説明

ポリカチオンを用いた抗体およびFC融合分子の製剤

本発明は、一般に、該抗体およびFc融合分子がポリカチオンを含む製剤中にある、抗体およびFc融合分子の製剤を調製するための方法に関する。本発明はまた、抗体またはFc融合分子およびポリカチオンを含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、抗体またはFc融合分子およびポリカチオンを含む、抗体およびFc融合分子の製剤を作製するための方法、ならびにそれらの製剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生理的pHの溶液および高濃度のタンパク質を含む溶液に入れたとき、高いpIまたは明確な極性を有するタンパク質は不安定である場合がある。溶液中のタンパク質は、時間とともに分解する傾向があり、分解産物は凝集してタンパク質の生物学的効力を減少させる。例えば、溶液中の成長ホルモンは、不溶性の凝集産物を形成し、タンパク質の沈殿および活性の損失をもたらす(米国特許第4,816,568号)。溶液中のタンパク質分解を防ぐために、タンパク質凝集の低下を期して、安定化剤(例えば、グリシン、ポリエチレングリコール)が濃縮タンパク質製剤にしばしば添加される。米国特許第4,816,568号は、ポリオール化合物、電荷を持つ側鎖を有する単一アミノ酸もしくは重合体アミノ酸、またはコリン誘導体を用いて溶液中の成長ホルモンを安定化する方法を記載している。このような分解および凝集の問題が、生物製剤を薬学的薬物として製剤化する複雑さに加わる。
【0003】
今日、抗体は、製薬業界で最も急成長を遂げている種類の生物製剤である。抗体は、溶液中で時間とともに分解することも知られている。それゆえに、科学者は、液体製剤中の抗体の凝集の問題に対処する方法を提案している。
【0004】
カルシウム(Ca2+)およびマグネシウム(Mg22+)などのある種の正電荷を持つ金属イオンの添加は、溶液中での抗体の異性化およびスクシンイミド中間体の形成の防止を遅らせるための方法として提案されている(PCT特許出願公開のWO2004/039337)。しかしながら、ある種の正電荷を持つ金属イオン(例えば、ZnCl)は、タンパク質の沈殿を引き起こす場合がある(WO2004/039337)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/039337号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、治療的抗体またはFc融合体の製剤を含む、液体のまたは凍結乾燥した薬学的製剤を作製するための方法、およびそれらの製剤を含む組成物に関する。
【0007】
1つの態様において、本発明は、抗体またはFc融合分子の液体製剤または凍結乾燥製剤を作製するための方法であって、抗体またはFc融合分子をポリカチオンと組み合わせ、それにより、ポリカチオンを含まない同製剤と比較して、低下したレベルの抗体またはFc融合分子の分解および凝集を得る工程を含む方法を提供する。1つの実施形態において、Fc融合分子はペプチボディである。
【0008】
1つの実施形態において、ポリカチオンは、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリヒスチジン、およびカチオン性多糖類、またはその混合物からなる群より選択される。
【0009】
関連する実施形態において、ポリカチオン組成物は、リジン、アルギニン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリヒスチジン、およびカチオン性多糖類からなる群より選択されるポリカチオンのうちの少なくとも2つを含む。関連する実施形態において、ポリカチオンは、リジンおよびアルギニンから構成される。
【0010】
さらなる実施形態において、ポリカチオンは、ホモ重合体もしくは共重合体、またはその混合物である。ポリカチオンホモ重合体は、同じカチオン単量体の単一反復単位を含む。ポリカチオン共重合体は、異なるカチオン単量体または異なるカチオン性重合体を含む。1つの実施形態において、ポリカチオン共重合体は、カチオン単量体の混合物、ポリカチオンホモ重合体の混合物、またはポリカチオン共重合体の混合物を含んでもよい。
【0011】
別の実施形態において、ポリカチオンは、カチオン性単量体および中性単量体の反復単位を含む重合体である。1つの実施形態において、ポリカチオンは、単量体式A−B−X−Y(式中、AおよびXはカチオン性単量体であり、BおよびYは中性単量体である)を有する。関連する実施形態において、AおよびXは同じカチオン性単量体である。さらなる実施形態において、AおよびXは異なるカチオン性単量体である。別の実施形態において、BおよびYは同じ中性単量体である。またさらなる実施形態において、BおよびYは異なる中性単量体である。別の実施形態において、カチオン性単量体は、本明細書に示されるポリカチオンの基礎として使用される反復単位である。関連する実施形態において、カチオン性単量体は、塩基性アミノ酸、中性単量体に連結した反復配列のカチオン性単量体、またはポリカチオン組成物を構築するために使用することができる反復構造特性を有する、その他のタンパク質分子もしくは化学構造物である。
【0012】
中性単量体は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、およびプロリンからなる群より選択されるということがさらに企図される。またさらなる実施形態において、ポリカチオンは、リジン残基およびグリシン残基の反復単位を含む。
【0013】
別の態様において、本発明は、本発明の抗体製剤が治療的抗体を含むことを提供する。1つの実施形態において、治療的抗体は、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、およびIgG4抗体、またはその断片からなる群より選択されるIgG抗体である。
【0014】
ポリカチオン組成物中のポリカチオンは、0.2kDaから約70kDaの分子量を有するということが企図される。該抗体製剤中の抗体は、7.5以下のpIを有するということがさらに企図される。1つの実施形態において、該抗体製剤中の抗体は、約6.4の計算pIを有する。さらなる実施形態において、ポリカチオンは、最終製剤において約0.1%から約10%w/wポリカチオンの濃度である。
【0015】
関連する実施形態において、ポリカチオン組成物のpHは、約4.5から約7.5、約5.0から約6.5、または約5.5から約6.0である。
【0016】
1つの実施形態において、抗体またはFc融合分子の製剤は、ポリカチオン組成物と組み合わせたときに、ポリカチオンの非存在下での抗体製剤の溶解性と比較して、より大きい溶解性を有する。追加の実施形態において、抗体またはFc融合分子の製剤は、ポリカチオン組成物と組み合わせていない抗体製剤と比較して、増大した貯蔵寿命を有する。さらなる実施形態において、ポリカチオン組成物と組み合わせた抗体またはFc融合分子の製剤は、ポリカチオン組成物と組み合わせていない同様の抗体製剤よりも少なくとも25%長い貯蔵寿命を有する。
【0017】
本発明は、該製剤におけるポリカチオンの存在が、ポリカチオン組成物と組み合わせていない治療的抗体またはFc融合体の製剤と比較して、抗体またはFc融合体分子の製剤における抗体多量体または凝集体の形成を低下させる抗体製剤も企図する。
【0018】
様々な態様において、治療的抗体は、エンブレル(エタナセプト)、ヒュミラ(アダリムマブ)、シナジス(パリビズマブ)、AMG 714(抗IL15抗体)、ベクチビックス(パニツムマブ)、リツキサン(リツキシマブ)、ゼバリン(イブリツモマブチウキセタン)、抗CD80モノクローナル抗体(mAb)(ガリキシマブ)、抗CD23 mAb(ルミリキシマブ)、M200(ボロシキシマブ)、抗クリプトmAb、抗BR3 mAb、抗IGF1R mAb、タイサブリ(ナタリズマブ)、ダクリズマブ、ヒト化抗CD20 mAb(オクレリズマブ)、可溶性BAFFアンタゴニスト(BR3−Fc)、抗CD40L mAb、抗TWEAK mAb、抗IL5受容体mAb、抗ガングリオシドGM2 mAb、抗FGF8 mAb、抗VEGFR/Flt−1 mAb、抗ガングリオシドGD2 mAb、アクチライズ(Actilyse)(登録商標)(アルテプラーゼ)、メタライズ(Metalyse)(登録商標)(テネクテプラーゼ)、CAT−3888およびCAT−8015(抗CD22 dsFv−PE38コンジュゲート)、CAT−354(抗IL13 mAb)、CAT−5001(抗メソテリンdsFv−PE38コンジュゲート)、GC−1008(抗TGF−β mAb)、CAM−3001(抗GM−CSF受容体mAb)、ABT−874(抗IL12 mAb)、リンフォスタットB(ベリムマブ;抗BlyS mAb)、HGS−ETR1(マパツムマブ;ヒト抗TRAIL受容体−1 mAb)、HGS−ETR2(ヒト抗TRAIL受容体−2 mAb)、アブスラックス(商標)(ヒト、抗(炭疽菌由来)防御抗原mAb)、MYO−029(ヒト抗GDF−8 mAb)、CAT−213(ヒト抗エオタキシン1 mAb)、エルビタックス(セツキシマブ)、エプラツズマブ、レミケード(インフリキシマブ;抗TNF mAb、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ベクチビックス(パナツムマブ)、レオプロ(アブシキシマブ)、アクテムラ(抗IL6受容体mAb)、HuMax−CD4(ザノリムマブ)、HuMax−CD20(オファツムマブ)、HuMax−EGFr(ザルツムマブ)、HuMax−Inflam、R1507(抗IGF−1R mAb)、HuMax HepC、HuMax CD38、HuMax−TAC(抗IL2Raまたは抗CD25 mAb)、HuMax−ZP3(抗ZP3 mAb)、ベキサール(トシツモマブ)、オルソクローンOKT3(ムロモナブ−CD3)、MDX−010(イピリムマブ)、抗CTLA4、CNTO 148(ゴリムマブ;抗TNFα炎症mAb)、CNTO 1275(抗IL12/IL23 mAb)、HuMax−CD4(ザノリムマブ)、HuMax−CD20(オファツムマブ)、HuMax−EGFR(ザルツムマブ)、MDX−066(CDA−1)およびMDX−1388(抗クロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび毒素B、C mAb)、MDX−060(抗CD30 mAb)、MDX−018、CNTO 95(抗インテグリン受容体mAb)、MDX−1307(抗マンノース受容体/hCGβ mAb)、MDX−1100(抗IP10潰瘍性大腸炎mAb)、MDX−1303(バロルチム(Valortim)(商標))、抗炭疽菌炭疽、MEDI−545(MDX−1103、抗IFNα)、MDX−1106(ONO−4538;抗PD1)、NVS抗体#1、NVS抗体#2、FG−3019(抗CTGF特発性肺線維症フェーズI、Fibrogen)、LLY抗体、BMS−66513、NI−0401(抗CD3 mAb)、IMC−18F1(VEGFR−1)、IMC−3G3(抗PDGFRα)、MDX−1401(抗CD30)、MDX−1333(抗IFNAR)、シナジス(パリビズマブ;抗RSV mAb)、キャンパス(アレムツズマブ)、ベルケード(ボルテゾミブ)、MLN0002(抗α4β7 mAb)、MLN1202(抗CCR2ケモカイン受容体mAb)、シムレクト(バシリキシマブ)、プレクシージュ(ルミラコキシブ)、ゾレア(オマリズマブ)、ETI211(抗MRSA mAb)、ゼナパックス(ダクリズマブ)、アバスチン(ベバシズマブ)、マブセラRA(リツキシマブ)、タルセバ(エルロチニブ)、ゼバリン(イブリツモマブチウキセタン)、ゼチーア(エゼチミブ)、ジトリン(Zyttorin)(エゼチミブおよびシンバスタチン)、NI−0401(ヒト抗CD3)、アデカツムマブ、ゴリムマブ(抗TNFα mAb)、エプラツズマブ、ゲムツズマブ、ラプティバ(エファリズマブ)、シムジア(セルトリズマブペゴール、CDP 870)、(ソリリス)エクリズマブ、ペキセリズマブ(抗C5補体)、MEDI−524(ヌマックス)、ルセンティス(ラニビズマブ)、17−1A(パノレックス)、トラビオ(Trabio)(レルデリムマブ)、セラシム(TheraCim)hR3(ニモツズマブ)、オムニターグ(ペルツズマブ)、オシデム(IDM−1)、オバレックス(B43.13)、ヌビオン(ビジリズマブ)、抗CD40L mAb(IDEC−131)、ザネリム(ヒト化抗CD11a)、ならびにカンツズマブからなる群より選択される。
【0019】
関連する態様において、治療的Fc融合分子は、IL−1 Trap(ヒトIgG1のFc部分ならびに両方のIL−1受容体構成成分(I型受容体および受容体付属タンパク質)の細胞外ドメイン)、VEGF Trap(IgG1 Fcに融合したVEGFR1のIgドメイン)、アタシセプト(TACI−Ig)、CTLA4−Ig(アバタセプト)、CD4−Ig融合タンパク質(Pro−542)、TNFR1−IgG、アメビブ(登録商標)(アレファセプト、LFA−3/IgG1)、CD30−L−IgG、IL−10−Fc、TNRF−Fc、IL−2−Ig、OPG−Fc、ならびにレプチン(ObR)−Fcからなる群より選択される。
【0020】
本発明は、治療的抗体またはFc融合分子およびポリカチオンを含む組成物も提供する。1つの実施形態において、組成物は、治療的抗体またはFc融合分子、ポリカチオンおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物である。1つの実施形態において、本発明は、7.5以下のpIを有する治療的抗体ならびにポリリジンおよびポリアルギニンからなる群より選択されるポリカチオンを含む薬学的組成物を提供する。本発明は、少なくとも2つの連続する酸性アミノ酸残基を含むCDRドメインを有する治療的抗体ならびにポリリジンおよびポリアルギニンからなる群より選択されるポリカチオンを含む薬学的組成物も企図する。1つの実施形態において、酸性アミノ酸は、アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)からなる群より選択される。
