溶接継ぎ手構造及びビーム
【課題】連結杆(桟等)の端部を被連結杆(支柱等)の長手方向側面に突き当てて両者をアーク溶接により連結する溶接継ぎ手構造において、連結部分の強度を飛躍的に高めることができるようにする。
【解決手段】連結杆4はパイプ素材によって形成されていると共にこの連結杆4の端部にはパイプ素材を径方向に潰すことによって形成した扁平形状の継ぎ手端部10が設けられており、この継ぎ手端部10まわりを一周させるようにしつつ被連結杆3との突き当て部分を隅肉溶接することで連結杆4と被連結杆3との連結部分にエンドレスのビード部19が形成されている。
【解決手段】連結杆4はパイプ素材によって形成されていると共にこの連結杆4の端部にはパイプ素材を径方向に潰すことによって形成した扁平形状の継ぎ手端部10が設けられており、この継ぎ手端部10まわりを一周させるようにしつつ被連結杆3との突き当て部分を隅肉溶接することで連結杆4と被連結杆3との連結部分にエンドレスのビード部19が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラチス構造のビーム等を構成させるうえで採用可能な溶接継ぎ手構造と、この溶接継ぎ手構造を具備して構成されたビームとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10乃至図12はラチス構造を有した従来のビーム100を示している。このビーム100は、建設用仮設足場やクレーン用ジブ等として使用されるもので、複数本の支柱101を複数本の桟102やブレース103で連結した構造になっている。
支柱101、桟102、ブレース103にはそれぞれ外径の異なるパイプ材が用いられ、それらの連結は、支柱101の長手方向側面に桟102やブレース103の端部を突き当てた状態とし、この突き当て部分を一周させるように隅肉溶接(アーク溶接)しているのが普通である。
【0003】
この種のビーム100にワイヤロープRを繋ぎ止める場合、支柱101に板片106を溶接によって取り付け、この板片106にロープ掛け孔107を設けるようにして、ここへワイヤーロープRを繋ぎ止めるといったことを行っていた。
ところで、桟102の端部にフレア加工(管端部を全周的に外側に広げてラッパ状にする加工)をして、このフレア部分を支柱101に当接させることが提案されている(特許文献1等参照)。
この提案には、桟102の端部を支柱101の長手方向側面に単に突き当てるだけの場合に比べて溶接面積を拡大し、接合強度を高めるという目的が含まれている
【特許文献1】特開2005−118794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10に示したようなビーム100において、支柱101と桟102との連結部分Sの強度が弱く、その結果、ビーム100の長手方向両端に曲げ力や強いねじり力などが負荷した場合などに、この連結部分Sで応力集中が起こってここで曲がりやねじれ、潰れ、亀裂、溶接部破壊などが発生し、ついには破断に至るということがあった。
すなわち、この種ビーム100において、連結部分Sは強度的に非常に弱い部分であると言える。それ故、もし仮に、この連結部分SにワイヤロープRを架け渡すようなことをすれば(図10及び図11中に二点鎖線で示すようなこと)、ワイヤロープRによる引っ張り力が連結部分Sをいとも簡単に破断させてしまうということになる。
【0005】
従来、わざわざ支柱101に板片106を取り付けてワイヤロープRを繋ぎ止めるといった使い方をしていたのは、まさに、このような連結部分Sの破断等を回避するための対策の一つであった。
しかしながら、このような板片106を取り付けたとしても、支柱101と板片106との取付部(溶接部)108や、板片106におけるロープ掛け孔106の開口周部に応力集中が起こるのは必定であり、これらで剪断破壊が起こるということがあった。
一方、桟102の端部にフレア加工するという提案(特許文献1等参照)は、決して、フレア部分の全面を支柱101へ溶接するわけではなく、フレア部分の外周部が桟102の端部外周より「その周長として」長くなっている分が、溶接面積の拡大に繋がっているだけである。
【0006】
