説明

α−アミラーゼ阻害剤

【課題】α−アミラーゼ阻害作用を有する新たな血糖値上昇抑制剤を提供すること。
【解決手段】テアシネンシン類及びエピテアフラビン酸類の少なくとも1種類以上を有効成分として含有することを特徴とした新しいα−アミラーゼ阻害剤であり、飲食品、医薬品、医薬部外品、健康食品、栄養補助食品などに幅広く応用できる汎用性の高いものである。また、食後の血糖値の上昇を抑制することにより糖尿病の予防及び/又は改善につながることが期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵した茶葉に含まれているテアシネンシン(theasinensin)類、エピテアフラビン酸(epitheaflavic acid)類の少なくとも1種類以上を有効成分として含有するアミラーゼ阻害剤並びにそれらを含有し、糖尿病の予防もしくは血糖値の改善のために用いられる口腔適用対象物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食生活の変化による摂取カロリーの過多が、肥満、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めているといわれて久しい。デンプンやシュクロースなどの糖質の消化を抑えることは、糖尿病をはじめ肥満などのリスクを下げると考えられ、デンプンの消化酵素であるα−アミラーゼやシュクロースの分解酵素であるシュクラーゼの作用を阻害する物質を食品素材から見出そうとする研究がなされてきた。
特に、茶の成分に関しては緑茶カテキン類であるエピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートや紅茶のポリフェノール成分である遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレート、テアフラビンジガレートにα−アミラーゼ阻害作用(特許文献1)やシュクラーゼ阻害作用(特許文献2)があることが開示されている。また、特定の比率でテアフラビン、テアフラビン−3−ガレート、テアフラビン−3’−ガレート、テアフラビン−3,3’−ジガレートを含有する組成物にα−アミラーゼやα−グルコシダーゼに対する阻害作用があることが開示されている(特許文献3)。さらに、カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含有するポリフェノール組成物がα−アミラーゼの阻害活性を示すことも報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−133928
【特許文献2】特開平5−17364
【特許文献3】特開2009−268420
【特許文献4】特開2010−222277
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発酵茶であるウーロン茶や紅茶の成分として知られているテアシネンシン類及びエピテアフラビン酸類がα−アミラーゼの阻害作用を有するという報告はない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、発酵茶に含まれるテアシネンシン類及びエピテアフラビン酸類を合成することに成功し、これら成分の生理活性作用を検討したところ、α−アミラーゼに対して阻害作用を示すことを見出した。
【0006】
すなわち、本願請求項1記載の発明は、下記の式(I)で表されるテアシネンシン類、下記の式(II)で表されるエピテアフラビン酸類の少なくとも1種類以上を有効成分として含有することを特徴とするアミラーゼ阻害剤である(但し、発酵茶抽出物を除く)。
式(I)
【化1】

(式(I)のR、Rはそれぞれ独立に水素(H)又はガロイル基を表す。)

式(II)
【化2】

(式(II)のRは、水素(H)又はガロイル基を表す。)
本願請求項2記載の発明は、式(I)に示すテアシネンシン類がテアシネンシンA、テアシネンシンB及びテアシネンシンCである請求項1記載のアミラーゼ阻害剤である。
本願請求項3記載の発明は、式(II)で表されるエピテアフラビン酸類が、エピテアフラビン酸及びエピテアフラビン酸−3−O−ガレートである請求項1記載のアミラーゼ阻害剤である。
本願請求項4記載の発明は、テアシネンシン類がテアシネンシンA、テアシネンシンB、テアシネンシンCであり、エピフラビン酸類がエピテアフラビン酸及びエピテアフラビン酸−3−O−ガレートである請求項1記載のアミラーゼ阻害剤である。