【0021】
1つの態様において、組成物中の抗体またはFc融合分子は、ポリカチオンの非存在下で抗体を含む薬学的組成物と比較して増加した貯蔵寿命を有する。1つの実施形態において、抗体は、ポリカチオンの非存在下の抗体またはFc融合分子を含む組成物よりも大きい水への溶解性を有する。
【0022】
関連する態様において、薬学的組成物中の該抗体またはFc融合体の二量体化(もしくはその他の多量体化)および/または凝集体形成は、ポリカチオンの非存在下で抗体およびFc融合体を含む薬学的組成物と比較して低下する。
【0023】
さらなる実施形態において、薬学的組成物は、エンブレル(エタナセプト)、ヒュミラ(アダリムマブ)、シナジス(パリビズマブ)、AMG 714(抗IL15抗体)、ベクチビックス(パニツムマブ)、リツキサン(リツキシマブ)、ゼバリン(イブリツモマブチウキセタン)、抗CD80モノクローナル抗体(mAb)(ガリキシマブ)、抗CD23 mAb(ルミリキシマブ)、M200(ボロシキシマブ)、抗クリプトmAb、抗BR3 mAb、抗IGF1R mAb、タイサブリ(ナタリズマブ)、ダクリズマブ、ヒト化抗CD20 mAb(オクレリズマブ)、可溶性BAFFアンタゴニスト(BR3−Fc)、抗CD40L mAb、抗TWEAK mAb、抗IL5受容体mAb、抗ガングリオシドGM2 mAb、抗FGF8 mAb、抗VEGFR/Flt−1 mAb、抗ガングリオシドGD2 mAb、アクチライズ(登録商標)(アルテプラーゼ)、メタライズ(登録商標)(テネクテプラーゼ)、CAT−3888およびCAT−8015(抗CD22 dsFv−PE38コンジュゲート)、CAT−354(抗IL13 mAb)、CAT−5001(抗メソテリンdsFv−PE38コンジュゲート)、GC−1008(抗TGF−β mAb)、CAM−3001(抗GM−CSF受容体mAb)、ABT−874(抗IL12 mAb)、リンフォスタットB(ベリムマブ;抗BlyS mAb)、HGS−ETR1(マパツムマブ;ヒト抗TRAIL受容体−1 mAb)、HGS−ETR2(ヒト抗TRAIL受容体−2 mAb)、アブスラックス(商標)(ヒト、抗(炭疽菌由来)防御抗原mAb)、MYO−029(ヒト抗GDF−8 mAb)、CAT−213(ヒト抗エオタキシン1 mAb)、エルビタックス(セツキシマブ)、エプラツズマブ、レミケード(インフリキシマブ;抗TNF mAb、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ベクチビックス(パナツムマブ)、レオプロ(アブシキシマブ)、アクテムラ(抗IL6受容体mAb)、HuMax−CD4(ザノリムマブ)、HuMax−CD20(オファツムマブ)、HuMax−EGFr(ザルツムマブ)、HuMax−Inflam、R1507(抗IGF−1R mAb)、HuMax HepC、HuMax CD38、HuMax−TAC(抗IL2Raまたは抗CD25 mAb)、HuMax−ZP3(抗ZP3 mAb)、ベキサール(トシツモマブ)、オルソクローンOKT3(ムロモナブ−CD3)、MDX−010(イピリムマブ)、抗CTLA4、CNTO 148(ゴリムマブ;抗TNFα炎症mAb)、CNTO 1275(抗IL12/IL23 mAb)、HuMax−CD4(ザノリムマブ)、HuMax−CD20(オファツムマブ)、HuMax−EGFR(ザルツムマブ)、MDX−066(CDA−1)およびMDX−1388(抗クロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび毒素B、C mAb)、MDX−060(抗CD30 mAb)、MDX−018、CNTO 95(抗インテグリン受容体mAb)、MDX−1307(抗マンノース受容体/hCGβ mAb)、MDX−1100(抗IP10潰瘍性大腸炎mAb)、MDX−1303(バルロチム(商標))、抗炭疽菌炭疽、MEDI−545(MDX−1103、抗IFNα)、MDX−1106(ONO−4538;抗PD1)、NVS抗体#1、NVS抗体#2、FG−3019(抗CTGF特発性肺線維症フェーズI、Fibrogen)、LLY抗体、BMS−66513、NI−0401(抗CD3 mAb)、IMC−18F1(VEGFR−1)、IMC−3G3(抗PDGFRα)、MDX−1401(抗CD30)、MDX−1333(抗IFNAR)、シナジス(パリビズマブ;抗RSV mAb)、キャンパス(アレムツズマブ)、ベルケード(ボルテゾミブ)、MLN0002(抗α4β7 mAb)、MLN1202(抗CCR2ケモカイン受容体mAb)、シムレクト(バシリキシマブ)、プレクシージュ(ルミラコキシブ)、ゾレア(オマリズマブ)、ETI211(抗MRSA mAb)、ゼナパックス(ダクリズマブ)、アバスチン(ベバシズマブ)、マブセラRA(リツキシマブ)、タルセバ(エルロチニブ)、ゼバリン(イブリツモマブチウキセタン)、ゼチーア(エゼチミブ)、ジトリン(エゼチミブおよびシンバスタチン)、NI−0401(ヒト抗CD3)、アデカツムマブ、ゴリムマブ(抗TNFα mAb)、エプラツズマブ、ゲムツズマブ、ラプティバ(エファリズマブ)、シムジア(セルトリズマブペゴール、CDP 870)、(ソリリス)エクリズマブ、ペキセリズマブ(抗C5補体)、MEDI−524(ヌマックス)、ルセンティス(ラニビズマブ)、17−1A(パノレックス)、トラビオ(レルデリムマブ)、セラシムhR3(ニモツズマブ)、オムニターグ(ペルツズマブ)、オシデム(IDM−1)、オバレックス(B43.13)、ヌビオン(ビジリズマブ)、抗CD40L mAb(IDEC−131)、ザネリム(ヒト化抗CD11a)、ならびにカンツズマブからなる群より選択される治療的抗体を含む。さらなる実施形態において、薬学的組成物は、IL−1 Trap(ヒトIgG1のFc部分ならびに両方のIL−1受容体構成成分(I型受容体および受容体付属タンパク質)の細胞外ドメイン)、VEGF Trap(IgG1 Fcに融合したVEGFR1のIgドメイン)、アタシセプト(TACI−Ig)、CTLA4−Ig(アバタセプト)、CD4−Ig融合タンパク質(Pro−542)、TNFR1−IgG、アメビブ(登録商標)(アレファセプト、LFA−3/IgG1)、CD30−L−IgG、IL−10−Fc、TNRF−Fc、IL−2−Ig、OPG−Fc、ならびにレプチン(ObR)−Fcからなる群より選択される治療的Fc融合分子を含む。
【0024】
関連する実施形態において、本発明を、抗アンジオポエチン(例えば、抗Ang2および/または抗Ang1)特異的抗体、ペプチボディ、および関連分子などを製剤化する際に使用することができる。これらの抗アンジオポエチン特異的抗体、ペプチボディ、および関連分子などには、限定されるものではないが、WO03/057134、米国出願公開US2003/0229023、ならびにOlinerら(Cancer Cell,507−516,2004)および補足資料に記載されたものが挙げられる。前記の文献の各々は、特にAng2特異的抗体およびペプチボディなどに関する部分、とりわけそれらの文献中に記載された配列の、およびL1(N);L1(N) WT;L1(N) 1K WT;2xL1(N);2xL1(N) WT;Con4 (N)、Con4 (N) 1K WT、2xCon4 (N) 1K;L1C;L1C 1K;2xL1C;Con4C;Con4C 1K;2xCon4C 1K;Con4−L1 (N);Con4−L1C;TN−12−9 (N);C17 (N);TN8−8(N);TN8−14 (N);Con 1 (N)を含むが、これらに限定されない、Ang2特異的抗体およびペプチボディなどに関する部分に記載されたものに関して、全体が参照により本明細書に組み入れられる。また、これらの抗アンジオポエチン特異的抗体、ペプチボディ、および関連分子などは、抗Ang2抗体および製剤、例えば、それに関してその全体が参照により本明細書に組み入れられるWO2003/030833に記載されたもの、特にAb526;Ab528;Ab531;Ab533;Ab535;Ab536;Ab537;Ab540;Ab543;Ab544;Ab545;Ab546;A551;Ab553;Ab555;Ab558;Ab559;Ab565;AbF1AbFD;AbFE;AbFJ;AbFK;AbG1D4;AbGC1E8;AbH1C12;AblA1;AblF;AblK、AblP;およびAblPを、その公報に記載されたように様々な順列で含み、これらは各々、前述の刊行物に完全に開示されたようにその全体が参照により本明細書に個別的かつ具体的に組み入れられる。
【0025】
本発明の任意の方法について、本明細書に示される任意のポリカチオンを、本発明の抗体またはFc融合体の製剤またはポリカチオン組成物で使用し得るということが企図される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】52℃で6週間保存した後のポリカチオンおよび連続するDDD残基を有する抗体を含む溶液中で形成された凝集体および二量体(またはその他の多量体)の相対存在量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、治療的抗体またはFc融合体の製剤を含む、抗体またはFc融合分子およびポリカチオンを含む液体かまたは凍結乾燥した薬学的製剤を作製するための方法、ならびにそれらの製剤を含む組成物に関する。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「抗体製剤」は、保存、さらなる加工、販売、および/または例えば、特定疾患を治療するための、特定経路による、特定量の特定薬剤の対象への投与などの、対象への投与のような、1つ以上の特定の用途のための1つ以上のその他の成分を有する、抗体およびポリカチオンの組み合わせを指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「Fc融合体製剤」または「Fc融合分子製剤」は、保存、さらなる加工、販売、および/または、例えば、特定疾患を治療するための、特定経路による、特定量の特定薬剤の対象への投与などの、対象への投与のような、1つ以上の特定の用途のための1つ以上のその他の成分を有する、Fc融合分子およびポリカチオンの組み合わせを指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「ポリカチオン」は、1つ以上のカチオン性単量体の反復単位のうちの1つ以上を含む分子を指す。様々な態様において、ポリカチオンは、1つもしくは複数の単量体の反復単位、または1つもしくは複数の中性単量体に連結した1つもしくは複数のカチオン性単量体を様々に含む反復サブユニットを含み、ここで、該単量体は、全体的に正電荷を有する反復構造特性を有する化合物を提供するよう共有結合で連結された、自然および/または合成の化合物である。「ポリカチオン組成物」とは、1つ以上のポリカチオンを含む組成物を指す。
【0031】
本明細書で使用するとき、「カチオン」または「カチオン性単量体」とは、本明細書に示されるポリカチオンを作製するのに使用し得る単一単位または単量体単位を指す。本明細書で使用するとき、「中性」単量体とは、本発明によって企図されるポリカチオンを形成させるためにカチオンと組み合わせて使用し得る、非極性側鎖を有する単独アミノ酸残基のような、極性または電荷を有さない単量体を指す。
【0032】
ポリカチオンは、ホモ重合体もしくは共重合体、またはその混合物であることがさらに企図される。ポリカチオンホモ重合体は、同じカチオン単量体の単一反復単位を含む。ポリカチオン共重合体は、異なるカチオン単量体または異なるカチオン性重合体を含む。1つの実施形態において、ポリカチオン共重合体は、カチオン単量体の混合物、ポリカチオンホモ重合体の混合物、またはポリカチオン共重合体の混合物を含んでもよい。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、完全に組み立てられた抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗原に結合することができる抗体断片(例えば、Fab’、F’(ab)、Fv、単鎖抗体、ダイアボディ(diabodies))、および所望の生物学的活性を示す限りにおいて前述のものを含む組み換えペプチドを指す。抗原結合部分を、組み換えDNA技術によってまたはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断によって産生してもよい。抗体断片または抗原結合部分としては、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFV)、単鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)、ミニボディ(minibody)、線状抗体;キレート組み換え抗体、トリボディ(tribody)もしくはダイボディ(bibody)、イントラボディ(intrabody)、ナノボディ(nanobody)、スモール・モジュラー・イムノファーマシューティカル(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化(camelized)抗体、VHH含有抗体、またはその変異体もしくは誘導体、および抗体が所望の生物学的活性を保持する限りにおいて、CDR配列のような、ポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられる。
【0034】
免疫グロブリンを、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという異なるクラスに割り当てることができ、クラスはさらに、サブクラスまたはアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分けられ得る。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元立体構造が周知である。異なるアイソタイプは、異なるエフェクター機能を有する。例えば、IgG1およびIgG3アイソタイプは、抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)活性を有する。本発明の抗体は、定常ドメインを含む場合、これらのサブクラスまたはアイソタイプのいずれであってもよい。
