説明

pH計洗浄装置およびpH計の洗浄方法

【課題】簡便で低コストな信頼性の高いpH計洗浄装置およびpH計の洗浄方法を提供する。
【解決手段】廃液処理設備から分岐したpH測定槽に付設されたpH計の洗浄装置であって、pH計洗浄槽と、該pH計洗浄槽の底部に洗浄液を取り出す開閉式底蓋と、洗浄液を回収する洗浄液回収槽と、該洗浄液回収槽の底部にはpH計挿通口と、洗浄液を排出するドレン口と、ドレン口に接続したドレンパイプとを設けたことを特徴とするpH計洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH計洗浄装置およびpH計の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工場等から排出される廃液をまとめて中和処理する排水処理設備では、反応槽に流入してくる排水のpH値を常時測定して、反応槽のpH値が目標値に近づくように、中和剤の注入量を増減して中和処理を行い、管理pH値範囲に処理された排水が処理水として放流される。
【0003】
通常pH測定は、排水処理設備に流入する廃液の一部を分岐したpH測定槽で行われる。pH測定槽には次々と新しい廃液が流出入するので、pH測定は連続して行われるため時間の経過と共に廃液中のスラジ等が測定用電極の表面に付着すると正確なpH測定が難しくなる。従って、定期的にpH計の測定用電極の表面を手動または自動で洗浄し、pH指示値の異常防止に努める必要がある。
【0004】
pH計の洗浄は、従来は、図4〜6に示すように、排水処理設備に流入する廃液の一部を分岐したpH測定槽にpH計を浸漬してpH測定を行う(図4)。そして、pH測定用電極が汚染した時はpH計をpH計洗浄槽内に引き上げて、薬液をポンプ等でpH計洗浄槽に注入してpH計の電極部分の洗浄を行う(図5)。洗浄に使用した薬液(pH計洗浄液)はpH測定槽にそのまま排出していた(図6)。
【0005】
pH計の洗浄については、特許文献1に、pH計の洗浄及び校正を自動で行うpH測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−164736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では、pH計の洗浄に使用した薬液(pH計洗浄液)をそのままpH測定槽に排出すると、pH測定値への影響が大きく、pH測定対象の流量によってはその影響が消えるまで大幅な時間を要する場合がある。またpH計洗浄液をそのままpH測定槽に排出すると、pH測定槽の周囲に薬液が飛散するという問題もあった。
【0008】
これに対して特許文献1記載の洗浄液の回収装置を取り付けることで、pH測定値への影響を抑えることができるが、装置の設備費が高くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、簡便で、コストの掛からない信頼性の高いpH計洗浄装置およびpH計の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、上述した課題を解決するためにpH計洗浄装置の構成を鋭意検討し、本発明に至ったものである。
【0011】
第一の発明は、廃液処理設備から分岐したpH測定槽に付設されたpH計の洗浄装置であって、pH計洗浄槽と、該pH計洗浄槽の底部に洗浄液を取り出す開閉式底蓋と、洗浄液を回収する洗浄液回収槽と、該洗浄液回収槽の底部にはpH計挿通口と、洗浄液を排出するドレン口と、ドレン口に接続したドレンパイプとを設けたことを特徴とするpH計洗浄装置である。
【0012】
第二の発明は、さらに、前記pH計挿通口には洗浄液の漏洩を防止する弁を、前記ドレンパイプにはドレンバルブを取り付けたことを特徴とする第一の発明に記載のpH計洗浄装置である。
【0013】
第三の発明は、pH計洗浄槽に設けられた洗浄液注入口から洗浄液を注入してpH計を洗浄後、pH計洗浄槽の底部に設けた底蓋を開放して、前記洗浄液を洗浄液回収槽に排出することを少なくとも1回以上行った後、前記洗浄液回収槽に貯留した洗浄液を洗浄液回収槽のドレン口に接続したドレンパイプから系外に排出することを特徴とするpH計の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明を使用すると、廉価にpH計洗浄装置を作製でき、且つ洗浄液の回収を確実に行え、また、洗浄液をpH測定槽に排出することもないので、洗浄液によるpH測定槽内の廃液pHの変動もない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のpH計洗浄装置を説明する図である。
【図2】本発明のpH計の洗浄方法を説明する図である。
【図3】本発明の洗浄液回収槽を説明する図である。
【図4】従来のpH計洗浄装置を説明する図である。
【図5】従来のpH計の洗浄方法を説明する図である。
