作業車のエンジン停止操作構造
【課題】無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具をエンジン停止用の所定位置に誤操作することに起因した不必要なエンジン停止を防止する。
【解決手段】前後進切り換え用の操作具40の所定の操作に基づいてエンジン7が停止するように構成した作業車のエンジン停止操作構造において、操作具40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性を前進状態からと後進状態からとで異ならせる操作性相違手段Aを備えてある。
【解決手段】前後進切り換え用の操作具40の所定の操作に基づいてエンジン7が停止するように構成した作業車のエンジン停止操作構造において、操作具40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性を前進状態からと後進状態からとで異ならせる操作性相違手段Aを備えてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後進切り換え用の操作具の所定の操作に基づいてエンジンが停止するように構成した作業車のエンジン停止操作構造に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例である乗用田植機においては、前後進切り換え用の操作具として主変速装置の変速操作と前後進切り換え操作とを可能にする主変速レバーを備え、この主変速レバーを操作案内するガイド溝に備えた左右向きの前後進切り換え経路における前進変速経路側の横外側をエンジン停止用の所定位置に設定し、かつ、主変速レバーの所定位置への操作を検出するスイッチをガイド板に装備し、スイッチの出力に基づいて主変速レバーの所定位置での所定時間の保持操作を検知した場合にエンジンを停止させるように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−94753号公報(段落番号0039、0040、図5、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、ガイド溝の前後進切り換え経路における前進変速経路側の横外側をエンジン停止用の所定位置に設定したことで、主変速レバーの前進変速経路から所定位置への操作に要する操作時間の短縮を図ることができる。
【0005】
その反面、主変速レバーを前後進切り換え経路に沿って後進変速経路から前進変速経路に操作する際には、その操作の延長線上にエンジン停止用の所定位置が位置することから、主変速レバーの所定位置への誤操作が生じ易くなっている。そのため、主変速レバーを後進変速経路から前進変速経路に操作する際に、主変速レバーがエンジン停止用の所定位置に入り込んでエンジンが不必要に停止する不都合を招くことがある。
【0006】
このような不必要なエンジン停止を防止するために、主変速レバーをエンジン停止用の所定位置に保持する所定時間を長くすることが考えられるが、この場合には、主変速レバーを所定位置に操作してからエンジンが停止するまでに要する時間も長くなることから、無駄な燃料消費を防止する上において改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具をエンジン停止用の所定位置に誤操作することに起因した不必要なエンジン停止を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、前後進切り換え用の操作具の所定の操作に基づいてエンジンが停止するように構成した作業車のエンジン停止操作構造において、
前記操作具の所定の操作で前記エンジンを停止させる際の操作性を前進状態からと後進状態からとで異ならせる操作性相違手段を備えてある。
【0009】
第1の発明によると、例えば、作業車が前進後に走行停止して補助作業を行うことが多く、後進後に走行停止して補助作業を行うことが稀なものである場合には、操作性相違手段により、操作具の所定の操作でエンジンを停止させる際の操作性が前進状態からよりも後進状態からの方が悪くなるようにすることで、頻繁に行う操作具の前進状態からの所定の操作が行い易くなってエンジン停止に至るまでに要する時間を短くすることができ、又、稀に行う操作具の後進状態からの所定の操作が行い難くなって後進状態からの操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を招き難くすることができる。
【0010】
逆に、作業車が後進後に走行停止して補助作業を行うことが多く、前進後に走行停止して補助作業を行うことが稀なものである場合には、操作性相違手段により、操作具の所定の操作でエンジンを停止させる際の操作性が後進状態からよりも前進状態からの方が悪くなるようにすることで、頻繁に行う操作具の後進状態からの所定の操作が行い易くなってエンジン停止に至るまでに要する時間を短くすることができ、又、稀に行う操作具の前進状態からの所定の操作が行い難くなって前進状態からの操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を招き難くすることができる。
【0011】
つまり、作業車に応じて操作具の所定の操作でエンジンを停止させる際の操作性を前進状態からと後進状態からとで異ならせることで、補助作業の最中もエンジンが稼働することによる無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を防止することができ、運転者の意思とは関係なくエンジンが停止することに起因した作業効率の低下を防止することができる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記操作性相違手段により、前進状態からの前記操作具の所定の操作に要する時間よりも後進状態からの前記操作具の所定の操作に要する時間が長くなるように構成してある。
【0013】
第2の発明によると、操作具の前進状態からの所定の操作でエンジンが停止するまでに要する時間を短くすることができる。又、操作具の後進状態からの所定の操作に要する時間が長くなることで、操作具の後進状態からの誤操作で所定の操作が完了するまでの間において誤操作を取り消すことが行い易くなる。
【0014】
従って、補助作業の最中もエンジンが稼働することによる無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具の後進状態からの誤操作に起因した不必要なエンジン停止を防止することができる。
【0015】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、
前記操作具の所定の操作を、前記操作具の所定位置での所定時間の保持操作とし、
前記所定時間を異ならせることで前記操作性相違手段を構成してある。
【0016】
第3の発明によると、操作具を所定位置に保持する所定時間を異ならせるだけの簡単な構成で、補助作業の最中もエンジンが稼働することによる無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を防止することができる。
【0017】
第4の発明は、上記第1又は2の発明において、
前記操作具の所定の操作を、前記操作具の通常の操作経路から外れた所定位置への操作とし、
前記操作具の所定位置への操作を機械的に阻害する阻害手段を設け、
前記阻害手段による阻害の程度を異ならせることで前記操作性相違手段を構成してある。
【0018】
第4の発明によると、操作具の所定位置への操作に対する阻害手段の機械的な阻害の程度を異ならせるだけの簡単な構成で、補助作業の最中もエンジンが稼働することによる無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を防止することができる。
【0019】
又、操作具の所定位置への操作に対する阻害を機械的に行うことから、阻害手段に故障が生じた場合の対処が行い易くなり、メンテナンス性の面で有利にすることができる。
【0020】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
前記操作具を前後進切り換え用と変速用とを兼ねる変速操作具とし、
前記操作具の所定の操作を、少なくとも前記変速操作具の中立位置に連接した所定位置への操作を行う操作としてある。
【0021】
第5の発明によると、変速操作具の所定の操作を行う場合には変速操作具を中立位置に操作する必要があることから、変速操作具の所定の操作でエンジンを停止させる際には、その操作で走行速度を零速又はそれに近い微低速にすることができ、エンジンの停止に伴う急減速を回避することができる。
【0022】
第6の発明は、上記第1の発明において、
前記操作具を前後進切り換え用と変速用とを兼ねる変速操作具とし、
前記変速操作具の操作経路を、左右向きの前後進切り換え経路と前記前後進切り換え経路の一端部から前後向きに延出する前進変速経路と前記前後進切り換え経路の他端部から前後向きに延出する後進変速経路とを有するように形成し、
前記変速操作具の所定の操作を、前記変速操作具の前記前後進切り換え経路の左右一側端に連接した所定位置での所定時間の保持操作とし、
前記変速操作具を前記前進変速経路と前記後進変速経路のうちの前記所定位置に近い側の変速経路から前記所定位置に操作した場合の前記所定時間よりも前記所定位置から遠い側の変速経路から前記所定位置に操作した場合の前記所定時間を長くすることで前記操作性相違手段を構成してある。
【0023】
第6の発明によると、変速操作具を前後進切り換え経路に沿って所定位置から遠い側の変速経路から所定位置に近い側の変速経路に操作する際には、その操作の延長線上に所定位置が位置することで、変速操作具の所定位置への誤操作が生じ易くなる。そのため、変速操作具を所定位置に近い側の変速経路と所定位置から遠い側の変速経路とにわたって操作する前後進切り換え操作において、変速操作具を所定位置から遠い側の変速経路から所定位置に近い側の変速経路に操作する際に、変速操作具が誤って所定位置に入り込んでしまい、その操作によるエンジンの停止が運転者の意思とは関係なく行われることがある。
【0024】
そこで、変速操作具の所定の操作を所定位置での所定時間の保持操作とし、かつ、変速操作具を所定位置に近い側の変速経路から所定位置に操作した場合の所定時間よりも所定位置から遠い側の変速経路から所定位置に操作した場合の所定時間を長くすることで、変速操作具を所定位置から遠い側の変速経路から所定位置に近い側の変速経路に操作する際に変速操作具が誤って所定位置に入り込んだとしても、変速操作具が所定位置に入り込んでから所定の操作が完了するまでの時間的な余裕を確保することができ、所定時間が経過するまでにおける変速操作具の所定位置からの離脱操作が行い易くなる。
【0025】
従って、前後進切り換え操作の際に変速操作具が誤って所定位置に入り込むことでエンジンの停止が運転者の意思とは関係なく行われることに起因した作業効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】乗用田植機の全体左側面図である。
【図2】乗用田植機の全体平面図である。
【図3】走行用の伝動構成を示す概略平面図である。
【図4】作業用の伝動構成を示す概略平面図である。
【図5】変速操作構造を示す要部の側面図である。
【図6】変速操作構造を示す要部の正面図である。
【図7】変速操作構造を示す要部の平面図である。
【図8】主変速レバーの操作経路を示す要部の横断平面図である。
【図9】主変速レバーの前進5速位置への操作状態を示す図である。
【図10】主変速レバーの後進3速位置への操作状態を示す図である。
【図11】主変速レバーの中立位置への操作状態を示す図である。
【図12】制御構成を示すブロック図である。
【図13】エンジンの始動及び停止用の回路図である。
【図14】エンジン停止制御のフローチャートである。
【図15】エンジン始動制御のフローチャートである。
【図16】操作性相違制御のフローチャートである。
【図17】別実施形態〔4〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【図18】別実施形態〔5〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【図19】別実施形態〔6〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【図20】別実施形態〔7〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【図21】別実施形態〔8〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車のエンジン停止操作構造を、作業車の一例である乗用田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態で例示する乗用田植機は、4輪駆動型に構成した走行車体1の後部に、単動型の油圧シリンダを採用した昇降シリンダ2の作動で上下揺動する平行四連リンク式のリンク機構3を装備し、このリンク機構3の後端部に、6条用の苗植付装置4を前後向きの支軸5などを介してローリング可能に連結してある。つまり、走行車体1の後部に苗植付装置4を昇降シリンダ2の作動による昇降移動が可能な状態で、かつ、支軸5を支点にしたローリングが可能な状態に連結してある。そして、走行車体1の後端部と苗植付装置4とにわたって6条用の施肥装置6を装備してある。これにより、最大6条の植え付け及び施肥が可能な6条植え用のミッドマウント施肥仕様に構成してある。
【0029】
図1〜4に示すように、走行車体1は、その前部に防振搭載した水冷式のエンジン7からの動力を主変速装置8にベルト伝動し、主変速装置8による変速後の動力を、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)9の内部において走行用と作業用とに分岐するように構成してある。そして、走行用の動力を、T/Mケース9に内蔵した副変速装置10及び前輪用の差動装置11に伝達した後、差動装置11から左右の差動軸12などを介して取り出した動力を前輪駆動用として左右の前輪13に伝達し、かつ、差動ケース14と一体回転する伝動ギア15から取り出した動力を、T/Mケース9から後車軸ケース16にわたる中継伝動軸17、並びに、後車軸ケース16に内蔵した後輪用伝動軸18及び左右のサイドクラッチ19、などを介して後輪駆動用として左右の後輪20に伝達するように構成してある。又、作業用の動力を、T/Mケース9に内蔵したワンウェイクラッチ21、株間変速装置22、及び植付クラッチ23、並びに、T/Mケース9から苗植付装置4にわたる作業用伝動軸24、などを介して苗植付装置4に伝達してあり、苗植付装置4の逆転作動を阻止するように構成してある。後車軸ケース16には、後輪用伝動軸18に制動作用する多板式のブレーキ25を装備してある。ブレーキ25は制動解除状態に自己復帰するように構成してある。
【0030】
尚、エンジン7にはガソリンエンジンを採用してある。主変速装置8には静油圧式の無段変速装置を採用してある。副変速装置10には、作業走行用の低速状態と路上走行用の高速状態との高低2段に変速可能に構成したギア式の変速装置を採用してある。左右の各サイドクラッチ19には多板式の油圧クラッチを採用してある。株間変速装置22には、6段の変速が可能となるように構成したギア式の変速装置を採用してある。
【0031】
図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、走行車体1からの作業用の動力により、最大6条のマット状苗を載置する苗載台26が横送り機構(図示せず)の作動で左右方向に一定ストロークで往復移動するように構成してある。又、苗載台26の各マット状苗に対応して左右方向に一定間隔をあけて並ぶように配備したロータリ式の6つの植付機構27が、苗載台26の下端から植付苗を所定量ずつ取り出して、左右方向に並ぶ3つの整地フロート28で整地した圃場の泥土部に植え付け供給するように構成してある。そして、苗載台26が左右のストローク端に到達するごとにベルト式の縦送り機構29が作動して、苗載台26に載置した各マット状苗を苗載台26の下端に向けて所定ピッチで縦送りするように構成してある。
【0032】
各整地フロート28は、それらの後部側を、左右向きのフロート支点軸30から後下向きに延設した3組の支持アーム31のうちの対応する支持アーム31の遊端部(後端部)に上下揺動可能に連結してある。
【0033】
施肥装置6には、中継伝動軸17から動力分岐機構32を介して分岐した動力を施肥作業用として伝達してある。施肥装置6は、動力分岐機構32からの施肥作業用の動力により、走行車体1の後端部に搭載した4基の繰出機構33が作動して、それらの上部に連通装備したホッパ34に貯留した粒状肥料をホッパ34から所定量ずつ繰り出すように構成してある。又、走行車体1の後端部に配備した電動式のブロワ35が走行車体1からの電力で作動して搬送風を発生させることで、各繰出機構33が繰り出した粒状肥料を、送風機35からの搬送風に乗せて、各繰出機構33に連通接続した施肥ホース36を介して、各整地フロート28の左右両側部にそれぞれ備えた作溝器37のうちの対応するものに供給し、各作溝器37により圃場の泥土内に埋没させるように構成してある。
【0034】
各繰出機構33は、最大2条の粒状肥料を繰り出すことが可能な2条用に構成してある。そして、左右両端の繰出機構33が2条の粒状肥料の繰り出しを行い、左右中央側の2つの繰出機構33が1条の粒状肥料の繰り出しを行うように設定することで、4基の繰出機構33で6条の粒状肥料の繰り出しを行うように構成してある。
【0035】
図1〜3に示すように、走行車体1の後部には搭乗運転部38を形成してある。搭乗運転部38には、前輪操舵用のステアリングホイール39、主変速装置8の変速操作を可能にする主変速レバー(操作具の一例)40、副変速装置10の変速操作を可能にする副変速レバー41、ブレーキ25の制動操作を可能にするブレーキペダル42、苗植付装置4の昇降操作と作動状態の切り換えなどを可能にする第1作業レバー43と第2作業レバー44、及び、運転座席45などを配備してある。
【0036】
図示は省略するが、ブレーキペダル42は、踏み込み解除位置に自動復帰するように構成してある。第1作業レバー43は、植付、下降、中立、上昇、自動、の各操作位置への揺動操作が可能で、かつ、植付位置では左右方向への揺動操作が可能となるように構成してある。第2作業レバー44は、上下方向及び前後方向への揺動操作が可能な十字揺動式で中立復帰型に構成してある。
【0037】
図1及び図2に示すように、走行車体1における前部の左右両端部には予備苗載置装置46を配備してある。各予備苗載置装置46は、起立姿勢と後傾姿勢とに姿勢変更可能に構成した予備苗フレーム47に、予備苗フレーム47の起立姿勢から前傾姿勢への姿勢変更で前方に平行移動し、かつ、予備苗フレーム47の前傾姿勢から起立姿勢への姿勢変更で後方に平行移動するように補助フレーム48を吊り下げ装備し、補助フレーム48に3枚の予備苗載台49を上下方向に所定間隔をあけて配備することで、各予備苗載台49がエンジン7の横側方に位置するように予備苗フレーム47を起立させた作業状態と、各予備苗載台49が前方に変位するように予備苗フレーム47を前傾させた予備苗補給状態とに切り換え可能に構成してある。
【0038】
これにより、走行車体1の前端を畦に近づけた状態で行う畦から左右の各予備苗載置装置46への予備苗供給時には、左右の予備苗載置装置46を予備苗補給状態に切り換えることで、左右の予備苗載置装置46の全ての予備苗載台49を更に畦に近づけることができ、車体前方の畦から各予備苗載台49への予備苗供給を行い易くすることができる。
【0039】
図5〜7に示すように、主変速レバー40は、ステアリングポスト50に固定した支持ブラケット51に左右向きの支軸52を介して前後揺動可能に連結した揺動板53と前後方向に一体揺動し、かつ、左右方向への独立揺動操作が可能となるように、その支軸部40Aを揺動板53に相対回転可能に連結してある。又、その支軸部40Aに外嵌した捻りバネ54によって支軸部40Aから上方に延出する上部側が右方向に揺動変位するように揺動付勢してある。
【0040】
揺動板53は、主変速レバー40による主変速装置8の中立操作と前進変速操作と後進変速操作とが可能になるように、揺動板53の前後揺動に連動して上下方向に変位する第1連係ロッド56、第1連係ロッド56の変位に連動して左右向きの支軸57を支点にして前後揺動する揺動部材58、揺動部材58の前後揺動に連動して前後方向に変位する第2連係ロッド59、及び、第2連係ロッド59の変位に連動して主変速装置8の変速操作軸8Aを回動操作する操作アーム60、を介して主変速装置8の変速操作軸8Aに連係してある。操作アーム60は、主変速装置8の変速操作軸8Aを中立位置に復帰付勢する中立復帰機構61のカム部材としての機能を有するように形成してある。
【0041】