そのため、フレア加工の採用で得られるとされた接合強度の向上効果は微々たるものであり、支柱101と桟102との連結部分Sの強度を高める根本的な解決には何ら寄与しないものと言わざるを得ない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、連結杆(桟等)の端部を被連結杆(支柱等)の長手方向側面に突き当て状態にして連結する場合にあってその連結部分の強度を飛躍的に高めることができるようにした溶接継ぎ手構造とこの溶接継ぎ手構造を採用することで全体強度を飛躍的に高めることができるようにしたビームとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る溶接継ぎ手構造は、連結杆の端部を被連結杆の長手方向側面に突き当てて両者をアーク溶接により連結するための構造であって、連結杆はパイプ素材によって形成されていると共に、この連結杆の端部にはパイプ素材を径方向に潰すことによって形成した扁平形状の継ぎ手端部が設けられており、この継ぎ手端部まわりを一周させるようにしつつ、被連結杆との突き当て部分を隅肉溶接することで連結杆と被連結杆との連結部分にエンドレスのビード部が形成されているものである。
【0008】
このような構成であると、連結杆の継ぎ手端部はパイプ素材厚の2倍の厚さとして形成されているばかりでなく、この継ぎ手端部まわりを一周する隅肉溶接によって形成されるビード部の盛厚も、継ぎ手端部の肉厚に加算される。その結果、この連結部分の総肉厚は、元のパイプ素材厚に対してその4倍前後に形成されていることになる。
そのためこの連結部分の断面二次係数は大きくなり、従来に比して飛躍的に、曲がりやねじれ、潰れ、亀裂、溶接部破壊などは起こり難いものとなっている。またこの連結部分が破壊に至ることもない。
【0009】
連結杆の継ぎ手端部先端は、扁平形状の幅方向中央部に比べて幅方向両端部が先方へ突出したものとされることで被連結杆の断面形状に沿った凹形に形成されており、連結杆の継ぎ手端部と被連結杆の長手方向側面とが密接的な突き当て状態とされたものとするのが好適である。
このようにすると、連結杆の継ぎ手端部先端は、その凹形として被連結杆の外周面を掴むような状態となる。また、継ぎ手端部先端と被連結杆の外周面との間が密接的になっている(即ち、隙間がない)ことから、これらを隅肉溶接した部分中に巣(空隙)は生じないものとなり、それだけ強靱な連結が可能となっている。
【0010】
このことも、連結杆と被連結杆との連結強度を高めるうえで極めて有効となっている。
連結杆の継ぎ手端部は、パイプ素材の中心位置が潰しの中心となるようにして扁平形状に形成されているものとするのが好適である。
このようにすることで、継ぎ手端部に作用する応力が、当該継ぎ手端部の表裏で同じ大きさとして作用することになるから、連結杆としての使用向き(ビームを製作するとき及びビームを使用するときの継ぎ手端部の配置)を制限されることはなくなる。そのため、連結杆としての使用上の面倒がない。
【0011】
一方、本発明に係るビームは、少なくとも2本の互いに並行状態とされた被連結杆と、これら被連結杆間をそれらの長手方向で互いに所定間隔をおいて架設された複数本の連結杆とを有したものであって、被連結杆の長手方向側面と連結杆の端部との連結部分に対し、本発明に係る溶接継ぎ手構造を採用して連結されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る溶接継ぎ手構造では、連結杆(桟等)の端部を被連結杆(支柱等)の長手方向側面に突き当て状態にして連結する場合にあってその連結部分の強度を飛躍的に高めることができる。
また本発明に係るビームは、本発明に係る溶接継ぎ手構造を採用していることに伴って全体強度を飛躍的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図5は、本発明に係るビーム1の一実施形態を示している。このビーム1は、互いに並行状態とされた複数本の被連結杆3を有していると共に、これら被連結杆3の長手方向で互いに所定間隔をおいて配置され、且つ被連結杆3間を繋ぐように架設された複数本の連結杆4及びブレース(斜材)5を有したものである。
図例では被連結杆3が4本設けられ、これら被連結杆3が互いに平行しつつ正方形配置となるように同じ長さの連結杆4で連結されることで、ビーム1全体として角筒形を呈するようになっているものを示してある。連結杆4は被連結杆3の長手方向に対して直交するようにしてあり、ブレース5は被連結杆3の長手方向に対して傾斜するようにしてある。
【0014】
なおまた、被連結杆3、連結杆4、ブレース5はいずれも丸パイプにより形成されたものとしてある。
連結杆4の端部と被連結杆3の長手方向側面との連結部分に、本発明に係る溶接継ぎ手構造が採用されている。