【0035】
本明細書で使用するとき、「治療的抗体」とは、疾患または障害の治療に使用される抗体を指す。
【0036】
本明細書で使用するとき、「少なくとも2つの連続する酸性アミノ酸残基を含むCDRドメインを有する抗体」とは、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)などの、少なくとも2つの連続する、一連の酸性アミノ酸残基を有する少なくとも1つのCDRアミノ酸配列を有する抗体を指す。
【0037】
本明細書で使用するとき、「Fc融合体」または「Fc融合分子」とは、抗体のFcドメインなどのその他の分子に直接的または間接的のいずれかで融合したタンパク質またはペプチドを含む分子を指し、そこでは、このタンパク質またはペプチド部分は、所望の標的に特異的に結合する。本明細書で使用するとき、「ペプチボディ(peptibody)」とは、抗体のFcドメインなどのその他の分子に直接的または間接的のいずれかで融合したペプチドを含む分子を指す。用語「ペプチボディ」は、Fc融合タンパク質(例えば、Fcドメインに融合した全長タンパク質)を含まない。本発明は、Fcドメインの(好ましくはループ領域内の)内部配列のような、ペプチドを含むように修飾されたFcドメインを含む分子を含む。Fc内部ペプチド分子は、特定の内部領域に前後に並んだ2つ以上のペプチド配列を含んでもよく、それらはその他の内部領域にさらなるペプチドを含んでもよい。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「溶解性を向上させる」は、ポリカチオン組成物を欠く別の溶液、抗体またはFc融合体の製剤と比較して、より少ない凝集体、二量体もしくは多量体を含むか、またはより少ない沈殿を結果として生じる、ポリカチオン組成物を含む溶液、抗体製剤、またはFc融合体製剤を指す。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「貯蔵寿命の増大」は、ポリカチオン組成物を欠く組成物と比較したとき、ポリカチオンを含む本発明の組成物が、抗体またはFc融合分子を凝集体、二量体もしくはその他の多量体、または沈殿物へと分解させることなく、かつ生物学的活性を顕著に損失させることなく、適切な条件で保存することができる時間の長さの増大を指す。
【0040】
抗体
本発明によって使用されるべきモノクローナル抗体を、Kohlerら(Nature,256:495−7,1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製してもよく、または組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)よって作製してもよい。また、モノクローナル抗体を、例えば、Clacksonら(Nature 352:624−628,1991)およびMarksら(J.Mol.Biol.222:581−597,1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0041】
本発明で有用な抗体を、当技術分野において周知の、本明細書に記載された抗体のより小さい抗原結合断片として使用し得るということがさらに企図される。
【0042】
抗体断片は、インタクトな全長抗体の一部、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);二重特異性抗体、三重特異性抗体などのような多重特異性抗体断片(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ);ミニボディ;キレート組み換え抗体;トリボディまたはバイボディ(bibodies);イントラボディ;ナノボディ;スモール・モジュラー・イムノファーマシューティカル(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ化抗体;VHH含有抗体;および抗体断片から形成されたその他のポリペプチドが挙げられる。
【0043】
抗体のパパイン消化は、各々単一の抗原結合部位を有するV、V、C、およびCドメインからなる一価の断片である、「Fab」断片と呼ばれる、2つの同一の抗原結合断片、ならびにすぐに結晶化できることに因んで命名された残りの「Fc」断片を生じさせる。ペプシン処理は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)断片を生じさせる。この断片は、抗体のVおよびVドメインを含む2つの「単鎖Fv」すなわち「scFV」抗体断片を有し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーは、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成するのを可能にし、結果として単鎖抗体(scFv)を生じさせる。単鎖抗体中では、V領域およびV領域が対になって、それらを単一のタンパク質鎖として作るのを可能にする合成リンカーを介して一価の分子を形成する(Bird et al.,Science 242:423−426,1988、およびHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,1988)。sFvの総説については、のPluckthun(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,第113巻,Rosenburg and Moore編,Springer−Verlag,New York,269−315ページ(1994))を参照されたい。Fd断片は、VドメインおよびC1ドメインからなる。
【0044】
キメラ抗体とは、典型的には異なる種を起源とする2つの異なる抗体に由来する配列を含む抗体を指す(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。最も典型的には、キメラ抗体は、ヒトおよび齧歯類の抗体断片、通常はヒト定常領域およびマウス可変領域を含む。
【0045】
追加の抗体断片としては、Vドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,Nature 341:544−546,1989)が挙げられる。ダイアボディは二価の抗体である。この抗体では、VドメインおよびVドメインは単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間での対形成を可能にするには短過ぎるリンカーを用いているので、それらのドメインが別の鎖の相補的ドメインと対形成することを強いられ、2つの抗原結合部位を創り出している(例えば、EP404,097;WO93/11161;Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448,1993、およびPoljak et al.,Structure 2:1121−1123,1994参照)。ダイアボディは、二重特異性または単特異性であることができる。
【0046】
軽鎖を欠く機能的重鎖抗体は、テンジクザメ(Greenberg et al.,Nature 374:168−73,1995)、アラフラオオセ(Nuttall et al.,Mol Immunol.38:313−26,2001)、ならびにラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびラマなどの、ラクダ科(Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−8,1993;Nguyen et al.,J.Mol.Biol.275:413,1998)で天然に生じる。これらの動物では、抗原結合部位が、VHHドメインという単一ドメインと化している。ラクダ科動物の重鎖を有する抗体を作製するための方法は、例えば、米国特許公報第2005/0136049号および第2005/0037421号に記載されている。
【0047】
重鎖抗体の可変ドメインは、わずか15kDaの分子量を有する、完全に機能的な最小の抗原結合断片であるので、この実体はナノボディと呼ばれる(Cortez−Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853−57,2004)。ナノボディライブラリーを、Conrathら(Antimicrob Agents Chemother 45:2807−12,2001)に記載されたようにまたはHolligerら(Nat Biotechnol.23:1126−36,2005)およびRahbarizadehら(Hybrid Hybridomics.23:151−9,2004)に記載されたような組み換え法を用いて、免疫化したヒトコブラクダから作製してもよい。
【0048】
さらなる実施形態において、二重特異性抗体は、キレート組み換え抗体(CRAb)であってもよい。キレート組み換え抗体は、標的抗原の隣接する非重複エピトープを認識し、両方のエピトープに同時に結合するのに十分な柔軟性がある(Neri et al.,J Mol Biol.246:367−73,1995)。
【0049】
二重特異性Fab−scFv(「バイボディ」)および三重特異性Fab−(scFv)(2)(「トリボディ」)の産生は、Schoonjansら(J Immunol.165:7050−57,2000)およびWillemsら(J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.786:161−76,2003)に記載されている。バイボディまたはトリボディについては、scFv分子を、VL−CL(L)およびVH−CH(Fd)鎖の一方または両方に融合させる。例えば、トリボディを産生するために2つのscFvをFabのC末端に融合させ、一方、バイボディでは、1つのscFvをFabのC末端に融合させる。
【0050】
(ヒンジのない)ペプチドリンカーを介してまたはIgGヒンジを介してCH3に融合したscFvからなる「ミニボディ」は、Olafsen,et al.,Protein Eng Des Sel.2004 Apr;17(4):315−23に記載されている。
【0051】
イントラボディは、細胞内発現を示す単鎖抗体であり、細胞内タンパク質機能を操作することができる(Biocca,et al.,EMBO J.9:101−108,1990;Colby et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.101:17616−21,2004)。抗体コンストラクトを細胞内領域に保持する細胞シグナル配列を含むイントラボディを、Mhashilkarら(EMBO J 14:1542−51,1995)およびWheelerら(FASEB J.17:1733−5.2003)に記載されたように産生してもよい。トランスボディ(transbodies)は、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)が単鎖可変断片(scFv)抗体と融合している細胞透過性抗体である(Heng et al.,Med Hypotheses.64:1105−8,2005)。
【0052】
標的タンパク質に特異的なSMIPまたは結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体もさらに企図される。これらのコンストラクトは、抗体エフェクター機能を実行するするのに必要な免疫グロブリンドメインに融合された抗原結合ドメインを含む単鎖ポリペプチドである。例えば、WO03/041600、米国特許公開US2003/0133939、および米国特許公開US2003/0118592を参照されたい。
【0053】
イムノアドヘシンにするために、1つ以上のCDRを共有結合または非共有結合のいずれかで分子に組み入れてもよい。イムノアドヘシンは、より大きいポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み入れてもよく、別のポリペプチド鎖にCDRを共有結合で連結してもよく、または非共有結合でCDRを組み入れてもよい。CDRは、イムノアドヘシンが関心となる特定の抗原に特異的に結合するのを可能にする。
【0054】
