ活性を測定した。図4に示すように、フリズルした(fz)、Wntおよびそのレセプターの同時トランスフェクションは、Wntシグナルカスケードの刺激を生じ(図4、レーン1対レーン2を参照)、dkk1およびkremen1およびkremen2の同時トランスフェクションは、Wntシグナルカスケードのこの活性化の相乗的な阻害をもたらす。この作用は、wntがフリズルした(fz)そのレセプターおよびコレセプターlrp6で同時トランスフェクトされた場合に、さらにより明らかである。Wntシグナルカスケード(レーン8)の非常に強い活性化を観察することができる。この活性化は、dkk1およびkremen1、2(レーン12および13)を用いる同時トランスフェクションによってのみ阻害され得るが、単独の遺伝子を用いる同時トランスフェクションによっては阻害され得ない(dkk1、レーン9;kremen2、レーン10;kremen1、レーン11)。
【0068】
実施例3
マウスの種々の組織におけるkremen1および2の発現プロフィールの測定
マウスの種々の組織におけるkremen1および2の発現は、RT-PCRにより試験された。成体マウス器官からのRNA単離およびRT-PCRアッセイを線形相増幅で、記載したようなヒストン4プライマーを用いて行った(Glinkaら、Nature 389 (1997), 517-519)。他のプライマーは:mkrm1 (f, GTGCTTCACAGCCAACGGTGCA; r, ACGTAGCACCAAGGGCTCACGT); mkrm2 (f, AGGGAAACTGGTCGGCTC; r, AAGGCACGGAGTAGGTTGC)であった。サイクル番号は、H4:26サイクル; mkrm1: 35サイクル; mkrm2: 32サイクルであった。結果は、両方のkremenが試験されたすべてのマウス組織で発現されているが、種々の発現レベルを有することを示す(図5)。同様の結果は、ツメガエル幼生を用いて得られた。
【0069】
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]ヒトKremen1をコードし、図1に記載されるヌクレオチド配列を有するか、もしくはヒトKremen2をコードし、図2に示されるヌクレオチド配列を有するか、または(b)図1に記載されるヒトKremen1をコードするヌクレオチド配列および/または図2に記載されるヒトKremen2をコードするヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズしうる核酸分子。
[2]図1に記載されるKremen1をコードするヌクレオチド配列および/または図2に記載されるKremen2をコードするヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つの核酸分子;または
(b)Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドに特異的に結合することができる少なくとも1つのリガンド
を含有してなる診断組成物。
[3]リガンドが抗体である[3]記載の診断用組成物。
[4]核酸分子が少なくとも10ヌクレオチドの長さを有する[2]または[3]記載の診断用組成物。
[5]核酸分子またはリガンドが検出可能に標識されている[2]〜[4]いずれか記載の診断用組成物。
[6]標識が、放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレートまたは酵素からなる群より選ばれる[5]記載の診断用組成物。
[7]核酸分子またはリガンドが固相支持体に結合している[2]〜[4]いずれか記載の診断用組成物。
[8](a)kremen1および/またはkremen2の異常発現および/または(b)Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドの異常な活性または量に関連する疾患の診断のための診断用組成物の調製のための[1]〜[7]いずれかに規定される核酸分子またはリガンドの使用。
[9]核酸分子がハイブリダイズする標的がmRNAである[8]記載の使用。
[10][1]記載の核酸分子によりコードされる、ヒトKremen1またはKremen2ポリペプチド。
[11](a)(a)kremen1および/またはkremen2の発現の量および/または(b)生物学的サンプル中の生物学的に活性なKremen1および/またはKremen2ポリペプチドの量を測定する工程;ならびに
(b)(a)kremen1および/またはkremen2の異常発現および/または(b)Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドの異常な活性もしくは量またはkremen1および/またはkremen2の発現量の変化および/または(b)対照と比べた生物学的に活性なKremen1および/またはKremen2ポリペプチドの量の変化に基づくかかる疾患の発達の危険性を診断する工程
を含む、被験体における(a)kremen1および/またはkremen2の異常発現および/または(b)Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドの異常活性または量に関連する疾患の診断方法。
[12](a)Kremen1および/またはkremen2ポリペプチドとスクリーニング対象の化合物とを接触させる工程;および
(b)化合物が該ポリペプチドの活性をもたらすか否か、または前記ポリペプチドと化合物との結合が生じるか否かを測定する工程
を含む、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドに対する結合パートナーの同定方法。