すなわち、連結杆4の端部には、パイプ素材(丸パイプ)を径方向に潰すことによって形成した扁平形状の継ぎ手端部10が設けられており、この継ぎ手端部10を被連結杆3の長手方向側面へ突き当てた状態で、両者がアーク溶接されている。
【0015】
図3乃至図5などから明かなように、連結杆4の継ぎ手端部10を平面的に見ると、その先端は扁平形状の幅方向中央部に比べて幅方向両端部が先方へ突出する状態で凹形に形成されている。この凹型の内面は円弧カーブを呈しており、そのカーブ半径は被連結杆3の断面形状に沿うようになっている。
そのため、連結杆4の継ぎ手端部10先端は、その凹形として被連結杆3の外周面を掴むような状態(1/4周は超えるが半周にはやや満たない程度で接触した状態)であり、しかも、継ぎ手端部10と被連結杆3の長手方向側面とは、溶接前及び溶接後を通じて密接的な突き当て状態(即ち、隙間が出ない線接触状態)となっている。
【0016】
また、継ぎ手端部10は、パイプ素材の中心位置が潰しの中心となるようにして扁平形状に形成されている。
図6に示すように、連結杆4の継ぎ手端部10は、パイプ素材4Xをプレス機12でプレスすることによって形成してある。プレス機12は、ダイ孔13を有した円筒形の下型14に対し、この下型14のダイ孔13へ嵌るポンチ部15を有した上型16を圧下可能になったもので、上型16には、下型14の上周面(ダイ孔13の開口周部)17と水平に当接するリング部18が形成されている。
【0017】
従って、下型14上に対し、ダイ孔13の中心を横断する配置でパイプ素材4Xを保持させて上型16を圧下させる。
なお、図6ではパイプ素材4Xの長手方向中途部をプレス機12で圧下するように示してあるが、これに限らず、パイプ素材4Xの一端部をプレス機12で圧下するようにしてもよい。
連結杆4の継ぎ手端部10と被連結杆3の長手方向側面との間で行うアーク溶接は、継ぎ手端部10のまわりを一周させるようにしつつ、被連結杆3への突き当て部分を隅肉溶接したものである。これにより、継ぎ手端部10のまわりを取り囲むようにエンドレスでビード部19が形成されている。
【0018】
図2に示すように、連結杆4のパイプ素材厚をtとおけば継ぎ手端部10の厚さは2tである。また、隅肉溶接によるビード部19の盛厚bはパイプ素材厚tと概ね同じ程度とすればよく、結果として、継ぎ手端部10が被連結杆3の長手方向側面に連結されている部分の総厚は、継ぎ手端部10の厚さ(2t)の更に2倍に相当する厚さ、即ち、4t前後として形成されている。
そのためこの連結部分の断面二次係数は大きくなり、従来に比して飛躍的に、曲がりやねじれ、潰れ、亀裂、溶接部破壊などは起こり難いものとなっている。またこの連結部分が破壊に至ることもない。
【0019】
このような構成(溶接継ぎ手構造)を具備して成るビーム1では、連結杆4と被連結杆3との連結強度が高く、曲がりやねじれ、潰れ、亀裂、溶接部破壊などは起こり難く、破壊に至ることもない。従って例えば、図7乃至図9に示すように、連結杆4と被連結杆3との連結部分に対し、直接、ワイヤロープRを架け渡すようにしても、この連結部分が簡単に破断するといったことはなく、十分に使用に耐えるものである。
このことから、従来はワイヤロープRを架け渡すうえで必須不可欠とされた板片(図10及び図12中の符号106)も不要となり、その取り付けの手間なども当然に不要となる。
【0020】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、連結杆4のパイプ素材には丸パイプの他、角パイプ等を用いることも可能である。
ビーム1として、正方形の筒形を呈するものの他、長方形の筒形を呈するもの、三角筒形を呈するもの、錘形(四角錘や三角錘の筒形など)の筒形を呈するもの、更には梯子状を呈するものなどとしてもよい。すなわち、被連結杆3の並行状態とは、平行及び非平行を含むものである。
【0021】
連結杆4において、継ぎ手端部10を形成させる場合にプレス機12を使用するのは一例であり、その他の方法で形成させるものであってもよい。
連結杆4は、被連結杆3と直交させることが限定されるものではなく、傾斜させてもよい。すなわち、ブレース5を連結杆4と仮定すれば、ブレース5と被連結杆3との連結部分でも本発明に係る溶接継ぎ手構造を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る溶接継ぎ手構造を採用して成るビームの一実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】図2のB−B線矢視図である。