1つの態様において、抗体製剤中の抗体は、治療的抗体である。例示的な治療的抗体としては、エンブレル(エタナセプト)、ヒュミラ(アダリムマブ)、シナジス(パリビズマブ)、AMG 714(抗IL15抗体)、ベクチビックス(パニツムマブ)、リツキサン(リツキシマブ)、ゼバリン(イブリツモマブチウキセタン)、抗CD80モノクローナル抗体(mAb)(ガリキシマブ)、抗CD23 mAb(ルミリキシマブ)、M200(ボロシキシマブ)、抗クリプトmAb、抗BR3 mAb、抗IGF1R mAb、タイサブリ(ナタリズマブ)、ダクリズマブ、ヒト化抗CD20 mAb(オクレリズマブ)、可溶性BAFFアンタゴニスト(BR3−Fc)、抗CD40L mAb、抗TWEAK mAb、抗IL5受容体mAb、抗ガングリオシドGM2 mAb、抗FGF8 mAb、抗VEGFR/Flt−1 mAb、抗ガングリオシドGD2 mAb、アクチライズ(登録商標)(アルテプラーゼ)、メタライズ(登録商標)(テネクテプラーゼ)、CAT−3888およびCAT−8015(抗CD22 dsFv−PE38コンジュゲート)、CAT−354(抗IL13 mAb)、CAT−5001(抗メソテリンdsFv−PE38コンジュゲート)、GC−1008(抗TGF−β mAb)、CAM−3001(抗GM−CSF受容体mAb)、ABT−874(抗IL12 mAb)、リンフォスタットB(ベリムマブ;抗BlyS mAb)、HGS−ETR1(マパツムマブ;ヒト抗TRAIL受容体−1 mAb)、HGS−ETR2(ヒト抗TRAIL受容体−2 mAb)、アブスラックス(商標)(ヒト、抗(炭疽菌由来)防御抗原mAb)、MYO−029(ヒト抗GDF−8 mAb)、CAT−213(ヒト抗エオタキシン1 mAb)、エルビタックス(セツキシマブ)、エプラツズマブ、レミケード(インフリキシマブ;抗TNF mAb、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ベクチビックス(パナツムマブ)、レオプロ(アブシキシマブ)、アクテムラ(抗IL6受容体mAb)、HuMax−CD4(ザノリムマブ)、HuMax−CD20(オファツムマブ)、HuMax−EGFr(ザルツムマブ)、HuMax−Inflam、R1507(抗IGF−1R mAb)、HuMax HepC、HuMax CD38、HuMax−TAC(抗IL2Raまたは抗CD25 mAb)、HuMax−ZP3(抗ZP3 mAb)、ベキサール(トシツモマブ)、オルソクローンOKT3(ムロモナブ−CD3)、MDX−010(イピリムマブ)、抗CTLA4、CNTO 148(ゴリムマブ;抗TNFα炎症mAb)、CNTO 1275(抗IL12/IL23 mAb)、HuMax−CD4(ザノリムマブ)、HuMax−CD20(オファツムマブ)、HuMax−EGFR(ザルツムマブ)、MDX−066(CDA−1)およびMDX−1388(抗クロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび毒素B、C mAb)、MDX−060(抗CD30 mAb)、MDX−018、CNTO 95(抗インテグリン受容体mAb)、MDX−1307(抗マンノース受容体/hCGβ mAb)、MDX−1100(抗IP10潰瘍性大腸炎mAb)、MDX−1303(バルロチム(商標))、抗炭疽菌炭疽、MEDI−545(MDX−1103、抗IFNα)、MDX−1106(ONO−4538;抗PD1)、NVS抗体#1、NVS抗体#2、FG−3019(抗CTGF特発性肺線維症フェーズI、Fibrogen)、LLY抗体、BMS−66513、NI−0401(抗CD3 mAb)、IMC−18F1(VEGFR−1)、IMC−3G3(抗PDGFRα)、MDX−1401(抗CD30)、MDX−1333(抗IFNAR)、シナジス(パリビズマブ;抗RSV mAb)、キャンパス(アレムツズマブ)、ベルケード(ボルテゾミブ)、MLN0002(抗α4β7 mAb)、MLN1202(抗CCR2ケモカイン受容体mAb)、シムレクト(バシリキシマブ)、プレクシージュ(ルミラコキシブ)、ゾレア(オマリズマブ)、ETI211(抗MRSA mAb)、ゼナパックス(ダクリズマブ)、アバスチン(ベバシズマブ)、マブセラRA(リツキシマブ)、タルセバ(エルロチニブ)、ゼバリン(イブリツモマブチウキセタン)、ゼチーア(エゼチミブ)、ジトリン(エゼチミブおよびシンバスタチン)、NI−0401(ヒト抗CD3)、アデカツムマブ、ゴリムマブ(抗TNFα mAb)、エプラツズマブ、ゲムツズマブ、ラプティバ(エファリズマブ)、シムジア(セルトリズマブペゴール、CDP 870)、(ソリリス)エクリズマブ、ペキセリズマブ(抗C5補体)、MEDI−524(ヌマックス)、ルセンティス(ラニビズマブ)、17−1A(パノレックス)、トラビオ(レルデリムマブ)、セラシムhR3(ニモツズマブ)、オムニターグ(ペルツズマブ)、オシデム(IDM−1)、オバレックス(B43.13)、ヌビオン(ビジリズマブ)、抗CD40L mAb(IDEC−131)、ザネリム(ヒト化抗CD11a)、ならびにカンツズマブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
Fc融合分子
抗体のFcドメインなどのその他の分子に直接的または間接的のいずれかで融合したタンパク質またはペプチドを含むFc融合分子も、本発明での使用が企図される。Fc融合分子には、Fcドメインに融合した全長タンパク質を含むFc融合タンパク質、およびペプチボディが含まれる。ペプチボディとは、抗体のFcドメインなどのその他の分子に直接的または間接的のいずれかで融合したペプチドを含む分子を指し、ペプチボディでは、このペプチド部分が所望の標的に特異的に結合する。
【0056】
用語「ペプチボディ」は、Fc融合タンパク質(例えば、Fcドメインに融合した全長タンパク質)を含まない。本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」は、ペプチド結合で連結された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはそれより多くのアミノ酸の分子を指す。例示的なペプチドを、当技術分野で公知の方法のいずれかで作製してもよく、例えば、ペプチドライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)で実行するか、化学合成で作製するか、タンパク質の消化によって得るか、または組み換えDNA技術を用いて作製してもよい。ペプチドには、精製されているかまたは2つの形態の混合物の状態にあるかのいずれかの、DおよびLアミノ酸形態が含まれる。ペプチボディの産生は、一般に、PCT公開のWO00/24782、米国特許第7,138,370号、米国特許第6,660,843 B1号、および米国特許公開US2004/0044188に記載されている。
【0057】
タンパク質またはペプチドを、Fc領域に融合するかまたは修飾されたFc分子である、Fcループに挿入するかのいずれかにしてもよい。Fcループは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開US2006/0140934に記載されている。本発明は、Fcドメインの(好ましくはループ領域内の)内部配列のような、ペプチドを含むように修飾されたFcドメインを含む分子を含む。Fc内部ペプチド分子は、特定の内部領域に前後に並んだ2つ以上のペプチド配列を含んでもよく、それらはその他の内部領域にさらなるペプチドを含んでもよい。
【0058】
本発明は、タンパク質もしくはペプチドのNもしくはC末端に、またはNおよびC末端の両方で融合したタンパク質またはペプチドに付着した少なくとも1つのFcドメインの存在を企図する。
【0059】
本発明の様々な実施形態において、Fc構成成分は、ネイティブFcまたはFc変異体のいずれかである。「Fcドメイン」は、以下に定義されるようなネイティブFcおよびFc変異体の分子ならびに配列を包含する。
【0060】
「ネイティブFc」とは、単量体形態であれ多量体形態であれ、抗体全体の消化から結果として得られる非抗原結合断片の配列を含む分子または配列を指す。典型的には、ネイティブFcは、CH2およびCH3ドメインを含む。ネイティブFcの免疫グロブリン源は、1つの態様において、ヒト起源であり、代わりの実施形態において、任意のクラスの免疫グロブリンであってもよい。ネイティブFcドメインは、単量体ポリペプチドから構成されており、この単量体ポリペプチドは、共有結合的(すなわち、ジスルフィド結合)および/または非共有結合的な会合によって連結されることにより、二量体または多量体の形態になり得る。ネイティブFc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数の範囲は、クラス(例えば、IgG、IgA、IgE)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)によって、1から4である。ネイティブFcの1つの例は、IgGのパパイン消化から結果として得られるジスルフィド結合した二量体である(Ellison et al.(1982),Nucleic Acids Res.10:4071−9参照)。
【0061】
「Fc変異体」とは、ネイティブFcから修飾されているが、依然としてサルベージ受容体FcRnの結合部位を含む分子または配列を指す。国際出願のWO97/34631(1997年9月25日に公開)およびWO96/32478は、例示的なFc変異体、およびサルベージ受容体との相互作用を記載しており、参照により本明細書に組み入れられる。1つの態様において、用語「Fc変異体」は、非ヒトのネイティブFcからヒト化された分子または配列を含む。別の態様において、ネイティブFcは、本発明の融合分子に必要とされない構造的特色または生物学的活性を与えるという理由で除去し得る部位を含む。したがって、用語「Fc変異体」は、(1)ジスルフィド結合の形成、(2)選択された宿主細胞との不適合性、(3)選択された宿主細胞での発現時のN末端の不均一性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合、または(7)抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)に影響を及ぼすかまたはそれらに関与する1つ以上のネイティブFc部位を欠く分子または配列を含む。Fc変異体については、以下でさらに詳細に記載する。
【0062】
Fc変異体およびネイティブFcと同様に、用語「Fcドメイン」は、抗体全体から消化されたものであれ、その他の手段で産生されたものであれ、単量体形態または多量体形態の分子を含む。Fc配列は、当技術分野において公知であり、本発明での使用が企図される。例えば、Fc IgG1(GenBankアクセッション番号P01857)、Fc IgG2(GenBankアクセッション番号P01859)、Fc IgG3(GenBankアクセッション番号P01860)、Fc IgG4(GenBankアクセッション番号P01861)、Fc IgA1(GenBankアクセッション番号P01876)、Fc IgA2(GenBankアクセッション番号P01877)、Fc IgD(GenBankアクセッション番号P01880)、Fc IgM(GenBankアクセッション番号P01871)、およびFc IgE(GenBankアクセッション番号P01854)は、本明細書での使用が企図されるいくつかの追加のFc配列である。
【0063】
ジスルフィド結合の形成による二量体化を妨げる特定の条件が存在しないならば、適当なシステイン残基が存在するとき、Fc単量体は自発的に二量体化するということに留意すべきである。Fc二量体において通常ジスルフィド結合を形成するシステイン残基が取り除かれるかまたはその他の残基に置き換えられるとしても、単量体鎖は通常、非共有結合的な相互作用を通じて二量体を形成する。本明細書中の用語「Fc」は、これらの形態、すなわち、ネイティブな単量体、ネイティブな二量体(ジスルフィド結合で連結している)、修飾された二量体(ジスルフィドおよび/または非共有結合で連結している)、ならびに修飾された単量体(すなわち、誘導体)のいずれかを意味するように用いられる。
【0064】
前述のように、Fc変異体は、本発明の範囲内の好適なビヒクルである。サルベージ受容体への結合が維持されるという条件で、ネイティブFcを広範囲にわたって修飾し、Fc変異体を形成させてもよい。例えば、WO97/34631およびWO96/32478を参照されたい。そのようなFc変異体において、本発明の融合分子によって必要とされない構造的特色または機能的活性を与えるネイティブFcの1つ以上の部位を除去してもよい。これらの部位を、例えば、残基を置換するかまたは欠失させることによって、その部位に残基を挿入することによって、またはその部位を含む部分を切断することによって、除去してもよい。また、挿入または置換される残基は、ペプチドミメティックまたはD−アミノ酸などの改変されたアミノ酸であってもよい。Fc変異体は、いくつもの理由から望ましい場合があり、そのうちのいくつかは本明細書に記載されている。例示的なFc変異体には、以下のような分子および配列が含まれる。
1.ジスルフィド結合の形成に関与する部位が除去されている。そのような除去は、本発明の分子を産生するのに使用する宿主細胞に存在するその他のシステイン含有タンパク質との反応を回避し得る。この目的のために、N末端のシステイン含有セグメントが切断されていてもよくまたはシステイン残基が欠失しているかもしくはその他のアミノ酸(例えば、アラニル、セリル)と置換されていてもよい。システイン残基が除去された場合でも、単鎖Fcドメインは依然として、非共有結合で結びつく二量体Fcドメインを形成することができる。
2.ネイティブFcが選択された宿主細胞とより適合するように修飾されている。例えば、プロリンイミノペプチダーゼなどの大腸菌の消化酵素によって認識され得る、典型的なネイティブFcのN末端付近のPA配列を除去してもよい。また、特にこの分子を大腸菌などの細菌細胞で組み換え発現させる場合に、N末端のメチオニン残基を付加してもよい。
3.選択された宿主細胞で発現したときのN末端の不均一性を防ぐために、ネイティブFcのN末端の一部が除去されている。この目的のために、N末端の最初の20アミノ酸残基、特に位置1、2、3、4、および5のアミノ酸残基のいずれかを欠失させてもよい。
4.1つ以上のグリコシル化部位が除去されている。典型的にグリコシル化される残基(例えば、アスパラギン)は、細胞溶解性応答を付与し得る。そのような残基は、欠失しいるかまたはグリコシル化されない残基(例えば、アラニン)と置換されていてもよい。
5.C1q結合部位などの、補体との相互作用に関与する部位が除去されている。例えば、ヒトIgGのEKK配列を欠失させるかまたは置換してもよい。補体の動員は、本発明の分子にとって有利ではない可能性があるので、そのようなFc変異体の場合には回避されてもよい。
6.サルベージ受容体以外のFc受容体への結合に影響を及ぼす部位が除去されている。ネイティブFcは、本発明の融合分子に必要とされない、ある種の白血球との相互作用の部位を有している可能性があるので、除去されてもよい。
7.ADCC部位が除去されている。ADCC部位は当技術分野において公知である。例えば、IgG1のADCC部位に関しては、Molec.Immunol.29(5):633−9(1992)を参照されたい。その上、これらの部位は本発明の融合分子に必要とされないので、除去されてもよい。
8.ネイティブFcが非ヒト抗体に由来する場合、ネイティブFcはヒト化されてもよい。典型的には、ネイティブFcをヒト化するために、非ヒトのネイティブFcの選択された残基を、ヒトのネイティブFCに通常見られる残基と置換する。抗体のヒト化のための技術は当技術分野において周知である。
【0065】