図5、図6及び図8に示すように、主変速レバー40の下端部には、支持ブラケット51に連結したガイド板55のガイド溝55Aに係入する係合部40Bを備えてある。ガイド溝55Aは、主変速レバー40の中立位置となる左右向きの前後進切り換え経路55aと、前後進切り換え経路55aの左端部から後方に延びる前進変速経路55bと、前後進切り換え経路55aの右端部から前方に延びる後進変速経路55cとを有する通常の操作経路としてのクランク状の主ガイド部55Aa、及び、前後進切り換え経路55aの左端に左方に延びる状態に連接した補助ガイド部55Ab、を備えるように形成してある。補助ガイド部55Abの左端部は、植え付け作業を中断して予備苗載台49から苗載台26にマット状苗を移載する苗継ぎや、施肥装置6のホッパ34に肥料を補給する肥料補給、又は、施肥装置6での肥料詰まりの解消、などの補助作業を行う際に、主変速レバー40の操作によるエンジン7の稼働状態から停止状態への切り換えを可能にする所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定してある。
【0042】
支持ブラケット51と揺動板53との間には、主変速レバー40及び主変速装置8の中立位置並びに前進5段と後進3段の各変速位置での操作保持を可能にする主変速用のデテント機構62を装備してある。又、ガイド板55には、捻りバネ54の作用による主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの移動を阻止し、かつ、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの手動操作を許容するとともにエンジン停止位置55dでの保持を可能にするエンジン停止用のデテント機構63を装備してある。
【0043】
図示は省略するが、副変速レバー41は、前後方向への揺動操作で作業走行用の低速位置と路上走行用の高速位置とに切り換え保持可能に構成してある。そして、その操作位置に応じて副変速装置10が作業走行用の低速状態と移動走行用の高速状態とに切り換わるように、連係ロッドなどからなる副変速用の機械式連係機構を介して副変速装置10に連係してある。
【0044】
図3及び図9〜11に示すように、ブレーキペダル42は、その踏み込み操作量に応じた制動力が得られるように、連係ロッドなどからなる制動用の機械式連係機構64を介してブレーキ25に連係してある。又、主変速レバー40を前進変速経路55b又は後進変速経路55cに操作している場合には、そのときの変速位置がブレーキペダル42の踏み込み操作量に対応する変速位置よりも高速側であると、ブレーキペダル42の踏み込み操作に連動して主変速レバー40が主変速用のデテント機構62の作用に抗してブレーキペダル42の踏み込み操作量に対応する変速位置に減速操作され、ブレーキペダル42の踏み込み限界位置への到達に伴って主変速レバー40が中立位置(主ガイド部55Aaの前後進切り換え経路55a)に復帰するように、主変速操作用の揺動部材58に備えた一対の連係ピン58A,58Bに中立復帰用の機械式連係機構65を介して連係してある。この連係により、主変速レバー40を前進変速経路55b又は後進変速経路55cに操作した走行状態において、ブレーキペダル42の踏み込み操作を行ってブレーキ25を作動させると、ブレーキペダル42の踏み込み操作に連動して主変速レバー40とともに主変速装置8が減速操作され、ブレーキペダル42の踏み込み限界位置への到達に伴って主変速レバー40が中立位置55aに復帰するとともに主変速装置8が伝動を遮断する中立状態に復帰するように構成してある。
【0045】
尚、図9は、主変速レバー40を前進5速位置に操作保持した状態であり、図10は、主変速レバー40を後進3速位置に操作保持した状態であり、図11は、ブレーキペダル42の踏み込み操作に連動して主変速レバー40が中立位置55aに復帰した状態である。
【0046】
図12に示すように、走行車体1には、CPUやEEPROMなどを備えるマイクロコンピュータを利用して構成した電子制御ユニット(以下、ECUと称する)66を搭載してある。ECU66には、苗植付装置4の昇降を制御する昇降制御手段66A、及び、苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態と停止状態とに切り換える作業動作制御手段66B、などを制御プログラムとして備えている。
【0047】
昇降制御手段66Aは、第1作業レバー43の前後方向での操作位置を検出する第1レバーセンサ67の出力、第2作業レバー44の上下方向及び前後方向への操作を検出する第2レバーセンサ68の出力、左右中央の整地フロート(以下、センタフロートと称する)28の上下揺動角度を苗植付装置4の対地高さとして検出するフロートセンサ69の出力、及び、リンク機構3の上下揺動角度を苗植付装置4の対車体高さとして検出するリンクセンサ70の出力、などに基づいて、昇降シリンダ2の作動状態を切り換える昇降弁71の作動を制御することで苗植付装置4の昇降を制御するように構成してある。
【0048】
具体的には、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の上昇位置への操作を検知した場合は、昇降弁71を昇降シリンダ2にオイルを供給する供給状態に切り換えることで、昇降シリンダ2を収縮作動させて苗植付装置4を上昇させる上昇制御を行う。第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の下降位置への操作を検知した場合は、昇降弁71を昇降シリンダ2からオイルを排出する排出状態に切り換えることで、昇降シリンダ2を伸長作動させて苗植付装置4を下降させる下降制御を行う。第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の中立位置への操作を検知した場合は、昇降弁71を昇降シリンダ2に対するオイルの給排を停止する給排停止状態に切り換えることで、昇降シリンダ2の作動を停止させて苗植付装置4をそのときの高さ位置にて停止させる昇降停止制御を行う。
【0049】
つまり、第1レバーセンサ67の出力に基づく昇降制御手段66Aの制御作動により、苗植付装置4を任意の高さ位置に昇降移動させることができる。
【0050】
そして、昇降制御手段66Aは、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の自動位置への操作を検知した場合は、第2レバーセンサ68の出力などに基づいて昇降弁71の作動を制御する。
【0051】
例えば、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の下方への操作を検知した場合は、昇降弁71を排出状態に切り換えることで、昇降シリンダ2を伸長作動させて苗植付装置4を下降させ、この下降でセンタフロート28が接地してフロートセンサ69の出力が予め設定したセンタフロート28の制御目標角度に一致する(フロートセンサ69の出力が制御目標角度の不感帯幅内に収まる)のに伴って、昇降弁71を給排停止状態に切り換えることで、昇降シリンダ2の伸長作動を停止させて苗植付装置4を制御目標角度に対応する所定の接地高さ位置(作業高さ位置)にて自動停止させる自動下降制御を行う。その後、フロートセンサ69の出力が制御目標角度と一致する状態が維持されるように昇降弁71の作動を制御して昇降シリンダ2の作動状態を切り換えることで、圃場耕盤の起伏などに起因した走行車体1のピッチングにかかわらず苗植付装置4が所定の接地高さ位置を維持する状態が得られるように苗植付装置4を自動昇降させる自動昇降制御を行う。そして、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の上方への操作を検知した場合は、昇降弁71を供給状態に切り換えることで、昇降シリンダ2を収縮作動させて苗植付装置4を上昇させ、この上昇でリンクセンサ70の出力が予め設定したリンク機構3の制御上限角度に一致する(リンクセンサ70の出力が制御上限角度の不感帯幅内に収まる)のに伴って、昇降弁71を給排停止状態に切り換えることで、昇降シリンダ2の収縮作動を停止させて苗植付装置4を制御上限角度に対応する所定の上限位置にて自動停止させる自動上昇制御を行う。
【0052】
つまり、第2レバーセンサ68の出力に基づく昇降制御手段66Aの制御作動により、苗植付装置4を所定の接地高さ位置又は所定の上限位置まで自動的に昇降移動させて、それらの高さ位置に維持することができる。
【0053】
尚、センタフロート28の制御目標角度は、搭乗運転部38に備えたフロート角度設定器72を操作することで任意の角度に設定変更することができる。そして、このフロート角度設定器72、並びに、前述した第1レバーセンサ67、フロートセンサ69、及び、リンクセンサ70には回転式のポテンショメータを採用してある。又、第2レバーセンサ68には多接点スイッチを採用してある。昇降弁71には電磁制御弁を採用してある。
【0054】
作業動作制御手段66Bは、第1レバーセンサ67の出力、第2レバーセンサ68の出力、及びフロートセンサ69の出力、などに基づいて、植付クラッチ23を断続操作する電動式の植付クラッチモータ73、動力分岐機構32に備えた施肥クラッチ74を断続操作する電動式の施肥クラッチモータ75、及び、走行車体1に搭載したバッテリ76からブロワ35への通電を断続するブロワリレー77の作動を制御することで、苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態と停止状態とに切り換えるように構成してある。
【0055】
具体的には、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の中立位置から下降位置への操作を検知した後に、フロートセンサ69の出力に基づいてセンタフロート28の接地を検知した場合は、ブロワリレー77に通電してブロワリレー77をバッテリ76からブロワ35への通電を許容する閉状態に切り換えることでブロワ35を始動させるブロワ始動制御を行う。その後、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置への操作を検知した場合は、植付クラッチ23及び施肥クラッチ74が切り状態から入り状態に切り換わるように植付クラッチモータ73及び施肥クラッチモータ75の作動を制御するクラッチ入り制御を行う。これにより、苗植付装置4及び施肥装置6を停止状態から作動状態に切り換える。
【0056】
又、この苗植付装置4及び施肥装置6の作動状態において、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置から下降位置への操作を検知した場合は、ブロワリレー77への通電を停止してブロワリレー77をバッテリ76からブロワ35への通電を阻止する開状態に切り換えることでブロワ35を停止させるブロワ停止制御を行う。又、植付クラッチ23及び施肥クラッチ74が入り状態から切り状態に切り換わるように植付クラッチモータ73及び施肥クラッチモータ75の作動を制御するクラッチ切り制御を行う。これにより、苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態から停止状態に切り換える。
【0057】
そして、作業動作制御手段66Bは、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の自動位置への操作を検知した場合は、第2レバーセンサ68の出力などに基づいて前述したブロワ始動制御、ブロワ停止制御、クラッチ入り制御、及びクラッチ切り制御を行う。
【0058】
例えば、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の自動位置への操作を検知した後、又は、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の上方への操作を検知した後に、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の下方への一回目の操作を検知した場合は、前述したブロワ始動制御を行う。その後、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の下方への二回目の操作を検知した場合は、フロート角度設定器72及びフロートセンサ69の出力に基づいて苗植付装置4の所定の接地高さ位置への到達を検知するのに伴って前述したクラッチ入り制御を行う。これにより、苗植付装置4及び施肥装置6を停止状態から作動状態に切り換える。
【0059】
又、この苗植付装置4及び施肥装置6の作動状態において、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の上方への操作を検知した場合は、前述したブロワ停止制御及びクラッチ切り制御を行う。これにより、苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態から停止状態に切り換える。
【0060】
図12に示すように、ECU66には、苗植付装置4の左右両側部に備えた左右一対の線引きマーカ78の姿勢を制御するマーカ姿勢制御手段66Cを制御プログラムとして備えている。
【0061】
図示は省略するが、左右の線引きマーカ78は、左右方向の起伏揺動操作で格納姿勢と作用姿勢との姿勢切り換えが可能となるように構成してあり、格納姿勢では、苗植付装置4の横側部に沿って起立することで、それらの遊端部に備えた走行基準線形成用の回転体が圃場泥面から離れる状態になり、作用姿勢では、苗植付装置4の横外方に張り出すように倒伏することで、走行基準線形成用の回転体が圃場泥面に突入して現在の走行経路での走行に伴って次の走行経路で使用する走行基準線を圃場泥面に形成する状態になる。
【0062】
マーカ姿勢制御手段66Cは、第1作業レバー43の植付位置での左右方向への操作を検出する補助レバーセンサ79の出力、第1レバーセンサ67の出力、第2レバーセンサ68の出力、及び、対応する線引きマーカ78の格納姿勢及び作用姿勢への到達を検出する左右のマーカセンサ80の出力に基づいて、対応する線引きマーカ78を揺動操作する電動式の左右のマーカモータ81の作動を制御することで、左右の線引きマーカ78を格納姿勢と作用姿勢とに切り換えるように構成してある。
【0063】
具体的には、補助レバーセンサ79の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置から左方への操作を検知した場合は、左側のマーカセンサ80の出力に基づいて左側の線引きマーカ78の作用姿勢への到達を検知するまで左側のマーカモータ81を正転作動させて左側の線引きマーカ78を左外側に張り出させる左マーカ張り出し制御を行う。逆に、補助レバーセンサ79の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置から右方への操作を検知した場合は、右側のマーカセンサ80の出力に基づいて右側の線引きマーカ78の作用姿勢への到達を検出するまで右側のマーカモータ81を正転作動させて右側の線引きマーカ78を右外側に張り出させる右マーカ張り出し制御を行う。そして、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置から下降位置への操作を検知した場合は、作用姿勢の線引きマーカ78に対応するマーカセンサ80が線引きマーカ78の格納姿勢への到達を検出するまで作用姿勢の線引きマーカ78に対応するマーカモータ81を逆転作動させて作用姿勢の線引きマーカ78を格納するマーカ格納制御を行う。
【0064】
又、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の自動位置への操作を検知した場合は、第2レバーセンサ68の出力に基づいて前述した左マーカ張り出し制御、右マーカ張り出し制御、及びマーカ格納制御を行うように構成してある。
【0065】
具体的には、第2レバーセンサ68の出力に基づいて、第2作業レバー44の前方への操作を検知した場合は前述した左マーカ張り出し制御を行い、逆に、第2作業レバー44の後方への操作を検知した場合は前述した右マーカ張り出し制御を行う。そして、第2作業レバー44の上方への操作を検知した場合は前述したマーカ格納制御を行う。
【0066】
尚、補助レバーセンサ79は、第1作業レバー43の植付位置での左方への操作を検出するように植付位置の左側に配備したリミットスイッチと、第1作業レバー43の植付位置での右方への操作を検出するように植付位置の右側に配備したリミットスイッチとから構成してある。左右の各マーカセンサ80は、対応する線引きマーカ78の格納姿勢への到達を検出するリミットスイッチと作用姿勢への到達を検出するリミットスイッチとから構成してある。
【0067】
図12に示すように、ECU66には、前後向きの支軸5を支点にした苗植付装置4のローリング角度を制御するローリング制御手段66Dを制御プログラムとして備えている。
【0068】
ローリング制御手段66Dは、前後向きの支軸5を支点にした苗植付装置4のローリング角度を検出するように苗植付装置4に搭載したローリングセンサ82の出力に基づいて、ローリングセンサ82の出力が予め設定した苗植付装置4の制御目標角度に一致する(ローリングセンサ82の出力が制御目標角度の不感帯幅内に収まる)状態が維持されるように、前後向きの支軸5を支点にした走行車体1に対する苗植付装置4のローリング角度を変更するローリング機構(図示せず)に備えた電動式のローリングモータ83の作動を制御する。
【0069】
苗植付装置4の制御目標角度は、搭乗運転部38に備えたローリング角度設定器84を操作することで任意の角度に設定変更することができる。
【0070】
そして、ローリング制御手段66Dは、ローリング角度設定器84の操作位置が基準位置である場合は、ローリングセンサ82の出力がローリング角度設定器84の基準位置での出力に一致するようにローリングモータ83の作動を制御することで、耕盤の起伏などに起因した走行車体1のローリングにかかわらず苗植付装置4を水平姿勢に維持する水平制御を行う。
【0071】
又、ローリング角度設定器84の操作位置が基準位置から畦際などでの耕盤の傾斜などを考慮した任意の操作位置に設定変更されている場合は、ローリングセンサ82の出力が設定変更後のローリング角度設定器84の出力に一致するようにローリングモータ83の作動を制御することで、耕盤の起伏などに起因した走行車体1のローリングにかかわらず苗植付装置4を水平姿勢以外の任意に設定したローリング姿勢に維持する傾斜制御を行う。
【0072】
尚、ローリングセンサ82には、苗植付装置4のローリング角度を高い精度で応答性良く検出するために、傾斜角センサ及び角速度センサを備えて構成したものを採用してある。ローリング角度設定器84には回転式のポテンショメータを採用してある。
【0073】
図12に示すように、ECU65には、ピットマンアーム85の直進位置からの操作角を前輪13の操舵角として検出する舵角センサ86の出力などに基づいて、昇降弁71、植付クラッチモータ73、施肥クラッチモータ75、ブロワリレー77、及び、対応するサイドクラッチ19に対するオイルの流れを制御する一対の旋回弁87の作動を制御する旋回制御手段66Eを制御プログラムとして備えている。
【0074】
旋回制御手段66Eは、搭乗運転部38に備えた旋回制御用の第1選択スイッチ88の操作に基づいて、クラッチ旋回制御の実行が可能なクラッチ旋回制御選択状態と実行を禁止したクラッチ旋回制御選択解除状態とに切り換わる。又、搭乗運転部38に備えた旋回制御用の第2選択スイッチ89の操作に基づいて、旋回開始上昇制御の実行が可能な旋回開始上昇制御選択状態と実行を禁止した旋回開始上昇制御選択解除状態とに切り換わる。更に、搭乗運転部38に備えた旋回制御用の第3選択スイッチ90の操作に基づいて、旋回終了下降制御の実行が可能な旋回終了下降制御選択状態と実行を禁止した旋回終了下降制御選択解除状態とに切り換わる。
【0075】
そして、クラッチ旋回制御選択状態では、舵角センサ86の出力に基づいて、前輪13の操舵角が設定角度(例えば30度)を超えたことを検知すると、車体を180度旋回させる畦際旋回が開始されたと判断して、旋回内側のサイドクラッチ19に対応する旋回弁87をサイドクラッチ19からオイルを排出する排出状態に切り換えて旋回内側のサイドクラッチ19を入り状態から切り状態に切り換えることで、左右の後輪20を駆動する通常旋回状態から旋回内側の後輪20を遊転させて旋回半径を小さくするクラッチ旋回状態に移行する。その後、前輪13の操舵角が設定角度以下に低下したことを検知すると、畦際旋回が終了したと判断して、旋回内側のサイドクラッチ19に対応する旋回弁87をサイドクラッチ19にオイルを供給する供給状態に切り換えて旋回内側のサイドクラッチ19を切り状態から入り状態に切り換えることで、クラッチ旋回状態から通常旋回状態に移行する。
【0076】
つまり、クラッチ旋回制御を選択しておくことにより、現在の走行経路から隣接する次の走行経路に移行する畦際旋回時に、前輪13の操舵角に応じて通常旋回状態と旋回半径の小さいクラッチ旋回状態とに円滑に移行することができ、畦際旋回時での隣接条合わせを簡単に行うことができる。
【0077】
旋回開始上昇制御選択状態では、舵角センサ86の出力に基づいて、前輪13の操舵角が設定角度(例えば30度)を超えたことを検知すると、畦際旋回が開始されたと判断して、前述したブロワ停止制御及びクラッチ切り制御を行うことで苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態から停止状態に切り換え、かつ、前述した上限自動上昇制御を行うことで苗植付装置4を所定の接地高さ位置から所定の上限位置まで自動上昇させる。
【0078】