【図4】図3に対応させて製作過程を説明した図である。
【図5】図1のC部を示した分解斜視図である。
【図6】連結杆の継ぎ手端部を形成する過程を説明した一部破砕側面図である。
【図7】図1に示したビームの使用例を示した側面図である。
【図8】図7のD−D線断面図である。
【図9】図8のE−E線矢視図である。
【図10】従来のビームを示した側面図である。
【図11】図10のF−F線断面図である。
【図12】図10のG−G線断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ビーム
3 被連結杆
4 連結杆
10 継ぎ手端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラチス構造のビーム等を構成させるうえで採用可能な溶接継ぎ手構造と、この溶接継ぎ手構造を具備して構成されたビームとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10乃至図12はラチス構造を有した従来のビーム100を示している。このビーム100は、建設用仮設足場やクレーン用ジブ等として使用されるもので、複数本の支柱101を複数本の桟102やブレース103で連結した構造になっている。
支柱101、桟102、ブレース103にはそれぞれ外径の異なるパイプ材が用いられ、それらの連結は、支柱101の長手方向側面に桟102やブレース103の端部を突き当てた状態とし、この突き当て部分を一周させるように隅肉溶接(アーク溶接)しているのが普通である。
【0003】
この種のビーム100にワイヤロープRを繋ぎ止める場合、支柱101に板片106を溶接によって取り付け、この板片106にロープ掛け孔107を設けるようにして、ここへワイヤーロープRを繋ぎ止めるといったことを行っていた。
ところで、桟102の端部にフレア加工(管端部を全周的に外側に広げてラッパ状にする加工)をして、このフレア部分を支柱101に当接させることが提案されている(特許文献1等参照)。
この提案には、桟102の端部を支柱101の長手方向側面に単に突き当てるだけの場合に比べて溶接面積を拡大し、接合強度を高めるという目的が含まれている
【特許文献1】特開2005−118794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10に示したようなビーム100において、支柱101と桟102との連結部分Sの強度が弱く、その結果、ビーム100の長手方向両端に曲げ力や強いねじり力などが負荷した場合などに、この連結部分Sで応力集中が起こってここで曲がりやねじれ、潰れ、亀裂、溶接部破壊などが発生し、ついには破断に至るということがあった。
すなわち、この種ビーム100において、連結部分Sは強度的に非常に弱い部分であると言える。それ故、もし仮に、この連結部分SにワイヤロープRを架け渡すようなことをすれば(図10及び図11中に二点鎖線で示すようなこと)、ワイヤロープRによる引っ張り力が連結部分Sをいとも簡単に破断させてしまうということになる。
【0005】
従来、わざわざ支柱101に板片106を取り付けてワイヤロープRを繋ぎ止めるといった使い方をしていたのは、まさに、このような連結部分Sの破断等を回避するための対策の一つであった。
しかしながら、このような板片106を取り付けたとしても、支柱101と板片106との取付部(溶接部)108や、板片106におけるロープ掛け孔106の開口周部に応力集中が起こるのは必定であり、これらで剪断破壊が起こるということがあった。
一方、桟102の端部にフレア加工するという提案(特許文献1等参照)は、決して、フレア部分の全面を支柱101へ溶接するわけではなく、フレア部分の外周部が桟102の端部外周より「その周長として」長くなっている分が、溶接面積の拡大に繋がっているだけである。
【0006】
そのため、フレア加工の採用で得られるとされた接合強度の向上効果は微々たるものであり、支柱101と桟102との連結部分Sの強度を高める根本的な解決には何ら寄与しないものと言わざるを得ない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、連結杆(桟等)の端部を被連結杆(支柱等)の長手方向側面に突き当て状態にして連結する場合にあってその連結部分の強度を飛躍的に高めることができるようにした溶接継ぎ手構造とこの溶接継ぎ手構造を採用することで全体強度を飛躍的に高めることができるようにしたビームとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る溶接継ぎ手構造は、連結杆の端部を被連結杆の長手方向側面に突き当てて両者をアーク溶接により連結するための構造であって、連結杆はパイプ素材によって形成されていると共に、この連結杆の端部にはパイプ素材を径方向に潰すことによって形成した扁平形状の継ぎ手端部が設けられており、この継ぎ手端部まわりを一周させるようにしつつ、被連結杆との突き当て部分を隅肉溶接することで連結杆と被連結杆との連結部分にエンドレスのビード部が形成されているものである。