さらに本願請求項5記載の発明は、請求項1乃至4記載のアミラーゼ阻害剤を含有する口腔適用対象物である。
請求項6記載の本願発明は、飲食品である請求項5記載の口腔適用対象物である。
請求項7記載の本願発明は、医薬品又は医薬部外品である請求項5記載の口腔適用対象物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明はテアシネンシン類、エピテアフラビン酸類を有効成分としたα−アミラーゼ阻害剤であり、飲食品、医薬品、医薬部外品などに幅広く応用出来る汎用性の高いものであり、食後の血糖値の上昇を抑制することにより糖尿病の予防及び/又は改善につなげることが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明におけるテアシネンシン類は、公知の有機化学合成法(特許文献5)により得ることができる。また、ナシの果実ホモジネート中の酵素を用いて製造することも可能である(非特許文献1)。また本発明のテアシネンシン類は下記の式(III)で表されるテアシネンシンA、テアシネンシンB、テアシネンシンCが挙げられる。
式(III)
【化3】

【特許文献5】特開2010−138103
【非特許文献1】Tetrahedron、 59、 7939〜7947(2003)
【0009】
本発明におけるエピテアフラビン酸類は、公知のテアフラビンの酵素合成法(特許文献6)に基づいてチロシナーゼをカテキン類と没食子酸の混合溶液に作用させることにより簡単に合成できるほか、エピカテキンと没食子酸との混合溶液にパーオキシダーゼを作用させることにより合成することも可能である。カテキン類と没食子酸の濃度及びその比率、反応温度、反応時間、pH、酵素量などは、収率が向上するよう適宜調整することができる。
【特許文献6】特開2010−35548
【0010】
上記の有機化学合成法や酵素合成法により得られるテアシネンシン類及びエピテアフラビン酸類は、医薬上又は食品上許容し得る規格に適合し、本発明の効果を発揮するものであれば、粗精製物であってもよく、さらに得られた合成物や抽出物を公知の分離精製方法を適宜組み合わせて純度を上げても良く、例えば水、熱水、アルコール等の極性溶媒、又は非極性溶媒を用いて行う溶剤抽出方法や、遠心分離、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等の精製手段が挙げられる。
【0011】
本発明のアミラーゼ阻害剤は利用の形態は限定されないが、たとえば液状、粉末状、顆粒状などが挙げられ、食品又は栄養補助品として、通常用いられる形態、たとえば液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、酒精剤に利用することが出来る。
【0012】
本発明のアミラーゼ阻害剤は、更に他のα−アミラーゼ阻害剤、例えば、カテキン類、テアフラビン類、グアバポリフェノール類、フラボノールアグリコンやフラボノール配糖体、柿ポリフェノール、1−デオキシノジリマイシン、桑由来のポリフェノールなどと併用して利用することもできる。
【0013】
また、本発明のアミラーゼ阻害剤を医薬品として用いる場合は、日本薬局方に収められている医薬品で口に含むことができれば特に限定されるものではなく、上記有効成分に薬学的に許容される担体を添加して、経口用の製剤とすることが出来る。製剤形態としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤、トローチ剤、チュアブル剤、液剤(ドリンク剤)などが挙げられる。
【0014】
医薬部外品としては厚生労働大臣が指定した医薬部外品で口に含むことができれば特に限定されるものではなく、例えば、内服液剤、健康飲料、ビタミン含有保健剤などが挙げられる。
【0015】
本発明のアミラーゼ阻害剤の一つを少なくとも必須成分として含有する食品はどのような形態であってもよく、例えば、水溶液や混濁物や乳化物などの液状形態であっても、ゲル状やペースト状の半固形状形態であっても、粉末や顆粒やカプセルやタブレットなどのサプリメント等の固形状形態であってもよい。
【0016】