[13](a)Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドとともに候補化合物をインキュベートする工程;
(b)生物学的活性をアッセイする工程、および
(c)該ポリペプチドの生物学的活性が変化したか否かを測定する工程
を含む、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドのアクチベーター/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニストの同定方法。
[14](a)スクリーニング対象の薬物候補への結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる成分の存在下で、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドまたは該ポリペプチドを発現する細胞と、任意の対応するリガンドとを接触させる工程;および
(b)シグナルの存在もしくは非存在または発生したシグナルの増大を検出する工程、ここでシグナルの存在または増大は推定される薬物の指標である、
を含む、(a)Kremen1および/またはKremen2をコードする遺伝子の異常発現および/または(b)Kremen1および/またはKremen2の異常な活性または量に関連する疾患の治療のための薬物候補を同定し、得る方法。
[15]Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドのアクチベーター/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニストまたは[12]〜[14]いずれか記載の方法により得られうるポリペプチドの結合パートナー。
[16]Kremen1および/またはKremen2をコードする遺伝子の発現、またはKremen1および/またはKremen2の活性を調節することができる化合物、および薬学的に許容されうる賦形剤、希釈剤または担体を含有してなる医薬組成物。
[17]前記化合物がKremen1および/またはKremen2をコードする遺伝子の発現またはKremen1および/またはKremen2の活性を刺激する[16]記載の医薬組成物。
[18]化合物が、Kremen1および/またはKremen2の生物学的活性を有するポリペプチド、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチド、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドのアクチベーター/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニスト、または[12]〜[14]いずれか記載の方法により得られうる該ポリペプチドの結合パートナーをコードするヌクレオチド分子である[17]記載の医薬組成物。
[19](a)kremen1、kremen2および/またはwntシグナルカスケードに関連する遺伝子および/または(b)Kremen1、Kremen2および/またはWntシグナルカスケードに関連するポリペプチドの異常活性または量に関連する疾患の処置のための医薬組成物の調製のための[18]記載の化合物の使用。
[20]疾患が、腫瘍または腎臓、骨および眼の疾患、異常な脂質およびグルコース代謝または肥満に関連する疾患である[8]〜[19]記載の使用。
[21]Wntシグナルカスケードを阻害するための医薬組成物の調製のためのKremen1および/またはKremen2の生物学的活性を有するポリペプチド、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチド、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドのアクチベーター/アゴニストまたは該ポリペプチドの結合パートナーをコードするヌクレオチド分子の使用。
[22]再生プロセスを支持するための[21]記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1−1】図1:マウスおよびヒト由来のKremen1(krm1)および2(krm2)をコードするcDNAの多配列核酸アラインメント hkrm1および2は、公共のデータベースのヒトゲノム配列から推論される。同一のヌクレオチドは、黒で強調されている。全ての核酸配列は翻訳のイニシエーターATGコドンで始まる。
【図1−2】図1:マウスおよびヒト由来のKremen1(krm1)および2(krm2)をコードするcDNAの多配列核酸アラインメント hkrm1および2は、公共のデータベースのヒトゲノム配列から推論される。同一のヌクレオチドは、黒で強調されている。全ての核酸配列は翻訳のイニシエーターATGコドンで始まる。
【図1−3】図1:マウスおよびヒト由来のKremen1(krm1)および2(krm2)をコードするcDNAの多配列核酸アラインメント hkrm1および2は、公共のデータベースのヒトゲノム配列から推論される。同一のヌクレオチドは、黒で強調されている。全ての核酸配列は翻訳のイニシエーターATGコドンで始まる。
【図2】図2:マウスおよびヒトcDNAから推定されるKremen1および2タンパク質の多配列アミノ酸アラインメント(図1を参照) 同一のアミノ酸は黒で強調され、類似のアミノ酸はグレーで示される。