【0008】
このような構成であると、連結杆の継ぎ手端部はパイプ素材厚の2倍の厚さとして形成されているばかりでなく、この継ぎ手端部まわりを一周する隅肉溶接によって形成されるビード部の盛厚も、継ぎ手端部の肉厚に加算される。その結果、この連結部分の総肉厚は、元のパイプ素材厚に対してその4倍前後に形成されていることになる。
そのためこの連結部分の断面二次係数は大きくなり、従来に比して飛躍的に、曲がりやねじれ、潰れ、亀裂、溶接部破壊などは起こり難いものとなっている。またこの連結部分が破壊に至ることもない。
【0009】
連結杆の継ぎ手端部先端は、扁平形状の幅方向中央部に比べて幅方向両端部が先方へ突出したものとされることで被連結杆の断面形状に沿った凹形に形成されており、連結杆の継ぎ手端部と被連結杆の長手方向側面とが密接的な突き当て状態とされたものとするのが好適である。
このようにすると、連結杆の継ぎ手端部先端は、その凹形として被連結杆の外周面を掴むような状態となる。また、継ぎ手端部先端と被連結杆の外周面との間が密接的になっている(即ち、隙間がない)ことから、これらを隅肉溶接した部分中に巣(空隙)は生じないものとなり、それだけ強靱な連結が可能となっている。
【0010】
このことも、連結杆と被連結杆との連結強度を高めるうえで極めて有効となっている。
連結杆の継ぎ手端部は、パイプ素材の中心位置が潰しの中心となるようにして扁平形状に形成されているものとするのが好適である。
このようにすることで、継ぎ手端部に作用する応力が、当該継ぎ手端部の表裏で同じ大きさとして作用することになるから、連結杆としての使用向き(ビームを製作するとき及びビームを使用するときの継ぎ手端部の配置)を制限されることはなくなる。そのため、連結杆としての使用上の面倒がない。
【0011】
一方、本発明に係るビームは、少なくとも2本の互いに並行状態とされた被連結杆と、これら被連結杆間をそれらの長手方向で互いに所定間隔をおいて架設された複数本の連結杆とを有したものであって、被連結杆の長手方向側面と連結杆の端部との連結部分に対し、本発明に係る溶接継ぎ手構造を採用して連結されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る溶接継ぎ手構造では、連結杆(桟等)の端部を被連結杆(支柱等)の長手方向側面に突き当て状態にして連結する場合にあってその連結部分の強度を飛躍的に高めることができる。
また本発明に係るビームは、本発明に係る溶接継ぎ手構造を採用していることに伴って全体強度を飛躍的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図5は、本発明に係るビーム1の一実施形態を示している。このビーム1は、互いに並行状態とされた複数本の被連結杆3を有していると共に、これら被連結杆3の長手方向で互いに所定間隔をおいて配置され、且つ被連結杆3間を繋ぐように架設された複数本の連結杆4及びブレース(斜材)5を有したものである。
図例では被連結杆3が4本設けられ、これら被連結杆3が互いに平行しつつ正方形配置となるように同じ長さの連結杆4で連結されることで、ビーム1全体として角筒形を呈するようになっているものを示してある。連結杆4は被連結杆3の長手方向に対して直交するようにしてあり、ブレース5は被連結杆3の長手方向に対して傾斜するようにしてある。
【0014】
なおまた、被連結杆3、連結杆4、ブレース5はいずれも丸パイプにより形成されたものとしてある。
連結杆4の端部と被連結杆3の長手方向側面との連結部分に、本発明に係る溶接継ぎ手構造が採用されている。
すなわち、連結杆4の端部には、パイプ素材(丸パイプ)を径方向に潰すことによって形成した扁平形状の継ぎ手端部10が設けられており、この継ぎ手端部10を被連結杆3の長手方向側面へ突き当てた状態で、両者がアーク溶接されている。
【0015】
図3乃至図5などから明かなように、連結杆4の継ぎ手端部10を平面的に見ると、その先端は扁平形状の幅方向中央部に比べて幅方向両端部が先方へ突出する状態で凹形に形成されている。この凹型の内面は円弧カーブを呈しており、そのカーブ半径は被連結杆3の断面形状に沿うようになっている。