つまり、旋回開始上昇制御を選択しておくことにより、畦際旋回の開始時に行う設定角度を超える前輪操舵に連動して、苗植付装置4及び施肥装置6の作動状態から停止状態への切り換えと、苗植付装置4の所定の接地高さ位置から所定の上限位置への上昇移動とを適切に行うことができる。
【0079】
旋回終了下降制御選択状態では、舵角センサ86の出力に基づいて、前輪13の操舵角が設定角度(例えば30度)以下に低下したことを検知すると、畦際旋回が終了したと判断して、前述したブロワ始動制御を行うことでブロワ35を作動させるとともに、前述した自動下降制御を行うことで苗植付装置4を所定の上限位置から所定の接地高さ位置まで自動下降させ、その後、フロート角度設定器72及びフロートセンサ69の出力に基づいて苗植付装置4の所定の接地高さ位置への到達を検知するのに伴って前述したクラッチ入り制御を行うことで、苗植付装置4及び施肥装置6を停止状態から作動状態に切り換える。
【0080】
つまり、旋回終了下降制御を選択しておくことにより、畦際旋回の終了時に行う設定角度以下への前輪操舵に連動して、苗植付装置4の所定の上限位置から所定の接地高さ位置への下降移動と、苗植付装置4及び施肥装置6の停止状態から作動状態への切り換えとを適切に行うことができる。
【0081】
尚、各旋回弁87には電磁制御弁を採用してある。各選択スイッチ88〜90にはモーメンタリスイッチを採用してある。
【0082】
図示は省略するが、苗植付装置4には、2条1組で植付機構27への伝動を断続する3つの植え付け用の補助クラッチ、及び、2条1組で縦送り機構29への伝動を断続する3つの縦送り用の補助クラッチを備えている。施肥装置6には、2条1組で繰出機構33への伝動を断続する3つの施肥用の補助クラッチを備えている。
【0083】
ECU66には、各補助クラッチに補助クラッチ用の機械式連係機構を介して連係した電動式の補助クラッチモータの作動を制御する補助クラッチ制御手段を制御プログラムとして備えてある。補助クラッチ制御手段は、搭乗運転部38に備えたオルタネイトスイッチからなる3つの条数選択スイッチの操作に基づいて、各条数選択スイッチに対応する補助クラッチの2条を1組みとした入り切り操作を行うように構成してある。
【0084】
具体的には、補助クラッチ制御手段は、3つ全ての条数選択スイッチからオン信号が出力されていない場合は、植え付け用と縦送り用と施肥用の全ての補助クラッチが入り状態になる全条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。左2条用の条数選択スイッチからオン信号が出力されている場合は、左側2条分の植え付け用と縦送り用と施肥用の各補助クラッチが切り状態になり、残りの各補助クラッチが入り状態になる右4条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。左2条用と中2条用の条数選択スイッチからオン信号が出力されている場合は、左側4条分の植え付け用と縦送り用と施肥用の各補助クラッチが切り状態になり、残りの各補助クラッチが入り状態になる右2条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。右2条用の条数選択スイッチからオン信号が出力されている場合は、右側2条分の植え付け用と縦送り用と施肥用の各補助クラッチが切り状態になり、残りの各補助クラッチが入り状態になる左4条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。右2条用と中2条用の条数選択スイッチからオン信号が出力されている場合は、右側4条分の植え付け用と縦送り用と施肥用の各補助クラッチが切り状態になり、残りの各補助クラッチが入り状態になる左2条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。
【0085】
図12及び図13に示すように、ECU66は、搭乗運転部38に備えたキー操作式のメインスイッチ91のOFF位置からON位置への操作で得られるバッテリ76からの通電で起動する。又、メインスイッチ91のON位置からOFF位置への操作でバッテリ76からの通電が断たれると、その内部に備えた自己保持回路(図示せず)によって通電状態を維持し、バッテリ76からの通電が断たれた段階でのエンジン7の総稼働時間や各種の選択スイッチ88〜90などによる設定情報などの各種の情報をEEPROMに記憶した後、自己保持回路による通電を停止して作動を停止する。メインスイッチ91は、リミットスイッチからなるブレーキスイッチ92を介してエンジン始動用のスタータ93に接続してある。
【0086】
図示は省略するが、ブレーキスイッチ92は、ブレーキペダル42の踏み込み限界位置への到達に伴って開状態から閉状態に切り換わり、ブレーキペダル42の踏み込み限界位置からの離脱に伴って閉状態から開状態に切り換わるように構成してある。
【0087】
つまり、ブレーキペダル42を踏み込み限界位置まで踏み込み操作したブレーキ25の制動状態でメインスイッチ91のON位置からSTART位置への操作を行った場合にのみ、メインスイッチ91を経由したバッテリ76からスタータ93への通電を許容して、メインスイッチ91の操作に基づくスタータ93の作動によるエンジン7の始動が可能となるように構成してある。
【0088】
図5、図6、図8、図12及び図13に示すように、ECU66には、主変速レバー40の操作に基づいて、バッテリ76とブレーキスイッチ92との間にメインスイッチ91と並列に備えたスタータリレー94、及び、バッテリ76からエンジン7のイグナイタ95への通電を断続するイグナイタリレー96の作動を制御することで、エンジン7を稼働状態と停止状態とに切り換えるエンジン制御手段66Fを制御プログラムとして備えている。
【0089】
エンジン制御手段66Fは、搭乗運転部38に備えたエンジン制御用の選択スイッチ97の操作に基づいて、エンジン停止制御の実行に関する選択状態が、エンジン7が稼働状態であればエンジン停止制御の実行を可能にする第1選択状態と、植え付け作業状態(作業装置使用状態)である場合にエンジン停止制御の実行を可能にする第2選択状態と、畦際旋回状態である場合にエンジン停止制御の実行を禁止する第3選択状態と、エンジン停止制御の実行を禁止するエンジン停止制御選択解除状態とに切り換わる。
【0090】
具体的には、エンジン制御用の選択スイッチ97にはモーメンタリスイッチを採用してあり、選択スイッチ97の押圧操作が行われるごとに、エンジン停止制御の実行に関する選択状態が、第1選択状態、第2選択状態、第3選択状態、及び選択解除状態のいずれかに、その記載順に循環して切り換わる。尚、エンジン制御用の選択スイッチ97には、4位置切り換え式のダイヤルスイッチやスライドスイッチなどを採用してもよい。
【0091】
そして、第1選択状態では、エンジン7の出力回転数を検出するエンジンセンサ98の出力に基づいてエンジン7の稼働を検知している状態で、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作を検出するようにガイド板55に備えた停止センサ99の出力、及び、ECU66に備えたタイマ(図示せず)の出力に基づいて、主変速レバー40をエンジン停止位置55dに所定時間以上保持する保持操作(以下、主変速レバー40の所定の操作と称する)を検知した場合にエンジン停止制御を行う。
【0092】
第2選択状態では、エンジンセンサ98がエンジン7の稼働を検出している状態で、植付クラッチ23の断続を検出するクラッチセンサ100が植付クラッチ23の入り状態を検出していると、植え付け作業状態であることを検知し、この検知状態で、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて主変速レバー40の所定の操作を検知した場合にエンジン停止制御を行う。
【0093】
第3選択状態では、エンジンセンサ98がエンジン7の稼働を検出している状態で、舵角センサ86の出力に基づいて前輪13の操舵角が設定角度以下であることを検知すると、畦際旋回状態ではないと判断し、この状態で、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて主変速レバー40の所定の操作を検知した場合はエンジン停止制御を行う。一方、舵角センサ86の出力に基づいて前輪13の操舵角が設定角度を超えていることを検知すると、畦際旋回状態であると判断し、この状態では、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて主変速レバー40の所定の操作を検知した場合であってもエンジン停止制御は行わない。
【0094】
そして、各選択状態では、エンジン停止制御によるエンジン停止後に、停止センサ99の出力に基づいて主変速レバー40のエンジン停止位置55dからの離脱を検知した場合はエンジン始動制御を行う。
【0095】
選択解除状態では、エンジンセンサ98やクラッチセンサ100の出力に基づいてエンジン7の稼働や植え付け作業状態を検知している状態で主変速レバー40の所定の操作を検知してもエンジン停止制御は行わない。
【0096】
尚、エンジンセンサ98には電磁ピックアップ式の回転センサを採用してある。停止センサ99及びクラッチセンサ100にはリミットスイッチを採用してある。
【0097】
図14に示すように、エンジン制御手段66Fは、エンジン停止制御では、主変速レバー40の所定の操作を検知するのに伴って、先ず、昇降制御手段66Aが保有する苗植付装置4の昇降に関する情報、作業動作制御手段66Bが保有する作業動力の断続に関する情報、及び、各種の選択スイッチ88〜90,97などによる設定情報、などの各種の情報を読み込んでEEPROMに記憶する〔ステップ#1〕。
【0098】
次に、エンジン停止用の条件が成立しているか否かを判別する〔ステップ#2〜4〕。具体的には、エンジンセンサ98の出力に基づいてエンジン7の出力回転数が設定回転数(例えばアイドリング回転数)以下か否かを判別し〔ステップ#2〕、バッテリ76の電圧を検出する電圧検出器101(図12参照)の出力に基づいてバッテリ76の電圧が設定値以上か否かを判別し〔ステップ#3〕、水温センサ102の出力に基づいてエンジン冷却水の温度が設定値(例えば55度)以上か否かを判別する〔ステップ#4〕。そして、エンジン7の出力回転数が設定回転数以下であり、バッテリ76の電圧が設定値以上であり、エンジン冷却水の温度が設定値以上である場合にのみ、エンジン停止用の条件が成立していると判断し、それ以外の場合はエンジン停止用の条件が成立していないと判断する。
【0099】
そして、エンジン停止用の条件が成立している場合は、ステップ#1で読み込んだ各種の情報に基づいてエンジン停止制御開始直前の状態が苗植付装置4及び施肥装置6を作動させた作業状態か否かを判別する〔ステップ#5〕。
【0100】
作業状態である場合は、前述したブロワ停止制御及びクラッチ切り制御の実行を作業動作制御手段66Bに指令して、ブロワ35を停止させるとともに植付クラッチ23及び施肥クラッチ74を切り状態に切り換える〔ステップ#6,#7〕。又、エンジン停止制御開始直前に実行していた例えば自動昇降制御や水平制御などの作業用の制御作動の停止を昇降制御手段66Aやローリング制御手段66Dなどに指令して作業用の制御作動を停止させる〔ステップ#8〕。その後、イグナイタリレー96に通電してイグナイタリレー96をバッテリ76からイグナイタ95への通電を停止する開状態に切り換えることでエンジン7を停止させてエンジン停止制御を終了する〔ステップ#9〕。
【0101】
一方、作業状態でない場合は、直ちにステップ#9に移行することでエンジン7を停止させてエンジン停止制御を終了する。
【0102】
又、ステップ#2〜4においてエンジン停止用の条件が成立していない場合は、停止センサ99の出力に基づいて主変速レバー40がエンジン停止位置55dか否かを判別し〔ステップ#10〕、エンジン停止位置55dである場合は、ステップ#2に戻ってエンジン停止用の条件が成立しているか否かの判別を行う。エンジン停止位置55dでない場合は、主変速レバー40のエンジン停止位置55dからの離脱操作が行われたと判断してエンジン停止制御を終了する。
【0103】
つまり、第1選択状態を選択していると、例えば、苗載台26への苗継ぎやホッパ34への肥料補給などのために植え付け作業を中断する場合には、植え付け作業を中断するための主変速レバー40の中立位置55aへの操作やブレーキペダル42の踏み込み限界位置への踏み込み操作で中立位置55aに位置する主変速レバー40に対して前述した主変速レバー40の所定の操作を行うことで、エンジン7を自動停止させることが可能になる。
【0104】
又、例えば、植え付け作業中に畦際で行う予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行う必要が生じた場合には、植え付け作業を中断して畦際への移動走行を行った後、畦際での走行停止のために行った主変速レバー40の中立位置55aへの操作やブレーキペダル42の踏み込み限界位置への踏み込み操作で中立位置55aに位置する主変速レバー40に対して前述した主変速レバー40の所定の操作を行うことで、エンジン7を自動停止させることが可能になる。
【0105】
その結果、植え付け作業を中断してその場で行う苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う場合や、植え付け作業を中断して畦際まで移動した後に行う予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行う場合、あるいは、圃場外での移動走行で一旦停止した場合、などにおいて、それらの間もエンジン7が作動していることによる無駄な燃料消費を防止することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0106】
第2選択状態を選択していると、植え付け作業を中断してその場で行う苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う場合にのみ、前述した主変速レバー40の所定の操作によってエンジン7を停止させることができる。その結果、苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行っている間もエンジン7が作動していることによる無駄な燃料消費を防止することができ、燃費の向上を図ることができる。又、苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う必要のない他の作業状態において、前述した主変速レバー40の所定の操作でエンジン7が停止することによる作業効率の低下を未然に回避することができる。
【0107】
又、例えば、植え付けを行わない移動走行での一旦停止時に、主変速レバー40への不測の接触などに起因して主変速レバー40の所定の操作が誤って行われたとしても、このときの主変速レバー40の所定の操作に基づいてエンジン7は停止しないことから、移動走行での一旦停止時などにおいて不測にエンジン7が停止する虞を回避することができる。
【0108】
第3選択状態を選択していると、植え付け作業を中断してその場で行う苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う場合、植え付け作業を中断して畦際まで移動した後に畦際旋回による横付けを行なわずに前向き停車した状態で行う予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行う場合、あるいは、圃場外での移動走行で一旦停止した場合、などにおいて、それらの間もエンジン7が作動していることによる無駄な燃料消費を防止することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0109】
尚、この第3選択状態は、本実施形態で例示した乗用田植機のように、走行車体1の前部に左右一対の予備苗載置装置46を装備して、左右の予備苗載置装置46への予備苗供給を車体の前方から行うように構成したものにおいて特に有効であり、このような乗用田植機では左右の予備苗載置装置46に対する予備苗供給のためには通常は行うことのない畦際旋回途中の走行停止で得られる畦への横付け状態において、主変速レバー40の誤操作で不測にエンジン7が停止する虞を回避することができる。
【0110】
又、作業状態においてエンジン停止制御によるエンジン7の自動停止を行う場合には、苗植付装置4及び施肥装置6をも自動停止させることから、エンジン7の停止中にブロワ35が作動することに起因したバッテリ上がりなどの不都合の発生を防止することができる。
【0111】
しかも、主変速レバー40をエンジン停止位置55dに操作しても、前述したエンジン停止用の条件が成立していない場合にはエンジン7の自動停止を行わないことから、バッテリ76の電圧が設定値未満である場合やエンジン冷却水の温度が設定値未満である場合にエンジン7を自動停止させることに起因してエンジン7の再始動に手間取るなどの不都合が生じる虞を未然に回避することができる。
【0112】
図15に示すように、エンジン制御手段66Fは、エンジン始動制御では、主変速レバー40のエンジン停止位置55dからの離脱を検知するのに伴って、エンジン停止制御開始直前にEEPROMに記憶した各種の情報を読み出し〔ステップ#1〕、読み出した各種の情報に基づいてエンジン停止制御開始直前の状態が作業状態であったか否かを判別する〔ステップ#2〕。
【0113】
そして、作業状態であった場合は、先ず、作業動作制御手段66Bに前述したブロワ始動制御の実行を指令してブロワ35を作動させ〔ステップ#3〕、その後、作業動作制御手段66Bに前述したクラッチ入り制御の実行を指令して植付クラッチ23及び施肥クラッチ74を入り状態に切り換える〔ステップ#4〕。又、エンジン停止制御開始直前に実行していた例えば自動昇降制御や水平制御などの作業用の制御作動の再開を昇降制御手段66Aやローリング制御手段66Dなどに指令して作業用の制御作動を再開させる〔ステップ#5〕。
【0114】
次に、イグナイタリレー96への通電を停止してイグナイタリレー96をバッテリ76からイグナイタ95に通電する閉状態に切り換えることでエンジン7の始動を許容し〔ステップ#6〕、その後、エンジン始動用の設定時間の間、スタータリレー94に通電してスタータリレー94をバッテリ76からスタータ93に通電する閉状態に切り換えることで、メインスイッチ91を迂回したバッテリ76からスタータ93への通電によりスタータ93を作動させてエンジン7の始動を行う〔ステップ#7〜#9〕。そして、エンジンセンサ98の出力に基づいてエンジン7の出力回転数が設定回転数以上か否かを判別し〔ステップ#10〕、設定回転数以上である場合はエンジン7の始動が完了したと判断してエンジン始動制御を終了する。設定回転数以上でない場合はエンジン7が始動しなかったと判断してステップ#7に戻り、再びスタータ93を作動させてエンジン7の始動を行う。
【0115】
一方、ステップ#2において作業状態でなかった場合は、直ちにステップ#6に移行し、ステップ#6〜10の制御作動を行ってエンジン7を始動させた後にエンジン始動制御を終了する。
【0116】
つまり、エンジン停止制御によるエンジン停止後に、主変速レバー40をエンジン停止位置55dから中立位置55aに移動させてエンジン7を再始動させる再始動操作を行うと、エンジン停止制御によるエンジン停止前の状態が作業状態である場合には、その再始動操作に伴って、苗植付装置4及び施肥装置6などの作動状態をエンジン停止前の作動状態と同じ状態に自動的に再現することができ、これにより、エンジン7の再始動後に主変速レバー40を中立位置55aから前進変速経路55bに操作することで、植え付け作業をエンジン停止前と同じ作動状態で速やかに再開させることができる。
【0117】
そして、前述したように、スタータリレー94をバッテリ76とブレーキスイッチ92との間にメインスイッチ91に対して並列に装備していることから、ブレーキペダル42を踏み込み限界位置まで踏み込み操作したブレーキ25の制動状態で主変速レバー40のエンジン停止位置55dからの離脱操作を行った場合にのみ、スタータリレー94を経由したバッテリ76からスタータ93への通電が許容されて、主変速レバー40の操作に基づくスタータ93の作動によるエンジン7の始動操作が可能となっている。
【0118】
又、スタータリレー94の故障などで、スタータリレー94を経由したバッテリ76からスタータ93への通電によるエンジン7の始動操作が行えなくなった場合であっても、メインスイッチ91の操作に基づくバッテリ76からスタータ93への通電によるエンジン7の始動操作が可能であることから、メインスイッチ91の操作でエンジン7を始動させることができる。
【0119】
尚、エンジン制御手段66Fは、エンジン停止制御によるエンジン停止後は常に水温センサ102の出力を監視し、水温センサ102の出力に基づいてエンジン冷却水の温度が設定上限温度(例えば110度)を超えたことを検知した場合には、主変速レバー40がエンジン停止位置55dに位置する状態であっても前述したエンジン始動制御を行ってエンジン7を強制的に再稼働させることで、エンジン7からの動力で作動する冷却ファン(図示せず)を作動させてエンジン7及びエンジン冷却水の冷却を行うように構成してある。
【0120】