本発明のアミラーゼ阻害剤の一つを少なくとも必須成分として含有する飲食品としては、例えば、即席食品類(即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席味噌汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズドライ食品など)、炭酸飲料、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)の果汁や果汁飲料や果汁入り清涼飲料、柑橘類の果肉飲料や果粒入り果実飲料、トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガスなどの野菜を含む野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料やタバコなどの嗜好飲料・嗜好品類、マカロニ・スパゲッティ、麺類、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉、ギョーザの皮などの小麦粉製品、キャラメル・キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ・パイ、スナック・クラッカー、和菓子・米菓子・豆菓子、デザート菓子などの菓子類、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料などの基礎調味料、風味調味料、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類などの複合調味料・食品類、バター、マーガリン類、マヨネーズ類、植物油などの油脂類、牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリームなどの乳・乳製品、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済み冷凍食品などの冷凍食品、水産缶詰め、果実缶詰め・ペースト類、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、水産乾物類、佃煮類などの水産加工品、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物・煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)などの農産加工品、ベビーフード、ふりかけ・お茶漬けのりなどの市販食品などが挙げられる。
【0017】
飲食品に対する本発明のアミラーゼ阻害剤の配合量は、特に制限されないが、対象となる飲食品により配合量を適宜設定する。一般的には、最終製品中で0.001〜20重量%であることが好ましく、0.005〜10重量%であることがより好ましく、0.01〜5重量%であることがさらに好ましく、0.1〜1重量%であることが最も好ましい。
【0018】
以下に、製造例、試験例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
製造例1:テアシネンシンAの合成
エピガロカテキンガレート(EGCg;SIGMA社製)1833mg(4.00mmol)を水60mLとMcIlvaine緩衝液(pH5)60mLで溶解した。50mLコニカルビーカー4つそれぞれにこの溶液30mLと10%パラジウム/炭素(約50%水湿潤品、Aldrich製)170mgを加えて、空気雰囲気下室温で180分間撹拌した。触媒をろ別した後、ろ液にジチオスレイトール463mg(3.00mmol)を加えて、室温で45分間撹拌した。反応液に1M水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH6に調整した。反応液を酢酸エチル50mLで5回抽出し、酢酸エチル層を硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。酢酸エチル画分1552mgをメタノール(5mL)で溶解後、トヨパールHW−40Sカラムクロマトグラフィー(東ソー(株)製;40mmI.D.×450mm、移動相;メタノール、流速15mL/min)に供し、粗テアシネンシンAを374mg得た。得られた粗テアシネンシンAを5%アセトニトリル15mLに溶解後、エムシーアイゲルCHP55Yカラムクロマトグラフィー(三菱化学(株)製;20mmI.D.×300mm、移動相;水:アセトニトリル:ギ酸=870:130:1、流速7.5mL/min)にて精製し、テアシネンシンA 286mg(312μmol、収率15.6%)をオフホワイトの粉末として得た。なお、テアシネンシンAの収率は次の式、収率(%)={(得られたテアシネンシンAのモル数)/(原料のカテキン類のモル数×0.5)}×100により算出した。
【0020】
製造例2:テアシネンシンBの合成