そのため、連結杆4の継ぎ手端部10先端は、その凹形として被連結杆3の外周面を掴むような状態(1/4周は超えるが半周にはやや満たない程度で接触した状態)であり、しかも、継ぎ手端部10と被連結杆3の長手方向側面とは、溶接前及び溶接後を通じて密接的な突き当て状態(即ち、隙間が出ない線接触状態)となっている。
【0016】
また、継ぎ手端部10は、パイプ素材の中心位置が潰しの中心となるようにして扁平形状に形成されている。
図6に示すように、連結杆4の継ぎ手端部10は、パイプ素材4Xをプレス機12でプレスすることによって形成してある。プレス機12は、ダイ孔13を有した円筒形の下型14に対し、この下型14のダイ孔13へ嵌るポンチ部15を有した上型16を圧下可能になったもので、上型16には、下型14の上周面(ダイ孔13の開口周部)17と水平に当接するリング部18が形成されている。
【0017】
従って、下型14上に対し、ダイ孔13の中心を横断する配置でパイプ素材4Xを保持させて上型16を圧下させる。
なお、図6ではパイプ素材4Xの長手方向中途部をプレス機12で圧下するように示してあるが、これに限らず、パイプ素材4Xの一端部をプレス機12で圧下するようにしてもよい。
連結杆4の継ぎ手端部10と被連結杆3の長手方向側面との間で行うアーク溶接は、継ぎ手端部10のまわりを一周させるようにしつつ、被連結杆3への突き当て部分を隅肉溶接したものである。これにより、継ぎ手端部10のまわりを取り囲むようにエンドレスでビード部19が形成されている。
【0018】
図2に示すように、連結杆4のパイプ素材厚をtとおけば継ぎ手端部10の厚さは2tである。また、隅肉溶接によるビード部19の盛厚bはパイプ素材厚tと概ね同じ程度とすればよく、結果として、継ぎ手端部10が被連結杆3の長手方向側面に連結されている部分の総厚は、継ぎ手端部10の厚さ(2t)の更に2倍に相当する厚さ、即ち、4t前後として形成されている。
そのためこの連結部分の断面二次係数は大きくなり、従来に比して飛躍的に、曲がりやねじれ、潰れ、亀裂、溶接部破壊などは起こり難いものとなっている。またこの連結部分が破壊に至ることもない。
【0019】
このような構成(溶接継ぎ手構造)を具備して成るビーム1では、連結杆4と被連結杆3との連結強度が高く、曲がりやねじれ、潰れ、亀裂、溶接部破壊などは起こり難く、破壊に至ることもない。従って例えば、図7乃至図9に示すように、連結杆4と被連結杆3との連結部分に対し、直接、ワイヤロープRを架け渡すようにしても、この連結部分が簡単に破断するといったことはなく、十分に使用に耐えるものである。
このことから、従来はワイヤロープRを架け渡すうえで必須不可欠とされた板片(図10及び図12中の符号106)も不要となり、その取り付けの手間なども当然に不要となる。
【0020】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、連結杆4のパイプ素材には丸パイプの他、角パイプ等を用いることも可能である。
ビーム1として、正方形の筒形を呈するものの他、長方形の筒形を呈するもの、三角筒形を呈するもの、錘形(四角錘や三角錘の筒形など)の筒形を呈するもの、更には梯子状を呈するものなどとしてもよい。すなわち、被連結杆3の並行状態とは、平行及び非平行を含むものである。
【0021】
連結杆4において、継ぎ手端部10を形成させる場合にプレス機12を使用するのは一例であり、その他の方法で形成させるものであってもよい。
連結杆4は、被連結杆3と直交させることが限定されるものではなく、傾斜させてもよい。すなわち、ブレース5を連結杆4と仮定すれば、ブレース5と被連結杆3との連結部分でも本発明に係る溶接継ぎ手構造を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る溶接継ぎ手構造を採用して成るビームの一実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】図2のB−B線矢視図である。
【図4】図3に対応させて製作過程を説明した図である。
【図5】図1のC部を示した分解斜視図である。
【図6】連結杆の継ぎ手端部を形成する過程を説明した一部破砕側面図である。
【図7】図1に示したビームの使用例を示した側面図である。
【図8】図7のD−D線断面図である。
【図9】図8のE−E線矢視図である。
【図10】従来のビームを示した側面図である。