ちなみに、前述したエンジン停止制御の実行に関する選択状態の切り換えとしては、選択スイッチ97の操作に基づいて、少なくとも第1選択状態、第2選択状態、及び第3選択状態のうちのいずれか一つと選択解除状態とに切り換わるように構成してもよい。又、選択スイッチ97の押圧操作が行われるごとに切り換わる選択状態の順序は種々の変更が可能である。
【0121】
又、エンジン停止制御の実行を可能にする条件としては、左右の対応する予備苗載置装置46が前述した予備苗補給状態であることを検出する予備苗補給検出手段(図示せず)の出力に基づいて、少なくとも左右いずれか一方の予備苗載置装置46が予備苗補給状態であることを検知した場合、苗植付装置4に備えた苗切れ検出手段(図示せず)の出力に基づいて苗植付装置4での苗切れを検知した場合、施肥装置6に備えた肥料切れ検出手段(図示せず)の出力に基づいて施肥装置6での肥料切れを検知した場合、あるいは、施肥装置6に備えた肥料詰まり検出手段(図示せず)の出力に基づいて施肥装置6での肥料詰まりを検知した場合、などであってもよい。
【0122】
第2選択状態での植え付け作業状態の検知に関しては、副変速レバー41の作業走行用の低速位置への操作を検出する副変速用のレバーセンサ(図示せず)の出力、フロートセンサ69によるセンタフロート28の接地検出、左右のマーカセンサ80による左右いずれか一方の線引きマーカ78の作用姿勢への到達検出、あるいは、舵角センサ86による前輪13の直進検出、などのいずれか一つ又は複数に基づいて植え付け作業状態を検知するように構成してもよい。
【0123】
第3選択状態での畦際旋回状態の検知に関しては、左右の対応するサイドクラッチ19の切り状態を検出するサイドクラッチセンサ(図示せず)の出力、フロートセンサ69によるセンタフロート28の浮上検出、あるいは、旋回制御手段66Eによるクラッチ旋回制御の実行、などのいずれか一つ又は複数に基づいて植え付け作業状態を検知するように構成してもよい。又、旋回制御手段66Eが畦際旋回中に車体の旋回角を積算する旋回角積算処理を行う場合には、旋回角積算処理の実行に基づいて植え付け作業状態を検知するように構成してもよい。
【0124】
図8に示すように、主変速レバー40を案内するガイド板55のガイド溝55Aにおいては、植え付け作業時に使用する前進変速経路55bを前後進切り換え経路55aの左端部に連接し、かつ、その前後進切り換え経路55aの左端から左方に延びる補助ガイド部55Abの左端部をエンジン停止位置55dに設定することで、主変速レバー40の前進変速経路55bからエンジン停止位置55dへの操作に要する操作時間の短縮を図るようにしてある。
【0125】
その反面、主変速レバー40を前後進切り換え経路55aに沿って後進変速経路55cから前進変速経路55bに操作する際には、その操作の延長線上にエンジン停止位置55dが位置することから、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの誤操作が生じ易くなっている。そのため、車体前方の畦からの予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行うために畦に対して車体を前向き停車するときに車体を畦に近づけすぎて後進させた場合以外には殆ど行うことのない主変速レバー40の後進変速経路55cからエンジン停止位置55dへの操作によるエンジン停止制御の実行が運転者の意思とは関係なく行われることがある。その結果、変形田の変形箇所などで行うことの多い前後進を繰り返しながらの植え付け作業において、後進から前進への切り換え操作の際にエンジン7が不必要に停止することに起因した作業効率の低下を招き易くなる。
【0126】
そこで、図12及び図16に示すように、この乗用田植機では、エンジン停止制御を開始させるために行なう主変速レバー40の所定の操作での操作性を前進変速経路55bからと後進変速経路55cからとで異ならせることにより前述した不都合の発生を防止する操作性相違手段Aをエンジン制御手段66Fに備えてある。
【0127】
図16に示すフローチャートに基づいて操作性相違手段Aによる操作性相違制御について詳述すると、操作性相違手段Aは、停止センサ99の出力及び主変速レバー40の前後方向での操作位置を検出する変速レバーセンサ111の出力を常に監視し〔ステップ#1〕、停止センサ99の出力に基づいて主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作を検知した場合に、変速レバーセンサ111の出力に基づいて、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作が前進変速経路55bからの操作か後進変速経路55cからの操作かを判別する〔ステップ#2,#3〕。
【0128】
そして、前進変速経路55bからの操作であれば、主変速レバー40をエンジン停止位置55dで保持する所定時間を第1所定時間(例えば0.5秒)とし〔ステップ#4〕、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて、第1所定時間が経過するまでの間、主変速レバー40がエンジン停止位置55dに保持されたか否かを判別する〔ステップ#5,#6〕。保持された場合は、第1所定時間の経過に伴ってエンジン停止制御に移行し〔ステップ#7〕、保持されなかった場合はステップ#1に戻る。
【0129】
一方、後進変速経路55cからの操作であれば、主変速レバー40をエンジン停止位置55dで保持する所定時間を第1所定時間よりも長い第2所定時間(例えば2秒)とし〔ステップ#8〕、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて、第2所定時間が経過するまでの間、主変速レバー40がエンジン停止位置55dに保持されたか否かを判別する〔ステップ#9,#10〕。保持された場合は、第2所定時間の経過に伴ってエンジン停止制御に移行し〔ステップ#11〕、保持されなかった場合はステップ#1に戻る。
【0130】
つまり、前進状態からエンジン停止制御に移行するまでの主変速レバー40の所定の操作に要する時間よりも後進状態からエンジン停止制御に移行するまでの主変速レバー40の所定の操作に要する時間を長くしてあり、これにより、前述した不都合の発生を防止しながらも、植え付け作業を中断して苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う場合、あるいは、車体を畦に対して前向きに停車して車体前方の畦から予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行う場合などに必ず要する操作である、前進状態からの主変速レバー40の所定の操作を、補助作業を行う場合などにおいて希に行うことのある後進状態からの主変速レバー40の所定の操作よりも操作性の良いものにすることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0131】
尚、変速レバーセンサ111には回転式のポテンショメータを採用してある。
【0132】
〔別実施形態〕
【0133】
〔1〕作業車としては、播種機、トラクタ、コンバイン、あるいはバックホー、などであってもよい。又、エンジン7としてディーゼルエンジンを採用したものであってもよい。尚、ディーゼルエンジンを採用する場合には、ディーゼルエンジンに対する燃料の供給を遮断する燃料カットソレノイドなどの燃料遮断装置の操作でエンジン7を停止させるように構成することなどが考えられる。
【0134】
〔2〕前後進切り換え用の操作具40としては、主変速装置8の変速操作と前後進切り換え操作とを可能にする主変速ペダルであってもよい。又、前後進切り換え専用の前後進切換装置を備える作業車においては、前後進切換装置の前後進切り換え操作を可能にする専用の操作レバー又は操作ペダルであってもよい。
【0135】
〔3〕前後進切り換え用の操作具40の所定の操作を、操作具40の所定位置Pの一例である中立位置(前後進切り換え経路55a)での所定時間の保持操作としてもよい。この場合、操作具40の前進変速経路55bからの操作で中立位置(前後進切り換え経路55a)に保持する所定時間よりも後進変速経路55cからの操作で中立位置(前後進切り換え経路55a)に保持する所定時間を長くすることで操作性相違手段Aを構成し、これにより、操作具40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0136】
〔4〕図17に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前進変速経路55bの左側に外れた位置に前進変速経路55bに沿って形成した第1補助領域55eと、後進変速経路55cの右側に外れた位置に後進変速経路55cに沿って形成した第2補助領域55fとのそれぞれを所定位置Pとし、主変速レバー40の第1補助領域55eへの操作を検出する第1検出手段103を、主変速レバー40の前進変速経路55bから左側の第1補助領域55eへの操作に伴って一対の第1圧縮バネ104の作用に抗して左方に摺動変位する第1ガイド部材105と、この第1ガイド部材105の左方への摺動変位を検出する第1ミットスイッチ106とから構成し、かつ、主変速レバー40の第2補助領域55fへの操作を検出する第2検出手段107を、主変速レバー40の後進変速経路55cから右側の第2補助領域55fへの操作に伴って一対の第2圧縮バネ108の作用に抗して右方に摺動変位する第2ガイド部材109と、この第2ガイド部材109の右方への摺動変位を検出する第2ミットスイッチ110とから構成し、主変速レバー40の所定の操作を、主変速レバー40の第1補助領域55e又は第2補助領域55fへの操作と、その後の中立位置(前後進切り換え経路55a)への操作としてもよい。
【0137】
そして、この場合には、一対の第1圧縮バネ104を主変速レバー40の第1補助領域55e(所定位置P)への操作を機械的に阻害する阻害手段Bとし、かつ、一対の第2圧縮バネ108を主変速レバー40の第2補助領域55f(所定位置P)への操作を機械的に阻害する阻害手段Bとし、各第1圧縮バネ104のバネ力よりも各第2圧縮バネ108のバネ力を大きくすることで、第1補助領域55eでの阻害手段Bによる阻害の程度よりも第2補助領域55fでの阻害手段Bによる阻害の程度が大きくなるように設定して操作性相違手段Aを構成し、これにより、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0138】
又、図示は省略するが、第1ミットスイッチ106が主変速レバー40の第1補助領域55e(所定位置P)への操作を検出するまでに要する操作距離よりも第2ミットスイッチ110が主変速レバー40の第2補助領域55f(所定位置P)への操作を検出するまでに要する操作距離が長くなるように構成することで、第1補助領域55eでの阻害手段Bによる阻害の程度よりも第2補助領域55fでの阻害手段Bによる阻害の程度が大きくなるように設定して操作性相違手段Aを構成し、これにより、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0139】
尚、これらの構成でのエンジン7の始動操作は、オルタネイトスイッチなど採用した始動専用のスイッチ(図示せず)などの操作で行うことが考えられる。
【0140】
〔5〕図18に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前後進切り換え経路55aの左右両端に左方又は右方に延びる状態に補助ガイド部55Abを連接形成し、かつ、補助ガイド部55Abの左端部又は右端部を所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定し、更に、ガイド板55に、主変速レバー40の左右の対応するエンジン停止位置55dへの操作を機械的に阻害し、かつ、主変速レバー40の左右の対応するエンジン停止位置55dでの保持を可能にする左右一対のエンジン停止用のデテント機構63を阻害手段Bとして装備して、主変速レバー40の前進変速経路55bからの所定の操作を、前進変速経路55bに近い左側のエンジン停止位置55dへの操作とし、又、主変速レバー40の後進変速経路55cからの所定の操作を、後進変速経路55cに近い右側のエンジン停止位置55dへの操作としてもよい。
【0141】
そして、この場合には、左側のエンジン停止位置55dに対応する左側の阻害手段Bによる阻害の程度よりも右側のエンジン停止位置55dに対応する右側の阻害手段Bによる阻害の程度が大きくなるように設定して操作性相違手段Aを構成し、これにより、前後進の切り換え操作時に主変速レバー40が左右の各エンジン停止位置55dに入り込むことを抑制しながら、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0142】
〔6〕図19に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前後進切り換え経路55aの左右両端に左方又は右方に延びる状態に補助ガイド部55Abを連接形成し、かつ、これらの補助ガイド部55Abを所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定して、主変速レバー40の前進変速経路55bからの所定の操作を、前進変速経路55bに近い左側のエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作とし、又、主変速レバー40の後進変速経路55cからの所定の操作を、後進変速経路55cに近い右側のエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作としてもよい。
【0143】
そして、この場合には、主変速レバー40を左側のエンジン停止位置55dで保持する所定時間よりも主変速レバー40を右側のエンジン停止位置55dで保持する所定時間が長くなるように設定することで操作性相違手段Aを構成し、これにより、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0144】
尚、この構成でのエンジン7の始動操作は、オルタネイトスイッチなど採用した始動専用のスイッチ(図示せず)などの操作で行うことが考えられる。
【0145】
〔7〕図20に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前後進切り換え経路55aの左右両端部に前方又は後方に延びる状態に補助ガイド部55Abを連接形成し、かつ、これらの補助ガイド部55Abを所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定して、主変速レバー40の前進変速経路55bからの所定の操作を、前進変速経路55bの延長線上に位置する左側のエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作とし、又、主変速レバー40の後進変速経路55cからの所定の操作を、後進変速経路55cの延長線上に位置する右側のエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作としてもよい。
【0146】
そして、この場合には、主変速レバー40を左側のエンジン停止位置55dで保持する所定時間よりも主変速レバー40を右側のエンジン停止位置55dで保持する所定時間が長くなるように設定することで操作性相違手段Aを構成し、これにより、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0147】
尚、この構成でのエンジン7の始動操作は、オルタネイトスイッチなど採用した始動専用のスイッチ(図示せず)などの操作で行うことが考えられる。
【0148】
〔8〕図21に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前後進切り換え経路55aの右端から右方に延びる状態に補助ガイド部55Abを連接形成し、かつ、この補助ガイド部55Abを所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定して、主変速レバー40の所定の操作をエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作としてもよい。
【0149】
そして、この場合には、前述した実施形態とは逆に、主変速レバー40を前進変速経路55bからエンジン停止位置55dに操作した場合にエンジン停止位置55dでの保持に要する所定時間が、主変速レバー40を後進変速経路55cからエンジン停止位置55dに操作した場合にエンジン停止位置55dでの保持に要する所定時間よりも長くなるように設定することで操作性相違手段Aを構成して、前後進の切り換え操作時に主変速レバー40がエンジン停止位置55dに入り込んでエンジン7が停止する虞を抑制するようにしてもよい。
【0150】
尚、この構成でのエンジン7の始動操作は、オルタネイトスイッチなど採用した始動専用のスイッチ(図示せず)などの操作で行うことが考えられる。
【0151】
又、図示は省略するが、この構成では、ガイド板55に、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作を機械的に阻害し、かつ、主変速レバー40のエンジン停止位置55dでの保持を可能にするエンジン停止用のデテント機構63を備えるようにしてもよい。
【0152】
〔9〕図示は省略するが、エンジン制御手段66Fにエンジン停止制御の実行を選択する選択手段を備えて、選択手段が以下に示すエンジン停止選択制御を行うように構成してもよい。
【0153】
エンジン停止選択制御では、選択手段は、停止センサ99の出力及び主変速レバー40の前後方向での操作位置を検出する変速レバーセンサ111の出力を常に監視し、停止センサ99の出力に基づいて主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作を検知した場合に、変速レバーセンサ111の出力に基づいて、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作が前進変速経路55bからの操作か後進変速経路55cからの操作かを判別する。
【0154】
そして、前進変速経路55bからの操作であればエンジン停止制御に移行し、後進変速経路55cからの操作であればエンジン停止制御に移行せずに、停止センサ99の出力及び変速レバーセンサ111の出力を監視する状態に戻る。
【0155】
つまり、主変速レバー40が前進変速経路55bからの操作でエンジン停止位置55dに位置した場合にエンジン停止制御を行い、主変速レバー40が後進変速経路55cからの操作でエンジン停止位置55dに位置した場合はエンジン停止制御を行わないように構成してある。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明に係る作業車の報知制御構造は、エンジンを搭載し、前後進切り換え用の操作具を備えた播種機、トラクタ、コンバイン、あるいはバックホー、などに適用することができる。
【符号の説明】
【0157】
7 エンジン
40 前後進切り換え用の操作具(変速操作具)
55Aa 操作経路
55a 中立位置(前後進切り換え経路)
55b 前進変速経路
55c 後進変速経路
A 操作性相違手段
B 阻害手段
P 所定位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後進切り換え用の操作具の所定の操作に基づいてエンジンが停止するように構成した作業車のエンジン停止操作構造に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例である乗用田植機においては、前後進切り換え用の操作具として主変速装置の変速操作と前後進切り換え操作とを可能にする主変速レバーを備え、この主変速レバーを操作案内するガイド溝に備えた左右向きの前後進切り換え経路における前進変速経路側の横外側をエンジン停止用の所定位置に設定し、かつ、主変速レバーの所定位置への操作を検出するスイッチをガイド板に装備し、スイッチの出力に基づいて主変速レバーの所定位置での所定時間の保持操作を検知した場合にエンジンを停止させるように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−94753号公報(段落番号0039、0040、図5、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、ガイド溝の前後進切り換え経路における前進変速経路側の横外側をエンジン停止用の所定位置に設定したことで、主変速レバーの前進変速経路から所定位置への操作に要する操作時間の短縮を図ることができる。
【0005】
その反面、主変速レバーを前後進切り換え経路に沿って後進変速経路から前進変速経路に操作する際には、その操作の延長線上にエンジン停止用の所定位置が位置することから、主変速レバーの所定位置への誤操作が生じ易くなっている。そのため、主変速レバーを後進変速経路から前進変速経路に操作する際に、主変速レバーがエンジン停止用の所定位置に入り込んでエンジンが不必要に停止する不都合を招くことがある。
【0006】