エピガロカテキン(EGC;SIGMA社製)613mg(2.00mmol)とエピガロカテキンガレート(EGCg;SIGMA社製)917mg(2.00mmol)を水60mLとMcIlvaine緩衝液(pH5)60mLで溶解した。50mLコニカルビーカー4つそれぞれにこの溶液30mLと10%パラジウム/炭素(約50%水湿潤品、Aldrich製)250mgを加えて、空気雰囲気下室温で210分間撹拌した。触媒をろ別した後、ろ液にトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩860mg(3.00mmol)を加え、室温で10分間撹拌した。反応液を直接ダイアイオンHP−20カラムクロマトグラフィー(三菱化学(株)製;30mmI.D.×140mm)に供し、水350mLで洗浄後、40%メタノール500mLで溶出した。濃縮乾固した40%メタノール画分1172mgをメタノール(5mL)で溶解後、トヨパールHW−40Sカラムクロマトグラフィー(東ソー(株)製;40mmI.D.×450mm、移動相;メタノール、流速15mL/min)に供し、粗テアシネンシンBを294mg得た。得られた粗テアシネンシンBを5%アセトニトリル7.5mLに溶解後、エムシーアイゲルCHP55Yカラムクロマトグラフィー(三菱化学(株)製;20mmI.D.×300mm、移動相;水:アセトニトリル:ギ酸=900:100:1、流速7.5mL/min)にて精製し、テアシネンシンB188mg(247μmol、収率12.3%)をオフホワイトの粉末として得た。なお、テアシネンシンBの収率は次の式、収率(%)={(得られたテアシネンシンBのモル数)/(原料のカテキン類のモル数×0.5)}×100により算出した。
【0021】
製造例3:テアシネンシンCの合成
エピガロカテキン(EGC;SIGMA社製)1225mg(4.00mmol)を水60mLとMcIlvaine緩衝液(pH5)60mLで溶解した。50mLコニカルビーカー4つそれぞれにこの溶液30mLと10%パラジウム/炭素(約50%水湿潤品、Aldrich製)170mgを加えて、空気雰囲気下室温で240分間撹拌した。触媒をろ別した後、ろ液にトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩860mg(3.00mmol)を加え、室温で10分間撹拌した。反応液を直接エムシーアイゲルCHP55Yカラムクロマトグラフィー(三菱化学(株)製;20mmI.D.×300mm、移動相 水:メタノール:ギ酸=950:50:1、流速7.5mL/min)に供し、テアシネンシンC369mg(604μmol、収率30.2%)をオフホワイトの粉末として得た。なお、テアシネンシンCの収率は次の式、収率(%)={(得られたテアシネンシンCのモル数)/(原料のカテキン類のモル数×0.5)}×100により算出した。
【0022】
製造例4:エピテアフラビン酸−3−O−ガレートの合成
エピカテキンガレート(ECg;SIGMA社製)451mg(1.02mmol)と没食子酸(SIGMA社製)1.42g(8.37mmol)を500mLのMacIlvaine緩衝液(pH5.0)に溶解した。この溶液を5本の1L三角フラスコに100mLずつ分注し、それぞれに水100mLを加えた。この溶液にSIGMA社製のチロシナーゼを1つの三角フラスコにつき200000U添加し、40℃で10分間、100rpmでインキュベーションした。上記の酵素反応液に等量の酢酸エチルを加えて抽出した。さらに2回酢酸エチル抽出を繰り返した。集めた有機層を溶媒留去し、目的のエピテアフラビン酸−3−O−ガレートを280nmの面積値純度で15.3%含む画分を1.64g得た。得られた画分を95%メタノール30mLに溶解後、トヨパールHW−40Sカラムクロマトグラフィー(東ソー(株)製;40mmI.D.×450mm、565mL、移動相;95%メタノール、流速10mL/min)に全量供し、メタノールで溶出した。更に約5mLまで濃縮後、全量を120%アセトニトリルに溶解した。そして、エムシーアイゲルCHP55Yカラムクロマトグラフィー(三菱化学(株)製;20mmI.D.×290mm、91mL、移動相;12%→22%アセトニトリルグラジエント、流速10mL/min)に全量供し、280nmの面積値純度が99%以上であるエピテアフラビン酸−3−O−ガレートを52.5mg(90.5μmol)得た。使用したECgに対する収率は8.86%であった。なお、エピテアフラビン酸−3−O−ガレートの収率は次の式、収率(%)={(得られたエピテアフラビン酸−3−O−ガレートのモル数)/(原料のECgのモル数)}×100により算出した。