Fc部分の変異体、類似体、または誘導体を、例えば、残基または配列の様々な置換を施すことによって構築してもよい。変異体(または類似体)ポリペプチドには、1つ以上のアミノ酸残基がFcアミノ酸配列を補完している、挿入変異体が含まれる。挿入は、タンパク質のどちらか一方もしくは両方の末端にあってもよく、またはFcアミノ酸配列の内部領域内に位置していてもよい。どちらか一方または両方の末端に付加残基を有する、挿入変異としては、例えば、融合タンパク質およびアミノ酸タグまたは標識を含むタンパク質を挙げることができる。例えば、Fc分子は、特にこの分子を大腸菌などの細菌細胞で組み換え発現させる場合に、N末端Metを任意で含んでもよい。
【0066】
Fc欠失変異体では、Fcポリペプチドの1つ以上のアミノ酸残基が除去されている。欠失は、Fcポリペプチドの一方もしくは両方の末端で生じさせることができ、またはFcアミノ酸配列内の1つもしくは複数のアミノ酸残基の除去によって生じさせることができる。それゆえに、Fc欠失変異体には、Fcポリペプチド配列の全ての断片が含まれる。
【0067】
Fc置換変異体では、Fcポリペプチドの1つ以上のアミノ酸残基が除去され、代わりの残基と置き換えられている。1つの態様において、置換は、保存的な性質を帯び、、この種の保存的置換は当技術分野において周知である。あるいは、本発明は、非保存的でもある置換を包括的に含む。例示的な保存的置換は、Lehninger[Biochemistry,第2版;Worth Publishers,Inc.New York(1975),71−77ページ]に記載されており、それらを以下に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
代わりの、例示的な保存的置換を以下に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
例えば、Fc配列のいくつかのまたは全てのジスルフィド架橋の形成を妨げるために、システイン残基を欠失させるかまたはその他のアミノ酸と置き換えることができる。各々のシステイン残基を、除去および/またはAlaもしくはSerなどの、その他のアミノ酸残基と置換することができる。また、別の例として、(1)Fc受容体結合部位を取り除くために、(2)補体(C1q)結合部位を取り除くために、および/または(3)抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADC)部位を取り除くために修飾を施し、アミノ酸置換を導入してもよい。そのような部位は当技術分野において公知であり、任意の公知の置換が本明細書で使用されるFcの範囲内にある。例えば、IgG1のADCC部位に関しては、Molecular Immunology,Vol.29,No.5,633−639(1992)を参照されたい。
【0072】
同様に、1つ以上のチロシン残基をフェニルアラニン残基で置き換えることができる。さらに、その他の変異体アミノ酸の挿入、欠失、および/または置換も企図されており、本発明の範囲内にある。保存的アミノ酸置換が一般的に好ましい。さらに、改変が、ペプチドミメティックまたはD−アミノ酸などの、改変アミノ酸の形態であってもよい。
【0073】
また、化合物のFc配列を、ペプチドについて本明細書で記載したように誘導体化してもよく、すなわち、アミノ酸残基の挿入、欠失、または置換以外の修飾を持たせてもよい。好ましくは、修飾は、共有結合の性質を帯び、例えば、重合体、脂質、その他の有機および無機部分との化学結合を含む。本発明の誘導体を、循環半減期を増大させるように調製してもよく、または所望の細胞、組織、もしくは器官へのポリペプチドの標的化能力を向上させるように設計してもよい。
【0074】
「Altered Polypeptides with Increased Half−Life」と題された、WO96/32478に記載されているように、インタクトFc分子のサルベージ受容体結合ドメインを本発明の化合物のFc部分として使用することも可能である。本明細書でFcと呼ばれる分子群の追加のメンバーは、「Immunoglobulin−Like Domains with Increased Half−Lives」と題された、WO97/34631に記載されているものである。この段落で引用された公開PCT出願は両方とも、参照により本明細書に組み入れられる。
【0075】
1つの態様において、抗体製剤中のFc融合分子は、治療的FC分子である。例示的な治療的Fc融合分子としては、IL−1 Trap(ヒトIgG1のFc部分ならびに両方のIL−1受容体構成成分(I型受容体および受容体付属タンパク質)の細胞外ドメイン)、VEGF Trap(IgG1 Fcに融合したVEGFR1のIgドメイン)、アタシセプト(TACI−Ig)、CTLA4−Ig(アバタセプト)、CD4−Ig融合タンパク質(Pro−542)、TNFR1−IgG、アメビブ(登録商標)(アレファセプト、LFA−3/IgG1)、CD30−L−IgG、IL−10−Fc、TNRF−Fc、IL−2−Ig、OPG−Fc、ならびにレプチン(ObR)−Fcが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本発明を、抗アンジオポエチン(例えば、抗Ang2および/または抗Ang1)特異的抗体、ペプチボディ、および関連分子などを製剤化する際に使用することができるということがさらに企図される。これらの抗アンジオポエチン特異的抗体、ペプチボディ、および関連分子などには、限定されるものではないが、WO03/057134および米国出願公開US2003/0229023に記載されたものが挙げられる。前記の文献の各々は、特にAng2特異的抗体およびペプチボディなどに関する部分、とりわけそれらの公報に記載された配列の、およびL1(N);L1(N) WT;L1(N) 1K WT;2xL1(N);2xL1(N) WT;Con4 (N)、Con4 (N) 1K WT、2xCon4 (N) 1K;L1C;L1C 1K;2xL1C;Con4C;Con4C 1K;2xCon4C 1K;Con4−L1 (N);Con4−L1C;TN−12−9 (N);C17 (N);TN8−8(N);TN8−14 (N);Con 1 (N)を含むが、これらに限定されない、Ang2特異的抗体およびペプチボディなどに関する部分に記載されたものに関して、全体が参照により本明細書に組み入れられる。また、これらの抗アンジオポエチン特異的抗体、ペプチボディ、および関連分子などは、抗Ang2抗体および製剤、例えば、それに関してその全体が参照により本明細書に組み入れられるWO2003/030833に記載されたもの、特にAb526;Ab528;Ab531;Ab533;Ab535;Ab536;Ab537;Ab540;Ab543;Ab544;Ab545;Ab546;A551;Ab553;Ab555;Ab558;Ab559;Ab565;AbF1AbFD;AbFE;AbFJ;AbFK;AbG1D4;AbGC1E8;AbH1C12;AblA1;AblF;AblK、AblP;およびAblPを、その公報に記載されたように様々な順列で含み、これらは各々、前述の刊行物に完全に開示されたようにその全体が参照により本明細書に個別的かつ具体的に組み入れられる。
【0077】
ポリカチオン
本発明で有用なポリカチオンには、天然および合成両方の、正電荷を持つペプチドおよびタンパク質、ならびにポリアミン、炭水化物、または合成のポリカチオン性重合体が含まれる。本発明で有用な例示的ポリカチオンとしては、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリヒスチジン、およびカチオン性多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。本発明で有用な追加のポリカチオンとしては、プロタミン、ポリブレン(登録商標)(1,5−ジメチル−1,5−ジアザウンデカメチレンポリメトブロマイド、臭化ヘキサジメトリン)、ヒストン、ミエリン塩基性タンパク質、硫酸ポリミキシンB、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、ブラジキニン、スペルミン、プトレシン、カダベリン、オクチルアルギニン、カチオン性デンドリマー、および合成ペプチドが挙げられる。ある種の用途については、ポリカチオン性担体として、カチオン性脂質およびペプチド部分が含まれてもよい。例えば、WO96/22765を参照されたい。
【0078】
関連する実施形態において、ポリカチオンは、リジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン、および本明細書で示されるその他のカチオン性単量体を含むが、これらに限定されない、正電荷を持つ単量体の混合物、または電荷を持つ単量体および電荷を持たない単量体の混合物を含んでもよい。例示的な単量体としては、塩基性アミノ酸、中性単量体に連結したカチオン性単量体の反復配列、または反復構造特性を有するその他のタンパク質分子もしくは化学構造物が挙げられる。本発明での使用が企図される電荷を持たない単量体としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、またはプロリンなどの、中性アミノ酸が挙げられる。
【0079】
追加の実施形態において、ポリカチオンは、リジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン、およびカチオン性多糖類からなる群より選択される正電荷を持つ単量体のいずれか1つの単量体の混合物を含んでもよい。
【0080】
本発明の方法および組成物で有用ないくつかのポリカチオンは、タンパク質に全体として正電荷を与える高度に塩基性の領域またはアミノ酸を含むタンパク質またはその断片である。全長塩基性タンパク質全体をポリカチオン組成物に使用し得るということ、または塩基性アミノ酸残基を有するタンパク質の一部をポリカチオン中のカチオン性単量体として使用し得るということが企図される。例えば、ヒトプロタミン(Genbankアクセッション番号NP_002753)は、102アミノ酸のアルギニンに富むタンパク質である。ヒトプロタミンタンパク質の高度に塩基性の部分を、本明細書に記載されたようなカチオン性単量体として使用し得るということが企図される。ひいては、プロタミン単量体をポリカチオン組成物における反復単位として使用してもよい。
【0081】
さらに、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)は、中枢神経系に見られる高度に塩基性のタンパク質である(Eylar et al.,J Biol Chem.18:5770−84,1971)。この全長塩基性タンパク質全体をポリカチオン組成物に使用し得るということ、またはヒトミエリン塩基性タンパク質の公知のアイソフォーム(Genbankアクセッション番号P02686、NP_001020252、NP_001020263、NP_001020261、およびNP_002376)のいずれの高度に塩基性の部分をも本明細書に記載されたようなカチオン性単量体として使用し得るということが企図される。また、MBP単量体を、ポリカチオン重合体の組成物における反復単位として使用してもよい。
【0082】
ポリミキシンB(PMB)の環状部分(Thr−Dab−シクロ[Dab−Dab−d−Phe−Leu−Dab−Dab−Thr]、ここでDabは2,4−ジアミノ酪酸である)を、本発明のポリカチオン組成物における単一のカチオン性単量体として使用してもよく、または線状化して、PMB部分の複数の単量体を有する重合体を作製するよう使用することができる。また、当技術分野で公知のポリミキシンB のヘプタペプチド、ノナペプチド、およびオクタペプチド(J.Antibiot.(Tokyo)45:742−749およびTsubery et al.,Antimicrob Agents Chemother 49:3122−3128,2005)を、単量体として使用するかまたは線状化して、本発明のポリカチオン組成物を作製するための反復単位として使用してもよい。
【0083】
ブラジキニンは、RPPGFSPFRというアミノ酸配列を有する9アミノ酸のペプチド鎖である。この9アミノ酸配列を本発明のポリカチオン組成物に使用してもよく、またはその代わりとして、この9アミノ酸配列は、ブラジキニン単量体の反復単位を有する重合体を形成させるために使用されるカチオン性単量体を含む。
【0084】
スペルミン、プトレシン、およびカダベリンは、本発明の製剤で企図される塩基性アミノ酸のカチオン性誘導体である。スペルミンおよびプトレシンは、アルギニンの誘導体である。プトレシンは、アルギニンがアルギニンデカルボキシラーゼおよびアドマチン(admatine)イミノヒドロキシラーゼと反応することによって生成される。あるいは、アルギニンをまずオルニチンに変換し、それをプトレシンに変換することができる。スペルミンは、プトレシンが脱カルボキシルS−アデノシル−L−メチオニン由来のアミノプロピル基と反応してスペルミジンを生じることにより結果として得られる。その後、スペルミジンは、別のアミノプロピル基が付加された後、スペルミン[NH(CHNH(CHNH(CHNH]に変換される。カダベリンは、リジンの誘導体であり、リジンがリジンデカルボキシラーゼと反応した後に生成される。本発明で有用なポリカチオン組成物は、スペルミン、プトレシン、またはカダベリンのうちの1つ以上の単量体を含み、これらの単量体の混合物をさらに含み得るということが企図される。
【0085】
カチオン性多糖類は、本明細書に示されるカチオン性単量体などの、カチオン性部分とコンジュゲートしているかまたは他の形態で該カチオン性部分に連結されている多糖類である。キトサンを含むが、これに限定されない、ポリカチオン性多糖類は、本発明の組成物および方法での使用が企図される。カチオン性多糖類を、当技術分野において公知の技術を用いて作製してもよい。例えば、Constantin et al.,Drug Deliv.10:139−49,2003;米国特許第6,958,325号、および国際特許出願のWO2003/092739を参照されたい。
【0086】
さらなる実施形態において、当技術分野において公知の任意のカチオン性単量体は、本発明のポリカチオン組成物での使用が企図される。
【0087】