このような不必要なエンジン停止を防止するために、主変速レバーをエンジン停止用の所定位置に保持する所定時間を長くすることが考えられるが、この場合には、主変速レバーを所定位置に操作してからエンジンが停止するまでに要する時間も長くなることから、無駄な燃料消費を防止する上において改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具をエンジン停止用の所定位置に誤操作することに起因した不必要なエンジン停止を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、前後進切り換え用の操作具の所定の操作に基づいてエンジンが停止するように構成した作業車のエンジン停止操作構造において、
前記操作具の所定の操作で前記エンジンを停止させる際の操作性を前進状態からと後進状態からとで異ならせる操作性相違手段を備えてある。
【0009】
第1の発明によると、例えば、作業車が前進後に走行停止して補助作業を行うことが多く、後進後に走行停止して補助作業を行うことが稀なものである場合には、操作性相違手段により、操作具の所定の操作でエンジンを停止させる際の操作性が前進状態からよりも後進状態からの方が悪くなるようにすることで、頻繁に行う操作具の前進状態からの所定の操作が行い易くなってエンジン停止に至るまでに要する時間を短くすることができ、又、稀に行う操作具の後進状態からの所定の操作が行い難くなって後進状態からの操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を招き難くすることができる。
【0010】
逆に、作業車が後進後に走行停止して補助作業を行うことが多く、前進後に走行停止して補助作業を行うことが稀なものである場合には、操作性相違手段により、操作具の所定の操作でエンジンを停止させる際の操作性が後進状態からよりも前進状態からの方が悪くなるようにすることで、頻繁に行う操作具の後進状態からの所定の操作が行い易くなってエンジン停止に至るまでに要する時間を短くすることができ、又、稀に行う操作具の前進状態からの所定の操作が行い難くなって前進状態からの操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を招き難くすることができる。
【0011】
つまり、作業車に応じて操作具の所定の操作でエンジンを停止させる際の操作性を前進状態からと後進状態からとで異ならせることで、補助作業の最中もエンジンが稼働することによる無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を防止することができ、運転者の意思とは関係なくエンジンが停止することに起因した作業効率の低下を防止することができる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記操作性相違手段により、前進状態からの前記操作具の所定の操作に要する時間よりも後進状態からの前記操作具の所定の操作に要する時間が長くなるように構成してある。
【0013】
第2の発明によると、操作具の前進状態からの所定の操作でエンジンが停止するまでに要する時間を短くすることができる。又、操作具の後進状態からの所定の操作に要する時間が長くなることで、操作具の後進状態からの誤操作で所定の操作が完了するまでの間において誤操作を取り消すことが行い易くなる。
【0014】
従って、補助作業の最中もエンジンが稼働することによる無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具の後進状態からの誤操作に起因した不必要なエンジン停止を防止することができる。
【0015】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、
前記操作具の所定の操作を、前記操作具の所定位置での所定時間の保持操作とし、
前記所定時間を異ならせることで前記操作性相違手段を構成してある。
【0016】
第3の発明によると、操作具を所定位置に保持する所定時間を異ならせるだけの簡単な構成で、補助作業の最中もエンジンが稼働することによる無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を防止することができる。
【0017】
第4の発明は、上記第1又は2の発明において、
前記操作具の所定の操作を、前記操作具の通常の操作経路から外れた所定位置への操作とし、
前記操作具の所定位置への操作を機械的に阻害する阻害手段を設け、
前記阻害手段による阻害の程度を異ならせることで前記操作性相違手段を構成してある。
【0018】
第4の発明によると、操作具の所定位置への操作に対する阻害手段の機械的な阻害の程度を異ならせるだけの簡単な構成で、補助作業の最中もエンジンが稼働することによる無駄な燃料消費を効果的に防止しながら、前後進切り換え用の操作具の誤操作に起因した不必要なエンジン停止を防止することができる。
【0019】
又、操作具の所定位置への操作に対する阻害を機械的に行うことから、阻害手段に故障が生じた場合の対処が行い易くなり、メンテナンス性の面で有利にすることができる。
【0020】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
前記操作具を前後進切り換え用と変速用とを兼ねる変速操作具とし、
前記操作具の所定の操作を、少なくとも前記変速操作具の中立位置に連接した所定位置への操作を行う操作としてある。
【0021】
第5の発明によると、変速操作具の所定の操作を行う場合には変速操作具を中立位置に操作する必要があることから、変速操作具の所定の操作でエンジンを停止させる際には、その操作で走行速度を零速又はそれに近い微低速にすることができ、エンジンの停止に伴う急減速を回避することができる。
【0022】
第6の発明は、上記第1の発明において、
前記操作具を前後進切り換え用と変速用とを兼ねる変速操作具とし、
前記変速操作具の操作経路を、左右向きの前後進切り換え経路と前記前後進切り換え経路の一端部から前後向きに延出する前進変速経路と前記前後進切り換え経路の他端部から前後向きに延出する後進変速経路とを有するように形成し、
前記変速操作具の所定の操作を、前記変速操作具の前記前後進切り換え経路の左右一側端に連接した所定位置での所定時間の保持操作とし、
前記変速操作具を前記前進変速経路と前記後進変速経路のうちの前記所定位置に近い側の変速経路から前記所定位置に操作した場合の前記所定時間よりも前記所定位置から遠い側の変速経路から前記所定位置に操作した場合の前記所定時間を長くすることで前記操作性相違手段を構成してある。
【0023】
第6の発明によると、変速操作具を前後進切り換え経路に沿って所定位置から遠い側の変速経路から所定位置に近い側の変速経路に操作する際には、その操作の延長線上に所定位置が位置することで、変速操作具の所定位置への誤操作が生じ易くなる。そのため、変速操作具を所定位置に近い側の変速経路と所定位置から遠い側の変速経路とにわたって操作する前後進切り換え操作において、変速操作具を所定位置から遠い側の変速経路から所定位置に近い側の変速経路に操作する際に、変速操作具が誤って所定位置に入り込んでしまい、その操作によるエンジンの停止が運転者の意思とは関係なく行われることがある。
【0024】
そこで、変速操作具の所定の操作を所定位置での所定時間の保持操作とし、かつ、変速操作具を所定位置に近い側の変速経路から所定位置に操作した場合の所定時間よりも所定位置から遠い側の変速経路から所定位置に操作した場合の所定時間を長くすることで、変速操作具を所定位置から遠い側の変速経路から所定位置に近い側の変速経路に操作する際に変速操作具が誤って所定位置に入り込んだとしても、変速操作具が所定位置に入り込んでから所定の操作が完了するまでの時間的な余裕を確保することができ、所定時間が経過するまでにおける変速操作具の所定位置からの離脱操作が行い易くなる。
【0025】
従って、前後進切り換え操作の際に変速操作具が誤って所定位置に入り込むことでエンジンの停止が運転者の意思とは関係なく行われることに起因した作業効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】乗用田植機の全体左側面図である。
【図2】乗用田植機の全体平面図である。
【図3】走行用の伝動構成を示す概略平面図である。
【図4】作業用の伝動構成を示す概略平面図である。
【図5】変速操作構造を示す要部の側面図である。
【図6】変速操作構造を示す要部の正面図である。
【図7】変速操作構造を示す要部の平面図である。
【図8】主変速レバーの操作経路を示す要部の横断平面図である。
【図9】主変速レバーの前進5速位置への操作状態を示す図である。
【図10】主変速レバーの後進3速位置への操作状態を示す図である。
【図11】主変速レバーの中立位置への操作状態を示す図である。
【図12】制御構成を示すブロック図である。
【図13】エンジンの始動及び停止用の回路図である。
【図14】エンジン停止制御のフローチャートである。
【図15】エンジン始動制御のフローチャートである。
【図16】操作性相違制御のフローチャートである。
【図17】別実施形態〔4〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【図18】別実施形態〔5〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【図19】別実施形態〔6〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【図20】別実施形態〔7〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【図21】別実施形態〔8〕での構成を示す要部の横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車のエンジン停止操作構造を、作業車の一例である乗用田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態で例示する乗用田植機は、4輪駆動型に構成した走行車体1の後部に、単動型の油圧シリンダを採用した昇降シリンダ2の作動で上下揺動する平行四連リンク式のリンク機構3を装備し、このリンク機構3の後端部に、6条用の苗植付装置4を前後向きの支軸5などを介してローリング可能に連結してある。つまり、走行車体1の後部に苗植付装置4を昇降シリンダ2の作動による昇降移動が可能な状態で、かつ、支軸5を支点にしたローリングが可能な状態に連結してある。そして、走行車体1の後端部と苗植付装置4とにわたって6条用の施肥装置6を装備してある。これにより、最大6条の植え付け及び施肥が可能な6条植え用のミッドマウント施肥仕様に構成してある。
【0029】
図1〜4に示すように、走行車体1は、その前部に防振搭載した水冷式のエンジン7からの動力を主変速装置8にベルト伝動し、主変速装置8による変速後の動力を、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)9の内部において走行用と作業用とに分岐するように構成してある。そして、走行用の動力を、T/Mケース9に内蔵した副変速装置10及び前輪用の差動装置11に伝達した後、差動装置11から左右の差動軸12などを介して取り出した動力を前輪駆動用として左右の前輪13に伝達し、かつ、差動ケース14と一体回転する伝動ギア15から取り出した動力を、T/Mケース9から後車軸ケース16にわたる中継伝動軸17、並びに、後車軸ケース16に内蔵した後輪用伝動軸18及び左右のサイドクラッチ19、などを介して後輪駆動用として左右の後輪20に伝達するように構成してある。又、作業用の動力を、T/Mケース9に内蔵したワンウェイクラッチ21、株間変速装置22、及び植付クラッチ23、並びに、T/Mケース9から苗植付装置4にわたる作業用伝動軸24、などを介して苗植付装置4に伝達してあり、苗植付装置4の逆転作動を阻止するように構成してある。後車軸ケース16には、後輪用伝動軸18に制動作用する多板式のブレーキ25を装備してある。ブレーキ25は制動解除状態に自己復帰するように構成してある。
【0030】
尚、エンジン7にはガソリンエンジンを採用してある。主変速装置8には静油圧式の無段変速装置を採用してある。副変速装置10には、作業走行用の低速状態と路上走行用の高速状態との高低2段に変速可能に構成したギア式の変速装置を採用してある。左右の各サイドクラッチ19には多板式の油圧クラッチを採用してある。株間変速装置22には、6段の変速が可能となるように構成したギア式の変速装置を採用してある。
【0031】
図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、走行車体1からの作業用の動力により、最大6条のマット状苗を載置する苗載台26が横送り機構(図示せず)の作動で左右方向に一定ストロークで往復移動するように構成してある。又、苗載台26の各マット状苗に対応して左右方向に一定間隔をあけて並ぶように配備したロータリ式の6つの植付機構27が、苗載台26の下端から植付苗を所定量ずつ取り出して、左右方向に並ぶ3つの整地フロート28で整地した圃場の泥土部に植え付け供給するように構成してある。そして、苗載台26が左右のストローク端に到達するごとにベルト式の縦送り機構29が作動して、苗載台26に載置した各マット状苗を苗載台26の下端に向けて所定ピッチで縦送りするように構成してある。
【0032】
各整地フロート28は、それらの後部側を、左右向きのフロート支点軸30から後下向きに延設した3組の支持アーム31のうちの対応する支持アーム31の遊端部(後端部)に上下揺動可能に連結してある。
【0033】
施肥装置6には、中継伝動軸17から動力分岐機構32を介して分岐した動力を施肥作業用として伝達してある。施肥装置6は、動力分岐機構32からの施肥作業用の動力により、走行車体1の後端部に搭載した4基の繰出機構33が作動して、それらの上部に連通装備したホッパ34に貯留した粒状肥料をホッパ34から所定量ずつ繰り出すように構成してある。又、走行車体1の後端部に配備した電動式のブロワ35が走行車体1からの電力で作動して搬送風を発生させることで、各繰出機構33が繰り出した粒状肥料を、送風機35からの搬送風に乗せて、各繰出機構33に連通接続した施肥ホース36を介して、各整地フロート28の左右両側部にそれぞれ備えた作溝器37のうちの対応するものに供給し、各作溝器37により圃場の泥土内に埋没させるように構成してある。
【0034】
各繰出機構33は、最大2条の粒状肥料を繰り出すことが可能な2条用に構成してある。そして、左右両端の繰出機構33が2条の粒状肥料の繰り出しを行い、左右中央側の2つの繰出機構33が1条の粒状肥料の繰り出しを行うように設定することで、4基の繰出機構33で6条の粒状肥料の繰り出しを行うように構成してある。
【0035】
図1〜3に示すように、走行車体1の後部には搭乗運転部38を形成してある。搭乗運転部38には、前輪操舵用のステアリングホイール39、主変速装置8の変速操作を可能にする主変速レバー(操作具の一例)40、副変速装置10の変速操作を可能にする副変速レバー41、ブレーキ25の制動操作を可能にするブレーキペダル42、苗植付装置4の昇降操作と作動状態の切り換えなどを可能にする第1作業レバー43と第2作業レバー44、及び、運転座席45などを配備してある。
【0036】
図示は省略するが、ブレーキペダル42は、踏み込み解除位置に自動復帰するように構成してある。第1作業レバー43は、植付、下降、中立、上昇、自動、の各操作位置への揺動操作が可能で、かつ、植付位置では左右方向への揺動操作が可能となるように構成してある。第2作業レバー44は、上下方向及び前後方向への揺動操作が可能な十字揺動式で中立復帰型に構成してある。
【0037】
図1及び図2に示すように、走行車体1における前部の左右両端部には予備苗載置装置46を配備してある。各予備苗載置装置46は、起立姿勢と後傾姿勢とに姿勢変更可能に構成した予備苗フレーム47に、予備苗フレーム47の起立姿勢から前傾姿勢への姿勢変更で前方に平行移動し、かつ、予備苗フレーム47の前傾姿勢から起立姿勢への姿勢変更で後方に平行移動するように補助フレーム48を吊り下げ装備し、補助フレーム48に3枚の予備苗載台49を上下方向に所定間隔をあけて配備することで、各予備苗載台49がエンジン7の横側方に位置するように予備苗フレーム47を起立させた作業状態と、各予備苗載台49が前方に変位するように予備苗フレーム47を前傾させた予備苗補給状態とに切り換え可能に構成してある。
【0038】
これにより、走行車体1の前端を畦に近づけた状態で行う畦から左右の各予備苗載置装置46への予備苗供給時には、左右の予備苗載置装置46を予備苗補給状態に切り換えることで、左右の予備苗載置装置46の全ての予備苗載台49を更に畦に近づけることができ、車体前方の畦から各予備苗載台49への予備苗供給を行い易くすることができる。
【0039】
図5〜7に示すように、主変速レバー40は、ステアリングポスト50に固定した支持ブラケット51に左右向きの支軸52を介して前後揺動可能に連結した揺動板53と前後方向に一体揺動し、かつ、左右方向への独立揺動操作が可能となるように、その支軸部40Aを揺動板53に相対回転可能に連結してある。又、その支軸部40Aに外嵌した捻りバネ54によって支軸部40Aから上方に延出する上部側が右方向に揺動変位するように揺動付勢してある。
【0040】
揺動板53は、主変速レバー40による主変速装置8の中立操作と前進変速操作と後進変速操作とが可能になるように、揺動板53の前後揺動に連動して上下方向に変位する第1連係ロッド56、第1連係ロッド56の変位に連動して左右向きの支軸57を支点にして前後揺動する揺動部材58、揺動部材58の前後揺動に連動して前後方向に変位する第2連係ロッド59、及び、第2連係ロッド59の変位に連動して主変速装置8の変速操作軸8Aを回動操作する操作アーム60、を介して主変速装置8の変速操作軸8Aに連係してある。操作アーム60は、主変速装置8の変速操作軸8Aを中立位置に復帰付勢する中立復帰機構61のカム部材としての機能を有するように形成してある。
【0041】
図5、図6及び図8に示すように、主変速レバー40の下端部には、支持ブラケット51に連結したガイド板55のガイド溝55Aに係入する係合部40Bを備えてある。ガイド溝55Aは、主変速レバー40の中立位置となる左右向きの前後進切り換え経路55aと、前後進切り換え経路55aの左端部から後方に延びる前進変速経路55bと、前後進切り換え経路55aの右端部から前方に延びる後進変速経路55cとを有する通常の操作経路としてのクランク状の主ガイド部55Aa、及び、前後進切り換え経路55aの左端に左方に延びる状態に連接した補助ガイド部55Ab、を備えるように形成してある。補助ガイド部55Abの左端部は、植え付け作業を中断して予備苗載台49から苗載台26にマット状苗を移載する苗継ぎや、施肥装置6のホッパ34に肥料を補給する肥料補給、又は、施肥装置6での肥料詰まりの解消、などの補助作業を行う際に、主変速レバー40の操作によるエンジン7の稼働状態から停止状態への切り換えを可能にする所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定してある。
【0042】
支持ブラケット51と揺動板53との間には、主変速レバー40及び主変速装置8の中立位置並びに前進5段と後進3段の各変速位置での操作保持を可能にする主変速用のデテント機構62を装備してある。又、ガイド板55には、捻りバネ54の作用による主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの移動を阻止し、かつ、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの手動操作を許容するとともにエンジン停止位置55dでの保持を可能にするエンジン停止用のデテント機構63を装備してある。
【0043】
図示は省略するが、副変速レバー41は、前後方向への揺動操作で作業走行用の低速位置と路上走行用の高速位置とに切り換え保持可能に構成してある。そして、その操作位置に応じて副変速装置10が作業走行用の低速状態と移動走行用の高速状態とに切り換わるように、連係ロッドなどからなる副変速用の機械式連係機構を介して副変速装置10に連係してある。
【0044】
図3及び図9〜11に示すように、ブレーキペダル42は、その踏み込み操作量に応じた制動力が得られるように、連係ロッドなどからなる制動用の機械式連係機構64を介してブレーキ25に連係してある。又、主変速レバー40を前進変速経路55b又は後進変速経路55cに操作している場合には、そのときの変速位置がブレーキペダル42の踏み込み操作量に対応する変速位置よりも高速側であると、ブレーキペダル42の踏み込み操作に連動して主変速レバー40が主変速用のデテント機構62の作用に抗してブレーキペダル42の踏み込み操作量に対応する変速位置に減速操作され、ブレーキペダル42の踏み込み限界位置への到達に伴って主変速レバー40が中立位置(主ガイド部55Aaの前後進切り換え経路55a)に復帰するように、主変速操作用の揺動部材58に備えた一対の連係ピン58A,58Bに中立復帰用の機械式連係機構65を介して連係してある。この連係により、主変速レバー40を前進変速経路55b又は後進変速経路55cに操作した走行状態において、ブレーキペダル42の踏み込み操作を行ってブレーキ25を作動させると、ブレーキペダル42の踏み込み操作に連動して主変速レバー40とともに主変速装置8が減速操作され、ブレーキペダル42の踏み込み限界位置への到達に伴って主変速レバー40が中立位置55aに復帰するとともに主変速装置8が伝動を遮断する中立状態に復帰するように構成してある。