【図11】図10のF−F線断面図である。
【図12】図10のG−G線断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ビーム
3 被連結杆
4 連結杆
10 継ぎ手端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結杆(4)の端部を被連結杆(3)の長手方向側面に突き当てて両者をアーク溶接により連結する溶接継ぎ手構造において、
連結杆(4)はパイプ素材によって形成されていると共にこの連結杆(4)の端部にはパイプ素材を径方向に潰すことによって形成した扁平形状の継ぎ手端部(10)が設けられており、この継ぎ手端部(10)まわりを一周させるようにしつつ被連結杆(3)との突き当て部分を隅肉溶接することで連結杆(4)と被連結杆(3)との連結部分にエンドレスのビード部(19)が形成されていることを特徴とする溶接継ぎ手構造。
【請求項2】
前記連結杆(4)の継ぎ手端部(10)先端は、扁平形状の幅方向中央部に比べて幅方向両端部が先方へ突出したものとされることで被連結杆(3)の断面形状に沿った凹形に形成されており、連結杆(4)の継ぎ手端部(10)と被連結杆(3)の長手方向側面とが密接的な突き当て状態とされていることを特徴とする請求項1記載の溶接継ぎ手構造。
【請求項3】
前記連結杆(4)の継ぎ手端部(10)は、パイプ素材の中心位置が潰しの中心となるようにして扁平形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の溶接継ぎ手構造。
【請求項4】
少なくとも2本の互いに並行状態とされた被連結杆(3)と、これら被連結杆(3)間をそれらの長手方向で互いに所定間隔をおいて架設された複数本の連結杆(4)とを有し、被連結杆(3)の長手方向側面と連結杆(4)の端部との連結部分が請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の溶接継ぎ手構造によって連結されていることを特徴とするビーム。
【請求項1】
連結杆(4)の端部を被連結杆(3)の長手方向側面に突き当てて両者をアーク溶接により連結する溶接継ぎ手構造において、
連結杆(4)はパイプ素材によって形成されていると共にこの連結杆(4)の端部にはパイプ素材を径方向に潰すことによって形成した扁平形状の継ぎ手端部(10)が設けられており、この継ぎ手端部(10)まわりを一周させるようにしつつ被連結杆(3)との突き当て部分を隅肉溶接することで連結杆(4)と被連結杆(3)との連結部分にエンドレスのビード部(19)が形成されていることを特徴とする溶接継ぎ手構造。
【請求項2】
前記連結杆(4)の継ぎ手端部(10)先端は、扁平形状の幅方向中央部に比べて幅方向両端部が先方へ突出したものとされることで被連結杆(3)の断面形状に沿った凹形に形成されており、連結杆(4)の継ぎ手端部(10)と被連結杆(3)の長手方向側面とが密接的な突き当て状態とされていることを特徴とする請求項1記載の溶接継ぎ手構造。
【請求項3】
前記連結杆(4)の継ぎ手端部(10)は、パイプ素材の中心位置が潰しの中心となるようにして扁平形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の溶接継ぎ手構造。
【請求項4】
少なくとも2本の互いに並行状態とされた被連結杆(3)と、これら被連結杆(3)間をそれらの長手方向で互いに所定間隔をおいて架設された複数本の連結杆(4)とを有し、被連結杆(3)の長手方向側面と連結杆(4)の端部との連結部分が請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の溶接継ぎ手構造によって連結されていることを特徴とするビーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−208142(P2009−208142A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56689(P2008−56689)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(596170424)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(596170424)
【Fターム(参考)】
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