1つの態様において、ポリアミノ酸化合物の文脈における、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、およびポリオルニチンなどの、ポリカチオンは、2から約500残基からなり、0.2kDaから70kDaの分子量値を有する。ポリアミノ酸のポリカチオンでは、ポリカチオン化合物中の個々のアミノ酸単量体の数を、ポリカチオンを構成しているアミノ酸の分子量を知った上で、ポリカチオン化合物の分子量に基づいて決定してもよい。例えば、7個のリジン残基を含む重合体の重さは約1kDaであり、60個のリジン残基を含む重合体の重さは約8kDaであり、70kDaのポリリジンは500個のリジン残基を含む。
【0088】
1つの実施形態において、本発明の方法および組成物で使用されるポリカチオンの分子量は、約0.2kDaから70kDa、約1kDaから約70kDa、約5kDaから約50kDa、または約10kDから約35kDであってもよい。組成物中のポリカチオンの分子量は、1kD未満、約1kD、約5kD、約10kD、約15kD、約20kD、約25kD、約30kD、約35kD、約40kD、約45kD、約50kD、約55kD、約60kD、約65kD、または約70kDの分子量を有するということが企図される。
【0089】
ポリカチオン組成物を含む抗体およびFc融合分子の製剤を作製するための方法
溶解性を向上させるために、溶液のpHを溶液中の抗体またはFc融合分子の等電点(pI)よりも少なくとも1pH単位、または2pH単位も、低くまたは高くすることが重要である。抗体またはFc融合分子の等電点とは、抗体またはFc融合分子の正味の電荷がゼロとなるpHである。高いpI(例えば、8から11)を有する抗体またはFc融合分子は、通常、生理的pHの7.4では溶液中で凝集体を形成しない。
【0090】
異なるアイソタイプの抗体は、約70%の相同性を共有しており、典型的な抗体のpIは、約8.0から8.5であるが、約pI6から約pI9の範囲に及び得る。抗体の溶解性を増大させ、凝集および二量体形成を低下させるために、抗体溶液をpH5から6で製剤化する。このpHでは、抗体分子は正電荷を持ち、互いに反発し、凝集しない。また、このpHは、アスパラギンの脱アミド、メチオニンの酸化、ならびに酵素的および化学的切断の速度が低いので有用である。
【0091】
より低いpI(例えば、pI5から7)の抗体またはFc融合分子は、より多くの負の電荷を有するが、凝集体を生成し、pH5から6の製剤溶液中でまたはpH=pI点を越える製剤pH5から6から生理的pH7.4への移行の間に注射部位で沈殿する可能性がある。より低いpI値を有する抗体は、乏しい溶解性を示す。例えば、6.4の計算pIを有するIgG2λ抗体(実施例1)は、pH5.5から6.0で乏しい溶解性を有する。これは、溶液のpHが抗体のpIに近づくことによって生じる可能性が高い。pHが抗体のpIに近づくと、抗体分子は電気的に中性になり、互いに反発せず、溶液中で凝集する傾向がある。
【0092】
さらに、抗体は、7.5よりも高いpIを有するが、ポリカチオンとの会合を受け入れられる抗体の負電荷を持つ領域またはドメインも示してよい。例えば、抗体は、高いpIを有するが、抗体を不安定にさせ、溶液中で凝集しやすくさせる連続する酸性アミノ酸残基をCDRドメインに含んでもよい。一続きの連続するアミノ酸を含む抗体は、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)などの、少なくとも2つの連続する、一連の酸性アミノ酸残基を有するCDRアミノ酸配列を有する抗体である。
【0093】
さらに、ポリカチオン溶液中のFc融合分子の製剤は、Fc融合分子のpI、およびFc融合体の配列内の任意の一続きの負電荷を持つアミノ酸残基に基づいて調整される。Fc融合分子のpIの範囲は、pI4からpI9であってもよい。抗体と同様に、低いpIでは、Fc融合分子は、溶液中での低い溶解性を有する可能性が高い。
【0094】
関心となる抗体を有する製剤のための最適なポリカチオン溶液を決定するために、当技術分野において公知の標準的な技術(Current Protocols in Protein Science,John Wiley and Sons,New York,NY,1994)を用いて、抗体の全体の電荷に基づいて、抗体のpIをまず決定する。1つの酸性残基は、抗体のpIを0.1単位下げる。例えば、典型的な抗体のpIが約8ならば、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)などの追加の酸性残基を有する抗体は、抗体中の各負電荷のアミノ酸につき、通常より約0.1pI単位低いpIを有する。pHが抗体のpIを上回り、抗体がアスパラギン酸またはグルタミン酸残基を含む場合、負電荷を持つアミノ酸は脱プロトン化され、これらの酸性残基で負電荷を生じる。
【0095】
いくつかの一般に使用されるポリカチオン溶液のpIは、以前に計算されている。例えば、ポリリジンのpIは約11であり、ポリアルギニンのpIは約10.9であり、プロタミンのpIは約10であり、MBPのpIは約11である。これらのおよびその他のポリカチオンの高いpIおよび正電荷のおかげで、これらのカチオン性重合体が、負電荷を持つ抗体またはFc融合分子を溶液中で安定化させるのに有用なものとなっている。
【0096】
1つの実施形態において、抗体またはFc融合分子溶液中のポリカチオンの濃度は、約0.1%から約10%重量/重量(w/w)である。1つの実施形態において、ポリカチオンは、約1%から約5%w/w、約2%から約4%w/wまたは約3%w/wである。関連する実施形態において、溶液中の抗体またはFc融合分子は、約1mg/mlから約150mg/mlの濃度であり得る。別の実施形態において、製剤中の抗体またはFc融合分子の濃度は、約1mg/ml、約2.5mg/ml、約5mg/ml、約10mg/ml、約20mg/ml、約30mg/ml、約40mg/ml、約50mg/ml、約60mg/ml、約70mg/ml、約80mg/ml、約90mg/ml、約100mg/ml、約110mg/ml、約120mg/ml、約125mg/ml、約130mg/ml、約140mg/ml、または約150mg/mlであり得る。
【0097】
別の態様において、ポリカチオン/抗体またはFc融合分子の組成物を、組成物中のポリカチオン対抗体またはFc融合分子の比に基づいて製剤化してもよい。例えば、製剤を、約2:1のポリカチオン対抗体もしくはFc融合分子、約1:1のポリカチオン対抗体もしくはFc融合分子、または1:1未満の比率のポリカチオン対抗体もしくはFc融合分子というモル比で作製してもよい。この比率は、抗体もしくはFc融合分子中の負電荷を持つアミノ酸残基の数、ならびに/または製剤中のポリカチオンのカチオン性電荷の大きさおよび数に依存し得る。1つの例において、抗体は、定常領域中に負電荷を持つアミノ酸残基を示し得る。抗体は二量体分子であるので、抗体の各鎖は負電荷の残基を発現しており、そのようにして、電荷を持つ残基の数は、抗体の単鎖についての数の2倍となる。それゆえに、抗体構造中の負電荷の残基を中和するのに、2:1の比率のポリカチオン:抗体が必要となり得る。しかしながら、負電荷を持つ残基または領域に結合するための複数の部位を有する、より大きいポリカチオンを使用する場合、2:1未満の比率の、または1:1よりもさらに小さい比率のポリカチオン:抗体を製剤に使用し得る。
【0098】
薬学的組成物の製剤化
記載された方法において、本発明の化合物のみを投与することが可能であり得るが、投与される化合物は通常、従来の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的に許容される組成物のような、所望の投薬単位製剤中の活性成分として存在する。したがって、本発明の別の態様において、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と組み合わせた、本発明の抗体組成物およびポリカチオン組成物、または本発明のFc融合分子およびポリカチオン組成物を含む薬学的組成物が提供される。語句「薬学的にまたは薬理学的に許容される」は、下記のような、当技術分野において周知の経路を用いて投与した時に、アレルギー反応、またはその他の有害反応をもたらさない分子実体および組成物を指す。許容される薬学的賦形剤としては、通常、本明細書に記載されたような希釈剤、担体、アジュバントなどが挙げられる。
【0099】
さらに、化合物は、水または一般的な有機溶媒とともに溶媒和物を形成してもよい。そのような溶媒和物も同様に企図される。
【0100】
本発明の薬学的組成物は、有効量の本発明の抗体もしくはFc融合分子の製剤または有効投薬量の本発明の抗体もしくはFc融合分子の製剤を含んでもよい。有効投薬量の本発明の抗体製剤は、有効量の化合物よりも少ない量か、それと等しい量か、またはそれを上回る量を含む。例えば、有効量の抗体もしくはFc融合体の製剤を投与するのに、錠剤、カプセルなどのような、2つ以上の単位投薬量が必要とされる薬学的組成物、またはその代わりに、有効量の化合物を組成物の一部を投与することによって投与し得る、粉末、液体などのような、複数用量の薬学的組成物。「単位投薬量」は、好適な担体に分散された治療的組成物の離散量と定義される。当業者は、優れた医療行為および個々の患者の臨床状態によって決定されるように、有効投薬量および投薬レジメンを容易に最適化するであろう。
【0101】
本発明の薬学的組成物は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内を含む、任意の投与の経路用に、ならびに所望であれば、局部治療、病変内投与用に製剤化される。非経口注入としては、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、または皮下の投与が挙げられる。さらに、組成物は、特に減少用量の治療的抗体またはFc融合分子を用いたパルス注入によって好適に投与される。投与が短期のものかまたは長期のものかに一部依存して、好ましくは、注射によって、最も好ましくは、静脈内または皮下の注射によって投薬される。局所、特に、経皮、経粘膜、直腸、経口の投与、または例えば、所望の部位の近くに置かれたカテーテルを通じた局部投与を含む、その他の投与法が企図される。注射、特に静脈内注射、が好ましい。
【0102】
本発明の抗体組成物またはFc融合分子を有効性分として含む本発明の薬学的組成物は、投与の経路に応じて、薬学的に許容される賦形剤または希釈剤を含んでもよい。そのような賦形剤の例としては、水、薬学的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニル重合体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアガム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学的に許容されるサーファクタントなどが挙げられる。使用する賦形剤および希釈剤は、上記のものまたはその組み合わせから、しかしこれらに限定されることなく、適宜、本発明の投薬形態に応じて選定される。
【0103】
薬学的組成物の剤形は、選択される投与の経路によって様々に変わる(例えば、溶液、乳濁液)。投与されるべき抗体を含む適当な組成物を、生理学的に許容されるビヒクルまたは担体中に調製することができる。溶液または懸濁液のための、好適な担体としては、例えば、生理食塩水および緩衝化媒体を含む、水性またはアルコール性/水性の溶液、乳濁液、または懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース(Ringer’s dextrose)、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸化リンガーデキストロース、または不揮発性油を挙げることができる。静脈内ビヒクルは、様々な添加剤、防腐剤、または体液、栄養、もしくは電解質の補給剤を含むことができる。
【0104】
様々な水性担体、例えば、滅菌リン酸緩衝生理食塩水溶液、静菌水、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどは、穏やかな化学的修飾などに供された、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどのような、安定性を強化するためのその他のタンパク質を含んでもよい。
【0105】
一般に、薬学的組成物を、本発明の1つ以上の抗体/ポリカチオン組成物またはFc融合分子/ポリカチオン組成物を1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、結合剤、アジュバント、希釈剤、防腐剤、溶解剤、乳化剤などと混合することによって調製し、様々な疾患を治療または改善するための所望の投与可能製剤を形成させてもよい(Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版,Osol,A編(1980))。そのような組成物は、様々な緩衝剤内容物(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、およびイオン強度の希釈剤;界面活性剤および可溶化剤などの添加剤(例えば、ポリソルベート80とも呼ばれるTween 80、ポリソルベート20とも呼ばれるTween 20)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメルソル(Thimersol)、ベンジルアルコール)、および増量物質(例えば、マンニトール、スクロース);ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのような重合体化合物の微粒子調製物中に、またはリポソーム中に材料を組み入れることを含む。また、ヒアルロン酸を使用してもよく、これは血液循環中の持続期間の維持を促進する効果を有する。そのような組成物は、物理的状態、安定性、インビボ放出の速度、およびインビボ排除の速度に影響を及ぼし得る。例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)1435−1712ページを参照されたい。組成物は、液体形態で調製されてもよく、または凍結乾燥形態などの、乾燥粉末であってもよい。経皮製剤と同様に、移植可能な持続放出製剤も企図される。