【0045】
尚、図9は、主変速レバー40を前進5速位置に操作保持した状態であり、図10は、主変速レバー40を後進3速位置に操作保持した状態であり、図11は、ブレーキペダル42の踏み込み操作に連動して主変速レバー40が中立位置55aに復帰した状態である。
【0046】
図12に示すように、走行車体1には、CPUやEEPROMなどを備えるマイクロコンピュータを利用して構成した電子制御ユニット(以下、ECUと称する)66を搭載してある。ECU66には、苗植付装置4の昇降を制御する昇降制御手段66A、及び、苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態と停止状態とに切り換える作業動作制御手段66B、などを制御プログラムとして備えている。
【0047】
昇降制御手段66Aは、第1作業レバー43の前後方向での操作位置を検出する第1レバーセンサ67の出力、第2作業レバー44の上下方向及び前後方向への操作を検出する第2レバーセンサ68の出力、左右中央の整地フロート(以下、センタフロートと称する)28の上下揺動角度を苗植付装置4の対地高さとして検出するフロートセンサ69の出力、及び、リンク機構3の上下揺動角度を苗植付装置4の対車体高さとして検出するリンクセンサ70の出力、などに基づいて、昇降シリンダ2の作動状態を切り換える昇降弁71の作動を制御することで苗植付装置4の昇降を制御するように構成してある。
【0048】
具体的には、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の上昇位置への操作を検知した場合は、昇降弁71を昇降シリンダ2にオイルを供給する供給状態に切り換えることで、昇降シリンダ2を収縮作動させて苗植付装置4を上昇させる上昇制御を行う。第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の下降位置への操作を検知した場合は、昇降弁71を昇降シリンダ2からオイルを排出する排出状態に切り換えることで、昇降シリンダ2を伸長作動させて苗植付装置4を下降させる下降制御を行う。第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の中立位置への操作を検知した場合は、昇降弁71を昇降シリンダ2に対するオイルの給排を停止する給排停止状態に切り換えることで、昇降シリンダ2の作動を停止させて苗植付装置4をそのときの高さ位置にて停止させる昇降停止制御を行う。
【0049】
つまり、第1レバーセンサ67の出力に基づく昇降制御手段66Aの制御作動により、苗植付装置4を任意の高さ位置に昇降移動させることができる。
【0050】
そして、昇降制御手段66Aは、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の自動位置への操作を検知した場合は、第2レバーセンサ68の出力などに基づいて昇降弁71の作動を制御する。
【0051】
例えば、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の下方への操作を検知した場合は、昇降弁71を排出状態に切り換えることで、昇降シリンダ2を伸長作動させて苗植付装置4を下降させ、この下降でセンタフロート28が接地してフロートセンサ69の出力が予め設定したセンタフロート28の制御目標角度に一致する(フロートセンサ69の出力が制御目標角度の不感帯幅内に収まる)のに伴って、昇降弁71を給排停止状態に切り換えることで、昇降シリンダ2の伸長作動を停止させて苗植付装置4を制御目標角度に対応する所定の接地高さ位置(作業高さ位置)にて自動停止させる自動下降制御を行う。その後、フロートセンサ69の出力が制御目標角度と一致する状態が維持されるように昇降弁71の作動を制御して昇降シリンダ2の作動状態を切り換えることで、圃場耕盤の起伏などに起因した走行車体1のピッチングにかかわらず苗植付装置4が所定の接地高さ位置を維持する状態が得られるように苗植付装置4を自動昇降させる自動昇降制御を行う。そして、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の上方への操作を検知した場合は、昇降弁71を供給状態に切り換えることで、昇降シリンダ2を収縮作動させて苗植付装置4を上昇させ、この上昇でリンクセンサ70の出力が予め設定したリンク機構3の制御上限角度に一致する(リンクセンサ70の出力が制御上限角度の不感帯幅内に収まる)のに伴って、昇降弁71を給排停止状態に切り換えることで、昇降シリンダ2の収縮作動を停止させて苗植付装置4を制御上限角度に対応する所定の上限位置にて自動停止させる自動上昇制御を行う。
【0052】
つまり、第2レバーセンサ68の出力に基づく昇降制御手段66Aの制御作動により、苗植付装置4を所定の接地高さ位置又は所定の上限位置まで自動的に昇降移動させて、それらの高さ位置に維持することができる。
【0053】
尚、センタフロート28の制御目標角度は、搭乗運転部38に備えたフロート角度設定器72を操作することで任意の角度に設定変更することができる。そして、このフロート角度設定器72、並びに、前述した第1レバーセンサ67、フロートセンサ69、及び、リンクセンサ70には回転式のポテンショメータを採用してある。又、第2レバーセンサ68には多接点スイッチを採用してある。昇降弁71には電磁制御弁を採用してある。
【0054】
作業動作制御手段66Bは、第1レバーセンサ67の出力、第2レバーセンサ68の出力、及びフロートセンサ69の出力、などに基づいて、植付クラッチ23を断続操作する電動式の植付クラッチモータ73、動力分岐機構32に備えた施肥クラッチ74を断続操作する電動式の施肥クラッチモータ75、及び、走行車体1に搭載したバッテリ76からブロワ35への通電を断続するブロワリレー77の作動を制御することで、苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態と停止状態とに切り換えるように構成してある。
【0055】
具体的には、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の中立位置から下降位置への操作を検知した後に、フロートセンサ69の出力に基づいてセンタフロート28の接地を検知した場合は、ブロワリレー77に通電してブロワリレー77をバッテリ76からブロワ35への通電を許容する閉状態に切り換えることでブロワ35を始動させるブロワ始動制御を行う。その後、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置への操作を検知した場合は、植付クラッチ23及び施肥クラッチ74が切り状態から入り状態に切り換わるように植付クラッチモータ73及び施肥クラッチモータ75の作動を制御するクラッチ入り制御を行う。これにより、苗植付装置4及び施肥装置6を停止状態から作動状態に切り換える。
【0056】
又、この苗植付装置4及び施肥装置6の作動状態において、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置から下降位置への操作を検知した場合は、ブロワリレー77への通電を停止してブロワリレー77をバッテリ76からブロワ35への通電を阻止する開状態に切り換えることでブロワ35を停止させるブロワ停止制御を行う。又、植付クラッチ23及び施肥クラッチ74が入り状態から切り状態に切り換わるように植付クラッチモータ73及び施肥クラッチモータ75の作動を制御するクラッチ切り制御を行う。これにより、苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態から停止状態に切り換える。
【0057】
そして、作業動作制御手段66Bは、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の自動位置への操作を検知した場合は、第2レバーセンサ68の出力などに基づいて前述したブロワ始動制御、ブロワ停止制御、クラッチ入り制御、及びクラッチ切り制御を行う。
【0058】
例えば、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の自動位置への操作を検知した後、又は、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の上方への操作を検知した後に、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の下方への一回目の操作を検知した場合は、前述したブロワ始動制御を行う。その後、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の下方への二回目の操作を検知した場合は、フロート角度設定器72及びフロートセンサ69の出力に基づいて苗植付装置4の所定の接地高さ位置への到達を検知するのに伴って前述したクラッチ入り制御を行う。これにより、苗植付装置4及び施肥装置6を停止状態から作動状態に切り換える。
【0059】
又、この苗植付装置4及び施肥装置6の作動状態において、第2レバーセンサ68の出力に基づいて第2作業レバー44の上方への操作を検知した場合は、前述したブロワ停止制御及びクラッチ切り制御を行う。これにより、苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態から停止状態に切り換える。
【0060】
図12に示すように、ECU66には、苗植付装置4の左右両側部に備えた左右一対の線引きマーカ78の姿勢を制御するマーカ姿勢制御手段66Cを制御プログラムとして備えている。
【0061】
図示は省略するが、左右の線引きマーカ78は、左右方向の起伏揺動操作で格納姿勢と作用姿勢との姿勢切り換えが可能となるように構成してあり、格納姿勢では、苗植付装置4の横側部に沿って起立することで、それらの遊端部に備えた走行基準線形成用の回転体が圃場泥面から離れる状態になり、作用姿勢では、苗植付装置4の横外方に張り出すように倒伏することで、走行基準線形成用の回転体が圃場泥面に突入して現在の走行経路での走行に伴って次の走行経路で使用する走行基準線を圃場泥面に形成する状態になる。
【0062】
マーカ姿勢制御手段66Cは、第1作業レバー43の植付位置での左右方向への操作を検出する補助レバーセンサ79の出力、第1レバーセンサ67の出力、第2レバーセンサ68の出力、及び、対応する線引きマーカ78の格納姿勢及び作用姿勢への到達を検出する左右のマーカセンサ80の出力に基づいて、対応する線引きマーカ78を揺動操作する電動式の左右のマーカモータ81の作動を制御することで、左右の線引きマーカ78を格納姿勢と作用姿勢とに切り換えるように構成してある。
【0063】
具体的には、補助レバーセンサ79の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置から左方への操作を検知した場合は、左側のマーカセンサ80の出力に基づいて左側の線引きマーカ78の作用姿勢への到達を検知するまで左側のマーカモータ81を正転作動させて左側の線引きマーカ78を左外側に張り出させる左マーカ張り出し制御を行う。逆に、補助レバーセンサ79の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置から右方への操作を検知した場合は、右側のマーカセンサ80の出力に基づいて右側の線引きマーカ78の作用姿勢への到達を検出するまで右側のマーカモータ81を正転作動させて右側の線引きマーカ78を右外側に張り出させる右マーカ張り出し制御を行う。そして、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の植付位置から下降位置への操作を検知した場合は、作用姿勢の線引きマーカ78に対応するマーカセンサ80が線引きマーカ78の格納姿勢への到達を検出するまで作用姿勢の線引きマーカ78に対応するマーカモータ81を逆転作動させて作用姿勢の線引きマーカ78を格納するマーカ格納制御を行う。
【0064】
又、第1レバーセンサ67の出力に基づいて第1作業レバー43の自動位置への操作を検知した場合は、第2レバーセンサ68の出力に基づいて前述した左マーカ張り出し制御、右マーカ張り出し制御、及びマーカ格納制御を行うように構成してある。
【0065】
具体的には、第2レバーセンサ68の出力に基づいて、第2作業レバー44の前方への操作を検知した場合は前述した左マーカ張り出し制御を行い、逆に、第2作業レバー44の後方への操作を検知した場合は前述した右マーカ張り出し制御を行う。そして、第2作業レバー44の上方への操作を検知した場合は前述したマーカ格納制御を行う。
【0066】
尚、補助レバーセンサ79は、第1作業レバー43の植付位置での左方への操作を検出するように植付位置の左側に配備したリミットスイッチと、第1作業レバー43の植付位置での右方への操作を検出するように植付位置の右側に配備したリミットスイッチとから構成してある。左右の各マーカセンサ80は、対応する線引きマーカ78の格納姿勢への到達を検出するリミットスイッチと作用姿勢への到達を検出するリミットスイッチとから構成してある。
【0067】
図12に示すように、ECU66には、前後向きの支軸5を支点にした苗植付装置4のローリング角度を制御するローリング制御手段66Dを制御プログラムとして備えている。
【0068】
ローリング制御手段66Dは、前後向きの支軸5を支点にした苗植付装置4のローリング角度を検出するように苗植付装置4に搭載したローリングセンサ82の出力に基づいて、ローリングセンサ82の出力が予め設定した苗植付装置4の制御目標角度に一致する(ローリングセンサ82の出力が制御目標角度の不感帯幅内に収まる)状態が維持されるように、前後向きの支軸5を支点にした走行車体1に対する苗植付装置4のローリング角度を変更するローリング機構(図示せず)に備えた電動式のローリングモータ83の作動を制御する。
【0069】
苗植付装置4の制御目標角度は、搭乗運転部38に備えたローリング角度設定器84を操作することで任意の角度に設定変更することができる。
【0070】
そして、ローリング制御手段66Dは、ローリング角度設定器84の操作位置が基準位置である場合は、ローリングセンサ82の出力がローリング角度設定器84の基準位置での出力に一致するようにローリングモータ83の作動を制御することで、耕盤の起伏などに起因した走行車体1のローリングにかかわらず苗植付装置4を水平姿勢に維持する水平制御を行う。
【0071】
又、ローリング角度設定器84の操作位置が基準位置から畦際などでの耕盤の傾斜などを考慮した任意の操作位置に設定変更されている場合は、ローリングセンサ82の出力が設定変更後のローリング角度設定器84の出力に一致するようにローリングモータ83の作動を制御することで、耕盤の起伏などに起因した走行車体1のローリングにかかわらず苗植付装置4を水平姿勢以外の任意に設定したローリング姿勢に維持する傾斜制御を行う。
【0072】
尚、ローリングセンサ82には、苗植付装置4のローリング角度を高い精度で応答性良く検出するために、傾斜角センサ及び角速度センサを備えて構成したものを採用してある。ローリング角度設定器84には回転式のポテンショメータを採用してある。
【0073】
図12に示すように、ECU65には、ピットマンアーム85の直進位置からの操作角を前輪13の操舵角として検出する舵角センサ86の出力などに基づいて、昇降弁71、植付クラッチモータ73、施肥クラッチモータ75、ブロワリレー77、及び、対応するサイドクラッチ19に対するオイルの流れを制御する一対の旋回弁87の作動を制御する旋回制御手段66Eを制御プログラムとして備えている。
【0074】
旋回制御手段66Eは、搭乗運転部38に備えた旋回制御用の第1選択スイッチ88の操作に基づいて、クラッチ旋回制御の実行が可能なクラッチ旋回制御選択状態と実行を禁止したクラッチ旋回制御選択解除状態とに切り換わる。又、搭乗運転部38に備えた旋回制御用の第2選択スイッチ89の操作に基づいて、旋回開始上昇制御の実行が可能な旋回開始上昇制御選択状態と実行を禁止した旋回開始上昇制御選択解除状態とに切り換わる。更に、搭乗運転部38に備えた旋回制御用の第3選択スイッチ90の操作に基づいて、旋回終了下降制御の実行が可能な旋回終了下降制御選択状態と実行を禁止した旋回終了下降制御選択解除状態とに切り換わる。
【0075】
そして、クラッチ旋回制御選択状態では、舵角センサ86の出力に基づいて、前輪13の操舵角が設定角度(例えば30度)を超えたことを検知すると、車体を180度旋回させる畦際旋回が開始されたと判断して、旋回内側のサイドクラッチ19に対応する旋回弁87をサイドクラッチ19からオイルを排出する排出状態に切り換えて旋回内側のサイドクラッチ19を入り状態から切り状態に切り換えることで、左右の後輪20を駆動する通常旋回状態から旋回内側の後輪20を遊転させて旋回半径を小さくするクラッチ旋回状態に移行する。その後、前輪13の操舵角が設定角度以下に低下したことを検知すると、畦際旋回が終了したと判断して、旋回内側のサイドクラッチ19に対応する旋回弁87をサイドクラッチ19にオイルを供給する供給状態に切り換えて旋回内側のサイドクラッチ19を切り状態から入り状態に切り換えることで、クラッチ旋回状態から通常旋回状態に移行する。
【0076】
つまり、クラッチ旋回制御を選択しておくことにより、現在の走行経路から隣接する次の走行経路に移行する畦際旋回時に、前輪13の操舵角に応じて通常旋回状態と旋回半径の小さいクラッチ旋回状態とに円滑に移行することができ、畦際旋回時での隣接条合わせを簡単に行うことができる。
【0077】
旋回開始上昇制御選択状態では、舵角センサ86の出力に基づいて、前輪13の操舵角が設定角度(例えば30度)を超えたことを検知すると、畦際旋回が開始されたと判断して、前述したブロワ停止制御及びクラッチ切り制御を行うことで苗植付装置4及び施肥装置6を作動状態から停止状態に切り換え、かつ、前述した上限自動上昇制御を行うことで苗植付装置4を所定の接地高さ位置から所定の上限位置まで自動上昇させる。
【0078】
つまり、旋回開始上昇制御を選択しておくことにより、畦際旋回の開始時に行う設定角度を超える前輪操舵に連動して、苗植付装置4及び施肥装置6の作動状態から停止状態への切り換えと、苗植付装置4の所定の接地高さ位置から所定の上限位置への上昇移動とを適切に行うことができる。
【0079】
旋回終了下降制御選択状態では、舵角センサ86の出力に基づいて、前輪13の操舵角が設定角度(例えば30度)以下に低下したことを検知すると、畦際旋回が終了したと判断して、前述したブロワ始動制御を行うことでブロワ35を作動させるとともに、前述した自動下降制御を行うことで苗植付装置4を所定の上限位置から所定の接地高さ位置まで自動下降させ、その後、フロート角度設定器72及びフロートセンサ69の出力に基づいて苗植付装置4の所定の接地高さ位置への到達を検知するのに伴って前述したクラッチ入り制御を行うことで、苗植付装置4及び施肥装置6を停止状態から作動状態に切り換える。
【0080】
つまり、旋回終了下降制御を選択しておくことにより、畦際旋回の終了時に行う設定角度以下への前輪操舵に連動して、苗植付装置4の所定の上限位置から所定の接地高さ位置への下降移動と、苗植付装置4及び施肥装置6の停止状態から作動状態への切り換えとを適切に行うことができる。
【0081】
尚、各旋回弁87には電磁制御弁を採用してある。各選択スイッチ88〜90にはモーメンタリスイッチを採用してある。
【0082】
図示は省略するが、苗植付装置4には、2条1組で植付機構27への伝動を断続する3つの植え付け用の補助クラッチ、及び、2条1組で縦送り機構29への伝動を断続する3つの縦送り用の補助クラッチを備えている。施肥装置6には、2条1組で繰出機構33への伝動を断続する3つの施肥用の補助クラッチを備えている。
【0083】
ECU66には、各補助クラッチに補助クラッチ用の機械式連係機構を介して連係した電動式の補助クラッチモータの作動を制御する補助クラッチ制御手段を制御プログラムとして備えてある。補助クラッチ制御手段は、搭乗運転部38に備えたオルタネイトスイッチからなる3つの条数選択スイッチの操作に基づいて、各条数選択スイッチに対応する補助クラッチの2条を1組みとした入り切り操作を行うように構成してある。
【0084】
具体的には、補助クラッチ制御手段は、3つ全ての条数選択スイッチからオン信号が出力されていない場合は、植え付け用と縦送り用と施肥用の全ての補助クラッチが入り状態になる全条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。左2条用の条数選択スイッチからオン信号が出力されている場合は、左側2条分の植え付け用と縦送り用と施肥用の各補助クラッチが切り状態になり、残りの各補助クラッチが入り状態になる右4条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。左2条用と中2条用の条数選択スイッチからオン信号が出力されている場合は、左側4条分の植え付け用と縦送り用と施肥用の各補助クラッチが切り状態になり、残りの各補助クラッチが入り状態になる右2条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。右2条用の条数選択スイッチからオン信号が出力されている場合は、右側2条分の植え付け用と縦送り用と施肥用の各補助クラッチが切り状態になり、残りの各補助クラッチが入り状態になる左4条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。右2条用と中2条用の条数選択スイッチからオン信号が出力されている場合は、右側4条分の植え付け用と縦送り用と施肥用の各補助クラッチが切り状態になり、残りの各補助クラッチが入り状態になる左2条作業状態が得られるように補助クラッチモータの作動を制御する。