【図3】図3:KremenはDkk1およびDkk2の高親和性レセプターである 293T細胞を、示されるようにmkrm1(上部)またはmkrm2(下部)をコードするサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター駆動発現プラスミドでトランスフェクトし、組換えDkk1-AP、Dkk2-APまたはDkk3-APと共にインキュベートし、結合したAP活性について染色した。上部:mkrm2トランスフェクト細胞に結合したDkk-Ap融合タンパクの結合曲線およびスキャッチャード分析。下部:mkrm1トランスフェクト細胞に結合したDkk-APsの結合曲線。解離定数(Kd)が示される;a、c:結合曲線;b、d、e:スキャッチャード分析。
【図4】図4:KremenおよびDkk1は、Wntシグナルカスケードを相乗作用的に阻害する 293腎細胞を、示される遺伝子有りまたは無しでWntレセプター(TOP-FLASH)でトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、発現されたルシフェラーゼ活性を測定した。RLU:相対的光単位(共トランスフェクトしたRenillaルシフェラーゼに対して規準化された)。Xdkk1=ツメガエルdkk1;mkrm1,2=マウスkremen1,2;wnt=マウスwnt1;fz=マウス縮れ8;lrp6=ヒトlrp6。
【図5】図5:マウスにおけるkremenの発現 kremen1およびkremen2の発現を、成体マウスの種々の組織におけるRT-PCRにより解析した。構成的ヒストンH4発現を用いて結果を規準化した。略語:-RT=逆転写酵素が省略された対照サンプル;sk筋=骨格筋;mam. gland=乳腺;H4=ローディング対照としてのヒストン4;mkrm1,2=マウスkremen1、2。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Kremen1および/またはkremen2ポリペプチドとスクリーニング対象の化合物とを接触させる工程;および
(b)化合物が該ポリペプチドの活性に影響するか否か、または前記ポリペプチドと化合物との結合が生じるか否かを測定する工程
を含む、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドに対する結合パートナーを同定することに基づく、wntシグナルカスケードを調節する化合物の同定方法。
【請求項2】
(a)Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドとともに候補化合物をインキュベートする工程;
(b)生物学的活性をアッセイする工程、および
(c)該ポリペプチドの生物学的活性が変化したか否かを測定する工程
を含む、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドのアクチベーター/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニストとしてwntシグナルカスケードを調節する化合物の同定方法。
【請求項3】
候補化合物またはスクリーニング対象の化合物が、Kremen1および/またはKremen2を認識する抗体である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
候補化合物またはスクリーニング対象の化合物が小分子である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
候補化合物またはスクリーニング対象の化合物が核酸である、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
スクリーニングがKremen1および/またはKremen2を発現する細胞を含む、請求項1〜5いずれか記載の使用。
【請求項7】
アッセイが細胞無含有調製物を使用して実施される、請求項1〜5いずれか記載の使用。
【請求項8】
Dkk1/Dkk2、LRP5/LRP6およびフリズルド(frizzled)を含むWntシグナルカスケードの阻害のための医薬組成物の調製のための、Kremen1および/またはKremen2ポリペプチドに特異的に結合し得る請求項2の方法によって得られ得る少なくとも1つのインヒビター/アンタゴニストの使用。
【請求項9】
医薬組成物が、癌、骨疾患、眼疾患、腎臓障害、脂質およびグルコース代謝、肥満の治療のためのものである、請求項8記載の使用。
【請求項10】
医薬組成物が、腫瘍形成の治療のためのものである、請求項9記載の使用。
【請求項11】
医薬組成物が、大腸癌、乳癌または黒色腫の治療のためのものである、請求項9または10記載の使用。
【請求項12】
医薬組成物が、高度な骨疾患または骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群の治療のためのものである、請求項9記載の使用。
【請求項13】
医薬組成物が、偽神経膠腫の治療のためのものである、請求項9記載の使用。
【請求項14】
医薬組成物が、腎臓線維症または腎多嚢胞病の治療のためのものである、請求項9記載の使用。
【請求項15】
インヒビター/アンタゴニストが、Kremen1および/またはKremen2を認識する抗体である、請求項9記載の使用。


【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−145352(P2009−145352A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322976(P2008−322976)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【分割の表示】特願2003−584712(P2003−584712)の分割
【原出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願人】(500030655)
【Fターム(参考)】