【0023】
製造例5:エピテアフラビン酸の合成
エピカテキン(EC;SIGMA社製)290mg (1.00mmol)と没食子酸 (SIGMA社製)180mg (1.00mmol)の入った100mL容三角フラスコを2本用意し、これにアセトン5mLを加えた後、0.1M
酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5) 45mLを加え溶解した。この溶液それぞれにSIGMA社製Peroxidase TypeIV−Aを4500U添加し、室温で撹拌した。次に3%過酸化水素水約1.1mLをゆっくりと滴下し、反応させた後、3mLの1M塩酸を添加し反応停止した。反応液を水で平衡化したダイアイオンHP−20カラム(三菱化学(株)製;50mmI.D.×150mm、290mL)に全量供し、30%メタノール水溶液で洗浄後、100%メタノールで溶出した。100%メタノール溶出画分をエバポレーターで濃縮し、液量が1/4〜1/5になったところで濃縮をやめ、冷蔵庫へ入れ一晩放置し結晶化した。回収した結晶はさらにメタノールに溶解後、トヨパールHW−40Sカラムクロマトグラフィー(東ソー(株)製、25mmI.D.×270mm、130mL、移動相;メタノール)に供して、目的とするフラクションを得た。目的とするフラクションに水を加えた後、エバポレーターで濃縮し、液量が1/4〜1/5になったところで濃縮をやめ、冷蔵庫へ入れ一晩放置し結晶化した。280nmの面積純度が99%以上のエピテアフラビン酸(Epitheaflavic acid)を141mg(329μmol)得た。収率は32.9%であった。なお、エピテアフラビン酸の収率は次の式、収率(%)={(得られたエピテアフラビン酸のモル数)/(原料のECのモル数)}×100により算出した。
【実施例2】
【0024】
試験例:α−アミラーゼ阻害活性測定
ブタ膵臓由来α−アミラーゼ(Type VI−B、SIGMA社製)を0.01mM 塩化カルシウム(CaCl)溶液に溶解し、α−アミラーゼ酵素溶液とした。酵素反応は、関東化学(株)製のアミラーゼ測定キット:シカリキッド−N AMY(基質:2−クロロ−4−ニトロフェニル−4−O−β−D−ガラクトピラノシルマルトサイド(Gal−G2−CNP))を用い、そのマニュアルに従った。すなわち、α−アミラーゼ酵素溶液(3units/ml)50μLに試料溶液(本発明品のα−アミラーゼ阻害剤、30%メタノールで調製)50μLとR1溶液[50mM MES(2−モルフォリノエタンスルホン酸)(pH6.0、37℃)、140mM KSCN、5mM CaCl、300mM NaCl]750μL、R2溶液[50mM MES(pH6.0、37℃)、140mM KSCN、5mM CaCl、300mM NaCl、10.6mM Gal−G2−CNP] 250 μLを加えて37℃で5分間反応させ、沸騰水浴中で5分間インキュベートして反応停止させた。反応液中に生成した2−クロロ−4−ニトロフェノール(CNP)の量を高速液体クロマトグラフ(HPLC)装置により測定した。HPLCの分析条件は、Mightysil RP−18 GPカラム(関東化学(株)製;4.6mmI.D.×150mm)を用い、0.05%リン酸を含む40%アセトニトリルで溶出し、317nmの波長で検出した。
α−アミラーゼ阻害活性は下記式より求めた。なお、試料溶液はすべて30%メタノールで調製し、対照には30%メタノールを用いた。比較試料として、EGCg(三井農林(株)製)を使用した。
また、それぞれのブランクとして、α−アミラーゼ酵素溶液の代わりに0.01M CaCl溶液を用いた。
阻害率(%)=[(A−B)−(C−D)]/ (A−B)×100
ただし、A:対照溶液(α−アミラーゼ溶液+30%メタノール溶液+R1+R2)の面積値
B:対照溶液のブランク(Aのα−アミラーゼ溶液に代わり0.01MCaCl溶液を使用)の面積値
C:試料溶液(α−アミラーゼ溶液+発明品の阻害剤(30%メタノール溶液)+R1+R2)の面積値
D:試料溶液のブランク(Cのα−アミラーゼ溶液に代わり0.01MCaCl溶液を使用)の面積値
上記の阻害活性試験の結果から、各サンプルのα−アミラーゼに対する50%阻害濃度(IC50値)を求めた。
【0025】
【表1】

【0026】