【0106】
企図される追加の緩衝剤としては、リン酸塩、クエン酸塩、およびその他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;グリシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸、プロリン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;アラニン−ロイシンなどの短いペプチド;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含むその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Znタンパク質錯体);ならびに/またはPLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性サーファクタントが挙げられる。
【0107】
また、本明細書中の製剤は、治療される特定の徴候に対する必要に応じて、2つ以上の活性化合物、好ましくは互いに有害な影響を及ぼさない補完的な活性を有する活性化合物を含んでもよい。そのような分子は、意図される目的のために効果的である量での組み合わせで好適に存在する。
【0108】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混和した活性化合物を含んでもよい。そのような賦形剤は、懸濁剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、およびアカシアガムであり;分散剤または湿潤剤は、天然のホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチル−エネオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分的なエステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分的なエステルとの縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートであってもよい。また、水性懸濁液は、1つ以上の防腐剤、例えば、エチルp−ヒドロキシベンゾエート、またはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートを含んでもよい。
【0109】
本発明は、抗体、またはFc融合分子、およびポリカチオンを含む凍結乾燥製剤も企図する。凍結乾燥を、当技術分野において一般的な技術を用いて実行し、開発される組成物用に最適化すべきである[Tang et al.,Pharm Res.21:191−200,(2004)およびChang et al.,Pharm Res.13:243−9(1996)]。凍結乾燥製剤は、通常、緩衝剤、増量剤、および安定化剤から構成される。タンパク質を凍結乾燥する方法は、当技術分野において記載されている。例えば、米国特許第6,020,469号および米国特許公開US20070053871を参照されたい。
【0110】
1つの態様において、凍結乾燥サイクルは、3つの工程、すなわち、凍結、一次乾燥、および二次乾燥から構成される[A.P.Mackenzie,Phil Trans R Soc London,Ser B,Biol 278:167(1977)]。凍結工程では、溶液を冷却して、氷の形成を開始させる。さらに、この工程は、増量剤の結晶化を誘導する。氷は、一次乾燥段階で昇華する。この段階は、真空を用いて、室圧を氷の蒸気圧よりも下に低下させ、熱を導入して昇華を促進させることによって行なわれる。最後に、吸着または結合した水を、二次乾燥段階で、低下した室圧下、上昇した棚温度で除去する。この過程は、凍結乾燥ケーキとして知られる材料を生じさせる。その後、このケーキを、滅菌水かまたは注射用の好適な希釈剤のいずれかで再構成することができる。
【0111】
凍結乾燥サイクルは、賦形剤の最終的な物理的状態を決定するだけでなく、再構成時間、外観、安定性、および最終的な水分含有量などのその他のパラメータにも影響を及ぼす。凍った状態での組成物構造は、特定の温度で生じるいくつかの転移(例えば、ガラス転移および結晶化)を経るので、凍結乾燥過程を理解し、最適化するために利用することができる。ガラス転移温度(Tg)は、溶質の物理的状態に関する情報を提供することができ、示差走査熱量法(DSC)によって決定することができる。これは、凍結乾燥サイクルを設計するときに考慮に入れなければならない重要なパラメータである。さらに、乾燥状態で、ガラス転移温度は、最終産物の保存温度に関する情報を提供する。
【0112】
本組成物の特定の実施形態において、安定化剤を凍結乾燥製剤に添加し、凍結乾燥によって誘導されるかまたは保存によって誘導される凝集または化学的分解を防止するかまたは低下させる。再構成時に透明でないかまたは濁っている溶液は、タンパク質が沈殿していることを示す。用語「安定化剤」は、水性および固体の状態で、凝集またはその他の物理的分解、および化学的分解(例えば、自己分解、脱アミド、酸化など)を防止することができる賦形剤を意味する。安定化剤には、凍結防止剤、凍結乾燥防止剤(lyoprotectant)、およびガラス形成剤として役立つことができる化合物群が含まれる。凍結防止剤は、凍結の間または低温、凍結状態でタンパク質を安定化するように作用する(P.Cameron,編,Good Pharmaceutical Freeze−Drying Practice,Interpharm Press,Inc.,Buffalo Grove,IL,(1997))。凍結乾燥防止剤は、フリーズドライの脱水段階の間にタンパク質のネイティブ様の立体構造特性を保存することによって、フリーズドライされた固体投薬形態でタンパク質を安定化させる。ガラス状態特性は、温度の関数としてのそれらの緩和特性に応じて「強い」または「脆い」と分類されている。凍結防止剤、凍結乾燥防止剤、およびガラス形成剤が、安定性を与えるために、タンパク質と共に同じ相に留まるということが重要である。糖、重合体、およびポリオールは、この範疇に収まり、時として3つの役割の全てを果たすことができる。
【0113】
スクロース、トレハロース、またはグリシンを含むが、これらに限定されない、薬学的組成物に従来利用されている安定化剤を使用してもよい[Carpenter et al.,Develop.Biol.Standard 74:225,(1991)]。また、ポリソルベート20(Tween 20)またはポリソルベート80(Tween 80)などの、サーファクタント安定化剤を、適当な量で添加し、凍結および乾燥の間の表面関連凝集現象を防止してもよい[Chang,B,J.Pharm.Sci.85:1325,(1996)]。所望であれば、凍結乾燥組成物は、凍結乾燥「ケーキ」を形成させるのに好適な適当な量の増量剤および浸透圧調製剤も含む。増量剤は、結晶(例えば、マンニトール、グリシン)または非結晶(例えば、スクロース、重合体(例えば、デキストラン)、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース)のいずれかであってもよい。1つの実施形態において、増量剤はマンニトールである。さらなる実施形態において、マンニトールは、約2%から約5%w/vの濃度で、またさらなる実施形態において、約3%から約4.5%w/vの濃度で組み入れられて、機械的かつ薬学的に安定でかつ上品なケーキを生じさせる。別の実施形態において、マンニトール濃度は、2%w/vである。
【0114】
薬学的に許容される緩衝剤およびpHの選定も、本組成物の安定性に影響を及ぼすことが分かっている。組成物中に存在する緩衝剤系は、生理学的に適合するようかつ再構成された溶液中、および凍結乾燥前の溶液中で所望のpHを維持するよう選択される。1つの態様において、緩衝剤は、約pH6.0から約pH8.0の範囲のpH緩衝能を有する。最も安定な製剤化条件を選択するために、典型的には、上述のパラメータを組み入れた一連のスクリーニング研究が実施される。
【0115】
また、本明細書に記載された凍結乾燥法は、以下の工程、すなわち、凍結乾燥前に安定化剤を抗体またはFc融合分子/ポリカチオン混合物に添加する工程、凍結乾燥前に増量剤および浸透圧調製剤より選択される少なくとも1つの薬剤、ならびにサーファクタントを該抗体またはFc融合分子/ポリカチオン混合物に添加する工程のうちの1つ以上を含んでもよい。増量剤は、上に示される任意の増量剤であってもよい。1つの実施形態において、増量剤はマンニトールである。糖は、上に示される任意の安定化糖であってもよい。1つの実施形態において、安定化剤はスクロースである。サーファクタントは、上に示される任意のサーファクタントであってもよい。1つの実施形態において、サーファクタントは、ポリソルベート20である。
【0116】
凍結乾燥材料のための標準的な再構成の実施は、一定量の純水または滅菌注射用水(WFI)(典型的には、凍結乾燥の間に除去される容量に等しい)を添加して戻すことであるが、時として、抗菌剤の希釈溶液を非経口投与用の医薬品の産生で使用する[Chen,Drug Development and Industrial Pharmacy,18:1311−1354(1992)]。
【0117】
様々な水性担体、例えば、滅菌注射用水、複数用量使用のための防腐剤を含む水、もしくは適当な量のサーファクタント(例えば、ポリソルベート20)を含む水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、または水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混和した活性化合物を含んでもよい。そのような賦形剤は、懸濁剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、およびアカシアガムであり、分散剤または湿潤剤は、天然のホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチル−エネオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分的なエステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分的なエステルとの縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートであってもよい。水性懸濁液は、1つ以上の防腐剤、例えば、エチルp−ヒドロキシベンゾエート、またはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートを含んでもよい。
【0118】
本発明は、抗体またはFc融合分子および1つ以上のポリカチオンを含む、自己緩衝製剤である抗体またはFc融合分子の製剤をさらに提供する。緩衝とは、酸または塩基の添加による組成物のpHの変化に対する抵抗性を指す。したがって、緩衝能はしばしば、組成物がpH変化に抵抗する能力と定義される。自己緩衝製剤とは、追加の緩衝剤なしで、製剤を所望のpH範囲内に維持するのに十分な緩衝能を有する、抗体またはFc融合分子を含む製剤を指す。(参照により本明細書に組み入れられる)国際特許公開WO2006/138181は、自己緩衝製剤を作製する方法を記載している。
【0119】
キット
追加の態様として、本発明は、キットを使用しやすくする形で包装された1つ以上の抗体またはFc融合分子の製剤または組成物を含むキットを含む。1つの実施形態において、そのようなキットは、容器に貼付けられているかまたは包装に含まれている、化合物もしくは組成物の使用を説明するラベルが付された、密封された瓶または器(例えば、バイアルまたはi.v.バッグ)などの容器に包装された、本明細書に記載された抗体またはFc融合分子の製剤または組成物(例えば、抗体またはFc融合分子、およびポリカチオンを含む組成物)を含む。ある実施形態において、抗体またはFc融合分子の製剤または組成物を単位投薬量形態で包装する。キットは、特定の投与の経路に従って組成物を投与するのに好適な装置をさらに含む。ある実施形態において、キットは、本発明の抗体またはFc融合分子の製剤または組成物の使用および投与を説明するラベルを含む。
【0120】
(実施例)
本発明の追加の態様および詳細は、限定的ではなく、例示的であることが意図される、以下の実施例から明白であろう。
【実施例1】
【0121】
保存用に製剤化された抗体溶液は、しばしば、長時間経つと分解し、凝集およびさらなるより小さい分解産物を生じる。抗体定常領域のアミノ酸配列、特にアスパラギン酸残基のストレッチを含む配列は、極性電荷を典型的に有する。この溶液をさらに安定化し、保存の間の抗体凝集を防止するために、異なる安定化溶液を抗体製剤に添加し、凝集および分解の程度を評価した。
【0122】
6.4の計算pIを有する、CD30分子に特異的なヒトモノクローナル組み換えIgG2aλ抗体の様々な製剤を作製した。この実験で使用されるポリカチオンは、分子量(MW)平均値35kDaのポリアルギニン、5つのリジン残基を含むポリリジン、および70kDaを上回るMWのポリアルギニンであった。70mg/ml IgGストック溶液のストック溶液を、10mM KPO、161mMアルギニン、0.004% Tween、pH7.6を含むK7.6RT緩衝液に希釈することによって、製剤溶液を調製した。また、このストック溶液をA5.2Su緩衝液(酢酸緩衝液(pH5.2)+スクロース)に7倍希釈し、10mM酢酸ナトリウム、9%スクロース、3%ポリカチオン、pH5.2を含む10mg/ml IgG溶液にした。このポリカチオン溶液の最終的なpH値は、pH5.5から6.0でほぼ同じであった。結果を表1に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