【図6】従来の洗浄液排出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を図を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明のpH計洗浄装置を説明する図である。pH計洗浄装置は、pH計1を定期的に洗浄するpH計洗浄槽2と、該pH計洗浄槽2の底部に接続する洗浄液回収槽5とから構成され、pH測定用廃液が流出入するpH測定槽13の上部に設置される。pH計洗浄槽2には洗浄液注入口3が設けられ、該洗浄液注入口3からpH計1を洗浄する薬液4(pH計洗浄液)が注入される。
【0018】
洗浄液回収槽5は、pH計1を洗浄した薬液等を一次的に貯留する容量を有する立方体または円筒体の形状を有し、上部には、pH計洗浄槽2の底部を開閉できる底蓋6が取り付けられている。また、前記洗浄液回収槽5の底部には、ドレン口7とpH計挿通口10とが取り付けられている。
【0019】
ドレン口7にはドレンパイプが接続しており、pH計洗浄液4はドレンパイプ8から系外に排出できるので、pH測定槽13がpH洗浄液4によって汚染されることはない。さらにドレンパイプ8にはドレンバルブを取り付けておけば貯留したpH計洗浄液4の系外への排出を制御できるのでより好ましい。
【0020】
pH計挿通口10には、pH計1とpH計挿通口10との隙間からpH計洗浄液4が漏れ出るのを防止するためにゴム等で作られた弁9を取り付けても良い。
【0021】
pH測定槽13には、廃液流入口11と廃液排出口12が取り付けられ、廃液の受け入れ、排出が行われる。また、pH測定槽13の上部は、pH計挿入口15と廃液流入口11を設けた上蓋で密閉するのが良い。pH測定槽13にpH計洗浄液4が流入してpH測定値が変動するのを防止するためである。
【0022】
次に、本発明の作用について述べる。
【0023】
pH測定槽13に流入する廃液14のpH測定を行う場合は、pH計洗浄槽2の底部の底蓋6を開いてpH計1を、pH計洗浄槽2の上部から挿入し、洗浄液回収槽5の底部に設けたpH計挿通口10、pH測定槽13の上部にあるpH計挿入口15を通過させて廃液14中に浸漬してpH測定を行う(図1)。
【0024】
pH計1が汚染された場合、あるいは定期的にpH計1を廃液14中から引き上げてpH計洗浄槽2の底部の底蓋6を閉じた後に洗浄液注入口3からpH計洗浄液4をpH計洗浄槽2内に注入してpH計1の洗浄を行う(図2)。洗浄を行う毎に底蓋6を開いてpH計洗浄液4を洗浄液回収槽5に排出することを少なくとも1回以上行った後に、洗浄液回収槽5に貯留したpH計洗浄液4をドレンパイプから系外に排出する(図3)。そして、pH計1の洗浄処理が完了後にpH計1を廃液14中に浸漬してpH測定を再開する(図1)。
【0025】
なお、pH計洗浄液4の種類や洗浄回数は、pH計1の汚染度合に応じて適宜決めれば良い。また、pH計洗浄液4による洗浄後に浄水による洗浄を行ってpH計1の表面に付着したpH計洗浄液4を洗い流すようにしても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 pH計
2 pH計洗浄槽
3 pH計洗浄液注入口
4 pH計洗浄液
5 洗浄液回収槽
6 底蓋
7 ドレン口
8 ドレンパイプ
9 弁
10 pH計挿通口
11 廃液流入口
12 廃液排出口
13 pH測定槽
14 廃液
15 pH計挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液処理設備から分岐したpH測定槽に付設されたpH計の洗浄装置であって、pH計洗浄槽と、該pH計洗浄槽の底部に洗浄液を取り出す開閉式底蓋と、洗浄液を回収する洗浄液回収槽と、該洗浄液回収槽の底部にはpH計挿通口と、洗浄液を排出するドレン口と、ドレン口に接続したドレンパイプとを設けたことを特徴とするpH計洗浄装置。
【請求項2】
さらに、前記pH計挿通口には洗浄液の漏洩を防止する弁を、前記ドレンパイプにはドレンバルブを取り付けたことを特徴とする請求項1記載のpH計洗浄装置。
【請求項3】
pH計洗浄槽に設けられた洗浄液注入口から洗浄液を注入してpH計を洗浄後、pH計洗浄槽の底部に設けた底蓋を開放して、前記洗浄液を洗浄液回収槽に排出することを少なくとも1回以上行った後、前記洗浄液回収槽に貯留した洗浄液を洗浄液回収槽のドレン口に接続したドレンパイプから系外に排出することを特徴とするpH計の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−203025(P2011−203025A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69061(P2010−69061)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】