表1の結果より、エピテアフラビン酸に極めて強いα−アミラーゼの阻害作用があることが分かった。また、エピテアフラビン酸−3−O−ガレートにも強い阻害作用が確認された。テアシネンシンA、テアシネンシンB、テアシネンシンCにおいても、α−アミラーゼ阻害活性が認められた。テアシネンシンBはEGCgと同等の阻害活性であり、テアシネンシンAとテアシネンシンCはそれらよりも強くα−アミラーゼを阻害することが見出された。
【実施例3】
【0027】
製造例:キャンディー
砂糖:33重量%、水飴:66重量%、クエン酸:0.67重量%、香料:0.16重量%、着色料:0.07重量%及び製造例1で得られたテアシネンシンA:0.10重量%をキャンディー処方により常法で調製し、テアシネンシンAを含有するキャンディーを得た。
【実施例4】
【0028】
製造例:スポーツ飲料
製造例2で得られたテアシネンシンB:0.2重量部、ビタミンB1塩酸塩:0.0002重量部、ビタミンB2:0.0001重量部、ビタミンC:0.005重量部、ナイアシン:0.0004重量部、パントテン酸Ca:0.0001重量部、クエン酸鉄アンモニウム:0.006重量部、クエン酸:0.05重量部及び果糖:1.25重量部の成分にイオン交換水を加え全量を200重量部とし、テアシネンシンBを含有するスポーツ飲料を調製した。
【実施例5】
【0029】
製造例:チュアブル錠剤
テアシネンシンC0.6重量部、キシリトール33.7重量部、マンニトール30.6重量部、微結晶性セルロース6.1重量部、着香料14.1重量部、ステアリン酸4.3重量部、タルク0.6重量部、ソルビトール9.8重量部を混合した粉体を錠剤プレスによって圧縮し、テアシネンシンCを含有する錠剤を得た。
【実施例6】
【0030】
製造例:清涼飲料水
果糖ブドウ糖液糖13重量部、グレープフルーツストレート果汁2.0重量部、クエン酸0.3重量部、ビタミンC0.01重量部、クエン酸ナトリウム0.02重量部、香料(グレープフルーツ様香料)0.1重量部、製造例4で得られたエピテアフラビン酸−3−O−ガレート0.1重量部に水を加えて溶解し、100重量部の飲料を調製した。これをガラス瓶容器に分注して、常法により殺菌を行い、エピテアフラビン酸−3−O−ガレートを含有する清涼飲料を得た。
【実施例7】
【0031】
製造例:タブレット菓子
粉糖87重量部、乳糖2重量部、ビタミンC3重量部、クエン酸粉末1.5重量部、ゼラチン1%水溶液4重量部、製造例5で得られたエピテアフラビン酸1重量部、ショ糖脂肪酸エステル1重量部、粉末レモン香料0.5重量部を均一混合し、常法により15mmφの径を有する2錠剤を打錠し、エピテアフラビン酸を含有する錠菓を得た。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のアミラーゼ阻害剤は、医薬品としての他、健康志向型食品として、健康食品、栄養補助食品、特定保健用食品、成分調製食品等の業界で有利に利用することが出来るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるテアシネンシン類、式(II)で表されるエピテアフラビン酸類の少なくとも1種類以上を有効成分として含有することを特徴とするアミラーゼ阻害剤(但し、発酵茶抽出物を除く)。
式(I)
【化1】

(式(I)のR、Rはそれぞれ独立に水素(H)又はガロイル基を表す。)
式(II)
【化2】

(式(II)のRは、水素(H)又はガロイル基を表す。)
【請求項2】
式(I)に示すテアシネンシン類がテアシネンシンA、テアシネンシンB及びテアシネンシンCである請求項1記載のアミラーゼ阻害剤。
【請求項3】
式(II)で表されるエピテアフラビン酸類が、エピテアフラビン酸及びエピテアフラビン酸−3−O−ガレートである請求項1記載のアミラーゼ阻害剤。
【請求項4】
テアシネンシン類がテアシネンシンA、テアシネンシンB、テアシネンシンCであり、エピテアフラビン酸類がエピテアフラビン酸及びエピテアフラビン酸−3−O−ガレートである請求項1記載のアミラーゼ阻害剤。
【請求項5】
請求項1乃至4記載のアミラーゼ阻害剤を含有する口腔適用対象物。
【請求項6】
飲食品である請求項5記載の口腔適用対象物。
【請求項7】
医薬品又は医薬部外品である請求項5記載の口腔適用対象物。


【公開番号】特開2012−135227(P2012−135227A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288097(P2010−288097)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【Fターム(参考)】