【0085】
図12及び図13に示すように、ECU66は、搭乗運転部38に備えたキー操作式のメインスイッチ91のOFF位置からON位置への操作で得られるバッテリ76からの通電で起動する。又、メインスイッチ91のON位置からOFF位置への操作でバッテリ76からの通電が断たれると、その内部に備えた自己保持回路(図示せず)によって通電状態を維持し、バッテリ76からの通電が断たれた段階でのエンジン7の総稼働時間や各種の選択スイッチ88〜90などによる設定情報などの各種の情報をEEPROMに記憶した後、自己保持回路による通電を停止して作動を停止する。メインスイッチ91は、リミットスイッチからなるブレーキスイッチ92を介してエンジン始動用のスタータ93に接続してある。
【0086】
図示は省略するが、ブレーキスイッチ92は、ブレーキペダル42の踏み込み限界位置への到達に伴って開状態から閉状態に切り換わり、ブレーキペダル42の踏み込み限界位置からの離脱に伴って閉状態から開状態に切り換わるように構成してある。
【0087】
つまり、ブレーキペダル42を踏み込み限界位置まで踏み込み操作したブレーキ25の制動状態でメインスイッチ91のON位置からSTART位置への操作を行った場合にのみ、メインスイッチ91を経由したバッテリ76からスタータ93への通電を許容して、メインスイッチ91の操作に基づくスタータ93の作動によるエンジン7の始動が可能となるように構成してある。
【0088】
図5、図6、図8、図12及び図13に示すように、ECU66には、主変速レバー40の操作に基づいて、バッテリ76とブレーキスイッチ92との間にメインスイッチ91と並列に備えたスタータリレー94、及び、バッテリ76からエンジン7のイグナイタ95への通電を断続するイグナイタリレー96の作動を制御することで、エンジン7を稼働状態と停止状態とに切り換えるエンジン制御手段66Fを制御プログラムとして備えている。
【0089】
エンジン制御手段66Fは、搭乗運転部38に備えたエンジン制御用の選択スイッチ97の操作に基づいて、エンジン停止制御の実行に関する選択状態が、エンジン7が稼働状態であればエンジン停止制御の実行を可能にする第1選択状態と、植え付け作業状態(作業装置使用状態)である場合にエンジン停止制御の実行を可能にする第2選択状態と、畦際旋回状態である場合にエンジン停止制御の実行を禁止する第3選択状態と、エンジン停止制御の実行を禁止するエンジン停止制御選択解除状態とに切り換わる。
【0090】
具体的には、エンジン制御用の選択スイッチ97にはモーメンタリスイッチを採用してあり、選択スイッチ97の押圧操作が行われるごとに、エンジン停止制御の実行に関する選択状態が、第1選択状態、第2選択状態、第3選択状態、及び選択解除状態のいずれかに、その記載順に循環して切り換わる。尚、エンジン制御用の選択スイッチ97には、4位置切り換え式のダイヤルスイッチやスライドスイッチなどを採用してもよい。
【0091】
そして、第1選択状態では、エンジン7の出力回転数を検出するエンジンセンサ98の出力に基づいてエンジン7の稼働を検知している状態で、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作を検出するようにガイド板55に備えた停止センサ99の出力、及び、ECU66に備えたタイマ(図示せず)の出力に基づいて、主変速レバー40をエンジン停止位置55dに所定時間以上保持する保持操作(以下、主変速レバー40の所定の操作と称する)を検知した場合にエンジン停止制御を行う。
【0092】
第2選択状態では、エンジンセンサ98がエンジン7の稼働を検出している状態で、植付クラッチ23の断続を検出するクラッチセンサ100が植付クラッチ23の入り状態を検出していると、植え付け作業状態であることを検知し、この検知状態で、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて主変速レバー40の所定の操作を検知した場合にエンジン停止制御を行う。
【0093】
第3選択状態では、エンジンセンサ98がエンジン7の稼働を検出している状態で、舵角センサ86の出力に基づいて前輪13の操舵角が設定角度以下であることを検知すると、畦際旋回状態ではないと判断し、この状態で、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて主変速レバー40の所定の操作を検知した場合はエンジン停止制御を行う。一方、舵角センサ86の出力に基づいて前輪13の操舵角が設定角度を超えていることを検知すると、畦際旋回状態であると判断し、この状態では、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて主変速レバー40の所定の操作を検知した場合であってもエンジン停止制御は行わない。
【0094】
そして、各選択状態では、エンジン停止制御によるエンジン停止後に、停止センサ99の出力に基づいて主変速レバー40のエンジン停止位置55dからの離脱を検知した場合はエンジン始動制御を行う。
【0095】
選択解除状態では、エンジンセンサ98やクラッチセンサ100の出力に基づいてエンジン7の稼働や植え付け作業状態を検知している状態で主変速レバー40の所定の操作を検知してもエンジン停止制御は行わない。
【0096】
尚、エンジンセンサ98には電磁ピックアップ式の回転センサを採用してある。停止センサ99及びクラッチセンサ100にはリミットスイッチを採用してある。
【0097】
図14に示すように、エンジン制御手段66Fは、エンジン停止制御では、主変速レバー40の所定の操作を検知するのに伴って、先ず、昇降制御手段66Aが保有する苗植付装置4の昇降に関する情報、作業動作制御手段66Bが保有する作業動力の断続に関する情報、及び、各種の選択スイッチ88〜90,97などによる設定情報、などの各種の情報を読み込んでEEPROMに記憶する〔ステップ#1〕。
【0098】
次に、エンジン停止用の条件が成立しているか否かを判別する〔ステップ#2〜4〕。具体的には、エンジンセンサ98の出力に基づいてエンジン7の出力回転数が設定回転数(例えばアイドリング回転数)以下か否かを判別し〔ステップ#2〕、バッテリ76の電圧を検出する電圧検出器101(図12参照)の出力に基づいてバッテリ76の電圧が設定値以上か否かを判別し〔ステップ#3〕、水温センサ102の出力に基づいてエンジン冷却水の温度が設定値(例えば55度)以上か否かを判別する〔ステップ#4〕。そして、エンジン7の出力回転数が設定回転数以下であり、バッテリ76の電圧が設定値以上であり、エンジン冷却水の温度が設定値以上である場合にのみ、エンジン停止用の条件が成立していると判断し、それ以外の場合はエンジン停止用の条件が成立していないと判断する。
【0099】
そして、エンジン停止用の条件が成立している場合は、ステップ#1で読み込んだ各種の情報に基づいてエンジン停止制御開始直前の状態が苗植付装置4及び施肥装置6を作動させた作業状態か否かを判別する〔ステップ#5〕。
【0100】
作業状態である場合は、前述したブロワ停止制御及びクラッチ切り制御の実行を作業動作制御手段66Bに指令して、ブロワ35を停止させるとともに植付クラッチ23及び施肥クラッチ74を切り状態に切り換える〔ステップ#6,#7〕。又、エンジン停止制御開始直前に実行していた例えば自動昇降制御や水平制御などの作業用の制御作動の停止を昇降制御手段66Aやローリング制御手段66Dなどに指令して作業用の制御作動を停止させる〔ステップ#8〕。その後、イグナイタリレー96に通電してイグナイタリレー96をバッテリ76からイグナイタ95への通電を停止する開状態に切り換えることでエンジン7を停止させてエンジン停止制御を終了する〔ステップ#9〕。
【0101】
一方、作業状態でない場合は、直ちにステップ#9に移行することでエンジン7を停止させてエンジン停止制御を終了する。
【0102】
又、ステップ#2〜4においてエンジン停止用の条件が成立していない場合は、停止センサ99の出力に基づいて主変速レバー40がエンジン停止位置55dか否かを判別し〔ステップ#10〕、エンジン停止位置55dである場合は、ステップ#2に戻ってエンジン停止用の条件が成立しているか否かの判別を行う。エンジン停止位置55dでない場合は、主変速レバー40のエンジン停止位置55dからの離脱操作が行われたと判断してエンジン停止制御を終了する。
【0103】
つまり、第1選択状態を選択していると、例えば、苗載台26への苗継ぎやホッパ34への肥料補給などのために植え付け作業を中断する場合には、植え付け作業を中断するための主変速レバー40の中立位置55aへの操作やブレーキペダル42の踏み込み限界位置への踏み込み操作で中立位置55aに位置する主変速レバー40に対して前述した主変速レバー40の所定の操作を行うことで、エンジン7を自動停止させることが可能になる。
【0104】
又、例えば、植え付け作業中に畦際で行う予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行う必要が生じた場合には、植え付け作業を中断して畦際への移動走行を行った後、畦際での走行停止のために行った主変速レバー40の中立位置55aへの操作やブレーキペダル42の踏み込み限界位置への踏み込み操作で中立位置55aに位置する主変速レバー40に対して前述した主変速レバー40の所定の操作を行うことで、エンジン7を自動停止させることが可能になる。
【0105】
その結果、植え付け作業を中断してその場で行う苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う場合や、植え付け作業を中断して畦際まで移動した後に行う予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行う場合、あるいは、圃場外での移動走行で一旦停止した場合、などにおいて、それらの間もエンジン7が作動していることによる無駄な燃料消費を防止することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0106】
第2選択状態を選択していると、植え付け作業を中断してその場で行う苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う場合にのみ、前述した主変速レバー40の所定の操作によってエンジン7を停止させることができる。その結果、苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行っている間もエンジン7が作動していることによる無駄な燃料消費を防止することができ、燃費の向上を図ることができる。又、苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う必要のない他の作業状態において、前述した主変速レバー40の所定の操作でエンジン7が停止することによる作業効率の低下を未然に回避することができる。
【0107】
又、例えば、植え付けを行わない移動走行での一旦停止時に、主変速レバー40への不測の接触などに起因して主変速レバー40の所定の操作が誤って行われたとしても、このときの主変速レバー40の所定の操作に基づいてエンジン7は停止しないことから、移動走行での一旦停止時などにおいて不測にエンジン7が停止する虞を回避することができる。
【0108】
第3選択状態を選択していると、植え付け作業を中断してその場で行う苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う場合、植え付け作業を中断して畦際まで移動した後に畦際旋回による横付けを行なわずに前向き停車した状態で行う予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行う場合、あるいは、圃場外での移動走行で一旦停止した場合、などにおいて、それらの間もエンジン7が作動していることによる無駄な燃料消費を防止することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0109】
尚、この第3選択状態は、本実施形態で例示した乗用田植機のように、走行車体1の前部に左右一対の予備苗載置装置46を装備して、左右の予備苗載置装置46への予備苗供給を車体の前方から行うように構成したものにおいて特に有効であり、このような乗用田植機では左右の予備苗載置装置46に対する予備苗供給のためには通常は行うことのない畦際旋回途中の走行停止で得られる畦への横付け状態において、主変速レバー40の誤操作で不測にエンジン7が停止する虞を回避することができる。
【0110】
又、作業状態においてエンジン停止制御によるエンジン7の自動停止を行う場合には、苗植付装置4及び施肥装置6をも自動停止させることから、エンジン7の停止中にブロワ35が作動することに起因したバッテリ上がりなどの不都合の発生を防止することができる。
【0111】
しかも、主変速レバー40をエンジン停止位置55dに操作しても、前述したエンジン停止用の条件が成立していない場合にはエンジン7の自動停止を行わないことから、バッテリ76の電圧が設定値未満である場合やエンジン冷却水の温度が設定値未満である場合にエンジン7を自動停止させることに起因してエンジン7の再始動に手間取るなどの不都合が生じる虞を未然に回避することができる。
【0112】
図15に示すように、エンジン制御手段66Fは、エンジン始動制御では、主変速レバー40のエンジン停止位置55dからの離脱を検知するのに伴って、エンジン停止制御開始直前にEEPROMに記憶した各種の情報を読み出し〔ステップ#1〕、読み出した各種の情報に基づいてエンジン停止制御開始直前の状態が作業状態であったか否かを判別する〔ステップ#2〕。
【0113】
そして、作業状態であった場合は、先ず、作業動作制御手段66Bに前述したブロワ始動制御の実行を指令してブロワ35を作動させ〔ステップ#3〕、その後、作業動作制御手段66Bに前述したクラッチ入り制御の実行を指令して植付クラッチ23及び施肥クラッチ74を入り状態に切り換える〔ステップ#4〕。又、エンジン停止制御開始直前に実行していた例えば自動昇降制御や水平制御などの作業用の制御作動の再開を昇降制御手段66Aやローリング制御手段66Dなどに指令して作業用の制御作動を再開させる〔ステップ#5〕。
【0114】
次に、イグナイタリレー96への通電を停止してイグナイタリレー96をバッテリ76からイグナイタ95に通電する閉状態に切り換えることでエンジン7の始動を許容し〔ステップ#6〕、その後、エンジン始動用の設定時間の間、スタータリレー94に通電してスタータリレー94をバッテリ76からスタータ93に通電する閉状態に切り換えることで、メインスイッチ91を迂回したバッテリ76からスタータ93への通電によりスタータ93を作動させてエンジン7の始動を行う〔ステップ#7〜#9〕。そして、エンジンセンサ98の出力に基づいてエンジン7の出力回転数が設定回転数以上か否かを判別し〔ステップ#10〕、設定回転数以上である場合はエンジン7の始動が完了したと判断してエンジン始動制御を終了する。設定回転数以上でない場合はエンジン7が始動しなかったと判断してステップ#7に戻り、再びスタータ93を作動させてエンジン7の始動を行う。
【0115】
一方、ステップ#2において作業状態でなかった場合は、直ちにステップ#6に移行し、ステップ#6〜10の制御作動を行ってエンジン7を始動させた後にエンジン始動制御を終了する。
【0116】
つまり、エンジン停止制御によるエンジン停止後に、主変速レバー40をエンジン停止位置55dから中立位置55aに移動させてエンジン7を再始動させる再始動操作を行うと、エンジン停止制御によるエンジン停止前の状態が作業状態である場合には、その再始動操作に伴って、苗植付装置4及び施肥装置6などの作動状態をエンジン停止前の作動状態と同じ状態に自動的に再現することができ、これにより、エンジン7の再始動後に主変速レバー40を中立位置55aから前進変速経路55bに操作することで、植え付け作業をエンジン停止前と同じ作動状態で速やかに再開させることができる。
【0117】
そして、前述したように、スタータリレー94をバッテリ76とブレーキスイッチ92との間にメインスイッチ91に対して並列に装備していることから、ブレーキペダル42を踏み込み限界位置まで踏み込み操作したブレーキ25の制動状態で主変速レバー40のエンジン停止位置55dからの離脱操作を行った場合にのみ、スタータリレー94を経由したバッテリ76からスタータ93への通電が許容されて、主変速レバー40の操作に基づくスタータ93の作動によるエンジン7の始動操作が可能となっている。
【0118】
又、スタータリレー94の故障などで、スタータリレー94を経由したバッテリ76からスタータ93への通電によるエンジン7の始動操作が行えなくなった場合であっても、メインスイッチ91の操作に基づくバッテリ76からスタータ93への通電によるエンジン7の始動操作が可能であることから、メインスイッチ91の操作でエンジン7を始動させることができる。
【0119】
尚、エンジン制御手段66Fは、エンジン停止制御によるエンジン停止後は常に水温センサ102の出力を監視し、水温センサ102の出力に基づいてエンジン冷却水の温度が設定上限温度(例えば110度)を超えたことを検知した場合には、主変速レバー40がエンジン停止位置55dに位置する状態であっても前述したエンジン始動制御を行ってエンジン7を強制的に再稼働させることで、エンジン7からの動力で作動する冷却ファン(図示せず)を作動させてエンジン7及びエンジン冷却水の冷却を行うように構成してある。
【0120】
ちなみに、前述したエンジン停止制御の実行に関する選択状態の切り換えとしては、選択スイッチ97の操作に基づいて、少なくとも第1選択状態、第2選択状態、及び第3選択状態のうちのいずれか一つと選択解除状態とに切り換わるように構成してもよい。又、選択スイッチ97の押圧操作が行われるごとに切り換わる選択状態の順序は種々の変更が可能である。
【0121】
又、エンジン停止制御の実行を可能にする条件としては、左右の対応する予備苗載置装置46が前述した予備苗補給状態であることを検出する予備苗補給検出手段(図示せず)の出力に基づいて、少なくとも左右いずれか一方の予備苗載置装置46が予備苗補給状態であることを検知した場合、苗植付装置4に備えた苗切れ検出手段(図示せず)の出力に基づいて苗植付装置4での苗切れを検知した場合、施肥装置6に備えた肥料切れ検出手段(図示せず)の出力に基づいて施肥装置6での肥料切れを検知した場合、あるいは、施肥装置6に備えた肥料詰まり検出手段(図示せず)の出力に基づいて施肥装置6での肥料詰まりを検知した場合、などであってもよい。
【0122】
第2選択状態での植え付け作業状態の検知に関しては、副変速レバー41の作業走行用の低速位置への操作を検出する副変速用のレバーセンサ(図示せず)の出力、フロートセンサ69によるセンタフロート28の接地検出、左右のマーカセンサ80による左右いずれか一方の線引きマーカ78の作用姿勢への到達検出、あるいは、舵角センサ86による前輪13の直進検出、などのいずれか一つ又は複数に基づいて植え付け作業状態を検知するように構成してもよい。
【0123】
第3選択状態での畦際旋回状態の検知に関しては、左右の対応するサイドクラッチ19の切り状態を検出するサイドクラッチセンサ(図示せず)の出力、フロートセンサ69によるセンタフロート28の浮上検出、あるいは、旋回制御手段66Eによるクラッチ旋回制御の実行、などのいずれか一つ又は複数に基づいて植え付け作業状態を検知するように構成してもよい。又、旋回制御手段66Eが畦際旋回中に車体の旋回角を積算する旋回角積算処理を行う場合には、旋回角積算処理の実行に基づいて植え付け作業状態を検知するように構成してもよい。
【0124】
図8に示すように、主変速レバー40を案内するガイド板55のガイド溝55Aにおいては、植え付け作業時に使用する前進変速経路55bを前後進切り換え経路55aの左端部に連接し、かつ、その前後進切り換え経路55aの左端から左方に延びる補助ガイド部55Abの左端部をエンジン停止位置55dに設定することで、主変速レバー40の前進変速経路55bからエンジン停止位置55dへの操作に要する操作時間の短縮を図るようにしてある。
【0125】
その反面、主変速レバー40を前後進切り換え経路55aに沿って後進変速経路55cから前進変速経路55bに操作する際には、その操作の延長線上にエンジン停止位置55dが位置することから、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの誤操作が生じ易くなっている。そのため、車体前方の畦からの予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行うために畦に対して車体を前向き停車するときに車体を畦に近づけすぎて後進させた場合以外には殆ど行うことのない主変速レバー40の後進変速経路55cからエンジン停止位置55dへの操作によるエンジン停止制御の実行が運転者の意思とは関係なく行われることがある。その結果、変形田の変形箇所などで行うことの多い前後進を繰り返しながらの植え付け作業において、後進から前進への切り換え操作の際にエンジン7が不必要に停止することに起因した作業効率の低下を招き易くなる。