酢酸塩およびスクロースを含む抗体製剤(pH5.5から6.0)は曇りがあって、粘性があったが、3%w/wの濃度のポリカチオンを添加することによって、曇りがあって、粘性がある状態の形成が妨げられ、抗体溶液が透明なままで残った。溶液中での抗体の安定性を検査する、抗体溶液の逆相クロマトグラフィーにより、抗体が、ポリカチオンの存在下で溶けた状態にあることが示されている。
【実施例2】
【0125】
多くの抗体定常領域は、溶液中の抗体に全体的または局部的のいずれかの負電荷を付与することができる酸性アミノ酸残基を含む。この負電荷の効果を最小限に抑えるために、負電荷を持つ抗体に対するポリカチオン溶液の効果を評価した。
【0126】
8.9の計算pIを有し、かつ3つの隣接するアスパラギン酸残基(DDD)を可変領域に含む、アミロイドタンパク質に特異的な組み換えヒトモノクローナルIgG1κ抗体を様々なポリカチオン溶液中に製剤化した。抗アミロイド抗体を作製する方法、およびその構造は、国際公報WO2006/081171に記載されている(WO2006/081171中の配列番号11)。
【0127】
抗体を、対照溶液(20mMリン酸ナトリウム(pH6.9)中に100mg/mlを含む)またはポリカチオン溶液(20mMリン酸ナトリウム(pH5.0)、0.005% Tween、および10mg/ml 22Kポリリジンもしくは10mg/ml 83Kポリリジン中に100mg/ml抗体を含む)に希釈し、52で6週間保存した。凝集体および二量体の相対存在量をサイズ排除クロマトグラフィーで測定した。
【0128】
抗体は、pH6.9の製剤中で長期間保存した後、二量体および凝集体を生成した。サイズ排除クロマトグラフィーにより、単一リジン残基のみを含む溶液(10mg/ml)は、抗体凝集を低下させることができず、実際に、対照溶液と比べて形成される凝集体の量を増大させるということが示されている。しかしながら、これらの条件下で形成された二量体および凝集体は、22Kまたは83Kポリリジンを含む製剤中では顕著に低下した(図1)。
【0129】
上記の実験は、モノクローナル抗体の製剤にポリカチオンを添加することによって、製剤化された抗体の溶解性および/または安定性が向上するということを示している。本発明のポリカチオン製剤は、7.4未満のpIを有する抗体ならびに密接して配置された酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸およびグルタミン酸)を有する抗体の溶解性および/または安定性を増大させるのに有効であることが分かった。
【実施例3】
【0130】
実施例1に記載された抗CD30 IgG2a抗体が、異なる濃度のポリカチオン組成物に溶けるかどうかを明らかにするために、様々なポリカチオン濃度にわたって抗体が溶解する能力を解析した。
【0131】
試料抗体を10mMリン酸カリウム、161mMアルギニン、0.004% Tween−20、pH7.6中に72mg/mLで製剤化し、分子量分布15,000から30,000Daの増加する量のポリリジンを含む30mM酢酸ナトリウム、5%ソルビトール、pH5.0中に10.3mg/mLまで希釈した。ポリリジンを全く添加していないpH5の抗体の溶液は濁っていた。0.08%ポリリジン程度の低いポリカチオン濃度を有する製剤は、抗体製剤の濁度の減少を示した。溶液の濁度は、ポリリジンの濃度を増大させるにつれて減少した。0.5%以上のポリリジンを含む抗体溶液は、完全に透明であった。
【0132】
また、ペンタリジン(5つのリジン残基を含む)ポリカチオンを用いて、製剤を作製した。結果は、ペンタリジン(0.65KDa)を使用すると、有効であるために、より高いポリリジン濃度が必要になるということを示した。1.28%ポリリジンを含む溶液は濁っていたが、2.57%ポリリジン(ペンタリジン)溶液は完全に透明であった。
【0133】
ペプチボディの安定性に対するポリカチオンの効果も解析した。5.4のpIを有するペプチボディ(2XCon4C、抗アンジオポエチン2/1ペプチボディ(アミノ酸配列:MDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGGAQQEECEWDPWTCEHMGSGSATGGSGSTASSGSGSATHQEECEWDPWTCEHMLE))(Oliner et al.,Cancer Cell,507−516,2004)を、10mMリン酸カリウム、161mMアルギニン、0.004%Tween−20、pH7.6中に27mg/mLで製剤化し、分子量分布15,000から30,000Daの増加する量のポリリジンを含む30mM酢酸ナトリウム、5%ソルビトール、pH5.0中に3.86mg/mLまで希釈した。ポリリジンを全く添加していない、pH5のペプチボディの溶液は濁っていた。0.08%以上のポリリジンを含むペプチボディ溶液は、完全に透明であった。
【0134】
ペプチボディをペンタリジンと共に製剤化したとき、同様の結果が得られた。0.08%ペンタリジンを含む溶液は、完全に透明であった。
【0135】
単量体アミノ酸リジンは、低いpIを有するIgG2抗体を溶解させるのに効果を示したが、溶液から濁りを消し去るのに2%のリジンを必要とした。また、実施例2に示されるように、および以前に報告されているように、リジンまたはアルギニンという単一アミノ酸のみを含む組成物は、抗体を不安定化して凝集の加速をもたらし、一方、ポリリジンおよびポリアルギニンは、抗体凝集を減少させる。
【0136】
以下の提案される作用の機序に束縛されることを望まないが、これらの実験で見られたポリカチオンの効果についてのあり得る説明は、それらが抗体の負電荷を持つポケットに結合することで、抗体の正味の正電荷を増大させ、抗体の実効pIを増大させ、それによって分子間相互作用を低下させるということであろう。これらの効果は、所与のpHでの抗体溶解性の増大、およびある条件下での凝集の速度の減少をもたらし得る。また、これらの領域へのポリカチオンの結合は、この領域の抗体構造の柔軟性を低下させ得、この誘導された剛性が、凝集、アスパラギン酸異性化、酸化、および脱アミドなどの分解に逆らってさらに安定化し得る。これらの効果は、低いpIの抗体および連続するアスパラギン酸(DD)またはグルタミン酸(EE)残基を含む抗体の場合により顕著であり得るものの、ポリカチオンがこれらの特徴の範囲外の抗体を安定化する可能性があり得る。
【0137】
上記の例示的な実施例に示される本発明において、多くの修正および変形が当業者に思いつかれると思われる。したがって、付随する特許請求の範囲に見られるような限定のみが本発明に載せられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体製剤を作製する方法であって、抗体をポリカチオンと組み合わせる工程を含む方法。
【請求項2】
Fc融合分子製剤を作製する方法であって、Fc融合分子をポリカチオンと組み合わせる工程を含む方法。
【請求項3】
ペプチボディ製剤を作製する方法であって、ペプチボディをポリカチオンと組み合わせる工程を含む方法。
【請求項4】
ポリカチオンが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリヒスチジン、およびカチオン性多糖類、またはその混合物からなる群より選択される、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
ポリカチオンが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリヒスチジン、およびカチオン性多糖類からなる群より選択されるポリカチオンのうちの少なくとも2つから構成される、請求項4の方法。
【請求項6】
ポリカチオンが、ポリリジン、もしくはポリアルギニン、またはその共重合体から構成される、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項7】
ポリカチオンが、カチオン性単量体および中性単量体の反復単位を含む重合体である、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項8】
ポリカチオンが、単量体式A−B−X−Y(式中、AおよびXはカチオン性単量体であり、BおよびYは中性単量体である。)を有する、請求項7の方法。
【請求項9】
AおよびXが同じカチオン性単量体である、請求項8の方法。
【請求項10】
AおよびXが異なるカチオン性単量体である、請求項8の方法。
【請求項11】
BおよびYが同じ中性単量体である、請求項8の方法。
【請求項12】
BおよびYが異なる中性単量体である、請求項8の方法。
【請求項13】
単量体の1つ以上がアミノ酸残基である、請求項9から12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
中性単量体が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、およびプロリンからなる群より選択される、請求項8の方法。
【請求項15】
ポリカチオンがリジン−グリシン残基の反復単位を含む、請求項7の方法。
【請求項16】
抗体製剤が治療的抗体を含む、請求項1の方法。
【請求項17】
Fc融合分子製剤が治療的Fc融合分子を含む、請求項2の方法。
【請求項18】
前記治療的抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4抗体からなる群より選択されるIgG抗体である、請求項16の方法。
【請求項19】
前記組成物中のポリカチオンが、約0.2kDaから約70kDaの分子量を有する、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項20】
前記抗体製剤中の抗体が7.5以下のpIを有する、請求項1の方法。
【請求項21】
前記抗体製剤中の抗体がIgG2抗体である、請求項20の方法。
【請求項22】
前記抗体製剤中の抗体が約6.4の計算pIを有する、請求項21の方法。
【請求項23】
ポリカチオンが、最終製剤中に0.1%から10%w/wポリカチオンの最終濃度まで添加される、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項24】
製剤が、前記ポリカチオン組成物と組み合わせたときに、ポリカチオンの非存在下での前記抗体製剤の溶解性と比較して、より大きい溶解性を有する、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項25】
製剤が、ポリカチオン組成物と組み合わせていない抗体製剤と比較して、増大した貯蔵寿命を有する、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項26】
前記製剤が、ポリカチオン組成物と組み合わせていない同様の製剤よりも少なくとも25%長い貯蔵寿命を有する、請求項25の方法。
【請求項27】
前記製剤における前記ポリカチオンの存在が、ポリカチオン組成物と組み合わせていない製剤と比較して、前記製剤における二量体または凝集体の形成を低下させる、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項28】
方法が、約0.1%から約10%w/wポリカチオンを含む治療的抗体製剤の組成物をもたらす、請求項1の方法。
【請求項29】
前記ポリカチオン組成物のpHが約4.5から約7.5である、請求項1から28のいずれか一項の方法。
【請求項30】
前記ポリカチオン組成物のpHが約5.0から約6.5である、請求項1から28のいずれか一項の方法。
【請求項31】
前記ポリカチオン組成物のpHが約5.5から約6.0である、請求項1から28のいずれか一項の方法。
【請求項32】
治療的抗体、ポリカチオン、および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項33】
7.5以下のpIを有する治療的抗体ならびにポリリジンおよびポリアルギニンからなる群より選択されるポリカチオンを含む薬学的組成物。
【請求項34】
少なくとも2つの連続する酸性アミノ酸残基を含むCDRドメインを有する治療的抗体ならびにポリリジンおよびポリアルギニンからなる群より選択されるポリカチオンを含む薬学的組成物。
【請求項35】
前記酸性アミノ酸が、アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)からなる群より選択される、請求項34の薬学的組成物。
【請求項36】
Fc融合分子、ポリカチオン、および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項37】
ペプチボディ、ポリカチオン、および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項38】
Ang2に結合するペプチボディ、ポリカチオン、および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項39】
ポリカチオンが、ポリリジンおよびポリアルギニンからなる群より選択される、請求項36から38のいずれか一項の組成物。
【請求項40】
組成物が、ポリカチオンの非存在下の薬学的組成物と比較して、増大した貯蔵寿命を有する、請求項32から39のいずれか一項の薬学的組成物。
【請求項41】
組成物が、ポリカチオンの非存在下の組成物よりも大きい水への溶解性を有する、請求項32から39のいずれか一項の薬学的組成物。
【請求項42】
薬学的組成物の二量体化および/または凝集体形成が、ポリカチオンの非存在下の薬学的組成物と比較して低下している、請求項32から40のいずれか一項の薬学的組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−536786(P2010−536786A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521190(P2010−521190)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/073250
【国際公開番号】WO2009/026122
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】