【0126】
そこで、図12及び図16に示すように、この乗用田植機では、エンジン停止制御を開始させるために行なう主変速レバー40の所定の操作での操作性を前進変速経路55bからと後進変速経路55cからとで異ならせることにより前述した不都合の発生を防止する操作性相違手段Aをエンジン制御手段66Fに備えてある。
【0127】
図16に示すフローチャートに基づいて操作性相違手段Aによる操作性相違制御について詳述すると、操作性相違手段Aは、停止センサ99の出力及び主変速レバー40の前後方向での操作位置を検出する変速レバーセンサ111の出力を常に監視し〔ステップ#1〕、停止センサ99の出力に基づいて主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作を検知した場合に、変速レバーセンサ111の出力に基づいて、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作が前進変速経路55bからの操作か後進変速経路55cからの操作かを判別する〔ステップ#2,#3〕。
【0128】
そして、前進変速経路55bからの操作であれば、主変速レバー40をエンジン停止位置55dで保持する所定時間を第1所定時間(例えば0.5秒)とし〔ステップ#4〕、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて、第1所定時間が経過するまでの間、主変速レバー40がエンジン停止位置55dに保持されたか否かを判別する〔ステップ#5,#6〕。保持された場合は、第1所定時間の経過に伴ってエンジン停止制御に移行し〔ステップ#7〕、保持されなかった場合はステップ#1に戻る。
【0129】
一方、後進変速経路55cからの操作であれば、主変速レバー40をエンジン停止位置55dで保持する所定時間を第1所定時間よりも長い第2所定時間(例えば2秒)とし〔ステップ#8〕、停止センサ99及びタイマの出力に基づいて、第2所定時間が経過するまでの間、主変速レバー40がエンジン停止位置55dに保持されたか否かを判別する〔ステップ#9,#10〕。保持された場合は、第2所定時間の経過に伴ってエンジン停止制御に移行し〔ステップ#11〕、保持されなかった場合はステップ#1に戻る。
【0130】
つまり、前進状態からエンジン停止制御に移行するまでの主変速レバー40の所定の操作に要する時間よりも後進状態からエンジン停止制御に移行するまでの主変速レバー40の所定の操作に要する時間を長くしてあり、これにより、前述した不都合の発生を防止しながらも、植え付け作業を中断して苗継ぎや肥料補給などの補助作業を行う場合、あるいは、車体を畦に対して前向きに停車して車体前方の畦から予備苗載置装置46への予備苗補給などの補助作業を行う場合などに必ず要する操作である、前進状態からの主変速レバー40の所定の操作を、補助作業を行う場合などにおいて希に行うことのある後進状態からの主変速レバー40の所定の操作よりも操作性の良いものにすることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0131】
尚、変速レバーセンサ111には回転式のポテンショメータを採用してある。
【0132】
〔別実施形態〕
【0133】
〔1〕作業車としては、播種機、トラクタ、コンバイン、あるいはバックホー、などであってもよい。又、エンジン7としてディーゼルエンジンを採用したものであってもよい。尚、ディーゼルエンジンを採用する場合には、ディーゼルエンジンに対する燃料の供給を遮断する燃料カットソレノイドなどの燃料遮断装置の操作でエンジン7を停止させるように構成することなどが考えられる。
【0134】
〔2〕前後進切り換え用の操作具40としては、主変速装置8の変速操作と前後進切り換え操作とを可能にする主変速ペダルであってもよい。又、前後進切り換え専用の前後進切換装置を備える作業車においては、前後進切換装置の前後進切り換え操作を可能にする専用の操作レバー又は操作ペダルであってもよい。
【0135】
〔3〕前後進切り換え用の操作具40の所定の操作を、操作具40の所定位置Pの一例である中立位置(前後進切り換え経路55a)での所定時間の保持操作としてもよい。この場合、操作具40の前進変速経路55bからの操作で中立位置(前後進切り換え経路55a)に保持する所定時間よりも後進変速経路55cからの操作で中立位置(前後進切り換え経路55a)に保持する所定時間を長くすることで操作性相違手段Aを構成し、これにより、操作具40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0136】
〔4〕図17に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前進変速経路55bの左側に外れた位置に前進変速経路55bに沿って形成した第1補助領域55eと、後進変速経路55cの右側に外れた位置に後進変速経路55cに沿って形成した第2補助領域55fとのそれぞれを所定位置Pとし、主変速レバー40の第1補助領域55eへの操作を検出する第1検出手段103を、主変速レバー40の前進変速経路55bから左側の第1補助領域55eへの操作に伴って一対の第1圧縮バネ104の作用に抗して左方に摺動変位する第1ガイド部材105と、この第1ガイド部材105の左方への摺動変位を検出する第1ミットスイッチ106とから構成し、かつ、主変速レバー40の第2補助領域55fへの操作を検出する第2検出手段107を、主変速レバー40の後進変速経路55cから右側の第2補助領域55fへの操作に伴って一対の第2圧縮バネ108の作用に抗して右方に摺動変位する第2ガイド部材109と、この第2ガイド部材109の右方への摺動変位を検出する第2ミットスイッチ110とから構成し、主変速レバー40の所定の操作を、主変速レバー40の第1補助領域55e又は第2補助領域55fへの操作と、その後の中立位置(前後進切り換え経路55a)への操作としてもよい。
【0137】
そして、この場合には、一対の第1圧縮バネ104を主変速レバー40の第1補助領域55e(所定位置P)への操作を機械的に阻害する阻害手段Bとし、かつ、一対の第2圧縮バネ108を主変速レバー40の第2補助領域55f(所定位置P)への操作を機械的に阻害する阻害手段Bとし、各第1圧縮バネ104のバネ力よりも各第2圧縮バネ108のバネ力を大きくすることで、第1補助領域55eでの阻害手段Bによる阻害の程度よりも第2補助領域55fでの阻害手段Bによる阻害の程度が大きくなるように設定して操作性相違手段Aを構成し、これにより、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0138】
又、図示は省略するが、第1ミットスイッチ106が主変速レバー40の第1補助領域55e(所定位置P)への操作を検出するまでに要する操作距離よりも第2ミットスイッチ110が主変速レバー40の第2補助領域55f(所定位置P)への操作を検出するまでに要する操作距離が長くなるように構成することで、第1補助領域55eでの阻害手段Bによる阻害の程度よりも第2補助領域55fでの阻害手段Bによる阻害の程度が大きくなるように設定して操作性相違手段Aを構成し、これにより、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0139】
尚、これらの構成でのエンジン7の始動操作は、オルタネイトスイッチなど採用した始動専用のスイッチ(図示せず)などの操作で行うことが考えられる。
【0140】
〔5〕図18に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前後進切り換え経路55aの左右両端に左方又は右方に延びる状態に補助ガイド部55Abを連接形成し、かつ、補助ガイド部55Abの左端部又は右端部を所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定し、更に、ガイド板55に、主変速レバー40の左右の対応するエンジン停止位置55dへの操作を機械的に阻害し、かつ、主変速レバー40の左右の対応するエンジン停止位置55dでの保持を可能にする左右一対のエンジン停止用のデテント機構63を阻害手段Bとして装備して、主変速レバー40の前進変速経路55bからの所定の操作を、前進変速経路55bに近い左側のエンジン停止位置55dへの操作とし、又、主変速レバー40の後進変速経路55cからの所定の操作を、後進変速経路55cに近い右側のエンジン停止位置55dへの操作としてもよい。
【0141】
そして、この場合には、左側のエンジン停止位置55dに対応する左側の阻害手段Bによる阻害の程度よりも右側のエンジン停止位置55dに対応する右側の阻害手段Bによる阻害の程度が大きくなるように設定して操作性相違手段Aを構成し、これにより、前後進の切り換え操作時に主変速レバー40が左右の各エンジン停止位置55dに入り込むことを抑制しながら、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0142】
〔6〕図19に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前後進切り換え経路55aの左右両端に左方又は右方に延びる状態に補助ガイド部55Abを連接形成し、かつ、これらの補助ガイド部55Abを所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定して、主変速レバー40の前進変速経路55bからの所定の操作を、前進変速経路55bに近い左側のエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作とし、又、主変速レバー40の後進変速経路55cからの所定の操作を、後進変速経路55cに近い右側のエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作としてもよい。
【0143】
そして、この場合には、主変速レバー40を左側のエンジン停止位置55dで保持する所定時間よりも主変速レバー40を右側のエンジン停止位置55dで保持する所定時間が長くなるように設定することで操作性相違手段Aを構成し、これにより、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0144】
尚、この構成でのエンジン7の始動操作は、オルタネイトスイッチなど採用した始動専用のスイッチ(図示せず)などの操作で行うことが考えられる。
【0145】
〔7〕図20に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前後進切り換え経路55aの左右両端部に前方又は後方に延びる状態に補助ガイド部55Abを連接形成し、かつ、これらの補助ガイド部55Abを所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定して、主変速レバー40の前進変速経路55bからの所定の操作を、前進変速経路55bの延長線上に位置する左側のエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作とし、又、主変速レバー40の後進変速経路55cからの所定の操作を、後進変速経路55cの延長線上に位置する右側のエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作としてもよい。
【0146】
そして、この場合には、主変速レバー40を左側のエンジン停止位置55dで保持する所定時間よりも主変速レバー40を右側のエンジン停止位置55dで保持する所定時間が長くなるように設定することで操作性相違手段Aを構成し、これにより、主変速レバー40の所定の操作でエンジン7を停止させる際の操作性が、前進変速経路55bからの方が後進変速経路55cからよりも良くなるように構成してもよい。
【0147】
尚、この構成でのエンジン7の始動操作は、オルタネイトスイッチなど採用した始動専用のスイッチ(図示せず)などの操作で行うことが考えられる。
【0148】
〔8〕図21に示すように、前後進切り換え用の操作具40を主変速レバー40とする場合には、前後進切り換え経路55aの右端から右方に延びる状態に補助ガイド部55Abを連接形成し、かつ、この補助ガイド部55Abを所定位置Pとしてのエンジン停止位置55dに設定して、主変速レバー40の所定の操作をエンジン停止位置55dでの所定時間の保持操作としてもよい。
【0149】
そして、この場合には、前述した実施形態とは逆に、主変速レバー40を前進変速経路55bからエンジン停止位置55dに操作した場合にエンジン停止位置55dでの保持に要する所定時間が、主変速レバー40を後進変速経路55cからエンジン停止位置55dに操作した場合にエンジン停止位置55dでの保持に要する所定時間よりも長くなるように設定することで操作性相違手段Aを構成して、前後進の切り換え操作時に主変速レバー40がエンジン停止位置55dに入り込んでエンジン7が停止する虞を抑制するようにしてもよい。
【0150】
尚、この構成でのエンジン7の始動操作は、オルタネイトスイッチなど採用した始動専用のスイッチ(図示せず)などの操作で行うことが考えられる。
【0151】
又、図示は省略するが、この構成では、ガイド板55に、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作を機械的に阻害し、かつ、主変速レバー40のエンジン停止位置55dでの保持を可能にするエンジン停止用のデテント機構63を備えるようにしてもよい。
【0152】
〔9〕図示は省略するが、エンジン制御手段66Fにエンジン停止制御の実行を選択する選択手段を備えて、選択手段が以下に示すエンジン停止選択制御を行うように構成してもよい。
【0153】
エンジン停止選択制御では、選択手段は、停止センサ99の出力及び主変速レバー40の前後方向での操作位置を検出する変速レバーセンサ111の出力を常に監視し、停止センサ99の出力に基づいて主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作を検知した場合に、変速レバーセンサ111の出力に基づいて、主変速レバー40のエンジン停止位置55dへの操作が前進変速経路55bからの操作か後進変速経路55cからの操作かを判別する。
【0154】
そして、前進変速経路55bからの操作であればエンジン停止制御に移行し、後進変速経路55cからの操作であればエンジン停止制御に移行せずに、停止センサ99の出力及び変速レバーセンサ111の出力を監視する状態に戻る。
【0155】
つまり、主変速レバー40が前進変速経路55bからの操作でエンジン停止位置55dに位置した場合にエンジン停止制御を行い、主変速レバー40が後進変速経路55cからの操作でエンジン停止位置55dに位置した場合はエンジン停止制御を行わないように構成してある。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明に係る作業車の報知制御構造は、エンジンを搭載し、前後進切り換え用の操作具を備えた播種機、トラクタ、コンバイン、あるいはバックホー、などに適用することができる。
【符号の説明】
【0157】
7 エンジン
40 前後進切り換え用の操作具(変速操作具)
55Aa 操作経路
55a 中立位置(前後進切り換え経路)
55b 前進変速経路
55c 後進変速経路
A 操作性相違手段
B 阻害手段
P 所定位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後進切り換え用の操作具の所定の操作に基づいてエンジンが停止するように構成した作業車のエンジン停止操作構造において、
前記操作具の所定の操作で前記エンジンを停止させる際の操作性を前進状態からと後進状態からとで異ならせる操作性相違手段を備えてある作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項2】
前記操作性相違手段により、前進状態からの前記操作具の所定の操作に要する時間よりも後進状態からの前記操作具の所定の操作に要する時間が長くなるように構成してある請求項1に記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項3】
前記操作具の所定の操作を、前記操作具の所定位置での所定時間の保持操作とし、
前記所定時間を異ならせることで前記操作性相違手段を構成してある請求項1又は2に記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項4】
前記操作具の所定の操作を、前記操作具の通常の操作経路から外れた所定位置への操作とし、
前記操作具の所定位置への操作を機械的に阻害する阻害手段を設け、
前記阻害手段による阻害の程度を異ならせることで前記操作性相違手段を構成してある請求項1又は2に記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項5】
前記操作具を前後進切り換え用と変速用とを兼ねる変速操作具とし、
前記操作具の所定の操作を、少なくとも前記変速操作具の中立位置に連接した所定位置への操作を行う操作としてある請求項1〜4のいずれか一つに記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項6】
前記操作具を前後進切り換え用と変速用とを兼ねる変速操作具とし、
前記変速操作具の操作経路を、左右向きの前後進切り換え経路と前記前後進切り換え経路の一端部から前後向きに延出する前進変速経路と前記前後進切り換え経路の他端部から前後向きに延出する後進変速経路とを有するように形成し、
前記変速操作具の所定の操作を、前記変速操作具の前記前後進切り換え経路の左右一側端に連接した所定位置での所定時間の保持操作とし、
前記変速操作具を前記前進変速経路と前記後進変速経路のうちの前記所定位置に近い側の変速経路から前記所定位置に操作した場合の前記所定時間よりも前記所定位置から遠い側の変速経路から前記所定位置に操作した場合の前記所定時間を長くすることで前記操作性相違手段を構成してある請求項1に記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項1】
前後進切り換え用の操作具の所定の操作に基づいてエンジンが停止するように構成した作業車のエンジン停止操作構造において、
前記操作具の所定の操作で前記エンジンを停止させる際の操作性を前進状態からと後進状態からとで異ならせる操作性相違手段を備えてある作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項2】
前記操作性相違手段により、前進状態からの前記操作具の所定の操作に要する時間よりも後進状態からの前記操作具の所定の操作に要する時間が長くなるように構成してある請求項1に記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項3】
前記操作具の所定の操作を、前記操作具の所定位置での所定時間の保持操作とし、
前記所定時間を異ならせることで前記操作性相違手段を構成してある請求項1又は2に記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項4】
前記操作具の所定の操作を、前記操作具の通常の操作経路から外れた所定位置への操作とし、
前記操作具の所定位置への操作を機械的に阻害する阻害手段を設け、
前記阻害手段による阻害の程度を異ならせることで前記操作性相違手段を構成してある請求項1又は2に記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項5】
前記操作具を前後進切り換え用と変速用とを兼ねる変速操作具とし、
前記操作具の所定の操作を、少なくとも前記変速操作具の中立位置に連接した所定位置への操作を行う操作としてある請求項1〜4のいずれか一つに記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【請求項6】
前記操作具を前後進切り換え用と変速用とを兼ねる変速操作具とし、
前記変速操作具の操作経路を、左右向きの前後進切り換え経路と前記前後進切り換え経路の一端部から前後向きに延出する前進変速経路と前記前後進切り換え経路の他端部から前後向きに延出する後進変速経路とを有するように形成し、
前記変速操作具の所定の操作を、前記変速操作具の前記前後進切り換え経路の左右一側端に連接した所定位置での所定時間の保持操作とし、
前記変速操作具を前記前進変速経路と前記後進変速経路のうちの前記所定位置に近い側の変速経路から前記所定位置に操作した場合の前記所定時間よりも前記所定位置から遠い側の変速経路から前記所定位置に操作した場合の前記所定時間を長くすることで前記操作性相違手段を構成してある請求項1に記載の作業車のエンジン停止操作構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−53605(P2013−53605A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194234(P2011−194234)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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